以下に、図1と図2とを用いて、本発明における作業車両の一実施形態であるクレーン1について説明する。なお、本実施形態においては、ラフテレーンクレーンついて説明を行うが、オールテレーンクレーン、トラッククレーン、積載型トラッククレーン、高所作業車、橋梁点検車等の走行体に旋回台7を介して起伏可能なブーム9が設けられた作業車両であればよい。
図1に示すように、クレーン1は、不特定の場所に移動可能な移動式クレーンである。クレーン1は、走行体である車両2、作業装置であるクレーン装置6、制御装置29を有する。また、クレーン1は、振動抑制装置30(図2参照)を具備する。
車両2は、クレーン装置6を搬送する移動体である。車両2は、複数の車輪3を有し、エンジン4を動力源として走行する。車両2には、アウトリガ5が設けられている。車両2は、アウトリガ5を車両2の幅方向に延伸させるとともにジャッキシリンダを接地させることにより、クレーン1の作業可能範囲を広げることができる。
クレーン装置6は、荷物Wをワイヤロープによって吊り上げる装置である。クレーン装置6は、旋回台7、旋回用油圧モータ8、ブーム9、メインフックブロック10、サブフックブロック11、起伏用油圧シリンダ12、メインウインチ13、メイン用油圧モータ13a、メインワイヤロープ14、サブウインチ15、サブ用油圧モータ15a、サブワイヤロープ16およびキャビン17等を具備する。クレーン装置6には、振動抑制装置30を介して吊り荷カメラ9bが設けられている。
旋回台7は、クレーン装置6を旋回する装置である。旋回台7は、円環状の軸受の中心を回転中心として回転自在に構成されている。旋回台7には、アクチュエータである旋回用油圧モータ8が設けられている。旋回台7は、旋回用油圧モータ8によって一方向と他方向とに旋回可能に構成されている。
旋回用油圧モータ8は、電磁比例切換弁である旋回用バルブ22(図2参照)によって回転操作される。旋回用バルブ22は、旋回用油圧モータ8に供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。旋回台7には、旋回台7の基準位置からの旋回した角度である旋回角度を検出する旋回用センサ26(図2参照)が設けられている。
ブーム9は、荷物Wを吊り上げ可能な状態にワイヤロープを支持する梁部材である。ブーム9は、ベースブーム部材の基端が旋回台7の略中央に揺動可能に設けられている。ブーム9は、電磁比例切換弁である伸縮用バルブ23(図2参照)によって伸縮操作される。各ブーム部材をアクチュエータである図示しない伸縮用油圧シリンダで移動させることで軸方向に伸縮自在に構成されている。また、ブーム9には、ジブ9aが設けられている。ブーム9には、ブーム9の長さを検出する伸縮用センサ27や荷物Wの重量を検出する重量センサ等が設けられている。さらに、ブーム9には、計測装置である吊り荷カメラ9bの振動抑制装置30が設けられている。
吊り荷カメラ9bは、荷物Wおよび荷物W周辺の地物を撮影する撮影装置である。吊り荷カメラ9bは、後述する振動抑制装置30の揺動部材32に設けられている。つまり、吊り荷カメラ9bは、振動抑制装置30を介して、ブーム9の先端部に設けられている。吊り荷カメラ9bは、荷物Wの上方から荷物Wおよびクレーン1周辺の地物や地形を撮影可能に構成されている。
メインフックブロック10とサブフックブロック11とは、荷物Wを吊る部材である。メインフックブロック10には、メインワイヤロープ14が巻き掛けられる複数のフックシーブと、荷物Wを吊るメインフック10aとが設けられている。サブフックブロック11には、荷物Wを吊るサブフック11aが設けられている。
起伏用油圧シリンダ12は、ブーム9を起立および倒伏させ、ブーム9の姿勢を保持するアクチュエータである。起伏用油圧シリンダ12は、電磁比例切換弁である起伏用バルブ24(図2参照)によって伸縮操作される。ブーム9には、ブーム9の起伏角度を検出する起伏用センサ28(図2参照)が設けられている。
メインウインチ13とサブウインチ15とは、メインワイヤロープ14とサブワイヤロープ16との繰り入れ(巻き上げ)および繰り出し(巻き下げ)を行う。メインウインチ13は、メインワイヤロープ14が巻きつけられるメインドラムがアクチュエータであるメイン用油圧モータ13aによって回転され、サブウインチ15は、サブワイヤロープ16が巻きつけられるサブドラムがアクチュエータであるサブ用油圧モータ15aによって回転されるように構成されている。
