本実施形態に係るX線CT装置及び医用画像処理装置について、添付図面を参照して説明する。
なお、X線CT装置によるデータ収集方式には、X線管とX線検出器とが1体として被検体の周囲を回転する回転/回転(R−R:Rotate/Rotate)方式や、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(S−R:Stationary/Rotate)方式などの様々な方式がある。いずれの方式でも本発明を適用可能である。以下、本実施形態に係るX線CT装置では、現在、主流を占めている第3世代の回転/回転方式を採用する場合を例にとって説明する。
また、X線CT装置を用いて採用されるデュアルエネルギースキャンは、大きく分けると次の4個の方法のいずれかで実施される。第1の方法としては、1個のX線管を用いてX線管に印加する管電圧を切り替えることで、第1のエネルギーのX線と第1のエネルギーとは異なる第2のエネルギーのX線とでそれぞれ個別に被検体を撮影するSlow−kV switching方式がある。すなわち、Slow−kV switching方式では、第1の管電圧でビュー(回転角度)毎の撮影を行った後に、第1の管電圧と異なる第2の管電圧でビュー毎の撮影を行う。Slow−kV switching方式は、2回転方式とも呼ばれる。
第2の方法としては、ビューの変化毎に高速にX線管の管電圧を切り替えて撮影を行うFast−kV switching方式がある。Fast−kV switching方式は、単に、高速スイッチング方式とも呼ばれる。この場合、管電圧の切り替えに同期してデータ収集回路がデータ収集を行う。Fast−kV switching方式では、Slow−kV switching方式のデュアルエネルギースキャンとは異なり、異なる管電圧によるデータがほぼ同時に収集される。
第3の方法としては、2個のX線管を搭載した上でそれらを用いて異なる管電圧でビュー毎の撮影をそれぞれ行うDual Source方式がある。Dual Source方式は、2管球方式とも呼ばれる。
第4の方法としては、多層構造のX線検出器を用いる多層方式がある。例えば、浅い層及び深い層の2層構造を有するX線検出器が用いられる場合、浅い層で低エネルギーのX線が検出され、浅い層を通過した深い層で高エネルギーのX線が検出される。
本発明は、第1乃至第3実施形態において、上記の第1の方法、すなわち、Slow−kV switching方式のデュアルエネルギースキャンが実施される場合に適用可能である。なお、本発明は、第3実施形態においては、上記の第3の方法、すなわち、2管球方式のデュアルエネルギースキャンが実施される場合にも適用可能である。
さらに、本発明は、第1乃至第3実施形態において、デュアルエネルギー(二重エネルギー)以上のマルチエネルギースキャンでも適用可能である。
(第1の実施形態に係るX線CT装置)
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置を示す構成例を示す図である。
図1は、第1の実施形態に係る、Slow−kV switching方式のデュアルエネルギースキャンを実行するX線CT装置10を示す。X線CT装置10は、スキャナ装置11及びコンソール装置12を含む。スキャナ装置11は、通常は検査室に設置され、被検体、例えば患者Oに関するX線の透過データを生成する。一方、コンソール装置12は、通常は検査室に隣接する制御室に設置され、透過データを基に投影データを生成して再構成画像の生成及び表示を行う。
スキャナ装置11は、架台装置21、寝台装置22、スキャンコントローラ23、操作パネル24を備える。
架台装置21は、ガントリとも呼ばれ、土台部(図示しない)に固定された固定架台31と、回転架台32とを備える。
固定架台31は、回転コントローラ41を備える。回転コントローラ41は、スキャンコントローラ23からの指示に従って、回転架台32を固定架台31に対して回転させる。
固定架台31及び回転架台32は、スリップリング51及びデータ伝送装置52を備える。
スリップリング51は、回転架台32の同心円状に配置された環状の電路(金属製のリング)に、固定架台31側のカーボンブラシやワイヤーブラシなどのブラシを側面から押し当て、スリップさせながら通電させる回転接続用のコネクタである。
データ伝送装置52は、回転架台32側の送信回路と、固定架台31側の受信回路とを備える。送信回路は、後述するデータ収集回路66によって生成された生データ(raw data)を非接触で受信回路に送信する。受信回路は、送信回路から送信された生データを、後述するスキャンコントローラ23に供給する。
回転架台32は、高電圧発生装置61、X線管62、コリメータコントローラ63、X線光学系64、X線検出器65、及びデータ収集回路66を備える。回転架台32は、回転フレームとも呼ばれる。回転架台32は、部材61〜66を一体として保持する。すなわち、回転架台32は、X線管62とX線検出器65とを対向させた状態で、一体として患者Oの周りに回転できる。なお、回転架台32の回転中心軸と平行な方向をz方向、そのz方向に直交する平面をx方向、y方向で定義する。
高電圧発生装置61は、スリップリング51を介したスキャンコントローラ23による制御信号によって、デュアルエネルギースキャンを実行するために必要な電力をX線管62に供給する。
X線管62は、高電圧発生装置61から供給された管電圧に応じて金属製のターゲットに電子線を衝突させることでX線を発生させ、X線をX線検出器65に向かって照射する。X線管62から照射されるX線によって、ファンビームX線やコーンビームX線が形成される。X線管62には、スキャンコントローラ23による制御によって、X線の照射に必要な電力が供給される。
図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置10に設ける高電圧発生装置61及びX線管62の構成例を示す図である。
図2に示すように、高電圧発生装置61は、高管電圧設定器61a、低管電圧設定器61b、タイミング制御器61c、スイッチ61d、高電圧電源61e、しきい値設定器61f、コンパレータ61g、及びコンデンサCを備える。また、X線管62は、陽極62a及びフィラメント(陰極)62bを備える。例えば、デュアルエネルギースキャンにおけるHigh−kV(高管電圧)を140kVと、Low−kV(低管電圧)を80kVと設定できる。
高管電圧設定器61aは、Low−kVを設定する一方、低管電圧設定器61bは、High−kVを設定する。管電圧設定器61a又は61bの出力は、いずれも選択可能である。管電圧設定器61a又は61bの出力は、タイミング制御器61cによって制御されるスイッチ61dを介して高電圧電源61eに接続される。スイッチ61dは、タイミング制御器61cから出力される信号aによって制御される。信号aが「H」を示す場合、高管電圧設定器61aが選択される一方、「L」を示す場合、低管電圧設定器61bが選択される。
