以下に、一つの実施形態について、図1乃至図11を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明について、複数の表現が記載されることがある。複数の表現がされた構成要素及び説明は、記載されていない他の表現がされても良い。さらに、複数の表現がされない構成要素及び説明も、記載されていない他の表現がされても良い。
図1は、一つの実施形態に係る車両1の構成の一例を概略的に示す図である。図1に示すように、車両1は、エンジン(ENG)11と、トランスミッション(T/M)12と、トランスファ(T/F)13と、フロント(Fr)プロペラシャフト14と、Frディファレンシャル機構(Frデフ)15と、駆動力断接装置16と、制御装置18と、右Frドライブシャフト21と、左Frドライブシャフト22と、二つの前輪23と、リア(Rr)プロペラシャフト24と、Rrディファレンシャル機構(Rrデフ)25と、二つのRrドライブシャフト26と、二つの後輪27とを有する。このように、本実施形態において、駆動力断接装置16は、車両1に適用される。
エンジン11で発生した駆動力は、トランスミッション12を介しトランスファ13へ伝達される。当該駆動力は、Frプロペラシャフト14とRrプロペラシャフト24とへ分配される。Rrプロペラシャフト24へ分配された駆動力は、Rrディファレンシャル機構25及びRrドライブシャフト26を経て、左右の後輪27へ伝達される。
Frプロペラシャフト14へ分配された駆動力は、Frディファレンシャル機構15へ伝達される。車両1は、例えば、運転者の操作又は走行状態により、燃費向上のため、Frディファレンシャル機構15に伝達された駆動力を伝達する四輪駆動モードと、当該駆動力を伝達しない二輪駆動モードとに切り替えることができる。
制御装置18において四輪駆動モードが選択されると、トランスファ13とFrプロペラシャフト14とが連結される。その後、駆動力断接装置16を介して、Frディファレンシャル機構15と右Frドライブシャフト21とが連結される。これにより、Frディファレンシャル機構15へ伝達された駆動力は、左Frドライブシャフト22と、駆動力断接装置16を介して右Frドライブシャフト21と、へ分配され、左右の前輪23へ伝達される。
制御装置18において四輪駆動モードが終了され二輪駆動モードが選択されると、トランスファ13とFrプロペラシャフト14との連結が解除される。その後、駆動力断接装置16とFrディファレンシャル機構15との連結が解除される。これにより、Frディファレンシャル機構15は空回りし、駆動力の伝達を停止する。以上のように、本実施形態の車両1は、Frディファレンシャル機構15と駆動力断接装置16とを含む駆動力断接機能付きディファレンシャル機構が搭載される。
図2は、一つの実施形態の駆動力断接装置16の一例を示す断面図である。図2に示すように、駆動力断接装置16は、第1のシャフト31と、第2のシャフト32と、切替部33と、ケース34と、第1のスナップリング35と、第2のスナップリング36と、第3のスナップリング37と、第1の軸受41と、第2の軸受42と、第3の軸受43と、ストロークセンサ44とを有する。
切替部33は、例えば、断接部、断接機構、又はドグクラッチとも称され得る。第1のスナップリング35は、第1の制限部材の一例であり、止め輪とも称され得る。第2のスナップリング36は、第2の制限部材の一例である。第1及び第2のスナップリング35,36は、例えば、規制部材、嵌着部材、又はガイドとも称され得る。
第1のシャフト31と、第2のシャフト32と、切替部33と、ケース34とは、略同軸に設けられる。言い換えると、第1のシャフト31、第2のシャフト32、切替部33、及びケース34の筒状の部分、柱状の部分、及び回転する部分は、実質的に共通の中心軸(回転中心、軸心)を持つように配置される。
以下、上記中心軸が延びる方向(図2における左右方向)を軸方向、上記中心軸まわりに回転する方向を周方向、上記中心軸と直交する方向を径方向と称する。なお、中心軸が実質的に共通であるため、以下の説明における軸方向、周方向、及び径方向は、駆動力断接装置16の軸方向、周方向、及び径方向であるとともに、例えば第1のシャフト31の軸方向、周方向、及び径方向でもある。
また、図2に示すように、Frディファレンシャル機構15は、例えば、ピニオンシャフト15aと、ピニオンギヤ15bと、サイドギヤ15cと、デフケース15dと、リテーナ(デフハウジング)15eと、第4の軸受15fとを有する。デフケース15dは、ピニオンシャフト15a、ピニオンギヤ15b、及びサイドギヤ15cを収容する。デフケース15dは、第4の軸受15fによって、リテーナ15eに回転可能に保持される。サイドギヤ15cは、第1のシャフト31、第2のシャフト32、切替部33、及びケース34と略同軸に配置される。
図3は、一つの実施形態の駆動力断接装置16の一部の一例を拡大して示す断面図である。図3に示すように、第1のシャフト31は、例えば、中空の略円筒状に形成される。第1のシャフト31は、第1の接続部51と、第1の連結部52と、二つの突設部53とを有する。
第1の接続部51は、軸方向における第1のシャフト31の一方の端部31aの近傍に設けられる。第1の接続部51は、前輪23へ駆動力を分配するFrディファレンシャル機構15の一方のサイドギヤ15cに接続される。すなわち、本実施形態において、第1のシャフト31は、図1のエンジン11のような動力源からの駆動力を伝達する入力軸である。なお、第1のシャフト31は、出力軸のような他の軸であっても良い。
