以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。以下の図においては、光軸方向をZ方向、光軸方向に直交する平面をXY平面とする。本実施の形態では、XY平面内で所定のレンズ群を移動させることにより、光軸調整を行うものとする。
図1に断面構造を示すレンズ鏡筒2は、レンズ交換式のカメラシステムを構成するものであり、カメラ本体1(図1に二点鎖線で仮想的に示す)に対して着脱可能である。
レンズ鏡筒2内の撮影レンズ系によって形成される被写体像は、カメラ本体1内に設けた撮像素子(不図示)で受光される。撮像素子で受光した光学的な被写体像は、光電変換により信号化され、画像処理回路(不図示)による処理を経て電子的な画像データとなり、カメラ本体1に設けた表示モニタ(不図示)への画像表示や、記録媒体(不図示)への画像の記録などが行われる。
図1では、レンズ鏡筒2内に支持される撮影レンズ系の光軸Oを一点鎖線で示している。以下の説明における「光軸方向」は、光軸Oに沿う方向を意味する。図1中の左方が被写体側、右方が像面側であり、撮影レンズ系は、被写体側から順に、第一レンズ群6、第二レンズ群7及び第三レンズ群8を有する三群構成である。
第一レンズ群6、第二レンズ群7及び第三レンズ群8は、所定のフォーカス移動量の範囲内で光軸方向に移動可能であり、この各レンズ群6、7及び8の移動によってフォーカシングを行う。図1はフォーカス位置が無限遠の状態を示している。
以下、レンズ鏡筒2における各レンズ群6、7及び8の支持構造について説明する。図1に示すように、レンズ鏡筒2は、マウント3、直進案内環4、リード環5、外筒9、マウントベース10、第一レンズ枠11、第二レンズ枠12、第三レンズ枠13、フォーカスリング14を備えている。マウント3と直進案内環4と外筒9とマウントベース10は互いに固定されて固定部を構成する。リード環5は、固定部に対して、光軸Oを中心として回転可能に支持されている。第一レンズ枠11は、固定部に対して、光軸方向に直線移動可能に支持されている。第二レンズ枠12と第三レンズ枠13は第一レンズ枠11により支持されており、第一レンズ枠11が光軸方向に直線移動すると、第二レンズ枠12と第三レンズ枠13も一体的に光軸方向に直線移動を行う。
マウント3は、レンズ鏡筒2の後端に設けられ、カメラ本体1のマウント面(不図示)に当接するマウント面や、カメラ本体1側とバヨネット結合するための爪部などを有している。
マウント3の前部にマウントベース10が固定され、マウントベース10の内側に外筒9が固定され、外筒9の内側に直進案内環4が固定されている。直進案内環4には、光軸方向に延びる直線溝4a(図2参照)が形成されている。直線溝4aは光軸Oを中心とする周方向に略等間隔で3つ設けられており、このうち2つが図2に表れている。
リード環5は直進案内環4の外側に支持されている。直進案内環4とリード環5の間には、直進案内環4に対してリード環5を光軸Oを中心として回転可能に案内する回転案内部が設けられている。回転案内部は、直進案内環4の外周面に形成した環状溝4bと、リード環5の内周面に設けた突起5aによって構成される(図2参照)。環状溝4bは光軸Oを中心とする周方向に延びており、環状溝4bに対して突起5aが摺動可能に挿入される。環状溝4bと突起5aの嵌合関係によって、光軸方向へのリード環5の移動が規制される。
外筒9の外側に、光軸Oを中心として回転可能にフォーカスリング14が支持されている。また、カメラ本体1あるいはレンズ鏡筒2の内部に、フォーカシング用モータ(不図示)が内蔵されている。フォーカスリング14の回転動作とフォーカシング用モータの回転動作を択一的にリード環5に伝達する回転伝達機構(不図示)が設けられている。
第一レンズ枠11は、内部に第一レンズ群6を支持する筒状体であり、直進案内環4の内側に支持される。第一レンズ枠11は、直進案内環4に設けた3つの直線溝4aに挿入される3つの直進案内部11a(図2参照)を有している。各直進案内部11aが各直線溝4aの案内を受けることによって、第一レンズ枠11が光軸方向へ直線移動可能に支持される。直進案内環4に対する径方向及び周方向への第一レンズ枠11の移動は規制される。