高電圧電源61eのプラス側出力は、X線管62の陽極62aに電気的に接続されると共に、接地される。また、高電圧電源61eのマイナス側出力は、X線管62のフィラメント62bに電気的に接続される。高電圧電源61eの出力は、信号aによる切り替えのタイミングでHigh−kV又はLow−kVに切り換わる。高電圧電源61eには管電圧検出端子Tが備えられ、管電圧検出端子Tは、コンパレータ61gのプラス側入力に接続される。しきい値設定器61fは、コンパレータ61gのマイナス側入力に接続される。
コンパレータ61gは、高電圧電源61eの管電圧検出端子Tから入力する信号bと、しきい値設定器61fから入力する信号cとを入力し、信号bが信号cより大きい場合に「H」を示す一方、信号bが信号c以下の場合に「L」を示すような信号dをデータ収集回路66に出力する。データ収集回路66は、信号dが「H」を示す場合、High−kVによる透過データと判断する一方、「L」を示す場合、Low−kVによる透過データと判断する。
スキャンコントローラ23は、処理回路81(図1に図示)からの管電圧制御信号に従い、高電圧発生装置61のタイミング制御器61cを介してスイッチ61dの切り換えを制御してデュアルエネルギースキャンを実行させ、高管電圧設定器61aによるHigh−kVを高電圧電源61eから出力させるか、又は、低管電圧設定器61bによるLow−kVを高電圧電源61eから出力させるか、を選択する。スキャンコントローラ23からの制御信号により、スイッチ61dは、選択された管電圧設定信号を高電圧電源61eに与える。
また、スキャンコントローラ23からの制御信号はデータ収集回路66にも送られる。データ収集回路66は、デュアルエネルギースキャンによって収集したデータが、High−kVのX線によるものか、又は、Low−kVのX線によるものか、を認識する。
図1の説明に戻って、コリメータコントローラ63は、スキャンコントローラ23による制御によって、X線光学系64におけるX線のスライス方向の照射範囲を調整する。
X線光学系64は、X線ビームの線量、照射範囲、形状、及び線質などを制御する各種の器具を含む。具体的には、X線光学系64は、ウェッジフィルタ及びコリメータなどを含む。ウェッジフィルタは、X線管62で発生されたX線のX線量を調整する。コリメータは、コリメータコントローラ63による制御によって、線量が調整されたX線に対してX線の照射範囲を絞り込むためのスリットである。
X線検出器65は、チャンネル方向に複数、及び列(スライス)方向に単数の検出素子を有する1次元アレイ型の検出器である。又は、X線検出器65は、マトリクス状、すなわち、チャンネル方向に複数、及びスライス方向に複数の検出素子を有する2次元アレイ型の検出器である。X線検出器65は、X線管62から照射されたX線を検出する。
2次元アレイ型の検出器は、マルチスライス型検出器とも呼ばれる。X線検出器65がマルチスライス型検出器である場合、回転架台32の1回転(又は半回転+α)で列方向に幅を有する3次元領域のスキャンを実行することができる。このスキャンは、ボリュームスキャンと呼ばれる。
データ収集回路66は、複数のDAS(Data Acquisition System)を有する。各DASは、デュアルエネルギースキャンにおける管電圧の切り替えに同期してデータ収集を行う。各DASは、X線検出器65の各検出素子が検出する透過データの信号を増幅してデジタル信号である生データに変換する。各DASは、生データを、データ伝送装置52を介してスキャンコントローラ23に送信する。
スキャナ装置11の寝台装置22は、天板71及び天板コントローラ72を備える。天板71は、患者Oを載置可能である。
天板コントローラ72は、スキャンコントローラ23による制御によって、天板71をy方向に沿って昇降動させると共に、z方向に沿って進入/退避動させる機構を有する。天板コントローラ72は、回転架台32の回転中心を含む開口部に向けて天板71に載置された患者Oを挿入させ、開口部から天板71に載置された患者Oを退避させる。
スキャンコントローラ23は、図示しないCPU(Central Processing Unit)及びメモリなどを備える。スキャンコントローラ23は、操作パネル24やコンソール装置12からの指示によって、架台装置21の回転コントローラ41、高電圧発生装置61、及びコリメータコントローラ63や、寝台装置22の天板コントローラ72などの制御を行ってデュアルエネルギースキャンなどを実行させる。
スキャンコントローラ23は、Slow−kV switching方式のデュアルエネルギースキャンにヘリカルスキャンを組み合わせて実行することもできる。ヘリカルスキャンは、天板71(又は、架台装置21)のz方向へのスライド移動中に回転架台32を回転させながらX線の照射及び検出を行うスキャンである。以下、Slow−kV switching方式のデュアルエネルギースキャンにヘリカルスキャンを組み合わせたスキャンを、「SDEヘリカルスキャン」と呼ぶ。SDEヘリカルスキャンは、第1及び第3の実施形態で採用され得る。
また、スキャンコントローラ23は、Slow−kV switching方式のデュアルエネルギースキャンに非ヘリカルスキャンであるコンベンショナルスキャンを組み合わせて実行することもできる。コンベンショナルスキャンは、ヘリカルスキャンとは異なり、天板71(又は、架台装置21)のz方向への停止中に回転架台32を回転させながらX線の照射及び検出を行うものである。以下、Slow−kV switching方式のデュアルエネルギースキャンにコンベンショナルスキャンを組み合わせたスキャンを、「SDEコンベンショナルスキャン」と呼ぶ。SDEコンベンショナルスキャンは、第2の実施形態で採用され得る。
さらに、スキャンコントローラ23は、2管球方式のデュアルエネルギースキャンにヘリカルスキャンを組み合わせて実行することもできる。以下、2管球方式のデュアルエネルギースキャンにヘリカルスキャンを組み合わせたスキャンを、「2管球DEヘリカルスキャン」と呼ぶ。2管球DEヘリカルスキャンは第3の実施形態で採用され得る。
操作パネル24は、架台装置21の開口部分の両脇や前後などに設けられ、操作者が患者Oの様子を確認しながら行う操作を受け付ける。具体的には、操作者が検出範囲を視認するための光を照射する投光器(図示しない)の消灯及び点灯の指示や、天板71の移動、停止、及び自動送りの指示などを受け付ける。
X線CT装置10のコンソール装置12は、コンピュータをベースとして構成されており、LAN(Local Area Network)などのネットワークを介して外部装置と相互通信可能である。コンソール装置12は、処理回路81、記憶回路82、入力回路83、及びディスプレイ84などの基本的なハードウェアから構成される。処理回路81は、共通信号伝送路としてのバスを介して、コンソール装置12を構成する各ハードウェア構成要素に相互接続されている。なお、コンソール装置12は、記憶媒体ドライブを具備する場合もある。
