JP6819218B2 - 転がり軸受の疲労度取得方法及び装置 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、金属部品にX線を照射することによって得られる回折X線の半価幅や、回折X線から求められる残留応力及び残留オーステナイト量等のX線パラメータを測定し、このX線パラメータを、予め作成されている疲労度データベースと照合することによって疲労度を取得することが開示されている。
しかしながら、軌道面における疲労度は、当該軌道面に付与される負荷の大きさ等によって周方向及び軸方向で大きく異なる場合がある。そのため、従来方法でX線パラメータを測定するだけでは、軌道面全体を考慮した疲労度を取得することができず、残存寿命等を正確に予測することが困難となる。
また、転がり軸受の固定輪は回転しないため、周方向の一部にラジアル荷重が付与された場合、そのラジアル荷重が大きく負荷される領域とほとんど負荷されない領域とが発生する。そのため、固定輪の疲労度に周方向で大きな差が生じる。上記のように軌道面上で少なくとも周方向全体にわたる範囲で測定点を移動させることによって、周方向について疲労度の大きい箇所を正確に把握することができる。
このように、周方向全体だけでなく軸方向全体にわたる範囲にも測定点を移動させることによって、軸方向における負荷のかかり具合に起因する疲労度の差を把握することができる。
回折X線の半価幅は、疲労度との間で高い相関性を有するため、X線パラメータとして回折X線の半価幅を測定することで、より正確な疲労度を取得することが可能となる。
れた疲労度を被測定面上における測定点の位置に対応付けてマッピングするので、被測定面のどの箇所で最も疲労度が大きいかを正確かつ容易に把握することができる。したがって、最大の疲労度に応じて正確な残存寿命を予測することが可能となる。
また、転がり軸受の固定輪は回転しないため、周方向の一部にラジアル荷重が付与された場合、そのラジアル荷重が大きく負荷される領域とほとんど負荷されない領域とが発生する。そのため、固定輪の疲労度に周方向で大きな差が生じる。上記のように軌道面上で少なくとも周方向全体にわたる範囲で測定点を移動させることによって、周方向について疲労度の大きい箇所を正確に把握することができる。
[円すいころ軸受の全体構成]
図1は、実施形態に係る転がり軸受を示す断面図である。本実施形態の転がり軸受は、円すいころ軸受1であり、内輪2と、この内輪2の径方向外側に設けられている外輪3と、これら内輪2と外輪3との間に設けられている複数の円すいころ4と、これら円すいころ4を保持している環状の保持器7とを備えている。
円すいころ4は、軸受鋼等を用いて形成された部材であり、内輪軌道面2a及び外輪軌道面3aを転動する。つまり、内輪2又は外輪3が図外の軸と共に回転すると、各円すいころ4は、内輪軌道面2a及び外輪軌道面3aに沿って、ころ中心線回りに自転しながら、軸受中心線回りに公転する。円すいころ4は、軸方向一方側に直径の小さい小端面4aを有し、軸方向他方側に直径の大きい大端面4bを有している。
図2は、疲労度取得装置を示す概略構成図である。疲労度取得装置10は、X線回折装置11と、処理装置(処理部)12とに大別される。この疲労度取得装置10は、図3に示すような手順で疲労度を取得する。具体的には、ステップS1においてX線パラメータを取得し、ステップS2において疲労度を取得し、ステップS3において疲労度をマッピングする。ステップS1は、X線回折装置11によって行われ、ステップS2,S3は、処理装置12によって行われる。以下、各装置11,12の具体的構成と、各ステップS1〜S3の動作について詳細に説明する。
図2に示すように、X線回折装置11は、測定対象である内輪2を保持する保持部21と、X線を内輪2に照射して回折X線の情報を測定する測定部22と、保持部21を移動させる移動部23とを備えている。
保持部21は、例えば三爪チャックからなるチャック部21aを備え、チャック部21aを内輪2の内周面に挿入し径方向外方へ拡径させることによって、内輪2を内側から把持するように構成されている。
処理装置12は、制御部31と、記憶部32と、演算部33とを備えている。
制御部31は、X線回折装置11における保持部21、測定部22、及び移動部23の動作を制御する。具体的に制御部31は、保持部21による内輪2の把持動作、測定部22によるX線の照射及び回折X線の検出動作、移動部23による保持部21の移動の動作を制御する。
