以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。同一の部材を示す複数の図面同士においても、形状等を誇張するために、寸法比率等は互いに一致していないことがある。便宜上、層状の部材の表面(すなわち断面でない面)にハッチングを付すことがある。
本開示の水晶振動子又は水晶振動素子は、いずれが上方又は下方とされてもよいものであるが、以下では、便宜上、図1及び図2の紙面上方(+Y′軸方向)を上方として上面又は下面等の用語を用いることがある。また、単に平面視又は平面透視という場合においては、特に断りがない限りは、上記のように便宜的に定義した上下方向において見ることをいうものとする。
第2実施形態以降において、既に説明した実施形態の構成と同一又は類似する構成については、既に説明した実施形態の構成に付した符号を付すことがあり、また、説明を省略することがある。既に説明した実施形態の構成に対応する(類似する)構成について、既に説明した実施形態の構成とは異なる符号を付した場合においても、特に断りがない事項については、既に説明した実施形態の構成と同様である。
<第1実施形態>
(水晶振動子の全体構成)
図1は、本開示の実施形態に係る水晶振動子1(以下、「水晶」は省略することがある。)の概略構成を示す分解斜視図である。また、図2は、振動子1の断面図(図1のII−II線に対応)である。
振動子1は、例えば、全体として、概略、薄型の直方体状とされる電子部品である。その寸法は適宜に設定されてよい。例えば、比較的小さいものでは、長辺(X軸方向)又は短辺(Z′軸方向)の長さが1〜2mmであり、厚さ(Y′軸方向)が0.2〜0.4mmである。
振動子1は、例えば、凹部3aが形成された素子搭載部材3と、凹部3aに収容された水晶振動素子5(以下、「水晶」は省略することがある。)と、凹部3aを塞ぐ蓋部材7とを有している。
振動素子5は、発振信号の生成に利用される振動を生じる部分である。素子搭載部材3及び蓋部材7は、振動素子5をパッケージングするパッケージ8を構成している。素子搭載部材3の凹部3aは蓋部材7により封止され、その内部は、例えば、真空とされ、又は適宜なガス(例えば窒素)が封入されている。
素子搭載部材3は、例えば、素子搭載部材3の主体となる基体9と、振動素子5を実装するための1対の素子搭載パッド11と、振動子1を不図示の回路基板等に実装するための複数(図示の例では4つ)の外部端子13とを有している。
基体9は、セラミック等の絶縁材料からなり、上記の凹部3aを構成している。素子搭載パッド11は、金属等からなる導電層により構成されており、凹部3aの底面に位置している。外部端子13は、金属等からなる導電層により構成されており、基体9の下面に位置している。素子搭載パッド11及び外部端子13は、基体9内に配置された導体(図2。符号省略)によって互いに接続されている。蓋部材7は、例えば、金属から構成され、素子搭載部材3の上面にシーム溶接等により接合されている。
振動素子5は、例えば、水晶片15と、水晶片15に電圧を印加するための1対の励振電極17と、振動素子5を1対の素子搭載パッド11に実装するための1対の引出電極19とを有している。振動素子5は、全体として概略板状に構成されている。
振動素子5は、凹部3aの底面に対向するように凹部3aに収容される。そして、1対の引出電極19が1対のバンプ21(図2)により1対の素子搭載パッド11に接合される。これにより、振動素子5は、素子搭載部材3に片持ち梁のように支持される。また、1対の励振電極17は、1対の引出電極19を介して1対の素子搭載パッド11と電気的に接続され、ひいては、複数の外部端子13のいずれか2つと電気的に接続される。バンプ21は、例えば、導電性接着剤からなる。導電性接着剤は、例えば、導電性のフィラーが熱硬化性樹脂に混ぜ込まれて構成されている。
このようにして構成された振動子1は、例えば、不図示の回路基板の実装面に素子搭載部材3の下面を対向させて配置され、外部端子13が半田などにより回路基板のパッドに接合されることによって回路基板に実装される。回路基板には、例えば、発振回路23(図2)が構成されている。発振回路23は、外部端子13及び素子搭載パッド11を介して1対の励振電極17に交流電圧を印加して発振信号を生成する。この際、発振回路23は、例えば、水晶片15の厚みすべり振動のうち基本波振動を利用する。オーバートーン振動が利用されてもよい。
(水晶振動素子の基本的な構成)
水晶片15は、いわゆるATカット板である。すなわち、図1に示すように、水晶において、X軸(電気軸)、Y軸(機械軸)及びZ軸(光軸)からなる直交座標系XYZを、X軸回りに30°以上40°以下(一例として35°15′)回転させて直交座標系XY′Z′を定義したときに、水晶片15はXZ′平面に平行に切り出された板状である。
水晶片15の平面視における外縁の形状は、例えば、概略長方形である。水晶片15は、1対の主面と、1対の主面の外縁同士をつなぐ複数(平面視長方形では4つ)の側面を有している。主面は、板状部材が有する複数の面(平面視矩形の板状部材では6面)のうち最も広い面(板状部材の表裏)を指す。ATカット板では、主面は、概ねXZ′平面に沿う面であり、主面の長辺は概ねX軸に沿う辺であり、主面の短辺は概ねZ′軸に沿う辺である。
なお、水晶片15の平面形状は、完全な長方形でなくてもよい。例えば、長方形の角部が平面又は曲面で面取りされていたり、長辺及び/又は短辺が外側に膨らむ弧状とされていたり、対向する2辺同士の長さが互いに異ならされていたりしてもよい。長辺及び短辺の用語は、一般には、長方形の辺を指す用語である。本開示においては、平面視において、水晶片15の長手方向及び短手方向が区別でき、かつ外縁が概ね長手方向に沿う2つの線と概ね短手方向に沿う2つの線との合計4つの線からなると捉えることができる限り、前記のように完全な長方形でなくても、前記の平面視における4つの線を長辺及び短辺という。
水晶片15(振動素子5)は、いわゆるメサ型とされており、メサ部31と、平面視においてメサ部31を囲み、1対の主面間(Y′軸方向)の厚みがメサ部31よりも薄い外周部33とを有している。このような形状により、例えば、エネルギー閉じ込め効果が向上する。
メサ部31の形状は、例えば、それぞれXZ′平面に平行な1対の主面を有する板状である。1対の主面は、別の観点では、互いに平行である。メサ部31の平面形状は、適宜に設定されてよく、例えば、長方形(図示の例)、円形、楕円形(数学において定義される正確な楕円でなくてよい)又は長円形(4辺のうち1対の短辺それぞれが概ね半円とされた形状)である。図示の長方形のメサ部31は、例えば、水晶片15の外縁の4辺に概ね平行な4辺を有している。
外周部33の形状は、例えば、メサ部31を無視すると、それぞれXZ′に概ね平行な1対の主面を有する板状である。1対の主面は、別の観点では、互いに平行である。外周部33の外縁の形状は、上述した水晶片15全体としての外縁の形状について説明したとおりである。外周部33の内縁の形状は、基本的にはメサ部31の外縁の形状と同様である。
平面視において、メサ部31は、例えば、水晶片15(外周部33)の外縁に対して、Z′軸方向においては中心に位置し、X軸方向においては一方側(引出電極19とは反対側)にずれて位置している。ただし、メサ部31は、X軸方向において水晶片15の中心に位置してもよい。
Y′軸方向において外周部33は、メサ部31の中央に位置している。すなわち、メサ部31の外周部33からの高さ(水晶片15をメサ型にするための外周部33における掘り込み量)は、水晶片15の1対の主面同士で同等である。
メサ部31の1対の主面は、例えば、最終的に研磨によって形成されている。また、外周部33の1対の主面、メサ部31の外周面(メサ部31の複数の側面)、外周部33の外周面(水晶片15の複数の側面)は、例えば、エッチングによって形成されており、ひいては、エッチングによって現れる結晶面によって構成されている。
メサ部31の厚みは、厚みすべり振動についての所望の固有振動数に基づいて設定される。例えば、基本波振動を用いる場合において、固有振動数をFとすると、この固有振動数Fに対応するメサ部31の厚みtmを求める基本式は、tm=1670/Fである。なお、実際には、メサ部31の厚みは、励振電極17の重さ等も考慮して、基本式の値から微調整された値とされる。
外周部33の厚みは、エネルギー閉じ込め効果の観点などから適宜に設定される。例えば、水晶片15の1対の主面の一方側における、メサ部31の主面と外周部33の主面との高さの差(外周部33における掘り込み量)は、メサ部31の厚みの5%以上15%以下であり、例えば10%程度である。
水晶片15の各種の寸法は、等価直列抵抗の低減等の種々の観点から、シミュレーション計算及び実験等に基づいて適宜に設定されてよい。一例を挙げると、例えば、水晶片15の長さ(X軸方向)は600μm以上1mm以下、水晶片15の幅(Z′軸方向)は500μm以上700μm以下(ただし水晶片15の長さより短い)、メサ部31の厚みは40μm以上70μm以下、メサ部31の長さ(X軸方向)は450μm以上750μm以下(ただし水晶片15の長さより短い)、メサ部31の幅(Z′軸方向)は400μm以上650μm以下(ただし水晶片15の幅より短い)である。
1対の励振電極17及び1対の引出電極19は、水晶片15の表面に重なる導電層により構成されている。導電層は、例えば、Au(金)、Ag(銀)又はAu−Ag合金等の金属である。導電層は、互いに材料が異なる複数の層から構成されていてもよい。導電層の厚みは適宜に設定されてよいが、一例を示すと、0.05μm以上0.3μm以下である。なお、図2等では、導電層は、その厚さが実際の厚さよりも厚く示されている。
1対の励振電極17は、メサ部31の1対の主面に位置しており、メサ部31を挟んで互いに対向している。換言すると、1対の励振電極17は、水晶片15の1対の主面上に水晶片15の外縁から離れて位置している。励振電極17の平面形状は、例えば、メサ部31の平面形状に概ね相似の形状であり、図示の例では矩形である。励振電極17は、例えば、メサ部31の主面内に収まっており、また、その中心(図形重心)は、メサ部31の主面の中心(図形重心)と一致している。ただし、励振電極17は、メサ部31から外周部へはみ出していてもよいし、励振電極17の中心とメサ部31の中心とはずれていてもよい。