処理回路81は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processor Unit)の他、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、及び、プログラマブル論理デバイスなどの処理回路を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)などの回路が挙げられる。処理回路81は、記憶回路82に記憶された、又は、処理回路81内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで後述する機能を実現する。
また、処理回路81は、単一の回路によって構成されてもよいし、複数の独立した回路を組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、プログラムを記憶する記憶回路82は、複数の回路の各回路に個別に設けられてもよいし、1個の記憶回路82が複数の回路の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
記憶回路82は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスクなどによって構成される。記憶回路82は、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)などの可搬型メディアによって構成されてもよい。記憶回路82は、処理回路81において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータや、画像データを記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ84への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力回路83によって行なうことができるGUI(Graphical User Interface)を含めることもできる。
入力回路83は、操作者によって操作が可能なポインティングデバイスなどの入力デバイスからの信号を入力する回路である。ここでは、入力デバイス自体も入力回路83に含まれるものとする。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路83はその操作に応じた入力信号を生成して処理回路81に出力する。なお、コンソール装置12は、入力デバイスがディスプレイ84と一体に構成されたタッチパネルを備えてもよい。
ディスプレイ84は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、及び有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示デバイスである。ディスプレイ84は、処理回路81の制御に従って画像データを表示する。
コンソール装置12は、スキャナ装置11から入力された生データに対して対数変換処理や、感度補正などの補正処理、すなわち、前処理を行って投影データを生成して記憶回路82に記憶させる。コンソール装置12は、前処理された投影データに対して散乱線の除去処理を行う。コンソール装置12は、X線曝射範囲内の投影データの値に基づいて散乱線の除去を行うものであり、散乱線補正を行う対象の投影データ又はその隣接投影データの値の大きさから推定された散乱線を、対象となる投影データから減じて散乱線補正を行う。以下、散乱線補正されていないデータや、散乱線補正されたデータを投影データという。
コンソール装置12は、投影データに基づいて画像データを生成して記憶回路82に記憶させたり、ディスプレイ84に表示させたりする。
続いて、第1の実施形態に係るX線CT装置10の機能について説明する。
図3は、第1の実施形態に係るX線CT装置10の機能を示すブロック図である。
コンソール装置12の処理回路81がプログラムを実行することによって、X線CT装置10は、前段データ生成機能811、画像再構成機能812、後段データ生成機能813、及び変換機能814として機能する。なお、機能811〜814の全部又は一部は、コンソール装置12にハードウェアとして備えられるものであってもよい。また、機能811〜814の全部又は一部は、コンソール装置12のみならず、スキャンコントローラ23に備えられるものであってもよい。
機能811〜814は、SDEヘリカルスキャンによって2種類の管電圧でそれぞれ得られた2種類の第1の投影データ及び第2の投影データに基づいて、画像データをベースとしたデュアルエナジー再構成ではなく、投影データ(又は生データ)をベースとしたデュアルエナジー再構成を実行する。ここで、画像データをベースとしたデュアルエナジー再構成とは、2種類の第1の投影データ及び第2の投影データに基づいてそれぞれ再構成処理を行なって2種類の第1の画像データ及び第2の画像データをそれぞれ生成し、第1の画像データ及び第2の画像データに対して分解(Decomposition)演算を行い、基準物質画像を生成するものである。一方で、投影データをベースとしたデュアルエナジー再構成とは、非ヘリカルスキャンにおいて、同じスライス中心位置における投影データのペア(Low−kV及びHigh−kV)に対してそれぞれ分解演算を行った後、基準物質画像を生成するものである。
前段データ生成機能811は、スキャンコントローラ23を介して高電圧発生装置61(図1に図示)を制御してX線管62(図1に図示)に印加する管電圧を切り替えることで、SDEヘリカルスキャンの間に第1のエネルギーのX線と第1のエネルギーとは異なる第2のエネルギーのX線とでそれぞれ個別に患者Oの撮影を実行させ、撮影区間が異なる第1の投影データ及び第2の投影データをそれぞれ生成する。異なる撮影区間は、例えば、図5(A)に図示する。そして、前段データ生成機能811は、投影データを記憶回路82に記憶させる。前段データ生成機能811は、X線検出器65(図1に図示)がマルチスライス型検出器である場合、ボリュームスキャンを実行することができる。
画像再構成機能812は、前段データ生成機能811によって生成された第1の投影データに基づいて画像再構成を行うことで第1の画像データを生成する。画像再構成法としては、コンボリューション補正逆投影(CBP:Convolution Back Projection)法やフィルタ補正逆投影(FBP:Filtered Back Projection)法に代表される解析的手法と、代数的手法とが知られており、それらが利用される。代数的手法は一般に反復法を用いて再構成画像を求めることから、逐次近似再構成(IR:Iterative Reconstruction)法と呼ばれる。