メイン用油圧モータ13aは、電磁比例切換弁であるメイン用バルブ25m(図2参照)によって回転操作される。メインウインチ13は、メイン用バルブ25mによってメイン用油圧モータ13aを制御し、任意の繰り入れおよび繰り出し速度に操作可能に構成されている。同様に、サブウインチ15は、電磁比例切換弁であるサブ用バルブ25s(図2参照)によってサブ用油圧モータ15aを制御し、任意の繰り入れおよび繰り出し速度に操作可能に構成されている。
キャビン17は、旋回台7に搭載されている。キャビン17は、図示しない操縦席が設けられている。操縦席には、車両2を走行操作するための操作具やクレーン装置6を操作するための旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21m、サブドラム操作具21s等が設けられている。
制御装置29は、各操作弁を介してクレーン1のアクチュエータを制御する装置である。制御装置29は、キャビン17内に設けられている。制御装置29は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置29は、各アクチュエータや切換え弁、センサ等の動作を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。
制御装置29は、吊り荷カメラ9b、旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sに接続され、吊り荷カメラ9bの映像を取得し、旋回操作具18、起伏操作具19、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sのそれぞれの操作量を取得することができる。
制御装置29は、旋回用バルブ22、伸縮用バルブ23、起伏用バルブ24、メイン用バルブ25mおよびサブ用バルブ25sに接続され、旋回用バルブ22、伸縮用バルブ23、起伏用バルブ24、メイン用バルブ25mおよびサブ用バルブ25sに制御信号を伝達することができる。
制御装置29は、旋回用センサ26、伸縮用センサ27および起伏用センサ28に接続され、旋回台7の旋回角度、ブーム9のブーム長さ、起伏角度、メインワイヤロープ14およびサブワイヤロープ16の繰り出し長さ等の姿勢情報および荷物Wの重量を取得することができる。
制御装置29は、旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sの操作信号に基づいて各操作具に対応した制御信号を生成することができる。
制御装置29は、振動抑制装置30の振動制御部36に有線または無線で接続され、振動制御部36にクレーン装置6の各操作具の操作信号を送信することができる。
このように構成されるクレーン1は、車両2を走行させることで任意の位置にクレーン装置6を移動させることができる。また、クレーン1は、起伏操作具19の操作によって起伏用油圧シリンダ12でブーム9を任意の起伏角度に起立させて、伸縮操作具20の操作によってブーム9を任意のブーム長さに延伸させたりすることでクレーン装置6の揚程や作業半径を拡大することができる。また、クレーン1は、サブドラム操作具21s等によって荷物Wを吊り上げて、旋回操作具18の操作によって旋回台7を旋回させることで荷物Wを搬送することができる。
次に、図3および図4を用いて、吊り荷カメラ9bの振動抑制装置30について具体的に説明する。振動抑制装置30は、吊り荷カメラ9bに伝達される振動を抑制する装置である。吊り荷カメラ9bに伝達される振動は、広い範囲の周波数を含む衝撃的な振動とブーム9の姿勢状態と操作によって生じる振動とを含む。振動抑制装置30には、吊り荷カメラ9bが設けられている。
図3に示すように、振動抑制装置30は、ベース部材31、揺動部材32、アクチュエータであるモータ33、ダンパであるロータリダンパ34、傾斜計35および振動制御部36を備える。
ベース部材31は、振動抑制装置30の基本構成部材である。ベース部材31は、ブーム固定部31aおよび揺動部材支持部31bを有している。ブーム固定部31aは、ブーム9に固定される部分である。ブーム固定部31aには、ベース部材31をブーム9に固定するための図示しない取付孔が形成されている。揺動部材支持部31bは、揺動部材32を揺動自在に支持する部分である。揺動部材支持部31bには、後述の第1揺動軸32dと第2揺動軸32eとがそれぞれ挿入される2つの揺動孔31cが同一軸線上に形成されている。
