JP6832836B2 - 被覆アーク溶接棒 - Google Patents

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Description

本発明は、被覆アーク溶接棒に関する。
天然ガス及び石油の輸送用パイプラインの固定管等の突き合せ溶接には、ルートパス溶接時に溶接作業者が意図しない位置で溶接棒の心線と母材が短絡(ショート)し、溶接が中断されてしまうことがある。このショート発生部位には溶融金属の溶け込み不足が発生していることが多いため、ショート発生部位をグラインダーによって削った後で溶接を再開する必要があり、溶接作業効率を低下させる原因となる。
セルロースを被覆剤に含有する被覆アーク溶接棒はアーク力が強く、かつスラグの生成量が少ないことから下進溶接に適している。また、アーク特性から裏波溶接も容易である。しかも固定管の下進溶接における初層溶接の段階では極めて高い溶接速度が得られることから、パイプラインの溶接現場等において古くから採用されている。
例えば、特許文献1にはNaCO及びMnCOを被覆剤に添加することで、溶接棒の十分なアーク強さ、溶け込み、クレータの拡がり及びスラグの剥離性が得られ、且つ溶接継手部の性能を向上させた高セルロース系被覆アーク溶接棒が開示されている。
また、特許文献2には、高セルロース系被覆アーク溶接棒においてFe、セルロース、Al等の成分の含有量や被覆剤の心線に対する被覆率を所定の範囲とした、初層ルートパス溶接においてもショートが発生しにくく、下進溶接における溶接作業性に優れ、更に、溶接部に欠陥が生じにくいため、優れた機械的性能を有する溶接金属を得ることができる高セルロース系被覆アーク溶接棒が開示されている。
特開昭60−162592号公報 特許第5367312号公報
パイプラインの溶接において、下進法は非常に高能率ではあるが、ルートパス溶接においては十分な溶け込みや余盛高さを確保するには高い技能が必要となる。
一方、上進法によるルートパス溶接ではキーホールの形成を視認しながら溶接ができるため、余盛高さの調整が比較的容易であり、十分な溶け込みおよび溶融、余盛高さを確保しやすい。
さらに、上進法と比較すると下進法によるルートパス溶接では、ショートが発生しやすく、グラインダー作業などの溶接外作業の時間が長く、欠陥の発生頻度も高い。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、初層ルートパス溶接においてもショートが発生しにくく、下進溶接及び上進溶接における溶接作業性に優れ、溶接部に欠陥が生じにくく、優れた機械的性質を有する溶接金属を得ることができる被覆アーク溶接棒を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた。その結果、被覆アーク溶接棒の組成が特定の条件を満たすようにすることで、上記課題を解決できることを見出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本実施形態の被覆アーク溶接棒は、被覆剤を鋼心線外周に被覆してなる被覆アーク溶接棒であって、前記被覆剤は被覆剤全質量あたり、
MgO:0.1〜10質量%、
酸化鉄(FeO換算値):5〜20質量%、
TiO:10質量%超25質量%以下、
金属又は合金としてのFe(合金の場合はFe換算値):0.1〜10質量%、
炭酸塩化合物(CO換算値):0.5〜5.0質量%、
Al:0.3〜5.0質量%、
ZrO:0.3〜5.0質量%、
セルロース:25〜45質量%、
水ガラス及び硅酸鉱物を含む群の合計(SiO換算値):10〜30質量%、
金属又は合金としてのMn(合金の場合はMn換算値):3〜10質量%、及び
アルカリ金属化合物中の各アルカリ金属を酸化物に換算した値の合計:0.5〜5.0質量%を含有し、
前記TiOは、前記TiO全量あたり粒径75μm以下のものが90質量%以上、及び粒径5μm以下のものが50質量%以下であり、
