以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.ハイブリッド車両システムの基本構成>
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態にかかるハイブリッド車両システム1の基本構成について説明する。
図1は、ハイブリッド車両システム1の構成例を示している。かかるハイブリッド車両システム1は、エンジン10と、第1のモータジェネレータ20と、第2のモータジェネレータ50とを備え、エンジン10、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ50を駆動源として併用可能なハイブリッド車両システムである。かかるハイブリッド車両システム1では、走行モードが、エンジン走行モードと、シングルモータEV走行モードと、ツインモータEV走行モードと、ハイブリッド走行モードとで切り替えられながら、車両の駆動力制御が行われる。
本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1において、エンジン走行モードは、エンジン10から出力されるトルクにより車両を駆動するモードである。シングルモータEV走行モードは、第1のモータジェネレータ20又は第2のモータジェネレータ50から出力されるトルクにより車両を駆動するモードである。ツインモータEV走行モードは、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ50から出力されるトルクにより車両を駆動するモードである。ハイブリッド走行モードは、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ50のうちの少なくとも一方から出力されるトルクと、エンジン10から出力されるトルクとにより車両を駆動するモードである。
エンジン10は、ガソリン等を燃料としてトルクを生成する内燃機関であり、出力軸としてのクランクシャフト11を有する。クランクシャフト11は、自動変速装置5内に延設されている。また、クランクシャフト11には、ギヤ列13を介して機械式のオイルポンプ15が連結されている。機械式のオイルポンプ15は、エンジン10のクランクシャフト11の回転により駆動されて、自動変速装置5に向けて作動油を供給する。自動変速装置5に供給される作動油は、バルブユニット80を介して自動変速機構としての無段変速機構(CVT:Continuously Variable Transmission)30及び各クラッチに供給される。
また、かかるオイルポンプ15は、前輪側出力軸53、後輪側出力軸73、CVT30のプライマリ軸33又はセカンダリ軸37に対して、図示しないギヤ機構を介して連結されていてもよい。オイルポンプ15が前輪側出力軸53又は後輪側出力軸73に対して連結されている場合、駆動輪70,75の回転によってもオイルポンプ15が駆動され得る。オイルポンプ15がプライマリ軸33又はセカンダリ軸37に対して連結されている場合、第2の伝達クラッチ63が締結されている間、駆動輪70,75の回転によってもオイルポンプ15が駆動され得る。本実施形態のハイブリッド車両システム1では、オイルポンプ15は、クランクシャフト11及び前輪側出力軸53に対して連結され、クランクシャフト11又は前輪側出力軸53のうち、回転数がより高い方の回転により駆動されるようになっている。
自動変速装置5は、第1のモータジェネレータ20と、第2のモータジェネレータ50と、CVT30と、エンジンクラッチ61と、第1の伝達クラッチとしての前後進切替クラッチ40と、第2の伝達クラッチ(出力側伝達クラッチ)63と、トランスファクラッチ65とを備える。バルブユニット80は、電磁弁等の複数の制御弁を備え、トランスミッション制御装置(トランスミッションECU)300により制御される。トランスミッションECU300が、CVT30又は各クラッチの作動要求に応じてこれらの複数の制御弁を制御することにより、各作動部へと供給される作動油の流量が調節され、油圧が調整される。
エンジン10と第1のモータジェネレータ20とはエンジンクラッチ61を介して配列される。エンジン10のクランクシャフト11と、第1のモータジェネレータ20のモータ軸21との間には、クランクシャフト11とモータ軸21との間を締結又は開放するエンジンクラッチ61が設けられている。エンジンクラッチ61が締結状態にあるときに、クランクシャフト11とモータ軸21との間で動力を伝達することができる。例えば、エンジンクラッチ61は、油圧が小さい場合に開放され、油圧の上昇時に締結されてもよい。これにより、モータ走行モード中には油圧の上昇に用いられる電力を低減することができる。
本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1では、第1のモータジェネレータ20の内部にエンジンクラッチ61が設けられ、第1のモータジェネレータ20とエンジンクラッチ61とが一体化されている。これにより、クランクシャフト11あるいはモータ軸21の軸方向に沿う方向の自動変速装置5の幅が小さくなり、省スペース化が図られている。例えば、第1のモータジェネレータ20の中央部であってロータ及びステータの内側に空間を設け、当該空間内にエンジンクラッチ61を配置することにより、かかる構成が実現され得る。
第1のモータジェネレータ20は、例えば、三相交流式のモータであり、インバータ90を介して高電圧バッテリ95に接続されている。第1のモータジェネレータ20は、高電圧バッテリ95の電力を用いて駆動(力行駆動)されて車両の駆動力を生成する駆動モータとしての機能と、エンジン10の出力トルクを用いて駆動されて発電する発電機としての機能と、車両の減速時に回生駆動されて駆動輪70,75の運動エネルギを用いて発電する発電機としての機能とを有する。さらに、第1のモータジェネレータ20は、エンジン10を始動又は停止させるスタータモータとしての機能と、モータ軸21に連結されたオイルポンプ25を回転駆動させる駆動モータとしての機能とを併せ持つ。
第1のモータジェネレータ20をスタータモータ、駆動モータ又はオイルポンプ25の駆動モータとして機能させる場合、インバータ90は、高電圧バッテリ95から供給される直流電力を交流電力に変換し、第1のモータジェネレータ20を駆動する。また、第1のモータジェネレータ20を発電機として機能させる場合、インバータ90は、第1のモータジェネレータ20で発電された交流電力を直流電力に変換して高電圧バッテリ95に充電する。
