以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
<ダブルトーショナルダンパの使用例>
図1は、架空電線用ダンパであるダブルトーショナルダンパの使用例を示す図である。まず、この図1を参照して、ダブルトーショナルダンパ1の使用例について説明する。
図1に示すように、ダブルトーショナルダンパ1は、たとえば送電用鉄塔100に懸架された架空電線としての送電線101に取り付けられることで使用される。ダブルトーショナルダンパ1は、送電線101に風が吹き付けることでその風下側に発生するカルマン渦の影響によって当該送電線101に生じる振動を抑制する目的で送電線101に取り付けられる。
より詳細には、ダブルトーショナルダンパ1は、送電線101のうちの送電用鉄塔100に支持された部分の近傍に取り付けられる。これにより、送電線101に生じる振動の抑制が可能になり、送電線101に早期に金属疲労が発生してしまうことが効果的に防止できる。
なお、ダブルトーショナルダンパ1は、ダブルトーショナルダンパI形(「ダンパI形」とも称する)と、ダブルトーショナルダンパII形(「ダンパII形」とも称する)とに分類される。これら2種類のダブルトーショナルダンパ1は、抑止線に対する架空電線把持部の組み付け角度によって区別されるものであるが、いずれも送電線101に生じる振動が抑制できる点において、その機能は共通している。
以下においては、ダブルトーショナルダンパII形を送電線に対して取り付けおよび取り外しする際に用いられるダブルトーショナルダンパII形の着脱工具(「ダンパII形用着脱工具」とも称する)を実施の形態1において例示して説明することとし、ダブルトーショナルダンパI形を送電線に対して取り付けおよび取り外しする際に用いられるダブルトーショナルダンパI形の着脱工具(「ダンパI形用着脱工具」とも称する)を実施の形態2において例示して説明することとする。
<実施の形態1>
図2は、ダンパII形の送電線への取り付け状態を示す概略斜視図であり、図3は、図2に示すIII−III線に沿った模式断面図である。まず、本実施の形態に係るダンパII形用着脱工具について説明するに先だって、これら図2および図3を参照して、ダンパII形1Aについて詳説する。
図2および図3に示すように、ダンパII形1Aは、送電線把持部2と、抑止線6と、一対の重錘部7とを有している。送電線把持部2は、アーム3と、キャップ4と、締め付けボルト5とを含んでおり、このうちのアーム3およびキャップ4によって送電線101が把持される。
具体的には、アーム3は、その上側端部寄りの部分がフック状に折り曲げられた断面視略C字状の形状を有しており、その下側端部寄りの部分に雌ネジ部を有している。一方、キャップ4は、その上側端部寄りの部分が折り曲げられた断面視略L字状の形状を有しており、その下側端部寄りの部分に貫通孔を有している。キャップ4の下側端部寄りの部分は、アーム3の下側端部寄りの部分に設けられた凹所に嵌め込まれており、これによりアーム3の雌ネジ部とキャップ4の貫通孔とが対向している。
これら雌ネジ部と貫通孔には、周面に雄ネジ部が設けられるとともに平座金およびばね座金が取り付けられた締め付けボルト5が挿入されており、アーム3の雌ネジ部に締め付けボルト5の雄ネジ部が螺合することにより、アーム3の上側端部寄りの部分とキャップ4の上側端部寄りの部分とによって送電線101が挟み込み可能に構成されている。すなわち、締め付けボルト5が図2中に示す矢印A方向に回転することにより、アーム3に対して相対的にキャップ4が図2中に示す矢印B方向に移動することになり、これにより送電線把持部2による送電線101の把持とその解除が可能になる。
また、アーム3の下側端部寄りの部分には、左右方向に延びる貫通孔が設けられており、当該貫通孔には、抑止線6が挿通されている。これにより、抑止線6は、左右方向に延在した状態でアーム3に固定されている。抑止線6の左側端部には、一対の重錘部7のうちの一方が固定されており、抑止線6の右側端部には、一対の重錘部7のうちの他方が固定されている。
以上により、ダンパII形1Aが送電線101に取り付けられた使用状態においては、ダンパII形1Aの送電線把持部2が送電線101から垂下した状態で配置されることになり、また、ダンパII形1Aの一対の重錘部7が、送電線101と略平行に延在するように送電線把持部2の下側端部寄りの部分に固定された抑止線6によって互いに連結された状態で送電線101の下方側の位置に配置されることになる。
なお、ダンパII形1Aにおいては、側面視した状態においてアーム3の上側端部寄りの部分がアーム3の下側端部寄りの部分よりも後方(すなわち、図3中における右方)に配置されるように送電線把持部2が後傾している。これにより、上述した使用状態においては、抑止線6が送電線101の前方下側の位置に配置されることになる。
図4は、本実施の形態に係るダンパII形用着脱工具の概略斜視図である。次に、この図4を参照して、本実施の形態に係るダンパII形用着脱工具10Aの構成について詳説する。
図4に示すように、ダンパII形用着脱工具10Aは、工具本体20と、絶縁棒30とを備えている。工具本体20は、主として金属製の板状部材のプレス成形品からなる複数の板状部材を溶接等によって接合することで形成されており、絶縁棒30は、絶縁性のロッド部材によって主として構成されている。なお、工具本体20は、安全性の観点から絶縁塗料等によって被覆されていることが好ましい。
工具本体20は、基部21と、コネクタ部22と、一対の立壁部23と、一対のクランプ部24と、一対のガイド部25と、一対の係合部26とを主として有している。このうち、基部21、コネクタ部22および一対の立壁部23が、上述したプレス成形品に該当する。
基部21は、左右方向に沿って延在するように位置しており、コネクタ部22は、基部21の左右方向の中央位置に固定されている。基部21の左側端部には、一対の立壁部23のうちの一方が固定されており、基部21の右側端部には、一対の立壁部23のうちの他方が固定されている。