後段データ生成機能813は、画像再構成機能812によって生成された第1の画像データに基づいて第3の投影データを生成する。後段データ生成機能813は、第1の画像データについて、フォワードプロジェクション(Forward Projection)や、投影切断面定理を用いた処理を行って、第3の投影データを生成する。フォワードプロジェクションとは、画像上の物理量分布に基づいて、X線検出器に向けた各直線上の物理量を線積分することで投影データを得る処理を意味する。投影切断面定理を用いた処理とは、画像の2次元フーリエ変換における原点を通る一次元データを一次元フーリエ逆変換することで投影データを得る処理を意味する。つまり、投影切断面定理とは、投影データを一次元フーリエ変換した後のデータが、画像の二次元フーリエ変換における原点を通る同じ角度の一次元データに一致する原理を利用するものである。
後段データ生成機能813は、第1の画像の部分、つまり、第2の投影データに対応する撮影区間と同じ区間(図5(D)に図示する特定撮影区間RH)に対応する部分についてフォワードプロジェクション等の処理を行えばよい。
変換機能814は、前段データ生成機能811によって生成された第2の投影データと、後段データ生成機能813によって生成された第3の投影データについて、複数の基準物質に対応する複数の投影データに変換する。変換機能814は、第2の投影データの部分、つまり、第2の投影データに対応する撮影区間と同じ区間(図5(D)に図示する特定撮影区間RH)に対応する部分と、第3の投影データの部分、つまり、第2の投影データに対応する撮影区間と同じ区間(図5(E)に図示する特定撮影区間RL)に対応する部分とを用いればよい。
ここで、画像再構成機能812は、変換機能814により変換後の複数の投影データに基づいて画像再構成を行うことで複数の基準物質に対応する複数の基準物質画像データを生成する。基準物質画像データは、基準物質強調画像データとも呼ばれる。
画像再構成機能812は、変換機能814により変換後の複数の投影データを用いて、撮影の対象範囲に存在する、予め決定された複数の基準物質を分離(弁別)する。基準物質とは、例えば、造影剤、CaCo3、尿酸、及び脂肪などである。画像再構成機能812は、選択された基準物質毎に、基準物質画像データを再構成する。例えば、画像再構成機能812は、第1の基準物質に相当する投影データに基づいて第1の基準物質に係る基準物質画像データを生成し、第2の基準物質に相当する投影データに基づいて第2の基準物質に係る基準物質画像データを生成する。
なお、機能811〜814の詳細については後述する。
図4は、第1の実施形態に係るX線CT装置10の動作を示すフローチャートである。図5(A)〜(F)は、データ構造の概念を示す図である。
ここで、SDEヘリカルスキャンに係る第1の管電圧で得られる第1の投影データ及び第1の画像データを、High−kVの投影データ及びHigh−kVの画像データとし、第2の管電圧で得られる第2の投影データ及び第2の画像データを、Low−kVの投影データ及びLow−kVの画像データとして説明する。
前段データ生成機能811は、天板71に患者Oが載置された状態でスキャンコントローラ23を制御して、撮影区間が異なるHigh−kVの投影データ及びLow−kVの投影データを得るためのSDEヘリカルスキャンを実行させる(ステップST1)。
前段データ生成機能811は、ステップST1によるSDEヘリカルスキャンによって、スキャンコントローラ23からHigh−kVの生データと、Low−kVの生データとを取得する(ステップST2)。前段データ生成機能811は、ステップST2によって取得されたHigh−kVの生データからHigh−kVの投影データを生成し、Low−kVの生データからLow−kVの投影データを生成する(ステップST3)。
ここで、SDEヘリカルスキャンの間、天板71がz方向に移動されながら、(1)High−kVによる複数ビューに亘る撮影、(2)管球変調のためのX線照射OFF、(3)Low−kVによる複数ビューに亘る撮影、(4)管球変調のためのX線照射OFF、High−kVによる複数ビューに亘る撮影、が順に行なわれるとする。その場合、図5(A)に示すように、z方向に、(1)1回目のHigh−kVのX線による撮影が行われる撮影区間RH1、(2)X線照射OFFの区間、(3)Low−kVのX線による撮影が行われる撮影区間RL、(4)X線照射OFFの区間、(5)2回目のHigh−kVのX線による撮影が行われる撮影区間RH2、が順に発生する。例えば、患者Oの腹部をSDEヘリカルスキャンする場合、約30秒の間に上記(1)〜(5)の区間が発生する。
撮影区間RH1,RH2は、High−kVのX線による撮影が行われる、z方向におけるX線管62の位置(以下、「z管球位置」という。)を含む区間を示す。撮影区間RLは、Low−kVのX線による撮影が行われるz管球位置を含む区間を示す。
上記(1)〜(5)の区間では、SDEヘリカルスキャンにおいて、同じスライス中心位置における投影データのペア(Low−kV及びHigh−kV)が存在しない。図5(A)に示す区間Rは、当該ペアが存在しない区間の一例である。
すなわち、撮影区間RH1,RH2では、X線検出器65(図1に図示)のスライス中心位置に係るHigh−kVの投影データ(又は生データ)が存在する。一方で、撮影区間RLでは、スライス中心位置に係るHigh−kVの投影データは存在せずに、X線のコーン角(z方向におけるX線ビームの拡がり角)に起因するスライス中心位置以外の位置に係る投影データが存在する。また、撮影区間RLでは、スライス中心位置に係るLow−kVの投影データが存在する。一方で、撮影区間RH1,RH2では、スライス中心位置に係るLow−kVの投影データは存在せずに、X線のコーン角に起因するスライス中心位置以外の位置に係る投影データが存在する。
SDEヘリカルスキャンの間の回転架台32の回転を閾値以上の高速とする制御と、SDEヘリカルスキャンの間の天板71のz方向への移動速度(患者Oの送り速度)を閾値以下の低速とする制御とのうち少なくとも一方の制御によると、区間Rの中で広範囲に、スライス中心位置以外の位置に係るHigh−kVの投影データが存在する。第1の実施形態では、High−kVの投影データに基づく再構成画像から、撮影区間RLにおけるスライス中心位置に係る仮想的なHigh−kVの投影データを生成する。仮想的なHigh−kVの投影データは、撮影区間RLにおけるスライス中心位置に係るLow−kVの投影データに対応する。
図3及び図4の説明に戻って、画像再構成機能812は、ステップST3によって生成されたHigh−kVの投影データを分離する(ステップST4)。ステップST4の概念を図5(B)に示す。図5(B)に示すように、分離されるHigh−kVの投影データは、撮影区間RH1,RH2におけるスライス中心位置に係る投影データに加え、区間Rにおけるスライス中心位置以外の位置に係る投影データである。
図3及び図4の説明に戻って、画像再構成機能812は、ステップST4によって分離されたHigh−kVの投影データに基づいて画像再構成を行うことでHigh−kVの画像データを生成する(ステップST5)。ステップST5において、High−kVの画像データは、図5(C)に示すようにボリュームデータとして生成される。
