JP6821409B2 - 金属−炭素粒子複合材の製造方法 - Google Patents

金属−炭素粒子複合材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属マトリックスと金属マトリックス中に分散した炭素粒子とを含む金属−炭素粒子複合材の製造方法に関する。
なお本明細書及び特許請求の範囲では、「アルミニウム」の語は、特に明示する場合を除き純アルミニウム及びアルミニウム合金の双方を含む意味で用いられ、また「銅」の語は、特に明示する場合を除き純銅及び銅合金の双方を含む意味で用いられる。
また本明細書及び特許請求の範囲では、鱗片状黒鉛粒子の厚さ方向に対して垂直な面及びその方向を、それぞれ鱗片状黒鉛粒子の平面及び平面方向と定義する。また、塗工箔の積層方向を複合材の厚さ方向と定義するとともに、複合材の厚さ方向に対して垂直な面及びその方向をそれぞれ複合材の平面及び平面方向と定義する。
金属−炭素粒子複合材は、一般に高い熱伝導性又は低い線膨張性を有している。
この複合材の製造方法として、溶融したアルミニウムに炭素粒子としての炭素繊維を添加して撹拌混合する方法(溶湯撹拌法)、空隙を有する炭素成形体内に溶融したアルミニウムを押し込む方法(溶湯鍛造法)、アルミニウム粉末と炭素粉末を混合して加圧加熱焼成する方法(粉末冶金法)、アルミニウム粉末と炭素粉末を混合して押出加工する方法(粉末押出法)などが知られている。
しかしながら、これらの方法では、溶融したアルミニウム又はアルミニウム粉末を用いるので、製造作業が煩雑であるし、製造設備が大型化する。
特許第5150905号公報(特許文献1)は、シート状又はフォイル状の金属支持体上に炭素粒子としての炭素繊維を含有する皮膜が形成されたプリフォームを形成し、これを複数積み重ねて積層体を形成し、積層体を加熱圧接することでプリフォーム同士を一体化させることにより、金属−炭素粒子複合材としての金属基炭素繊維複合材の製造方法を開示している。この方法では、得られる複合材において熱伝導率が高くなるのは炭素繊維が配列した一方向のみである。
特許第4441768号公報(特許文献2)は、鱗状黒鉛粉末と所定の鱗状金属粉末との混合体を用いて焼結前駆体を形成し、焼結前駆体を加圧しながら焼結することにより、金属−炭素粒子複合材としての金属−黒鉛複合材の製造方法を開示している。この方法では、製造時において金属粉末の取り扱いが難しいし、製造コストが高いという問題がある。
特開2006−1232号公報(特許文献3)は、結晶性カーボン材層と金属層とが積層され複合化された複合体をホットプレス焼結することにより、金属−炭素粒子複合材としての高熱伝導・低熱膨張複合材の製造方法を開示している。この方法では、複合体の焼結が難しく、そのため、接合が不十分で接合界面のずれが生じ易いと考えられる。
金属−炭素粒子複合材を開示したその他の文献として、特開2015−25158号公報(特許文献4)及び特開2015−217655号公報(特許文献5)がある。
特許第5150905号公報 特許4441768号公報 特開2006−1232号公報 特開2015−25158号公報 特開2015−217655号公報
而して、SiC等を用いた次世代半導体チップは高温動作が可能である。そのようなチップを冷却する冷却器の材料は、冷却器の冷却性能を高めるために高い熱伝導性を有していることが望ましい。
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、高い熱伝導性を有する金属−炭素粒子複合材の製造方法を提供することにある。
本発明は以下の手段を提供する。
[1] 炭素粒子としての鱗片状黒鉛粒子とバインダとを含有する塗工液を金属箔の塗工予定面に塗工し乾燥することにより、前記金属箔の前記塗工予定面に鱗片状黒鉛粒子層が形成された塗工箔を得る工程と、
複数の前記塗工箔が積層された状態の積層体を形成する工程と、
前記積層体を加熱することにより前記複数の塗工箔を接合一体化する工程と、
を含み、
前記鱗片状黒鉛粒子の平均粒径は前記鱗片状黒鉛粒子の平面方向の円相当直径で100μm以上であり、
前記塗工箔を得る工程では、前記塗工液を前記金属箔の前記塗工予定面に前記鱗片状黒鉛粒子の塗工量が0.1〜22g/mになるように塗工する、金属−炭素粒子複合材の製造方法。
[2] 前記塗工箔を得る工程では、前記塗工液を三本ロール型のオフセット印刷装置により塗工する前項1記載の金属−炭素粒子複合材の製造方法。
[3] 前記塗工箔を得る工程では、前記塗工液をグラビア印刷装置により塗工し、
前記グラビア印刷装置は、周面に多数のカップ状セルが設けられたグラビアロールを備えるとともに、
前記セルの開口周縁に内接する円の直径が前記鱗片状黒鉛粒子の平均粒径の1.2〜2.5倍に設定されている前項1記載の金属−炭素粒子複合材の製造方法。
[4] 前記金属箔はアルミニウム箔又は銅箔である前項1〜3のいずれかに記載の金属−炭素粒子複合材の製造方法。
本発明は以下の効果を奏する。
前項[1]では、金属−炭素粒子複合材の製造方法は、塗工箔を得る工程、積層体を形成する工程及び接合一体化する工程を含むことにより、金属−炭素粒子複合材を安価に製造できる。
さらに、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径が鱗片状黒鉛粒子の平面方向の円相当直径で100μm以上であることにより、鱗片状黒鉛粒子と金属マトリックスとの間の界面熱抵抗による熱伝導率の低下を抑制し得て複合材の熱伝導率を高めることができる。
さらに、塗工液を金属箔の塗工予定面に鱗片状黒鉛粒子の塗工量が0.1〜22g/mになるように塗工することにより、複合材の熱伝導率を確実に高めることができるし、鱗片状黒鉛粒子同士が重ならないように塗工液を金属箔の塗工予定面に塗工することができ、そのため複数の塗工箔を良好に接合一体化することができる。
前項[2]では、塗工液を三本ロール型のオフセット印刷装置により塗工することにより、鱗片状黒鉛粒子同士が重ならないように塗工液を金属箔の塗工予定面に容易に且つ確実に塗工することができる。そのため、複数の塗工箔を確実に良好に接合一体化することができる。
