JP6787429B2 - 水処理剤 - Google Patents

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Description

本発明は、水処理剤に関する。
蓄熱水系、紙パルプ工程水系、集塵水系、スクラバー水系等の種々の水系において、水系の配管内や濾過膜等に対して、生物付着防止、スライム防止や殺微生物(例えば、細菌、真菌、藻類等)等の効果を得る目的のために、次亜ハロゲン酸(例えば、次亜塩素酸、次亜臭素酸等)を使用している。一例として、冷却水の開放循環冷却水等に次亜ハロゲン酸を流して上述の効果を得ている。この次亜ハロゲン酸のうちでも、次亜塩素酸よりも次亜臭素酸の方がより高い殺菌力を有するため、次亜臭素酸における水系への使用が着目されている。
例えば、特許文献1では、水系中の微生物による汚れを制御するために、(a)安定化されていない次亜塩素酸ナトリウムを、安定剤としてのスルファミン酸とアルカリ溶液中で混合することによって、pHが少なくとも11である安定化されたアルカリ金属又はアルカリ土類金属の次亜塩素酸塩を調製する工程;(b)臭化物イオン源としての臭化ナトリウムを調製する工程;及び(c)前記工程(b)で調製した該臭化物イオン源を、前記工程(a)で調製した該安定化されたアルカリ金属またはアルカリ土類金属の次亜塩素酸塩に加える工程を含む、殺生物剤の調製方法が、提案されている(例えば、請求項1及び段落〔0047〕等参照)。
また、例えば、特許文献2では、生物付着制御のための安定化臭素溶液の製造方法として、a.臭素源としての臭化ナトリウム溶液と、安定化剤としての固体スルファミン酸塩とを化合させて、混合物を生成する工程と;b.前記混合物に、酸化剤としての次亜塩素酸ナトリウム溶液をゆっくりと添加する工程と;そして、c.前記混合物に、アルカリ源としての水酸化ナトリウム溶液をゆっくり添加して、前記混合物のpHを少なくとも13に調整する工程と;からなる、安定化臭素溶液を製造する方法が、提案されている(例えば、請求項1及び段落〔0022〕等参照)。
特表2005−519089公報 特表2002−540297公報
しかし、次亜臭素酸は高い殺菌効果やスライム防止効果等を有するものの、不安定であることも知られている。
そこで、本発明は、水系に添加したときに次亜臭素酸の効果が良好に発揮するとともに、薬剤の品質安定性に優れた水処理剤を提供することを主な目的とする。
本発明者は、鋭意検討した結果、アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合した混合溶液に酸化剤を混合することにより得られる水処理剤は、製造後一定時間経過後も、全塩素検出率が高く維持されると共に全塩素濃度中の遊離塩素の含有率も低く維持されることを見出した。すなわち、本発明者は、水系に添加したときに次亜臭素酸の効果が良好に発揮する一方で、薬剤の品質安定性に優れた水処理剤を得ることができ、本発明を完成させた。本発明は、以下の〔1〕〜〔8〕のとおりである。
〔1〕
アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合した混合溶液と、酸化剤と、を混合する、水処理剤の製造方法。
〔2〕
前記安定化剤が、スルファミン酸化合物である、前記〔1〕記載の水処理剤の製造方法。
〔3〕
前記酸化剤が、塩素系酸化剤である、前記〔1〕又は〔2〕記載の水処理剤の製造方法。
〔4〕
前記混合溶液のpHは、13以上である、前記〔1〕〜〔3〕の何れか記載の水処理剤の製造方法。
〔5〕
前記混合溶液は、前記臭化物塩として粉末臭化物塩を混合したものである、前記〔1〕〜〔4〕の何れか記載の水処理剤の製造方法。
〔6〕
アルカリ剤、クロラミン化合物、及び臭化物塩を含む水処理剤であり、
製造後のにおける全塩素検出率が95%以上かつ全塩素濃度中の遊離塩素含有率が0.05%(as Cl)以下である、水処理剤。
〔7〕
前記水処理剤が、アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合した混合溶液と、酸化剤と、を混合して得られる、前記〔6〕記載の水処理剤。
〔8〕
前記水処理剤のpHが13以上である、前記〔7〕記載の水処理剤。
本発明によれば、水系に添加したときに次亜臭素酸の効果が良好に発揮するとともに、薬剤の品質安定性に優れた水処理剤を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
実施例1、比較例1及び比較例2の各水処理剤について、各水処理剤が製造後一定時間経過したときの、各水処理剤中の全塩素検出率(%)の変化を示す。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が限定されて解釈されることはない。なお、前記の上限値と下限値は、所望により、任意に組み合わせることができる。
1.本発明の水処理剤及びその製造方法
本発明は、アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合した混合溶液と、酸化剤とを混合することを特徴とする、水処理剤の製造方法を提供することができる。アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合した混合溶液を得る際の、アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩の混合順序は、いずれが先でもよく、特に限定されない。
また、本発明は、アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合した混合溶液に、酸化剤を混合することにて得られる水処理剤を提供することができる。
また、アルカリ剤、クロラミン化合物、及び臭化物塩を含む水処理剤であり、製造後の全塩素検出率が一定以上に高い及び/又は全塩素濃度中の遊離塩素の含有率が一定以下に低い水処理剤を提供することができる。
これにより、本発明は、水系に添加したときに次亜臭素酸の効果が良好に発揮するとともに、薬剤の品質安定性に優れた水処理剤を提供することができる。
2.本発明の水処理剤の製造方法
本発明者は、特許文献1の殺生物剤の調製方法について検討を行った。具体的には、特許文献1では、次亜塩素酸塩及びスルファミン酸を、水酸化ナトリウム溶液中で混合し、少なくともpH11以上の次亜塩素酸塩溶液を調製し、その溶液に臭化ナトリウムを最後に混合して、安定化させた次亜臭素酸塩溶液を殺生物剤として得ている。
しかしながら、特許文献1の殺生物剤の調製方法で粉体の臭化ナトリウムを混合した場合、酸化力が高く、不安定な次亜臭素酸が生成することが分かった。このように次亜臭素酸の安定性が低くなることで、殺生物剤に含まれる有効成分の効果も低下する傾向がみられることに、本発明者は気づいた。この原因を本発明者は検証した結果、次亜塩素酸溶液に粉体の臭化ナトリウムを添加すると、粉体が溶解する際に溶液内の一部分で濃厚な臭化物溶液が生成される。この臭化物溶液の濃厚な部分が生成された際に共存した次亜塩素酸と反応することで不安定な次亜臭素酸が生成すると本発明者は考えた。