図3及び図4の説明に戻って、後段データ生成機能813は、Low−kVの撮影区間RL(図5(A)に図示)に対応する、High−kVの撮影区間を特定撮影区間RH(図5(D)に図示)として設定する(ステップST6)。後段データ生成機能813は、ステップST5によって生成されたHigh−kVの画像データに基づいて、ステップST6によって設定された特定撮影区間RHにフォワードプロジェクション等の処理を行うことで、特定撮影区間RHに係る仮想的なHigh−kVの投影データを生成する(ステップST7)。ステップST7の概念を図5(D)に示す。
図3及び図4の説明に戻って、変換機能814は、ステップST7によって生成された特定撮影区間RHに係る仮想的なHigh−kVの投影データ(図5(D)に図示)と、撮影区間RLに係るLow−kVの投影データ(図5(E)に図示)とに基づいて分解(Decomposition)演算を行い、基準物質のパス長を示す基準物質データを算出する(ステップST8)。ステップST8によって生成される2種類の基準物質画像データ(Material1,2)の概念を図5(F)に示す。
図3及び図4の説明に戻って、画像再構成機能812は、ステップST8によって生成された基準物質データから基準物質画像を生成し、ディスプレイ84に表示する(ステップST9)。
図4に示すステップST4で、画像再構成機能812は、High−kVの投影データを分離することにより、ステップST9で2種類の基準物質画像を生成するが、同様にLow−kVの投影データを分離することにより、2種類の基準物質画像を生成することもできる。2種類の分離が行われる場合、画像再構成機能812は、位相の異なる2組の基準物質画像を生成することになる。画像再構成機能812は、2組の基準物質画像の対応する種類の画像同士を加算平均して2種類の基準物質画像を生成することで、z管球位置に起因するCT値の不連続性を緩和することも可能である。
また、ステップST1〜ST9では、SDEヘリカルスキャンの間において患者Oの腸管のぜん動、患者Oの呼吸の動き、患者Oの体動の影響がないものと仮定して処理が進められる。画像再構成機能812は、Low−kVの投影データに基づいて画像再構成を行うことでLow−kVの画像データを生成し、後段データ生成機能813は、ステップST7で、ステップST5によって生成されたHigh−kVの画像データそのものではなく、Low−kVの画像データを基準として位置合わせ後のHigh−kVの画像データを用いてもよい。その場合、後段データ生成機能813は、位置合わせ後のHigh−kVの画像データを用いてフォワードプロジェクション等の処理を行うことで、患者Oの腸管のぜん動、患者Oの呼吸の動き、患者Oの体動の影響を緩和することも可能である。
第1の実施形態に係るX線CT装置10によると、従来技術では実現できなかった、SDEヘリカルスキャンで得られる投影データをベースとした高精度のデュアルエネルギー再構成を実現することができる。すなわち、第1の実施形態に係るX線CT装置10によると、画像データに対応する投影データが存在しない特定撮影区間について仮想的な投影データを生成することで、SDEヘリカルスキャンで得られる投影データをベースとした高精度のデュアルエネルギー再構成を可能にする。
(第2の実施形態に係るX線CT装置)
第2の実施形態に係るX線CT装置10Aの構成は、図1に示すX線CT装置10の構成と同様であるので、説明を省略する。
続いて、第2の実施形態に係るX線CT装置10Aの機能について説明する。
図6は、第2の実施形態に係るX線CT装置10Aの機能を示すブロック図である。
コンソール装置12の処理回路81がプログラムを実行することによって、X線CT装置10Aは、前段データ生成機能815、画像再構成機能816、位置合わせ機能817、後段データ生成機能818、及び変換機能819として機能する。なお、機能815〜819の全部又は一部は、コンソール装置12にハードウェアとして備えられるものであってもよい。また、機能815〜819の全部又は一部は、コンソール装置12のみならず、スキャンコントローラ23に備えられるものであってもよい。
機能815〜819は、SDEコンベンショナルスキャンによって2種類の管電圧でそれぞれ得られた2種類の第1の投影データ及び第2の投影データに基づいて、画像データをベースとしたデュアルエナジー再構成ではなく、投影データをベースとしたデュアルエナジー再構成を実行する。
前段データ生成機能815は、スキャンコントローラ23を介して高電圧発生装置61(図1に図示)を制御してX線管62(図1に図示)に印加する管電圧を切り替えることで、第1のエネルギーのX線と第1のエネルギーと異なる第2のエネルギーのX線とでそれぞれ個別に患者Oの撮影を実行させ、第1の投影データと第2の投影データとをそれぞれ生成する。具体的には、前段データ生成機能815は、SDEコンベンショナルスキャンで撮影を実行させる。前段データ生成機能815は、X線検出器65(図1に図示)がマルチスライス型検出器である場合、ボリュームスキャンを実行することができる。
画像再構成機能816は、前段データ生成機能815によって生成された第1の投影データ及び第2の投影データに基づいて画像再構成をそれぞれ行うことで、第1の画像データ及び第2の画像データをそれぞれ生成する。
位置合わせ機能817は、画像再構成機能816によって生成された第1の画像データの位置合わせ処理を行うことで、第1の画像データを、画像再構成機能816によって生成された第2の画像データに位置合わせする。
後段データ生成機能818は、位置合わせ機能817によって位置合わせ後の第1の画像についてフォワードプロジェクション等の処理を行い第3の投影データを生成する。
変換機能819は、前段データ生成機能815によって生成された第2の投影データと、後段データ生成機能818によって生成された第3の投影データについて、複数の基準物質に対応する複数の投影データに変換する。
ここで、画像再構成機能816は、変換機能819により変換後の複数の投影データに基づいて画像再構成を行うことで複数の基準物質に対応する複数の基準物質画像を生成する。
なお、機能815〜819の詳細については後述する。
図7は、第2の実施形態に係るX線CT装置10Aの動作を示すフローチャートである。
ここで、SDEコンベンショナルスキャンに係る第1の管電圧で得られる第1の投影データ及び第1の画像データを、High−kVの投影データ及びHigh−kVの画像データとし、第2の管電圧で得られる第2の投影データ及び第2の画像データを、Low−kVの投影データ及びLow−kVの画像データとして説明する。
前段データ生成機能815は、天板71に患者Oが載置された状態でスキャンコントローラ23を制御して、SDEコンベンショナルスキャンを実行させる(ステップST11)。
