JP6826397B2 - マイクロ波乾燥藍葉、その製造方法およびその用途 - Google Patents

マイクロ波乾燥藍葉、その製造方法およびその用途 Download PDF

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Description

本発明は、マイクロ波熟成乾燥藍葉、その製造方法およびその用途に関する。より詳細には、本発明は、生藍葉に30〜50℃、望ましくは40℃以下の低温下でマイクロ波を照射することにより、藍葉中の酵素を活性化、酵素反応を促進させ、酵素活性が高まった熟成藍葉を50℃以下の温度でマイクロ波減圧乾燥し、酵素活性が高まった状態を維持して乾燥することを特徴とする藍葉の低温マイクロ波熟成乾燥方法、およびマイクロ波熟成乾燥藍葉またはその粉末や抽出物とその用途に関する。
熟成とは生藍葉中の酵素がマイクロ波で活性化され、酵素反応が促進され、酵素活性が高まることを意味する。
天然色素である藍を用いた染毛剤として、2種類の乾燥藍葉のみを用いた染毛剤が開発されている(特許文献1)。生藍葉を加熱してインジカン分解酵素を失活させたインジカンを含有する乾燥藍葉粉末と、インジカン分解酵素を失活させることなく、50℃以下で低温乾燥させた藍葉粉末の二つの乾燥粉末の組み合わせからなる染毛剤である。インジカンを含有する乾燥藍葉粉末と酵素活性のある低温乾燥藍葉粉末および水を混合すると、乾燥藍葉中のインジカンが酵素分解されインドキシルとなって水に溶解する。このインドキシルが酸化されてインジゴになり、条件によってはインジルビン(赤色)などが副生成するので、赤、青、黄色が任意の組み合わせで混じった茶、藍、紫、黒色に染毛させることができる。酵素分解されたインドキシルが毛髪に結合して、洗髪後にインドキシルが酸化されたインジゴが、徐々に濃厚な色に変化し、染毛が定着される。
藍はタデ藍ともいわれ、古来から薬用植物として使用されていることが古文書(非特許文献1)に記載されているが、近年藍葉中に含まれる有用成分であるトリプタントリン(特許文献2)、イサチン(非特許文献2)の抗アレルギー活性、抗真菌活性、神経活性物質としての効能が注目されている。
一方、マイクロ波は、極性基を持つ分子や双極子モーメントの大きな化合物を直接加熱する。例えば、農作物の乾燥・蒸留では、マイクロ波が農産物の内部の水を直接加熱し、細胞壁を内部から破砕することで、乾燥効率や有用成分の抽出の点で優れていることや、熱影響が小さく、例えば、内部のビタミンC等の栄養成分の分解が少なく、栄養価にとんだ乾燥葉を得ることが可能である。また、植物内部が加熱されるために、成分の抽出が容易で、例えば、藍葉中に含まれる有用成分、トリプタントリンをマイクロ波照射下で溶媒抽出すると迅速に抽出できる(特許文献2)。
酵素の活性部位はアミノ酸などで有り、マイクロ波で容易に加熱され、活性化される。例えば、イースト菌を用いたパン生地を電子レンジに入れ、100~200Wで30秒程度加熱して、濡らしたペーパータオルで包み、10分程度放置すると発酵し、大きく膨らみ、オーブンで焼くとパンが簡単にできることが知られている(非特許文献3)。
また、マイクロ波照射装置として、釜の内部構造を対象物の性状、量にあわせて変更可能とし、撹拌機能を有することで多用途に用いることができるマイクロ波照射装置(特許文献3)が知られており、さらに、互いに向かい合わない複数方向からマイクロ波を照射し、回転反射盤を使用することで、マイクロ波の干渉を抑制し、高い均熱性を確保したマイクロ照射装置(特許文献4)では、被照射物の温度を測定することが可能な複数のセンサの検出値に基づき、3個の照射部から照射されるマイクロ波の出力を制御する。
国際公開第2014/104301号 特開2009−149596号公報 特開2014−196896号公報 国際公開第2015/199005号
医色同源:岩城完三他、日本文教出版株式会社 日薬理誌(1999)Vol.114,補冊1.p.186-191 ブックマン社「村上祥子の電子レンジで楽々パン作り」
乾燥藍葉の主要な用途に染毛剤がある。染毛剤として使用するには、染色成分を含む乾燥葉と酵素を含む自然乾燥葉の2種類の藍葉が必要となる。酵素を含む乾燥葉の作成には、主として自然乾燥、場合により低温乾燥が用いられていたが、いずれにしても乾燥に時間を要し、かつ、酵素活性が弱く、染毛に時間がかかるなどの問題があった。