一方で、特許文献1の殺生物剤の調製方法で臭化ナトリウムに関し粉体ではなく液体にて添加する方法も本発明者は検討したが、臭化ナトリウムに水溶液として水を同時に添加する必要があるため、配合できる濃度が下がるという問題があることに本発明者は気づいた。
また、本発明者は、特許文献2の生物付着制御のための安定化臭素溶液の製造方法について検討を行った。具体的には、特許文献2では、臭化ナトリウム溶液と固体スルファミン酸塩を混合した後、次亜塩素酸ナトリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液を加えて、安定化臭素溶液を得ている。
この特許文献2の方法であれば、溶液を調製する際に溶液内の一部に濃厚な臭化物溶液が生成しないため、次亜臭素酸の生成は抑制できると本発明者は考えた。しかし、この特許文献2の方法では臭化ナトリウム及びスルファミン酸を含む水溶液に酸化剤を混合するため、これにより酸化剤のpHが低下する。酸化剤のpHが低下すると、酸化力の高い不安定な成分(例えばジクロロスルファミン酸やブロモクロロスルファミン酸等)が生成し、この不安定な成分のため、安定化臭素溶液に含まれる有効成分の効果が低下するという問題があることに本発明者は気がついた。
そして、本発明者はさらに鋭意検討した結果、アルカリ剤、安定化剤、臭化物塩及び酸化剤を使用して得られる水処理剤において、アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合した混合溶液に、酸化剤を混合することによって得られた水処理剤が、後記〔実施例〕に示すように、特許文献1及び特許文献2の水処理剤よりも、全塩素検出率、全塩素濃度及び全塩素濃度中の遊離塩素含有率の総合的な観点において優れていた。すなわち、このようにして得られた本発明の水処理剤は、水系に添加したときに次亜臭素酸の効果が良好に発揮するとともに、薬剤の品質安定性に優れていた。
従来は、特許文献1及び特許文献2に示すように、クロラミン化合物及び臭化物塩を含む水処理剤を製造する際に、臭化物塩を溶液に混合する順序を、最初にするか最後にするかに固執していた。これは、アルカリ剤−安定化剤−酸化剤から安定的なクロラミン化合物が得られるため、これら薬剤の混合を1まとまりの工程として見ていたためと考えられる。本発明者は、この従来の固執を突破することができたため、優れた本発明の水処理剤を得ることができ、見出された混合順序は従来技術からしても予測し得ないことである。
すなわち、本発明の水処理剤の製造方法は、アルカリ剤、安定化剤、臭化物塩を混合した混合溶液と、酸化剤とを混合することを特徴とする。しかも、本発明の水処理剤の製造方法では、長期間に亘り薬剤の品質を安定的に維持できる一液型水処理剤を得ることができるという利点がある。
<遊離塩素濃度、結合塩素濃度及び全塩素濃度の測定方法>
本発明において、遊離塩素濃度、結合塩素濃度および全塩素濃度は、JIS K 0400−33−10:1999に示される、N,N−ジエチル−1,4−フェニレンジアミンを用いるDPD法によりClの濃度として測定される。JIS K 0400−33−10:1999では、次の定義が与えられている。
すなわち、遊離塩素は次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン又は溶存塩素の形で存在する塩素とされている。結合塩素はクロロアミンおよび有機クロロアミンなどの形で存在する塩素とされており、上記遊離塩素に含まれないが、DPD法により測定される全塩素とされている。全塩素は遊離塩素、結合塩素又は両者の形で存在する塩素とされている。
<全塩素検出率(%)及び遊離塩素含有率(%)>
本発明において、「全塩素検出率(%)」とは、水処理剤中の有効成分である全塩素濃度の残存率(%)であり、「水処理剤中の全塩素濃度の実測値(% as Cl)/水処理剤中の全塩素濃度の論理値(% as Cl)」×100(%)で算出することができる。この全塩素濃度の論理値とは、製造時に酸化剤と安定化剤とを混合したときに、計算上、水処理剤中に形成される全塩素濃度の値である。
また、本発明において、「全塩素濃度中の遊離塩素の含有率(%(as Cl))」は、〔水処理剤中の遊離塩素濃度(% as Cl)/水処理剤中の全塩素濃度(% as Cl)〕×100%で算出することができる。
<臭化物(Br)測定方法>
本発明において、臭化物(Br)は、JIS-K0101 (1998) 28.4の方法を基に分析して濃度を測定する。
<pH測定方法>
本発明におけるpHは、常温25℃で一般的なpHメーター(例えば、(株)堀場製作所製「ポータブルpHメーターD−54(pH/mV(ORP)/COND/電気抵抗率/塩分/TDS)」又はその後継機種)で測定される値である。
2−1.原材料(アルカリ剤、安定化剤、臭化物塩及び酸化剤)
本発明の製造方法で原材料として用いる、アルカリ剤、安定化剤、臭化物塩及び酸化剤は以下のとおりである。
<2−1(a)アルカリ剤>
本発明で用いるアルカリ剤は、特に限定されないが、例えば、塩基性無機塩、塩基性有機塩等が挙げられる。
例えば、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム等)、塩酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カルシウム等)、塩水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等)等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
当該酸化物、塩水酸化物、炭酸塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のものが好適である。これらを適宜1種又は2種以上組み合わせてもよい。
前記アルカリ剤のうち、塩基性無機塩が好ましく、さらにこのうち塩水酸化物が、作業性及びコストの観点から、より好ましい。当該塩水酸化物のうち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が、より好ましく、水酸化ナトリウムが、コストの観点からさらに好ましい。
なお、水処理剤のpHを調整するための酸性剤は、特に限定されないが、例えば酸性無機塩、酸性有機塩等が挙げられる。例えば、クエン酸、リン酸、酒石酸、酢酸、硼酸、フタル酸、マレイン酸、コハク酸等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
<2−1(b)安定化剤>