1対の引出電極19は、例えば、1対の励振電極17からX軸方向の一方側(本実施形態では+X側)に延び出ており、水晶片15(外周部33)の1対の主面のうち少なくとも一方の主面に、1対のバンプ21と接合される1対のパッド部19aを有している。図示の例では、振動素子5は、1対の主面のいずれを凹部3aの底面に対向させてもよいように、X軸回りに180°回転対称に形成されており、1対の引出電極19は、1対の主面のそれぞれにおいて1対のパッド部19a(合計で2対のパッド部19a)を有している。なお、1対の主面の一方の主面に位置する励振電極17と他方の主面に位置するパッド部19aとは、水晶片15の側面(短辺に位置する側面及び/又は長辺に位置する側面)を介して接続されている。
(水晶片の材料)
図3(a)及び図3(b)は、水晶片15の材料を説明するための模式図である。具体的には、図3(a)は平面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線における断面図である。ただし、図3(b)において、断面であることを示すハッチングは省略する。
なお、この図では、メサ部31は、その厚みが実際の厚みに比較して厚く示されている。メサ部31の側面及び外周部33の側面は、理想的にはメサ部31の主面に直交する(Y′軸に平行になる)が、実際には、水晶のエッチングに対する異方性によって、Y′軸に対して傾斜する。図3(b)では、この傾斜も図示している。ただし、図示の傾斜角は、実際のものとは必ずしも一致していない。
水晶片15は、ドーパント(不純物)を含む水晶(ドーピングがなされた水晶)によって構成されている。図3(a)及び図3(b)において、複数の点は、複数のドーパント39を模式的に示している。すなわち、複数の点によってハッチングされた領域は、ドーパント39が含まれている領域を示している。この図に示されているように、水晶片15は、ドーパント39を含むドーピング部35と、ドーパント39を含まない非ドーピング部37とを有している。
ドーピング部35は、例えば、平面視においてメサ部31の主面(頂面、XZ′平面に平行な面)に収まっている。その広さは、メサ部31の主面と同等であってもよいし、メサ部31の主面よりも狭くてもよい(図示の例)。例えば、図示の例では、ドーピング部35の外縁は、メサ部31の主面の外縁全体に亘って、当該外縁よりも若干(例えば5μm以下)内側に位置している。また、ドーピング部35は、上記の範囲において、水晶片15(メサ部31)の厚み全体に亘っている。
非ドーピング部37は、水晶片15のうちの、上記のドーピング部35以外の部分である。すなわち、非ドーピング部37は、外周部33を含むとともに、メサ部31の外縁部を含んでいる。メサ部31の外縁部は、少なくとも外周部33とメサ部31の頂面とをつなぐメサ部31の側面を含んでいる。また、図示の例では、非ドーピング部37は、メサ部31のうち、メサ部31の頂面の外縁から若干内側までの範囲も含んでいる。
ドーパント39の配置領域と導電層(励振電極17等)との関係に着目すると、例えば、平面視において、ドーピング部35の平面形状は、例えば、1対の励振電極17の一方(1対の励振電極17は基本的に互いに同一形状であるのでいずれでもよい)の平面形状に概ね一致する。例えば、両者の面積の差は、前記一方の励振電極17の面積の1割未満である。
また、非ドーピング部37は、例えば、平面透視において1対の引出電極19の概ね全体と重なっている。具体的には、例えば、非ドーピング部37は、平面透視において1対の引出電極19の9割以上又は全部に重なっている。ここでいう9割は、平面透視におけるものであるから、1対の引出電極19のY′軸方向への投影面積の9割である。
なお、平面透視において、ドーピング部35が励振電極17よりも若干広く、ドーピング部35が引出電極19に若干重なっていてもよいし、ドーピング部35が励振電極17よりも若干狭く、非ドーピング部37が励振電極17に若干重なっていてもよい。
ドーパント39は、例えば、ケイ素と同様に周期表第14族の元素であり、かつ、ケイ素よりも原子量が大きい元素である。具体的には、例えば、ドーパント39は、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)及び/又は鉛(Pb)である。
公知のように、水晶(SiO2)は、1個のケイ素原子及び4個の酸素原子からなる4面体が3次元的に配列されて構成されており、4面体の頂点の酸素は隣り合う4面体同士において共有されている。特に図示しないが、ドーパント39は、例えば、概略、ケイ素の原子に代わるようにして酸素原子と結合している。そのような構造は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いることによって観察可能である。
ドーピング部35におけるドーパント39の濃度は、適宜に設定されてよい。例えば、ドーピング部35において、ドーパント39の濃度は、1×1016(原子数/cm3)以上又は1×1018(原子数/cm3)以上である。この濃度は、意図せずに水晶に混入する不純物の濃度よりも高い。また、後述する効果を増大させる観点からは、例えば、ドーパント39の濃度は、1×1020(原子数/cm3)以上である。なお、単位体積当たりの原子数は、例えば、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)によって測定されてよい。
本実施形態では、ドーピング部35は、水晶片15(メサ部31)の厚さ全体に亘っているが、後述するように(図12(a))、水晶片15の表面にのみ設けられていてもよい。この場合であっても、例えば、数nmの深さ方向分解能を有する装置によってSIMSを行うことなどによって、ドーパント39の濃度を測定可能である。
ドーピング部35が極めて薄い場合においては、全反射蛍光X線(TXRF:Total Reflection X-ray Fluorescence)法によってドーパント39の濃度を測定してもよい。一般に、十分に洗浄がなされている水晶ウェハ(ドーピング無し)について、TXRF法によって測定される表面の不純物の量は、1×109〜1×1012(原子数/cm2)である。従って、ドーピング部35におけるドーパント39の濃度は、例えば、1×1013(原子数/cm2)以上である。
また、ドーピング部35において、ドーパント39の質量は、例えば、ドーピング前の水晶の質量に対して、10%以上30%以下とされてもよい。なお、この場合、ドーパント39の濃度は、上記の1×1016(原子数/cm3)の濃度に比較して十分に高くなる。
非ドーピング部37は、理想的には、ドーパント39を含んでいない。ただし、実際には、ドーピング部35に対してドーピングを行う過程において、意図せず非ドーピング部37に対してもドーパント39が添加されることがある。
従って、例えば、本開示において、非ドーピング部37は、ドーパント39の濃度が上述したドーピング部35におけるドーパント39の濃度よりも低い部分を言うものとする。例えば、ドーパント39の濃度が1×1016(原子数/cm3)未満の部分は、非ドーピング部37である。なお、非ドーピング部37において、ドーピング部35よりもドーパントの濃度が低いという場合、非ドーピング部37においてドーパント39が含まれていない状態を含むものとする。
また、例えば、水晶片15の製造過程に着目したときに、ドーピングを意図していないことが明らかな部分は、当該部分のドーパントの濃度に関わらずに、非ドーピング部37とみなされてもよい。ただし、通常、ドーピングが意図されていない部分におけるドーパント39の濃度は、上述したドーピング部35におけるドーパント39の濃度よりも低い。
(水晶振動素子の製造方法の概略)
図4は、振動素子5の製造方法の手順の概要の一例を示すフローチャートである。また、図5(a)及び図5(b)は、水晶片15が多数個取りされる水晶ウェハ51(以下、「水晶」は省略することがある。)の一部を示す平面図である。なお、以下では、製造工程の進行に伴って部材の形状乃至は材質等が変化しても、変化の前後で同じ符号を用いることがある。
ステップST1では、水晶からなる(ドーパント39を含まない)ウェハ51が準備される。なお、ここでいうウェハは、水晶片15が多数個取りされる板状のものであればよく、円盤状でなくてもよい。例えば、ウェハ51の平面形状は、矩形であってもよい。
ウェハ51の準備は、例えば、公知の方法と同様でよい。具体的には、例えば、人工水晶に対してランバード加工及びスライシングを行うことによって、図1を参照して説明した角度でウェハが切り出される。さらに、その切り出されたウェハに対してラッピング、エッチング及び/又はポリッシングを行うことにより、互いに平行な1対の主面を有するウェハ51が形成される。
なお、このように形成されたウェハ51は、基本的に不純物を含んでいない。現実には、意図せずに含まれてしまう不純物は存在する。ただし、一般的な製造方法においては、ケイ素よりも原子量が大きい周期表第4属の元素は不純物として存在しない。
ステップST2では、ウェハ51のうちドーピング部35となる部分に対してドーピングを行う。なお、非ドーピング部37となる部分に対しては、ドーピングは行われない。ウェハ51のうち、後述するエッチングによって除去される部分については、例えば、ドーピングは行われない。ただし、ドーピングが行われてもよい。
ステップST3では、図5(a)に示すように、ウェハ51の1対の主面上に、ウェハ51のエッチングのための第1マスク53(ハッチングして示す領域)を形成する。第1マスク53は、水晶片15の外形(外周部33の側面)を形成するエッチングに用いられるものであり、水晶片15の平面形状と概ね同様の平面形状をそれぞれ有する複数の外形マスク部53aと、複数の外形マスク部53a間に位置している枠部53bと、複数の外形マスク部53aと枠部53bとを接続している複数の接続部53cとを有している。接続部53cは、例えば、外形マスク部53aに対して、+X軸方向(別の観点では引出電極19側)の短辺の両端に対応する位置に接続されている。
第1マスク53は、例えば、金属膜とその上に重なるレジスト膜との組み合わせからなる。金属膜は、例えば、クロムからなる。レジスト膜は、ポジ型及びネガ型のいずれのフォトレジストであってもよい。これらの形成は、公知の方法と同様でよい。例えば、まず、スパッタリング法等によりウェハ51の主面上にその全面に亘って金属膜を形成する。次に、スピンコート法等により金属膜上にその全面に亘ってレジスト膜を形成する。次に、フォトリソグラフィーによってレジスト膜を図5(a)に示す形状にパターニングする。次に、レジスト膜を介して金属膜をエッチングし、金属膜を図5(a)に示す形状にパターニングする。これにより、第1マスク53が形成される。なお、その後、レジスト膜を除去して金属膜のみによって第1マスク53を構成してもよい。