そこで、本発明は、酵素活性が高い状態で酵素を含む乾燥藍葉を提供すること、該乾燥藍葉を効率よく製造する方法を開発することを目的とする。
また、本発明は、インジカン分解酵素の活性が高められた状態で維持された乾燥藍葉に着目して、その用途を開発することを目的とする。より詳細には、染毛、染色用、または沈殿藍用に適した乾燥藍葉を提供することを目的とする。
さらにまた、本発明は、インジカン分解酵素の活性が高められるだけでなく、タデ藍の主要な生理活性物質に着目して、その用途を開発することを目的とする。より詳細には、医薬品用、化粧品用、石鹸用、染色用、または機能性食品用沈殿藍に適した乾燥藍葉を提供することを目的とする。
藍葉を加熱してインジカン分解酵素を失活させたインジカンを含有する乾燥藍葉粉末と、インジカン分解酵素を失活させることなく、50℃以下で乾燥させた藍葉粉末の二つの乾燥粉末の組み合わせからなる染毛剤を製造するに際し、50℃以下の低温乾燥として自然乾燥あるいは定温乾燥機を用いると、乾燥に数日要し、また、得られた乾燥藍葉のインジカン分解酵素の活性がいずれも低く、染毛時に発色時間が長くなり、また、発色がばらつくなどの問題があった。
藍葉を低温乾燥させる前に、大気圧下、マイクロ波照射下、40℃以下の条件で熟成すると、藍葉が緑色から濃緑色に変化し、インジカンが無くなり、インジゴとなっていることを認め、この熟成藍葉を低温マイクロ波減圧乾燥した結果、本乾燥藍葉にはインジカン分解酵素(β-グルコシダーゼ)の高い活性度を保持したまま乾燥藍葉が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、このように低温マイクロ波熟成藍葉は、インジカン分解酵素の活性が高められるだけでなく、タデ藍の主要な生理活性物質であり、抗菌活性、抗アレルギー活性を有するトリプタントリンおよび神経活性物質であるイサチンが自然乾燥葉の1.5〜66倍以上もの高濃度で含有することが確認された。
よって、本発明は、そのままの状態ではもちろんのこと、水等の溶媒で抽出した藍エキスや沈殿藍等が、機能性食品、化粧品、石鹸および医薬品としての用途にも用いられる高機能性乾燥藍葉、その粉末およびその抽出物を提供するに至った。
本発明の第1の発明は、生藍葉中の酵素がマイクロ波で活性化され、酵素反応が促進され、高まった酵素活性が維持された状態で乾燥されている、インジカン分解酵素活性が自然乾燥葉に比べて1.3倍以上高いことを特徴とするマイクロ波熟成乾燥藍葉である。
本発明の第2の発明は、生藍葉を30〜50℃、望ましくは40℃以下に制御しながらマイクロ波を照射し、藍葉内の酵素を活性化するとともに酵素反応を促進し、その後50℃以下の温度でマイクロ波減圧乾燥したことを特徴とする乾燥藍葉の製造方法である。
本発明の第3の発明は、上記の乾燥藍葉に、藍葉中の酵素が失活している乾燥藍葉を混合したことを特徴とする乾燥藍葉組成物である。
本発明の第4の発明は、上記の乾燥藍葉組成物に、2〜20倍の水を加えてペースト状にし、髪に塗布した後洗髪すること特徴とする染毛方法である。
本発明の第5の発明は、上記の乾燥藍葉組成物に5〜50倍の水を加え、良くもみ、色素を水に抽出した後、藍葉をろ別した溶液中に、布を入れ、染色することを特徴とする染色方法である。
本発明の第6の発明は、上記の乾燥藍葉組成物を水に懸濁した水溶液に、石灰を加え、空気酸化させることを特徴とする、医薬品用、化粧品用、石鹸用、染色用、または機能性食品用沈殿藍の調製方法である。
低温マイクロ波熟成乾燥葉と自然乾燥葉中に含まれるインジゴ濃度/イサチン濃度の関係の測定結果をグラフにしたものである。横軸は実施例1、2の実験例の番号で、縦軸はインジゴ濃度/イサチン濃度。