図4は、一つの実施形態の第1のシャフト31の一例を示す斜視図である。図4に示すように、第1の連結部52及び二つの突設部53は、軸方向における第1のシャフト31の他方の端部31bの近傍に設けられる。二つの突設部53は、第1の連結部52から軸方向に突出する。二つの突設部53に、第1のシャフト31の端部31bが設けられる。
図3に示すように、第1のシャフト31に、開口部55と、油路56とが設けられる。開口部55は、第1のシャフト31の端部31bに設けられた有底の穴である。油路56は、開口部55の底と、第1のシャフト31の端部31aとを連通する孔である。油路56の断面積は、開口部55の断面積よりも小さい。
開口部55は、第1のシャフト31の端部31bから離間するに従って段階的に内径が小さくなり、第1の嵌着部55aと、第1の軸受部55bとを有する。第1の嵌着部55aは、第1のシャフト31の端部31bの近傍に設けられる。第1の軸受部55bは、第1の嵌着部55aよりも、奥に設けられ、端部31bから離間する。第1の軸受部55bの内径は、第1の嵌着部55aの内径よりも小さい。
図4に示すように、第1の連結部52に、第1のスプライン60が設けられる。第1のスプライン60に、複数の第1のスプライン区間61と、複数の第1の非スプライン区間62とが設けられる。本実施形態では、例えば四つの第1のスプライン区間61と、三つの第1の非スプライン区間62とが、第1のスプライン60に設けられる。
複数の第1のスプライン区間61は、周方向に間隔を介して配置された複数の歯65をそれぞれ有する。複数の歯65はそれぞれ、第1の連結部52の外周面52aから径方向に突出する。複数の第1の非スプライン区間62は、例えば、第1のスプライン60において、歯65が設けられていない部分である。なお、第1の非スプライン区間62はこの例に限らない。
複数の第1のスプライン区間61と、複数の第1の非スプライン区間62とは、軸方向に交互に配置される。すなわち、複数の第1のスプライン区間61は、軸方向に間隔を介して配置される。言い換えると、第1のスプライン60は、軸方向に断続的にスプラインが形成された部分である。
第1のスプライン区間61の複数の歯65はそれぞれ、軸方向に延びる。第1のスプライン区間61に含まれる複数の歯65の数及び配置は、複数の第1のスプライン区間61の間で共通である。歯65は、隣接する第1のスプライン区間61の歯65と、軸方向に並べられる。
図5は、一つの実施形態の第1のシャフト31の一例を示す正面図である。図5に示すように、二つの突設部53は、略円弧状に形成される。突設部53は、周方向に間隔を介して、回転対称に配置される。このため、周方向において、二つの突設部53の間に二つの切欠き67が形成される。突設部53が回転対称に配置されることで、第1のシャフト31の回転の偏心が抑制される。
切欠き67は、第1のシャフト31の端部31bから軸方向に窪むとともに、突設部53の外周面53aと内周面53b(第1の嵌着部55aの内周面)とを連通する。なお、突設部53の配置はこの例に限らない。突設部53の外径は、第1の連結部52の外周面52aの外径よりも小さい。
図3に示すように、二つの突設部53の内周面53bにそれぞれ、第1の溝68が設けられる。言い換えると、開口部55の第1の嵌着部55aの内周面に、第1の溝68が設けられる。第1の溝68は、周方向に延びるとともに、略四角形の断面を有する。
図2に示すように、第2のシャフト32は、略円柱状に形成される。第2のシャフト32は、第2の接続部71と、第2の連結部72と、挿入部73とを有する。挿入部73は、収容部の一例である。
第2の接続部71は、軸方向における第2のシャフト32の一方の端部32aの近傍に設けられる。第2の接続部71は、図1に示される右Frドライブシャフト21に接続される。本実施形態において、第2のシャフト32は、第1のシャフト31から伝達された駆動力を、右Frドライブシャフト21を通じて右の前輪23に伝達する出力軸である。なお、第2のシャフト32は、入力軸のような他の軸であっても良い。
図6は、一つの実施形態の第2のシャフト32の一部の一例を示す斜視図である。図6に示すように、挿入部73は、軸方向における第2のシャフト32の他方の端部32bの近傍に設けられる。挿入部73に、第2のシャフト32の端部32bが設けられる。第2の連結部72は、挿入部73に隣接する。
図3に示すように、挿入部73は、第1のシャフト31の開口部55に挿入される。言い換えると、挿入部73の少なくとも一部が、開口部55に収容される。図6に示すように、挿入部73は、第2の連結部72から離間するに従って段階的に外径が小さくなり、第2の嵌着部73aと、第2の軸受部73bとを有する。第2の嵌着部73aは、第2の連結部72の近傍に設けられる。第2の軸受部73bは、第2のシャフト32の端部32bの近傍に設けられる。第2の軸受部73bの外径は、第2の嵌着部73aの外径よりも小さい。
挿入部73が開口部55に挿入されると、第2の嵌着部73aの外周面と、第1のシャフト31の第1の嵌着部55aの内周面とが隙間を介して向かい合う。さらに、第2の軸受部73bの外周面と、第1のシャフト31の第1の軸受部55bの内周面とが隙間を介して向かい合う。挿入部73の外周面は、開口部55の内周面から離間する。
図7は、一つの実施形態の第1のシャフト31及び第2のシャフト32の一部の一例を拡大して示す断面図である。図7に示すように、第2の嵌着部73aの外周面に、第2の溝75が設けられる。
第2の溝75は、周方向に延びるとともに、略四角形の断面を有する。第2の溝75は、第2の連結部72から軸方向に離間した位置に設けられる。第2の嵌着部73aの外周面と第1の嵌着部55aの内周面とが隙間を介して向かい合うと、第2の溝75と第1の溝68とが向かい合う。
