JP6831092B2 - 金属成形体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属線材を螺旋状、且つ多層状に巻き付けることにより成形した金属製多孔体に対してコーティング層を形成した金属成形体の製造方法に関する。
特許文献1には、外力を加えて変形させてもキンクせず、自在に湾曲変形可能な金属製多孔体が記載されている。また、この金属製多孔体の一例である金属製多孔チューブの内周面、外周面、又は中間層の何れかに金属の薄層を設けて、薄層の内周側の空間と外周側の空間とを遮断することが記載されている。金属の薄層によって内外空間を区分することにより、金属製多孔チューブを、表面から液体を漏出させることなく、その長手方向に流動させることが開示されている。
上記金属製多孔チューブを医療用途に用いる場合、露出した金属製多孔体部分が患部周辺に接触すると組織を傷つける虞がある。また、金属製多孔体部分が血液等と接触した場合、多孔体の微細な各孔内に入り込んだ血液等を完全に除去することが困難となるため、再利用は困難であった。
上記問題を解決する方法として、金属製多孔体の表面を樹脂にてコーティングすることが考えられる。特許文献2には、柔軟な樹脂チューブからなる単一構造体のカテーテル先端部と、金属層と樹脂層との多層構造体である高剛性のカテーテル手元部とで構成された医療用カテーテルが記載されている。カテーテル手元部は、金属線材が交互に編まれた管状の金属メッシュからなる金属層の内側に樹脂層を構成する内側チューブが配置され、外側に樹脂層を構成する外層チューブが配置されている。
特開2014−140892公報 特開2008−188304公報
特許文献2に記載の医療用カテーテルにおいては、内側チューブを形成した後に内側チューブの外周に金属ワイヤーを巻き付けてメッシュ状の金属層を形成するため、金属ワイヤーは互いに接合されていない状態である。仮に金属ワイヤー同士を拡散接合により接合しようとすれば、高温により樹脂からなる内側チューブを侵しかねない。従って、上記医療用カテーテルは金属の特性を活かし切れてはいない。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、金属製多孔体の表面をコーティングする樹脂コーティング層を備えた金属成形体であって、金属の特性を活かすことができる新規な金属成形体を得ることを目的とする。
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、キンクせずに軸線の方向を湾曲させるように塑性変形し、且つ変形後の形態を維持する金属成形体の製造方法であって、金属線材を圧延する圧延工程と、前記圧延された金属線材を螺旋状、且つ多層状に巻付けるワインド工程と、巻付けられた前記金属線材同士を接合する焼結工程と、前記焼結工程により作製された金属製多孔体の内側表面の少なくとも一部を含む該金属製多孔体の表面に前記金属製多孔体を被覆する樹脂コーティング層を形成する樹脂コーティング工程と、を含み、前記金属線材の圧延率が39%以上63%以下であり、前記金属製多孔体の空隙率が32%以上62%以下であり、前記金属製多孔体の嵩密度が3.35g/cm 以上5.2g/cm 以下であり、接合された前記金属線材同士の剥離強度が0.95N以上1.4N以下であり、前記樹脂コーティング工程においては、前記樹脂コーティング層を、前記金属製多孔体の塑性変形に追従して変形可能な柔軟性を有する樹脂により形成することを特徴とする。

本発明によれば、焼結処理を経て得られる金属製多孔体の表面を樹脂によりコーティングするので、焼結処理により発現する金属の優れた特性を活かし、且つ金属製多孔体に対して樹脂の持つ特性を付与した金属成形体を得ることができる。
(A)〜(C)は、本発明の一実施形態に係る管状の金属成形体を示す図である。 金属製多孔体の一例を示す斜視図である。 図2に示す金属製多孔体を形成する線材層の部分拡大斜視図である。 管状の金属製多孔体の他の例を示す斜視図である。 円環状の金属製多孔体の斜視図である。 円錐状の金属製多孔体の斜視図である。 金属製多孔体を構成する金属製の線材の圧延状態を示す説明図である。 金属製多孔体を構成する金属製の線材がなす巻き角度を示す説明図である。 (A)〜(C)は、金属の薄層を設けた金属製多孔体の一例を示す縦断面図である。 樹脂コーティング層の他の形態を説明する縦断面図である。 (a)、(b)は、樹脂コーティング層の更に他の形態を説明する縦断面図である。 インサート成形の様子を示す模式図であり、(A)は一次インサート成形工程を示し、(B)は二次インサート成形工程を示す図である。 (a)〜(c)は、ディッピングにより樹脂コーティング層を形成する様子を示した模式図である。 (a)〜(c)は、熱収縮チューブにより樹脂コーティング層を形成する様子を示した模式図である。 吸引器具の概要を示す平面図である。 (A)、(B)は、吸引器具の先端に管状の金属成形体を装着した状態を示す図である。 本発明の実施形態に係る管状の金属成形体を気管カニューレとして使用した例を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る管状の金属成形体を人工血管として使用した例を示す模式図である。 実施例及び比較例の物性値をまとめた表で示す図ある。 第1の曲げ試験の説明図である。 第2の曲げ試験の説明図である。 剥離試験の説明図である。 管状の金属成形体の断面写真で示す図あり、(A)は縦断面写真で示す図あり、(B)は横断面写真で示す図ある。
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
〔金属成形体の概要〕
図1(A)〜(C)は、本発明の一実施形態に係る管状の金属成形体を示す図である。夫々、縦断面図(軸方向に沿った方向における断面図)と、横断面図(軸方向と直交する方向における断面図)を示している。
金属成形体200は、金属製の線材が螺旋状、且つ多層状に巻き付けられ、更に、各線材同士が焼結処理により接合された金属製多孔体1と、金属製多孔体1の全部又は一部を被覆する樹脂コーティング層210とを備えている。まず、金属製多孔体について説明する。
〈金属製多孔体〉
図2は、金属製多孔体の一例を示す斜視図である。図2には、管状の金属製多孔体1を示している。図3は、図2に示す金属製多孔体を形成する線材層の部分拡大斜視図である。
金属製多孔体1は、金属製の線材が網目状に組み合わせられた構成を有しており、例えば金属製の線材を螺旋状、且つ多層状に所定のピッチで巻き付けることにより形成される。金属製多孔体1は、図3に示すように、金属製の線材2を第一の方向に傾斜させることにより形成された線材層3と、線材2を第一の方向と交差する第二の方向に傾斜させることにより形成された線材層4とが順次積層されている。また、隣接する線材2同士は、焼結処理によって接合されている。
なお、図3には線材層を2層分のみ示している。
図4は、管状の金属製多孔体の他の例を示す斜視図である。図5は、円環状の金属製多孔体の斜視図である。図6は、円錐状の金属製多孔体の斜視図である。
金属製多孔体1の代表的な形態として、図2に示した管状の金属製多孔チューブ1Aを挙げることができる。この金属製多孔チューブ1Aは、長手方向の両端が開放された形態である。
管状の金属製多孔体1の他の形態として、図4に示すように、長手方向の一端が開放され、他端が閉じた形態の金属製多孔チューブ1Bを挙げることができる。
金属製多孔体1の更に他の形態として、例えば、図5に示す円環状の金属製多孔体1C及び図6に示す円錐状の金属製多孔体1Dを挙げることができる。
上記各金属製多孔体1は、人の手で変形させてもキンクしないように作製されている。
ここでいう「キンク」とは、金属製多孔体1に外力を加えたときに、金属製多孔体1がつぶれてしまい、金属製多孔体1から外力を除去してもつぶれてしまった金属製多孔体1が元の状態に復元しない現象をいう。
以下、金属製多孔体1の構成について、図2に示した管状の金属製多孔チューブ1Aを例に詳細に説明する。
《金属製の線材》
金属製多孔チューブ1Aは、線径が0.05mm以上、0.2mm以下の金属製の線材2(以下、単に「線材2」という。)によって構成されている。
線材2は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料が用いられている。ステンレス鋼としては、オーステナイト系ステンレス鋼、例えば、JIS規格のSUS304やSUS316L等を挙げることができる。また、線材2は、ステンレス鋼の他に、チタン又はその合金、ニッケル又はその合金を用いてもよい。ニッケル合金としては、種々のものを用いることができる。一例として、ニッケル基にモリブデンやクロムを加えた合金(例えば、ハステロイ(ハステロイは登録商標)等)を用いることができる。また、ニッケルをベースとし、鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等を加えた合金(例えば、インコネル(インコネルは登録商標)等)を用いることもできる。こうした金属材料により形成された線材2は、耐熱性、耐薬品性及び耐食性を有している。
線材2は、圧延加工されている。図7は、金属製多孔体を構成する金属製の線材の圧延状態を示す説明図である。線材2は、圧延加工されることによって、図7に示すX方向に伸張され、X方向に直交するY方向に圧縮されている。線材2の圧延率は、39%以上、63%以下である。なお、「圧延率」とは、図7に示すように、圧延加工する前の線材2の直径をD1とし、圧延加工されて圧縮された後の線材2のY方向の寸法をD2としたとき、次の式(1)で表される数値をいう。
(圧延率)={(D1−D2)/D1}×100
・・・式(1)
《金属製多孔チューブの具体的な構造》
金属製多孔チューブ1Aは、図3に示すように、金属製の線材2を第一の方向に傾斜させ、所定のピッチで螺旋状に巻き付けて形成された線材層3と、線材2を第一の方向と交差する第二の方向に傾斜させ、所定のピッチで螺旋状に巻き付けて形成された線材層4とが、順次積層されて構成されている。
なお、線材層の数は、金属製多孔チューブ1Aの肉厚に応じて500層〜3000層に設定される。例えば、後述の実施例及び比較例の場合は、1000層〜1500層に設定されている。金属製多孔チューブ1Aは、焼結されることによって、線材2同士が接合されている。
