JP6829860B2 - 水中調査装置 - Google Patents

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Description

本発明はダムなどの水中構造物の壁面の状態を例えば遠隔制御により調査する水中調査装置に関する。
ダム構造物の壁面やゲート設備には構築から年数が経過すると貯水からの水圧の影響などにより腐食や損傷等が生じている場合が多い。こういったダムの劣化は適当な時期に潜水士により調査されているが調査効率がよくない。
そこで、例えば非特許文献1に記載されているように、ダムなどの水中構造物の調査をロボットにより行うことを目的とした研究が進められている。この非特許文献1には水中構造物の調査装置として、水上の船型装置から、先端に環境測定機を接続した水中ケーブルをリール機構で吊下げる調査ロボットが記載されている。このような調査ロボットを用いれば、例えばダムの壁面を調査する場合には、船型装置をダムの壁面近くに停留させ、水中ケーブルを操作して環境測定機で壁面の状況を調査していくことができる。
"可変構成型水中調査用ロボットの研究開発−無人水上航行機による河床状況把握−"有隅仁他2名, Proceedings of the 2015 JSME Conference on Robotics and Mechatronics, Kyoto, Japan, May 17-19,2015
しかしながら、非特許文献1に記載されたこのような調査ロボットを用いて精度のよい調査を行うには、調査中に船型装置及び環境測定機を安定した状態に維持しておかなければならない。例えば、調査中に環境測定機が調査対象の壁面に接近したり壁面から遠ざかったりしていれば壁面の調査結果は精度の低いものとなってしまう。また、調査中に船型装置が壁面に接近したり壁面から遠ざかったりすると、この船型装置の動きが水中ケーブルを介して環境測定機に伝わるおそれがある。
そこで本発明は、水上部及び調査用の水中部を有する調査装置であって常に安定した状態で水中構造物の壁面の状況を調査できる水中調査装置の提供を目的とする。
この目的を達成するための本発明の水中調査装置は、水中の壁面を調査する水中調査装置であって、水面に浮かぶように構成された水上部本体及びこの水上部本体に設けられた水面推進装置を有する水上部と、前記水上部本体に連結されて水中に位置するように構成された水中部本体、この水中部本体に設けられた水中推進装置及び前記水中部本体に設けられた撮影装置を有する水中部と、前記水上部本体と前記水中部本体との間に設けられ、前記水中部の水中での深度を調整する深度調整装置と、を備え、前記水中部には前記壁面との距離を一定に保持するための水中距離保持機構が設けられ、前記水上部には前記壁面との距離を一定に保持するための水上距離保持機構が設けられているものである。水中距離保持機構により水中部又は水中部本体は壁面からの距離が一定となる状態に維持される。また、水上距離保持機構により水上部又は水上部本体も壁面からの距離が一定となる状態に維持されるので、例えば水上部から水中部に壁面に対しての揺れ動きが伝わるといったことが防止される。壁面は例えば水面から上方に延びている。
水中距離保持機構は、壁面、例えば水中の壁面に押し付けられて水中部又は水中部本体と壁面との距離を保つためのガイドアームを有し、水上距離保持機構は、壁面、例えば水面近くの壁面に押し付けられて水上部又は水上部本体と壁面との距離を保つためのガイドアームを有するように構成できる。水中部用のガイドアームは例えば水中部又は水中部本体に固定される。水上部用のガイドアームも例えば水上部又は水上部本体に固定される。水中部又は水中部本体はガイドアームを押す力とガイドアームが壁面から受ける反力とによって所定距離に維持される。ガイドアームを押す力は水中推進装置から加わるように構成できる。水上部又は水上部本体もガイドアームを押す力とガイドアームが壁面から受ける反力とによって所定距離に維持される。ガイドアームを押す力は水面推進装置から加わるように構成できる。ガイドアームは長さ調節が可能であることが好ましい。このように構成することにより、状況に応じた距離で壁面を調査できる。ガイドアームは先端部に回転ローラを有していることが効果的である。このように構成することにより、ガイドアームを壁面に押し付けたままで水中部や水上部を移動させることが可能となる。水中部は深度調整装置により上下方向に長く移動する。したがって、水中部用のガイドアームには上下方向に移動する回転ローラを設けておくのが得策である。水上部は水平方向に移動する。したがって、水上部用のガイドアームには水平方向に移動する回転ローラを設けておく。