ステップST4では、第1マスク53を介してウェハ51に対してウェットエッチングを行う。例えば、薬液を収容している液槽にウェハ51を浸す。このエッチングは、第1マスク53の開口の直下において、ウェハ51に貫通孔が形成されるまで行われる。これにより、外形マスク部53aの直下に、水晶片15の平面形状と概ね同様の平面形状をそれぞれ有する複数の水晶片部55(図5(b))が形成される。ただし、複数の水晶片部55は、ウェハ51のうち接続部53c及び枠部53bの直下の部分を介して互いに接続されている。
ステップST5では、ウェハ51から第1マスク53が除去される。例えば、ウェハ51は、第1マスク53を除去するための適宜な薬液に浸される。
ステップST6では、図5(b)に示すように、ウェハ51の1対の主面上に、水晶片部55のエッチングのための第2マスク57(ハッチングして示す領域)を形成する。第2マスク57は、水晶片部55をメサ型にするエッチングに用いられるものであり、メサ部31の平面形状と概ね同様の平面形状をそれぞれ有する複数のメサマスク部57aと、第1マスク53の枠部53b及び接続部53cと同様の形状を有する枠部57b及び接続部57cとを有している。なお、第2マスク57の構成及び形成方法は、具体的な平面形状等を除いては、概略、第1マスク53と同様でよい。
ステップST7では、第2マスク57を介してウェハ51に対してウェットエッチングを行う。例えば、薬液を収容している液槽にウェハ51を浸す。このエッチングは、ステップST4とは異なり、ウェハ51に貫通孔が形成されるまでは行われず、第2マスク57の開口直下において、水晶片部55のエッチング量(外周部33の掘り込み量)が所望の値に達するまで行われる。そして、外周部33となる領域において水晶片部55が掘り込まれ、メサ部31及び外周部33が形成される。
ステップST8では、ウェハ51から第2マスク57が除去される。例えば、ウェハ51は、第2マスク57を除去するための適宜な薬液に浸される。
ステップST9では、各水晶片部55に1対の励振電極17及び1対の引出電極19を形成する。これらの導電層の形成方法は、例えば、公知の方法と同様でよい。具体的には、例えば、これらの導電層は、マスクを介して導電材料が成膜されることにより形成され、又は導電材料が成膜された後にマスクを介してエッチングされることにより形成される。
ステップST10では、ウェハ51のうち第2マスク57の枠部57bの直下に位置していた部分から複数の水晶片部55を分離する。例えば、水晶片部55を押圧又は吸引して、ウェハ51のうち第2マスク57の接続部57cの直下に位置した部分を折る。これにより、個片化された複数の振動素子5が作製される。
(ドーピング)
図6は、図4のステップST2における(広義の)ドーピングの手順の一例を示すフローチャートである。ドーピングは、例えば、具体的な条件を除けば、半導体に対するドーピングと同様になされてよい。例えば、以下のとおりである。
ステップST21では、ウェハ51の1対の主面上に選択マスク61(図7(a)〜図7(d))を形成する。選択マスク61は、ドーピングがなされない領域(例えばドーピング部35となる部分以外)を覆うように形成される。
選択マスク61の形成方法は、半導体に対するドーピングの分野等で公知の方法と同様とされてよい。例えば、まず、ウェハ51の有機洗浄を行う。次に、CVD(chemical vapor deposition)等によって選択マスク61となるマスク材をウェハ51の主面の全面に成膜する。選択マスク61の材料は、例えば、窒化ケイ素(Si3N4)又は二酸化ケイ素(SiO2)である。CVDは、一般的なプラズマCVDの他、TEOS(tetraethoxysilane)を用いるものであってもよい。次に、マスク材上にレジスト膜を成膜する。次に、フォトリソグラフィーによって、ドーピングがなされる領域(ドーピング部35)のみにおいて開口を有する形状にレジスト膜をパターニングする。次に、レジスト膜を介してマスク材をエッチングし、マスク材をレジスト膜と同一形状にパターニングする。その後、レジスト膜の除去及びウェハ51の洗浄を行う。
ステップST22では、選択マスク61を介して(狭義の)ドーピングを行う。選択マスク61は、ドーピングが行われる領域のみに開口を有しているから、これにより、ウェハ51に対して選択的にドーピングが行われる。ひいては、水晶片15には、ドーピングがなされたドーピング部35と、ドーピングがなされない非ドーピング部37とが設けられる。
ステップST23では、選択マスク61を除去する。例えば、まず、ウェハ51の有機洗浄を行う。次に、ドライエッチング又はウェットエッチングによって選択マスク61を除去する。その後、純水によるリンス等を行ってウェハ51を洗浄する。
図7(a)〜図7(d)は、それぞれ、ステップST22における狭義のドーピングの例を示す模式図である。なお、ステップST22は、ウェハ51に対して行われる処理であるが、この模式図では、ウェハ51は、1つの開口(1つのドーピング部35)に対応する部分のみが示されている。
図7(a)は、イオン注入(イオン打ち込み)によってドーピングを行う例を示す模式図である。この例では、例えば、イオン注入装置63によってイオン化されたドーパント39を加速してウェハ51に衝突させる。イオン注入装置63は、例えば、特に図示しないが、イオンを生成するイオン源、電圧印加によってイオンを加速する加速器、イオンから注入する対象のみを選択する質量分析器、イオンビームを整形するレンズ等を有している。
図7(b)は、熱拡散によってドーピングを行う例を示す模式図である。この例では、例えば、ドーパント39となる元素を含む金属65をウェハ51に当接させた状態で、ファーネス67によってウェハ51及び金属65を加熱する。金属65は、ドーパント39となる元素のみからなるものであってもよいし、当該元素を含む合金であってもよい。また、金属65は、スパッタリング等の薄膜形成法によってウェハ51上に設けられてもよいし、金属板をウェハ51上に配置することによって設けられてもよい。
図7(c)は、電子ビーム注入によってドーピングを行う例を示す模式図である。この例では、例えば、ドーパント39となる元素を含む金属65をウェハ51上に配置した状態で、電子銃68によって電子69を加速して金属65に衝突させる。なお、熱拡散の場合と同様に、金属65は、ドーパント39となる元素のみからなるものであってもよいし、当該元素を含む合金であってもよく、また、薄膜形成法によって設けられてもよいし、金属板を配置することによって設けられてもよい。
図7(d)は、電圧印加によってドーピングを行う例を示す模式図である。この例では、例えば、ドーパント39となる元素を含む1対の金属65をウェハ51の両主面に配置した状態で、電源装置71によって1対の金属65に電圧(例えば直流電圧又は交流電圧)を印加する。なお、熱拡散の場合と同様に、金属65は、ドーパント39となる元素のみからなるものであってもよいし、当該元素を含む合金であってもよく、また、薄膜形成法によって設けられてもよいし、金属板を配置することによって設けられてもよい。ウェハ51及び金属65は、適宜に加熱されていてよい。加熱により、電圧印加によるドーピングが促進される。
上記の例の他、特に図示しないが、例えば、クラスタドーピング、プラズマドーピング、レーザドーピングによってドーピングが行われてもよい。ドーピングは、ウェハ51の一方の主面からのみ行われてもよいし、ウェハ51の両主面に対して同時に行われてもよいし、ウェハ51の両主面に対して順次に行われてもよい。電圧を印加する方法(図7(d))においても、例えば、一方の主面に2つ以上の金属65を設けて当該2つ以上の金属65に電圧を印加することによって、一方の主面においてのみドーピングを行うことが可能である。
以上のとおり、本実施形態では、水晶振動素子5は、水晶片15と、1対の励振電極17とを有している。水晶片15は、1対の主面を有している。励振電極17は、水晶片15の1対の主面の外縁から離れて当該1対の主面上に位置している。水晶片15は、ドーピング部35と、非ドーピング部37とを有している。ドーピング部35は、ケイ素よりも原子量が大きい周期表第14族の元素からなるドーパント39を含む。非ドーピング部37は、ドーパント39の濃度がドーピング部35よりも低い(既に述べたようにドーパント39を含まない態様を含む)。ドーピング部35は、少なくとも一部(本実施形態では全部)が1対の励振電極17間に位置している。
別の観点では、本実施形態では、水晶振動子1は、上記のような振動素子5と、振動素子5が実装されているパッケージ8と、を有している。
従って、例えば、等価直列抵抗が低下する。その結果、例えば、消費電力の低減と振動素子5の小型化との両立が容易化される。1対の励振電極17の間にケイ素よりも原子量が大きい周期表第14族の元素からなるドーパント39を添加することによって等価直列抵抗が低下する理由としては、例えば、以下のものが挙げられる。ケイ素よりも原子量が大きいドーパント39がケイ素に代わって酸素と結合すると、原子間距離が短くなり、電子移動度及び/又は正孔移動度が高くなる。その結果、等価直列抵抗が低下する。また、ドーピング部35においては電気機械結合係数が大きくなり、その結果、等価直列抵抗が低下する。つまり、ドーピング部35の少なくとも一部が1対の励振電極間に位置していることにより、励振に寄与している水晶部分にドーピングされていることになるので、等価直列抵抗が低下する。
図8は、本実施形態の他の作用乃至は効果を説明するための図である。同図において、横軸は周波数fを示し、縦軸はインピーダンスの絶対値|Z|(以下、単に「インピーダンス」ということがある。)を示している。線L0は、比較例の水晶振動素子の特性を示している。線L1は、実施例の水晶振動素子の特性を示している。比較例は、実施例に対して、水晶片15にドーパント39が添加されていないものである。その他の条件については、比較例と実施例とで同様である。ドーパント39は、Geである。図8は、シミュレーション計算によって得られている。
