以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
更に、実施の形態で用いる図面においては、構造物を区別するために付したハッチング(網掛け)を図面に応じて省略する場合もある。
なお、以下の実施の形態においてA〜Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
(実施の形態)
<鉄道車両及び騒音低減装置>
始めに、本発明の一実施形態である実施の形態の騒音低減装置を備えた鉄道車両及び騒音低減装置について説明する。
図1は、実施の形態の騒音低減装置を備えた鉄道車両を模式的に示す正面図である。図2は、実施の形態の騒音低減装置を備えた鉄道車両を模式的に示す平面図である。図3は、実施の形態の騒音低減装置を備えた鉄道車両を模式的に示す断面図である。図3は、図2のC−C線に沿った断面を示す。図4は、実施の形態の騒音低減装置を備えた鉄道車両を模式的に示す斜視図である。図5は、実施の形態の騒音低減装置を備えた鉄道車両のうち遮音板の周辺の構造を示す図である。図5(a)は、遮音板の周辺の構造を拡大して示す断面図であり、図5(b)は、遮音板を拡大して示す平面図である。
図1乃至図4に示すように、鉄道1は、路盤2と、軌道3と、架線4と、を備え、このような鉄道1を、鉄道車両5が通行する。また、鉄道車両5は、車体6と、集電装置7と、騒音低減装置8と、を備えている。
路盤2は、軌道3を支持する基盤であり、鉄道車両5が通過するときに荷重を支持する構造物である。路盤2は、例えば、スラブ軌道区間に設置された路盤コンクリート、又は、良質な自然土などを用いて締め固められた土路盤等である。
軌道3は、一対のレール3aと、スラブ板(軌道スラブ)3bと、を有する。鉄道車両5は、軌道3に沿って走行する。一対のレール3aは、鉄道車両5の車輪を案内する。スラブ板(軌道スラブ)3bは、一対のレール3aを支持する矩形平板状のプレキャストのコンクリート板よりなる。
架線4は、線路上空に架設される架空電車線である。架線4は、所定の間隔をあけて図示しない支持構造物によって支持点で支持されている。架線4は、トロリ線4aを有する。トロリ線4aは、集電装置7のすり板7aが接触する電線であり、集電装置7のすり板7aが接触移動することによって、鉄道車両5に負荷電流を供給、即ち鉄道車両5を駆動するための電力を集電する。
前述したように、鉄道車両5は、軌道3に沿って走行する。鉄道車両5は、電車又は電気機関車などの電気車としての鉄道車両であり、例えば高速で走行する新幹線等の鉄道車両である。
車体6は、乗客又は貨物などの積載物を積載し輸送するための構造物である。車体6は、屋根6aを備えている。屋根6a上には、集電装置7などの屋根上機器が設置されている。
集電装置7は、パンタグラフとも称され、架線4のトロリ線4aから電力を集電して鉄道車両5に導くための装置である。集電装置7は、すり板7aと、集電舟(舟体)7bと、ホーン7cと、枠組7dと、台枠7eと、碍子7fと、を有する。
すり板7aは、トロリ線4aと接触する。すり板7aは、集電舟(舟体)7bに取り付けられている。ホーン7cは、鉄道車両5が分岐器を通過するときに、この分岐器の上方で交差する2本のトロリ線4aのうち鉄道車両5の進行方向とは異なる方向のトロリ線4aへの割込みを防止する。枠組7dは、集電舟7bを支持し、枠組7dが上下方向に昇降することにより、集電装置7は、折畳可能である。台枠7eは、枠組7dを支持する。碍子7fは、車体6と台枠7eとの間を電気的に絶縁する。集電装置7は、鉄道車両5の進行方向に対して非対称であってもよく、このような場合、集電装置7は、一方向又は両方向に使用可能なシングルアーム式パンタグラフである。
騒音低減装置8は、鉄道車両5の屋根6a上に設けられた集電装置7から発生する騒音Sを低減する。騒音低減装置8は、集電装置7が風を切ることによって発生する空力音(風きり音)、集電装置7のすり板7aとトロリ線4aとの間に発生するスパーク音、及び、すり板7aがトロリ線4aと接触移動することによって発生するしゅう動騒音等の騒音を低減する。騒音低減装置8は、例えば、制振性能を有し耐久性と剛性が高い金属製又は合成樹脂製の軽量な薄板状の部材であり、空力抵抗を低減し空力音の発生を抑えるように流線型に形成されている。
なお、図1乃至図4では図示を省略するが、騒音低減装置8は、集電装置7の周囲に設置され、風防とも称される碍子カバー部などを有してもよい。
騒音低減装置8は、遮音板9としての遮音板9a及び遮音板9bを有する。遮音板9a及び遮音板9bは、集電装置7から発生する騒音Sを遮る部材である。遮音板9a及び遮音板9bは、鉄道車両5の幅方向であるA方向において、集電装置7の両側に、集電装置7の側面を覆う(騒音源を隠す)ようにそれぞれ配置されたパンタグラフ遮音板(二面側壁)である。遮音板9a及び遮音板9bの集電装置7側(車両中心側)の側面には、集電装置7と対向するように、吸音材等が装着されている。
遮音板9としての遮音板9a及び遮音板9bは、鉄道車両5が軌道3上で停止しているときに、鉄道車両5が超えてはならない上下左右の限界である車両限界内に設置されている。
図1乃至図5に示すように、遮音板9は、壁部11と、壁部11から突出した突出部12と、を有する。壁部11は、屋根6a上に設けられ、鉄道車両5の幅方向であるA方向において集電装置7と対向し、鉄道車両5の進行方向であるB方向に延在し、且つ、騒音を低減する。突出部12は、壁部11のうち最上部11aと接続され、且つ、平面視において最上部11aからA方向における集電装置7側に向かって突出している。好適には、突出部12の上面は、壁部11の上面と同一面である。
また、好適には、壁部11は、B方向に沿って一方の側から他方の側に順次配置された、前端部11b、中央部11c及び後端部11dを含む。中央部11cは、B方向における中央に配置された部分である。このとき、前端部11bの高さVH1は、B方向において前端部11b側から後端部11d側に向かって増加し、中央部11cの高さVH1は、B方向において一定であり、後端部11dの高さVH1は、B方向において前端部11b側から後端部11d側に向かって減少している。その結果、壁部11は、A方向から視たときに、山形形状、例えば、下底辺、下底辺よりも短い上底辺、及び、左右両側の2つの斜辺を有する台形形状を、備えている。
