以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
最初に、第1の実施形態について説明する。
(構成)
図1は第1の実施形態に係る火力発電システムの構成を示す概略図である。
火力発電システム100は、石炭を原料として発電する発電システム101、排ガス処理システム102、水処理システム103、排ガス中水蒸気回収システム104を有する。
発電システム101は、石炭を微粉状にする破砕機1、微粉炭を燃焼させて高圧及び低圧蒸気を生成する微粉炭燃焼ボイラー2、微粉炭燃焼ボイラー2で加熱発生した低圧蒸気と高圧蒸気の圧力エネルギーを回転エネルギーに変換する低圧蒸気タービン11、高圧蒸気タービン12、低圧蒸気タービン11と高圧蒸気タービン12と回転軸で接続され、それぞれのタービンによる回転エネルギーを電力に変換する発電機13、圧力が下がった蒸気を復水する空冷式復水器14、復水された水をボイラー水として微粉炭燃焼ボイラー2に供給するボイラー水供給ポンプ15、微粉炭燃焼ボイラーにて加熱されたボイラー水から低圧蒸気を気液分離(気液分離器は図示せず)した熱水を昇圧して、再度、微粉炭燃焼ボイラー2で加熱して高圧蒸気を発生させるための昇圧ポンプ16で構成されている。
排ガス処理システム102は、発電システム101の、微粉炭燃焼ボイラー2にて微粉炭を燃焼させた排ガスに含まれるNOx等の有害物資を除去する脱硝装置3、燃焼排ガスが有する熱にて微粉炭を燃焼させるための空気を予熱する空気予熱器4、脱硫排ガスと熱交換することで微粉炭燃焼排ガス温度を下げる熱交換器(GGH)5、排ガス中の煤塵を除去する電気集塵装置6、排ガスに含まれるSOx等の有害物質を除去する脱硫装置7、熱交換器(GGH)5にて再加熱した脱硫排ガスを加圧する昇圧ファン8、排ガス中水蒸気分離システム104の水蒸気分離装置9にて水蒸気を分離した排ガスを大気に放出する煙突10で構成されている。
水処理システム103は、ボイラー水の一部を抽出するボイラー水ブローポンプ17と、ボイラーブロー水貯留タンク(池、漕)18、ボイラーブロー水を脱塩後(脱塩装置の記載は省略)、脱硫装置7に排ガス中のSOx等を脱硫するための用水を供給する脱硫用水供給ポンプ19、ボイラーブロー水を発電所内のその他の用水として発電所内に供給するための用水供給ポンプ20で構成されている。
排ガス中水蒸気回収システム104は、昇圧ファン8と煙突10の間に設置され、脱硫排ガス中の水蒸気の一部を分離する水蒸気分離装置9と、分離された水蒸気を大気中の空気で冷却し凝縮させる空冷式凝縮器21、凝縮水を抽出する凝縮水排出ポンプ、排出された凝縮水を貯留する水蒸気回収水タンク23、ボイラーブロー水量分を微粉炭燃焼ボイラー2に補給するボイラー補給水供給ポンプ24で構成されている。
(作用)
次に、第1の実施形態に係る火力発電システムの作用について説明する。
発電システム101では、燃料である石炭を石炭供給ライン1aより破砕機1に供給し微粉砕された後に微粉炭供給管1bにて微粉炭燃焼ボイラー2内部に設置されたバーナー2bに供給される。一方、空気吸入ダクト4bから大気中の空気を空気予熱器4に供給しボイラー排ガスと熱交換することで予熱された空気を空気供給ダクト4cを介してバーナー2bに供給する。バーナー2bでは、微粉炭を燃焼させて高温の燃焼ガスを生成する。生成した燃焼ガスの熱を使って微粉炭燃焼ボイラー2内部に設置された伝熱管2cにて伝熱管内部を流れるボイラー水供給配管15aから供給されたボイラー水を加熱して熱水と低圧蒸気を生成する。生成した低圧蒸気と熱水を図示しない気液分離器にて気液分離する。