線材2の巻き角度は、5°以上、90°未満の範囲で中空筒状体を形成することができる角度である。より具体的には、巻き角度は40°以上、80°以下である。なお、「巻き角度」とは、図8のθで表されている角度であり、線材層3を構成する線材2と線材層4を構成する線材2とがなす角度を意味する。
この金属製多孔チューブ1Aは、空隙率が32%以上、62%以下であり、密度が7.75g/cm以上、8.06g/cm以下のステンレス鋼を用いた場合、嵩密度が3.35g/cm以上、5.2g/cm以下である。また、接合された線材2同士の剥離強度は、0.95N以上、1.4N以下である。こうした金属製多孔チューブ1Aは、外径が1mm以上、15mm以下に形成され、内径が0.5mm以上、14mm以下に形成されている。
なお「嵩密度」とは、単位体積の質量=製品重量/製品体積によって表すことができる、製品の重量を製品の体積で除した単位体積あたりの質量のことである。
「空隙率」とは、{(材料比重-製品密度)/材料比重}×100によって表すことができる製品の全容積に対する隙間の容積の割合のことである。
「剥離強度」とは、金属製多孔チューブ1Aから線材2を1本引き出し、引き出された1本の線材2を金属製多孔チューブ1Aから引っ張って、1本の線材2が接合された部分で金属製多孔チューブ1Aから剥離されるのに必要な力のことをいう。
以上の条件を満たした金属製多孔チューブ1Aは、特殊な治具を使用しなくても、人の手で金属製多孔チューブ1Aに外力を加えて、金属製多孔チューブ1Aがのびる軸方向を湾曲させて所望の形状に変形させることができる。また、金属製多孔チューブ1Aに外力を加えたとき、金属製多孔チューブ1Aはキンクしないで変形する。
こうした金属製多孔チューブ1Aは、フィルター、センサーカバー、カテーテル、消音材、発泡、拡散材、ガイド等の用途に用いることができる。なお、金属製多孔チューブをフィルターとして使用する場合、図4に示した金属製多孔チューブ1Bは、長手方向の一端が開放され、他端が閉じているので、金属製多孔チューブ1Bの周面だけでなく、閉じた他端もフィルターとして機能する。
図6に示した円環状の金属製多孔体1Cは、フィルター、消音材、発泡、拡散材、流動材等の用途に用いることができ、図6に示した円錐状の金属製多孔体1は、フィルター、センサーカバー、消音材、発泡、拡散材等の用途に用いることができる。
《金属製多孔チューブの製造方法》
次に、金属製多孔チューブ1Aの製造方法について説明する。
金属製多孔チューブ1Aの製造方法は、圧延された線材2を芯材(不図示)に巻き付け
るワインド工程と、芯材に巻き付けられた線材2を焼結する焼結工程と、焼結された線材2を、芯材に巻き付けられた状態でスウェージングするスウェージング工程と、スウェージング工程が終了した後に、線材2が巻き付けられている芯材を抜き取る芯材抜き取り工程とを備えている。
ワインド工程は、芯材に線材2を巻き付けて管状の部材を形成する工程である。ワインド工程は、線材2を芯材に巻き付ける際に一般的に使用されているワインダー(巻き付け装置)を用いて行われる。線材2は、圧延機で事前に圧延加工されたものを使用してワインダーで芯材の外周面に巻き付けられたり、ワインダーの内部で圧延しつつ芯材の外周面に巻き付けられたりする。
線材2を芯材に巻き付けるとき、線材2は、芯材の軸に対して第一の方向に傾斜されて、芯材の軸方向に所定のピッチで芯材の一端側から他端側に向けて順次巻き付けられる。このように芯材に巻き付けられた線材2は、芯材の外周面で1つの線材層3を形成する。線材2は、こうして形成された線材層3の外周にさらに巻き付けられて、他の線材層4が形成される。この際、線材2は、芯材の軸に対して第一の方向と交差する第二の方向に傾斜されて、芯材の軸方向に所定のピッチで芯材の他端側から一端側に向けて巻き付けられる。
ワインド工程は、線材2を第一の方向に傾斜させて芯材の周りに所定のピッチで巻き付けて形成された線材層3と、線材2を第二の方向に傾斜させて芯材の周りに所定のピッチで巻き付けて形成された線材層4とを順次形成して複数の線材層を多層状に積層して管状の部材を形成する工程である。
焼結工程は、線材2からなる管状の部材を芯材ごと炉に入れて焼結し、線材2同士を接合する工程である。炉は、真空炉であってもよいし、酸化を防ぐための還元ガスを含む炉であってもよい。焼結は、800℃以上、1300℃以下の温度で180分程度行われる。こうした焼結工程によって線材2同士は、拡散接合される。なお、この焼結工程は、次のスウェージング工程の前後の2回に分けて行ってもよい。
スウェージング工程は、線材2からなる管状の部材の外径を所望の寸法に整える冷間鍛造加工工程である。スウェージング工程は、例えば、分割された金型を回転させて、叩きながら管状の部材の外径を絞っていくことによって行われる。
芯材抜き取り工程は、線材2からなる管状の部材から芯材を抜き出して、所望の内径と外径とを有する金属製多孔チューブ1Aを形成させる工程である。芯材が抜き出された管状の部材は、芯材の外径と一致する内径を有すると共に、積層された線材2の層の数に応じた外径を有する金属製多孔チューブ1Aとなる。
以上に説明した工程を経た後、金属製多孔チューブ1Aは洗浄され、樹脂コーティングが施される。
《金属の薄層を設けた金属製多孔チューブ》
次に、金属の薄層110を設けた金属製多孔チューブ1E、1F、1Gについて図9を参照して説明する。図9(A)〜(C)は、金属の薄層を設けた金属製多孔体の一例を示す縦断面図である
この金属製多孔チューブ1E、1F、1Gは、金属の薄層110を備えている。金属の薄層110は、金属製多孔体である金属製多孔チューブ1E、1F、1Gの内周面、外周面、及び内周面と外周面との間に位置する中間部分の少なくとも1つの部位に設けられることによって構成されている。なお、金属の薄層110を設けた金属製多孔チューブ1E、1F、1Gは、金属の薄層110を設けたこと以外は、金属製多孔チューブ1Aと構成が同じである。
内周面と外周面との間に位置する中間部分に金属の薄層110を設けた金属製多孔チューブ1Eは、図9(A)に示すように、線材2によって管状に形成された多孔質層101、102と、金属製多孔チューブ1Eの内周面と外周面との間に位置する中間部分に設けられた金属の薄層110とから構成されている。多孔質層101、102の基本構成は、図2及び図3に示した金属製多孔チューブ1Aと同じであり、その説明はここでは省略する。また、線材2も上述したものと同じなので、ここではその説明を省略する。金属の薄層110は、薄い金属材料によって構成されている。
なお、金属の薄層110は、図9(B)に示すように、金属製多孔チューブFの内周面に設けてもよい。内周面に金属の薄層110を設けた金属製多孔チューブ1Fは、図9(B)に示すように、線材2によって管状に形成された多孔質層103と、多孔質層103の内周面に設けられた金属の薄層110とから構成されている。なお、この金属製多孔チューブ1Fの構成は、金属の薄層110を金属製多孔チューブ1Fの内周面に設けたこと以外は、構成が金属製多孔チューブ1Eと同じである。
また、金属の薄層110は、図9(C)に示すように、金属製多孔チューブGの外周面に設けてもよい。外周面に金属の薄層110を設けた金属製多孔チューブ1Gは、図9(C)に示すように、線材2によって管状に形成された多孔質層104と、多孔質層104の外周面に設けられた金属の薄層110とから構成されている。なお、この金属製多孔チューブ1Gの構成は、金属の薄層110を金属製多孔チューブ1Fの外周面に設けたこと以外は、構成が金属製多孔チューブ1Eと同じである。
なお、金属の薄層110は、内周面、外周面及び内周面と外周面との間に位置する中間部分のすべてに設けたり、内周面及び外周面に設けたり、内周面及び中間部分に設けたり、外周面と中間部分に設けたりしてもよい。
金属の薄層110は、薄い金属製の材料によって構成されている。金属製の材料の厚さは、2μm〜20μmの範囲内である。こうした金属製の薄層110は、線材2に焼結させることができるように、線材2と同じ材質の金属が使用される。すなわち、金属の薄層110としては、ステンレス鋼等の金属製の薄い材料を用いることが好ましい。ステンレス鋼としては、オーステナイト系ステンレス鋼、例えば、JIS規格のSUS304やSUS316L等を挙げることができる。また、金属の薄層110は、ステンレス鋼の他に、銅、ニッケル、チタンを用いることもできる。
こうした金属製多孔チューブ1E、1F、1Gは、その外径D、内径d及び長さLを用途に応じて形成することができる。
こうした金属の薄層110を設けた金属製多孔チューブ1E、1F、1Gは、金属の薄層110によって、金属製多孔チューブ1E、1F、1Gの内周面よりも内側に形成された空間部と金属製多孔チューブ1E、1F、1Gよりも外側の外界とが遮断される。そのため、金属の薄層110は、金属製多孔チューブ1E、1F、1Gの内周面よりも内側に形成された空間部を移動する流体等の物が金属製多孔チューブ1Eの外に漏れることを防止することができる。
また、金属の薄層110を金属製多孔チューブ1Fの内周面に設けた場合(図9(B)参照)、金属の薄層110は、金属製多孔チューブ1Eの内部を金属製多孔チューブ1Fの内周面よりも内側に形成された空間部を移動する流体等の物との間に発生する摩擦を低下させ、流体等の物を円滑に移動させることができる。例えば、金属製多孔チューブ1Eを利用して、流体が金属製多孔チューブ1Eの長手方向の一端側から他端側に移動するように流体を吸引した場合、流体が金属製多孔チューブ1Eの内部を金属製多孔チューブ1Fの内周面よりも内側に形成された空間部を円滑に移動させることができる。
《金属の薄層を設けた金属製多孔チューブの製造方法》
次に、金属の薄層110を設けた金属製多孔チューブ1Eの製造方法を説明する。なお、ここでは、金属の薄層110を設けた金属製多孔チューブの製造にとって特徴的なことだけを説明し、既に説明した金属製多孔チューブ1Aを製造する場合と同一の点については、その説明を省略する。
内周面に金属の薄層110を設けた金属製多孔チューブ1F(図9(B)参照)は以下の工程を経て製造される。
金属製多孔チューブ1Fは、芯材に薄い金属材料を巻き付ける金属材料巻付工程と、芯材に巻かれた薄い金属材料に線材2を巻き付けるワインド工程と、芯材に巻き付けられた薄い金属材料及び線材2を焼結する焼結工程と、焼結された線材2を、芯材に巻き付けられた状態でスウェージングするスウェージング工程と、スウェージング工程が終了した後に、薄い金属材料及び線材2が巻き付けられている芯材を抜き取る芯材抜き取り工程とを備えている。