壁部11のうち、B方向における中央部11cは、最上部11aを含む。なお、本願明細書において、最上部11aとは、壁部11のうち、例えば壁部11の上下方向における最高の高さ位置から、突出部12の上下方向における高さ(厚さ)に略等しい高さだけ下方の高さ位置までの範囲に含まれる部分を意味する。即ち、本願明細書において、最上部11aとは、壁部11のうち、例えば壁部11の上下方向における高さ位置が最高である最高地点を含む部分を意味する。
また、突出部12の好適な形状の詳細については、後述する。
図1乃至図4に示すように、鉄道車両5がB方向に走行する際に、集電舟7b、ホーン7c、枠組7d、台枠7e及び碍子7f等から空力音が発生する。また、すり板7aがトロリ線4aと接触移動するとしゅう動騒音が発生する。或いは、すり板7aとトロリ線4aとが離れると、すり板7aとトロリ線4aとの間にスパーク音が発生する。その結果、図1及び図2に示すように、集電装置7からA方向(鉄道車両5の幅方向)における両側に向かって空気中を伝播する騒音Sが発生するが、発生した騒音Sを、遮音板9a及び遮音板9bが遮ることにより、騒音Sを低減することができる。
また、A方向における集電装置7の両側にそれぞれ遮音板9a及び遮音板9bが設けられていることにより、集電装置7から遮音板9a及び遮音板9bに到達した騒音Sを、音源側、即ち集電装置7側に二重回折させて、遮音板9aと遮音板9bとの間に騒音Sの音響エネルギーを閉じ込めることができる。これにより、集電装置7からA方向における両側に向かって空気中を伝播する騒音Sを、更に低減することができる。
<突出部>
次に、本実施の形態の騒音低減装置8の突出部12について、突出部12を有しない比較例の騒音低減装置8と比較しながら説明する。また、本発明者らが、本実施の形態の騒音低減装置8を備えた鉄道車両5に対応した形状モデルと、比較例の騒音低減装置8を備えた鉄道車両5に対応した形状モデルとを用いて数値流体解析を行い、当該数値流体解析の結果から、突出部12を有する騒音低減装置8の着想に至った技術思想について説明する。
図6は、比較例の騒音低減装置を備えた鉄道車両を模式的に示す斜視図である。
図6に示すように、比較例の騒音低減装置8が有する遮音板9は、突出部12(図4参照)を有さず、壁部11のみを有する。即ち、図1乃至図4に示す本実施の形態の騒音低減装置8は、突出部12を有する点を除いて、図6に示す比較例の騒音低減装置8と同様である。
図6に示すような壁部11のみを有する遮音板9の形状については、従来は遮音性という観点から、評価されていたものの、走行中の鉄道車両5が例えば横風を受けたときの空力特性という観点からは、評価されていなかった。そのため、走行中の鉄道車両5が横風を受けたときに、集電装置7の空力特性を安定化させることができるか、又は、集電装置7の空力特性に影響(悪影響)が及ぼされないかが、不明であった。
一方で、鉄道車両5が例えば高速走行時等の走行時に安定して走行するためには、走行中の鉄道車両5が例えば横風を受けたときでも、集電装置7の空力特性を安定化させることができることが望ましく、集電装置7の空力特性に影響(悪影響)が及ぼされないことが望ましい。
そこで、本発明者らは、図6に示す比較例の騒音低減装置を備えた鉄道車両に対応した形状モデルと、図4に示す本実施の形態の騒音低減装置を備えた鉄道車両に対応した形状モデルとを用いて、数値流体解析を行った。その結果、遮音板9が突出部12(図4参照)を有しない比較例の騒音低減装置8においては、壁部11付近で発生した渦が集電装置7の集電舟7bに近づくことにより、集電舟7b付近で風速分布が生じることを見出し、集電装置7の空力特性に影響(悪影響)が及ぼされるおそれがあることを見出した。また、遮音板9が突出部12を有する本実施の形態の騒音低減装置8においては、壁部11付近、即ち集電舟7bの周囲で発生した渦を集電装置7の集電舟7bから離すことにより、集電舟7b付近に生じる風速分布を低減できることを見出し、集電装置7の空力特性を安定化させることができることを見出した。
図7は、図6に示す比較例の騒音低減装置を備えた鉄道車両に対応した形状モデルを示す図である。図8は、図4に示す実施の形態の騒音低減装置を備えた鉄道車両に対応した形状モデルを示す図である。
このような図7及び図8に示す形状モデルを用い、走行中の鉄道車両5(図4参照)が横風、即ち鉄道車両5の幅方向であるA方向(図4参照)において壁部11から集電装置7に向かう風(横風)を受けたときの、集電舟7b付近の風速分布について、数値流体解析を行った。数値流体解析として、具体的には、基礎方程式を非圧縮性流体のナヴィエ・ストークスの式とし、乱流解析方法をラージ・エディ・シミュレーションとし、差分法により数値計算を行った。
また、数値流体解析の条件として、風向角を20°とした条件、即ち、走行中の鉄道車両5が受ける風が、平面視において、鉄道車両5の進行方向であるB方向(図4参照)に対して20°傾斜している条件を用いた。これは、例えば時速200km/hで走行中の鉄道車両5が、例えば風速20m/sの横風を受ける場合に相当する。
また、上記した数値流体解析に際しては、図7及び図8に示す形状モデルに加えて、鉄道車両5(図4参照)が騒音低減装置8(図4参照)を全く有しない、即ち鉄道車両5が遮音板9(図4参照)さえも有しない形状モデルも用いた。以下では、この鉄道車両5が騒音低減装置8を全く有しない形状モデルを用いた解析例を、解析例1と称し、図7に示す形状モデルを用いた解析例を、解析例2と称し、図8に示す形状モデルを用いた解析例を、解析例3と称する。なお、図8に示す形状モデルでは、突出部12がA方向(鉄道車両5の幅方向)において壁部11から集電装置7側に突出した突出幅HW1(図5参照)を、500mmとしている。また、突出部12の上下方向における高さ(厚さ)を、145mmとしている。