前記被覆剤の前記鋼心線に対する被覆率が溶接棒全質量あたり12〜21%である。
本実施形態の被覆アーク溶接棒において、前記被覆剤は、前記水ガラスを含有し、前記水ガラス中に含有されるSiOとMO(Mはアルカリ金属)のモル比(SiO/MO)が2.7〜4.0であってもよい。
本発明の被覆アーク溶接棒によれば、初層ルートパス溶接においてもショートが発生しにくく、下進溶接及び上進溶接における溶接作業性に優れ、溶接部に欠陥が生じにくく、優れた機械的性質を有する溶接金属を得ることができる。
被覆アーク溶接棒による溶接部を示す図である。 突き合わせ円周溶接における母材管を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
<被覆アーク溶接棒>
本実施形態の被覆アーク溶接棒は、被覆剤を鋼心線外周に被覆してなる被覆アーク溶接棒である。以下に、被覆剤及び鋼心線について説明する。
<被覆剤>
以下において、本実施形態の被覆アーク溶接棒における被覆剤に含有される各成分の数値限定理由について説明する。
なお、本明細書において、各成分の含有量における「%」は、特に断りのない限り「質量%」である。
また、本明細書において、「〜」とはその下限の値以上、その上限の値以下であることを意味する。
「MgO含有量:0.1〜10質量%」
MgOはスラグの粘性及び流動性に寄与する。MgOの含有量が0.1質量%未満であると、溶接作業能率を向上させる目的で行う運棒操作において、溶融金属の粘性不足によって溶融金属及びスラグの垂れの発生、耐ピット性の低下、及び溶接継手部性能の低下が発生しやすくなる。一方、MgOの含有量が10質量%を超えるとスラグの流動性が過大となり、下進溶接作業性が低下する。従って、MgOの含有量は0.1〜10質量%である。
また、上記観点よりMgO含有量は好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。また、好ましくは9質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下である。
「酸化鉄含有量(FeO換算値):5〜20質量%」
酸化鉄にはスラグを多孔質にしてスラグの剥離性を向上させると共に、脱酸過剰によるピットの発生を防止する効果がある。酸化鉄の含有量がFeO換算で5質量%未満であると、スラグ剥離性の向上及びピット発生抑制効果が十分に得られず、20質量%を超えるとスラグの流動性が過大となり、下進溶接作業性が低下する。従って、酸化鉄(FeO換算値)の含有量は5〜20質量%である。
また、上記観点より酸化鉄含有量(FeO換算値)は好ましくは5.5質量%以上であり、より好ましくは6.0質量%以上である。また、好ましくは18質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。
「TiO含有量:10質量%超25質量%以下」
TiOはアークの安定性及び強度に寄与し、スラグ形成剤として作用する成分である。TiOの含有量が10質量%以下であると上進法においてアークの安定性が低下する。一方、25質量%を超えるとスラグの形成量が多くなり、運棒が困難となる。従って、TiOの含有量は10質量%超25質量%以下である。
また、上記観点よりTiO含有量は好ましくは12質量%超であり、より好ましくは13質量%超である。また、好ましくは23質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。
「TiO粒径:75μm以下が90質量%以上、5μm以下が50質量%以下」
被覆材に含有されるTiOの粒径も溶接作業性に影響を及ぼす。被覆材に含有されるTiOの全質量に対して、粒径が75μm以下のTiOの含有量が90質量%未満であると、アーク安定性が劣化し、スパッタ発生量が多くなる。
一方、被覆材に含有されるTiOの全質量に対して、粒径が5μm以下のTiOの含有量が50質量%を超えると、アークの吹き付けが弱くなり、溶接作業性が劣化する。
