JP6816573B2 - 乗員衝撃緩和装置及び乗員衝撃緩和プログラム - Google Patents

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Description

本発明は、衝突時に乗員に発生する衝撃を緩和する乗員衝撃緩和装置及び乗員衝撃緩和プログラムに関する。
従来より、車両が衝突した際に、乗員への衝撃を吸収するなどして乗員を保護する種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
特許文献1に記載の技術では、車両の衝突と衝突方向を事前に検知し、衝突が事前に検知されたときに、衝突方向に応じてシートに対する移動方向及び移動量を決定して、シートを駆動することが提案されている。これにより、事前に車室の変形による乗員身体の損害を避け得る衝突対応空間を確保ことが可能となる。
また、特許文献2に記載の技術では、車両の衝突を検知し、衝突が検知されたときに、シートを駆動することが提案されており、シート減速度が所定のパターンになるように駆動することで、乗員に加わる減速度を低減するができる。
特開2006−44409号公報 特開2006−56440号公報
しかしながら、特許文献1では、乗員の障害を避け得る衝突対応空間を確保することを目的に、事前に衝突を予測してシートの移動方向及び移動量を決定してシートを駆動しているが、乗員に加わる衝撃を緩和することは考慮していないため、改善の余地がある。
また、特許文献2では、衝突後にシートを後方に移動させることで、乗員に加わる減速度を軽減しているが、衝突後にシートを移動するため、乗員に衝突による減速度が加わってからシートが移動するため、乗員への衝撃を緩和するためには改善の余地がある。
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、衝突発生時に乗員を保護する空間を確保しつつ、乗員への衝撃を効果的に緩和することが可能な乗員衝撃緩和装置及び乗員衝撃緩和プログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明に係る乗員衝撃緩和装置は、車両のシートを車両後方へ駆動する駆動部と、衝突対象との相対距離、衝突対象との相対速度、及び衝突対象との相対加速度、または、前記相対距離及び前記相対速度を各々検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて、衝突までの時間、及び衝突時の相対速度を各々推定する推定部と、前記衝突までの時間が予め定めた時間以内になった場合に、前記推定部の推定結果に基づいて定まる目標減速度が衝突時にシートに発生する駆動開始タイミングでシートの車両後方への駆動を開始するように前記駆動部を制御する制御部と、を備えている。
本発明に係る乗員衝撃緩和装置によれば、駆動部によって車両のシートが車両後方へ駆動される。
検出部では、衝突対象との相対距離、衝突対象との相対速度、及び衝突対象との相対加速度、または、前記相対距離及び前記相対速度の各々が検出される。
また、推定部では、検出部の検出結果に基づいて、衝突までの時間、及び衝突時の相対速度の各々が推定される。
そして、制御部では、衝突までの時間が予め定めた時間以内になった場合に、推定部の推定結果に基づいて定まる目標減速度が衝突時にシートに発生する駆動開始タイミングでシートの車両後方への駆動を開始するように駆動部が制御される。すなわち、衝突が発生する前からシートを駆動開始して衝突発生時に目標減速度がシートに発生するようにシートが駆動される。これにより、衝突発生後にシートを駆動して衝撃を緩和する従来手法に比べて、衝突時に乗員に加わる衝撃を緩和することができる。また、衝突対象に対する乗員及びシートの移動についても衝突発生後にシートを駆動して衝撃を緩和する従来手法よりも乗員の移動量を抑制して衝突発生時に乗員を保護する空間を確保できる。従って、衝突発生時に乗員を保護する空間を確保しつつ、乗員への衝撃を効果的に緩和することができる。
また、制御部は、請求項2に記載の発明のように、衝突後の最大減速度が予め定めた最大値を超えないように、かつ、衝突後に車両が潰れる変位量が衝撃緩和のための空間を超えないように定めたモデルを用いて推定部の推定結果から目標減速度を設定する設定部と、設定部によって設定された目標減速度を発生する駆動部の駆動力、及び目標減速度が衝突時に発生するシートの駆動開始タイミングの各々を決定する決定部と、を含み、決定部の決定結果に基づいて駆動部を制御してもよい。これにより、推定された衝突までの時間及び衝突時の相対速度から目標減速度を設定して、駆動部の駆動力及びシート開始タイミングを決定して駆動部を制御できる。
