以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。なお、以下の説明において、車両が走行する地域は左側通行の地域であるものとする。右側通行の地域に関しては、適宜、左右を入れ替えて処理を行えばよい。
<第1実施形態>
[全体構成]
図1は、第1実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機を備える場合、電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、ファインダ14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220と、ヘッドライト装置250とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、自車両Mと称する)の任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。レーダ装置12は、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
ファインダ14は、LIDAR(Light Detection and Ranging)である。ファインダ14は、自車両Mの周辺に光を照射し、散乱光を測定する。ファインダ14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。ファインダ14は、自車両Mの任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。ファインダ14は、物体検出装置の一例である。
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。また、物体認識装置16は、必要に応じて、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi−Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ、自車両Mの周囲の照度を検出する照度センサ等を含む。
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備え、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。経路決定部53により決定された地図上経路は、MPU60に出力される。また、ナビゲーション装置50は、経路決定部53により決定された地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。なお、ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。また、ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから返信された地図上経路を取得してもよい。
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61として機能し、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、経路において分岐箇所や合流箇所などが存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20を用いて他装置にアクセスすることにより、随時、アップデートされてよい。
運転操作子80は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステア、ジョイスティックその他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160とを備える。第1制御部120と第2制御部160は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
図2は、第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部150とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現される。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
認識部130は、踏切認識部132と、踏切通過前状況認識部140とを備える。また、行動計画生成部150は、踏切通過制御部152を備える。これらの機能に関しては後述し、先に認識部130および行動計画生成部150の基本的な機能について説明する。
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14から物体認識装置16を介して入力される情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。また、認識部130は、カメラ10の撮像画像に基づいて、自車両Mがこれから通過するカーブの形状を認識する。認識部130は、カーブの形状をカメラ10の撮像画像から実平面に変換し、例えば、二次元の点列情報、或いはこれと同等なモデルを用いて表現した情報を、カーブの形状を示す情報として行動計画生成部150に出力する。
また、認識部130は、例えば、自車両Mが走行している車線(走行車線)を認識する。例えば、認識部130は、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。なお、認識部130は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部130は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識する。
認識部130は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部130は、例えば、自車両Mの基準点の車線中央からの乖離、および自車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。また、これに代えて、認識部130は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線または道路境界)に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。