コネクタ部22は、絶縁棒30が着脱可能に固定される部位である。これにより、工具本体20は、コネクタ部22に絶縁棒30が固定された状態において、絶縁棒30によって支持されることになる。絶縁棒30は、工具本体20に接続された側の端部とは反対側の端部寄りの部分を作業員が手で持つことにより、工具本体20から離れた場所において作業員が工具本体20を操作するためのものである。なお、コネクタ部22および絶縁棒30は、その水平面内における取り付け角度が調節可能となるように構成されている。
一対の立壁部23の各々は、所定の距離を隔てて対向するように配置されており、いずれもその下側端部寄りの部分であってかつ後側端部寄りの部分が基部21に固定されている。一対の立壁部23の間の空間は、後述するようにダンパII形用着脱工具10AによってダンパII形1Aが保持された状態において、ダンパII形1Aの送電線把持部2が収容される部位である。
一対の立壁部23の各々は、側面視略F字状の形状を有しており、基部21に固定された側とは反対側に位置する前側端部寄りの部分に、後述するクランプ部24が設けられた受け入れ口を有している。また、一対の立壁部23の各々の受け入れ口よりも後側端部寄りの部分には、当該受け入れ口に通じるように切り欠き形状の受け入れ部23aが設けられている。
なお、一対の立壁部23のうちの一方(図4中において左側に位置する立壁部)の所定位置には、貫通孔23bが設けられている。当該貫通孔23bは、後述する位置決め部材29(図18参照)を当該立壁部23に固定するための部位であるが、その詳細については後述することとする。
一対のクランプ部24の各々は、クランプベース24aと、ボルト24bと、下側受け部24cと、上側受け部24dとを含んでいる。当該一対のクランプ部24の各々は、一般にL型クランプと称される構造のものである。
具体的には、板状の部材からなるクランプベース24aは、立壁部23に固定されており、上述した立壁部23の受け入れ口の下方に配置されている。クランプベース24aには、雌ネジ部が設けられており、当該雌ネジ部には、ボルト24bが下方から挿入されて螺合している。ボルト24bの先端部には、ブロック状の部材からなる下側受け部24cが回転自在に組み付けられている。また、ブロック状の部材からなる上側受け部24dは、上述した立壁部23の受け入れ口の上方に移動不能に固定されている。
下側受け部24cの上面および上側受け部24dの下面には、それぞれダンパII形1Aの抑止線6の外形に応じた溝部が設けられており、これら溝部が設けられた下側受け部24cの上面および上側受け部24dの下面は、上下方向において対向して位置している。
これにより、図4中に示す矢印C方向にボルト24bが回転することにより、クランプベース24aに対して相対的にボルト24bおよび下側受け部24cが図4中に示す矢印D方向(すなわち上下方向)に移動することになる。そのため、これに伴って下側受け部24cと上側受け部24dとの間の距離が増減することになる。
したがって、ダンパII形1Aの抑止線6が工具本体20の受け入れ口に配置された状態においてボルト24bを締め付けた場合には、クランプ部24の下側受け部24cと上側受け部24dとによって抑止線6が挟み込まれることになり、これによってダンパII形用着脱工具10AによってダンパII形1Aが固定的に保持されることになる。
他方、ダンパII形用着脱工具10AによってダンパII形1Aが固定的に保持された状態においてボルト24bを緩めた場合には、クランプ部24の下側受け部24cおよび上側受け部24dによる抑止線6の挟み込みが解除されることになり、これによってダンパII形用着脱工具10AによるダンパII形1Aの固定的な保持が解除されることになる。
ここで、上述したように、一対の立壁部23の各々に設けられた受け入れ部23aは、クランプ部24が設けられた受け入れ口に通じている。また、当該受け入れ部23aは、ダンパII形1Aの抑止線6の外形よりも十分に大きな大きさを有しており、これにより抑止線6を受け入れることが可能に構成されている。
そのため、ダンパII形1Aの抑止線6が工具本体20の受け入れ口を越えて受け入れ部23aに配置された状態においてボルト24bを締め付けた場合には、クランプ部24の下側受け部24cと上側受け部24dとが互いに当接することになり、これによって受け入れ口が当該クランプ部24によって閉鎖されることになる。したがって、当該状態においては、ダンパII形1Aの抑止線6が受け入れ口を通過することができず、ダンパII形用着脱工具10AによってダンパII形1Aが固定されてはいないものの脱落不能に保持されることになる。以下、この状態の保持を「非固定的な保持」と称する。
なお、ダンパII形用着脱工具10AによってダンパII形1Aが非固定的に保持された状態においてボルト24bを緩めた場合には、上述したクランプ部24による閉鎖が解除されることになり、これによってダンパII形用着脱工具10AからダンパII形1Aを取り出すことが可能になる。
一対のガイド部25の各々は、ガイドアーム25aと、軸支部25bとを含んでいる。当該一対のガイド部25の各々は、ダンパII形用着脱工具10AによってダンパII形1Aが固定的に保持された状態において、ダンパII形1Aの送電線把持部2のキャップ4の移動を案内するためのものである。
より詳細には、一対のガイドアーム25aは、それぞれ一対の立壁部23の内側表面側に配置された状態で一対の立壁部23に組み付けられている。具体的には、一対のガイドアーム25aの各々は、軸支部25bによって回転可能に支持されており、これにより図4中に示す矢印E方向に沿って回動可能に構成されている。
ここで、一対のガイドアーム25aの間の距離は、ダンパII形1Aの送電線把持部2のキャップ4の左右方向の幅よりも僅かに大きく構成されている。そのため、当該一対のガイドアーム25aをそれぞれ回動させて予めその角度を調節しておくことにより、ダンパII形用着脱工具10AによってダンパII形1Aが固定的に保持された状態において、当該一対のガイドアーム25aをキャップ4の左右の壁面に宛がうことが可能になる。