水中距離保持機構は水中部又は水中部本体と壁面、例えば水中の壁面との距離を検出する水中距離検出センサを有し、水上距離保持機構は水上部又は水上部本体と壁面、例えば水面近くの壁面との距離を検出する水上距離検出センサを有するように構成できる。ここでは、水中距離検出センサも水上距離検出センサも例えば所定時間間隔で距離検出を繰り返す。水中距離保持機構は例えば水中部又は水中部本体の位置を制御する水中移動制御機構を有し、この水中移動制御機構は水中距離検出センサの検出距離が所定距離となるように水中部又は水中部本体の位置をフィードバック制御する。水中移動制御機構は水中推進装置とすることができる。水上距離保持機構は例えば水上部又は水上部本体の位置を制御する水上移動制御機構を有し、この水上移動制御機構は水上距離検出センサの検出距離が所定距離となるように水上部又は水上部本体の位置をフィードバック制御する。水上移動制御機構は水面推進装置とすることができる。水中距離検出センサは超音波距離センサであり、水上距離検出センサはレーザー距離センサとすることができる。水中距離検出センサは壁面に対する水中部又は水中部本体の角度を調整できるように複数個設けられ、水上距離検出センサは壁面に対する水上部又は水上部本体の角度を調整できるように複数個設けられていることが好ましい。このように構成することにより、壁面との距離だけでなく壁面に対する水中部又は水上部の姿勢も保持できる。
水中部の移動距離や水上部の移動距離又は位置の検出は調査位置の特定に有用又は必要である。したがって、水中部は、壁面に沿って水平方向又は垂直方向に移動するときの移動距離を検出する水中移動距離検出センサを有し、水上部は、壁面に沿って水平方向に移動するときの移動距離を検出する水上移動距離検出センサを有するように構成でき、また、水上部が前方の壁面を照射する照射手段を有し、この照射手段によって照射された個所を含んで前方の壁面を撮影することにより水上部の位置を確認できるといった構成も可能である。
水中部又は水中部本体及び水上部又は水上部本体を壁面に押し付けたままで移動させることができるのが効果的である。
水上部本体と水中部本体との間に、水中部本体を水上部本体の固定位置で水上部本体に対して分離可能に固定する固定手段を備えていることが水中調査装置の取り扱い上好ましく、固定手段は、水上部本体又は水中部本体の一方に水平方向にスライド可能に配置された差し込み部と、水上部本体又は水中部本体の他方に形成された受け入れ部と、を有し、差し込み部を受け入れ部に差し込むことにより水中部本体を水上部本体に対して固定するものとして構成できる、水上部本体には、水中部本体を引き上げたときに水中部本体に接触してこの水中部本体を水上部本体の固定位置まで案内するガイドが形成されているのが効果的である。
本発明によれば水中の壁面を精度よく調査できる水中調査装置を構成できる。
本発明に係る水中調査装置によるダム壁面の調査撮影の状況を概略的に示す図である。 水面上の水上部に水中部を合体させた状態を概略的に示す図である。 水中部を下降させた状態の水中調査装置の斜視図である。 水上部の底面側を示すための図である。 ケーブルドラム装置部分の拡大図である。 ケース類を省略して示す水上部の斜視図である。 合体状態の水中調査装置を示すための水上部本体と水中部の図である。 ケース類を省略して示す合体状態の水中調査装置の斜視図である。 水中調査装置の調査撮影時の状態を説明する図である。 水中調査装置に位置確認手段を設けた場合を示す図である。 位置確認手段を用いた調査撮影時の状態を説明する図である。 水中調査装置に近接撮影補助手段を設けた場合を示す図である。 近接撮影補助手段を用いた調査撮影時の状態を説明する図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