また、認識部130は、上記の認識処理において、認識精度を導出し、認識精度情報として行動計画生成部150に出力してもよい。例えば、認識部130は、一定期間において、道路区画線を認識できた頻度に基づいて、認識精度情報を生成する。
行動計画生成部150は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自動運転において順次実行されるイベントを決定する。イベントには、例えば、一定速度で同じ走行車線を走行する定速走行イベント、前走車両に追従する追従走行イベント、前走車両を追い越す追い越しイベント、障害物との接近を回避するための制動および/または操舵を行う回避イベント、カーブを走行するカーブ走行イベント、交差点や横断歩道、踏切などの所定のポイントを通過する通過イベント、車線変更イベント、合流イベント、分岐イベント、自動停止イベント、自動運転を終了して手動運転に切り替えるためのテイクオーバイベントなどがある。
行動計画生成部150は、起動したイベントに応じて、自車両Mが将来走行する目標軌道を生成する。各機能部の詳細については後述する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
図3は、推奨車線に基づいて目標軌道が生成される様子を示す図である。図示するように、推奨車線は、目的地までの経路に沿って走行するのに都合が良いように設定される。行動計画生成部150は、推奨車線の切り替わり地点の所定距離(イベントの種類に応じて決定されてよい)手前に差し掛かると、通過イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベントなどを起動する。各イベントの実行中に、障害物を回避する必要が生じた場合には、図示するように回避軌道が生成される。
第2制御部160は、行動計画生成部150によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
図2に戻り、第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部150により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECUとを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
ヘッドライト装置250は、自車両Mの前方を照射する装置であり、例えば、ステアリング舵角に応じて左右に照射方向を自動的に変更可能なAFS(Adaptive Front Lighting System;配光可変型前照灯システム)である。また、ヘッドライト装置250は、外部からの指示に応じてハイビーム照射とロービーム照射とを切り替える。ロービーム照射とは、一定の俯角で自車両Mの前方を照射することであり、ハイビーム照射とは、ロービーム照射よりも上向きの光軸角度で、自車両Mの前方のより遠方側までを照射することである。
以下、車両システム1による踏切通過場面における処理の内容について説明する。図2に示したように、認識部130の踏切認識部132は、色ベース判定部134と、凹部判定部136とを備える。
[踏切認識]
踏切認識部132は、例えば、自車両Mの進行先の所定距離(例えば2[km]程度)以内に踏切が存在する旨の情報がMPU60から得られた場合に、踏切の存在が認識できたものとして、動作を開始する。この時点では、車両制御装置は、踏切が存在する確信度には疑いの余地があるものと判断する。そして、以下に説明する処理によって、踏切の存在についての確信度が高められ、踏切通過制御の起動の有無、および/またはその処理内容が決定される。確信度とは、踏切認識部132が管理する内部パラメータであり、自動運転制御装置100のメモリに格納される値またはフラグである。なお、踏切認識部132は、地図による踏切の存在を示す情報に拘わらず常時動作し、自発的に踏切の存在を認識してもよい。
(特定色による踏切認識)
以下、色ベース判定部134の機能について説明する。色ベース判定部134は、カメラ10により撮像された画像に含まれる、踏み切りの存在を示す特定色の要素に基づいて、自車両の進行先に踏切が存在する確信度を高める。ここで、特定色とは、踏切の存在する国によって異なるものであるが、例えば、黄色と黒、赤と白のように、二つの色の組み合わせからなる。以下、この二つの色をそれぞれ、第1色、第2色と称する。
図4は、踏切を撮像した画像の一例を示す図である。踏切には、例えば、列車の通過前から通過完了までの間、線路の横断を制止するための遮断器300、音と点灯で列車の接近および通過を通知するための踏切警報機310、および踏切の入口における道路幅を制限するための防護壁320などが設置される。踏切警報機310には、警報音発生器312、踏切警標314、警報灯316、方向指示器318などが設けられる。これらのうち、踏切警標314や防護壁320には、第1色と第2色とが比較的広い範囲に亘って、周期的かつ交互に配置された塗装がなされている。
図5は、色ベース判定部134による処理の内容の一例を示すフローチャート(その1)である。まず、色ベース判定部134は、判定時点が夜間であるか否かを判定する(ステップS100)。例えば、色ベース判定部134は、車両センサ40に含まれる照度センサにより検出される照度が閾値Th1未満である場合に、夜間であると判定する。これに代えて、色ベース判定部134は、内部に保持している時計により計時される時刻に基づいて、夜間であるか否かを判定してもよい。後者の場合、季節を考慮して判定基準を変更してもよい。夜間であると判定した場合、色ベース判定部134は、ヘッドライト装置250に指示して、一定時間、ハイビーム照射を行わせる(ステップS102)。これによって、画像認識の成功率を高めることができる。
次に、色ベース判定部134は、カメラ10により撮像された画像において、第1色に該当する第1領域と、第2色に該当する第2領域とを抽出する(ステップS110)。カメラ10の撮像画像からは、画素(または画素グループ、以下同様)ごとにRGB成分のそれぞれの強さを示す指標値が得られるため、色ベース判定部134は、第1色と第2色のそれぞれに対応した基準値(上限と下限を含んでよい)の範囲内である場合に、第1色または第2色に該当する画素であると判定する。そして、色ベース判定部134は、第1色または第2色のそれぞれに該当する画素がひとまとまりになっている領域を、第1色領域または第2領域として抽出する。ここで、光の加減などにより、領域内に第1色または第2色でない画素が混入する場合も想定されるが、色ベース判定部134は、これについて特異値として除去する処理などを行ってよい。