分離された低圧蒸気は、低圧蒸気管12aにて低圧蒸気タービン11に送られる。一方、熱水は、熱水配管11bにて昇圧ポンプ16へ送られ加圧後、熱水管16aより再度、微粉炭ボイラー2の内部に設置された伝熱管2dに供給し、伝熱管の内部を流れる間に高温の燃焼ガスと熱交換し高圧蒸気を生成する。生成した高圧蒸気は、高圧蒸気管12aより微粉炭燃焼ボイラー2から排出されて高圧蒸気タービン12に送られる。
高圧蒸気タービン12では、高圧蒸気が膨張しながらタービンを回転させる。その間、高圧蒸気は、圧力、温度、密度が低下し、微粉炭燃焼ボイラー2から排出される低圧蒸気と同等の蒸気になり低圧蒸気管12bより低圧蒸気タービン11に送られる。
一方、低圧蒸気タービン11では、微粉炭燃焼ボイラー2および高圧蒸気タービン12から排出された低圧蒸気が膨張しながらタービンを回転させる。その間、低圧蒸気は、更に、圧力、温度、密度が低下した蒸気が排蒸気管11aより空冷式復水器14に送られる。
低圧蒸気タービン11と高圧蒸気タービン12、発電機13は、回転軸で接続され、それぞれのタービンによる回転エネルギーを発電機13で電力に変換する。なお、低圧蒸気タービン11と高圧蒸気タービン12を一軸で接続しないで、それぞれの回転軸に発電機を接続し回転エネルギーを電力に変換しても構わない。
空冷式復水器14は、凝縮管14a、14b、空冷ファン14cで構成されており、低圧蒸気タービン11から排出された蒸気は、排蒸気管11aより空冷式復水器14の凝縮管14a、14bに送られ、空冷ファン14cにて凝縮管14a、14bの外部に大気中の空気を強制的に通風し、凝縮管14a、14bの内部で蒸気が冷却(熱交換)されて凝縮する。その間、排蒸気管11aの内部、凝縮管14a、14bの内部の圧力は、ほぼ真空(外部の大気温度時の水蒸気圧程度の圧力)になり、低圧蒸気タービン11からの排蒸気が吸引される。ただし、図示していないが、凝縮管14a、14bに真空ポンプを接続し、僅かながら、ボイラー配管内部に入ってくるボイラー供給水中の溶存空気、配管途中のリーク空気等を真空ポンプで吸引排出することもある。
凝縮管14a、14bで生成した凝縮水を凝縮水配管14d、14eを介してボイラー水供給ポンプ15で吸引し、昇圧後、ボイラー水供給配管15aから微粉炭燃焼ボイラー2にボイラー水を供給する。
また、高圧蒸気、低圧蒸気を生成後、温度の下がった燃焼ガスは、排ガスとして排ガス煙道2aにて微粉炭燃焼ボイラー2から排出されて排ガス処理システム102の脱硝装置3に送られる。
排ガス処理システム102では、微粉炭燃焼ボイラー2の出口に設置された排ガス煙道2aより、燃焼排ガスが脱硝装置3に送られ、ボイラー排ガス温度のまま排ガスに含まれるNOx等の窒素系有害成分を触媒と接触させて無害化する。窒素系有害物を無害化された排ガスは、排ガス煙道3aにて脱硝装置3から排出され、空気予熱器4に送られる。空気予熱器4では、排ガスが、ボイラー燃焼用の空気と熱交換されることで温度が140℃程度に下がり、排ガス煙道4aにて熱交換器(GGH)5に送られる。熱交換器(GGH)5では、脱硫装置7から排出された脱硫排ガスが排ガス煙道7aより供給され空気予熱器4から送られてきたボイラー排ガスと熱交換されて、その間、140℃程度のボイラー排ガス温度が90℃程度に下がり排ガス煙道5aにて電気集塵装置6に送られる。一方、50℃だった脱硫排ガスは、100℃程度に加熱されて排ガス煙道5bから排出され昇圧ファン(BUF)8で昇圧された後、排ガス中水蒸気回収システム104の水蒸気分離装置9に送られる。
電気集塵装置6では、排ガスに含まれる煤塵、粒子状物質を静電的に分離除去した上で、排ガス煙道6aより脱硫装置7に送る。脱硫装置7では、脱硫用水配管19bから脱硫用水を供給して装置内に散水させて排ガスと接触させる。その間、電気集塵装置6で除去しきれなかった排ガス中の煤塵、粒状物質、SOx等の硫化物系の有害物質等が除去される。また、排ガス温度が90℃程度から50℃程度に下がり、相対湿度がほぼ100%の飽和水蒸気を含む脱硫排ガスが脱硫装置7から排出され排ガス煙道7aを通って熱交換器(GGH)5に送られる。一方、ボイラー排ガスに含まれる煤塵、粒状物質、SOx等の硫化物系の有害物質等を吸収した脱硫廃水は、脱硫廃水排出管7bより図示していない排水処理設備に送られる。
