以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る建設機械の一例としての油圧ショベル1を示す側面図である。
図1を参照して、油圧ショベル1は、クローラ2aを有する下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられたアタッチメント4と、を備えている。下部走行体2及び上部旋回体3は、機体の一例を構成する。
上部旋回体3は、下部走行体2に旋回可能に取り付けられたアッパーフレーム16と、アッパーフレーム16上に設けられたキャブ17と、を備えている。キャブ17は、運転席17aと、運転席17aの周囲を取り囲むとともに運転席17aを上から覆う壁部(符号省略)と、を有する。なお、以下の説明では、運転席17aに着座したオペレータから見た前後、左右、及び上下の方向が用いられる。具体的に、前後方向は、運転席17aに着座したオペレータの正面を前方としたときの方向である。左右方向は、水平面上で前記前後方向と直交する方向である。上下方向は、前記前後方向及び前記左右方向に直交する方向である。
アタッチメント4は、上部旋回体3に対して左右方向に延びるブームフットピンJ1を中心として回動可能に取り付けられた基端部を有するブーム5と、ブーム5の先端部に対して左右方向に延びるアームピンJ4を中心として回動可能に取り付けられた基端部を有するアーム6と、アーム6の先端部に対して左右方向に延びるバケットピンJ5を中心として回動可能に取り付けられたバケット7と、を有する。
図1及び図2を参照して、ブーム5は、ブームフットピンJ1により上部旋回体3に対して回動可能に支持された基端部を有するリアブーム5aと、リアブーム5aに対して回動可能に取り付けられた基端部をそれぞれ有する一対のオフセットブーム5bと、オフセットブーム5bの先端部に回動可能に取り付けられているとともに前記アームピンJ4によりアーム6に対して回動可能に取り付けられたアッパーブーム5cと、をさらに備えている。
オフセットブーム5bの基端部は、ブームフットピンJ1と直交するオフセットピンJ2を中心として回動可能にリアブーム5aに取り付けられている。また、オフセットブーム5bの先端部は、オフセットピンJ2と平行なオフセットピンJ3を中心として回動可能にアッパーブーム5cに取り付けられている。2本のオフセットブーム5bは、互いに平行に配置され、2本のオフセットピンJ2は、左右方向に並び、2本のオフセットピンJ3は、左右方向に並んでいる。
したがって、図2において二点鎖線で示すように、両オフセットブーム5bがオフセットピンJ2を中心として右又は左に回動することにより、アッパーブーム5cの姿勢が維持されたまま当該アッパーブーム5cがリアブーム5aに対して右又は左にオフセットされる。なお、アッパーブーム5cがオフセットする場合、当該アッパーフレーム5c及びこれに接続されたアーム6及びバケット7の前後方向の位置が変化する。
さらに、アタッチメント4は、リアブーム5aを上部旋回体3に対して起伏させるブーム起伏シリンダ8と、オフセットブーム5bを右又は左に回動させるオフセットシリンダ9と、ブーム5に対してアーム6を押し方向(前方向)及び引き方向(後ろ方向)に回動させるアームシリンダ10と、アーム6に対してバケット7を開き方向(前方向)及び掘削方向(後ろ方向)に回動させるバケットシリンダ11と、を備えている。
オフセットシリンダ9のヘッド側の端部は、一方のオフセットブーム5bの基端部に対してオフセットピンJ2と平行なピンJ6を中心として回動可能に取り付けられ、オフセットシリンダ9のロッド側の端部は、他方のオフセットブーム5bの先端部に対してピンJ6と平行なピンJ7を中心として回動可能に取り付けられている。
さらに、アタッチメント4は、上部旋回体3(アッパーフレーム16)に対するブーム5の角度を検出するブーム角度センサ12(図4参照)と、リアブーム5aに対するオフセットブーム5bのオフセット角度を検出するオフセット角度センサ13(図4参照)と、ブーム5に対するアーム6の角度を検出するアーム角度センサ14と、アーム6に対するバケット7の角度を検出するバケット角度センサ15と、を備えている。これらのセンサ12〜15としては、例えば、ロータリーエンコーダを採用することができる。