揺動部材32は、吊り荷カメラ9bを任意の方向に向けるための可動部分である。揺動部材32は、カメラ固定部32a、軸固定部32b、第1揺動軸32dおよび第2揺動軸32eを有している。カメラ固定部32aは、吊り荷カメラ9bが固定される部分である。カメラ固定部32aには、図示しないカメラ取付孔が形成されている。軸固定部32bは、第1揺動軸32dおよび第2揺動軸32eが連結されている部分である。軸固定部32bには、第1揺動軸32dと第2揺動軸32eとがそれぞれ固定される2つの固定孔32cが同一軸線P上に形成されている。第1揺動軸32dと第2揺動軸32eとは、ベース部材31から揺動部材32を揺動自在に支持する軸である。第1揺動軸32dは、ベース部材31の一方の揺動孔31cに回転自在に挿入され、カメラ固定部32aの一方の固定孔32cに固定されている。第2揺動軸32eは、ベース部材31の他方の揺動孔31cに回転自在に挿入され、カメラ固定部32aの他方の固定孔32cに固定されている。このように構成されることで、揺動部材32は、第1揺動軸32dおよび第2揺動軸32eを介してベース部材31の揺動部材支持部31bに揺動自在に支持される。
モータ33は、揺動部材32を揺動させるアクチュエータである。モータ33は、ベース部材31のブーム固定部31aに固定されている。また、モータ33の出力軸は、第1揺動軸32dに接続されている。これにより、モータ33は、第1揺動軸32dを回転させることで、第1揺動軸32dに固定されている揺動部材32を第1揺動軸32dまわりに揺動させることができる。モータ33は、振動制御部36からの制御信号によって制御可能に構成される。
ダンパであるロータリダンパ34は、振動を減衰させる緩衝装置である。ロータリダンパ34は、ベース部材31のブーム固定部31aに固定されている。また、ロータリダンパ34の回転軸は、第2揺動軸32eに接続されている。これにより、ロータリダンパ34の回転軸には、揺動部材32に固定されている第2揺動軸32eを介して揺動部材32に生じた振動が伝達される。
ロータリダンパ34は、ロータリダンパ34特有の減衰比と固有振動数に基づいて、伝達された振動を減衰させる。ロータリダンパ34の減衰係数は、吊り荷カメラ9bを含む揺動部材32の質量mおよびばね定数kから定まる臨界減衰係数Cc(Cc=2√(mk))以上が望ましい。これにより、ロータリダンパ34は、吊り荷カメラ9bを含む揺動部材32で生じる振動を減衰させる。つまり、ロータリダンパ34は、吊り荷カメラ9bを含む揺動部材32の固有振動数を含む衝撃による振動を抑制することができる。
傾斜計35は、揺動部材32の角度を計測する計測器である。傾斜計35は、揺動部材32に設けられている。傾斜計35は、鉛直方向に対する揺動部材32の現在の姿勢角である現在姿勢角θを検出する(図6参照)。傾斜計35は、振動制御部36に現在姿勢角θに関する信号を送信可能に構成される。
振動制御部36は、クレーン装置6の操作信号や傾斜計35が検出した現在姿勢角θに基づいてモータ33を制御するものである。振動制御部36は、振動抑制装置30のベース部材31に設けられている。動抑制制御装置29は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。振動制御部36は、モータ33を制御するための種々のプログラムやデータが格納されている。
振動制御部36は、任意の荷物Wの重量および任意の姿勢において任意の操作がされた際のブーム9の振動に関する情報である振動情報を予め保持している。振動情報は、任意の姿勢情報に基づく姿勢で任意の重量の荷物Wを吊り下げているクレーン装置6が任意の操作信号に基づいて操作された際のブーム9の先端の振動に関する情報である。姿勢情報とは、旋回台7の旋回角度、ブーム9の起伏角度、ブーム長さおよびワイヤロープの繰り出し長さを含む。操作信号とは、旋回台7の旋回操作、ブーム9の起伏操作、伸縮操作、ワイヤロープの繰り出しまたは繰り入れの操作信号を含む。振動情報は、動力学シミュレーションを用いて、様々な姿勢情報において様々な操作信号が入力された場合のブーム9の先端の挙動が網羅的に算出されている。
図4に示すように、振動制御部36は、モータ33に接続され、モータ33の回転方向、回転トルク、回転速度に関する信号を含むモータ33の制御信号を送信することができる。