また、請求項3に記載の発明のように、衝突を検知する検知部を更に備え、制御部は、検知部によって衝突が検知されるまで駆動力及び駆動開始タイミングを逐次更新してもよい。これにより、推定誤差を衝突の瞬間まで補正して制御精度を高めることができる。
また、請求項4に記載の発明のように、制御部は、衝突までの時間が予め定めた閾値以下になるまで、検出部による検出及び推定部による推定を繰り返えしてもよい。
なお、本発明は請求項に記載の発明のように、コンピュータを、請求項1〜の何れか1項に記載の乗員衝撃緩和装置として機能させるための乗員衝撃緩和プログラムとしてもよい。
以上説明したように本発明によれば、衝突発生時に乗員を保護する空間を確保しつつ、乗員への衝撃を効果的に緩和することが可能な乗員衝撃緩和装置を提供できる、という効果がある。
本実施形態に係る乗員衝撃緩和装置の概略構成を示すブロック図である。 シート駆動アクチュエータによるシートの移動を示す図である。 (A)は乗員とシートとが一体で移動すると仮定したモデルの場合のシートの減速度を示す図であり、(B)は(A)の場合のシート制御力を示す図であり、(C)は(A)の場合のシート移動開始時刻の決定を説明するための図である。 (A)はシートベルト及び乗員の挙動まで考慮するモデルの場合のシートの減速度を示す図であり、(B)は(A)の場合のシート制御力を示す図であり、(C)は(A)の場合のシート移動開始時刻の決定を説明するための図である。 (A)はシートベルト及び乗員の挙動まで考慮するモデルを説明するための図であり、(B)は相対速度と衝突までの時間からマップを用いてシート目標減速度を求める例を示す図である。 本実施形態に係る乗員衝撃緩和装置の乗員衝撃緩和ECUで行われる衝撃緩和シート制御の流れの一例を示すフローチャートである。 (A)は従来手法における高速フルラップ衝突試験シミュレーションによって得られた乗員減速度の波形例を示す図であり、(B)は本実施形態における高速フルラップ衝突試験シミュレーションによって得られた乗員減速度の波形例を示す図であり、(C)は従来手法における高速フルラップ衝突試験シミュレーションによって得られた衝突対象に対する乗員とシートの変位の波形例を示す図であり、(D)は本実施形態における高速フルラップ衝突試験シミュレーションによって得られた衝突対象に対する乗員とシート20の変位の波形例を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る乗員衝撃緩和装置の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る乗員衝撃緩和装置10は、乗員衝撃緩和ECU(Electronic Control Unit)12を備えている。乗員衝撃緩和ECU12は、CPU12A、ROM12B、RAM12C、及びI/O(入出力インターフェース)12Dがバス12Eに接続されたコンピュータで構成されている。なお、乗員衝撃緩和ECU12は、推定部及び制御部に対応する。
ROM12Bには、衝突による乗員への衝撃を緩和するためにシートを制御する衝撃緩和シート制御(詳細は後述)を行うためのプログラムが記憶されている。ROM12Bに記憶されたプログラムをRAM12Cに展開してCPU12Aが実行することにより、衝撃緩和シート制御が行なわれる。
I/O12Dには、レーダセンサ14、衝突検知センサ16、及び駆動部の一例としてのシート駆動アクチュエータ18が接続されている。
レーダセンサ14は、車両周辺の車両等の対象物との相対距離や相対速度を検出するための信号を送信し、対象物で反射された信号を受信して受信結果を乗員衝撃緩和ECU12に出力する。レーダセンサ14は、例えば、超音波レーダやミリ波レーダ等を適用し、乗員衝撃緩和ECU12がレーダセンサ14からの信号に基づいて車両周辺の対象物との相対距離を検出し、相対距離の時間的な変化から相対速度を検出する。なお、本実施形態では、レーダセンサ14の検出結果に基づいて相対距離及び相対速度を検出するが、これに限るものではない。例えば、カメラやステレオカメラ等の撮影装置、或いは、レーザ光等を照射することにより車両周辺の対象物を検出するためのライダー等からの信号に基づいて対象物との相対距離及び相対速度を乗員衝撃緩和ECU12が検出してもよい。本実施形態では、レーダセンサ14及び乗員衝撃緩和ECU12が、検出部の一例に対応する。
