JP6825673B1 - ダンボール材 - Google Patents

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Abstract

【課題】製函システムへのダンボール材の搬送性を向上させる。【解決手段】蛇腹折りのダンボール材1は、連続する両面ダンボールにおいて矩形状のシート2が第一方向CDに沿って直線状に延在する折目Fのそれぞれにおいて第二方向MDへ折り返され、第三方向TDに沿ってシート2が積み重ねられている。このシート2は、JSC T0005:2000に準拠して測定された、不連続なシート2の表ライナどうしが接するようにシート2を積み重ねた際の第二方向MDに対応する方向の滑り角度が17[°]以上であって30[°]以下であり、JSC T0005:2000に準拠して測定された、不連続なシート2の裏ライナどうしが接するようにシート2を積み重ねた際の第二方向MDに対応する方向の滑り角度が17[°]以上であって30[°]以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、蛇腹折りのダンボール材に関する。
製函用資材として、蛇腹折り(「ファンフォールド」とも称される)のダンボール材が知られている。ダンボール材には連続する矩形状のシート間に折目が設けられ、この折目でシートが交互に折り返されている。このような蛇腹折りのダンボール材では、連続するシートが上下に積み重ねられ、直方体状の荷姿に折り畳まれている。
上記のダンボール材は、包装対象のサイズに応じて最適な大きさの箱を製造する製函システム(「自動包装システム」や「三辺可変システム」,「三辺自動梱包」,「オンデマンド包装」などとも称される)の包装資材に用いられる。ダンボール材は、シートが蛇腹折りに積み重ねられた状態で製函システムの所定位置へ搬送される。この製函システムでは、搬送されたダンボール材に対して、以下に例示する各種の工程が実施される。
・フィード工程:蛇腹折りのダンボール材を繰り出す工程
・ カット工程 :フィード工程で繰り出された平面状のダンボール材を切り出す工程
・フォールド工程:カット工程で切り出されたダンボール材から箱を組み立てる工程
・プリント工程:平面状もしくは組み立てられたダンボール材に印刷を施す工程
・ 荷詰め工程 :組み立てられる箱に内容物を収容する工程
特表2013-513869号公報
しかしながら、蛇腹折りのダンボール材に用いられるシートの性状によっては、製函システムへのダンボール材の搬送性が損なわれることがある。
本件は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、製函システムへのダンボール材の搬送性を向上させることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
ここで開示するダンボール材は、連続する両面ダンボールにおいて矩形状のシートが第一方向に沿って直線状に延在する折目のそれぞれにおいて前記折目の沿う平面で前記第一方向に直交する第二方向へ折り返され、前記第一方向および前記第二方向の双方に直交する第三方向に沿って前記シートが積み重ねられた蛇腹折りのダンボール材である。本件のダンボール材は、JSC T0005:2000に準拠して測定された、不連続な前記シートの表ライナどうしが接するように前記シートを積み重ねた際の前記第二方向に対応する方向の滑り角度が17[°]以上であって30[°]以下であり、JSC T0005:2000に準拠して測定された、不連続な前記シートの裏ライナどうしが接するように前記シートを積み重ねた際の前記第二方向に対応する方向の滑り角度が17[°]以上であって30[°]以下である。
本件によれば、製函システムへのダンボール材の搬送性を向上できる。
蛇腹折りのダンボール材を示す斜視図である。 蛇腹折りのダンボール材に用いられたシートにおける段目の一例を示す模式図である。 ダンボール材の折目を示す平面図である。 折目の凹部と凸部を示す側面図である。 ダンボール材の折目の角度を示す平面図である。
以下、実施形態としてのダンボール材およびダンボール箱を説明する。
本実施形態のダンボール材は、連続するダンボールにおいて矩形状のシートが折り畳まれた蛇腹折りの製函用資材である。このダンボール材には、中芯に対して両側にライナが設けられた両面ダンボールが用いられる。
上記の両面ダンボールには、一つの中芯および二つのライナのそれぞれに対応する三つの原紙(資材)から構成されたシングルフルートのダンボールのほか、いわゆる「複両面ダンボール」や「複々両面ダンボール」のように二つ以上の中芯および二つのライナならびに一つ以上の中ライナのそれぞれに対応する五つ以上の原紙から構成されたマルチフルートのダンボールも含まれる。本実施形態では、シングルフルートの両面ダンボールからなるダンボール材を主に例示する。
ダンボール材が製函されると、ダンボール箱となる。詳細に言えば、製函システムの製函用資材に用いられたダンボール材は、シートが順繰りに送り出されるフィード工程,送り出されたシートが箱の展開パターンに切り抜かれるカット工程,包装対象物を収容した箱の形状に折り立てられるフォールド工程といった種々の工程を経てダンボール箱に製函される。なお、ダンボール箱を組み立てる製函システムは、特に制限されないが、たとえば自動包装システムの全自動システムである「CMC社製のカートンラップ1000」,「Neopost社製のCVP−500」,「オーエスマシーナリー社製のTXP−600」や、半自動システムの「Pack Size社製のEM7」,「Panotec社製のCompack」を用いることができる。
本実施形態では、下記の方向I,IIが以下の表1に示すように対応する例を挙げ、ダンボール材は水平面に載置されたものとする。
・方向 I :水平面に載置されたダンボール材における方向
・方向II:ダンボール材を製造する途中の半製品における方向
Figure 0006825673
縦方向(第一方向,図中には「CD」と記す)および横方向(第二方向,図中には「MD」と記す)は水平に沿う方向であり、シート(折目)の沿う平面が延在する方向である。これらの縦方向と横方向とは互いに直交する。高さ方向(第三方向,図中には「TD」と記す)は、鉛直方向に沿う方向であり、縦方向および横方向の双方に直交する。この高さ方向は、シートが重ね合わせられる方向に対応する。
MD(Machine Direction)方向は、「流れ方向」とも称され、ダンボール材の製造過程やダンボール材を資材とした製函システムの工程が上流から下流へ進捗する方向である。CD(Cross Direction)方向は、MD方向の沿う平面においてMD方向に直交する方向である。TD(Transverse Direction)方向は、MD方向およびCD方向の双方に直交する方向である。
そのほか、特に断らない限り、本実施形態の「数値X〜数値Y」なる表現は、数値X以上であって数値Y以下の範囲を意味する。
[I.一実施形態]
下記の一実施形態では、ダンボール材の構成を項目[1]および[2]で述べる。項目[1]では、ダンボール材が折り畳まれた構造(以下「折畳構造」と称する)を説明する。項目[2]では、ダンボール材に用いられる性状に関するパラメータを説明する。
そして、項目[1]および[2]の構成による作用および効果を項目[3]で述べる。
[1.折畳構造]
図1に示すように、ダンボール材1は、直方体状をなす製函用資材である。
ダンボール材1では、連続する矩形状のシート2(図1では一部のみに符合を付す)が折目F(図1では一部のみに符合を付す)で折り返され、折り返されたシート2が高さ方向に積み重ねられている。
このように折り畳まれたダンボール材1には、縦方向および高さ方向の双方に沿う一対の側面に、複数の折目Fが縦方向に沿って直線状に延在する。
ここで、連続する三つのシート2(図1では二点鎖線で示す)に着目して、ダンボール材1の折畳構造を説明する。
・第一シート21:第二シート22の一側に連続するシート2
・第二シート22:第一シート21と第三シート23との双方に連続するシート2
・第三シート23:第二シート22の他側に連続するシート2
第一シート21と第二シート22との間に第一折目F1が設けられ、第一折目F1を介してシート21,22が連続している。第二シート22と第三シート23との間に第二折目F2が設けられ、第二折目F2を介してシート22,23が連続している。
第一折目F1は、第一シート21に対して横方向の一方(図1では右方)へ向けて第二シート22が折り返される折目Fであり、ダンボール材1における横方向の他方(図1では左方)に配置される。第二折目F2は、第二シート22に対して横方向の他方(図1では左方)へ向けて第三シート23が折り返される折目Fであり、ダンボール材1における横方向の一方(図1では右方)に配置される。
第一シート21では、横方向(折目Fと交差する方向)に延在する第一端縁E1(図1には手前側の端縁のみに符号を付す)にダンボールの段目10(波目)が露出する。同様に、第二シート22には、横方向(折目Fと交差する方向)に延在する第二端縁E2(図1には手前側の端縁のみに符号を付す)にダンボールの段目10が露出する。
第一シート21および第二シート22からなるシート対20では、第一端縁E1と第二端縁E2とが高さ方向に隣り合って配置される。
上記の折畳構造を有するダンボール材1によれば、ロール状に巻回することの困難な資材であっても直方体状に折り畳むことができる。すなわち、ロール状に巻回可能な資材よりも高い強度をもつダンボールのシート2をコンパクトな荷姿にすることができる。このように強度の確保されたシート2が折り畳まれたダンボール材1は、強度の要求される箱を製造する製函システムの包装資材に用いて好適である。
そのほか、折目Fは、ダンボールの段目10に沿って設けられている。言い換えれば、MD方向に対して垂直な段目10のダンボール材1が製造される。
なお、ダンボール材1は、汚損や荷崩れを防ぐために、包装用のフィルムで被包(包装)されることが好ましい。
[2.パラメータ]
以下、ダンボール材1のパラメータを説明する。
まず、ダンボール材1のサイズや段数などの基本的なパラメータを述べる。その後に、ダンボール材1に関するパラメータを詳述する。
[2−1.基本的なパラメータ]
ダンボール材1のサイズは、下記の寸法L1〜L3から定まる。
・ 縦寸法L1 :縦方向の寸法(第一寸法)
・ 横寸法L2 :横方向の寸法(第二寸法)
・高さ寸法L3:高さ方向の寸法(第三寸法)
上記の寸法L1〜L3は、小さいほど製造される箱のサイズや形状の制約が大きくなるおそれがあり、大きいほど運搬や納入といった作業性が低下するおそれがある。これらの観点より、寸法L1〜L3は、下記の表2に示す範囲であることが好ましい。
Figure 0006825673
そのほか、ダンボール材1における折目Fの本数をN[本]とおけば、シート2の枚数はN+1[枚]である。この場合には、N+1[段]のシート2がダンボール材1において重ね合わせられている。
たとえば、ダンボール材1の段数としては、たとえば10〜1000[段]のさまざまな段数が挙げられる。詳細を後述する折り畳みに関するパラメータが測定される対象のダンボール材については、所定の段数(たとえば100[段])未満の測定対象については、全段のそれぞれにおいてパラメータを測定するのが好ましい。一方、所定の段数(たとえば100[段])以上の測定対象については、部分的(たとえばパートに分けた部分や設定された領域)にパラメータが測定してもよい。
なお、ダンボール材1に用いられるシート2には、任意の坪量を設定することができる。シート2に採用される坪量の範囲としては、50〜1500[g/m2]の範囲が挙げられ、好ましくは100〜1000[g/m2]の範囲が挙げられ、より好ましくは200〜800[g/m2]の範囲が挙げられ、さらに好ましくは200〜600[g/m]の範囲が挙げられる。
上記の坪量に中芯の段繰率を加味し、縦寸法L1および横寸法L2とシート2の段数N+1とを乗算すれば、ダンボール材1の重量が算出される。
[2−2.シートの性状に関するパラメータ]
本実施形態のダンボール材1は、シート2の性状に関する構成を備えている。具体的には、以下に列挙する観点I〜VIIの少なくとも何れかの観点に立脚して、シート2の性状に関する所定の構成を備えている。
・観点 I :製函性を確保すること
・観点 II :箱に組み立てるときに折り曲げられた個所の破断を抑制すること
・観点III:印刷が施された場合の適性を確保すること
・観点 IV :製造された箱の強度の確保とつぶしやすさの確保とを両立すること
・観点 V :ライナの剥がれを抑えること
・観点 VI :製函システムにおいてダンボール材の搬送性を確保すること
・観点VII:製函システムへのダンボール材の搬送性を確保すること
上記の観点I〜VIIは、共通の序数I〜VIIが記された下記の課題I〜VIIを解決するための観点である。
・課題 I :製函性が不十分であること
・課題 II :箱に組み立てるときに折り曲げられた個所が破断しやいすいこと