図4は、疲労度と半価幅減少度との関係を示すグラフである。前述したように、疲労度は、転動疲労によって損傷に到るまでの時間を100%として、どの程度まで疲労が進行しているかを表す指標である。半価幅は、回折X線によって取得されるX線パラメータの一つであり、回折X線の回折パターンの幅のうち、ピーク強度の半分の強度値における幅である。
図4に示すように、疲労度は、半価幅減少度が大きくなるほど大きくなっている。つまり、半価幅減少度と疲労度との間には相関性がある。疲労度データベースDBには、図4に示すような半価幅減少度と疲労度との関係が蓄積されている。
疲労度は、内輪2の軌道面2aにおける軸方向及び周方向の全体にわたる複数箇所で取得される。内輪軌道面2aの疲労度は均一ではなく、軸方向及び周方向の位置によって異なる。例えば、内輪軌道面2aに対する負荷のかかり方によって疲労度が大きく異なることになる。
図6に示すように、半価幅は、軸方向の位置によって差がある。また、半価幅は、軸方向のどの位置においても、負荷圏の半価幅が負荷圏以外の半価幅よりも小さい値となっている。つまり、内輪軌道面2aの半価幅は、軸方向の位置だけでなく周方向の位置によっても異なることが判る。したがって、内輪軌道面2aの疲労度を正確に把握するためには、軸方向全体及び周方向全体にわたって疲労度を取得し、最も疲労度の大きい箇所を特定する必要がある。
例えば、上記実施形態では、内輪2が固定輪である場合について説明したが、内輪2が回転輪である場合にも本発明を適用することができる。この場合、内輪軌道面2aは、周方向に関して略均一な負荷を受けると考えられるため、X線パラメータの測定点を周方向の一位相における軸方向全体にわたる範囲で移動させてもよい。また、本発明は、外輪3の軌道面3aの疲労度を取得する場合にも適用することができ、内輪2又は外輪3のその他の面(内周面、外周面、軸方向端面等)における疲労度を取得する場合にも適用することができる。
上記実施形態において、X線回折装置11の移動部23は、保持部21を移動させるものとなっていたが、測定部22を移動させるものであってもよい。また、一部の移動を保持部21に行わせ、他の移動を測定部22に行わせるものであってもよい。
前記のモデルデータは3次元だけでなく2次元であってもよい。
Claims (4)
- 転がり軸受の軌道輪の形状データに基づいて当該軌道輪における被測定面上で測定点を移動させて複数箇所にX線を照射し、所定のX線パラメータを測定する第1工程、
各X線パラメータから疲労度を取得する第2工程、及び
各疲労度を、前記被測定面上における前記X線パラメータの測定点の位置に対応付けてマッピングする第3工程、を含み、
前記軌道輪は固定輪であり、
前記第1工程では、前記被測定面としての軌道面の周方向全体にわたる範囲で前記測定点を移動させ、
前記第3工程で行われるマッピングは、前記各疲労度を、前記軌道面の周方向にわたる範囲における前記X線パラメータの測定点の位置に対応付ける処理である
疲労度取得方法。 - 前記第1工程は、前記軌道面の軸方向全体にわたる範囲にも前記測定点を移動させる、請求項1に記載の疲労度取得方法。
- 前記X線パラメータは、回折X線の半価幅である、請求項1又は請求項2に記載の疲労度取得方法。
- 転がり軸受の軌道輪を保持する保持部と、
前記軌道輪における被測定面上の測定点にX線を照射し、所定のX線パラメータを測定する測定部と、
前記軌道輪の形状データに基づいて当該軌道輪を保持している前記保持部と前記測定部とを相対的に移動させ、前記被測定面上で前記測定点を移動させる移動部と、
前記被測定面上の複数箇所で測定された各X線パラメータから疲労度を取得し、各疲労度を、前記被測定面上における前記X線パラメータの測定点の位置に対応付けてマッピングする処理部と、を備え、
前記軌道輪は固定輪であり、
前記移動部は、前記軌道輪を軸心回りに回転させることで、前記被測定面としての軌道面の周方向全体にわたる範囲で前記測定点を移動させるように構成され、
前記処理部が行うマッピングは、前記各疲労度を、前記軌道面の周方向にわたる範囲における前記X線パラメータの測定点の位置に対応付ける処理である
疲労度取得装置。
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