前項[3]では、グラビア印刷装置のグラビアロールのセルにおいて、セルの開口周縁に内接する円の直径が所定の範囲であることにより、鱗片状黒鉛粒子同士が重ならないように塗工液を金属箔の塗工予定面に確実に塗工することができる。そのため、複数の塗工箔を確実に良好に接合一体化することができる。
前項[4]では、金属箔がアルミニウム箔又は銅箔であることにより、複合材の熱伝導率を確実に高めることができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る金属−炭素粒子複合材の製造方法を示す流れ図である。 図2は、塗工箔を得る工程を説明する概略図である。 図3は、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径を説明するための鱗片状黒鉛粒子の平面図である。 図4Aは、三本ロール型のオフセット印刷装置の転写ロールの周面が金属箔の条材の塗工予定面に当接した状態を示す概略図である。 図4Bは、同転写ロールの周面が金属箔の条材の塗工予定面から離れた状態を示す概略図である。 図5Aは、塗工箔の条材の概略断面図である。 図5Bは、図5Aの塗工箔の条材の鱗片状黒鉛粒子の配列状態を示す概略平面図である。 図6Aは、本発明の一参照形態に係る塗工箔の概略断面図である。 図6Bは、図6Aの塗工箔の条材の鱗片状黒鉛粒子の配列状態を示す概略平面図である。 図7は、塗工箔の条材を切断するときの概略図である。 図8は、積層体の概略側面図である。 図9は、複数の塗工箔を加圧加熱焼結装置により接合一体化する場合の概略図である。 図10は、複合材の概略断面図である。 図11は、積層体を、塗工箔の条材をロール状に巻いて形成するときの概略図である。 図12は、同積層体を押出加工装置のコンテナ内に装填した状態の概略図である。 図13は、同押出加工装置により積層体を押出加工する途中の概略図である。 図14は、グラビア印刷装置により塗工液を金属箔の条材の塗工予定面に塗工する場合の概略図である。 図15Aは、同グラビア印刷装置のグラビアロールの周面における格子型セルの配列状態を示す平面図である。 図15Bは、図15Aの格子型セルの形状を示す斜視図である。 図16Aは、同グラビア印刷装置のグラビアロールの周面におけるピラミッド型セルの配列状態を示す平面図である。 図16Bは、図16Aのピラミッド型セルの形状を示す斜視図である。 図17Aは、同グラビア印刷装置のグラビアロールの周面における亀甲型セルの配列状態を示す平面図である。 図17Bは、図75Aの亀甲型セルの形状を示す斜視図である。 図18Aは、同グラビア印刷装置のグラビアロールの周面における円型セルの配列状態を示す平面図である。 図18Bは、図18Aの円型セルの形状を示す斜視図である。 図19は、D/d<1.2の場合の説明図である。 図20Aは、1.2≦D/d≦2.5の場合の説明図である。 図20Bは、図20Aの場合における塗工箔の条材を示す概略断面図である。 図21Aは、2.5<D/d≦の場合の説明図である。 図21Bは、図21Aの場合のおける塗工箔の条材を示す概略断面図である。 本発明の一実施形態に係るパワーモジュール用冷却器の概略正面図である。
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
本発明の第1実施形態に係る金属−炭素粒子複合材60は、図10に示すように、金属マトリックス63と金属マトリックス63中に分散した炭素粒子としての鱗片状黒鉛粒子1とを含むものであり、詳述すると金属−鱗片状黒鉛粒子複合材である。
複合材60は、鱗片状黒鉛粒子1が金属マトリックス63中に複合材60の平面方向に分散した複数の鱗片状黒鉛粒子分散層61と、金属マトリックス63で形成された複数の金属層62と、を積層状に備えている。
鱗片状黒鉛粒子分散層61と金属層62は、複合材60の厚さ方向の全体に亘って交互に積層された状態に配列している。そして、複数の鱗片状黒鉛粒子分散層61と複数の金属層62が接合一体化されている。
なお図面では、鱗片状黒鉛粒子1は、複合材60中における鱗片状黒鉛粒子1の配置を理解し易くするため円盤状に且つ大きく示されている。
各鱗片状黒鉛粒子分散層61において、鱗片状黒鉛粒子1は上述したように金属マトリックス63中に複合材60の平面方向に分散しており複合材60の厚さ方向には殆ど分散していない。各金属層62中には鱗片状黒鉛粒子1は実質的に存在していない。
図1に示すように、複合材60の製造方法は、金属箔10の塗工予定面10aに鱗片状黒鉛粒子層11が形成された塗工箔12を得る工程S1(図2参照)と、複数の塗工箔12が積層された状態の積層体15を形成する工程S2(図8参照)と、積層体15を加熱することにより複数の塗工箔12を接合一体化する工程S3(図9参照)と、を含む。
図2に示すように、塗工箔12を得る工程S2では、塗工箔12は、所定の塗工液5を金属箔10の塗工予定面10aに塗工し乾燥することにより得られる。
金属箔10の金属材料は複合材60の金属マトリックス63を形成するものである。金属箔10の種類は限定されるものではないが、金属箔10はアルミニウム箔又は銅箔であることが望ましい。その理由は、アルミニウム箔と銅箔は高い熱伝導率を有しており、そのため、得られる複合材60の熱伝導率を高めることができるからである。
金属箔10の厚さは限定されるものではなく、5〜500μmであることが望ましく、10〜50μmであることが特に望ましい。
本第1実施形態では、金属箔10として金属箔10の帯状条材10A(即ち帯状の長尺な金属箔10)が用いられている。
本第1実施形態では、塗工液5が塗工される金属箔10の条材10Aの塗工予定面10aは、金属箔10の条材10Aの厚さ方向の両側の表面のうち片側の表面である。
塗工液5は、鱗片状黒鉛粒子1とバインダ2とバインダ2用溶剤3とを混合状態に含有するものであり、例えば次のようにして得られる。
すなわち、図2に示すように、塗工液5は、鱗片状黒鉛粒子1とバインダ2と溶剤3とを混合容器41内に入れこれらを撹拌混合器42により撹拌混合することにより、得られる。なお必要に応じて、塗工液5には分散剤(図示せず)、表面調整剤(図示せず)などが添加される。