金属材料巻付工程は、完成される金属製多孔チューブ1Eの長さに相当する寸法になるように芯材の長手方向に薄い金属材料を芯材に巻き付けている。巻き付ける金属材料は、厚さが2μm〜20μmである。ワインド工程は、芯材に巻かれた薄い金属材料の外周に線材2を巻き付けている。線材2は、芯材に巻かれた薄い金属材料と芯材の長手方向の寸法が同じになるようにして芯材に巻かれる。焼結工程は、薄い金属材料と線材2とを焼結すると共に、線材2同士を焼結している。
内周面と外周面との間に位置する中間部分に金属の薄層110を設けた金属製多孔チューブ1E(図9(A)参照)は以下の工程を経て製造される。
最初に芯材に線材2を巻き付ける第1のワインド工程が行われる。第1のワインド工程は、図9(A)に示す金属製多孔チューブ1Eの多孔質層101を形成する工程である。次いで、芯材に巻かれた線材2の外周面に薄い金属材料を巻き付ける金属材料巻付工程が行われる。巻き付ける金属材料は、厚さが2μm〜20μmの範囲内である。薄い金属材料は、芯材に巻かれた線材2の芯材が延びる方向の寸法と同じ寸法だけ巻かれる。その後、薄い金属材料の外周に線材2を巻き付ける第2のワインド工程が行われる。この第2のワインド工程は、図9(A)に示す金属製多孔チューブ1Eの多孔質層102を形成する工程である。第2のワインド工程が終了した後、芯材に巻き付けられた薄い金属材料及び線材2を焼結する焼結工程が行われる。この焼結工程では、薄い金属材料と線材2とが焼結されると共に、線材2同士が焼結される。焼結工程が終了した後、スウェージング工程と芯材抜き取り工程と行われる。
外周面に金属の薄層110を設けた金属製多孔チューブ1G(図9(C)参照)は以下の工程を経て製造される。
最初に芯材に線材2を巻き付けるワインド工程が行われる。次いで、芯材に巻かれた線材2の外周に薄い金属材料を巻き付ける金属材料巻付工程が行われる。巻き付ける金属材料は、厚さが2μm〜20μmの範囲内である。薄い金属材料、芯材に巻かれた線材2の芯材が延びる方向の寸法と同じ寸法だけ巻かれる。金属材料巻付工程の後、芯材に巻き付けられた薄い金属材料及び線材2を焼結する焼結工程が行われる。この焼結工程では、薄い金属材料と線材2とが焼結されると共に、線材2同士が焼結される。焼結工程が終了した後、スウェージング工程と芯材抜き取り工程と行われる。焼結工程が終了した後、スウェージング工程と芯材抜き取り工程と行われる。
こうした製造方法は適宜に組み合わせることによって、金属製多孔チューブの内周面、外周面及び中間部分の中から選択した1つの部位、2つの部位又はすべての部位に金属の薄層110を設けた金属製多孔チューブ1Eを製造することができる。
金属の薄層を設けた金属製多孔チューブについても、以上に説明した工程を経た後、洗浄され、樹脂コーティングが施される。
〈樹脂コーティング層1〉
続いて、樹脂コーティング層について図1に基づいて説明する。以下、金属成形体を構成する金属製多孔体として図2に示した管状の金属製多孔チューブ1Aを用いた例に基づいて詳細に説明する。
金属成形体200は、上述のようにして作製された金属製多孔チューブ1Aを被覆する樹脂コーティング層210を備えている。
金属成形体は、図1(A)に示す金属成形体200Aのように、金属製多孔チューブ1Aの外周面をコーティングする外部コーティング層211と、内周面をコーティングする内部コーティング層213の双方を備えてもよい。また、図1(B)に示す金属成形体200Bのように外部コーティング層211のみを備えてもよいし、図1(C)に示す金属成形体200Cのように内部コーティング層213のみを備えてもよい。
何れも、金属成形体の長手方向の端面には、外部コーティング層211及び内部コーティング層213と連続する端縁部コーティング層212、214を任意で備える。
樹脂コーティング層210の各部の厚さは、金属製多孔チューブ1Aの内径及び外径、樹脂コーティング層210を形成する樹脂、金属成形体の用途、金属成形体に要求される強度等に応じて適宜設定される。例えば、図1(A)に示す金属成形体200Aでは、金属製多孔チューブ1Aの内径及び外径は夫々2.2mm、3.2mm、長さは26mm、外部コーティング層211の厚さは0.4mm、内部コーティング層213の厚さは0.2mm、端縁部コーティング層212、214の厚さは夫々0.5mmとすることができる。
樹脂コーティング層210は、コーティングした部位において金属製多孔チューブ1Aを形成する線材を露出させることなく被覆し、金属成形体の表面を滑らかにする。
〈樹脂コーティング層2〉
図10は、樹脂コーティング層の他の形態を説明する縦断面図である。本図に示す金属成形体は、金属製多孔体の一部にのみ樹脂コーティング層を備えた点に特徴がある。以下、金属成形体を構成する金属製多孔体として図2に示した環状の金属製多孔チューブ1Aを用いた例に基づいて詳細に説明する。
金属成形体200(200D)は、金属製多孔チューブ1Aの端部を被覆する端部コーティング層220を備えている。金属成形体200(200D)は端部コーティング層220として、金属製多孔チューブ1Aの軸方向端部の外周面をコーティングする外側端部コーティング層221と、軸方向の端面をコーティングする端縁部コーティング層212と、軸方向端部の内周面をコーティングする内側端部コーティング層223を備えている。なお、金属成形体200(200D)は、外側端部コーティング層221と、端縁部コーティング層212と、内側端部コーティング層223の何れか、又はこれらを適宜選択的に組み合わせたコーティング層を備えてもよい。
端部コーティング層220の軸方向長、厚さ、及び金属製多孔体の各孔内への浸透度等は、端部コーティング層220が果たすべき役割や要求される強度等に応じて適宜設定される。例えば、端部コーティング層220を目止め材として機能させる場合、端部コーティング層220は金属製多孔チューブ1Aの表面の孔を埋めることができれば足りる。この場合、端部コーティング層220はごく肉薄でよく、端部コーティング層220を構成する樹脂は金属製多孔チューブ1Aの内部の各孔内にまで入り込んでいる必要はない。
ここで、端部コーティング層220の厚さは、金属製多孔体の表面(外周面、内周面、端面)に位置する金属線材を基準として規定される。
なお、樹脂コーティング層の軸方向長、厚さ、或いは金属製多孔体の各孔内への浸透度等の設定については、図1に示した樹脂コーティング層210にも同様に当てはめることができる。
金属製多孔チューブ1Aのうち、軸方向の端部等、他の部品と接触する部位に形成した樹脂コーティング層は、金属製多孔チューブ1Aと接触する他の部品との隙間を自らが圧縮変形することにより埋めることで流体の漏出や外部からの異物の進入を防止するガスケット(シール部材)として機能させることが可能である。ガスケットと金属製多孔チューブ1Aとを予め一体化させておくことができるので、部品の組み立てに要する時間を短縮することができる。
〈樹脂コーティング層3〉
図11(a)、(b)は、樹脂コーティング層の更に他の形態を説明する縦断面図である。
図11(a)に示すように樹脂コーティング層は、金属製多孔体の面に応じて(内周面か外周面かによって)、その形成範囲が異なるようにしてもよい。例えば、図2に示した金属製多孔チューブ1Aに樹脂コーティング層を形成する場合、外周側には軸方向の全域に外部コーティング層211を形成し、内周側には軸方向端部に内側端部コーティング層223を形成した管状の金属成形体200(200E)としてもよい。
また、樹脂コーティング層のうち、軸方向端部に位置する部位は、金属製多孔チューブ1Aの端縁から大きく突出させるようにしてもよい。即ち、図11(b)に示すように管状の金属成形体200(200F)の樹脂コーティング層(図では外部コーティング層211)は、金属製多孔チューブ1Aと径方向に重なることにより金属製多孔チューブ1Aを被覆している被覆部211aと、金属製多孔チューブ1Aの端縁を超えて軸方向の外側に延長され、樹脂コーティング層が単独で存在する(金属製多孔チューブ1Aとは重なっていない樹脂コーティング層部分である)延長部211bとを含んでもよい。
なお、樹脂コーティング層は、多層状に形成してもよい。
また、樹脂コーティング層には、形成部位によって異なる樹脂材料を用いてもよい。例えば、金属製多孔チューブ1Aの内周面を被覆する樹脂コーティング層と、外周面を被覆する樹脂コーティング層とに、互いに異なる樹脂材料を用いてもよい。また、軸方向の位置に応じて樹脂コーティング層を構成する樹脂材料を切り替えてもよい。
《樹脂コーティング層に使用される樹脂1》
上記金属製多孔チューブ1Aは、人の手で変形させてもキンクせずに自在に変形可能に構成されているため、樹脂コーティング層210を構成する樹脂は金属製多孔チューブ1Aの変形に追従して変形可能な柔軟性を有したものが使用される。
樹脂コーティング層210に使用可能な樹脂としては、例えばスチレン系樹脂、塩ビ系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、が挙げられる。
金属成形体を再使用する場合は、洗浄、消毒、及び滅菌方法に対応した樹脂が用いられる。例えばオートクレーブによる高圧蒸気滅菌を実施する場合は、耐熱温度130℃以上の樹脂として、ポリオレフィン等を用いるのが好適である。
その他、樹脂コーティング層210に使用する樹脂としては、使用環境に応じて適したものが選択される。
樹脂コーティング層210には上述の樹脂以外にも、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂等を用いてもよい。また、樹脂コーティング層210に使用する樹脂は合成樹脂であってもよいし、天然樹脂であってもよい。天然樹脂は植物由来のものであっても動物由来のものであってもよい。動物由来の樹脂にはタンパク質由来樹脂の一つであるゼラチンやコラーゲンが含まれる。
《樹脂コーティング層に使用される樹脂2》
樹脂コーティング層が、金属製多孔チューブ1Aと共に変形することを要求されない場合や、金属製多孔チューブ1Aの変形を阻止する目的で用いられる場合等には、樹脂コーティング層には、それ自体が変形しないような(又は変形させて使用することを前提としないような)硬質な樹脂を用いることができる。このような用途に用いる樹脂としては、例えば非延伸型のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)が挙げられる。
