JP6982312B2 - 鋳造材の製造方法および製造装置、並びに、鋳造材 - Google Patents

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Description

本発明は、鋳造材の製造方法および製造装置、並びに、鋳造材に関し、より詳しくは、金属製線材の加工に供される鋳造材の製造方法及び製造装置、並びに、鋳造材に関する。
金属製線材は、一般的に、鋳造された棒状の鋳造材を、多段圧延して細線化して製造される。このような金属製線材の製造方法として、従来より、プロペルチ法等を用いた鋳造装置で鋳造材を製造し、この鋳造材を多段の圧延装置で順次圧延して線材を得る方法が実施されている。特許文献1にはプロペルチ法を用いた鋳造装置の一例が開示されている。
プロペルチ法を用いた鋳造装置は、例えば特許文献1に記載されているように、溝を外円周に設けた鋳造輪を鋼製の無端ベルト(以下「鋼ベルト」と称する)とともに回転させ、鋼ベルトと溝とにより形成される鋳型の一端に流動性を有する金属を注湯して、注湯した金属を上方から鋼ベルトで蓋をし、鋳造輪の溝と鋼ベルトの外側とから冷却し内部で凝固させて鋳造材を取り出すようにしたものである。このようなプロペルチ法を用いた鋳造装置は、外周の中央部が凹んだ溝を有する直径約2000mmの鋳造輪および張力輪と、鋳造輪と張力輪との間に掛け回される鋼ベルトとを備えた巨大な装置である。
特開昭55−57360号公報
ところで、プロペルチ法を用いた鋳造装置は、大量生産向けの装置であり、この装置で鋳造される鋳造材の直径は一般的に60mm以上である。このため、この鋳造材を圧延して線材とするには、例えば15段程度の三方ロール圧延を行う必要があり、巨大な圧延設備が必要になる。更に鋼ベルトは消耗品であって、製造及び架け替えも複雑という問題もある。
その一方で、金属製線材に対するニーズの多様化や在庫削減の観点から、近年は小ロット多品種生産の需要がある。とくに、小ロット生産の需要に対しては、上記のプロペルチ法を用いた鋳造装置では設備にかかるコストが見合わない。
なお、小ロット生産に対応するためにプロペルチ法を用いた鋳造装置を小型化することも考えられるが、ただ単に従来の鋳造装置を小型化しただけでは、上述したように鋼ベルトは消耗品であって、製造及び架け替えも複雑であるという問題は解決できない。鋼ベルトを使わない溝付き鋳造輪では、鋼ベルトの外側からの冷却もできないため冷却に時間を要し、かつ鋳造輪の底面のみならず溝側面でも冷却されるため、鋳造材の断面が凹状になり、圧延が困難で良質の線材を製造しにくいという問題がある。
そこで、プロペルチ法に替わる、小型の鋳造材の製造方法および製造装置の候補として以下につき実験等を行い検討した。
先ず、線状の鋳造材を得るための鋳造方法としては、ロール鋳造方法が簡易な装置で安定して製造できるため好ましい。
一般に、ロールを用いた鋳造法としては双ロール法がある。双ロール法は、2個の冷却ロールを必要とするため装置が複雑になり、幅方向に長い板の鋳造には適するが、幅方向が短いものを鋳造するには、サイドダムによる抵抗が大きく鋳造しにくく、又厚み方向に両面から冷却されるため中心部に鋳巣が生じやすいという問題があった。広幅鋳造法も考えられるが、スリットすることが必要になり、装置、製造方法が複雑になるという問題がある。
又、一つの冷却ロールを用いる単ロール法は装置が簡単になる。単ロール法では、回転軸が水平方向である冷却ロールの外周面に、溶湯を流下させ凝固させる方法が考えられるが、ロール外周面から横方向への溶湯の漏れを防ぐためサイドダムが必要となる。この場合、サイドダムと、溶湯が冷却されて生成する半凝固金属又は凝固金属との間に固着が生じ詰まりやすく鋳造材の安定した生産ができないという問題があった。
更に、回転軸が水平方向である単一の冷却ロールの外周面に溶湯を接触させるメルトドラッグ法では、鋳造材が幅に対し厚み方向の高さが小さいものしかできず、鋳造材のアスペクト比が3より大きいものしかできない。線材にするためには圧延工程を経る必要があるが、アスペクト比が3より大きいものは線材にするための圧延がしにくいという問題があった。
他方、回転軸が水平方向である単一の冷却ロールの外周面に溝を設け、溝に溶湯を注湯し凝固させる方法では、溶湯は溝の底部からの冷却と溝側壁から側面からの冷却を受けるため、鋳造材の断面は上面が窪んだ凹状になりやすい。断面が、窪んだ凹状部を有する鋳造材は、圧延がしにくく良質な線材が得にくく、更に冷却に時間がかかると中央部に鋳巣ができやすいという問題があった。
上述のように、従来のロール鋳造技術では、小ロット生産に適した鋳造材を得るための製造装置及び製造方法がなく、特に簡易な装置である単ロールを用いた場合に幅の狭い鋳造材を得ようとすると、サイドダムと固着が生じ詰まり易く安定した製造ができないという問題があった。
更には、鋳造材を圧延して線材にする後工程において、鋳造材の断面形状がアスペクト比3より大きいものや、凹部を有するものや、鋳巣を含むものは良質の線材が得られないという問題があった。
そこで、本願発明は、小ロット生産に適した線材用の鋳造材が安定して製造でき、装置が簡易で製造が容易な鋳造方法および鋳造装置、並びに、鋳造材を提供することを目的とする。更には圧延後に良質な線材を得ることができる小ロット生産に適した線材用の鋳造材が安定して製造でき、装置が簡易で製造が容易な鋳造方法および鋳造装置、並びに、鋳造材を提供することを目的とする。
(1)本発明に係る鋳造材の製造装置は、金属製線材の加工に供される鋳造材の製造装置であって、外周面に流し込まれた流動性を有する金属を冷却することが可能な冷却ロールと、前記冷却ロールの両側方において互いに対向するとともに離型性を有する面を有し、前記冷却ロールの外周面に流し込まれた金属を、当該冷却ロールの両側方において前記離型性を有する面にて堰き止めることが可能な第1の側方部材および第2の側方部材と、を備え、前記第1の側方部材および前記第2の側方部材は、夫々、前記冷却ロールの外周面に流し込まれた前記金属の移動方向に沿う方向に、前記冷却ロールとは異なる回転軸を回転中心として回転可能に構成されてなることを特徴とする。
(1)において、金属としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅、例えば真鍮のような銅合金等を挙げることができる。また、「流動性を有する金属」とは、溶湯状態の金属以外にも所定の固相率以下の半凝固状態の金属、具体的には、例えば固相率が20%以下であり、好ましくは10%以下の状態の金属を言う。
(1)の構成によれば、離型性を有する面を有する第1の側方部材および第2の側方部材を夫々冷却ロールの外周面に流し込まれた金属の移動方向に沿う方向に回転させることで第1の側方部材および第2の側方部材の表面に流し込まれた金属が固着しにくくなる。また、第1の側方部材や第2の側方部材に金属が一部固着したとしても固着点が移動するため、固着点を起点とする冷却が阻害される。したがって、金属の移動の抵抗となって冷却ロールの回転方向に沿った金属の移動の阻害が抑制され、かつ冷却ロールの回転方向に側方部材が移動するため、さらに金属の移動の阻害が軽減され、冷却した金属が製造途中でつまってしまうということを有効に防止することができる。したがって安定した製造ができる。また、第1の側方部材や第2の側方部材からの冷却も抑制されるため、冷却ロール表面から一方向冷却され、後工程における圧延が容易で鋳巣もない。すなわち鋳造材を容易に製造可能であるとともに小ロット生産の需要に見合った簡易な鋳造材の製造装置を提供することが可能となる。
なお、冷却ロールは通常高さの低い直円筒状であり、各側方部材は円筒の底面の一部に沿うように設置される。冷却ロールの回転軸は水平方向に設置されることが好ましい。傾いているとそれぞれの側方部材との固着がアンバランスになり条件の調整がし難いからである。冷却ロールの冷却面と回転軸を含む平面との交わる線は回転軸と平行な直線が好ましいが、冷却ロールの半径方向に凹又は凸であってもよい。冷却ロールの底面は曲面でもよいが加工上、平面が好ましい。このため第1の側方部材や第2の側方部材も平面に沿って回転するように、冷却ロールに接する面は平面であることが好ましい。この場合、第1の側方部材および第2の側方部材は、夫々、冷却ロールの回転軸とは異なる回転軸を有し、各側方部材の回転軸と、冷却ロールの回転軸とは平行であることが好ましい。各側方部材の外周形状は限定されないが、回転、放熱の観点から対称性を有することが好ましく円板状であることが好ましい。また、各側方部材の材料は限定されず、金属、セラミック、その他の材料であってもよい。とくに金属の場合は、加工しやすく強度等に優れ安価である点で好ましく、例えば軟鋼製の板材を円板状に加工したものを用いることができる。