以上のように構成されたアタッチメント4を用いて作業を行う場合、アーム6をある程度引き方向に回動させた状態でブーム5を上げ方向に回動させると、バケット7が運転席17aに近づく。
このようなバケット7の動作を運転席17aからある程度離れた位置で抑えるために、油圧ショベル1は、バケット7が運転席17aに対して予め設定された制御開始距離まで近づいたときにアーム6を押し側に駆動するとともに必要に応じてバケット7を掘削側に駆動するようになっている。
具体的に、油圧ショベル1は、アームシリンダ10及びバケットシリンダ11を駆動するための図3に示す油圧回路18と、油圧回路18の駆動を制御する図4に示すコントローラ32と、を備えている。
まず、図3を参照して油圧回路18を説明する。
油圧回路18は、アームシリンダ10及びバケットシリンダ11に対して作動油を供給するメインポンプ19と、アームシリンダ10に対する作動油の給排を制御するアーム用制御弁20と、バケットシリンダ11に対する作動油の給排を制御するバケット用制御弁21と、を備えている。
アーム用制御弁20は、アームシリンダ10に対する作動油の給排を停止する中立位置(図の中央位置)と、アーム6を引き方向に駆動する(アームシリンダ10を伸長させる)ためのアーム引き位置(図の右側位置)と、アーム6を押し方向に駆動する(アームシリンダ10を縮小させる)ためのアーム押し位置(図の左側位置)と、の間で切換可能である。また、アーム用制御弁20は、引き側パイロットポートと押し側パイロットポートとを有し、引き側パイロットポートにパイロット圧が供給されることによりアーム引き位置に切り換えられ、押し側パイロットポートにパイロット圧が供給されることによりアーム押し位置に切り換えられ、両パイロットポートにパイロット圧が供給されていない状態で中立位置に付勢される。
バケット用制御弁21は、バケットシリンダ11に対する作動油の給排を停止する中立位置(図の中央位置)と、バケット7を開き方向に駆動する(バケットシリンダ11を縮小させる)ためのバケット開き位置(図の右側位置)と、バケット7を掘削方向に駆動する(バケットシリンダ11を縮小させる)ためのバケット掘削位置(図の左側位置)と、の間で切換可能である。また、バケット用制御弁21は、開き側パイロットポートと掘削側パイロットポートとを有し、開き側パイロットポートにパイロット圧が供給されることによりバケット開き位置に切り換えられ、掘削側パイロットポートにパイロット圧が供給されることによりバケット掘削位置に切り換えられ、両パイロットポートにパイロット圧が供給されていない状態で中立位置に付勢される。
また、油圧回路18は、制御弁20、21に対してパイロット圧を供給するためのパイロットポンプ22と、アーム用制御弁20に対するパイロット圧を調整するためのアーム操作手段23と、バケット用制御弁21に対するパイロット圧を調整するためのバケット操作手段27と、を備えている。
アーム操作手段23は、操作レバー(符号省略)と、操作レバーの操作量に応じたパイロット圧を出力するリモコン弁(符号省略)と、を有する。
アーム操作手段23とアーム用制御弁20の引き側パイロットポートとの間には、アーム引き比例弁24が設けられている。アーム引き比例弁24は、コントローラ32から指令が入力されていない状態でアーム操作手段23と引き側パイロットポートとを接続する位置(図の右側位置)に付勢され、コントローラ32からの指令に応じて引き側パイロットポートとタンクとを接続する位置(図の左側位置)に切り換えられる。アーム引き比例弁24は、コントローラ32からの指令値(電流値)の大きさに応じて開度を調整可能である。
一方、アーム操作手段23とアーム用制御弁20の押し側パイロットポートとの間には、シャトル弁26が設けられている。シャトル弁26には、アーム操作手段23からのパイロット圧とアーム押し比例弁25からのパイロット圧との高い方のパイロット圧が押し側パイロットポートに供給されるようにアーム押し比例弁25が接続されている。アーム押し比例弁25は、アーム操作手段23の上流側の位置でパイロットポンプ22に接続され、コントローラ32からの指令が入力されていない状態でシャトル弁26をタンクに接続する位置に付勢され、コントローラ32からの指令に応じてシャトル弁26とパイロットポンプ22とを接続する位置に切り換えられる。アーム押し比例弁25は、コントローラ32から指令値(電流値)の大きさに応じて開度を調整可能である。