この図に示すように、比較例及び実施例とも、インピーダンスが極小となる共振点(共振周波数fr0及びfr1)及びインピーダンスが極大となる反共振点(反共振周波数fa0及びfa1)が現れている。ただし、実施例の共振点(fr1)は、比較例の共振点(fr0)に比較して、周波数が高くなり、また、インピーダンスが低くなる。また、実施例の反共振点(fa1)は、比較例の反共振点(fa0)に比較して、周波数が高くなり、また、インピーダンスが高くなる。また、実施例の共振周波数と反共振周波数との周波数差Δf1(=fa1−fr1)は、比較例の周波数差Δf0(=fa0−fr0)に比較して大きくなっている。
実施例は、比較例に比較して、共振周波数及び反共振周波数が高くなっていることから、水晶片15は、ドーパント39の添加によって振動しやすくなっていることがわかる。また、実施例は、比較例に比較して、インピーダンスの極小値が小さく、又はインピーダンスの極大値が大きくなっていることから、ドーパント39の添加によって振幅が大きくなっていることがわかる。実施例は、比較例に比較して、共振周波数と反共振周波数との周波数差が大きくなっていることから、ドーパント39の添加によって電気機械結合係数が大きくなっていることがわかる。
振動素子5は、一般に、周波数が高いほど小型化される。一方、実施例は、比較例に比較して共振周波数が高い。従って、例えば、ドーパント39を添加することによって、小型化せずに周波数が高い振動素子5を実現することができ、設計の自由度が向上する。また、実施例は、比較例に比較して、共振点のインピーダンスが小さくなっていることから、例えば、好適に共振を生じさせやすく、ひいては、発振信号を得ることが容易化される。また、実施例は、比較例に比較して、共振周波数と反共振周波数との周波数差が大きいことから、例えば、負荷容量によって発振信号の周波数を調整することが容易である。
また、本実施形態では、ドーパント39は、例えば、ゲルマニウムである。
ゲルマニウムの格子定数(5.66Å)は、水晶におけるa軸の格子定数(4.913Å)及びc軸の格子定数(5.4046Å)のいずれに対しても大きい。従って、上述した原子間距離が短くなり、移動度が高くなる効果が好適に奏される。ひいては、等価直列抵抗を好適に低下させることができる。
また、本実施形態では、非ドーピング部37は、水晶片15の1対の主面間(例えば外周部33の主面間)に亘り、かつ平面視においてドーピング部35の半周以上(本実施形態では全周)に亘ってドーピング部35を囲む部分を含んでいる。
従って、ドーピング部35は、その周囲に比較して相対的に導電率及び電気機械結合係数が大きくなる。その結果、ドーピング部35におけるエネルギー閉じ込め効果が向上する。
また、本実施形態では、水晶片15は、メサ部31と、外周部33とを有している。メサ部31は、ドーピング部35の少なくとも一部(本実施形態では全部)を含んでいる。外周部33は、平面視においてメサ部31を囲んでおり、メサ部31よりも薄く、非ドーピング部37の少なくとも一部(本実施形態では大部分)を含んでいる。
従って、例えば、メサ型であることによるエネルギー閉じ込め効果と、1対の励振電極17間にドーピング部35が設けられ、その周囲に非ドーピング部37が位置していることによるエネルギー閉じ込め効果とが奏される。その結果、例えば、等価直列抵抗が低下する。
ドーピング部35は、平面視においてメサ部31の頂面(主面)に収まっている。非ドーピング部37は、外周部33とメサ部31の頂面とをつなぐメサ部31の側面を含んでいる。
従って、例えば、メサ部31の外縁部(メサ部31の側面を含む)から外周部33へ振動が漏れるおそれが低減され、ひいては、等価直列抵抗が低下する。また、例えば、エネルギーが閉じ込められる範囲は、メサ部31の側面に加えて又は代えて、ドーピング部35によって規定されることになる。その結果、例えば、メサ部31の側面における加工誤差が振動素子5の振動特性に及ぼす影響が低減される。また、水晶片15は、ドーパント39が添加されることによって、結晶面の現れ方及び/又はエッチングレートが変化する。従って、例えば、エッチングによって構成されるメサ部31の側面を非ドーピング部37によって構成することによって、従来のエッチングのノウハウを利用することが容易になる。
また、本実施形態では、振動素子5は、1対の励振電極17から延びる1対の引出電極19を更に有している。非ドーピング部37は、水晶片15の1対の主面間(例えば外周部33の1対の主面間)に亘っており、かつ平面透視したときに1対の引出電極19の9割以上に重なる部分を含んでいる。
従って、1対の引出電極19に電圧が印加されても、引出電極19下にドーピング部35が位置している場合に比較して、振動漏れが生じるおそれが低減される。その結果、水晶片15の振動特性が向上する。
また、本実施形態では、振動素子5の製造方法は、エッチング工程(ST3〜ST8)と、導電層形成工程(ST9)と、個片化工程(ST10)と、を有している。エッチング工程では、ケイ素よりも原子量が大きい周期表第14族の元素からなるドーパント39を少なくとも一部に含む水晶ウェハ51をエッチングして、複数の水晶片部55を形成する。導電層形成工程では、複数の水晶片部55に複数の励振電極17を形成する。個片化工程では、複数の励振電極17が形成された複数の水晶片部55を個片化する。
従って、例えば、上述した種々の効果を奏する振動素子5を実現することができる。また、例えば、エッチングに先立ってウェハ51にドーパント39が添加されているから、エッチング後にドーピングを行う態様(この態様によって本開示の振動素子5が実現されてもよい。)に比較して、エッチングによって現れた側面からドーピングがなされることはなく、主面のみからドーピングを行うことができる。その結果、例えば、ドーパント39の濃度及び範囲の制御が容易である。
また、本実施形態に係る製造方法は、エッチング工程の前に、ウェハ51にドーパント39を添加するドーピング工程を更に備えている。
従って、例えば、水熱合成によって結晶を成長させる過程において人工水晶にドーパント39を添加する態様(本開示に係る製造方法はこの態様を含んでもよい。)に比較して、ドーパント39の添加が容易である。また、水晶片15に対して局所的にドーピングを行うことが容易であり、上述した種々の効果を奏する振動素子5を実現することが容易である。
また、ドーピング工程では、例えば、ドーパント39を含む金属65をウェハ51に当接させた状態でウェハ51及び金属65を加熱する。
従って、例えば、比較的安価にドーピングを行うことができる。また、例えば、結晶構造を維持して、ケイ素にドーパント39を置換した構造を得ることが容易である。その結果、例えば、意図しない特性が現れるおそれを低減して、上述した原子間距離が短くなることによる効果等を好適に得ることができる。
また、ドーピング工程では、例えば、ドーパント39を含む金属65をウェハ51に当接させた状態で金属65に電圧を印加する。
従って、例えば、比較的安価にドーピングを行うことができる。また、熱拡散と同様に、結晶構造を維持して、ケイ素にドーパント39を置換した構造を得ることが容易である。
また、(広義の)エッチング工程(ST3〜ST8)は、複数の水晶片部55のそれぞれにおける外周部33をエッチングして、複数の水晶片部55のそれぞれにおいて、メサ部31と、平面視においてメサ部31を囲み、メサ部31よりも薄い外周部33とを形成するメサエッチング工程(ST7)を含む。ドーピング工程では、メサ部31となる領域に対してドーパント39をドーピングする。
従って、例えば、上述のドーピング部35がメサ部31に位置することによって種々の効果を奏する振動素子5が実現される。また、例えば、エッチングがなされる外周部33においてはドーピングを行わないことから、ドーパント39の無駄が低減される。
<第2実施形態>
図9(a)は、第2実施形態に係る振動素子205の構成を示す斜視図である。
振動素子205は、基本的に、メサ型でない点のみが第1実施形態の振動素子5と相違する。具体的には、以下のとおりである。
振動素子205は、振動素子5と同様に、水晶片215と、水晶片215の一対の主面に位置する1対の励振電極17と、1対の励振電極17から引き出された1対の引出電極19とを有している。
水晶片215は、第1実施形態の水晶片15と形状(及び寸法)のみが相違する。具体的には、水晶片215は、その全体に亘って厚さが一定の板状とされている。水晶片215の平面形状は、例えば、水晶片15の外縁の形状と同様に、長方形である。長方形の角部が平面又は曲面で面取りされたり、長辺及び/又は短辺が外側に膨らむ弧状とされていたり、対向する2辺同士の長さが互いに異ならされていたりしてもよいことも水晶片15と同様である。
励振電極17及び引出電極19は、その符号から理解されるように、第1実施形態の励振電極17及び引出電極19と同様のものである。ただし、水晶片215の形状(及び寸法)が第1実施形態の水晶片15と異なることに付随して、寸法等に関して若干の相違があってもよい。
図9(b)及び図9(c)は、水晶片215の材料を説明するための模式図であり、第1実施形態の図3(a)及び図3(b)と同様の図である。具体的には、図9(a)は平面図であり、図9(c)は、図9(b)のIXc−IXc線における断面図である。
水晶片215は、水晶片15と同様に、水晶に対して部分的にドーパント39が添加されることによって構成されており、ドーピング部235と、非ドーピング部237とを有している。
ドーピング部235及び非ドーピング部237は、水晶片215の形状が第1実施形態の水晶片15と相違することに伴って第1実施形態のドーピング部35及び非ドーピング部37と形状が異なる以外は、ドーピング部35及び非ドーピング部37と同様のものである。
水晶片215においてドーピング部235(非ドーピング部237)の範囲は、メサ部31との関係が規定されないことを除けば、第1実施形態と同様である。例えば、ドーピング部235は、1対の励振電極17間において水晶片215の厚み全体に亘って設けられており、その平面形状及び広さは、一の励振電極17と概ね同様(例えば、両者の面積の差は、一の励振電極17の面積の1割未満)である。非ドーピング部237は、水晶片215においてドーピング部235以外の領域であり、平面透視において1対の引出電極19の概ね全体(例えば9割以上)に重なっている。
なお、振動素子205の製造方法は、例えば、水晶片部55をメサ型にするための工程(ST6〜ST8)が不要である点を除いて、第1実施形態の振動素子205の製造方法と同様でよい。