次に、色ベース判定部134は、第1領域の面積が、画像全体の面積に対して閾値Th2以上であるか否かを判定する(ステップS112)。ここで、第1領域の面積とは、複数の第1領域が存在する場合、例えば、それらの面積の合計である。第1領域の面積が、画像全体の面積に対して閾値Th2以上である場合、色ベース判定部134は、第2領域の面積が、画像全体の面積に対して閾値Th3以上であるか否かを判定する(ステップS114)。ここで、第2領域の面積とは、複数の第2領域が存在する場合、例えば、それらの面積の合計である。閾値Th2と閾値Th3は同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。例えば、黒は、画像において踏切以外の部分でも現れる確率が高いのに対し、黄色は踏切以外の部分で現れる確率が低いからである。従って、黒に対する閾値を黄色に対する閾値よりも高くしてよい。ステップS112とステップS114のいずれかにおいて否定的な判定結果を得た場合、色ベース判定部134は、特定色に基づいて確信度を高めることを行わない。この場合、踏切認識部132は、更なる確認処理を経なければ、踏切は存在しないと判断してもよい。
ステップS112とステップS114の双方において肯定的な判定結果を得た場合、色ベース判定部134は、第1領域と第2領域とが周期的かつ交互に配置されているか否かを判定する(ステップS116)。図6は、色ベース判定部134による判定処理の一例について説明するための図である。図示するように、色ベース判定部134は、例えば、第1領域A1および第2領域A2を包含する窓領域WDを設定し、窓領域内で傾きの異なる走査線DLを複数設定し、いずれかの走査線DL上で、第1領域A1と第2領域A2との境界点BPが略等間隔で現れるか否かを判定する。略等間隔で現れるとは、互いに隣接する境界点BPの間の間隔が、全て一定の範囲内に収まっていることをいう。この一定の範囲は、画像面と実空間の関係で生じる揺らぎなどを考慮した幅を有してよい。いずれかの走査線DL上で、第1領域A1と第2領域A2との境界点BPが略等間隔で現れる場合、色ベース判定部134は、第1領域と第2領域とが周期的かつ交互に配置されていると判定する。なお、これに限らず、色ベース判定部134は、パターンマッチングなどの手法を用いてステップS116の判定を行ってもよい。
ここで、前述したように、特定色である第1色と第2色は、比較的広い範囲に亘って存在するものである。このため、図6に例示したような手法を用いた場合、走査線DL上で十分な数の第1領域と第2領域の境界点BPを比較的容易に検出することができる。これに対し、仮に遮断器300の遮断棒部分を画像から認識しようとした場合、対象が細長い物体であるため、精緻な認識処理が必要となる。また、誤認識の確率も高くなってしまう。また、警報灯316に関しては信号機と誤認する可能性もあるし、そもそも点灯していなければ黒色一色であるため判別が困難である。このように、画像に含まれる、踏切に特有の特定色に基づいて踏切の認識を行うことで、処理負荷を増大させることなく、高精度に踏切の存在を認識することができる。
図5に戻り、第1領域と第2領域とが周期的かつ交互に配置されていると判定した場合、色ベース判定部134は、踏切の存在についての確信度を高める(地図のみに基づいて判断した場合よりも、確信度が高くなったと判断する;以下同様)(ステップS118)。この場合、踏切認識部132は、行動計画生成部150などに、踏切の存在が十分に確からしい旨を通知する。この結果、行動計画生成部150による踏切通過制御が開始される。一方、第1領域と第2領域とが周期的かつ交互に配置されていないと判定した場合、色ベース判定部134は、特定色に基づいて踏切の確信度を高めることを行わない。
色ベース判定部134は、図5に示すフローチャートの処理に代えて、図7に示すフローチャートの処理を行ってもよい。図7は、色ベース判定部134による処理の内容の一例を示すフローチャート(その2)である。
まず、色ベース判定部134は、自車両Mの周辺の照度が閾値Th4未満であるか否かを判定する(ステップS104)。色ベース判定部134は、例えば、車両センサ40に含まれる照度センサの検出結果に基づいて、自車両Mの周辺の照度が閾値Th4未満であるか否かを判定する。自車両Mの周辺の照度が閾値Th4以上である場合、色ベース判定部134は、ステップS110〜S118の処理を行う。ステップS110〜S118の処理については図5のフローチャートに示す処理と同様であるため、説明を省略する。
自車両Mの周辺の照度が閾値Th4未満である場合、色ベース判定部134は、ファインダ14に指示して自車両Mの前方に向けて光を照射させる(ステップS120)。次に、色ベース判定部134は、ファインダ14により受光された光の受光強度に基づいて、自車両Mの前方風景における特定色を有する部分の位置を特定する(ステップS122)。そして、色ベース判定部134は、特定した位置に基づいて、第1色の部分と第2色の部分とが周期的かつ交互に配置されているか否かを判定する(ステップS124)。
ファインダ14の検出結果には方位角や仰角以外に距離の成分が含まれるため、ステップS124において、色ベース判定部134は、第1色の部分と第2色の部分とが、「等距離で」周期的かつ交互に配置されているか否かを判定してもよい。こうすれば、異なる奥行位置にある物体を踏切の一部と誤認識する確率を低下させることができる。また、ステップS124の処理は、より緩やかな条件による判定処理、例えば、「第1色の部分と第2色の部分とが、等距離且つ方位角または仰角に関して一定範囲内に存在し、一定範囲内における占有率が閾値Th5以上であるか否か」を判定するものであってもよい。図8は、ファインダ14を用いた特定色の認識手法の他の例を示す図である。図示するように、色ベース判定部134は、一定の角度範囲および一定の距離範囲をもつ部分空間を定義して走査し、特定色の占有率の高い空間が存在する場合に、踏切が存在する確信度を高めてもよい。
ステップS124において否定的な判定結果を得た場合、色ベース判定部134は、特定色に基づいて踏切の確信度を高めることを行わない。一方、ステップS124において肯定的な判定結果を得た場合、色ベース判定部134は、踏切の存在についての確信度を高める(ステップS118)。