バケット操作手段27は、操作レバー(符号省略)と、操作レバーの操作量に応じたパイロット圧を出力するリモコン弁(符号省略)と、を有する。
バケット操作手段27とバケット用制御弁21の掘削側パイロットポートとの間には、シャトル弁29が設けられている。シャトル弁29には、バケット操作手段27からのパイロット圧とバケット掘削比例弁28からのパイロット圧との高い方のパイロット圧が掘削側パイロットポートに供給されるようにバケット掘削比例弁28が接続されている。バケット掘削比例弁28は、バケット操作手段27の上流側の位置でパイロットポンプ22に接続され、コントローラ32からの指令が入力されていない状態でシャトル弁29をタンクに接続する位置に付勢され、コントローラ32から指令に応じてシャトル弁29とパイロットポンプ22とを接続する位置に切り換えられる。バケット掘削比例弁28は、コントローラ32から指令値(電流値)の大きさに応じて開度を調整可能である。
また、バケット操作手段27と両パイロットポートとの間には、それぞれ圧力センサ30、31が設けられている。圧力センサ30は、バケット操作手段27から掘削側パイロットポートに供給されるパイロット圧を検出し、圧力センサ31は、バケット操作手段27から開き側パイロットポートに供給されるパイロット圧を検出する。
図1、図2及び図4を参照して、コントローラ32は、バケット7が運転席17aに対して予め設定された制御開始距離まで近づいたときにアーム6を押し側に駆動制御するとともにバケット7を掘削側に駆動制御する。本実施形態における『制御開始距離』は、バケット7のアーム6に対する回動中心(バケットピンJ5の中心)及びバケット7の先端部の少なくとも一方が運転席17aの外側に設定された制御開始面C1における上下方向及び左右方向に沿って延びる基準面に到達したときのバケット7の距離である。制御開始面C1は、運転席17aの前方で上下方向及び左右方向に沿って延びる前記基準面と、運転席17aの上方で前後方向及び左右方向に沿って延びる天面と、基準面と天面とを丸み部を介して接続するための丸み面と、を有する。
一方、コントローラ32は、バケット7が運転席17aから予め設定された制御停止距離だけ遠ざかったときにアーム6の押し側への駆動制御及びバケット7の掘削側の駆動制御を停止する。本実施形態における『制御停止距離』は、バケット7のアーム6に対する回動中心(バケットピンJ5の中心)及びバケット7の先端部の少なくとも一方が運転席17aの外側に設定された制御停止面C2における上下方向及び左右方向に沿って延びる基準面の外側(運転席17aから離れた側)に位置するときのバケット7の距離である。制御停止面C2は、制御開始面C1の外側(運転席17aから離れた側)で当該制御開始面C1と平行に設定された面である。具体的に、制御停止面C2は、運転席17aの前方で上下方向及び左右方向に沿って延びる前記基準面と、運転席17aの上方で前後方向及び左右方向に沿って延びる天面と、基準面と天面とを丸み部を介して接続するための丸み面と、を有する。このように制御停止面C2を制御開始面C1よりも外側に設定することにより、バケット7を確実に制御開始面C1よりも外側まで遠ざけることができる。
具体的に、コントローラ32は、バケット7の位置を演算する位置演算部33と、位置演算部33により演算されたバケット7の位置に基づいてアーム6の押し側の駆動制御及びバケット7の掘削側の駆動制御を自動的に実行する自動制御部34と、を備えている。
位置演算部33は、ブームフットピンJ1の中心からオフセットピンJ2の中心までの長さ、オフセットピンJ2の中心からオフセットピンJ3の中心までの長さ、オフセットピンJ3の中心からアームピンJ4の中心までの長さ、アームピンJ4の中心からバケットピンJ5の中心までの長さ、及び、バケットピンJ5の中心からバケット7の先端部までの長さを含む長さ情報を予め記憶している。また、位置演算部33は、センサ12〜15により検出された角度情報を取得し、この角度情報と長さ情報とを用いてバケット7の回動中心位置(バケットピンJ5の中心位置)及びバケット7の先端部の前後方向の位置を演算する。つまり、本実施形態において、ブーム角度センサ12、オフセット角度センサ13、アーム角度センサ14及びバケット角度センサ15は、上部旋回体3(機体)に対するバケット7の位置を特定するための情報を検出する位置検出手段に相当する。
