以下に、図1と図2とを用いて、本発明の第一実施形態に係るクレーン1について説明する。なお、本実施形態においては、クレーン1として移動式クレーン(ラフテレーンクレーン)について説明を行うが、トラッククレーン等でもよい。
図1に示すように、クレーン1は、不特定の場所に移動可能な移動式クレーンである。クレーン1は、車両2、クレーン装置6を有する。
車両2は、クレーン装置6を搬送するものである。車両2は、複数の車輪3を有し、エンジン4を動力源として走行する。車両2には、アウトリガ5が設けられている。アウトリガ5は、車両2の幅方向両側に油圧によって延伸可能な張り出しビームと地面に垂直な方向に延伸可能な油圧式のジャッキシリンダとから構成されている。車両2は、アウトリガ5を車両2の幅方向に延伸させるとともにジャッキシリンダを接地させることにより、クレーン1の作業可能範囲を広げることができる。
クレーン装置6は、吊り荷Wをワイヤロープによって吊り上げるものである。クレーン装置6は、旋回台7、伸縮ブーム9、ジブ9a、メインフックブロック10、サブフックブロック11、起伏用油圧シリンダ12、メインウインチ13、メインワイヤロープ14、サブウインチ15、サブワイヤロープ16、キャビン17等を具備する。
旋回台7は、クレーン装置6を旋回可能に構成するものである。旋回台7は、円環状の軸受を介して車両2のフレーム上に設けられる。旋回台7は、円環状の軸受の中心を回転中心として回転自在に構成されている。旋回台7には、アクチュエータである油圧式の旋回用油圧モータ8が設けられている。旋回台7は、旋回用油圧モータ8によって一方向と他方向とに旋回可能に構成されている。
アクチュエータである旋回用油圧モータ8は、電磁比例切換弁である旋回用操作弁23(図2参照)によって回転操作される。旋回用操作弁23は、旋回用油圧モータ8に供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。つまり、旋回台7は、旋回用操作弁23によって回転操作される旋回用油圧モータ8を介して任意の旋回速度に制御可能に構成されている。旋回台7には、旋回台7の旋回位置(角度)と旋回速度とを検出する旋回用エンコーダ27(図2参照)が設けられている。
伸縮ブーム9は、吊り荷Wを吊り上げ可能な状態にワイヤロープを支持するものである。伸縮ブーム9は、複数のブーム部材から構成されている。伸縮ブーム9は、各ブーム部材をアクチュエータである伸縮用油圧シリンダ(図示しない)で移動させることで軸方向に伸縮自在に構成されている。伸縮ブーム9は、ベースブーム部材の基端が旋回台7の略中央に揺動自在に設けられている。
アクチュエータである図示しない伸縮用油圧シリンダは、電磁比例切換弁である伸縮用操作弁24(図2参照)によって伸縮操作される。伸縮用操作弁24は、伸縮用油圧シリンダに供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。つまり、伸縮ブーム9は、伸縮用操作弁24によって任意のブーム長さに制御可能に構成されている。伸縮ブーム9には、伸縮ブーム9の伸縮量を検出するブーム長検出センサ28と、吊り荷Wの重量Wtを検出する重量センサ29(図2参照)とが設けられている。
ジブ9aは、クレーン装置6の揚程や作業半径を拡大するものである。ジブ9aは、伸縮ブーム9のベースブーム部材に設けられたジブ支持部によってベースブーム部材に沿った姿勢で保持されている。ジブ9aの基端は、トップブーム部材のジブ支持部に連結可能に構成されている。
メインフックブロック10とサブフックブロック11とは、吊り荷Wを吊るものである。メインフックブロック10には、メインワイヤロープ14が巻き掛けられる複数のフックシーブと、吊り荷Wを吊るメインフックとが設けられている。サブフックブロック11には、吊り荷Wを吊るサブフックが設けられている。
アクチュエータである起伏用油圧シリンダ12は、伸縮ブーム9を起立および倒伏させ、伸縮ブーム9の姿勢を保持するものである。起伏用油圧シリンダ12はシリンダ部とロッド部とから構成されている。起伏用油圧シリンダ12は、シリンダ部の端部が旋回台7に揺動自在に連結され、ロッド部の端部が伸縮ブーム9のベースブーム部材に揺動自在に連結されている。
アクチュエータである起伏用油圧シリンダ12は、電磁比例切換弁である起伏用操作弁25(図2参照)によって伸縮操作される。起伏用操作弁25は、起伏用油圧シリンダ12に供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。つまり、伸縮ブーム9は、起伏用操作弁25によって任意の起伏速度に制御可能に構成されている。伸縮ブーム9には、伸縮ブーム9の起伏角度を検出する起伏用エンコーダ30(図2参照)が設けられている。
メインウインチ13とサブウインチ15とは、メインワイヤロープ14とサブワイヤロープ16との繰り入れ(巻き上げ)および繰り出し(巻き下げ)を行うものである。メインウインチ13は、メインワイヤロープ14が巻きつけられるメインドラムがアクチュエータである図示しないメイン用油圧モータによって回転され、サブウインチ15は、サブワイヤロープ16が巻きつけられるサブドラムがアクチュエータである図示しないサブ用油圧モータによって回転されるように構成されている。
アクチュエータであるメイン用油圧モータは、電磁比例切換弁であるメイン用操作弁26m(図2参照)によって回転操作される。メイン用操作弁26mは、メイン用油圧モータに供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。つまり、メインウインチ13は、メイン用操作弁26mによって任意の繰り入れおよび繰り出し速度に制御可能に構成されている。同様に、サブウインチ15は、電磁比例切換弁であるサブ用操作弁26s(図2参照)によって任意の繰り入れおよび繰り出し速度に制御可能に構成されている。メインウインチ13には、メイン繰出長検出センサ31が設けられている。同様に、サブウインチ15には、サブ繰出長検出センサ32が設けられている。
キャビン17は、操縦席を覆うものである。キャビン17は、旋回台7に搭載されている。図示しない操縦席が設けられている。操縦席には、車両2を走行操作するための操作具やクレーン装置6を操作するための旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21、サブドラム操作具22等が設けられている(図2参照)。旋回操作具18は、旋回用操作弁23を操作することで旋回用油圧モータ8を制御することができる。起伏操作具19は、起伏用操作弁25を操作することで起伏用油圧シリンダ12を制御することができる。伸縮操作具20は、伸縮用操作弁24を操作することで伸縮用油圧シリンダを制御することができる。メインドラム操作具21はメイン用操作弁26mを操作することでメイン用油圧モータを制御することができる。サブドラム操作具22は、サブ用操作弁26sを操作することでサブ用油圧モータを制御することができる。
このように構成されるクレーン1は、車両2を走行させることで任意の位置にクレーン装置6を移動させることができる。また、クレーン1は、起伏操作具19の操作によって起伏用油圧シリンダ12で伸縮ブーム9を任意の起伏角度に起立させて、伸縮操作具20の操作によって伸縮ブーム9を任意のブーム長さに延伸させたりすることでクレーン装置6の揚程や作業半径を拡大することができる。また、クレーン1は、サブドラム操作具22等によって吊り荷Wを吊り上げて、旋回操作具18の操作によって旋回台7を旋回させることで吊り荷Wを搬送することができる。