振動制御部36は、傾斜計35に接続され、傾斜計35が検出した揺動部材32の現在姿勢角θを取得することができる。
振動制御部36は、クレーン1の制御装置29に接続され、制御装置29からクレーン装置6の姿勢情報を取得し、吊り下げられている荷物Wの重量を取得し、クレーン装置6の操作信号を取得することができる。
振動制御部36は、姿勢情報を取得し、振動情報に基づいて入力された操作信号からブーム9の先端の振動を推定することができる。さらに、振動制御部36は、推定したブーム9の振動が振動抑制装置30に伝達された際の揺動部材32の第1揺動軸32dに加わる揺動トルクである推定外乱トルクdを算出することができる(図5参照)。また、振動制御部36は、傾斜計35が検出した揺動部材32の現在姿勢角θを取得し、現在姿勢角θが所定範囲2θs内に収めるためのモータ33の出力トルクuを算出することができる(図5参照)。
このように構成される振動抑制装置30は、ベース部材31がクレーン装置6のブーム9に固定されている。この際、振動抑制装置30は、第1揺動軸32dおよび第2揺動軸32eの軸線が水平面に対して平行になるようにブーム9に固定されている。つまり、揺動部材32は、水平面に対して垂直な面に沿って揺動する垂直揺動部材としてブーム9に設けられている。振動抑制装置30は、揺動部材32に伝達される衝撃的な振動をロータリダンパ34で抑制する。さらに、振動制御装置30は、クレーン装置6の操作によって揺動部材に加わる外乱推定トルクd1と揺動部材の現在姿勢角θを所定範囲2θs内に収める出力トルクuとからモータ33の制御信号を生成し揺動部材32の向きを調整することができる。
次に、図5から図7を用いて振動抑制装置30の制御について具体的に説明する。本実施形態において、振動抑制装置30は、揺動部材32の目標姿勢角θtを鉛直方下向として、吊り荷カメラ9bが鉛直下方向に向くように制御するものとする。また、揺動部材32は、外乱要因によって現在姿勢角θが目標姿勢角θtからずれているものとする。
図5と図6に示すように、振動抑制装置30の振動制御部36は、姿勢角制御器37aを備えるフィードバック制御部37と外乱トルク推定器38aを備えるフィードフォワード制御部38とを具備する。
フィードバック制御部37は、振動抑制装置30における揺動部材32の現在の姿勢角である現在姿勢角θと目標姿勢角θtとの差分に基づいて、モータ33のトルク制御を行う。フィードバック制御部37は、傾斜計35が検出した揺動部材32の現在姿勢角θを目標姿勢角θtから減算するように構成されている。
フィードバック制御部37の姿勢角制御器37aは、揺動部材32の現在姿勢角θと目標姿勢角θtとの差分に基づいて、モータ33の出力トルクuを算出する。姿勢角制御器37aは、現在姿勢角θと目標姿勢角θtとの差分の絶対値が所定値θs未満である場合、フィードバック制御による出力トルクuをゼロとする。つまり、姿勢角制御器37aは、現在姿勢角θが目標姿勢角θtを基準とする所定範囲2θs内にある場合、揺動部材32の現在姿勢角θがほぼ鉛直下向きであり、フィードバック制御による現在姿勢角θの補正が不要であると判断する。一方、姿勢角制御器37aは、現在姿勢角θと目標姿勢角θtとの差分の絶対値が所定値θs以上である場合、現在姿勢角θと目標姿勢角θtとの差分の絶対値に応じた大きさでフィードバック制御による出力トルクuを算出する。つまり、姿勢角制御器37aは、現在姿勢角θが目標姿勢角θtを基準とする所定範囲2θs外にある場合、揺動部材32の現在姿勢角θが鉛直下向きでなく、フィードバック制御による現在姿勢角θの補正が必要であると判断する。
フィードフォワード制御部38は、クレーン装置6の操作から推測されるブーム9の振動に基づいて、モータ33のトルク制御を行う。フィードフォワード制御部38は、クレーン装置6の姿勢情報、荷物Wの重量および操作信号から振動抑制装置30の揺動部材32に加わると推定される推定外乱トルクdをフィードバック制御部37の姿勢角制御器37aが出力する制御信号から減算するように構成されている。