また、位置演算部33は、角度情報及び長さ情報を用いて上部旋回体3(機体)に対するバケット7の角度を算出する。つまり、本実施形態において、ブーム角度センサ12、オフセット角度センサ13、アーム角度センサ14及びバケット角度センサ15は、バケット7の姿勢を特定するための情報を検出する姿勢検出手段に相当する。
そして、位置演算部33は、バケット7の回動中心位置、バケット7の先端部の位置、及び上部旋回体3に対するバケット7の位置を自動制御部34に出力する。
自動制御部34は、バケット7の回動中心位置とバケット7の先端位置と制御開始面C1及び制御停止面C2との位置関係を比較する比較部35と、比較部35からの指令に応じて上部旋回体3に対するバケット7の角度を記憶する記憶部36と、比較部35及び記憶部36からの指令に応じて比例弁24、25、28に対する指令値(電流値)を決定する指令決定部37と、を備えている。
比較部35は、バケット7の回動中心の位置及びバケット7の先端部の位置の少なくとも一方が制御開始面C1の基準面(上下方向及び左右方向に沿って延びる面)に到達したとき(以下、バケット7が制御開始距離まで近づいたときという)に、アーム6の押し側への駆動制御を実行する旨を指令決定部37に出力する。一方、比較部35は、バケット7の回動中心の位置及びバケット7の先端部の位置の少なくとも一方が制御停止面C2の基準面(上下方向及び左右方向に沿って延びる面)の外側に位置するとき(以下、バケット7が制御停止距離まで遠ざかったときという)に、アーム6の押し側の駆動制御を停止する旨を指令決定部37に出力する。
また、比較部35は、上記のようにバケット7が制御開始距離まで近づいたときにセンサ12〜15により検出された情報に基づいてバケット7の接近時姿勢を特定し、予め設定された基本角度に対して接近時姿勢が掘削側に回動しているか否かを判定する。具体的に、比較部35は、位置演算部33からバケット7の回動中心の位置及びバケット7の先端部の位置(バケット7の接近時姿勢)を取得し、バケット7の先端部が制御開始面C1の基準面に対してバケット7の回動中心よりも先に到達したかどうかを判定する。ここで、『基本角度』は、バケット7に土砂等を蓄えることができる姿勢とバケット7に土砂等を蓄えることが困難な姿勢との境界の姿勢として予め設定されたものである。具体的に、『基本角度』は、図1の実線で示すように、バケット7の先端部とバケット7の回動中心とが前後方向で同じ位置に配置されるような(上下方向に並ぶような)バケット7の姿勢(基本姿勢)に設定されている。この基本姿勢に対してバケット7が掘削側に回動した姿勢、つまり、図1の二点鎖線で示すようにバケット7の先端部が制御開始面C1の基準面に対して回動中心の位置よりも先に到達した姿勢においてはバケット7に土砂等が蓄えられている可能性が高い。一方、バケット7が基本姿勢に一致する姿勢にあるとき又はバケット7が基本姿勢よりも開き側に回動した姿勢にあるとき、つまり、バケット7の先端部が前後方向において回動中心と同じ位置にある姿勢、又は制御開始面C1の基準面に対して回動中心よりも前にある姿勢においてはバケット7内に土砂等が蓄えられている可能性が低い。
そして、比較部35は、バケット7の先端部が制御開始面C1の基準面に対してバケット7の回動中心よりも先に到達したときにはバケット7の掘削側への駆動制御を実行する旨を記憶部36に出力する。一方、比較部35は、バケット7の先端部がバケット7の回動中心と同時に制御開始面C1の基準面に到達したとき又はバケット7の回動中心よりも後に制御開始面C1の基準面に到達したときにはバケット7の掘削側への駆動制御の実行を禁止する旨の指令を記憶部36に出力する。
記憶部36は、比較部35からバケット7の掘削側への駆動制御の実行の旨の指令が入力されたときに、バケット7が制御開始距離まで近づいたときにおける上部旋回体3に対するバケット7の角度(近接時姿勢における角度)を目標角度として記憶する。