図2に示すように、制御装置33は、各操作弁を介してクレーン1のアクチュエータを制御するものである。制御装置33は、制御信号生成部33a、共振周波数算出部33b、フィルタ部33c、フィルタ係数算出部33dを具備する。制御装置33は、キャビン17内に設けられている。制御装置33は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置33は、制御信号生成部33a、共振周波数算出部33b、フィルタ部33c、フィルタ係数算出部33dの動作を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。
制御信号生成部33aは、制御装置33の一部であり、各アクチュエータの速度指令である制御信号を生成するものである。制御信号生成部33aは、旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21、サブドラム操作具22等から各操作具の操作量を取得し、旋回操作具18の制御信号C(1)、起伏操作具19の制御信号C(2)・・制御信号C(n)(以下、単にまとめて「制御信号C(n)」と記し、nは任意の数とする)を生成するように構成されている。また、制御信号生成部33aは、伸縮ブーム9が作業領域の規制範囲に近接した場合や特定の指令を取得した場合に操作具の操作(手動制御)によらない自動制御(例えば自動停止や自動搬送等)を行う制御信号C(na)や、任意の操作具の緊急停止操作に基づいて緊急停止制御を行う制御信号C(ne)を生成するように構成されている。
共振周波数算出部33bは、制御装置33の一部であり、メインワイヤロープ14またはサブワイヤロープ16に吊り下げられた吊り荷Wを単振り子として、その共振周波数ωx(n)を算出するものである。共振周波数算出部33bは、フィルタ係数算出部33dが取得する伸縮ブーム9の起伏角度を取得し、メイン繰出長検出センサ31またはサブ繰出長検出センサ32から対応するメインワイヤロープ14またはサブワイヤロープ16の繰り出し量を取得し、メインフックブロック10を使用している場合に図示しない安全装置からメインフックブロック10の掛け数を取得する。
さらに、共振周波数算出部33bは、取得した伸縮ブーム9の起伏角度、メインワイヤロープ14またはサブワイヤロープ16の繰り出し量、メインフックブロック10を使用している場合のメインフックブロック10の掛け数から、メインワイヤロープ14とサブワイヤロープ16において、シーブからメインワイヤロープ14が離間する位置(吊り下げ位置)からフックブロックまでのメインワイヤロープ14の吊り下げ長さLm(n)、またはシーブからサブワイヤロープ16が離間する位置(吊り下げ位置)からフックブロックまでのサブワイヤロープ16の吊り下げ長さLs(n)を算出し(図1参照)、重力加速度gとメインワイヤロープ14の吊り下げ長さLm(n)またはサブワイヤロープ16の吊り下げ長さLs(n)からなる吊り下げ長さL(n)とからその共振周波数ωx(n)=√(g/Ln)・・・(1)を算出するように構成されている。なお、吊り下げ長さL(n)の代わりに振り子長さ(ワイヤロープにおいて、シーブからワイヤロープが離間する位置から吊り荷Wの重心Gまでの長さ)を用いて共振周波数ωx(n)を算出してもよい。
また、先端部に吊り荷Wの重量がかかる伸縮ブーム9は、自由端に重りを取り付けた片持ち梁に近似できる。従って、共振周波数算出部33bは、伸縮ブーム9を片持ち梁として、その固有振動数ωy(n)を算出するように構成されている。共振周波数算出部33bは、予め記憶している片持ち梁の弾性係数、断面二次モーメント、自重、フィルタ係数算出部33dから取得した伸縮ブーム9の伸縮量、吊り荷Wの重量(フックブロックの重量を含む)から伸縮ブーム9の固有振動数ωy(n)を算出するように構成されている。さらに、共振周波数算出部33bは、伸縮ブーム9の起伏方向における固有振動数ωy(n)だけでなく伸縮ブーム9の旋回方向における固有振動数ωz(n)を算出するように構成されている。なお、伸縮ブーム9の起伏方向における固有振動数ωy(n)および旋回方向における固有振動数ωz(n)は、上述の方法に限らず、モーダル解析や固有値解析により算出してもよい。
フィルタ部33cは、制御装置33の一部であり、制御信号C(1)・C(2)・・C(n)の特定の周波数領域を減衰させるノッチフィルタF(1)・F(2)・・F(n)を生成し(以下、単に「ノッチフィルタF(n)」と記し、nは任意の数とする)、制御信号C(n)にノッチフィルタF(n)を適用するものである。フィルタ部33cは、制御信号生成部33aから制御信号C(1)、制御信号C(2)・・制御信号C(n)を取得し、制御信号C(1)にノッチフィルタF(1)を適用して制御信号C(1)から共振周波数ω(1)を基準として任意の周波数範囲の周波数成分を任意の割合で減衰させたフィルタリング制御信号Cd(1)を生成し、制御信号C(2)にノッチフィルタF(2)を適用してフィルタリング制御信号Cd(2)を生成し、・・制御信号C(n)にノッチフィルタF(n)を適用して制御信号C(n)から共振周波数ωx(n)および固有振動数ωy(n)および固有振動数ωz(n)のうちいずれか一つを基準として任意の周波数範囲の周波数成分を任意の割合で減衰させたフィルタリング制御信号Cd(n)を生成するように構成されている(以下、単に「フィルタリング制御信号Cd(n)」と記し、nは任意の数とする)。
フィルタ部33cは、旋回用操作弁23、伸縮用操作弁24、起伏用操作弁25、メイン用操作弁26mおよびサブ用操作弁26sのうち対応する操作弁にフィルタリング制御信号Cd(n)を伝達するように構成されている。つまり、制御装置33は、各操作弁を介してアクチュエータである旋回用油圧モータ8、起伏用油圧シリンダ12、図示しない伸縮用油圧シリンダ、図示しないメイン用油圧モータ、サブ用油圧モータを制御できるように構成されている。
フィルタ係数算出部33dは、制御装置33の一部であり、クレーン1の作動状態から吊り荷Wの共振周波数ωx(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFx(n)の伝達関数H(s)(式(2)参照)の中心周波数係数ωxn、ノッチ幅係数ζx、ノッチ深さ係数δxを算出するものである。フィルタ係数算出部33dは、操作状態に対応したノッチ幅係数ζxとノッチ深さ係数δxとを算出し、取得した共振周波数ωx(n)に対応した中心周波数係数ωxnを算出するように構成されている。また、フィルタ係数算出部33dは、クレーン1の状態から伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFy(n)の伝達関数H(s)の中心周波数係数ωyn、ノッチ幅係数ζy、ノッチ深さ係数δyを算出するものである。フィルタ係数算出部33dは、操作状態に対応したノッチ幅係数ζyとノッチ深さ係数δyとを算出し、取得した固有振動数ωy(n)に対応した中心周波数係数ωynを算出するように構成されている。同様にして、フィルタ係数算出部33dは、クレーン1の作動状態から伸縮ブーム9の旋回方向の固有振動数ωz(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFz(n)の伝達関数H(s)に関する中心周波数係数ωcn、ノッチ幅係数ζz、ノッチ深さ係数δzを算出する。さらに、フィルタ係数算出部33dは、後述する横揺れ係数Kxと、縦揺れ係数Kyまたは旋回揺れ係数Kzを算出し、横揺れに対応するノッチフィルタFx(n)と、縦揺れに対応するノッチフィルタFy(n)または、旋回揺れに対応するノッチフィルタFz(n)と、の間の各係数の比率を決定するように構成されている。
