JP6823037B2 - 数値制御装置、加工経路設定方法及びプログラム - Google Patents
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Description
この問題を解決するため、特許文献1には、指令点間を一定間隔で分割し、その分割点をスムージングする方法が開示されている。この方法を用いることで、工具経路が同じであれば、指令点の有無に関わらず、ほぼ同一の分割点が得られ、その分割点をスムージングすることで、同様のスムージング結果を得ることができる。
そうすると、例えば、図5Bに示すように、少しずつ形状が変化する隣接経路において、スムージングを施した場合、スムージングの適用範囲が変化(Nが変化)している隣接経路間でスムージングの適用範囲が不連続的に変化すること(経路間段差)があり、これが、加工ワークにスジ等として表れる問題があった。
この点、特許文献1に開示された方法では、工具経路が同じであれば、指令点の有無に関わらず、ほぼ同一の分割点が得られ、その分割点をスムージングすることで、同様のスムージング結果を得ることができるが、少しずつ形状が変化する隣接経路において、スムージングを施した場合には、依然として、隣接経路間でスムージングの適用範囲が不連続的に変化することで、加工ワークにスジ等として表れる可能性があった。
[構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る数値制御装置1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、数値制御装置1は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM12と、RAM13と、入力部14と、表示部15と、記憶部16と、通信部17と、を備えている。なお、加工プログラムに定義されている指令経路、スムージングされた指令経路、これを補間処理して得られる加工時の工具の移動経路(工具経路)等、加工に関連して設定される経路を総称して、適宜「加工経路」と称する。
工具経路生成処理のためのプログラムを実行することにより、CPU11には、機能的構成として、加工プログラム先読み部11aと、指令経路数式化部11bと、平滑化処理部11cと、補間制御部11dと、が形成される。
指令経路数式化部11bは、加工プログラムに定義されている、離散的な指令点より与えられた指令経路を、連続的なパラメトリックな線分又は曲線として数式化する。例えば、指令経路数式化部11bは、指令経路を直線、円弧、螺旋、ベジエ、スプラインあるいはNURBS(Non−Uniform Rational B−Spline)等に対応する数式(多項式)として表す。こうすることで、工具経路が同一であっても指令点に有無により近似曲線の経路が大きく変化するという問題が解消されるとともに、後述するように、経路上の各点に対してスムージング適用範囲を連続的に設定することが可能となる。
図2に示すように、指令経路数式化部11bは、加工プログラムに定義されている指令経路の指令点を補間(ここでは直線補間とする)し、指令点を線分で結ぶ経路をパラメトリックな直線で表す。なお、指令経路数式化部11bは、指令点を円弧やスプライン等の曲線で補間する場合には、指令点を結ぶ経路をパラメトリックな曲線で表す。
これにより、指令点のパターン(配置)が異なる場合であっても、形状が同一の指令経路であれば、指令経路数式化部11bで数式化された経路は等価なものとなる。
図3において、連続的なパラメトリックな線分又は曲線として表された指令経路をスムージングする場合、スムージングの適用範囲は、離散的な指令点毎に設定するのではなく、連続的に任意の点で設定することができる。そのため、発明が解決しようとする課題で説明したように隣接する指令経路間においてスムージングの適用範囲を変化させる必要がある場合であっても、スムージングの適用範囲を任意の範囲で変更することができるため、スムージングの結果が大きく異なることが抑制することができる。すなわち、例えば、指令経路からのスムージングによる乖離量がトレランス以内となる条件の下、最大のスムージングの適用範囲となるように、各指令経路のスムージングを行う場合等に、スムージングの適用範囲を隣接する指令点まで大きく変化させることなく、より小さい変化に留めることができるため、スムージングの結果に大きな変化が生じることを防ぐことができる。
そのため、徐々に形状が変化する指令経路のスムージング等において、本来の指令経路からのスムージングによる乖離量がトレランス以内となり、かつ、最大のスムージングの適用範囲となるようにスムージングを行った場合、スムージングの適用範囲も連続的に変化することとなる。
したがって、隣接経路間でスムージング範囲が不連続に変化し、経路間段差が生じることを抑制できる。
RAM13は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリによって構成され、CPU11が各種処理を実行する際に生成されるデータを記憶する。
入力部14は、キーボードやマウス、又は、タッチセンサ(タッチパネル)等の入力装置によって構成され、ユーザによる数値制御装置1への各種情報の入力を受け付ける。
記憶部16は、ハードディスク又はフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶装置によって構成され、工具経路生成処理のためのプログラム等を記憶する。また、記憶部16は、生成された工具経路を表すデータ等、数値制御装置1の各種処理結果を記憶する。
次に、数値制御装置1における具体的な処理例について説明する。