・課題III:印刷が施された場合の適性が不十分であること
・課題 IV :下記の課題IV‐1および課題IV‐2
>課題IV‐1:製造された箱の強度が不十分であること
>課題IV‐2:製造された箱のつぶしにくいこと
・課題 V :ライナの剥がれを招きやすいこと
・課題 VI :製函システムにおいてダンボール材の搬送性が低下すること
・課題VII:製函システムへのダンボール材の搬送性が低下すること
上記の観点I〜VII,課題I〜VIIに対応する所定の構成には、以下に示す構成a〜hの少なくとも一つが含まれる。
・構成a:下記の構成1および2
>構成1:厚み寸法が所定の寸法範囲であること
>構成2:平面圧縮強さが所定の圧縮強さ範囲であること
・構成b:下記の構成2および3
>構成2:上記の構成2
>構成3:段繰率が所定の倍率範囲であること
・構成c:角度比が所定の比率範囲であること
・構成d:下記の構成4および構成5
>構成4:垂直圧縮強さが所定の下限強度以上であること
>構成5:垂直圧縮強さが所定の上限強度以下であること
・構成e:接着力が所定の力範囲であること
・構成f::表裏ライナ2a,2bの面の粗さSaが所定の粗さ範囲であること
・構成g:下記の構成6および7
>構成6:表ライナ2aどうしの滑り角度が所定角度範囲であること
>構成7:裏ライナ2bどうしの滑り角度が所定角度範囲であること
・構成h:複数個所で折目Fが所定状態であること
<構成a>
構成aは、上述のように、「厚み寸法が所定の寸法範囲である構成1」と「平面圧縮強さが所定の圧縮強さ範囲である構成2」とを備えている。
構成aの「厚み寸法」とは、一枚あたりのシート2の厚さを表すパラメータである。構成aの「平面圧縮強さ」は、シート2を厚み方向(高さ方向,TD方向)に圧縮したときの強さであり、測定ダンボール材のシートのつぶれにくさに対応するパラメータである。
本願の発明者らは、シート2の厚み寸法が所定の寸法範囲であって平面圧縮強さが所定の圧縮強さ範囲であれば、上述の課題I,IIが抑えられる傾向にあるとの知見を得た。逆に言えば、構成aの範囲外にある厚み寸法や平面圧縮強さのシート2は、課題I,IIが生じやすい傾向にあることを見出した。
つまり、シート2には、上述の観点I,IIに立脚して構成aが備えられている。
厚み寸法が所定の寸法範囲を上回っていれば、シート2が製函用の罫線で折り曲げられる際にライナ2a,2bが伸びきれずに破断し、課題IIを招くものと推察される。一方、厚み寸法が所定の寸法範囲を下回っていれば、シート2の強度が不十分であり、製函用の罫線以外の個所で折り曲げられて、課題Iを招くものと推察される。平面圧縮強さが所定の圧縮強さ範囲を下回っている際にも、シート2の強度が不十分であり、製函用の罫線以外の個所で折り曲げられて、課題Iを招くものと推察される。
また、平面圧縮強さが所定の圧縮強さ範囲を上回っていれば、製函用の罫線が形成されにくく、課題Iを招くものと推察される。
構成aの「所定の寸法範囲」は、2.0[mm]以上であって9.6[mm]以下であり、3.0[mm]以上であって8.0[mm]以下であることが好ましく、4.0[mm]以上であって7.0[mm]以下であることがより好ましい。
また、構成aの「所定の圧縮強さ範囲」は、50[kPa]以上であって250[kPa]以下であり、80[kPa]以上であって220[kPa]以下であることが好ましく、110[kPa]以上であって190[kPa]以下であることがより好ましい。
<構成b>
構成bは、構成aと同様の「平面圧縮強さが所定の圧縮強さ範囲である構成2」と、上述の「段繰率が所定の倍率範囲である構成3」とを備えている。
構成bの「段繰率」とは、中芯のライナに対するMD方向(横方向)の長さ寸法の倍率を表すパラメータである。
本願の発明者らは、シート2の平面圧縮強さが所定の圧縮強さ範囲であって段繰率が所定の倍率範囲であれば、上述の課題Iが抑えられる傾向にあるとの知見を得た。逆に言えば、構成bの範囲外にある平面圧縮強さや段繰率のシート2は、課題Iが生じやすい傾向にあることを見出した。
つまり、シート2には、上述の観点Iに立脚して構成bが備えられている。
平面圧縮強さが所定の圧縮強さ範囲を下回っていれば、上述したように、シート2の強度が不十分であることにより、課題Iを招くものと推察される。一方、平面圧縮強さが所定の圧縮強さ範囲を上回っていれば、製函用の罫線が形成されにくく、課題Iを招くものと推察される。
同様に、段繰率が上記の所定倍率を下回っていれば、シート2の強度が不十分であることにより、課題Iを招くものと推察される。一方、段繰率が上記の所定倍率を上回っていれば、製函用の罫線が形成されにくく、課題Iを招くものと推察される。
構成bの「所定の圧縮強さ範囲」は、構成aの「所定の圧縮強さ範囲」と同様に、50[kPa]以上であって250[kPa]以下であり、80[kPa]以上であって220[kPa]以下であることが好ましく、110[kPa]以上であって190[kPa]以下であることがより好ましい。
構成bの「所定の倍率範囲」は、1.2[倍]以上であって1.7[倍]以下であり、1.35[倍]以上であって1.6[倍]以下であることが好ましく、1.45[倍]以上であって1.55[倍]以下であることがより好ましい。
なお、ここでいう段繰率の倍率範囲は、シート2がシングルフルートの場合だけでなく、シート2がダブルフルートの場合であっても適用することができる。具体的に言えば、ダブルフルートの何れの中芯の段繰率とも、1.2[倍]以上であって1.7[倍]以下であり、1.35[倍]以上であって1.6[倍]以下であることが好ましく、1.45[倍]以上であって1.55[倍]以下であることがより好ましい。ここでいうダブルフルートの段繰率とは、各段(ダブルフルートにおいて一方および他方のそれぞれのフルートに対応する段)について算出された段繰率である。
<構成c>
構成cは、上述のように「角度比が所定の比率範囲である構成」を備えている。
構成cの「角度比」とは、測定ダンボール材1のシート2における段目10の傾き度合いに対応するパラメータである。
以下、シート2の要部を拡大して示す図2を参照して、角度比について説明する。なお、シート2の段目10がやや傾いた状態を図2に例示している。
シート2は、表裏のライナ2a,2bと中芯2cとが接着された構造をなしている。中芯2cは、段目10を構成し、ライナ2a,2bどうしの間で波形構造を形成している。
この中芯2cは、理想的な形状であれば、横方向および高さ方向に沿う断面(すなわち段目10)の形状が正弦波状をなす。一方、実際のシート2では、理想的な形状に対して中芯2cのなす段目10が傾いている場合もありうる。このような傾きの度合いを表すのが角度比である。
この角度比は、中芯2cと補助線Lとが交差する角度θ1,θ2(交差角度)に基づいて算出される比率である。
補助線Lは、ライナ2a,2bと平行な方向(すなわち横方向〈MD方向〉)であってライナ2a,2bどうしの中央(すなわち高さ方向〈TD方向〉の真ん中)を通る仮想的な線として設定される。
角度θ1,θ2は、上記の補助線Lに対して中芯2cが交差する個所のうち、隣り合う二点P1,P2における交差角度のうち鋭角の角度である。
そして、二つの角度θ1,θ2どうしの差の絶対値を二つの角度θ1,θ2の和で除した比率が角度比である。この角度比は、下記の式cで表される。
角度比=|θ1−θ2|/(θ1+θ2)・・・式c
このように規定される角度比は、理想的な段目10であれば、0(ゼロ)であり、段目10が偏倚するほど大きな値となる。
本願の発明者らは、シート2の角度比が所定の比率範囲であれば、上述の課題IIIが抑えられる傾向にあるとの知見を得た。逆に言えば、構成cの範囲外にある角度比のシート2は、課題IIIが生じやすい傾向にあることを見出した。
つまり、シート2には、上述の観点IIIに立脚して構成cが備えられている。
角度比が所定の比率範囲を上回っていれば、シート2における段目10の高さが不揃いになりやすく、課題IIIを招くものと推察される。
構成cの「所定の比率範囲」は、0.30以下であり、0.15以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。
<構成d>
構成dは、上述のように「製造された箱の垂直圧縮強さが所定の下限強度以上である構成4」と「製造された箱の垂直圧縮強さが所定の上限強度以下である構成5」を備えている。
構成dの「垂直圧縮強さ」は、JIS Z 0403−2:1999に準拠するパラメータであり、ダンボール材1の折り畳みを平面状に展開した状態で折目Fの延在する方向に沿う方向(ダンボール材1の縦方向に対応する方向)への垂直圧縮強さである。
本願の発明者らは、垂直圧縮強さが所定の下限強度以上であれば、上述の課題IV‐1が抑えられる傾向にあり、垂直圧縮強さが所定の上限強度以下であれば、上述の課題IV‐2が抑えられる傾向にあるとの知見を得た。逆に言えば、構成dの範囲外にある垂直圧縮強さのダンボール材は、課題IV‐1や課題IV‐2が生じやすい傾向にあることを見出した。
蛇腹折りされたダンボール材1では、折目Fを跨いで連続するシート2を用いて一個のダンボール箱(以下「折目入りダンボール箱」という)が製造され得る。折目入りダンボール箱では、荷重をかけた際、折目Fを含む個所の強度が不十分になりやすい。
そのため、垂直圧縮強さが所定の下限強度を下回っていれば、シート2の強度が不十分であり、課題IV‐1を招くものと推測される。
構成4の「所定の下限強度」は、2.00[kN/m]であり、2.50[kN/m]であることが好ましい。
垂直圧縮強さが強いほどシート2の強度が確保されるが、折目入りダンボール箱はつぶしにくくなる傾向があり、垂直圧縮強さが所定の上限強度を上回っていれば、課題IV‐2を招くおそれがある。
一般に、ダンボール箱を廃棄するときは、つぶしたり折り畳んだりして、嵩張らないようにする。大量のダンボール箱が排出される物流センター等では、廃棄にかかる手間と時間を節約するために、ダンボール箱圧縮潰し機を用いて自動的に箱をつぶすことがある。ダンボール箱がつぶしにくいと、ダンボール箱圧縮潰し機でつぶすことができず、装置内で箱が詰まり装置の停止を招く場合がある。
そこで、折目入りダンボール箱のつぶしやすさを確保する観点から、シート2の垂直圧縮強さは所定の上限強度よりも小さい。換言すれば、シート2の垂直圧縮強さは、折目入りダンボール箱のつぶしやすさが確保される上限強度以下に設定する。
構成5の「所定の上限強度」は、14.00[kN/m]であり、9.00[kN/m]であることがより好ましい。
<構成e>
構成eは、上述のように「接着力が所定の力範囲である構成」を備えている。
構成eの「接着力」とは、シート2の中芯2cとライナ2a,2bとを接着する強さに対応するパラメータである。
なお、ここでいう「接着力」は、中芯2cと表ライナ2aとの接着力(グルーマシン側の接着力)と、中芯2cと裏ライナ2bとの接着力(シングルフェーサ側の接着力)との平均値を意味する。
本願の発明者らは、シート2の接着力が所定の力範囲であれば、上述の課題Vが抑えられる傾向にあるとの知見を得た。逆に言えば、構成eの範囲外にある接着力のシート2は、課題Vが生じやすい傾向にあることを見出した。
つまり、シート2には、上述の観点Vに立脚して構成eが備えられている。
接着力が所定の力範囲を下回っていれば、ダンボール材1が箱に製造されるときにライナ2a,2bが中芯2cから剥がれやすくなり、課題Vを招くものと推察される。
構成eの「所定の力範囲」は、140[N]以上であり、190[N]以上であることが好ましく、220[N]以上であることがより好ましい。
<構成f>
構成fは、上述のように「表裏ライナ2a,2bの面の粗さSaが所定の粗さ範囲である構成」を備えている。
構成fの「面の粗さSa」は、表ライナ2aおよび裏ライナ2bのそれぞれの表面(ひょうめん)の凹凸状態に対応するパラメータであり、ISO25178に準じた面の算術平均粗さSaである。
本願の発明者らは、構成fを備えたダンボール材1によれば、上述の課題VIが抑えられる傾向にあるとの知見を得た。逆に言えば、構成fの範囲外にある粗さSaでは、課題VIが生じやすい傾向にあることを見出した。
つまり、ダンボール材1には、上述の観点VIに立脚して構成fが備えられている。
ダンボール材1が製函システムの資材に用いられた場合、ダンボール材1は、製函システムにおいてフィード工程で折り畳みが展開されて繰り出された後、搬送経路に設けられたニップロールで流れ方向下流側へ搬送される。このニップロールは所定の圧力でダンボール材1をシート2の厚み方向(TD方向)の両側から挟持しつつ下流側へ送り出している。
そのため、表裏ライナのそれぞれの面の粗さSaが所定の粗さ範囲を外れていると、ニップロールによってダンボール材1が挟持された姿勢が不安定になり、また、搬送経路上においても姿勢が不安定となり、ダンボール材1が流れ方向に対して蛇行して搬送されてしまう傾向があり、課題VIを招くものと推測される。