フィードフォワード制御部38の外乱トルク推定器38aは、クレーン装置6の操作によって振動抑制装置30における揺動部材32の第1揺動軸32dに加わると推定される推定外乱トルクdを算出する計算機である。外乱トルク推定器38aは、振動情報に基づいて姿勢情報と、荷物Wの重量と、クレーン装置6の操作信号とからブーム9の振動を推定する。さらに、外乱トルク推定器38aは、推定したブーム9の振動によって生じる振動抑制装置30における揺動部材32の第1揺動軸32dに加わると推定される推定外乱トルクdを算出する。つまり、外乱トルク推定器38aは、クレーン装置6の振動情報に基づいて、クレーン装置6の姿勢情報、荷物Wの重量およびクレーン装置6の操作信号から、その操作信号によってクレーン装置6が操作された際に揺動部材32の第1揺動軸32dに生じる可能性が高い推定外乱トルクdを算出する。
このように構成される振動制御部36は、操縦者が定めた吊り荷カメラ9bの目標姿勢角θt(本実施形態において鉛直下方向)がフィードバック制御部37に入力されると、傾斜計35が検出した揺動部材32の現在姿勢角θを取得する。フィードバック制御部37は、現在姿勢角θと目標姿勢角θtとの差分を算出し、姿勢角制御器37aにおいて、現在姿勢角θと目標姿勢角θtとの差分の絶対値が所定値θs未満か否かを判定する。フィードバック制御部37は、姿勢角制御器37aの判定結果に基づいてモータ33の出力トルクuを算出する。
一方、振動制御部36のフィードフォワード制御部38は、クレーン装置6の制御装置29から、クレーン装置6の姿勢情報、吊り下げられている荷物Wの重量、およびクレーン装置6の操作信号を取得し、外乱トルク推定器38aにおいて、その操作信号によってクレーン装置6が操作された際に揺動部材32の第1揺動軸32dに生じると推定される推定外乱トルクdを算出する。フィードフォワード制御部38は、フィードバック制御部37の姿勢角制御器37aが算出した出力トルクuから推定外乱トルクdを減算する。振動制御部36は、出力トルクuから推定外乱トルクdを減算した補正出力トルク(u-d)についての制御信号をモータ33の制御信号として出力する。
フィードバック制御部37は、振動抑制装置30における揺動部材32の現在姿勢角θが目標姿勢角θtを基準とする所定範囲2θs内に収まるようにモータ33を制御するとともに、クレーン装置6の操作によりブーム9に生じると推測される振動を打ち消すようにモータ33を制御する。フィードバック制御部37は、モータ33での制御された後の揺動部材32の現在姿勢角θを取得し、現在姿勢角θと目標姿勢角θtとの差分を算出し、姿勢角制御器37aに送信される。
振動抑制装置30は、外乱要因として、揺動部材32に風等の自然現象による振動や衝撃的な振動が加わった場合、第2揺動軸32eを介してロータリダンパ34に風等の自然現象による振動や衝撃的な振動が伝達される。振動抑制装置30は、ロータリダンパ34によって吊り荷カメラ9bを含む揺動部材32で生じる振動を減衰させる。
次に、図7を用いて、振動制御部36による振動抑制制御について具体的に説明する。なお、本実施形態において、振動抑制装置30には、目標姿勢角θtが設定されているものとする。
図7に示すように、振動抑制制御のステップS110において、振動制御部36は、傾斜計35から振動抑制装置30における揺動部材32の現在姿勢角θを取得し、ステップをステップS120に移行させる。
ステップS120において、振動制御部36は、取得した現在姿勢角θと目標姿勢角θtとの差分の絶対値が所定値θs以上か否かを判定する。
その結果、現在姿勢角θと目標姿勢角θtとの差分の絶対値が所定値θs以上である場合、すなわち、現在姿勢角θが目標姿勢角θtとみなせる所定範囲2θs外である場合、振動制御部36はステップをステップS130に移行させる。
一方、現在姿勢角θと目標姿勢角θtとの差分の絶対値が所定値θs以上でない場合、すなわち、現在姿勢角θが目標姿勢角θtとみなせる所定範囲2θs内である場合、振動制御部36はステップをステップS135に移行させる。
ステップS130において、振動制御部36は、現在姿勢角θと目標姿勢角θtとの差分に応じた大きさの出力トルクuを算出し、ステップをステップS140に移行させる。
ステップS135において、振動制御部36は、出力トルクuをゼロとして算出し、ステップをステップS140に移行させる。
ステップS140において、振動制御部36は、クレーン装置6の制御装置29からクレーン装置6の姿勢情報、荷物Wの重量およびクレーン装置6の操作信号を取得し、ステップをステップS150に移行させる。
ステップS150において、振動制御部36は、取得したクレーン装置6の姿勢情報、荷物Wの重量およびクレーン装置6の操作信号から、振動情報に基づいてブーム9に設けられる振動制御部36の第1揺動軸32dに生じる推定外乱トルクdを算出し、ステップをステップS160に移行させる。