図6に示すように、第2の連結部72に、第2のスプライン77が設けられる。第2のスプライン77は、周方向に間隔を介して配置された複数の歯78を有する。複数の歯78はそれぞれ、第2の連結部72の外周面72aから径方向に突出し、軸方向に延びる。
第2のスプライン77の複数の歯78の数及び配置は、第1のスプライン区間61と共通である。すなわち、第2のスプライン77の歯78のピッチ及び歯数と、第1のスプライン区間61の歯65のピッチ及び歯数とは実質的に等しい。軸方向における歯78の長さは、軸方向における第1のスプライン60の歯65の長さよりも長い。
図8は、一つの実施形態の第1のスナップリング35の一例を示す正面図である。図8に示すように、第1のスナップリング35は、いわゆるCリングであり、弧状部35aと、二つの突起35bとを有する。弧状部35aは、周方向に円弧状に延び、略C字形状に形成される。弧状部35aの周方向の両端部の間に隙間35cが設けられる。二つの突起35bは、弧状部35aの周方向の両端部から径方向外側に突出する。二つの突起35bにそれぞれ、隙間35cから略周方向に延びる溝35dが設けられる。
第1のスナップリング35は、例えば金属によって作られ、弾性を有する。第1のスナップリング35は、隙間35cを狭めるように圧縮されることで、弧状部35aの外径を縮小するように、径方向に弾性的に収縮可能である。例えば、二つの突起35bが摘ままれることで、第1のスナップリング35は容易に収縮させられる。
さらに、第1のスナップリング35は、隙間35cを広げるように引っ張られることで、弧状部35aの内径を拡大するように、径方向に弾性的に拡大可能である。例えば、溝35dにプライヤのような工具を挿入されることで、第1のスナップリング35は容易に拡大させられる。
図7に示すように、第1のシャフト31と第2のシャフト32とは、第1のスナップリング35によって、相対的に回転可能に接続される。第1のスナップリング35は、第1の溝68と第2の溝75とに嵌められる。言い換えると、第1のスナップリング35は、第1の嵌着部55aと第2の嵌着部73aとに取り付けられる(嵌着される)。
第1のスナップリング35は、第1の溝68の軸方向の内面(側面)に当接し、第2の溝75の軸方向の内面(側面)に当接する。さらに、第1のスナップリング35は、第1の溝68の底に接触し、第2の溝75の底から離間する。第1の溝68及び第2の溝75の底は、径方向に向く部分である。
第1の溝68と第2の溝75とに嵌められた第1のスナップリング35は、第1のシャフト31と第2のシャフト32とが周方向に相対的に回転可能に、第1のシャフト31と第2のシャフト32との軸方向における相対的な移動を制限(規制)する。言い換えると、第1のスナップリング35は、第1のシャフト31と第2のシャフト32とを、軸方向において位置決めする。
図4に示すように、第1のスナップリング35の二つの突起35bは、間隔を介して隣り合う二つの突設部53の間に位置する。突起35bの少なくとも一部は、突設部53の周方向の端部から離間する。突起35bは、二つの突設部53の間の切欠き67を通って、突設部53の外周面53aよりも径方向外側に突出する。このため、第1のスナップリング35は、二つの突起35bを摘ままれやすく、第1の溝68から容易に取り外され得る。
第1のスナップリング35は、例えば次のように第1のシャフト31及び第2のシャフト32に取り付けられる。なお、第1のスナップリング35の取付方法は、以下の例に限らない。
まず、図8に示す第1のスナップリング35の溝35dにプライヤが挿入され、第1のスナップリング35が径方向に弾性的に拡大される。これにより、弧状部35aの内径が、第2のシャフト32の第2の嵌着部73aの外径よりも大きくなる。
次に、図6に示すように、内径を広げられた第1のスナップリング35が、第2の嵌着部73aの第2の溝75に嵌められる。プライヤが取り外されることで第1のスナップリング35の内径が弾性的に元に戻り、弧状部35aが第2の溝75に入り込む。
次に、第1のスナップリング35の二つの突起35bが摘ままれ、第1のスナップリング35が径方向に弾性的に縮小される。これにより、弧状部35aの外径が、第2の嵌着部73aの外径と同じか、それより小さくなる。
次に、第2のシャフト32の挿入部73が、第1のシャフト31の開口部55に挿入される。このとき、第1のスナップリング35の突起35bは、二つの突設部53の間の切欠き67に配置される。
次に、二つの突起35bを摘まむ力が解除されることで、第1のスナップリング35の外径が弾性的に元に戻る。これにより、図7に示すように、弧状部35aが、第1の嵌着部55aの第1の溝68に嵌められる。以上により、第1のスナップリング35が第1のシャフト31と第2のシャフト32とを相対的に回転可能に接続する。
図3に示すように、第1の軸受41は、開口部55の第1の軸受部55bの内周面と、挿入部73の第2の軸受部73bの外周面との間に介在する。これにより、第2のシャフト32は、第1のシャフト31と周方向に相対的に回転可能に軸支される。
切替部33は、例えば図1に示す制御装置18によって制御され、第1のシャフト31と第2のシャフト32とを駆動力伝達可能に連結した連結状態と、第1のシャフト31と第2のシャフト32との連結を解除した解除状態と、に切り替えられる。言い換えると、切替部33は、第1のシャフト31と第2のシャフト32とを接続するとともに、第1のシャフト31と第2のシャフト32との接続を解除(断接)する。切替部33は、スリーブ81と、アクチュエータ82とを有する。
スリーブ81は、略円筒状に形成され、第1の連結部52の少なくとも一部と、第2の連結部72の少なくとも一部とを覆う。言い換えると、第1のシャフト31と第2のシャフト32とが、スリーブ81の内側を通される。