このように、一対のガイドアーム25aをキャップ4の左右の壁面に宛がうことにより、上述したようにキャップ4の移動の案内が可能になるが、その詳細については後述することとする。なお、一対のガイドアーム25aのうちのキャップ4の左右の壁面に宛がわれる部分には、接触によってキャップ4に傷がつかないようにするために、たとえばゴム製の部材からなる緩衝材が貼り付けられていてもよい。
一対の係合部26は、それぞれ一対の立壁部23の上側端部寄りの部分に設けられており、ループ状の形状を有している。この一対の係合部26は、工具本体20をたとえば作業用クレーン等によって吊り下げる際に使用されるものであり、その使用方法については後述することとする。
図5ないし図11は、本実施の形態に係るダンパII形用着脱工具を用いて送電線へダンパII形を取り付ける場合の取り付け作業の各段階を示す概略斜視図、模式平面図および模式側面図である。次に、これら図5ないし図11を参照して、本実施の形態に係るダンパII形用着脱工具10Aを用いて送電線101へダンパII形1Aを取り付ける場合の取り付け作業の作業手順について詳説する。
まず、図5ないし図7に示すように、上述した取り付け作業の第1段階として、ダンパII形用着脱工具10Aの工具本体20によってダンパII形1Aを固定的に保持する。図5は、当該取り付け作業の第1段階を示す概略斜視図であり、図6および図7は、それぞれ当該取り付け作業の第1段階が終了した後の状態を示す概略斜視図および模式平面図である。
具体的には、図5に示すように、予めクランプ部24のボルト24bを緩めた状態としておき、この状態においてダンパII形1Aの抑止線6が工具本体20の受け入れ口(すなわち、クランプ部24の下側受け部24cと上側受け部24dとの間の空間)に配置されるように、ダンパII形1Aを工具本体20に図5中に示す矢印AR1方向から挿入する。
続いて、たとえば図示しない電動レンチを用いて、図5中に示す矢印C1方向にボルト24bを回転させて締め付ける。これにより、下側受け部24cが図5中に示す矢印D1方向に移動し、上述した工具本体20の受け入れ口に配置されたダンパII形1Aの抑止線6が、下側受け部24cと上側受け部24dとによって上下方向に挟み込まれることになり、図6および図7に示すように、ダンパII形用着脱工具10AによってダンパII形1Aが固定的に保持される。
なお、この取り付け作業の第1段階は、高所で行なう必要はなく、送電線101から離れた安全な場所にて行なうことができる。また、当該取り付け作業の第1段階においては、図示するように予め工具本体20に絶縁棒30が接続されていてもよいし、工具本体20にダンパII形1Aを取り付けた後に工具本体20に絶縁棒30が接続されてもよい。さらには、ダンパII形1Aの送電線把持部2の締め付けボルト5は、送電線把持部2のアーム3とキャップ4との間に送電線101が挿入可能となるように、予め緩めた状態にしておくとよい。
ここで、予め工具本体20の一対の立壁部23の外側表面間の距離を、ダンパII形1Aの一対の重錘部7間の距離に合致させておけば、図7に示すように、ダンパII形1Aの一対の重錘部7のうちの一方(具体的には、図7中において左側に位置する重錘部)を予め工具本体20の一対の立壁部23のうちの一方(具体的には、図7中において左側に位置する立壁部)の外側表面に押し当てた状態とし、この状態において上述したクランプ部24による抑止線6の挟み込みを行なうことにより、自ずとダンパII形用着脱工具10Aに対するダンパII形1Aの位置決め(すなわちセンタリング)が行なえることになる。
また、この取り付け作業の第1段階が終了した後の状態においては、図6および図7に示すように、ダンパII形1Aの送電線把持部2のキャップ4が、工具本体20の一対の立壁部23の間の空間に配置され、さらには、工具本体20の一対のガイドアーム25aが、当該キャップ4の左右の側面に宛がわれた状態となる。なお、このとき、一対のガイドアーム25aは、予めキャップ4の左右の側面に宛がわれる位置に配置しておいてもよいし、工具本体20にダンパII形1Aを取り付けた後に一対のガイドアーム25aを回動させることでキャップ4の左右の側面に宛がわれるようにしてもよい。
加えて、この取り付け作業の第1段階が終了した後の状態においては、図6および図7に示すように、ダンパII形1Aの送電線把持部2の締め付けボルト5が、工具本体20の一対の立壁部23の間の空間に配置された状態となる。ここで、本実施の形態に係るダンパII形用着脱工具10Aにおいては、当該状態において、工具本体20のいずれの部位(たとえば基部21やコネクタ部22等)も、締め付けボルト5の軸線方向において当該締め付けボルト5に正対して位置することがないように構成されている(図9等参照)。
次に、図8に示すように、上述した取り付け作業の第2段階として、ダンパII形用着脱工具10Aによって固定的に保持されたダンパII形1Aを送電線101に引っ掛ける。図8は、当該取り付け作業の第2段階を示す概略斜視図である。
具体的には、図8に示すように、ダンパII形1Aを固定的に保持したダンパII形用着脱工具10Aを送電線101の近傍に配置し、ダンパII形用着脱工具10Aの工具本体20を図8中に示す矢印AR2方向に向けて送電線101に近づけ、送電線把持部2のアーム3とキャップ4との間の隙間に送電線101が配置されるようにし、これによりダンパII形1Aを送電線101に引っ掛ける。
この取り付け作業の第2段階は、送電線101の近傍(すなわち、もっぱら高所)で行なわれる。そのため、安全性の確保の観点から、作業員は、絶縁棒30の工具本体20が接続された側の端部とは反対側の端部寄りの部分を手で持って操作する。このとき、ダンパII形1Aが重量物であることに鑑み、工具本体20は、作業用クレーン等によって懸吊された状態とされることが好ましい。
すなわち、好ましくは、工具本体20は、たとえば図示しない作業用クレーンから垂下された吊り下げロープ(いわゆる絶縁ロープ)41によって吊り下げられた状態とされる。より具体的には、工具本体20に設けられた一対のループ状の係合部26の各々に連結リング40が取り付けられ、当該連結リング40に吊り下げロープ41が挿通されることにより、工具本体20が作業用クレーンによって懸吊される。このようにすれば、重量物であるダンパII形1Aの重みが作業員の手に加わってしまうことが回避でき、作業員への負荷の軽減が図られるとともに、その作業性も大幅に向上することになる。