藍はタデ藍ともいわれ、タデ科イヌタデ属の一年生植物であり、水耕または露地栽培される。藍葉にはグルコースの付いたインジカンが含まれており、葉に水が供給されなくなると、インジカン分解酵素が働き、インドキシルとして溶解してくる。このインドキシルが酸化されインジゴになる。条件によってはインジルビン(赤色)などが副生成する。インドキシルは、空気にさらすなど穏やかに酸化すると、インドキシルの2分子が酸化的に結合してインジゴ(青色)に変換される。一方、インジルビンはインジゴの異性体であり、インドキシルが単分子的に酸化されてイサチンができると、未酸化のインドキシルと結合してインジルビンができる。一般に、インドキシルからインジルビンを多く生成させる条件は、pH10〜12のアルカリ性条件や高温が好ましい。紫色は、このインジゴとインジルビンが混ざった色であり、単一の紫色素ではない。赤味か青味の紫になるかは、インドキシルから、ニ方向の酸化のどちらが起こりやすいかによって決まる。
藍葉中の酵素を失活させるブランチングにおいては、水の存在する系と存在しない系では、インジルビンの生成が異なる。熱水系あるいは高温蒸気系ではブランチング過程でインジルビンが生成しているが、水を加えない熱風系およびマイクロ波加熱ブランチング系ではインジルビンの生成は認められず、水の存在下でブランチングした系の乾燥藍葉で染毛した場合、紫色に染毛された。
特許文献1に記載の2種類の乾燥藍葉とは、素早く酵素を失活させてインジカンを閉じ込めた乾燥藍葉粉末に、酵素活性を有する乾燥藍葉粉末中の酵素を作用させて染毛するものである。藍葉中に存在する酵素のうち、インジカンを分解してインドキシルを生成するインジカン分解酵素の活性が染毛のために重要である。酵素活性を有する藍葉の50℃以下での乾燥法として、室温で乾燥する自然乾燥法や定温乾燥機による低温乾燥法を用いているが、時間がかかるうえ、酵素活性を測定した結果、低温乾燥法で得られた乾燥藍葉のインジカン分解酵素の活性が低かった。
本発明の藍葉のマイクロ波熟成乾燥法は、生藍葉に温度を30〜50℃、望ましくは40℃以下に制御しながらマイクロ波照射して、酵素を活性化するとともに、酵素反応を促進、熟成して藍葉を熟成させた後、50℃以下の温度で乾燥する方法である。活性化される酵素には、インジカン分解酵素だけでなく、藍葉中に含まれる有用成分であるトリプタントリンやイサチンを合成する酵素が含まれる。藍葉あるいは沈殿藍からトリプタントリンを抽出することは特許文献2に示されているが、本発明のマイクロ波熟成乾燥藍葉はそのような抽出法の原料として最適である。
低温マイクロ波熟成乾燥は、まず、生藍葉の温度を30〜50℃に温度制御しながら、1〜60分間マイクロ波照射して、生藍葉中のインジカン分解酵素を活性化させて、酵素反応を促進して藍葉を熟成させる。藍葉中の酵素は30〜40℃で活発化し、50℃を超えると活性が落ちるので、40℃以下の温度がよく、好ましくは35℃〜40℃に温度制御する。マイクロ波照射熟成の間、藍葉の重量はほとんど変化しない。生藍葉の温度は、光ファイバー温度計で測定したり、特許文献4に記載の被照射物の温度を測定することが可能な複数のセンサを有するマイクロ波照射装置を用い、空気を移動させて測定する。マイクロ波照射は、大気圧下か、微減圧下でマイクロ波照射する。微減圧下では気流が確保されて均一に加熱されるというメリットがある。なお、低温でマイクロ波加熱する場合、マイクロ波出力および加熱時間(デュティ比を下げ)を低く抑え、低温・均一加熱下で熟成処理する。また、熟成処理は減圧下ではなく、酸素が多く存在する大気圧近辺で処理する。生成したインドキシルの酸化によるインジゴの生成は酸素が必要で有る。逆に、真空中もしくは不活性ガス雰囲気下で熟成処理をすることで、インジルビンを多く含む熟成乾燥藍葉も作成可能である。
さらに、マイクロ波照射の前に、生藍葉をみじん切りにして葉の面積を増やすことにより、酵素と基質(インジカン)の接触効率が高まり、酵素反応が活発化するので好ましい。生藍葉をみじん切りにした場合には、生藍葉重量の約10%程度の水を加えて、酵素とインジカンとの接触をさらに効率的に行わせながら、マイクロ波照射するとよい。
マイクロ波照射による熟成後、活性化酵素を含有する藍葉を50℃以下の温度で、マイクロ波減圧乾燥法で素早く乾燥させ、酵素活性を維持した状態にする。酵素は水が少なくなると活動を停止し、活性なまま閉じ込められるので、マイクロ波減圧乾燥法で素早く乾燥させることが望ましい。葉の重量が60%程度まで減少するまでマイクロ波減圧乾燥を行う。なお、マイクロ波熟成後、40℃以下の定温乾燥あるいは自然乾燥でもよいが、若干酵素活性が低下する。