鱗片状黒鉛粒子1としては例えば鱗片状黒鉛粉末を使用できる。
図3に示すように、鱗片状黒鉛粒子1の平均粒径を「d」とすると、dは100μm以上でなければならない。その理由は、dが100μm以上であることにより複合材60の内部において鱗片状黒鉛粒子1と金属マトリックス63との間の界面熱抵抗を確実に小さくすることができ、これにより複合材60の熱伝導率を確実に高めることができるからである。dの上限は限定されるものではないが1000μmであることが望ましい。その理由は、塗工液5の塗工時における鱗片状黒鉛粒子1の割れを確実に抑制できるからである。
鱗片状黒鉛粒子1の平均アスペクト比は限定されるものではない。しかるに、一般に鱗片状黒鉛粒子1のアスペクト比が大きい方が鱗片状黒鉛粒子1の熱伝導率は高いことから、鱗片状黒鉛粒子1の平均アスペクト比はなるべく大きい方が望ましく、30以上であることが特に望ましい。平均アスペクト比の望ましい上限は限定されるものではないが100であることが望ましい。その理由は、塗工液の塗工時における鱗片状黒鉛粒子1の割れを確実に抑制できるからである。
ここで、本実施形態において、鱗片状黒鉛粒子1の粒径とは、電子顕微鏡等の観察手段で観察される鱗片状黒鉛粒子1の平面方向の円相当直径を意味する。鱗片状黒鉛粒子1の平均粒径dは、多数の鱗片状黒鉛粒子1の中から任意に選択された100個の鱗片状黒鉛粒子1の粒径の算術平均で算出される。また、鱗片状黒鉛粒子1の厚さは電子顕微鏡等の観察手段で観察して測定される。鱗片状黒鉛粒子1の平均厚さは、多数の鱗片状黒鉛粒子1の中から任意に選択された100個の鱗片状黒鉛粒子1の厚さの算術平均で算出される。鱗片状黒鉛粒子1の平均アスペクト比は鱗片状黒鉛粒子1の「平均粒径/平均厚さ」により算出される。
バインダ2は、鱗片状黒鉛粒子1に金属箔10の条材10Aの塗工予定面10aへの付着力を付与して鱗片状黒鉛粒子1が塗工予定面10aから脱落するのを抑制するためのものである。バインダ2は通常、有機樹脂等の樹脂からなる。具体的には、バインダ2として、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂などを使用できる。
溶剤3はバインダ2を溶解するものである。具体的には、溶剤3として、親水性溶剤(例:イソプロピルアルコール、水)、有機溶剤などを使用できる。
撹拌混合器42としては、ディスパー、プラネタリーミキサー、ビーズミルなどを使用できる。
塗工液5を金属箔10の条材10Aの塗工予定面10aに塗工するための塗工方法は限定されるものではない。好ましくは、塗工液5の塗工は、図2に示すように、金属箔10の条材10Aを巻き出す巻出しロール31と金属箔10の条材10Aを巻き取る巻取りロール32とを用いたロールtoロール方式により行われる。
さらに、同図では、巻出しロール31と巻取りロール32との間に、三本ロール型のオフセット印刷装置20と乾燥装置としての乾燥炉35とが金属箔10の条材10Aの送り方向Fに並んで設置されている。
オフセット印刷装置20は、塗工液5を金属箔10の条材10Aの塗工予定面10aに塗工するものであり、三本ロールとして、インキロール21、転写ロール22及びバックアップロール23を備えており、更に、インキパンとしての塗工液パン25などを備えている。
インキロール21はその周面21aの周方向の一部が塗工液パン25内の塗工液5に漬けられた状態に配置されている。転写ロール22の周面22aは平滑に形成されている。転写ロール22の回転方向は金属箔10の条材10Aの送り方向Fと同じ方向に設定されている。バックアップロール23は転写ロール22と対向して配置されている。
オフセット印刷装置20では、パン25内の塗工液5は、インキロール21の回転によりインキロール21の周面21aから転写ロール22の周面22aに供給付着されたのち転写ロール22の回転により金属箔10の条材10Aの塗工予定面10aに転写塗工される。
乾燥炉35は、オフセット印刷装置20に対して金属箔10の条材10Aの送り方向Fの下流側に設置されており、金属箔10の条材10Aの塗工予定面10aに塗工された塗工液5を加熱乾燥することで塗工液5中の溶剤3を塗工液5から蒸発除去するものである。
巻出しロール31から巻き出された金属箔10の条材10Aは、オフセット印刷装置20の転写ロール22とバックアップロール23との間と、乾燥炉35とを順次通過したのち巻取りロール32に巻き取られる。
塗工液5は、金属箔10の条材10Aが転写ロール22とバックアップロール23との間を通過する際に、転写ロール22によって金属箔10の条材10Aの塗工予定面10aにその幅方向の略全体に亘って塗工される。
その後、塗工予定面10aに塗工された塗工液5は、乾燥炉35を通過することによって塗工液5から溶剤3が蒸発除去される。これにより、金属箔10の条材10Aの塗工予定面10aにその略全体に亘って鱗片状黒鉛粒子層11が形成され、すなわち塗工箔12の条材12Aが得られる。
上述したような三本ロール型のオフセット印刷装置20による塗工液5の塗工方法では、図4Aに示すように転写ロール22の周面22aが金属箔10の条材10Aの塗工予定面10aに当接したとき、転写ロール22の周面22a上の塗工液5が塗工予定面10aに付着する。そして、転写ロール22の周面22aが塗工予定面10aから離れることにより、図4Bに示すように塗工液5が塗工予定面10aに転写塗工される。その際に図4B、5A及び5Bに示すように塗工液5中の鱗片状黒鉛粒子1同士が重ならないように塗工液5が塗工予定面10aに塗工されることが望ましい。その理由について図6A及び6Bを参照して以下に説明する。
これらの図に示すように、鱗片状黒鉛粒子1同士が重なった状態で塗工液5が塗工予定面10aに塗工された場合、塗工液5を乾燥炉(乾燥装置)35により乾燥することにより、鱗片状黒鉛粒子1同士が重なった状態の鱗片状黒鉛粒子層110が塗工予定面10aに形成される。このような鱗片状黒鉛粒子層110を有する塗工箔120の条材120Aでは、接合一体化する工程S3において複数の塗工箔120を良好に接合一体化することが非常に困難である。そこで、複数の塗工箔を良好に接合一体化できるようにするため、図4B、5A及び5Bに示すように塗工液5中の鱗片状黒鉛粒子1同士が重ならないように塗工液5が塗工予定面10aに塗工されることが良い。