リード環5の内周面にリード溝5bが形成されており、リード溝5bに対して摺動可能に挿入される繰出案内部11b(図2参照)が第一レンズ枠11に設けられている。光軸Oを中心とする周方向に等間隔で3つのリード溝5bが設けられ、これに応じて、周方向に等間隔で3箇所の繰出案内部11b(このうち2つが図2に表れている)が設けられている。リード溝5bは、周方向に進むにつれて光軸方向の位置を変化させる螺旋状の溝である。従って、リード環5が回転すると、リード溝5b内での繰出案内部11bの位置が変化して、第一レンズ枠11が光軸方向に直線移動を行う。
第二レンズ枠12は内部に第二レンズ群7を支持し、第三レンズ枠13は内部に第三レンズ群8を支持する。第二レンズ枠12と第三レンズ枠13は第一レンズ枠11の内部に支持される。第二レンズ枠12と第三レンズ枠13は、第一レンズ枠11に対して光軸Oと垂直な平面(XY平面)に沿って位置調整可能である。レンズ鏡筒2の製造に際して、第二レンズ群7と第三レンズ群8の光軸調整を行った後に、第一レンズ枠11に対して第二レンズ枠12と第三レンズ枠13を固定する。レンズ鏡筒2の完成状態では、第二レンズ枠12と第三レンズ枠13は第一レンズ枠11と共に光軸方向に直線移動を行う。なお、XY平面内で第二レンズ枠12と第三レンズ枠13とを位置調整する構成については後述する。
以上の構成のレンズ鏡筒2では、フォーカスリング14の回転操作またはフォーカシング用モータの駆動によってリード環5が回転し、第一レンズ枠11に支持される第一レンズ群6、第二レンズ枠12に支持される第二レンズ群7、第三レンズ枠13に支持される第三レンズ群8が、一体的に光軸方向に移動する。そして、先に述べたように、これら3つのレンズ群6、7及び8の光軸方向移動によってフォーカシングを行う。
ところで、複数のレンズ群を光軸方向に並べたレンズ鏡筒の製造工程においては、各レンズ群を支持する筐体の製造上の誤差や部材同士の組付け誤差等が累積する結果、複数のレンズ群間において光軸にズレが生じる。従来のレンズ鏡筒では、光軸に直交する平面内で所定のレンズ群を他のレンズ群に対して所定方向に相対移動させることで、光軸を調整している。
この種の光軸調整機構には、例えば、所定のレンズ群の外周から径方向に進退可能な送りネジを操作することで、当該レンズ群を所定の一方向に移動させるものが存在する。この場合、レンズ群を移動させたい方向に応じて光軸調整機構を設ける必要がある。具体的には、光軸方向(Z方向)に直交する平面(XY平面)内でX方向とY方向の2方向にレンズ群を移動させたい場合、X方向とY方向にそれぞれ同一の光軸調整機構が設けられる。
上記のような送りねじ式の光軸調整機構の場合、光軸調整機構自体がレンズ群の外周で径方向に突出するため、当該光軸調整機構をレンズ群の外周で複数配置すると、レンズ鏡筒が径方向に大型化する要因と成り得る。特にレンズ交換式のカメラシステムに適用されるレンズ鏡筒においては、径方向の寸法に制約があるため、可能な限り構成全体としての小型化が望まれている。
そこで、本件発明者は、レンズ鏡筒を大きくすることなく、複数のレンズ群間の光軸調整を行うことができる調芯構造を着想した。具体的に本実施の形態では、光軸を調整する光軸調整機構20をXY平面内で第二レンズ枠12の外周縁から他の外周縁に向かって直線的に配置し、その一端側に設けられる操作部50において2種類の操作を行うことにより、第二レンズ枠12をX方向とY方向の2方向に移動させる構成とした。これにより、第一レンズ群6に対する第二レンズ群7及び第三レンズ群8の光軸調整を実現しつつも、従来の構造に比べてレンズ鏡筒2を径方向に小型化することが可能になった。
次に、図3から図7を参照して、本実施の形態に係るレンズ鏡筒の調芯構造、特に光軸調整機構について詳細に説明する。図3は、本実施の形態に係るレンズ鏡筒において、光軸及び光軸調整機構を含む面で切断した断面図である。図4は、本実施の形態に係るレンズ鏡筒をマウント側から見たときの平面図及び光軸調整機構の部分断面図である。図5は、本実施の形態に係る光軸調整機構の一端側のガイド部及び係合部の部分斜視図である。図6は、本実施の形態に係る操作部の構成の一部を示す斜視図である。図6Aは操作部を組付けた斜視図であり、図6Bはその分解斜視図である。図7は、本実施の形態に係る操作部及びその周辺の分解斜視図である。