図9は、一つの実施形態のスリーブ81の一例を示す斜視図である。図9に示すように、スリーブ81の内周面81aに、第3のスプライン84が設けられる。第3のスプライン84に複数の第2のスプライン区間91と、第3のスプライン区間92と、複数の第2の非スプライン区間93とが設けられる。本実施形態では、例えば三つの第2のスプライン区間91と、三つの第2の非スプライン区間93とが、第3のスプライン84に設けられる。
複数の第2のスプライン区間91及び第3のスプライン区間92は、周方向に間隔を介して配置された複数の歯95をそれぞれ有する。複数の歯95はそれぞれ、スリーブ81の内周面81aから径方向に突出する。複数の第2の非スプライン区間93は、例えば、第3のスプライン84において、歯95が設けられていない部分である。なお、第2の非スプライン区間93はこの例に限らない。
複数の第2のスプライン区間91と、複数の第2の非スプライン区間93とは、軸方向に交互に配置される。すなわち、複数の第2のスプライン区間91は、軸方向に間隔を介して配置される。さらに、第2のスプライン区間91と第3のスプライン区間92との間に、第2の非スプライン区間93が介在する。このように、第3のスプライン84は、軸方向に断続的にスプラインが形成された部分である。
第2のスプライン区間91及び第3のスプライン区間92の複数の歯95の数及び配置は、第1のスプライン区間61と共通である。すなわち、第2のスプライン区間91及び第3のスプライン区間92の歯95のピッチ及び歯数と、第1のスプライン区間61の歯65のピッチ及び歯数とは実質的に等しい。
第3のスプライン区間92の歯95の軸方向における長さは、第2のスプライン区間91の歯95の軸方向における長さよりも長い。第2のスプライン区間91の歯95の軸方向における長さは、第1のスプライン60の第1の非スプライン区間62の軸方向における長さよりも短い。第1のスプライン区間61の歯65の軸方向における長さは、第2の非スプライン区間93の軸方向における長さよりも短い。
第3のスプライン84の第3のスプライン区間92の複数の歯95は、第2のスプライン77の複数の歯78と噛み合う。このため、第2のシャフト32とスリーブ81とは、第2及び第3のスプライン77,84により、軸方向に相対的に移動可能に周方向における相対的な回転を制限される。すなわち、スリーブ81と、第1及び第2のシャフト31,32とは、軸方向に相対的に移動可能である。言い換えると、スリーブ81は、第3のスプライン区間92が第2のスプライン77で軸方向に摺動可能に軸支される。
図10は、一つの実施形態の連結状態における駆動力断接装置16の一部の一例を示す断面図である。スリーブ81が軸方向に移動させられることで、切替部33は、図10に示す連結状態と、図3に示す解除状態とに切り替わる。図10に示すように、連結状態におけるスリーブ81の位置を、連結位置P1と称する。図3に示すように、解除状態におけるスリーブ81の位置を、解除位置P2と称する。
図11は、一つの実施形態の第1のスプライン60と第3のスプライン84との一例を概略的に示す展開図である。図11は、左右方向が軸方向、上下方向が周方向となるように第1のスプライン60及び第3のスプライン84を展開して示す。また、図11は、解除位置P2に位置する第3のスプライン84を実線で示し、連結位置P1に位置する第3のスプライン84を二点鎖線で示す。
図10及び図11に示すように、スリーブ81が連結位置P1に位置すると、第3のスプライン84の第2のスプライン区間91の複数の歯95は、第1のスプライン60の第1のスプライン区間61の複数の歯65と噛み合う。言い換えると、第2のスプライン区間91の複数の歯95と、第1のスプライン区間61の複数の歯65とが、周方向に交互に配置される。さらに、第3のスプライン区間92の複数の歯95も、第1のスプライン区間61の複数の歯65と部分的に噛み合う。このため、第1のシャフト31が、スリーブ81を介して駆動力伝達可能に第2のシャフト32に連結される。
一方、図3及び図11に示すように、スリーブ81が解除位置P2に位置すると、第2のスプライン区間91と第1のスプライン区間61とが、軸方向に交互に配置される。言い換えると、軸方向において、第2のスプライン区間91は隣り合う第1のスプライン区間61の間の隙間(第1の非スプライン区間62)に位置し、第1のスプライン区間61は隣り合う第2のスプライン区間91の間の隙間(第2の非スプライン区間93)に位置する。このため、第3のスプライン84が第1のスプライン60から外れる。
第3のスプライン84が第1のスプライン60から外れると、第1のスプライン60の歯65と第3のスプライン84の歯95とが噛み合わず、第1のスプライン60の歯65は、隣り合う第2のスプライン区間91の間で回転可能となる。さらに、第3のスプライン84の歯95は、隣り合う第1のスプライン区間61の間で回転可能となる。このため、スリーブ81を介する第1のシャフト31と第2のシャフト32との連結が解除され、第1のシャフト31と、スリーブ81及び第2のシャフト32とが、周方向に相対的に回転可能となる。
図9に示すように、スリーブ81に、突起部85がさらに設けられる。突起部85は、スリーブ81の外周面81bから径方向に突出し、略四角形の断面を有する。突起部85は、周方向に延びるフランジ状に形成される。
図3に示すように、アクチュエータ82は、ステータ101と、コイル102と、プランジャ103と、第1の保持部材104と、第2の保持部材105と、リターンスプリング106と、ヨーク(吸引壁)107を有する。ステータ101は、固定子の一例である。プランジャ103、第1の保持部材104、及び第2の保持部材105は、可動子の一例である。リターンスプリング106は、付勢部材の一例である。