マイクロ波熟成、減圧乾燥後、さらに乾燥藍葉の重量減少がなくなるまで完全に乾燥して、水分をなくして酵素の活動を停止させて粉末化する。乾燥方法は、たとえば、自然乾燥、40℃でのマイクロ波減圧乾燥、40℃での定温乾燥が適用できる。
このように製造したマイクロ波熟成乾燥藍葉粉末を染毛に用いる場合には、酵素を失活させてインジカンを閉じ込めた乾燥藍葉粉末と、1:1から1:20、望ましくは1:1〜1:5の割合で混合する。2〜20倍の水を加えてペースト状にして良くもんで、インドキシルを生成させた後、髪に塗布して5〜15分以上経過後、洗髪する。染色に用いる場合には、同じく1:1から1:20の割合で2種類の乾燥藍葉を混合後、5〜6倍の水を加えて良くもんで色素を水に抽出させてから、藍葉をろ別して染色溶液とし、布を入れて染色する。
沈殿藍用とする場合には、2種類の乾燥藍葉粉末を水に懸濁した水溶液に、石灰を加えてアルカリ性して、空気酸化によりインジゴを生成させ、そのまま静置してインジゴを沈殿させて上澄み液を除去して、藍色の沈殿藍を調製する。そのまま、あるいは乾燥して藍染め染色に用いるだけでなく、青色の着色料として、かつ、抗菌活性、抗アレルギー活性を有するトリプタントリンおよび神経活性物質であるイサチンが多く含まれているので、そのまま食する青色の機能性食品として、または石鹸、化粧品および抗菌、抗アレルギー、神経活性物質としての医薬品とすることが可能である。低酸素もしくは不活性ガス雰囲気下で同様の処理をすると、インジルビンを多く含む沈殿藍の調製も可能である。
また、マイクロ波熟成乾燥藍葉、または、水および/または溶媒で抽出した抽出物には青色でないが、抗菌活性、抗アレルギー活性を有するトリプタントリンや神経活性物質であるイサチンが高濃度で含有されている。よって、高機能性乾燥藍葉またはその抽出物は、機能性食品素材、化粧品素材および抗菌、抗アレルギー、またはパーキンソン病等に効果のある神経活性物質としての医薬品素材(原料)として使用できる。
乾燥藍葉、または、水および/または溶媒で抽出した抽出物を飲食品用、化粧品用、医薬品用に用いることは、すべて公知の用途であり、マイクロ波熟成乾燥藍葉に機能性成分が多いことを考慮する以外は、同様に普通の使い方がなされる。医薬品の場合、カプセルや粉末、錠剤などとして経口投与することができ、投与量は症状の度合いや体重、年齢、性別などにより異なるものであり、使用に際して適当な量を症状に応じて決めることが望ましい。医薬品における配合量は特に制限はされないが、なお、本発明の藍葉は漢方薬の原料として用いられており、安全性が高いものである。
本発明の機能性食品は、特定の疾病などを予防する健康食品、予防医薬品の分野の利用に適している。特定の疾病を予防する健康食品においては、必須成分である乾燥藍葉またはその抽出物の他に、任意的成分として、通常食品に添加されるビタミン類、炭水化物、色素、香料など適宜配合することができる。食品は液状または固形の任意の形態で食することができる。ゼラチンなどで外包してカプセル化した軟カプセル剤として食することができる。
本発明の医薬品、薬剤においては、出願前公知の通常の使用態様を含み、乾燥藍葉粉末または抽出物を単独で製剤として用いることができるほか、製薬上使用できる担体もしくは希釈剤を加えた製剤組成物に加工したものを用いることもできる。このような製剤または薬剤組成物は、経口または非経口の経路で投与することができる。製剤または薬剤組成物の正確な投与量は、その目的とする使用形態および処置時間により変化するため、担当の医師または獣医が適当であると考える量になる。服用および投与用量は製剤形態によって適宜調整できる。
本発明の乾燥藍葉に多く含まれるトリプタントリンの抗アレルギー作用、抗真菌作用を利用する皮膚外用剤、すなわち治療薬、皮膚外用剤、化粧料等が知られている。肌荒れ、荒れ性に対して改善・予防効果を有する皮膚外用剤を提供することができる。本発明の皮膚外用剤には、乾燥藍葉または抽出物を必須成分とし、それ以外に、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば水性成分、油性成分、粉末成分、アルコール類、保湿剤、増粘剤、紫外線吸収剤、美白剤、防腐剤、酸化防止剤、界面活性剤、香料、色剤、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。本発明の皮膚外用剤は、例えば軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、浴用剤等、従来の皮膚外用剤に用いられる形態であればいずれでもよく、剤型は特に問わない。
