JP6814522B2 - ジゴキシンの微粉化に関する非機械的プロセス - Google Patents

Description

本発明は微粉薬分野に関する。ジゴキシンを微粉化形態で得ることにより、ジゴキシンに関する現行の規制条件に準拠するとともに有効成分の安定性の向上を特徴とする高度に均質な粉末をもたらす新たな方法を記載する。

ジゴキシンは、ジギタリス・プルプレア（Digitalis purpurea）及びジギタリス・ラナータ（Digitalis lanata：ケジギタリス）（キツネノテブクロ）の葉に天然に存在する心臓作用性グリコシドである。これらの植物は、昔から伝統医薬において知られ、また使用されており、それらの使用について初めて書かれた報告書は１８世紀の終わりに遡る。後に、活性グリコシドが単離され、様々な薬剤における有効成分として特徴づけられるとともに使用されている。今日、合成及び半合成薬物が増えているにもかかわらず、ジゴキシンは依然として重要な治療成分であり、ＷＨＯ必須医薬品モデルリスト（World Health Organization's List of Essential Medicines）に収載されている。

ジゴキシンは心筋に対する包括的な強壮作用を有し、その収縮力及び緊張（tone）を増強する。ジゴキシンは、房室（AV）結節における伝導を遅らせること及びその不応期を増大させることによって、様々な心臓病、特に心房細動及び心房粗動の治療法に使用される。ジゴキシンは心拍数を下げることができる。ジゴキシンはまた、心不全、特に利尿剤及びＡＣＥ阻害薬による治療に不応答性の患者における心不全の治療に使用される。

ジゴキシンは経口投与されることが好ましい。ジゴキシンは狭い治療濃度域を有し、このため、その放出の制御が非常に重要となる。実際、極めて急速な放出により、過度に高い血漿中濃度、それ故、多数の副作用がもたらされる場合があり、放出が遅すぎると、不完全な吸収が起こり、治療効果が得られない。

多くの文献報告及び特許は、徐放及び制御放出するような賦形剤を含むジゴキシンの組成物を開示しており、該組成物は要求される製薬基準に準拠するものとなっている（例えば、米国薬局方は、６０分間に少なくとも８５％のジゴキシンを放出することを要件とするジゴキシンに関する規格を設定している）。

ジゴキシンの溶解度、及び間接的にバイオアベイラビリティにかかわる重要なパラメータは、薬物粒径である。特に、ジゴキシンのような物質は水性環境に難溶性であり、粒径の縮小（reduction）及びその結果生じる比表面の増大による恩恵を受けることができ、これらの相互関係は下記式に要約される。式中、ｄＭ／ｄｔは溶出速度であり、Ａは薬物粒子の比表面積であり、Ｄは拡散係数であり、ｈは拡散層の厚さであり、Ｃ_ｓは飽和溶解度であり、Ｃ_ｔは時間ｔにおける薬物濃度である。

粒径が減少する（decrease）につれて表面積が増大することから、速い溶出速度は薬物物質の粒径の縮小（reduction）を通じて実現され得ることに着目されると考えられる。

ジゴキシンの場合、上記で参照されるジゴキシンに関する製薬基準に準拠する送達時間で製剤における５０マイクロメートル未満の粒径が容易に処理され得ることから、５０マイクロメートル未満の粒径への微粉化が特に評価される。その例は特許文献１に開示されている。

製薬技術において、粒径の縮小（reduction）は微粉化プロセスを介して実現することができる。これらは通例、機械的プロセスであり、乾燥状態で実施されることにより、マクロサイズの原材料が、例えば磨砕、研削等を介して高衝撃の機械的処理を受ける。これらの技法は摩擦に基づき粒径を縮小させるものである。しかしながら、微粉化の標準的なプロセスは、特に厳密な微粉化プロファイルを要求する高活性成分と併せて使用する場合、十分に満足のいくものではない。特に、粒径の均質度がそれぞれの薬物ロットによって異なるおそれがあり、これが望ましくないバイオアベイラビリティ及び活性のばらつきに反映される。さらに、ジゴキシンは機械的処理に対して極めて不安定であるため、これらは、微粉化後の粉末の色変化によって明らかとなる分解生成物の形成を引き起こすことが時折報告されており、ジゴキシンの部分分解は更に、分解生成物に起因する望ましくない活性の減少及び／又は毒性の要因となっている。特許文献２は、メタノール／クロロホルム中における精製ジゴキシンの濃縮溶液からの沈殿を介して固体生成物としてジゴキシンを得る方法を開示している。