構成fの「所定の粗さ範囲」は、5.0[μm]以上であって20.0[μm]以下であり、5.5[μm]以上であって19.5[μm]以下であることが好ましく、6.0[μm]以上であって19.0[μm]以下であることがより好ましい。
表ライナの粗さSaと裏ライナの粗さSaとの差異が大きいと、TD方向の一側での接触状態と,TD方向の他側での接触状態との差が大きくなり、ダンボール材1の姿勢がズレ易くなるためニップロールによる搬送性が損なわれる傾向がある。
そのため、構成fを備えた測定ダンボール材は、「表裏ライナ2a,2bの面の粗さSaの比が所定比以下である構成」を備えていることが好ましい。ここで、「面の粗さSaの比」は、表ライナ2aの面の粗さSaに対する裏ライナ2bの面の粗さSaの比率(裏ライナ2bの面の粗さSa/表ライナ2aの面の粗さSa)である。表ライナの粗さSaに対する裏ライナの粗さSaの比が所定比よりも大きいことで、上記の課題VIを招くものと推察される。
上記の「所定比」は、3.0以下であり、2.0以下であることがより好ましく、1.5以下であってもよい。
<構成g>
構成gは、上述のように「表ライナ2aどうしの滑り角度が所定角度範囲である構成6」と「裏ライナ2bどうしの滑り角度が所定角度範囲である構成7」とを備えている。
構成gの「滑り角度」は、シート2が蛇腹折りに積み重ねられた姿(蛇腹姿)でのダンボール材1の搬送性に対応するパラメータである。
構成6の「表ライナ2aどうしの滑り角度」とは、不連続なシート2の表ライナ2aどうしが接するようにシート2を積み重ねた際の横方向へのシート2の滑り角度である。構成7の「裏ライナ2bでの滑り角度」とは、不連続なシート2の裏ライナ2bどうしが接するようにシート2を積み重ねた際の横方向に対応する方向へのシート2の滑り角度である。通常の枚葉のダンボールシートは表ライナと裏ライナが接するように、ダンボールが積層される。表ライナ2aどうし,裏ライナ2bどうしが積層される構造は、連続する矩形状のシート2を蛇腹折りにしたダンボール材1に特有の構造と言える。
蛇腹姿のダンボール材1では、折目Fを介して連続するシート2の表ライナ2aどうしが接するようにシート2を積み重ねられた段と、折目Fを介して連続するシート2の裏ライナ2bどうしが接するようにシート2を積み重ねられた段とが高さ方向に沿って交互に積層されている。
そのため、蛇腹姿でのダンボール材1の搬送性を考慮して、構成gでは、構成6,構成7が特定されている。
本願の発明者らは、構成6および構成7を兼ね備えたダンボール材1によれば、上述の課題VIIが抑えられる傾向にあるとの知見を得た。逆に言えば、構成6,7の範囲外にあるダンボール材1は、課題VIIが生じやすい傾向にあることを見出した。
つまり、ダンボール材1には、上述の観点VIIに立脚して構成6および構成7の構成gが備えられている。
表ライナ2aどうしの滑り角度や、裏ライナ2bどうしの滑り角度が小さいほど、搬送時の振動や衝撃でシート2がズレやすく荷姿が安定しないため、例えばフォークリフトで製函システムへ搬送する際の安定性も確保しにくくなる。そのため、滑り角度が所定角度範囲を下回っていれば、上記の課題VIIを招くものと推測される。
表ライナ2aどうしの滑り角度や、裏ライナ2bどうしの滑り角度が大きいほど、ダンボール材が滑りにくくなりフィード性が確保されるものの、シート2のズレが許容されにくく却って荷崩れを招くやすくなるおそれがある。そのため、滑り角度が所定角度範囲を上回っていれば、課題VIIを招くものと推測される。
構成6の表ライナ2aでの滑り角度,構成7の裏ライナ2bのそれぞれでの所定の角度範囲は、17[°]以上であって30[°]以下であり、18[°]以上であって29[°]以下であることが好ましく、19[°]以上であって28[°]以下であることがより好ましい。
<構成h>
構成hは、上述のように「複数個所での折目Fが所定状態である構成」を備えている。
折目Fの「所定状態」の測定対象に用いる凹凸構造を、図3および図4を参照して説明する。
図3はダンボール材1の折り畳みが平面状に展開された状態を示す。平面状に展開された状態では、シート2の面において折目Fの延在する方向がCD方向に対応し、シート2の面に沿って折目Fの延在する方向に直交する方向がMD方向に対応し、シート2の厚み方向がTD方向に対応する。
ダンボール材1の折り畳みが平面状に展開された状態において、折目F1を側面から拡大視すると、一つの折目F10は図4に示すように複数の凹部と複数の凸部が設けられた形状をなす。
具体的に言えば、折目F10には、シート2の表面(おもてめん:厚み方向の一側を向いた面に対応)から厚み方向の一側に突出した凸部32A,32B,32Cと、シート2の厚み方向の他側に凹んだ凹部30A,30Bが設けられている。また、折目F10には、シート2の裏面(うらめん:厚み方向の他側を向いた面に対応)から厚み方向の一側に凹んだ凹部30Cと厚み方向の他側に突出した凸部32D,32Eが設けられている。
折目F10の凹部30A,30B,凸部32A,32B,32Cは、折目F10においてシート2を折り返した際に、シート2の表面に縦方向に沿って形成される折り皺である。凸部32A,32B,32C,凹部30A,30Bは、折目F10を介して連続するシート2が折り重ねられた側(「折目の内側」という)に形成される。凸部32D,32E,凹部30Cは折目F10の外側に形成される。
ダンボール材1ではシート2が蛇腹状に折り畳まれるので、ダンボール材1が平面状に展開された状態で折目F10に隣接した折目F20では、折目10Fを180°反転させた形状をなす。具体的に言えば、シート2の表面に厚み方向の一側に凹んだ一個の凹部と厚み方向の他側に突出した二個の凸部が設けられ、シート2の裏面において厚み方向の他側に突出した三個の凸部と厚み方向の一側に凹んだ二個の凹部とが設けられている。
なお、一つの折目F10に形成される凹部,凸部の個数は図4に限定されない。例えば、一つの凹部30Aの両側に凸部32A,32Bが設けられているが、一つの凹部30の片側の凸部32Aのみが存在する場合もあり得る。また、凸部が存在しない場合もあり得る。また、凹部30が一つしか存在しない場合や,三つ以上存在する場合や,凹部30が存在しない場合もあり得る。
構成hの「所定の状態」とは、図3に示す複数の測定個所X1,X2,X3で測定された、下記の三種の寸法のそれぞれについて複数の個所におけるばらつきを示す変動係数が所定の上限以下であることである。
「三種の寸法」は、下記の三つの寸法である。
・凸部の高さD1
・凹部の深さD2
・凹部の幅W1
高さD1は、シート2で平面状に延在する面から凸部の頂部までの寸法である。
深さD2は、シート2で平面状に延在する面から凹部の底部までの寸法である。
上記のシート2で平面状に延在する面とは、ダンボール材1が平面状に展開された状態で凹部や凸部の形成されていないシート2の面である。
凹部の幅W1は、その凹部を挟んで隣接した凸部どうしの頂部が、シート2の面に沿って折目Fの延在する方向に直交する方向(MD方向)に離間する寸法である。凹部の隣に凸部が存在しない場合、凸部の頂部に替えて、シート2で平面状に延在する面から凹み始めた個所を基準にして寸法が測定される。
「変動係数」は、複数個所で三種の寸法のそれぞれについて三点の測定個所X1,X2,X3でのバラツキを割合(百分率)で示すパラメータである。
変動係数は、測定個所X1,X2,X3のそれぞれで測定された凸部の高さD1,凹部の深さD2,凹部の幅W1のそれぞれの寸法について算出される。変動係数は、複数の測定個所X1,X2,X3で測定された寸法の標示偏差を、複数の測定個所X1,X2,X3での寸法の平均値で除算して求める。
各測定個所X1,X2,X3における三種の寸法のそれぞれの変動係数の算出にあたり、その測定個所に複数の凸部,凹部が存在している場合には、例えば、下記の態様1〜態様2に挙げた三種の寸法がその測定個所の高さD1,深さD2,幅W1として採用される。
態様1:その測定個所に存在する複数の凸部,凹部のうち、高さD1,深さD2,幅
W1のそれぞれの最大の寸法。
態様2:その測定個所における複数の凹部のうち最大の深さD2の凹部を特定し、特
定した凹部の深さD2と、その凹部に隣接する凸部のうち最大高さD1と、
特定した凹部の幅W1とのそれぞれの寸法。
本願の発明者らは、構成hを備えたダンボール材1によれば、上述の課題VIが抑えられる傾向にあるとの知見を得た。逆に言えば、変動係数が所定の上限より大きいダンボール材1は、課題VIが生じやすい傾向にあることを見出した。
つまり、ダンボール材1には、上述の観点VIに立脚して構成hが備えられている。
例えば測定個所X1で凸部の高さD1が大きく測定個所X2で凸部の高さD1が小さいと、ニップロールにより搬送されるダンボール材1の姿勢がズレてしまい、ダンボール材1が流れ方向に対して蛇行する傾向がある。そのため、複数個所で折目Fの状態のバラツキが大きくなり、変動係数が所定の上限よりも大きい場合、上記の課題VIを招くものと推測される。
構成hの「所定状態」に対応する変動係数の上限は、10[%]であり、8[%]であることが好ましく、6[%]であることがより好ましい。
ダンボール材1の折目Fは、下記の構成9,構成10を更に備えていることが好ましい。
構成9 :折目Fどうしの間隔が所定間隔以上離間していること
構成10:基準線に対する折目Fの角度の差が所定差以下であること
構成9の「折目Fどうしの間隔」は、ダンボール材1の折り畳みが平面状に展開された状態で隣接する折目どうしFの間隔であり、例えば図3の折目F10とF20との間隔である。折目どうしの間隔が短すぎると、折目Fがニップロールを通過する頻度が多くなり、ダンボール材1の姿勢がズレやすくなるため、上記の課題VIを招くものと推測される。
構成10の「基準線」は、図5のCD方向の理想的な折目F′に対応する。図5において、二点鎖線は理想的な折目F′を示す。この理想的な折目F′に対する現実の折目F12の角度の差をθ1とする。角度の差θ1が大きくなりすぎると、例えば折目Fの延在する方向においてニップロールの一側が凹部や凸部(折目)に接触しているときにニップロールの他側は凹凸の無いシートの平面部に接触している状態となり、ニップロールにより搬送されるダンボール材1の姿勢がズレやすくなる。そのため、角度の差が所定差よりも大きいと、上記の課題VIを招くものと推測される。
構成9の「所定間隔」は1100[mm]であり、1150[mm]であることが好ましい。
構成10の「所定差」は5[°]であり、4[°]以下であることが好ましく、3[°]以下であることがより好ましい。
[3.作用および効果]
本実施形態のダンボール材1は、上述の構成a〜hの少なくとも何れか一つを備えることにより、製函用資材に用いられた場合に良好な状態の箱の製造することができる。
構成aによれば、シート2の厚み寸法が所定の寸法範囲であって平面圧縮強さが所定の圧縮強さ範囲であることから、測定ダンボール材1の製函性を確保することができ、箱に組み立てるときに折り曲げられた個所の破断を抑制することができる。
構成bによれば、シート2の平面圧縮強さが所定の圧縮強さ範囲であって段繰率が所定の倍率範囲であることから、測定ダンボール材1の製函性を確保することができる。
構成cによれば、シート2の角度比が所定の比率範囲であることから、測定ダンボール材1に印刷が施された場合の適性を確保することができる。
構成dによれば、製造された箱の垂直圧縮強さが所定の下限強度以上であって、所定の上限強度以下であるダンボール材から製造された箱の強度の確保とつぶしやすの確保とを両立することができる。
構成eによれば、シート2の接着力が所定の力範囲であることから、測定ダンボール材1から組み立てられた箱のライナ2a,2bが剥がれるのを抑えることができる。
構成fによれば、表裏ライナ2a,2bの面の粗さSaが所定の粗さ範囲であることから、製函システムにおけるダンボール材の搬送性を向上できる。
構成gによれば、表ライナ2aでの滑り角度が所定角度範囲であって、裏ライナ2bでの滑り角度が所定角度範囲であることから、製函システムへのダンボール材の搬送性を向上できる。
構成hによれば、縦方向に沿う折目Fの状態のバラツキが所定状態(変動係数値以下)であることから、製函システムにおけるダンボール材の搬送性を向上できる。
[II.実施例]
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
本項目[II]では、構成a〜hの実施例および比較例に共通する事項を項目[1]で述べ、構成a〜hのそれぞれに対応する実施例および比較例を項目[2]で述べる。さらに、構成a〜hのうち三つの構成を組み合わせた実施例を項目[3]で述べる。
[1.共通事項]
[1−1.構成a〜c,eの共通事項]
構成a〜c,eの実施例および比較例において、パラメータの測定される対象となるダンボール材(以下「測定ダンボール材」と称する)は、両面ダンボールのシートである。
この測定ダンボール材は、下記のサイズである。
・ サ イ ズ :縦寸法1300[mm],
横寸法1150[mm],
高さ寸法1800[mm]
[1−2.構成d,f〜hの共通事項]