衝突検知センサ16は、衝突の発生を検知するための物理量を検知する。例えば、衝突によって発生する物理量としての加速度を検出し、検出結果を乗員衝撃緩和ECU12に出力することにより衝突の発生を検知する。衝突検知センサ16は、加速度を検出する場合には、例えば、車両の前後方向の加速度や、車幅方向の加速度を検出する。なお、衝突検知センサ16としては、加速度以外の物理量を検出してもよい。例えば、歪みセンサ等の検出結果を物理量として検出してもよい。本実施形態では、衝突検知センサ16及び乗員衝撃緩和ECU12が、検知部の一例に対応する。
シート駆動アクチュエータ18は、図2に示すように、車両のシート20を車両の後方(図2の矢印方向)へスライドさせるものである。本実施形態では、衝突が発生する前から衝突発生のタイミングに合わせてシート駆動アクチュエータを駆動してシート20を車両後方へ移動して乗員への衝撃を緩和する。駆動源としては、例えば、油圧、電気、及び火薬など種々の周知の駆動源を適用できる。シート駆動アクチュエータ18は、乗員とシート20を予め定めた加重と応答性で駆動できれば、駆動源は何れを適用してもよい。
ここで、乗員衝撃緩和ECU12で行われる上述の衝撃緩和シート制御について説明する。
本実施形態では、乗員衝撃緩和ECU12が、レーダセンサ14の検出結果を取得することにより、対象物との相対距離Δx(t)及び相対速度Δv(t)を検出する。
また、乗員衝撃緩和ECU12は、検出した相対距離Δx(t)及び相対速度Δv(t)に基づいて、対象物との衝突時刻t_end、及び衝突時の相対速度Δv(t_end)を推定する。なお、相対減速度ΔG(t)も検出して衝突時の時刻t_end、及び衝突時の相対速度Δv(t_end)を推定する方が好ましいが、本実施形態では、相対減速度ΔG(t)は0と仮定して説明する。
そして、衝突時刻t_end及び衝突時の相対速度Δv(t_end)から衝突時の乗員目標減速度G_targetを求める予め定めたモデルを用いて、衝突時の乗員目標減速度G_targetを設定する。乗員目標減速度G_targetを決める際の要件としては、衝突後の最大減速度が、予め定めた最大値を超えない点(乗員最大減速度)と、衝突後に車両が潰れる変位量が、衝撃緩和のための空間を超えない点(衝撃緩和空間確保)とを考慮して、予め定めたモデルに基づいて計算する。この計算は、車両のコンプライアンス特性に依存する。なお、コンプライアンス特性とは、物体の変形のし易さを示す物理量であり、車両のサイドメンバ等の剛性によって決まる。コンプライアンス特性の決め方は、例えば、水野幸治著「自動車の衝突安全」名古屋大学出版会、2012年に記載された手法を適用できる。
また、乗員衝撃緩和ECU12は、求めた乗員目標減速度G_targetと現時刻から衝突までの時間Δt=t_end-t(現時刻)とに基づいて、シート制御力及びシート20の駆動開始タイミングを求める。シート制御力は、衝突までの時間Δtの間に、シート20の後方への移動可能量(最大変位)を移動したときに乗員目標減速度G_targetを発生するシート駆動アクチュエータ18の駆動力を求める。また、駆動開始タイミングは、目標減速度G_targetを衝突時にシート20に発生するシート20の駆動開始タイミングとして、シート移動制御の開始時刻t_startを求める。
また、これまでの処理を逐次行ってシート制御力及びシート移動制御の開始時刻t_startを更新して、推定誤差を衝突の瞬間まで補正して制御精度を高める。そして、開始時刻t_startになったところでシート駆動アクチュエータ18の駆動を開始する。なお、シート駆動アクチュエータの制御パターンは幾通りも考えられるが、ここでは説明を簡略化するために一定力をシート20に加えるものとして説明する。また、シートを駆動開始した後もシート制御力及びシート移動制御の開始時刻t_startを更新するが、シートを駆動開始後は、残りのシートの変位可能量を考慮してシート制御力及びシートの移動制御の開始時間を更新する。
