以下、添付図面を参照して、本願の開示する排水弁装置、洗浄水タンクおよび水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<1.水洗大便器>
まず、図1を参照して実施形態に係る水洗大便器1について説明する。図1は、実施形態に係る水洗大便器1の概略斜視図である。なお、図1においては、説明をわかりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。なお、かかる直交座標系は、他の図においても図示している場合がある。
また、かかる直交座標系は、X軸の正方向視を「左側面」、X軸の負方向視を「右側面」と規定し、Y軸の負方向視を「正面」と規定している。このため、以下の説明では、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という場合がある。
図1に示すように、水洗大便器1は、便器本体2と、洗浄水タンク10とを備える。便器本体(以下、「便器」という)には、汚物を受けるボウル部3が設けられる。便器2には、上部に、たとえば便座(図示省略)が設けられる。
洗浄水タンク10は、便器2の後方上部に設置される。洗浄水タンク10は、タンク部11と、蓋部12とを備える。タンク部11は、上面が開口された直方体状の容器であり、便器2のボウル部3を洗浄する洗浄水を貯留する。タンク部11の底面11aには、底面11aを上下方向に貫通する排水口13が設けられる。
蓋部12は、タンク部11の上面を全体的に覆うように、タンク部11の上部に着脱自在に取り付けられる。蓋部12の上面には、押しボタン式の手動操作装置20(図2参照)が設けられる。手動操作装置20は、使用者がボタン21を押下操作することで、たとえば、小洗浄モードの洗浄操作または大洗浄モードの洗浄操作のいずれかの洗浄モードに応じて、所定流量の洗浄水が洗浄水タンク10から便器2側へ供給される。
たとえば、洗浄水タンク10は、1.5L(リットル)〜6Lの洗浄水量を便器2へ供給可能に構成され、好ましくは、1.5L〜3.8Lの洗浄水量で便器2を洗浄する、節水タイプの水洗大便器1における洗浄水タンク10として用いることもできる。なお、洗浄水タンク10の詳細については、図2および図3を用いて後述する。
水洗大便器1は、便器2と洗浄水タンク10とが別々に設けられたタイプであってもよい。また、水洗大便器1は、便器2と洗浄水タンク10とが一体に設けられた、いわゆるワンピースタイプであってもよい。なお、水洗大便器1は、たとえば陶器製である。また、洗浄水タンク10は、たとえば陶器製である。
水洗大便器1の便器2は、上記したボウル部3と、リム部4とを備える。ボウル部3の底部には、排水トラップ管路5の入口5aが設けられ、入口5aから後方の排水トラップ管路5がたとえば排水ソケットを介して床下の排水管(図示省略)に接続される。
また、便器2は、導水路6と、第1吐水口6aと、第2吐水口6bとを備える。導水路6は、タンク部11の排水口13から排出される洗浄水が流入する。第1吐水口6aは、たとえば、リム部4の左側中央部に配置され、洗浄水を吐出する。第2吐水口6bは、たとえば、リム部4の右側後部に配置され、洗浄水を吐出する。
また、導水路6は、洗浄水タンク10のタンク部11の後方から前方へ向けて延びた後に分岐されて第1吐水口6aまたは第2吐水口6bまで延びる流路である。タンク部11の排水口13から排出された洗浄水は、導水路6において便器2の後方から前方へ向けて流れた後に分岐され、第1吐水口6aまたは第2吐水口6bに到達する。第1吐水口6aまたは第2吐水口6bのそれぞれから吐出された洗浄水は、ボウル部3を洗浄して汚物を排水トラップ管路5から排出する。
なお、水洗大便器1は、サイホン作用を利用してボウル部3内の汚物を引き込んで排水トラップ管路5から排出する、いわゆるサイホン式である。また、水洗大便器1では、たとえば、第1吐水口6aから吐出された洗浄水が旋回しながら下降してボウル部3を洗浄する。また、水洗大便器1では、たとえば、第2吐水口6bから吐出された洗浄水が水流を発生させる。
なお、水洗大便器1は、サイホン式に限定されない。水洗大便器1は、たとえば、ボウル部3内の洗浄水の落差による流水作用で汚物を押し流す、いわゆる洗い落し式であってもよい。
<2.洗浄水タンク>
次に、図2および図3を参照して実施形態に係る洗浄水タンク10について説明する。図2は、実施形態に係る洗浄水タンク10の概略正断面図である。図3は、実施形態に係る洗浄水タンク10の概略右側断面図である。なお、詳しくは、図2は、図1におけるA−A線断面図であり、図3は、図1におけるB−B線断面図である。