構成d,f〜hの実施例および比較例において測定ダンボール材は、下記のサイズである。
・ サ イ ズ :縦寸法1300[mm],
横寸法1100[mm],
高さ寸法1800[mm]
構成d,f〜hの実施例および比較例において測定ダンボール材は、以下に示す五種のフルートのうち何れか一つのフルートを採用した。
・ A フルート
・ B フルート
・ C フルート
・ ABフルート
・ ACフルート
また、構成d,f〜hの実施例および比較例において測定ダンボール材は、以下に示す緒元の段繰りロールを有するコルゲータを用いて製造された。
>Aフルート
・ 段高 :4.5[mm]
・段山数:34[山/30cm]
>Bフルート
・ 段高 :2.5[mm]
・段山数:50[山/30cm]
>Cフルート
・ 段高 :3.5[mm]
・段山数:40[山/30cm]
>ABフルート
――Aフルート――
・ 段高 :4.5[mm]
・段山数:34[山/30cm]
――Bフルート――
・ 段高 :2.5[mm]
・段山数:50[山/30cm]
>ACフルート
――Aフルート――
・ 段高 :4.5[mm]
・段山数:34[山/30cm]
――Cフルート――
・ 段高 :3.5[mm]
・段山数:40[山/30cm]
なお、「段山数」とは、シートにおいて30[cm]あたりの山(段)の数に対応し、段目の波長で30[cm]を除算した数値に対応する。
[1−3.構成a〜hの共通事項]
――前処理――
パラメータの測定対象である測定ダンボール材またはその一部は、JIS Z0203:2000に準拠して温度23[℃]および湿度50[%]の温湿度条件で24時間以上の前処理が施された常態としたうえで、各パラメータを測定した。
そのほか、ライナ原紙と中芯原紙とを貼合する段ボール用接着剤には、通常用いられるワンタンク方式の澱粉糊を使用した。また、測定ダンボール材は、段繰りロールを有するコルゲータを用いて製造した。
――評価――
つぎの項目[2]で詳細を後述する実施例および比較例のそれぞれは、「◎」,「○」,「△」,「×」の四段階で評価した。
[2.構成a〜h]
<構成a>
――測定対象――
構成aに関する実施例a1〜a6および比較例a7〜a9に用いる測定ダンボール材は、段山数が34[山/30cm]の段繰りロールを有するコルゲータを用いて製造した。なお、「段山数」とは、シートにおいて30[cm]あたりの山(段)の数に対応し、段目の波長で30[cm]を除算した数値に対応する。
以下、実施例a1〜a6および比較例a7〜a9に関して、フルートの種別,段繰りロールの段高,原紙の坪量を述べる。
実施例a1〜a6,比較例a7〜a9には、以下に示すようにシングルフルートおよびダブルフルートの何れか一方を採用した。
・シングルフルート:実施例a1〜a3,a5,a6および比較例a8,a9
・ ダブルフルート :実施例a4および比較例a7
実施例a1〜a6,比較例a7〜a9は、以下に列挙するように、五種の段高のうち何れか一つの段高に設定された段繰りロールにて製造した。なお、「段高」とは、測定ダンボール材のシートにおける段の高さに対応し、段目の振幅に対応する寸法である。
・段高0.5[mm]:比較例a9
・段高1.5[mm]:実施例a1
・段高3.1[mm]:実施例a2
・段高4.5[mm]:実施例a3〜a6,比較例a8
・段高4.7[mm]:比較例a7
実施例a1〜a6,比較例a7〜a9では、以下に示す共通のライナ原紙を用いた。
・ライナ原紙:160[g/m2]〔MC160:王子マテリア株式会社製〕
一方、実施例a1〜a6,比較例a7〜a9では、特開2018−162526号公報の製造方法にしたがって作製したさまざまな坪量の中芯原紙を使用した。具体的には、実施例a1〜a6,比較例a7〜a9のそれぞれに、以下に示す五種の坪量のうち何れか一つの坪量を採用した。ここで列挙する坪量は、測定ダンボール材の資材(原材料)をなす原紙の坪量である。
・(中芯原紙の)坪量 60[g/m2]:比較例a8
・(中芯原紙の)坪量 80[g/m2]:実施例a6
・(中芯原紙の)坪量170[g/m2]:実施例a5
・(中芯原紙の)坪量250[g/m2]:実施例a1〜a4,比較例a9
・(中芯原紙の)坪量320[g/m2]:比較例a7
測定ダンボール材のシートの資材をなす原紙(ライナ原紙,中芯原紙)の坪量は、下記の手順xa〜xdで測定した。
・手順xa:JIS Z0203:2000に準拠して坪量を測定する原紙を前処理する。
・手順xb:250[mm]×400[mm]サイズに原紙を切り出す。
・手順xc:手順xbで切り出された原紙の重量を電子天秤で測定する。
・手順xd:手順xcで測定された重量を単位平方メートルあたりの重量[g/m2
]に換算する。
なお、測定ダンボール材のシートをなすライナ(原紙)の坪量は、下記の手順ya〜yfで測定される。
・手順ya:測定ダンボール材のシートを水道水に15[分]間浸漬する。
・手順yb:手順yaで浸漬されたシートのライナと中芯と手で引き剥がす。
・手順yc:手順ybで引き剥がしたライナを105[℃]の乾燥機で20[分]間
乾燥する。
・手順yd:手順ycで乾燥されたライナを250[mm]×400[mm]サイズ
に切り出す。
・手順ye:手順ydで切り出されたライナの重量を電子天秤で測定する。
・手順yf:手順yeで測定された重量を単位平方メートルあたりの重量[g/m2
]に換算する。
また、測定ダンボール材のシートをなす中芯(原紙)の坪量は、下記の手順za〜zgで測定される。
・手順za:測定ダンボール材のシートを水道水に15[分]間浸漬する。
・手順zb:手順zaで浸漬されたシートのライナと中芯と手で引き剥がす。
・手順zc:手順zbで引き剥がしたライナを105[℃]の乾燥機で20[分]間
乾燥する。
・手順zd:JIS Z0203:2000に準拠して坪量を測定するライナを前処理する。
・手順ze:250[mm]×400[mm]サイズにライナを切り出す。なお、波
形構造が残す場合は、波を引き延ばしておさえながら本サイズに切り出
す。
・手順zf:手順zeで切り出されたライナの重量を電子天秤で測定する。
・手順zg:手順zfで測定された重量を単位平方メートルあたりの重量[g/m2
]に換算する。
そのほか、測定される測定ダンボール材のシートをなすライナや中芯の坪量は、測定ダンボール材の資材をなす原紙の坪量に対して、同じ原紙を測定対象にする場合であっても坪量の測定値が±10[%]程度は変動しうる。
上記の測定ダンボール材について、下記の表3に示す厚み寸法,平面圧縮強さが測定された。
Figure 0006825673
「厚み寸法」は、測定ダンボール材における一枚あたりのシートの厚さに対応するパラメータである。この厚み寸法は、下記の手順aa〜adで測定した。
・手順aa:測定ダンボール材の全段数Mが奇数の場合、半分の段数M/2の四捨五
入した段(すなわち真ん中の段)を基準に上下五段分のシートを採取す
る。なお、試験片を採取するときに、段が潰れないように注意した。全
段数Mが偶数の場合、半分の段数〔(M/2)+1〕を基準に上下五段
分のシートを採取する。
・手順ab:手順aaで採取された十枚のシートから5[cm]×5[cm]サイズ
の正方形に試験片を切り出す。
・手順ac:手順abで切り出された試験片の厚みを下記の準拠規格,測定機器,測
定条件で測定する。
>準拠規格:段ボール業界規格T0004:2000
>測定機器:厚み計(ミツトヨラチェット製,型番K470101K)
>測定条件:プランジャの直径16[mm],荷重3923[mN]
・手順ad:手順acで測定された厚みから、測定結果の精度を低下させる外乱(要
因)となりうる数値(いわば大きく外れた数値)を除外して、平均値を
とったものを厚み寸法とした。
なお、手順adの「外乱となりうる数値の除外」では、手順acで測定された各数値を母集団としたときに、その母集団の標準偏差が±3σから外れる数値が排除される。
「平面圧縮強さ」は、測定ダンボール材のシートのつぶれにくさに対応するパラメータである。この平面圧縮強さは、下記の手順aA〜aDで測定した。
・手順aA:手順aaと同様に、測定ダンボール材の全段数Mが奇数の場合、半分の
段数M/2の四捨五入した段(すなわち真ん中の段)を基準に上下五段
分のシートを採取する。なお、試験片を採取するときに、段が潰れない
ように注意した。全段数Mが偶数の場合、半分の段数〔(M/2)+1
〕を基準に上下五段分のシートを採取する。
・手順aB:手順aAで採取された十枚のシートから直径6.4[cm]の円形の試
験片を切り出す。
・手順aC:手順aBで切り出された試験片の平面圧縮強さを下記の準拠規格,測定
機器,試験速度・平行度の測定条件で測定する。なお、平行度とは、平
面圧縮用の冶具の上下の平行度合いを表す。
>準拠規格:JIS Z 0403−1:1999
>測定機器:平面圧縮用の冶具(テスター産業株式会社製)を取り付けた圧縮
試験機(株式会社エー・アンド・デイ製,RTF1350)
>試験速度(測定条件):12.5±2.5[m/min]
>平行度(測定条件):圧縮寸法の1/1000以下
・手順aD:上記の手順adと同様に、手順aCで測定された平面圧縮強さから、測
定結果の精度を低下させる外乱(要因)となりうる数値を除外して、平
均値をとったものを平面圧縮強さとした。
――評価――
上記のようにして厚み寸法,平面圧縮強さのそれぞれが測定された実施例a1〜a6および比較例a7〜a9について、つぎに説明する製函性,罫割れのそれぞれを評価した。
「製函性」は、測定ダンボール材の折目を跨ぐカット線で切り出されたダンボール片(以下「評価ダンボール片」と称する)が手組み(手作り)にて組み立てられた箱の精度の良否に対応する評価基準である。手組みの方法として、カットされた段ボール片の所定の罫線の個所で折りたたみ、ホットメルト接着剤にて貼着し、製函した。
なお、製函システムによって評価ダンボール片を組み立てる手法は、手組みであっても製函システムによる組み立てであっても同様である。そのため、手組みによって組み立てられた評価ダンボール片の製函性には、製函システムで組み立てられた評価ダンボール片との製函性と相関があるものと言える。
「評価ダンボール片」は、測定ダンボール材が下記の形状・サイズにサンプルカッター(株式会社ミマキエンジニアリング社製,CF2−1218)で下記の枚数が打ち抜かれた試験片である。
・形 状:A式段ボール箱が展開されたパターン
・サイズ:A式段ボール箱の側板の幅寸法356[mm],
A式段ボール箱の端板の幅寸法159[mm],
A式段ボール箱の高さ寸法256[mm]
・枚 数:100[枚]
上記の評価ダンボール片は、下記の基準で評価した。
・◎:全て(100[枚])の評価ダンボール片において製函性が良好である。
・○:100[枚]の評価ダンボール片のうち1〜2[枚]の製函性が不良である。
・△:100[枚]の評価ダンボール片のうち3[枚]の製函性が不良である。
・×:100[枚]の評価ダンボール片のうち4[枚]以上の製函性が不良である。
なお、製函性に関して「○」の評価が得られた実施例a4では、2[枚]の製函性が不良であった。
ここでいう「製函性が良好」とは、評価ダンボール片において下記の折部A,Bどうしの距離寸法が所定の距離寸法未満であることをいう。
・折部A:製函用の罫線(折目とは別の要素)が設けられた部分
・折部B:箱に組み立てられたとき(製函時)に実際に折れた部分
「所定の距離寸法」は、評価ダンボール片の折目に対して垂直な方向(MD方向)の寸法については2.0[mm]であり、折目と平行な方向(CD方向)の寸法については5[mm]である。
一方、「製函性が不良」とは、評価ダンボール片において上記の折部A,Bどうしの距離寸法が所定の距離寸法以上であることをいう。
また、「罫割れ」とは、評価ダンボール片が箱に組み立てられるときに折り曲げられた個所が破断していることをいう。この罫割れは、製函性を評価した箱(すなわち評価ダンボール片が組み立てられた箱,以下「評価箱」と称する)を目視することで観察される。
この罫割れは、下記の基準で評価した。
・◎:全て(100[箱])の評価箱において罫割れが見られなかった。
・○:100[箱]の評価箱のうち1〜2[箱]に罫割れが見られた。
・△:100[箱]の評価箱のうち3[箱]に罫割れが見られた。
・×:100[箱]の評価箱のうち4[箱]以上に罫割れが見られた。
なお、罫割れに関して「○」の評価が得られた実施例a3,a5,a6および比較例a8については、実施例a3,a5,a6で1[箱]に罫割れが見られ、比較例a8で2[箱]に罫割れが見られた。
実施例a1〜a6では、厚み寸法が2.0[mm]以上であって9.6[mm]以下であり、平面圧縮強さが50[kPa]以上であって250[kPa]以下であり、製函性および罫割れの双方で少なくとも「△」以上の良好な評価が得られた。
一方、2.0〜9.6[mm]の範囲から外れた厚み寸法の比較例a7,a9や、50〜250[kPa]の範囲から外れた平面圧縮強さの比較例a7〜a9では、製函性の評価が「×」の不良な評価が得られた。また、厚み寸法が9.6[mm]よりも大きい比較例a7では、罫割れの評価も「×」の不良な評価であった。