上記したように、第二レンズ枠12及び第三レンズ枠13は、第一レンズ枠11に支持されている。第二レンズ枠12は、図3及び図4に示すように、第一レンズ枠11の外周において、周方向に等間隔の3箇所で固定ネジ30により固定されている(図3では3箇所のうち1箇所のみ示している)。
具体的には図5Aに示すように、第二レンズ枠12には、第二レンズ群7を支持する筒状部31の外周から径方向外側に突出するフランジ部32が形成されている。フランジ部32は、固定ネジ30の頭部分を収容するようにZ方向に窪んでいる。窪んだフランジ部32の底面には、円形の座ぐり穴33と、その座ぐり穴33の内周側でZ方向に貫通する貫通穴34とが形成されている。貫通穴34は、第二レンズ枠12の径方向(X方向)に長い長円形状を有し、当該貫通穴34には、固定ネジ30が挿通される。
また、フランジ部32には、固定ネジ30を周方向で挟むように一対のバネ収容部35が形成されている。一対のバネ収容部35には、X方向に延在する付勢部材としての圧縮コイルバネ36がそれぞれ収容されている。また、フランジ部32の径方向外側の端部には、Z方向被写体側(図5Aの紙面下方)に向かって円柱状のガイドピン37(第1の係合部)が突出している。ガイドピン37は、貫通穴34より径方向外側に位置している。
図5Bに示すように、第一レンズ枠11には、フランジ部32に対応する箇所にフランジ部32を支持する支持部40が形成されている。支持部40には、貫通穴34に対応する位置にネジ穴41が形成され、ガイドピン37に対応する位置にXY平面視矩形状のガイド溝42(第1のガイド部)が形成されている。ガイド溝42は、ガイドピン37を受容可能な幅で第一レンズ枠11の径方向(X方向)に延在している。また、ガイド溝42の径方向内側の端部がネジ穴41に連通している。
更に支持部40には、支持部40の外周からZ方向像面側に突出する壁部43が形成されている。壁部43は、直線案内部11a(図2参照)の一部を構成し、径方向でフランジ部32及びバネ収容部35に対向する位置に配置される。すなわち壁部43は、フランジ部32及びバネ収容部35を周方向で覆うように形成される。
固定ネジ30には、付勢部材として筒状の圧縮コイルバネ30aが挿通され(共に図3参照)、固定ネジ30の先端は第二レンズ枠12の貫通穴34に挿通された後、ネジ穴41にねじ込まれる。また、ガイドピン37がガイド溝42に収容される。これらにより、第二レンズ枠12が第一レンズ枠11に支持される。
このとき、圧縮コイルバネ30aの一端は固定ネジ30の頭部分の座面30bに当接しており、圧縮コイルバネ30aの他端は第二レンズ枠12の座面33a(座ぐり穴33の底面)に当接している。これにより、第二レンズ枠12がZ方向の第一レンズ枠11側(被写体側)に付勢される。なお、圧縮コイルバネ30aの付勢力は、第二レンズ枠12のXY平面内の移動を許容しつつ、第二レンズ枠12の座面33aを常時付勢するように調整されている。
また、圧縮コイルバネ36のX方向内側の端部は、第一レンズ枠11(バネ収容部35の底面)に当接する一方、圧縮コイルバネ36のX方向外側の端部は、壁部43の内壁面に当接する。これにより、第二レンズ枠12は、第一レンズ枠11に対してX方向に付勢される。なお、フランジ部32を周方向(Y方向)で挟むように一対の圧縮コイルバネ36を配置したことにより、第2レンズ枠12をX方向に向かってバランスよく付勢することが可能である。また、ガイド溝42にガイドピン37が係合することで、ガイドピン37は、ガイド溝42に沿ってX方向に移動可能となる。すなわち、ガイド溝42は、第二レンズ枠12を第一レンズ枠11に対してX方向へ案内するガイド部として機能する。
また、図示はしないが第三レンズ枠13は、所定の付勢部材によりZ方向で第一レンズ枠11側(被写体側)に付勢され、XY面内においては第二レンズ枠12と一体的に支持される。これらにより、各レンズ枠11、12、13(各レンズ群6、7、8)は、Z方向で一体的に移動可能に構成される。一方、XY平面内においては、第二レンズ枠12及び第三レンズ枠13が、第一レンズ枠11に対して相対移動可能に構成される。すなわち、第二レンズ群7及び第三レンズ群8は、第一レンズ群6に対して光軸補正を行う光軸補正レンズ群(以下、被調整レンズ群と呼ぶことがある)を構成する。なお、上記した第二レンズ枠12を第一レンズ枠11に支持する構成(例えば、フランジ部32や支持部40)及びその周辺部材は、光軸調整機構20の一部を構成する。