ここで、第1の側方部材および第2の側方部材夫々の注湯金属に向き合う面は離型性を有していることが必要であり、各側方部材が鋼等の金属製の場合には、BN(窒化ホウ素)やC(黒鉛等)を主成分とする離型剤を塗布乾燥して、離型性を付与したものを用いることができる。また、各側方部材表面を物理的、化学的に加工し離型性を付与したものであってもよく、高価であるが、アルミナ等の離型性を有するセラミック板あるいは、それらを金属等の表面に離型性を有する層を形成、積層等したものであってもよい。
(2)上記(1)に記載の鋳造材の製造装置において、前記第1の側方部材および前記第2の側方部材は、前記第1の側方部材および前記第2側方部材夫々の回転中心から前記冷却ロールの外周面までの距離が最短となる最短位置までを半径とする仮想円において、前記最短位置における前記仮想円の接線方向速度が、当該最短位置における前記冷却ロールの接線方向速度の0.6倍より大きい速度で回転するように構成されてなることを特徴とする。
(2)の構成によれば、上記の最短位置における第1の側方部材および第2の側方部材の接線方向速度が、当該最短位置における冷却ロールの接線方向速度の0.6倍以下であれば、詰まりやすいためである。注湯された金属と側方部材との接触時間を適当にすることで、第1の側方部材および第2の側方部材からの放熱をより効果的に抑制することができる。そのため、流し込まれた流動性を有する金属を凝固させつつ鋳造材として冷却ロールの回転方向に沿った移動の阻害をより一層抑制することが可能な、鋳造材の製造装置を提供することができる。なお、「速度」には方向も含まれるから、上記の最短位置における側方部材(第1の側方部材,第2の側方部材)の速さ方向と、冷却ロールの速さ方向とは同じである。なお、上記の最短位置における第1の側方部材および第2の側方部材の接線方向速度は、最短位置における冷却ロールの接線方向速度の2.0倍より大きいと注湯された金属が冷却不足になりやすいため、2.0倍以下であることが好ましい。
(3)上記(1)または(2)に記載の鋳造材の製造装置において、前記第1の側方部材及び前記第2の側方部材夫々の前記冷却ロールを挟んで対向する面の、前記流動性を有する金属に対面する部分が更に断熱性を有する層を中層に有することを特徴とする。
断熱層があれば、側方部材による冷却、固化をより効果的に阻止することができ、注湯された金属が冷却ロール表面から一方向冷却されるため、後工程における圧延が容易で鋳巣もなく良好な品質の線材が得られる。各側方部材と冷却ロールとの間に断熱層を設けることにより、各側方部材によって金属の冷却・固化をより効果的に阻止することができ、冷却ロール表面から一方向冷却されることになるため、後工程における圧延が容易となる線材すなわち鋳巣もなく良好な品質の線材が得られる。断熱層とは、表面からの熱の主に厚み方向の熱伝搬を阻害する機能を有する層であって、断熱層としては、いわゆる断熱材を用いることができ、セラミックファイバー不織布、例えばイソウール(ISOWOOL)(登録商標)の不織布や、ブランケット等を用いることができる。断熱材は不燃性が好ましいが、短時間の操業用であれば必ずしも不燃性を要せず、厚紙であってもよい。側方部材として鋼製の円板が使われる場合は両面テープ等で厚紙を貼付し、その表面にBN等の離型剤を塗布したものを用いることができる。
(3)の構成によれば、湯溜まりを形成する場合であっても、各側方部材によって金属の冷却・固化をより効果的に阻止することができるので、鋳造条件が厳しくとも、断面に凹部ができにくく後工程の圧延が容易で良質の線材を得ることができるという効果を有する。逆に断熱材が無ければ、湯溜まりを形成する鋳造法では断面の輪郭形状において凹部ができやすく、後工程の圧延が困難となり、良質の線材が得にくくなる。
(4)本発明に係る鋳造材の製造方法は、金属製線材の加工に供される鋳造材の製造方法であって、流動性を有する金属を冷却することが可能な冷却ロールと、前記冷却ロールの両側方において互いに対向するとともに離型性を有する表面を有し、前記流動性を有する金属を当該冷却ロールの両側方において堰き止めることが可能であり、前記金属の移動方向に沿う方向に、前記冷却ロールとは異なる回転軸を回転中心として回転する前記第1の側方部材および前記第2の側方部材と、を備える前記鋳造材の製造装置を用い、前記第1の側方部材および前記第2の側方部材を回転させた状態で、流動性を有する金属を、少なくとも前記冷却ロールの外周面と前記第1の側方部材および第2の側方部材とによって形成される注湯領域に流し込む第1工程と、前記注湯領域に流し込まれた前記流動性を有する金属を凝固させつつ前記冷却ロールの回転方向に沿って移動させる第2工程と、を有することを特徴とする。
(4)の構成によれば、離型性を有する面を有する第1の側方部材および第2の側方部材を回転させた状態で、流動性を有する金属が注湯領域に流し込まれるので、第1の側方部材および第2の側方部材の表面に流し込まれた金属が固着しにくくなる。また、第1の側方部材や第2の側方部材に金属が一部固着したとしても固着点が移動するため、固着点を起点とする冷却が阻害される。したがって、金属の移動の抵抗となって冷却ロールの回転方向に沿った金属の移動の阻害が抑制され、かつ冷却ロールの回転方向に側方部材が回転移動するため、冷却した金属が製造途中でつまってしまうということを有効に防止することができる。また、第1の側方部材や第2の側方部材からの冷却も抑制されるため、冷却ロール表面から一方向冷却され、後工程における圧延が容易で鋳巣もなく良好な品質の線材が得られるようになる。その結果、小ロット生産の需要に見合った鋳造材を容易に安価で高品質な線材用鋳造材の製造方法を提供することが可能となる。
なお、冷却ロールは通常高さの低い円筒状であり、各側方部材は円筒の底面の一部に沿うように設置される。通常、冷却ロールの回転軸は水平方向に設置される。冷却ロールの冷却面と回転軸を含む平面との交わる線は直線が好ましいが、外周方向に凹又は凸であってもよい。冷却ロールの底面は曲面でもよいが加工上、平面が好ましい。このため第1の側方部材や第2の側方部材も平面に沿って回転するように、冷却ロールに接する面は平面であることが好ましい。この場合、第1の側方部材および第2の側方部材は、夫々、冷却ロールの回転軸とは異なる回転軸を有し、各側方部材の回転軸と、冷却ロールの回転軸とは平行であることが好ましい。各側方部材の外周形状は限定されないが、回転、放熱の観点から対称性を有することが好ましく円板状であることが好ましい。また、各側方部材の材料は限定されず、金属、セラミック、その他の材料であってもよい。とくに金属の場合は、加工しやすく強度等に優れ安価である点で好ましく、例えば軟鋼製の板材を円板上に加工したものを用いることができる。
ここで、第1の側方部材および第2の側方部材夫々の注湯金属に向き合う面は離型性を有していることが必要であり、各側方部材が鋼等の金属製の場合には、BN(窒化ホウ素)やC(黒鉛等)を主成分とする離型剤を塗布乾燥して、離型性を付与したものを用いることができる。また、各側方部材表面を物理的、化学的に加工し離型性を付与したものであってもよいし、高価であるが、アルミナ等の離型性を有するセラミック板あるいは、それらを金属等の表面に形成、積層等したものであってもよい。
(5)上記(4)に記載の鋳造材の製造方法において、前記第2工程は、前記第1の側方部材および前記第2側方部材夫々の回転中心から前記冷却ロールの外周面までの距離が最短となる最短位置までを半径とする仮想円において、前記最短位置における前記仮想円の接線方向速度を、前記冷却ロールの接線方向速度の0.6より大きい速度となるよう回転させることで、前記注湯領域に流し込まれた流動性を有する金属を凝固させつつ前記冷却ロールの回転方向に沿って移動させるものであることを特徴とする。