硬質な樹脂から形成される樹脂コーティング層は、金属製多孔チューブ1Aの軸方向の端部、又は中間部の適所に部分的に設けることができる。
硬質樹脂による樹脂コーティング層は金属製多孔チューブ1Aの変形を阻止するが、硬質樹脂によってコーティングされていない金属製多孔チューブ1Aの部分は自在に湾曲変形する。従って、金属製多孔チューブ1Aのうち硬質樹脂による樹脂コーティング層が形成された部位は、例えば金属製多孔チューブ1Aの変形を防止しつつ鉗子等による挟持を可能とする挟持専用部(変形阻止部)として機能させることができる。硬質樹脂からなる樹脂コーティング層は、金属製多孔チューブ1Aの変形に追従して変形する樹脂コーティング層に対して軸方向に並べて配置してもよいし、変形する樹脂コーティング層に重ねて(コーティング層の厚さ方向に重ねて)配置してもよい。
《コーティング方法〜インサート成形》
樹脂コーティング層は、インサート成形又はディッピングにより形成される。以下、樹脂コーティング層の形成方法の例として、インサート成形について説明する。
インサート成形では、金型内に金属製多孔チューブを装填した後、金属製多孔チューブの周囲に溶融させた樹脂を注入して固化させ、金属製多孔チューブと樹脂とを一体化した金属成形体を作製する。本例に示すインサート成形は、インサートである金属製多孔チューブを金型に装着して、金属製多孔チューブの周囲に樹脂を射出する射出成形方式によるものである。
図12は、インサート成形の様子を示す模式図であり、(A)は一次インサート成形工程を示し、(B)は二次インサート成形工程を示す図である。いずれの図も縦断面図を示している。本図においては、図1(A)に示す金属成形体200Aの作製方法を示している。
図12(A)に示すように、一次インサート成形工程において使用する一次金型230は、金属製多孔チューブ1Aの内周面と所定の間隙を有した状態にて金属製多孔チューブ1Aの一端から金属製多孔チューブ1Aの中空部5内に挿入される円柱状の突起233を有した第一コア231と、金属製多孔チューブ1Aの外周面と密着する内面を有した円柱状の中空空間内に金属製多孔チューブ1Aを収容する第一キャビティ241とを有する。第一キャビティ241は、半円筒状の分割片(軸方向に沿った断面による分割体からなる分割片)に二分割可能に構成されている。第一キャビティ241の最奥部には、端縁部コーティング層214を形成するための空洞部243が形成されている。また、この空洞部243には樹脂注入口245が連通形成されている。
一次インサート成形工程においては、樹脂注入口245から溶融樹脂を所定の圧力にて一次金型230と金属製多孔チューブ1Aとの間に形成された空間内に注入することにより、内部コーティング層213と一方の端縁部コーティング層214を形成する。また、樹脂が固化した後、内部コーティング層213が形成された金属製多孔チューブ1Aが一次金型230から取り出される。
図12(B)に示すように、二次インサート成形工程において使用する二次金型250は、内部コーティング層213が形成された金属製多孔チューブ1Aの一端(端縁部コーティング層214側)からその中空部内に挿入されると共に、内部コーティング層213の内周面と密着する円柱状の突起253を有した第二コア251と、金属製多孔チューブ1Aの外周面と所定の間隙を形成した状態にて金属製多孔チューブ1Aを収容する円柱状の中空空間を備えた第二キャビティ261とを有する。第二キャビティ261は、半円筒状の分割片に二分割可能に構成されている。第二キャビティ261の最奥部には、端縁部コーティング層212を形成するための空洞部263が形成されている。また、この空洞部263には樹脂注入口265が連通形成されている。
二次インサート成形工程においては、樹脂注入口265から溶融樹脂を所定の圧力にて二次金型250と金属製多孔チューブ1Aとの間に形成された空間内に注入することにより、外部コーティング層211と、他方の端縁部コーティング層212を形成する。また、樹脂が固化した後、金属成形体200Aが二次金型250から取り出される。
このようにして樹脂コーティング層が形成された金属成形体200Aは、洗浄された後、必要な検査を経て完成される。
なお、インサート成形における注入樹脂の温度及び圧力条件等は、コーティングする樹脂の種類や粘性に応じて適宜設定される。
本実施形態において樹脂コーティングされる金属製多孔体は、線材が焼結により結合されているので、射出成形方式によるインサート成形を実施したとしても、線材がずれたり剥がれたりすることはない。また、インサート成形時に加えられる圧力によって樹脂が金属製多孔体表面の線材間に食い込むので、金属成形体を繰り返し湾曲変形させても、樹脂が金属製多孔体から剥がれにくい。また、インサート成形によれば、金属製多孔体に対して高い寸法精度の樹脂コーティング層を形成することができる。なお、樹脂は、金属製多孔体の表面を覆うだけではなく、金属製多孔体の微細な各孔内に浸透させるようにしてもよい。
《コーティング方法〜ディッピング》
図13は、ディッピングにより樹脂コーティング層を形成する様子を示した模式図である。金属成形体を構成する金属製多孔体として図2に示した環状の金属製多孔チューブ1Aを用いた例に基づいて説明する。また、金属製多孔チューブ1Aの端部にのみ樹脂コーティング層を形成する例により説明する。
図13(a)に示すように、金属製多孔チューブ1Aを、その軸方向を上下方向とするように吊り下げ支持する。図13(b)に示すように、樹脂材料を溶解させたディップ成形用組成物270(コロイド溶液:ゾル)中に、金属製多孔チューブ1Aを浸漬させる。金属製多孔チューブ1Aの浸漬深さは、形成する樹脂コーティング層の軸方向長に応じて決定する。最後に、図13(c)に示すように、金属製多孔チューブ1Aをディップ成形用組成物270から引き上げて、金属製多孔チューブ1Aに付着させた樹脂材料を固化させる。
ディッピングの場合、樹脂コーティング層の厚さは、樹脂材料を溶解させたディップ成形用組成物の粘度、金属製多孔チューブの温度、金属製多孔チューブの浸漬時間、及び金属製多孔チューブの浸漬回数によってコントロールできる。ディップ成形用組成物の粘度は、ディップ成形用組成物に含まれる溶剤の割合やディップ成形用組成物の温度によってコントロールすることができる。
ディッピングの場合、インサート成形に比べて樹脂コーティング層を肉薄に仕上げることができる。また、樹脂コーティング層の厚さは、ディップするときに最下部となる金属製多孔チューブの部位は他の部位に比べて比較的肉厚になるものの、その他の部位においてはほぼ一定に(平均的に)形成することができる。また、金属製多孔チューブをディップ成形用組成物に浸漬させて引き上げた後、金属製多孔チューブに付着した余剰のディップ成形用組成物を拭き取ることによって、樹脂コーティング層を更に肉薄に仕上げることができる。樹脂コーティング層を、金属製多孔チューブの表面において各孔を埋める目止め材として機能させる場合、樹脂コーティング層はごく肉薄で足りるため、その形成方法としてディッピングは好適である。
ディッピングの場合、ディップ成形用組成物の粘度や浸漬時間等を調整することによって、金属製多孔チューブが有する各孔内へのディップ成形用組成物の進入状態を制御することができる。
金属製多孔チューブのうち、ディップ成形用組成物内に浸漬させる部位を調整することにより、所望の部位にのみ樹脂コーティング層を形成することができる。例えば、金属製多孔チューブの端部のみをディップ成形用組成物中に浸漬させることで、樹脂コーティング層が端部にのみ形成された金属成形体を得ることができる。また、ディッピング直後にゲル状となっている樹脂コーティング層部分を成形用の雌型内に収容した状態で固化させることによって、樹脂コーティング層を所望の形状に成形すると共に、その表面を滑らかにすることができる。
また、金属製多孔チューブの中空部内に心棒を挿入したり、金属製多孔チューブの適所にマスキングを施す等により、樹脂コーティング層の形成位置を制御できる。
《コーティング方法〜塗装》
樹脂コーティング層は、塗装により形成することができる。塗装には、吹き付け塗装、刷毛塗り塗装、ローラー塗装、又はその他の塗装方法を用いることができる。樹脂コーティング層を塗装により形成する場合、金属製多孔チューブにマスキングを施すことにより、樹脂コーティング層を金属製多孔チューブの任意の位置に形成し、また部位により樹脂コーティング層の厚さを調整することが可能である。塗装には、特にエポキシ系やウレタン系の2液性の塗料を好適に用いることができる。
樹脂コーティング層の厚さは、ディッピングと同様に塗装材料の粘度や塗装回数等によりコントロールできる。塗装材料の粘度は塗装材料に含まれる溶剤の割合等によってコントロールすることができる。
本例においても、ディッピングの場合と同様に、肉厚が樹脂コーティング層の全域において平均的で、且つ肉薄の樹脂コーティング層を形成することができる。
《コーティング方法〜熱収縮チューブ》
樹脂コーティング層は、熱収縮チューブを利用して形成することができる。
図14(a)〜(c)は、熱収縮チューブにより樹脂コーティング層を形成する様子を示した模式図である。熱収縮チューブを利用する場合、図14(a)に示すように金属製多孔チューブ1Aを熱収縮チューブ280によって被覆し、図14(b)に示すように熱収縮チューブ280を加熱して収縮させることによって、図14(c)に示すように熱収縮チューブが樹脂コーティング層(図では端部コーティング層220)として金属製多孔チューブ1Aに一体化された金属成形体200(200D)を得ることができる。
ここで、熱収縮チューブには、ナイロンエラストマー製の熱収縮チューブ(例えば、株式会社ハギテック製のペバックス)や、株式会社ハギテック製のポリオレフィン製の熱収縮チューブ等を用いることができる。
本例においても、ディッピングの場合と同様に、肉厚が樹脂コーティング層の全域において平均的で、且つ肉薄の樹脂コーティング層を形成することができる。また、熱収縮チューブは固体であり取り扱いが容易であり、また樹脂コーティング層の形成に必要な装置が大がかりとならない。
《コーティング方法〜溶着》
