JP6830754B2 - 焼成チョコレート用油脂組成物 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、固体脂含量(SFC)が10℃で5〜25%、20℃で3〜23%、30℃で0〜10%であり、さらに10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差が15%未満であることを特徴とする、ノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物である。
本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物においては、油相のSFC(固体脂含量)が10℃で5〜25%、20℃で3〜23%、30℃で0〜10%である必要があり、好ましくは10℃で7〜20%、20℃で4〜19%、30℃で1〜9%であり、より好ましくは10℃で9〜16%、20℃で5〜15%、30℃で2〜8%である。
また、同時に、本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物は、油相の10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差が15%未満であることが必要であり、好ましくは13%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは8%未満である。SFCの値が各温度において上限を超えると、口どけが悪くなったり、なめらかさの劣った食感となってしまい、また下限を下まわると、製造が困難となったり、油性感が強く口どけの劣ったものとなる場合がある。また10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差が15%以上であると、ノーテンパー型焼成チョコレートが経日的にぼそぼそとした食感となってしまう 。
本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物では、該油相のSFCを上記のような範囲とするために、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種動植物油脂、これらの各種動植物油脂に必要に応じてエステル交換、水素添加、異性化水添および分別の中から選ばれた1種又は2種以上の処理を施した加工油脂を使用することができる。さらに上記の各種動植物油脂や加工油脂と、脂肪酸及び/又は脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油脂も使用することができる。
油分中のPOOとOPOの合計量が上記範囲にあることで、ノーテンパー型焼成チョコレートはなめらかな食感を維持することができる。
なお、上記POO及びOPOの「P」はパルミチン酸を表し、「O」はオレイン酸を表す。POOは1位がパルミチン酸、2及び3位がオレイン酸で構成されるトリアシルグリセロールと、3位がパルミチン酸、1及び2位がオレイン酸で構成されるトリアシルグリセロールとを表す。また、OPOは1及び3位がオレイン酸、2位がパルミチン酸で構成されるトリアシルグリセロールを表す。
StOOとOStOを合計が上記比率にあることで、なめらかな食感を維持することができる 。
なお、上記StOOとOStOの「St」はステアリン酸を表し、「O」はオレイン酸を表す。StOOは1位がステアリン酸、2及び3位がオレイン酸で構成されるトリアシルグリセロールと、3位がステアリン酸、1及び2位がオレイン酸で構成されるトリアシルグリセロールを表す。OStOは1及び3位がオレイン酸、2位がステアリン酸で構成されるトリアシルグリセロールを表す。
本発明のノーテンパー型焼成チョコレート生地は、上記ノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物を含むものであり、上記ノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物を、好ましくはノーテンパー型焼成チョコレート生地に含まれる油分中50質量%以上、より好ましくは55〜95質量%、最も好ましくは60〜90質量%含有する。
本発明のノーテンパー型焼成チョコレート生地は、対称型トリグリセリドを多く含む油脂であるカカオ脂、パーム油、サル脂、シア脂、イリッペ脂、並びにこれらの分別高融点部の1種又は2種以上の合計が、本発明の焼成チョコレート生地の油分中、好ましくは30質量%未満、より好ましくは20質量%未満、もっとも好ましくは15質量%未満となるようにする。対称型トリグリセリドを多く含む油脂が30質量%以上となると、最終的に得られる焼成チョコレート中でブルームが発生したり、経日的に口どけが悪くなる場合がある。
本発明のノーテンパー型焼成チョコレート生地の製造方法としては、一般的に焼成チョコレート生地の製造に用いられている方法を使用することもできるが、コンチング工程後に「粉末のチョコレート成分」を添加し、焼成チョコレート生地を製造する方法を使用することが好ましい。
以下、ノーテンパー型焼成チョコレート生地の製造方法として好ましい態様について詳述する。
なお、本発明においては、説明の都合上、焼成直前又は焼成直前と同等の状態を有するチョコレート生地を「(ノーテンパー型)焼成チョコレート生地」とし、焼成チョコレート生地を製造する途中の生地を単に「チョコレート生地」とよぶものとする。