図2および図3に示すように、洗浄水タンク10は、上記したタンク部11内に、給水装置15と、手動操作装置20と、排水弁装置50とを備える。給水装置15は、タンク部11内に洗浄水を供給する。給水装置15は、給水管16と、給水バルブ17と、フロート18とを備える。給水管16は、たとえば外部給水源(図示省略)に接続され、かつ、タンク部11の底面11aから上方へ延びて設けられる。
給水バルブ17は、給水管16の上部に取り付けられる。給水バルブ17は、給水管16から供給される洗浄水のタンク部11内への吐水と止水とを切り替える。フロート18は、タンク部11内の水位の変動に応じて上下動して、給水バルブ17による吐水と止水とを切り替える。
給水装置15では、給水管16の下端部に複数の吐水口が形成され、給水バルブ17を通過した洗浄水が吐水口からタンク部11内へ吐水される。
給水装置15では、排水弁装置50による排水口13の開放によってタンク部11内の洗浄水が便器2(図1参照)へ排水されると、洗浄水の水位が低下してフロート18が下降する。給水装置15では、フロート18が下降することで、給水バルブ17が開いて吐水口からの吐水が開始され、給水源からタンク部11内への吐水が開始される。
給水源の吐水が継続されてタンク部11内の水位が上昇すると、フロート18が上昇し、フロート18の上昇によって給水バルブ17が閉鎖されて吐水口からの吐水が止まる。これにより、タンク部11内の洗浄水の水位が、満水時の所定水位(「止水水位」ともいう)WLに維持される。
なお、給水装置15は、リフィール管19などをさらに備える。給水装置15では、リフィール管19から流出する一部の洗浄水がオーバーフロー管518内へ流れ込み、便器2の導水路6(図1参照)を経て、補給水としてボウル部3(図1参照)内へ供給される。
手動操作装置20は、上記したように、押しボタン式の操作装置である。手動操作装置20は、操作ボタン21と、押下部材22とを備える。操作ボタン21は、小洗浄ボタン21aと、大洗浄ボタン21bとを備える。小洗浄ボタン21aは、水洗大便器1(図1参照)の小洗浄モードの洗浄操作の開始を機械的に指令する。大洗浄ボタン21bは、水洗大便器1の大洗浄モードの洗浄操作の開始を機械的に指令する。
押下部材22は、小洗浄押下部材22aと、大洗浄押下部材22bとを備える。小洗浄押下部材22aは、小洗浄ボタン21aの下面から下方へ延びて設けられる。小洗浄押下部材は22aは、使用者によって小洗浄ボタン21aが押下された場合に排水弁装置50の小洗浄操作部531を押し下げる。
大洗浄押下部材22bは、大洗浄ボタン21bの下面から下方へ延びて設けられる。大洗浄押下部材は22bは、使用者によって大洗浄ボタン21bが押下された場合に排水弁装置50の大洗浄操作部532を押し下げる。手動操作装置20では、使用者による小洗浄ボタン21aまたは大洗浄ボタン21bの押下操作によって、排水弁装置50を小洗浄モードまたは大洗浄モードで動作させる。
なお、本実施形態では、手動操作装置20は、小洗浄ボタン21aまたは大洗浄ボタン21bの押下操作によって排水弁装置50の軸部522(および弁体521)を引き上げ操作する操作装置としているが、これに限定されない。手動操作装置20は、たとえば、操作ハンドルの回転操作によってワイヤ巻取装置を操作して、ワイヤを引き上げることで軸部522を引き上げ操作する操作装置であってもよい。
<3.排水弁装置>
次に、図2〜図4を参照して実施形態に係る排水弁装置50について説明する。図4は、実施形態に係る排水弁装置50の概略平断面図である。なお、詳しくは、図4は、図2におけるC−C線断面図である。
図2〜図4に示すように、排水弁装置50は、ケーシング51と、弁部52と、引き上げ部53と、小洗浄フロート機構54と、大洗浄フロート機構55とを備える。ケーシング51は、円筒状に形成され、排水弁装置50の外観を形成する。ケーシング51は、弁部52、小洗浄フロート機構54および大洗浄フロート機構55のそれぞれの上方および側方を覆うようにこれらを内部に有する。
また、ケーシング51は、胴部511と、蓋部512と、排水口部513とを備える。胴部511は、上面が開口され、ケーシング51の側周面を形成するように筒状に形成される。胴部511は、側周面において洗浄水が通過可能な複数のスリット511aを有する。蓋部512は、胴部511の開口部分を覆うように、胴部511の形状にあわせて形成される。蓋部512は、係合部の係合によって、胴部511に対して固定される。なお、胴部511と蓋部512とは、最初から一体ものとして形成されてもよい。
排水口部513は、本体部514と、縮径部515と、弁座516と、オーバーフロー管接続部517とを備える。本体部514は、円筒状に形成され、タンク部11の排水口13に取り付けられる。縮径部515は、本体部514の内周面に設けられ、下方へ向けて縮径する部位である。弁座516は、縮径部515の上端縁に沿って円環状に形成されるとともに、上方へ向けて突出して設けられる。
