JP6817619B2 - マイクロビーズの製造方法及び足場の製造方法 - Google Patents

マイクロビーズの製造方法及び足場の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、異方性ハイドロゲル、この異方性ハイドロゲルを用いたマイクロビーズ、マイクロビーズの製造方法、異方性ハイドロゲルを利用した足場及び足場の製造方法に関する。
コラーゲンは、細胞外基質(Extracellular matrix(ECM))の一種であり、細胞の機能や分化等の活動を支援する物質として広く知られている。このコラーゲンにより作製されるマイクロビーズ(以下、「コラーゲンビーズ」とも呼ぶ)は、試験管内(in vitro)において生体内(in vivo)環境を再現した細胞培養を行うためのきわめて重要な材料の一つとなっている。また、近年では、その操作性の良さから細胞培養だけでなく、3次元組織の構築等の組織工学の分野においても広く用いられており特に注目を集めている。
コラーゲンビーズの製造方法としては、例えば、コラーゲン溶液をタンニン溶液に滴下してコラーゲンビーズを形成する方法がある(例えば、特許文献1参照)。また、コラーゲン溶液を油に滴下してコラーゲンビーズを形成する方法等も知られている。
特開平06−141822号公報
本発明の発明者等は、単一粒子内において、個々の幹細胞の分化誘導や、異種細胞間の共培養等を行うといった、従来のコラーゲンビーズでは困難であった細胞培養法を実施可能とするために、異方性を有するコラーゲンビーズを作製することを考えるにいたった。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、異方性を有するコラーゲンビーズの作製は困難であった。その理由は、コラーゲンはゾルからゲルに転移して形が固まるものであるが、ゲル化に時間が非常にかかる(早くても数分〜30分程かかる)ためである。例えば、コラーゲン溶液をタンニン溶液や油の中に左右別々の濃度で配置することで、右半球と左半球とで性質の異なるコラーゲンビーズを作製しようとしても、固まる前にコラーゲン溶液(コラーゲン)が拡散して混合してしまうため、右半球のコラーゲンと左半球のコラーゲンとを明確に分けられない。また、例えば、コラーゲン溶液をインクジェットノズルから放出することで、右半球と左半球とで性質の異なるコラーゲンビーズを作製しようとしても、やはりコラーゲンのゲル化が間に合わず、コラーゲン溶液(コラーゲン)が混合してしまうため、右半球のコラーゲンと左半球のコラーゲンとを明確に分けられない。
したがって、従来は、異方性を有するコラーゲンビーズを作製することができず、試験管内(in vitro)において生体内(in vivo)における異方的な微小環境を再現することはできなかった。
本発明は、上記のような点に着目したもので、個々の幹細胞の分化誘導や異種細胞間の共培養等の従来の手法では困難であった細胞培養法を実施できる異方性ハイドロゲル、この異方性ハイドロゲルを用いたマイクロビーズ、マイクロビーズの製造方法、異方性ハイドロゲルを利用した足場及び足場の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、単一粒子内に区画化された複数種類の成分を含有することで異方性を有し、複数種類の成分のうち少なくとも1つは生体成分である。例えば、本発明の一態様に係るマイクロビーズは、複数種類の成分として、性質が異なる複数のコラーゲンを含有するマイクロビーズであることを要旨とする。
また、本発明の他の態様は、(a)コラーゲンとアルギン酸とを混合した混合溶液を生成し、(b)この混合溶液に含有されるアルギン酸のゲル化により、ゲル化していないコラーゲンを含む混合ビーズを作製し、(c)混合ビーズの表面に薄膜を形成し、(d)混合ビーズの内部においてアルギン酸のゲルの溶解とコラーゲンのゲル化とを行うマイクロビーズの製造方法であることを要旨とする。
本発明のさらに他の態様は、(a) マイクロチャンバー内に区画化された複数種類の成分を含有し、(b)複数種類の成分のうち少なくとも1つは生体成分であり、(c)複数種類の成分間の境界面の法線方向がマイクロチャンバーの底面の法線方向と交差している足場(培養環境)であることを要旨とする。
本発明のさらに他の態様は、(a)コラーゲンとアルギン酸とを混合した混合溶液を生成し、(b)混合溶液に含有されるアルギン酸のゲル化により、ゲル化していないコラーゲンを含む混合ビーズを作製し、(c)混合ビーズをマイクロチャンバーに収容し、(d)マイクロチャンバーの内部においてアルギン酸のゲルの溶解とコラーゲンのゲル化とを行う足場の製造方法であることを要旨とする。
本発明のさらに他の態様は、境界面で囲まれた立体形状としての占有領域を有し、この占有領域が複数種類の成分のそれぞれを含有する複数の領域に互いに区画化され、複数種類の成分のうち少なくとも1つは生体成分であることを特徴とする異方性ハイドロゲルであることを要旨とする。
本発明によれば、個々の幹細胞の分化を誘導することや、高い生存率で単一粒子内に細胞を共培養させることが可能になる異方性ハイドロゲル、この異方性ハイドロゲルを用いたマイクロビーズ、マイクロビーズの製造方法、異方性ハイドロゲルを利用した足場及び足場の製造方法を提供することができる。
第1実施形態に係るコラーゲンヤヌスビーズの構成を示す概念図である。 コラーゲンヤヌスビーズを作製するためのマイクロ流体デバイスの構成例を示す概念図である。 コラーゲンヤヌスビーズの製造方法について説明するための概念図である。(a)〜(c)は作製の過程を示す図である。(d)は内部Aを示す図である。(e)は内部Bを示す図である。 コラーゲンヤヌスビーズを利用した細胞の培養方法について説明するための概念図である。(a)は分化誘導を示す図である。(b)は共培養を示す図である。 第2実施形態に係る異方性ハイドロゲルを用いた足場の構成を示す概念図である。 足場の変形例の構成を示す概念図である。(a)はコラーゲンの比率を等分した図である。(b)はコラーゲンの比率を変更した図である。 足場を作製するためのマイクロチャンバーアレイの構成例を示す概念図である。 足場の製造方法について説明するための概念図である。(a)〜(c)は作製の過程を示す図である。(d)は内部Cを示す図である。(e)は内部Dを示す図である。 コラーゲン−アルギン酸混合ビーズの形状を説明するための概念図である。(a)は扁球上を示す図である。(b)は長球状を示す図である。 シータ管の先端部の形状を説明するための概念図である。 足場の製造方法について説明するための概念図である。 足場を利用した細胞の培養方法について説明するための概念図である。(a)は分化誘導を示す図である。(b)は共培養を示す図である。 培養した細胞の観察方法について説明するための概念図である。 足場を利用した細胞の培養の実験結果について説明するための画像である。(a)は培養前を示す図である。(b)は培養後を示す図である。 従来の足場を利用した観察方法について説明するための概念図である。