米国特許出願公開第２００４／００４８８０９号 米国特許第５０６２９５９号

本発明の第１の課題は、ジゴキシンの微粉化の新たな非機械的プロセスを開発することである。更なる課題は、微粉化した高度に均質な形態のジゴキシンを得る新たな方法を利用可能なものとすることである。更なる課題は、有効成分の化学的／物理的特徴にあまり影響を及ぼさない、ジゴキシンに関する新たな微粉化プロセスを利用可能なものとすることである。更なる課題は、経口投与用に配合された場合に、ジゴキシンに関する現行の放出基準を満たすものの、分解されないジゴキシン形態を得ることである。更なる課題は、微粉化ジゴキシンの安定化形態を得ることである。更なる課題は、高純度の（すなわち、ジゴキシン分解生成物が除外又は実質的に除外される）微粉化ジゴキシンを得ることである。これらの及び更なる課題は以下で説明される本発明によって達成される。

本発明は、通常レベルから、選択されるマイクロメートル範囲までジゴキシンの粒径を縮小させることができる、新たな非機械的微粉化プロセスを開示している。微粉化は、精製及び濃縮したジゴキシンの有機溶剤溶液に対して行われる特定の処理を介して達成される。精製及び濃縮したジゴキシン溶液は、一連の溶剤処理を介して得ることができる。要求される濃度に達したら、その後、溶液を更に濃縮して、ジゴキシンの沈殿物を得る。その後、反応混合物に適切な時間撹拌しながらメタノールを添加する。回収した沈殿物の得られた粒子の少なくとも９０重量％は、２０マイクロメートル〜３０マイクロメートルを構成する粒径を有するジゴキシンとなり、分解生成物は除外される。

「濃縮及び精製したジゴキシン溶液」という表現では、「濃縮」という用語が５０ｇ／Ｌ〜２００ｇ／Ｌ、好ましくは７０ｇ／Ｌ〜１５０ｇ／Ｌ、最も好ましくは１００ｇ／Ｌ〜１２０ｇ／Ｌのジゴキシン濃度を意味する。

「濃縮及び精製したジゴキシン溶液」という表現では、「精製」という用語が９０．０％〜９９．９％、好ましくは９５．０％〜９９．９％、最も好ましくは９８．０％〜９９．９％の純度を有するジゴキシンを意味する（乾燥形態のジゴキシンに対して算出）。

本方法に適する、精製された濃縮ジゴキシン溶液を得る好ましいが非限定的な手法は、下記のものである。
ａ）既知の工業方法によって通常入手可能な粗製ジゴキシンを塩基（好ましくは炭酸ナトリウム）の存在下において水アルコール溶剤（好ましくはブタノール：水）で可溶化し、続いて適切な時間（好ましくは５時間〜１５時間少なくとも９０℃に）加熱する。その後、この溶液を冷却する（典型的には５℃〜１５℃に５時間〜１５時間）。沈殿物を濾過及び乾燥させる。
ｂ）ａ）で得られる沈殿物を有機溶剤混合物（好ましくはメタノール：塩化メチレン）に溶解した後、撹拌しながら水を添加することにより再度沈殿させる（好ましくは１５℃〜２５℃で３時間〜７時間）。沈殿物を濾過及び乾燥させる。
ｃ）ｂ）で得られる沈殿物を有機溶剤混合物（好ましくはメタノール：塩化メチレン）に溶解し、炭素を添加し、濾過する。濾過した溶液を１つ以上のアルミナ床に通した後、濃縮し、精製した濃縮ジゴキシン溶液を得る。この溶液は典型的に５０ｇ／Ｌ〜２００ｇ／Ｌ、好ましくは７０ｇ／Ｌ〜１５０ｇ／Ｌを構成する濃度を有する。