オーバーフロー管接続部517は、オーバーフロー管518の下部と排水口部513の本体部514とを接続する。また、オーバーフロー管接続部517は、オーバーフロー管518の下部と排水口部513の本体部514とを連通させる。なお、オーバーフロー管518は、タンク部11内の洗浄水が規定高さ水位を超える場合に、洗浄水を排水弁装置50へ流入させて、オーバーフローを防止する。
また、ケーシング51には、排水口13の弁座516よりも上方に、周方向に並んだ複数の連通口519が設けられる。なお、連通口519の開口断面は、正面視(Y軸の負方向視)において矩形状に形成される。また、連通口519は、タンク部11の内部と本体部514の内部とを連通させ、タンク部11内の洗浄水を排水口13へ流出する。
弁部52は、タンク部11の底面11aに設けられた排水口13を開閉する。弁部52は、弁体521と、軸部522と、取付部523(図3参照)とを備える。弁体521は、排水口部513内において排水口13の上方に設けられ、排水口13を開閉する。
弁体521は、排水口13を閉鎖可能に、たとえば円板状に形成される。弁体521は、最も下降した状態で弁座516上に配置される。また、弁体521は、最も上昇した状態で排水口部513の頂部に配置される。
軸部522は、弁体521の上方に設けられるとともに、弁体521から上方に延びて設けられる。すなわち、軸部522は、軸方向の下端部に弁体521を有する。軸部522は、軸方向の上端部側が、小洗浄ボタン21aまたは大洗浄ボタン21bによって操作される引き上げ部53と連結される。
取付部523は、軸部522と引き上げ部53とを連結する。取付部523は、軸部522から側方へ延びる直方体状の平板部材の中央付近に形成された取付穴525(図3参照)を有する。取付穴525は、矩形状の開口部である。なお、弁部52の軸部522の詳細については、図6A〜図6Cを用いて後述する。
引き上げ部53は、ケーシング51の外部からの操作によって、弁部52を上方へ引き上げる。より具体的には、引き上げ部53は、軸部522を上方へ引き上げる。引き上げ部53は、小洗浄操作部531と、大洗浄操作部532と、第1リンク533と、第2リンク534とを備える。
小洗浄操作部531は、ケーシング51の蓋部512の上面に配置され、かつ、上下方向に摺動可能に設けられる。大洗浄操作部532は、ケーシング51の蓋部512の上面に配置され、かつ、上下方向に摺動可能に設けられる。
第1リンク533(図3参照)は、小洗浄操作部531または大洗浄操作部532が下方へ押し込まれると、回転軸を中心に回転する。第2リンク534(図3参照)は、第1リンク533の一端部に回転可能に取り付けられ、第1リンク533の回転に伴い上方へ移動する。
また、第1リンク533は、小洗浄操作部531の比較的小さい押し込み移動量に対応して比較的小さい回転量で回転する。また、第1リンク533は、大洗浄操作部532の比較的大きい押し込み移動量に対応して比較的大きい回転量で回転する。
図3に示すように、第2リンク534は、下端部が取付部523の取付穴525に挿入され、向きを変えて配置される。このため、第2リンク534は、上方へ移動することで取付部523の下面と係合して、取付部523を介して弁部52を引き上げる。
小洗浄フロート機構54は、排水弁装置50に、小洗浄モードにおける開弁動作を開始させる。小洗浄フロート機構54は、フロート部541と、カム係合部542とを備える。なお、小洗浄フロート機構54は、たとえば樹脂製である。
フロート部541は、タンク部11内の水位WLが所定の小洗浄水量を排出する水位(死水水位)DWL(図5A参照)まで低下する場合に、タンク部11内の水位WLと共に下降する。カム係合部542は、弁部52の軸部522に係合可能に形成される。また、カム係合部542は、フロート部541が下降すると、軸部522との係合が解除される。
また、フロート部541は、フロート543と、フロート支持軸544とを備える。フロート543は、浮力によってタンク部11内の水位WLの上昇に応じて上昇し、かつ、タンク部11内の水位WLの下降と共に下降する。フロート支持軸544は、上下方向に延びて設けられ、フロート543を支持する。
大洗浄フロート機構55は、排水弁装置50に、大洗浄モードにおける開弁動作を開始させる。大洗浄フロート機構55は、フロート部551と、カム係合部552と、貯水部553とを備える。なお、大洗浄フロート機構55は、たとえば樹脂製である。