まず、本発明に係る水中調査装置によりダム壁面の調査を行なう場合について図1及び図2を参照しながら概略的に説明する。
水中調査装置1は、図1に示すように、ダム3に貯えられた水の水面5に浮かぶ水上部7と、この水上部7から下側に延びる電源ケーブル9の先端(下端)に接続されて水中に位置している水中部11と、を備え、水中部11に設けられた撮影装置13によりダム3の壁面15の水中に沈んでいる部分17を撮影して調査する。水上部7で電源ケーブル9の繰り出し長さを調節することにより水中部11の水中での深度を調整することができ、水中部11の深度の調整とダム3の壁面15に沿った横方向又は水平方向の移動により、例えばダム3の壁面15の水中に沈んでいる部分17を全体的に逐次撮影して調査することができる。また、図2に示すように、水上部7で電源ケーブル9を巻き上げることにより水面5に浮かんでいる水上部7の底面側に水中部11を合体させることができ、水中部11を水上部7に合体させた状態で水中調査装置1を回収位置まで水面5に沿って移動させて回収することができるし、水中部11を水上部7に合体させた状態で水中調査装置1を投入位置の水面5に浮かべ、ダム3の壁面15近くの調査位置まで水面5に沿って移動させることができる。なお、撮影装置13による撮影映像を水中部11に配置した例えばメモリーカードといった記憶手段に記録するように構成できるし、例えば図3に記載された操作装置71に送信するように構成することもできる。また、電源ケーブル9には電源ラインの他に水中部11との通信用の通信ラインが含まれている。
次に、図3乃至図5を参照して水中調査装置1の構成を具体的に説明する。
水上部7は、一対のプラスチック製フロート体19、19を幅方向中央に間隔を設けて接続することにより構成した水上部本体21と、この水上部本体21の底面側に形成した取り付け凹部23内に収容されて水上部本体21に取り付けられた水面推進用プロペラスラスタ25(水面推進装置、図4参照)と、水上部本体21の後側に設けられたケーブルドラム装置27と、このケーブルドラム装置27に巻かれ、ケーブルドラム装置27の作動により繰り出されたり巻き取られたりする電源ケーブル9(深度調整装置)と、水上部本体21の前側上面に設けられ、電源ケーブル9(または電源ケーブル9内の電源ライン)の後端側が接続されているバッテリ(図示せず)を収容するプラスチック製電源収容ケース29と、それぞれのフロート体19の後方側上面に設けられ、水上部7の各部の動作を制御する制御機器(図示せず)を収容するプラスチック製制御収容ケース31、31と、を備えている。水上部本体21は正方形又は長方形の4隅を円弧状に形成した形状(平面形状)を有している。
図4にわかりやすく示されているように、取り付け凹部23は、水上部本体21の底面側に4隅個所それぞれから中央側に向かって4つ形成され、水面推進用プロペラスラスタ25はそれぞれの取り付け凹部23内にプロペラ32が外側を向くように配置されているが、一方の対角位置の水面推進用プロペラスラスタ25のそれぞれの向かう方向は一直線上にはなく、また、他方の対角位置の水面推進用プロペラスラスタ25のそれぞれの向かう方向も一直線上にはなく(図4のそれぞれの水面推進用プロペラスラスタ25の軸線33参照)、それぞれの水面推進用プロペラスラスタ25の駆動を制御して水上部7の移動方向を調節しやすいように構成されているが、水面推進用プロペラスラスタ25の配置個数及び配置態様は水上部7の移動方向の必要な調節がスムーズに行える範囲で変更して採用することができる。