本発明に用いる安定化剤は、特に限定されないが、酸化剤(好適には、無機系塩素剤)との反応により結合塩素剤を生成するような、塩素安定化剤が好適である。
前記塩素安定化剤としては、例えば、1級アミノ基を有する化合物、アンモニア、及びアンモニウム塩のいずれか(以下、これらを「NH系化合物」ともいう)等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
前記1級アミノ基を有する化合物として、特に限定されないが、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、スルファミン酸、スルファニル酸、スルファモイル安息香酸、アミノ酸等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
また、前記アンモニウム塩としては、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
さらに具体的な前記塩素安定化剤として、例えば、スルファミン酸化合物;イソシアヌル酸;5,5’−ジメチルヒダントイン等のヒダントイン類、尿素、ビウレット、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、アセトアミド、ニコチン酸アミド、メタンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド等のアミド化合物;マレイミド、コハク酸イミド、フタルイミド等のイミド化合物;グリシン、アラニン、ヒスチジン、リジン等のアミノ酸;メチルアミン、ヒドロキシルアミン、モルホリン、ピペラジン、イミダゾール、ヒスタミン等のアミン化合物;アンモニア;硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
前記塩素系安定化剤のうち、環境への負荷等の観点から、スルファミン酸化合物が好ましく、当該スルファミン酸化合物として、例えば、スルファミン酸、スルファミン酸誘導体、及びこれらの塩が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
前記塩素安定化剤(好適にはNH系化合物)の中でも、スルファミン酸(より好適には、NHSOOH)が好ましい。スルファミン酸を用いてモノクロロスルファミンを生成させると安定なクロラミン化合物となるので好ましい。
なお、前記スルファミン酸化合物としては、下記一般式[1]で表される化合物又はその塩が挙げられる。
(ただし、一般式[1]において、R及びRは、各々独立に、水素又は炭素数1〜8の炭化水素である。)
このようなスルファミン酸化合物として、例えば、RとRがともに水素であるスルファミン酸のほかに、N−メチルスルファミン酸、N,N−ジメチルスルファミン酸、N−フェニルスルファミン酸等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
また、前記スルファミン酸誘導体としては、例えば、N−メチルスルファミン酸、N,N−ジメチルスルファミン酸、N−フェニルスルファミン酸等が挙げられる。
前記安定化剤に用いられる化合物の塩として、特に限定されず、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩等の他の金属塩;アンモニウム塩及びグアニジン塩等のアミン塩やアミノ酸塩等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。このうち、アルカリ金属塩(好適には、ナトリウム)が、コストや取り扱い容易の観点から、好適である。
前記これら化合物の塩は、スルファミン酸化合物の塩として用いることができる。
本発明で用いられるスルファミン酸化合物として、例えば、スルファミン酸ナトリウム、スルファミン酸カリウム、スルファミン酸カルシウム、スルファミン酸ストロンチウム、スルファミン酸バリウム、スルファミン酸鉄、スルファミン酸亜鉛等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
本発明において、スルファミン酸及びこれらのスルファミン酸塩は、1種を単独で用いることもでき、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
前記安定化剤のうち、スルファミン酸塩が、より好適である。
<2−1(c)臭化物塩>
本発明に用いられる臭化物塩は、特に限定されず、例えば、臭化アルカリ金属塩、臭化アンモニウム塩、臭化水素酸及び臭化アミン塩等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
また、溶液に混合する際の臭化物塩の形態は、塩化物溶液の状態又は粉末塩化物塩の状態の何れでもよいが、有効成分の濃度を高める観点から、粉末臭化物を使用することが好適である。
前記臭化アルカリ金属塩として、特に限定されないが、例えば、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
前記臭化アミン塩(炭素数1〜6の直鎖、分岐鎖、環状のアルキル基又はアルケニル基)として、特に限定されないが、ジエチルアミン臭化水素、アリルアミン臭化水素、シクロヘキシルアミン臭化水素、モノメチルアミン臭化水素、ジメチルアミン臭化水素、トリメチルアミン臭化水素、ノルマル−ブチルアミン臭化水素、或いは、エチルアミン臭化水素等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
本発明の臭化物塩は、これらから適宜1種又は2種以上を選択することができ、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
<2−1(d)酸化剤>
本発明に用いられる酸化剤は、特に限定されないが、ハロゲン系酸化剤が好ましく、当該ハロゲン系酸化剤として、特に限定されないが、塩素系酸化剤が、好ましく、この塩素系酸化剤と塩素系安定化剤とからクロラミン化合物を得ることができる観点から好適である。
本発明で用いる塩素系酸化剤は、特に限定されないが、例えば、塩素ガス、二酸化塩素、次亜塩素酸又はその塩、亜塩素酸又はその塩、塩素酸又はその塩、過塩素酸又はその塩、塩素化イソシアヌル酸又はその塩等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
これらのうち、塩形のものの具体例としては、特に限定されないが、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等の次亜塩素酸アルカリ金属塩;次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸バリウム等の次亜塩素酸アルカリ土類金属塩;亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム等の亜塩素酸アルカリ金属塩;亜塩素酸バリウム等の亜塩素酸アルカリ土類金属塩;亜塩素酸ニッケル等の他の亜塩素酸金属塩;塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム等の塩素酸アルカリ金属塩;塩素酸カルシウム、塩素酸バリウム等の塩素酸アルカリ土類金属塩等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