次に、図面を参照して、本発明の第1及び第2実施形態について説明する。
以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な構成要素については以下の説明を参酌して判断すべきものである。
また、以下に示す第1及び第2実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構造や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成要素の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。さらに、以下の説明では、本発明の第1及び第2実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の細部について記載されるが、かかる特定の細部がなくても1つ以上の実施態様が実施できることは明らかである。他にも図面を簡潔にするために、周知の構造及び装置が略図で示されている。
<第1実施形態>
第1実施形態に係る異方性ハイドロゲルは、図1に示すように、境界面(外形面)で囲まれた立体形状としての占有領域(1a,1b)を有し、この占有領域が複数種類の成分のそれぞれを含有する複数の領域1a,1bに互いに区画化され、複数種類の成分のうち少なくとも1つは生体成分であり、且つ異方性を有するハイドロゲルである。第1実施形態に係る異方性ハイドロゲルを用いたマイクロビーズとしては、ビーズ材料としてコラーゲンを採用した、異方性を有しているコラーゲンヤヌスビーズ10を例示的に説明する。
(コラーゲンヤヌスビーズの構成)
図1に示すように、第1実施形態に係るコラーゲンヤヌスビーズ10は、単一粒子内において、内部に区画化された2つのコラーゲン(以下、「第1のコラーゲン1a」、「第2のコラーゲン1b」とも呼ぶ)を含んで異方性を有しており、表面全体が薄膜2で被覆されている。なお、図1では、説明のため、表面の薄膜2の一部を破断して開放し、内部の第1のコラーゲン1aと、第2のコラーゲン1bとを図示している。また、図1では、説明のため、薄膜2を厚めに記載しているが、実際には薄膜2の厚さは極薄となっている。
第1のコラーゲン1aと第2のコラーゲン1bとは、互いに性質が異なるコラーゲンである。コラーゲンの性質としては、例えば、分子修飾、濃度、及び型(種類)のうち少なくとも1つを用いることができる。分子修飾としては、例えば、蛍光染色が挙げられる。また、型としては、例えば、コラーゲンの分類を表すI型、II型、III型が挙げられる。
なお、第1実施形態に係るコラーゲンヤヌスビーズ10として、内部に2種類のコラーゲンを有する事例について説明するが、2種類に限定されない。3種類以上のコラーゲンを有するコラーゲンヤヌスビーズ10を作製することも技術的に可能である。
また、第1実施形態に係る異方性ハイドロゲルの種類としては、コラーゲンを想定しているが、コラーゲンに限定されない。例えば、コラーゲン以外にも、キトサンゲル、ゼラチン、ヒアルロン酸ゲル、ラミニンゲル、ペプチドゲル、フィブリンゲル、或いはこれらの混合物等を基材とするハイドロゲルを用いることができる。市販されている製品として、例えば、マトリゲル(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)を用いても良い。また、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン等の水溶性ポリマーに紫外線や放射線を照射して形成することができるハイドロゲル等を用いても良い。また、第1実施形態に係る異方性ハイドロゲルとして、超分子ハイドロゲル等を用いても良い。超分子ハイドロゲルは、モノマー分子が自己集合した非共有結合性のハイドロゲルであり、松本真治他著、「スマートバイオマテリアルとしての超分子ハイドロゲル」、ドージンニュース(DojinNews)、第118巻、p.1-17、2006年に具体的に説明されている。
すなわち、第1実施形態に係るコラーゲンヤヌスビーズ10は、コラーゲン以外の異方性ハイドロゲルを有するマイクロビーズとすることも可能である。例えば、第1のコラーゲン1aと第2のコラーゲン1bとのうち少なくとも一方を、コラーゲン以外の異方性ハイドロゲルに変更することも可能である。
また、上記の異方性ハイドロゲルの調製にあたっては、水と混じりあう性質を有する水性有機溶媒、エタノール、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を添加しても良い。異方性ハイドロゲルの強度を高めるために適宜の成分や溶媒を配合することもできる。このような観点から、例えば、ポリビニルアルコール異方性ハイドロゲルの調製のために溶媒としてジメチルスルホキシドを添加することも可能である。
薄膜2は、ポリ−L−リジン(Poly-L-lysine(PLL))膜である。なお、ポリカチオン性の高分子により形成された膜を用いても良い。詳細については後述するが、第1実施形態に係るマイクロビーズ製造方法では、コラーゲンヤヌスビーズ10の作製の前段階としてコラーゲン溶液とアルギン酸ナトリウム溶液との混合溶液を用いてコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6を作製する。このとき、表面が負に帯電したアルギン酸に正に帯電したポリマー(ポリ−L−リジン(PLL))が静電力で結合して、薄膜2が形成される。
(マイクロ流体デバイスの構成)
第1実施形態に係るマイクロビーズの製造方法では、コラーゲンヤヌスビーズ10を作製するために、遠心力を駆動源としたマイクロ流体デバイス20を用いる。マイクロ流体デバイス20としては、例えば特開2012−176374号公報に記載の液体ゲル化装置を使用することができる。
