JP6819353B2 - 炭素鋼鋳片及び炭素鋼鋳片の製造方法 - Google Patents
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Description
従来、上述の炭素鋼においては、MnS等の延伸した硫化系介在物によって、穴拡げ性が劣化することが知られている。
そこで、特許文献1においては、REM(希土類元素)の一種であるCe,Laから選択される少なくとも1種以上を添加することにより、MnS系介在物を微細に析出させて穴拡げ性を改善する技術が提案されている。溶鋼を製造する際に脱酸剤としてAlを添加し、生成したAl2O3が懸濁しているところへCe,Laを添加すると、若干のAl2O3が残るが、溶鋼中のAl2O3系介在物が還元分解されて、Ce,Laによる脱酸によって微細で硬質なCe酸化物、La酸化物、セリウムオキシサルファイド、及び、ランタンオキシサルファイドが生成すると考えられている。その結果、それらのオキシサルファイド等の上にMnSを析出させることができ、圧延時に、析出したMnSの変形が抑制されることから、鋼板中の延伸した粗大なMnSを著しく減少させることができ、穴拡げ性を向上させることができるという技術である。
しかし、特許文献2,3のように、単に、REMとCaとを添加しただけでは、生成する介在物の組成が大きくばらつき、MnS系介在物やCaO−Al2O3系の形状を制御できず、安定して穴拡げ性を向上することができなかった。また、ノズルの閉塞を確実に抑制することはできなかった。
ここで、Al2O3は比重が軽く、かつ、容易にクラスター化されるため、浮上分離しやすい。このため、単にAlを添加後にREMを添加しても、溶鋼中にAl2O3が十分に存在しておらず、REM介在物にAl2O3が含まれておらず、その後にCaを添加してもREMとCaを含むREM複合介在物(REM−Ca−O−S)が安定して形成されないと考えた。そこで、溶鋼をAlで脱酸した後に先ずMgを添加し、その後からREMを添加して溶鋼を十分に攪拌し、その後に適量のCaを添加することで、REM複合介在物(REM−Ca−O−S)が安定して形成されるとの知見を得た。
C;0.03%以上0.30%以下、
Si;0.08%以上2.1%以下、
Mn;0.5%以上4.0%以下、
P;0.05%以下、
S;0.0001%以上0.01%以下、
N;0.01%以下、
t.O;0.0005%以上0.005%以下、
Al;0.004%以上2.0%以下、
Ti;0.0001%以上0.20%以下、
REM;0.001%以上0.02%以下、
Ca;0.0011%以上0.005%以下、
Mg;0.0003%以上0.002%以下、
を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなり、 REM、Ca、Mg、t.Oの質量%をそれぞれ[REM]、[Ca]、[Mg]、[t.O]とした場合に、
0.25≦[Ca]/[REM]≦5 ・・・(1)
0.0011≦[Ca]−0.15×[t.O]≦0.0055 ・・・(2)
0.5≦[t.O]/[Mg]≦6.5 ・・・(3)
を満たし、さらに、円相当直径が0.5μm以上5μm以下の介在物の個数密度が20個/mm2以上、かつ、円相当直径が10μmを超える介在物の個数密度が0.2個/mm2未満であり、前記介在物中におけるREM、Caの質量%をそれぞれ(REM)、(Ca)とした場合に、円相当直径が0.5μm以上5μm以下の介在物において、(Ca)/(REM)が0.25以上2.5以下の範囲内とされたREM複合介在物の存在比率が70%以上であることを特徴としている。
さらに、REM複合介在物(REM−Ca−O−S)が安定して生成されているので、Al2O3系耐火物とREM複合介在物(REM−Ca−O−S)の反応時に液相を生じさせるため、ノズルの閉塞を抑制することができる。よって、鋳造を安定して行うことが可能となる。
そして、Al2O3を含むREM介在物(REM2O3・Al2O3)が十分に存在する状態でCaを添加することで、REMとCaを含むREM複合介在物(REM−Ca−O−S)を安定して生成させることができ、上述の炭素鋼鋳片を製造することが可能となる。
0.25≦[Ca]/[REM]≦5 ・・・(1)
0.0011≦[Ca]−0.15×[t.O]≦0.005 ・・・(2)
0.5≦[t.O]/[Mg]≦6.5 ・・・(3)