図9は、解析例1における鉄道車両周辺の時間平均速度分布を示す図である。図10は、解析例2における鉄道車両周辺の時間平均速度分布を示す図である。図11は、解析例2における鉄道車両周辺の渦構造を可視化した図である。図12は、解析例3における鉄道車両周辺の時間平均速度分布を示す図である。図13は、解析例3における鉄道車両周辺の渦構造を可視化した図である。
なお、図9、図10及び図12では、B方向(鉄道車両5の進行方向)における集電舟7b(図4参照)の中心位置を通り、且つ、B方向に垂直な断面における時間平均速度分布が示され、時間平均速度は、例えば車両への流入速度(列車速度と横風を合成したもの(例:列車速度200km/hで横風20m/sのときの流入速度は59m/s))の場合における時間平均速度が1.0となるように、規格化されている(以下の時間平均速度分布を示すグラフにおいても同様。)。また、図9、図10及び図12では、集電舟7bを太線により示している(以下の時間平均速度分布を示すグラフにおいても同様)。また、図11及び図13では、鉄道車両5の周辺における時間平均速度の速度勾配テンソルの第2不変量がある閾値よりも大きくなる領域のみが表示されることにより、渦が発生している箇所が可視化されている(以下の渦構造を可視化したグラフにおいても同様)。
壁部11(図6参照)が設けられている場合(解析例2)には、図10に示すように、壁部11のうち最上部11a(図6参照)と集電舟7b(図6参照)との間、即ち、最上部11aよりもA方向(鉄道車両5の幅方向)において集電装置7(図6参照)側に、渦が発生している。一方、壁部11が設けられていない場合(解析例1)には、図9に示すように、渦は発生していない。従って、走行中の鉄道車両5が横風を受けたときに、壁部11が設けられていることにより、壁部11のうち最上部11aと集電舟7bとの間に、渦が発生することが明らかになった。
また、図11に示すように、渦は、壁部11(図6参照)よりもA方向(鉄道車両5の幅方向)における集電装置7(図6参照)側に発生するが、A方向における壁部11と渦との距離は、B方向(鉄道車両5の走行方向)における前端部11b(図6参照)側からB方向における後端部11d(図6参照)側に向かって増加している。即ち、壁部11が設けられていることにより発生する渦は、壁部11の前端部11b付近で発生し、発生した渦は、B方向における前端部11b側よりもB方向における後端部11d側において、集電装置7により近づく。
このように、遮音板9(図6参照)が壁部11のみを有する場合には、渦が集電装置7に近づくと、集電舟7bが渦の影響(悪影響)を受けて、例えば上下に揺動されること等により、集電装置7の空力特性が不安定化し、集電装置7の空力特性に影響(悪影響)を及ぼすおそれがある。
一方、壁部11(図4参照)に加えて突出部12(図4参照)が設けられている場合(解析例3)には、図12及び図13に示すように、壁部11の前端部11b(図4参照)付近で発生する渦の量が減少する。また、渦が発生する領域は、図10に示す場合(解析例2)に比べて、A方向において集電装置7(図4参照)からより離れた領域である。即ち、壁部11の付近で発生する渦は、突出部12上に略固定された状態となっており、集電装置7の集電舟7bに影響(悪影響)を及ぼさない。なお、解析例3では、壁部11の外側角部の上方に別の渦が発生しているが、この渦はA方向において集電装置7(図4参照)からより離れた領域である。即ち、壁部11の外側角付近で発生する渦は、集電装置7の集電舟7bに影響(悪影響)を及ぼさない。
従って、遮音板9(図4参照)が壁部11に加えて突出部12を有する場合には、遮音板9が壁部11に加えて突出部12を有しない場合に比べて、渦が集電装置7から離れる。そのため、壁部11が設けられたことにより発生する渦が集電装置7に近づくことを防止又は抑制し、集電装置7に近づいた渦により集電舟7bが例えば上下に揺動されること等を防止又は抑制することができるので、渦が集電舟7bに及ぼす影響(悪影響)を低減することができ、集電装置7の空力特性を安定化させることができる。即ち、遮音板9が壁部11に加えて突出部12を有することにより、走行中の鉄道車両5が横風を受けたときに、集電装置7の集電舟7b付近の風速分布を改善することができる。
このように、本発明者らは、集電装置7が発生する騒音を低減するために壁部11のみを有する遮音板9が設けられている場合には、壁部11付近で発生した渦が集電装置7に近づいて集電装置7の空力特性を不安定化させることを、初めて見出した。また、本発明者らは、壁部11のみならず突出部12を有する遮音板9が設けられることにより、壁部11付近、即ち集電舟7bの周囲で発生した渦を集電舟7bから離すことができ、集電装置7の空力特性を安定化させることができることを、初めて見出した。
即ち、本発明者らの技術思想によれば、遮音板9は、壁部11と、安定化部としての突出部12と、を有することになる。この場合、突出部12は、壁部11の最上部11aに限定されず、壁部11の上部、即ち壁部11のうち上下方向における中央よりも上方に配置された部分と接続されていればよい。壁部11は、前述したように、屋根6a上に設けられ、A方向(鉄道車両5の幅方向)において集電装置7と対向し、且つ、騒音を低減する。安定化部としての突出部12は、壁部11の上部と接続され、且つ、走行中の鉄道車両5がA方向において壁部11から集電装置7に向かう風(横風)を受けたときに、集電装置7に含まれる集電舟7bの例えば空気抵抗、揚力又は横風安定性等の空力特性を安定化させる。具体的には、突出部12は、走行中の鉄道車両5が横風を受けたときに壁部11の付近、即ち集電舟7bの周囲で発生する渦を集電舟7bから離すことにより、集電舟7bの空力特性を安定化させる。
上記特許文献1には、集電装置用防音側壁において、側壁上辺部の近傍に騒音回折防止用の突起が設けられている技術が開示されている。また、上記特許文献2には、移動車両用遮音装置において、回折又は反射した騒音が伝播するのを抑制するため、遮音体に枝分かれした遮音体が設けられている技術が開示されている。しかし、上記特許文献1に記載された突起、及び、上記特許文献2に記載された枝分かれした遮音体のいずれも、騒音の回折又は反射を防止するためのものであって、集電舟即ち集電装置の空力特性を安定化させるためのものではない。そのため、本発明者らが見出した突出部12の機能、作用及び効果は、上記特許文献1に記載された突起、及び、上記特許文献2に記載された枝分かれした遮音体のいずれの機能、作用及び効果とも異なる。
