JP6825355B2 - 薄肉鋳片の製造装置及び薄肉鋳片の製造方法 - Google Patents
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Description
ここで、特許文献1,2においては、冷却ドラムの熱膨張による変形を抑制し、安定して鋳造を行うために、溶融金属溜まり部とは反対側の領域において、冷却ドラムを加熱あるいは冷却するように構成されている。
フライングスタート法においては、冷却ドラムを回転した状態で溶融金属の注湯を実施する。この場合、注湯開始直後の湯流れの不安定による鋳片形状の不健全化が避けられなかった。
一方、ホールディングスタート法においては、溶融金属を溜めてから冷却ドラムの回転を開始することから、凝固シェルを十分に形成させてから冷却ドラムを回転することになり、湯流れの不安定による鋳片形状の不健全化を抑制することができる。
次に、図6(3)に示すように、注湯ノズル18の吐出孔が溶融金属3中に浸漬され、定常状態となる。一対の冷却ドラム11,11の周面に形成された凝固シェル5が圧着され薄肉鋳片が形成される。
ドラム突出部35がドラムキス点を通過した後は、図7(5)に示すように、冷却ドラム11,11が前進して冷却ドラム11,11間のギャップが元に戻るが、ドラム突出部35のドラム回転方向後方側の形状が急激に変化しているため、冷却ドラム11,11の移動が追い付かず、薄肉鋳片1を十分に圧下することができず、凝固シェル5,5の圧着が不十分となる部分が生じる。
そして、図7(6)に示すように、凝固シェル5,5の圧着が不十分な箇所は、その板厚が肥大化する。圧着しなかった箇所の内部には、高温の溶融金属3が閉じ込められており、復熱して薄肉鋳片1が破断するおそれがある。
また、冷却ドラムの局所的な変形を抑制するために、速やかに溶融金属を溜めて注湯ノズルを早期に浸漬させようとした場合には、溶融金属の吐出量及び吐出流速が増加し、却って局所的な変形が促進されてしまうおそれがある。一方、ゆっくり溶融金属を注湯した場合には、溶融金属の吐出流が衝突する時間が増加し、やはり局所的な変形が促進されてしまうおそれがある。このように、単に溶融金属の注湯条件を調整しただけでは、上述の課題を解決することはできなかった。
この場合、予熱装置によって冷却ドラムを予熱した後に予熱装置を取り外すことができるので、鋳造時において溶融金属が予熱装置と接触することを防止でき、予熱装置の劣化を抑制することができる。また、予熱装置を取り外した後に、注湯ノズルやチャンバを設置することができ、鋳造開始準備作業の作業性低下を抑制することができる。
この場合、冷却ドラムの周面の一部を局所的に短時間で加熱することができる。よって、ドラム突出部のドラム回転方向後方側を精度良く加熱して熱膨張させることができ、冷却ドラムの1回転目においてドラム突出部がドラムキス点を通過した際に、冷却ドラムを円滑に移動させることができ、薄肉鋳片を十分に圧下することができる。
この場合、予熱工程において、冷却ドラムの周方向で加熱温度を変化させることにより、冷却ドラムの熱膨張量を調整することができ、ドラム突出部のドラム回転方向後方側の形状を精度良く制御することができる。
また、本実施形態では、溶融金属として溶鋼を用いており、鋼材からなる薄肉鋳片1を製造するものとされている。
ここで、本実施形態である薄肉鋳片の製造装置10においては、図3(a)に示すように、鋳造開始前に、冷却ドラム11の回転を停止した状態で、冷却ドラム11の周面のうち注湯ノズル18からの吐出流が衝突する位置より上方の領域を局所的に加熱する予熱装置30を備えている。
本実施形態においては、予熱装置30は、IHヒータ方式とされている。また、本実施形態においては、この予熱装置30は、着脱可能とされており、鋳造開始前に設置して冷却ドラム11の加熱を行い、所定時間加熱した後で予熱装置30を取り外し、図2に示すように、チャンバ20及び注湯ノズル18を設置することが可能な構成とされている。
さらに、本実施形態においては、予熱装置30は、冷却ドラム11の周方向において加熱温度が変化するように調整可能とされている。
そして、予熱装置30が配設される位置は、θ=40°〜90°の範囲内とされている。なお、予熱装置30の配置位置は、注湯ノズル18からの吐出流が衝突する位置のθ以上で、θ=85°以下の範囲内とすることが好ましく、注湯ノズル18からの吐出流が衝突する位置のθ+2°(本実施形態では42°)以上θ=80°以下の範囲内とすることがさらに好ましい。
なお、IHヒータ方式の予熱装置30においては、端部を十分に加熱することができないため、冷却ドラム11の幅方向端部にまで予熱装置30を配置しても冷却ドラム11の端部から少なくとも50mmの領域Eを加熱しないように構成することができる。
この状態で、冷却ドラム11,11の上方に、上述の予熱装置30を設置し、冷却ドラム11の予熱を行う(予熱工程)。