図7のフローチャートに示す処理によれば、自車両Mの周辺の照度が不十分なために画像認識の精度が低下する場合であっても、踏切の存在を精度よく認識することができる。
色ベース判定部134は、図5のフローチャートに示す処理と、図7のフローチャートに示す処理とを組み合わせた処理を行ってもよい。図9は、色ベース判定部134による処理の内容の一例を示すフローチャート(その3)である。図示するように、色ベース判定部134は、ステップS112〜S116のいずれかにおいて否定的な判定結果を得た場合、ステップS120〜S124の処理を行い、ステップS124において肯定的な判定結果を得た場合、踏切の存在についての確信度を高める(ステップS118)。
図5のフローチャートにおけるステップS100において、「その時点が夜間であるか否か」を判定するのに代えて、「自車両Mの周辺の照度が閾値Th4未満であるか否か」を判定してもよい。また、図7のフローチャートにおけるS104において、「自車両Mの周辺の照度が閾値Th4未満であるか否か」を判定するのに代えて、「その時点が夜間であるか否か」を判定してもよい。
以上説明したように、車両制御装置が備える色ベース判定部134の機能によって、踏切を認識する際の確信度を高めることができる。なお、特定色の種類は国によって異なる場合があるため、色ベース判定部134は、自車両Mが存在する国ごとに、認識対象の特定色を切り替える機能を有してもよい。
(路面の凹部による踏切認識)
以下、凹部判定部136の機能について説明する。凹部判定部136は、カメラ10やファインダ14などの検知デバイスを用いて、自車両Mの進行方向に対して交差する方向に延在する凹部が存在するか否かを判定する。
踏切内では、路面が少なくとも線路と同じ高さになるように設計されている。図10は、踏切を撮像した画像の他の一例を示す図である。図示するように、踏切内では、フランジウェーを確保するためのガードレールGRが、線路Rの内側に、線路Rと平行に敷設される。そして、線路RとガードレールGRとの間に凹部Cが形成される。この結果、凹部Cは、自車両Mの進行方向に交差する方向に延在することになる。凹部判定部136は、カメラ10の撮像画像を解析し、自車両Mの進行方向に交差する方向に延在する凹部Cが存在すると判定した場合、踏切の存在についての確信度を高める。
図11は、凹部判定部136により実行される処理の内容の一例を示すフローチャート(その1)である。まず、凹部判定部136は、カメラ10により撮像された画像において、走査領域を設定する(ステップS210)。次に、凹部判定部136は、走査領域内で垂直エッジを抽出する(ステップS212)。
図12は、走査領域DAと垂直エッジVEについて説明するための図である。走査領域DAは、例えば、自車両Mの左右端から幅方向にある程度の余裕を持たせて幅を設定し、自車両Mから進行方向側に所定距離までを奥行き方向とした絶対平面上の領域を、画像平面に変換した領域である。走査領域DAは、画像平面上では、略台形の形状を有する。また、垂直エッジVEとは、例えば、画像における縦方向に関して、隣接する画素との輝度差が閾値Th6以上の画素である。これに限らず垂直エッジVEは、同等の性質を持つ限り、他の規則に従って抽出されてもよい。通常、凹部Cを撮像した画素の輝度値は周囲に比して有意に低いため、凹部Cと路面の境界線では、垂直エッジVEが表れる確率が高い。
図11に戻り、凹部判定部136は、略水平方向に並ぶ垂直エッジVEを選択し、それらを連ねた線分を特定する(ステップS214)。略水平方向とは、例えば、画像の水平方向を中心としてプラスマイナス20度程度以内であることをいう。凹部判定部136は、例えば、走査領域DA内で傾きを変えながら走査線(不図示)を設定し、所定数以上の垂直エッジVEが重なる走査線を特定する。そして、特定した走査線の両端の垂直エッジVEを線分の両端とし、線分を特定する。また、これに代えて、最小二乗法やハフ変換などの手法が線分の特定に利用されてもよい。図13は、特定された線分EL−1〜EL−4を示す図である。図中の「D1」については後述する。
図11に戻り、凹部判定部136は、ステップS204で特定された線分のうち、それぞれ所定長さ以上で、平行して延在し且つ幅が第1所定幅を中心とした一定の範囲内に収まる一組の線分を抽出し、それらの線分で区画される領域を凹部Cと認識する(ステップS216)。図13において、EL−1とEL−2、EL−3とEL−4のそれぞれが、一組の線分に相当する。
なお、ステップS212〜S216の処理は、あくまで一例であり、凹部Cが画像において暗く映ることを利用し、より簡易的に「輝度が基準値以下である画素を集めた領域を凹部Cとして抽出する」処理を行ってもよい。また、ステップS212〜S216の処理に加えて、「一組の線分で区画される領域の輝度平均が基準値以下である」ことを凹部Cと認識するための条件としてもよい。
次に、凹部判定部136は、平行して延在する二つ以上の凹部Cが存在するか否かを判定する(ステップS230)。ステップS230において否定的な判定結果を得た場合、凹部判定部136は、凹部Cの存在に基づいて踏切の存在についての確信度を高めることを行わない。
ステップS230において肯定的な判定を得た場合、凹部判定部136は、平行して延在する二つ以上の凹部Cのうち、任意の二つを選択し、二つの凹部Cの間隔が第2所定幅を中心とした一定の範囲内に収まるか否かを判定する(ステップS232)。図13におけるD1は、二つの凹部Cの間隔を示している。ステップS232において否定的な判定結果を得た場合、凹部判定部136は、凹部Cの存在に基づいて踏切の存在についての確信度を高めることを行わない。
ステップS232において肯定的な判定結果を得た場合、凹部判定部136は、踏切の存在についての確信度を高める(ステップS234)。
図11のフローチャートの処理において、ステップS216の所定長さおよび第1所定幅、並びにステップS232の第2所定幅は、自車両Mとの距離すなわち画像における縦方向の位置に応じて変更されてよい。画像における縦方向の位置が下側にある程、所定長さ、第1所定幅、並びに第2所定幅は大きく設定され、画像における縦方向の位置が上側にある程、所定長さ、第1所定幅、並びに第2所定幅は大きく設定されてよい。