図2に示すように、マイクロ流体デバイス20は、マイクロチューブ21と、シータ管22a、22bとを備える。
マイクロチューブ21は、円筒状の胴体部21aと、胴体部21aの一端に形成され、ゲル化剤液4を収容している液室21bと、胴体部21aの内部に配置され、胴体部21aの中心軸位置にシータ管22a、22bをゲル化剤液4と予め定めた距離Lを隔てて固定する固定部21cとを備えている。ゲル化剤液4としては、例えば、コラーゲン溶液(後述)を含んだゲル化対象溶液5a、5bをゲル化可能な液体を用いることができる。
シータ管22a、22bは、液室21b側の一端(先端)が先細りとなっている毛細管(キャピラリ)である。そして、ゲル化対象溶液5a、5bを後端から内部に充填可能とし、そのゲル化対象溶液5a、5bを先端からゲル化剤液4内に放出可能となっている。
マイクロ流体デバイス20では、マイクロチューブ21の内部に複数のシータ管22a、22bが固定される。例えば、複数のシータ管22a、22bを束ねたマルチバレル管を固定する。若しくは、一本のシータ管の内部の空洞を複数系統に区画化することで、擬似的に複数のシータ管22a、22bとしても良い。実際には、シータ管22a、22bに限定されるものではなく、少なくとも、複数種類のゲル化対象溶液5a、5bが同時に先端から放出されることで、放出されたゲル化対象溶液5a、5b同士が互いに接触する構造であれば良い。図2の例では、2本(2系統)のシータ管22a、22bを用いて、コラーゲン溶液(コラーゲン)を含んだゲル化対象溶液5a、5bを2種類放出できるように構成している。すなわち、シータ管22a、22bの本数(系統数)を増やすことで、放出後に互いに接触するゲル化対象溶液5a、5bの種類を増やすことができる。
図示しないが、マイクロチューブ21は、小型の遠心機に取り付けられ、シータ管22a、22b内のゲル化対象溶液5a、5bに遠心力が印加される。この遠心力により、シータ管22a、22bの先端からゲル化対象溶液5a、5bが放出され、このゲル化対象溶液5a、5bがマイクロチューブ21内のゲル化剤液4と接触してゲル化し、ビーズが形成される。第1実施形態に係るマイクロビーズの製造方法では、コラーゲン溶液とアルギン酸ナトリウム溶液とを混合した混合溶液をゲル化対象溶液5a、5bとして用いることで、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6が形成される。コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6の詳細については後述する。
また、小型で高遠心力の遠心機により遠心力が印加され、シータ管22a、22bの先端からゲル化対象溶液5a、5bが放出されることにより、従来の手法では作製することが困難であった直径20μm以上200μm以下のコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6を作製することができる。特に、直径80μm以上120μm以下のコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6を作製することができる。そのため、例えば、直径100μm程度の極めて微小なコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6(コラーゲンヤヌスビーズ10)を作製することができる。従来の手法では、直径100μm程度の微小なサイズのコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6を作製することはできなかった。コラーゲンヤヌスビーズ10内部で細胞や組織を培養する場合、直径100μm程度の大きさであると非常に価値がある。例えば、コラーゲンヤヌスビーズ10のサイズが大きいと、受動的な拡散により内部に栄養が入っていかないため、中心部では細胞や組織が死滅してしまう傾向にある。しかし、直径100μm程度の大きさであれば、受動的な拡散により内部に栄養が入っていくため、中心部まで十分に栄養が行き渡る。遠心力を高くすることや、シータ管22a、22bの先端径を小さくすることで、より微小なサイズのコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6を作製することも可能である。なお、単細胞の大きさが直径10μm程度であるため、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6の大きさは直径20μm以上であると好ましい。
(コラーゲンヤヌスビーズの製造方法)
まず、ゲル化対象溶液5a、5bとして、コラーゲン溶液(5[mg/mL])と5%([w/w])のアルギン酸ナトリウム溶液とを3:2([v/v])で混合した混合溶液を生成する。アルギン酸は、コラーゲンに比べると非常にゲル化しやすく、ゲル化剤液4に接触すると瞬時に固まる。それゆえ、ゲル化対象溶液5a、5b同士が混合してしまう前に、ゲル化対象溶液5a、5b内の各コラーゲンをアルギン酸で固めることができる。そのため、コラーゲンのゲル化の完了を待たずに、コラーゲンを一旦固めておくことが可能となる。
また、蛍光染色の異なる複数のコラーゲンを有するコラーゲンヤヌスビーズ10を作製する場合には、異なる蛍光染色を施した複数種類の混合溶液を用いる。例えば、青色の蛍光染色を施した混合溶液と、赤色の蛍光染色を施した混合溶液との2種類の混合溶液とをゲル化対象溶液5a、5bとして用いることで、赤く蛍光染色したコラーゲンからなる半球(コラーゲン半球)と、青く蛍光染色したコラーゲンからなる半球(コラーゲン半球)とを有し、擬似的に異方性を有するコラーゲンヤヌスビーズ10を作製可能である。
また、濃度や型の異なる複数のコラーゲンを有するコラーゲンヤヌスビーズ10を作製する場合には、コラーゲン溶液に含有されるコラーゲンの濃度又は型や、混合溶液に含有されるコラーゲン溶液の比率等を変更した複数種類の混合溶液を用いる。例えば、ゲル化対象溶液5a、5bそれぞれのコラーゲンの濃度を変更することで、ゲル化後のコラーゲンの機械強度を変更することができる。これにより、硬いコラーゲン半球と、軟らかいコラーゲン半球とを有し、異方性を有するコラーゲンヤヌスビーズ10が作製可能である。