ステータ101は、筒部101aと、フランジ部101bとを有する。筒部101aは、第1のシャフト31と同軸に配置された略円筒状に形成される。フランジ部101bは、筒部101aの軸方向の一方の端部から径方向内側に突出し、略円環状に形成される。フランジ部101bの内周面は、第1のシャフト31の外周面に僅かな隙間を介して面する。
第1のシャフト31に、第3の溝108が設けられる。第3の溝108は、第1のシャフト31の外周面に設けられて周方向に延びる。第3の溝108は、第1の接続部51と第1の連結部52との間に位置し、第1の連結部52から離間した位置に設けられる。ステータ101のフランジ部101bは、軸方向において、第1の連結部52と第3の溝108との間に位置する。
第3の溝108に、第2のスナップリング36が嵌められる。このため、ステータ101のフランジ部101bは、軸方向において、第1の連結部52と第2のスナップリング36との間に位置する。図3に示すように、第2のスナップリング36とフランジ部101bとの間に、ワッシャ109が介在しても良い。
第2のスナップリング36は、ステータ101と第1のシャフト31との軸方向における相対的な移動を制限する。このため、第2のスナップリング36は、ステータ101と、第1のシャフト31及び第2のシャフト32との軸方向における相対的な移動を、相対的に回転可能に制限する。
コイル102は、ステータ101の筒部101aに設けられ、軸方向に延びる円筒状に巻回されたソレノイドである。コイル102は、図1に示す制御装置18の制御により通電され、磁場を発生させる。
プランジャ103は、第1のシャフト31と同軸に配置された略円筒状に形成され、ステータ101の筒部101aの内側に配置される。プランジャ103は、軸方向において、ステータ101に設けられたヨーク107と、筒部101aの内周面から突出する第4のスナップリング101cとの間に位置する。第4のスナップリング101cは、筒部101aの内周面に設けられた溝に取り付けられる。
プランジャ103は、ヨーク107と第4のスナップリング101cとの間で、ステータ101に対して軸方向に移動可能である。図10に示すように、コイル102は、通電されたときに、プランジャ103を軸方向に沿う第1の方向D1(図10における左方向)に付勢する磁場を発生させる。第1の方向D1は、プランジャ103からヨーク107に向かう方向である。当該磁場により、プランジャ103は、ヨーク107に引き寄せられ、第1の方向D1に移動させられる。ヨーク107は、プランジャ103に接触すると、プランジャ103のさらなる移動を制限するストッパとして機能する。
プランジャ103は、第1の受け部103aを有する。第1の受け部103aは、プランジャ103の軸方向における一方の端部から、径方向内側に突出する。第1の受け部103aは、例えば、周方向に延びたフランジ状に形成される。図3に示すように、解除状態における第1の受け部103aは、軸方向において、第4のスナップリング101cに隣接する。
第1の保持部材104と第2の保持部材105とは、非磁性体によって作られ、第1のシャフト31と同軸に配置された略円筒状に形成される。第1の保持部材104と第2の保持部材105とは、例えば、プランジャ103の内側に圧入又は挿入される。
軸方向において、第1の保持部材104と第2の保持部材105との間に、スリーブ81の突起部85が配置される。このため、スリーブ81と、第1の保持部材104及び第2の保持部材105との軸方向における相対的な移動は制限される。一方、スリーブ81と、第1の保持部材104及び第2の保持部材105とは、周方向に相対的に回転可能である。このように、第1の保持部材104及び第2の保持部材105は、スリーブ81を周方向に相対的に回転可能に保持する。
第1の保持部材104は、第2の受け部104aを有する。第2の受け部104aは、第1の保持部材104の軸方向における一方の端部から、径方向外側に突出する。第2の受け部104aは、例えば、周方向に延びたフランジ状に形成される。第2の受け部104aは、軸方向において、スリーブ81の突起部85と、プランジャ103の第1の受け部103aとの間に位置する。
第2の保持部材105は、軸方向において、スリーブ81の突起部85と、ステータ101との間に位置する。第2の保持部材105は、略L字形状を有し、プランジャ103の内周面に接触する。
リターンスプリング106は、例えば、ウェーブスプリングである。なお、リターンスプリング106は、他のスプリングであっても良い。リターンスプリング106は、第2の保持部材105とフランジ部101bとの間に介在する。
リターンスプリング106は、第2の保持部材105を通じて、第1の保持部材104及びプランジャ103を、軸方向に沿う第2の方向D2に付勢する。さらに、リターンスプリング106は、第2の保持部材105を通じて、スリーブ81を第2の方向D2に付勢する。第2の方向D2は、第1の方向D1の反対方向である。
アクチュエータ82は、以下のようにスリーブ81を軸方向に移動させることで、連結状態と解除状態を切り替える。まず、コイル102の通電が切られている場合、リターンスプリング106は、プランジャ103、第1の保持部材104、第2の保持部材105、及びスリーブ81を第2の方向D2に移動させる。すなわち、プランジャ103は、ステータ101に対して軸方向に摺動する。