また、図11のフローチャートに示す処理は、あくまで一例であり、ステップS234に進むための判定条件を緩和してもよいし、より詳細に判定を行ってもよい。例えば、凹部判定部136は、線分の長さによって線分に対してスコアを付与し、スコアの低い線分しか存在しない場合には、踏切の存在についての確信度を高めることを行わないようにしてもよい。
また、上記の説明は、線路RとガードレールGRの間に凹部Cが形成される場合に対応したものであるが、線路Rの両側に凹部Cがある構造の踏切については、一つの線路Rに対して二つの凹部Cが認識される場合がある。これについては、線路幅に応じた幅で平行に延在する二つの凹部Cを、一まとまりの凹部Cと認識し、ステップS230以降の処理を行えばよい。
また、凹部判定部136は、更に、ファインダ14による検出結果に基づいて、踏切の存在についての確信度を高めるようにしてもよい。線路Rの光の反射率は周囲の物体に比して高いため、ファインダ14の検出結果を参照することで、線路R(またはガードレールGR、以下同様)の存在の有無および位置を導出することが可能である。この場合、凹部判定部136は、例えば、ファインダ14による検出結果を参照し、図11のフローチャートにおける凹部Cに対応する位置に線路Rの存在が認識された場合、その一組の線分が十分に確からしいと判断し、線路Rの存在が認識されない場合、その一組の線分を破棄してもよい。また、夜間などのように画像認識の精度が低下する場合には、専らファインダ14による検出結果に基づいて、踏切の存在についての確信度を高めるようにしてもよい。
図14は、凹部判定部136により実行される処理の内容の一例を示すフローチャート(その2)である。ステップS210〜S216までの処理は、図11のフローチャートにおける処理と同様であるため、説明を省略する。
凹部Cを認識した後、凹部判定部136は、ファインダ14による検出結果を参照し、線路Rの位置を認識する(ステップS218)。そして、凹部判定部136は、ステップS216で認識した線路Rの位置に対応しない凹部Cを破棄する(ステップS220)。「線路Rの位置に対応する」とは、線路Rの絶対位置を画像平面に射影した位置の付近に存在することをいう。以下、凹部判定部136は、ステップS230以降の処理を実行する。これについては、図11のフローチャートにおける処理と同様であるため、説明を省略する。
図15は、凹部判定部136により実行される処理の内容の一例を示すフローチャート(その3)である。まず、凹部判定部136は、判定時点が夜間であるか否かを判定する(ステップS200)。例えば、凹部判定部136は、車両センサ40に含まれる照度センサにより検出される照度が閾値Th1未満である場合に、夜間であると判定する。これに代えて、凹部判定部136は、内部に保持している時計により計時される時刻に基づいて、夜間であるか否かを判定してもよい。後者の場合、季節を考慮して判定基準を変更してもよい。夜間でないと判定した場合、凹部判定部136は、ステップS210以降の処理を実行する。これについては、図11のフローチャートの処理と同様であるため、説明を省略する。
夜間であると判定した場合、凹部判定部136は、ファインダ14による検出結果を参照し、線路Rの位置を認識する(ステップS202)。そして、凹部判定部136は、線路Rが少なくとも二本認識されたか否かを判定する(ステップS204)。線路Rが少なくとも二本認識された場合、凹部判定部136は、踏切の存在について確信度を高める(ステップS224)。一方、線路Rが少なくとも二本認識されなかった場合、凹部判定部136は、踏切の存在について確信度を高めることを行わない。なお、線路RとガードレールGRが別々のものとして認識される場合、ステップ204の処理は、「線路RまたはガードレールGRが少なくとも四本認識されたか否かを判定する」ものとしてもよいし、線路RとガードレールGRは近い位置にあるため、それらを仮想的に一つの線路Rとして認識してもよい。
[踏切認識まとめ]
踏切認識部132は、例えば、色ベース判定部134による処理結果と、凹部判定部136による処理結果とを統合して、踏切の存在について判断する。踏切認識部132は、例えば、色ベース判定部134と凹部判定部136とのうちいずれかにより確信度が高められた場合に、行動計画生成部150に踏切通過制御を開始させる。また、踏切認識部132は、例えば、色ベース判定部134と凹部判定部136との双方により確信度が高められた場合に、行動計画生成部150に踏切通過制御を開始させてもよい。なお、踏切認識部132は、色ベース判定部134と凹部判定部136とのうちいずれか一方を省略した構成であってもよい。また、踏切認識部132における画像処理機能は、物体認識装置16により実現されてもよい。
[踏切通過制御]
以下、行動計画生成部150の踏切通過制御部152により実行される踏切通過制御について説明する。踏切通過制御部152は、認識部130の踏切通過前状況認識部140と協調して処理を行う。図2に示したように、踏切通過前状況認識部140は、例えば、踏切内走行可能領域認識部142と、物体判定部144と、列車接近判定部146とを備える。また、踏切通過制御部152は、仮想レーン設定部154を備える。
(仮想レーン設定)
踏切通過制御部152は、踏切通過制御を開始すると、踏切通過前状況認識部140に動作の開始を指示する。これに応じて、踏切通過前状況認識部140の踏切内走行可能領域認識部142は、例えば、カメラ10、ファインダ14、物体認識装置16のうち一部または全部の出力に基づいて、踏切内において自車両Mが走行可能な領域を認識する。
図16は、踏切内走行可能領域A3について説明するための図(その1)である。本図は踏切を上空から見た平面視を示す図である。踏切内走行可能領域認識部142は、例えば、カメラ10により撮像された画像を、図16に示すような絶対平面上のデータに変換して処理を行う。この踏切では、白線や黄線などで描画された区画線WL1およびWL2、区画線WL3およびWL4でそれぞれ歩行者用道路が規定され、区画線WL2および区画線WL3で車両用道路が規定されている。このような形態の踏切であれば、踏切内走行可能領域認識部142は、例えば、区画線WL2およびWL3と、遮断機300の遮断棒が降りた際の遮断棒の位置を路面に射影した仮想線NEおよびFE(ここでは路面材が切り替わる場合が多いため、路面材の切り替わりを認識してもよい)とで区画された領域を、踏切内走行可能領域A3として認識する。また、踏切内走行可能領域認識部142は、歩行者用道路として規定された領域を、予備領域として認識してもよい。