上述のとおり、本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1では、トルクコンバータではなく、エンジンクラッチ61を介して、クランクシャフト11とモータ軸21との間で動力の伝達が行われる。このため、エンジン10からトルクを出力させない期間において、第1のモータジェネレータ20とエンジン10とを完全に切り離すことにより、第1のモータジェネレータ20の出力トルクがエンジン10で消費されることがなくなる。したがって、第1のモータジェネレータ20からトルクを出力させる場合、あるいは、第1のモータジェネレータ20を回生駆動させる場合において、第1のモータジェネレータ20による仕事の効率の低下を抑制することができる。
第1のモータジェネレータ20のモータ軸21には、ギヤ式のオイルポンプ25が組み付けられている。オイルポンプ25は、エンジン10の回転、又は、第1のモータジェネレータ20の回転に伴ってモータ軸21が回転することによって駆動され、バルブユニット80に向けて作動油を供給する。かかるオイルポンプ25は、第1のモータジェネレータ20により駆動される電動式オイルポンプとして構成される。したがって、エンジン10が停止している状態においても、第1のモータジェネレータ20の出力トルクによってオイルポンプ25が駆動されて、バルブユニット80に対して油圧を供給することができる。
第1のモータジェネレータ20のモータ軸21は、前後進切替クラッチ40を介して、CVT30のプライマリ軸33に連設されている。前後進切替クラッチ40は、プラネタリギヤ41と、前進クラッチ43と、後退ブレーキ45とを備える。前進クラッチ43及び後退ブレーキ45を制御することにより、プライマリ軸33の回転方向が切り替え可能になっている。後退ブレーキ45が開放され前進クラッチ43が締結されることにより、第1のモータジェネレータ20のモータ軸21がプライマリ軸33に対して直結される。これにより、エンジン10又は第1のモータジェネレータ20の出力トルクが前進クラッチ43を介してプライマリ軸33に伝達され、プライマリ軸33が正転方向に回転し、車両の前進走行が可能となる。
また、前進クラッチ43が開放され後退ブレーキ45が締結されることにより、モータ軸21がプラネタリギヤ41を介してプライマリ軸33に連結される。これにより、エンジン10又は第1のモータジェネレータ20の出力トルクがプラネタリギヤ41を介してプライマリ軸33に伝達され、プライマリ軸33が逆転方向に回転し、車両の後退走行が可能となる。さらに、前進クラッチ43及び後退ブレーキ45がともに開放されることにより、前後進切替クラッチ40はプライマリ軸33にエンジン10又は第1のモータジェネレータ20の動力を伝達しないニュートラル状態になる。本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1では、かかる前後進切替クラッチ40が、モータ軸21とプライマリ軸33との間の動力伝達の可否を切り替える第1の伝達クラッチに相当する。前進クラッチ43及び後退ブレーキ45は、油圧が小さい場合に開放され、油圧の上昇によって締結されてもよい。これにより、モータ走行モード中には油圧の上昇に用いられる電力を低減することができる。
CVT30は、プライマリ軸33と、当該プライマリ軸33に平行に配設されたセカンダリ軸37とを有する。プライマリ軸33にはプライマリプーリ31が固定され、セカンダリ軸37にはセカンダリプーリ35が固定されている。プライマリプーリ31及びセカンダリプーリ35には、ベルト又はチェーンからなる巻き掛け式の動力伝達部材36が卷回されている。CVT30は、プライマリプーリ31及びセカンダリプーリ35上での動力伝達部材36の巻き掛け半径を変化させてプーリ比を変化させることにより、プライマリ軸33とセカンダリ軸37との間において、車両の走行状態に応じた変速比で変換したトルクを伝達する。
セカンダリ軸37は、ギヤ列39及び第2の伝達クラッチ63を介して、前輪側出力軸53に連結されている。第2の伝達クラッチ63が、出力側伝達クラッチに相当する。前輪側出力軸53は、図示しない減速ギヤ及び駆動軸を介して前輪(駆動輪)70に連設され、前輪側出力軸53を介して出力される駆動力が駆動輪70,75に伝達可能になっている。
前輪側出力軸53には、ギヤ列51を介して第2のモータジェネレータ50が連結されている。第2のモータジェネレータ50は、エンジンクラッチ61、前後進切替クラッチ40及び第2の伝達クラッチ63を介してエンジン10に連設されている。第2のモータジェネレータ50は、第1のモータジェネレータ20と同様、三相交流式のモータであり、インバータ90を介して高電圧バッテリ95に接続されている。第2のモータジェネレータ50は、高電圧バッテリ95の電力を用いて駆動(力行駆動)されて車両の駆動力を生成する駆動モータとしての機能と、車両の減速時に回生駆動されて駆動輪70,75の運動エネルギを用いて発電する発電機としての機能とを有する。
第2のモータジェネレータ50を駆動モータとして機能させる場合、インバータ90は、高電圧バッテリ95から供給される直流電力を交流電力に変換し、第2のモータジェネレータ50を駆動する。また、第2のモータジェネレータ50を発電機として機能させる場合、インバータ90は、第2のモータジェネレータ50で発電された交流電力を直流電力に変換して高電圧バッテリ95に充電する。第2のモータジェネレータ50の定格出力と第1のモータジェネレータ20の定格出力とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
第2の伝達クラッチ63は、セカンダリ軸37と前輪側出力軸53との間を締結又は開放する。第2の伝達クラッチ63が締結状態にあるときに、セカンダリ軸37と前輪側出力軸53との間で動力を伝達することができる。一方、第2の伝達クラッチ63が開放状態にあるときに、CVT30と前輪側出力軸53とは切り離される。つまり、第2の伝達クラッチ63が開放状態にあるときには、エンジン10及び第1のモータジェネレータ20だけでなく、CVT30も前輪側出力軸53から切り離される。したがって、第2のモータジェネレータ50による駆動制御中、自動変速装置5内の必要油圧が減少し、燃費に有利となる。例えば、第2の伝達クラッチ63は、油圧が小さい場合に開放され、油圧の上昇時に締結されてもよい。これにより、モータ走行モード中には油圧の上昇に用いられる電力を低減することができる。