ケーブルドラム装置27は、一対のフロート体19、19の後部内側に固定して配置された一対の支持プレート35、35と、この支持プレート35、35間に回転可能に保持されて電源ケーブル9が巻かれているドラム本体37と、一方の支持プレート35に取り付けられてドラム本体37を正逆両方向に回転させるドラム用モータ39と、一対の支持プレート35、35のそれぞれに取り付けられて前方に向かって上方に傾斜して延びる一対の支持アーム41、41と、この一対の支持アーム41、41の先端部の間に設けられたスタビライザ43と、ドラム本体37の回転数をカウントして電源ケーブル9の繰り出されている長さを計測するエンコーダ(図示せず)と、から構成されている。それぞれの支持アーム41は支持プレート35にダンパ(図示せず)を介して取り付けられ、ダンパの弾性力に抗して図5の矢印方向に若干変位できるように構成されている。スタビライザ43は電源ケーブル9をドラム本体37に整列して巻き取ることを可能にする装置であり、図5にわかりやすく示されているように、一対の支持アーム41、41の先端部の間に回転可能に掛け渡され、他方の支持アーム41内に配置されているドライブベルト(図示せず)及びドラム本体37(具体的にはドラム本体37の回転軸)を介してドラム用モータ39に接続され、このドラム用モータ39によりドラム本体37と一緒に回転駆動される送り溝シャフト45と、一対の支持アーム41、41の先端部の間に掛け渡されたサポートシャフト47と、送り溝シャフト45に形成された往復の螺旋溝48に係合爪(図示せず)が係合するとともにサポートシャフト47上をスライド移動可能なように送り溝シャフト45及びサポートシャフト47に取り付けられ、送り溝シャフト45の回転により送り溝シャフト45及びサポートシャフト47に沿って往復移動するケーブルガイド49と、を備え、ドラム本体37から引き出されている電源ケーブル9は、ダンパにより電源ケーブル9からの衝撃を吸収できるように構成された支持アーム41に支えられているケーブルガイド49に掛けられて下側に延びている。したがって、ドラム用モータ39を駆動しドラム本体37を回転させると、送り溝シャフト45が回転しケーブルガイド49が横方向に移動するので、電源ケーブル9の巻き取りの際には電源ケーブル9を整列してドラム本体37に巻き取ることができ、電源ケーブル9の繰り出しの際には電源ケーブル9のドラム本体37からの引き出し位置の変位にケーブルガイド49を追随させることができる。なお、ドラム用モータ39側の支持アーム41は薄く形成されているが、ドラム用モータ39と反対側の支持アーム41はドライブベルト等の回転伝達機構を組み込むために厚く形成されている。
図6にわかりやすく示されているように、一対のフロート体19、19にはそれぞれ、中央部上面に制御収容ケース31との間でフロート体19の幅方向に延びるように固定用部材51が設けられていて、この固定用部材51には差し込みスリット53が固定用部材51を貫通して形成され、この差し込みスリット53には細長いコ字状の固定ピン55(差し込み部)がスライド可能に差し込まれている。それぞれの固定用部材51の長さはフロート体19の幅よりも短い。固定ピン55には先端側と後端側に変形規制部材54、54が取り付けられていて、固定ピン55の操作端部56を引っ張ることにより先端側の変形規制部材54が固定用部材51の内端面に当接するまで固定ピン55を外側にスライド移動させて先端部がフロート体19同士の隙間に突出しない状態とすることができるが(図6の状態)、固定ピン55の操作端部56を押し込むことにより後端側の変形規制部材54が固定用部材51の外端面に当接するまで固定ピン55を内側にスライド移動させて先端部がフロート体19同士の隙間から突出する状態とすることもできる。また、水上部本体21の底面側には天井部57(固定位置)に向かって内側に傾斜する案内側面59(ガイド)を有する案内凹部61が形成され、案内側面59は緩やかな傾斜の外側部63と急な傾斜の内側部65を有している。
それぞれのフロート体19の前側上面の外側には前方に向けてレーザーを照射することによりダム3の壁面15との距離を計測するレーザー距離センサ67が設けられ、電源収容ケース29の上面には水中調査装置1の前方を撮影する前方視認用カメラ69が設けられている。また、水上部7には、ダム周辺に配置され、調査作業員が操作して水中調査装置1の作動を制御する操作装置71との間で通信を行なうための無線LANアンテナ73が取り付けられていて、調査作業員は前方視認用カメラ69から送られてくる映像を操作装置71で確認しながら水中調査装置1を制御して移動させる。