前記塩素系酸化剤の中で、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、塩素ガスから選択される1種又は2種以上のものが好ましく、このうち次亜塩素酸塩が、取り扱いが容易な観点から、より好ましい。
2−2.本発明の水処理剤の製造方法
本発明の水処理薬剤の製造方法は、アルカリ剤、安定化剤、臭化物塩を混合した混合溶液(以下、「3薬剤混合溶液」ともいう)と、酸化剤と、を混合することを少なくとも行うことが好適である。さらに、3薬剤混合溶液に、酸化剤を添加し混合することがより好適である。当該酸化剤を混合することは、後述する<2−2−2.酸化剤混合工程>を参照にして行うことができる。
本発明の製造方法における第一の実施形態は、アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合した混合溶液に、酸化剤を混合する工程とを少なくとも含むことが、好適である。当該酸化剤を混合する工程は、後述する<2−2−2.酸化剤混合工程>と同様にして行うことができる。
前記3薬剤混合溶液は、予め調製されているものを使用してもよいし、同じ製造ラインにて又は別の製造ラインにて調製されたものを使用してもよい。3薬剤混合溶液は、例えば、後述する<2−2−1アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合した混合溶液を調製する工程>にて調製されたものを使用することができる。
水処理剤の品質安定性の観点から、3薬剤を混合した後、速やかにこの3薬剤混合液に酸化剤を混合して水処理剤を得ることが、より好ましい。
また、本発明の製造方法における第二の実施形態は、アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合した混合溶液を調製する工程と、当該3薬剤混合溶液に酸化剤を混合する工程とを含むことが、作業効率の観点から、また、水処理剤中の有効成分を調整しやすい観点から、より好適である。
本発明で用いる溶液の溶媒は、アルカリ剤、安定化剤、臭化物塩及び酸化剤を溶解させることができれば特に限定されないが、安全性、取扱性やコストの観点から、水が好ましい。当該水に他の溶媒が本発明の効果を損なわない範囲であれば含まれていてもよいが、溶媒中99%以上は水であることが好ましい。他の溶媒として、親水性有機溶媒等が挙げられ、当該親水性有機溶媒として、例えば、グリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール等)、グリコールエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等)、グライム類、ケトン類、エステル類(例えば、メチルアセテート等)、アルコール類(例えば、エタノール、アミノエタノール等)、酸アミド(例えば、N,N−ジメチルアセトアミド等)等が挙げられ、このうち、グリコール類、グリコールエーテル類、エステル類、アルコール類が好ましい。これらから、1種又は2種以上のものを使用してもよい。
本発明の製造方法において、溶媒(好適には水)の配合量は、特に限定されないが、水処理剤中に、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%になるように配合されることが好適である。
本発明の製造方法の製造条件は、公知の製造条件を参考にして行うことができ、例えば、バッチ又は連続プロセスで実施することができ、また温度も4〜40℃程度で実施することができる。
本発明の水処理剤の製造方法の一例について、以下に、本発明の第二の実施形態の製造方法を用いて説明するが、本発明の製造方法はこの説明に限定されない。また、本発明の製造方法は、3薬剤混合溶液の調製工程をスキップすることができる。
本発明の第二の実施形態の製造方法は、3薬剤混合溶液を調製する工程と、当該混合溶液に酸化剤を混合する工程とを含むものである。
2−2−1.アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合した混合溶液を調製する工程
本発明の製造における「アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合した混合溶液を調製する工程」(以下、「3薬剤混合溶液調製工程」ともいう)において、アルカリ剤、安定化剤、及び臭化物塩の各成分を混合する順序は、特に限定されない。
本発明の3薬剤混合液は、アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩の3薬剤を、同時期に又は別々に添加し混合して得ることができる。より具体的には、当該3薬剤を別々に順次添加してもよく、また、2薬剤を混合した後に残りの薬剤を混合してもよく、3薬剤を同時期に混合してもよい。
前記3薬剤を別々に順次添加するような場合、例えば、(1)アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩の順に、(2)アルカリ剤、臭化物塩及び安定化剤の順に、(3)安定化剤、臭化物塩及びアルカリ剤の順に、(4)安定化剤、アルカリ剤及び臭化物塩の順に、(5)臭化物塩、安定化剤及びアルカリ剤の順に、(6)臭化物塩、アルカリ剤及び安定化剤の順に、等が挙げられる。
本発明の3薬剤混合調製工程において、アルカリ剤を最初に溶液に混合することが好適である。後述のように、アルカリ剤で、溶液のpHをアルカリ領域に調整することができ、具体的には、好適には11以上、より好適には12以上、よりさらに好適には13以上である。溶液をアルカリ領域にすることで、この溶液に混合した各薬剤の品質安定性も良好である。
アルカリ領域に調整された溶液に、順次又は適宜薬剤を配合することで、優れた品質安定性を有する水処理剤を得ることができる。
また、本発明の3薬剤混合調製工程において、アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩の順に、又は、アルカリ剤、臭化物塩及び安定化剤の順に、混合することが、より好適である。
本発明の3薬剤混合溶液調製工程における処理温度は特に限定されず、当該工程は4〜40℃程度の温度条件下で行うことができる。また、当該3薬剤混合溶液調製工程における混合手段は、各薬剤と溶液とが混合できる公知の手段(例えば、撹拌手段等)を採用することができる。