また、前輪側出力軸53には、ギヤ列71及びトランスファクラッチ65を介して後輪側出力軸73が連結されている。後輪側出力軸73は、図示しないプロペラシャフト、減速ギヤ及び駆動軸を介して駆動輪75に連設され、後輪側出力軸73を介して出力されるトルクが駆動輪75に伝達可能になっている。トランスファクラッチ65は、後輪側出力軸73へのトルクの伝達の可否を切り替える。トランスファクラッチ65が締結状態にあるときに、駆動力が後輪側出力軸73にも伝達され、ハイブリッド車両は4輪駆動モードとなる。また、トランスファクラッチ65が開放状態にあるときに、駆動力は前輪側出力軸53のみに伝達され、ハイブリッド車両は前輪駆動モードとなる。
<2.電子制御系の構成例>
次に、図1に示したハイブリッド車両システム1の電子制御系の構成例について説明する。
ハイブリッド車両システム1において、エンジン10は、エンジン制御ユニット(エンジンECU)200により制御される。自動変速装置5は、トランスミッション制御ユニット(トランスミッションECU)300により制御される。第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ50は、モータ制御ユニット(モータECU)400により制御される。これらのエンジンECU200、トランスミッションECU300、及び、モータECU400は、システム全体を統合的に制御するハイブリッド制御ユニット(ハイブリッドECU)100に接続されている。ハイブリッドECU100は、エンジンECU200、トランスミッションECU300、及び、モータECU400に制御指令を出力し、車両の走行制御、あるいは、高電圧バッテリ95の充電制御を行う。
それぞれのECUは、マイクロコンピュータをはじめとして各種インタフェース又は周辺機器等を備えて構成される。それぞれのECUは、例えばCAN(Controller Area Network)等の通信ラインを介して双方向通信可能に接続され、制御情報や制御対象に関連する各種の情報を相互に通信する。以下、それぞれのECUの機能の概略について説明する。
エンジンECU200は、ハイブリッドECU100からの制御指令を受け、エンジン10に備えられた各種センサにより検出される情報に基づいて、スロットル開度、点火時期、及び、燃料噴射量等の制御量を算出する。エンジンECU200は、算出された制御量に基づいてスロットル弁、点火プラグ、及び、燃料噴射弁等を駆動し、エンジン10の出力が制御指令値となるようにエンジン10を制御する。
モータECU400は、ハイブリッドECU100からの制御指令を受け、インバータ90を介して第1のモータジェネレータ20又は第2のモータジェネレータ50をそれぞれ制御する。モータECU400は、第1のモータジェネレータ20又は第2のモータジェネレータ50の回転数や電圧、電流等の情報に基づいてインバータ90に対して電流指令や電圧指令を出力し、第1のモータジェネレータ20又は第2のモータジェネレータ50の出力が制御指令値となるように、第1のモータジェネレータ20又は第2のモータジェネレータ50をそれぞれ制御する。
トランスミッションECU300は、ハイブリッドECU100からの制御指令を受けてCVT30の変速比を決定し、入力されるトルクを運転状態に応じた適切な変速比に制御する。トランスミッションECU300は、例えば、プライマリプーリ31及びセカンダリプーリ35に設けられた図示しない油圧室内の圧力を制御し、可動シーブの位置を調整してシーブ幅を調節することにより、CVT30の変速比を制御する。また、トランスミッションECU300は、ハイブリッドECU100からの制御指令を受けて、エンジンクラッチ61、前後進切替クラッチ40、及び、第2の伝達クラッチ63の断接の制御を行うことで、走行モードの切り替えを行う。トランスミッションECU300は、例えば、各クラッチに供給される油圧を制御することにより、各クラッチの断接を制御する。
本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1において、トランスミッションECU300は、バルブユニット80に備えられた制御弁を制御することによって、CVT30又は各クラッチに供給される油圧を調節する。なお、CVT30及び各クラッチに供給する油圧を調節するための制御弁は、バルブユニット80にまとめて備えられていなくてもよく、例えば、ギャラリ室から各作動部へと分配される作動油の油路の途中にそれぞれ制御弁が設けられていてもよい。
<3.走行モード>
次に、本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1で実行され得る走行モードについて説明する。図2は、本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1の走行モードの一例を示している。図3は、走行モードを選択するためのマップの一例を示している。なお、以下の説明中、前後進切替クラッチ40を第1の伝達クラッチと呼ぶ。また、以下の説明は、トランスファクラッチ65が締結された4輪駆動モードで車両が制御される場合の例であり、前輪駆動モードの場合には、後輪75への駆動力又は回生ブレーキ力の伝達は行われない。
図3に例示したように、本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1においては、車両の走行に必要な馬力(車速V×要求駆動力Tr_tgt)が小さい場合にはシングルモータEV走行モードが選択される。また、必要な馬力が大きくなるにしたがって、ツインモータEV走行モード、ハイブリッド走行モードへと順次切り替えられる。ただし、図3に示したマップはあくまでも一例にすぎず、それぞれの走行モードが選択され得る領域は、適宜設定されてよい。
なお、ハイブリッド車両システム1では、エンジン10の駆動に用いられる燃料の消費量を抑制するために、エンジン走行モードは、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ50を力行制御させることができない場合にのみ選択され得る。
(3−1.エンジン走行モード)
図2に示すように、エンジン走行モードにおいて、エンジンECU200は、エンジン10を駆動させる。トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ61、第1の伝達クラッチ40及び第2の伝達クラッチ63をすべて締結させ、エンジン10からの出力トルクをCVT30に伝達させる。エンジン10が駆動することにより、オイルポンプ15が駆動され、自動変速装置5内の油圧が確保され得る。そして、トランスミッションECU300は、CVT30においてエンジン10から出力されたトルクを所定の変速比に変換して、前輪側出力軸53に伝達させる。