(5)の構成によれば、上記の最短位置における第1の側方部材および第2の側方部材の接線方向速度が、当該最短位置における冷却ロールの接線方向速度の0.6倍より大きい速度であれば、詰まらないようにより有効に金属を送りだすことができるとともに、第1の側方部材および第2の側方部材からの放熱をより効果的に抑制することができる。そのため、流し込まれた流動性を有する金属を凝固させつつ鋳造材として冷却ロールの回転方向に沿った移動の阻害をより一層抑制することが可能な、鋳造材の製造方法を提供することができる。なお、「速度」には方向も含まれるから、上記の最短位置における側方部材(第1の側方部材,第2の側方部材)の速さ方向と、冷却ロールの速さ方向とは同じである。なお、上記の最短位置における第1の側方部材および第2の側方部材の接線方向速度は、最短位置における冷却ロールの接線方向速度の2.0倍より大きいと注湯された金属が冷却不足になりやすいため、2.0倍以下であることが好ましい。
(6)上記(4)または(5)に記載の鋳造材の製造方法において、前記第1工程は、前記流動性を有する金属を、互いに対向する前記第1の側方部材の面と前記第2の側方部材の面との間の距離よりも小さい幅で、前記冷却ロール表面に直接注湯し、該注湯された流動性を有する金属が直ちに前記冷却ロールに触れるように行うものである。
(6)の構成によれば、金属溜まりが形成されないように、注湯される流動性を有する金属をバックダムに沿わせず、冷却ロール表面に直接に注湯して、流動性を有する金属を凝固させつつ冷却ロールの回転方向に沿って移動させることができるため、鋳造材を、線材を製造する際の圧延に適した形状(例えば断面形状が略かまぼこ状)とすることが可能となる。すなわち、金属溜まりが形成されていない冷却ロール表面に注湯することに特徴がある。
(7)本発明に係る長手状の鋳造材は、長手方向に直交する断面におけるアスペクト比が3以下の線状の鋳造まま材である。前記断面における対向する2辺は略平行である。長手方向に垂直な断面を拡大観察すると、隣接する結晶粒の大きさが一の方向に徐々に拡大する特定領域を有し、前記一の方向における前記特定領域の長さが、当該一の方向における前記断面の長さに対して50%以上であり、前記一の方向と直交する他の方向における前記特定領域の長さが、当該他の方向における前記断面の長さに対して80%以上であることを特徴とする。
(7)の鋳造材が得られるのは、前述のように簡易な装置では直円筒状で外周を冷却面とする冷却ロールの底面に平行な側方部材が取り付けられるため、側方部材の金属に面する面は互いに平行であり、冷却固化された鋳造材の断面にその関係が反映されるためである。また鋳造条件によっては、対向する2辺は僅かに側面が外に凸の曲線になることがあるため、略平行には僅かに外に凸の曲線の組み合わせになる場合を含む。ただしこの場合においても曲線の曲率半径は厚み(ロール冷却面に接していた辺からの距離)の2倍以上の場合に限定される。
尚、上記断面を形成する辺のうちの一つは直線状であり、同辺に隣あう辺(上記対向する2辺)、とは略直交することが好ましい。製造しやすい簡易な冷却ロールの外周面は円筒状であり、冷却ロールで冷却された面は冷却ロールの面の形状を反映するため、断面における冷却ロールに接していた辺は直線状になるためである。一方、製造しやすい簡易な装置における側方部材の流動性を有する金属の接する面と冷却ロールの冷却面の接平面とは、通常直交しており、側方部材が金属と接する間に冷却されるため、冷却ロールと側方部材との位置関係が断面形状に反映し、同辺に隣あう辺は略直交するためである。ただし、製造条件によっては、側方部材と離れた後も凝固が未了である等により、対向する2辺が平行から僅かにずれて、台形状、あるいは逆台形状を示すことがある。また、上辺が上に凸な略かまぼこ状の形態をとることがある。台形又は逆台形の場合、冷却ロールに接していた辺に対する側方部材に接していた面との角度は70度〜110度であって、好ましくは80度〜100度、更に好ましくは85度〜95度である。この場合、左右対称とすると対向する2辺のなす角度はそれぞれ、40度、20度、10度になる。本発明において、対向する2辺が略平行とは、対向する2辺の成す夾角は40度以下が好ましく、25度以下がより好ましく、10度以下が更に好ましいが、25度以下が現実的である。
上記一の方向における特定領域の長さが、当該一の方向における断面の長さに対して50%未満、又は、上記一の方向と直交する他の方向における特定領域の長さが、当該他の方向における断面の長さに対して80%未満であれば、後工程で圧延した場合に線材の品質が良好にならない。
このような組織は、一方向から冷却され凝固した組織であり、多方向から冷却され凝固した組織とは後述のように異なる。また、従来のプロペルチ法による鋳造材とは異なり、本発明による鋳造材の長手方向に直交する断面における直径は80mm以下、好ましく40mm以下、より好ましくは20mm以下である。線材を製造する時には、後工程を短縮できるアスペクト比2.0以下がより好ましい。
上記(7)の構成による鋳造材の組織は、一方向から冷却され凝固した組織であり、一方向性凝固組織とも称される。このような一方向性凝固組織の鋳造材は、多方向から冷却された組織とは異なり、中心部に鋳巣が発生することが抑制された品質の高いものであり、線材を製造する際の圧延に適した鋳造材である。とくに、上記(7)のような鋳造材は、(1)〜(6)に記載の製造装置または製造方法で製造された場合にのみ得られるものである。例えば、従来のプロペルチ法を用いた鋳造装置で製造された鋳造材であれば、略四角形の断面における各辺から中心部に亘る結晶構造が略同じものになるため、本願発明の鋳造材とは全く異なる結晶構造となる。
本願発明によれば、小ロット生産に適した線材用の鋳造材が安定して製造でき、装置が簡易で製造が容易な鋳造方法および鋳造装置、並びに、鋳造材を提供することが可能になる。更には圧延後に良質な線材を得ることができる小ロット生産に適した線材用の鋳造材が安定して製造でき、装置が簡易で製造が容易な鋳造方法および鋳造装置、並びに、鋳造材を提供することが可能になる。
金属製線材の加工に供される鋳造材の製造装置の一例を示す模式図である。 図1に示される鋳造材の製造装置を、図1の紙面上方向から見た模式図であり、バックダムを設けて流動性を有する金属を流し込んだ場合を示す図である。 図1に示されるA部の拡大図であって、サイドダムの回転中心が冷却ロールの外周面よりも径方向の内側にある場合を示す図である。 金属製線材の加工に供される鋳造材の製造装置の変形例を示す模式図であって、冷却ロールとサイドダムとの位置関係が図1と異なる図である。 図4に示されるB部の拡大図であって、サイドダムの回転中心が冷却ロールの外周面よりも径方向の外側にある場合を示す図である。 (a)は、サイドダムに断熱層を設けない場合において、流動性を有する金属が凝固する態様の一例を示す模式図である。(b)は、サイドダムに断熱層を設けた場合において、流動性を有する金属が凝固する態様の一例を示す模式図である。 (a)は、バックダムを設けた場合の注湯状態を示す模式図である。(b)は、バックダムを設けて製造された鋳造材を、鋳造材の長手方向に対して垂直に切った断面図である。 (a)は、流動性を有する金属を金属溜まりが形成されないように注湯することによりバックダムを必要としない場合の注湯状態を示す模式図である。(b)は、金属溜まりが形成されずに製造された鋳造材を、鋳造材の長手方向に対して垂直に切った断面図である。 図1に示される鋳造材の製造装置を、図1の紙面上方向から見た模式図であり、バックダムを必要とせずに流動性を有する金属を流し込んだ場合を示す図である。 鋳造材の結晶構造の違いを示す模式図であって、(a)本実施形態の製造装置を用いて製造された鋳造材の結晶構造の模式図、(b)プロペルチ法により製造された鋳造材の結晶構造の模式図である。 本実施形態に係る鋳造材の製造装置に成形ロールを設けた場合の模式図である。 実験例1の条件で鋳造をした場合の鋳造材の断面を示す図である。 実験例2の条件で鋳造をした場合の鋳造材の断面を示す図である。 実験例3の条件で鋳造をした場合の鋳造材の断面を示す図である。 実験例4の条件で鋳造をした場合の鋳造材の断面を示す図である。 実験例5の条件で鋳造をした場合の鋳造材の断面を示す図である。 サイドダムの平面部の断熱材の有無と金属溜まりの有無とに応じた鋳造材の形状を模式的に示す図である。