好適には、突出部12は、水平方向に延在し、且つ、例えば145mm以下の上下方向の高さ(厚さ)を有する薄い平板よりなる。そのため、走行中の鉄道車両5が横風を受けないとき(通常走行時)に、遮音板9自体の空力特性に影響(悪影響)を及ぼすことを防止又は抑制することができる。
また、突出部12は、走行中の鉄道車両5が横風を受けないとき(通常走行時)に、鉄道車両5の屋根6a上の気流を整流する整流装置として機能させることができる。これにより、鉄道車両5全体の空力特性を改善することができる。
<突出部が突出する側>
次に、走行中の鉄道車両5が横風を受けたときに集電装置7の空力特性を安定化させるためには、突出部12が、A方向(鉄道車両5の幅方向、図4参照)において、壁部11よりも集電装置7側(車両中心側)に突出した方がよいか、壁部11よりもA方向における集電装置7側と反対側(車両外側)に突出した方がよいかについて、説明する。
図14は、実施の形態の第1変形例の騒音低減装置を備えた鉄道車両に対応した形状モデルを示す図である。図14に示すように、本第1変形例では、実施の形態と異なり、突出部12は、壁部11のうち最上部11a(図4参照)と接続されているものの、突出部12は、最上部11aから、A方向における集電装置7(図4参照)側と反対側に向かって突出している。
このような図14に示す形状モデルを用い、例えば図8に示す形状モデルを用いた場合と同様の数値流体解析を行った。図14に示す形状モデルを用いた解析例を、解析例4と称する。
図15は、解析例4における鉄道車両周辺の時間平均速度分布を示す図である。図16は、解析例4における鉄道車両周辺の渦構造を可視化した図である。
解析例4(図15及び図16参照)において、壁部11よりもA方向における集電装置7側で渦が発生する領域は、A方向において集電装置7に近づいた領域であり、解析例2(図10及び図11参照)と略同様である。また、解析例4において、壁部11よりもA方向における集電装置7側で渦が発生する領域は、解析例3(図12及び図13参照)に比べて、A方向において集電装置7により近づいた領域である。なお、解析例4では、車両外側に突出した突出部12の上方には、別の渦が発生している。
従って、解析例3を解析例4と比較すると、突出部12が車両中心側に向かって突出した場合には、突出部12が車両外側に向かって突出した場合に比べて、渦が集電装置7から離れる。そのため、突出部12が車両中心側に向かって突出した場合には、突出部12が車両外側に向かって突出した場合に比べて、渦が集電装置7に近づくことを防止又は抑制し、集電装置7に近づいた渦により集電舟7bが例えば上下に揺動されること等を防止又は抑制することができるので、渦が集電舟7bに及ぼす影響を低減することができる。即ち、突出部12がA方向において壁部11よりも集電装置7側(車両中心側)に突出した方が、突出部12がA方向において壁部11よりも集電装置7側と反対側(車両外側)に突出した場合よりも、走行中の鉄道車両5が横風を受けたときに集電装置7の空力特性を安定化させる効果が大きい。
なお、図示は省略するが、突出部12は、車両中心側及び車両外側の両側に突出してもよい。このような場合、突出部12がA方向において壁部11よりも車両中心側のみに突出した場合と、略同様の効果が得られる。
<突出部と水平面との間の角度>
次に、走行中の鉄道車両5が横風を受けたときに集電装置7の空力特性を安定化させるために好適な突出部12と水平面との間の角度について、説明する。
図17は、実施の形態の第2変形例の騒音低減装置を備えた鉄道車両に対応した形状モデルを示す図である。図17に示すように、本第2変形例では、実施の形態と異なり、突出部12は、突出部12のうちA方向(鉄道車両5の幅方向、図4参照)における集電装置7側の端部が、突出部12のうちA方向における集電装置7側と反対側の端部よりも低くなるように、水平面に対して傾斜している。
このような図17に示す形状モデルを用い、例えば図8に示す形状モデルを用いた場合と同様の数値流体解析を行った。図17に示す形状モデルを用いた解析例を、解析例5と称する。なお、図17に示す形状モデルでは、傾斜角を30°としている。
図18は、解析例5における鉄道車両周辺の時間平均速度分布を示す図である。図19は、解析例5における鉄道車両周辺の渦構造を可視化した図である。
解析例5(図18及び図19参照)において、壁部11よりもA方向における集電装置7側で渦が発生する領域は、解析例2(図10及び図11参照)に比べて、A方向において集電装置7からより離れた領域であり、解析例3(図12及び図13参照)と略同様の結果が得られた。
図20は、実施の形態の第3変形例の騒音低減装置を備えた鉄道車両に対応した形状モデルを示す図である。図20に示すように、本第3変形例では、実施の形態と異なり、突出部12は、突出部12のうちA方向(鉄道車両5の幅方向、図4参照)における集電装置7側の端部が、突出部12のうちA方向における集電装置7側と反対側の端部よりも高くなるように、水平面に対して傾斜している。
このような図20に示す形状モデルを用い、例えば図8に示す形状モデルを用いた場合と同様の数値流体解析を行った。図20に示す形状モデルを用いた解析例を、解析例6と称する。なお、図20に示す形状モデルでは、傾斜角を30°としている。
図21は、解析例6における鉄道車両周辺の時間平均速度分布を示す図である。図22は、解析例6における鉄道車両周辺の渦構造を可視化した図である。
解析例6(図21及び図22参照)において、壁部11よりもA方向における集電装置7側で渦が発生する領域は、解析例2(図10及び図11参照)に比べて、A方向において集電装置7からより離れた領域であり、解析例3(図12及び図13参照)と略同様の結果が得られた。