熱交換器(GGH)5では、140℃程度のボイラー排ガスと熱交換されることで50℃だった脱硫排ガスが100℃程度に加熱される。加熱されることで湿度が下がり飽和していないが水蒸気を多く含む脱硫ガスが排ガス煙道5bから排出され昇圧ファン(BUF)8にて昇圧された後、排ガス中水蒸気回収システム104の水蒸気分離装置9に送られる。水蒸気分離装置9にて排ガス中に含まれる水蒸気の多くを分離した排ガスは、排ガス煙道9aにて煙突10に送られてそのまま大気中に放出される。
水処理システム103では、発電システム101内を循環するボイラー水の塩分濃度上昇による装置、蒸気管、配管等の閉塞、劣化、破損を抑制するため、ボイラー水の一部をブローし、空冷式復水器14のから排出される凝縮水の一部を凝縮水配管14d乃至14eからボイラー水ブローポンプ17を使って発電システム101の外に排出される。なお、図示しないが、ボイラー水ブローポンプ17を無くし、ボイラー水供給ポンプ15で加圧された凝縮水(ボイラー水)の一部をボイラー水供給配管15aからブローしても構わない。発電システム101からブローされたボイラー水の一部、即ち、ボイラーブロー水は、ボイラーブロー水貯留タンク(池、漕)18に送られ、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってからその一部が脱硫用水として脱硫用水配管19a、19bを介して脱流水供給ポンプ19にて排ガス処理システム102内の脱硫装置7に供給される。また、残ったボイラーブロー水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってから用水供給ポンプ20にてその他の発電所用水として利用する。
排ガス中水蒸気回収システム104では、脱硫排ガス中の水蒸気の一部を水蒸気分離装置9にて分離する。水蒸気分離装置9は、水蒸気分離膜9cと排ガス流路9d、水蒸気分離膜9cにて排ガス流路9dを隔てられ、水蒸気分離膜9cにて排ガスから分離した水蒸気が流れる水蒸気流路9eで構成されている。
また、本実施形態においては、水蒸気分離膜9cにポリイミド製の水蒸気透過中空糸膜を用いており、具体的には図2の模式図に示すように複数本の中空糸膜を束ねた中空糸膜エレメント9fを複数設置することで実現される。それぞれの外側に脱硫排ガスを通風し、それぞれの内側から水蒸気を回収する。即ち、各中空糸膜エレメント9fの内側を水蒸気流路9eとし、外側を排ガス流路9dとする。
図3は、中空糸膜の一般的な使用方法と本実施形態での使用方法との違いを示す模式図である。一般には、図3(a)に示すように、複数本の中空糸膜9gのそれぞれの内側に脱硫排ガスを通風し、それぞれの外側から水蒸気を回収するものとする。これに対し、本実施形態では、図3(b)に示すように複数本の中空糸膜9gのそれぞれの外側に脱硫排ガスを通風し、それぞれの内側から水蒸気を回収する。これにより、大流量の排ガスを中空糸膜エレメント9fに流しても圧力損失を低く抑えることができ、排ガスの加圧動力を小さくできる。
熱交換器(GGH)5にて50℃から100℃に加熱された脱硫排ガスは、昇圧ファン(BUF)8にて排ガス中水蒸気回収システム104の水蒸気分離装置9に送られる。水蒸気分離装置9では、水蒸気が水蒸気分離膜9cを透過して排ガス流路9dから水蒸気流路9eに移動することで排ガスに含まれる水蒸気の多くを分離する。水蒸気の多くを分離した排ガスは、排ガス煙道9aにて煙突10に送られてそのまま大気中に放出される。一方、水蒸気流路9eに移動した水蒸気は、水蒸気配管9bを通って空冷式凝縮器21に移動する。