[1.製造装置]
以下、金属製線材の加工に供される鋳造材の製造方法及び製造装置、並びに、鋳造材について図面を参照しつつ説明する。図1は、金属製線材の加工に供される鋳造材の製造装置100の一例を示す模式図である。図2は、図1に示される鋳造材の製造装置100を、図1の紙面上方向から見た模式図である。なお、図1および図2は、後述するバックダム170(後述の図7参照)を設けて流動性を有する金属1を流し込んだ場合を示す。
図1に示されるように、金属製線材の加工に供される鋳造材の製造装置100は、外周面112に流し込まれた流動性を有する金属1を冷却することが可能な回転軸が水平方向に設置された単ロールの冷却ロール110と、冷却ロール110を側方から挟むようにして設けられた2つのサイドダム120(本発明の「第1の側方部材および第2の側方部材」に相当する)とを少なくとも備える。冷却ロールの冷却面(外周面112)と回転軸を含む平面との交わる線は回転軸に平行な直線である。そして、冷却ロール110の外周面112に流動性を有する金属1が流し込まれると、この流し込まれた流動性を有する金属1が凝固しつつ冷却ロール110の回転方向に沿って詰まることなくスムーズに移動し、金属製線材の加工に供される鋳造材を製造することができる。
冷却ロール110は、従来のプロペルチ法で用いられる冷却ロールのような大型ロール(ロール径約2000mm、ロール幅約100mm)ではなく、ロール径約600mm、ロール幅40mm以下、好ましくはロール幅20mm以下、より好ましくはロール幅10mm以下といった小型ロールである。また、冷却ロール110は、注湯された流動性を有する金属1の冷却に適した素材として、例えば銅または銅合金、軟鋼等により構成されている。なお、冷却ロール110は、流動性を有する金属1の冷却効率を高めるために、例えば、水冷式等の冷却装置によって効率的に冷却されるように構成されていてもよい。
ところで、冷却ロール110をただ単に小型化しただけでは、冷却ロール110の外周面112に流し込まれた流動性を有する金属1の凝固速度が大きくなり、ロール110の回転方向に沿った鋳造材のスムーズな移動が阻害されて詰まってしまうおそれがある。とくに、従来のプロペルチ法で用いられる冷却ロールは、幅方向における両サイドが径方向外側に突出する形状(正面視のロール形状が凹状)であるため、幅方向における両サイドにおいて径方向外側に突出する部分で流動性を有する金属1の熱が放熱され、鋳造材のスムーズな移動が阻害されると考えられる。
そこで、本実施形態では、図2に示されるように、冷却ロール110の幅方向におけるロール面を平坦な形状(ロール径がロール幅方向に略均一な形状)にするとともに、上述したサイドダム120を設けた上で、このサイドダム120を回転可能に構成している。これにより、流動性を有する金属1の熱が2つのサイドダム120から放熱されることが抑制され、冷却ロール110の外周面112に流し込まれた流動性を有する金属1を凝固させつつ冷却ロール110の回転方向に沿ってスムーズに移動させることが可能となる。その結果、鋳造材を容易に製造可能であるとともに、簡易な構成により高コストとなることを抑制して小ロット生産の需要に対応することが可能となる。
なお、本実施形態では、冷却ロール110の幅方向におけるロール面を平坦な形状としているが、冷却ロール110の外周面112に流し込まれた流動性を有する金属1を凝固させつつ冷却ロール110の回転方向に沿ってスムーズに移動させることができる範囲であれば、ロール幅方向における両サイドが径方向外側に多少突出していたとしてもよい。
また、図1に示されるように、サイドダム120は、冷却ロール110よりも小径の円板形状に構成されており、冷却ロール110の最上位位置となる位置α(冷却ロール110の回転軸111を通る仮想の鉛直線Xと冷却ロール110の外周面112とが交差する2つの位置のうち上方の位置)よりも、若干、冷却ロール110の反回転方向側に設けられている。これにより、冷却ロール110の外周面112に流し込まれた流動性を有する金属1を凝固させつつ冷却ロール110の回転方向に沿ってスムーズに移動させることができる。
また、図2に示されるように、サイドダム120は、平面部120aどうしが相対向し、冷却ロール110を側方から挟むように設けられている。そして、冷却ロール110の外周面112と、相対向する2つのサイドダム120の平面部120aとによって、流動性を有する金属1を流し込むことが可能な凹状の注湯領域160が形成される。この注湯領域160は、鋳造用鋳型として機能する。また、サイドダム120の平面部120aには、金属1の固着又は融着を軽減するため離型剤(例えば、BN等)が塗布されていることが好ましい。
なお、図2では、サイドダム120の平面部120aと冷却ロール110の側面110aとが密着しているように図示されているが、冷却ロール110の外周面に流し込まれた流動性を有する金属1を堰き止めることができれば、サイドダム120の平面部120aと冷却ロール110の側面110aとの間に多少の隙間が存在しても差し支えない。
また、図1に示されるように、サイドダム120の近傍に、タンディッシュ130から注がれた流動性を有する金属1を受けて、その流動性を有する金属1を注湯領域160に流す樋140を備えるようにするとよい。なお、上述したとおり、図1はバックダム170を設けて流動性を有する金属1を流し込んだ場合を示しており、バックダム170は、流動性を有する金属1が流れる方向の樋140に対して下流側に設けられている。
[2.製造方法]
次に、本実施形態の製造装置100を用いて、金属製線材の加工に供される鋳造材が製造される過程について説明する。金属製線材の加工に供される鋳造材の製造に用いられる金属は、例えば、Al(アルミニウム)系金属、Mg(マグネシウム系)金属、Cu(銅)系金属、Zn(亜鉛)系金属等が考えられるが、特定の金属に限定されるものではない。
例えばAl系金属を溶融して上記の鋳造材を製造する場合、約700℃で溶融したアルミニウム系の流動性を有する金属1をタンディッシュ130に貯蔵し、タンディッシュ130から樋140を介して注湯領域160に注湯する。なお、樋140は、流動性を有する金属1の流下方向を横切る断面がV字状であり、樋140の出口付近では、流動性を有する金属1の幅が冷却ロール110の幅よりも小さい。ただし、後述するとおり、バックダム170が設けられる場合には、流動性を有する金属1は、バックダム上に流下し冷却ロール110の外周面に達する時には幅方向に広がった状態となる。
注湯領域160に注湯されたAl系金属(流動性を有する金属1)は、冷却ロール110の外周面112及びサイドダム120の平面部120aに接触することで冷却され、次第に凝固しながら冷却ロール110の外周面112に沿って冷却ロール110の回転方向に移動し、やがて冷却ロール110の外周面112から離間(脱型)する。
[3.サイドダム]
[3−1.サイドダムの回転方向]
ところで、小ロット生産の需要に対応することを可能にした本実施形態の製造装置100では、サイドダム120の回転方向が重要な要素となる。ここでサイドダム120の回転方向について、図3を参照して説明する。図3は、図1に示されるA部の拡大図であって、サイドダム120の回転中心O(回転軸121)が冷却ロール110の外周面112よりも径方向の内側にある場合を示す図である。
図3に示されるように、2つのサイドダム120は、冷却ロール110の回転軸111とは別の回転軸121を中心として略同じ速度で回転可能に構成されている。サイドダム120の回転中心(回転軸121)が冷却ロール110の外周面112よりも径方向の内側にある場合(図3に示される位置関係の場合)、サイドダム120は、冷却ロール110と同じ方向(図3では時計周り)に回転する。すなわち、サイドダム120の回転中心Oから冷却ロール110の外周面112までの距離が最短となる最短位置を位置βとしたとき、サイドダム120の回転方向と冷却ロール110の回転方向とを同じとすることで、位置βにおいて、サイドダム120の移動方向と冷却ロール110の移動方向とが同じとなる。これにより、注湯領域160に流し込まれた流動性を有する金属1を凝固させつつ冷却ロール110の回転方向に沿ってスムーズに移動させることが可能となる。