図3と図4とを用いてノッチフィルタF(n)について説明する。ここでは、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFx(n)について説明する。伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)、および旋回方向の固有振動数ωz(n)での揺れを抑制するノッチフィルタF(n)については、同様の構成のため、説明を省略している。ノッチフィルタF(n)は、任意の周波数を中心として制御信号C(n)に急峻な減衰を与えるフィルタである。
図3に示すように、ノッチフィルタFx(n)は、任意の中心周波数ωcを中心とする任意の周波数範囲であるノッチ幅Bnの周波数成分を、中心周波数ωcにおける任意の周波数の減衰割合であるノッチ深さDnで減衰させる周波数特性を有するフィルタである。つまり、ノッチフィルタF(n)の周波数特性は、中心周波数ωc、ノッチ幅Bnおよびノッチ深さDnから設定される。
ノッチフィルタF(n)は、以下の式(2)に示す伝達関数H(s)を有する。
式(2)においてωxnはノッチフィルタFx(n)の中心周波数ωcに対応する中心周波数係数ωxn、ζxはノッチ幅Bnに対応するノッチ幅係数、δxはノッチ深さDnに対応するノッチ深さ係数である。ノッチフィルタFx(n)は、中心周波数係数ωxnが変更されることでノッチフィルタFx(n)の中心周波数ωcが変更され、ノッチ幅係数ζxが変更されることでノッチフィルタFx(n)のノッチ幅Bnが変更され、ノッチ深さ係数δxが変更されることでノッチフィルタFx(n)のノッチ深さDnが変更される。
ノッチ幅係数ζxは、大きく設定するほどノッチ幅Bnが大きく設定される。これにより、ノッチフィルタF(n)は、適用する入力信号において、中心周波数ωcから減衰させる周波数範囲がノッチ幅係数ζxによって設定される。
ノッチ深さ係数δxは、0から1までの間で設定される。
図4に示すように、ノッチ深さ係数δx=0の場合、ノッチフィルタFx(n)は、中心周波数ωcにおけるゲイン特性が―∞dBとなる。これによりノッチフィルタFx(n)は、適用する入力信号において、中心周波数ωcでの減衰量が最大になる。つまり、ノッチフィルタFx(n)は、入力信号をその周波数特性に従って最も減衰させて出力する。
ノッチ深さ係数δx=1の場合、ノッチフィルタFx(n)は、中心周波数ωcにおけるゲイン特性は0dBとなる。これにより、ノッチフィルタFx(n)は、適用する入力信号の全ての周波数成分を減衰させない。つまり、ノッチフィルタFx(n)は、入力信号をそのまま出力する。
図2に示すように、制御装置33の制御信号生成部33aは、任意の操作信号、本実施形態では、旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21およびサブドラム操作具22に接続され、旋回操作具18、起伏操作具19、メインドラム操作具21およびサブドラム操作具22のそれぞれの操作量(操作信号)に応じて制御信号C(n)を生成することができる。
制御装置33の共振周波数算出部33bは、メイン繰出長検出センサ31とサブ繰出長検出センサ32、フィルタ係数算出部33dおよび図示しない安全装置に接続され、メインワイヤロープ14の吊り下げ長さLm(n)とサブワイヤロープ16の吊り下げ長さLs(n)を算出することができる。
また、制御装置33の共振周波数算出部33bは、フィルタ係数算出部33dに接続され、伸縮ブーム9の伸縮量、吊り荷Wの重量を取得し、予め記憶している片持ち梁の弾性係数、断面二次モーメントおよび自重から起伏方向の固有振動数ωy(n)、および旋回方向の固有振動数ωz(n)を算出することができる。
制御装置33のフィルタ部33cは、制御信号生成部33aに接続され、制御信号C(n)を取得することができる。また、フィルタ部33cは、旋回用操作弁23、伸縮用操作弁24、起伏用操作弁25、メイン用操作弁26mおよびサブ用操作弁26sに接続され、旋回用操作弁23、伸縮用操作弁24、起伏用操作弁25、メイン用操作弁26mおよびサブ用操作弁26sに対応するフィルタリング制御信号Cd(n)を伝達することができる。また、フィルタ部33cは、フィルタ係数算出部33dに接続され、中心周波数係数ωxn、ノッチ幅係数ζx、ノッチ深さ係数δxと、中心周波数係数ωyn、ノッチ幅係数ζy、ノッチ深さ係数δyと、中心周波数係数ωcn、ノッチ幅係数ζz、ノッチ深さ係数δzと、を取得することができる。
制御装置33のフィルタ係数算出部33dは、旋回用エンコーダ27、ブーム長検出センサ28、重量センサ29および起伏用エンコーダ30に接続され、旋回台7の旋回位置、ブーム長さ、起伏角度および吊り荷Wの重量Wtを取得することができる。また、フィルタ係数算出部33dは、制御信号生成部33aに接続され、制御信号C(n)を取得することができる。また、フィルタ係数算出部33dは、共振周波数算出部33bに接続され、メインワイヤロープ14の吊り下げ長さLm(n)、サブワイヤロープ16の吊り下げ長さLs(n)(図1参照)、共振周波数ωx(n)、伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)、および旋回方向の固有振動数ωz(n)を取得することができる。
制御装置33は、制御信号生成部33aにおいて、旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21およびサブドラム操作具22の操作量に基づいて各操作具に対応した制御信号C(n)を生成する。
また、制御装置33は、共振周波数算出部33bにおいて、共振周波数ωx(n)、固有振動数ωy(n)および固有振動数ωz(n)を算出する。また、制御装置33は、共振周波数算出部33bにおいて算出した共振周波数ωx(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFx(n)の中心周波数係数ωxn、ノッチ幅係数ζx、ノッチ深さ係数δxを算出する。また、制御装置33は、共振周波数算出部33bにおいて算出した固有振動数ωy(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFy(n)の中心周波数係数ωyn、ノッチ幅係数ζy、ノッチ深さ係数δyを算出し、固有振動数ωz(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFz(n)の中心周波数係数ωcn、ノッチ幅係数ζz、ノッチ深さ係数δzを算出する。
図5に示すように、制御装置33は、フィルタ部33cにおいて、中心周波数係数ωxn、ノッチ幅係数ζxおよびノッチ深さ係数δxを適用したノッチフィルタFx(n)と、中心周波数係数ωyn、ノッチ幅係数ζyおよびノッチ深さ係数δyを適用したノッチフィルタFy(n)と、中心周波数係数ωcn、ノッチ幅係数ζzおよびノッチ深さ係数δzを適用したノッチフィルタFz(n)と、のうち少なくとも一つのノッチフィルタF(n)を制御信号C(n)に適用してフィルタリング制御信号Cd(n)を生成する。ノッチフィルタF(n)が適用されたフィルタリング制御信号Cd(n)は、共振周波数ωx(n)、固有振動数ωy(n)、固有振動数ωz(n)のうち、少なくとも一つの周波数成分が減衰されているので、制御信号C(n)に比べて立ち上がりが緩やかになり、動作が完了するまでの時間が延びる。
具体的には、ノッチ深さ係数δx・δy・δzが0に近い(ノッチ深さDnが深い)ノッチフィルタF(n)が適用されたフィルタリング制御信号Cd(n)で制御されるアクチュエータは、ノッチ深さ係数δx・δy・δzが1に近い(ノッチ深さDnが浅い)ノッチフィルタF(n)が適用されたフィルタリング制御信号Cd(n)、もしくはノッチフィルタF(n)が適用されていない制御信号C(n)で制御される場合に比べて、操作具の操作による動作の反応が緩慢になり操作性が低下する。つまり、クレーン1は、ノッチフィルタF(n)が適用されたフィルタリング制御信号Cd(n)によって制御されることで、操作具での停止操作がされてから停止するまでに可動部がノッチ深さ係数δx・δy・δzに応じた量だけ移動方向に向かって流れる。