上記「粉末のチョコレート成分」は、一般にチョコレートに使用する成分であって、かつ粉末であれば使用することができ、例えばカカオ成分、油脂類、糖類、乳タンパク質等をはじめ、各種粉末食品、乳化剤等のその他の原料、またこれらのうち1種又は2種以上を組み合わせたものや粉末チョコレート類が挙げられる。ここでいう「粉末」とは、平均粒子径が30μm未満、好ましくは20μm未満のものをいう。平均粒子径は、例えば粒度分布計(レーザー回析/散乱式粒子径分布測定装置)により測定できる。
上記「粉末のチョコレート成分」中に油分が含まれる場合は、該油分の含有量は「粉末のチョコレート成分」基準で10〜35質量%が好ましく、15〜30質量%がより好ましく、21〜29質量%が最も好ましい。
油分が10質量%よりも少ないと、最終的に得られる焼成チョコレートがざらついたものとなる場合があり、また油分が35質量%よりも多いと焼成時の保形性が十分に保てない場合があるため好ましくない。なお、油分には上記油脂類のほか、カカオ成分に由来する油脂類、その他「粉末のチョコレート成分」中に含まれる油分の合計を指すものとする。
一般に、チョコレート類を製造する際には、リファイニング工程、コンチング工程を経て得られたチョコレート生地を必要に応じてテンパリングし、成型することでチョコレートを得、また一般の焼成チョコレートであれば、得られたチョコレートをさらに焼成することで得られる。リファイニング工程、コンチング工程でなめらかになったチョコレート生地へさらに粉末原料を添加することは、食感の悪化を招きかねず、一部の例外を除き通常行われないものであった。
「粉末のチョコレート成分」の添加量は、コンチング工程後のチョコレート生地100質量部に対し、1〜40質量部が好ましく、5〜25質量部がより好ましく、10〜20質量部が最も好ましい。「粉末のチョコレート成分」の添加量が40質量部よりも多いと最終的に得られる焼成チョコレートがざらついたものとなってしまう場合があり、1質量部よりも少ないと本発明の効果が得られにくくなるため好ましくない。
本発明のノーテンパー型焼成チョコレートの製造方法は、上記ノーテンパー型焼成チョコレート生地を必要に応じて成型し、焼成するものである。
<エステル交換油脂Aの製造>
ヨウ素価60のパームスーパーオレインを、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油脂Aを得た。
ヨウ素価55のパーム分別軟部油を、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油脂Bを得た。
[実施例1]
エステル交換油脂A40質量部、ハイオレイックヒマワリ油40質量部、菜種油17.5質量部、ハイエルシン菜種油の極度硬化油2質量部、ヘキサステアリン酸ヘキサグリセリル(サンファットPS−66、太陽化学社製)0.5質量部を70℃で溶解・混合し、本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物Aを得た。
得られた油脂組成物の固体脂含量(SFC)、POOとOPOの合計量、StOOとOStOの合計量を[表1]に示す。
パームスーパーオレイン(ヨウ素価60)49.5質量部、エステル交換油脂B20質量部、ハイオレイックヒマワリ油28質量部、ハイエルシン菜種油の極度硬化油2質量部、ヘキサステアリン酸ヘキサグリセリル(サンファットPS−66、太陽化学社製)0.5質量部を70℃で溶解・混合し、本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物Bを得た。
得られた油脂組成物の固体脂含量(SFC)、POOとOPOの合計量、StOOとOStOの合計量を[表1]に示す。
シア脂分別軟部油99.5質量部、ヘキサステアリン酸ヘキサグリセリル(サンファットPS−66、太陽化学社製)0.5質量部を70℃で溶解・混合し、本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物Cを得た。
得られた油脂組成物の固体脂含量(SFC)、POOとOPOの合計量、StOOとOStOの合計量を[表1]に示す。
エステル交換油脂A30質量部、エステル交換油脂B7質量部、ハイオレイックヒマワリ油59.5質量部、ハイエルシン菜種油の極度硬化油3質量部、ヘキサステアリン酸ヘキサグリセリル(サンファットPS−66、太陽化学社製)0.5質量部を70℃で溶解・混合し、本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物Dを得た。
得られた油脂組成物の固体脂含量(SFC)、POOとOPOの合計量、StOOとOStOの合計量を[表1]に示す。
エステル交換油脂A19.5質量部、ハイオレイックヒマワリ油75質量部、ハイエルシン菜種油の極度硬化油5質量部、ヘキサステアリン酸ヘキサグリセリル(サンファットPS−66、太陽化学社製)0.5質量部を70℃で溶解・混合し、本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物Eを得た。
得られた油脂組成物の固体脂含量(SFC)、POOとOPOの合計量、StOOとOStOの合計量を[表1]に示す。
エステル交換油脂A15質量部、ハイオレイックヒマワリ油49.5質量部、シア脂分別軟部油30質量部、ハイエルシン菜種油の極度硬化油5質量部、ヘキサステアリン酸ヘキサグリセリル(サンファットPS−66、太陽化学社製)0.5質量部を70℃で溶解・混合し、本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物Fを得た。
得られた油脂組成物の固体脂含量(SFC)、POOとOPOの合計量、StOOとOStOの合計量を[表1]に示す。
パームスーパーオレイン(ヨウ素価60)49.5質量部、エステル交換油脂A50質量部、ヘキサステアリン酸ヘキサグリセリル(サンファットPS−66、太陽化学社製)0.5質量部を70℃で溶解・混合し、本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物Gを得た。