したがって、TiO全量あたり粒径75μm以下のものを90質量%以上とし、粒径5μm以下のものを50質量%以下とする。
また、上記観点より、TiO全量あたりの粒径が75μm以下のものの含有量は好ましくは92質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上である。また、TiO全量あたりの粒径が5μm以下のものの含有量は好ましくは47質量%以下である。
なお、粒径の測定は、ふるい振とう機を用いて行うことができる。具体的には、株式会社セイシン企業製RPS−105を使用し、JIS Z8801−1:2006に準じたふるいを用いて、粒径75μm以下、5μm以下のTiOを分離して測定を行うことができる。
「金属又は合金としてのFe含有量(合金の場合はFe換算値):0.1〜10質量%」
Feは鉄粉及び/又はFe−MnやFe−Si等の合金によって添加される。Feは溶接作業性、溶接部におけるクレータの拡がり性、及び溶接金属の母材へのなじみ性を向上させる作用があるが、被覆剤中の金属又は合金としてのFe含有量(合金の場合はFe換算値)が0.1質量%未満であるとこれらの作用は十分に得られない。一方、被覆剤中の金属又は合金としてのFe含有量(合金の場合はFe換算値)が10質量%を超えるとアークの強度及び安定性が低下するため、アークの持続性が低下して耐ショート性が低下する。従って、Fe含有量は0.1〜10質量%である。
また、上記観点より金属又は合金としてのFe含有量(合金の場合はFe換算値)は好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上である。また、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下である。
「炭酸塩化合物含有量(CO換算値):0.5〜5.0質量%」
炭酸塩化合物は主として石灰によって添加され、シールドガス発生剤及びスラグ形成剤として作用する。炭酸塩化合物の含有量(CO換算値)が0.5質量%未満であるとアーク部における大気シールド性が低下して合金元素が適正に溶融部に供給されず、継手部性能が低下する。また、溶接金属内の酸素量が多くなって溶接金属の靱性が低下する。一方、炭酸塩化合物の含有量(CO換算値)が5.0質量%を超えるとスラグの生成量が多くなって下進溶接の作業性が低下する。従って、炭酸塩化合物の含有量(CO換算値)は0.5〜5.0質量%である。なお、炭酸塩化合物としては、CaCO、MgCO、BaCO等が使用される。
また、上記観点より炭酸塩化合物の含有量(CO換算値)は好ましくは0.6質量%以上であり、より好ましくは0.7質量%以上である。また、好ましくは4.5質量%以下であり、より好ましくは4.0質量%以下である。
「Al含有量:0.3〜5.0質量%」
Alはアークの安定性及びスラグの粘性を上昇させ、スラグ形成剤として作用する。また、Alは溶融部におけるクレータの拡がり性を上昇させる。Alの含有量が0.3質量%未満であるとアークの安定性、スラグの粘性、及びクレータの拡がり性上昇が十分に得られず、5.0質量%を超えるとスラグの生成量が増加し、スラグ剥離性も低下するため溶接作業性が低下する。従って、Alの含有量は0.3〜5.0質量%である。
また、上記観点よりAl含有量は好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは0.8質量%以上である。また、好ましくは4.5質量%以下であり、より好ましくは4.0質量%以下である。
「ZrO含有量:0.3〜5.0質量%」
ZrOは発生アークの集中性及びビード表面の光沢を上昇させる作用がある。また、ZrOは溶接金属の母材へのなじみ性を向上させる。ZrOの含有量が0.3質量%未満であると、アーク集中性、ビード表面の光沢、及び溶接金属の母材へのなじみ性の向上が十分得られず、5.0質量%を超えると発生スラグが緻密になって剥離性が低下する。従って、ZrOの含有量は0.3〜5.0質量%である。