フロート部551は、タンク部11内の水位WLが所定の大洗浄水量を排出する水位(死水水位)DWL(図5B参照)まで低下する場合に、タンク部11内の水位WLと共に下降する。カム係合部552は、弁部52の軸部522に係合可能に形成される。また、カム係合部552は、フロート部551が下降すると、軸部522との係合が解除される。貯水部553は、フロート部551を収容する。
フロート部551は、所定高さの柱状に形成される。フロート部551は、貯水部553内に大部分が配置され、貯水部553内の水位に応じて浮力が作用する。フロート部551は、小洗浄フロート機構54のフロート部541よりも低い位置に配置される。
カム係合部552は、たとえば、一対のアーム部554と、一対の回転軸555と、係合凹部556とを備える。一対のアーム部554は、フロート部551の上端部から弁部52の軸部522の反対側へ向けて斜め上方へ直線的に延びて設けられる。一対の回転軸555は、アーム部554の上端部から外側へ向けて突出して設けられる。係合凹部556は、アーム部554の上端部に設けられるとともに、軸部522の突起部524と係合可能に設けられる。
貯水部553は、排水口部513の上部に取り付けれ、大洗浄モードにおいて弁部52の動作を制御する。貯水部553は、上部がケーシング51内の上方へ向けて開口され、かつ、下部に穴(図示省略)が設けられる。貯水部553は、タンク部11から洗浄水が排出される場合に、タンク部11内の水位の下降速度と異なるように貯水部553内の水位の下降速度を制御する。これにより、貯水部553は、フロート部551の下降開始タイミングを制御することができる。
また、貯水部553内に貯留される洗浄水によるフロート部551に対する浮力がフロート部551の下向きの自重を上回っている場合には、フロート部551が貯水部553内で上昇する。また、フロート部551に対する浮力がフロート部551の下向きの自重を下回っている場合には、フロート部551が貯水部553内で下降する。
すなわち、貯水部553内にフロート部551が配置されることで、貯水部553内の水位の変動に応じて、フロート部551の上下動、すなわち、大洗浄フロート機構55の回転軸555を中心とする回動を制御することができる。
貯水部553は、貯水部553の側周壁部の下方に、貯水部553内の洗浄水を貯水部553の外部のタンク部11内へ流出させる流量調整用の小孔553aが設けられる。小孔553aは、スリット状に形成されるとともに、開口面積を変更可能に形成される。
また、貯水部553の貯水領域の水位の低下速度については、たとえば、小孔553aの開口面積を調整して、開口面積を小さくするほど、貯水部553の外部の水位の低下速度との速度差が大きくなり、軸部522および弁体521の下降動作(閉弁動作)が開始されるタイミングが遅延する。
このため、排水終了時のタンク部11内の水位(死水水位)が低くなり、大洗浄モードにおいてタンク部11から便器2(図1参照)へ供給される洗浄水の総量が多くなるように設定される。
これと反対に、貯水部553の貯水領域の水位の低下速度について、たとえば、小孔553aの開口面積を調整して、開口面積を大きくするほど、貯水部553の外部の水位の低下速度との速度差が小さくなり、軸部522および弁体521の下降動作(閉弁動作)が開始されるタイミングが早まる。
このため、排水終了時のタンク部11内の死水水位DWLが高くなり、大洗浄モードにおいてタンク部11から便器2へ供給される洗浄水の総量が少なくなるように設定される。
また、ケーシング51の胴部511には、小孔553aの近傍にケーシング開口(図示省略)が部分的に設けられる。ケーシング51では、ケーシング開口によって、タンク部11の内部と貯水部553の内部とが連通可能となる。このため、ケーシング51では、貯水部553内の洗浄水を小孔553aからケーシング開口を経てタンク部11内へ流出させることができる。
なお、本実施形態では、大洗浄フロート機構55に貯水部553を備えるが、大洗浄フロート機構55に貯水部553を備えないものであってもよい。この場合、大洗浄フロート機構55のフロート部551は、タンク部11内の水位の変動に応じて上下動することとなる。
次に、図5Aおよび図5Bを参照して排水弁装置50の排水動作について説明する。図5Aは、実施形態に係る排水弁装置50の小洗浄排水動作の説明図である。図5Bは、実施形態に係る排水弁装置50の大洗浄排水動作の説明図である。排水弁装置50では、上記したように、小洗浄ボタン21aが押されると、小洗浄モードによる排水動作が開始され、大洗浄ボタン21bが押されると、大洗浄モードによる排水動作が開始される。