図4は、エンジン走行モード中の加速時におけるハイブリッド車両システム1の作動状態を示している。エンジン走行モード中において、車両の加速時には、エンジンクラッチ61、第1の伝達クラッチ40、及び、第2の伝達クラッチ63がすべて締結され、エンジン10から出力されるトルクが、CVT30により所定の変速比に変換されて、駆動輪70,75に伝達される。エンジン走行モードでは、オイルポンプ15及びオイルポンプ25が駆動され、自動変速装置5内の油圧が確保される。
エンジン走行モード中、モータECU400は、第1のモータジェネレータ20をゼロトルク状態にするか、あるいは、エンジン10から出力されるトルクの一部を用いて第1のモータジェネレータ20の発電制御を行う。また、モータECU400は、第2のモータジェネレータ50をゼロトルク状態にする。さらに、モータECU400は、車両の減速時において第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ50のうちの少なくとも一方を回生駆動させ、車両の運動エネルギを用いて第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ50に発電させてもよい。
また、車両が、エンジン走行モードで走行中に減速する際には、例えば、トランスミッションECU300は、第2の伝達クラッチ63を開放し、かつ、モータECU400が、第2のモータジェネレータ50を回生駆動することにより、回生ブレーキ力が生成される。あるいは、第2の伝達クラッチ63が締結されたまま、モータECU400が、第1のモータジェネレータ20を回生駆動してもよい。第1のモータジェネレータ20が回生駆動される場合、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ61を開放してもよい。この状態で、高電圧バッテリ95の残存容量SOCが低下している場合、モータECU400は、エンジン10から出力される余剰のトルクを用いて、第1のモータジェネレータ20を発電制御してもよい。
(3−2.シングルモータEV走行モード)
(3−2−1.第1のシングルモータEV走行モード)
図2に示すように、第1のモータジェネレータ20によるシングルモータEV走行モード(以下、「第1のシングルモータEV走行モード」ともいう。)において、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ61を開放させ、かつ、第1の伝達クラッチ40及び第2の伝達クラッチ63を締結させる。また、モータECU400は、第1のモータジェネレータ20を力行駆動させ、第1のモータジェネレータ20から出力されるトルクを、CVT30を介して駆動輪70,75に伝達させる。
図5は、第1のシングルモータEV走行モード中の加速時におけるハイブリッド車両システム1の状態を示している。第1のシングルモータEV走行モード中において、車両の加速時には、エンジンクラッチ61が開放され、第1の伝達クラッチ40及び第2の伝達クラッチ63が締結される。そして、第1のモータジェネレータ20から出力されるトルクが、CVT30により所定の変速比に変換されて、駆動輪70,75に伝達される。第1のシングルモータEV走行モードでは、第1のモータジェネレータ20が駆動され、オイルポンプ25が駆動されることから、エンジン10が停止し、かつ、車両が停止していても、自動変速装置5内の油圧は確保され得る。このため、エンジン10を停止したまま、第1のシングルモータEV走行モードで車両を始動させることができる。
第1のシングルモータEV走行モード中、車両の減速時において、モータECU400は、第1のモータジェネレータ20を回生駆動させ、車両の運動エネルギを用いて第1のモータジェネレータ20に発電させる。また、モータECU400は、第2のモータジェネレータ50をゼロトルク状態にする。あるいは、モータECU400は、車両の減速時において第2のモータジェネレータ50を回生駆動させてもよい。第1のモータジェネレータ20と前輪側出力軸53との間には、第2の伝達クラッチ63、CVT30及び第1の伝達クラッチ40が介在することから、第2のモータジェネレータ50の回生駆動を優先させることにより、回生発電効率が高められる。
なお、第1のシングルモータEV走行モード中に、高電圧バッテリ95の残存容量SOCが低下した場合には、エンジン10から出力されるトルクを用いて第1のモータジェネレータ20に発電させるために、他の走行モードに切り替えられる。
(3−2.第2のシングルモータEV走行モード)
図2に示すように、第2のモータジェネレータ50によるシングルモータEV走行モード(以下、「第2のシングルモータEV走行モード」ともいう。)において、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ61、第1の伝達クラッチ40及び第2の伝達クラッチ63をすべて開放させる。また、モータECU400は、第2のモータジェネレータ50を力行駆動させ、第2のモータジェネレータ50から出力されるトルクを駆動輪70,75に伝達させる。また、車両が、第2のシングルモータEV走行モードで走行中に減速する際には、第2のモータジェネレータ50が回生駆動され、回生ブレーキ力が生成される。
図6は、第2のモータジェネレータ50によるシングルモータEV走行モード中の加速時におけるハイブリッド車両システム1の作動状態を示している。第2のシングルモータEV走行モード中において、車両の加速時には、エンジンクラッチ61、第1の伝達クラッチ40、及び、第2の伝達クラッチ63がすべて開放され、エンジン10及び第1のモータジェネレータ20が駆動輪70,75から切り離される。したがって、第2のモータジェネレータ50から出力されるトルクの制御により、駆動輪70,75に伝達される駆動力が調節される。
第2のシングルモータEV走行モードにおいて、モータECU400は、第1のモータジェネレータ20を駆動させる。これにより、オイルポンプ25が駆動されて、エンジン10が停止しているとしても、自動変速装置5内の油圧が確保され得る。また、ハイブリッド車両システム1に、駆動輪70,75に連結された機械式のオイルポンプが備えられている場合において、車両の停止時又は低速走行時には、当該オイルポンプのみによって自動変速装置5内の必要な油圧を確保することができない場合がある。第2のシングルモータEV走行モードでは、このような車両の停止時又は低速走行時においても、オイルポンプ25が駆動されることによって、自動変速装置5内の油圧が確保され得る。