次に、図9に示すように、上述した取り付け作業の第3段階として、ダンパII形用着脱工具10Aによって固定的に保持されたダンパII形1Aを送電線101に固定する。図9は、当該取り付け作業の第3段階を示す模式側面図である。
具体的には、図9に示すように、ダンパII形用着脱工具10Aに固定的に保持されつつ送電線101に引っ掛けられた状態にあるダンパII形1Aの締め付けボルト5を、図示しない絶縁棒の先端に取り付けられた電動レンチ200を用いて締め付ける。すなわち、電動レンチ200のソケット部201を工具本体20の一対の立壁部23の間の空間に図9中に示す矢印AR3方向に沿って差し込み、これにより当該ソケット部201を締め付けボルト5の頭部に嵌め込み、電動レンチ200を駆動することで締め付けボルト5を図9中に示す矢印A1方向に回転させる。
締め付けボルト5が締め付けられることにより、締め付けボルト5およびこれが嵌め込まれたキャップ4は、図5中に示す矢印B1方向に(すなわちアーム3側に向けて)移動する。このとき、一対のガイドアーム25aによってキャップ4が案内されることにより、締め付けボルト5の回転に伴ってキャップ4が共回りして傾くことが防止でき、送電線101をアーム3とキャップ4とによって確実にかつ強固に把持することが可能になる。
なお、締め付けボルト5の締め付けが完了した後には、電動レンチ200は、一対の立壁部23の間の空間から引き抜かれる。以上により、ダンパII形1Aは、ダンパII形用着脱工具10Aに固定的に保持されつつも、送電線101に強固に固定された状態となる。
次に、図10に示すように、上述した取り付け作業の第4段階として、ダンパII形用着脱工具10AによるダンパII形1Aの固定的な保持を解除する。図10は、当該取り付け作業の第4段階を示す概略斜視図である。
具体的には、図10に示すように、たとえば図示しない絶縁棒の先端に取り付けられた電動レンチを用いて、図10中に示す矢印C2方向にクランプ部24のボルト24bを回転させて緩める。これにより、クランプ部24の下側受け部24cが図10中に示す矢印D2方向に移動し、当該クランプ部24の下側受け部24cおよび上側受け部24dによる抑止線6の挟み込みが解除されることになり、これによってダンパII形用着脱工具10AによるダンパII形1Aの固定的な保持が解除される。
次に、図11に示すように、上述した取り付け作業の第5段階として、ダンパII形用着脱工具10AをダンパII形1Aから引き抜く。図11は、当該取り付け作業の第5段階を示す概略斜視図である。
具体的には、図11に示すように、ダンパII形用着脱工具10Aを図11中に示す矢印AR4方向に向けて移動させ、これにより送電線101に固定されたダンパII形1AからダンパII形用着脱工具10Aを引き抜く。このとき、ダンパII形1Aの抑止線6は、工具本体20の開放された受け入れ口から引き抜かれることになり、ダンパII形1Aのみが送電線101に留まることになる。
以上において説明した作業手順に従うことにより、本実施の形態に係るダンパII形用着脱工具10Aを用いての送電線101へのダンパII形1Aの取り付けが完了する。このように、本実施の形態に係るダンパII形用着脱工具10Aを用いることにより、容易にかつ安全に送電線101に対してダンパII形1Aを取り付けることが可能になる。さらには、絶縁棒や絶縁ロープ等を用いた遠隔操作によって一連の作業が行なえるため、活線状態においても容易にかつ安全に送電線101に対してダンパII形1Aを取り付けることが可能になる。
図12ないし図17は、本実施の形態に係るダンパII形用着脱工具を用いて送電線からダンパII形を取り外す場合の取り外し作業の各段階を示す概略斜視図および模式側面図である。次に、これら図12ないし図17を参照して、本実施の形態に係るダンパII形用着脱工具10Aを用いて送電線101からダンパII形1Aを取り外す場合の取り外し作業の作業手順について詳説する。
まず、図12に示すように、上述した取り外し作業の第1段階として、ダンパII形用着脱工具10Aの工具本体20を送電線101に固定されたダンパII形1Aに差し込む。図12は、当該取り外し作業の第1段階を示す概略斜視図である。
具体的には、図12に示すように、予めクランプ部24のボルト24bを緩めた状態としておき、この状態においてダンパII形1Aの抑止線6が工具本体20の受け入れ口を越えて受け入れ部23aに配置されるように、ダンパII形用着脱工具10Aの工具本体20を図12中に示す矢印AR5方向に向けて移動させてダンパII形1Aに差し込む。
このとき、ダンパII形1Aの送電線把持部2のキャップ4は、工具本体20の一対の立壁部23の間の空間に配置されることになる。その際、工具本体20の一対のガイドアーム25aがキャップ4に接触することで邪魔になることがないように、当該一対のガイドアーム25aは、予め工具本体20の後側端部寄りに回動されて配置されていることが好ましい。また、このとき、ダンパII形1Aが重量物であることに鑑み、工具本体20は、上述した作業用クレーン等によって懸吊された状態とされることが好ましい。
次に、図13ないし図15に示すように、上述した取り外し作業の第2段階として、ダンパII形用着脱工具10Aの工具本体20を送電線101に固定されたダンパII形1Aに取り付ける。図13は、当該取り外し作業の第2段階を示す概略斜視図であり、図14および図15は、それぞれ当該取り外し作業の第2段階が終了した後の状態を示す概略斜視図および模式側面図である。
具体的には、図13に示すように、ダンパII形1Aに差し込まれた状態にある工具本体20のクランプ部24のボルト24bを、たとえば図示しない絶縁棒の先端に取り付けられた電動レンチを用いて、図13中に示す矢印C1方向に回転させて締め付ける。これにより、クランプ部24の下側受け部24cが図13中に示す矢印D1方向に移動し、図14および図15に示すように、クランプ部24の下側受け部24cと上側受け部24dとが互いに当接する。そのため、工具本体20の受け入れ口が当該クランプ部24によって閉鎖されることになる。