シート移動制御の開始時刻t_startは、シートベルトの特性(剛性や遊び等)を考慮せず、乗員とシート20とが一体で移動すると仮定したモデルの場合は容易に計算できる。例えば、図3(B)に示すように、シート制御力を一定とすると、図3(C)のハッチング部分の三角形の面積と斜辺の傾きが決まれば、シート移動制御の開始時刻t_startを求めることができる。すなわち、シート制御力が一定値の場合には、三角形の斜辺の傾きがシート20の減速度に対応するので、図3(A)に示す乗員目標減速度G_targetが決まれば、傾きは一意に決まる。また、図3(C)の三角形の面積がシート20の移動量に対応するので、当該移動量をシート20の車両後方側に移動可能な最大変位が面積となる。よって、これらより、制御開始時刻t_startを計算できる。
一方、上述の図4(A)のように、シートベルト及び乗員の挙動まで考慮するモデルの場合には、シート制御に対して乗員の変位に遅延が発生するので、予め定めたモデルを使って衝突時の乗員減速度を予測する必要がある。具体的には、図4(C)のハッチングで示す三角形の面積が一定の制約のもとで、衝突時に乗員減速度になるようにシート制御を行う。この制御において、シート制御力が上限を超えないことが制約条件となる。図4(A)の実線がシート減速度を示し、一点鎖線が乗員減速度を示すが、シート減速度の立ち上がりに対して乗員減速度が遅れて立ち上がるので、シートベルトをバネモデルとして仮定したモデル等を用いて乗員目標減速度を求める。また、求めた乗員目標減速度となるシート20の目標減速度G_targetを求める。
なお、シートベルト及び乗員の挙動まで考慮するモデルの場合には、例えば、図5(A)に示すように、衝突前のシート制御とシートベルト剛性とをモデル化すると共に、衝突後の車体剛性をモデル化する。そして、衝突までの時間Δt=t_end-t及び推定した衝突時の相対速度Δv(t_end)を入力値として、それぞれのモデルを用いて順計算を行ってシート20の目標減速度G_targetを直接求める。また、モデル化する際には、上述したように、乗員最大減速度及び衝撃緩和空間確保を制約条件としてモデル化し、衝突までの時間Δt=t_end-t及び衝突時の相対速度Δv(t_end)に対するシート20の目標減速度G_targetを直接求める。
また、シート20の目標減速度を求める際には、モデル予測制御法などによってオンラインでリアルタイムに計算してもよい。或いは、モデルを用いて、図5(B)に示すように、衝突までの時間Δt=t_end-tと衝突時の相対速度Δv(t_end)とに対するシート目標減速度G_targetを求めるマップ22予め作成し、乗員衝撃緩和ECU12による制御中にマップ22を用いてシート目標減速度G_targetを逐次更新してもよい。
続いて、上述のように構成された本実施形態に係る乗員衝撃緩和装置10の乗員衝撃緩和ECU12で行われる衝撃緩和シート制御の具体的な流れについて説明する。図6は、本実施形態に係る乗員衝撃緩和装置10の乗員衝撃緩和ECU12で行われる衝撃緩和シート制御の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図6の処理は、例えば、図示しないイグニッションスイッチがオンした場合や、車両の走行開始を検出した場合等に開始する。
ステップ100では、CPU12Aが、現時刻の相対距離Δx(t)及び相対速度Δv(t)を検出してステップ102へ移行する。すなわち、CPU12Aが、レーダセンサ14の検出結果を取得することにより、現時刻の対象物に対する相対距離Δx(t)及び相対速度Δv(t)を検出する。
ステップ102では、CPU12Aが、ステップ100で取得した相対距離Δx(t)及び相対速度Δv(t)に基づいて、衝突時刻t_end及び衝突時の相対速度Δv(t_end)を推定してステップ104へ移行する。
ステップ104では、CPU12Aが、衝突までの時間が予め定めた閾値以下になったか否かを判定する。該判定は、現時刻と衝突時刻t_endから衝突までの時間Δt=t_end-t(現時刻)を求め、衝突までの時間Δtが予め定めた閾値以下になったか否かを判定する。該判定が否定された場合にはステップ100に戻って上述の処理を繰り返し、判定が肯定された場合にはステップ106へ移行する。