初めに、数値制御装置1における具体的処理例1について説明する。
ここでは、指令経路を曲線で表現し、その指令経路に対してベジエ曲線を用いたスムージングを行う例について説明する。
例1では、指令経路数式化部11bは、指令経路を以下のような多項式f(u)で表現することを例示する。
なお、式(1)において、uはパラメータ(経路上の各点)を表し、A,B,C,Dは係数を表している。
さらに、平滑化処理部11cは、式(1)で表された指令経路をベジエ曲線でスムージングする。
スムージングを行った経路をfq、スムージングを行う前の指令経路をfp、スムージングの適用範囲(フィルタ長)を±L(すなわち、経路上の各点の前後±L)とすると、fqは以下のように表すことができる。
また、式(2)において、BezierCurveCenter(α,β,γ,δ)は点α、β、γ、δを制御点とするベジエ曲線の中点を表し、以下のように定義される。
D(u,L)=|fp(u)−fq(u,L)| (4)
と表される。
ここで、本具体例では、フィルタ長Lとして、スムージングによる乖離量が予め設定されたトレランス以下となる範囲の最大のフィルタ長Ltを用いる。
そうすると、トレランス(Tolerance)は、
Tolerance=|fp(u)−fq(u,Lt)| (5)
となる。
そのため、予め設定された条件(乖離量が設定値以下となる等)でトレランスを設定する場合には、フィルタ長Lをその条件が充足される範囲で設定すればよい。
なお、乖離量Dが予め設定されたトレランス程度となるフィルタ長Lが解析的に求められない場合、ニュートン法等の収束計算を用いて解を求めることとしてもよい。
このようにして各点uに対してフィルタ長Lを求めることができる。このように、フィルタ長Lは各点uに対して一意的に決まる、uの関数として表すことができる。
このように求められたフィルタ長Lをそのまま用いることができるが、当業者にとって公知の手法により、フィルタ長Lの急激な変化がなくなるように処理を行った後のフィルタ長Lを用いることとしてもよい。
フィルタ長Lの急激な変化がなくなるように処理する手法としては、例えば、特開2018−073097号公報に記載された技術等を用いることができる。
次に、数値制御装置1における具体的処理例2について説明する。
ここでは、指令経路を線分で表現し、その指令経路に対して移動平均フィルタを用いたスムージングを行う例について説明する。
この場合、指令経路数式化部11bは、点Pnと点Pn+1(nは整数)を結ぶ指令経路(線分)を以下のような多項式f(s)で表現する。
式(6)において、sは曲線を表現するためのパラメータであり、本具体例においては、sは経路上の長さに相当する。
さらに、点Pn+1と点Pn+2を結ぶ指令経路(線分)は、同様に以下のように表すことができる。
ここで、s’=s−Ln+1と置くと、点Pn、点Pn+1、点Pn+2を結ぶ線分は、以下のように1つのパラメータsを用いて表すことができる。
さらに、平滑化処理部11cは、経路上の長さsを用いて表された指令経路を移動平均フィルタでスムージングする。
スムージングを行った経路をfq、スムージングを行う前の指令経路をfp、フィルタ関数をmとすると、フィルタ処理が適用された関数fqは以下のように表すことができる。
m(t)=1 (−L≦t≦L)
m(t)=0 (t<−L,L<t)
であるため、fqはさらに以下のように表すことができる。
本具体例においては、フィルタ長Lとして、乖離量Dが少なく最大のフィルタ長(スムージングによる乖離量が予め設定されたトレランス以下となる範囲の最大のフィルタ長)を使用する。
このとき、乖離量Dはフィルタ長Lの関数となり、以下のように表すことができる。
次に、数値制御装置1における具体的処理例3について説明する。
ここでは、指令経路を曲線で表現し、その指令経路に対して移動平均フィルタを用いたスムージングを行う例について説明する。
このとき、指令経路数式化部11bにより、指令経路が、
f(u)=Au3+Bu2+Cu+D (1)
と表されているものとする。
スムージングを行った経路をfq、スムージングを行う前の指令経路をfp、フィルタ関数をmとすると、フィルタ処理が適用された関数fqは以下のように表すことができる。
次に、図4のフローチャートを参照して、本実施形態の動作について説明する。
[工具経路生成処理]
図4は、数値制御装置1が実行する工具経路生成処理の流れを説明するフローチャートである。
工具経路生成処理は、入力部14を介して、工具経路生成処理を起動させる指示が入力されることにより開始される。
ステップS2において、指令経路数式化部11bは、加工プログラムに定義されている指令経路を、連続的なパラメトリックな線分又は曲線として数式化する。
ステップS3において、平滑化処理部11cは、指令経路数式化部11bによって数式で表された指令経路に対し、スムージング(平滑化処理)を実行する。
ステップS5において、補間制御部11dは、生成した工具経路のデータを記憶部19に記憶する。ここで記憶された工具経路のデータは、数値制御装置1が工作機械による加工を実行する際に読み出され、工具経路に基づいて、工作機械の各サーボ軸が制御される。
ステップS5の後、工具経路生成処理は終了となる。
そのため、指令経路において、スムージングの適用範囲を連続的に変化させることが可能となる。
なお、図5Bにおいては、比較例として、スムージングの適用範囲を、離散的な指令点毎に設定した場合の例を併せて示している。
図5Aに示す例では、徐々に形状が変化する指令経路のスムージングにおいて、所定条件(例えば、本来の指令経路からのスムージングによる乖離量がトレランス以内となり、かつ、最大のスムージングの適用範囲となる等)でスムージングを行った状態を示している。