第2のシングルモータEV走行モードにおいては、第1の伝達クラッチ40及び第2の伝達クラッチ63が開放されていることから、必要に応じて第1のモータジェネレータ20又はエンジン10を駆動させてオイルポンプ25又はオイルポンプ15を駆動させることによって、自動変速装置5内の油圧が確保され得る。特に、第2のシングルモータEV走行モードにおいても、エンジン10を停止したままで、第1のモータジェネレータ20を駆動させることによって車両を始動させることができる。
なお、ハイブリッド車両システム1に、駆動輪70,75に連結された機械式のオイルポンプが備えられている場合において、車両が比較的高速で走行している間、当該オイルポンプが駆動され、自動変速装置5内の必要な油圧が確保され得る。したがって、かかるオイルポンプが備えられている場合には、第2のシングルモータEV走行モードで車両が走行している間、モータECU400は、第1のモータジェネレータ20をゼロトルク状態にしてもよい。
第2のシングルモータEV走行モードでは、上述したように、第1のモータジェネレータ20が駆動輪70,75から切り離された状態で、第1のモータジェネレータ20によってオイルポンプ25が駆動される。ゆえに、エンジンや車両の停止時及び低速走行時において、動力伝達経路に設けられるクラッチを半クラッチ状態へ切り替えることなく、自動変速装置5内の油圧を確保することができる。
各ECUは、エンジン10の回転数が所定の回転数より低くなった場合に、第2のシングルモータEV走行モードを実行してもよい。当該所定の回転数は、駆動輪70,75に連結された機械式のオイルポンプが備えられている場合において、自動変速装置5内の必要な油圧が、当該オイルポンプによって、確保され得る回転数の下限値に相当し、車両の設計仕様等に応じて適宜設定され得る。それにより、自動変速装置5内の油圧が確保されるように、適切に走行モードを切り替えることができる。ハイブリッド車両システム1には、エンジン10の回転数を検出可能なセンサが設けられてもよく、当該センサから各ECUへ検出結果が出力されることによって、上記の制御が実現され得る。
また、第2のシングルモータEV走行モード中、高電圧バッテリ95の残存容量SOCが低下している場合には、トランスミッションECU300が、エンジンクラッチ61を締結させ、エンジンECU200がエンジン10を駆動し、モータECU400が、エンジン10から出力されるトルクを用いて第1のモータジェネレータ20の発電制御を行ってもよい。また、モータECU400は、高電圧バッテリ95の残存容量SOCが低下している場合には、エンジン10の出力トルクを用いて第1のモータジェネレータ20の発電制御を行ってもよい。エンジンECU200は、基本的にはエンジン10を停止させるが、第1のモータジェネレータ20が発電制御を行う際には、エンジン10を駆動させる。第1のモータジェネレータ20に発電させる場合、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ61を締結させる。
本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1は、第2のシングルモータEV走行モードにおいては、エンジン10、第1のモータジェネレータ20及びCVT30を駆動輪70,75から切り離し、第2のモータジェネレータ50のみで駆動輪70,75を駆動し得る。この場合、第2のモータジェネレータ50から出力されるトルクを駆動輪70,75に伝達させる際に、CVT30を経由することがなく、自動変速装置5内の油圧を確保するためのトルクが低減され、燃費に有利となる。
(3−3.ツインモータEV走行モード)
図2に示すように、ツインモータEV走行モードにおいて、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ61を開放させ、かつ、第1の伝達クラッチ40及び第2の伝達クラッチ63を締結させる。また、モータECU400は、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ50の出力を調停しつつ、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ50をそれぞれ力行駆動させる。そして、トランスミッションECU300は、第1のモータジェネレータ20から出力されるトルクをCVT30で所定の変速比に変換して前輪側出力軸53に伝達させ、第2のモータジェネレータ50の出力トルクと合わせて、駆動輪70,75に伝達させる。
図7は、ツインモータEV走行モード中の加速時におけるハイブリッド車両システム1の作動状態を示している。ツインモータEV走行モード中において、車両の加速時には、エンジンクラッチ61が開放され、第1の伝達クラッチ40及び第2の伝達クラッチ63が締結される。したがって、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ50から出力されるトルクの制御により、駆動輪70,75に伝達される駆動力が調節される。
ツインモータEV走行モード中の車両の減速時において、モータECU400は、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ50のうちの少なくとも一方を回生駆動させ、車両の運動エネルギを用いて発電させる。ツインモータEV走行モードの場合、エンジンクラッチ61は常時開放され、エンジン10は停止される。ツインモータEV走行モードでは、第1のモータジェネレータ20が駆動され、オイルポンプ25が駆動されるために、エンジン10が停止しているとしても、自動変速装置5内の油圧が確保され得る。
なお、ツインモータEV走行モード中に、高電圧バッテリ95の残存容量SOCが低下した場合には、エンジン10から出力されるトルクを用いて第1のモータジェネレータ20に発電させるために、他の走行モードに切り替えられる。
(3−4.ハイブリッド走行モード)
図2に示すように、ハイブリッド走行モードにおいて、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ61、第1の伝達クラッチ40及び第2の伝達クラッチ63をすべて締結させる。エンジンECU200は、エンジン10を駆動させ、駆動力を駆動輪70,75に伝達させる。また、モータECU400は、例えば、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ50のうちの少なくとも一方を力行駆動させ、駆動輪70,75の駆動を補助する。このとき、トランスミッションECU300は、CVT30に伝達されたトルクを所定の変速比に変換して前輪側出力軸53に伝達させ、第2のモータジェネレータ50の出力トルクと合わせて、駆動輪70,75に伝達させる。