ステップ106では、CPU12Aが、推定結果から衝突時の乗員目標減速度G_targetを設定してステップ108へ移行する。例えば、上述したように、衝突までの時間Δt=t_end-t及び衝突時の相対速度Δv(t_end)から衝突時の乗員目標減速度G_targetを求める予め定めたモデルを用いて、推定した衝突までの時間Δt=t_end-t及び衝突時の相対速度Δv(t_end)に応じた、衝突時の乗員目標減速度(シート目標減速度)G_targetを設定する。なお、ステップ106は、シートベルト及び乗員の挙動まで考慮する場合に乗員目標減速度ではなく、モデルを用いてシート目標減速度G_targetを設定する。なお、ステップ106の処理は設定部の一例に対応する。
ステップ108では、CPU12Aが、現時刻tから衝突までの時間Δt=t_end-tと、目標減速度G_targetとからシート制御力とシート移動制御開始時刻t_startを決定してステップ110へ移行する。すなわち、衝突時に目標減速度G_targetを発生するシート駆動アクチュエータ18の駆動力と、衝突のタイミングでシート目標減速度G_targetとなるシート制御の開始時刻t_startを決定してステップ110へ移行する。シート制御力は、上述したように、衝突までの時間Δtの間に、シート20の後方への移動可能量(最大変位)を移動したときに乗員目標減速度G_targetを発生するシート駆動アクチュエータ18の駆動力を求める。また、駆動開始タイミングは、目標減速度G_targetを衝突時に発生するシート移動制御の開始時刻t_startを求める。なお、シート制御力は、例えば、シート20の最大変位(後方への移動可能量)、衝突までの時間Δt、及び目標減速度G_targetに応じた駆動力を予め定めたマップ等として記憶しておき、マップを用いて決定してもよい。また、開始時刻t_startについても、衝突までの時間Δt、及び目標減速度G_targetに応じた開始時刻t_startを予め定めたマップ等として記憶しておき、マップを用いて決定してもよい。また、ステップ108の処理は決定部の一例に対応する。
ステップ110では、CPU12A、後述のステップ114が既に実行されて、シート制御中であるか否かを判定する。該判定が否定された場合にはステップ112へ移行し、否定された場合にはステップ118へ移行する。
ステップ112では、CPU12Aが、ステップ108で決定したシート移動開始時刻t_startになったか否か判定する。該判定が肯定された場合にはステップ114へ移行し、否定された場合にはステップ100に戻って上述の処理を繰り返し、シート制御開始時刻を更新する。
ステップ114では、CPU12Aが、シート駆動アクチュエータ18を駆動してシート移動制御を開始してステップ116へ移行する。
ステップ116では、CPU12Aが、衝突検知センサ16によって衝突を検知したか否かを判定する。該判定が肯定された場合には一連の処理を終了し、否定された場合にはステップ100に戻って上述の処理を繰り返し、シート制御力及びシート制御開始時刻t_startを逐次更新する。
一方、ステップ110において、既にシート制御が開始しており、ステップ118へ移行すると、CPU12Aが、ステップ108で設定したシート移動開始時刻t_start前の時刻であるか否かを判定する。該判定が肯定された場合にはステップ120へ移行し、否定された場合にはステップ116へ移行する。
ステップ120では、CPU12Aが、シート駆動アクチュエータ18を停止してシートの移動制御を停止してからステップ112へ移行する。すなわち、シート移動開始時刻t_startを逐次更新し、シート移動制御が開始してから更新によってシート移動開始時刻t_startが遅い時刻に変更された場合には、シート移動制御が既に開始しているので、停止して更新された開始時刻t_startを待ってから再度シート移動制御を開始する。一方、シート移動開始時刻t_startに変更がない、または早い時刻に変更になった場合には、そのままシート移動制御を継続する。
ここで、従来手法(衝突発生後にシートを駆動して衝撃を緩和する手法)と本実施形態のそれぞれにおいて高速フルラップ衝突試験シミュレーションを行った結果について説明する。
図7(A)は従来手法における高速フルラップ衝突試験シミュレーションによって得られた乗員減速度の波形例を示す図である。図7(B)は本実施形態における高速フルラップ衝突試験シミュレーションによって得られた乗員減速度の波形例を示す図である。また、図7(C)は従来手法における高速フルラップ衝突試験シミュレーションによって得られた衝突対象に対する乗員とシートの変位の波形例を示す図である。図7(D)は本実施形態における高速フルラップ衝突試験シミュレーションによって得られた衝突対象に対する乗員とシート20の変位の波形例を示す図である。