また、記憶部36は、比較部35からバケット7の掘削側への駆動制御の実行の旨の指令が入力され、かつ、圧力センサ30、31により検出されたパイロット圧に基づいてバケット7が非操作であると判定されたときに、前記目標角度を指令決定部37に出力する。一方、比較部35からバケット7の掘削側への駆動制御の実行の旨の指令が入力された場合であっても、圧力センサ30、31により検出されたパイロット圧に基づいてバケット7が操作されていると判定されたときにバケット7の掘削側への駆動制御を禁止する。このように、本実施形態における圧力センサ30、31は、バケット操作手段27の操作の有無を検出するバケット操作検出器の一例を構成する。
指令決定部37は、比較部35からアーム6の押し側への駆動制御を実行する旨の指令が入力されると、アーム押し比例弁25に対する指令値(電流値)を決定する。具体的に、指令決定部37は、図6のステップT1に示す指令特性マップを予め記憶している。この指令特性マップは、バケット7の回動中心及びバケット7の先端部のうち制御開始面C1の基準面に近いものの運転席17aに対する距離と、アーム押し比例弁25に対する指令値との関係を示している。また、指令特性マップにおける符号X1は制御開始面C1の基準面の位置を示し符号X2は制御停止面C2の基準面の位置を示しており、制御停止面C2の基準面の位置X2から左に向かうに従いバケット7が運転席17aに近づくことを意味する。このように指令決定部37は、バケット7が運転席17aに近づくほど大きな指令値を決定する、つまり、バケット7が運転席17aに近づくほどアーム押し側のパイロットポートに対する大きなパイロット圧を決定する。
また、指令決定部37は、比較部35からアーム6の押し側への駆動制御を実行する旨の指令が入力されたときにアーム6の引き側の動作を禁止するための指令を決定する。具体的に、指令決定部37は、アーム引き側のパイロットポートをタンクに接続するようにアーム引き比例弁24を切り換えるための指令値を決定する。
さらに、指令決定部37は、記憶部36に記憶されたバケット7の目標角度と、アーム6の押し側への駆動制御中に位置演算部33により演算されたバケット7の現在角度(現在姿勢)と、の偏差を埋めるようにバケット掘削比例弁28に対する指令値を決定する。なお、指令決定部37は、バケット7の現在角度が目標角度よりも小さいとき、つまり、バケット7が目標角度の姿勢よりも開き側に回動しているときに限り、バケット掘削比例弁28に対する指令値を決定する。
以下、図1、図3、図5及び図6を参照して、コントローラ32により実行される処理を説明する。
当該処理が開始されると、まず、後の処理で用いられる位置に関する値を算出する(ステップS1〜S3)。具体的に、ステップS1では、センサ12〜15により検出された角度に基づいて上部旋回体3(機体)に対するバケット7の角度を算出する。ステップS2では、センサ12〜14により検出された角度、ブームフットピンJ1からオフセットピンJ2までの距離、オフセットピンJ2からオフセットピンJ3までの距離、オフセットピンJ3からアームピンJ4までの距離、及びアームピンJ4からバケットピンJ5までの距離に基づいてバケット7の回動中心(バケットピン)の前後方向における位置を算出する。ステップS3では、センサ12〜15により検出された角度、ブームフットピンJ1からオフセットピンJ2までの距離、オフセットピンJ2からオフセットピンJ3までの距離、オフセットピンJ3からアームピンJ4までの距離、アームピンJ4からバケットピンJ5までの距離、及びバケットピンJ5からバケット7の先端部までの距離に基づいてバケット7の先端部の前後方向の位置を算出する。
次いで、アーム6の押し側への駆動制御を実行している又は実行するか否かを示す制御フラグがOFFであるか否か(制御を実行していないか否か)が判定される(ステップS4)。
ここで、制御フラグがOFFであると判定されると(ステップS4でYES)、バケット7の回動中心及びバケット7の先端部の少なくとも一方が制御開始面C1に到達したか否か(バケット7が制御開始距離まで近づいたか否か)が判定される(ステップS5)。