を満たしている。
そして、介在物中におけるREM、Caの質量%をそれぞれ(REM)、(Ca)とした場合に、円相当直径が0.5μm以上5μm以下の介在物において、(Ca)/(REM)が0.25以上2.5以下の範囲内とされたREM複合介在物の存在比率が70%以上とされている。
Cは、鋼の焼入れ性と強度を制御する最も基本的な元素であり、焼入れ硬化層を硬くかつ深く形成することで、疲労強度が向上する。
ここで、Cの含有量が0.03%未満では、残留オーステナイト及び低温変態相を十分に生成できず、上述の作用効果を奏功せしめることができない。一方、Cの含有量が0.30%を超えると、加工性及び溶接性が低下してしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Cの含有量を0.03%以上0.30%以下の範囲内に限定している。
Siは、焼入れのための加熱時にオーステナイトの核生成サイト数を増加させ、オーステナイトの粒成長を抑制して、焼入れ硬化層の粒径を微細化させる。また、Siは、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、さらに、ベイナイト組織の生成に対しても有効であり、材料全体の強度を確保する。
ここで、Siの含有量が0.08%未満では、上述の作用効果を奏功せしめることができない。一方、Siの含有量が2.1%を超えると、介在物中のSiO2濃度が高くなり、介在物が粗大化し、靭性、延性、溶接性が低下するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Siの含有量を0.08%以上2.1%以下の範囲内に限定している。
Mnは、鋼の強度を向上させる作用効果を有する元素である。
ここで、Mnの含有量が0.5%未満では、上述の作用効果を奏功せしめることができない。一方、Mnの含有量が4.0%を超えると、Mnの偏析及び固溶強化の増大により延性が低下する。また、溶接性及び母材の靭性が劣化する。
以上のことから、本実施形態では、Mnの含有量を0.5%以上4.0%以下の範囲内に限定している。
Pは、Fe原子よりも小さな置換型固溶強化元素として利用する場合において有効であるが、不可避的に0.0010%は含有される。
ここで、Pの含有量が0.05%を超えると、オーステナイトの粒界にPが偏析し、粒界強度が低下して、加工性が劣化することがある。
以上のことから、本実施形態では、Pの含有量を0.05%以下に限定している。
Nは、Al、Ti等の元素と窒化物を形成し、母材組織の微細化を促進する作用効果を有する。
ここで、Nの含有量が0.01%を超えると、粗大な窒化物等が生成し、穴拡げ性が劣化してしまう。なお、Nの含有量を0.0005%未満に低減するためには、多大なコストが掛かる。
以上のことから、本実施形態では、Nの含有量を0.01%以下に限定している。
Sは、鋼中に不純物として含まれて偏析しやすく、MnS系の粗大な延伸介在物を形成して穴拡げ性を劣化させる。
ここで、Sの含有量を0.0001%未満に低減するためには、多大なコストが掛かる。一方、Sの含有量が0.01%を超えると、REMのS固定効果を加味しても、残存するS濃度が高く、穴拡げ性が劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Sの含有量を0.0001%以上0.01%以下の範囲内に限定している。
t.Oは、不可避的に0.0005%は含有される。ここで、t.Oの含有量が0.005%を超えると、粗大な酸化物等が生成し、鋳片の品質が劣化してしまう。
以上のことから、本実施形態では、t.Oの含有量を0.0005%以上0.005%以下の範囲内に限定している。なお、t.O(トータル酸素)は、化合物の状態で鋳片に分散しているOを含むものである。
Alは、溶鋼の脱酸を促進するために添加される元素である。
ここで、Alの含有量が0.004%未満では、十分に脱酸をすることができない。一方、Alの含有量が2.0%を超えると、粗大な介在物(Al2O3クラスター)が発生し、鋳片の品質が劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Alの含有量を0.004%以上2.0%以下の範囲内に限定している。
Tiは、炭化物、窒化物、炭窒化物を形成し、結晶粒の微細化及び鋼板の高強度化に寄与し、穴拡げ性を向上させる元素である。