前段データ生成機能815は、ステップST11によるSDEコンベンショナルスキャンによって、スキャンコントローラ23からHigh−kVの生データと、Low−kVの生データとを取得する(ステップST12)。前段データ生成機能815は、ステップST12によって取得されたHigh−kVの生データからHigh−kVの投影データを生成し、Low−kVの生データからLow−kVの投影データを生成する(ステップST13)。
画像再構成機能816は、ステップST13によって生成されたHigh−kVの投影データ及びLow−kVの投影データに基づいて画像再構成をそれぞれ行うことで、High−kVの画像データ及びLow−kVの画像データをそれぞれ生成する(ステップST14)。
位置合わせ機能817は、ステップST14によって生成されたHigh−kVの画像データの位置合わせ処理を行うことで、High−kVの画像データを、ステップST14によって生成されたLow−kVの画像データに位置合わせする(ステップST15)。位置合わせ機能817は、従来から用いられる線形変換又は非線形変換などの処理を用いてHigh−kVの画像データの位置合せ処理を行なう。
後段データ生成機能818は、ステップST15によって位置合わせ後のHigh−kVの画像データに基づいてフォワードプロジェクション等の処理を行うことで、仮想的なHigh−kVの投影データを生成する(ステップST16)。
変換機能819は、ステップST13によって生成されたLow−kVの投影データと、ステップST16によって生成された仮想的なHigh−kVの投影データとに基づいて分解演算を行い、基準物質のパス長である基準物質データを算出する(ステップST17)。画像再構成機能816は、ステップST17によって生成された基準物質データから基準物質画像を生成し、ディスプレイ84に表示する(ステップST18)。
図7に示すステップST15で位置合わせ機能817がHigh−kVの画像をLow−kVの画像データに位置合わせし、ステップST16で後段データ生成機能818が位置合わせ後のHigh−kVの画像データに基づいてフォワードプロジェクション等の処理を行うことにより、ステップST18で画像再構成機能816は、2種類の基準物質画像を生成する。同様に、位置合わせ機能817がLow−kVの画像データをHigh−kVの画像データに位置合わせし、後段データ生成機能818が位置合わせ後のLow−kVの画像データに基づいてフォワードプロジェクション等の処理を行うことにより、画像再構成機能816は、2種類の基準物質画像を生成することもできる。
第2の実施形態に係るX線CT装置10Aによると、患者Oの腸管のぜん動、患者Oの呼吸の動き、患者Oの体動による影響を除外すべく仮想的な投影データを生成することで、SDEコンベンショナルスキャンで得られる投影データをベースとした高精度のデュアルエネルギー再構成を可能にする。
(第3の実施形態に係るX線CT装置)
第3の実施形態に係るX線CT装置10Bの構成は、図1に示すX線CT装置10の構成と同様であるので、説明を省略する。
続いて、第3の実施形態に係るX線CT装置10Bの機能について説明する。
図8は、第3の実施形態に係るX線CT装置10Bの機能を示すブロック図である。
コンソール装置12の処理回路81がプログラムを実行することによって、X線CT装置10Bは、前段データ生成機能821、画像再構成機能822、後段データ生成機能823、及び変換機能824として機能する。なお、機能821〜824の全部又は一部は、コンソール装置12にハードウェアとして備えられるものであってもよい。また、機能821〜824の全部又は一部は、コンソール装置12のみならず、スキャンコントローラ23に備えられるものであってもよい。
機能821〜824は、第1実施形態に係るX線CT装置10と同様に、投影データをベースとしたデュアルエナジー再構成を実行する。
前段データ生成機能821は、スキャンコントローラ23を介して高電圧発生装置61(図1に図示)を制御してX線管62(図1に図示)に印加する管電圧を切り替えることで、SDEヘリカルスキャンの間に第1のエネルギーのX線と第1のエネルギーとは異なる第2のエネルギーのX線とでそれぞれ個別に患者Oの撮影を実行させ、互いの撮影区間が重なる区間における第1の投影データ及び第2の投影データをそれぞれ生成する。以下、互いに重なる区間を「重なり区間」と呼ぶ。
そして、前段データ生成機能821は、投影データを記憶回路82に記憶させる。前段データ生成機能821は、X線検出器65(図1に図示)がマルチスライス型検出器である場合、ボリュームスキャンを実行することができる。
例えば、前段データ生成機能821は、SDEヘリカルスキャンにおいて重なり区間における第1の投影データ及び第2の投影データをそれぞれ生成するために、天板71(図1に図示)の正方向への移動(往き)で第1の投影データを生成し、天板71の負方向への移動(帰り)で第2の投影データを生成する。SDEヘリカルスキャンによって重なり区間における第1の投影データ及び第2の投影データがそれぞれ生成される場合のヘリカル軌道の概略を図9(A)に図示する。
なお、X線CT装置10Bは、重なり区間における第1の投影データ及び第2の投影データをそれぞれ生成するために、z方向にずれた2組のX線管及びX線検出器を備えた2管球方式であってもよい。その場合、前段データ生成機能821は、SDEヘリカルスキャンに代えて、2管球DEヘリカルスキャンを実行させる。すなわち、前段データ生成機能821は、スキャンコントローラ23を介して第1の高電圧発生装置及び第2の高電圧発生装置を制御して第1のX線管及び第2のX線管にそれぞれ管電圧を印加することで、2管球DEヘリカルスキャンの間に第1のエネルギーのX線と第1のエネルギーとは異なる第2のエネルギーのX線とでそれぞれ個別に患者Oの撮影を実行させ、重なり区間における第1の投影データ及び第2の投影データをそれぞれ生成する。2管球DEヘリカルスキャンによって重なり区間における第1の投影データ及び第2の投影データがそれぞれ生成される場合のヘリカル軌道の概略を図9(B)に図示する。
図9(A),(B)のそれぞれは、X線管のヘリカル軌道の概略を示す側面図である。
図9(A)は、SDEヘリカルスキャンにおいて、天板71(図1に図示)の正方向への移動(行き)で第1の投影データを生成する場合のX線管62(又はX線検出器65)のヘリカル軌道H1と、天板71の負方向への移動(帰り)で第2の投影データを生成する場合のX線管62(又はX線検出器65)のヘリカル軌道H2を示す。図9(B)は、2管球DEヘリカルスキャンにおいて、第1の投影データを生成する場合の第1のX線管のヘリカル軌道H1と、第2の投影データを生成する場合の第2のX線管のヘリカル軌道H2とを示す。
図9(A),(B)に示すように、一般的に、前段データ生成機能821(図8に図示)によって生成される第1の投影データと第2の投影データとでは、ヘリカル軌道が互いに異なる。すなわち、第1の投影データと第2の投影データとでは、ヘリカル軌道の同期がとれていない。そこで、後述する後段データ生成機能823において、第1の投影データのヘリカル軌道H1を、第2の投影データのヘリカル軌道H2に同期させるような演算が行われる。