以下、本発明の詳細を実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。
乾燥藍葉粉末に含まれるインジカン分解酵素の酵素活性と各染色成分等の濃度を、以下の測定方法、測定キットを用いて測定する。
[酵素活性測定]
乾燥葉抽出液のβ−グルコシダーゼ活性(インジカン分解酵素活性)は、以下の手順で測定する。測定値は、3回の平均値を求めて結果の値とした(n=3)。
(1)乾燥葉粉末0.5gにイオン精製水40mlを加え、室温で3時間以上撹拌し、藍葉抽出液を得る。
(2)p-ニトロフェニル β-D-グルコピラノシド(β-NPG)75.31mgにイオン精製水を加えて10mlにして25mM β-NPG溶液を調製する。
(3)25mM β-NPG基質水溶液8μlを200μlのバッファー溶液に溶かして基質反応溶液を調製する。
(4)測定試料は、ウエルに20μl注入し、基質反応溶液200μlを加える。陽性対照試料は、イオン精製水20μlに、タートラジンからなる標準溶液10ml(250U/L相当)200μlを加える。陰性対照試料は、イオン精製水220μlをウエルに注入する。
(5)加える試料と試薬類を37℃でインキュベーションしておき、各試料をウエルに仕込んだ後(37℃)、マイクロプレートリーダーを用いて、0分後と20分後の吸光度(405nm)を測定する。
(6)20分後のODから0分後のODを差し引いた値を、陽性対照試料のODから陰性対照試料のODを差し引いた値で割り、250(U/L)を掛けた値が、酵素活性値(U/L)となる。酵素活性値(U/kg)は、酵素活性値(U/L)に80を乗じて計算する。
[染色成分等の定量]
乾燥葉に含まれる染色成分は、乾燥葉粉末0.5gに、DMSO 40mlを加え、MW出力500W、60℃、15分間撹拌して抽出する。得られた抽出液をシリンジフィルターでろ過し、インジカン、イチサン、インジゴ、インジルビン、トリプタトリンのHPLC分析による定量を行う。
HPLC分析では、Inertsil ODS-3Vカラムを使用する。溶離液は、アセトニトリル水溶液を40℃、1.0ml/分の流量で流す。溶離液のグラジエントプログラムは、15%(0分);85%(15分);85%(20分)である。測定波長は、インジカン測定時に215〜230nm、イサチン、インジゴ、インジルビン、トリプタントリン測定時に290〜310nmを使用する。
水耕栽培していたタデ藍の品種「千本」を刈り取りって、藍葉の軸を取ってから脱水のためによく水切りした。その生藍葉を、(1)室内でそのまま数日間乾燥した(自然乾燥葉)、(2)定温乾燥機に入れ、40℃で1〜2日乾燥した(定温乾燥葉)、(3)特許文献3に記載の撹拌機能付の大量処理のできるマイクロ波照射装置に入れ、40℃で30分間0.09MPaの減圧下でマイクロ波を照射して熟成し、マイクロ波減圧乾燥により葉の重量を約60%減少させた後、定温乾燥機に入れ40℃で乾燥した(マイクロ波熟成乾燥葉)。
これら3種類の乾燥葉を、それぞれピンミルで粉砕し、粉末化した乾燥葉粉末0.5gにイオン精製水40mlを加え、室温で3時間以上撹拌し、藍葉抽出液を得、抽出液中の酵素活性を測定した。また、3種類の乾燥粉末の一定量にそれぞれDMSOを加えて、マイクロ波法で溶解し、各乾燥葉に含まれるトリプタントリンの濃度をHPLCで分析した。乾燥藍葉粉末中の酵素活性(U/kg)とトリプタントリンの濃度(ppm)の測定結果を表1に示す。
マイクロ波熟成乾燥葉のインジカン分解酵素活性は、自然乾燥葉の14倍高くなっており、トリプタントリン濃度も、自然乾燥葉および定温乾燥葉の10倍以上高くなっていた。
マイクロ波熟成乾燥葉の酵素活性、トリプタントリン濃度が、自然乾燥葉や定温乾燥葉のものに比べて大幅に増加することがわかった。次に、生藍葉に傷をつけたり、マイクロ波熟成乾燥の条件や使用するマイクロ波照射装置により、酵素活性、トリプタントリン濃度、さらには、インジカン、イサチン、インジゴ、インジルビン濃度がどのように変化するかについて実験した。