また、塗工液5は、鱗片状黒鉛粒子1の塗工量が0.1〜22g/mになるように塗工予定面10aに塗工されることが望ましい。その理由は次のとおりである。
鱗片状黒鉛粒子1の塗工量が0.1g/m未満の場合、鱗片状黒鉛粒子1による複合材60の熱伝導率を高める効果が小さい。
鱗片状黒鉛粒子1の塗工量が22g/mを超える場合、鱗片状黒鉛粒子1同士が重なるように塗工液5が塗工予定面10aに塗工される虞がある。すなわち、鱗片状黒鉛粒子1の厚さが一般に10μm以下であり、またその比重が一般に約2.2であり、また同一直径の円(鱗片状黒鉛粒子1の形状をその平面視で円とみなした場合)の平面最密配置の充填率が約90%であることから、鱗片状黒鉛粒子1同士が重ならないように塗工液5を塗工予定面10aに塗工し得る鱗片状黒鉛粒子1の塗工量の上限は約22g/mである。
したがって、鱗片状黒鉛粒子1の塗工量が0.1〜22g/mになるように塗工液5が塗工予定面10aに塗工されることにより、複合材60の熱伝導率を確実に高めることができるし、鱗片状黒鉛粒子1同士が重ならないように塗工液5を塗工予定面10aに確実に塗工することができ、そのため複数の塗工箔12を良好に接合一体化することができる。
さらに、塗工液5の塗工が三本ロール型のオフセット印刷装置20により行われることにより、鱗片状黒鉛粒子1同士が重ならないように塗工液5を塗工予定面10aに容易に且つ確実に塗工することができる。その理由は次のとおりである。
すなわち、三本ロール型のオフセット印刷装置20では、インキロール21の周面21aから転写ロール22の周面22aに付着する塗工液5の量は、インキロール21の周面21aに付着した塗工液5の量よりも少なく、また、インキロール21−転写ロール22間の加圧条件を変更することにより容易に調節可能である。このことから、インキロール21の周面21aに付着する塗工液5の量と、インキロール21−転写ロール22間の加圧条件とをそれぞれ適切に調節することにより、塗工液5を塗工予定面10aに薄く塗工することができる。そのため、鱗片状黒鉛粒子1同士が重ならないように塗工液5を塗工予定面10aに容易に且つ確実に塗工することができる。
また、鱗片状黒鉛粒子1同士が重ならないように塗工液5を確実に塗工するには、塗工装置として、後述するグラビア印刷装置220を用いても良い。
一方、その他の一般的な塗工装置として、インクジェット、ナイフコーター、ダイコーター、スプレーコーター、カーテンコーター等が知られているが、このような塗工装置では、フィラーとしての鱗片状黒鉛粒子1が大きすぎるため、塗工液5を塗工予定面10aに薄く塗工することが困難であり、その結果、鱗片状黒鉛粒子1同士が重なるように塗工液5が塗工され易い。したがって、鱗片状黒鉛粒子1同士が重ならないように塗工液5を塗工するには、塗工装置として、上述した三本ロール型のオフセット印刷装置20又は後述するグラビア印刷装置220を用いることが望ましい。
図7に示すように、積層体15を形成する工程S2では、巻取りロール32から巻き解られた塗工箔12の条材12Aを切断機39により所定形状に切断する。これにより、塗工箔12の条材12Aから所定形状(例:略四角形状)の塗工箔12を複数切り出す。
次いで、図8に示すように複数の塗工箔12を積層することにより、複数の塗工箔12が積層された状態の積層体15を形成する。この積層体15はプリフォーム(焼結素材)として用いられるものである。
積層体15を形成するための塗工箔12の積層枚数は限定されるものではなく、所望する複合材60の厚さなどに対応して設定され、例えば10〜1000枚である。
接合一体化する工程S3では、積層体15を加圧加熱焼結装置などによって所定の焼結雰囲気(例:非酸化雰囲気)中にて加熱することにより焼結し、これにより複数の塗工箔12を一括して接合一体化(詳述すると焼結一体化)する。
積層体15の焼結方法は、真空ホットプレス法、放電プラズマ焼結法(SPS法)、熱間静水圧焼結法(HIP法)、押出法(図11〜13参照)、圧延法などから選択される。なお、放電プラズマ焼結法はパルス通電焼結法とも呼ばれている。
具体的には、図9に示すように、例えば、加圧加熱焼結装置(例:真空ホットプレス装置、放電プラズマ焼結装置)50の焼結室51内に積層体15を配置し、そして焼結装置50によって所定の焼結雰囲気中にて積層体15を塗工箔12の積層方向(即ち積層体15の厚さ方向)に加圧しながら所定の焼結条件で加熱することにより積層体15を焼結し、これにより複数の塗工箔12を一括して接合一体化(焼結一体化)する。その結果、図10に示した本第1実施形態の複合材60が得られる。
積層体15への加圧は、例えば、焼結装置50に備えられた一対のパンチ52、52で積層体15をその厚さ方向に挟んで加圧することにより行われる。
積層体15を焼結するための積層体15の加熱温度、即ち積層体15の焼結温度は限定されるものではなく、通常、金属箔10の金属材料の融点以下であり、特に、金属材料の融点と当該融点よりも約50℃低い温度との間の温度に設定されることが望ましい。その理由は、積層体15を確実に焼結できる(即ち複数の塗工箔12を確実に接合一体化できる)からある。具体的には、金属箔10が例えばアルミニウム箔である場合、積層体15の焼結温度は550〜620℃に設定されることが望ましい。
ここで、積層体15の焼結温度とは、複数の塗工箔12を接合一体化する温度(即ち複数の塗工箔12を焼結一体化する温度)を意味する。
積層体15中に存在するバインダ2は、この工程S3において積層体15の温度が略室温から積層体15の焼結温度まで上昇するように積層体15を加熱する途中で昇華又は分散等により消失して積層体15から除去される。
この工程S3では、積層体15が上述のように加熱されることにより、金属箔10の金属材料の一部が鱗片状黒鉛粒子層11内に浸透して鱗片状黒鉛粒子層11内に存在する微細な空隙(例:鱗片状黒鉛粒子層11中の鱗片状黒鉛粒子1間の隙間)に充填されて、当該空隙が略消滅する。これにより、複合材60の密度が上昇するとともに複合材60の強度が向上する。