図8は、ハイブリッド走行モード中の加速時におけるハイブリッド車両システム1の作動状態を示している。ハイブリッド走行モード中において、車両の加速時には、エンジンクラッチ61、第1の伝達クラッチ40、及び、第2の伝達クラッチ63がすべて締結されている。したがって、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ50のうちの少なくとも一方から出力されるトルクを、さらに、エンジン10から出力されるトルクで補いながら、駆動輪70,75に伝達される駆動力が調節される。
ハイブリッド走行モード中の車両の減速時において、モータECU400は、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ50のうちの少なくとも一方を回生駆動させ、車両の運動エネルギを用いて発電させる。また、ハイブリッド走行モード中、高電圧バッテリ95の残存容量SOCが低下した場合には、モータECU400は、エンジン10から出力される余剰の出力を用いて、第1のモータジェネレータ20の発電制御を行ってもよい。ハイブリッド走行モードでは、少なくともエンジン10が駆動され、オイルポンプ15及びオイルポンプ25が駆動されるため、自動変速装置5内の油圧が確保され得る。
(3−5.エンジン始動時)
本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1では、エンジン10の始動時及び停止時にクランクシャフト11にトルクを与えるスタータモータが備えられておらず、第1のモータジェネレータ20を用いてエンジン10の始動時及び停止時の制御が行われる。
図9は、エンジン10の始動時のハイブリッド車両システム1の作動状態を示している。図9は、シングルモータEV走行モードあるいはツインモータEV走行モードからハイブリッド走行モードに切り替えられる際のエンジン10の始動時の様子を示している。エンジン10を始動させる際には、第1の伝達クラッチ40及び第2の伝達クラッチ63が開放され、エンジンクラッチ61が締結される。この状態で、第1のモータジェネレータ20を駆動させることによってエンジン10がクランキングされ、エンジン10を始動させることができる。
モータ走行モードからハイブリッド走行モードに切り替える際には、自動変速装置5内の油圧が確保されているため、エンジンクラッチ61、第1の伝達クラッチ40及び第2の伝達クラッチ63の断接の切り替えが可能になっている。
なお、ハイブリッド走行モードからシングルモータEV走行モードあるいはツインモータEV走行モードに切り替えられる際にエンジン10を停止させる場合においても、ハイブリッド車両システム1は、図9と同様の状態となる。そして、第1のモータジェネレータ20を所定の出力に制御することによって、エンジン10の回転数を制御しながら、エンジン10を停止させることができる。これにより、エンジン10の停止時の振動や騒音を低減させることができる。
<4.タイミングチャート>
次に、本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1を搭載した車両の走行時におけるエンジン10、第1のモータジェネレータ20、第2のモータジェネレータ50、エンジンクラッチ61、第1の伝達クラッチ40、及び、第2の伝達クラッチ63の使用状態の変化について説明する。以下、本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1とは異なる参考例のシステムの使用状態を示すタイミングチャートを説明した後、本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1の使用状態を示すタイミングチャートを説明する。
図10は、参考例にかかるハイブリッド車両システム801を示す模式図である。参考例のハイブリッド車両システム801は、第1のモータジェネレータ20に相当するモータジェネレータ、及び、第1のモータジェネレータ20により駆動され得るオイルポンプ25に相当するオイルポンプが備えられていない。これに代わって、エンジン810には、スタータジェネレータ817が備えられるとともに、エンジン810の停止時に自動変速装置805内の油圧を確保するための電動式オイルポンプ825が設けられている。また、参考例のハイブリッド車両システム801では、エンジンクラッチ61の代わりにトルクコンバータ820が備えられ、エンジン810の運転時において、常に第1の伝達クラッチ840の入力側に動力が伝達され得る。
図11は、参考例にかかるハイブリッド車両システムを搭載した車両の走行時における、アクセル開度Acc、電動式オイルポンプの出力(EOP)825、スタータジェネレータの出力(ISG)817、モータジェネレータの出力(MG)850、車速(V)、エンジン810の出力、及び、伝達クラッチ(第1の伝達クラッチ840及び第2の伝達クラッチ863)の状態の変化を示すタイミングチャートである。また、参考例にかかるハイブリッド車両システム801では、オイルポンプ815は、エンジン810の回転、及び、駆動輪870,875の回転により駆動されて、自動変速装置805内に油圧が発生する。
まず、ブレーキがオンの状態で、アクセル開度Accがゼロ、かつ、車速Vがゼロの状態(〜時刻t0)では、伝達クラッチ840は開放され、電動式オイルポンプ825、スタータジェネレータ817、モータジェネレータ850、及び、エンジン810は、すべて停止状態にある。この状態では、自動変速装置805内に油圧は発生しない。
時刻t0でブレーキがオフにされると、時刻t1において、電動式オイルポンプ825及びモータジェネレータ850の駆動が開始される。電動式オイルポンプ825が駆動されることによって、エンジン810が停止した状態であっても、自動変速装置805内に油圧が発生する。自動変速装置5内の油圧を確保するために、電動式オイルポンプ825には、例えば5kWの連続定格出力が要求される。また、ブレーキがオフにされたとしても、時刻t2まではアクセル開度が0%であるために、モータジェネレータ850の出力は小さく、車両はクリープ状態となる。
次いで、時刻t2でアクセル開度Accが上昇し始めると、時刻t3からモータジェネレータ850の出力が上昇し始め、車速Vが上昇し始める。また、車両が発進して、駆動輪870,875の回転によってオイルポンプ815が駆動されて油圧が発生するために、時刻t3では、電動式オイルポンプ825が停止される。