踏切通過制御部152の仮想レーン設定部154は、踏切内走行可能領域A3内で、自車両Mが走行する仮想レーンVLを設定する。図17は、図16に示す踏切において仮想レーンVLが設定される様子を示す図である。図示するように、仮想レーン設定部154は、例えば、区画線WL2の右端を左端とし、自車両Mの車幅に余裕長さを加えた幅WVLを有する領域を、仮想レーンVLとして設定する。
仮想レーンVLが設定されると、踏切通過制御部152は、物体判定部144に指示して仮想レーンVL上に物体が存在するか否かを判定させる。物体判定部144は、カメラ10、ファインダ14、物体認識装置16のうち一部または全部の出力に基づいて、仮想レーンVL上に物体が存在するか否かを判定する。
このとき、物体判定部144は、踏切内走行可能領域A3の幅と仮想レーンVLの幅とを比較し、踏切内走行可能領域A3に一つの仮想レーンVLのみ設定可能である場合(踏切内走行可能領域A3の幅が仮想レーンVLの幅の2倍未満である場合)、踏切内走行可能領域A3に存在する全ての物体を、仮想レーンVL上に存在する物体であるとみなしてよい。物体判定部144は、この際に、自車両Mと同じ方向に走行する車両を除外してもよい。
仮想レーン設定部154は、物体判定部144により仮想レーンVL上に物体が存在すると判定された場合において、物体を回避可能な仮想レーンVLを再設定可能であれば、仮想レーンVLを再設定してもよい。図18は、再設定された仮想レーンVL*を示す図である。仮想レーン設定部154は、例えば、前述した予備領域(図では区画線WL1とWL2とで挟まれた領域)に歩行者その他の物体が存在しないことを確認した上で、予備領域を利用して仮想レーンVL*を設定してもよい。
仮想レーン設定部154は、区画線WL1よりも左側(或いは区画線WL4よりも右側)に、走行可能な領域がある場合、区画線WL1からはみ出した領域までを含めて仮想レーンVLを再設定してもよい。図19は、再設定された仮想レーンVL**を示す図である。図中、RBは走路境界であり、少なくとも線路Rと同じ高さになるように形成された構造物の端部である。このように、仮想レーン設定部154は、走路境界RBまで走行可能であるものとして、仮想レーンVL**に再設定してもよい。走路境界RBは、カメラ10の画像において水平エッジを抽出し、水平エッジを連ねた直線または曲線を導出することで、認識することができる。水平エッジとは、例えば、画像における横方向に関して、隣接する画素との輝度差が閾値Th7以上の画素である。なお、この手法は、踏切内に区画線が全く描画されていない場合にも適用することができる。
図20は、踏切内走行可能領域A3について説明するための図(その2)である。本図に示す踏切は、路面に歩行者用道路が示されておらず、一対の区画線WL5およびWL6のみが描画された踏切である。この場合、踏切内走行可能領域認識部142は、例えば、区画線WL5およびWL6と、前述した仮想線NEおよびFEとで区画された領域を、踏切内走行可能領域A3として認識する。
図21は、図20に示す踏切において仮想レーンVLが設定される様子を示す図である。図示するように、仮想レーン設定部154は、例えば、区画線WL5の右端から所定幅WOS離れた位置を左端とし、自車両Mの車幅に余裕長さを加えた幅WVLを有する領域を、仮想レーンVLとして設定する。所定幅WOSは、例えば、歩行者が一人通行可能な程度の幅である。なお、仮想レーン設定部154は、踏切内走行可能領域A3の幅が大きくなる程、所定幅WOSを大きくしてもよい。
図20で示すような踏切において、仮想レーン設定部154は、物体判定部144により仮想レーンVL上に物体が存在すると判定された場合において、物体を回避可能な仮想レーンVLを再設定可能であれば、踏切内走行可能領域A3の中で仮想レーンVLを再設定する。また、仮想レーン設定部154は、区画線WL5よりも左側(或いは区画線WL6よりも右側)に、走行可能な領域がある場合、区画線WL5からはみ出した領域までを含めて仮想レーンVLを再設定してもよい。
図22は、踏切通過制御部152および踏切通過前状況認識部140により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、踏切通過前状況認識部140の踏切内走行可能領域認識部142が、カメラ10の画像を解析し、踏切内に区画線があるか否かを判定する(ステップS300)。踏切内に区画線があると判定した場合、踏切内走行可能領域認識部142は、歩行者用道路が区画線によって示されているか否かを判定する(ステップS302)。
歩行者用道路が区画線によって示されている場合、踏切内走行可能領域認識部142は、内側の区画線(例えば、図16における区画線WL2)を基準として踏切内走行可能領域A3を設定する(ステップS304)。この場合、仮想レーン設定部154は、踏切内走行可能領域A3の左端を基準として仮想レーンVLを設定する(ステップS306)。
歩行者用道路が区画線によって示されていない場合、踏切内走行可能領域認識部142は、両側の区画線(例えば、図20における区画線WL5およびWL6)を基準として踏切内走行可能領域A3を設定する(ステップS308)。この場合、仮想レーン設定部154は、踏切内走行可能領域A3の左端から所定幅WOSオフセットさせて仮想レーンVLを設定する(ステップS310)。
踏切内に区画線が無い場合、踏切内走行可能領域認識部142は、走路境界(例えば、図19における走路境界RBおよび反対側の走路境界を基準として踏切内走行可能領域A3を設定する(ステップS312)。図23は、走路境界RB1およびRB2を基準として踏切内走行可能領域A3が設定される様子を示す図である。走路境界RB1およびRB2は、それぞれ、カメラ10の画像において水平エッジを抽出し、水平エッジを連ねた直線または曲線を導出することで、認識することができる。この場合、仮想レーン設定部154は、踏切内走行可能領域A3の左端から所定幅WOSオフセットさせて仮想レーンVLを設定する(ステップS310)。
図22に戻り、仮想レーンVLが設定されると、物体判定部144が、仮想レーンVL上に物体があるか否かを判定する(ステップS320)。仮想レーンVL上に物体があると判定された場合、仮想レーン設定部154が、物体を回避可能な仮想レーンを再設定可能か否かを判定する(ステップS322)。再設定可能であると判定した場合、仮想レーン設定部154は、ステップS300およびS302で種類を判定した区画線の態様に応じて、仮想レーンVLを再設定する(ステップS324;図18、19)。ステップS322で否定的な判定を得た後、およびステップS324で仮想レーンVLを再設定した後、ステップS320に処理が戻される。