以上のとおり、本実施形態においても、水晶片215は、ドーピング部235と、非ドーピング部237とを有し、ドーピング部235は、ケイ素よりも原子量が大きい周期表第14族の元素からなるドーパント39を含む。ドーピング部235の少なくとも一部(本実施形態では全部)は、1対の励振電極17間に位置している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、等価直列抵抗が低下する。
<第3実施形態>
(振動素子の構成)
図10(a)は、第3実施形態に係る水晶片315の材料を説明するための模式的な平面図であり、第2実施形態の図9(b)に対応する図である。なお、水晶片315を含む振動素子305において、1対の励振電極17及び1対の引出電極19(図10(a)において点線で示す)は、第2実施形態のものと同様である。
水晶片315は、ドーパント39が添加される平面視における範囲のみが第2実施形態の水晶片215と相違する。具体的には、水晶片315は、第2実施形態で説明したドーピング部235に加えて、水晶片315の外縁に位置しているドーピング部336A及び336B(以下、A及びBを省略することがある。)を有している。
ドーピング部336は、平面視における配置範囲を除いて、既に説明した他のドーピング部35等と同様のものである。なお、本実施形態のように、一つの水晶片内において、複数のドーピング部が設けられている場合、その厚み方向におけるドーピング部の配置範囲及びドーパント39の濃度は、例えば、複数のドーピング部同士で同一である。ただし、これらは異なっていてもよい。
ドーピング部336は、例えば、水晶片315の外縁のうち、1対の引出電極19(図10(a)において点線で示す)と重なる部分を除いて、全周に亘って位置している。別の観点では、ドーピング部336A及び336B全体、又はドーピング部336Aは、例えば、水晶片315の外縁の2/3周以上に亘っている。
ドーピング部336Bは、水晶片315の外縁のうち1対の引出電極19の間となる部分に位置している。本実施形態では、矩形状の水晶片315の4辺のうち1つの短辺に1対の引出電極19が位置しているから、ドーピング部336Bは、前記短辺の中央側に位置している。
ドーピング部336Aは、水晶片315の外縁のうち1対の引出電極19の外側となる部分に位置している。本実施形態では、矩形状の水晶片315の4辺のうち1つの短辺に1対の引出電極19が位置しているから、ドーピング部336Aは、前記短辺とは別の短辺全体と、2つの長辺のうち前記別の短辺側の部分とに位置している。
ドーピング部336は、その全周に亘ってドーピング部235から離れており、ドーピング部235とドーピング部336との間には非ドーピング部337が介在している。別の観点では、ドーピング部336の幅は、例えば、ドーピング部336の全周に亘って、励振電極17(ドーピング部235)と水晶片315の外縁との距離よりも狭い。ドーピング部336の幅は、例えば、5μm以上20μm以下である。ドーピング部336の幅は、全周に亘って一定であってもよいし(図示の例)、位置に応じて変化してもよい。ドーピング部336A及び336Bは、互いに同一の幅であってもよいし、異なっていてもよい。
非ドーピング部337は、水晶片315のうちドーピング部235及び336以外の部分であり、第2実施形態と同様に、ドーピング部235を半周以上(図示の例では全周)に亘って囲んでいるとともに、平面透視において1対の引出電極19の概ね全体(例えば9割以上)に重なっている。
(振動素子の製造方法)
以下の説明では、便宜上、第1実施形態に係る製造方法で用いた符号(51又は61等)を形状又は材質の相違に関わらずに用いることがある。
振動素子305の製造方法は、基本的には、第2実施形態と同様であり、第1実施形態の製造方法からメサ形状を形成するためのエッチング(ST6〜ST8)を省略したものである。ただし、ステップST2のドーピングにおいて、選択マスク61(ステップST21)の平面形状が第2(第1)実施形態と相違する。すなわち、本実施形態では、選択マスク61は、ドーピング部235及び336に対応する部分に開口を有しており、これにより、ドーピング部235及び336が形成される。
選択マスク61のドーピング部336に対応する開口の平面形状は、ドーピング部336の平面形状と同様であってよい。また、前記開口の平面形状は、ドーピング部336の平面形状を外側へ幅広にした形状であってもよい。すなわち、ウェハ51は、複数の水晶片部55の周囲に位置する捨て代(エッチングによって除去される領域)においてもドーパント39が添加されてよい。この場合であっても、ドーピング部336が実現される。
図10(b)及び図10(c)は、ステップST4の外形エッチングを説明するための模式図であり、第1マスク53が形成されたウェハ51の断面を図10(a)のXc−Xc線に対応する領域において示している。
これらの図において示す例では、上記のように捨て代51d(図10(b))においてもドーパント39が添加された場合の状態を示している。図示の例では、捨て代51dにおけるドーピング部(符号省略)は、水晶片315となる領域の外縁から所定量外側に広がるように形成されており、捨て代51dには非ドーピング部(符号省略)が存在している。ただし、ドーピング部は、捨て代51dの全体に亘って形成されていてもよい。
このような場合においては、第1マスク53の縁部がドーピング部に位置し、エッチングによって形成される側面は、ドーピング部336に形成される。なお、第1マスク53の縁部は、理想的には、エッチングされる領域とエッチングされない領域との境界に一致する。ただし、アンダーカット(アンダーエッチング)の影響等によって必ずしもこの限りではない。図示とは異なり、第1マスク53の縁部は非ドーピング部に位置し、エッチングされる領域とエッチングされない領域との境界は、アンダーカット等によって第1マスク53の縁部よりも最終的に内側に位置し、これによりドーピング部に位置してもよい。
以上のとおり、本実施形態においても、水晶片315は、ドーピング部235と、非ドーピング部337とを有し、ドーピング部235は、ケイ素よりも原子量が大きい周期表第14族の元素からなるドーパント39を含む。ドーピング部235の少なくとも一部(本実施形態では全部)は、1対の励振電極17間に位置している。従って、第1及び第2実施形態と同様の効果が奏される。例えば、等価直列抵抗が低下する。
また、本実施形態では、水晶片315は、平面視において1対の引出電極19間に位置し、非ドーピング部337に比較してドーパント39の濃度が高いドーピング部336Bを有している。
従って、例えば、電圧が印加される1対の引出電極19下においては非ドーピング部337によって振動漏れを低減しつつ、その間においては不要な振動の散乱によってスプリアスを低減することができる。また、例えば、捨て代51dにドーピング部を形成する製造方法を適用することができる。
また、本実施形態では、水晶片315は、水晶片315の外縁の2/3周以上に亘って水晶片315の外縁に位置し、ドーピング部235との間に非ドーピング部337を介在させており、非ドーピング部337に比較してドーパントの濃度が高いドーピング部336A(又は336全体)を有している。
従って、例えば、非ドーピング部337によってドーピング部235からの振動漏れを低減しつつ、水晶片315の外縁においては不要な振動の散乱によってスプリアスを低減することができる。また、例えば、捨て代51dにドーピング部を形成する製造方法を適用することができる。
また、本実施形態においても、振動素子5の製造方法は、エッチング工程(ST3〜ST5)と、導電層形成工程(ST9)と、個片化工程(ST10)と、を有している。エッチング工程では、ケイ素よりも原子量が大きい周期表第14族の元素からなるドーパント39を少なくとも一部に含む水晶ウェハ51をエッチングして、複数の水晶片部55を形成する。従って、第1実施形態の製造方法と同様の効果が奏される。例えば、エッチングに先立ってウェハ51にドーパント39が添加されているから、エッチングによって現れた側面からドーピングがなされるおそれが低減される。
また、本実施形態では、ドーピング工程(ST2)では、ウェハ51のうち複数の水晶片部55の縁部となる領域にドーパント39を添加する。エッチング工程(ST4)では、ドーパント39が添加されている部分によって水晶片部55の側面を形成する。
従って、例えば、まず、上述した水晶片315の縁部にドーピング部336が設けられた振動素子305が実現される。また、ドーピング部によって側面が形成されることから、残渣を低減したり、エッチング時間を短くしたりすることが可能となる。具体的には、以下のとおりである。
ドーパントを含まない水晶のエッチングにおいては、水晶のエッチングに対する異方性に起因して、エッチングによって形成される側面に結晶面が現れたり、当該側面の残渣を低減するためにエッチング時間を長くしたりする必要がある。一方、ドーピング部のエッチングにおいては、結晶面の現れ方及び/又はエッチングレートが変化する。具体的には、例えば、ドーパント39が含まれていることによってエッチングに対する異方性が緩和され、及び/又はエッチングレートが速くなる。その結果、残渣を所定の許容量以下に収めるためのエッチング時間が短縮される。
なお、図10(a)〜図10(c)では、第2実施形態のようにメサ型でない水晶片において、水晶片の外縁に位置するドーピング部336を設けた態様について説明したが、このようなドーピング部336は、第1実施形態のようにメサ型の水晶片に対して適用されてもよい。
<第4実施形態>
(振動素子の構成)
図11(a)は、第4実施形態に係る水晶片415の材料を説明するための模式的な平面図であり、第1実施形態の図3(a)に対応する図である。なお、水晶片415を含む振動素子405において、1対の励振電極17及び1対の引出電極19(ここでは不図示)は、第1実施形態のものと同様である。
水晶片415は、ドーパント39が添加される平面視における範囲のみが第1実施形態の水晶片15と相違する。具体的には、以下のとおりである。
水晶片415は、1対の励振電極17間に位置するドーピング部435を有している。ドーピング部435は、平面視における配置範囲を除いて、第1実施形態のドーピング部35と同様のものであり、メサ部31に少なくとも一部が位置している。なお、メサ部31及び外周部33の形状及び大きさは、基本的には(例えばドーパント39がエッチングの残渣に及ぼす影響を除いて)、第1実施形態のものと同様である。