以下、重なり区間における第1の投影データ及び第2の投影データをそれぞれ生成するために、図9(A)に示すSDEヘリカルスキャンを行う場合について説明する。
図8の説明に戻って、画像再構成機能822は、前段データ生成機能821によって生成された第1の投影データに基づいて画像再構成を行うことで第1の画像データを生成する。画像再構成法としては、コンボリューション補正逆投影法やフィルタ補正逆投影法に代表される解析的手法と、代数的手法とが知られており、それらが利用される。
後段データ生成機能823は、画像再構成機能822によって生成された第1の画像データに基づいて第3の投影データを生成する。後段データ生成機能823は、第1の画像データについて、フォワードプロジェクションや、投影切断面定理を用いた処理を行って、第3の投影データを生成する。後段データ生成機能823は、第1の画像データに基づいて、第2の投影データに対応するヘリカル軌道に同期した第3の投影データが得られるようにフォワードプロジェクション等の処理を行う。
変換機能824は、前段データ生成機能821によって生成された第2の投影データと、後段データ生成機能823によって生成された第3の投影データについて、複数の基準物質に対応する複数の投影データに変換する。
ここで、画像再構成機能822は、変換機能824により変換後の複数の投影データに基づいて画像再構成を行うことで複数の基準物質に対応する複数の基準物質画像データを生成する。基準物質画像データは、基準物質強調画像データとも呼ばれる。
画像再構成機能822は、変換機能824により変換後の複数の投影データを用いて、撮影の対象範囲に存在する、予め決定された複数の基準物質を分離する。画像再構成機能822は、選択された基準物質毎に、基準物質画像データを再構成する。
なお、機能821〜824の詳細については後述する。
図10は、第3の実施形態に係るX線CT装置10Bの動作を示すフローチャートである。
ここで、SDEヘリカルスキャンに係る第1の管電圧で得られる第1の投影データ及び第1の画像データを、High−kVの投影データ及びHigh−kVの画像データとし、第2の管電圧で得られる第2の投影データ及び第2の画像データを、Low−kVの投影データ及びLow−kVの画像データとして説明する。
前段データ生成機能821は、天板71に患者Oが載置された状態でスキャンコントローラ23を制御して、重なり区間における第1の投影データ及び第2の投影データを得るためのSDEヘリカルスキャンを実行させる(ステップST31)。
前段データ生成機能821は、ステップST31によるSDEヘリカルスキャンによって、スキャンコントローラ23からHigh−kVの生データと、Low−kVの生データとを取得する(ステップST32)。前段データ生成機能821は、ステップST32によって取得されたHigh−kVの生データからHigh−kVの投影データを生成し、Low−kVの生データからLow−kVの投影データを生成する(ステップST33)。
画像再構成機能822は、ステップST33によって生成されたHigh−kVの投影データに基づいて画像再構成を行うことでHigh−kVの画像データを生成する(ステップST34)。
後段データ生成機能823は、ステップST34によって生成されたHigh−kVの画像データに基づいて、Low−kVの投影データに対応するヘリカル軌道に同期したHigh−kVの投影データが得られるようにフォワードプロジェクション等の処理を行うことで、Low−kVの投影データに対応するヘリカル軌道に係る仮想的なHigh−kVの投影データを生成する(ステップST35)。
変換機能824は、ステップST35によって生成された軌道同期した仮想的なHigh−kVの投影データと、Low−kVの投影データとに基づいて分解演算を行い、基準物質のパス長を示す基準物質データを算出する(ステップST36)。画像再構成機能822は、ステップST36によって生成された基準物質データから基準物質画像を生成し、ディスプレイ84に表示する(ステップST37)。
ステップST31〜ST37では、SDEヘリカルスキャンの間において患者Oの腸管のぜん動、患者Oの呼吸の動き、患者Oの体動の影響がないものと仮定して処理が進められる。画像再構成機能822は、Low−kVの投影データに基づいて画像再構成を行うことでLow−kVの画像データを生成し、後段データ生成機能823は、ステップST35で、ステップST34によって生成されたHigh−kVの画像データそのものではなく、Low−kVの画像データを基準として位置合わせ後のHigh−kVの画像データを用いてもよい。その場合、後段データ生成機能823は、位置合わせ後のHigh−kVの画像データを用いてフォワードプロジェクション等の処理を行うことで、患者Oの腸管のぜん動、患者Oの呼吸の動き、患者Oの体動の影響を緩和することも可能である。
第3の実施形態に係るX線CT装置10Bによると、従来技術では実現できなかった、SDEヘリカルスキャンで得られる投影データをベースとした高精度のデュアルエネルギー再構成を実現することができる。すなわち、第3の実施形態に係るX線CT装置10Bによると、ヘリカル軌道が同期した仮想的な投影データを生成することで、SDEヘリカルスキャンで得られる投影データをベースとした高精度のデュアルエネルギー再構成を可能にする。
(第1の実施形態に係る医用画像処理装置)
図11は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の構成例を示す図である。
図11は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置90を示す。医用画像処理装置90は、例えば、専用又は汎用コンピュータである。例えば、医用画像処理装置90の機能は、医用画像に画像処理を施すPC(ワークステーション)や、医用画像を保存・管理する医用画像管理装置(サーバ)などに含むものであってもよい。
以下、医用画像処理装置90が専用又は汎用のコンピュータである場合を例にとって説明する。
医用画像処理装置90は、処理回路91、記憶回路92、入力回路93、及びディスプレイ94を備える。
処理回路91は、図1に示す処理回路81と同等の構成である。記憶回路92は、図1に示す記憶回路82と同等の構成である。入力回路93は、図1に示す入力回路83と同等の構成である。ディスプレイ94は、図1に示すディスプレイ84と同等の構成である。
続いて、第1の実施形態に係る医用画像処理装置90の機能について説明する。
図12は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置90の機能を示すブロック図である。
処理回路91がプログラムを実行することによって、医用画像処理装置90は、画像再構成機能812F、後段データ生成機能813、及び変換機能814Fとして機能する。なお、機能812F〜814Fの全部又は一部は、医用画像処理装置90にハードウェアとして備えられるものであってもよい。