本発明によれば、精製及び濃縮したジゴキシン溶液を、生成物の沈殿が完了するまで（すなわち、更なる沈殿が観察されなくなるまで）更に濃縮する。濃縮は真空下、室温において撹拌条件で適切に達成され、沈殿が完了したら、溶液にメタノール（好ましくは上記の更に濃縮した溶液１体積当たり１体積〜２体積、より好ましくは１．５体積）を添加し、室温で１時間〜６時間、好ましくは２時間〜５時間、最も好ましくは３時間〜４時間撹拌した後、沈殿物を濾過し、極性溶剤、好ましくはアセトンで洗浄し、乾燥させる。乾燥は例えば真空下、２０℃〜４０℃で２４時間行い得るが、乾燥条件は作業の規模に応じて容易に変更及び適合することができる。

このように得られるジゴキシンは、高い純度を有し、一般的な医薬製剤、典型的には錠剤にすぐに組み込むことができる。該ジゴキシンの粒子の少なくとも９０％は２０マイクロメートル〜３０マイクロメートルの粒径を有し、完全な無彩色によって明らかにされるとともに解析によって更に確認可能な分解生成物は除外される。本発明において、粒径分布とは「数分布」（故に、「体積分布」又は「質量分布」ではない）を意味する。したがって、「粒子の少なくともｍ％がｘマイクロメートル〜ｙマイクロメートル」という類の表現はいずれも、生成物を構成する粒子の数の少なくともｍ％が、ｘマイクロメートル〜ｙマイクロメートルを構成するサイズを有することを特徴とする粒子分布を説明するものである。関連する粒径値は、データ処理システムを適切に備える、レーザー回折、動的光散乱、動的画像解析を含む一般的な技法によって測定することができる。得られたジゴキシンを一般の賦形剤と配合してもよい。好適な賦形剤は、微結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースといったセルロースエーテルのようなセルロース生成物；架橋ポリマー（例えば、ｐｏｌｙｐｌａｓｄｏｎｅ ＸＬ、尿素と架橋したヒアルロン酸又はアルギン酸）；植物由来のガム等である。マンニトール、フルクトースのような一般の希釈剤、及びステアリン酸マグネシウムのような圧縮助剤も使用することができる。これらの製剤は、好適な賦形剤と併せて、"Remington's Pharmaceutical Handbook" Mack Publishing Co., N.Y. USAに記載されるような従来方法に従って調製することができる。そのように配合されたジゴキシンは、十分に速い速度で溶解してジゴキシンに関する現行の製薬基準に準拠する放出速度を得るのに適切なものである一方、過度の血漿ピークを回避するものとなっている。

ここで、以下の非限定的な実施例を参照することにより本発明を説明する。

実施例１
慣行的な工業方法によって得られる粗製ジゴキシン（１．５Ｋｇ）（ジゴキシン含有率８５％）を３倍のブタノール／水混合物（８８：１２）（４．５Ｌ）に溶解した。３０．０ｇの固体炭酸ナトリウムを添加し、混合物を１０時間還流した（９５±２℃）。その後、反応物を１０℃に冷却させた後、１０時間１０℃未満の温度に維持した。材料を濾過し、真空下７０℃で１２時間乾燥させた。そうして得られた材料を３０Ｌの二塩化メチレン：メタノール混合物（１：１（ｖ／ｖ））に溶解した。溶解が完了したら、更に３０Ｌの二塩化メチレンを添加し、続いて３０Ｌの水を徐々に添加した。反応物を最大５時間１８℃〜２０℃で撹拌した後、濾過し、真空下７０℃で１２時間乾燥させると、１．２Ｋｇの乾燥材料が得られた。その後、乾燥材料を３５℃〜４０℃で２０Ｌ〜２４Ｌの二塩化メチレン：メタノール混合物（１：１（ｖ／ｖ））に溶解した。この混合物にその後、０．４Ｋｇ〜０．６Ｋｇの炭素を添加し、３０分間３５℃〜４０℃で撹拌した。その後、それをＨｙｆｌｏ（珪藻土）床に通して濾過し、この濾過した溶液をアルミナ（１．５Ｋｇ）に更に通し、Ｈｙｆｌｏ床及びアルミナ床のこれらの床を６Ｌの二塩化メチレン：メタノール（１：１（ｖ／ｖ））で洗浄した。合わせた濾液を真空にすることなく１０Ｌまで濃縮した。得られる溶液を真空下、撹拌しながら４Ｌまで更に濃縮すると、沈殿物の形成が観察された。この沈殿が完了したら、３時間〜４時間撹拌しながら溶液に６Ｌのメタノールを添加し、最後に沈殿物を濾過し、アセトンで洗浄し、真空下２５℃〜４０℃で２４時間乾燥させると、粒子の９０％超が２０マイクロメートル〜３０マイクロメートルの粒径を有するジゴキシン（０．９５Ｋｇ）が得られた。