次いで、時刻t4でアクセル開度Accがさらに上昇し、例えばアクセル開度Accが10%を超えると、時刻t5において、モータジェネレータ850の出力がさらに上昇するとともに、スタータジェネレータ817が作動して、エンジン810のクランキングが開始される。このときのスタータジェネレータ817の出力は、比較的大きい出力を要し、10kWとなっている。
そして、エンジン810の始動が完了した時刻t6で、スタータジェネレータ817によるクランキングが終了し、伝達クラッチ840が締結されて、エンジン810から出力されるトルクが駆動輪870,875に伝達され始める。これにより、エンジン810の出力がモータジェネレータ850の出力で補助されつつ、駆動輪870,875が駆動される。エンジン810の始動が完了した後は、スタータジェネレータ817は発電モードに切り替えられる。発電モード中のスタータジェネレータ817の出力は−0.1kW程度であり、スタータジェネレータ817の定格出力のうちわずかしか使われていないことになる。
次いで、時刻t7でアクセル開度Accが0%に戻されると、時刻t8で、伝達クラッチ840が開放されるとともに、エンジン810がアイドリング状態にされ、モータジェネレータ850の出力が徐々に減少する。これにより、車両はコースト状態になり、徐々に減速する。そして、時刻t9で、車速Vの減少による、自動変速装置805内の油圧の低下を補うために、再び電動式オイルポンプ825が駆動される。
次いで、時刻t10でブレーキがオンにされると、時刻t11で、モータジェネレータ850は回生駆動され、車両の回生ブレーキ力が生成される。また、スタータジェネレータ817は、クランクシャフト811にブレーキ力を与え、エンジン810の回転数を制御しつつ、エンジン810を停止させる。そして、エンジン810が停止した時刻t12では、スタータジェネレータ817の駆動も停止される。そして、時刻t13で車両が停止すると、電動式オイルポンプ825及びモータジェネレータ850の駆動も停止される。
図11に示したように、車両の走行中、電動式オイルポンプ825は限られた期間でのみ使用される。それにもかかわらず、電動式オイルポンプ825は、4〜5kW程度の連続定格出力を要求されるため、コストの増加や、質量の増加による燃費の悪化の要因となっている。また、スタータジェネレータ817も、エンジン810の始動時又は停止時に、比較的大きい出力(例えば、10kW)が要求されるものの、それ以外の期間には、ほぼ動作していない。したがって、スタータジェネレータ817も、コストの増加や、質量の増加による燃費の悪化の要因となっている。
これに対して、図12は、本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1を搭載した車両の走行時における、アクセル開度Acc、第1のモータジェネレータ20の出力(MG1)、第2のモータジェネレータ50の出力(MG2)、車速(V)、エンジン10の出力、エンジンクラッチの状態、伝達クラッチ(第1の伝達クラッチ40及び第2の伝達クラッチ63)の状態の変化を示すタイミングチャートである。図12に示す例では、エンジン10の出力トルクを用いて駆動されるオイルポンプ15は、駆動輪70,75の回転によっても駆動されて、自動変速装置5内に油圧が発生する。
まず、ブレーキがオンの状態で、アクセル開度Accがゼロ、かつ、車速Vがゼロの状態(〜時刻t20)では、エンジンクラッチ61、第1の伝達クラッチ40及び第2の伝達クラッチ63はすべて開放され、第1のモータジェネレータ20、第2のモータジェネレータ50、及び、エンジン10は、すべて停止状態にある。この状態では、自動変速装置5内に油圧は発生しない。
時刻t20でブレーキがオフにされると、時刻t21において、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ50の駆動が開始される。第1のモータジェネレータ20が駆動されることによりオイルポンプ25が駆動され、エンジン10が停止した状態であっても、自動変速装置5内に油圧が発生する。エンジンクラッチ61及び第1の伝達クラッチ40が開放されていることから、第1のモータジェネレータ20はオイルポンプ25の駆動のみに用いられる。第1のモータジェネレータ20は、例えば5kWの出力で駆動される。また、ブレーキがオフにされたとしても、時刻t22まではアクセル開度が0%であるために、第2のモータジェネレータ50の出力は小さく、車両はクリープ状態となる。
時刻t22でアクセル開度Accが上昇し始めると、時刻t23から第2のモータジェネレータ50の出力が上昇し始め、車速Vが上昇し始める。また、車両が発進して、駆動輪(前輪)70の回転に伴い、前輪側出力軸53に連結されたオイルポンプ15が駆動されて油圧が発生するために、時刻t23では、第1のモータジェネレータ20が停止される。
次いで、時刻t24でアクセル開度Accがさらに上昇し、例えばアクセル開度Accが10%を超えると、時刻t25において、第2のモータジェネレータ50の出力がさらに上昇する。また、時刻t25以降、エンジンクラッチ61が締結されるとともに第1のモータジェネレータ20が作動して、エンジン10のクランキングが開始される。このときの第1のモータジェネレータ20の出力は10kWとなっている。
そして、エンジン10の始動が完了した時刻t26で、第1のモータジェネレータ20によるクランキングが終了し、第1の伝達クラッチ40及び第2の伝達クラッチ63が締結されて、エンジン10から出力されるトルクが駆動輪70,75に伝達され始める。これにより、エンジン10の出力が第2のモータジェネレータ50の出力で補助されつつ、駆動輪70,75が駆動される。時刻t26以降、第1のモータジェネレータ20は、力行駆動(アシスト)、回生駆動又は発電制御に切り替えられながら制御され、例えば−10kW〜+10kWの間の出力で制御される。
次いで、時刻t27でアクセル開度Accが0%に戻されると、時刻t28で、第1の伝達クラッチ40及び第2の伝達クラッチ63が開放されるとともに、エンジン10がアイドリング状態にされ、第2のモータジェネレータ50の出力が徐々に減少する。これにより、車両はコースト状態になり、徐々に減速する。また、時刻t28で第1の伝達クラッチ40が開放されるために、第1のモータジェネレータ20ではエンジン10の出力トルクを用いた発電制御が行われる。そして、車速Vの減少に伴い、駆動輪70,75の回転により駆動されるオイルポンプ15の回転数が低下するため、時刻t29で、再び第1のモータジェネレータ20の駆動を開始し、オイルポンプ25を駆動させる。これにより、自動変速装置5内の油圧を生成するオイルポンプが、機械式のオイルポンプ15から、第1のモータジェネレータ20により駆動されるオイルポンプ25に切り替えられる。