プランジャ103が第2の方向D2に移動させられると、プランジャ103の軸方向における一方の端部が、第4のスナップリング101cに当接する。言い換えると、第4のスナップリング101cは、プランジャ103を支持する。プランジャ103の第1の受け部103aは、第1の保持部材104の第2の受け部104aを支持することで、リターンスプリング106に押される第2の保持部材105及びスリーブ81を支持する。これにより、第4のスナップリング101cは、プランジャ103、第1の保持部材104、第2の保持部材105、及びスリーブ81のさらなる移動を制限する。
プランジャ103が第4のスナップリング101cに当接するとき、スリーブ81は、図3に示す解除位置P2に位置する。すなわち、リターンスプリング106は、第1の保持部材104及び第2の保持部材105に保持されたスリーブ81を第2の方向D2に移動させることで、スリーブ81を解除位置P2に移動させ、切替部33を解除状態に切り替える。
例えば、運転手による四輪駆動への切換操作又は走行状態に基づいて、制御装置18にて四輪駆動モードになると、コイル102は通電され、磁界を発生させる。コイル102は、磁界によりプランジャ103を付勢することで、プランジャ103、第1の保持部材104、第2の保持部材105、及びスリーブ81を第1の方向D1に移動させる。コイル102がプランジャ103を付勢する力は、リターンスプリング106がプランジャ103を付勢する力よりも強い。
図10に示すように、プランジャ103が第1の方向D1に移動させられると、プランジャ103の軸方向における他方の端部が、ステータ101に設けられたヨーク107に当接する。ヨーク107は、プランジャ103、第1の保持部材104、第2の保持部材105、及びスリーブ81のさらなる移動を制限する。
プランジャ103がヨーク107に当接するとき、スリーブ81は、連結位置P1に位置する。すなわち、アクチュエータ82は、第1の保持部材104及び第2の保持部材105に保持されたスリーブ81を第1の方向D1に移動させることで、スリーブ81を連結位置P1に移動させ、切替部33を連結状態に切り替える。
スリーブ81が連結位置P1に移動すると、複数の第1のスプライン区間61と複数の第2のスプライン区間91とが噛み合う。このため、スリーブ81の移動量に対して第1のスプライン60と第3のスプライン84との噛合量が大きく確保され、第1のシャフト31と第2のシャフト32及びスリーブ81との間で大きなトルクが伝達可能となる。
四輪駆動モード終了判断がなされるまでコイル102への通電は継続される。運転手による二輪駆動への切換操作又は走行状態に基づいて、制御装置18にて四輪駆動モード終了判断がなされ、二輪駆動モードとなると、コイル102への通電が停止される。コイル102の通電が切れると、上述のように、スリーブ81はリターンスプリング106によって解除位置P2に移動させられる。
アクチュエータ82は上記の例に限らない。例えば、コイル102に通電されたときにスリーブ81が解除位置P2に移動させられ、コイル102の通電が切られたときにスリーブ81がリターンスプリング106によって連結位置P1に移動させられても良い。
図11に示すように、複数の第1のスプライン区間61は、先行スプライン区間61aと、複数の後続スプライン区間61bとを含む。さらに、複数の第2のスプライン区間91は、先行スプライン区間91aと、複数の後続スプライン区間91bとを含む。
解除状態において、先行スプライン区間61aと、連結状態において当該先行スプライン区間61aと噛み合う第2のスプライン区間91との間の軸方向における距離Dpは、後続スプライン区間61bと、連結状態において当該後続スプライン区間61bと噛み合う第2のスプライン区間91との間の軸方向における距離Dsよりも短い。このため、先行スプライン区間61aは、解除状態から連結状態に移行するとき、後続スプライン区間61bよりも先に第2のスプライン区間91と噛み合う。
同じく、解除状態において、先行スプライン区間91aと、連結状態において当該先行スプライン区間91aと噛み合う第1のスプライン区間61との間の軸方向における距離Dpは、後続スプライン区間91bと、連結状態において当該後続スプライン区間91bと噛み合う第1のスプライン区間61との間の軸方向における距離Dsよりも短い。このため、先行スプライン区間91aは、解除状態から連結状態に移行するとき、後続スプライン区間91bよりも先に第1のスプライン区間61と噛み合う。
先行スプライン区間91aは、複数の後続スプライン区間91bよりも、スリーブ81の軸方向における端部に近い。第3のスプライン84の先行スプライン区間91aは、連結状態において、第1のスプライン60の先行スプライン区間61aと噛み合う。
先行スプライン区間61aの複数の歯65はそれぞれ、第1の側面65aと、第2の側面65bと、先端部65cと、二つの傾斜面65dとを有する。先端部65cは、端部の一例である。
第1の側面65a及び第2の側面65bは、軸方向に沿うとともに周方向に向く平面である。第2の側面65bは、第1の側面65aの反対側に位置する。先端部65cは、連結状態において歯65と噛み合う第2のスプライン区間91の歯95に向く方向の端部である。先端部65cは、例えば周方向に沿うとともに軸方向に向く平面である。
二つの傾斜面65dは、先端部65cと、第1及び第2の側面65a,65bとの角に設けられた面取りである。すなわち、一方の傾斜面65dは、第1の側面65aと先端部65cとを接続するとともに、先端部65cに向かうに従って第2の側面65bに近づくように延びる。他方の傾斜面65dは、第2の側面65bと先端部65cとを接続するとともに、先端部65cに向かうに従って第1の側面65aに近づくように延びる。言い換えると、二つの傾斜面65dは、先端部65cに向かって先細るように延びる。
先行スプライン区間91aの複数の歯95はそれぞれ、第1の側面95aと、第2の側面95bと、先端部95cと、二つの傾斜面95dとを有する。先端部95cは、端部の一例である。