比較例a7からは、厚み寸法が9.6[mm]よりも大きいと、製函用の罫線で折り曲げられる際にライナ原紙が伸びきれずに破断し、罫割れの評価が不良となるものと推察される。
この比較例a7からは、平面圧縮強度が250[kPa]よりも大きいと、製函用の罫線を入れづらくなり(罫線の形成性が低下することにより)、製函用の罫線以外の個所で折り曲げられて、製函性の評価が不良となることも推察される。
比較例a8からは、平面圧縮強度が50[kPa]未満であると、評価ダンボール片の曲げ強度が不十分であって製函用の罫線以外の個所で折り曲げられやすくなり、製函性の評価が不良となるものと推察される。
同様に、比較例a9からは、厚み寸法が2.0[mm]未満であると、評価ダンボール片の曲げ強度が不十分であって製函用の罫線以外の個所で折り曲げられやすくなり、製函性の評価が不良となるものと推察される。
上記の比較例a7〜a9に鑑みて、実施例a1〜a6からは、9.6[mm]以下の範囲で厚み寸法が小さいほど罫割れの発生が抑えられると推察される。一方、2.0[mm]以上の範囲で厚み寸法が大きいほど製函用の罫線以外の個所での折り曲げが抑えられると推察される。
実施例a1〜a6からは、平面圧縮強度が250[kPa]以下であれば製函用に形成される罫線の不良が抑えられることも推察される。一方、平面圧縮強度が50[kPa]以上であれば評価ダンボール片の曲げ強度が確保され、製函用の罫線以外の個所で折り曲げが抑えられると推察される。
よって、厚み寸法が2.0[mm]以上であって9.6[mm]以下であり、平面圧縮強さが50[kPa]以上であって250[kPa]以下であれば、製函性の確保と罫割れの抑制とを両立することができると言える。
<構成b>
――測定対象――
構成bに関する実施例b1〜b3および比較例b4,b5に用いる測定ダンボール材には、実施例a1〜a6,比較例a7〜a9と同様のライナ原紙を用い、下記の中芯原紙を用いた。
・ 中芯原紙 :170[g/m2]〔LB170:王子マテリア株式会社製〕
また、実施例b1〜b3および比較例b4,b5に用いる測定ダンボール材は、下記の表4に示す各種の段繰率となる段繰りロールを有するコルゲータを用いて製造した。また、実施例b1〜b3および比較例b4,b5のそれぞれについて、上述の手順aA〜aDと同様の手順で平面圧縮強さを測定し、下記の表4に示す平面圧縮強さが測定された。
Figure 0006825673
「段繰率」は、中芯のライナに対するMD方向の長さ寸法の倍率に対応するパラメータである。この段繰率は、下記の手順ba〜bgで測定した。
・手順ba:手順aa,aAと同様に、測定ダンボール材の全段数Mが奇数の場合、
半分の段数M/2の四捨五入した段(すなわち真ん中の段)を基準に上
下五段分のシートを採取する。なお、試験片を採取するときに、段が潰
れないように注意した。全段数Mが偶数の場合、半分の段数〔(M/2
)+1〕を基準に上下五段分のシートを採取する。
・手順bb:手順baで採取された十枚のシートから中芯の山が連続する方向(横方
向,MD方向)に20[cm]であって、中芯の山に直交する方向(縦
方向,CD方向)に10[cm]のサイズに切り出す。
・手順bc:手順bbで切り出された試験片を水道水に24時間浸漬する。
・手順bd:手順bcの浸漬後に、表裏のライナを剥がして中芯を取り出す。
・手順be:手順bdで取り出された中芯を手で引き伸ばし、伸びきった状態の長さ
を定規で測定する。
・手順bf:手順beで測定された「中芯の伸びきった長さ」と手順bbで切り出さ
れた試験片の中芯の山が連続する方向の長さ(「元のダンボールシート
の長さ」と称する,ここでは20[cm])とから下記の式bで段繰率
を算出する。
段繰率=中芯が伸びきった状態の長さ/元のダンボールシートの長さ・・・式b
・手順bg:上記の手順ad,aDと同様に、手順bfで算出された段繰率から、測
定結果の精度を低下させる外乱(要因)となりうる数値を除外して、平
均値をとったものを段繰率とした。
――評価――
上記のようにして段繰率が得られた実施例b1〜b3および比較例b4,b5について、製函性を評価した。この製函性は、実施例a1〜a6および比較例a7〜a9の評価に用いた製函性と同義である。なお、製函性に関して「○」の評価が得られた実施例b1では、2[枚]の製函性が不良であった。
実施例b1〜b3では、段繰率が1.2[倍]以上であって1.7[倍]以下であり、平面圧縮強さが50[kPa]以上であって250[kPa]以下であり、製函性について少なくとも「△」以上の良好な評価が得られた。
一方、段繰率が1.2[倍]未満であって平面圧縮強さが50[kPa]未満の比較例b4や、段繰率が1.7[倍]よりも大きくて平面圧縮強さが250[kPa]よりも大きい比較例b5では、製函性の評価が「×」の不良な評価が得られた。
比較例b4からは、段繰率が1.2[倍]未満であることや平面圧縮強さが50[kPa]未満であることにより、評価ダンボール片の曲げ強度が不十分であるため製函用の罫線以外の個所で折り曲げられやすくなり、製函性の評価が不良となるものと推察される。
比較例b5からは、段繰率が1.7[倍]よりも大きいことや平面圧縮強さが250[kPa]よりも大きいことにより、製函用の罫線を入れづらくなり(罫線の形成性が低下することにより)、製函用の罫線以外の個所で折り曲げられて、製函性の評価が不良となるものと推察される。
上記の比較例b4,b5に鑑みて、実施例b1〜a3からは、段繰率が1.2[倍]以上であることや平面圧縮強さが50[kPa]以上であることにより、製函用の罫線以外の個所での折り曲げが抑えられると推察される。また、段繰率が1.7[倍]以下であることや平面圧縮強さが250[kPa]以下であることにより、製函用に形成される罫線の不良が抑えられると推察される。
よって、段繰率が1.2[倍]以上であって1.7[倍]以下であり、平面圧縮強さが50[kPa]以上であって250[kPa]以下であれば、製函性を確保することができると言える。
<構成c>
――測定対象――
構成cに関する実施例c1〜c3および比較例c4には、実施例b1〜b3や比較例b4と同様の原紙を用い、以下に示す諸元の段繰りロールを有するコルゲータを用いて製造されたAフルートの測定ダンボール材を用いた。
・ 段高 :4.5[mm]
・段山数:34[山/30cm]
そして、下記の表5に示す角度比となるように製造された測定ダンボール材を実施例c1〜c3および比較例c4に用いた。なお、表5の単位[−]は、無次元量を表す。
Figure 0006825673
「角度比」とは、測定ダンボール材のシートにおける段目の傾き度合いに対応するパラメータである。この角度比は、下記の手順ca〜cfで測定した。
・手順ca:測定ダンボール材のシートにおいて中芯の一つの山を縦方向(CD方
向)から写真を撮影する。
・手順cb:手順caで撮影された写真を一つの山が高さ10[cm]以上となるよ
うに拡大して印刷用紙にプリントする。
・手順cc:表裏のライナと平行な方向(すなわち横方向〈MD方向〉)であって、
表ライナと裏ライナとの中央(TD方向中央)を通る補助線を引く。
・手順cd:手順ccで引いた補助線と中芯との交点のうち、隣り合う任意の二点を
選択する。
・手順ce:手順cdで選択された二点のそれぞれにおいて、補助線と中芯とのなす
角度のうち鋭角を分度器で測定した。
・手順cf:手順ceで測定された二つの角度(測定値)どうしの差の絶対値を二つ
の角度の和で除した比率を算出する。
――評価――
上記のようにして角度比が得られた実施例c1〜c3および比較例c4について、印刷適性を評価した。
「印刷適性」とは、測定ダンボール材に印刷を施した場合の適性であり、測定ダンボール材に施された印刷の良否に対応する評価基準である。
この印刷適性は、下記の手順cA〜cCで評価した。
・手順cA:測定ダンボール材のシートをMD方向が長辺となる500[mm]×1
350[mm]のサイズにカットする。
・手順cB:手順cAでカットされた試験片に対して、ダイレクトフレキソ印刷機D
YNA FLEX160(ボブスト社製)によって、550[線/イン
チ]に彫刻したアニロックスロールで水性フレキソインキ(品番:Su
per−EX FK−99、サカタインク社製)で下記の順番で塗工し
印刷した。
>塗工の順番:紅→墨→藍→黄→ニス
・手順cC:手順cBで印刷された仕上がりを目視にて観察した。
上記の印刷適性は、下記の基準で評価した。
・◎:インキの着肉ムラが無く、印刷の仕上がりが良好である。
・○:インキの着肉ムラがほとんど無く、実用上の問題がない。
・△:インキの着肉ムラがやや多いが、実用上の問題はない。
・×:インキの着肉ムラが非常に多く、実用上の問題があり、品質も著しく劣る。
実施例c1〜c3では、角度比が0.30以下であり、印刷適性について「△」以上の評価が得られ、実用上の問題はない。角度比が0.15以下の実施例c1,c2では、「○」以上の評価が得られ、角度比が0.05以下の実施例c1では、「◎」の評価が得られた。
一方、角度比が0.30よりも大きい比較例c4では、印刷適性について「×」の評価が得られ、実用上の問題がある。
比較例c4からは、角度比が0.30よりも大きいことにより、段目の高さが不揃いとなることで、印刷適性の評価が不良となるものと推察される。あるいは、インキの着肉時に試験片が段目の傾きに応じた方向へ変形しやすくなることも、印刷適性の評価が不良となる推察する理由に挙げられる。
これに対し、実施例c1〜c3からは、角度比が0.30以下であることにより、段目の高さのバラツキが抑えられ、実用上問題のない印刷適性が得られると推察される。段目の高さのバラツキは、実施例c1,c2からは角度比が0.15以下であることにより確実に抑えられ、実施例c1からは角度比が0.05以下であることにより、より一層抑えられると推察される。
よって、角度比が0.30以下であれば、印刷適性を確保できると言える。
<構成d>
――測定対象――
まず、構成dに関して下記の表6,表7示す実施例d1〜d11および比較例d12,d13の測定ダンボール材の構成を説明する。
Figure 0006825673
Figure 0006825673
実施例d1〜d11および比較例d12,d13では、ライナ原紙および中芯原紙にさまざまな坪量の原紙を使用した。具体的には、実施例d1〜d11および比較例d12,d13のそれぞれに、以下に示す何れか一つの原紙を採用した。
・No.1:王子マテリア製 OND120 (坪量120[g/m])
・No.2:王子マテリア製 S120 (坪量120[g/m])
・No.3:王子マテリア製 OFK180 (坪量180[g/m])
・No.4:王子マテリア製 S160 (坪量160[g/m])
・No.5:王子マテリア製 OKクラフト50 (坪量 50 [g/m])
・No.6:王子マテリア製 S115 (坪量115[g/m])
・No.7:王子マテリア製 OFLC120 (坪量120[g/m])
・No.8:王子マテリア製 OFK170 (坪量170[g/m])
・No.9:王子マテリア製 OFC150 (坪量150[g/m])
・No.10:王子マテリア製 OFC160 (坪量160[g/m])
・No.11:王子マテリア製 OFLM120 (坪量120[g/m])
・No.12:王子マテリア製 OFC170 (坪量170[g/m])
・No.13:王子マテリア製 OFK210 (坪量210[g/m])
実施例d1〜d11および比較例d12,d13の各測定ダンボール材について、上記の表6,表7に示す垂直圧縮強さが測定された。
「垂直圧縮強さ」は、測定ダンボール材のつぶれにくさに対応するパラメータである。この垂直圧縮強さは下記の準拠規格,測定機器で測定した。
>準拠規格:JIS Z 0403−2:1999
>測定機器:圧縮試験機(株式会社エー・アンド・デイ製,RTF1350)
垂直圧縮強さの測定では、測定ダンボール材から上記の準拠規格に従う寸法及び形状の試験片を切り出して使用した。
本測定では、蛇腹折りダンボール材の折目を考慮した測定を行うために、準拠規格に従う試験片(「折目無」)と、準拠規格に従う試験片に下記の折目を入れた試験片(「折目入」)との二種の試験片を用意している。
・折目:試験片の横方向の中央に縦方向に沿って延在する
―――評価―――
上記の各測定ダンボール材について、次に説明する「製函後のつぶれにくさ」と「製函後のつぶしやすさ」とを評価した。
「製函後のつぶれにくさ」は、ダンボール箱の耐荷重性に対応する評価基準である。
評価対象のダンボール箱は、下記の評価ダンボール片が手組みにて組み立てられた箱である。
評価ダンボール片は、測定ダンボール材の折目を跨ぐカット線で切り出されたダンボール片である。この評価ダンボール片で組み立てられたれた箱は、箱の何れかの面に折目を含む個所がある。この箱を「折目入りダンボール箱」と称する。