前記調製された3薬剤混合溶液のpHは、本発明の水処理剤の薬剤の品質安定性の維持の観点から、前記アルカリ剤にて、前記3薬剤混合溶液のpHを調整することが望ましい。当該3薬剤混合溶液のpHは、より好適には10以上、さらに好適には11以上、よりさらに好適には12以上、より好適には13以上である。このように前記3薬剤混合溶液のpHを調整することにより、最終的に得られる本発明の水処理剤のpHをアルカリ領域にすることができ、これにより本発明の水処理剤の有効成分の効果を良好に発揮させることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、水処理剤のpHを調整するために、適宜アルカリ剤を添加してもよい。
また、前記調製された3薬剤混合溶液中に含まれる安定化剤及び臭化物塩の各濃度は、本発明の水処理剤の薬剤の品質安定性の維持の観点から、下記のような配合量によって調整することができる。
前記3薬剤混合溶液の調製に用いられる安定化剤(好適は塩素系安定化剤)の配合量は、特に限定されず、前記3薬剤混合溶液中に、好ましくは5〜80%、より好ましくは10〜70%、さらに好ましくは16〜60%である。
前記3薬剤混合溶液の調製に用いられる安定化剤(好適には塩素系安定化剤)の配合量は、特に限定されない。酸化剤が無機系塩素剤の場合には、これらにおける十分な反応性の観点から、無機系塩素剤に含まれる酸化成分1モルに対して1〜5モルであることが好ましく、より好ましくは1〜4モル、さらに好ましくは1.2〜3モルである。これにより、一液型水処理剤であっても有効成分を良好に維持することができる。
前記3薬剤混合溶液の調製に用いられる臭化物塩の配合量は、特に限定されず、前記3薬剤混合溶液中に、好ましくは3〜50%、より好ましくは6〜40%、さらに好ましくは12〜30%である。
2−2−2.酸化剤混合工程
本発明の製造における「前記3薬剤混合溶液に、酸化剤を混合する工程」(以下、「酸化剤混合工程」ともいう)において、前記工程で調製されたアルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合した溶液に、酸化剤を混合する。これにより、4薬剤混合溶液を得ることができる。
そして、4薬剤を混合したときに安定化剤及び酸化剤が反応してハロアミン化合物(好適には、クロラミン化合物)が生成され、アルカリ領域下で、ハロアミン化合物(好適には、クロラミン化合物)及び臭化物塩を含む水処理剤を調製することができる。
前記3薬剤混合溶液に混合する際の酸化剤の配合量は、特に限定されず、前記4薬剤混合溶液中に、好ましくは20〜55%、より好ましくは30〜55%、さらに好ましくは40〜50%である。
また、前記3薬剤混合溶液と酸化剤との混合質量割合は、特に限定されないが、3薬剤混合溶液 1に対して、酸化剤は0.5〜1.5が好ましく、0.7〜1.3がより好ましい。
本発明の製造方法で得られた水処理剤は、水系に添加したときに次亜臭素酸の効果が良好に発揮するとともに、薬剤の品質安定性に優れたものである。さらに、当該製造方法で得られた一液型薬剤は、この一液型の状態で長期間保管しても目的の効果を発揮することができ、一定の品質を維持することができる。
本発明の製造方法にて得られた水処理剤は、アルカリ剤、ハロアミン化合物(好適には、クロラミン化合物)、及び臭化物塩を含むものであり、当該水処理剤は、製造後の全塩素検出率(%)が95%以上及び/又は遊離塩素濃度が全塩素濃度中の0.05%(as Cl)以下で長期間維持されるものが、製造後の有効成分濃度が低下が抑制されていることとなり、好適である。
本発明の水処理剤中の安定化剤の含有量は、その下限値として、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは8%以上に、また、その上限値として、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、さらに好ましくは30%以下に、なるように調整されており、より好適な数値範囲は、より好ましくは5〜35%、さらに好ましくは8〜30%である。
本発明の水処理剤中の臭化物塩の含有量は、その下限値として、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは6%以上に、また、その上限値として、好ましくは25以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下に、なるように調整されており、より好適な数値範囲は、より好ましくは3〜20%、さらに好ましくは6〜15%である。
本発明の水処理剤中の酸化剤の含有量は、その下限値として、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上に、また、その上限値として、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下、さらに好ましくは50%以下に、なるように調整されており、より好適な数値範囲として、より好ましくは30〜55%、さらに好ましくは40〜50%である。
前記水処理剤中の「全塩素検出率(%)」は、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上であり、よりさらに好ましくは97.5%以上である。
前記水処理剤中の「全塩素濃度中の遊離塩素の含有率(%(as Cl))」は、より好ましくは0.05%以下であり、さらに好ましくは0.04%以下である。
前記水処理剤を使用したときの「全塩素濃度(% as Cl)」は、より好ましくは4.1%以上、さらに好ましくは4.2%以上であり、よりさらに好ましくは4.3%以上である。本発明の製造方法であれば、水処理剤における全塩素濃度(% as Cl)は4.4%〜4.7%まで高めるように製造可能と考えるので、この上限値として、4.7%以下、4.6%以下、4.5%以下、又は4.4%以下のものを得ることができる。
また、本発明の水処理剤中の、全塩素検出率(%)、全塩素濃度(% as Cl)、及び全塩素濃度中の遊離塩素の含有率は、有効成分の分解を少なくして効率よく水系に添加する観点の場合には、好ましくは製造後〜4時間保存したときであり、より好ましくは製造後〜1時間保存したときの濃度である。本発明の水処理剤は、製造後0時間と直ちに使用しなくとも、製造後も4時間程度までは全塩素検出率や全塩素濃度が高く安定的である。このため、水系の添加現場の直近に水処理剤の製造装置を設置しなくとも、搬送等の対応も可能になる。また、本発明の製造方法にて得られた水処理剤であれば、製造後〜3ヶ月程度は、水処理剤中の全塩素検出率(%)や全塩素濃度(% as Cl)の急激な減少を抑制することができ、また、全塩素濃度中の遊離塩素濃度の急激な増加を抑制することができる。
また、本発明の水処理剤を製造後保存するときの保存条件は、特に限定されないが、常温保存、又は常温暗所保存が好ましく、より好ましくは4〜40℃程度での温度管理である。