ここで、バケット7が制御開始距離まで近づいたと判定されると(ステップS5でYES)、制御フラグをONに設定する(ステップS6)一方、バケット7が制御開始距離まで近づいていないと判定されると(ステップS5でNO)、制御フラグをOFFに設定する(ステップS8)。
一方、ステップS4において制御フラグがONであると判定されると(ステップS4でNO)、バケット7の回動中心及びバケット7の先端部の少なくとも一方が制御停止面C2の基準面の外側(運転席17aから離れる側)にあるか否か(制御開始距離まで近づいたバケット7が制御停止距離まで遠ざかったか否か)を判定する(ステップS7)。
ここで、バケット7の回動中心及びバケット7の先端部の少なくとも一方が制御停止面C2上又はこれよりも内側にあると判定されると(ステップS7でNO)、制御開始距離まで近づいたバケット7が制御停止距離まで遠ざかっていないため制御フラグをONに設定する(ステップS6)。
一方、制御開始距離まで近づいたバケット7が制御停止距離まで遠ざかっていると判定されると(ステップS7でYES)、制御フラグをOFFに設定する(ステップS8)。
ステップS6及びステップS8において制御フラグの設定が完了すると、制御フラグがONであるか否かが判定され(ステップS9)、制御フラグがONであると判定されると図6に示す回避処理Tが実行される。
回避処理Tが実行されると、まず、アーム押し比例弁25に対する指令値(以下、アーム押し指令値という)、及び、アーム引き比例弁25に対する指令値(以下、アーム引き指令値という)を決定する(ステップT1)。
具体的に、ステップT1では、図6に示す指令特性マップとステップS2及びステップS3において算出されたバケット7の回動中心の位置及びバケット7の先端部の位置とに基づいてアーム押し指令値を決定する。また、ステップT1では、アーム引き比例弁25を切り換えるためのアーム引き指令値を決定する。そして、ステップT1では、アーム押し指令値をアーム押し比例弁25に出力するとともに、アーム引き指令値をアーム引き比例弁24に出力する。
次いで、バケット7が制御開始距離まで近づいたときのバケット7の角度(接近時姿勢)を目標角度として記憶することを示す角度記憶フラグがONであるか否かが判定される(ステップT2)。
ここで、角度記憶フラグがOFFであると判定されると(ステップT2でNO)、続くステップT3及びステップT4においてバケット7の掘削側への駆動制御が実行されるべき状況にあるか否かが判定される。
具体的に、ステップT3では、バケット7の先端部が制御開始面C1の基準面(上下方向及び左右方向に沿って延びる面)に対してバケット7の回動中心の位置よりも先に到達したか否かが判定される。ここでYESと判定される、つまり、バケット7の先端部がバケット7の回動中心よりも後ろに位置すると判定されると、当該バケット7に土砂等が蓄えられている可能性が高いと推定してステップT4を実行する。
ステップT4では、オペレータによりバケット操作手段27が操作されているか否か、つまり、オペレータが作業状況に応じたバケット7の操作を行っているか否かが判定される。
ここでYESと判定されると、オペレータがバケット7による特別な動作を望んでいない状況であるため、次いで、角度記憶フラグをONに設定するとともに(ステップT5)、バケット7が制御開始距離まで近づいたときのバケット7の角度を目標角度として記憶する(ステップT6)。
一方、ステップT3でNOと判定された場合にはバケット7に土砂等が蓄えられている可能性が低いと推定され、ステップT4でNOと判定された場合にはオペレータの操作を優先すべきと判断され、これらの場合には角度記憶フラグをOFFに設定するとともに(ステップS10)、目標角度を消去して(ステップS11)、バケット7の掘削側への駆動制御が禁止される。
ステップT2でYESと判定された場合、つまり、既に目標角度が設定されている場合には、バケット7の掘削側への駆動制御を継続すべきであるか否かがステップT7及びステップT8により判定される。具体的に、ステップT7は、ステップT3と同様の処理であり、ステップT8は、ステップT4と同様の処理である。これらステップT7、T9においてNOと判定されるとバケット7の掘削側への駆動制御を禁止するための処理が実行される(ステップS10、S11)。