解析例3、解析例5及び解析例6の結果を比べると、次のような形状が好ましい。即ち、突出部12の上面は、水平面であってもよいが、B方向において前端部11b(図4参照)側から後端部11d(図4参照)側に向かって視たときに、最上部11a(図4参照)を中心として突出部12が反時計方向に回転するときの角度の符号を+としたとき、水平面に対する傾斜角が−30〜+30°の範囲であってもよい。即ち、水平面に対する傾斜角の絶対値が30°以下であってもよい。このような場合でも、走行中の鉄道車両5が横風を受けたときに集電装置7の空力特性を安定化させる効果については、突出部12の上面が水平面である場合と略同様の効果が得られる。
<壁部と突出部との接続部分の形状>
次に、壁部11と突出部12との接続部分の形状の好適な変形例について、説明する。図23は、実施の形態の第4変形例乃至第6変形例の騒音低減装置を備えた鉄道車両のうち遮音板の周辺の構造を示す図である。図23(a)乃至図23(c)は、遮音板の周辺の構造を拡大して示す断面図である。図23(a)は、第4変形例を示し、図23(b)は、第5変形例を示し、図23(c)は、第6変形例を示す。
図23(a)に示す本第4変形例では、突出部12は、壁部11の最上部11aよりも上方に配置されている。このような場合でも、図5(a)に示す実施の形態と略同様の効果が得られる。また、図23(a)に示す本第4変形例では、突出幅HW1は、突出部12を含む遮音板9全体のうち、A方向(図4参照)において壁部11の下部よりも集電装置7側に配置された部分のA方向における幅を意味する。
図23(b)に示す本第5変形例では、壁部11の最上部11aは、A方向(図4参照)における集電装置7(図4参照)側に丸く曲げられている。或いは、図23(b)に示す本第5変形例では、壁部11と突出部12との間の角部が、丸みを帯びている、即ち、壁部11と突出部12との間の角部にフィレットが形成されている、ということもできる。即ち、B方向から視たときに、壁部11と突出部12との間には角部が形成されているが、この角部が丸みを帯びている。このような場合でも、図5(a)に示す実施の形態と略同様の効果が得られる。また、図23(b)に示す本第5変形例では、突出幅HW1は、突出部12及び最上部11aを含む遮音板9全体のうち、A方向(図4参照)において壁部11の下部よりも集電装置7側に配置された部分のA方向における幅を意味する。
図23(c)に示す本第6変形例では、B方向(図4参照)におけるある位置を含み、且つ、B方向に垂直な断面では、壁部11と突出部12との間には、隙間が設けられている。このような場合でも、隙間の上下方向における高さがそれほど大きくない場合には、隙間がない場合(例えば図23(a)に示す場合)と略同様の効果が得られる。
図24及び図25は、実施の形態の第7変形例の騒音低減装置を備えた鉄道車両に対応した形状モデルを示す図である。図24は、B方向(鉄道車両5の進行方向、図4参照)に垂直な断面図であり、図25は、斜視図である。図24及び図25に示すように、本第7変形例では、実施の形態と異なり、壁部11と突出部12との間の角部が、丸みを帯びている。なお、本第7変形例は、図23(b)に示す実施の形態の第5変形例と同様の変形例である。
このような図24及び図25に示す形状モデルを用い、例えば図8に示す形状モデルを用いた場合と同様の数値流体解析を行った。図24及び図25に示す形状モデルを用いた解析例を、解析例7と称する。なお、図24及び図25に示す形状モデルでは、突出幅HW1(図23(b)参照)を、500mmとしている。また、突出部12の上下方向における高さ(厚さ)を、145mmとしている。
図26は、解析例7における鉄道車両周辺の時間平均速度分布を示す図である。図27は、解析例7における鉄道車両周辺の渦構造を可視化した図である。
解析例7(図26及び図27参照)において、壁部11と突出部12との間の角部が丸みを帯びている場合には、渦がほとんど発生しなくなる。即ち、壁部11と突出部12との間の角部が丸みを帯びている場合には、壁部11と突出部12との間の角部が丸みを帯びていない場合に比べて、発生する渦が少なくなる。そのため、壁部11と突出部12との間の角部が丸みを帯びている場合、壁部11と突出部12との間の角部が丸みを帯びていない場合に比べて、渦が集電装置7に近づくことを防止又は抑制し、渦により集電舟7bが例えば上下に揺動されること等を防止又は抑制することができるので、渦が集電舟7bに及ぼす影響を低減することができる。即ち、壁部11と突出部12との間の角部が丸みを帯びている方が、壁部11と突出部12との間の角部が丸みを帯びていない場合よりも、走行中の鉄道車両5が横風を受けたときに集電装置7の空力特性を安定化させる効果が大きい。
図28及び図29は、実施の形態の第8変形例の騒音低減装置を備えた鉄道車両に対応した形状モデルを示す図である。図28は、B方向(鉄道車両5の進行方向、図4参照)に垂直な断面図であり、図29は、斜視図である。図28及び図29に示すように、本第8変形例では、実施の形態の第7変形例に比べて、突出部12の突出幅が狭い。
このような図28及び図29に示す形状モデルを用い、例えば図8に示す形状モデルを用いた場合と同様の数値流体解析を行った。図28及び図29に示す形状モデルを用いた解析例を、解析例8と称する。なお、図28及び図29に示す形状モデルでは、突出幅HW1(図23(b)参照)を、200mmとしている。また、突出部12の上下方向における高さ(厚さ)を、145mmとしている。
図30は、解析例8における鉄道車両周辺の時間平均速度分布を示す図である。図31は、解析例8における鉄道車両周辺の渦構造を可視化した図である。
解析例8(図30及び図31参照)においては、解析例7(図26及び図27参照)と同様に、壁部11と突出部12との間の角部が丸みを帯びているので、渦がほとんど発生しない。そのため、渦が集電装置7に近づくことを防止又は抑制し、渦により集電舟7bが例えば上下に揺動されること等を防止又は抑制することができるので、渦が集電舟7bに及ぼす影響を低減することができる。即ち、壁部11と突出部12との間の角部が丸みを帯びている方が、壁部11と突出部12との間の角部が丸みを帯びていない場合よりも、走行中の鉄道車両5が横風を受けたときに集電装置7の空力特性を安定化させる効果が大きい。