本実施の形態に係る光軸調整機構20は、第一レンズ群6(図1参照)に対して第二レンズ群7及び第三レンズ群8(被調整レンズ群)をXY平面内で移動させることにより、各レンズ群の光軸を位置合わせするように構成されている。図3及び図4に戻り、光軸調整機構20は、上記したガイド溝42やガイドピン37の他に、所定の操作を行うことで第二レンズ枠12をXY方向へ移動させる操作部50を有している。
操作部50は、XY平面内で第二レンズ枠12の外周側において、フランジ部32(ガイドピン37)や支持部40(ガイド溝42)とは異なる位置に配置されている。より具体的に操作部50は、図4に示すように、フランジ部32に対して光軸Oを挟んで互いに対向するように配置される。この結果、光軸調整機構20(操作部50、フランジ部32及びその周辺構成)は、XY平面内で光軸Oを含む直線(直径)上に配置される。
図3、図6及び図7に示すように、操作部50は、第二レンズ枠12をX方向に移動させる操作部材(第1の操作部材)としてのテーパピン51と、第二レンズ枠12をY方向に移動させる操作部材(第2の操作部材)としての偏芯コマ52と、テーパピン51及び偏芯コマ52を支持する台座53とを含んで構成される。
テーパピン51は、Z方向に延在しており、被写体側からテーパ部51a、円形部51b及びネジ部51cを一体的に形成して構成される。テーパ部51a、円形部51b及びネジ部51cの各中心軸は一致している。テーパ部51aは、像面側に向かって縮径する円錐台形状を有している。円形部51bは、テーパ部51aの最大外径と同じ外径を有する円板状に形成される。ネジ部51cは、円形部51bより小さい円柱形状を有し、その外面にはネジが切られている。ネジ部51cの像面側の端面には、直線状のスリット51dが形成されている。テーパピン51は、軸受部54を介して第二レンズ枠12に取り付けられる。
軸受部54は、第二レンズ枠12の外周に形成されるフランジ部38に圧入される圧入部54aと、円形部51b及びテーパ部51aを収容する収容部54bとをZ方向で連結した段付きの概略円筒形状を有する。圧入部54aは、フランジ部38に圧入可能な円筒形状を有し、内周面にテーパピン51のネジ部51cが噛み合うネジが切られている。収容部54bは、圧入部より大径の円筒面を有し、Y方向における両端部が切欠かれることにより、一対の円弧状の壁部54cが形成される。一対の円弧状の壁部54cの内壁面は、テーパピン51の円形部51bと略同一の径を有している。一対の円弧状の壁部54cにより、円形部51b及びテーパ部51aがX方向で挟み込まれる。
偏芯コマ52は、X方向に平行な2つの中心軸を有し、台座53に係合する台座側係合部52aと、第一レンズ枠11に係合する枠体側係合部52b(図3参照)とによって構成される。台座側係合部52aは、X方向に中心軸を有する円柱状に形成される。台座側係合部52aのX方向外側の端面には、直線状のスリット52cが形成されている。枠体側係合部52bは、台座側係合部52aのX方向内側の端面から円柱状に突出しており、台座側係合部52aより小さい径を有する。また、枠体側係合部52bは、X方向に中心軸を有し、当該中心軸は、台座側係合部52aの中心軸に対して僅かにずれた(偏芯した)位置に設けられる。
台座53は、Z方向に延在する長尺部とY方向に延在する短尺部とを交差して配置したYZ平面視略十字形状を有する。長尺部は、上記したテーパピン51及び偏芯コマ52を支持する支持部55として機能し、短尺部は、台座53全体をY方向にスライドさせるスライド部56(第2の係合部)として機能する。スライド部56のY方向の中央部分は、支持部55より長手方向が短い矩形状を有し、支持部55のZ方向の中央部分よりやや像面側で支持部55に交差している。
支持部55とスライド部56とが重なる部分においては、厚み方向(X方向)に貫通する円形穴57が形成されている。また、スライド部56のY方向の両端部には、それぞれ厚み方向(X方向)に貫通する貫通穴56aが形成されている。一対の貫通穴56aは、Y方向に長い長円形状を有し、円形穴57をY方向で挟むように形成される。