樹脂コーティング層は、金属製多孔チューブにシート状又はテープ状の樹脂製のコーティング材料を巻き付けた後、溶着させることにより形成することができる。溶着により、コーティング材料同士を一体化させると共に、コーティング材料と金属製多孔チューブを一体化させることができる。加熱による溶着の場合、コーティング材料を含む金属製多孔チューブの全体を炉に入れて加熱してもよいし、高周波や超音波を用いて部分的に加熱してもよい。加熱による溶着は、少なくとも金属製多孔チューブを構成する金属線材が焼結する温度に満たない温度で実施する。
この場合に用いる樹脂材料としては、例えばe−PTFE(延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン)を用いることができる。
なお、図11(b)に示すような延長部211bを備える金属成形体200Fを形成する場合、金属製多孔チューブの軸方向端部から軸方向の外側に突出する心棒を配置して、延長部211bを構成するコーティング材料を支持した上で溶着を実施し、溶着後に心棒を取り外せばよい。
また、樹脂コーティング層を構成するコーティング材料は、予めチューブ状に成形されていてもよい。この場合、コーティング材料を金属製多孔チューブの内周側及び/又は外周側に配置した後、加熱によりコーティング材料を溶融又は軟化させることにより、コーティング材料と金属製多孔チューブを一体化させることができる。
〈使用例1〜医療用吸引器具〉
次に、図15及び図16を参照して、金属成形体を吸引器具に装着した場合の使用例について説明する。図15は、吸引器具の概要を示す平面図である。図16(A)、(B)は、吸引器具の先端に管状の金属成形体を装着した状態を示す図である。
吸引器具60は、手術をする際に、切開した部分から先端を挿入し、患部の視界を妨げる体液等を吸引するときに等に用いられる。
吸引器具60は、図15に示すように、本体61と、本体61の基端側に設けられた接続部62とから構成されている。なお、図15に示した吸引器具60の例では、本体61は先端61a側の直径が小さくなるように形成されている。また、接続部62は、蛇腹状に形成されている。この接続部62は、ゴム管やビニール管等を接続するための部位である。こうした本体61の内部及び接続部62の内部は、本体61の先端61aと接続部62の後端62bとを連絡する図示しない通路を備えている。吸引器具60は、接続部62にゴム管やビニール管等の一端を接続すると共に、ゴム管やビニール管等の他端を図示しないバキューム装置に接続して使用される。吸引器具60は、ゴム管やビニール管等を介して図示しないバキューム装置に接続されることにより、先端61aから物を吸い取る吸引力が与えられる。
吸引器具60の本体61の先端61aには管状の金属成形体200A、200B、200Cの何れかが装着される。図16(A)は本体61の内部に金属成形体200Aを挿入した状態を示しており、図16(B)は本体61の外部を金属成形体200Aにて被覆した状態を示している。
金属成形体200Aは自在に湾曲変形可能なので、金属成形体200Aを作業箇所に適した形状に変形させることができる。直線的形状の吸引器具60の本体61に対して、体液等の吸引口となる金属成形体200Aの先端開口を所望の方向に向けることができ、作業効率の向上を図れる。
図1に示す金属成形体200A、200B、200Cは、外部コーティング層211と内部コーティング層213の少なくとも一方を備えているので、吸引した体液等を外部に漏らすことなく中空部201内を通過させる。内部コーティング層213を備えた金属成形体200A、200Cでは、吸引した体液等が中空部201内を円滑に通過する。
外部コーティング層211及び端縁部コーティング層212を備えた金属成形体200A、200Bでは、金属成形体200A、200Bと接触した患部周辺の組織を傷つけない。
金属製多孔チューブ1Aの全面に樹脂コーティング層210を設けた金属成形体200Aでは、線材間に形成される各孔内に体液等が入り込むことがなく、洗浄性に優れ、医療用途における再利用も可能である。なお、金属製多孔体1として金属製多孔チューブ1Fを内包した管状の金属成形体200Bも同様の効果を有する。
金属成形体200A、200B、200Cは、内周面又は外周面に樹脂コーティング層を備えているので、金属製多孔チューブ1Aを構成する線材層の層数を低減させたとしても、強度を保持することができる。その結果、金属成形体の材料費を低減でき、金属成形体をディスポーザル品として提供することも可能となる。
なお、金属成形体200Aの用途は、吸引器具60の先端に装着して利用することだけに限定されない。金属成形体200Aは、保護管、ホース、医療用カテーテル、吸引管、絶縁チューブ、洗浄筒先端等にも用いることができる。
〈使用例2〜医療用チューブ〉
本発明の実施形態に係る金属成形体の第二の使用例について説明する。金属成形体は、人体の臓器を置換(代替)又は補強するための人工臓器を含む医療材料として使用することができる。
特に、図2に示す金属製多孔チューブ1Aに樹脂コーティング層を形成した金属成形体は、人体の管状の臓器を置換(代替)又は補強するための人工導管(医療用チューブ)として使用することができる。ここで、「管状の臓器」の一例としては、血管、気管、食道、腸管、尿管等を挙げることができる。
また、管状の金属成形体は、カニューレやカテーテル等の医療器具(医療用チューブ)としても使用することができる。ここで、カニューレ及びカテーテルは、体液や薬液を体外へ導いたり体内に注入するために体内に挿入される管である。カニューレ及びカテーテルは比較的短期間、一時的に体内に挿入するものでも、比較的長期間にわたり体内に留置されるものでもよい。
管状の金属成形体は、全部が人体の中に埋め込まれてもよいし、人体の内外を連通(接続)させるべく、一部が人体の中に埋め込まれ、他部が人体の外部に配置される態様で使用されてもよい。また、管状の金属成形体は、人工臓器のうち体外に配置される部位に使用され、全部が人体の外部に配置される態様で使用されてもよい。
管状の金属成形体を体内に配置する人工導管として使用する場合、金属製多孔チューブを構成する金属としては、特にチタン・チタン合金、ニチノール(Ni−Ti合金)が好適である。これらの金属を用いる場合、金属同士の接合には焼結による拡散接合の他、必要に応じてろう付け、抵抗溶接等を用いることができる。
管状の金属成形体を体内に配置する人工導管として使用する場合、金属製多孔チューブを構成する樹脂コーティング層を構成する樹脂としては、生体適合性(Biocompatibility)に優れた生分解性のない樹脂として特にシリコン、ポリウレタン、PTFE、が好適である。また、人工導管には生体適合性に優れた生分解性のある樹脂を用いることも可能であるが、この場合は、生分解性のある樹脂が分解する過程で生体組織が増殖して、人工導管が担った臓器部分を再生できることが必要である。
人工導管が体液等を円滑に輸送する機能を長期間に渡って果たすためには、体液等の流路となる人工導管の中空部内が経時において詰まらないこと、即ち中空状の空間(内腔面積)が長期間に渡って維持されることが必要である。人工導管に生分解性のない樹脂を用いる場合は、できるだけ人工導管の表面を細胞や生体組織が覆わないように薬剤を用いてコントロールすることによって体液等の流路を確保するアプローチを採ってもよいし、人工導管を足場として人工導管の表面に細胞や生体組織を適度に増殖させて人工導管が生体組織によって覆われるようにするアプローチを採ってもよい。後者の場合、人工導管を構成する樹脂コーティング層自体を細胞増殖の期待できる材料(例:コラーゲン、ゼラチン等)から形成するか、樹脂コーティング層に重ねて細胞増殖の期待できる材料をコーティングすればよい。
《気管カニューレ》
金属製多孔チューブ1Aに樹脂コーティング層を形成した管状の金属成形体200A(図1)を気管カニューレとして用いる例について説明する。図17は、本発明の実施形態に係る管状の金属成形体を気管カニューレとして使用した例を示す模式図である。
気管カニューレ300は、気管切開手術により気管に形成された孔を通じて気管に挿入される管状の部材である。気管カニューレ300の軸方向の一端側が体外に配置され、他端側が体内に配置される。気管カニューレ300の軸方向一端寄りの外周面には体外に配置されるフランジ部301が形成されている。気管カニューレ300の軸方向他端寄りの外周面には、気管と気管カニューレ300との隙間を塞ぐための拡縮自在なカフ303が任意で取り付けられてもよい。
気管カニューレ300は樹脂によるコーティング層を備えているため、従来の金属製のカニューレに比べて表面が軟質になり、切開口や気管粘膜への刺激を低減させることができる。また、金属製多孔体の全体をコーティング層内に埋設した場合には、金属アレルギーの心配は不要である。また、金属製多孔体部分が気管カニューレ300の物理的な強度を担うため、気管カニューレの全体を樹脂から構成する場合に比べて、気管カニューレを肉薄にすることができる。更に、金属成形体である気管カニューレ300は自在に湾曲変形させることができ、且つ変形後の形状を固定的に保持できるので、患者に見合った形状に容易に調整することができる。
《人工血管》
金属製多孔チューブ1Aの適所に樹脂コーティング層を形成した管状の金属成形体を人工血管として用いる例を説明する。図18は、本発明の実施形態に係る管状の金属成形体を人工血管として使用した例を示す模式図である。図においては下行大動脈321の一部が金属成形体200(200F)によって置換されている。
図示する金属成形体は、図11(b)に示した延長部211bを有する金属成形体200Fであり、金属成形体200Fの一方の端部に位置する延長部211bが下行大動脈321の上流側(心臓側)に縫合され、他方の端部に位置する延長部211bが下行大動脈321の下流側(心臓とは反対の側)に縫合されることにより、金属成形体200Fが下行大動脈321に一体化されている。即ち、本例において延長部211bは、人体臓器との接合(縫合)に用いられる接合部(縫合部)として機能する。
ここで、金属成形体200Fは内径が確保された中空状の形態のまま人の手で湾曲変形させることができるので、下行大動脈321の湾曲形状に合わせて変形させて使用することができる。
《作用及び効果》
人工導管として使用される管状の金属成形体を構成する金属線材の線径、圧延率、金属製多孔体の内径及び外径(金属線材の巻き付け回数)は、人工導管が埋め込まれる箇所に応じて適宜設定される。