一方、解析例8(図30及び図31参照)においては、解析例7(図26及び図27参照)に比べて、突出幅HW1(図23(b)参照)が狭いため、横風を受けない通常走行時における鉄道車両5の例えば走行抵抗又は振動特性等の空力特性に及ぼす影響が少ない。そのため、横風を受けない通常走行時における影響も加味して総合的に判断する場合には、解析例8における集電装置7の空力特性を安定化させる効果は、解析例7における集電装置7の空力特性を安定化させる効果よりも大きい。
<突出部の平面形状>、
次に、突出部12の平面形状の好適な変形例について説明する。
図32及び図33は、実施の形態の第9変形例の騒音低減装置を備えた鉄道車両に対応した形状モデルを示す図である。図32は、平面図であり、図33は、斜視図である。図32及び図33に示すように、本第9変形例では、突出部12が、壁部11の最上部11a(図4参照)のうちB方向(鉄道車両5の進行方向、図4参照)における一部分のみから突出している点で、図28及び図29に示す実施の形態の第8変形例と異なる。なお、本第9変形例についての、B方向において突出部12が突出している位置におけるB方向に垂直な断面図は、実施の形態の第8変形例におけるB方向に垂直な断面図である図28と同様にすることができる。
このような図32及び図33に示す形状モデルを用い、例えば図8に示す形状モデルを用いた場合と同様の数値流体解析を行った。図32及び図33に示す形状モデルを用いた解析例を、解析例9と称する。なお、図32及び図33に示す形状モデルでは、突出幅HW1(図23(b)参照)を、200mmとしている。また、図32及び図33に示す形状モデルでは、突出部12のB方向における長さを、図28及び図29に示す形状モデルにおける突出部12のB方向における長さの4分の1程度の長さとしている。
図34は、解析例9における鉄道車両周辺の時間平均速度分布を示す図である。図35は、解析例9における鉄道車両周辺の渦構造を可視化した図である。
解析例9(図34及び図35参照)においては、解析例8(図30及び図31参照)と同様に、壁部11と突出部12との間の角部が丸みを帯びている。そのため、解析例9においては、解析例8と同様に、渦がほとんど発生せず、渦が集電装置7に近づくことを防止又は抑制し、渦により集電舟7bが例えば上下に揺動されること等を防止又は抑制することができるので、渦が集電舟7bに及ぼす影響を低減することができる。また、解析例9においては、解析例8と同様に、解析例7(図26及び図27参照)に比べて、突出幅HW1(図23(b)参照)が狭いため、走行中の鉄道車両5が横風を受けない通常走行時における例えば鉄道車両の走行抵抗又は振動特性等の空力特性に及ぼす影響が少ない。その結果、解析例9でも、解析例8と同様に、走行中の鉄道車両5が横風を受けたときに集電装置7の空力特性を安定化することができる。
一方、解析例9(図34及び図35参照)においては、解析例8(図30及び図31参照)に比べて、突出部12が、壁部11の最上部11a(図4参照)のうちB方向における一部分のみから突出しているため、横風を受けない通常走行時における鉄道車両5の例えば走行抵抗又は振動特性等の空力特性に及ぼす影響が、更に少ない。そのため、横風を受けない通常走行時における影響も加味して総合的に判断する場合には、解析例9における集電装置7の空力特性を安定化させる効果は、解析例8における集電装置7の空力特性を安定化させる効果よりも大きいので、解析例7における集電装置7の空力特性を安定化させる効果よりも更に大きい。
これは、鉄道車両5の走行中は、壁部11の前端部11b(図4参照)付近で渦が発生し、発生した渦がB方向における前端部11b側から後端部11d(図4参照)側に移動する際に集電装置7の集電舟7b(図4参照)に近づかないようにするためには、壁部11の最上部11aのうち後端部11d側よりも前端部11b側に突出部12が設けられた方が、効果的であることを意味する。
このように、図32乃至図35を用いて説明した結果から、本発明者らは、突出部12が、B方向において突出幅が一様でない平面形状を有する場合に、走行中に横風を受ける場合と、走行中に横風を受けない場合(通常走行時)とを含めて総合的に集電装置7の空力特性を安定化させる効果がより高まることを見出した。そのような平面形状の各種の変形例を、次に説明する。
図36は、実施の形態の第10変形例乃至第14変形例の騒音低減装置を備えた鉄道車両のうち遮音板を拡大して示す平面図である。図37は、実施の形態の第15変形例乃至第18変形例の騒音低減装置を備えた鉄道車両のうち遮音板を拡大して示す平面図である。図36(a)は、第10変形例を示し、図36(b)は、第11変形例を示し、図36(c)は、第12変形例を示し、図36(d)は、第13変形例を示し、図36(e)は、第14変形例を示す。図37(a)は、第15変形例を示し、図37(b)は、第16変形例を示し、図37(c)は、第17変形例を示し、図37(d)は、第18変形例を示す。
図36(a)に示す本第10変形例のように、突出部12は、平面視において、角部が丸められた、即ちフィレットが形成された、矩形形状を備えていてもよい。渦は角部で発生しやすいため、平面視において突出部12の角部が丸められることにより、突出部12付近で渦が発生しにくくなる。なお、突出部12が、角部が丸められた矩形形状に代え、楕円形状を備えている場合も、略同様の効果が得られる。
図36(b)に示す本第11変形例のように、突出部12は、突出部12a及び突出部12bを含んでもよい。
突出部12aは、最上部11aのうち、B方向(鉄道車両5の進行方向)における中央、即ち中央位置CP1よりもB方向における一方の側に配置された部分PR1と接続され、且つ、平面視において部分PR1からA方向(鉄道車両5の幅方向)における集電装置7(図4参照)側に突出している。
これにより、鉄道車両5が後端部11d側から前端部11b側に向かう方向に走行する際に、集電装置7が架線4(図1参照)から電力を集電する場合に、走行中に横風を受ける場合と、走行中に横風を受けない場合(通常走行時)とを含めて総合的に集電装置の空力特性を安定化させる効果が高まる。