また、上記観点よりZrO含有量は好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは0.7質量%以上である。また、好ましくは4.5質量%以下であり、より好ましくは4.0質量%以下である。
「セルロース含有量:25〜45質量%」
セルロースは発生アークの安定性に寄与し、十分な強度の発生アークを安定して得られることによって耐ショート性を向上させる作用を有する。セルロースの含有量が25質量%未満であるとアークが弱く、不安定になり、耐ショート性も低下する。セルロースの含有量が45質量%を超えると発生アーク強度が強くなり、裏波ビードが形成されにくくなる。従って、セルロースの含有量は25〜45質量%である。
また、上記観点よりセルロース含有量は好ましくは26質量%以上であり、より好ましくは28質量%以上である。また、好ましくは43質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下である。
「水ガラス及び硅酸鉱物を含む群の含有量の合計(SiO換算値):10〜30質量%」
SiOはアーク強度を上昇させ、クレータの拡がり性、及び溶接金属の母材へのなじみ性を向上させる。水ガラス、硅酸鉱物を含む群の含有量の合計(SiO換算値)が10質量%未満であるとアーク強度の上昇、クレータの拡がり性、及び溶接金属の母材へのなじみ性向上が十分得られず、30質量%を超えるとスラグ発生量が過剰になると共に、スラグの流動性が過大となるため、下進溶接の作業性が低下する。従って、水ガラス、硅酸鉱物を含む群の含有量の合計(SiO換算値)は10〜30質量%である。
また、上記観点より水ガラス及び硅酸鉱物を含む群の含有量の合計(SiO換算値)は好ましくは12質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上である。また、好ましくは28質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下である。
「金属又は合金としてのMn含有量(合金の場合はMn換算値):3〜10質量%」
Mnは脱酸剤として不可欠な成分であり、更に、溶接金属の強度上昇に寄与する。金属又は合金としてのMn含有量(合金の場合はMn換算値)が3質量%未満であると脱酸不足によって健全な溶接金属が得られなくなり、10質量%を超えると脱酸過剰となってビード表面にピットが発生しやすくなる。従って、金属又は合金としてのMn含有量(合金の場合はMn換算値)は3〜10質量%である。
また、上記観点より金属又は合金としてのMn含有量(合金の場合はMn換算値)は好ましくは4質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上である。また、好ましくは9質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下である。
「アルカリ金属化合物含有量の合計:0.5〜5.0質量%」
アルカリ金属化合物は、アーク安定性及び耐ブローホール性を改善するため添加される。このアルカリ金属化合物は、水ガラスの1種の成分でもある。アルカリ金属化合物含有量は、各アルカリ金属を酸化物に換算した値の合計とする。アルカリ金属化合物の含有量が合計で0.5質量%未満であると、アーク安定性及び耐ブローホール性改善の効果が十分に得られず、5.0質量%を超えると、アークの拡がり性が低下してビード幅が狭くなり、ビードが過剰に盛り上がる。また、耐吸湿性が劣化しやすくなる。従って、アルカリ金属化合物は、合計で0.5〜5.0質量%とする。
また、上記観点よりアルカリ金属化合物含有量の合計は好ましくは0.6質量%以上であり、より好ましくは0.7質量%以上である。また、好ましくは4.9質量%以下であり、より好ましくは4.8質量%以下である。
「残部」