なお、加熱温度が冷却ドラム11の周方向で変化するように構成されることが好ましく、予熱装置30による冷却ドラムの加熱温度が最も高くなる位置のθは、注湯ノズル18からの吐出流が衝突する位置のθ+5°以上、θ+10°以下の範囲内とすることが好ましい。本実施形態では、加熱温度が最も高くなる位置のθは48°であり、ドラム回転方向前方側ならびに後方側に向かうにしたがい加熱温度が漸次低くなるように設定されている。
ドラム突出部35がドラムキス点Pを通過した後には、図4(4)に示すように、冷却ドラム11,11が前進して冷却ドラム11,11の間のギャップが小さくなる。
ここで、本実施形態では、予熱突出部36によってドラム突出部35のドラム回転方向後方側部分の傾斜がなだらかにされていることから、ドラム突出部35及び予熱突出部36の形状に追従して冷却ドラム11,11が円滑に移動することになる。
よって、ドラム突出部35に起因して薄肉鋳片1の内部に未凝固部が生じることを抑制でき、薄肉鋳片1の破断を抑制することができる。
例えば、本実施形態では、予熱装置をIHヒータ方式として説明したが、これに限定されることはなく、シリコニット発熱体を用いたヒータ等の他の方式の予熱装置を適用してもよい。
また、本実施形態では、予熱装置を取り外し可能なものとして説明したが、これに限定されることはなく、鋳造時に干渉しない構造であれば、常時設置する方式としてもよい。
さらに、本実施形態では、冷却ドラムの周方向で加熱温度を変化させるように構成したものとして説明したが、これに限定されることはない。
図1に示す薄肉鋳片の製造装置を用いて、炭素量0.05mass%の炭素鋼からなる薄肉鋳片の製造を行った。
ここで、冷却ドラムとして、周面に厚さ1mmのNiめっき膜を形成した銅製で内部冷却方式のものを使用した。なお、冷却ドラムの幅を1000mm、外径を500mmとした。また、定常鋳造の鋳片厚さを1.5mmとした。
比較例では、鋳造開始前の予熱を実施しなかった。
一方、本発明例では、問題なく鋳造を開始でき、安定して鋳造を行うことができた。
このため、比較例においては、冷却ドラムの1回転目にドラム突出部がドラムキス点を通過した後に、冷却ドラムの圧下が追い付かず、凝固シェルの圧着が不十分となる部分が生じ、ブレークアウトが生じたと推測される。
このため、本発明例においては、冷却ドラムの1回転目にドラム突出部がドラムキス点を通過した後でも、冷却ドラムを十分に圧下することができ、安定して鋳造を実施できたと推測される。
3 溶鋼(溶融金属)
5 凝固シェル
7 ダミーシート
10 薄肉鋳片の製造装置
11 冷却ドラム
16 溶鋼溜まり部(溶融金属溜まり部)
30 予熱装置
35 ドラム突出部
36 予熱突出部
Claims (5)
- 回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰を有し、これら一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶融金属溜まり部に注湯ノズルを介して溶融金属を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造装置であって、
鋳造開始前に、前記冷却ドラムの回転を停止した状態で、前記冷却ドラムの周面のうち、ドラム周方向の位置としてドラムキス点からの俯角θが40°から90°の範囲内、並びにドラム幅方向の位置としてノズル吐出孔の配設幅以上であり、その幅端部位置がドラム端部から50mm以上の範囲の領域を局所的に加熱する予熱装置を有することを特徴とする薄肉鋳片の製造装置。 - 前記予熱装置は、予熱終了後に取り外し可能であることを特徴とする請求項1に記載の薄肉鋳片の製造装置。
- 前記予熱装置は、IHヒータ方式であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄肉鋳片の製造装置。
- 回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶融金属溜まり部に、注湯ノズルを介して溶融金属を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法であって、
鋳造開始前に、前記冷却ドラムの回転を停止した状態で、前記冷却ドラムの周面のうち、ドラム周方向の位置としてドラムキス点からの俯角θが40°から90°の範囲内、並びにドラム幅方向の位置としてノズル吐出孔の配設幅以上であり、その幅端部位置がドラム端部から50mm以上の範囲の領域を局所的に加熱する予熱工程を有し、
その後、前記冷却ドラムの回転を停止した状態で、前記注湯ノズルから前記溶融金属を供給し、前記溶融金属を貯留させた状態で鋳造を開始することを特徴とする薄肉鋳片の製造方法。 - 前記予熱工程において、前記冷却ドラムの周方向で加熱温度を変化させることを特徴とする請求項4に記載の薄肉鋳片の製造方法。
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