ここで、Tiの含有量が0.0001%未満では、上述の作用効果を奏功せしめることができない。一方、Tiの含有量が0.20%を超えると、粗大な炭窒化物が生成し、穴拡げ性が劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Tiの含有量を0.0001%以上0.20%以下の範囲内に限定している。
REMは、Sc、Y、およびLaからLuまでのランタノイドを含む総称である。REMは、Caと共に添加することにより、REM複合介在物(REM−Ca−O−S)を形成し、特許文献1に記載されているのと同様に、このREM複合介在物にMnSが付着することにより、延伸するMnSの生成を抑制し、穴拡げ性を改善する。
ここで、REMの含有量が0.001%未満では、上述の作用効果を奏することができないおそれがある。一方、REMの含有量が0.02%を超えると、粗大なREM複合介在物(REM−Ca−O−S)が形成され、穴拡げ性が劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、REMの含有量を0.001%以上0.02%以下の範囲内に限定している。
なお、REMは、ミッシュメタルと呼ばれるCe、Laを主とする混合物が入手しやすいため、ミッシュメタルを用いて添加することが多い。
Caは、REMと共に添加することにより、上述のようにREM複合介在物(REM−Ca−O−S)を形成し、延伸するMnSの生成を抑制し、穴拡げ性を改善する。また、浸漬ノズルを構成するAl2O3系耐火物とREM複合介在物の反応時に液相を生じさせるため、ノズルの閉塞が抑制される。
ここで、Caの含有量が0.0011%未満では、上述の作用効果を奏することができないおそれがある。一方、Caの含有量が0.005%を超えると、溶鋼中でCaO−Al2O3系の液相介在物を形成し、介在物が粗大化して穴拡げ性を劣化させるおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Caの含有量を0.0011%以上0.005%以下の範囲内に限定している。
Mgは、Al2O3のクラスター化を抑制する作用効果を有する。また、MgO・Al2O3を生成し、Al2O3の比重を増加させ、REMとの反応時にREM介在物中へのAl濃度を高めやすくするので、本発明に係る微細な介在物を多数生成させるのに重要な役割を担っている。さらに、REM複合介在物(REM−Ca−O−S)を安定して生成させるためにも重要である。
ここで、Mgの含有量が0.0003%未満では、上述の作用効果を奏することができないおそれがある。一方、Mgの含有量が0.002%を超えると、Mgが耐火物を溶損し、操業の妨げとなる。
以上のことから、本実施形態では、Mgの含有量を0.0003%以上0.002%以下の範囲内に限定している。
ラボ実験結果より、介在物におけるCaの含有量(Ca)とREMの含有量(REM)との比(Ca)/(REM)が0.25以上2.5以下の範囲であれば、浸漬ノズルを構成するAl2O3との反応時に液相を生成し、ノズル閉塞を抑制できることがわかっている。このとき、溶鋼中の[Ca]/[REM]が0.25以上5以下の範囲内に調整することで、生成する介在物において(Ca)/(REM)を0.25以上2.5以下の範囲に制御することが可能となる。
よって、本実施形態では、下記の(1)式を満足するように、鋼中のREMの含有量及びCaの含有量を規定した。
0.25≦[Ca]/[REM]≦5 ・・・(1)
ノズル閉塞を防止するためには、上述のように、介在物において(Ca)/(REM)が0.25以上2.5以下の範囲内であることが重要となる。介在物の組成を上述の範囲に制御するためには、その条件の一つとして上記した(1)式を満たすことが重要であるが、それと同時に、生成する介在物がノズルとの反応時に液相を生成しノズル閉塞を防止し、かつ、溶鋼中で完全に液相となり粗大化してしまうことを防止するためにも、介在物中のAl含有量を調整する必要があることがラボ実験よりわかった。なお、平衡時の介在物中の平均のAl含有量は溶鋼中の酸素含有量とおおよそ比例の関係があることがわかった。このことから、Caとt.Oの関係により介在物中の(Ca)及び(Al)を定義した。