第1の側面95a及び第2の側面95bは、軸方向に沿うとともに周方向に向く平面である。第2の側面95bは、第1の側面95aの反対側に位置する。先端部95cは、連結状態において歯95と噛み合う第1のスプライン区間61の歯65に向く方向の端部である。先端部95cは、例えば周方向に沿うとともに軸方向に向く平面である。
二つの傾斜面95dは、先端部95cと、第1及び第2の側面95a,95bとの角に設けられた面取りである。すなわち、一方の傾斜面95dは、第1の側面95aと先端部95cとを接続するとともに、先端部95cに向かうに従って第2の側面95bに近づくように延びる。他方の傾斜面95dは、第2の側面95bと先端部95cとを接続するとともに、先端部95cに向かうに従って第1の側面95aに近づくように延びる。言い換えると、二つの傾斜面95dは、先端部95cに向かって先細るように延びる。
切替部33が解除状態から連結状態に切り替わるとき、第1のシャフト31の回転速度と、第2のシャフト32及びスリーブ81の回転速度とが異なる場合がある。このとき、歯65の傾斜面65dが第2のスプライン区間91の歯95に当接するとともに、歯95の傾斜面95dが第1のスプライン区間61の歯65に当接し、第1の方向D1に移動しようとするスリーブ81が押し戻される。このため、回転速度に大きな差がある状態で第1のスプライン60と第3のスプライン84とが噛み合うことが抑制される。
図2に示すように、ケース34は、カバー34aと、チューブ34bとを有する。カバー34aは、Frディファレンシャル機構15のリテーナ15eに取り付けられるとともに、アクチュエータ82を収容する。チューブ34bは、略円筒状に形成され、第2のシャフト32を覆う。
第3のスナップリング37は、チューブ34bに取り付けられ、チューブ34bの内周面から突出する。第3のスナップリング37は、チューブ34bと第2のシャフト32とが周方向に相対的に回転可能に、チューブ34bと第2のシャフト32との軸方向における相対的な移動を制限する。
第2の軸受42は、チューブ34bと第2のシャフト32との間に介在し、第2のシャフト32を回転可能に軸支する。第3の軸受43は、デフケース15dと第1のシャフト31との間に介在し、第1のシャフト31を回転可能に軸支する。
図3に示すように、アクチュエータ82の第1の保持部材104の外周面に、マグネット111が取り付けられる。マグネット111は、第1の保持部材104とともに、第1のシャフト31及び第2のシャフト32に対して軸方向に移動可能である。
ストロークセンサ44は、第1の保持部材104のマグネット111に向く。ストロークセンサ44は、例えば、マグネット111の磁力を検知することで、プランジャ103、第1の保持部材104、第2の保持部材105、及びスリーブ81の位置に係る信号を出力できる。図1の制御装置18は、ストロークセンサ44の信号により、スリーブ81が連結位置P1及び解除位置P2のいずれに配置されているかを検出する。
以上説明された一つの実施形態に係る駆動力断接装置16を搭載した車両1において、切替部33は、第1及び第2のシャフト31,32の連結状態と解除状態とを切り替える。一般的に、第1のシャフト31と第2のシャフト32とは、例えば横Gによって、軸方向にガタつく(移動する)ことがある。この場合、第1のシャフト31と第2のシャフト32とを確実に連結及び断接させるために寸法的な遊び(公差、冗長性)が設定され、駆動力断接装置16が大型化しやすい。しかし、本実施形態において、第1のスナップリング35は、第1のシャフト31と第2のシャフト32とが周方向に相対的に回転可能に、第1のシャフト31と第2のシャフト32との軸方向における相対的な移動を制限する。これにより、第1及び第2のシャフト31,32の位置がより正確に定まるため、寸法的な遊びを小さく設定でき、駆動力断接装置16の大型化が抑制される。さらに、第1及び第2のシャフト31,32が、位置決め用のスナップリングのような他の部材に接触して異音を生じさせることが抑制される。加えて、第1及び第2のシャフト31,32を、ユニットアッセンブリとして提供することが容易となる。
アクチュエータ82は、第1のスプライン60と第3のスプライン84とが噛み合う連結状態と、第3のスプライン84が第1のスプライン60から外れる解除状態と、を切り替えるようにスリーブ81を移動させる。このように、スプライン結合により第1のシャフト31と第2のシャフト32とが連結される場合、上述のように、第1のシャフト31と第2のシャフト32との軸方向のガタつきに対して寸法的な遊びが設定される。しかし、本実施形態において、第1のスナップリング35は、第1のシャフト31と第2のシャフト32とが相対的に回転可能に、第1のシャフト31と第2のシャフト32との軸方向における相対的な移動を制限する。これにより、第1及び第2のシャフト31,32の位置がより正確に定まるため、寸法的な遊びを小さく設定でき、駆動力断接装置16の大型化が抑制される。
第2のスナップリング36は、アクチュエータ82のステータ101と、第1のシャフト31及び第2のシャフト32との軸方向における相対的な移動を、相対的に回転可能に制限する。すなわち、第1及び第2のスナップリング35,36により、第1のシャフト31、第2のシャフト32、及びアクチュエータ82の軸方向における相対的な移動が、相対的に回転可能に制限される。従って、軸方向における第1のシャフト31、第2のシャフト32、スリーブ81、及びアクチュエータ82の位置がより正確に定まるため、寸法的な遊びをより小さく設定でき、駆動力断接装置16の大型化がより効果的に抑制される。