ここで、回転中心Oから位置βまでの距離を半径とする仮想円122を考えた場合、位置βにおける仮想円122の接線方向についてのサイドダム120の速度を、仮想円122の接線方向についての冷却ロール110の速度の0.6倍より大きく2.0倍未満とするとよい。0.6倍以下であれば、詰まりやすく、2.0倍よりも大きいと冷却不足になりやすいためである。
仮想円122の接線方向において、サイドダム120の速度を冷却ロール110の速度の0.6倍以下にすると、鋳造材がサイドダム間で詰まり易くなり安定した鋳造を行うことができない。
一方、仮想円122の接線方向において、サイドダム120の速度が冷却ロール110の速度より速くなる程、鋳造材の未凝固の金属が側面から影響により進行方向に速く引っ張られることから、未凝固の金属が流れだし、安定した鋳造が実現できない。
したがって、仮想円122の接線方向におけるサイドダム120の速度は、仮想円122の接線方向における冷却ロール110の速度の0.6倍より大きく、仮想円122の接線方向における冷却ロール110の速度の4.0倍以下、好ましくは2.0倍未満であることが好ましい。
ただし、位置βにおける仮想円122の接線方向についてのサイドダム120の速度を、仮想円122の接線方向についての冷却ロール110の速度よりも大きくなるようにサイドダム120を回転させることで、サイドダム120における冷却効率を下げることができ、流動性を有する金属1がサイドダム120との間で固着してしまうことを抑制することが可能となる。これにより、注湯領域160に流し込まれた流動性を有する金属1を凝固させつつ冷却ロール110の回転方向に沿って移動させるに際して、より一層スムーズに移動させることが可能となる。
[3−2.サイドダムの回転方向についての変形例]
次に、サイドダム120の回転方向についての変形例について、図4及び図5を参照して説明する。この変形例は、冷却ロール110とサイドダム120との位置関係が図1〜3に示す例と異なっており、それ故、サイドダム120の回転方向が図3に示す例と異なる。
図4は、金属製線材の加工に供される鋳造材の製造装置の変形例である製造装置101を示す模式図であって、冷却ロール110とサイドダム120との位置関係が図1と異なる図である。図5は、図4に示されるB部の拡大図である。ただし、サイドダム120の回転方向についての変形例を説明するにあたり、図4及び図5では、冷却ロール110とサイドダム120との位置関係及びサイドダム120の回転方向が図1〜図3と異なるだけであり、その他(例えば、冷却ロール110の構成やサイドダム120の構成等)については、図1〜図3と同様である。
図4及び図5に示されるように、サイドダム120の回転中心O’(回転軸121)が冷却ロール110の外周面112よりも径方向の外側にある場合、サイドダム120は、冷却ロール110と反対方向(図5では反時計周り)に回転する。すなわち、サイドダム120の回転中心O’から冷却ロール110の外周面112までが最短距離となる位置を位置γとしたとき、サイドダム120の回転方向と冷却ロール110の回転方向とを互いに反対方向にすることで、位置γにおいて、サイドダム120の移動方向と冷却ロール110の移動方向とが同じとなる。これにより、注湯領域160に流し込まれた流動性を有する金属1を凝固させつつ冷却ロール110の回転方向に沿ってスムーズに移動させることが可能となる。
なお、サイドダム120と冷却ロール110との位置関係が図4及び図5に示される位置関係であったとしても、回転中心O’から位置γまでの距離を半径とする仮想円124を考えた場合、図3に示される仮想円122を考えた場合と同様の理由により、位置γにおける仮想円124の接線方向についてのサイドダム120の速度を、仮想円124の接線方向についての冷却ロール110の速度の0.6倍より大きく2.0倍未満とするとよい。
ただし、この場合も、位置γにおける仮想円124の接線方向についてのサイドダム120の速度を、仮想円124の接線方向についての冷却ロール110の速度よりも大きくなるようにサイドダム120を回転させることで、サイドダム120における冷却効率を下げることができ、流動性を有する金属1がサイドダム120との間で固着してしまうことを抑制することが可能となる。これにより、注湯領域160に流し込まれた流動性を有する金属1を凝固させつつ冷却ロール110の回転方向に沿って移動させるに際して、より一層スムーズに移動させることが可能となる。
[3−3.サイドダムの断熱材]
また、2つのサイドダム120の平面部120a(とくに冷却ロール110側の面)に断熱層180(図6(b)参照)を設けてもよい。断熱層を設ける方法としては、例えば、サイドダム120の冷却ロール110側の面に断熱材を両面テープ等で貼り付けるようにするとよい。断熱材としては、例えば、厚紙、厚紙の片面に離型剤(例えば、BN等)を塗布したもの、などを挙げることができる。サイドダム120の冷却ロール110側の面に例えば厚紙等を両面テープ等で貼り付けた場合にも冷却ロール110側の面に離型剤を塗布することで、金属1の固着又は融着を軽減することができ、更にはサイドダム120の平面部120aと金属1との間の熱伝達を抑制する効果もあるため、厚紙等が燃えてしまうことを防止できる。
ところで、サイドダム120に断熱層を設けた場合と設けない場合とでは、流動性を有する金属1が凝固するまでの態様が異なりうるため、製造された鋳造材の形状に差異が生じうる。これについて、図6を参照して説明する。なお、図6(a)は、サイドダム120に断熱層180を設けない場合において、流動性を有する金属1が凝固する態様の一例を示す模式図である。図6(b)は、サイドダム120に断熱層180を設けた場合において、流動性を有する金属1が凝固する態様の一例を示す模式図である。これらの図では、流動性を有する金属1がどのように凝固していくのかを層状に示している。例えば、図6(a)(b)に示される一番下の層が最初に凝固する部分であり、下から二番目の層が次に凝固する部分である。
図6(a)に示されるように、サイドダム120に断熱層180を設けない場合、金属1は、上面が凹んだ形状で凝固する。これは、流動性を有する金属1が冷却ロール110で冷却される他に、2つのサイドダム120からの冷却も同時に進むことで、幅方向における中央部(サイドダム120とサイドダム120との間)の冷却が遅れてしまうことが考えられる。このように上面が凹んだ形状で凝固した鋳造材は、圧延して線材とすることが難しい。
一方、図6(b)に示されるように、サイドダム120に断熱層180を設けた場合、金属1は、上面が略平坦な形状で凝固する。これは、断熱層180の作用により、サイドダム120と流動性を有する金属1との間で熱が伝わりにくくなり、金属1が略均一に冷却されるからであると考えられる。このように、上面が略平坦な形状で凝固した鋳造材は、圧延して線材とすることが比較的容易である。したがって、サイドダム120の平面部120a(とくに冷却ロール110側の面)に断熱層を設けることで、圧延して線材を製造することに適した鋳造材を製造することが可能となる。
[4.バックダム]
ところで、図1や図4に示される樋140の下流側(タンディッシュ130から注がれた流動性を有する金属1が流れる方向の下流側)には、バックダム170(後堰)を必要とする場合と、バックダム170を必要としない場合とがある。バックダム170を設けると、注湯領域160すなわち冷却ロール110の外周面112に流し込まれた流動性を有する金属1が冷却ロール110の反回転方向に流下することを防止することができる。湯溜まりを形成する場合において、安定操業時は必ずしも必要ではないが、操業開始時には、バックダム170に沿わせて注湯することが好ましい。
図7(a)は、バックダム170を設けた場合の注湯状態を示す模式図である。図7(b)は、バックダム170を設けて製造された鋳造材150aを、鋳造材150aの長手方向に対して垂直に切った断面図である。なお、上述したとおり、バックダム170を設けた場合の図7(a)を紙面上方向から見た図は、図2に示すとおりである。