また、金属箔10の金属材料の一部が鱗片状黒鉛粒子層11内に浸透することによって、鱗片状黒鉛粒子層11中の鱗片状黒鉛粒子1は複合材60の金属マトリックス63中に複合材60の平面方向に分散した状態になり、すなわち図10に示すように鱗片状黒鉛粒子層11は複合材60の鱗片状黒鉛粒子分散層61になる。また、金属箔10は複合材60の金属層62になる。
したがって、複合材60においては、鱗片状黒鉛粒子分散層61と金属層62は、上述したように複合材30の厚さ方向の全体に亘って交互に積層された状態に配列する。
図11〜13は、積層体を形成する工程S2と接合一体化する工程S3を、上記第1実施形態で示した方法とは異なる方法で行う場合について説明する図である。
図11に示した積層体150を形成する工程S2では、巻取りロール32から巻き解かれた塗工箔12の条材12Aをロール状に複数回巻くことにより、複数の塗工箔12が積層された状態の積層体(ロール体)150を得る。この積層体150ではその半径方向が複数の塗工箔12の積層方向に相当する。
次いで、図12に示すように、積層体150を押出加工装置70に備えられたコンテナ71内に積層体150の軸方向が押出加工装置70の押出方向Eと平行になるように装填する。なお、積層体150をコンテナ71内に装填する前に、必要に応じて積層体150の外周面を金属製外装体(図示せず)で覆って良いし、積層体150の軸方向の端面を金属製蓋体(図示せず)で覆っても良い。
次いで、図13に示すように、積層体150を加熱しながら押出加工装置70に備えられたステム72によって押出方向Eに押圧し、これにより、押出加工装置70に備えられた押出ダイス73の押出成形孔74に積層体150を押し込んで押し出す。積層体150は押出成形孔74を通過する際にその半径方向(即ち複数の塗工箔12の積層方向)に加圧されて焼結され、これにより複数の塗工箔12が一括して接合一体化(焼結一体化)される。その結果、本第2実施形態の複合材160が得られる。
この複合材160では、複合材160内に存在する鱗片状黒鉛粒子1は複合材160の軸方向(即ち積層体150の押出方向E)に配向した状態に複合材160の金属マトリックス中に分散する。
図14〜21Bは、塗工箔12を得る工程S2を、上記第1実施形態で示した方法とは異なる方法で行う場合について説明する図である。
図14に示した塗工箔12を得る工程S2では、塗工液5をロールtoロール方式のグラビア印刷装置220により金属箔10の条材10Aの塗工予定面10aに塗工する。
グラビア印刷装置220は、詳述するとダイレクトグラビア印刷装置であり、巻出しロール(図2参照、31)と巻取りロール(図2参照、32)との間に設置されている。
グラビア印刷装置220は、グラビアロール221及びバックアップロール223を備えており、更に、インキパンとしての塗工液パン225、ドクターブレード227などを備えている。
グラビアロール221はグラビア版面としての周面221aを有している。周面221aにはその略全体に亘って多数のカップ状セル(凹部)222が整然と配列して設けられている(図15A、16A、17A、18A参照)。隣り合うセル222、222間には隔壁部221bが形成されており、隔壁部221bによって各セル222が仕切られている。
グラビアロール221はその周面221aの周方向の一部が塗工液パン225内の塗工液5に漬けられた状態に配置されている。グラビアロール221の回転方向は金属箔10の条材10Aの送り方向Fと同じ方向に設定されている。バックアップロール223はグラビアロール221に対向して配置されている。
グラビアロール221が回転することにより、グラビアロール221の周面221aにパン225内の塗工液5が付着して各セル222内に塗工液5が入る。そして、グラビアロール221の周面221aに付着した余分な塗工液5がドクターブレード227により掻き取られ、その後、グラビアロール221の周面221aが巻出しロール(図2参照、31)から巻き出された金属箔10の条材10Aの塗工予定面10aに当接することにより、セル222内の塗工液5が塗工予定面10aに転写される。その結果、金属箔10の条材10Aの塗工予定面10aにその略全体に亘って塗工液5が塗工される。
その後、塗工液5が乾燥装置(図2参照、35)により乾燥される。これにより、金属箔10の条材10Aの塗工予定面10aに鱗片状黒鉛粒子層11が形成された塗工箔12の条材12Aが得られる。そして、塗工箔12の条材12Aが巻取りロール(図2参照、32)に巻き取られる。
グラビアロール221において、セル222の形状は上述したようにカップ状であり、特に、セル222の周囲が全周に亘って略閉鎖された形状であることが望ましい。
具体的には、セル222の形状は、格子型(図15A及び15Bを見よ)、ピラミッド型(図16A及び16Bを見よ)、亀甲型(図17A及び17Bを見よ)及び円型(図18A及び18Bを見よ)からなる群より選択される一つであることが望ましい。
格子型セル222Aは、図15A及び15Bに示すように四角錐台状に凹んで形成されている。
ピラミッド型セル222Bは、図16A及び16Bに示すように四角錐状に凹んで形成されている。
亀甲型セル222Cは、図17A及び17Bに示すように六角錐台状に凹んで形成されている。
円型セル222Dは、図18A及び18Bに示すように円錐台状に凹んで形成されている。
さらに、セル(例:格子型、ピラミッド型、亀甲型、円型)222の底面222bの形状は限定されるものではなく、例えば、平坦状、凹曲面状(例:凹球面状)、凹錐面状(例:凹角錐面状、凹円錐面状)であっても良い。
さらに、セル222は、セル222の周囲が全周に亘って完全に閉鎖された形状のものであることが望ましいが、これに限定されるものではなく、その他に例えば、セル222の内周側面222aの一部にセル222内の塗工液5の一部が隣りのセル222内へ流れうるようにするための小さな連絡口(図示せず)が形成された形状のものであっても良い。
グラビアロール221では、セル222のサイズはメッシュ数で規定されるのが通常である。メッシュ数は1inch(25.4mm)当たりの線数(セル222の間隔)を表しており、メッシュ数が多くなるほどセル222のサイズは小さくなる。