図5Aに示すように、排水弁装置50の小洗浄モードにおける開弁時の状態では、使用者によって蓋部12に設けられた小洗浄ボタン21aが押されると、かかる押下操作に応じて小洗浄操作部531が押し下げられる。小洗浄操作部531の押し下げにより、引き上げ部53の第1リンク533が比較的小さな回転量だけ回転され、第2リンク534が比較的小さな引き上げ量だけ引き上げられる。
なお、第2リンク534の下端部が取付部523を引き上げると、弁部52全体を引き上げることができる。弁部52の軸部522が最高位置よりも低い位置まで引き上げられ、排水口13が開放される。弁座516に対する弁体521の上昇高さが、大洗浄モードの上昇高さよりも低い位置となり、タンク部11の排水弁装置50による水洗大便器1の便器2への小洗浄モードの排水が開始される。洗浄水が排水口13から排出され、タンク部11内の水位WLが低下を始める。
小洗浄モードにおける排水途中の状態では、排水口13から便器2への排水に伴い、タンク部11内の水位WLおよびケーシング51の内部の水位が低下し、水位の低下に連動してフロート543の浮力が減少し、フロート543がフロート支持軸544(図3参照)と共に下降する。
また、軸部522および弁体521がタンク部11内の水位WLの低下と共に下降し、小洗浄モードにおける閉弁動作が開始される。軸部522および弁体521が水位WLの低下と共にさらに下降すると、弁体521が弁座516に当接し、排水口13が閉止され、排水弁装置50の小洗浄モードにおける排水が終了する。なお、図中、洗浄水の排出が終了した時点の水位が、小洗浄モードにおける死水水位DWLとなる。
図5Bに示すように、排水弁装置50の大洗浄モードにおける開弁時の状態では、使用者によって蓋部12に設けられた大洗浄ボタン21bが押されると、かかる押下操作に応じて大洗浄操作部532が押し下げられる。大洗浄操作部532の押し下げにより、引き上げ部53の第1リンク533が比較的大きな回転量だけ回転され、第2リンク534が比較的大きな引き上げ量だけ引き上げられる。
なお、第2リンク534の下端部が取付部523を引き上げると、弁部52全体を引き上げることができる。弁部52の軸部522が最高位置まで引き上げられ、排水口13が開放される。弁座516に対する弁体521の上昇高さが、大洗浄モードの上昇高さとなり、タンク部11の排水弁装置50による水洗大便器1の便器2への大洗浄モードの排水が開始される。洗浄水が排水口13から排出され、タンク部11内の水位WLが低下を始める。
大洗浄モードにおける排水途中の状態では、排水口13から便器2への排水に伴い、タンク部11内の水位WLおよびケーシング51の内部の水位が低下し、水位の低下に連動してフロート543の浮力が減少し、フロート543がフロート支持軸544(図3参照)と共に下降する。
また、軸部522および弁体521がタンク部11内の水位WLの低下と共に下降し、大洗浄モードにおける閉弁動作が開始される。軸部522および弁体521が水位WLの低下と共にさらに下降すると、弁体521が弁座516に当接し、排水口13が閉止され、排水弁装置50の大洗浄モードにおける排水が終了する。なお、図中、洗浄水の排出が終了した時点の水位が、大洗浄モードにおける死水水位DWLとなる。
次に、図6A〜図6Cを参照して排水弁装置50において直動する軸部522について説明する。図6Aは、実施形態に係る排水弁装置50の軸部522の概略側面視図である。図6Bは、実施形態に係る排水弁装置50の軸部522のリブ部60の概略拡大正面視図である。図6Cは、実施形態に係る排水弁装置50の摺動面61の概略拡大斜視図である。なお、図6Bは、図6AにおけるA部をA0方向から見た図である。
上記したように、軸部522は、弁体521(図2および図3参照)の上方に設けられるとともに、弁体521から上方に延びて設けられる。軸部522は、ケーシング51の胴部511(図4参照)内に設けられた軸ガイド部70(図10Aおよび図10B参照)にガイドされて軸方向に移動可能に設けられる。すなわち、軸部522は、上下方向に直動可能に設けられる。
図6Aに示すように、軸部522は、上端部に、第1連結部65と、第2連結部66とを備える。第1連結部65と第2連結部66とは、軸部522の上端部から水平方向における互いに反対となる向きに延びて設けられる。なお、図示の例では、第1連結部65は直線状に形成され、第2連結部66はアーチ状に形成される。
なお、図6Cに示すように、第1連結部65および第2連結部66には、それぞれ長穴状のスリット65a,66aが設けられる。第1連結部65のスリット65aには、小洗浄ボタン21aまたは大洗浄ボタン21b(図2参照)の押下操作によって軸部522を引き上げ操作するための引き上げ部材(図示省略)が挿通される。軸部522は、第1連結部65を介して、小洗浄ボタン21aまたは大洗浄ボタン21bの押下操作によって上方へ引き上げられる。