また、本発明の製造方法にて得られる本発明の水処理剤は、4〜40℃程度の常温で市場流通可能であり、長期間(例えば製造後〜3ヶ月程度)に亘り常温保管しても有効成分の濃度の低下を抑制することができる。また、本発明の水処理剤は、製造工程において混合中に濃厚な臭化物溶液を生成させないことができる、これにより、得られた水処理剤中に次亜塩素酸が生成するのを抑制し、有効成分濃度の低下を少なくすることができ、このようにして品質的に安定的な製品を提供することができる。
本技術の製造方法で得られた水処理剤は、特許文献1の水処理剤又は特許文献2の水処理剤と比較して、製造後の全塩素濃度が高くかつ遊離塩素濃度が同等程度以下に低いものであり、目的の効果が良好に発揮できると共に薬剤の品質安定性にも優れている。
なお、薬剤の品質安定性とは、薬剤を一定期間保管したときに、薬剤中の有効成分が分解されにくく、有効成分濃度がある程度の範囲内で維持されていることをいう。より具体的には、薬剤中で、次亜塩素酸が生成されにくく、かつ有効成分濃度の低下が少ないことが望ましい。
本発明の水処理剤において、前記クロラミン化合物と臭化物塩のモル比を調整することが好ましく、前記クロラミン化合物と臭化物塩のモル比は、クロラミン化合物を1としたときに、好適には1:0.05〜3.0、より好適には1:0.1〜1.5、さらに好適には1:0.1〜1.0、よりさらに好適には1:0.2〜1.0である。なお、本発明の水処理剤の製造方法において、このモル比になるように、適宜調整してもよい。
本発明の水処理剤は、薬剤の品質安定性に優れており、水系に添加したときに薬剤中のアルカリ剤、ハロアミン化合物(好適にはクロラミン化合物)及び臭化物塩に基づき、次亜塩素酸の効果が良好に発揮することができる。そして、本発明の水処理剤は、水系中で次亜臭素酸を経時的に徐々に生成させることができるので、水系における次亜臭素酸の効果をより長期間に亘りより持続的に維持することができる。
本発明の水処理剤の別の側面として、一液型の剤でありながら、徐放性の水処理剤としても使用可能である。水系内で次亜臭素酸が急激に放出されると水系内の腐食又は劣化に繋がり易いが、本発明の水処理剤は次亜臭素酸の発生速度を緩やかになるように制御できるので、水系内の腐食又は劣化を低減することができると共に、長期間に亘り持続的に次亜臭素酸に起因する効果(例えば、除菌作用等)を得ることができる。このため、本発明の水処理剤は、冷却水系や蓄熱水系、集塵水系、スクラバー水系等を有する開放循環式装置等に適用することがより有益である。
2−3.任意成分
本発明の水処理剤の製造工程の何れかにおいて、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分としての任意の薬剤を混合することができる。
任意の薬剤として、例えば、防食剤(腐食抑制剤)、スケール防止剤、スライムコントロール剤、水等の溶媒又は分散媒体、分散剤酵素、殺菌剤及び消泡剤等が挙げられるが、これに限定されるものではなく、また一般的に水処理に使用できる各種薬剤を使用してもよい。これらから1種又は2種以上を適宜選択することができる。
<防食剤(腐食抑制剤)>
防食剤(腐食抑制剤)として、特に限定されないが、冷却水系用の防食剤が好適である。例えば、カルボキシル基ポリマー等のポリマー;ベンゾトリアゾールやトリルトリアゾール等のアゾール類が好適である。
前記カルボキシル基ポリマーの種類として、特に限定されないが、カルボキシル基を有する水溶性ホモポリマー及び/又はコポリマー等が挙げられ、さらに具体的には、例えば、マレイン酸系重合体、(メタ)アクリル酸系重合体が挙げられる。なお、当該「重合体」には、モノポリマー及びコポリマーを含む意味である。
前記カルボキシル基ポリマーとして、より具体的には、例えば、ホモマレイン酸重合体、ホモ(メタ)アクリル酸重合体、マレイン酸又は(メタ)アクリルと共重合可能な不飽和単量体との共重合体等が挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明におけるカルボキシル基ポリマーは、マレイン酸系重合体及び/又は(メタ)アクリル酸系重合体を含むものが好適である。当該カルボキシル基ポリマー中の、マレイン酸系重合体及び/又は(メタ)アクリル酸系重合体の含有割合(含有量)は、好適には50質量%以上、より好適には80質量%以上、さらに好適には90質量%以上であり、より好適には95質量%以上、さらに好適には99質量%以上であり、カルボキシル基ポリマー中の含有割合が高い方が、本発明の期待する効果を得やすい。
また、マレイン酸又は(メタ)アクリルの単量体と共重合可能な不飽和単量体として、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリロキシ−1−プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ヘキセン、2−エチルヘキセン、ペンテン、イソペンテン、オクテン、イソオクテン、ビニルアルコール、ビニルメチルエーテル、及びビニルエチルエーテル等及びそれらの塩等が挙げられる。
これらから選ばれる1種又は2種以上の単量体を用いて得られた、ホモポリマー、コポリマー、及び前記単量体とイソブチレンとのコポリマー等から選ばれる1種又は2種以上のポリマーが挙げられる。
前記カルボキシル基ポリマーは、防食作用等の薬剤効果を期待する場合、重量平均分子量が、10の3乗オーダー〜4乗オーダーであることが好ましく、より具体的には200〜50,000の範囲にあるものが好ましく、500〜30,000の範囲にあるものがより好ましく、800〜30,000の範囲にあるものがさらに好ましく、より好ましくは1,000〜20,000である。
<水溶性ポリマーの重量平均分子量の測定方法>
水溶性ポリマーの重量平均分子量は、標準ポリスチレンを標準物質として、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析により、測定する(例えば、参考文献1:特開2014−140056号公報等参照)。
<スケール防止剤>
スケール防止剤としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基ポリマー;リン酸系スケール防止剤及び/又はホスホン酸系スケール防止剤等が知られている。
前記スケール防止剤としては、例えば、オルトリン酸、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、2−ホスホノ−1,2,4−トリカルボキシブタン、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、及びアミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(別称:1−ヒドロキシエタン−1,1−ジイルビスホスホン酸、HEDP)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(PBTC)等等が挙げられるがさらに好ましい。