次に、上記の混合溶液(ゲル化対象溶液5a、5b)をシータ管22a、22bに充填し、このシータ管22a、22bを、ゲル化剤液4を入れたマイクロチューブ21内に固定し、このマイクロチューブ21に遠心機を用いて遠心力を印加する。この遠心力により、シータ管22a、22b内の混合溶液(ゲル化対象溶液5a、5b)が、マイクロチューブ21内のゲル化剤液4に向かって放出される。遠心力としては、2000[G]を3分間印加する。また、ゲル化剤液4としては、塩化カルシウム溶液(500[mM])を80[μL]用いる。この塩化カルシウム溶液により、混合溶液(ゲル化対象溶液5a、5b)に含まれるアルギン酸ナトリウムがアルギン酸カルシウムのハイドロゲルとなって固まり、図3(a)に示すようにコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6が形成される。
図3(a)に示したコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6の内部Aの詳細を、図3(d)に示す。図3(d)に示すように、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6の内部Aでは、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6を構成するゲル化対象溶液5a、5bのうちの、第1のコラーゲン1a及び第2のコラーゲン1bは未だゲル化していないが、アルギン酸7はゲル化してアルギン酸カルシウムのハイドロゲルのネットワークを形成し、ゲル化していない第1のコラーゲン1a及び第2のコラーゲン1bを保持した状態となっている。
次に、形成されたコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6を塩化ナトリウム溶液(150[mM])で洗浄した後、ポリ−L−リジン(PLL)溶液に浸漬する。このポリ−L−リジン(PLL)溶液への浸漬により、図3(b)に示すように、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6の表面に、ポリ−L−リジン(PLL)膜が薄膜2として形成される。
次に、薄膜2が形成されたコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6を生理食塩水で洗浄した後、その生理食塩水内にアルギン酸リアーゼ溶液を最終濃度200[μg/mL]となるように加え37[℃]で10分間温めて、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6にアルギナーゼ処理を行う。生理食塩水としては、例えば、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水を用いる。このアルギナーゼ処理により、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6内の、アルギン酸カルシウムのハイドロゲルの溶解(溶融)と、コラーゲンのゲル化とが行われる。そして、表面に薄膜2が形成されたコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6の内部からアルギン酸カルシウムのハイドロゲルが除去され、内部にゲル化した第1のコラーゲン1a及び第2のコラーゲン1bが残され、図3(c)に示すように、コラーゲンヤヌスビーズ10が作製(製造)される。なお、図3(c)では、説明のため、コラーゲンヤヌスビーズ10の表面の薄膜2の一部を破断して開放し、内部の第1のコラーゲン1aを図示している。
図3(c)に示したコラーゲンヤヌスビーズ10の内部Bの詳細を、図3(e)に示す。図3(e)に示すように、コラーゲンヤヌスビーズ10の内部Bでは、アルギン酸7(アルギン酸カルシウムのハイドロゲル)は完全に除去され、第1のコラーゲン1a及び第2のコラーゲン1bのゲル化が完了し、コラーゲンヤヌスビーズ10の内部に第1のコラーゲン1a及び第2のコラーゲン1bのファイバネットワークが構築されている。
上記の各手順に従うことで、単一粒子内において、内部に区画化された第1のコラーゲン1aと第2のコラーゲン1bとを有し、表面が薄膜2(ポリ−L−リジン(PLL)膜)で被覆されている状態のコラーゲンヤヌスビーズ10を作製することができる。
なお、マイクロ流体デバイス20によるコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6の射出形成、ポリ−L−リジン(PLL)膜のコーティング、及びアルギン酸リアーゼによるアルギン酸カルシウムのハイドロゲルの溶解という上記の各手順におけるビーズ(コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6、コラーゲンヤヌスビーズ10)の直径はおよそ均一である。
また、最終的に作製されたコラーゲンヤヌスビーズ10は2つの異なるコラーゲン半球を有しており、それぞれのコラーゲン半球においてコラーゲン(第1のコラーゲン1a、第2のコラーゲン1b)の異方的なコラーゲンゲルファイバネットワークが構築されている。すなわち、このコラーゲンヤヌスビーズ10は、単一粒子内において複数のコラーゲンが区画化されて異方的なファイバネットワークが実現されている。
区画化されている複数のコラーゲン(第1のコラーゲン1a、第2のコラーゲン1b)の各々は、均一サイズのゲルである。そのため、細胞層を含む生体内の細胞表面状態を模倣することも可能である。また、ゲル内部に少なくとも1種類の細胞を封入して培養することも可能である。また、コラーゲンヤヌスビーズ10内部で複数の異なる細胞層を構成し、複数の細胞層により形成される異方的な組織を模倣することも可能である。更に、複数のコラーゲンの境界上で、複数の異なる異方的な細胞境界環境を模倣することも可能である。
(コラーゲンヤヌスビーズを利用した細胞の培養)
上述したように、コラーゲンヤヌスビーズ10は、図4(a)、(b)に示すように、第1のコラーゲン1aと第2のコラーゲン1bとのそれぞれに細胞8a、8bを添加して培養できる。なお、図4(a)、(b)では薄膜2については図示及び説明を省略する。