水中部11は、長方形の4隅を面取りした形状(平面形状)に形成され、中央寄りに2本の補強シャフト75、75が設けられた上下一対の枠体77、77を複数本の支持柱79で連結して構成したフレーム81(水中部本体)と、このフレーム81の内側に配置されて取り付けられ、水中部11の各部の動作を制御する制御機器(図示せず)を収容する制御ケース83(水中部本体)と、この制御ケース83の先端部に設けられた撮影装置としての調査用カメラ13と、水上部7に取り付けられた水面推進用プロペラスラスタ25と周方向位置が対応するように制御ケース83に設けられた4つの外向きの水中移動用プロペラスラスタ85(水中推進装置)と、を有している。水面推進用プロペラスラスタ25と同様に、一方の対角位置の水中移動用プロペラスラスタ85のそれぞれの向かう方向は一直線上にはなく、また、他方の対角位置の水中移動用プロペラスラスタ85のそれぞれの向かう方向も一直線上にはないが、水中移動用プロペラスラスタ85の配置個数及び配置態様は水面推進用プロペラスラスタ25の変更にともなって変えることができる。制御ケース83には電源ケーブル9の先端部が接続され、調査用カメラ13や水中移動用プロペラスラスタ85などに必要な電源が供給され、また、調査用カメラ13や水中移動用プロペラスラスタ85などの制御信号が送られる。制御ケース83にはまた、上方に突出する一対の固定プレート片87、87が一対のフロート体19の隙間よりも若干狭い間隔を有して設けられていて、この固定プレート片87には固定ピン55に対応するように2つの固定孔89、89(受け入れ部)が形成されている。
フレーム81の前側には、4隅に前方照明用ライト91が設けられ、上側の一対の前方照明用ライト91の上方にはそれぞれ、前方に向けて超音波を発振することによりダム3の壁面17との距離を計測する超音波距離センサ93、93が設けられている。
特に図7及び図8を参照して水上部7と水中部11との合体状態を説明する。
ケーブルドラム装置27により電源ケーブル9を巻き上げると、水中部11が上昇して水中部11の上側の枠体77が水上部本体21の案内凹部61の天井部57(固定位置)に当接し、水上部7又は水上部本体21と水中部11は合体する。天井部57の外縁は上側の枠体77の外縁と一致又は対応する形状に形成され、上側の枠体77が天井部57に当接すると上側の枠体77、したがって水中部11は水上部本体21に対して位置決めされ、ずれない状態となる。上側の枠体77は天井部57と位置がずれていても案内凹部61の案内側面59(ガイド)に案内されてこの天井部57まで導かれる。そして、水中部11の上側の枠体77が案内凹部61の天井部57に当接して水上部本体21と水中部11が合体すると、制御ケース83の固定プレート片85は、固定用部材51の差し込みスリット53に差し込まれている固定ピン55(具体的には固定ピン55の2つの先端部)と固定孔89が対応するようにフロート体19の内面に接近して位置することとなる。したがって、固定ピン55の操作端部56を押し込むと固定ピン55の先端部が固定孔89に差し込まれ、水中部11が水上部本体21と外れ止めされて合体することとなる。また、ダムの水面に水中調査装置1を投入するときに固定ピン55の操作端部56を引っ張って固定ピン55の先端部を固定孔89から抜いておくことにより、調査位置で電源ケーブル9を繰り出して合体を解除し、水中部11を下降させることができる。
このような水中調査装置1による調査撮影時の状態を図9を参照して説明する。