本発明の水処理剤中の防食剤及び/又はスケール防止剤の含有量は、特に限定されないが、0.5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がさらに好ましい。
3.本発明の水処理剤の使用方法、及び当該水処理剤を使用する水処理方法
本発明の水処理剤は、上述のとおり、次亜臭素酸の効果(例えば、除菌作用、スライムコントロール作用等)を期待して、例えば、スライムコントロール用、防食用又はスケール防止用等の少なくともいずれかとして使用することができる。
本発明は、本発明の水処理剤の使用又は使用方法を提供することができ、当該使用目的として、例えば、水系における水処理、水系内の殺菌方法、水系内のスライムコントロール方法、水系内の防食方法、又は水系内の膜スケール防止方法等が挙げられる。
また、本発明は、本発明の水処理剤を水系に添加する、水処理方法、殺菌方法、スライムコントロール方法、防食方法、又はスケール防止方法を提供することもできる。なお、上述の本発明の水処理剤で説明した構成と重複する構成については適宜省略する。
本発明の方法における水系のpHは、経時的安定性の観点から、アルカリ領域であり、より好適には7〜10、さらに好適には8〜9である。また、水系の水温は特に限定されず、通常4〜40℃程度が挙げられる。
本発明の水処理剤の水系への添加量は、特に限定されず、処理対象の各種水系に応じて適宜調整されるが、通常、処理対象の各水系に対して、濃度1〜1000mg/Lで連続添加又は間欠添加されることが、好ましい。
水系における薬剤又は各成分の添加時期は、特に限定されず、同時期に又は別々に添加してもよい。及び/又は、水系における薬剤又は各成分の添加場所は、特に限定されず、同一場所又は異なる場所に添加してもよい。
例えば、膜に対するスライムコントロール又はスケール防止の使用目的の場合、膜処理の前に薬剤を添加することが好ましい。また、水系内の配管等に対するスライムコントロール又は殺菌、防食であれば、水系のいずれの時期、いずれの場所であっても、本発明の効果を得ることができる。
本発明の対象は、冷却水系であることが好適であり、好適には、当該冷却水系が、冷却槽、冷却塔、熱交換器等の金属又は金属管を備える冷却水系であることがより好適である。
本技術は、以下の構成を採用することも可能である。
〔1〕
アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合した混合溶液と、酸化剤と、を混合することを特徴とする、水処理剤の製造方法。好適には、当該混合液に、酸化剤を添加し混合する。
〔2〕
前記安定化剤が、スルファミン酸化合物である、前記〔1〕記載の水処理剤の製造方法。好適には、当該スルファミン酸化合物は、前記一般式[1]で表される化合物又はその塩である。このうち、スルファミン酸又はその塩が、より好適である。
〔3〕
前記酸化剤が、塩素系酸化剤である、前記〔1〕又は〔2〕記載の水処理剤の製造方法。前記塩素系酸化剤は、好適には、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、及び塩素ガスから選択される1種又は2種以上のものである。
〔4〕
前記混合溶液のpHは、12以上(好適には13以上)である、〔1〕〜〔3〕の何れか記載の水処理剤の製造方法。前記酸化剤を混合するときに、前記混合溶液のpHが調整されていることが好適である。
〔5〕
前記混合溶液は、前記臭化物塩として粉末臭化物塩を混合したものである、前記〔1〕〜〔4〕の何れか記載の水処理剤の製造方法。
〔6〕
前記アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合溶液は、アルカリ剤を溶液に混合した後に、次いで、安定化剤及び/又は臭化物塩を同時期に又は別々に混合して得られたものである、前記〔1〕〜〔5〕の何れか記載の水処理剤の製造方法。
〔7〕
前記水処理剤中にクロラミン化合物と臭化物塩のモル比が、クロラミン化合物を1としたときに、1:0.05〜3.0になるように調整する、前記〔1〕〜〔6〕の何れか記載の水処理剤の製造方法。
〔8〕
前記〔1〕〜〔7〕の何れか記載の水処理剤の製造方法にて得られる、水処理剤。好適には、当該水処理剤が、アルカリ剤、ハロアミン化合物(好適にはクロラミン化合物)、及び臭化物塩を含むものである。
〔9〕
アルカリ剤、クロラミン化合物、及び臭化物塩を含む水処理剤であり、
製造後における全塩素検出率が95%以上かつ全塩素濃度中の遊離塩素含有率が0.05%(as Cl)以下である、水処理剤。さらに、製造後における全塩素濃度が、4.1%(as Cl)以上であることが好適である。
〔10〕
前記水処理剤が、アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合した混合溶液と、酸化剤と、を混合して得られる、前記〔9〕記載の水処理剤。
〔11〕
前記水処理剤のpHが13以上である、前記〔8〕〜〔10〕のいずれか記載の水処理剤。
〔12〕
前記水処理剤が、次亜臭素酸の徐放性製剤である、前記〔8〕〜〔11〕のいずれか記載の水処理剤。
〔13〕
さらに、防腐剤及び/又はスケール防止剤を含む、前記〔8〕〜〔12〕のいずれか記載の水処理剤。好適には、防腐剤及び/又はスケール防止剤を、0.5〜30質量%含むものである。
〔14〕
前記〔1〕〜〔7〕のいずれか記載の水処理剤の製造方法にて得られた水処理剤又は、前記〔8〕〜〔13〕のいずれか記載の水処理剤を、を水系に添加する、水処理方法、殺菌方法、スライムコントロール方法、防食方法、又はスケール防止方法。
好適には、冷却水系や蓄熱水系、集塵水系、スクラバー水系等を有する開放循環式装置等に適用することである。
好適には、前記水処理剤を、処理対象の各水系に対して、濃度1〜1000mg/Lで連続添加又は間欠添加する。
以下の実施例及び比較例を挙げて、本発明の実施形態について説明をする。なお、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
各〔試験例〕において使用した各測定方法について下記に示す。
<全酸化剤濃度>: クロラミン、次亜塩素酸、次亜臭素酸の合計をDPD total試薬で測定した。全酸化剤濃度は塩素で換算し、mg/L,as Clで示す。
<次亜臭素酸>: 遊離塩素をグリシンと反応させた後、残った次亜臭素酸をDPDfree試薬で測定した。次亜臭素酸濃度は塩素で換算し、mg/L,as Clで示す。
なお、本発明で用いるDPD法は、JIS K 0400−33−10:1999 N,N−ジエチル−1,4−フェニレンジアミンを用いるDPD法に準じて行う。