また、ノッチ幅係数ζx・ζy・ζzが標準的な値よりも比較的大きい(ノッチ幅Bnが比較的広い)ノッチフィルタF(n)が適用されたフィルタリング制御信号Cd(n)で制御されるアクチュエータは、ノッチ幅係数ζx・ζy・ζzが標準的な値よりも比較的小さい(ノッチ幅Bnが比較的狭い)ノッチフィルタF(n)が適用されたフィルタリング制御信号Cd(n)、もしくはノッチフィルタF(n)が適用されていない制御信号C(n)で制御される場合に比べて、操作具の操作による動作の反応が緩慢になり操作性が低下する。つまり、クレーン1は、ノッチフィルタF(n)が適用されたフィルタリング制御信号Cd(n)によって制御されることで、操作具での停止操作がされてから停止するまでに可動部がノッチ幅係数ζx・ζy・ζzに応じた量だけ移動方向に向かって流れる。
制御装置33は、フィルタ係数算出部33dにおいて、伸縮ブーム9の起伏動作時に、ワイヤロープの吊り下げ長さL(n)から定まる共振周波数ωx(n)と、その時点での伸縮ブーム9の伸縮量での起伏方向における固有振動数ωy(n)および旋回方向における固有振動数ωz(n)とを算出する。制御装置33は、フィルタ係数算出部33dにおいて、起伏用エンコーダ30(図2参照)から検出される起伏角度と、共振周波数ωx(n)と、固有振動数ωy(n)または固有振動数ωz(n)とに基づいて、後述する横揺れ係数Kxおよび縦揺れ係数Ky、横揺れ係数Kxおよび旋回揺れ係数Kzを算出する。さらに、フィルタ係数算出部33dは、横揺れ係数Kxと縦揺れ係数Kyとの比率に基づいて、共振周波数ωx(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFx(n)のノッチ深さ係数δxと、固有振動数ωy(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFy(n)のノッチ深さ係数δyと、を算出する。フィルタ係数算出部33dは、横揺れ係数Kxと旋回揺れ係数Kzとの比率に基づいて、共振周波数ωx(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFx(n)のノッチ深さ係数δxと、固有振動数ωz(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFz(n)のノッチ深さ係数δzと、を算出する。
図6および図7を用いて、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での揺れ(横揺れ)を抑制するノッチフィルタFx(n)のノッチ深さ係数δxと、伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)での揺れ(縦揺れ)を抑制するノッチフィルタFy(n)のノッチ深さ係数δyの設定について説明する。なお、サブワイヤロープ16を用いて吊り荷Wを吊り下げているものとし、起伏動作時において伸縮ブーム9のブーム長さは一定とする。
図6および図7(a)に示すように、伸縮ブーム9は、起伏動作前の起伏角度が大きいほど(起伏動作前の姿勢が起立状態であるほど)、起伏動作開始時における単位時間当たりの縦方向(重力の作用方向である鉛直上下方向)の移動量(白塗矢印参照)よりも横方向(鉛直下方に投影した伸縮ブーム9の長手方向)の移動量(黒塗矢印参照)が大きい。つまり、クレーン1は、伸縮ブーム9の起伏動作前の起伏角度が大きいほど吊り荷Wの横方向への加速度(吊り荷Wを共振周波数ωx(n)で揺らす力)が大きく、伸縮ブーム9の起伏方向への加速度(伸縮ブーム9を起伏方向に固有振動数ωy(n)で揺らす力)が小さい。
図6および図7(b)に示すように、同様に、伸縮ブーム9は、起伏動作前の起伏角度が小さいほど(起伏動作前の姿勢が倒伏状態であるほど)、起伏動作開始時における単位時間当たりの横方向(水平方向)の移動量(白塗矢印参照)よりも縦方向の移動量(黒塗矢印参照)が大きい。つまり、クレーン1は、伸縮ブーム9の起伏動作前の起伏角度が小さいほど吊り荷Wの起伏方向への加速度(伸縮ブーム9を起伏方向に固有振動数ωy(n)で揺らす力)が大きく、吊り荷Wの横方向への加速度(吊り荷Wを共振周波数ωx(n)で揺らす力)が小さい。
吊り荷Wの横方向への加速度が一定の場合、吊り荷Wの横方向の揺れ量は、共振周波数ωx(n)が小さくなるほど大きくなる。また、伸縮ブーム9の起伏方向への加速度が一定の場合、伸縮ブーム9の縦方向の揺れ量である吊り荷Wの縦方向の揺れ量は、伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)が小さくなるほど大きくなる。従って、吊り荷Wの横方向の揺れ量は、伸縮ブーム9の起伏角度が0°の状態(水平状態)を基準とする起立角度θaを共振周波数ωx(n)で割った値である水平方向の揺れ係数(以下、単に「横揺れ係数Kx」と記す)に比例する。一方、吊り荷Wの縦方向の揺れ量は、伸縮ブーム9の起伏角度θが90°の状態(垂直状態)を基準とする倒伏角度θb(起伏角度90°から倒伏している角度)を固有振動数ωy(n)で割った値である起伏方向の揺れ係数(以下、単に「縦揺れ係数Ky」と記す)に比例する。
制御装置33は、フィルタ係数算出部33dにおいて、取得した起伏角度、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)および伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)から横揺れ係数Kxと縦揺れ係数Kyを算出する。さらに、制御装置33は、算出した横揺れ係数Kxと縦揺れ係数Kyの比率から吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での横揺れを抑制するノッチフィルタFx(n)のノッチ深さ係数δxと、伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)での縦揺れを抑制するノッチフィルタFy(n)のノッチ深さ係数δyとの比率を決定する。そして、フィルタ係数算出部33dは、決定した深さ係数の比率に従ってノッチ深さ係数δxとノッチ深さ係数δyとを算出する。
横揺れ係数Kxが縦揺れ係数Kyよりも大きい場合、すなわち、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での横揺れが伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)での縦揺れよりも大きいと算出された場合、制御装置33は、横揺れ係数Kxと縦揺れ係数Kyの比率に基づいて、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFx(n)のノッチ深さDnが深く(減衰割合が大きく)なるようにノッチ深さ係数δxを設定する。一方、制御装置33は、フィルタ係数算出部33dにおいて、伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFy(n)のノッチ深さDnが浅く(減衰割合が小さく)なるように、ノッチ深さ係数δyを設定する。