ダンボール箱の製函方法は、上述した構成aに関する実施例a1〜a6および比較例a7〜a9と同様な手組みの方法である。上述した構成aに関する実施例で述べた理由と同様の理由で、手組みによって組み立てられた測定ダンボール材の「製函後のつぶれにくさ」には、製函システムで組み立てられた測定ダンボール材の「製函後のつぶれにくさ」と相関があるものと言える。
「評価ダンボール片」は、測定ダンボール材が下記の形状・サイズにサンプルカッター(株式会社ミマキエンジニアリング社製,CF2−1218)で下記の枚数が打ち抜かれた製函用試験片である。
・形 状:A式段ボール箱が展開されたパターン
・サイズ:A式段ボール箱の側板の幅寸法170[mm],
A式段ボール箱の端板の幅寸法255[mm],
A式段ボール箱の高さ寸法350[mm]
上記の評価ダンボール片を用いて作成したA式ダンボール箱は、折目の入る位置に応じて下記の二種の態様α,βに大別される。
態様α:側板の2面のいずれかで側板の中心に折目が存在,
側板の中心は、側板の端縁から85[mm]の位置
箱の高さ方向に沿って折目が延在する
態様β:端板の2面のいずれかで端板の中心に折目が存在
端板の中心は、端板の端縁から127.5[mm]の位置
箱の高さ方向に沿って折目が延在する
「製函後のつぶれにくさ」の評価のために、下記の手順da〜ddで垂直圧縮強度の試験を実施する。
・手順da:評価ダンボール片を用いて作成したA式ダンボール箱の中に重量10
[kg]の下記重りを入れて、ホットメルト接着剤にて底面に貼着し
て封函し、A式ダンボール箱の底面全体に荷重がかかるようする。
>重り:ポリ袋(品番:VX29−HCL、寸法:横520[mm
]、縦600[mm]、厚さ0.02[mm]、日本サニパ
ック株式会社製)に水道水10[L]を投入し、水がこぼ
れない様に袋をしばって作成した。
・手順db:手順daのダンボール箱を5[個]用意し、5[個]のダンボール箱
をズレが無いように5[段]積み上げる。つまり1番下のダ
ンボール箱に約40[kg]の荷重をかける。
・手順dc:手順dbの状態で24時間静置して、1番下のダンボール箱の状態を
確認する。
・手順dd:手順da〜手順dcを、態様αおよび態様βのそれぞれのダンボール
箱について100[回]ずつ実施する。
製函後のつぶれにくさの評価では、態様αのダンボール箱を用いた1[回]の試験と態様βのダンボール箱を用いた1[回]の試験とを1セット(1[回]の試験)とし、態様αまたは態様βのどちらかがつぶれた場合は「つぶれた」と判断する。態様α,βはいずれも折目入りのダンボール箱であるため、本製函後のつぶれにくさの評価は、折目を含む個所の垂直圧縮強さの評価と言える。
製函後のつぶれにくさは下記の基準で評価する。
・◎:100[回]試験を行い、つぶれない。
・○:100[回]試験を行い、1[回]つぶれる。
・△:100[回]試験を行い、2〜4[回]つぶれる。
・×:100[回]試験を行い、5[回]以上つぶれる。
「製函後のつぶしやすさ」は、製函後のダンボール箱の圧縮しやすさに対応する評価基準である。
製函後のつぶしやすさの評価のために、下記の手順fA,fBCでダンボール箱の圧縮試験を実施する。
・手順fA:手組でA式ダンボール箱を組み立てる。A式ダンボール箱は上述した製
函後のつぶしにくさの試験と同様の評価ダンボール片を用いて態様α,
態様βの箱のそれぞれを100[箱]作成する。
・手順fB:手順fAで組み立てたダンボール箱を下記のダンボール箱圧縮潰し機に
投入し、投入されたダンボール箱がダンボール箱圧縮潰し機内で詰まっ
てしまうか否か、言い換えればダンボール箱圧縮潰し機が投入されたダ
ンボール箱をつぶせずに停止するか否かを観察する。
>段ボール箱圧縮潰し機:品番M780R−1200P,株式会社シ
ロ産業製
「製函後のつぶしやすさ」の評価でも、態様αのダンボール箱を用いた1[回]の試験と態様βのダンボール箱を用いた1[回]の試験とを1セット(1[回]の試験)とし、態様αまたは態様βのどちらかがつぶれずに機械を停止させた場合は「詰まった」と判断する。
製函後のつぶしやすさは以下の基準で評価した。
・◎:100[回]中、全て潰すことができた。
・○:100[回]中、1[回]ダンボール箱が詰まってしまった。
・△:100[回]中、2〜4[回]ダンボール箱が詰まってしまった。
・×:100[回]中、5[回]以上ダンボール箱が詰まってしまった。
上記の「製函後のつぶれにくさ」の評価と「製函後のつぶしやすさ」の評価との両方が「△」以上である場合を良好な評価とし、「製函後のつぶれにくさ」の評価および「製函後のつぶしやすさ」の評価の少なくとも一方が「×」である場合、不良な評価とした。
実施例d1〜d11では、折目有りの垂直圧縮強さが2.00[kN/m]以上であって14.00[kN/m]以下であり、「製函後のつぶれにくさ」と「製函後のつぶしやすさ」との両方で「△」以上の良好な評価が得られた。
特に、実施例d1,d2,d4〜d8,d10では、折目有りの垂直圧縮強さが2.50[kN/m]以上であって9.00[kN/m]以下であり、「製函後のつぶれにくさ」と「製函後のつぶしやすさ」との両方で「〇」以上の最も良好な評価が得られた。
実施例d3では、垂直圧縮強さが2.50[kN/m]よりも小さく、製函後のつぶれにくさの評価が「△」であった。実施例d9,d11,では、垂直圧縮強さが9.00[kN/m]よりも大きく製函後のつぶしやすさの評価が「△」であった。
一方、比較例d12では、折目有りの垂直圧縮強さが2.00[kN/m]よりも小さく、「製函後のつぶれにくさ」で「×」な評価が得られた。この比較例dd12から、垂直圧縮強さが2.00[kN/m]よりも小さいと、測定ダンボール材の強度が不足して、製造された箱の強度が確保されないものと推察される。
比較例d13では垂直圧縮強さが14.00[kN/m]よりも大きく、つぶしやすさで「×」の評価が得られた。この比較例d13から垂直圧縮強さが14.00[kN/m]よりも大きいと、ダンボール箱をつぶすために必要な外力が過度に大きくなり、製函後のダンボール箱をつぶしにくくなるものと推察される。
上記の比較例d12,d13に鑑みて、実施例d1〜d11からは、折目を含む個所の垂直圧縮強さが2.00[kN/m]以上であり14.00[kN/m]以下であることにより、測定ダンボール材を用いて製造したダンボール箱の強度(耐荷重性)の確保と、ダンボール箱のつぶしやすさとを両立できるものと言える。
実施例d3,d9,d11に鑑みて実施例d1,d2,d4〜d8,d10からは垂直圧縮強さが2.50[kN/m]以上であり9.00[kN/m]以下であることにより、製造された箱の強度が底上げされるとともに箱のつぶしやすさも良好になると言える。
<構成e>
――測定対象――
構成eに関する実施例e1〜e3および比較例e4には、実施例b1〜b3,c1〜c3,d1〜d3や比較例b4,c4,d4と同様の原紙を用い、実施例c1〜c3,d1〜d3や比較例c4,d4と同様の段繰りロールを有するコルゲータを用いて製造されたAフルートの測定ダンボール材を用いた。
上記のように製造された測定ダンボール材を用いた実施例e1〜e3および比較例e4のそれぞれについて、接着力を測定し、下記の表7に示す接着力が測定された。
なお、表7の表記に関し、「S側」は「シングルフェーサ側」(裏ライナ側)を意味し、「G側」は「グルーマシン側」(表ライナ側)を意味する。
Figure 0006825673
「接着力」は、測定ダンボール材のシートにおいて中芯の段頂(極大値に対応する個所)とライナとの接着部の引き剥がし抵抗値に対応するパラメータである。平たく言えば、測定ダンボール材のシートをなすライナの剥がれにくさに対応するパラメータである。
この接着力は、下記の手順ea〜eeで測定した。
・手順ea:測定ダンボール材の全段数Mが奇数の場合、半分の段数M/2の四捨五
入した段(すなわち真ん中の段)を基準に上下十段分のシートを採取し
、変形(たとえば凹み)のない二十枚のシートを切り出す。全段数Mが
偶数の場合、半分の段数((M/2)+1)を基準に上下十段分のシー
トを採取し、変形(たとえば凹み)のない二十枚のシートを切り出す。
・手順eb:手順eaで切り出されたシートから、以下に示すサイズに試験用のサン
プルをサンプルカッター(株式会社ミマキエンジニアリング社製,CF
2−1218)を用いて切り出す。
中芯の波形構造と平行な方向(縦方向〈CD方向〉) :50[mm]
中芯の波形構造と直交する方向(横方向〈MD方向〉):85[mm]
・手順ec:手順ebで切り出されたサンプルは、表裏のそれぞれ十枚準備する。具
体的には、シングルフェーサ側の接着力を測定するための十枚と、グル
ーマシン側の接着力を測定するための十枚とを準備する。
・手順ed:点順ecで準備されたサンプルを下記の測定装置に装着し、下記の準拠
規格,測定条件で接着力を測定した。
>準拠規格:JIS Z0402:1995
>測定装置:圧縮試験機(株式会社エー・アンド・デイ製,RTF1350)
>測定条件:ピンアタッチメント(日本T.M.C.株式会社)をサンプルに装着
し、測定装置上に置いて、剥離面が上側となるように13[mm/分
]の速度で荷重を印加し、サンプルの接着部が剥離したときの最大荷
重を測定する。
・手順ee:手順ad,aD,aCと同様に、手順edで測定された接着力から、測
定結果の精度を低下させる外乱(要因)となりうる数値を除外して、平
均値をとったものを破裂強さとした。
――評価――
上記のようにして接着力が得られた実施例e1〜e3および比較例e4について、ライナ剥がれを評価した。
「ライナ剥がれ」とは、箱の品質の高低や外観の良否などに対応する評価基準である。このライナ剥がれは、下記の手順eA〜eCで評価した。
・手順eA:構成a,bに係る製函性の評価と同様に、測定ダンボール材の折目を跨
ぐカット線で評価ダンボール片をサンプルカッター(株式会社ミマキエ
ぐンジニアリング社製,CF2−1218)を用いて切り抜く。なお、
ぐ一枚目の評価ダンボール片を切り抜くにあたって新しいカッタ刃に交
ぐ換し、このカッタ刃を百枚目(最後)まで交換せずに使用した。
・手順eB:手順eAで切り抜かれた評価ダンボール片を手組みで組み立てる。「評
価ダンボール片」は、測定ダンボール材が下記の形状・サイズにサンプ
ルカッター(株式会社ミマキエンジニアリング社製,CF2−1218
)で下記の枚数が打ち抜かれた試験片である。
形 状:A式段ボール箱が展開されたパターン
サイズ:A式段ボール箱の側板の幅寸法356[mm],
A式段ボール箱の端板の幅寸法159[mm],
A式段ボール箱の高さ寸法256[mm]
枚 数:100[枚]
・手順eC:手順eBで組み立てられた評価箱におけるライナ(シート)の剥がれの
有無を観察する。
上記のライナ剥がれは、下記の基準で評価した。
・◎:全て(100[箱])の評価箱において、ライナの剥がれが見られなかった。
・○:100[箱]の評価箱のうち1〜2[箱]にライナの剥がれが見られた。
・△:100[箱]の評価箱のうち3〜4[箱]にライナの剥がれが見られた。
・×:100[箱]の評価箱のうち5[箱]にライナの剥がれが見られた。
なお、ライナ剥がれに関して「○」の評価が得られた実施例e2,e3については、実施例e2で1[箱]にライナの剥がれが見られ、比較例e3で2[箱]にライナの剥がれが見られた。そのほか、ライナ剥がれに関して「△」の評価が得られた実施例や比較例は無かった。
実施例e1〜e3では、シングルフェーサ側およびグルーマシン側で測定された接着力の平均値(以下「平均接着力」と称する)が140[N]以上であって、ライナ剥がれについて「○」以上の評価が得られた。特に、平均接着力が220[N]以上の実施例e1では、「◎」の評価が得られた。
一方、平均接着力が140[N]未満の比較例1では、ライナ剥がれについて「×」の評価が得られた。
上記の平均接着力が140[N]以上であれば、測定ダンボール材から評価ダンボール片が切り抜かれるときにライナが剥がれにくくなり、評価ダンボール片から評価箱が組み立てられるときにもライナが剥がれにくくなると推察される。さらに、平均接着力が220[N]以上であれば、評価ダンボール片の切り抜き時や組み立て時の双方でライナの剥がれを防止することができると推察される
よって、平均接着力が140[N]以上であれば、評価箱のライナが剥がれにくくなると言える。延いては、評価箱の外観が低下するのを抑えることができ、評価箱の品質を確保することができるとも言える。
<構成f>
――測定対象――
まず、下記の表9,表10に示す構成fに関する実施例f1〜f7および比較例f8〜f14の測定ダンボール材の構成を説明する。
Figure 0006825673
Figure 0006825673
構成fに関する実施例f1〜f7および比較例f8〜f14のライナ原紙には、上記表9,表10に示すように、以下に示す二種の坪量のうち何れか一つの坪量を採用した。
・(ライナ原紙)坪量170[g/m2]〔OFK170:王子マテリア株式会社製〕
・(ライナ原紙)坪量280[g/m2]〔OFK280:王子マテリア株式会社製〕
また、実施例f1〜f7および比較例f8〜f14では、下記の中芯原紙を用いた。
