JP6819534B2 - 全固体電池 - Google Patents
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Description
なお、本開示の全固体電池は、必ずしもこの例のみに限定されるものではない。
硫化物固体電解質のイオン伝導度は、1.5mS/cm以上であることが好ましい。硫化物固体電解質のイオン伝導度が、N5555−TFSAのイオン伝導度(0.15mS/cm)の10倍以上であることにより、リチウムイオンの伝導経路がN5555−TFSAの中よりも硫化物固体電解質内部に偏る結果、リチウムデンドライトの成長を十分に抑えることができるためである。
負極層は、金属リチウムを含む負極活物質層の他に、負極集電体を含んでいてもよい。負極集電体の材料は、全固体電池に通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、銅等が挙げられる。
このうち、正極活物質層は、リチウム化合物を含んでいてもよい。リチウム化合物は、通常、正極活物質として使用される。リチウム化合物には、リチウム合金及びリチウム錯体が含まれる。リチウム化合物としては、例えば、Li2S等を用いることができる。
正極活物質層は、硫黄を含んでいてもよい。
導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック等の炭素材料や、金属材料等、リチウム全固体電池に通常使用されるものを用いることができる。
正極活物質層に使用される固体電解質としては、例えば、Li2S−P2S5−LiI系硫化物固体電解質、Li2S−P2S5−LiI−LiBr系硫化物固体電解質等を用いることができる。これらの硫化物固体電解質を用いる場合、Li2S、P2S5及びLiI等の含有比率は特に限定されない。
正極合材のイオン伝導度は、固体電解質層に使用されるN5555−TFSAのイオン伝導度よりも低いことが好ましい。なぜなら、仮に負極側においてリチウムデンドライトが生成した場合にも、正極合材のイオン伝導性が低ければ、リチウムデンドライトが正極側に到達し難くなるためである。
正極合材の調製方法は特に限定されず、例えば、上記正極活物質層用の材料をボールミル等のメカニカルミリングで混合する方法が挙げられる。
全固体電池は、ガラス容器等の外装体に収容した状態で使用してもよい。全固体電池は、大気に曝さないよう、アルゴンや窒素等の不活性雰囲気下で保存し、使用することが好ましい。
[実施例1]
(1)硫化物固体電解質の合成
LiI(アルドリッチ社製、99.9%)、Li2S(日本化学工業社製、99.9%)、P2S5(アルドリッチ社製、99%)を原料とした。これら原料を、LiI:Li2S:P2S5=20mol%:60mol%:20mol%の組成比となるように混合し、得られた混合物についてボールミル処理を行った。ボールミル処理は遊星型ボールミルP−7(:商品名、Fritsch社製)を用いた。脱水ヘプタン(関東化学社製)を分散媒として、500rpmの回転数で40時間ボールミル処理を実施した。なお、ボールミル処理は1時間毎に15分間の休止時間を挟んだ。ボールミル処理後の混合物を、100℃で1時間熱処理することにより、ヘプタンを留去し、混合物を乾燥させた。乾燥後の混合物をさらに180℃で3時間熱処理することにより、イオン伝導度が3.2mS/cmの硫化物固体電解質(20LiI・80(0.75Li2S・0.25P2S5)、ガラスセラミックス)を得た。
上記硫化物固体電解質と、テトラn−ペンチルアンモニウム−ビストリフルオロメタンスルホニルアミド(N5555−TFSA、イオン伝導度:0.15mS/cm)とを乳鉢により混合し、固体電解質層用材料を調製した。このとき、当該材料全体の質量を100質量%としたとき、N5555−TFSAの含有割合が1質量%となるように、硫化物固体電解質とN5555−TFSAの混合比を調節した。
セラミックス製の型(断面積:1cm2)に上記固体電解質層用材料130mgを加え、4ton/cm2で1分間プレスすることにより、固体電解質層を形成した。
固体電解質層の一方の面上に、正極合材10mgを加え、3ton/cm2で1分間プレスすることにより正極活物質層を形成した。ここで、正極合材とは、硫黄(S)、アセチレンブラック(AB)、上記硫化物固体電解質(SE)を、S:AB:SE=1:1:2(質量比)の割合で混合して得られる合材である。この正極合材のイオン伝導度は、0.01mS/cmである。
固体電解質層に対し正極活物質層とは反対側に負極(φ10mmのIn箔の上にφ3mmのLi箔を重ねたもの)を重ね、さらに負極集電体としてCu箔を重ね、1ton/cm2で1分間プレスすることにより、負極層(負極活物質層及び負極集電体の積層体)を形成した。なお、負極層側の積層の態様は、固体電解質層/Li箔/In箔/Cu箔とした。