同様に、横揺れ係数Kxが縦揺れ係数Kyよりも小さい場合、すなわち、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での横揺れが伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)での縦揺れよりも小さいと算出された場合、制御装置33は、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFx(n)のノッチ深さDnが浅く(減衰割合が小さく)なるように、ノッチ深さ係数δxを設定する。一方、制御装置33は、伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)での横揺れを抑制するノッチフィルタFy(n)のノッチ深さDnが深く(減衰割合が大きく)なるように、ノッチ深さ係数δyを設定する。
この際、制御装置33は、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での横揺れを抑制するノッチフィルタFx(n)のノッチ深さ係数δxと、伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)での縦揺れを抑制するノッチフィルタFy(n)のノッチ深さ係数δyとの比率に関わらず、ノッチフィルタFx(n)とノッチフィルタFy(n)とが適用されたフィルタリング制御信号Cd(n)に従って作動する伸縮ブーム9の流れ量が一定になるようにノッチ深さ係数δxとノッチ深さ係数δyとを算出する。つまり、制御装置33は、伸縮ブーム9の伸縮量および起伏角度やサブワイヤロープ16の長さが変化しても、伸縮ブーム9の停止時の流れ量が一定になるようにノッチ深さ係数δxとノッチ深さ係数δyとの大きさを決定する。
このように構成されるクレーン1は、制御装置33において、伸縮ブーム9の状態とサブワイヤロープ16の長さとから算出した横揺れ係数Kxと縦揺れ係数Kyの比率に基づいてノッチフィルタFx(n)とノッチフィルタFy(n)を設定し、制御信号C(n)に適用する。これにより、クレーン1は、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)を基準として任意の周波数範囲の周波数成分を減衰させ、伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)を基準として任意の周波数範囲の周波数成分を減衰させることで起伏動作中に発生する吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での横揺れおよび伸縮ブーム9の固有振動数ωy(n)での縦揺れを効率的に抑制することができる。
次に、図8を用いて、クレーン1の旋回動作時の制御信号C(n)に適用する、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFx(n)のノッチ深さ係数δxと、伸縮ブーム9の旋回方向の固有振動数ωz(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFz(n)のノッチ深さ係数δzの設定について説明する。ここでは、サブワイヤロープ16を用いて吊り荷Wを吊り下げているものとする。図8(a)では、伸縮ブーム9の起伏角度が小さい状態(姿勢が倒伏状態)であり、図8(b)では伸縮ブーム9の起伏角度が大きい状態(姿勢が起立状態)であるものとする。なお、旋回動作時において伸縮ブーム9のブーム長さは一定とする。
制御装置33は、フィルタ係数算出部33dにおいて、伸縮ブーム9の旋回動作時において、サブワイヤロープ16の吊り下げ長さLs(n)から定まる共振周波数ωx(n)と、伸縮ブーム9の旋回方向における固有振動数ωz(n)とを算出する。制御装置33は、フィルタ係数算出部33dにおいて、起伏用エンコーダ30(図2参照)から検出される起伏角度に応じて、共振周波数ωx(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFx(n)のノッチ深さ係数δxと、固有振動数ωz(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFz(n)のノッチ深さ係数δzを算出する。また、制御装置33は、フィルタ係数算出部33dにおいて、ノッチ幅係数ζxとノッチ幅係数ζzとを予め定められた固定値に設定する。なお、ノッチ幅係数ζxとノッチ幅係数ζzとは予め定められた固定値に設定しているが、クレーン1の作動状態に基づいて設定してもよい。
図8(a)に示すように、伸縮ブーム9は、起伏角度が小さいほど(倒伏状態であるほど)旋回中心から伸縮ブーム9の先端までの水平距離である旋回半径Rが大きくなる。従って、伸縮ブーム9は、旋回操作時の起伏角度が小さいほど、旋回操作開始時における単位時間当たりの先端部の移動量(黒塗矢印参照)が大きい。つまり、クレーン1は、伸縮ブーム9の起伏角度が小さいほど吊り荷Wの旋回方向への加速度(吊り荷Wを共振周波数ωx(n)で揺らす力)が大きい。
図8(b)に示すように、伸縮ブーム9は、起伏角度が大きいほど(起立状態であるほど)旋回半径Rが小さくなる。従って、伸縮ブーム9は、旋回操作時の起伏角度が大きいほど、旋回操作開始時における単位時間当たりの先端部の移動量(白塗矢印参照)が小さい。つまり、クレーン1は、伸縮ブーム9の起伏角度が大きいほど吊り荷Wの旋回方向への加速度(吊り荷Wを共振周波数ωx(n)で揺らす力)が小さい。
伸縮ブーム9の旋回方向への加速度が一定の場合、伸縮ブーム9の旋回方向の揺れ量である吊り荷Wの旋回方向の揺れ量は、伸縮ブーム9の旋回方向の固有振動数ωz(n)が小さくなるほど大きくなる。従って、吊り荷Wの旋回方向の揺れ量は、伸縮ブーム9の起伏角度が0°の状態(水平状態)を基準とする起立角度θaを固有周波数ωc(n)で割った値である旋回方向の揺れ係数(以下、単に「旋回揺れ係数Kz」と記す)に比例する。
制御装置33は、フィルタ係数算出部33dにおいて、取得した起伏角度、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)および伸縮ブーム9の旋回方向の固有振動数ωz(n)から横揺れ係数Kxと旋回揺れ係数Kzを算出する。さらに、制御装置33は、算出した横揺れ係数Kxと旋回揺れ係数Kzの比率から吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での横揺れを抑制するノッチフィルタFx(n)のノッチ深さ係数δxと、伸縮ブーム9の旋回方向の固有振動数ωz(n)での旋回揺れを抑制するノッチフィルタFz(n)のノッチ深さ係数δzとの比率を決定する。そして、フィルタ係数算出部33dは、決定した深さ係数の比率に従ってノッチ深さ係数δxとノッチ深さ係数δzとを算出する。
制御装置33は、横揺れ係数Kxと旋回揺れ係数Kzの比率に基づいて、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFx(n)のノッチ深さ係数δxと、伸縮ブーム9の旋回方向の固有振動数ωz(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFz(n)のノッチ深さ係数δzを設定する。
このように構成されるクレーン1は、制御装置33において、伸縮ブーム9の状態とサブワイヤロープ16の長さとから算出した横揺れ係数Kxと旋回揺れ係数Kzの比率に基づいてノッチフィルタFx(n)とノッチフィルタFz(n)を設定し、制御信号C(n)に適用する。これにより、クレーン1は、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)を基準として任意の周波数範囲の周波数成分を減衰させ、伸縮ブーム9の旋回方向の固有振動数ωz(n)を基準として任意の周波数範囲の周波数成分を減衰させることで旋回動作中に発生する吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での横揺れおよび伸縮ブーム9の固有振動数ωz(n)での旋回揺れを効率的に抑制することができる。