次いで、時刻t30でブレーキがオンにされると、時刻t31で、第2のモータジェネレータ50は回生駆動され、車両の回生ブレーキ力が生成される。また、第1のモータジェネレータ20は、クランクシャフト11にブレーキ力を与え、エンジン10の回転数を制御しつつ、エンジン10を停止させる。そして、エンジン10が停止した時刻t32では、エンジンクラッチ61が開放され、第1のモータジェネレータ20を、オイルポンプ25の駆動モータとして駆動させる。そして、時刻t33で車両が停止すると、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ50の駆動も停止される。
本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1は、第1のモータジェネレータ20が、エンジン10のスタータジェネレータ、及び、電動式のオイルポンプ25の駆動モータとしても利用され得る。したがって、車両の走行期間中に様々な場面で第1のモータジェネレータ20が有効利用され、ハイブリッド車両システム1から、スタータジェネレータ、及び、専用の電動式オイルポンプを省略することができる。これにより、ハイブリッド車両システム1のコストを低減することができる。
以上説明したように、本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1では、第1のモータジェネレータ20が、エンジン10のスタータジェネレータとしての機能を有する。したがって、エンジン10の始動時又は停止時にしか使用されていなかった従来のスタータモータを省略することができる。また、第1のモータジェネレータ20は、オイルポンプ25と一体となって電動式オイルポンプとしての機能を有する。したがって、エンジン10又は駆動輪70,75が停止している状態であっても自動変速装置5内の油圧が確保可能であり、機械式のオイルポンプ15により作動油圧を発生できない場合にしか使用されていなかった従来の電動式オイルポンプを省略することができる。
また、本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1では、第1のモータジェネレータ20が、第1の伝達クラッチ40を介して、CVT30のプライマリプーリ31に連設されており、走行中において、第1のモータジェネレータ20を駆動モータあるいは回生発電機として機能させることができる。したがって、車両の動力性能を向上させることができる。さらに、エンジン10により車両の駆動力を発生させている間、エンジン10の出力に余剰のトルクがある場合には、第1のモータジェネレータ20を発電機として機能させることができる。したがって、車両の燃費性能を向上させることができる。このように、ハイブリッド車両システム1は、スタータジェネレータ、電動式オイルポンプ、駆動モータ、及び、発電機の機能を第1のモータジェネレータ20に持たせてあり、システムコストの低減が図られている。
また、本実施形態にかかるハイブリッド車両システム1では、すべての走行モードにおいて、車両の減速時に、第2のモータジェネレータ50を回生駆動させることによって、回生電力を生成させつつ、回生ブレーキ力を発生させることができる。また、エンジン走行モード、ツインモータEV走行モード、及び、ハイブリッド走行モードにおいて、車両の減速時に、第1のモータジェネレータ20を回生駆動させることによって、回生電力を生成させつつ、回生ブレーキ力を発生させることができる。また、シングルモータEV走行モード、又は、ハイブリッド走行モードにおいて、エンジン10から出力されるトルクの一部又は全部を用いて、第1のモータジェネレータ20に発電させることができる。さらに、エンジン走行モードにおいて、エンジン10から出力されるトルクの一部を用いて、第1のモータジェネレータ20に発電させることができる。したがって、いずれの走行モードにおいても、第1のモータジェネレータ20又は第2のモータジェネレータ50を適宜選択して回生発電を行うことができ、燃費性能を向上させることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
また、上記実施形態では、第2のモータジェネレータ50が、CVT30の出力側に配置されていたが、本発明を適用可能なハイブリッド車両システムの構成は、かかる例に限定されない。図13は、第2のモータジェネレータ50が、CVT30の入力側に配置されたハイブリッド車両システム2の構成例を示す。かかるハイブリッド車両システム2は、エンジン10及び第1のモータジェネレータ20の動力伝達経路に対して並列的に第2のモータジェネレータ50が配置されている。図13に示したハイブリッド車両システム2では、上記実施形態における第2の伝達クラッチ(出力側伝達クラッチ)63に相当する伝達クラッチが省略されている。
かかるハイブリッド車両システム2であっても、上記実施形態における第1の伝達クラッチ40の断接に対応するように第1の伝達クラッチ40を開放又は締結させることによって、上記実施形態にかかるハイブリッド車両システム1と同様の効果を得ることができる。なお、図13に示したハイブリッド車両システム2は、第2のモータジェネレータ50から出力されるトルクがCVT30を介して駆動輪70,75に伝達される。したがって、第2のモータジェネレータ50から出力されるトルクをCVT30によって所望の変速比に変換して伝達させることができるため、よりトルク性能を重視したシステムとなる。
また、上記実施形態では、エンジン10と第1のモータジェネレータ20との間にエンジンクラッチ61が設けられていたが、エンジンクラッチ61の代わりにトルクコンバータが備えられてもよく、あるいは、エンジン10と第1のモータジェネレータ20とが直接連結されていてもよい。この場合、第1のモータジェネレータ20の駆動時や、第1のモータジェネレータ20を回生駆動させる際に、エンジン10も連れ回ることになるが、上記実施形態にかかるハイブリッド車両システム1と同様に、第1のモータジェネレータ20を、スタータジェネレータ、電動式オイルポンプ、駆動モータ、及び、発電機として使用することができる。したがって、システムコストを低下させることができる。
また、上記実施形態では、スタータモータを備えないハイブリッド車両システム1として構成されていたが、本発明はかかる例に限られず、ハイブリッド車両システムは、スタータモータを備えていてもよい。この場合、スタータモータは、例えば、第1のモータジェネレータ20の故障時等においてエンジン10を駆動させる場合に用いることができる。