実施例２
本実施例は、実施例１による微粉化ジゴキシンをベースとする強心組成物（錠剤）を調製する実施形態について記載するものである。
微粉化ジゴキシン ０．２００ｍｇ
微結晶セルロース １００ｍｇ
マンニトール ２０ｍｇ
フルクトース ４０ｍｇ
Ｐｏｌｙｐｌａｓｄｏｎｅ ＸＬ ８ｍｇ
ステアリン酸マグネシウム ４ｍｇ

Claims (10)

1. ５０ｇ／Ｌ〜２００ｇ／Ｌのジゴキシン濃度を有する、精製及び濃縮したジゴキシンの二塩化メチレンとメタノールとの混合物の溶液を、ジゴキシンの沈殿物が得られるまで更に濃縮した後、メタノールを添加し、１時間〜６時間撹拌し、続いて沈殿物の回収及び乾燥を行う、非機械的に微粉化したジゴキシンを得る方法。
2. 前記得られる微粉化したジゴキシンの粒子の少なくとも９０％が２０マイクロメートル〜３０マイクロメートルを構成する粒径を有する、請求項１に記載の方法。
3. 前記得られる微粉化したジゴキシンには分解生成物は除外されている、請求項１又は２に記載の方法。
4. 前記ジゴキシン濃度が７０ｇ／Ｌ〜１５０ｇ／Ｌを構成する、請求項１〜３のいずれか一項に記載の方法。
5. 前記混合物が二塩化メチレンとメタノールとの１：１（ｖ／ｖ）混合物である、請求項１〜４のいずれか一項に記載の方法。
6. 前記添加されるメタノールを、前記濃縮溶液１体積当たり１体積量〜２体積量で使用する、請求項１〜５のいずれか一項に記載の方法。
7. 前記添加されるメタノールを、前記濃縮溶液１体積当たり１．５体積量で使用する、請求項１〜６のいずれか一項に記載の方法。
8. メタノールを添加した前記溶液を３時間〜４時間撹拌する、請求項１〜７のいずれか一項に記載の方法。
9. 前記更なる濃縮を真空下、室温で実施する、請求項１〜８のいずれか一項に記載の方法。
10. ｉ）粗製ジゴキシンを塩基の存在下で水アルコール溶剤に可溶化し、少なくとも９０℃に加熱し、続いて溶液を冷却し、得られる沈殿物を回収する工程と、
    ｉｉ）ｉ）で得られる沈殿物を溶剤混合物に溶解した後、撹拌しながら水を添加することにより沈殿させ、続いて該沈殿物を回収する工程と、
    ｉｉｉ）ｉｉ）で得られる沈殿物を有機溶剤混合物に溶解し、炭素を添加し、濾過し、濾過した溶液を１つ以上の濾床に通した後、３０ｇ／Ｌ〜１５０ｇ／Ｌを構成する値まで濃縮する工程と、
    によって、前記精製された濃縮ジゴキシンを調製する、請求項１〜９のいずれか一項に記載の方法。