セル222のサイズについて、セル222の開口周縁222dに内接する円の直径が鱗片状黒鉛粒子1の平均粒径の1.2〜2.5倍に設定されていなければならない。換言すると、図15A、16A、17A及び18Bに示すようにセル222の開口周縁222dに内接する円Cの直径をD、鱗片状黒鉛粒子1の平均粒径をd(図3参照)とすると、D/dは、1.2≦D/d≦2.5の関係を満足しなければならない。その理由を図19〜21Bを参照して以下に説明する。
なお、図15A、16A及び17Aではセル222の開口周縁222dに内接する円Cは二点鎖線で示されており、図18Aではセル222の開口周縁222dに内接する円Cはセル222の開口周縁222dと一致している。また、図19〜21Bではバインダ2は図示省略されている。
図19に示すように、D/d<1.2の場合、セル222内に鱗片状黒鉛粒子1が殆ど入らず、そのため、鱗片状黒鉛粒子1の大部分がドクターブレード227により掻き取られてしまう。
図21A及び21Bに示すように、2.5<D/dの場合、セル222内に入る鱗片状黒鉛粒子1の数が多すぎてしまい、そのため、鱗片状黒鉛粒子1同士が重なるように塗工液5が金属箔10の条材10Aの塗工予定面10aに塗工されてしまう。
図20A及び20Bに示すように、1.2≦D/d≦2.5の場合、セル222内に入る鱗片状黒鉛粒子1の数が適量であり、そのため、鱗片状黒鉛粒子1同士が重ならないように塗工液5を金属箔10の条材10Aの塗工予定面10aに塗工することができる。
このようにグラビア印刷装置220により塗工液5を金属箔10の条材10Aの塗工予定面10aに塗工した後においては、上述した、積層体15を形成する工程S2及び接合一体化する工程S3が順次行われる。
上述した実施形態の複合材60(160)は、図22に示すように、例えば、パワーモジュール用冷却器80を構成する複数の冷却器構成層81〜84のうち少なくとも一つの構成層の材料として好適に使用可能である。
パワーモジュールは、例えば、ハイブリッドカー(HEV)、電気自動車(EV)、電車などの車両に用いられたり、風力発電、太陽光発電などのエネルギー分野に用いられたりするものである。
冷却器80は、複数の冷却器構成層として、配線層81、絶縁層82、緩衝層83及び冷却層84を備えている。そして、上から下へ順に、配線層81、絶縁層82、緩衝層83及び冷却層84が積層された状態でろう付け等の所定の接合手段によりこれらの層81〜84が接合一体化されている。
配線層81の上面からなる搭載面81aには、半導体素子(例:パワー半導体チップ)等の発熱性素子87(二点鎖線で示す)がはんだ層88(二点鎖線で示す)を介して接合されて搭載される。絶縁層82は電気絶縁性を有しており、通常、セラミックで形成されている。緩衝層83は、冷却器80に発生した熱応力等の応力を緩和するための層である。冷却層84は、発熱性素子87の熱を放散して発熱性素子87の冷却するための層であり、例えば、複数の放熱フィンを有するヒートシンクからなる。
上述した実施形態の複合材60(160)は、詳述すると、上述した複数の構成層81〜84のうち絶縁層82を除く構成層(即ち、配線層81、緩衝層83及び冷却層84)からなる群より選択される少なくとも一つの構成層の材料として好適に使用可能である。
なお本発明では、冷却器の上下方向は限定されるものではないが、上述した実施形態では、冷却器80の構成を理解し易くするため、発熱性素子87が搭載される冷却器80の搭載面81a側が冷却器80の上側、その反対側が冷却器80の下側とそれぞれ定義されている。
以上で本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能である。
本発明では、塗工箔を得る工程において塗工液が塗工される金属箔は、上記実施形態で示したような金属箔10の条材10Aであることに限定されるものではなく、その他に例えば条材状ではない金属箔(例:予め設定された長さ寸法及び幅寸法を有する略四角形状の金属箔)であっても良い。
本発明に係る金属−炭素粒子複合材は、パワーモジュール用冷却器の材料だけではなくそれ以外の用途の材料としても使用可能である。
次に本発明の具体的な実施例及び比較例を以下に示す。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
参考例1
鱗片状黒鉛粒子と、樹脂バインダとしてポリエチレンオキサイドの3質量%水溶液及びポリビニルアルコールの10質量%水溶液と、溶剤としてイソプロピルアルコール及び水と、分散剤と、表面調整剤とをディスパーにより撹拌混合し、これにより塗工液を得た。鱗片状黒鉛粒子の平均粒径dは150μm、その平均アスペクト比は30であった。塗工液に含まれる鱗片状黒鉛粒子の質量割合は樹脂バインダと鱗片状黒鉛粒子との合計質量に対して10質量%であった。塗工液の粘度は25℃で1000mPa・sであった。
また、金属箔として、厚さ20μm及び幅500mmのアルミニウム箔(Al箔)の条材(その純度:4N)を準備した。
そして、アルミニウム箔の条材の厚さ方向の両側の表面のうち片側の表面を塗工予定面とし、ロールtoロール方式の三本ロール型のオフセット印刷装置により塗工液をアルミニウム箔の条材の塗工予定面にその全体に亘って塗工速度20m/minで塗工した。
次いで、アルミニウム箔の条材を乾燥炉内に通過させることにより塗工液を加熱乾燥して塗工液中の溶剤を塗工液から蒸発除去した。これにより、アルミニウム箔の条材の塗工予定面に鱗片状黒鉛粒子層が形成された塗工箔の条材を得た。鱗片状黒鉛粒子の塗工量は10g/mであった。
次いで、塗工箔の条材を正方形状(その寸法:縦50mm×横50mm)に切断し、これにより塗工箔の条材から正方形状の塗工箔を複数切り出した。そして、200枚の塗工箔を積層することで積層体を形成した。
次いで、加圧加熱焼結装置としての放電プラズマ焼結装置(SPS装置)により真空雰囲気中にて積層体をその厚さ方向(即ち塗工箔の積層方向)に加圧しながら所定の焼結条件で加熱することにより積層体を焼結し、これにより複数の塗工箔を一括して接合一体化(焼結一体化)した。その結果、金属−炭素粒子複合材として、アルミニウム−鱗片状黒鉛粒子複合材を得た。得られた複合材の厚さは5mmであった。