また、第2連結部66のスリット66aには、操作ハンドルの回転操作によって巻取操作されるワイヤ巻取装置のワイヤが挿通される。軸部522は、第2連結部66にワイヤが取り付けられた場合、ワイヤの引き上げ操作によって上方へ引き上げられる。すなわち、第1連結部65は操作ボタン用の連結部であり、第2連結部66は操作ハンドル用の連結部である。
図6Aに示すように、軸部522は、外側周面に上下方向に連続して軸部522の直動をガイドするリブ部60を有する。リブ部60は、上下方向に連続する直線状の凸状部位である。なお、軸部522の摺動面61は、リブ部60の外側端面となる。
また、軸部522は、外側周面に軸ガイド部70の内側周面71(図10A参照)に設けられた被摺動面72に対して摺動する摺動面61を備える。なお、摺動面61および被摺動面72とは、軸部522が引き上げ操作される場合に、互いに接触し合う面である。
ここで、上記したように、排水弁装置50では、便器2を洗浄操作するたびに、軸部522を引き上げ操作する。この場合、軸部522の摺動面61が軸ガイド部70の被摺動面72に対して摺動する動作を繰り返す。このため、長期間の使用によって摺動面61および被摺動面72が鏡面のように磨かれることがある。
このように、摺動面61および被摺動面72が共に鏡面のようになると、摺動面61および被摺動面72の親和性が増して、摺動抵抗が増大し、軸部522の引き上げ操作に強い力が必要となり、操作性および耐久性が悪化する。そこで、排水弁装置50では、軸部522の摺動面61および軸ガイド部70の被摺動面72について、摺動抵抗の増大を抑制可能な構成とした。
かかる構成として、排水弁装置50では、軸ガイド部70の被摺動面72と接触する軸部522の摺動面61を、軸部522の上下方向の移動に伴い流動的に変化するような形状、すなわち、軸部522が上下方向のいずれかへ進むにつれて流動的に変化するような形状とする。
具体的には、図6Bに示すように、軸部522のリブ部60における摺動面61に、凸部62と、凹部63とが設けられる。凸部62は、ひし形状である。また、摺動面61において、複数のひし形状の凸部62が上下方向に直列に配置されるとともに、凸部62の列が複数配置される。また、摺動面61において、凸部62が設けられていない部分、すなわち、凸部62と凸部62との間が凹部63となる。図6Bに示すように、凹部63は、メッシュ状となる。
図6Cに示すように、軸部522の摺動面61では、凸部62と凹部63とが、軸部522が上下方向に移動する場合に、軸ガイド部70の被摺動面72に対して流動的に変化する形状である。
また、摺動面61では、正面視において軸部522の移動方向、すなわち、上下方向に凸部62と凹部63とが交互に連続する形状であり、かつ、側面視において、凸部62によって形成される軸部522の外側端縁が軸部522の移動方向、すなわち、上下方向に連続する直線状の稜線となる形状である。
かかる構成によれば、軸部522が移動する場合に、摺動面61および被摺動面72の両面は、摺動方向(軸部522の移動方向、すなわち、上下方向)に連続的に接触するものの、互いの接触部分が変化する。このため、任意の位置においては摺動面61および被摺動面72の両面の同じ部分の連続接触が抑制され、たとえば、軸部522の引き上げを多数回行うことによって、摺動面61および被摺動面72の両面が研磨されることによる親和性の増大を抑えることができる。
これにより、摺動面61および被摺動面72の両面の摺動抵抗の増大を抑えることができる。摺動面61および被摺動面72の両面の摺動抵抗の増大を抑えることで、軸部522の引き上げ操作に必要な力が増大するのを抑えることができる。すなわち、軸部522の引き上げ操作にかかる操作性、および軸部522の移動機構、すなわち、軸部522および軸ガイド部70の耐久性を向上させることができる。
また、たとえば、摺動面61および被摺動面72の両面の間に異物が入り込んでも、摺動面61および被摺動面72の接触していない部分に異物を逃がすことができるため、軸部522の移動に対する悪影響を抑えることができる。これにより、軸部522の移動機構、すなわち、軸部522および軸ガイド部70の耐久性を向上させることができる。
また、上記した軸部522の摺動面61では、凸部62をひし形状、凹部63をメッシュ状としたが、凸部62の形状と凹部63の形状とが反対であってもよい。すなわち、ひし形状の凹部を設けた場合には、凹部以外の部分が図6Bに示すようなメッシュ状となるため、かかるメッシュ状部分を凸部として有してもよい。かかる構成としても、上記した排水弁装置50の軸部522と同様の効果が得られる。