水中調査装置1により安定した調査撮影作業を行なうためにはまず、水上部7のダム壁面15に対する位置及び姿勢を安定して保持した上で、水中部11を電源ケーブル9の繰り出しにより下降させながら、あるいは、電源ケーブル9の巻き戻しにより上昇させながら水中部11の調査用カメラ13でダム3の壁面17を撮影していくことが好ましい。したがって、水中部11のダム壁面17に対する調査位置(水平方向調査位置)に対応した位置に水上部7がダム壁面15に対して正面を向いて保持されるように水面推進用プロペラスラスタ25を制御する。水面推進用プロペラスラスタ25の制御は、例えば所定の時間間隔で、一対のレーザー距離センサ(レーザー距離計測器)67、67から交互にレーザー光95をダム壁面15に照射して反射光を受けとり、それによりダム壁面15との距離を計測し、そして、それぞれのレーザー距離センサ67の計測距離が等しく所定値となるように行なわれる。そして、水中部11の調査用カメラ13がダム壁面17の調査位置にダム壁面17に対して正面を向いて保持されるように水中移動用プロペラスラスタ85を制御する。水中移動用プロペラスラスタ85の制御は、例えば所定の時間間隔で、一対の超音波距離センサ(超音波距離計)93、93から交互に超音波97をダム壁面17に発振して反射波を受信し、それによりダム壁面17との距離を計測し、そして、それぞれの超音波距離センサ93の計測距離が等しく所定値となるように行なわれる。
なお、水上部7に位置確認手段を設けた変更例を図10及び図11を参照して説明する。
水上部7にはダム3の目印を利用する位置確認手段(照射手段)を設けておくことが好ましい。位置確認手段としては、図10に示すように位置確認用レーザー発振器99を用いることができ、この位置確認用レーザー発振器99はダム3の壁面15に縦方向に延びる線状のレーザー光を照射するように構成されている。レーザー光の照射位置は、照射されたレーザー光101とダム壁面15に形成されている目印としての目地103との位置関係を確認することにより把握でき、照射されたレーザー光101の位置が把握できれば水中調査装置1の位置を把握できる。レーザー光101の位置の確認は前方視認用カメラ69を用いて行ってもよいが、目地103の間隔が広いダム3では視野角の広いカメラを用いるのが好ましいので、ここでは前方視認用カメラ69に代えて超広角カメラ105を用いている。
また、水中調査装置1に近接撮影補助手段を設けた変更例を図12及び図13を参照して説明する。
距離保持機構としてレーザー距離センサ(レーザー距離計測器)67や超音波距離センサ(超音波距離計)93を用いると、ダム3の壁面17から離れてこの壁面17を撮影する場合には問題は少ないが、例えばダム3の壁面17から1m以内に位置してこの壁面17を撮影する場合には全体にわたる均一な精度の撮影結果を得ることが困難である。そこで、ダム3の壁面17と近接した位置に水中調査装置1を精度よく確実に保持できる近接撮影補助手段を水中調査装置1に設けておくことが好ましい。近接撮影補助手段として、図12に示すように、水上部7の水上部本体21の両側部に一対の水上ガイドアーム107、107を設け、水中部11の下側の枠体77(水中部本体)の両側部に一対の水中ガイドアーム109、109を取り付けておくことができる。調査撮影時には、図13に示すように、水上部7の一対の水上ガイドアーム107、107及び水中部11の一対の水中ガイドアーム109、109がダム3の壁面15に押し付けられるように水面推進用プロペラスラスタ25及び水中移動用プロペラスラスタ85を制御する。水上ガイドアーム107は、水上ケース111と、この水上ケース111内にスライド移動可能に収められ、適当な長さだけ水上ケース111から引き出した状態とすることができる水上アーム本体113と、この水上アーム本体113の先端部に取り付けられた水平移動用ローラ115と、引き出した水上アーム本体113を水上ケース111に固定するための水上固定ネジ117と、を備えていて、水上アーム本体113は水上固定ネジ117を緩めて例えば左右等しく引き出された状態となるように長さ調整され、水上固定ネジ117の締め付けにより水上ケース111に固定される。