焼結条件は次のとおりであった。焼結温度は620℃、焼結温度の保持時間(即ち焼結時間)は2h、室温からの昇温速度は20℃/min、積層体への加圧力は15MPa、真空度は3Paであった。
また、積層体の温度が略室温から焼結温度まで上昇するように積層体を加熱する途中において積層体の温度が450℃になったとき、この温度450℃を30分間保持することにより積層体中に存在するバインダを積層体から除去した。
得られた複合材では、各鱗片状黒鉛粒子層内にアルミニウムが十分に浸透しており、そのため各鱗片黒鉛粒子層中の鱗片状黒鉛粒子間の隙間が殆ど消滅しており、更に、塗工箔間の界面に隙間が殆ど存在していなかった。したがって、複合材の接合状態(詳述すると複数の塗工箔の接合状態)は良好であり、また複合材の密度は複合材の理論密度の99%であった。なお、複合材の理論密度とは、複合材の内部に空隙(隙間を含む)が全く存在していない場合における複合材の密度を意味する。
複合材の平面方向の熱伝導率は310W/(m・K)であり、アルミニウムの熱伝導率よりも高かった。
また、複合材をパワーモジュール用冷却器の配線層、緩衝層及び冷却層の材料としてそれぞれ使用したところ、冷却器は高い冷却性能を有していた。
<実施例
平均粒径dが150μm及び平均アスペクト比が30の鱗片状黒鉛粒子を用いて、上記実施例1と同じ方法により塗工液を得た。
また、上記実施例1で用いたアルミニウム箔の条材と同じアルミニウム箔(Al箔)の条材を準備した。
そして、アルミニウム箔の条材の厚さ方向の両側の表面のうち片側の表面を塗工予定面とし、ロールtoロール方式のグラビア印刷装置によって塗工液をアルミニウム箔の条材の塗工予定面にその全体に亘って塗工速度20m/minで塗工した。
グラビア印刷装置の構成は次のとおりであった。グラビア印刷装置に備えられたグラビアロールの周面のメッシュ数は♯80、セルの形状は亀甲型、セルの開口周縁に内接する円の直径Dは300μmであった。したがって、D/dは2であった。
次いで、アルミニウム箔の条材の塗工予定面に塗工された塗工液を上記実施例1と同じ方法により加熱乾燥して塗工液中の溶剤を塗工液から蒸発除去した。これにより、アルミニウム箔の条材の塗工予定面に鱗片状黒鉛粒子層が形成された塗工箔の条材を得た。鱗片状黒鉛粒子の塗工量は10g/mであった。
次いで、塗工箔の条材を用いて上記実施例1と同じ方法により複合材を得た。
得られた複合材の接合状態は良好であり、また複合材の密度は複合材の理論密度の99%であった。
複合材の平面方向の熱伝導率は310W/(m・K)であり、アルミニウムの熱伝導率よりも高かった。
また、複合材をパワーモジュール用冷却器の配線層、緩衝層及び冷却層の材料としてそれぞれ使用したところ、冷却器は高い冷却性能を有していた。
<実施例
平均粒径dが300μm及び平均アスペクト比が30の鱗片状黒鉛粒子を用いて、上記実施例1と同じ方法により塗工液を得た。
また、上記実施例1で用いたアルミニウム箔の条材と同じアルミニウム箔(Al箔)の条材を準備した。
そして、アルミニウム箔の条材の厚さ方向の両側の表面のうち片側の表面を塗工予定面とし、ロールtoロール方式のグラビア印刷装置によって塗工液をアルミニウム箔の条材の塗工予定面にその全体に亘って上記実施例2と同じ塗工速度で塗工した。
グラビア印刷装置の構成は次のとおりであった。グラビア印刷装置に備えられたグラビアロールの周面のメッシュ数は♯40、セルの形状は亀甲型、セルの開口周縁に内接する円の直径Dは600μmであった。したがって、D/dは2であった。
次いで、アルミニウム箔の条材の塗工予定面に塗工された塗工液を上記実施例1と同じ方法により加熱乾燥して塗工液中の溶剤を塗工液から蒸発除去した。これにより、アルミニウム箔の条材の塗工予定面に鱗片状黒鉛粒子層が形成された塗工箔の条材を得た。鱗片状黒鉛粒子の塗工量は10g/mであった。
次いで、塗工箔の条材を用いて上記実施例1と同じ方法により複合材を得た。
得られた複合材の接合状態は良好であり、また複合材の密度は複合材の理論密度の99%であった。
複合材の平面方向の熱伝導率は340W/(m・K)であり、アルミニウムの熱伝導率よりも高かった。
また、複合材をパワーモジュール用冷却器の配線層、緩衝層及び冷却層の材料としてそれぞれ使用したところ、冷却器は高い冷却性能を有していた。
参考例2
平均粒径dが150μm及び平均アスペクト比が30の鱗片状黒鉛粒子を用いて、上記実施例1と同じ方法により塗工液を得た。
また、金属箔として、厚さ20μm及び幅500mmの銅箔(Cu箔)の条材(その純度:99.95%以上)を準備した。
そして、銅箔の条材の厚さ方向の両側の表面のうち片側の表面を塗工予定面とし、ロールtoロール方式の三本ロール型のオフセット印刷装置によって塗工液を銅箔の条材の塗工予定面にその全体に亘って上記実施例1と同じ塗工条件で塗工した。
次いで、銅箔の条材の塗工予定面に塗工された塗工液を上記実施例1と同じ方法により加熱乾燥して塗工液中の溶剤を蒸発除去した。これにより、銅箔の条材の塗工予定面に鱗片状黒鉛粒子層が形成された塗工箔の条材を得た。鱗片状黒鉛粒子の塗工量は10g/mであった。
次いで、塗工箔の条材を用いて次の焼結条件を除き上記実施例1と同じ法により金属−炭素粒子複合材としての銅−鱗片状黒鉛粒子複合材を得た。
焼結条件は次のとおりであった。焼結温度は950℃、焼結温度の保持時間(即ち焼結時間)は2h、室温からの昇温速度は20℃/min、積層体への加圧力は15MPa、真空度は3Paであった。
得られた複合材の接合状態は良好であり、また複合材の密度は複合材の理論密度の99%であった。
複合材の平面方向の熱伝導率は450W/(m・K)であり、銅の熱伝導率よりも高かった。
また、複合材をパワーモジュール用冷却器の配線層、緩衝層及び冷却層の材料としてそれぞれ使用したところ、冷却器は高い冷却性能を有していた。
<比較例1>
平均粒径dが150μm及び平均アスペクト比が30の鱗片状黒鉛粒子を用いて、上記実施例1と同じ方法により塗工液を得た。
また、上記実施例1で用いたアルミニウム箔の条材と同じアルミニウム箔(Al箔)の条材を準備した。