本実施形態の被覆剤は、上記以外の成分を本発明の効果を損なわない範囲で、弗化物、アーク安定剤、スラグ形成剤、脱酸剤、金属単体、合金剤、固着剤、増粘剤、無機粘結剤、有機化合物等を含有しても良い。具体的には、例えばNi、Cr、Mo等を含有しうる。また、不可避的不純物としてP、S、V、Nb、Sn等も含み得る。
「被覆剤の鋼心線に対する被覆率:溶接棒全質量あたり12〜21%」
被覆アーク溶接棒の被覆剤の被覆率(%)は、(被覆剤の質量(質量%)/溶接棒全質量(質量%))×100により算出される。被覆率を増加することは合金成分の添加比率の調整範囲を広げることになり、被覆剤へのセルロース添加範囲が拡大する。被覆率が12%未満であると保護筒としての被覆の機能が不十分になると共に、溶接棒の電極によるつかみ付近の被覆が焼け落ちて溶接棒が使用できなくなる棒焼けが発生しやすくなる。一方、被覆率が21%を超えるとアークの集中性が低下して裏波ビードが形成されにくくなり、更に、2層目以降の溶接において発生アークが弱くなり、スラグ発生量も増えるため下進溶接作業性が低下する。従って、被覆剤の溶接棒に対する被覆率は12〜21%である。
また、上記観点より被覆剤の鋼心線に対する被覆率は好ましくは13%以上であり、より好ましくは14%以上である。また、好ましくは19%以下であり、より好ましくは18%以下である。
「水ガラス中に含有されるSiOとアルカリ金属酸化物のモル比:2.7〜4.0」
粘結剤として添加される水ガラスに含有されるSiOとMO(Mはアルカリ金属であり、具体的にはNa、K、又はLiなどである)のモル比(SiO/MO)が2.7以上であると、特に良好な耐吸湿性を得ることができ、発生アークの強度及び安定性が向上し、溶接作業性が向上する。一方、当該モル比が4.0以下であると溶接棒の乾燥工程において被覆剤表面の割れが発生しづらくなり、溶接棒の生産性が向上する。従って、水ガラスに含有されるSiOとMOのモル比(SiO/MO)は2.7〜4.0であることが好ましい。
また、上記観点より水ガラスに含有されるSiOとMOのモル比(SiO/MO)はより好ましくは2.9以上であり、さらに好ましくは3.0以上である。また、より好ましくは3.8以下であり、さらに好ましくは3.7以下である。
<鋼心線>
本実施形態の被覆アーク溶接棒における鋼心線は、母材や溶接条件等に応じて適宜選択することができる。特に限定されないが、例えば実施例において示すJIS G 3523 SWY11:2008に規定されている鋼心線を用いることができる。
以下に、本実施形態の被覆アーク溶接棒の効果を示す実施例を比較例とともに示して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表1に示す組成を有する直径3.2mmの鋼心線の外周に表2に示す組成を有する被覆剤を塗布して実施例及び比較例の被覆アーク溶接棒を製造した。各例におけるTiOの粒径は以下のとおりである。
実施例1〜21、比較例1〜6、9〜26:TiOの全量あたり、粒径75μm以下のものが90質量%以上、かつ、粒径5μm以下のものが50質量%以下。
比較例7:TiOの全量あたり、粒径75μm以下のものが90質量%未満、かつ、粒径5μm以下のものが50質量%以下。
比較例8:TiOの全量あたり、粒径75μm以下のものが90質量%以上、かつ、粒径5μm以下のものが50質量%超。
また、被覆剤の鋼心線への塗布に用いる粘結剤としては水ガラスを使用し、この水ガラス中に含有されるSiOとMO(Mはアルカリ金属であり、具体的にはNa、K、又はLiなどである)のモル比(SiO/MO)を表2に示すよう種々変化させた。
なお、鋼心線の組成の残部は鉄及び不可避的不純物である。また、被覆剤の組成の残部は増粘剤及び不可避的不純物である。
母材は表3に示す組成を有する外径1240mm、肉厚16.6mmの管を用いた。なお、母材の組成の残部は鉄及び不可避的不純物である。
Figure 0006832836
Figure 0006832836
Figure 0006832836