得られた油脂組成物の固体脂含量(SFC)、POOとOPOの合計量、StOOとOStOの合計量を[表1]に示す。
ナタネ油99.5質量部、ヘキサステアリン酸ヘキサグリセリル(サンファットPS−66、太陽化学社製)0.5質量部を70℃で溶解・混合し、比較例である油脂組成物Hを得た。
得られた油脂組成物の固体脂含量(SFC)、POOとOPOの合計量、StOOとOStOの合計量を[表1]に示す。
パームスーパーオレイン(ヨウ素価60)29.5質量部、パーム油38質量部、ハイオレイックヒマワリ油32質量部、ヘキサステアリン酸ヘキサグリセリル(サンファットPS−66、太陽化学社製)0.5質量部を70℃で溶解・混合し、比較例である油脂組成物Iを得た。
得られた油脂組成物の固体脂含量(SFC)、POOとOPOの合計量、StOOとOStOの合計量を[表1]に示す。
砂糖、カカオマス、ココアパウダー、油脂組成物(ノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物A〜G、油脂組成物H〜Iのうちのいずれか)、全粉乳、脱脂粉乳を下記の分量で配合し、常法に従って混合した。続いてリファイナーに通し粒子を微細化した。その後、レシチンを加えコンチェにて50〜60℃で18時間コンチング処理し、その間に常法に従い油脂組成物の一部を加えてチョコレート生地を調製した。
続いて、上記チョコレート生地を30℃に調温し、該チョコレート生地100質量部に対して、粉末のチョコレート成分として粉末チョコレート(油分25質量%)を15質量部となるよう添加し混合した後、さらに水3質量部を添加・混合して焼成チョコレート生地を得た。なお、粉末チョコレート添加時の上記チョコレート生地の粘度はおおよそ28000mPa・sであった。
続いて焼成チョコレート生地を成形し、成型物を天板に載せ、200℃のオーブンで4分焼成し、焼成チョコレートA〜I(アルファベットは使用した油脂組成物に対応する)を得た。
砂糖 36.7質量部
カカオマス 3質量部
ココアパウダー 15質量部
油脂組成物(ノーテンパー型焼成チョコレート用
油脂組成物A〜G、油脂組成物H〜Iの
うちのいずれか) 32.4質量部
全粉乳 9質量部
脱脂粉乳 4質量部
レシチン 0.4質量部
得られた本発明の焼成チョコレートと、比較のための焼成チョコレートは、20℃で保存し、焼成1日後、2週間後後及び1か月後に10人のパネラーにより下記[評価基準]に従って官能評価をさせ、10人のパネラーの合計点を評価点数とし、結果を下記のようにして〔表2〕に示した。
44〜50点:◎+、37〜43点:◎、30〜36点:○、15〜29点:△、14点以下:×
[評価基準]
・食感(なめらかさ)
5点 …非常になめらかな食感である。
3点 …なめらかな食感である。
1点…ややぼそぼそとした食感で、なめらかさが乏しい。
0点…ぼそぼそとした食感でなめらかさがない。
・口どけ
5点…非常に口どけが良い。
3点…口どけが良い。
1点…口どけがやや悪い。
0点…非常に口どけが悪い。
Claims (5)
- 固体脂含量(SFC)が10℃で5〜25%、20℃で3〜23%、30℃で0〜10%であり、さらに10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差が10%未満であり、油分中、POOとOPOの合計量が5〜20質量%であることを特徴とする、ノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物。
(但し、Pはパルミチン酸、Oはオレイン酸を表し、
POOは、1位がパルミチン酸、2及び3位がオレイン酸で構成されるトリアシルグリセロールと、3位がパルミチン酸、1及び2位がオレイン酸で構成されるトリアシルグリセロールを表し、
OPOは1及び3位がオレイン酸、2位がパルミチン酸で構成されるトリアシルグリセロールを表す。) - 油分中、POOとOPOの合計量1質量部に対し、StOOとOStOを合計で0.3〜3質量部含有する、請求項1記載のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物。
(但し、Stはステアリン酸、Oはオレイン酸を表し、
StOOは1位がステアリン酸、2及び3位がオレイン酸で構成されるトリアシルグリセロールと、3位がステアリン酸、1及び2位がオレイン酸で構成されるトリアシルグリセロールを表し、
OStOは1及び3位がオレイン酸、2位がステアリン酸で構成されるトリアシルグリセロールを表す。) - 請求項1又は2記載のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物を油分中に50質量%以上含有するノーテンパー型焼成チョコレート生地。
- 請求項3記載のノーテンパー型焼成チョコレート生地を焼成してなるノーテンパー型焼成チョコレート。
- 固体脂含量(SFC)が10℃で5〜25%、20℃で3〜23%、30℃で0〜10%であり、さらに10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差が10%未満であるノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物を油分中に50質量%以上含有するノーテンパー型焼成チョコレート生地の製造方法であって、コンチング工程後に粉末のチョコレート成分を添加する工程を含むことを特徴とする、ノーテンパー型焼成チョコレート生地の製造方法。
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