ここで、[Ca]−0.15×[t.O]が0.0011未満の場合、介在物組成のばらつきが大きく、ノズル閉塞の危険性が高い。一方、[Ca]−0.15×[t.O]が0.005超の場合、REM複合介在物(REM−Ca−O−S)が溶鋼中で液相となり、粗大化するおそれがある。
よって、本実施形態では、下記の(2)式を満足するように、鋼中のCaの含有量及びt.Oの含有量を規定した。
0.0011≦[Ca]−0.15×[t.O]≦0.005 ・・・(2)
組成の安定したREM複合介在物(REM−Ca−O−S)を生成するためには、溶鋼中のMgの含有量とAlの含有量との関係も重要となる。REM添加前にMgを添加することで、REM複合介在物(REM−Ca−O−S)中へのAl含有速度が速まり、介在物が平衡状態に達しやすくなり、組成が安定化する。なお、この(3)式においても、Alの含有量を酸素含有量に置き換えて規定している。
ここで、[t.O]/[Mg]が0.5未満の場合には、[t.O]すなわち[Al]に対して[Mg]が多いので、溶鋼にAlを添加してからMgを添加し、その後でREMを添加する本発明の製造方法においては、REM添加前の平衡相はMgO+MgO・Al2O3となる。この場合、Mgが耐火物と反応し、耐火物が溶損するおそれがある。一方、[t.O]/[Mg]が6.5を超える場合、REM添加前の平衡相はAl2O3リッチ+MgO・Al2O3であり、MgO・Al2O3の量が少なく、介在物中へのAl含有量確保が困難となる。このため、介在物の組成が大きくばらつくおそれがある。
よって、本実施形態では、下記の(3)式を満足するように、鋼中のMgの含有量及びt.Oの含有量を規定した。なお、下記の範囲内であれば、平衡相はAl2O3+MgO・Al2O3となる。
0.5≦[t.O]/[Mg]≦6.5 ・・・(3)
そして、残っている領域Eが、介在物の粗大化を防止すると共にMnS系介在物の延伸を抑制でき、かつ、ノズルの閉塞を抑制することができる組成範囲となる。本実施形態では、上述の(1)式によってREM複合介在物(REM−Ca−O−S)の主要成分である(REM)と(Ca)の存在比を規定している。溶鋼中に存在するREMおよびCaはほぼ全てREM複合介在物(REM−Ca−O−S)として存在するため、(1)式に調整することで、領域Eの(REM)と(Ca)の存在比に制御可能となる。さらに、(2)式によって(Al2O3)濃度を規定し、さらに(3)式によって(Al2O3)濃度を必要量以上に確保できるように規定しておくことで、介在物組成が安定して領域Eの範囲内となるよう調整している。
REM複合介在物の大部分は円相当直径が0.5μm以上5μm以下の介在物として存在する。本実施形態である炭素鋼鋳片において、円相当直径が0.5μm以上5μm以下の介在物の個数密度が20個/mm2未満の場合には、上述のREM複合介在物の個数が少なく、MnSが十分にREM複合介在物に付着できず、REM複合介在物によるMnSの延伸を抑制する効果が発揮できなくなる。このため、穴拡げ性を十分に向上させることができないおそれがある。
また、円相当直径が10μmを超える介在物の個数密度が0.2個/mm2以上である場合には、粗大な介在物によって穴拡げ性が劣化するとともに、粗大介在物に起因した欠陥が発生するおそれがある。
したがって、本実施形態では、円相当直径が0.5μm以上5μm以下の介在物の個数密度が20個/mm2以上、かつ、円相当直径が10μmを超える介在物の個数密度が0.2個/mm2未満とされている。
また、本実施形態である炭素鋼鋳片において、円相当直径が0.5μm以上5μm以下の介在物において、(Ca)/(REM)が0.25以上2.5以下の範囲内とされたREM複合介在物の存在比率が70%未満の場合には、介在物組成のばらつきが大きく、上述のREM複合介在物の個数が不足することになる。このため、穴拡げ性を十分に向上させることができないおそれがある。
したがって、本実施形態では、円相当直径が0.5μm以上5μm以下の介在物において、(Ca)/(REM)が0.25以上2.5以下の範囲内とされたREM複合介在物の存在比率が70%以上とされている。
ところで、上述のREM複合介在物(REM−Ca−S−O)を生成するために、単にREMとCaを添加しても、生成される介在物の組成が大きくばらつくことがあり、図1及び図2の領域Eの範囲内に制御できないことがある。これは、溶鋼にAlを添加すると、Al2O3は容易にクラスター化し、浮上分離してしまう。ここで、REMを添加すると、REM−O−S介在物が生成し、このREM−O−S介在物にはAlが含有されにくい。Caを添加する前の介在物組成がREM−O−Sであると、REM−Ca−O−Sを生成しにくく、介在物組成が大きくばらついてしまう。