第1及び第3のスプライン60,84に、軸方向に間隔を介して配置された第1及び第2のスプライン区間61,91が設けられる。解除状態において、第1のスプライン区間61と第2のスプライン区間91とが軸方向に交互に配置される。言い換えると、解除状態において、第1のスプライン区間61の歯65は、軸方向に間隔を介して配置された二つの第2のスプライン区間91の間を通って回転可能に配置される。一方、連結状態において、第1のスプライン区間61と第2のスプライン区間91とが噛み合う。このように、第1及び第3のスプライン60,84が軸方向に分割されるため、連結状態と解除状態との切り替え時におけるスリーブ81の軸方向における移動量をより短く設定できる。従って、アクチュエータ82として変位距離が短いソレノイドアクチュエータを利用することができ、例えば回転を直動に変化させるモータを利用する場合に比べ、連結状態と解除状態との切り替え時における応答速度が向上する。
例えば、一般的に、製品寸法のばらつきにより、一つの第1のスプライン区間61において、周方向における歯65の幅が大きくなることがある。この場合、第1のスプライン区間61の歯65と、第2のスプライン区間91の歯95との間の周方向における隙間が小さい状態で第1のスプライン区間61と第2のスプライン区間91とが噛み合おうとするとき、幅が大きい歯65が第2のスプライン区間91の歯95と、軸方向に当接する(引っ掛かる)。当該引っ掛かりにより、第1のシャフト31とスリーブ81との相対的な移動が制限され、第1のスプライン区間61と第2のスプライン区間91とが噛み合い難くなる。全ての第1のスプライン区間61と第2のスプライン区間91との間の距離が等しい場合、噛み合いが同時に行われるため、第1のスプライン区間61の数が多いほど引っ掛かりが生じる可能性が高くなる。一方、本実施形態では、解除状態において、先行スプライン区間61aと、連結状態において当該先行スプライン区間61aと噛み合う前記第2のスプライン区間91と、の間の軸方向における距離は、後続スプライン区間61bと、連結状態において当該後続スプライン区間61bと噛み合う第2のスプライン区間91と、の間の軸方向における距離よりも短い。これにより、先行スプライン区間61aが先に第2のスプライン区間91と噛み合った状態で、複数の後続スプライン区間61bが第2のスプライン区間91と噛み合う。従って、全ての第1のスプライン区間61と第2のスプライン区間91との間の距離が等しい場合と比べ、同時に噛み合おうとするスプラインの数が低減されるため、後続スプライン区間61bと第2のスプライン区間91とに引っ掛かりが生じる確率が低減される。
先行スプライン区間61aの歯65は、第1の側面65aと先端部65cとを接続するとともに先端部65cに向かうに従って第2の側面65bに近づくように延びる傾斜面65dを有する。切替部33が解除状態から連結状態に切り替わるとき、先行スプライン区間61aの歯65は、後続スプライン区間61bの歯65よりも先に、第2のスプライン区間91に向かって移動する。このとき、第1のシャフト31の回転速度と第2のシャフト32の回転速度との差が大きい場合、先行スプライン区間61aの歯65の傾斜面65dが第2のスプライン区間91の歯95に当接し、第1のスプライン区間61と第2のスプライン区間91とを互いに離間させる力を生じさせる。これにより、第1のシャフト31の回転速度と第2のシャフト32の回転速度との差が大きい状態で第1のスプライン60と第3のスプライン84とが噛み合うことが抑制される。
先行スプライン区間91aは、複数の後続スプライン区間91bよりも、スリーブ81の軸方向における端部に近い。このため、先行スプライン区間91aの歯95を加工して、傾斜面95dを設けることが容易になる。
リング状に形成された部材である第1のスナップリング35が、第1のシャフト31及び第2のシャフト32の第1の溝68及び第2の溝75に嵌められる。これにより、第1のスナップリング35は安定的に、第1のシャフト31と第2のシャフト32とが相対的に回転可能に、第1のシャフト31と第2のシャフト32との軸方向における相対的な移動を制限できる。
第1のスナップリング35は、第1の溝68の底に接触し、第2の溝75の底から離間する。これにより、遠心力により第1のスナップリング35が径方向に弾性的に拡大することが抑制され、第1のスナップリング35が第2の溝75から外れることが抑制される。
第1のスナップリング35の二つの突起35bが、間隔を介して隣り合う突設部53の間に位置する。これにより、第1のスナップリング35の状態を第1及び第2のシャフト31,32の外部から視認可能であるとともに、第1のスナップリング35を弾性的に変形させることで第1及び第2のシャフト31,32の軸方向の移動の制限が解除可能となる。
以上説明した実施形態において、例えば、駆動力断接装置16は、トランスファ13に適用され、四輪駆動と二輪駆動とを切り替えても良い。また、駆動力断接装置16は、車両1に限らず、駆動力伝達軸の断接が必要な種々の装置や機械に適用して良い。
さらに、上記説明において、第1のシャフトの具体例として第1のシャフト31が説明され、第2のシャフトの具体例として第2のシャフト32が説明された。しかし、第1のシャフト31が第2のシャフトの、そして第2のシャフト32が第1のシャフトの具体例であっても良い。この場合、第2のシャフト(第1のシャフト31)は開口部55が設けられるとともに突設部53を有し、第1のシャフト(第2のシャフト32)が挿入部73を有している。
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各実施形態や各変形例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。