図4(a)の例では、第1のコラーゲン1aと第2のコラーゲン1bとのそれぞれに細胞8a、8bを添加して培養することで細胞の分化誘導を行っている。この場合、第1のコラーゲン1aに添加して培養した細胞8aは第1のタイプの細胞となり、第2のコラーゲン1bに添加して培養した細胞8bは第2のタイプの細胞となり、互いに異なるタイプの細胞に変化する。また、図4(b)の例では、第1のコラーゲン1aと第2のコラーゲン1bとの境界上で層状培養することで異種細胞8a、8b間の共培養を行っている。この場合、第1のコラーゲン1aに添加して培養した細胞8aと、第2のコラーゲン1bに添加して培養した細胞8bとが結合して、細胞8a、8bのネットワークが形成される。
このように、第1実施形態に係るコラーゲンヤヌスビーズ10を用いることにより、個々の細胞8a、8b(幹細胞)の分化誘導や、単一粒子内における異種細胞8a、8b間の共培養等の従来の手法では困難であった異方的なコラーゲンゲルファイバネットワークを用いた細胞培養法を実施することが可能になる。
また、コラーゲンヤヌスビーズ10を作製する際に、分子修飾として、赤色の蛍光染色を施した細胞8aと青色の蛍光染色を施した細胞8bとを混合してコラーゲンヤヌスビーズ10を作製する場合、青く蛍光染色したコラーゲン半球には赤く蛍光染色した細胞8aを封入し、赤く蛍光染色したコラーゲン半球には青く蛍光染色した細胞8bを封入する。細胞8a、8bとして、例えば、蛍光染色を施したNIH/3T3細胞を用いる。コラーゲン半球や、封入される細胞8a、8bを、蛍光染色により視覚的に識別可能にすることで、細胞8a、8bの封入を制御し、選択的に微小環境に細胞8a、8bを封入することが可能となる。また、封入した細胞8a、8bに対し生死判定を行ったところ、細胞8a、8bの生存率は約86%であり、非常に高い生存率で封入をすることが可能となる。
なお、上記の説明では、コラーゲンヤヌスビーズ10に細胞8a、8bを封入する事例について説明したが、コラーゲンヤヌスビーズ10内部には、細胞、タンパク質、脂質、糖類、核酸類、抗体等の生体成分を1種以上添加することができる。細胞8a、8bの種類は、特に限定されないが、例えば、分化万能性を有するES細胞やiPS細胞、分化多能性を有する各種の幹細胞(造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞等)、分化単一性を有する幹細胞(肝幹細胞、生殖幹細胞等)等の他、分化した各種の細胞、例えば、骨格筋細胞や心筋細胞等の筋細胞、神経細胞、線維芽細胞、上皮細胞、肝細胞、膵β細胞、皮膚細胞等を挙げることができる。もっとも細胞や生体成分は、上記に例示したものに限定されることはない。また、コラーゲンヤヌスビーズ10には、同時に非生体成分を添加しても良い。例えば、カーボンナノファイバ等の繊維類、触媒物質等の無機物質類、抗体等で被覆されたビーズ類、マイクロチップ等の人工物を添加することも可能である。
(第1実施形態の効果)
第1実施形態に係るマイクロビーズの製造方法によれば、遠心力を駆動源としたマイクロ流体デバイス20を用いることにより、従来の手法では作製することが困難であった、異方性を有するコラーゲンヤヌスビーズ10を作製することができる。また、細胞8a、8bに対して毒性を有する油や有機溶媒等の試薬を用いることなく、直径100μm程度のきわめて微小なコラーゲンヤヌスビーズ10を大量に作製することができる。
また、作製されたコラーゲンヤヌスビーズ10は、表面のポリ−L−リジン(PLL)膜の薄膜2と、内部の2種類のコラーゲン(第1のコラーゲン1a、第2のコラーゲン1b)半球とを有しており、それぞれのコラーゲン半球において、コラーゲン(第1のコラーゲン1a、第2のコラーゲン1b)のファイバネットワークを確認することができる。
また、コラーゲンヤヌスビーズ10内部の異なる2種類のコラーゲン半球を視覚的に識別可能にすることで、異なる蛍光染色を施した複数の細胞8a、8b(例えば、NIH/3T3細胞)を用いて、封入対象となるそれぞれの細胞8a、8bをコラーゲンヤヌスビーズ10内部の異なる複数のコラーゲン半球に選択的に封入可能である。その際、細胞8a、8bの生存率は86%となり、非常に高い生存率で封入可能であった。
また、第1実施形態に係るコラーゲンヤヌスビーズ10を用いることで、異方性を有した微小環境における細胞8a、8bの挙動の更なる理解と、これに基づく細胞培養や組織工学等の工学的な応用が期待される。
<第2実施形態>
第2実施形態に係る異方性ハイドロゲルは、図5に示すように、境界面(外形面)で囲まれた立体形状としての占有領域(3a,3b)を有し、この占有領域が複数種類の成分のそれぞれを含有する複数の領域3a,3bに互いに区画化され、複数種類の成分のうち少なくとも1つは生体成分であり、且つ異方性を有するハイドロゲルである。第2実施形態に係る異方性ハイドロゲルを用いた足場30及びその製造方法では、第1実施形態に係るマイクロビーズ(コラーゲンヤヌスビーズ10)の薄膜2に代えて、マイクロチャンバー42を用いて微少な異方性ハイドロゲル(例えば、コラーゲン)の塊(占有領域)を保持する構成とした点が、第1実施形態に係るマイクロビーズ及びその製造方法と異なる。
(足場の構成)
図5に示すように、第2実施形態に係る異方性ハイドロゲルを用いた足場30は、マイクロチャンバー42内において、内部に区画化された2つのコラーゲン(以下「第1のコラーゲン3a」、「第2のコラーゲン3b」とも呼ぶ)からなる異方性ハイドロゲルの微少な塊(占有領域)を有しており、第1のコラーゲン3aと第2のコラーゲン3bとの境界面3cの法線方向がマイクロチャンバー42の底面42bの法線方向と交差している。図5の例では、境界面3cの法線方向は底面42bの法線方向と直交している。第1のコラーゲン3aと第2のコラーゲン3bとは互いに性質が異なる異方的なコラーゲンである。
なお、第2実施形態に係る異方性ハイドロゲルを用いた足場30として、内部に2種類のコラーゲンを有する異方的・複合的な事例について説明するが、2種類に限定されない。図6(a)、(b)に示すように、3種類以上のコラーゲンを有する足場30を作製することも技術的に可能である。また、各コラーゲンの比率を変更することも可能である。図6(a)の例では、3種類のコラーゲン(第1のコラーゲン3a、第2のコラーゲン3b、第3のコラーゲン3d)を有し、各コラーゲンの比率が互いに等しくなっている。また、図6(b)の例では、同様に3種類のコラーゲンを有するが、1つのコラーゲン(第3のコラーゲン3d)の比率が他の2つのコラーゲンの比率よりも大きくなっている。