これにより、ダンパII形用着脱工具10Aの工具本体20が、送電線101に固定されたダンパII形1Aに取り付けられることになる。なお、この状態においては、ダンパII形1Aの抑止線6が工具本体20の受け入れ口を通過することができないため、ダンパII形用着脱工具10AによってダンパII形1Aが非固定的に保持されることになる。
次に、図16に示すように、上述した取り外し作業の第3段階として、ダンパII形1Aの送電線101への固定を解除する。図16は、当該取り外し作業の第3段階を示す模式側面図である。
具体的には、図16に示すように、送電線101に強固に固定されるとともに、ダンパII形用着脱工具10Aによって非固定的に保持された状態にあるダンパII形1Aの締め付けボルト5を、図示しない絶縁棒の先端に取り付けられた電動レンチ200を用いて緩める。すなわち、電動レンチ200のソケット部201を工具本体20の一対の立壁部23の間の空間に図16中に示す矢印AR6方向に沿って差し込み、これにより当該ソケット部201を締め付けボルト5の頭部に嵌め込み、電動レンチ200を駆動することで締め付けボルト5を図16中に示す矢印A2方向に回転させる。
締め付けボルト5が緩められることにより、締め付けボルト5およびこれが嵌め込まれたキャップ4は、図16中に示す矢印B2方向に(すなわちアーム3側とは反対側に向けて)移動することになる。このとき、上述したように、一対のガイドアーム25aが予め工具本体20の後側端部寄りに回動されて配置されているため、キャップ4は、スムーズに移動することができる。
締め付けボルト5が緩められた後には、送電線把持部2による送電線101の把持が解除されるため、ダンパII形1Aは、その自重によって送電線101から脱落する。しかしながら、上述したように、ダンパII形1Aは、ダンパII形用着脱工具10Aによって非固定的に保持された状態にあるため、ダンパII形1Aが落下することはない。
ここで、送電線101から脱落したダンパII形1Aは、ダンパII形用着脱工具10Aによって受け止められる。そのため、ダンパII形用着脱工具10Aに相当程度の衝撃が発生することになる。しかしながら、上述したように、工具本体20は作業用クレーンによって懸吊された状態にあるため、当該衝撃が作業員の手に加わってしまうことが回避できる。
なお、締め付けボルト5が緩められた後には、電動レンチ200は、一対の立壁部23の間の空間から引き抜かれる。以上により、ダンパII形1Aの送電線把持部2による送電線101の把持を解除され、ダンパII形1Aは、その後においてダンパII形用着脱工具10Aによって非固定的に保持されることになる。
次に、図17に示すように、上述した取り外し作業の第4段階として、ダンパII形1Aを送電線101から引き離す。図17は、当該取り外し作業の第4段階を示す概略斜視図である。
具体的には、図17に示すように、ダンパII形用着脱工具10Aを図17中に示す矢印AR7方向に向けて移動させ、これによりダンパII形用着脱工具10Aによって非固定的に保持されたダンパII形1Aを送電線101から引き離す。その後、ダンパII形1Aは、高所ではない安全な場所においてダンパII形用着脱工具10Aから取り外されて回収される。
以上において説明した作業手順に従うことにより、本実施の形態に係るダンパII形用着脱工具10Aを用いての送電線101へのダンパII形1Aの取り外しが完了する。このように、本実施の形態に係るダンパII形用着脱工具10Aを用いることにより、容易にかつ安全に送電線101に対してダンパII形1Aを取り外すことが可能になる。さらには、絶縁棒や絶縁ロープ等を用いた遠隔操作によって一連の作業が行なえるため、活線状態においても容易にかつ安全に送電線101に対してダンパII形1Aを取り外すことが可能になる。
図18は、図4に示すダンパII形用着脱工具を用いて送電線へダンパII形を取り付ける場合の、位置決め部材を用いた場合の取り付け作業の第1段階が終了した後の状態を示す模式平面図である。以下、この図18を参照して、当該位置決め部材29の構成ならびに使用方法について説明する。
上述したように、工具本体20の一対の立壁部23の外側表面間の距離をダンパII形1Aの一対の重錘部7間の距離に予め合致させておけば、以下において説明する位置決め部材29を用いずとも、ダンパII形用着脱工具10Aに対するダンパII形1Aの位置決め(すなわちセンタリング)が行なえることになる(図7参照)。
しかしながら、ダンパII形1Aには、仕様の異なる複数種が存在し、これらにおいては一対の重錘部7間の距離が相違している。そのため、本実施の形態に係るダンパII形用着脱工具10Aにおいては、一対の立壁部23の外側表面間の距離が、上記複数種のダンパII形1Aのうち、一対の重錘部7間の距離が最も近いものの当該距離に合致するように構成されており、その余の種類のものに用いる場合には、位置決め部材を使用することとしている。
すなわち、図18に示すように、本実施の形態に係るダンパII形用着脱工具10Aにおいては、工具本体20の一対の立壁部23のうちの一方(図18中において左側に位置する立壁部)に略円柱状の外形を有する位置決め部材29が組み付け可能に構成されている。当該位置決め部材29は、上述した一対の重錘部7間の距離が最も近い種類のもの以外のダンパII形用着脱工具の種類毎に予め準備されており、各々の長さ(すなわち、図18中に示す左右方向の大きさ)がこれらに応じて設定されている。
当該位置決め部材29は、個別に一対の立壁部23のうちの上述した一方に組み付けが可能であり、具体的には、当該一方の立壁部23に設けられた貫通孔23b(図4参照)にビス23cを挿し込んでこれを当該一方の立壁部23の外側表面に宛がわれた位置決め部材29のビス孔に螺合することにより、工具本体20に固定される。
これにより、一対の重錘部7間の距離が異なる種類のダンパII形1Aのいずれに対しても、所定の長さの位置決め部材29を予め一対の立壁部23の一方に組み付けておくことにより、ダンパII形1Aの抑止線6が工具本体20の受け入れ口に配置された状態において、ダンパII形1Aの一対の重錘部7のうちの一方と一対の立壁部23のうちの一方との間に当該位置決め部材29が介在することになり、自ずとダンパII形用着脱工具10Aに対するダンパII形1Aの位置決め(すなわちセンタリング)が行なえることになる。