まず、質量%で、C;0.03%以上0.30%以下、Si;0.08%以上2.1%以下、Mn;0.5%以上4.0%以下、P;0.05%以下、S;0.0001%以上0.01%以下、N;0.01%以下、Ti;0.0001%以上0.20%以下、を含む溶鋼を準備する。
次に、溶鋼にAl等の脱酸剤を添加し、t.Oの含有量が0.0005%以上0.005%以下になるように脱酸処理する。Oの含有量は溶存酸素と介在物中の酸素とを合わせた全酸素濃度であるから、Alの含有量を0.004%以上2.0%の範囲内とすることによって、この工程後の介在物の浮上除去の影響なども含めて、通常の操業技術の範囲で予測調整が可能である。なお、必要に応じて脱硫剤を添加して仕上げ脱硫処理を行っても良い。また、Cr,Ni,Cu等の任意添加元素をこの工程で添加しても良い。
次に、(3)式を考慮しつつ、Mg添加歩留まりをも考慮して、溶鋼にMgを添加し、Mgの含有量を鋳片内で0.0003%以上0.002%以下の範囲内になるように調整する。
ここで、Alが添加された溶鋼中にMgを添加することにより、Al2O3のクラスター化が抑制される。また、上述のようにMgO・Al2O3が形成され、その比重が増加する。以上により、Al2O3のクラスター化や浮上分離が抑制され、溶鋼中にMgO・Al2O3を含めてAl2O3介在物が多数存在することになる。
次に、溶鋼にREMを、鋳片内で0.001%以上0.02%以下になるように添加する。すると、Al2O3およびMgO・Al2O3とREMとが反応し、ついでにSとも反応して、微細なREM−Al−O−S介在物が多数形成される。
そして、REMを添加後に5分以上撹拌を実施する。これにより、上述の微細なREM−Al−O−S介在物を十分に形成する。
次に、(1)式および(2)式を考慮しつつ、Ca添加歩留まりも考慮して、溶鋼にCaを鋳片内で0.0011%以上0.005%以下になるように添加する。すると、REM−Al−O−S介在物とCaとが反応し、微細なREM複合介在物(REM−Ca−O−S)が多数形成される。
次に、上述の溶鋼を連続鋳造装置の鋳型へと出鋼して炭素鋼鋳片を連続的に鋳造する。
そして、微細なREM複合介在物(REM−Ca−O−S)が十分に分散されていることから、このREM複合介在物(REM−Ca−O−S)にMnSが付着することでMnSの延伸を抑制することができる。よって、穴拡げ性を確実に向上させることが可能となる。
さらに、Al2O3系耐火物とREM複合介在物(REM−Ca−O−S)の反応時に液相を生じさせるため、ノズルの閉塞が抑制される。よって、鋳造を安定して行うことができる。
このMg添加工程S03の後にREMを添加するREM添加工程S04を有しているので、Al2O3を含むREM介在物(REM2O3・Al2O3)が生成される。また、REMを添加して5分以上撹拌する撹拌工程S05を備えているので、Al2O3を含むREM介在物(REM2O3・Al2O3)を確実に生成することができる。
そして、REM添加工程S04及び撹拌工程S05の後に、Caを添加するCa添加工程S06を有しているので、Al2O3を含むREM介在物(REM2O3・Al2O3)が十分に存在する状態でCaを添加することになり、REMとCaを含有するREM複合介在物(REM−Ca−O−S)を安定して生成させることができ、上述の炭素鋼鋳片を製造することが可能となる。
例えば、Al等の脱酸剤および脱硫剤を添加することによってOおよびS濃度を調整するものとして説明したが、これに限定されることはなく、その他の手段によってOおよびS濃度を調整してもよい。
これらの元素は、いずれも鋼板の強度の向上や靭性の向上のために必要に応じて含有させるものであって、本発明の基本的な特徴であるREM複合介在物(REM−Ca−O−S)を安定して微細に生成させ、もって穴拡げ性を確実に向上させるとともに、連続鋳造時のノズル閉塞を抑制するという作用効果に関して、影響を及ぼすものでは無い。
表1に記載した溶鋼成分となるように、RHでAlを添加後、Mg,REM,Caを表2に示す順序で添加した。なお、Mg,REM(Ce),Caの添加はワイヤー材を用いた。そして、得られた溶鋼を連続鋳造機によって鋳造した。この鋳造時におけるノズルの閉塞の有無を確認した。評価結果を表2に示す。