なお、図12において、図3に示す部材と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
画像再構成機能812Fは、画像再構成機能812(図3に図示)と同様の処理により、記憶回路92に記憶された第1の投影データに基づいて画像再構成を行うことで第1の画像データを生成する。すなわち、画像再構成機能812Fは、SDEヘリカルスキャンの間に管電圧を切り替えることで得られた第1のエネルギーのX線に基づく第1の投影データと第2のエネルギーのX線に基づく第2の投影データとのうち、第1の投影データに基づいて画像再構成を行うことで第1の画像データを生成する。
変換機能814Fは、変換機能814(図3に図示)と同様の処理により、記憶回路92に記憶された第2の投影データと、後段データ生成機能813によって生成された第3の投影データとについて、複数の基準物質に対応する複数の投影データに変換する。すなわち、変換機能814Fは、SDEヘリカルスキャンにおいて、同じスライス中心位置、すなわち、同じz管球位置おける実測の投影データのペアが存在しないため、第2の投影データと、第3の投影データとについて、複数の基準物質に対応する複数の投影データに変換する。
第1の実施形態に係る医用画像処理装置90の動作は、図4に示すステップST4〜ST9と同等であるので説明を省略する。
第1の実施形態に係る医用画像処理装置90によると、従来技術では実現できなかった、SDEヘリカルスキャンで得られる投影データをベースとした高精度のデュアルエネルギー再構成を実現することができる。すなわち、第1の実施形態に係る医用画像処理装置90によると、画像データに対応する投影データが存在しない特定撮影区間について仮想的な投影データを生成することで、SDEヘリカルスキャンで得られる投影データをベースとした高精度のデュアルエネルギー再構成を可能にする。
(第2の実施形態に係る医用画像処理装置)
第2の実施形態に係る医用画像処理装置90Aの構成は、図11に示す医用画像処理装置90の構成と同様であるので、説明を省略する。
続いて、第2の実施形態に係る医用画像処理装置90Aの機能について説明する。
図13は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置90Aの機能を示すブロック図である。
処理回路91がプログラムを実行することによって、医用画像処理装置90Aは、画像再構成機能816F、位置合わせ機能817、後段データ生成機能818、及び変換機能819Fとして機能する。なお、機能816F〜819Fの全部又は一部は、医用画像処理装置90Aにハードウェアとして備えられるものであってもよい。
なお、図13において、図6に示す部材と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
画像再構成機能816Fは、画像再構成機能816(図6に図示)と同様の処理により、記憶回路92に記憶された第1の投影データ及び第2の投影データに基づいて画像再構成をそれぞれ行うことで、第1の画像データ及び第2の画像データをそれぞれ生成する。すなわち、画像再構成機能816Fは、SDEコンベンショナルスキャンの間に管電圧を切り替えることで得られた第1のエネルギーのX線に基づく第1の投影データと第2のエネルギーのX線に基づく第2の投影データとに基づいて画像再構成をそれぞれ行うことで第1の画像データ及び第2の画像データをそれぞれ生成する。
変換機能819Fは、変換機能819(図6に図示)と同様の処理により、記憶回路92に記憶された第2の投影データと、後段データ生成機能818によって生成された第3の投影データについて、複数の基準物質に対応する複数の投影データに変換する。
第2の実施形態に係る医用画像処理装置90Aの動作は、図7に示すステップST14〜ST18と同等であるので説明を省略する。
第2の実施形態に係る医用画像処理装置90Aによると、患者Oの腸管のぜん動、患者Oの呼吸の動き、患者Oの体動による影響を除外すべく仮想的な投影データを生成することで、SDEコンベンショナルスキャンで得られる投影データをベースとした高精度のデュアルエネルギー再構成を可能にする。
(第3の実施形態に係る医用画像処理装置)
第3の実施形態に係る医用画像処理装置90Bの構成は、図11に示す医用画像処理装置90の構成と同様であるので、説明を省略する。
続いて、第3の実施形態に係る医用画像処理装置90Bの機能について説明する。
図14は、第3の実施形態に係る医用画像処理装置90Bの機能を示すブロック図である。
処理回路91がプログラムを実行することによって、医用画像処理装置90Bは、画像再構成機能822F、後段データ生成機能823、及び変換機能824Fとして機能する。なお、機能822F〜824Fの全部又は一部は、医用画像処理装置90Bにハードウェアとして備えられるものであってもよい。
なお、図14において、図8に示す部材と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
画像再構成機能822Fは、画像再構成機能822(図8に図示)と同様の処理により、記憶回路92に記憶された第1の投影データに基づいて画像再構成を行うことで、第1の画像データを生成する。すなわち、画像再構成機能822Fは、SDEヘリカルスキャンの間に管電圧を切り替えることで得られた第1のエネルギーのX線に基づく第1の投影データに基づいて画像再構成を行うことで第1の画像データを生成する。
変換機能824Fは、変換機能834(図8に図示)と同様の処理により、第2の投影データと、後段データ生成機能823によって生成された第3の投影データについて、複数の基準物質に対応する複数の投影データに変換する。
第3の実施形態に係る医用画像処理装置90Bの動作は、図10に示すステップST31〜ST37と同等であるので説明を省略する。
第3の実施形態に係る医用画像処理装置90Bによると、従来技術では実現できなかった、SDEヘリカルスキャンで得られる投影データをベースとした高精度のデュアルエネルギー再構成を実現することができる。すなわち、第3の実施形態に係る医用画像処理装置90Bによると、ヘリカル軌道が同期した仮想的な投影データを生成することで、SDEヘリカルスキャンで得られる投影データをベースとした高精度のデュアルエネルギー再構成を可能にする。
以上述べた少なくともひとつの実施形態のX線CT装置及び医用画像処理装置によれば、投影データをベースとした高精度のデュアルエネルギー再構成を可能にする。
なお、本実施形態における前段データ生成機能811,815、画像再構成機能812,812F,816,816F、位置合わせ機能817、後段データ生成機能813,818、変換機能814,814F,819,819Fは、特許請求の範囲における前段データ生成手段、画像再構成手段、位置合わせ手段、後段データ生成手段、及び変換手段にそれぞれ対応する。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。