支持部55のZ方向略中央には、厚み方向(X方向)内側に向かって凹む凹部55aが形成されている。支持部55のZ方向像面側の先端には、テーパピン51の一部が当接する当接部58が形成されている。当接部58は、テーパピン51及び軸受部54の一部をY方向で挟む一対の壁部58aと、テーパピン51のテーパ部51aに当接する傾斜部58bとによって構成される。一対の壁部58aで軸受部54の一対の壁部54cを挟むことで、軸受部54の軸回りの回転が規制される。傾斜部58bは、一対の壁部58aに連なり、テーパ部51aのX方向外側を覆う。傾斜部58bの内側面とテーパ部51aの外側面とは、同じ傾斜角を有し、傾斜部58bとテーパ部51aとが線接触する。
図7に示すように、第一レンズ枠11のY方向外側の外周面には、台座53のスライド部56が係合する直線溝44(第2のガイド部)が形成されている。直線溝44は、スライド部56のZ方向の幅と略同一幅を有しており、Y方向に延在している。直線溝44の底面は、スライド部56の内面に当接してスライド部56の移動をガイドするガイド面45となっている。詳細は後述するが、当該直線溝44は、台座53をY方向に案内するガイド部を構成し、スライド部56は、当該ガイド部に係合する係合部を構成する。
また、ガイド面45には、スライド部56の貫通穴56aに対応する箇所に一対のネジ穴46が形成され、当該一対のネジ穴46の間には、スライド部56の円形穴57に対応して矩形状の係合穴47が形成されている。係合穴47のY方向の幅は、偏芯コマ52の枠体側係合部52bの外径と略同一である。また、直線溝44のZ方向像面側には、支持部55に凹部55aに対応して一対のネジ穴48が形成されている。一対のネジ穴48は、凹部55aをY方向で挟むように配置される。
このように構成される操作部50では、図3に示すように、第二レンズ枠12のフランジ部38に被写体側から軸受部54が圧入され、当該軸受部54に被写体側からテーパピン51がねじ込まれる。テーパピン51(ネジ部51c)の先端のスリット51dは、軸受部54の端面から像面側に露出される。また、第一レンズ枠11の係合穴47及び台座53の円形穴57に偏芯コマ52が係合するように、偏芯コマ52を第一レンズ枠11と台座で挟み込み、一対の固定ネジ59で固定する。このとき、偏芯コマ52のスリット52cは円形穴57から露出される。また、台座53の凹部55aにY方向に延在する押さえ板60を嵌め込み、その両端を固定ネジ61で固定する。これにより、台座53は、押さえ板60によってX方向内側に押さえつけられ、X方向の移動が規制される。なお、押さえ板60による台座53のX方向の押圧力は、台座53のY方向の移動を許容する程度に調整される。また、台座53は、スライド部56が直線溝44に係合していることにより、Z方向の移動が規制される一方、Y方向の移動は許容されている。
次に、図3、図8及び図9を参照して、本実施の形態に係る光軸調整方法について説明する。図8は、本実施の形態に係る第二レンズ群の周辺構成を被写体側から見たときの平面図である。図9は、本実施の形態に係る操作部の移動軌跡を示す図である。
本実施の形態では、上記した構成により、テーパピン51(第1の操作部材)を回転操作することで第二レンズ枠12をX方向に移動させることができ、偏芯コマ52(第2の操作部材)を回転操作することで第二レンズ枠12をY方向に移動させることが可能である。ここで、テーパピン51の回転操作を第1の操作と呼び、偏芯コマ52の回転操作を第2の操作と呼ぶことにする。
先ず、X方向の光軸調整について説明する。図3に示すように、第二レンズ枠12は、圧縮コイルバネ36によってX方向に付勢されており、テーパ部51aの外周面が常時台座53の傾斜部58bの内面に当接している。例えば、テーパピン51のスリット51dにマイナスドライバーを係合させてテーパピン51を中心軸回りに回転させると、テーパピン51は、軸受部54及び第二レンズ枠12に対して相対的にZ方向へ移動する。