また、第2実施形態に係る異方性ハイドロゲルの種類としては、コラーゲンを想定しているが、コラーゲンに限定されない。例えば、コラーゲン以外にも、キトサンゲル、ゼラチン、ヒアルロン酸ゲル、ラミニンゲル、ペプチドゲル、フィブリンゲル、マトリゲル、超分子ハイドロゲル或いはそれらの混合物等を基材とするハイドロゲルを用いることができる。また、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン等の水溶性ポリマーに紫外線や放射線を照射して形成可能なハイドロゲルを用いても良い。
(マイクロチャンバーアレイの構成)
第2実施形態に係る異方性ハイドロゲルを利用した足場30の製造方法では、異方的・複合的な足場30を作製するために、マイクロチャンバーアレイ40を用いる。図7に示すように、マイクロチャンバーアレイ40は、平板状の本体プレート41と、本体プレート41の一方の面にアレイ状に配列された複数のマイクロチャンバー42とを備える。
マイクロチャンバー42は、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6を1個だけ収容可能な断面円形状の凹部である。マイクロチャンバー42の直径は、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6の直径よりも若干大きめである。例えば、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6の直径が100[μm]程度である場合には、マイクロチャンバー42の直径は150[μm]程度とする。マイクロチャンバーアレイ40の材質としては、第1のコラーゲン3a及び第2のコラーゲン3bの付着し易さを考慮すると、シリコンゴムが好ましい。
(足場の製造方法)
まず、第1実施形態に係る異方性ハイドロゲルの製造方法と同様の手順で、マイクロ流体デバイス20を用い、図8(a)に示すように、境界面(外形面)で囲まれた異方性ハイドロゲルの塊(占有領域)としてのコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6を形成する。
図8(a)に示したコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6の内部Cの詳細を、図8(d)に示す。図8(d)に示すように、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6の内部Cでは、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6を構成するゲル化対象溶液5a、5bのうちの、第1のコラーゲン3a及び第2のコラーゲン3bは未だゲル化していないが、アルギン酸7はゲル化してアルギン酸カルシウムのハイドロゲルのネットワークを形成し、ゲル化していない第1のコラーゲン3a及び第2のコラーゲン3bを保持した状態となっている。
また、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6は、図9(a)に示すように、ゲル化対象溶液5a、5b間の境界面5cの法線方向と交差する方向に潰れている扁球状(球が扁平化した形状)の微少な塊や、図9(b)に示すように、境界面5cの法線方向に伸びている長球状(球が伸長した形状)の微少な塊となるように形成する。図9(a)の例では、境界面5cの法線方向と直交する方向に潰れている扁球状の微少な塊となっている。また、図9(b)の例では、境界面5cの法線方向と平行な方向に伸びている長球状の微少な塊となっている。なお、「扁球状」や「長球状」には、完全な扁球形状や長球形状だけでなく、これら扁球形状や長球形状を組合せた形状等の近似した形状等も含まれる。
コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6の扁平の度合いを調整する方法としては、例えば、シータ管22a、22bの先端とゲル化剤液4の液面との間の距離L(図2参照)を調整する方法を採用できる。この方法では、距離Lが長くなるほど、ゲル化対象溶液5a、5bがゲル化剤液4に衝突する際の速度が増大するため、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6を扁平化することができる。また、例えば、図10に示すように、シータ管22a、22bの先端部の空洞を、シータ管22a、22b間を区画化する境界部22cの法線方向に伸長することで、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6を伸長することができる。
次に、図11に示すように、マイクロチャンバー42が形成された面を上方に向けた、複数のマイクロチャンバーアレイ40をシャーレ50内に載置し、シャーレ50内に緩衝液51を注入して、すべてのマイクロチャンバーアレイ40を緩衝液51下に沈める。緩衝液51としては、例えば、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)を用いる。
次に、緩衝液51に沈めた各マイクロチャンバーアレイ40上に、複数のコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6を撒いて、図8(b)に示すように各マイクロチャンバー42にコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6を異方性ハイドロゲルの微少な塊として収容させる。その際、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6は、ゲル化対象溶液5a、5b間の境界面5cの法線方向と交差する方向に潰れている扁球状や、境界面5cの法線方向に伸びている長球状となっているため、第1のコラーゲン3a及び第2のコラーゲン3bの境界面5cの法線方向がマイクロチャンバー42の底面42bの法線方向と交差した状態になる。図8(b)の例では、境界面5cの法線方向は底面42bの法線方向と直交している。