なお、上述したステップS9において制御フラグがOFFであると判定された場合においても、バケット7の掘削側への駆動制御を禁止するための処理が実行される(ステップS10、S11)。
一方、目標角度が記憶された後(ステップT6の後)、及び、ステップT8の後には、現時点における上部旋回体3に対するバケット7の角度を位置演算部33により演算し、この現時点におけるバケット7の角度(以下、現時点角度という)が制御開始距離まで近づいたときのバケット7の角度(以下、制御開始時角度という)よりも小さいか否か(開いているか否か)が判定される(ステップT9)。
ここで、現時点角度が制御開始時角度よりも小さいと判定されると、制御開始時角度から現時点角度を減じた角度(両角度の偏差)を埋めるように、バケット7の掘削方向の駆動制御が実行される(ステップT10)。
以上説明したように、バケット7が制御開始距離まで近づき、かつ、このときのバケット7の姿勢(接近時姿勢)が基本姿勢に対して掘削側に回動しているとき(ステップT3、T7でYESのときに)に、当該バケット7の掘削側への動作を実行することができる。
そのため、バケット7が土砂等を蓄えられている可能性の高い姿勢にあるときにバケット7の掘削側への動作を実行することができる。
一方、バケット7が制御開始距離まで近づいていても、この時のバケット7の姿勢(接近時姿勢)が基本姿勢に一致するとき又は基本姿勢に対して開き側(運転席から遠い側)に回動しているとき(ステップT3、T7でNOのとき)、つまり、バケットが土砂等を蓄えている可能性の低い姿勢にあるときに、当該バケット7の掘削側への動作を禁止することができる。
したがって、アーム6の回避処理Tが実行されるときに、土砂等が蓄えられている可能性の高い状況でのみバケット7の掘削側への駆動制御を実行することができる。
また、前記実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
バケット7の回動中心の位置、及び、バケット7の先端部の位置の2つ位置を特定するための情報を検出可能な姿勢検出手段(ブーム角度センサ12、オフセット角度センサ13、アーム角度センサ14、バケット角度センサ15)を採用すればよいため、バケット7の形状を特定するための姿勢検出手段を採用する場合と比較して、姿勢検出手段に要求される機能を簡素化することができ、油圧ショベル1のコストダウンを図ることができる。
そして、姿勢検出手段により特定された回動中心及びバケット7の先端部の前後方向における位置関係に基づいて、バケット7が基本姿勢に対して掘削側に回動しているか、開き側に回動しているかを判定することができる。
制御開始面C1における基準面を用いてバケット7が制御開始位置に近づいたか否かの判定及びバケット7が基本姿勢に対して掘削側に回動しているか開き側に回動しているかの判定を行うことができる。そのため、これらの判定のために別々の基準を用いる場合と比較して、コントローラ32による制御を簡素化することができる。
アーム6の押し側への駆動制御中に特定されたバケット7の現在姿勢とバケット7が制御開始距離に近づいたときの接近時姿勢との偏差を埋めるようにフィードバック制御を行うことにより、バケット7の姿勢を接近時姿勢に確実に近づけることができる。
バケット操作手段27の操作が行われているとき、つまり、オペレータによりバケット7の操作が行われているときに、バケット7の掘削側への駆動制御が禁止される。これにより、オペレータのバケット7の操作を尊重することができる。
一方、アーム6の押し側への駆動制御は行われるため、オペレータのバケット7の操作を尊重しながらバケット7が運転席に近づくことを有効に抑制することができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の態様を採用することもできる。
前記実施形態では、バケット7の先端部がバケット7の回動中心よりも先に制御開始面C1の基準面に到達したか否かに基づいて、バケット7の掘削側の駆動制御を実行するか否かを判定しているが、判定の条件はこれに限定されない。