ドーピング部435の平面視における広さは、メサ部31と同等又はメサ部31よりも若干(例えば20μm以下)広くなっている。そして、メサ部31の側面は、ドーピング部435によって構成されている。
なお、図1において例示したように、平面視において1対の励振電極17がメサ部31よりも小さい場合においては、ドーピング部435は、1対の励振電極17の全体に重なり、また、1対の引出電極19の一部に重なる。この場合、ドーピング部435と一の励振電極17との面積の差は、第1実施形態と同様に、一の励振電極17の面積の1割未満であってもよいし、これよりも大きくてもよい。なお、1対の励振電極17の広さは、メサ部31の広さ以上とされ、ひいては、ドーピング部435の広さ以上とされてもよい。非ドーピング部437は、水晶片415においてドーピング部435以外の領域であり、例えば、他の実施形態と同様に、平面透視において1対の引出電極19の概ね全体(例えば9割以上)に重なっている。
(振動素子の製造方法)
以下の説明では、便宜上、第1実施形態に係る製造方法で用いた符号(51又は61等)を形状又は材質の相違に関わらずに用いることがある。
振動素子405の製造方法は、基本的に、第1実施形態と同様である。ただし、ステップST2のドーピングにおいて、選択マスク61(ステップST21)の平面形状が第1実施形態と相違する。すなわち、本実施形態では、選択マスク61の開口は、メサ部31となる領域と同等以上の大きさを有しており、これにより、メサ部31の全体(別の観点ではメサ部31の側面)を含むドーピング部435が形成される。
選択マスク61のドーピング部435を形成するための開口の平面形状は、メサ部31の平面形状と同様であってもよいし、メサ部31の平面形状に対して外周部33となる領域側へ広がった形状であってもよい。別の観点では、ウェハ51は、メサエッチング(ST6〜ST8)において掘り下げられる領域においてもドーパント39が添加されてよい。なお、図3(b)に例示したように、メサ部31の側面が、厚み方向において外周部33の主面に近づくほど平面視における外側へ位置するように傾斜している場合においては、ここでいうメサ部31の平面形状は、例えば、外周部33の主面の位置における平面形状であってよい。
図11(b)及び図11(c)は、ステップST6〜ST8のメサエッチングを説明するための模式図であり、第1マスク53が形成された水晶片部55(ウェハ51)の断面を図11(a)のXIc−XIc線に対応する領域において示している。
これらの図において示す例では、ドーパント39は、平面視において外周部33となる領域にまで添加されている。なお、既に述べたように、ドーパント39は、メサ部31となる領域と同等の領域に添加されるだけであってもよい。
このようにドーパント39が添加されている場合においては、第2マスク57の縁部は、ドーピング部に位置する。そして、エッチングによって形成されるメサ部31の側面は、ドーピング部435に形成される。なお、第2マスク57の縁部は、理想的には、エッチングされる領域とエッチングされない領域との境界に一致する。ただし、アンダーカット(アンダーエッチング)の影響等によって必ずしもこの限りではない。第2マスク57の縁部は、非ドーピング部に位置し、エッチングされる領域とエッチングされない領域との境界は、アンダーカット等によって第2マスク57の縁部よりも最終的に内側に位置し、これによりドーピング部に位置してもよい。
以上のとおり、本実施形態においても、水晶片415は、ドーピング部435と、非ドーピング部437とを有し、ドーピング部435は、ケイ素よりも原子量が大きい周期表第14族の元素からなるドーパント39を含む。ドーピング部435の少なくとも一部は、1対の励振電極17間に位置している。従って、第1〜第3実施形態と同様の効果が奏される。例えば、等価直列抵抗が低下する。また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、メサ部31がドーピング部435を含んでいることから、エネルギー閉じ込め効果が向上する。
また、本実施形態においても、振動素子5の製造方法は、エッチング工程(ST3〜ST8)と、導電層形成工程(ST9)と、個片化工程(ST10)と、を有している。エッチング工程では、ケイ素よりも原子量が大きい周期表第14族の元素からなるドーパント39を少なくとも一部に含む水晶ウェハ51をエッチングして、複数の水晶片部55を形成する。従って、第1実施形態の製造方法と同様の効果が奏される。例えば、エッチングに先立ってウェハ51にドーパント39が添加されているから、エッチングによって現れた側面からドーピングがなされるおそれが低減される。
また、本実施形態では、エッチング工程は、メサエッチング工程(ST6〜ST8)を含む。メサエッチング工程は、複数の水晶片部55のそれぞれにおける外周部33をエッチングして、複数の水晶片部55のそれぞれにおいて、メサ部31と、平面視においてメサ部31を囲み、メサ部31よりも薄い外周部33とを形成する。ドーピング工程では、メサ部31となる領域に対してドーパント39を添加する。メサエッチング工程では、ドーパント39が添加されている部分によってメサ部31の側面を形成する。
従って、例えば、まず、上述したメサ部31にドーピング部435が設けられた振動素子405が実現される。また、ドーピング部435によって側面が形成されることから、第3実施形態の製造方法における水晶片315の側面と同様に、残渣を低減したり、エッチング時間を短くしたりすることが可能となる。
なお、図11(a)〜図11(c)では、本実施形態においても、第3実施形態のように、水晶片415の外縁に位置するドーピング部336が設けられてもよい。
<第5実施形態>
図12(a)は、第5実施形態に係る振動素子505の水晶片515の材料を説明するための模式的な断面図である。
振動素子505(水晶片515)は、基本的に、厚み方向(Y′軸方向)におけるドーピング部の範囲のみが第2実施形態の振動素子205(水晶片215)と相違する。具体的には、水晶片515において1対の励振電極17間に位置するドーピング部535A及び535B(以下、A、Bを省略することがある。)は、厚み方向において、水晶片515の主面側にのみ位置している。
各ドーピング部535の厚みは、適宜に設定されてよい。例えば、ドーピング部535の厚みは、水晶片515の厚みをtとしたときに、1nm以上で、(t−10nm)/2以下である。この範囲であれば、例えば、SIMS及び/又はTXRF等によって、水晶片515の主面側にのみドーピング部535が設けられていることを確認可能である。また、ドーピング部535の厚みは、例えば、0.1μm以上である。この範囲であれば、例えば、ドーピング部535による等価直列抵抗の低減等の効果がより確実に奏される。
非ドーピング部537は、水晶片515のうちのドーピング部535以外の部分であり、本実施形態においては、1対の励振電極17間にも位置している。
なお、図示の例では、ドーピング部535は、水晶片515の1対の主面のそれぞれにおいて設けられているが、ドーピング部535は、1対の主面の一方のみに設けられていてもよい。
ドーピング部535の平面視における範囲は、第1〜第4実施形態と同様にされてよい。なお、ドーピング部535が水晶片515の1対の主面のそれぞれにおいて設けられている態様について、例えば、平面透視においてドーピング部535と一の励振電極17との面積差が一の励振電極17の1割未満であるか否かを判定する場合においては、2つのドーピング部535を平面透視の方向へ投影した面積によって判定してよい。後述する第7実施形態等においても同様である。
振動素子505の製造方法は、基本的には、第2実施形態の振動素子205の製造方法と同様でよい。ドーピングの具体的な条件を適宜に調整することによって、ドーピング部535の厚みを設定できる。例えば、イオン注入においては、第2実施形態に比較して、加速電圧を小さくしたり、イオン電流を小さくしたり、及び/又は注入時間を短くしたりすればよい。また、例えば、熱拡散においては、第2実施形態に比較して、拡散時間を短くしたり、及び/又は金属65を薄くしたりすればよい。また、大概のドーピング方法において、ドーピングの時間を比較的短くすれば、本実施形態のドーピング部535を実現できる。
以上のとおり、本実施形態においても、水晶片515は、ドーピング部535と、非ドーピング部537とを有し、ドーピング部535は、ケイ素よりも原子量が大きい周期表第14族の元素からなるドーパント39を含む。ドーピング部535の少なくとも一部(本実施形態では全部)は、1対の励振電極17間に位置している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、等価直列抵抗が低下する。
また、本実施形態では、ドーピング部535は、水晶片515の厚みのうち、1対の主面の少なくとも一方側の一部のみに位置している。
ここで、本実施形態の水晶片515と第2実施形態の水晶片215とで厚さが同一であるとすると、本実施形態のドーピング部535は、第2実施形態のドーピング部235よりも薄いから、ドーピング部自体において生じる効果は第2実施形態よりも低くなる。ただし、非ドーピング部537のうち、ドーピング部535と重なっている部分は、ドーピング部535から受ける圧縮作用によって原子間距離が短くなるから、効果の低減の一部は補償される。一方で、ドーパント39の量及びドーピング工程の負担(電力及び時間等)は、第2実施形態よりも軽減される。
なお、図12(a)では、1対の励振電極17間のドーピング部について、厚さ方向の範囲が水晶片515の主面側の一部である態様を例示したが、他の位置のドーピング部(例えば水晶片の外縁に位置するドーピング部(図10(a)))において、厚さ方向の範囲が水晶片515の主面側の一部であってもよい。厚さ方向の範囲は、複数のドーピング部間で同一であってもよいし、異なっていてもよい。
<第6実施形態>
図12(b)は、第6実施形態に係る振動素子605の水晶片615の材料を説明するための模式的な断面図である。
振動素子605(水晶片615)は、ドーパント39の濃度が厚み方向において変化している点のみが第2実施形態の振動素子205(水晶片215)と相違する。具体的には、例えば、水晶片615のドーピング部635において、ドーパント39の濃度は、1対の主面側ほど高くなっている。