次に、緩衝液51が注入されたシャーレ50内にアルギン酸リアーゼ溶液を最終濃度200[μg/mL]となるように加え37[℃]で10分間温めて、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6にアルギナーゼ処理を行う。このアルギナーゼ処理により、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6内のアルギン酸カルシウムのハイドロゲルのネットワークの溶解と、コラーゲンのゲル化とが行われる。そして、マイクロチャンバー42に収容されたコラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6の内部からアルギン酸カルシウムのハイドロゲルが除去され、コラーゲン−アルギン酸混合ビーズ6内部にゲル化した第1のコラーゲン3a及び第2のコラーゲン3bが残される。すると、図8(c)に示すように、区画化が保たれた状態で第1のコラーゲン3a及び第2のコラーゲン3bがマイクロチャンバー42内に広がり、シャーレ50内のマイクロチャンバーアレイ40のマイクロチャンバー42それぞれに異方的・複合的な足場30が作製される。このような足場30を細胞等の培養対象の培養及び観察に用いることで、培養対象の観察を、より効率よく行うことが可能となる。
図8(c)に示した足場30の内部Dの詳細を、図8(e)に示す。図8(e)に示すように、足場30の内部Dでは、アルギン酸7(アルギン酸カルシウム)は完全に除去され、第1のコラーゲン3a及び第2のコラーゲン3bがゲル化し、足場30の内部に第1のコラーゲン3a及び第2のコラーゲン3bのファイバネットワークが構築されている。
上記の各手順に従うことで、マイクロチャンバー42内において、内部に区画化された第1のコラーゲン3aと第2のコラーゲン3bとからなる異方的・複合的な異方性ハイドロゲルの微少な塊を有し、第1のコラーゲン3aと第2のコラーゲン3bとの境界面3cの法線方向がマイクロチャンバー42の底面42bの法線方向と交差している状態の足場30を作製することができる。区画化されている複数のコラーゲンの各々は均一サイズの異方性ハイドロゲルからなる。そのため、細胞層を含む生体内の細胞表面状態を模倣することも可能である。また、ハイドロゲル内部に少なくとも1種類の細胞を封入して培養することも可能である。また、足場30内部で複数の異なる細胞層を構成し、複数の細胞層により形成される異方的な組織を模倣することも可能である。更に、複数のコラーゲンの境界上で、複数の異なる異方的な細胞境界環境を模倣することも可能である。
(異方性ハイドロゲルを利用した細胞の培養)
上述したように、第2実施形態に係る異方性ハイドロゲルは、図12(a)、(b)に示すように、第1のコラーゲン3aと第2のコラーゲン3bとのそれぞれに細胞8a、8bを添加して、異方的な微小環境で培養する足場30として利用できる。細胞8a、8bの添加方法としては、例えば、ゲル化対象溶液5a、5bに細胞8a、8bを混合する方法や、足場30の形成後に足場30に細胞8a、8bを撒く方法を用いることができる。
図12(a)の例では、第1のコラーゲン3aと第2のコラーゲン3bとのそれぞれに細胞8a、8bを添加して培養することで細胞の分化誘導を行っている。この場合、第1のコラーゲン3aに添加して培養した細胞8aは第1のタイプの細胞となり、第2のコラーゲン3bに添加して培養した細胞8bは第2のタイプの細胞となり、互いに異なるタイプの細胞に変化する。また、図12(b)の例では、第1のコラーゲン3aと第2のコラーゲン3bとの境界面3c上で層状培養することで異種細胞8a、8b間の共培養を行っている。この場合、第1のコラーゲン3aに添加して培養した細胞8aと、第2のコラーゲン3bに添加して培養した細胞8bとが結合して、細胞のネットワークが形成される。
このように、第2実施形態に係る異方性ハイドロゲルを利用した異方的な足場30を用いることにより、個々の細胞8a、8b(幹細胞)の分化誘導や、単一粒子内における異種細胞(細胞8a、8b)間の共培養等の従来の手法では困難であった細胞培養法を実施することが可能になる。
また、培養した細胞8a、8bの観察は、図13に示すように、マイクロチャンバー42の形成面と反対側に配置され、マイクロチャンバー42内の第1及び第2のコラーゲン3a、3bの細胞8a、8bを拡大表示するマイクロスコープ60で行うことができる。
上述したように、足場30は、境界面3cの法線方向がマイクロチャンバー42の底面42bの法線方向と交差(例えば、直交)している。それゆえ、マイクロスコープ60では、境界面3cの法線方向と交差する方向から、境界面3c付近での細胞8a、8bを拡大して観察することができる。その結果、境界面3c付近での細胞8a、8bの状態をより詳細に観察することが可能となる。そのため、特に、がん細胞の遊走試験、不均一なマイクロ環境化における幹細胞の分化誘導試験、神経細胞の突起進展試験等に好適である。
ちなみに、図15に示すように、第1のコラーゲン3aと第2のコラーゲン3bとの境界面3cの法線方向とマイクロチャンバー42の底面42bの法線方向とが交差していない足場30、つまり境界面3cと底面42bとが平行である従来の足場30では、マイクロスコープ60は、境界面3cの法線方向から細胞8a、8bを表示することになる。そのため、境界面3c付近での細胞8a、8bの状態を詳細に観察することが困難となる。
また、足場30を作製する際に、分子修飾として、赤色の蛍光染色を施した細胞8aと青色の蛍光染色を施した細胞8bとを混合して足場30を作製する場合、青く蛍光染色した第1のコラーゲン3aには赤く蛍光染色した細胞8aを封入し、赤く蛍光染色した第2のコラーゲン3bには青く蛍光染色した細胞8bを封入する。細胞8a、8bとしては、例えば、蛍光染色を施したNIH/3T3細胞を用いる。第1及び第2のコラーゲン3a、3bや細胞8a、8bを蛍光染色により視覚的に識別可能にすることで、細胞8a、8bの封入を制御し、選択的に微小環境に細胞8a、8bを封入することが可能となる。
なお、上記の説明では、足場30に細胞8a、8bを封入する事例について説明したが、足場30内部には、細胞、タンパク質、脂質、糖類、核酸類、抗体等の生体成分を1種以上添加することができる。細胞8a、8bの種類は、特に限定されないが、例えば、分化万能性を有するES細胞やiPS細胞、分化多能性を有する各種の幹細胞、分化単一性を有する幹細胞等の他、分化した各種の細胞、例えば、骨格筋細胞や心筋細胞等の筋細胞、神経細胞、線維芽細胞、上皮細胞、肝細胞、膵β細胞、皮膚細胞等を挙げることができる。もっとも細胞や生体成分は、上記に例示したものに限定されることはない。また、足場30には、同時に非生体成分を添加しても良い。例えば、カーボンナノファイバ等の繊維類、触媒物質等の無機物質類、抗体等で被覆されたビーズ類、マイクロチップ等の人工物を添加することも可能である。