母材を図2に示すように開先のルートギャップ1.6〜2.5mmで向かい合わせて配置し、この開先に対して実施例及び比較例の被覆アーク溶接棒を用い、図1及び図2に示すように、母材管に対して上から下の溶接方向(下進)、及び下から上の溶接方向(上進)でアーク溶接を行い、溶接作業時のアーク強さ、アーク安定性、及び耐ショート性について評価した。なお、開先のルート部における肉厚は1.5〜2.0mmとし、開先角度を60°とした。また、溶接後のスラグ剥離性及び裏波ビードの安定性を、目視によって評価した。なお、耐ショート性については、管の鉛直上方から時計回りに90度の位置より鉛直下方までの溶接位置において、溶接作業性の差が顕著に表れるため、この溶接位置による作業性を重点的に評価した。そして、各項目についてそれぞれ官能により◎(従来に比して特に優れている)、○(従来に比して優れている)、△(従来と同等である又は若干劣る)、×(従来に比して特に劣る)の4段階で評価した。評価の結果を表4に示す。
次に、各実施例及び比較例の被覆アーク溶接棒を用いて溶接した溶接部について、JIS Z3104に規定される放射線透過試験による溶接部等級評価、及びJIS Z3128:1996に規定されるシャルピー衝撃試験による吸収エネルギー測定を行った。これらの結果を表4に示す。なお、シャルピー衝撃試験では溶接部の−29℃における吸収エネルギー(vE−29℃)を測定し、vE−29℃が47J以上であるものを特に良好(◎)、vE−29℃が40J以上47J未満であるものを良好(○)、vE−29℃が40J未満であるものを不良(×)とした。
Figure 0006832836
比較例1は被覆剤中のMgOの含有量が過多であった。そのため、耐ショート性、裏波ビードの安定性に劣った。
比較例2は被覆剤中のMgOの含有量が過少であった。そのため、衝撃性能に劣った。
比較例3は被覆剤中の水ガラス及び硅酸鉱物を含む群の含有量の合計(SiO換算値)が過多であった。そのため、耐ショート性、スラグの剥離性に劣った。
比較例4は被覆剤中の水ガラス及び硅酸鉱物を含む群の含有量の合計(SiO換算値)が過少であった。そのため、アーク強さ、アーク安定性、耐ショート性、裏波ビードの安定性に劣った。また、放射線透過試験による溶接部等級評価も劣る結果であった。
比較例5は被覆剤中のTiOの含有量が過少であった。そのため、耐ショート性、裏波ビードの安定性に劣った。
比較例6は被覆剤中のTiOの含有量が過多であった。そのため、アーク強さ、耐ショート性、裏波ビードの安定性に劣った。
比較例7は被覆剤中のTiO全量あたりの粒径75μm以下のものの含有量が過少であった。そのため、アーク安定性、耐ショート性、裏波ビードの安定性に劣った。また、放射線透過試験による溶接部等級評価も劣る結果であった。
比較例8は被覆剤中のTiO全量あたりの粒径5μm以下のものの含有量が過大であった。そのため、アーク強さ、耐ショート性、裏波ビードの安定性に劣った。
比較例9は被覆剤中の金属又は合金としてのFeの含有量(合金の場合はFe換算値)が過多であった。そのため、アーク強さ、アーク安定性、耐ショート性、裏波ビードの安定性に劣った。また、放射線透過試験による溶接部等級評価の結果も劣る結果であった。
比較例10は被覆剤中の金属又は合金としてのFeの含有量(合金の場合はFe換算値)が過少であった。そのため、裏波ビードの安定性に劣った。
比較例11は被覆剤中の酸化鉄の含有量(FeO換算値)が過多であった。そのため、アーク安定性、耐ショート性に劣った。また、放射線透過試験による溶接部等級評価も劣る結果であった。
比較例12は被覆剤中の酸化鉄の含有量(FeO換算値)が過少であった。そのため、スラグの剥離性、衝撃性能に劣った。
比較例13は被覆剤中の金属又は合金としてのMnの含有量(合金の場合はMn換算値)が過多であった。そのため、スラグの剥離性、裏波ビードの安定性に劣った。
比較例14は被覆剤中の金属又は合金としてのMnの含有量(合金の場合はMn換算値)が過少であった。そのため、衝撃性能に劣った。