ドーピング部635におけるドーパント39の濃度の変化は、連続的(例えば変化率が一定若しくは変化率の変化が滑らか)なものであってもよいし、段階的(階段的)なものであってもよい。また、ドーピング部635における最も高い濃度及び最も低い濃度も適宜に設定されてよい。
なお、図10(b)のように主面側に比較して厚さ方向中央側のドーパント39の濃度が低く、かつドーパント39の濃度が所定の閾値以上であるか否かによってドーピング部であるか否かを判定する場合において、厚さ方向中央側の濃度が閾値よりも高い場合は本実施形態として捉えられ、低い場合は第5実施形態(図12(a))として捉えられることになる。閾値は、例えば、既述の1×1016(原子数/cm3)若しくは1×1018(原子数/cm3)又は1×1013(原子数/cm2)である。
第2実施形態のようにドーパント39の濃度を厚さ方向において概ね一様にすることを意図していても、濃度の高低は生じ得る。本実施形態のドーピング部635において、高い濃度を低い濃度で割った値は、例えば、1×10(原子数/cm3)以上であり、1×104(原子数/cm3)程度とすることも可能である。
非ドーピング部637は、水晶片615のうちのドーピング部635以外の部分であり、本実施形態においては、第2実施形態の非ドーピング部237と同様の範囲を占めている。
なお、図示の例では、ドーピング部635は、厚さ方向中央側に比較して1対の主面側においてドーパント39の濃度が高くなっているが、1対の主面のうちの一方側に比較して1対の主面の他方側においてドーパント39の濃度が高くなっていてもよい。
振動素子605の製造方法は、基本的には、第2実施形態の振動素子205の製造方法と同様でよい。ドーパント39は、第1実施形態において述べたように、ウェハ51に対してその主面から添加される。
ウェハ51の主面に対してドーピングがなされると、ウェハ51は、主面側から徐々にドーパント39の濃度が高くなっていく。また、ドーパント39の最大濃度は、例えば、ドーピングの種々の条件(電圧又は熱等)によって規定される。従って、例えば、ドーパント39の濃度がウェハ51の厚み方向全体に亘って最大値(別の観点では概ね一様)になる前にドーピングを終了することによって、本実施形態のように厚み方向において濃度が変化するドーピング部635が実現される。
また、両主面からドーピングを行えば、図示の例のように厚さ方向中央側に比較して1対の主面側においてドーパント39の濃度が高いドーピング部635が実現され、一方の主面のみからドーピングを行えば、図示の例とは異なり、他方の主面に比較して前記一方の主面側においてドーパント39の濃度が高いドーピング部が実現される。
以上のとおり、本実施形態においても、水晶片615は、ドーピング部635と、非ドーピング部637とを有し、ドーピング部635は、ケイ素よりも原子量が大きい周期表第14族の元素からなるドーパント39を含む。ドーピング部635の少なくとも一部は、1対の励振電極17間に位置している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、等価直列抵抗が低下する。
また、本実施形態では、ドーピング部635において、ドーパント39の濃度は、水晶片615の1対の主面の少なくとも一方側において水晶片615の厚み方向中央側よりも高い。
ここで、本実施形態のドーピング部635のうちの主面側の部分と、第2実施形態のドーピング部235とでドーパント39の濃度が同一であるとすると、本実施形態のドーピング部635のうちの厚さ方向中央側の部分においては、ドーパント39の濃度が相対的に低いから、当該部分におけるドーパント39により生じる効果は相対的に低くなる。ただし、ドーピング部635のうちの厚さ方向中央側の部分は、ドーピング部635のうちの主面側の部分から受ける圧縮作用によって原子間距離が短くなるから、効果の低減の一部は補償される。一方で、ドーパント39の量及びドーピング工程の負担(電力及び時間等)は、第2実施形態よりも軽減される。また、当該厚さ方向中央側の部分において、ドーパント39の濃度が相対的に低いことから、中央部の機械的強度を維持しつつ、主面側のドーパント濃度を高くすることで、機械的強度を備え、電気機械接合係数を大きくすることができる水晶片615を製造することが可能となる。
水晶成長時にドーパント39を水晶に添加する場合においては、ドーパント39の濃度は概ね一様になる。従って、本実施形態のように、ドーパント39の濃度が厚さ方向において変化している場合、ウェハ51に対してドーピングを行ったこと、すなわち、第1実施形態において説明した製造方法を実施したことを、製品から推定することができる。
なお、図12(b)では、1対の励振電極17間のドーピング部について、ドーパント39の濃度が厚さ方向において変化する態様を例示したが、他の位置のドーピング部(例えば水晶片の外縁に位置するドーピング部(図10(a)))において、ドーパント39の濃度が厚さ方向において変化してもよい。その濃度の変化は、複数のドーピング部間で同一であっても異なっていてもよい。
<第7実施形態>
図12(c)は、第7実施形態に係る振動素子705の水晶片715の材料を説明するための模式的な断面図である。
振動素子705(水晶片715)は、第5実施形態の厚み方向の主面側にのみドーピング部を設ける構成を第1又は第4実施形態のメサ型の水晶片に適用したものである。すなわち、本実施形態は、厚み方向におけるドーピング部の範囲のみが第1又は第4実施形態と相違する。別の観点では、本実施形態は、メサ型である点のみが第5実施形態と相違する。従って、1対の励振電極17間(メサ部31)に少なくとも一部(図示の例では全部)が位置するドーピング部735A及び735B(以下、A及びBを省略することがある。)は、厚み方向において、水晶片715の主面側のみに位置している。
ドーピング部735の厚さは、第5実施形態と同様に、例えば、メサ部31の厚さをtとしたときに、1nm以上で、(t−10nm)/2以下である。また、ドーピング部735の厚さは、メサ部31の主面から外周部33の主面までの掘り込み量Mdに比較して、薄くてもよいし、同等でもよいし(図示の例)、厚くてもよい。
非ドーピング部737は、水晶片715のうちのドーピング部735以外の部分である。ドーピング部735が水晶片715の主面側のみに位置していることにより、第5実施形態と同様に、非ドーピング部737は、1対の励振電極17間にも位置している。
振動素子705の製造方法は、基本的には、第1又は第4実施形態の振動素子の製造方法と同様でよい。また、ドーピング部735は、第5実施形態と同様に、ドーピングの具体的な条件を適宜に設定することによって、水晶片715において主面側にのみ設けられる。例えば、ドーピングの時間は、第1又は第4実施形態よりも短くされる。
なお、ドーピング部735が、第1実施形態と同様に、平面視においてメサ部31の主面(頂面)となる領域に収まっている場合においては、メサ部31の側面は、第1実施形態と同様に、ウェハ51の非ドーピング部のエッチングによって形成される。また、非ドーピング部737は、外周部33の全体、メサ部31の外縁部(メサ部31の側面を含む)、及び1対のドーピング部735の間に位置する。
ドーピング部735が、第4実施形態と同様に、平面視においてメサ部31の広さ(ここでは外周部33の主面の高さにおける広さ)以上であり、かつドーピング部735の厚さが掘り込み量Mdを超える場合においては、メサ部31の側面は、第4実施形態と同様に、ドーピング部のエッチングによって形成される。また、ドーピング部735は、外周部33のメサ部31側かつ外周部33の主面側に位置する。なお、ドーピング部735のメサ部31の頂面からの深さは、メサ部31における部分と外周部33における部分とで同一である。
ドーピング部735が、第4実施形態と同様に、平面視においてメサ部31の広さ(ここでは外周部33の主面の高さにおける広さ)以上であり、かつドーピング部735の厚さが掘り込み量Md以下である場合(図示の例)においては、メサ部31の側面は、全部又は頂面側の一部がドーピング部のエッチングによって形成される。また、メサ部31よりも広い範囲にドーピングがなされたにも関わらず、ドーピング部735は、外周部33に位置しない。
上記のようにドーピング部735の範囲及び厚さに関して3種に分けて説明したが、いずれにせよ、ドーピング部735は、メサ部31の頂面から一定(同一)の深さまでの一部のみに位置する。
ドーピング部735が、平面視においてメサ部31の広さ(外周部33の主面の高さにおける広さ)以上であり、かつドーピング部735の厚さが掘り込み量Md以下である場合においては、選択マスクの作成(ST21)及び選択マスクの除去(ST24)を省略してもよい。この場合であっても、ウェハ51のうちの外周部33に重なる領域のドーピング部はメサエッチングによって除去されるから、図示の例のように外周部33が非ドーピング部737のみによって構成された水晶片715が得られる。
以上のとおり、本実施形態においても、水晶片715は、ドーピング部735と、非ドーピング部737とを有し、ドーピング部735は、ケイ素よりも原子量が大きい周期表第14族の元素からなるドーパント39を含む。ドーピング部735の少なくとも一部は、1対の励振電極17間に位置している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、等価直列抵抗が低下する。
また、ドーピング部735は、水晶片715の主面側にのみ位置するから、第5実施形態と同様の効果が得られる。例えば、非ドーピング部737であっても、ドーピング部735と重なる部分についてはドーピング部735から受ける圧縮作用によって等価直列抵抗を低減できる。
さらに、本実施形態では、ドーピング部735は、水晶片715の厚みのうち、メサ部31の頂面から一定の深さまでの一部のみに位置している。
従って、主面側にのみ位置するドーピング部735と、メサ型とが組み合わされることによる有利な効果が奏される。例えば、ドーピング部735が外周部33まで広がっていたとしても、非ドーピング部737の厚さに対するドーピング部735の厚さの比は、メサ部31の方が外周部33よりも大きくなる(前記の比が外周部33において0の場合を含む)。意図せず非ドーピング部737に広がったドーパント39の濃度についても同様のことが言える。従って、例えば、ドーパント39による作用をメサ部31において相対的に大きくして、エネルギー閉じ込め効果等を増大させることができる。特に、ドーピング部735の厚さが掘り込み量Mdよりも小さい場合においては、ドーピング部735が外周部33に形成されるおそれをより確実に低減できる。