ここで、人体内に全部又は一部が埋め込まれる人工導管においては、人体への負担を極力少なくするために、できるだけ外径が小さく、且つできるだけ大きい内径を有すること、即ち肉薄であることが望まれる。しかし、人工導管は肉薄であるほど、外力に弱くなり押しつぶされやすくなるという問題がある。
本発明の一実施形態に係る管状の金属成形体を人工導管として用いる場合、金属成形体は金属構造部分を含むため、金属製多孔体を肉薄に仕上げながらも、金属製多孔体を外側に押し広げようとする外力、又は内側に押しつぶそうとする外力に対して比較的高い耐力を備えた人工導管を提供することができる。
人工導管においては、キンクせずに湾曲変形し、変形後も内腔面積を保持することが要求される。従来、使用されている人工血管の中にはステントグラフトのように、管状に整形したポリエステル繊維や延伸ポリテトラフルオロエチレン(e−PTFE)の外周部に、ニチノール等の金属線材やe−PTFE等から構成されるサポート部材をらせん状に巻き付けることにより、よじれやキンクを防止しているものがある。
しかし、このような人工血管を外力により湾曲させた場合には、サポート部材が有する弾性力により直線的な形状を維持しようとする反力が働く。仮に、人工血管を湾曲させた形状のまま体内に埋め込む必要がある場合には、患者の他の器官を傷つけてしまう虞がある。
本発明の各実施形態に係る管状の金属成形体は、人の手で自由に湾曲させることが可能でありながら、キンクせずに塑性変形し、内径が確保された中空状の形態を保持できるという特徴がある。また、変形させた後は、弾性的に元の形状に復帰しようとはせずに、その形態を維持する。従って、変形させた後の管状の金属成形体には、元の形状に復帰しようとする反力が働かず、その形状を維持するため、体内に埋め込まれた場合であっても、弾性力により患者の正常な器官を傷つけるといった事態を防止できる。
長期にわたって金属成形体を人体内に留置するためには、金属成形体が高い生体適合性を有している必要がある。例えば、e−PTFEは生体適合性が非常に高い物質であるため、管状の金属製多孔体をe−PTFEでコーティングした管状の金属成形体は、人工血管として使用するに好適である。
しかし、より長期にわたって管状の金属成形体を体内に留置し、安定した導管機能を発揮させるためには、単に異物を排除するという生体反応を最小限に抑えるような性質を有しているだけではなく、金属成形体の表面に患者の自己組織(内皮組織)が形成されるよう促進することが望ましい。
内皮組織化を促進するためには、血液と接触する金属成形体の表面の全部又は一部に凹凸や穴(空隙)を形成したテクスチャードサーフェイス(textured surface)を設けることが好適である。テクスチャードサーフェイスを設けることにより、凹凸や空隙を利用して血栓を安定的にアンカリングすること(血栓を凹凸や空隙によって保持すること)ができる。これは、例えば金属成形体のうち血液と接触する部位に多孔質である金属製多孔体を露出させることで実現できる。
血栓をアンカリングすることによって、血液中への血栓の脱落を防止することができ、また、アンカリングされた血栓の上に内皮細胞が定着し、抗血栓性を高めることも期待できる。究極的には血液との接触部の全体を内皮細胞で覆うことが理想的であるが、内皮細胞の細胞分裂回数には限界がある。
そこで、金属成形体の表面には、細胞が増殖し、定着するための足場となる物質として、ゼラチンやコラーゲン、ポリグリコール酸(PGA)やポリ乳酸(PLA)等をコーティングすることが好適である。
また、これらの足場材料には、治療薬剤を含んでもよい。治療薬剤として内皮組織の形成を促進する薬品を混合しておくことで、金属成形体への細胞の定着及び細胞の増殖を図ることができる。この場合、金属製多孔体にコーティングする足場材料には徐放性を有する形態に調整した治療薬剤を混合したり、内部に保持した治療薬剤を徐放する性質を有する徐放性ゼラチンハイドロゲルをコーティングすること等が好適である。
また、金属成形体にコーティングする足場材料には、内皮組織の形成を促進する治療薬剤の代わりに、又はこれと合わせて、抗血栓性を高めるための治療薬剤として、凝固因子を抑制する抗血液凝固薬であるヘパリン、血小板の活性を抑制するプロスタグランディン、或いは血栓溶解薬であるウロキナーゼ等を混合してもよい。
〔金属製多孔体の実施例及び比較例〕
以下、金属製多孔体の実施例及び比較例に基づいて、キンクせずに自在に変形可能な金属製多孔体に必要な条件について詳細に説明する。図19は、実施例及び比較例の物性値をまとめた表である。
〈実施例1〉
実施例1では、材質がJIS規格のSUS304(密度は7.93g/cmである。)、線径が0.13mmの丸線材を圧延加工して圧延率63%に形成された線材2を用いて金属製多孔チューブ1Aを作製した。
実施例1の金属製多孔チューブ1Aの作製は、以下の工程を経て行った。
最初にワインダーの内部で丸線材を圧延加工し、圧延率が63%の線材2を形成した。次に、圧延加工された線材2をセラミックス製の芯材(不図示)に巻き付けて芯材の外周面に管状の部材を形成した。具体的には、まず、線材2を芯材の軸に対して一方向に傾斜させ、芯材の周りに一定のピッチで芯材の軸方向の一方向に順次巻き付けて1つの線材層3を形成した。次に、この1つの線材層3の外周から線材2を芯材の軸に対して逆向きの方向に傾斜させ、芯材の周りに一定のピッチで芯材の軸方向の逆方向に巻き付けてさらに線材層4を形成した。こうした手順を300回繰り返して行い、線材2からなる複数の線材層を芯材の外周面に形成して管状の部材を芯材の外周面に作製した。
次いで、熱処理を行った。熱処理は、管状の部材を芯材ごと真空炉に入れて、温度を1180℃にして180分行った。こうした熱処理を行うことによって、線材2同士を焼結した。
その後、管状の部材の外径が所定の寸法に形成されるように、芯材の外周面に巻かれた管状の部材をスウェージングした。スウェージングを行った後、管状の部材を芯材ごと真空炉に入れてもう一度熱処理を行った。熱処理は、温度を1180℃にして180分行った。2回目の熱処理後、芯材を取り外して実施例1の金属製多孔チューブ1Aを得た。
〈実施例2〜9、比較例1〜7〉
以下、実施例1と同様にして、図19に示す物性表の実施例2〜9、比較例1〜7に示すような金属製多孔チューブ1Aを作製した。
なお、JIS規格のSUS316Lの密度は7.98g/cmである。
実施例9の金属製多孔チューブ1Aの熱処理は、980℃の温度で180分行った。
比較例5の金属製多孔チューブ1Aの熱処理は、780℃の温度で180分行った。比較例5では、熱処理の温度が低く、線材2が焼結されなかった。
実施例1〜9及び比較例1〜7の「嵩密度」は、上述した単位体積の質量=製品重量/製品体積によって表すことができる、製品の重量を製品の体積で除した単位体積あたりの質量のことであり、「空隙率」は、上述した{(材料比重-製品密度)/材料比重}×100によって表すことができる製品の全容積に対する隙間の容積の割合のことであり、「圧延率」は、上記の式(1)によって求められた数値をそれぞれ意味する。
〈第1の強度試験〉
図20は、第1の曲げ試験の説明図である。第1の強度試験は、図20に示すように、引っ張り試験機(ORIENTEC社製、RT−1250A型)と自作した試験用のジグとからなる曲げ試験機10を使用して試験片50を曲げ変形させ、試験片50がキンクするか否かを確認する試験である。
曲げ試験機10は、試験片50を支持する1対の支持部11と、この支持部11によって支持された試験片50を押圧するためのアーム12とを備えている。
アーム12は、その下部に、接続棒13と接続棒13の下端に取り付けられた押圧体14とを備えている。
押圧体14は、直径が5mmに形成された円柱状の部材であり、押圧体14の外周面が試験片50に押し当てられるように構成されている。
第1の強度試験は、上記実施例1〜4の金属製多孔チューブ1A、及び比較例1〜4の金属製多孔チューブ1Aを試験片50として行った。その際、1対の支持部11同士の間隔である支点間距離L1を18mmに設定し、試験片50の上からアーム12を下降させ、押圧体14を支持部11同士の間の中央部で試験片50に押し当てて、試験片50に曲げ変形を発生させることによって行った。また、各試験片50の変形によって生じる変位D1は、4.5mmに設定した。
表1は、実施例1〜4の試験片50及び比較例1〜4の試験片50の第1の強度試験の結果をまとめたものである。試験結果の評価は、「キンクしない」、「キンクしにくい」及び「キンクした」という3段階で行った。表1の結果の欄記載した符号は、「1」が「キンクしない」こと、「2」が「キンクしにくい」こと、「3」が「キンクした」ことをそれぞれ表している。
Figure 0006831092
〈第2の強度試験〉
図21は、第2の曲げ試験の説明図である。第2の強度試験は、図21に示すように、引っ張り試験機(ORIENTEC社製、RT−1250A型)と自作した試験用のジグとからなる曲げ試験機20を使用して試験片50を曲げ変形させ、試験片50がキンクするか否かを確認する試験である。
この曲げ試験機20は、上下方向に延びる円柱状の支持棒21と、この支持棒21の上端部に試験片50を支持する支持部22と、支持部22に支持された試験片50を押圧する円柱状のアーム23とを備えている。
支持部22は、板状の部材が支持棒21の上端から上方に向けて突出するようにして設けられた部材であり、その板厚は3mmである。支持部22は、その中央部分に穴22aを備えており、試験片50を穴22aに通して試験片50を支持するように構成されている。
アーム23は、その下端部に試験片50を押圧するための1対の押圧板24を備えている。
1対の押圧板24は、所定の距離だけ間隔を空けてアームの下端部に設けられている。1対の押圧板24は、その間に支持部22を位置させて支持部22の両側から試験片50を押圧するように構成されている。
第2の強度試験は、上記実施例5〜7の金属製多孔体を試験片50として行った。その際、押圧板24同士の間隔である支点間距離L2を8mmに設定し、押圧板24を支持部22の両側から試験片50に押し当てて、試験片50に曲げ変形を発生させることによって行った。また、各試験片50の変形によって生じる変位D2は、2.36mmに設定した。
表2は、各実施例の試験片50の第2の強度試験の結果をまとめたものである。試験結果の評価は、「キンクしない」、「キンクしにくい」及び「キンクした」という3段階で行った。表2の結果の欄に記載した符号は、「1」が「キンクしない」こと、「2」が「キンクしにくい」ことをそれぞれ表している。