また、本発明例1−1の介在物の観察写真を図4に、比較例1−1の介在物の観察写真を図5に示す。
Al添加後にMgを添加したことにより、Al2O3のクラスター化が抑制され、浮上も抑制されたために、溶鋼中にMgO・Al2O3とAl2O3を含めてAl2O3系在物が多数懸濁していたことと、その後REMを添加した際にAl2O3系在物が還元分解されて、REMによる脱酸によって微細なREM−Al−O−Sが生成し、Caを添加した際にCaとの反応が促進され、微細なREM−Ca−O−Sが安定して生成されたためと推測される。
なお、図4に示すように、REM複合介在物(REM−Ca−O−S)の周囲にMnSが付着していることが確認されている。
また、0.5μm以上5μm以下の介在物において(Ca)/(REM)が0.25以上2.5以下の範囲内とされたREM複合介在物(REM−Ca−O−S)を89%と、安定して多数生成させていたため、連続鋳造時にノズルが閉塞することも無かった。
次に、実施例1の結果に基づいてAl,Mg,REM,Caの添加順序を定めて、炭素鋼鋳片の成分組成の影響について確認を行った。
表3に記載された溶鋼成分になるように、図3に示した手順で添加元素を添加した。すなわち、RHでAlを添加した後に、Mgをワイヤーで添加し、その後、REMとしてミッシュメタルをワイヤーで添加した。REM添加後5分以上撹拌した後で、Ca−Siをワイヤーで添加した。そして、得られた溶鋼を連続鋳造機によって鋳造した。この鋳造時におけるノズルの閉塞の有無を確認した。評価結果を表4に示す。
REMの含有量が本発明の範囲よりも多かった比較例2−2においては、(1)式の範囲を外れてもいたが、そもそもREMが多すぎたために粗大な介在物(REM−Ca−O−S)が多く生成し、穴拡げ性の改善が不十分であった。
Caの含有量が本発明の範囲よりも少なく(2)式の範囲を外れた比較例2−4においては、(Ca)/(REM)が0.25以上2.5以下の範囲内とされたREM複合介在物(REM−Ca−O−S)の存在比率が少なく、介在物組成のばらつきが大きかった。また、ノズルの閉塞が認められた。
S03 Mg添加工程
S04 REM添加工程
S05 撹拌工程
S06 Ca添加工程
S07 連続鋳造工程
Claims (2)
- C;0.03%以上0.30%以下、
Si;0.08%以上2.1%以下、
Mn;0.5%以上4.0%以下、
P;0.05%以下、
S;0.0001%以上0.01%以下、
N;0.01%以下、
t.O;0.0005%以上0.005%以下、
Al;0.004%以上2.0%以下、
Ti;0.0001%以上0.20%以下、
REM;0.001%以上0.02%以下、
Ca;0.0011%以上0.005%以下、
Mg;0.0003%以上0.002%以下、
を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなり、
REM、Ca、Mg、t.Oの質量%をそれぞれ[REM]、[Ca]、[Mg]、[t.O]とした場合に、
0.25≦[Ca]/[REM]≦5 ・・・(1)
0.0011≦[Ca]−0.15×[t.O]≦0.005 ・・・(2)
0.5≦[t.O]/[Mg]≦6.5 ・・・(3)を満たし、
さらに、円相当直径が0.5μm以上5μm以下の介在物の個数密度が20個/mm2以上、かつ、円相当直径が10μmを超える介在物の個数密度が0.2個/mm2未満であり、
前記介在物中におけるREM、Caの質量%をそれぞれ(REM)、(Ca)とした場合に、
円相当直径が0.5μm以上5μm以下の介在物において、(Ca)/(REM)が0.25以上2.5以下の範囲内とされたREM複合介在物の存在比率が70%以上であることを特徴とする炭素鋼鋳片。 - 請求項1に記載の炭素鋼鋳片を製造するための炭素鋼鋳片の製造方法であって、
溶鋼に対してAlを添加して脱酸を行うAl脱酸工程と、
Al脱酸後にMgを添加するMg添加工程と、
Mgを添加した溶鋼に、REMを添加するREM添加工程と、
REMを添加して5分以上撹拌する撹拌工程と、
撹拌後の溶鋼にCaを添加するCa添加工程と、
Caを添加した後に連続鋳造する連続鋳造工程と、
を備えていることを特徴とする炭素鋼鋳片の製造方法。
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