刈り取った藍葉の軸を取ってから、脱水のためによく水切りした。対照は、自然乾燥のみの室温乾燥(比較例1)とした。
まず、マイクロ波照射装置として、撹拌機能のないキャビティ型装置(SMW107、最大出力1.5kw)を用い、キャビティ内に1〜2lの容量のガラス容器を入れて、その中に50gほどの生藍葉と若干量の水を入れてマイクロ波照射した。温度40℃のマイクロ波照射による熟成時間と40〜45℃のマイクロ波減圧乾燥による加熱時間を変化させた。加熱後の乾燥は、40℃の定温乾燥で行った(実験例1〜6)。
水耕藍葉の品種千本を、水耕場所の3つの異なる場所から刈り取った。(水耕1〜3)
実験例1 水耕1の藍葉、熟成 15分、加熱 20分
実験例2 水耕1の藍葉、熟成 30分、加熱 20分
実験例3 水耕2の藍葉、熟成 30分、加熱 なし
実験例4 水耕2の藍葉、熟成 30分、加熱 20分
実験例5 水耕3の藍葉、熟成 60分、加熱 10分
実験例6 水耕3の藍葉、熟成 30分、加熱 7分
比較例1 水耕1の藍葉 室温乾燥
次に、特許文献3に記載の撹拌機能付の大量処理のできるマイクロ波照射装置(四国計測工業株式会社製)を用いた。容量が最大160lの釜の中に直接マイクロ波を照射でき、1回の処理で生藍葉4〜5kgをマイクロ波処理可能であり、最大出力は、18kWである。
刈り取った生藍葉の軸を取って水切りした後、藍葉はザルに2、3kg入れて多段にセットし、12rpmでゆっくり回転させながら、36〜40℃の温度で30分間マイクロ波照射して熟成させた。熟成後、40〜45℃で0.01MPaの減圧下でマイクロ波減圧乾燥させた後、定温乾燥機に入れて40℃で乾燥した。実験例7〜10は、同じ条件で日を変えて4回マイクロ波熟成乾燥させたものである。
比較例2は、熟成なしで、40〜45℃で0.01MPaの減圧下でマイクロ波減圧乾燥させた後、定温乾燥機に入れて40℃で乾燥したものである。
実験例11は、刈り取った藍葉の軸を取ってから、脱水のためによく水切りして、カッターでみじん切りにしてから、実験例7〜10と同じ条件で、熟成乾燥させたものである。
実験例1〜11および比較例1、2の乾燥藍葉の、酵素活性、トリプタントリン、インジカン、イサチン、インジゴ、インジルビン濃度は、以下の表2のとおりである。
実験例1〜10では、比較例1、2に比べ、インジカン分解酵素活性が1.3倍以上高くなり、特に、撹拌機能付の大量に処理できるマイクロ波照射装置を使用すると、酵素活性が顕著に高まった。インジカン分解酵素活性は、室温乾燥のものの1040(U/kg)に比べ、1389〜13851(U/kg)にもなっており、1.3倍から13倍以上高くなっている。また、トリプタントリンおよびイサチンを合成する酵素の活性も高まったことから、実験例7〜10ではトリプタントリン濃度は、熟成工程のない比較例2の245(ppm)に比べ、376〜2124(ppm)になっており、1.5倍から9倍高くなっている。
同様に、イサチン濃度も実験例1〜11の全てで、顕著に高くなる。比較例1の56(ppm)に比べ、283〜3688(ppm)と高くなり、5倍から66倍高くなる。その結果、インジカンが酵素分解されたインドキシルが酸化されて生成されるインジゴおよびイサチンの量比も変化し、インジゴ濃度/イサチン濃度は、比較例1の自然乾燥葉では112であるのに対して、実験例1〜11では、いずれも40以下となっている。図1は、インジゴ濃度/イチサン濃度を縦軸にして、実験例の番号を横軸に示したものである。比較例1を室温乾燥としてプロットした。
また、実験例11のように、生藍葉にみじん切り等の物理的処理を施して藍葉を傷つけてから熟成すると、酵素活性がより高まることが確認された。
生藍葉として、露地栽培の品種「小上粉」を使用した。刈り取った藍葉をよく洗って軸をとり、脱水のためによく水切りした。実施例2と同様に、藍葉はザルに2.3kg入れて多段にセットし、12rpmでゆっくり回転させながら、36〜40℃の温度で30分間マイクロ波照射して熟成させた。熟成後、40〜45℃で0.01MPaの減圧下でマイクロ波減圧乾燥させた後、定温乾燥機に入れて40℃で乾燥した。対照として、熟成なしで、40〜45℃で0.01MPaの減圧下でマイクロ波減圧乾燥させた後、定温乾燥機に入れて40℃で乾燥した。