・(中芯原紙)坪量120[g/m2]〔S120:王子マテリア株式会社製〕
・(中芯原紙)坪量160[g/m2]〔S160:王子マテリア株式会社製〕
・(中芯原紙)坪量100[g/m2]〔軽量中芯100:王子マテリア株式会社製〕
・(中芯原紙)坪量220[g/m2]〔OFK220:王子マテリア株式会社製〕
上記のように製造された実施例f1〜f7および比較例f8〜f14の測定ダンボール材のそれぞれでは、表9,表10に示すように表面粗さが調節される。
実施例f1〜f7および比較例f8〜f14について表面粗さを測定したところ、表9,表10に示す表面粗さが得られた。
「表面粗さ」は、測定ダンボール材のそれぞれの表面(ひょうめん)の凹凸状態に対応するパラメータである。実施例f1〜f7および比較例f8〜f14の測定ダンボール材のそれぞれの表面粗さは下記の手順fa〜fcで測定した。
・手順fa:下記のレーザ顕微鏡を用いて倍率12倍で表ライナの表面と裏ライナの
表面とのそれぞれを表面観察して画像を取り込む。
>レーザ顕微鏡:測定部「VR−3200」,解析ソフトウェア「V
R−3000」,株式会社KEYENCE製
・手順fb:手順faで得られた画像に対して下記サイズの測定エリアを設定する。
>サイズ:横方向(MD方向)22[mm],
縦方向(CD方向)10[mm]
・手順fc:レーザ顕微鏡に付属の解析ソフトウェアを用いて手順fbで設定した測
定エリア内の画像に基づき表面粗さを測定する。表面粗さは、ISO2
5178に準じた面の算術平均粗さSaである。
実施例f6,f7と比較例f13,f14とでは測定ダンボール材として、ABフルート,ACフルートが採用されている。実施例f6,f7,比較例f13,f14のそれぞれの「表ライナの面の粗さSa」,「裏ライナの面の粗さSa」は下記に特定されたフルート面を対象に測定する。
・実施例f6,比較例f13
>表ライナの面の粗さSa:Bフルート面の表ライナ
>裏ライナの面の粗さSa:Aフルート面の裏ライナ
・実施例f7,比較例f14
>表ライナの面の粗さSa:Cフルート面の表ライナ
>裏ライナの面の粗さSa:Aフルート面の裏ライナ
上記の手順fa〜fcにより測定した表ライナの面の粗さSaと裏ライナの面の粗さSaとを用いた下記の式fで「粗さ比」を算出する。
・粗さ比=裏ライナの面の粗さSa/表ライナの面の粗さSa・・・式f
―――評価―――
上記のようにして表ライナの面の粗さSa,裏ライナの面の粗さSa,粗さ比の得られた実施例f1〜f7および比較例f8〜f14の測定ダンボール材を対象に、搬送性試験を実施して、搬送性を評価した。
この搬送性は、製函システム(自動包装機)において測定ダンボール材が搬送される際の姿勢の良否に対応する評価基準である。
搬送性試験は、試験対象として実施例f1〜f7および比較例f8〜f14の測定ダンボール材のそれぞれを1つずつ用意して、下記の手順fA〜fCで実施した。
手順fA:自動包装機のニップロールで幅方向(測定ダンボール材の縦方向に対応す
るCD方向)中央部から幅方向の一側および他側のそれぞれへ650[m
m]離間する各位置にマーキングをする。
手順fB:測定ダンボール材の縦方向両端を手順fAでマーキングした位置に位置
合わせして、測定ダンボール材を自動包装機に通す。
手順fC:測定ダンボール材がニップロールを通過した後にマーキング位置よりも中
央部から離間する方向へ10[mm]以上へ蛇行して搬送された回数を数
える。
上記の手順fCでは、測定ダンボール材の蛇行が確認された場合は自動包装機を停止して、測定ダンボール材の縦方向の両端部のそれぞれをマーキングの位置に合わせるよう手動で調整する。調整後、自動包装機を稼動させて、測定ダンボール材の搬送を再開する。この作業を、一つの測定ダンボール材を搬送し終えるまで繰り返す。
搬送性試験により計測された蛇行の回数は下記の基準で評価する。
◎:蛇行は1[回]も確認されなかった
○:蛇行が1[回]確認された
△:蛇行が2[回]から4[回]確認された
×:蛇行が5[回]以上確認された
実施例f1〜f7では、表ライナおよび裏ライナのそれぞれの面の粗さSaが5.0[μm]以上であって20.0[μm]以下であって、粗さ比が3.0以下であり、搬送性について「〇」以上の良好な評価が得られた。
一方、表ライナまたは裏ライナの面の粗さSaが5.0[μm]未満もしくは20.0[μm]よりも大きいか、あるいは、粗さ比が3.0よりも大きい比較例f8〜f14では、ライナ剥がれについて「△」以下の不良な評価が得られた。
表ライナおよび裏ライナのそれぞれの面の粗さSaが5.0[μm]以上であって20.0[μm]以下であって、粗さ比が3.0以下であれば、ニップロールによってダンボール材1が挟持された姿勢が安定し、測定ダンボール材が流れ方向に対して蛇行しにくくなるものと推測される。
よって、表ライナおよび裏ライナのそれぞれの面の粗さSaが5.0[μm]以上であって20.0[μm]以下であって、粗さ比が3.0以下であれば、搬送システムにおける測定ダンボール材の搬送性が向上するものと言える。
<構成g>
――測定対象――
まず、下記の表11,表12に示す構成gに関する実施例g1〜g7および比較例g8〜g13の測定ダンボール材の構成を説明する。
Figure 0006825673
Figure 0006825673
実施例g1〜g7および比較例g8〜g13の測定ダンボール材には、下記の坪量の中芯原紙を用いた。
・中芯原紙:160[g/m2]〔S160:王子マテリア株式会社製〕
実施例g1〜g7および比較例g8〜g13に用いる測定ダンボール材のライナ原紙は、特許6213364号公報のダンボール用ライナの製造方法に従い、米坪170g/m2のライナ原紙を作製する。 長さ平均繊維長の異なるライナ原紙は、針葉樹クラフトパルプと古紙パルプの配合率を変更して作製する。なお一般にライナ原紙は多層構造をとっており、表層(測定ダンボール材の滑り角度を測定する面)のみパルプ配合率を変更し、その他の層は古紙パルプ100%で作製した。
実施例g1〜g7および比較例g8〜g13に用いる表ライナおよび裏ライナのライナ原紙のそれぞれでは、表11,表12に示すように「配合率」と「長さ平均繊維長」が設定されている。
上記の「配合率」は、ライナ原紙に含まれる針葉樹クラフトパルプと古紙との配合割合(百分率)でを示すパラメータである。
上記の「長さ平均繊維長」は、ライナ原紙に含まれるパルプ繊維の長さ(繊維長)の平均に対応するパラメータである。
「長さ平均繊維長」は、下記の手順fa〜feで測定される。
手順fa:測定ダンボール材の最上段から2段目を40[cm]角に切り出し、その
40[cm]角ダンボールシートを測定に供試する。切り出し位置はダン
ボールシート幅の真ん中とする。ダンボールシートをイオン交換水に15
分間浸漬し、イオン交換水から取り出す。
手順fb:手順faで取り出したライナ原紙(表ライナおよび裏ライナ)のそれぞれ
を、ライナ原紙が破れないよう手で剥がすことで中芯原紙から分離する。
手順fb2:手順fbで得られたライナ原紙の表層(滑り角度で測定される層)を手
で剥がす。
手順fc:手順fb2で分離したライナ原紙の表層をイオン交換水に浸し、濃度2%
に調整した上で、24時間整置する。
手順fd:手順fcにより濃度を調整したライナ原紙を24時間後浸した後、下記の
パルプ離解機を用いて20分間離解して、パルプを繊維状に分解する。
>パルプ離解機:HOMODISPER Model2.5,PRIMI
X社製
手順fd:手順fdで離解後のスラリー(パルプ繊維)を分取し、下記の繊維長測定
機を使用して、JISP8226−2:2011に準拠した繊維長を測定
した。
>繊維長測定機:品番FS−5 UHDベースユニット,バルメット社製
実施例g1〜g7および比較例g8〜g13に用いる表ライナおよび裏ライナのライナ原紙のそれぞれでは、表11,表12に示すように、以下に示す四種の配合割合の何れか一つ、および、以下に示す四種の長さ平均繊維長の何れか一つのそれぞれを採用した。
・配合率 (針葉樹の配合率/古紙の配合率):30/70,
70/30,
100/0,
0/100
・ 長さ平均繊維長 :1.0[mm],
1.3[mm],
1.7[mm],
2.0[mm]
実施例g1〜g7および比較例g8〜g13では、表11,表12に示す種々の滑り角度を得た。
針葉樹クラフトパルプの繊維は例えば2.00mmであり、古紙の繊維は例えば1.04mmである。針葉樹クラフトパルプのほうが古紙よりも繊が長いので、針葉樹クラフトパルプの配合割合が大きいと表面が粗くなりやすい。反対に古紙の配合割合が大きいと表面が平滑になりやすい。
上記のように製造された測定ダンボール材を用いた実施例g1〜g7および比較例g8〜g13それぞれについて「滑り角度」を測定し、表11,表12に示す滑り角度が測定された。
表11,表12における「表」,「裏」の表記のそれぞれは、測定ダンボール材を水平面に載置した状態で高さ方向の一側を向いた面,高さ方向の他側を向いた面に対応している。
なお、ABフルートの実施例g6,比較例g12で「表」はAフルートの一側の面であり,「裏」はBフルートの他側の面である。ACフルートの実施例g7,比較例g13で表」はAフルートの一側の面であり,「裏」はCフルートの他側の面である。
「滑り角度」の測定は、段ボール業界規格JSC T0005:2000に準じて実施された。ただし、試験片は下記のサイズであり、滑り角度は試験片ごとに下記の二態様で測定される。
・ サ イ ズ :縦寸法200[mm],
横寸法300[mm]
・ 態様G1:試験片の表ライナどうしが接するように積み重ねた態様
・ 態様G2:試験片の裏ライナどうしが接するように積み重ねた態様
なお、ABフルートの実施例g6,比較例g12と、ACフルートの実施例g7,比較例g13とでは、態様G1,態様G2は下記の態様である。
・ 態様G1:Aフルートの表ライナどうしが接するように積み重ねた態様
・ 態様G2:Bフルート面またはCフルート面の裏ライナどうしが接するよう
に積み重ねた態様
態様G1では、表ライナどうしの滑り角度を測定する。態様G2では、裏ライナどうしの滑り角度を測定する。
表ライナどうしの滑り角度と裏ライナどうしの滑り角度とのそれぞれは、試験片毎に五回ずつ横方向に対応する方向への滑り角度を測定して平均値を計測する。
―――評価―――
上記の実施例g1〜g7および比較例g8〜g13の測定ダンボール材をパレット上に静置し、パレットごとフォークリフトで搬送した後の状態を観察し、「ダンボール材のズレやすさ」を評価した。
「ダンボール材のズレやすさ」は、蛇腹折りの測定ダンボール材の折目が設けられた端面のズレ(以下では「端面からのズレ」という)である。「端面からのズレ」は、端面において、測定ダンボール材を縦方向(CD方向)から視て折目が横方向(MD方向)にズレている距離である。
「端面のズレ」は、以下に示す手順Ga〜Geで測定した。
・手順Ga:測定ダンボール材のうち、上から全段数の10%の段数を除いた段を
測定対象とする。10%の数値が小数点以下の数値を含むならば、小
数点以下の数値を四捨五入した。
・手順Gb:手順Gaで測定対象とした測定ダンボール材に基準線をマーカで引く。
この基準線は、横方向から観察して縦方向に最も凹んでいる部分を通る
垂直な線とする。
・手順Gc:手順Gbで測定対象とした測定ダンボール材を上中下の三パートに分け
、各パートで最もズレが大きくなっている20[段]のそれぞれについ
て、基準線から横方向へ離間する距離を測定する。
・手順Gd:手順Gcで測定された距離から、測定結果の精度を低下させる外乱(要
因)となりうる数値(いわば大きく外れた距離のもの)を除外する。
・手順Ge:各距離のうちの最大値を端面のズレとする。
手順Gbの基準線に対応する位置は、測定ダンボール材を縦方向から視て折目の位置のバラツキが所定の位置範囲内の位置であり、折目の標準的な位置として予め設定される。たとえば、測定ダンボール材を横方向から観察して縦方向に最も凹んでいる折目を通る垂直な線上に基準線に対応する位置が設定される。
「折目の位置」は、測定ダンボール材の横方向の位置である。さらに、「折目の位置のバラツキ」は、基準線に対応する位置に対して横方向へ折目が離間する寸法のバラツキである。「折目の位置のバラツキ」は、ダンボール材における端面のズレとも言える。
手順Gdの「外乱となりうる数値の除外」では、測定ダンボール材の全ての段において測定された端面のズレを母集団としたときに、その母集団の標準偏差が±3σから外れる値が排除される。
上記のように測定された端面のズレ(表11,表12における「ダンボール材のズレやすさ」)は、以下の基準で評価した。
◎:ズレが5[mm]未満
○:ズレが5[mm]以上10[mm]未満
△:ズレが10[mm]以上20[mm]未満
×:ズレが20[mm]以上
実施例g1〜g7では、表ライナどうしの滑り角度,裏ライナどうしの滑り角度ともに、17[°]以上であって30[°]以下であり、「ズレやすさの評価」で「〇」以上の良好な評価が得られた。