また、正極活物質層側に正極集電体(Al箔)を配置し、得られた積層体全体を6Nで拘束し、一晩静置することにより、実施例1の全固体電池が得られた。
実施例1の全固体電池は、大気曝露しないように、アルゴン雰囲気下のガラス容器に封入した。
実施例1の「(2)固体電解質層用材料の調製」において、固体電解質層用材料全体の質量を100質量%としたとき、N5555−TFSAの含有割合が5質量%となるように、硫化物固体電解質とN5555−TFSAの混合比を調節したこと以外は、実施例1と同様に、全固体電池(実施例2)を作製した。
実施例1の「(2)固体電解質層用材料の調製」において、固体電解質層用材料全体の質量を100質量%としたとき、N5555−TFSAの含有割合が10質量%となるように、硫化物固体電解質とN5555−TFSAの混合比を調節したこと以外は、実施例1と同様に、全固体電池(実施例3)を作製した。
実施例1において、N5555−TFSAを用いずに固体電解質層を形成したこと以外は、実施例1と同様に、全固体電池(比較例1)を作製した。
実施例1の「(2)固体電解質層用材料の調製」において、固体電解質層用材料全体の質量を100質量%としたとき、N5555−TFSAの含有割合が20質量%となるように、硫化物固体電解質とN5555−TFSAの混合比を調節したこと以外は、実施例1と同様に、全固体電池(比較例2)を作製した。
実施例1の「(2)固体電解質層用材料の調製」を、以下の工程に置き換えたこと以外は、実施例1と同様に、全固体電池(比較例3)を作製した。
上記硫化物固体電解質と、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−ビストリフルオロメタンスルホニルアミド(EMI−TFSA、イオン伝導度:8.7mS/cm)とを乳鉢により混合し、固体電解質層用材料を調製した。このとき、当該材料全体の質量を100質量%としたとき、EMI−TFSAの含有割合が10質量%となるように、硫化物固体電解質とEMI−TFSAの混合比を調節した。
実施例1−3及び比較例1の全固体電池について、充電レートが1Cとなる条件で定電流充電を実施した。ここでいう充電レートとは、25℃の正極活物質の質量から算出した充電容量に基づく値である。全固体電池が短絡するまでの時間を計り、その時間をもって短絡評価の指標とした。
実施例1−3及び比較例1−3の全固体電池について、以下の条件で1サイクル充放電を行い、充放電効率を算出した。
測定温度:25℃
<充電条件>充電電圧:2.5V、充電電流:0.5C、充電時間:1時間
<放電条件>放電電圧:0V、放電電流:0.5C、放電時間:1時間
下記表1は、短絡試験結果をまとめた表である。下記表2は、充放電試験結果をまとめた表である。
図2は、実施例1−3及び比較例1−2の全固体電池について、短絡試験結果及び充放電試験結果を重ねて示したグラフである。なお、図2中の菱形は実施例1−3及び比較例1の短絡試験結果を示し、左の縦軸(短絡までの時間(分))及び下記表1のデータに対応する。図2中の黒丸は実施例1−3及び比較例1−2の充放電試験結果を示し、右の縦軸(充放電効率(%))及び下記表2のデータに対応する。図2の横軸はN5555−TFSA含有割合(質量%)を表す。横軸が同じ座標を持つデータは、同じ実験例を意味する。
比較例3の全固体電池の充放電効率は39%である。上記表1より、実施例1−3及び比較例1−2は、比較例3よりも充放電効率が高い。これは、上述した通り、EMI−TFSAを用いた電池においては、負極の金属リチウムの一部がEMI−TFSAと反応し消費されるためである。
図2の菱形のデータから分かるように、N5555−TFSA含有割合と、全固体電池における短絡までの時間は、特に当該含有割合が比較的小さい場合において相関がある。すなわち、N5555−TFSA含有割合が大きくなるほど、全固体電池における短絡までの時間が延びる。これは、イオン伝導度の低いN5555−TFSAが固体電解質層に多いほど、リチウムデンドライトの生成を遅らせることができるためであると考えられる。
以上の結果から、固体電解質層中にN5555−TFSAを適切な割合で含むことにより、リチウムデンドライトの成長を抑制でき、かつ従来よりも充放電効率の高い全固体電池が得られることが実証された。
2 正極層
3 固体電解質層
100 全固体電池
Claims (1)
- 負極層、固体電解質層及び正極層を備える全固体電池であって、
負極層は、負極活物質として金属リチウムを含み、
固体電解質層は、Li2S、P2S5及びLiIを含む硫化物固体電解質と、テトラn−ペンチルアンモニウム−ビストリフルオロメタンスルホニルアミドとを含み、
固体電解質層全体の質量を100質量%としたとき、テトラn−ペンチルアンモニウム−ビストリフルオロメタンスルホニルアミドの含有割合は、1〜10質量%であることを特徴とする、全固体電池。
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