好適には、部分PR1は、最上部11aのうち、中央位置CP1よりもB方向における一方の側の端部PR11を含み、突出部12aは、端部PR11からも突出していてもよい。これにより、鉄道車両5が後端部11d側から前端部11b側に向かう方向に走行する際に、集電装置7が電力を集電する場合であって、且つ、前端部11b付近で渦が発生した場合でも、発生した渦を集電装置7の集電舟7bから遠ざける効果が高まる。
一方、突出部12bは、最上部11aのうち、B方向における中央、即ち中央位置CP1よりもB方向における他方の側に配置された部分PR2と接続され、且つ、平面視において部分PR2からA方向における集電装置7側に突出している。突出部12bは、突出部12aよりもB方向における後端部11d側に配置されている。
これにより、鉄道車両5が前端部11b側から後端部11d側に向かう方向に走行する際に、集電装置7が架線4から電力を集電する場合に、走行中に横風を受ける場合と、走行中に横風を受けない場合(通常走行時)とを含めて総合的に集電装置の空力特性を安定化させる効果が高まる。
好適には、部分PR2は、最上部11aのうち、中央位置CP1よりもB方向における他方の側の端部PR21を含み、突出部12bは、端部PR21からも突出していてもよい。これにより、鉄道車両5が前端部11b側から後端部11d側に向かう方向に走行する際に、集電装置7が電力を集電する場合であって、且つ、後端部11d付近で渦が発生した場合でも、発生した渦を集電装置7の集電舟7bから遠ざける効果が高まる。
図36(c)に示す本第12変形例のように、突出部12は、突出部12b(図36(b)参照)を含まず、突出部12aのみを含んでもよい。このとき、平面視において、最上部11aのうち、中央位置CP1よりもB方向における後端部11d側に配置されたいずれの部分からも、A方向における集電装置7側には突出部12が突出していない。
これにより、鉄道車両5が後端部11d側から前端部11b側に向かって走行する際に、集電装置7が架線4から電力を集電し、鉄道車両5が前端部11b側から後端部11d側に向かって走行する際に、集電装置7が架線4から電力を集電しない場合に、走行中に横風を受ける場合と、走行中に横風を受けない場合(通常走行時)とを含めて総合的に集電装置の空力特性を安定化させる効果がより高まる。
図36(d)に示す本第13変形例のように、突出部12は、突出部12a及び突出部12bを含んでもよい。なお、本第13変形例では、突出部12bは、B方向(鉄道車両5の進行方向)において、突出部12aと隣り合っている。
突出部12aは、平面視において三角形状を備え、突出部12aが平面視において部分PR1からA方向(鉄道車両5の幅方向)における集電装置7側に突出した突出幅HW1は、B方向における端部PR11側からB方向における端部PR21側に向かって減少している。
これにより、突出部12aのB方向における端部PR21側の突出幅を、突出部12aのB方向における端部PR11側の突出幅よりも狭くすることができる。そのため、鉄道車両5が後端部11d側から前端部11b側に向かう方向に走行する際に、集電装置7が電力を集電する場合であって、且つ、鉄道車両5が走行中に横風を受ける場合に、突出部12aの端部PR11側の部分で、渦を集電舟7bから遠ざけることができるので、集電装置7の空力特性を安定化させることができる。また、鉄道車両5が後端部11d側から前端部11b側に向かう方向に走行する際に、集電装置7が電力を集電する場合であって、且つ、走行中に横風を受けない場合(通常走行時)に、突出部12aの端部PR21側の部分の突出幅HW1が狭いので、集電装置7の空力特性を安定化させることができる。
なお、突出部12aの突出幅HW1が端部PR11側から端部PR21側に向かって減少していればよく、突出部12aは、平面視において三角形状以外の各種の形状を備えていてもよい。
突出部12bは、平面視において三角形状を備え、突出部12bが平面視において部分PR2からA方向における集電装置7側に突出した突出幅HW1は、B方向における端部PR11側からB方向における端部PR21側に向かって増加している。
これにより、突出部12bのB方向における端部PR11側の突出幅を、突出部12bのB方向における端部PR21側の突出幅よりも狭くすることができる。そのため、鉄道車両5が前端部11b側から後端部11d側に向かう方向に走行する際に、集電装置7が電力を集電する場合であって、且つ、鉄道車両5が走行中に横風を受ける場合に、突出部12bの端部PR21側の部分で、渦を集電舟7bから遠ざけることができるので、集電装置7の空力特性を安定化させることができる。また、鉄道車両5が前端部11b側から後端部11d側に向かう方向に走行する際に、集電装置7が電力を集電する場合であって、且つ、走行中に横風を受けない場合(通常走行時)に、突出部12bの端部PR11側の部分の突出幅HW1が狭いので、集電装置7の空力特性を安定化させることができる。
なお、突出部12bの突出幅HW1が端部PR11側から端部PR21側に向かって増加していればよく、突出部12bは、平面視において三角形状以外の各種の形状を備えていてもよい。
図36(e)に示す本第14変形例のように、突出部12は、図36(d)に示した実施の形態の第13変形例と同様に、平面視においてそれぞれ三角形状を備えた突出部12a及び突出部12bを含むものの、実施の形態の第13変形例とは異なり、突出部12bは、B方向において、突出部12aと間隔を空けて配置されていてもよい。
これにより、最上部11aの中央位置CP1付近における突出部12のB方向における平均突出幅を、実施の形態の第13変形例に比べて狭くすることができる。そのため、実施の形態の第13変形例に比べて、鉄道車両5が走行中に横風を受けない場合(通常走行時)に、集電装置7の空力特性を安定化させる効果が高まる。
図37(a)に示す本第15変形例のように、突出部12は、突出部12a及び突出部12bを含んでもよい。なお、本第15変形例では、突出部12bは、突出部12aと接続されている。
突出部12aは、平面視において三角形状を備え、突出部12aが平面視において部分PR1からA方向(鉄道車両5の幅方向)における集電装置7側に突出した突出幅HW1は、B方向(鉄道車両5の進行方向)における端部PR11側からB方向における端部PR21側に向かって増加している。