バックダム170を設け、流動性を有する金属1をバックダムに沿わして注湯した場合には、バックダム170が静止していることもあり、断面V字状の樋140から流れ出た流動性を有する金属1はバックダム170上で急速に幅方向に広がり、冷却ロール110の外周面に達する時には幅方向に広がった状態となり、流動性を有する金属1の金属溜まりが形成される(図7(a)参照)。そして、2つのサイドダムおよび冷却ロール110の回転により金属溜まりから流動性を有する金属1が凝固しつつ冷却ロール110の回転方向に沿って移動する。このように、バックダム170を設けることによって金属溜まりが形成されたとしても、流動性を有する金属1が冷却ロール110の回転方向と反対側に流れてしまうことを防止することが可能となる。
ただし、流動性を有する金属1の金属溜まりが形成される場合、サイドダム120の平面部120aに厚紙等の断熱層を有していないと、製造された鋳造材の長手方向に垂直な断面が凹状となり、線材を製造する際の圧延に不適な形状となってしまう。これは、金属溜まりが形成されると、サイドダム120からの放熱が進み、鋳造材の幅方向の両端側よりも遅れて中央部が凝固するためであると考えられる。
そこで、流動性を有する金属1の金属溜まりが形成される場合には、サイドダム120の平面部120aに厚紙等の断熱層を設けることでサイドダム120からの放熱を抑制することで、製造された鋳造材151aは、図7(b)に示されるように断面が四角形状となり、線材を製造する際の圧延に適した形状の鋳造材を製造することが可能となる。
図8(a)は、流動性を有する金属1を金属溜まりが形成されないように注湯することによりバックダム170を必要としない場合の注湯状態を示す模式図である。図8(b)は、金属溜まりが形成されずに製造された鋳造材150bを、鋳造材150bの長手方向に対して垂直に切った断面図である。また、図9は、図1(a)に示される鋳造材の製造装置100を、図1の紙面上方向から見た模式図であり、バックダム170を必要とせずに流動性を有する金属1を流し込んだ場合を示す。なお、バックダム170を設けない場合、樋140から流れ出た流動性を有する金属1は、冷却ロール110の外周面112に直接流下し、冷却ロール110が速度を持って回転していることもあって、冷却ロール110の外周面112上で徐々に幅方向に広がる。
位置βにおける仮想円122の接線方向速度(図3参照)や、位置γにおける仮想円124の接線方向速度(図5参照)を見たときに、タンディッシュ130からの注湯速度が冷却ロール110の速度よりも大きく、タンディッシュ130から注湯される流動性を有する金属1の幅が冷却ロール110の幅(相対向するサイドダム120の平面部120aどうしの距離)よりも小さい場合には、樋140から流れ出た流動性を有する金属1は、冷却ロール110の外周面112に直接流下し、冷却ロール110が速度を持って回転していることもあって、冷却ロール110の外周面112上で、冷却ロール110の回転方向に沿って進行するにつれて徐々に幅方向に広がる(図9参照)。これは金属1が外周面112に直接流下した時の流速が冷却ロール110の周速より速く、金属1が鋳造方向に進行するにつれて流速が遅くなり、幅方向、高さ方向に広がるためと考えられる。金属1の上面は、中央部が隆起した形状になるが、これは表面張力も影響しているためと考えられる。
そして、図8(a)に示されるように、バックダム170がなくても、流動性を有する金属1が冷却ロール110の回転方向とは反対側に流れずに冷却ロール110の回転方向に沿って移動する。このようにして製造された鋳造材150bは、図8(b)に示されるように、2つのサイドダムの間で中央部が隆起した断面形状(略かまぼこ状)となる。これは、サイドダム120からの放熱が抑制される一方で冷却ロール110からは放熱されるため、鋳造材の幅方向の中央部における凝固速度の方が両端部の凝固速度よりも大きいことも一因であると考えられる。そして、このような断面形状を有する鋳造材151bは、線材を製造する際の圧延に適した形状である。またこの場合、サイドダム120の平面部120aに厚紙等の断熱層を設ける必要もない。また、図8(b)に示される形状の鋳造材150bは、後述する成形ロール190(後述の図11参照)によって平坦化することも可能である。
なお、タンディッシュからの注湯速度が大きい場合であっても、バックダム170を設けてもよい。バックダム170を設けることで、流動性を有する金属1が冷却ロール110の回転方向とは反対側に万一流れてしまうようなことがあっても、その金属をバックダム170で堰き止めることができる。
このように、バックダム170を設けるか否かを、流動性を有する金属1が冷却ロール110の回転方向とは反対側に流れてしまうか否かによって判断するとよい。但し、バックダムを設け金属溜まりを形成する場合には、サイドダム120の面120aに断熱材を用いることが好ましい。
[5.鋳造材の粒状組織]
本実施形態における鋳造材の製造装置100を用いて製造された鋳造材の結晶構造(粒状組織)と、従来のプロペルチ法により製造された鋳造材の結晶構造(粒状組織)との違いについて、図10を参照して説明する。図10は鋳造材の結晶構造の違いを示す模式図であって、(a)は本実施形態の製造装置100を用いて製造された鋳造材の結晶構造の模式図、(b)はプロペルチ法により製造された鋳造材の結晶構造の模式図である。
本実施形態に係る鋳造材の製造装置100を用いて製造された鋳造材150は線状の鋳造まま材であり、図10(a)に示されるように、長手方向に垂直な断面は、横方向長さと縦方向長さにおいて短い方の長さを分母にした時の比が3倍以下(すなわちアスペクト比が3以下)の略長方形である(場合によっては略正方形の場合もある)。また、鋳造材150の長手方向に垂直な断面の組織を観察すると、特定領域(図10(a)に示される一点鎖線で囲まれた領域)において、矢印方向(冷却ロール110と接する側である下方から上方に向かう方向)に沿う一方向に粒状が大きくなっていることが分かる(図10(a)参照)。これは、注湯された流動性を有する金属1が冷却ロール110に接した順に冷却されていき、チル層154が形成され、チル層154よりも上部になればなるほど粒状が大きくなることを示す。チル層154よりも上部になればなるほど粒状が大きくなるのは、チル層154よりも上部になればなるほど冷却ロール110およびサイドダム120からの冷却機能が低くなることで凝固するまでの時間が長くなり、結晶が大きく成長するためであると考えられる。なお、鋳造材150の長手方向に垂直な断面において、内部よりは微細な結晶が形成されているが、これは、側方や上部において全く冷却されないわけではないからである。また、上記の特定領域は、一方向(すなわち図10(a)の縦方向)の長さが鋳造材150の断面の縦方向長さに対して50%以上であり、一方向と直交する方向(すなわち図10(a)の横方向)の長さが鋳造材150の断面の横方向長さに対して80%であることが確認できた。尚、図10(a)の四角形の断面輪郭形状において、下辺が冷却ロールにより直接冷却された面に相当し、左右の辺がサイドダムに接した面に相当する。したがって、下辺に隣接し対向している左右の辺は下辺に対し直交しており、又左右の辺はそれぞれ互いに平行である。
一方、プロペルチ法により製造された鋳造材155は、製造時に冷却ロールの上部に鋼ベルトによって流動性を有する金属が密閉されるため、矢印方向のように四方から冷却が進むことにより四方にチル層154が形成され、四方から中心部に向かって粒状が大きくなる。
このように、従来のプロペルチ法で製造された鋳造材155は、上下左右から冷却されるため、最終凝固部が中心部となり、鋳巣が発生しやすくなる。このように中心部に鋳巣が発生した鋳造材155は、線材を製造するための鋳造材としては不適である。これに対し、本実施形態に係る鋳造材の製造装置100,101で製造された鋳造材150は、冷却ロール110からの冷却が主であり、一方向凝固性となることから、最終凝固部は冷却ロール110から遠い表面近くとなるため、中心部において鋳巣が発生しにくくなる。このように中心部に鋳巣がほぼ存在しない鋳造材150は、線材を製造するための鋳造材として適している。
[6.製造装置の別例]
図11は、成形ロール190を設けた鋳造材の製造装置102の模式図である。この製造装置102は、成形ロール190を備える点で図1や図4に示される製造装置100,101と異なっており、その他の構成については図1や図4に示される製造装置100,101と同様である。