仮想レーンVL上に物体が無いと判定した場合、踏切通過制御部152は、カメラ10、レーダ装置12、ファインダ14、物体認識装置16などの出力を参照し、踏切の向こう側(踏切を通過した直後)に車両一台分の空き領域があるか否かを判定する(ステップS326)。踏切の向こう側に車両一台分の空き領域が無い場合はステップS320に処理が戻される。踏切の向こう側に車両一台分の空き領域がある場合、踏切通過制御部152は、発進してよい旨の決定をする(ステップS330)。なお、ステップS330の処理を行った後、踏切通過制御部152は、後述するように前進確認の段階に移行してよい。
(前進確認)
踏切通過制御部152は、仮想レーンVLに関する判定を完了すると、前進して列車の接近を確認するための制御(以下、前進確認と称する)を行う。図24は、前進確認について説明するための図である。
踏切通過制御部152は、例えば、踏切認識部132が認識処理を行っている間、自車両Mを初期停止位置に停止させる。初期停止位置は、自車両Mの前端が仮想線NEよりも手前側であり、且つ踏切認識部132の認識処理に支障が無い程度に仮想線NEに近づいた任意の位置である。
踏切通過制御部152は、初期停止位置で自車両Mが停止した後、確認限界位置(所定位置の一例)を限度として自車両Mを前進させる。この際の自車両Mの速度は、例えば10〜20[km/h]程度の低速に維持される。確認限界位置とは、仮に列車が通過しても自車両Mに接触しない位置である。踏切通過制御部152は、例えば、自車両Mの前端部と、自車両Mから見て最も手前側にある線路Rとの距離が所定距離D2に至ったときに、確認限界位置に到達したと判定する。踏切通過制御部152は、例えば、凹部判定部136の処理過程で得られる情報を援用して、線路Rの位置を認識する。
また、踏切通過制御部152は、自車両Mを前進させるのに前後して、列車接近判定部146に列車の接近の有無について判定を依頼する。列車接近判定部146は、自車両Mが前進している間、或いは前進した後に確認限界位置で停止した後、カメラ10、レーダ装置12、ファインダ14などの検知デバイスの検出結果を参照し、列車が所定程度以上接近しているか否かを判定する。「所定程度以上接近している」とは、例えば、自車両Mと列車の距離を列車の速度で除算した指標値(すなわち列車が到達するまでの時間)が閾値Th8以下であることである。
列車接近判定部146により、列車が所定程度以上接近していないと判定された場合、踏切通過制御部152は、自車両Mに踏切を通過させる。一方、列車接近判定部146により、列車が所定程度以上接近していると判定された場合、踏切通過制御部152は、自車両Mを停止させ(既に停止している場合は停止状態を維持させ)、或いは後退させる。
図25は、踏切通過制御部152および列車接近判定部146により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、踏切通過制御部152は、自車両Mに前進を開始させ(ステップS400)、列車接近判定部146に判定を依頼する(ステップS402)。
次に、踏切通過制御部152は、自車両Mが確認限界位置に到達したか否かを判定する(ステップS404)。自車両Mが確認限界位置に到達したと判定した場合、踏切通過制御部152は、自車両Mを停止させる(ステップS406)。
次に、踏切通過制御部152は、列車接近判定部146による判定結果が得られたか否かを判定する(ステップS408)。列車接近判定部146による判定結果が得られていない場合、ステップS404に処理が戻される。
列車接近判定部146による判定結果が得られた場合、踏切通過制御部152は、判定結果が、列車が所定程度以上接近していることを示すものであるか否かを判定する(ステップS410)。ステップS410において肯定的な判定を得た場合、踏切通過制御部152は、自車両Mを停止させ、または後退させる(ステップS412)。そして、ステップS410に処理が戻される。
ステップS410において否定的な判定を得た場合、踏切通過制御部152は、自車両Mが停止中であるか否かを判定する(ステップS414)。自車両Mが停止中である場合、踏切通過制御部152は、自車両Mを発進させて踏切を通過させる(ステップS416)。一方、自車両Mが停止中でない場合、踏切通過制御部152は、自車両Mの前進を継続させて踏切を通過させる(ステップS418)。ステップS416とS418のいずれの場合も、踏切通過制御部152は、仮想レーン設定部154により設定された(再設定も含む)仮想レーンVL上を走行するように、自車両Mの目標軌道を生成する。
係る処理によって、自車両Mが確認限界位置まで到達するまでに、列車が所定程度以上接近していない旨の判定結果が得られた場合、自車両Mは、確認限界位置で停止することなく、前進を継続して踏切を速やかに通過することができる。一方、自車両Mが確認限界位置まで到達するまでに判定結果が得られない場合、自車両Mは、確認限界位置で停止して列車の接近を適切に認識することができる。なお、これに代えて、自車両Mは、確認限界位置まで前進して必ず停止するものとしてもよい。この場合、確認限界位置で停止した状態で、列車の接近について判定を行うようにしてもよい。
以上説明した第1実施形態の車両制御装置によれば、カメラ10により撮像された画像に含まれる、踏み切りの存在を示す特定色の要素に基づいて踏切の存在について判定を行うことで、自車両Mの進行先に踏切が存在する確信度を高めることができる。
また、第1実施形態の車両制御装置によれば、自車両の進行方向において、進行方向に対して交差する方向に延在する凹部の存在を検知するための検知デバイス(カメラ10、ファインダ14)と、検知デバイスの出力に基づいて、進行方向に対して交差する方向に延在する凹部が存在するか否かを判定し、凹部が存在すると判定した場合、自車両Mの進行方向における踏切の存在を認識することで、自車両Mの進行先に踏切が存在する確信度を高めることができる。
また、第1実施形態の車両制御装置によれば、認識部130の認識結果に基づいて、自車両Mの進行方向に存在する踏切内の領域に仮想レーンVLを設定する仮想レーン設定部154を備え、自車両Mに仮想レーンVL内を走行させて踏切を通過させることにより、