Figure 0006831092
〈考察〉
表3は、線材2の圧延率順に、実施例1〜7と比較例1〜4の強度試験結果をソートし直したものである。
Figure 0006831092
表3に示すように、圧延率が39%以上63%以下の場合、試験片50は「キンクした」とはいえないことが分かる。一方、圧延率が38%以下である場合又は圧延率が66%以上である場合、試験片50は「キンクした」ことが分かる。このことから、キンクするか否かということと圧延率との間には一定の相関関係が存在し、39%以上63%以下であることは、試験片50がキンクしないための1つの条件であると考えられる。
しかし、圧延率が39%以上63%以下の範囲に含まれる40%であっても、実施例3、4、5、6の試験片50は「キンクしない」という結果を得られたが、実施例1、2の試験片50は「キンクしにくい」という結果しか得られなかった。このことから、圧延率が39%以上63%以下であることは、必要条件ではあるが、十分条件とまではいえないということができる。
表4は、試験片50の嵩密度順に、実施例1〜7と比較例1〜4の強度試験結果をソートし直したものである。
Figure 0006831092
表4に示すように、試験片50の嵩密度が3.35g/cm以上5.11g/cm以下である場合、試験片50は「キンクした」とはいえないことが分かる。一方、試験片50の嵩密度が、3.31g/cm以下の場合、2.61g/cm及び3.02g/cmで「キンクしにくい」という結果を得ることができたが、その他の範囲に属する試験片50は「キンクした」という結果しか得られないことが分かる。このことから、キンクするか否かということと試験片50の嵩密度との間には一定の相関関係が存在し、嵩密度が3.35g/cm以上5.11g/cm以下であることは、試験片50がキンクしないための1つの条件であると考えられる。
しかし、試験片50の嵩密度が3.35g/cm以上5.11g/cm以下の範囲に含まれる3.98g/cmである実施例7の試験片50は「キンクしにくい」という結果しか得られなかった。このことから、試験片50の嵩密度が3.35g/cm以上5.11g/cm以下であることは、必要条件ではあるが、十分条件とまではいえないということができる。
表5は、試験片50の空隙率順に、実施例1〜7と比較例1〜4の強度試験結果をソートし直したものである。
Figure 0006831092
表5に示すように、試験片50の空隙率が35.9%以上58%以下である場合、試験片50は「キンクした」とはいえないことが分かる。一方、試験片50の空隙率が58.5%以上の場合、62.2%及び67.2%で「キンクしにくい」という結果を得ることができたが、その他の範囲に属する試験片50は「キンクした」という結果しか得られないことが分かる。このことから、キンクするか否かということと試験片50の空隙率との間には一定の相関関係が存在し、空隙率が35.9%以上58.0%以下であることは、試験片50がキンクしないための1つの条件であると考えられる。
しかし、試験片50の空隙率が35.9%以上58%以下の範囲に含まれる50.2%である実施例7の試験片50は「キンクしにくい」という結果しか得られなかった。このことから、試験片50の空隙率が35.9%以上58%以下であることは、必要条件ではあるが、十分条件とまではいえないということができる。
以上、表3〜表5に基づく考察から、キンクしない金属製多孔チューブ1Aは、金属製多孔チューブ1Aの空隙率が32%以上62%以下であること、金属製多孔チューブ1Aの嵩密度が3.35g/cm以上5.20g/cm以下であること、及び線材の圧延率が39%以上63%以下であることという条件を少なくとも満足した場合に得られると考えられる。ただし、金属製多孔チューブ1Aの嵩密度は使用される線材2によって変化するので、嵩密度は2次的な条件であると考えられる。
〈剥離強度試験〉
剥離強度試験は、図22に示すように、引っ張り試験機(ORIENTEC社製、RT−1250A型)に自作した試験用のジグを装着した引っ張り試験機30を使用して、焼結によって接合された線材2が剥離する際の荷重を測定する試験である。使用した引っ張り試験機30は、ベース31と、一定の間隔を空けてベース31に取り付けられた1対の保持部32と、ベース31に対して上下に移動するチャック部33とを備えている。
剥離強度試験は、上記実施例8の金属製多孔チューブ1Aと、比較例5、6の金属製多孔チューブ1Aとを試験片50として行った。その際、試験片50を1対の保持部32に保持させ、線材2を試験片50の外周面から1本引き出し、引き出された1本の線材2をチャック部33で保持し、チャック部33を試験片50から引き離して引き出された1本の線材2を試験片50から引っ張ることによって行った。チャック部33を試験片50から引き離す際、焼結によって接合された線材2が剥離するときの荷重を複数測定することができる。評価の対象となる試験結果は、複数の剥離強度の平均値である。
こうした剥離強度試験を行って実施例8の試験片50と、比較例5、6の試験片50の剥離強度を測定した。剥離強度試験の後、各試験片50を折り曲げてキンクしたかどうかを確認するキンク確認試験を行った。その際、試験片50の内側の部分がなす角度が、約110°になるように折り曲げた。
表6は、実施例8の試験片50及び比較例5、6の試験片50の剥離強度試験の結果及びキンク確認試験の結果をまとめたものである。試験結果の評価は、「キンクしない」、「キンクしにくい」及び「キンクした」という3段階で行った。表6の評価の欄に記載した記号は、「1」が「キンクしない」こと、「3」が「キンクした」ことをそれぞれ表している。
Figure 0006831092
試験の結果、実施例8の試験片50は、「キンクしない」という結果を得ることができた。この実施例8の試験片50の剥離強度は、1.08Nであった。なお、実施例8の試験結果の値は、複数回の測定結果の平均値であり、その測定結果は、0.96N以上、1.17N以下の範囲の広がりがあった。
これに対し比較例5の試験片50は、熱処理の温度が低かったため線材2が焼結されなかった。そのため、剥離強度を測定することができなかった。また、比較例5の試験片50は、キンク確認試験によってキンクの有無を確認することもできなかった。比較例6の試験片50は、「キンクした」という結果を得た。比較例6の試験片50の剥離強度は、0.93Nであった。
〈考察〉
実施例8の試験片50の試験結果と、比較例6の試験片50の試験結果とを比較する。実施例8の試験片50の剥離強度は1.08Nであり、比較例6の試験片50の剥離強度は0.93Nである。このように、実施例8の試験片50の剥離強度と比較例6の試験片50の剥離強度とは、共に1N付近である。両者の剥離強度は共に1N付近であるにもかかわらず、実施例8の試験片50は「キンクしない」という結果を得た一方で、実施例9の試験片50は「キンクした」という結果を得た。そこで、剥離強度以外の物性値についても両者を比較する。
図19の物性表に示すように、実施例8の試験片50及び比較例6の試験片50の線材2の材質、線材2の線径、試験片50の内径、試験片50の外径及び試験片50の全長は同じである。しかし、線材2の圧延率、試験片50の嵩密度及び試験片50の空隙率は、次のように相違する。
実施例8の試験片50を構成する線材2の圧延率は40%であり、39%以上63%以下の範囲に含まれている。一方、比較例6の試験片50を構成する線材の圧延率は30%であり、39%以上63%以下の範囲には含まれていない。実施例8の試験片50の嵩密度は3.49g/cmであり、3.35g/cm以上5.2g/cm以下の範囲に含まれている。一方、比較例6の試験片50の嵩密度は1.86g/cmであり、3.35g/cm以上5.2g/cm以下の範囲には含まれていない。実施例8の試験片50の空隙率は56%であり、39%以上63%以下の範囲に含まれている。一方、比較例6の試験片50の空隙率は77%であり、39%以上63%以下の範囲には含まれていない。
実施例8の試験片50の試験結果と比較例6の試験片50の試験結果との比較から分かることは、金属製多孔チューブ1Aを構成する線材2の剥離強度が1N付近である場合でも、金属製多孔チューブ1Aの空隙率が32%以上62%以下の範囲、嵩密度が3.35g/cm以上5.2g/cm以下の範囲、線材の圧延率が39%以上63%以下の範囲を外れた場合には、金属製多孔チューブがキンクすることである。
以上の試験結果から、線材2の圧延率が39%以上63%以下であること、金属製多孔チューブ1Aの空隙率が32%以上62%以下であること、金属製多孔チューブ1Aの嵩密度が3.35g/cm以上5.20g/cm以下であること、接合された線材同士の剥離強度が0.95N以上1.17N以下であることが、キンクを起こさないで人の手で自在に変形させることができる金属製多孔チューブ1Aを得るために必要な条件であると考えられる。ただし、金属製多孔チューブ1Aの嵩密度は使用される線材2によって変化するので、嵩密度は2次的な条件であると考えられる。
〈実施例10〉
厚さが約5μm、幅が6mmのSUS304の薄い金属材料を図示しないセラミックス製の芯材に巻き付け、その後に、線材2をSUS304の薄い金属材料の外から巻き付ける工程を経て、図9(B)に示す内周面に金属の薄層を備えた金属製多孔チューブ1Fを製作した。製作した金属製多孔チューブ1Fは、外径Dが2mmであり、内径dが1.3mmであり、長さLが20mmであり、金属の薄層の厚さが5μmであった。
実施例10の金属製多孔チューブ1Fを用いて流体を吸引したところ、金属製多孔チューブ1Fは、内周面よりも内側に形成された空間部をする流体を外部に漏らさないで金属製多孔チューブ1Fの長手方向の一端側から他端側に移動させることができた。
〈実施例11〉
図23は、管状の金属成形体の断面写真であり、(A)は縦断面写真であり、(B)は横断面写真である。製作した金属成形体は、図1(A)に示した金属成形体200Aであり、ステンレス線材からなる管状の金属製多孔体1Aの全体に対して、図12(A)、(B)に夫々示した一次金型230と二次金型250を用いて、射出成形方式によるインサート成形によりエラストマー樹脂による樹脂コーティング層210を形成したものである。
使用した金属製多孔体1Aの内径はφ2.2mm、外径はφ3.2mm、長さは26mmである。また、外部コーティング層211の厚さは0.4mm、内部コーティング層213の厚さは0.2mm、端縁部コーティング層212と端縁部コーティング層214(不図示)の厚さは、夫々0.5mmである。