図7(A)に示すように、衝突発生後にシートを駆動して衝撃を緩和する従来技術では、乗員減速度が衝突から急激に増加して衝撃緩和の基準値を超えることがある。一方、本実施形態では、図7(B)に示すように、衝突前からシート移動を開始して衝突時にシート目標減速度になるので、乗員減速度が、衝突発生前に分散されて衝突発生後に乗員保護可能な上限値を超えることなく乗員への衝撃を緩和できる。
このように、本実施形態では、衝突発生時に、シート目標減速度が発生するように衝突前から事前にシート移動を開始することにより、衝突時に乗員に加わる減速度を従来よりも軽減して衝撃を緩和することができる。
また、衝突対象に対する乗員及びシートの変位についても衝突発生後にシートを駆動して衝撃を緩和する従来技術では、図7(C)に示すように、衝撃緩和の基準値を超えることがある。一方、本実施形態では、図7(D)に示すように、乗員保護可能な上限値を超えることなく衝突発生時に衝撃を緩和する空間を確保できる。
従って、本実施形態に係る乗員衝撃緩和装置10では、衝突発生時に衝撃を緩和する空間を確保しつつ、乗員への衝撃を効果的に緩和することができる。
なお、上記の実施形態では、説明を簡略化するために、シート駆動アクチュエータ18を駆動する際のシート制御力を一定として説明したが、シート制御力は一定に限るものではなく、予め定めたパターンのシート制御力としてもよいし、時間経過と共にシート制御力が大きく、または小さくなるようにしてもよい。
また、上記の各実施形態における乗員衝撃緩和ECU12で行われる図6の処理は、コンピュータがプログラムを実行することにより行われるソフトウエア処理として説明したが、ハードウエアで行う処理としてもよい。或いは、ソフトウエア及びハードウエアの双方を組み合わせた処理としてもよい。また、ソフトウエアで行う処理とする場合のプログラムは、各種記憶媒体に記憶して流通させるようにしてもよい。
さらに、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
10 乗員衝撃緩和装置
12 乗員衝撃緩和ECU
14 レーダセンサ
16 衝突検知センサ
18 シート駆動アクチュエータ
20 シート
22 マップ

Claims (5)

  1. 車両のシートを車両後方へ駆動する駆動部と、
    衝突対象との相対距離、衝突対象との相対速度、及び衝突対象との相対加速度、または、前記相対距離及び前記相対速度を各々検出する検出部と、
    前記検出部の検出結果に基づいて、衝突までの時間、及び衝突時の相対速度を各々推定する推定部と、
    前記衝突までの時間が予め定めた時間以内になった場合に、前記推定部の推定結果に基づいて、衝突後の最大減速度が予め定めた最大値を超えないように定めた目標減速度が衝突時にシートに発生する駆動開始タイミングでシートの車両後方への駆動を開始するように前記駆動部を制御する制御部と、
    を備えた乗員衝撃緩和装置。
  2. 前記制御部は、衝突後の最大減速度が予め定めた最大値を超えないように、かつ、衝突後に車両が潰れる変位量が衝撃緩和のための空間を超えないように定めたモデルを用いて前記推定部の推定結果から前記目標減速度を設定する設定部と、前記設定部によって設定された前記目標減速度を発生する前記駆動部の駆動力、及び前記目標減速度が衝突時に発生するシートの駆動開始タイミングの各々を決定する決定部と、を含み、前記決定部の決定結果に基づいて前記駆動部を制御する請求項1に記載の乗員衝撃緩和装置。
  3. 衝突を検知する検知部を更に備え、
    前記制御部は、前記検知部によって衝突が検知されるまで前記駆動力及び前記駆動開始タイミングを逐次更新する請求項2に記載の乗員衝撃緩和装置。
  4. 前記制御部は、前記衝突までの時間が予め定めた閾値以下になるまで、前記検出部による検出及び前記推定部による推定を繰り返す請求項1〜3の何れか1項に記載の乗員衝撃緩和装置。
  5. コンピュータを、請求項1〜4の何れか1項に記載の乗員衝撃緩和装置として機能させるための乗員衝撃緩和プログラム。
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