一方、表ライナどうしの滑り角度および裏ライナどうしの滑り角度の少なくとも何れか一方が17[°]未満の比較例g8〜g13では、「ズレやすさの評価」で「△」以下の不良な評価が得られた。
比較例g8〜g13からは、表ライナどうしの滑り角度および裏ライナどうしの滑り角度の何れかが17[°]よりも小さいと、ダンボール材がズレやすく荷姿が安定しないため、例えばフォークリフトで製函システムへ搬送する際の安定性も不十分になるものと推測される。また、表ライナどうしの滑り角度および裏ライナどうしの滑り角度の何れかが30[°]よりも大きいと、シート2のズレが許容されにくく却って荷崩れを招きやすくなるおそれがあると推測される。また、ダンボール材がズレにくいと、製函システム等の搬送機にダンボール材を通した際に、フィードし難いという欠点があるため適さない。
表ライナどうしの滑り角度が17[°]以上であって30[°]以下であり、裏ライナどうしの滑り角度が17[°]以上であって30[°]以下であれば、多少のズレは許容されつつ滑りにくさが確保される、例えばフォークリフトで製函システムへ搬送する際の安定性を確保できるものと推測される。
よって、表ライナどうしの滑り角度が17[°]以上であって30[°]以下であり、裏ライナどうしの滑り角度が17[°]以上であって30[°]以下であれば、製函システムへのダンボール材の搬送性が向上するものと言える。
<構成h>
――測定対象――
まず、下記の表13〜表18に示す構成hに関する実施例h1〜h9および比較例h10〜h13の測定ダンボール材の構成を説明する。
Figure 0006825673
Figure 0006825673
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構成hに関する実施例h1〜h9および比較例h10〜h13に用いる測定ダンボール材には、下記の坪量のライナ原紙と中芯原紙とを用いた。
・ライナ原紙:170[g/m2]〔OFK170:王子マテリア株式会社製〕
・ 中芯原紙:160[g/m2]〔 S160:王子マテリア株式会社製〕
実施例h1〜h9および比較例h10〜h13に用いる測定ダンボール材のそれぞれには、連続するシートを蛇腹折りに折り返す折目が形成されており、折目に対応する罫線の深さを変えることで、表13〜表18に示す凸部の高さ,凹部の深さ,凹部の幅の三種の寸法を得た。
測定ダンボール材の折目には、シートが展開された状態において平面状に延在する面から突出した凸部と面から凹んだ凹部とが設けられている。凹部や凸部が折目の所定の状態を測定する対象に用いられる凹凸構造である。
この凹凸構造における上記の三種の寸法を測定する。
上記の三種の寸法は下記のように特定される。
・凸部の高さ:シートが展開された状態で平面状に延在する面から凸部の頂部まで
の寸法。
・凹部の深さ:シートが展開された状態で平面状に延在する面から凸部の頂部まで
の寸法を測定する。
・凹部の幅 :その凹部を挟んで隣接した凸部どうしの頂部が折目の延在する方向
に直交する方向に離間する寸法を測定する。凹部に隣接する凸部が
存在しない場合、凸部の頂部に替えて、シートで平面状に延在する
面から凹み始めた個所を基準にして測定する。
表13〜表18に示す凸部の高さ,凹部の深さ,凹部の幅は、一つの折目につき、下記の三個所の測定個所X1,X2,X3で測定される。
・X1:折目に沿う方向の一側の端部から中央部へ向かって10[mm]の位置
・X2:折目に沿う方向の他側の端部から中央部へ向かって10[mm]の位置
・X3:折目に沿う方向の中央部
中央部とは、折目の全長の中間点を言う。
測定個所X1〜X3での測定は、測定ダンボール材の厚み方向の一側および他側の両面で実施される。
シングルフルートの実施例h1〜h7,比較例h10〜h12では、一つの折目を対象に測定個所X1〜X3で上記の三種の寸法を測定する。ダブルフルートの実施例h8,h9,比較例13では、Aフルート側を折り重ねる折目と、BフルートまたはCフルート側を折り重ねる折目との二つの折目のそれぞれを対象に定個所X1〜X3で上記の三種の寸法を測定する。
表14,表17では、Aフルート側を折り重ねる折目の測定結果を「AB(A側から折)」欄に記載しており、Bフルート側を折り重ねる折目の測定結果を「AB(B側から折)」欄に記載している。
表15では、Aフルート側を折り重ねる折目の測定結果を「AC(A側から折)」欄に記載しており、Cフルート側を折り重ねる折目の測定結果を「AC(C側から折)」欄に記載している。
凸部の高さ,凹部の深さ,凹部の幅の測定は下記の手順ha,hbで測定される。
・手順ha:測定ダンボール材の折目付近を下記のレーザ顕微鏡を用
いて倍率12倍で表面観察して、画像を取り込む。
>レーザ顕微鏡:測定部「VR−3200」,解析ソフトウェア「V
R−3000」,株式会社KEYENCE製
・手順hb:レーザ顕微鏡に付属の解析ソフトウェアを用いて、手順fbで取り込
んだ画像に基づいて、凸部の高さ,凹部の深さ,凹部の幅をそれぞれ
測定する。
一つの測定個所で複数の凹部が存在する場合、複数の凹部のうち最大の深さの一個を対象とし、その凹部の深さと、その凹部の幅と、その凹部に隣接する凸部の高さとを採用する。凹部に隣接する凸部が二個ある場合は、二個のうち大きい凸部の高さを採用する。
上記のように一つの折目の測定個所X1〜X3で凸部の高さ,凹部の深さ,凹部の幅を測定した後、測定した凸部の高さ,凹部の深さ,凹部の幅のそれぞれについて変動係数を算出する。
各寸法の「変動係数」のそれぞれは、三点の測定個所X1〜X3でのその寸法のバラツキを割合(百分率)で示すパラメータである。変動係数は、下記式hを用いて、複数の測定個所X1,X2,X3で測定された寸法の標示偏差を、複数の測定個所X1,X2,X3での寸法の平均値で除算して求める。
・変動係数=(複数個所での標示偏差)/(複数個所での平均値)・・・式h
―――評価―――
上記のように凸部の高さ,凹部の深さ,凹部の幅,変動係数が得られた実施例h1〜h9および比較例h10〜h13の測定ダンボール材を対象に、搬送性試験を実施して、搬送性を評価した。
搬送性は、上述した構成fに関する実施例の搬送性と同様な、測定ダンボール材が製函システム(自動包装機)の搬送経路を搬送される際の姿勢の良否に対応するパラメータである。
搬送性試験は、上述した構成fに関する実施例の手順fA〜fCと同様の手順により実施され、搬送性試験により計測された蛇行の回数は、上述した構成fに関する実施例での評価基準と同様の基準で評価する。
実施例h1〜h9では、凸部の高さ,凹部の深さ,凹部の幅の全ての変動係数が10[%]以下であり、搬送性で「〇」以上の良好な評価が得られた。
一方、凸部の高さ,凹部の深さ,凹部の幅の何れかの変動係数が10[%]よりも大きい比較例h10〜h13では、搬送性で「△」以下の不良な評価が得られた。
ABフルートの比較例13では、Bフルート側を折り重ねる折目では全ての変動係数が10[%]以下であるものの、Aフルート側を折り重ねる折目で変動係数の一部が10[%]以上あり、搬送性で×の評価が得られた。
比較例h10〜h13からは、折目の延在する方向に沿って折目の状態のバラツキが大きいと、ニップロール等によって測定ダンボール材が挟持された姿勢がズレやすくダンボール材1が流れ方向に対して蛇行するものと推測される。
また、比較例h13からは、タブルフルートの場合、一方のフルート側の折目と他方のフルート側の折目とのどちらかで折目の状態のバラツキが大きいと搬送性が悪化するものと推測される。
比較例h10〜h13に鑑みて、実施例h1〜h9からは、折目の延在する方向に沿って折目の状態のバラツキが小さいと、ニップロールによって測定ダンボール材が挟持された姿勢が安定し、また、搬送経路上においても姿勢が安定し、測定ダンボール材が流れ方向に対して蛇行しにくくなるものと推測される。
よって、凸部の高さ,凹部の深さ,凹部の幅の全ての変動係数が10[%]以下であり、製函システムにおける測定ダンボール材の搬送性が向上するものと言える。
[3.三構成を組み合わせた実施例]
さいごに、構成a,bおよびcを組み合わせた実施例abcを述べる。
なお、実施例abcについて測定対象や評価の詳細は、特に言及
しない限り、上述の内容と同様である。
――測定対象――
実施例abcは、以下に列挙するパラメータを兼ね備えた測定ダンボール材を対象にして評価した。
・ 厚 み 寸法 :5.1[mm]
・平面圧縮強さ:170[kpa]
・ 角 度 比 :0.00
・ 平均接着力 :237.5[N]
>シングルフェーサ側:230[N]
> グルーマシン側:245[N]
――評価――
実施例abcの測定ダンボール材に対して、製函性,罫割れ,印刷適性,ライナ剥がれのそれぞれを評価した。その結果、製函性,罫割れ,印刷適性,ライナ剥がれの何れにおいても優良(上述の「◎」)の評価が得られた。
実施例abcの評価結果より、構成a,b,cを組み合わせた場合には、各構成a,b,cに対応する評価が損なわれることなく優良なことがわかる。
さらに、上記のパラメータを有する測定ダンボール材を製函システムに用いた場合には、箱の組み立て速度(包装スピード)を高めることができると推察される。その理由としては、下記の理由α,βが挙げられる。
・理由α:ライナ剥がれの優良な評価が得られることから、ライナの剥がれを抑えつ
つ、測定ダンボール材を評価ダンボール片に切り抜く加工(すなわち「ス
リッタ加工」)の速度を高められると推察されること。言い換えれば、ス
リッタ加工において切り抜き対象のダンボール材をスリッタによって高速
で切り抜いたとしても、その衝撃でライナが剥がれにくいと推察されるこ
と。
・理由β:製函性の優良な評価が得られることから、製函性を確保したうえで、製函
システムの包装速度を高められると推察されること。言い換えれば、評価
ダンボール片を組み立てる装置ユニット(たとえば包装用ロボットアーム
)が組み立て対象のダンボール材を高速で折り立てたとしても、罫線にお
いて折れ曲がる(罫線以外の個所での折れ曲がりが抑えられる)と推察さ
れること。
[III.変形例]
上述の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
たとえば、ダンボール材が製函システム用の資材である場合には、意図的に形成された切れ込みやミシン目などの追加加工が折目に施されていないことが好ましく、ダンボール材におけるライナの表層に設けられる罫線を起点(たとえば罫線を内側)に180[°]折り返される個所が折目であることが好ましい。一方、ダンボール材が製函システム用以外の資材である場合には、切れ込みやミシン目などの加工が折目に施されていてもよい。
上述したダンボール材や測定ダンボール材に用いるライナ原紙および中芯原紙は、例に挙げた品番の製品に限らず、特許6213364号公報のダンボール用ライナの製造方法で作製したライナ原紙や、特開2017−218721号公報の段ボール原紙の製造方法で作製した中芯原紙を用いても良い。
1 ダンボール材
10 段目(波目)
2 シート
20 シート対
21 第一シート
22 第二シート
23 第三シート
30 凹部
32 凸部
F 折目
L 補助線
L1 縦寸法(第一寸法)
L2 横寸法(第二寸法)
L3 高さ寸法(第三寸法)
D1 凸部の高さ
D2 凹部の深さ
W1 凹部の幅

Claims (2)

  1. 連続する両面ダンボールにおいて矩形状のシートが第一方向に沿って直線状に延在する折目のそれぞれにおいて前記折目の沿う平面で前記第一方向に直交する第二方向へ折り返され、前記第一方向および前記第二方向の双方に直交する第三方向に沿って前記シートが積み重ねられた蛇腹折りのダンボール材であって、
    前記シートの表ライナおよび裏ライナは、前記表ライナおよび裏ライナのライナ原紙に含まれるパルプ繊維の長さの平均に対応するパラメータで、JIS P 8226−2:2011に準拠して測定された長さ平均繊維長が1.3[mm]以上であって2.0[mm]以下であり、
    JSC T0005:2000に準拠して前記シートが蛇腹折りに積み重ねられた姿での前記ダンボール材の搬送性に対応するパラメータとして測定された、不連続な前記シートの前記表ライナどうしが接するように前記シートを積み重ねた際の前記第二方向に対応する方向の滑り角度が17[°]以上であって30[°]以下であり、
    JSC T0005:2000に準拠して前記シートが蛇腹折りに積み重ねられた姿での前記ダンボール材の搬送性に対応するパラメータとして測定された、不連続な前記シートの前記裏ライナどうしが接するように前記シートを積み重ねた際の前記第二方向に対応する方向の滑り角度が17[°]以上であって30[°]以下である
    ことを特徴とするダンボール材。
  2. JIS Z0403−2に準拠して測定された前記折目を含む箇所の垂直圧縮強さが2.00[kN/m]以上であり14.00[kN/m]以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載のダンボール材。
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