<実施の形態2>
図19は、ダンパI形の送電線への取り付け状態を示す概略斜視図であり、図20は、図19に示すXX−XX線に沿った模式断面図である。まず、本実施の形態に係るダンパI形用着脱工具について説明するに先だって、これら図19および図20を参照して、ダンパI形1Bについて詳説する。
図19および図20に示すように、ダンパI形1Bは、上述したダンパII形1Aと同様に、送電線把持部2と、抑止線6と、一対の重錘部7とを有している。送電線把持部2は、アーム3と、キャップ4と、締め付けボルト5とを含んでおり、このうちのアーム3およびキャップ4によって送電線101が把持される。
ここで、ダンパI形1Bは、上述したダンパII形1Aと比較した場合に、送電線把持部2の抑止線6に対する組み付け角度のみが異なっている。すなわち、ダンパI形1Bにおいては、側面視した状態においてアーム3の上側端部寄りの部分がアーム3の下側端部寄りの部分よりも前方(すなわち、図20中における左方)に配置されるように送電線把持部2が前傾している。これにより、ダンパI形1Bが送電線101に取り付けられた使用状態においては、抑止線6が送電線101の後方下側の位置に配置されることになる。
図21は、本実施の形態に係るダンパI形用着脱工具の概略斜視図である。次に、この図21を参照して、本実施の形態に係るダンパI形用着脱工具10Bの構成について詳説する。
図21に示すように、ダンパI形用着脱工具10Bは、上述したダンパII形用着脱工具10Aと同様に、工具本体20と、絶縁棒30とを備えている。このうち、工具本体20は、基部21と、コネクタ部22と、一対の立壁部23と、一対のクランプ部24と、一対のガイド部25と、一対の係合部26と、押圧部27とを主として有している。
ここで、ダンパI形用着脱工具10Bは、上述したダンパII形用着脱工具10Aと比較した場合に、工具本体20の一対の立壁部23の形状が異なっているとともに、工具本体20に上述のとおり押圧部27が設けられている点において、主としてその構成が相違している。これら構成の相違は、取り付け対象であるダンパI形1BとダンパII形1Aとの構成の差に起因している。
基部21は、左右方向に沿って延在するように位置しており、コネクタ部22は、基部21の左右方向の中央位置に固定されている。基部21の左側端部には、一対の立壁部23のうちの一方が固定されており、基部21の右側端部には、一対の立壁部23のうちの他方が固定されている。
一対の立壁部23の各々は、所定の距離を隔てて対向するように配置されており、いずれもその後側端部寄りの部分が基部21に固定されている。一対の立壁部23の各々は、側面視略h字状の形状を有しており、基部21に固定された側とは反対側に位置する前側端部寄りの部分に、クランプ部24が設けられた受け入れ口を有している。また、一対の立壁部23の各々の受け入れ口よりも後側端部寄りの部分には、当該受け入れ口に通じるように切り欠き形状の受け入れ部23aが設けられている。
一対のガイド部25は、それらのガイドアーム25aがそれぞれ一対の立壁部23の内側表面側に配置された状態で一対の立壁部23に回動可能に組み付けられている。また、一対の係合部26は、それぞれ一対の立壁部23の後側端部寄りの部分であってかつ上側端部寄りの部分に設けられている。
なお、工具本体20に設けられた受け入れ口、受け入れ部23a、クランプ部24、ガイド部25および係合部26の構成は、いずれも上述したダンパII形用着脱工具10Aにおけるそれらの構成に準じており、それらの機能も同じである。
押圧部27は、一対の立壁部23の間の空間に配置されている。より詳細には、押圧部27は、基部21の内側表面から立設された軸部27aと、当該軸部27aよりも工具本体20の前側端部寄りの位置に配置された押圧ディスク27bと、これら軸部27aおよび押圧ディスク27bの間に位置する付勢ばね27cと、押圧ディスク27bに取り付けられた拘束バンド27dとを含んでいる。なお、基部21の所定位置には、フック21aが設けられており、当該フック21aは、拘束バンド27dを引っ掛けることが可能に構成されている。
このうち、押圧ディスク27bは、図21中に示す矢印F方向に移動可能に構成されている。すなわち、付勢ばね27cは、押圧ディスク27bを軸部27aから遠ざける方向に向けて弾性付勢するものであり、拘束バンド27dが上述したフック21aに引っ掛けられた状態においては、付勢ばね27cが圧縮した状態にあり、これにより押圧ディスク27bは、その移動が規制されている。しかしながら、拘束バンド27dが上述したフック21aから外された状態においては、押圧ディスク27bは、その拘束が解除されることになり、付勢ばね27cによって押圧されて工具本体20の前側端部側に向けて移動することになる。
当該構成の押圧部27が工具本体20に設けられることにより、クランプ部24によってダンパI形1Bの抑止線6が保持された状態(すなわち、後述するようにダンパI形用着脱工具10BによってダンパI形1Bが固定的に保持された状態)において、この押圧部27によってダンパI形1Bの送電線把持部2のキャップ4がアーム3に対して押圧されることになるが、この点については後において詳述することとする。
図22ないし図25は、本実施の形態に係るダンパI形用着脱工具を用いて送電線へダンパI形を取り付ける場合の取り付け作業の各段階のうちの所定段階を示す概略斜視図、模式平面図および模式側面図である。次に、これら図22ないし図25を参照して、本実施の形態に係るダンパI形用着脱工具10Bを用いて送電線101へダンパI形1Bを取り付ける場合の取り付け作業の作業手順について詳説する。
ここで、本実施の形態に係るダンパI形用着脱工具10Bを用いたダンパI形1Bの送電線101への取り付け作業は、上述したダンパII形用着脱工具10Aを用いたダンパII形1Aの送電線101への取り付け作業(図5ないし図11参照)に準じたものであるため、その大部分の説明はここでは省略する。