そして、アルミニウム箔の条材の厚さ方向の両側の表面のうち片側の表面を塗工予定面とし、ロールtoロール方式のグラビア印刷装置によって塗工液をアルミニウム箔の条材の塗工予定面にその全体に亘って上記実施例2と同じ塗工速度で塗工した。
グラビア印刷装置の構成は次のとおりであった。グラビア印刷装置に備えられたグラビアロールの周面のメッシュ数は♯55、セルの形状は亀甲型、セルの開口周縁に内接する円の直径Dは450μmであった。したがって、D/dは3であった。
次いで、アルミニウム箔の条材の塗工予定面に塗工された塗工液を上記実施例1と同じ方法により加熱乾燥して塗工液中の溶剤を塗工液から蒸発除去した。これにより、アルミニウム箔の条材の塗工予定面に鱗片状黒鉛粒子層が形成された塗工箔の条材を得た。鱗片状黒鉛粒子の塗工量は25g/mであった。また塗工箔の条材では、鱗片状黒鉛粒子層は鱗片状黒鉛粒子同士が重なった状態に塗工予定面に形成されていた。
次いで、塗工箔の条材を用いて上記実施例1と同じ方法により複合材を得た。
得られた複合材では、各鱗片黒鉛粒子層中の鱗片状黒鉛粒子間の隙間はあまり消滅しておらず、更に、塗工箔間の界面に隙間が存在していた。したがって、複合材の接合状態は不良であった。そのため、複合材から複合材の熱伝導率を測定するための試料を採取することができず、複合材の熱伝導率を測定できなかった。
<比較例2>
平均粒径dが150μm及び平均アスペクト比が30の鱗片状黒鉛粒子を用いて、上記実施例1と同じ方法により塗工液を得た。
また、上記実施例1で用いたアルミニウム箔の条材と同じアルミニウム箔(Al箔)の条材を準備した。
そして、アルミニウム箔の条材の厚さ方向の両側の表面のうち片側の表面を塗工予定面とし、ロールtoロール方式のグラビア印刷装置によって塗工液をアルミニウム箔の条材の塗工予定面にその全体に亘って上記実施例2と同じ塗工速度で塗工した。
グラビア印刷装置の構成は次のとおりであった。グラビア印刷装置に備えられたグラビアロールの周面のメッシュ数は♯180、セルの形状は亀甲型、セルの開口周縁に内接する円の直径Dは130μmであった。したがって、D/dは約0.9であった。そのため、鱗片状黒鉛粒子がセル内に入らず、鱗片状黒鉛粒子の略全部がドクターブレードにより掻き取られた。そのため、アルミニウム箔の条材の塗工予定面に鱗片状黒鉛粒子層を形成することができなかった。
<比較例3>
平均粒径dが50μm及び平均アスペクト比が30の鱗片状黒鉛粒子を用いて、上記実施例1と同じ方法により塗工液を得た。
また、上記実施例1で用いたアルミニウム箔(Al箔)の条材と同じアルミニウム箔の条材を準備した。
そして、アルミニウム箔の条材の厚さ方向の両側の表面のうち片側の表面を塗工予定面とし、ロールtoロール方式の三本ロール型のオフセット印刷装置によって塗工液をアルミニウム箔の条材の塗工予定面にその全体に亘って上記実施例1と同じ塗工条件で塗工した。
次いで、アルミニウム箔の条材の塗工予定面に塗工された塗工液を上記実施例1と同じ方法により加熱乾燥して塗工液中の溶剤を塗工液から蒸発除去した。これにより、アルミニウム箔の条材の塗工予定面に鱗片状黒鉛粒子層が形成された塗工箔の条材を得た。鱗片状黒鉛粒子の塗工量は10g/mであった。
次いで、塗工箔の条材を用いて上記実施例1と同じ方法により複合材を得た。
得られた複合材の接合状態は良好であり、また複合材の密度は複合材の理論密度の99%であった。
しかしながら、複合材の平面方向の熱伝導率は180W/(m・K)であり、アルミニウムの熱伝導率よりも低かった。その原因は、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径dが小さいため、鱗片状黒鉛粒子と金属マトリックスとの間の界面熱抵抗による熱伝導率の低下が大きいからであると考えられる。
以上の結果を表1にまとめて示す。
Figure 0006821409
なお、表1中の「塗工方法」欄において括弧内はメッシュ数を表している。また、「複合材の接合状態」欄において符号の意味は以下のとおりである。
○:複合材の接合状態が良好
×:複合材の接合状態が不良。
本発明は、例えば、パワーモジュール用冷却器の材料に用いられる金属−炭素粒子複合材の製造方法に利用可能である。
1:鱗片状黒鉛粒子
2:バインダ
5:塗工液
10:金属箔
10A:金属箔の条材
10a:金属箔の塗工予定面
11:鱗片状黒鉛粒子層
12:塗工箔
12A:塗工箔の条材
15、150:積層体
20:三本ロール型のオフセット印刷装置
60、160:金属−炭素粒子複合材
220:グラビア印刷装置
221:グラビアロール
221a:グラビアロールの周面
222:セル

Claims (3)

  1. 炭素粒子としての鱗片状黒鉛粒子とバインダとを含有する塗工液をクラビア印刷装置により金属箔の塗工予定面に塗工し乾燥することにより、前記金属箔の前記塗工予定面に鱗片状黒鉛粒子層が形成された塗工箔を得る工程と、
    複数の前記塗工箔が積層された状態の積層体を形成する工程と、
    前記積層体を加熱することにより前記複数の塗工箔を接合一体化する工程と、
    を含み、
    前記鱗片状黒鉛粒子の平均粒径は前記鱗片状黒鉛粒子の平面方向の円相当直径で100μm以上であり、
    前記グラビア印刷装置は、周面に多数のカップ状セルが設けられたグラビアロールを備えるとともに、
    前記セルの開口周縁に内接する円の直径が前記鱗片状黒鉛粒子の平均粒径の1.2〜2.5倍に設定されており、
    前記塗工箔を得る工程では、前記塗工液を前記金属箔の前記塗工予定面に前記鱗片状黒鉛粒子の塗工量が0.1〜22g/mになるように塗工する、金属−炭素粒子複合材の製造方法。
  2. 前記金属箔はアルミニウム箔又は銅箔である請求項記載の金属−炭素粒子複合材の製造方法。
  3. 冷却器を構成するとともに積層状に接合一体化される複数の冷却器構成層のうち少なくとも一つの構成層の材料として用いられる金属−炭素粒子複合材の製造方法であって、
    請求項1又は2記載の金属−炭素粒子複合材の製造方法により製造を行う金属−炭素粒子複合材の製造方法。
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