マイクロ波照射により熟成させた乾燥藍葉粉末中の酵素活性は、対照のものより高く、トリプタントリン濃度の高かった。
[まとめ]
以上の通り、本発明は、(1)生藍葉中の酵素がマイクロ波で活性化され、酵素反応が促進され、高まった酵素活性が維持された状態で乾燥されたマイクロ波熟成乾燥藍葉、および(8)生藍葉を30〜50℃に制御しながらマイクロ波を照射し、藍葉内の酵素を活性化するとともに酵素反応を促進し、その後50℃以下の温度でマイクロ波減圧乾燥したことを特徴とするマイクロ波熟成乾燥藍葉の製造方法であり、本発明によれば、生藍葉に温度を30〜50℃に制御しながらマイクロ波照射することにより、藍葉中の酵素、インジカン分解酵素等を活性化するとともに、酵素反応を促進、熟成した藍葉中には、低温乾燥葉、自然乾燥葉と比べて1.3倍〜10倍以上高いインジカン分解酵素活性を持った乾燥藍葉を提供でき、その乾燥葉を染毛剤や染色材料として用いると素早くインジカンが分解し、インドキシルが生成するため、短時間に染毛、染色ができる、また、タデ藍の主要な生理活性物質であり、抗菌活性、抗アレルギー活性を有するトリプタントリンおよび神経活性物質であるイサチンが1.5〜66倍もの高濃度で含有することが確認され、本発明の高機能性乾燥藍葉または抽出物は、そのまま食することができる機能性食品や、化粧品および医薬品素材として使用でき、さらに、本発明の高機能性乾燥藍葉粉末または抽出物は、イサチン含量も高いため、パーキンソン病等に効果のある神経活性物質として用いられる可能性もあるという効果を奏するとともに、以下の(2)ないし(7)および(9)ないし(14)の態様を包含する。
(2)インジカン分解酵素活性、イサチン含有量、およびトリプタントリン含有量からなる群のいずれか一以上が、自然乾燥葉に比べて高いことを特徴とする上記(1)に記載したマイクロ波熟成乾燥藍葉。
(3)インジカン分解酵素活性が自然乾燥葉に比べて1.3倍以上高いことを特徴とする上記(1)または(2)に記載したマイクロ波熟成乾燥藍葉。
(4)イサチンの含有量が自然乾燥葉に比べて2倍以上増加している、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のマイクロ波熟成乾燥藍葉。
(5)トリプタントリンの含有量が自然乾燥葉に比べて1.5倍以上増加している、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の乾燥藍葉。
(6)食品素材用、化粧品素材、または医薬品素材である、上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のマイクロ波熟成乾燥藍葉。
(7)上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のマイクロ波熟成乾燥藍葉を水および/または溶媒で抽出したことを特徴とする乾燥藍葉抽出物。
(9)生藍葉がみじん切りした生藍葉である、(8)に記載のマイクロ波熟成乾燥藍葉の製造方法。
(10)上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のマイクロ波熟成乾燥藍葉に、藍葉中の酵素が失活している乾燥藍葉を混合したことを特徴とする乾燥藍葉組成物。
(11)藍葉中の酵素が失活している乾燥藍葉が、生藍葉が70℃以上の温度で加熱処理され、その後で乾燥されたものである、上記(10)に記載の乾燥藍葉組成物。
(12)染毛、染色用、または沈殿藍用である、上記(10)または(11)に記載の乾燥藍葉組成物。
(13)上記(12)に記載の乾燥藍葉組成物に、2〜20倍の水を加えてペースト状にし、髪に塗布した後洗髪すること特徴とする染毛方法。
(14)上記(12)に記載の乾燥藍葉組成物に5〜50倍の水を加え、良くもみ、色素を水に抽出した後、藍葉をろ別した溶液中に、布を入れ、染色することを特徴とする染色方法。
(15)上記(10)ないし(12)のいずれかに記載の乾燥藍葉組成物を水に懸濁した水溶液に、石灰を加え、空気酸化させることを特徴とする、医薬品用、化粧品用、石鹸用、染色用、または機能性食品用沈殿藍の調製方法。