〔試験例:実施例1、比較例1及び2〕
本試験において、表1に示す混合順序にて、表1の各成分を水(10〜20℃程度)に配合し、各一液型水処理剤を調製した。
このとき、製造直後(0時間)の水処理剤中、水20質量%(残余)、スルファミン酸ナトリウム10質量%、臭化ナトリウム5質量%、pH14になるように、表1に示す各成分を配合した。アルカリ剤として水酸化ナトリウム、臭化ナトリウムとして粉末臭化ナトリウムを使用した。次亜塩素酸ナトリウムは、スルファミン酸(遊離型)1.5モルに対し、次亜塩素酸(遊離型)1モルになるように使用した。
また、実施例1、比較例1及び2において、スルファミン酸ナトリウムと、次亜塩素酸ナトリウムとを混合したとき、計算上、生成される水処理剤中の全塩素濃度(%)(as Cl)の論理値は、4.4%である。表3及び図1に示す実施例1、比較例1及び2の各「全塩素検出率(%)」とは、「水処理剤中の全塩素濃度の実測値(% as Cl)/水処理剤中の全塩素濃度の論理値(% as Cl)」×100(%)で算出した。
実施例1の水処理剤の製造方法について;
水1.0Lに、水酸化ナトリウム500gを添加し混合し、pH14以上とし、アルカリ剤混合水溶液を得た。
このアルカリ剤混合水溶液に、スルファミン酸ナトリウム400g次いで粉末臭化ナトリウム250gを添加し混合し、3薬剤混合水溶液を得た。
この3薬剤混合水溶液に、次亜塩素酸ナトリウム2000gを添加し混合し、水処理剤を得た。次亜塩素酸(遊離型)1モルに対し、スルファミン酸(遊離型)1.5モルなるように、次亜塩素酸ナトリウムを添加し調製した。
なお、スルファミン酸ナトリウムは東京化成工業社製、粉末臭化ナトリウムは東京化成工業社製、次亜塩素酸ナトリウムは日本軽金属社製を使用した。
一液型水処理剤中の各成分の濃度は上述のとおりである。
また、「全塩素濃度中の遊離塩素の含有率(%)」は、〔水処理剤中の遊離塩素濃度(% as Cl)/水処理剤中の全塩素濃度(% as Cl)〕×100(%)で算出した。
また、実施例2の水処理剤として、3薬剤混合水溶液調製の際に、スルファミン酸ナトリウム及び粉末臭化ナトリウムの添加順序を変更した。すなわち、アルカリ剤混合水溶液に、次いで粉末臭化ナトリウム次いでスルファミン酸ナトリウムを添加し混合し、3薬剤混合水溶液を調製した。製造後4時間経過後、実施例2の水処理剤中の全塩素濃度4.3(% as CL)、及び当該全塩素濃度中の遊離塩素の含有率0.04(% as CL)であった。よって、実施例2の水処理剤は、実施例1の水処理剤の品質安定性と実質同じ程度の品質安定性を有していた。
各水処理剤(実施例1、比較例1及び2)について、製造後から一定時間、水溶液の温度15〜25℃程度で、保管した。製造後からの経過時間(1、2、3、4hr)ごとに、各水処理剤中の全塩素濃度及び遊離塩素について、測定を行い、その結果を、表2に示した。
表1〜3中の実施例1に示すように、臭化物塩以外の薬剤を混合した混合溶液を調製し、その混合溶液に、臭化物塩を添加し混合して、クロラミン化合物+臭化イオンを含む一液型水処理剤を得ることができ、このような製造手順にて、水系に添加したときに次亜臭素酸の効果が良好に発揮する一方で、薬剤の品質安定性に優れた水処理剤を得ることができた。
具体的には、実施例1の水処理剤は、製造後4時間経過したときに全塩素検出率(%)は約98%及び全塩素濃度(% as Cl)は4.3%で横ばいとなり、全塩素濃度中の遊離塩素含有率も0.04%で横ばいとなっていた。この横ばい状態になることで、水処理剤中の有効成分が安定的な状態になっていると考えられることから、この安定的な状態は数週間以上は持続すると考えられる。
一方で、比較例2の水処理剤は、製造後4時間経過しても全塩素濃度の減少が依然続いており、全塩素検出率60%及び全塩素濃度(% as Cl)2.8%をその後大きく下回るであろうと考えられる。また、比較例1の水処理剤は、製造後4時間経過後、全塩素検出率約93%及び全塩素濃度(% as Cl)4.1%で横ばいとなり、全塩素濃度中の遊離塩素含有率も0.05%で横ばい状態となっていた。
製造後1時間と製造後4時間経過したときの実施例1の水処理剤の全塩素検出率のロスは約3%であったが、比較例1の水処理剤の全塩素検出率は約7%であった。実施例1の水処理剤中の全塩素濃度のロス率と、比較例1の水処理剤の全塩素濃度のロス率とを比較したときに、実施例1の水処理剤は、ロス率を半分以下に抑えることができ、かつ、実質100%に近い状態を維持することができたので、非常に品質安定性に優れているといえる。
このように、本発明の水処理剤は、有効成分を高く維持できるため、水系に添加したときに次亜臭素酸の効果が良好に発揮するとともに、薬剤の品質安定性に優れているといえる。
また、2時間経過後における比較例1の水処理剤の全塩素濃度(% as Cl)4.1%以下であるが、本発明の水処理剤の全塩素濃度(% as Cl)は、2時間経過しても少なくとも4.2%以上を維持しており、本発明の製造方法で得られた水処理剤は、新規な水処理剤といえる。
このような手順にて製造される本発明の水処理剤は、薬剤の品質安定性に優れ、有効成分の減少を非常に抑制できているので、水系に添加したときに次亜臭素酸が高濃度で発生することができる。よって、本発明の水処理剤は、他の水処理剤と比較しても、水系に添加したときに次亜臭素酸をより高濃度に生成することができ、すなわち、次亜臭素酸の効果を良好に発揮させることができる。よって、本発明の水処理剤は、高い殺菌効果や高いスライム防止効果等の次亜臭素酸の効果をより発揮させることができる。
また、本発明の水処理剤は、特殊な装置や別の薬剤を配合してこのような作用効果を発現させたのではなく、各成分の混合手順をデザインすることで、このような優れた効果を発揮させることができた。すなわち、このようにして導きだされたの本発明の製造方法及び当該製造方法にて得られた水処理剤は、低コスト化、作業効率化、品質安定向上ができたものであり、このような観点からも、本発明は予測し得ない構成及びそれによる予測し得ない効果を見出したといえる。

Claims (2)

  1. アルカリ剤、安定化剤及び臭化物塩を混合した混合溶液と、酸化剤と、を混合する、水処理剤の製造方法であり、
    前記混合溶液は、前記アルカリ剤でpH13以上に調整した水溶液に、前記安定化剤及び前記臭化物塩を混合し、調製されるものであり、
    前記酸化剤1モルに対し、前記安定化剤1.2〜3モルの配合であり、
    前記安定化剤が、スルファミン酸化合物であり、
    前記酸化剤が、次亜塩素酸又はその塩であり、
    前記水処理剤のpHが13以上である、
    水処理剤の製造方法。
  2. 前記混合溶液は、前記臭化物塩として粉末臭化物塩を混合したものである、請求項1に記載の水処理剤の製造方法。
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