まず、図22および図23に示すように、上述した取り付け作業の第1段階として、ダンパI形用着脱工具10Bの工具本体20によってダンパI形1Bを固定的に保持する。図22および図23は、それぞれ当該取り付け作業の第1段階が終了した後の状態を示す概略斜視図および模式平面図である。
具体的には、予めクランプ部24のボルト24bを緩めた状態としておき、この状態においてダンパI形1Bの抑止線6が工具本体20の受け入れ口に配置されるように、ダンパI形1Bを工具本体20に挿入する。続いて、たとえば電動レンチを用いて、ボルト24bを回転させて締め付ける。これにより、図22および図23に示すように、ダンパI形用着脱工具10BによってダンパI形1Bが固定的に保持される。
なお、その際、押圧部27は、予め拘束バンド27dがフック21aに引っ掛けられた状態としておく。これにより、押圧部27がキャップ4に接触することで邪魔になることがなくなるため、スムーズにダンパI形用着脱工具10BによってダンパI形1Bを固定的に保持させることが可能になる。
また、この取り付け作業の第1段階が終了した後の状態においては、工具本体20の一対のガイドアーム25aが、ダンパI形1Bの送電線把持部2のキャップ4の左右の側面に宛がわれた状態となる。さらには、この取り付け作業の第1段階が終了した後の状態においては、ダンパI形1Bの送電線把持部2の締め付けボルト5が、工具本体20の一対の立壁部23の間の空間に配置された状態となる。
ここで、本実施の形態に係るダンパI形用着脱工具10Bにおいては、当該状態において、工具本体20のいずれの部位(たとえば基部21やコネクタ部22等)も、締め付けボルト5の軸線方向において当該締め付けボルト5に正対して位置することがないように構成されている(図25等参照)。
次に、図24に示すように、上述した取り付け作業の第1段階の付加作業として、ダンパI形用着脱工具10Bによって固定的に保持されたダンパI形1Bの送電線把持部2のキャップ4が工具本体20に設けられた押圧部27によって押圧された状態とする。図24は、当該取り付け作業の第1段階の付加作業が終了した後の状態を示す模式平面図である。
具体的には、拘束バンド27dをフック21aから外す。これにより、押圧ディスク27bは、その拘束が解除されることによって付勢ばね27cによって押圧されて工具本体20の前側端部側に向けて移動することになり、これによって送電線把持部2のキャップ4に当接する。このキャップ4に対する押圧ディスク27bの当接により、付勢ばね27cの弾性付勢力が当該押圧ディスク27bを介してキャップ4に付加されることになり、キャップ4が図24中に示す矢印F1方向に向けて(すなわちアーム3側に向けて)押圧されることになる。
次に、上述した取り付け作業の第2段階として、ダンパI形用着脱工具10Bによって固定的に保持されたダンパI形1Bを送電線101に引っ掛け、その後、図25に示すように、上述した取り付け作業の第3段階として、ダンパI形用着脱工具10Bによって固定的に保持されたダンパI形1Bを送電線101に固定する。図25は、当該取り付け作業の第3段階を示す模式側面図である。
具体的には、図25に示すように、ダンパI形用着脱工具10Bに固定的に保持されつつ送電線101に引っ掛けられた状態にあるダンパI形1Bの締め付けボルト5を、図示しない絶縁棒の先端に取り付けられた電動レンチ200を用いて締め付ける。すなわち、電動レンチ200のソケット部201を工具本体20の一対の立壁部23の間の空間に図25中に示す矢印AR3方向に沿って差し込み、これにより当該ソケット部201を締め付けボルト5の頭部に嵌め込み、電動レンチ200を駆動することで締め付けボルト5を図25中に示す矢印A1方向に回転させる。
締め付けボルト5が締め付けられることにより、締め付けボルト5およびこれが嵌め込まれたキャップ4は、図25中に示す矢印B1方向に(すなわちアーム3側に向けて)移動する。このとき、一対のガイドアーム25aによってキャップ4が案内されることにより、締め付けボルト5の回転に伴ってキャップ4が共回りして傾くことが抑制でき、送電線101をアーム3とキャップ4とによって強固に把持することが可能になる。
しかしながら、本実施の形態においては、上述した実施の形態1と比べた場合に、工具本体20の構造上、一対のガイドアーム25aが宛がわれる部分のキャップ4の左右の側面の領域が小さくなる(すなわち、一対のガイドアーム25aの先端部のみがキャップ4の左右の側面に宛がわれた状態となる)ため、場合によっては、締め付けボルト5の回転に伴ってキャップ4が共回りして傾いてしまうことを完全には防止できないおそれがある。
この点、本実施の形態に係るダンパI形用着脱工具10Bにおいては、上述したようにキャップ4をアーム3側に向けて押圧する押圧部27が工具本体20に設けられているため、当該押圧部27によってキャップ4に傾きが生じることが効果的に防止できることになり、送電線101をアーム3とキャップ4とによって確実にかつ強固に把持することが可能になる。
なお、締め付けボルト5の締め付けが完了した後には、電動レンチ200は、一対の立壁部23の間の空間から引き抜かれる。以上により、ダンパI形1Bは、ダンパI形用着脱工具10Bに固定的に保持されつつも、送電線101に強固に固定された状態となる。
次に、上述した取り付け作業の第4段階として、ダンパI形用着脱工具10BによるダンパI形1Bの固定的な保持を解除し、その後、上述した取り付け作業の第5段階として、ダンパI形用着脱工具10BをダンパI形1Bから引き抜く。
以上において説明した作業手順に従うことにより、本実施の形態に係るダンパI形用着脱工具10Bを用いての送電線101へのダンパI形1Bの取り付けが完了する。このように、本実施の形態に係るダンパI形用着脱工具10Bを用いることにより、容易にかつ安全に送電線101に対してダンパI形1Bを取り付けることが可能になる。さらには、絶縁棒や絶縁ロープ等を用いた遠隔操作によって一連の作業が行なえるため、活線状態においても容易にかつ安全に送電線101に対してダンパI形1Bを取り付けることが可能になる。