突出部12bは、平面視において三角形状を備え、突出部12bが平面視において部分PR2からA方向における集電装置7側に突出した突出幅HW1は、B方向における端部PR11側からB方向における端部PR21側に向かって減少している。
このような場合でも、図36(d)に示した実施の形態の第13変形例に比べれば、鉄道車両5が走行中に横風をうける場合に集電装置7の空力特性を安定化させる効果は少なくなるものの、鉄道車両5が走行中に横風を受けない場合(通常走行時)に、集電装置7の空力特性を安定化させる効果が高まる。
なお、突出部12aの突出幅HW1が端部PR11側から端部PR21側に向かって増加していればよく、突出部12aは、平面視において三角形状以外の各種の形状を備えていてもよい。また、突出部12bの突出幅HW1が端部PR11側から端部PR21側に向かって減少していればよく、突出部12bは、平面視において三角形状以外の各種の形状を備えていてもよい。
図37(b)に示す本第16変形例のように、突出部12は、図37(a)に示した実施の形態の第15変形例と同様に、平面視においてそれぞれ三角形状を備えた突出部12a及び突出部12bを含むものの、突出部12bは、実施の形態の第15変形例とは異なり、B方向において、突出部12aと間隔を空けて配置されていてもよい。
これにより、最上部11aの中央位置CP1付近における突出部12のB方向における平均突出幅を、実施の形態の第15変形例に比べて狭くすることができる。そのため、実施の形態の第15変形例に比べて、鉄道車両5が走行中に横風を受けない場合(通常走行時)に、集電装置7の空力特性を安定化させる効果が高まる。
図37(c)に示す本第17変形例のように、突出部12は、突出部12aと、突出部12bと、を含んでもよい。
突出部12aは、平面視において三角形状を備え、突出部12cと、突出部12cよりもB方向における端部PR21側に配置された突出部12dと、を含む。突出部12dは、突出部12cと一体的に形成されている。即ち、突出部12dは、突出部12cと接続されている。突出部12cが平面視において部分PR1からA方向(図4参照)における集電装置7(図4参照)側に突出した突出幅HW1は、B方向(図4参照)における端部PR11側からB方向における端部PR21側に向かって増加している。突出部12dが平面視において部分PR1からA方向における集電装置7側に突出した突出幅HW1は、B方向における端部PR11側からB方向における端部PR21側に向かって減少している。
突出部12bは、平面視において三角形状を備え、突出部12eと、突出部12eよりもB方向における端部PR21側に配置された突出部12fと、を含む。突出部12fは、突出部12eと一体的に形成されている。即ち、突出部12fは、突出部12eと接続されている。突出部12eが平面視において部分PR2からA方向における集電装置7側に突出した突出幅HW1は、B方向における端部PR11側からB方向における端部PR21側に向かって増加している。突出部12fが平面視において部分PR2からA方向における集電装置7側に突出した突出幅HW1は、B方向における端部PR11側からB方向における端部PR21側に向かって減少している。
このような場合でも、図36(d)に示した実施の形態の第13変形例に比べれば、鉄道車両5が走行中に横風をうける場合に集電装置7の空力特性を安定化させる効果は少なくなるものの、鉄道車両5が走行中に横風を受けない場合(通常走行時)に、集電装置7の空力特性を安定化させる効果が高まる。
なお、突出部12c及び突出部12eの各々の突出幅HW1が端部PR11側から端部PR21側に向かって増加していればよく、突出部12c及び突出部12eの各々は、平面視において三角形状以外の各種の形状を備えていてもよい。また、突出部12d及び突出部12fの各々の突出幅HW1が端部PR11側から端部PR21側に向かって減少していればよく、突出部12d及び突出部12fの各々は、平面視において三角形状以外の各種の形状を備えていてもよい。
図37(d)に示す本第18変形例のように、突出部12は、図37(c)に示した実施の形態の第17変形例と同様に、平面視においてそれぞれ三角形状を備えた突出部12a及び突出部12bを含むものの、突出部12bは、実施の形態の第17変形例とは異なり、B方向において、突出部12aと間隔を空けて配置されていてもよい。
これにより、最上部11aの中央位置CP1付近における突出部12のB方向における平均突出幅を、実施の形態の第17変形例に比べて狭くすることができる。そのため、実施の形態の第17変形例に比べて、鉄道車両5が走行中に横風を受けない場合(通常走行時)に、集電装置7の空力特性を安定化させる効果が高まる。
なお、図36(b)、図36(d)、図36(e)及び図37(a)乃至図37(d)のいずれかの突出部12に含まれる突出部12aと、図36(b)、図36(d)、図36(e)及び図37(a)乃至図37(d)のいずれかの突出部12に含まれる突出部12bとを、組み合わせて用いることができる。これにより、それぞれの突出部12aにより得られる効果と、それぞれの突出部12bにより得られる効果とを足し合わせた効果が、得られる。
また、図36(b)乃至図36(e)、及び、図37(a)乃至図37(d)のいずれの場合においても、平面視において、角部が丸められ、即ち、フィレットが形成されていてもよい。これにより、角部において渦が発生することを防止又は抑制することができる。
図36及び図37を用いて説明した変形例以外にも、突出部12の平面形状については、種々の変形例が可能である。この際、突出部12の上下方向の高さ(厚さ)をできるだけ薄くし、端部又は角部の形状をできるだけ滑らかにすることにより、走行中に横風を受ける場合と、走行中に横風を受けない場合(通常走行時)とを含めて総合的に評価した場合に、集電装置7の空力特性を安定化させる効果がより高まる。また、3次元的な突出部12の形状として、飛行機の翼のような形状を採用することにより、突出部12自身の空力特性を含めて、集電装置7の空力特性を安定化させることができる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。