また、軸部522は、上記したように、弁体521(図3参照)の中心から上方へ延びている。ここで、軸部522は、引き上げ部53(図3参照)との連結部である第1連結部65または第2連結部66が平面視において弁体521の中心から外れている。
かかる構成によれば、上記した軸部522のように、軸部522および引き上げ部53の連結部(第1連結部65、第2連結部66)が弁体521の中心から外れている場合、引き上げ部53による軸部522の引き上げ操作によって、回転モーメントが発生して摺動面61および被摺動面72において局所的に大きな力が加わっても、両面の摺動抵抗の増大を抑えられ、軸部522の引き上げ操作に必要な力が増大するのを抑えることができる。
また、軸部522の摺動面61は、軸部522の全長にわたって凸部62と凹部63とを有しているが、たとえば、図6Aに示すように、領域B1,B2に凸部62と凹部63とを有してもよい。軸部522は、上記したように、第1連結部65または第2連結部66が引き上げられるため、軸部522に回転モーメントが発生する。このため、領域B1,B2に対しては他の部分よりも摩擦が大きい。したがって、領域B1,B2だけに凸部62と凹部63とを有しても、十分な効果が得られる。
<4.摺動面の変形例>
次に、図7〜図9を参照して排水弁装置50の摺動面61の変形例1〜3について説明する。図7〜図9は、実施形態に係る排水弁装置50の摺動面61の変形例1〜3の概略拡大斜視図である。なお、図7〜図9には、軸部522を図6Cと同じ方向から見た場合を示している。
図7に示すように、変形例1の摺動面61Aは、リブ部60に、三角形状の複数の凸部62Aがそれぞれの頂点を外方へ向けた状態で上下方向に接続されて連続する形状で設けられる。なお、変形例1の摺動面61Aにおいて凸部62A以外の部分が凹部63Aとなる。
また、変形例1では、三角形状の複数の凹部63Aが凸部62Aの両側方において上下方向に連続する。かかる変形例1の構成としても、軸部522の上下方向の移動に伴い流動的に変化するような形状となり、上記した排水弁装置50の軸部522と同様の効果が得られる。
また、変形例1においても、凸部62Aの形状と凹部63Aの形状とが反対であってもよい。かかる構成としても、軸部522の上下方向の移動に伴い流動的に変化するような形状となり、上記した排水弁装置50の軸部522と同様の効果が得られる。
図8に示すように、変形例2の摺動面61Bは、リブ部60に、矩形状の複数の凸部62Bが互い違いとなって上下方向に接続されて連続する形状で設けられる。なお、変形例2の摺動面61Bにおいても、凸部62B以外の部分が凹部63Bとなる。
また、変形例2では、矩形状の複数の凸部62Bと矩形状の複数の凹部63Bとが上下方向に交互に連続する。したがって、かかる変形例2の構成としても、軸部522の上下方向の移動に伴い流動的に変化するような形状となり、上記した排水弁装置50の軸部522と同様の効果が得られる。
また、変形例2においても、凸部62Bの形状と凹部63Bの形状とが反対であってもよい。かかる構成としても、軸部522の上下方向の移動に伴い流動的に変化するような形状となり、上記した排水弁装置50の軸部522と同様の効果が得られる。
図9に示すように、変形例3の摺動面61Cには、リブ部60に、上下方向に途切れずに連続する波形状の凸部62Cが設けられる。かかる波形状の凸部62Cを「リブ」ともいう。なお、変形例3の摺動面61Cにおいても、凸部62C以外の部分が凹部63Cとなる。
また、変形例3では、波形状の凸部62Cが上下方向に途切れずに連続するため、軸部522の上下方向の移動に伴い流動的に変化するような形状である。したがって、かかる変形例3の構成としても、上記した排水弁装置50の軸部522と同様の効果が得られる。なお、図9に示すように、波形状の凸部62Cは、たとえば、1サイクルの長さPが、好ましくは、2.8mmであり、さらに好ましくは、1.6mmである。
また、変形例3においても、凸部62Cの形状と凹部63Cの形状とが反対であってもよい。かかる構成としても、軸部522の上下方向の移動に伴い流動的に変化するような形状となり、上記した排水弁装置50の軸部522と同様の効果が得られる。
<5.他の例の胴部>
次に、図10Aおよび図10Bを参照して、他の例のケーシング51の胴部511について説明する。図10Aは、他の例のケーシング51の胴部511の概略正面視図である。図10Bは、他の例のケーシング51の胴部511の軸ガイド部70の被摺動面72の概略拡大正面視図である。なお、詳しくは、図10Bは、図10AにおけるC部拡大図である。