成形ロール190は、流動性を有する金属1が凝固または半凝固した金属1の上面の形状を成形する機能を有する。図11に示されるように、成形ロール190は、冷却ロール110の最上位位置となる位置αよりも、若干、冷却ロール110の回転方向側に設けられている。凝固または半凝固した金属1の上面を成形ロール190で成形することにより、金属1の上面が略平坦でなかったとしても、かかる上面を略平坦または略平坦に近い状態とすることができる。これにより、本実施形態における鋳造材の製造装置102によって製造された鋳造材を線材に成形することが容易となり、鋳造および成形を小型で安価な省工程で完結させることが可能となる。
[7.実施例]
本実施形態を、以下の第1の実施例および第2の実施例夫々の実験例により裏付けを行った。
[7−1.第1の実施例]
第1の実施例における実験例の結果を、表1および図12〜図17を参照して説明する。なお、図12〜図16は、それぞれ、表1の実験例1〜実験例5に示される条件で鋳造をした場合の鋳造材の断面を示す図である。図17は、サイドダム120の平面部120aの断熱材の有無と金属溜まりの有無とに応じた鋳造材の形状を模式的に示す図である。
Figure 0006982312
製造装置100を用い、実験例1〜5の条件にて鋳造材を製造した。この実験例1〜5では、湯量が1.5kg、冷却ロール110は、ロール幅が10mm及びロール径が600mmの円板状のSS400製のものを用いた。また、冷却ロール110のロール面は溝が無く平坦であり、冷却ロール110の回転軸111は水平方向に設置されている。なお、冷媒を用いた強制冷却はしていない。サイドダム120は、直径が200mm及び厚さが20mmの円板状のSS400製である。サイドダム120の金属に接する面120aには離型剤としてBN(窒化ホウ素)塗料を塗布乾燥させて用いた。全実験例において離型剤BNをサイドダム120の金属に接する面120a(断熱材を使用する場合は、断熱材の表面)に塗布して用いている。各実験例に置いて両サイドダム120、120は金属に対しそれぞれ同じ速度で回転させた。
なお、表1に示される冷却ロール速度Vr(m/min)およびサイドダム速度Vs(m/min)は、いずれも、仮想円122,124(図3および図5参照)の接線方向速度である。
(実験例1)
実験例1では、試料としてアルミニウム系の金属AC7Aを用い、注湯温度680℃で注湯した。冷却ロールの周速5m/min、サイドダムの周速5m/min、サイドダム120の平面部120aは断熱材を用いず、金属溜まりが形成されない条件にて鋳造材を作製した。
流動性を有する金属1の注湯は次のように行った。冷却ロール110の幅方向の中央で、冷却ロール110の回転軸111に直交する鉛直点(冷却ロール110の中心を通る鉛直線と冷却ロール110の外周面112とが交わる上下2つの点のうち上の点)よりも手前(反回転方向側)の上部の位置の冷却ロール表面に直接注湯し、注湯された流動性を有する金属が直ちに冷却ロールに触れる様に行った。このため、金属湯溜まりは形成していない。尚、その時の注湯速度はロール周速よりも速かった。その結果、図12および図17に示すような断面形状が略かまぼこ形の鋳造材(幅約10mm)が得られた。
実験例1で得られた鋳造材は、長手方向を横切る断面を形成する対向する2辺は平行であり、又、上記の断面を形成する辺のうち一つは直線状であり、隣接する2辺は当該直線状辺に対し、直交する直線状であった。図12に示す鋳造材の断面の組織を顕微鏡観察すると、図10(a)の模式図に示すように、隣接する結晶粒の大きさが一の方向に徐々に拡大する特定領域を有し、一の方向における特定領域の長さが、冷却ロール110に接する面の幅方向の長さに対して80%以上であり、上記一の方向と直交する厚み方向における特定領域の長さが、当該方向における上記断面の長さに対して50%以上であった。また、長手方向に垂直な断面は、横方向長さが縦方向長さの約1.3倍の略かまぼこ形であった。
(実験例2)
実験例2では、試料としてアルミニウム系の金属AC7Aを用い、注湯温度670℃で注湯した。冷却ロール110の周速5m/min、サイドダム120の周速5m/min、サイドダム120の平面部120aに、同形状の離型剤を塗布した厚紙(厚さ約0.5mm)を貼り付け、120aの断熱材有り条件とし、金属溜まりが形成される条件にて鋳造材を作製した。
流動性を有する金属1の注湯は次のように行った。バックダム170を用い、冷却ロール110の幅方向の中央で、冷却ロール110の回転軸111の鉛直点よりも手前の上部の位置に金属溜まりを形成させ、流動性を有する金属を金属溜まり中に注湯した。その結果、図13および図17に示すような断面形状が略四角形の鋳造材(幅約10mm)が得られた。
実験例2で得られた鋳造材は、長手方向を横切る断面を形成する辺のうち一つが直線状であり、隣接する2辺は夫々約87度及び86度で交わる直線状であり、台形状であった。対向する2辺の夾角は7度であった。図13に示す鋳造材の断面の組織を顕微鏡観察すると、図10(a)の模式図に示すように、隣接する結晶粒の大きさが一の方向に徐々に拡大する特定領域を有し、一の方向における特定領域の長さが、冷却ロール110に接する面の幅方向の長さに対して80%以上であり、上記一の方向と直交する厚み方向における特定領域の長さが、当該方向における上記断面の長さに対して50%以上であった。また、長手方向に垂直な断面は、横方向長さが縦方向長さの1.5倍の略長方形であった。
(実験例3)
実験例3では、試料としてアルミニウム系の金属AC7Aを用い、注湯温度670℃で注湯した。冷却ロールの周速10m/min、サイドダムの周速10m/min、サイドダム120に、実験例2と同様に(離型剤を塗布した厚紙)断熱材有条件とし、実験例1と同様にして金属溜まりが形成される条件にて鋳造材を作製した。その結果、図14および図17に示すような断面形状が略四角形の鋳造材(幅約10mm)が得られた。実験例2の場合と比較して高さが約1/2程度低くなっているのは、冷却ロール110およびサイドダム120の周速が実験例2と比較して2倍になっていることにより、冷却される金属の量が少なくなるためと考えられる。
実験例3で得られた鋳造材は、長手方向を横切る断面を形成する辺のうち一つが直線状であり、隣接する2辺は約78度で交わる、逆台形状をしていた。対向する2辺の夾角は24度であった。尚、当該辺の長さの半分以上上部は外に凸状であった。図14に示す鋳造材の断面の組織を顕微鏡観察すると、図10(a)の模式図に示すように、隣接する結晶粒の大きさが一の方向に徐々に拡大する特定領域を有し、一の方向における特定領域の長さが、冷却ロールに接する面の幅方向の長さに対して80%以上であり、上記一の方向と直交する厚み方向における特定領域の長さが、当該方向における上記断面の長さに対して50%以上であった。また、長手方向に垂直な断面は、横方向長さが縦方向長さの2.6倍の略長方形であった。
(実験例4)
実験例4では、試料として真鍮(Cu−15%Zn系)を用い、注湯温度1050℃で注湯した。冷却ロールの周速10m/min、サイドダムの周速10m/min、実験例2と同様にサイドダム120の平面部120aの断熱材有り(離型剤を塗布した厚紙)条件、金属溜まりが形成される条件にて鋳造材を作製した。その結果、図15および図17に示すような断面形状が略四角形の鋳造材(幅約10mm)が得られた。これにより、金属の種類によって注湯温度は異なるが、アルミニウム系の金属に限らず本願発明を実施することが可能であることがわかった。なお、長手方向に垂直な断面は、横方向長さが縦方向長さの2.2倍の略長方形であった。
(実験例5)
実験例5では、試料としてアルミニウム系の金属AC7Aを用い、注湯温度670℃で注湯した。冷却ロールの周速10m/min、サイドダムの周速10m/min、サイドダム120は実験例1と同様120aには断熱材は使用せず、金属溜まりが形成される条件にて鋳造材を作製した。その結果、図16および図17に示すように断面形状において金属上面がやや凹んだ形状の鋳造材(幅約10mm)が得られた。これは、冷却ロールおよびサイドダムの周速が実験例1と比較して2倍になっていること、断熱材がないことによりサイドダムに接する流動性を有する金属の冷却が進み、中央部分の金属の冷却が遅れることが原因として考えられる。このような鋳造材は後工程における圧延に適さず良質の線材は得られなかった。