水中ガイドアーム109は、水中ケース119と、この水中ケース119内にスライド移動可能に収められ、適当な長さだけ水中ケース119から引き出した状態とすることができる水中アーム本体121と、この水中アーム本体121の先端部に取り付けられた垂直移動用ローラ123と、引き出した水中アーム本体121を水中ケース119に固定するための水中固定ネジ125と、を備えていて、水中アーム本体121は水中固定ネジ125を緩めて例えば左右等しく引き出された状態となるように長さ調整され、水中固定ネジ125の締め付けにより水中ケース119に固定される。水上部7は水上アーム本体113の先端部の水平移動用ローラ115をダム壁面15に押し付けた状態で水平方向に移動でき、水中部11は水中アーム本体121の先端部の垂直移動用ローラ123をダム壁面17に押し付けた状態で垂直方向に移動できる。
なお、水平移動用ローラ115の回転数をエンコーダ(図示せず)でカウントして水上部7の移動距離を計測したり、垂直移動用ローラ123の回転数をエンコーダ(図示せず)でカウントして水中部11の移動距離又は深度を計測することもできる。ここでは、水平移動用ローラ115は水上移動距離検出センサとして機能し、垂直移動用ローラ123は水中移動距離検出センサとして機能する。
1 水中調査装置
3 ダム
7 水上部
9 電源ケーブル
11 水中部
13 撮影装置
15、17 壁面
21 水上部本体
25 水面推進用プロペラスラスタ
67 レーザー距離センサ
81 フレーム
83 制御ケース
85 水中移動用プロペラスラスタ
93 超音波距離センサ

Claims (15)

  1. 水中の壁面を調査する水中調査装置であって、
    水面に浮かぶように構成された水上部本体及びこの水上部本体に設けられた水面推進装置を有する水上部と、
    前記水上部本体に連結されて水中に位置するように構成された水中部本体、この水中部本体に設けられた水中推進装置及び前記水中部本体に設けられた撮影装置を有する水中部と、
    前記水上部本体と前記水中部本体との間に設けられ、前記水中部の水中での深度を調整する深度調整装置と、を備え、
    前記水中部には前記壁面との距離を一定に保持するための水中距離保持機構が設けられ、前記水上部には前記壁面との距離を一定に保持するための水上距離保持機構が設けられていて、
    前記水中距離保持機構は、前記壁面に押し付けられて前記水中部と前記壁面との距離を保つためのガイドアームを有し、前記水上距離保持機構は、前記壁面に押し付けられて前記水上部と前記壁面との距離を保つためのガイドアームを有している、ことを特徴とする水中調査装置。
  2. 前記ガイドアームは長さ調節が可能に構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の水中調査装置。
  3. 前記ガイドアームは先端部に回転ローラを有している、ことを特徴とする請求項1又は2記載の水中調査装置。
  4. 前記水中距離保持機構の前記ガイドアームは前記壁面に対する前記水中部の角度を調整できるように複数本設けられ、前記水上距離保持機構の前記ガイドアームは前記壁面に対する前記水上部の角度を調整できるように複数本設けられている、ことを特徴とする請求項1、2又は3記載の水中調査装置。
  5. 前記水中距離保持機構は前記水中部と前記壁面との距離を検出する水中距離検出センサを有し、前記水上距離保持機構は前記水上部と前記壁面との距離を検出する水上距離検出センサを有している、ことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の水中調査装置。
  6. 前記水中距離検出センサは超音波距離センサであり、前記水上距離検出センサはレーザー距離センサである、ことを特徴とする請求項5記載の水中調査装置。
  7. 前記水中距離検出センサは前記壁面に対する前記水中部の角度を調整できるように複数個設けられ、前記水上距離検出センサは前記壁面に対する前記水上部の角度を調整できるように複数個設けられている、ことを特徴とする請求項5又は6記載の水中調査装置。