図10Aに示すように、ケーシング51(図4参照)の胴部511には、引き上げ部53(図3参照)による軸部522(図4参照)の引き上げ操作に伴う上下方向の移動をガイドする軸ガイド部70が設けられる。軸ガイド部70は、軸部522の外側周面に設けられる。また、軸ガイド部70は、軸部522の軸方向に沿って設けられる。
軸ガイド部70は、軸部522のリブ部60が挿通される内側周面71に、軸部522の摺動面61を摺動させる被摺動面としてのガイド面72を備える。排水弁装置50では、軸部522の摺動面61と接触する軸ガイド部70の被摺動面72を、軸部522の上下方向の移動に伴い流動的に変化するような形状、すなわち、軸部522が上下方向のいずれかへ進むにつれて流動的に変化するような形状とする。
具体的には、図10Bに示すように、軸ガイド部70の被摺動面72に、凸部73と、凹部74とが設けられる。凸部73は、ひし形状である。また、被摺動面72において、複数のひし形状の凸部73が上下方向に直列に配置されるとともに、凸部73の列が複数配置される。また、被摺動面72において、凸部73が設けられていない部分、すなわち、凸部73と凸部73との間が凹部74となる。図10Bに示すように、凹部74は、メッシュ状となる。
図10Bに示すように、軸ガイド部70の被摺動面72では、凸部73と凹部74とが、軸部522が上下方向に移動する場合に、軸部522の摺動面61に対して流動的に変化する形状である。
また、被摺動面72では、正面視において軸部522の移動方向、すなわち、上下方向に凸部73と凹部74とが交互に連続する形状であり、かつ、側面視において、内側周面71上に凸部73によって形成される端縁が軸部522の移動方向、すなわち、上下方向に連続する直線状の稜線となる形状である。
かかる構成によれば、軸部522が移動する場合に、摺動面61および被摺動面72の両面は、摺動方向(軸部522の移動方向、すなわち、上下方向)に連続的に接触するものの、互いの接触部分が変化する。このため、任意の位置においては摺動面61および被摺動面72の両面の同じ部分の連続接触が抑制され、たとえば、軸部522の引き上げを多数回行うことによって、摺動面61および被摺動面72の両面が研磨されることによる親和性の増大を抑えることができる。
これにより、摺動面61および被摺動面72の両面の摺動抵抗の増大を抑えることができる。摺動面61および被摺動面72の両面の摺動抵抗の増大を抑えることで、軸部522の引き上げ操作に必要な力が増大するのを抑えることができる。すなわち、軸部522の引き上げ操作にかかる操作性、および軸部522の移動機構、すなわち、軸部522および軸ガイド部70の耐久性を向上させることができる。
また、たとえば、摺動面61および被摺動面72の両面の間に異物が入り込んでも、摺動面61および被摺動面72の接触していない部分(凹部74)に異物を逃がすことができるため、軸部522の移動に対する悪影響を抑えることができる。これにより、軸部522の移動機構、すなわち、軸部522および軸ガイド部70の耐久性を向上させることができる。
また、上記した軸ガイド部70の被摺動面72では、凸部73をひし形状、凹部74をメッシュ状としたが、凸部73の形状と凹部74の形状とが反対であってもよい。すなわち、ひし形状の凹部を設けた場合には、凹部以外の部分が図10Bに示すようなメッシュ状となるため、かかるメッシュ状部分を凸部として有してもよい。かかる構成としても、上記した排水弁装置50の軸ガイド部70と同様の効果が得られる。
また、上記した軸ガイド部70の被摺動面72に、図7〜図9に示すような凸部と凹部とを設けてもよい。かる構成としても、軸部522の上下方向の移動に伴い流動的に変化するような形状となり、上記した排水弁装置50の軸ガイド部70と同様の効果が得られる。
また、上記した排水弁装置50を備える洗浄水タンク10によれば、軸部522が移動する場合に、摺動面61および被摺動面72の摺動抵抗の増大を抑えることができる。これにより、軸部522の引き上げ操作に必要な力が増大するのを抑えることができる。すなわち、排水弁装置50における軸部522の引き上げ操作にかかる操作性、および軸部522の移動機構、すなわち、軸部522および軸ガイド部70の耐久性を向上させることができる。
また、上気した洗浄水タンク10を備える水洗大便器1によれば、排水弁装置50の軸部522が移動する場合に、摺動面61および被摺動面72の摺動抵抗の増大を抑えることができる。これにより、軸部522の引き上げ操作に必要な力が増大するのを抑えることができる。すなわち、排水弁装置50における軸部522の引き上げ操作にかかる操作性、および軸部522の移動機構、すなわち、軸部522および軸ガイド部70の耐久性を向上させることができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。