(第2実施形態の効果)
第2実施形態に係る異方性ハイドロゲルを利用した足場及びその製造方法によれば、マイクロチャンバー42内において、内部に区画化された第1のコラーゲン3aと第2のコラーゲン3bとを有して異方的・複合的な微小環境を実現しており、第1のコラーゲン3aと第2のコラーゲン3bとの境界面3cの法線方向がマイクロチャンバー42の底面42bの法線方向と交差している異方的・複合的な構造を有した足場30を作製できる。また、細胞8a、8bに対して毒性を有する油や有機溶媒等の試薬を用いることなく、直径150μm程度のきわめて微小な足場30をアレイ状に大量に作製することができる。
また、作製された足場30は、2種類のコラーゲン(第1のコラーゲン3a、第2のコラーゲン3b)を有しており、それぞれのコラーゲンにおいて、コラーゲン(第1のコラーゲン3a、第2のコラーゲン3b)のファイバネットワークを確認することができる。
また、足場30内部の異なる2種類のコラーゲンを視覚的に識別可能にすることで、異なる蛍光染色を施した複数の細胞8a、8bを用いて、封入対象となるそれぞれの細胞8a、8bを足場30内部の異なる複数のコラーゲンに選択的に封入することができる。
また、図14(a)に示すように、細胞8a、8bとしてNIH/3T3細胞を足場30に撒いた後、二酸化炭素で満たした環境で、37[℃]で24時間温める実験を行った。この実験により、図14(b)に示すように、NIH/3T3細胞を培養できることを確認できた。なお、図14(a)、(b)では、コラーゲン(第1のコラーゲン3a、第2のコラーゲン3b)には蛍光染色を施されていないため、いずれも同一色となっている。
また、第2実施形態に係る異方性ハイドロゲルを利用した異方的な足場30を用いることで、異なる2種類のコラーゲンの境界面3cの法線方向がマイクロチャンバー42の底面42bの法線方向と交差しているため、培養した細胞8a、8bを、境界面3cの法線方向と交差する方向から観察できる。それゆえ、境界面3c付近での細胞8a、8bの状態を異方的な微小環境としてより詳細に観察することができる。
以上、第1及び第2実施形態を参照して本発明を説明したが、これらの説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態の種々の変形例とともに本発明の別の実施形態も明らかである。したがって、特許請求の範囲は、本発明の範囲及び要旨に含まれるこれらの変形例又は実施形態も網羅すると解すべきである。
1a…第1のコラーゲン、1b…第2のコラーゲン、2…薄膜、3a…第1のコラーゲン、3b…第2のコラーゲン、3c…境界面、3d…第3のコラーゲン3d、4…ゲル化剤液、5a…ゲル化対象溶液、5b…ゲル化対象溶液、5c…境界面、6…アルギン酸混合ビーズ、7…アルギン酸、8a,8b…細胞、10…コラーゲンヤヌスビーズ、20…マイクロ流体デバイス、21…マイクロチューブ、21a…胴体部、21b…液室、21c…固定部、22a…シータ管、22b…シータ管、22c…境界部、30…足場、40…マイクロチャンバーアレイ、41…本体プレート、42…マイクロチャンバー、42a…内周面、42b…底面、50…シャーレ、51…緩衝液、60…マイクロスコープ

Claims (7)

  1. コラーゲンとアルギン酸とを混合した複数種類の混合溶液を生成し、
    複数種類の前記混合溶液の各々を個別に毛細管に充填し、
    遠心力により前記毛細管の先端から前記アルギン酸をゲル化させるゲル化剤液に向かって複数種類の前記混合溶液の各々を放出し、
    前記毛細管の先端から放出された複数種類の前記混合溶液の各々が互いに接触した状態で、前記ゲル化剤液の中で、前記混合溶液に含有される前記アルギン酸ゲル化して、ゲル化していない前記コラーゲンを含む混合ビーズを作製し、
    前記混合ビーズの表面に薄膜を形成し、
    前記アルギン酸のゲルを溶解させる液体の中で前記混合ビーズを所定時間温めることで、前記混合ビーズの内部において前記アルギン酸のゲルの溶解と前記コラーゲンのゲル化とを同時に行うことを特徴とするマイクロビーズの製造方法。
  2. 前記アルギン酸のゲルを溶解させる液体は、アルギン酸リアーゼを含む請求項1に記載のマイクロビーズの製造方法。
  3. 複数種類の前記混合溶液はそれぞれ性質が異なる前記コラーゲンを含有する請求項又はに記載のマイクロビーズの製造方法。
  4. コラーゲンとアルギン酸とを混合した複数種類の混合溶液を生成し、
    複数種類の前記混合溶液の各々を個別に毛細管に充填し、
    遠心力により前記毛細管の先端から前記アルギン酸をゲル化させるゲル化剤液に向かって複数種類の前記混合溶液の各々を放出し、
    前記毛細管の先端から放出された複数種類の前記混合溶液の各々が互いに接触した状態で、前記ゲル化剤液の中で、前記混合溶液に含有される前記アルギン酸ゲル化して、ゲル化していない前記コラーゲンを含む混合ビーズを作製し、
    前記混合ビーズを1個だけ収容可能な凹部であるマイクロチャンバーに前記混合ビーズを収容するとともに、前記マイクロチャンバーの内部に前記アルギン酸のゲルを溶解させる液体を加え、
    前記アルギン酸のゲルを溶解させる液体の中で前記混合ビーズを所定時間温めることで、前記マイクロチャンバーの内部において前記アルギン酸のゲルの溶解と前記コラーゲンのゲル化とを同時に行うことを特徴とする足場の製造方法。
  5. 前記アルギン酸のゲルを溶解させる液体は、アルギン酸リアーゼを含む請求項4に記載の足場の製造方法。
  6. 前記混合ビーズの形状は、複数種類の前記混合溶液間の境界面の法線方向と交差する方向に潰れている扁球状、又は前記境界面の法線方向に伸びている長球状である請求項4又は5に記載の足場の製造方法。
  7. 前記毛細管の先端と前記ゲル化剤液との距離を調整することで、前記混合ビーズの扁平の度合いを調整する請求項に記載の足場の製造方法。
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