このとき、テーパ部51aの外周面と台座53の傾斜部58bの内面との接触位置が変わる。すなわち、テーパピン51の中心軸と傾斜部58の傾斜面(内周面)の中心軸との距離が変化する。これと共に、反対側のガイドピン37は、ガイド溝42に沿ってX方向に移動する。この結果、第二レンズ枠12が全体として、X方向に移動される。例えば、テーパピン51がZ方向像面側に移動すると、第二レンズ枠12は、テーパピン51側からガイドピン37側に向かってX方向に移動する。このように、テーパピン51のZ方向の移動を第二レンズ枠12のX方向の移動に変換することでX方向の光軸調整が可能である。
次に、Y方向の光軸調整について説明する。偏芯コマ52の枠体側係合部52bは、矩形状の係合穴47に係合することで、Y方向の移動が規制される一方、係合穴47の内部でZ方向に移動可能であると共にX方向回りに回転可能である。図3及び図7から図9に示すように、スリット52cにマイナスドライバーを係合させて偏芯コマ52を回転操作すると、偏芯コマ52は、枠体側係合部52bを中心に回転する。すると台座53は、直線溝44に案内されてY軸方向に移動する。この場合の移動軌跡は、偏芯コマ52の偏芯量に応じて決定され、例えば、図9の二点鎖線で示される。
また、図3で説明したように、第二レンズ枠12は、圧縮コイルバネ36によって台座53側に付勢されているため、テーパ部51aと傾斜部58bとが接触した状態が維持されている。このため、台座53がY方向に移動されると、第二レンズ枠12は、テーパ部51aと傾斜部58bとの接触状態を維持したまま、ガイドピン37を支点にY方向へ回転移動する。なお、このとき、ガイドピン37とテーパピン51との軸間距離は一定であるため、ガイドピン37は、台座53の移動に応じて僅かにX方向に移動する。
この場合、台座53のY方向の移動量に対してガイドピン37のX方向の移動量は十分に小さいため、光軸調整に影響はない。よって、厳密には第二レンズ枠12の移動がガイドピン37を中心とした円弧の移動となるが、X方向のガイドピン37の移動はほぼ無視することができるため、当該円弧の移動をY方向の直線移動とみなすことができる。このように、偏芯コマ52の回転操作を第二レンズ枠12のY方向の移動に変換することでY方向の光軸調整が可能である。
以上説明したように、本実施の形態によれば、操作部50の操作により、第1の方向(X方向)と第2の方向(Y方向)の2方向で第二レンズ枠12及び第二レンズ群7(被調整レンズ群)を移動させることができる。このため、XY平面上で第二レンズ群7を所定の移動範囲内で任意の箇所に位置付けることができ、複数のレンズ群間の光軸調整を実現することができる。また、光軸調整機構20を構成する操作部50、ガイド溝42及びガイドピン37を、XY平面内で直線的に配置することができる。このため、光軸調整機構20がレンズ鏡筒2の外周側に突出するのを防止することができ、結果としてレンズ鏡筒2の大型化を抑制することができる。
なお、上記実施の形態では、台座53のスライド部56がガイド面45に沿ってY方向に案内される構成としたが、ガイド面45の形状は適宜変更が可能である。例えば、以下に示す例が可能である。図10は、本実施の形態に係る光軸調整機構で光軸を調整した際における被調整レンズ群の光軸の移動軌跡を示す模式図である。図10Aから図10Cは、被調整レンズ群の光軸の移動軌跡のバリエーションを示している。図10Aから図10Cにおいて、左側の一点鎖線がガイド面形状を示し、真中の一点鎖線が第二レンズ群7の光軸の移動軌跡を示し、右側がガイドピン37の移動軌跡を示している。
例えば、図10Aに示すように、ガイド面45の形状をガイドピン37を中心とした円筒面とする。この場合、台座53をガイド面45に沿ってY方向にスライドさせると、ガイドピン37はX方向に移動することなく、X方向の位置を維持したまま光軸Oがガイドピン37を中心とした円弧に沿ってY方向に移動する。
また、図10Bに示すように、ガイド面45の形状をYZ平面に平行な平面とする。この場合、台座53をガイド面45に沿ってY方向に直線的にスライドさせると、ガイドピン37は僅かにX方向で台座53側に移動し、光軸Oは、図10Aの円弧の軌跡とは反対側に凸形状の円弧に沿ってY方向に移動する。
上記したように、台座53のY方向の移動量に対してガイドピン37のX方向の移動量は十分に小さいため、X方向のガイドピン37の移動はほぼ無視することができる。よって、当該円弧の移動をY方向の直線移動とみなすことができる。