断面写真から確認できるように、実施例11の金属成形体200Aの表面には、金属製多孔体1Aに対して均一に樹脂コーティング層210が形成されており、樹脂コーティング層210の厚さの寸法精度が高く維持されている。また、金属製多孔体1Aを構成する線材2の位置ずれや剥離等は確認できなかった。
また、この金属成形体200Aに対して外力を加えて変形させたところ、キンクを発生させることなく自在に変形させることができた。
〔本発明の実施態様、及び作用効果のまとめ〕
〈第一の実施態様〉
本態様に係る金属成形体200は、金属線材2が螺旋状、且つ多層状に巻き付けられ、各金属線材同士が焼結処理により接合された金属製多孔体1と、金属製多孔体の少なくとも一部を被覆する樹脂コーティング層210、220と、を備えることを特徴とする。
本態様においては、焼結処理を経て得られる金属製多孔体の表面を樹脂によりコーティングするので、焼結処理により発現する金属の優れた特性を活かし、且つ金属製多孔体に対して樹脂の持つ特性を付与した金属成形体を得ることができる。
本態様において金属製多孔体を被覆する樹脂は、使用用途、使用環境、成形の容易性等、種々の条件から決定される。
〈第二の実施態様〉
本態様に係る金属成形体200においては、樹脂コーティング層が、金属製多孔体の変形に追従して変形可能な柔軟性を有する樹脂により形成されていることを特徴とする。
焼結処理を経ることにより、外力を加えて変形させてもキンクせずに自在に湾曲する金属製多孔体を得ることができる。この特性を活かすため、金属製多孔体を被覆する樹脂には、金属製多孔体の変形に追従して変形可能な柔軟性を有する樹脂を用いることが好適である。本態様によれば、焼結処理により発現する金属の変形特性を活かした金属成形体を得ることができる。
〈第三〜第五の実施態様〉
第三の態様に係る金属成形体200においては、樹脂コーティング層が、金属製多孔体の外側表面と内側表面の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする。
第四の態様に係る金属成形体200においては、樹脂コーティング層が、金属製多孔体の外側表面と内側表面の少なくとも一方の端部に形成されていることを特徴とする。
第五の態様に係る金属成形体200においては、樹脂コーティング層が、金属製多孔体の外側表面と内側表面の少なくとも一方の全域に形成されていることを特徴とする。
金属成形体が備える樹脂コーティング層は、金属成形体の使用用途や目的に応じた位置に形成することができる。樹脂コーティング層は金属製多孔体の外側の表面(一方の面)のみや内側の表面(他方の面)のみ等、金属製多孔体の一部に形成してもよいし、全体に形成してもよい。また、金属製多孔体の端部にのみ形成してもよい。また、外側又は内側の表面と、内側又は外側の表面とで形成位置を異ならせてもよい。
〈第六〜第九の実施態様〉
第六の態様に係る金属成形体200においては、樹脂コーティング層が、インサート成形により形成されていることを特徴とする。
第七の本態様に係る金属成形体200においては、樹脂コーティング層が、ディッピングにより形成されていることを特徴とする。
第八の態様に係る金属成形体200においては、樹脂コーティング層が、塗装により形成されていることを特徴とする。
第九の態様に係る金属成形体200においては、樹脂コーティング層が、熱収縮チューブにより形成されていることを特徴とする。
樹脂コーティング層は、種々の方法にて形成することができる。
樹脂コーティング層をインサート成形により形成する場合、金属製多孔体に対して高い寸法精度の樹脂コーティング層を形成した金属成形体を提供することができる。
即ち、金属線材同士が焼結処理により接合されているので、射出成形方式によるインサート成形等、金属製多孔体の周囲に加圧した溶融樹脂を注入して樹脂コーティング層を形成したとしても、金属製多孔体を構成する金属線材の位置ずれや剥離が発生しない。このため、金属製多孔体の形状を保持し、且つその性能を活かしつつ、高い寸法精度の樹脂コーティング層を形成した金属成形体を提供することができる。
樹脂コーティング層をディッピングにより形成する場合、樹脂コーティング層の厚さを金属製多孔体の全体で平均的に、且つ比較的肉薄に仕上げることができる。なお、樹脂コーティング層の厚さはディップ成形用組成物の粘度、温度、浸漬時間、浸漬回数等により調整できる。
樹脂コーティング層を塗装により形成する場合、樹脂コーティング層の厚さを金属製多孔体の全体で平均的に、且つ比較的肉薄に仕上げることができる。なお、樹脂コーティング層の厚さは塗装材料の粘度や塗装回数等により調整できる。また、塗装部位に対してマスキングを施すことにより、樹脂コーティング層の位置や部位別の厚さを調整可能である。
樹脂コーティング層を熱収縮チューブにより形成する場合、肉厚が樹脂コーティング層の全域において平均的で、且つ肉薄の樹脂コーティング層を形成することができる。また、樹脂コーティング層の形成に必要な装置が大がかりとならない。
〈第十の実施態様〉
本態様に係る金属製多孔体1は、空隙率が32%以上62%以下であり、金属線材の圧延率が39%以上63%以下であり、接合された金属線材同士の剥離強度が0.95N以上1.4N以下であることを特徴とする。
本態様によれば、外力を加えて変形させたとしても、金属成形体を構成する金属製多孔体がキンクしないので、金属成形体を所望の形状に変形させることができる。
〈第十一の実施態様〉
本態様に係る金属成形体200において、金属線材としてステンレス鋼の線材を用いた場合、嵩密度が3.35g/cm以上5.2g/cm以下であることを特徴とする。
本態様によれば、金属線材としてステンレス鋼の線材を用いた場合に、外力を加えて変形させたとしても、金属成形体を構成する金属製多孔体がキンクしない金属成形体を提供できる。
〈第十二の実施態様〉
本態様に係る金属成形体200において、金属製多孔体1が管状体であることを特徴とする。
本態様係る金属成形体は、流体を通過させるチューブとして使用するに好適である。
〈第十三の実施態様〉
本態様に係る金属成形体200の製造方法は、金属線材を圧延する圧延工程と、圧延された金属線材を螺旋状、且つ多層状に巻付けるワインド工程と、巻付けられた金属線材同士を接合する焼結工程と、焼結工程により作製された金属製多孔体1の表面に金属製多孔体の少なくとも一部を被覆する樹脂コーティング層210を形成する樹脂コーティング工程と、を含むことを特徴とする。
本態様によって形成された金属成形体は、第一の実施態様と同様の効果を奏する。
また、焼結工程を経て作製された金属製多孔体に対して樹脂コーティング層を形成するので、焼結により優れた機能を発現した金属製多孔体の性能を活かすことができる。
1…金属製多孔体、2…線材、3、4…線材層、5…中空部、10…試験機、11…支持部、12…アーム、13…接続棒、14…押圧体、20…試験機、21…支持棒、22…支持部、22a…穴、23…アーム、24…押圧板、30…試験機、31…ベース、32…保持部、33…チャック部、50…試験片、60…吸引器具、61…本体、61a…先端、62…接続部、62b…後端、101〜104…多孔質層、110…薄層、200…金属成形体、201…中空部、210…樹脂コーティング層、211…外部コーティング層、211a…被覆部、211b…延長部、212…端縁部コーティング層、213…内部コーティング層、214…端縁部コーティング層、220…端部コーティング層、221…外側端部コーティング層、222…端縁部コーティング層、223…内側端部コーティング層、230…一次金型、231…第一コア、233…突起、241…第一キャビティ、243…空洞部、245…樹脂注入口、250…二次金型、251…第二コア、253…突起、261…第二キャビティ、263…空洞部、265…樹脂注入口、270…ディップ成形用組成物、280…熱収縮チューブ、300…気管カニューレ、301…フランジ部、303…カフ、321…下行大動脈

Claims (6)

  1. キンクせずに軸線の方向を湾曲させるように塑性変形し、且つ変形後の形態を維持する金属成形体の製造方法であって、
    金属線材を圧延する圧延工程と、
    前記圧延された金属線材を螺旋状、且つ多層状に巻付けるワインド工程と、
    巻付けられた前記金属線材同士を接合する焼結工程と、
    前記焼結工程により作製された金属製多孔体の内側表面の少なくとも一部を含む該金属製多孔体の表面に前記金属製多孔体を被覆する樹脂コーティング層を形成する樹脂コーティング工程と、を含み、
    前記金属線材の圧延率が39%以上63%以下であり、前記金属製多孔体の空隙率が32%以上62%以下であり、前記金属製多孔体の嵩密度が3.35g/cm 以上5.2g/cm 以下であり、接合された前記金属線材同士の剥離強度が0.95N以上1.4N以下であり、
    前記樹脂コーティング工程においては、前記樹脂コーティング層を、前記金属製多孔体の塑性変形に追従して変形可能な柔軟性を有する樹脂により形成することを特徴とする金属成形体の製造方法。
  2. 前記樹脂コーティング工程においては、他の部品と接触する部位に、圧縮変形によりシール機能を発揮するシール部を形成することを特徴とする請求項1に記載の金属成形体の製造方法。
  3. 前記樹脂コーティング工程においては、前記樹脂コーティング層の一部に、前記金属製多孔体の変形を阻止する硬質樹脂から形成された変形阻止部を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の金属成形体の製造方法。
  4. 前記金属線材がステンレス鋼であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の金属成形体の製造方法。
  5. 前記金属製多孔体が管状体であることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の金属成形体の製造方法。
  6. 前記樹脂コーティング層が、インサート成形により形成されていることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の金属成形体の製造方法。
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