図9から図11を用いて、制御装置33におけるクレーン1の作動状態に基づく制振制御について説明する。クレーン1は、操作具の操作状態に応じて一の操作具の操作による制御信号C(n)、他の操作具の操作による制御信号C(n+1)、または操作具の緊急停止操作による緊急操作時の制御信号C(ne)のうち少なくとも一つの制御信号が生成されているものとする。制振制御において、旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21およびサブドラム操作具22のうち任意の操作具(以下、単に「操作具」と記す)の操作による手動操作によってクレーン1が作動している場合、制御装置33は、一の操作具に基づいて生成された制御信号C(n)を制御信号生成部33aから取得すると、制御信号C(n)に対応したノッチフィルタFx(n)およびノッチフィルタFy(n)およびノッチフィルタFz(n)のうち少なくとも一つの設定を行う。
制御装置33は、ノッチフィルタFx(n)のノッチ深さ係数δxを設定する。例えば、操作具の操作性を優先させたい手動制御の場合、制御装置33は、ノッチ深さ係数δx(例えば、δx=0.7)に設定した吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFx(n1)を制御信号C(n)に適用する。これにより、クレーン1は、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での振動抑制よりも操作具による操作性の維持が優先される。
一方、振動抑制効果を優先させたい自動制御の場合、制御装置33は、ノッチ深さ係数δx(例えば、δx=0.5)に設定した吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFx(n2)を制御信号C(n)に適用する。これにより、クレーン1は、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での振動抑制効果が高められる。
同様に、制御装置33は、ノッチフィルタFy(n)のノッチ深さ係数δyを設定する。例えば、操作具の操作性を優先させたい手動制御の場合、制御装置33は、ノッチ深さ係数δy(例えば、δy=0.7)に設定した伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFy(n3)を制御信号C(n)に適用する。これにより、クレーン1は、伸縮ブーム9の固有振動数ωy(n)での振動抑制よりも操作具による操作性の維持が優先される。
一方、振動抑制効果を優先させたい自動制御の場合、制御装置33は、ノッチ深さ係数δy(例えば、δy=0.5)に設定した伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFy(n4)を制御信号C(n)に適用する。これにより、クレーン1は、伸縮ブーム9の固有振動数ωy(n)での振動抑制効果が高められる。なお、制御装置33は、伸縮ブーム9の旋回方向の固有振動数ωz(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFz(n)のノッチ深さ係数δzの設定について、ノッチフィルタFy(n)のノッチ深さ係数δyの設定と同様のため、説明を省略する。
制御装置33は、一の操作具に基づいて生成された制御信号C(n)を制御信号生成部33aから取得すると、操作具の操作性を優先させるために、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFx(n1)と、伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFy(n3)または伸縮ブーム9の旋回方向の固有振動数ωz(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFz(n3)と、を制御信号C(n)に適用する。
制御装置33は、起伏操作具19の操作による制御信号C(n)のみを取得した場合、起伏操作具19の操作性を優先させるために、起伏角度、共振周波数ωx(n)および固有振動数ωy(n)から算出される横揺れ係数Kxと縦揺れ係数Kyの比率に基づいて、1寄りの値であるノッチ深さ係数δxを設定したノッチフィルタFx(n1)と、1寄りの値であるノッチ深さ係数δyを設定したノッチフィルタFy(n3)と、を制御信号C(n)に適用し、フィルタリング制御信号Cd(n)を生成する。
制御装置33は、旋回操作具18の操作による制御信号C(n)のみを取得した場合、旋回操作具18の操作性を優先させるために、起伏角度、共振周波数ωx(n)および固有振動数ωz(n)から算出される横揺れ係数Kxと旋回揺れ係数Kzの比率に基づいて、1寄りの値であるノッチ深さ係数δxを設定したノッチフィルタFx(n1)と、1寄りの値であるノッチ深さ係数δzを設定したノッチフィルタFz(n3)と、を制御信号C(n)に適用し、フィルタリング制御信号Cd(n)を生成する。
一の操作具(例えば、起伏操作具19)の単独操作中に他の操作具(例えば、旋回操作具18)が更に操作される手動制御の場合、制御装置33は、起伏操作具19の操作に基づいて生成された制御信号C(n)を取得した後に、旋回操作具18の操作に基づいて生成された制御信号C(n+1)を制御信号生成部33aから取得すると、振動抑制効果を優先させるために、ノッチフィルタFx(n1)およびノッチフィルタFy(n3)を、ノッチフィルタFx(n2)およびノッチフィルタFy(n4)に切り替え、制御信号C(n)に適用し、フィルタリング制御信号Cd(n)を生成し、ノッチフィルタFx(n2)およびノッチフィルタFz(n4)を制御信号C(n+1)に適用し、フィルタリング制御信号Cd(n+1)を生成する。
例えば、遠隔操作装置等による操作において、一の操作具の操作量が他の操作具の操作量に適用される場合、他の操作具の制御信号C(n+1)の単位時間当たりの変化量(加速度)が大幅に大きくなる可能性がある。具体的には、旋回操作の入り切りスイッチと起伏操作の入り切りスイッチ、および各操作の速度を設定する共通の速度レバーを備える場合、旋回操作の入り切りスイッチが入り状態にされ、任意の速度での旋回動作中に起伏スイッチを切り状態にすると旋回動作の速度設定が起伏操作に適用される。つまり、複数の操作具によって操作を開始した場合、大きな振動が発生する場合がある。そのため、一の操作具の単独操作中に他の操作具が更に操作されている場合、振動抑制効果を優先させるように、ノッチフィルタF(n)を切り替えている。
これにより、クレーン1は、一の操作具の単独操作において吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFx(n1)と、伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFy(n3)または伸縮ブーム9の旋回方向の固有振動数ωz(n)での揺れを抑制するノッチフィルタFz(n3)と、を制御信号C(n)に適用することで、操作性を優先して維持できる範囲で、吊り荷Wに生じる振り子の共振周波数ωx(n)に関する振動および吊り荷Wに生じる伸縮ブームの固有振動数に関する振動を抑制するフィルタリング制御信号Cd(n)を生成することができる。また、クレーン1は、振動が発生しやすい複数の操作具の併用操作においてノッチフィルタFx(n2)と、ノッチフィルタFy(n4)またはノッチフィルタFz(n4)と、を適用することで、吊り荷Wに生じる振り子の共振周波数ωx(n)に関する振動および吊り荷Wに生じる伸縮ブーム9の固有振動数に関する振動を優先して抑制するフィルタリング制御信号Cd(n)と、フィルタリング制御信号Cd(n+1)を生成することができる。