比較例15は被覆剤中のセルロースの含有量が過多であった。そのため、裏波ビードの安定性に劣った。
比較例16は被覆剤中のセルロースの含有量が過少であった。そのため、アーク強さ、アーク安定性、耐ショート性、裏波ビードの安定性に劣った。また、放射線透過試験による溶接部等級評価も劣る結果であった。
比較例17は被覆剤中のAlの含有量が過多であった。そのため、スラグの剥離性に劣った。
比較例18は被覆剤中のAlの含有量が過少であった。そのため、アーク安定性、裏波ビードの安定性に劣った。
比較例19は被覆剤中のZrOの含有量が過多であった。そのため、スラグの剥離性、裏波ビードの安定性に劣った。
比較例20は被覆剤中のZrOの含有量が過少であった。そのため、アーク強さ、アーク安定性、耐ショート性、裏波ビードの安定性に劣った。また、放射線透過試験による溶接部等級評価も劣る結果であった。
比較例21は被覆剤中の炭酸塩化合物の含有量(CO換算値)が過多であった。そのため、耐ショート性、スラグの剥離性、裏波ビードの安定性に劣った。
比較例22は被覆剤中の炭酸塩化合物の含有量(CO換算値)が過少であった。そのため、アーク安定性、耐ショート性、衝撃性能に劣った。また、放射線透過試験による溶接部等級評価も劣る結果であった。
比較例23は被覆材中のアルカリ金属化合物の合計の含有量が過多であった。そのため、アーク安定性に劣った。
比較例24は被覆材中のアルカリ金属化合物の合計の含有量が過少であった。そのため、アーク安定性に劣った。
比較例25は被覆剤の鋼心線に対する被覆率が過大であった。そのため、アーク強さ、アーク安定性、衝撃性能に劣った。また、放射線透過試験による溶接部等級評価も劣る結果であった。
比較例26は被覆剤の鋼心線に対する被覆率が過小であった。そのため、耐ショート性、裏波ビードの安定性に劣った。また、放射線透過試験による溶接部等級評価も劣る結果であった。
一方、本発明の全ての要件を満足する実施例1〜21は溶接作業性の評価、衝撃性能の評価、及び、放射線透過試験による溶接部等級評価の全てにおいて優れるものであった。
なお、実施例1〜21では鋼心線は直径3.2mmのものを用いたが、直径2.4mm、4.0mm、4.8mmの鋼心線を使用した場合においても同様に溶接作業性の評価、衝撃性能の評価、及び、放射線透過試験による溶接部等級評価の全てにおいて優れるものであった。
1:被覆アーク溶接棒
11:鋼心線
12:被覆剤
2:母材
3:溶接機
4:開先
g:開先のルートギャップ

Claims (2)

  1. 被覆剤を鋼心線外周に被覆してなる被覆アーク溶接棒であって、前記被覆剤は被覆剤全質量あたり、
    MgO:0.1〜10質量%、
    酸化鉄(FeO換算値):5〜20質量%、
    TiO:10質量%超25質量%以下、
    金属又は合金としてのFe(合金の場合はFe換算値):0.1〜10質量%、
    炭酸塩化合物(CO換算値):0.5〜5.0質量%、
    Al:0.3〜5.0質量%、
    ZrO:0.3〜5.0質量%、
    セルロース:25〜45質量%、
    水ガラス及び硅酸鉱物を含む群の合計(SiO換算値):10〜30質量%、
    金属又は合金としてのMn(合金の場合はMn換算値):3〜10質量%、及び
    アルカリ金属化合物中の各アルカリ金属を酸化物に換算した値の合計:0.5〜5.0質量%を含有し、
    前記TiOは、前記TiO全量あたり粒径75μm以下のものが90質量%以上、及び粒径5μm以下のものが50質量%以下であり、
    前記被覆剤の前記鋼心線に対する被覆率が溶接棒全質量あたり12〜21%である被覆アーク溶接棒。
  2. 前記被覆剤は、前記水ガラスを含有し、
    前記水ガラス中に含有されるSiOとMO(Mはアルカリ金属)のモル比(SiO/MO)が2.7〜4.0である請求項1に記載の被覆アーク溶接棒。
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