実験例1〜実験例5に示されるように、金属溜まりが形成されない条件(実験例1)にて鋳造材を作成した場合には、断熱材無しの条件であったとしても、後工程における圧延が容易で鋳巣もなく良好な品質の線材が作成できるという結果が得られた。また、金属溜まりが形成されたとしても、断熱材有りの条件(実験例2〜実験例4)にて鋳造材を作成した場合には、後工程における圧延が容易で鋳巣もなく良好な品質の線材が作成できるという結果が得られた。これに対し、金属溜まりが形成され、さらに断熱材無しの条件(実験例5)にて鋳造材を作成した場合には、後工程における圧延が容易で鋳巣もなく良好な品質の線材を作成することができないという結果が得られた。
なお、実験例1〜実験例5には含まれていないが、サイドダム120の平面部120aの断熱材有り、金属溜まりが形成されない条件にて鋳造材を作製した場合には、図17に示されるように、断面形状が略かまぼこ形の鋳造材が得られた。
[7−2.第2の実施例]
次に、第2の実施例における実験例について説明する。
第2の実施例では、製造装置100を用い、注湯量が1.5kg、冷却ロール110は、ロール幅が10mm及びロール径が600mmの円板状のSS400製のものを用いた。サイドダム120の金属に接する面120aには離型剤としてBN(窒化ホウ素)塗料を塗布乾燥させて用いた。又、試料としてアルミニウム系の金属AC7Aを用い、注湯温度680℃で注湯した。この第2の実施例では、仮想円122,124の接線方向についてのサイドダム120の速度Vs(m/min)を変えて鋳造材を作製した。なお、第2の実施例は、以下に示すように条件を変えて行っているため、第2の実施例(その1)については表2を参照して説明し、第2の実施例(その2)については表3を参照して説明をする。
(第2の実施例(その1))
第2の実施例(その1)では、冷却ロールの周速10m/min、サイドダム120の平面部120aの断熱材有り、金属溜まり有りの条件にて、鋳造材を作製した。その結果、表2に示す結果が得られた。
仮想円122,124の接線方向についてのサイドダム120の速度を、仮想円122,124の接線方向についての冷却ロール110の速度の0.6倍より大きく2.0倍未満とするとよい。
Figure 0006982312
(第2の実施例(その2))
冷却ロールの周速5m/min、サイドダム120の平面部120aの断熱材無し、金属溜まり無しの条件にて、鋳造材を作製した。その結果、表3に示す結果が得られた。
Figure 0006982312
第2の実施例(その1)および第2の実施例(その2)の結果によると、安定した鋳造を行うには、冷却ロールの周速と仮想円122,124の接線方向についてのサイドダム120の周速の速度比は、冷却ロールの周速の0.4倍より大きいことが好ましく、0.6倍より大きいことがより好ましく、4.0倍以下が好ましく、2.0倍未満がより好ましい。したがって0.4倍より大きく、4.0倍以下が好ましく、0.6倍より大きく2.0倍未満がより好ましい。
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、従来よりも小さい断面形状を有する鋳造材を従来よりも小さい装置(従来よりも小径の冷却ロール110を採用するとともに、従来の張力輪および鋼ベルトが不要)で製造することができ、しかも、小さい断面の鋳造材を製造することで、鋳造材から線材に加工するための三方ロール圧延の段数を大幅に低減することができる。これにより、高コストとなることなく安価で小ロット生産の需要に見合った鋳造材を製造することが可能となる。
本願発明によれば、小ロット生産または小ロット多品種生産の需要に見合った鋳造材を製造することができ、さらには、線材の小ロット生産または小ロット多品種生産の生産性の向上に貢献することが期待される。
1 金属
100,101,102 鋳造材の製造装置
110 冷却ロール
111 冷却ロールの回転軸
112 冷却ロールの外周面
120 サイドダム
121 サイドダムの回転軸
122,124 仮想円
150,155 鋳造材
154 チル層
160 注湯領域
180 断熱層
190 成形ロール

Claims (7)

  1. 金属製線材の加工に供される鋳造材の製造装置であって、
    外周面に流し込まれた流動性を有する金属を冷却することが可能な冷却ロールと、
    前記冷却ロールの両側方において互いに対向するとともに離型性を有する面を有し、前記冷却ロールの外周面に流し込まれた金属を、当該冷却ロールの両側方において前記離型性を有する面にて堰き止めることが可能な第1の側方部材および第2の側方部材と、
    を備え、
    前記第1の側方部材および前記第2の側方部材は、
    夫々、前記冷却ロールの外周面に流し込まれた前記金属の移動方向に沿う方向に、前記冷却ロールとは異なる回転軸を回転中心として回転可能に構成されてなる
    ことを特徴とする鋳造材の製造装置。
  2. 前記第1の側方部材および前記第2の側方部材は、
    前記第1の側方部材および前記第2側方部材夫々の回転中心から前記冷却ロールの外周面までの距離が最短となる最短位置までを半径とする仮想円において、前記最短位置における前記仮想円の接線方向速度が、当該最短位置における前記冷却ロールの接線方向速度の0.6倍より大きい速度で回転するように構成されてなる
    ことを特徴とする請求項に記載の鋳造材の製造装置。
  3. 前記第1の側方部材及び前記第2の側方部材夫々の前記冷却ロールを挟んで対向する面の、前記流動性を有する金属に対面する部分が更に断熱性を有する層を中層に有する、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の鋳造材の製造装置。
  4. 金属製線材の加工に供される鋳造材の製造方法であって、
    流動性を有する金属を冷却することが可能な冷却ロールと、
    前記冷却ロールの両側方において互いに対向するとともに離型性を有する表面を有し、前記流動性を有する金属を当該冷却ロールの両側方において堰き止めることが可能であり、前記金属の移動方向に沿う方向に、前記冷却ロールとは異なる回転軸を回転中心として回転する前記第1の側方部材および前記第2の側方部材と、
    を備える前記鋳造材の製造装置を用い、
    前記第1の側方部材および前記第2の側方部材を回転させた状態で、流動性を有する金属を、少なくとも前記冷却ロールの外周面と前記第1の側方部材および第2の側方部材とによって形成される注湯領域に流し込む第1工程と、
    前記注湯領域に流し込まれた前記流動性を有する金属を凝固させつつ前記冷却ロールの回転方向に沿って移動させる第2工程と、
    を有することを特徴とする鋳造材の製造方法。
  5. 前記第2工程は、
    前記第1の側方部材および前記第2側方部材夫々の回転中心から前記冷却ロールの外周面までの距離が最短となる最短位置までを半径とする仮想円において、前記最短位置における前記仮想円の接線方向速度を、前記冷却ロールの接線方向速度の0.6より大きい速度となるよう回転させることで、前記注湯領域に流し込まれた流動性を有する金属を凝固させつつ前記冷却ロールの回転方向に沿って移動させるものである
    ことを特徴とする請求項4に記載の鋳造材の製造方法。
  6. 前記第1工程は、
    前記流動性を有する金属を、互いに対向する前記第1の側方部材の面と前記第2の側方部材の面との間の距離よりも小さい幅で、冷却ロール表面に直接注湯し、注湯された流動性を有する金属が直ちに冷却ロールに触れる様に行う
    ことを特徴とする請求項4または5に記載の鋳造材の製造方法。
  7. 長手方向に垂直な断面におけるアスペクト比が3以下の線状の鋳造まま材であって、
    前記断面を形成する対向する2辺が略平行であり、
    前記断面を拡大観察すると、隣接する結晶粒の大きさが一の方向に徐々に拡大する特定領域を有し、
    前記一の方向における前記特定領域の長さが、当該一の方向における前記断面の長さに対して50%以上であり、
    前記一の方向と直交する他の方向における前記特定領域の長さが、当該他の方向における前記断面の長さに対して80%以上である、
    ことを特徴とする線状の鋳造材。
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