本発明は、藍葉を低温マイクロ波熟成乾燥することにより、高機能性乾燥藍葉およびその粉末を製造でき、藍葉粉末を多くの有益な用途に用いることができるという付加価値を与えるものである。
生藍葉にマイクロ波照射することで、藍葉中の酵素を活性化するとともに、酵素反応を促進・熟成して藍葉を熟成させることのできるマイクロ波熟成乾燥法を完成させることができた。この方法によれば、熟成乾燥が短時間で行え、しかも、インジカン分解酵素の活性が高められるだけでなく、タデ藍の主要な生理活性物質であり、抗菌活性、抗アレルギー活性、抗腫瘍活性を有するトリプタントリン、イサチンが1.5〜66倍以上の高濃度で含有することが確認された。本発明は、そのまま食することもできる機能性食品、化粧品、石鹸および医薬品としての用途にも用いられる高機能性乾燥藍葉粉末を提供し、さらに、藍葉中の酵素を失活させた乾燥藍葉粉末と混合した組成物は、染毛剤、染色剤としてだけでなく、沈殿藍用としてそれを添加した石鹸、クリーム等の化粧品は、アトピー性皮膚炎に効くことが期待され、また、青色に着色され、かつ生薬としての機能を有する機能性食品も製造できる。
また、熟成乾燥藍葉をアルコールなどで抽出すると、高機能成分を多く含んだ藍エキスが得られ、多方面に利用可能となる。
さらに、高トリプタントリン含量により、沈殿藍で染色した布は、アトピー性皮膚炎に効能のある布となり、また、染毛時には頭皮を保護するという効果も生じる。トリプタントリン含有量が高い乾燥藍葉を沈殿藍用として用いると、それを添加した石鹸、クリーム等の化粧品は、アトピー性皮膚炎に効き目があるので効能が高まる。
また、イサチン含量も高いため、パーキンソン病等に効果のある神経活性物質として用いられる可能性もある

Claims (14)

  1. 生藍葉中の酵素がマイクロ波で活性化され、酵素反応が促進され、高まった酵素活性が維持された状態で乾燥されている、インジカン分解酵素活性が自然乾燥葉に比べて1.3倍以上高いことを特徴とするマイクロ波熟成乾燥藍葉。
  2. イサチン含有量および/またはトリプタントリン含有量が自然乾燥葉に比べて高い請求項1に記載したマイクロ波熟成乾燥藍葉。
  3. イサチンの含有量が自然乾燥葉に比べて2倍以上増加している、請求項1または2に記載のマイクロ波熟成乾燥藍葉。
  4. トリプタントリンの含有量が自然乾燥葉に比べて1.5倍以上増加している、請求項1ないしのいずれかに記載のマイクロ波熟成乾燥藍葉。
  5. 食品素材用、化粧品素材、または医薬品素材である、請求項1ないしのいずれかに記載のマイクロ波熟成乾燥藍葉。
  6. 請求項1ないしのいずれかに記載のマイクロ波熟成乾燥藍葉を水および/または溶媒で抽出したことを特徴とする乾燥藍葉抽出物。
  7. 生藍葉を30〜50℃に制御しながらマイクロ波を照射し、藍葉内の酵素を活性化するとともに酵素反応を促進し、その後50℃以下の温度でマイクロ波減圧乾燥したことを特徴とするマイクロ波熟成乾燥藍葉の製造方法。
  8. 生藍葉がみじん切りした生藍葉である、請求項に記載のマイクロ波熟成乾燥藍葉の製造方法。
  9. 請求項1ないしのいずれかに記載のマイクロ波熟成乾燥藍葉に、藍葉中の酵素が失活している乾燥藍葉を混合したことを特徴とする乾燥藍葉組成物。
  10. 藍葉中の酵素が失活している乾燥藍葉が、生藍葉が70℃以上の温度で加熱処理され、その後で乾燥されたものである、請求項に記載の乾燥藍葉組成物。
  11. 染毛、染色用、または沈殿藍用である、請求項または10に記載の乾燥藍葉組成物。
  12. 請求項1に記載の乾燥藍葉組成物に、2〜20倍の水を加えてペースト状にし、髪に塗布した後洗髪すること特徴とする染毛方法。
  13. 請求項11に記載の乾燥藍葉組成物に5〜50倍の水を加え、良くもみ、色素を水に抽出した後、藍葉をろ別した溶液中に、布を入れ、染色することを特徴とする染色方法。
  14. 請求項ないし11のいずれかに記載の乾燥藍葉組成物を水に懸濁した水溶液に、石灰を加え、空気酸化させることを特徴とする、医薬品用、化粧品用、石鹸用、染色用、または機能性食品用沈殿藍の調製方法。
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