  8. 前記水中部は、前記壁面に沿って水平方向又は垂直方向に移動するときの移動距離を検出する水中移動距離検出センサを有し、前記水上部は、前記壁面に沿って水平方向に移動するときの移動距離を検出する水上移動距離検出センサを有している、ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の水中調査装置。
  9. 前記水上部は前方の前記壁面を照射する照射手段をさらに有し、この照射手段によって照射された個所を含んで前方の前記壁面を撮影することにより前記水上部の位置を確認できるように構成されている、ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の水中調査装置。
  10. 前記水中部及び前記水上部を前記壁面に押し付けておくことができるように構成されている、ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の水中調査装置。
  11. 前記水上部本体と前記水中部本体との間に設けられ、前記水中部本体を前記水上部本体の固定位置で前記水上部本体に対して分離可能に固定する固定手段をさらに備えている、ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の水中調査装置。
  12. 前記固定手段は、前記水上部本体又は前記水中部本体の一方に水平方向にスライド可能に配置された差し込み部と、前記水上部本体又は前記水中部本体の他方に形成された受け入れ部と、を有し、前記差し込み部を前記受け入れ部に差し込むことにより前記水中部本体を前記水上部本体に対して固定するものである、ことを特徴とする請求項11記載の水中調査装置。
  13. 前記水上部本体には、前記水中部本体を引き上げたときに前記水中部本体に接触してこの水中部本体を前記水上部本体の前記固定位置まで案内するガイドが形成されている、ことを特徴とする請求項11又は12記載の水中調査装置。
  14. 水中の壁面を調査する水中調査装置であって、
    水面に浮かぶように構成された水上部本体及びこの水上部本体に設けられた水面推進装置を有する水上部と、
    前記水上部本体に連結されて水中に位置するように構成された水中部本体、この水中部本体に設けられた水中推進装置及び前記水中部本体に設けられた撮影装置を有する水中部と、
    前記水上部本体と前記水中部本体との間に設けられ、前記水中部の水中での深度を調整する深度調整装置と、を備え、
    前記水中部には前記壁面との距離を一定に保持するための水中距離保持機構が設けられ、前記水上部には前記壁面との距離を一定に保持するための水上距離保持機構が設けられていて、
    前記水中距離保持機構は前記水中部と前記壁面との距離を検出する水中距離検出センサを有し、前記水上距離保持機構は前記水上部と前記壁面との距離を検出する水上距離検出センサを有している、ことを特徴とする水中調査装置。
  15. 水中の壁面を調査する水中調査装置であって、
    水面に浮かぶように構成された水上部本体及びこの水上部本体に設けられた水面推進装置を有する水上部と、
    前記水上部本体に連結されて水中に位置するように構成された水中部本体、この水中部本体に設けられた水中推進装置及び前記水中部本体に設けられた撮影装置を有する水中部と、
    前記水上部本体と前記水中部本体との間に設けられ、前記水中部の水中での深度を調整する深度調整装置と、を備え、
    前記水中部には前記壁面との距離を一定に保持するための水中距離保持機構が設けられ、前記水上部には前記壁面との距離を一定に保持するための水上距離保持機構が設けられていて、
    前記水上部本体と前記水中部本体との間に設けられ、前記水中部本体を前記水上部本体の固定位置で前記水上部本体に対して分離可能に固定する固定手段をさらに備え、
    前記水上部本体には、前記水中部本体を引き上げたときに前記水中部本体に接触してこの水中部本体を前記水上部本体の前記固定位置まで案内するガイドが形成されている、ことを特徴とする水中調査装置。
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