図5Aに示すように、徐々に形状が変化する指令経路のスムージングにおいて、所定条件でスムージングを行う場合、本発明においては、隣接する指令経路間でスムージングの適用範囲を離散的に切り替えるのではなく、連続的に変化させることができる。
そのため、隣接する指令経路間でスムージングの適用範囲を離散的に切り替えた場合に、スムージングの適用範囲が連続的に変化することから、経路間段差が生じることを抑制できる。
一方、図5Bに示す従来技術を適用した例においては、スムージングの適用範囲が、前後3つの指令点の指令経路と、前後4つの指令点の指令経路とで、離散的に切り替えられた状態となっており、隣接経路間でスムージング範囲が不連続に変化し、経路間段差が生じている。
すなわち、本実施形態に係る数値制御装置1によれば、例えば、少しずつ形状が変化する隣接経路において、スムージングを施した場合に、加工ワークにスジ等が表れないように加工経路をより適切にスムージングすることが可能となる。
例えば、上述の実施形態において、具体的処理例として、指令経路を多項式あるいは線分で表す場合について説明したが、これに限られない。すなわち、指令経路を連続的なパラメトリックな線分又は曲線として表すことができれば、指令経路を各種数式で表すことが可能である。
同様に、上述の実施形態において、具体的処理例として、指令経路をベジエ曲線あるいは移動平均フィルタによってスムージングする場合について説明したが、これに限られない。すなわち、連続的なパラメトリックな線分又は曲線をスムージングできる手法であれば、各種手法を用いてスムージングを行うことができる。
また、これらのプログラムは、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。
11 CPU
11a 加工プログラム先読み部
11b 指令経路数式化部
11c 平滑化処理部
11d 補間制御部
12 ROM
13 RAM
14 入力部
15 表示部
16 記憶部
17 通信部
Claims (8)
- 工作機械による加工を制御する数値制御装置であって、
加工のためのプログラムを取得するプログラム取得部と、
前記加工のためのプログラムに基づいて、加工の経路をパラメトリックな線分又は曲線として表す数式化部と、
前記パラメトリックな線分又は曲線における平滑化の対象点について、平滑化を施す範囲を当該対象点から任意の範囲で設定する平滑化適用範囲設定部と、
設定された前記平滑化を施す範囲に基づいて、前記対象点について平滑化を施す平滑化処理部と、
を備え、
前記平滑化適用範囲設定部は、前記対象点における平滑化の前後での乖離量が設定された閾値以下となる前記平滑化を施す範囲を設定することを特徴とする数値制御装置。 - 前記数式化部は、前記加工の経路を多項式で数式化することにより、パラメトリックな線分又は曲線として表すことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
- 前記数式化部は、前記加工の経路を直線、円弧、螺旋、ベジエ、スプライン及びNURBSの少なくともいずれかに基づく数式で表すことを特徴とする請求項1又は2に記載の数値制御装置。
- 前記平滑化処理部は、スプライン曲線化、NURBS曲線化、移動平均フィルタ処理、加重平均フィルタ処理及びガウシアンフィルタ処理の少なくともいずれかによって、前記対象点について平滑化を施すことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の数値制御装置。
- 前記平滑化適用範囲設定部は、前記対象点における平滑化の前後での乖離量が設定された閾値以下となる条件の下、最大となる前記平滑化を施す範囲を設定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の数値制御装置。
- 前記平滑化適用範囲設定部は、前記対象点における平滑化の前後での乖離量が設定された閾値以下となる条件の下、最大となる前記平滑化を施す範囲を収束処理により求めた解に基づいて、前記平滑化を施す範囲を決定することを特徴とする請求項5に記載の数値制御装置。
- 工作機械による加工を制御する数値制御装置が実行する加工経路設定方法であって、
加工のためのプログラムを取得するプログラム取得ステップと、
前記加工のためのプログラムに基づいて、加工の経路をパラメトリックな線分又は曲線として表す数式化ステップと、
前記パラメトリックな線分又は曲線における平滑化の対象点について、平滑化を施す範囲を当該対象点から任意の範囲で設定する平滑化適用範囲設定ステップと、
設定された前記平滑化を施す範囲に基づいて、前記対象点について平滑化を施す平滑化処理ステップと、
を含み、
前記平滑化適用範囲設定ステップでは、前記対象点における平滑化の前後での乖離量が設定された閾値以下となる前記平滑化を施す範囲を設定することを特徴とする加工経路設定方法。 - コンピュータに、
加工のためのプログラムを取得するプログラム取得機能と、
前記加工のためのプログラムに基づいて、加工の経路をパラメトリックな線分又は曲線として表す数式化機能と、
前記パラメトリックな線分又は曲線における平滑化の対象点について、平滑化を施す範囲を当該対象点から任意の範囲で設定する平滑化適用範囲設定機能と、
設定された前記平滑化を施す範囲に基づいて、前記対象点について平滑化を施す平滑化処理機能と、
を実現させ、
前記平滑化適用範囲設定機能は、前記対象点における平滑化の前後での乖離量が設定された閾値以下となる前記平滑化を施す範囲を設定することを特徴とするプログラム。
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