例えば、上部旋回体3(機体)に対するバケット7の特定の角度をバケット7の基本姿勢における角度として予め記憶しておき、制御開始距離まで近づいたときのバケット7の角度が記憶されたバケット7の角度よりも掘削側の角度か否かに基づいてバケット7の掘削側の駆動制御を実行するか否かを判定してもよい。
前記実施形態では、ブーム角度センサ12、オフセット角度センサ13、アーム角度センサ14及びバケット角度センサ15が位置検出手段及び姿勢検出手段として共用されているが、位置検出手段と姿勢検出手段とが別々の構成であってもよい。
位置検出手段は、上部旋回体3(機体)に対するバケット7の位置の情報を検出可能なものであればよく、例えば、被検出物までの距離を検出可能な距離センサを用いることができる。
姿勢検出手段として、ブーム角度センサ12、オフセット角度センサ13、アーム角度センサ14、及びバケット角度センサ15を例示したが、姿勢検出手段はこれらに限定されない。例えば、姿勢検出手段として、バケット7の形状を特定するための撮像装置や距離センサを採用することもできる。
バケット7の回動中心及びバケット7の先端部の少なくとも一方が制御開始面C1の基準面に到達したときにアーム6及びバケット7の制御を開始する例について説明したが、制御開始の条件は、これに限定されない。例えば、バケット7の回動中心及びバケット7の先端部の双方が制御開始面C1の基準面の内側に位置するときに制御を開始してもよい。また、位置検出手段として距離センサを採用した場合、バケット7において最も運転席17aに近づいた部分が制御開始面C1の基準面に到達したときにアーム6及びバケット7の制御を開始してもよい。
バケット7の回動中心及びバケット7の先端部の少なくとも一方が制御停止面C2の基準面の外側に位置するときにアーム6及びバケット7の制御を停止する例について説明したが、制御停止の条件は、これに限定されない。例えば、バケット7の回動中心及びバケット7の先端部の双方が制御停止面C2の基準面の外側に位置するときにアーム6及びバケット7の制御を停止してもよい。また、位置検出手段として距離センサを採用した場合、バケット7において最も運転席17aから遠い部分が制御停止面C2の基準面の外側に位置するときに制御を停止してもよい。
前記実施形態では、現在姿勢と接近時姿勢との偏差を埋めるようにバケット7の掘削側への駆動制御を行う例について説明したが、バケット7の駆動制御はこれに限定されない。
具体的に、コントローラ32(記憶部35)は、安定して土砂等を蓄えておくことができる姿勢として予め目標姿勢を記憶するとともに、コントローラ32(指令決定部37)は、現在姿勢と目標姿勢との偏差を埋めるようにバケット7の駆動制御を実行する(バケット掘削比例弁28に対する指令値を決定する)こともできる。
例えば、図1の二点鎖線で示すようなバケット7の水平姿勢を目標姿勢としてコントローラ32に記憶させることにより、アーム6の押し側への駆動制御中にバケット7を水平姿勢に近づけて土砂等を安定して蓄えておくことができる。上述のように、基本姿勢は、バケットに土砂等を蓄えることができる姿勢とバケット7に土砂等を蓄えることが困難な姿勢との境界の姿勢として設定されたものである。そのため、目標姿勢を基本姿勢から掘削側に90°回動した姿勢とすれば、土砂等を比較的に安定して蓄えることができる。
上記のようにコントローラ32が目標姿勢を予め記憶している場合、図5に示すフローチャートにおけるステップS10及びS11を省略することができる。具体的に、ステップS9でYESと判定されると回避処理Tが実行される一方、ステップS9でNOと判定されると回避処理Tを実行することなくステップS1にリターンする。さらに、図6にフローチャートにおいてステップT2〜T6を省略することができる。具体的に、ステップT1の実行後、ステップT7が実行され、ステップT7においてYESと判定されるとステップT8が実行され、ステップT8においてYESと判定されるとステップT9が実行される。ステップT7及びT8においてNOと判定されると、ステップS1にリターンする。
なお、上記のように制御開始条件及び制御停止条件を調整する場合、制御開始面C1及び制御停止面C2の運転席17aからの距離は必要に応じて変更される。
建設機械は、油圧式のものに限定されず、ハイブリッド式又は電気式のものでもよい。