図26および図27は、本実施の形態に係るダンパI形用着脱工具を用いて送電線からダンパI形を取り外す場合の取り外し作業の各段階のうちの所定段階を示す模式側面図である。次に、これら図26および図27を参照して、本実施の形態に係るダンパI形用着脱工具10Bを用いて送電線101からダンパI形1Bを取り外す場合の取り外し作業の作業手順について詳説する。
ここで、本実施の形態に係るダンパI形用着脱工具10Bを用いたダンパI形1Bの送電線101からの取り外し作業は、上述したダンパII形用着脱工具10Aを用いたダンパII形1Aの送電線101からの取り外し作業(図12ないし図17参照)に準じたものであるため、その大部分の説明はここでは省略する。
まず、図26に示すように、上述した取り外し作業の第1段階として、ダンパI形用着脱工具10Bの工具本体20を送電線101に固定されたダンパI形1Bに差し込み、その後、上述した取り外し作業の第2段階として、ダンパI形用着脱工具10Bの工具本体20を送電線101に固定されたダンパI形1Bに取り付ける。図26は、当該取り外し作業の第2段階が終了した後の状態を示す模式側面図である。
具体的には、予めクランプ部24のボルト24bを緩めた状態としておき、この状態においてダンパI形1Bの抑止線6が工具本体20の受け入れ口を越えて受け入れ部23aに配置されるように、ダンパI形用着脱工具10Bの工具本体20を移動させてダンパI形1Bに差し込む。そして、ダンパI形1Bに差し込まれた状態にある工具本体20のクランプ部24のボルト24bを、たとえば図示しない絶縁棒の先端に取り付けられた電動レンチを用いて締め付け、これにより工具本体20の受け入れ口を当該クランプ部24によって閉鎖する。
これにより、ダンパI形用着脱工具10Bの工具本体20が、送電線101に固定されたダンパI形1Bに取り付けられることになる。なお、この状態においては、ダンパI形1Bの抑止線6が工具本体20の受け入れ口を通過することができないため、ダンパI形用着脱工具10BによってダンパI形1Bが非固定的に保持されることになる。
その際、工具本体20の一対のガイドアーム25aがキャップ4に接触することで邪魔になることがないように、当該一対のガイドアーム25aは、予め工具本体20の上方側を向くように回動されて配置されていることが好ましい。また、その際、押圧部27は、予め拘束バンド27dがフック21aに引っ掛けられた状態としておく。これにより、押圧部27がキャップ4に接触することで邪魔になることがなくなるため、スムーズにダンパI形用着脱工具10BによってダンパI形1Bを非固定的に保持させることが可能になる。
次に、図27に示すように、上述した取り外し作業の第3段階として、ダンパI形1Bの送電線101への固定を解除する。図27は、当該取り外し作業の第3段階を示す模式側面図である。
具体的には、図27に示すように、送電線101に強固に固定されるとともに、ダンパI形用着脱工具10Bによって非固定的に保持された状態にあるダンパI形1Bの締め付けボルト5を、図示しない絶縁棒の先端に取り付けられた電動レンチ200を用いて緩める。すなわち、電動レンチ200のソケット部201を工具本体20の一対の立壁部23の間の空間に図27中に示す矢印AR6方向に沿って差し込み、これにより当該ソケット部201を締め付けボルト5の頭部に嵌め込み、電動レンチ200を駆動することで締め付けボルト5を図27中に示す矢印A2方向に回転させる。
締め付けボルト5が緩められることにより、締め付けボルト5およびこれが嵌め込まれたキャップ4は、図27中に示す矢印B2方向に(すなわちアーム3側とは反対側に向けて)移動することになる。このとき、上述したように、一対のガイドアーム25aが予め工具本体20の上方側を向くように回動されて配置されているため、キャップ4は、スムーズに移動することができる。
締め付けボルト5が緩められた後には、送電線把持部2による送電線101の把持が解除されるため、ダンパI形1Bは、その自重によって送電線101から脱落する。しかしながら、上述したように、ダンパI形1Bは、ダンパI形用着脱工具10Bによって非固定的に保持された状態にあるため、ダンパI形1Bが落下することはない。
なお、締め付けボルト5が緩められた後には、電動レンチ200は、一対の立壁部23の間の空間から引き抜かれる。以上により、ダンパI形1Bの送電線把持部2による送電線101の把持を解除され、ダンパI形1Bは、その後においてダンパI形用着脱工具10Bによって非固定的に保持されることになる。
次に、上述した取り外し作業の第4段階として、ダンパI形1Bを送電線101から引き離し、その後、ダンパI形1Bは、高所ではない安全な場所においてダンパI形用着脱工具10Bから取り外されて回収される。
以上において説明した作業手順に従うことにより、本実施の形態に係るダンパI形用着脱工具10Bを用いての送電線101へのダンパI形1Bの取り外しが完了する。このように、本実施の形態に係るダンパI形用着脱工具10Bを用いることにより、容易にかつ安全に送電線101に対してダンパI形1Bを取り外すことが可能になる。さらには、絶縁棒や絶縁ロープ等を用いた遠隔操作によって一連の作業が行なえるため、活線状態においても容易にかつ安全に送電線101に対してダンパI形1Bを取り外すことが可能になる。
<その他の形態等>
上述した本発明の実施の形態1,2において開示した架空電線用ダンパの着脱工具としてのダンパII形用着脱工具およびダンパI形用着脱工具の工具本体の具体的な構成は、適宜その変更が可能である。すなわち、工具本体に一対の立壁部、受け入れ口、クランプ部および受け入れ部が設けられる限りにおいては、これらを含む各部の形状や材質、当該各部が設けられる位置、個数等を種々変更することができる。
また、上述した本発明の実施の形態1,2において開示した特徴的な構成は、当然に相互にこれらを組み合わせることができる。
さらには、上述した本発明の実施の形態1,2においては、架空電線用ダンパの着脱工具として、送電線用ダンパの送電線への取り付けおよび取り外しに使用されるものを例示して説明を行なったが、本発明の適用対象は、これに限定されるものではない。
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。