ステップS160において、振動制御部36は、算出した出力トルクuから算出した推定外乱トルクdを減算した補正出力トルク(u-d)を算出し、ステップをステップS170に移行させる。
ステップS170において、振動制御部36は、算出した補正出力トルク(u-d)についての制御信号を生成した後にモータ33に送信し、ステップをステップS110に移行させる。
このように構成される振動抑制装置30は、振動制御部36のフィードバック制御部37によって、揺動部材の現在姿勢角θと目標姿勢角θtとの差分から出力トルクuを算出する。また、フィードフォワード制御部38によって、振動情報、姿勢情報、荷物Wの重量および操作信号から振動抑制装置30に生じる推定外乱トルクdを算出する。さらに、振動抑制装置30は、出力トルクuから推定外乱トルクdを減算することで、クレーン装置6の操作によって生じると推定される振動を打ち消した補正出力トルク(u-d)についての制御信号でモータ33を制御する。従って、振動抑制装置30は、クレーン装置6の操作に起因する振動が抑制され、吊り荷カメラ9bの姿勢を一定の範囲内で維持することができる。
また、振動抑制装置30は、振動制御部36のフィードバック制御部37によって、傾斜計35の検出値から吊り荷カメラ9bの現在姿勢角θを取得する。さらに、フィードバック制御部37は、吊り荷カメラ9bの現在姿勢角θが所定範囲2θs内を維持するようにモータ33の出力トルクuを算出する。このように構成される振動抑制装置30は、クレーン装置6の操作によってブーム9の起伏角が変動しても吊り荷カメラ9bの現在姿勢角θが一定の範囲に収まるようにモータ33を制御することができる。従って、振動抑制装置30は、クレーン装置6の操作に起因する吊り荷カメラ9bの現在姿勢角θの変動が抑制されて吊り荷カメラ9bの姿勢を一定の範囲内で維持することができる。
また、振動抑制装置30は、揺動部材32を支持している第2揺動軸32eに連結されているロータリダンパ34によって、風等の自然現象による振動や衝撃的な振動を減衰させることができる。このように構成される振動抑制装置30は、幅広い周波数を含む衝撃的な振動が加わっても吊り荷カメラ9bを含む揺動部材32の固有振動数による振動を抑制することができる。従って、振動抑制装置30は、外的要因よる吊り荷カメラ9bの共振現象等が抑制されて吊り荷カメラ9bの姿勢を一定の範囲内で維持することができる。
上述のように、振動抑制装置30は、クレーン装置6の操作に伴う振動を予め抑制するフィードフォワード制御と、ブーム9の起伏角の変化等に伴う吊り荷カメラ9bの現在姿勢角θの変動を抑制するフィードバック制御と、を実施するととともに、衝撃的な振動による固有振動数による共振を抑制するロータリダンパ34を設けることで、様々な要因の振動が加わっても吊り荷カメラ9bが、目標姿勢角θtを基準とする所定の範囲内に向くように制御することができる。また、旋回台7を介して起伏可能なブーム9が設けられた作業車両は、ブーム9に振動抑制装置30を設けることで、作業車両の作業内容に関わらず任意の目標姿勢角θtを維持しながら、振動を抑制した画像を取得することができる。
なお、振動抑制装置30の揺動部材32は、第1揺動軸32dおよび第2揺動軸32eの軸線が水平面に対して垂直になるようにベース部材31に支持されていてもよい。この構成において、揺動部材32は、水平面に対して平行な面に沿って揺動する水平揺動部材32としてブーム9に設けられている。このように構成することで、振動抑制装置30は、ブーム9の旋回による揺動部材32の振動をモータ33の制御によって打ち消すことができる。
また、振動抑制装置30は、ベース部材31と、ベース部材31に揺動自在に支持される第1揺動部材39と、第1揺動部材39に揺動自在に支持される第2揺動部材40とから構成されてもよい。第1揺動部材39は、水平面に対して垂直な面に沿って揺動する垂直揺動部材である。第2揺動部材40は、水平面に対して平行な面に沿って揺動する水平揺動揺動部材である。揺動抑制装置は、第1揺動部材39によってブーム9の起伏操作による振動を打ち消し、第2揺動部材40によってブーム9の旋回操作による振動を打ち消すことができる。
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。