なお、図示の例では、ドーピング部735は、水晶片715の1対の主面のそれぞれにおいて設けられているが、第5実施形態において述べたように、ドーピング部735は、1対の主面の一方のみに設けられていてもよい。
<第8実施形態>
図12(d)は、第8実施形態に係る振動素子805の水晶片815の材料を説明するための模式的な断面図である。
上述の第7実施形態では、第5実施形態における水晶片の主面側にのみドーピング部が設けられる特徴を第1又は第4実施形態のメサ型の振動素子に適用した。これと同様に、本実施形態は、第6実施形態における水晶片の主面側においてドーパント39の濃度が高い特徴を第1又は第4実施形態のメサ型の振動素子に適用したものである。
すなわち、水晶片815において、ドーピング部835は、メサ部31に少なくとも一部(図示の例では全部)が位置しており、厚さ方向の中央側ほどドーパント39の濃度が低くなっている。平面視におけるドーピング部835(非ドーピング部837)の範囲については、第1又は第4実施形態において述べたとおりである。ドーパント39の濃度の厚さ方向における変化は、第6実施形態において述べたとおりである。
振動素子805の製造方法は、基本的には第1実施形態と同様である。ただし、ドーピング(ST2)においては、第6実施形態と同様に、ドーピングの具体的な条件を調整する(例えばドーピングの時間を第1実施形態よりも短くする)ことによって、主面側におけるドーパント39の濃度を厚さ方向中央側におけるドーパント39の濃度に比較して高くする。
以上のとおり、本実施形態においても、水晶片815は、ドーピング部835と、非ドーピング部837とを有し、ドーピング部835は、ケイ素よりも原子量が大きい周期表第14族の元素からなるドーパント39を含む。ドーピング部835の少なくとも一部は、1対の励振電極17間に位置している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、等価直列抵抗が低下する。
また、本実施形態では、第5〜第7実施形態から類推されるように、水晶片815の主面側においてドーパント39の濃度が相対的に高い構成と、メサ型との組み合わせによって、ドーパント39の濃度が相対的に低い厚みに対するドーパント39の濃度が相対的に高い厚みの比を外周部33よりもメサ部31において大きくし、エネルギー閉じ込め効果等を向上させることができる。
<第9実施形態>
以下に説明する本実施形態に係る製造方法によって作製される振動素子は、ドーピング部の平面形状と励振電極17の平面形状とが概ね一致する限り、既に説明したいずれの実施形態の振動素子であってもよい。以下では、メサ型で、かつ厚さ方向の主面側にのみドーピング部が形成される態様を想定して、第7実施形態の符号を用いることがある。
図13は、第9実施形態に係る振動素子の製造方法の手順を説明するためフローチャートである。
ステップST31は、ステップST1と同様の工程であり、説明は省略する。
ステップST32は、振動素子がメサ型であれば、ステップST3〜ST8と同様の工程であり、振動素子が平板状であれば、ステップST3〜ST5と同様の工程であり、説明は省略する。
ステップST33は、基本的にはステップST9と同様のものである。ただし、ステップST33で形成される導電層(少なくとも励振電極17)は、ドーパント39となる元素を含む金属によって形成される。当該金属は、ドーパント39となる元素のみからなるものであってもよいし、ドーパント39となる元素を含む合金であってもよい。合金は、例えば、ドーパント39がゲルマニウムである場合は金ゲルマニウム(Au−Ge)合金である。金ゲルマニウム合金において、ゲルマニウムの割合は、例えば、5質量%以上15質量%以下であり、金の割合は、例えば、100質量%から前記のゲルマニウムの含有量及び不可避に混入する不純物の含有量を引いた値である。
ステップST34では、ドーピングを行う。このように、第1実施形態では、エッチング及び導電層の形成前にドーピングを行ったのに対して、本実施形態では、励振電極17を形成した後にドーピングを行う。
ステップST35は、ステップST10と同様の工程であり、説明は省略する。
図14(a)及び図14(b)は、ステップST34のドーピングを説明するための模式的な断面図である。
これらの図と図7(d)との比較から理解されるように、ステップST34では、図7(d)の金属65に代えて、1対の励振電極17に対して電圧を印加する。これにより、1対の励振電極17に含まれるドーパント39が水晶に添加される。
なお、図示の例では、図7(d)において金属65を励振電極17に置換した態様を示しているが、その他のドーピング方法(例えば熱拡散)において、金属65を励振電極17に置換して、本実施形態の製造方法を実現してもよい。
1対の励振電極17のうち一方のみをドーパント39を含む励振電極17とすれば、一方の主面側にのみドーピング部735を形成することができる。また、励振電極17はドーパント39を含む材料によって形成する一方で、引出電極19はドーパント39を含まない材料によって形成するなど、励振電極17を含む導電層内で材料を異ならせることによって、導電層と重なる領域内においてドーピング部735の範囲を任意に設定することができる。
第5〜第8実施形態において説明したように、ドーピングの具体的な条件(例えばドーピング時間等)を調整することによって、水晶片部55の厚さ方向中央側にもドーピング部を広げつつ、厚さ方向中央側におけるドーパント39の濃度を低くしたり、厚さ方向の全体に亘ってドーピング部を形成したりすることもできる。ただし、水晶片715及び励振電極17の現実的な厚み等を考慮すると、本実施形態の製造方法は、第5又は第7実施形態のように、主面側においてのみドーピング部735を形成する態様への適用が容易である。
以上のとおり、本実施形態の製造方法は、エッチング工程(ST32)と、導電層形成工程(ST33)と、個片化工程(ST35)とを有している。エッチング工程(ST32)では、ウェハ51をエッチングして、複数の水晶片部55を形成する。導電層形成工程では、複数の水晶片部55それぞれの主面の一部に励振電極17を形成する。個片化工程では、複数の励振電極17が形成された複数の水晶片部55を個片化する。複数の励振電極17は、ケイ素よりも原子量が大きい周期表第14族の元素(ドーパント39)を含む。本実施形態の製造方法は、複数の励振電極17に熱及び電圧の少なくとも一方を印加して前記の元素(ドーパント39)を複数の水晶片部55に添加するドーピング工程を更に有している。
従って、例えば、まず、1対の励振電極17間にドーピング部が位置する、第1〜第8実施形態の振動素子を実現することができる。また、励振電極17が含むドーパント39を水晶片に添加することから、例えば、図7(b)又は図7(d)を参照して説明した金属65の配置及び除去は不要である。さらに、選択マスク61の形成及び除去も省略することができる。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
水晶振動素子を有する水晶振動デバイスは、水晶振動子に限定されない。例えば、水晶振動素子に加えて、水晶振動素子に電圧を印加して発振信号を生成する集積回路素子(IC:Integrated Circuit)を有する発振器であってもよい。また、例えば、水晶振動デバイス(水晶振動子)は、水晶振動素子の他に、サーミスタ等の他の電子素子を有するものであってもよい。また、水晶振動デバイスは、恒温槽付のものであってもよい。水晶振動デバイスにおいて、水晶振動素子をパッケージングするパッケージの構造は、適宜な構成とされてよい。例えば、パッケージは、上面及び下面に凹部を有する断面H型のものであってもよい。
水晶振動素子は、厚みすべり振動を利用するものに限定されないし、水晶片は、ATカット板に限定されない。例えば、水晶片は、BTカット板であってもよい。また、水晶片の平面形状は、長方形又はこれに類する形状に限定されない。例えば、水晶片の平面形状は、円形又は楕円形であってもよい。
水晶振動素子は、片持ち梁状に支持されるもの(1対のパッドが一端側に設けられるもの)に限定されず、例えば、両端が支持されるものであってもよい。別の観点では、1対の引出電極は、1対の励振電極から互いに逆側へ引き出されていてもよいし、互いに所定の角度で交差する方向に引き出されていてもよい。
ドーピング部において、ドーパントの濃度は、平面方向において変化してもよい。例えば、選択マスク61を介してドーピングを行う場合において、ドーピングの方法乃至は条件によっては、ドーパント39が選択マスク61の開口から選択マスク61の直下へも侵入する。そこで、ドーピング部を形成する予定の領域よりも選択マスク61の開口を小さくする。これにより、ドーピング部は、平面視において、ドーパントの濃度が相対的に低い領域と相対的に高い領域とを有する。
非ドーピング部は、平面視においてドーピング部と異なる領域に設けられていなくてもよい。例えば、水晶片の厚さ方向の一部においてのみ非ドーピング部が設けられていてもよい。この場合であっても、1対の励振電極間にドーパントが位置していることによって、等価直列抵抗の低下等の効果が得られることに変わりはない。
また、例えば、第7実施形態(図12(c))においては、平面視において水晶片715の全体にドーピング部735が亘っていたとしても、厚さ方向中央側に非ドーピング部737が位置していれば、既に述べたように、メサ部31は、外周部33に比較して、ドーピング部735が厚みに占める割合が大きくなり、エネルギー閉じ込め等の効果が奏される。
また、非ドーピング部が1対の励振電極間に位置しているドーピング部(例えば35)を平面視において囲んでいる場合において、非ドーピング部は、ドーピング部の全周を囲んでいる必要はない。例えば、ドーピング部の外周の少なくとも一部において非ドーピング部が位置していれば、当該非ドーピング部への振動漏れが低減される効果が多少なりとも奏される。ただし、水晶片の1対の主面間に亘る非ドーピング部がドーピング部の半周以上又は全周に亘ってドーピング部を囲んでいれば、より良好にエネルギー閉じ込め効果等の効果が得られる。なお、半周以上か否かは、例えば、平面視においてドーピング部の図形重心又は励振電極の図形重心を中心にして、180°以上の角度範囲に亘って非ドーピング部が位置しているか否かによって判定してよい。