しかしながら、例えば、比較的大きな径を有するレンズ鏡筒において、ガイドピン37のX方向を無視できない場合には、図10Cのような構成も可能である。図10Cでは、図10A及び図10Bに示す光軸Oの軌跡を考慮して、光軸Oの軌跡が直線を成すようにガイド面45を形成する。具体的に図10Cのガイド面45は、図10Aのガイド面より曲率半径の大きい円筒面とし、図10Aの光軸Oの移動軌跡と図10Bの光軸Oの移動軌跡とを相殺することで、光軸OをY方向に直線的に移動させることが可能である。このように、ガイド面45の形状を変えることで、光軸調整の精度を高めることができる。
また、上記実施の形態では、光軸調整機構20(操作部50及びガイドピン37)がXY平面内で光軸を挟んで対向する位置に配置され、光軸調整機構20が光軸を含む直線上に配置される構成とした。この場合、光軸調整機構20が第2レンズ枠12の直径上に配置されることで、第二レンズ枠12のX方向の移動をバランスよく調整することができる。しかしながら、この構成に限定されない。操作部50及びガイドピン37は、第二レンズ枠12の外周側で異なる位置に配置されれば、どの位置に配置されてもよい。
また、上記実施の形態では、光軸に直交する平面(XY平面)内で所定のレンズ群(第二レンズ群7及び第三レンズ群8)を他のレンズ群(第一レンズ群6)に対して位置調整する構成としたが、この構成に限定されない。XY平面は、光軸とは異なる方向の平面であればよく、必ずしも光軸に直交する平面である必要はない。
また、上記実施の形態では、第二レンズ枠12をX方向と、X方向に直交するY方向に移動させる構成としたが、この構成に限定されない。第二レンズ枠12の2つの移動方向(第1の方向及び第2の方向)は、直交していなくてもよい。
また、上記実施の形態では、付勢部材として圧縮コイルバネを例に挙げたが、この構成に限定されない。付勢部材は、例えば板バネで構成されてもよい。
また、上記実施の形態では、例えば係合部をガイドピン37とし、ガイド部をガイド溝42としたが、この構成に限定されない。係合部とガイド部との関係は逆であってもよく、例えば、係合部を溝で形成し、ガイド部を突起で形成し、突起に溝を係合させて、移動をガイドする構成としてもよい。その他の溝と突起(ピン等)との係合関係も同様である。
また、上記実施の形態では、テーパピン51のネジ部51cのネジピッチやテーパ部51aの傾斜角を適宜調整することにより、X方向の光軸調整における分解能を調整することができる。例えば、ネジ部51cのネジピッチを小さくしたり、テーパ部51aの傾斜角を小さくすることで分解能を高めることが可能である。
また、上記実施の形態では、テーパ部51aの外周面と傾斜部58bの傾斜面とを線接触させる構成としたが、この構成に限定されない。テーパ部51a及び傾斜部58bのいずれか一方をエッジとして点接触させてもよい。この場合、エッジ部分を面取りしておくことが好ましい。
また、上記実施の形態では、テーパピン51をZ方向に送ることで第二レンズ枠12をX方向に移動させる構成としたが、この構成に限定されない。テーパピン51の他に、Z方向の移動を第二レンズ枠12のX方向の移動に変換する構成であればどのように構成されてもよい。
また、上記実施の形態では、偏芯コマ52の操作で台座53をY方向に移動させる構成としたが、この構成に限定されない。偏芯コマ52ではなく、テーパピン51と同様の構成を用いて台座53をY方向に移動させてもよい。
また、上記実施の形態では、レンズ鏡筒の調芯構造がレンズ交換式のカメラシステムに適用される場合について説明したが、これに限定されない。本発明は、例えば、レンズ鏡筒とカメラ本体が一体化されたカメラシステムや、プロジェクタにも適用が可能である。
また、上記の実施の形態では、複数のレンズ群が3つのレンズ群で構成され、第二レンズ枠12及び第三レンズ枠13を光軸補正レンズ群(被調整レンズ群)としたが、この構成に限定されない。レンズ群の個数は適宜変更が可能であり、2つでも4つ以上であってもよい。また、光軸補正の対象となる光軸補正レンズ群も同様に、その個数や種類は適宜変更が可能である。
また、本実施の形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。