自車両Mに踏切内を適切な経路で走行させることができる。
また、第1実施形態の車両制御装置によれば、自車両Mが踏切の手前で停止した後、自車両を前進させ、停止位置から前進した状態で、物体検出部(カメラ10、レーダ装置12、ファインダ14)の検出結果を参照して列車が所定程度以上接近しているか否かを判定し、列車が所定程度以上接近していないと判定された場合に、自車両Mに前記踏切を通過させることにより、より安全に、自車両Mに踏切を通過させることができる。
上記実施形態において、踏切通過制御部152は、踏切認識部132によって踏切の存在についての確信度が高められた場合に処理を開始するものとしたが、位置情報と第2地図情報62との比較によって自車両Mの進行方向に踏切が存在することが認識された場合に処理を開始してもよい。
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態の車両制御装置は、例えば、自車両の乗員が手動で行った操作に応じて、踏切における自動発進を支援する装置である。図26は、第2実施例に係る踏切自動発進支援装置400の構成図である。図中、第1実施形態と共通の周辺要素については同じ符号を付している。
踏切自動発進支援装置400は、例えば、踏切通過前状況認識部440と、踏切通過制御部452とを備える。踏切通過前状況認識部440は、踏切内走行可能領域認識部442と、物体判定部444と、列車接近判定部446とを備える。また、踏切通過制御部452は、仮想レーン設定部454を備える。これらの構成要素は、踏切通過前状況認識部140、踏切内走行可能領域認識部142、物体判定部144、列車接近判定部146、踏切通過制御部152、および仮想レーン設定部154と、それぞれ同様の機能を有する。
すなわち、踏切通過制御部452は、動作指示が入力されると、踏切通過前状況認識部440と協調して、第1実施形態の踏切通過制御部152と同様の処理を行う。踏切通過制御部452は、処理の結果に応じた前進指示、停止指示などを、走行駆動力出力装置200、またはブレーキ装置210に出力する。
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様、自車両Mに踏切内を適切な経路で走行させることができ、より安全に、自車両Mに踏切を通過させることができる。
<プロセッサのハードウェア構成>
図27は、車両制御装置(自動運転制御装置100または踏切自動発進支援装置400)のハードウェア構成の一例を示す図である。図示するように、車両制御装置は、通信コントローラ100−1、CPU100−2、ワーキングメモリとして使用されるRAM(Random Access Memory)100−3、ブートプログラムなどを格納するROM(Read Only Memory)100−4、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置100−5、ドライブ装置100−6などが、内部バスあるいは専用通信線によって相互に接続された構成となっている。通信コントローラ100−1は、車両制御装置以外の構成要素との通信を行う。記憶装置100−5には、CPU100−2が実行するプログラム100−5aが格納されている。このプログラムは、DMA(Direct Memory Access)コントローラ(不図示)などによってRAM100−3に展開されて、CPU100−2によって実行される。これによって、認識部130、行動計画生成部150、踏切通過前状況認識部440、および踏切通過制御部452のうち一部または全部が実現される。
上記実施形態は、以下のように表現することができる。
車両の周辺を撮像する撮像部と、
前記車両の位置を特定する位置特定部と、
プログラムを記憶した記憶部と、
前記プログラムを実行するハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサは、前記プログラムを実行することにより、
前記位置特定部により特定された位置と地図情報とに基づいて前記車両の進行先における踏切の存在を認識し、
前記撮像部により撮像された画像に含まれる、踏み切りの存在を示す特定色の要素に基づいて、前記車両の進行先に踏切が存在する確信度を高めるように構成されている、
車両制御装置。
また、上記実施形態は、以下のように表現することができる。
車両の進行方向において、前記進行方向に対して交差する方向に延在する凹部の存在を検知するための検知デバイスと、
プログラムを記憶した記憶部と、
前記プログラムを実行するハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサは、前記プログラムを実行することにより、
前記検知デバイスの出力に基づいて、前記進行方向に対して交差する方向に延在する凹部が存在するか否かを判定し、
凹部が存在すると判定した場合、前記車両の進行方向における踏切の存在を認識するように構成されている、
車両制御装置。
また、上記実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶部と、
前記プログラムを実行するハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサは、前記プログラムを実行することにより、
車両の周辺の状況を認識し、
認識結果に基づいて、前記車両の進行方向に存在する踏切内の領域に仮想レーンを設定し、
前記車両の操舵または加減速のうち一方または双方を制御し、前記車両に前記仮想レーン内を走行させて前記踏切を通過させるように構成されている、
車両制御装置。
また、上記実施形態は、以下のように表現することができる。
車両の周辺に存在する物体を検出する物体検出部と、
プログラムを記憶した記憶部と、
前記プログラムを実行するハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサは、前記プログラムを実行することにより、
前記車両が踏切の手前で停止した後、前記車両を前進させ、
前記車両が前記踏切の手前における停止位置から前進した状態で、前記物体検出部の検出結果を参照して列車が所定程度以上接近しているか否かを判定し、
列車が所定程度以上接近していないと判定された場合に、前記車両に前記踏切を通過させるように構成されている、
車両制御装置。
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。