また、動作規制範囲に到達する前の自動停止や自動搬送等の自動制御によってクレーン1が作動している場合、制御装置33は、フィルタ係数算出部33dが操作具の操作に基づかない制御信号C(na)を制御信号生成部33aから取得すると、0寄りの値のノッチ深さ係数δxに設定されているノッチフィルタFx(n2)と、0寄りの値のノッチ深さ係数δyに設定されているノッチフィルタFy(n4)または0寄りの値のノッチ深さ係数δzに設定されているノッチフィルタFz(n4)と、を制御信号C(na)に適用し、フィルタリング制御信号Cd(na)を生成する。
例えば、クレーン1は、作業領域の規制による制限や停止位置が設定されている場合、吊り荷Wがこのような作業領域に進入すると、操作具の操作によらず自動制御の制御信号C(na)に基づいて作動する、また、クレーン1は、自動搬送モードに設定されている場合、所定の吊り荷Wの搬送経路を、所定の搬送速度、搬送高さで搬送する自動制御の制御信号C(na)に基づいて作動する。つまり、クレーン1は、自動制御により操縦者によって操作されていないので操作具の操作性を優先させる必要がない。従って、制御装置33は、振動抑制効果を優先させるために、0寄りの値のノッチ深さ係数δxであるノッチフィルタFx(n2)と、0寄りの値のノッチ深さ係数δyであるノッチフィルタFy(n4)と、を制御信号C(na)に適用してフィルタリング制御信号Cd(na)を生成する。これにより、クレーン1は、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での振動抑制効果および伸縮ブーム9の固有振動数ωy(n)での振動抑制効果が高まる。つまり、クレーン1は、自動制御において振動抑制効果を優先したフィルタリング制御信号Cd(na)を生成することができる。
また、特定の操作具の手動操作による緊急停止操作、または操作具による特定の操作手順による緊急停止操作がされる場合に、制御装置33は、任意の操作具の緊急停止操作に基づいて生成された制御信号C(ne)にノッチフィルタFx(n)、ノッチフィルタFy(n)、ノッチフィルタFz(n)を適用しない。
例えば、クレーン1の旋回台7や伸縮ブーム9を即時停止させるために、全ての操作具を一気に中立状態に戻す緊急停止操作が行われる場合、制御装置33は、特定の手動操作が行われたとして操作具の緊急停止操作に基づいて生成された制御信号C(ne)にノッチフィルタFx(n)、ノッチフィルタFy(n)、ノッチフィルタFz(n)を適用しない。これにより、クレーン1は操作具の操作性の維持が優先され、旋回台7や伸縮ブーム9の停止が遅れることなく即時停止する。つまり、クレーン1は、操作具の緊急停止操作において制振制御を実施しない。
以下に、図9から図11を用いて、制御装置33におけるクレーン1の作動状態に基づいて、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での横揺れと伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)での縦揺れと伸縮ブーム9の旋回方向の固有振動数ωz(n)での旋回揺れとの制振制御について具体的に説明する。制御装置33は、制御信号生成部33aにおいて、旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21およびサブドラム操作具22の操作量に基づいて、任意の操作具の速度指令である制御信号C(n)をスキャンタイム毎に生成しているものとする。また、制御装置33は、伸縮ブーム9の起伏角度を取得し、サブワイヤロープ16の吊り下げ長さLs(n)での吊り荷Wの共振周波数ωx(n)、伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)、伸縮ブーム9の旋回方向の固有振動数ωz(n)を算出しているものとする。
図9に示すように、制振制御のステップS110において、制御装置33は、操作具が操作されている手動制御か否か判定する。
その結果、操作具が操作されている手動制御である場合、制御装置33はステップをステップS120に移行させる。
一方、操作具が操作されている手動制御でない場合、制御装置33はステップをステップS160に移行させる。
ステップS120において、制御装置33は、単独の操作具が操作されているか否か判定する。
その結果、単独の操作具が操作されている場合、すなわち、単独の操作具の操作により単独のアクチュエータが制御されている場合、制御装置33はステップをステップS200に移行させる。
一方、単独の操作具のみで操作されていない場合、すなわち、複数の操作具の操作により複数のアクチュエータが制御されている場合、制御装置33はステップをステップS300に移行させる。
ステップS200において、制御装置33は、ノッチフィルタFx(n1)と、ノッチフィルタFy(n3)またはノッチフィルタFz(n3)と、の適用工程Aを開始し、ステップをステップS210に移行させる(図10参照)。そして、ノッチフィルタFx(n1)と、ノッチフィルタFy(n3)またはノッチフィルタFz(n3)と、の適用工程Aが終了するとステップをステップS130に移行させる(図9参照)。
図9に示すように、ステップS130において、制御装置33は、操作具による特定の操作手順による緊急停止操作が行われているか否か判定する。
その結果、操作具による特定の操作手順による緊急停止操作が行われている場合、すなわち、緊急停止操作時の制御信号C(ne)が生成されている場合、制御装置33はステップをステップS140に移行させる。
一方、操作具による特定の操作手順による緊急停止操作が行われていない場合、すなわち、緊急停止操作時の制御信号C(ne)が生成されていない場合、制御装置33はステップをステップS150に移行させる。
ステップS140において、制御装置33は、緊急停止操作による緊急操作時の制御信号C(ne)を生成する。すなわち、ノッチフィルタFx(n1)、ノッチフィルタFy(n3)、ノッチフィルタFz(n3)が適用されていない制御信号C(ne)を生成し、ステップをステップS150に移行させる。
ステップS150において、制御装置33は、生成された各フィルタリング制御信号に対応する操作弁に伝達し、ステップをステップS110に移行させる。また、制御装置33は、緊急停止操作時の制御信号C(ne)が生成されている場合、緊急停止操作時の制御信号C(ne)のみを対応する操作弁に伝達し、ステップをステップS110に移行させる。
ステップS160において、制御装置33は、自動制御が実施されているか否か判定する。
その結果、自動制御が実施されている場合、制御装置33はステップをステップS300に移行させる。
一方、自動制御が実施されていない場合、すなわち、手動制御の制御信号C(n)と自動制御の制御信号C(na)が生成されていない場合、制御装置33はステップをステップS110に移行させる。
ステップS300において、制御装置33は、ノッチフィルタFx(n2)と、ノッチフィルタFy(n4)またはノッチフィルタFz(n4)と、の適用工程Bを開始し、ステップをステップS310に移行させる(図11参照)。そして、ノッチフィルタFx(n2)と、ノッチフィルタFy(n4)またはノッチフィルタFz(n4)と、の適用工程Bが終了するとステップをステップS130に移行させる(図9参照)。
図10に示すように、ノッチフィルタFx(n1)と、ノッチフィルタFy(n3)またはノッチフィルタFz(n3)と、の適用工程AのステップS210において、制御装置33は、伸縮ブーム9の起伏角度、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)と、伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)または伸縮ブーム9の旋回方向の固有振動数ωz(n)と、から横揺れ係数Kxと、縦揺れ係数Kyまたは旋回揺れ係数Kzと、を算出し、ステップをステップS220に移行させる。
ステップS220において、制御装置33は、算出した横揺れ係数Kxと、縦揺れ係数Kyまたは旋回揺れ係数Kzと、の比率から、共振周波数ωx(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFx(n)のノッチ深さ係数δxと、伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFy(n)のノッチ深さ係数δyまたは伸縮ブーム9の旋回方向の固有振動数ωz(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFz(n)のノッチ深さ係数δzと、の比率を算出し、ステップをステップS230に移行させる。
ステップS230において、制御装置33は、操作具の操作性を優先させるために、算出したノッチ深さ係数δxと、ノッチ深さ係数δyまたはノッチ深さ係数δzと、の比率に基づいて、ノッチ深さ係数δxと、ノッチ深さ係数δyまたはノッチ深さ係数δzと、を1寄りの値に設定し、ステップS240に移行させる。
ステップS240において、制御装置33は、設定したノッチ深さ係数δxをノッチフィルタFx(n)の伝達関数H(s)に当てはめてノッチフィルタFx(n1)を生成し、設定したノッチ深さ係数δyまたはノッチ深さ係数δzを対応するノッチフィルタFy(n)またはノッチフィルタFz(n)の伝達関数H(s)に当てはめてノッチフィルタFy(n3)またはノッチフィルタFz(n3)を生成し、ステップをステップS250に移行させる。
ステップS250において、制御装置33は、ノッチフィルタFx(n1)と、ノッチフィルタFy(n3)またはノッチフィルタFz(n3)を制御信号C(n)に適用して制御信号C(n)に対応するフィルタリング制御信号Cd(n)を生成し、ノッチフィルタFx(n1)と、ノッチフィルタFy(n3)またはノッチフィルタFz(n3)の適用工程Aを終了し、ステップをステップS130に移行させる。
図11に示すように、ノッチフィルタFx(n2)と、ノッチフィルタFy(n4)またはノッチフィルタFz(n4)と、の適用工程BのステップS310において、制御装置33は、伸縮ブーム9の起伏角度、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)と、伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)または伸縮ブーム9の固有振動数ωz(n)と、から横揺れ係数Kxと、縦揺れ係数Kyまたは旋回揺れ係数Kzと、を算出し、ステップをステップS320に移行させる。
ステップS320において、制御装置33は、算出した横揺れ係数Kxと、縦揺れ係数Kyまたは旋回揺れ係数Kzと、の比率から、共振周波数ωx(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFx(n)のノッチ深さ係数δxと、伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFy(n)のノッチ深さ係数δyまたは伸縮ブーム9の固有振動数ωz(n)を中心周波数ωcとするノッチフィルタFz(n)のノッチ深さ係数δzと、との比率を算出し、ステップをステップS230に移行させる。
ステップS330において、制御装置33は、振動抑制効果を優先させるために、算出したノッチ深さ係数δxと、ノッチ深さ係数δyまたはノッチ深さ係数δzと、の比率に基づいて、ノッチ深さ係数δxと、ノッチ深さ係数δyまたはノッチ深さ係数δzと、を0寄りの値に設定し、ステップS340に移行させる。
ステップS340において、制御装置33は、設定したノッチ深さ係数δxをノッチフィルタFx(n)の伝達関数H(s)に当てはめてノッチフィルタFx(n2)を生成し、設定したノッチ深さ係数δyまたはノッチ深さ係数δzを対応するノッチフィルタFy(n)またはノッチフィルタFz(n)の伝達関数H(s)に当てはめてノッチフィルタFy(n4)またはノッチフィルタFz(n4)を生成し、ステップをステップS350に移行させる。
ステップS350において、制御装置33は、手動制御が実施されているか否か判定する。
その結果、手動制御が実施されている場合、制御装置33はステップをステップS360に移行させる。
一方、手動制御が実施されていない場合、制御装置33はステップをステップS370に移行させる。
ステップS360において、制御装置33は、一の操作具による制御信号C(n)に対応するノッチフィルタFx(n2)と、ノッチフィルタFy(n4)またはノッチフィルタFz(n4)と、を適用してフィルタリング制御信号Cd(n)を生成し、他の操作具による制御信号C(n+1)に対応するノッチフィルタFx(n2)と、ノッチフィルタFy(n4)またはノッチフィルタFz(n4)を適用してフィルタリング制御信号Cd(n+1)を生成し、ノッチフィルタFx(n2)と、ノッチフィルタFy(n4)またはノッチフィルタFz(n4)と、の適用工程Bを終了し、ステップをステップS130に移行させる。
ステップS370において、制御装置33は、一の操作具による自動制御の制御信号C(na)に対応するノッチフィルタFx(n2)と、ノッチフィルタFy(n4)またはノッチフィルタFz(n4)と、を適用してフィルタリング制御信号Cd(na)を生成し、他の操作具による自動制御の制御信号C(na+1)に対応するノッチフィルタFx(n2)と、ノッチフィルタFy(n4)またはノッチフィルタFz(n4)を適用してフィルタリング制御信号Cd(na+1)を生成し、ノッチフィルタFx(n2)と、ノッチフィルタFy(n4)またはノッチフィルタFz(n4)と、の適用工程Bを終了し、ステップをステップS130に移行させる。
このように、クレーン1は、操作具の操作性を優先させたい手動制御の場合、横揺れ係数Kxと縦揺れ係数Kyとの比率に応じて算出されるノッチフィルタFx(n1)とノッチフィルタFy(n3)とを制御信号C(n)に適用することで、操作性を維持できる範囲で吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での揺れと伸縮ブーム9の旋回方向の固有振動数ωy(n)での揺れを抑制することができる。また、クレーン1は、作業領域の規制による自動停止制御および自動搬送制御等の振動抑制効果を優先させたい自動制御に加えて、複数の操作具が同時に操作された場合、伸縮ブーム9の起伏角度に応じて算出されるノッチフィルタFx(n2)とノッチフィルタFy(n4)とを制御信号C(n)に適用することで、吊り荷Wの共振周波数ωx(n)での揺れと伸縮ブーム9の旋回方向の固有振動数ωy(n)での揺れの抑制効果を高めることができる。一方、操作具の操作によって緊急停止信号が生成された場合、操作性を優先した制振制御に切り替えられる。つまり、クレーン1は、操作具の操作状態と伸縮ブーム9の起伏角度に応じて、制御装置33において制御信号C(n)に適用するノッチフィルタを選択的に切り替えるように構成されている。これにより、クレーン1の作動状態に応じて吊り荷に生じる振り子の共振周波数ωx(n)に関する振動および吊り荷に生じる伸縮ブーム9の起伏方向の固有振動数ωy(n)に関する振動を抑制することができる。
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。