空冷式凝縮器21は、凝縮管21a、21b、空冷ファン21cで構成されており、水蒸気流路9eに移動した水蒸気は、水蒸気配管9bより空冷式凝縮器21内の凝縮管21a、21bに送られ、空冷ファン21cにて凝縮管21a、21bの外部に大気中の空気を強制的に通風することで、凝縮管21a、21bの内部で水蒸気が冷却されて凝縮する。その間、水蒸気流路9e、水蒸気配管9bの内部、凝縮管21a、21bの内部の圧力が、ほぼ真空(外部の大気温度時の水蒸気圧程度の圧力)になり、水蒸気分離装置9からの水蒸気が空冷式凝縮器21に吸引されると共に、水蒸気分離装置9でも水蒸気流路9eと排ガス流路9dとの間に圧力差が生じて、その圧力差を駆動力として脱硫排ガスに含まれる水蒸気が水蒸気分離膜9cを介して、排ガス流路9dから水蒸気流路9eへ移動する。
ただし、図示していないが、凝縮管21a、21bに真空ポンプを接続し、僅かながら、排ガス中の気体成分が水蒸気分離膜9cを透過し、凝縮管21a、21b、水蒸気配管9b内部に入ってくる気体、配管途中のリーク空気等を真空ポンプで吸引排出することもある。
凝縮管21a、21bで生成した凝縮水を凝縮水配管21d、21eを介して凝縮水排出ポンプ22で吸引し水蒸気回収水タンク23に貯留される。貯留された凝縮水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってからその一部がボイラー補給水としてボイラー水補給配管24a、24bを介してボイラー補給水供給ポンプ24で加圧し後、発電システム101のボイラー水供給配管15aの途中から微粉炭燃焼ボイラー2に供給する。なお、発電システム101内のボイラー水量が一定になる様にボイラー補給水量とボイラーブロー水量を調整する。余った排ガス中水蒸気から分離回収した水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってから図示していない用水供給ポンプにてその他の発電所用水として利用する。
(効果)
第1の実施形態による効果について説明する。
本実施形態では、水蒸気分離装置9に、例えば、水蒸気のみを透過する内径0.3〜0.5mmのポリイミド製の中空糸膜1千〜30万本を束ねた円柱形状の中空糸膜エレメント9fを100〜10,000本、排ガス煙道途中に設置する。本実施形態の場合は、脱硫装置7より下流側の排ガス煙道に設置している。これにより発電規模300MWの場合、脱硫排ガスは、温度50℃、相対湿度99%、約100万Nm3/hの排ガス流量、即ち発電排ガスで最も多く1,824m3/日の水蒸気が脱硫排ガスに含まれているが、水蒸気分離膜9cを透過した水蒸気を外気温30℃の空気の強制通風による空冷で水蒸気を凝縮させた場合、凝縮管21a、21bにて約1,200m3/日の水蒸気を回収することができる。結果、約1,200m3/日の水蒸気を脱硫排ガスから分離することができる。
この際、脱硫排ガス(温度50℃、相対湿度99%)は、熱交換器(GGH)5にて100℃まで昇温されるため相対湿度が10%まで低下した状態で水蒸気分離装置9に導入される。そのため、約100万Nm3/hの排ガス流量では、排ガス煙道8a、水蒸気分離装置9の排ガス流路9dの圧力損失があり昇圧ファン8で昇圧しても排ガス中の水蒸気が加圧によって凝縮することなく排ガス流路9dを流れることができる。即ち、排ガス流路9dに劣悪水質の凝縮水が溜まらず、装置の劣化を抑制でき、また、水蒸気分離膜9c表面で液滴になり水蒸気透過性能が低下することを抑制できる。また、この時、排ガス流路9dを流れる時の水蒸気分圧は、脱硫排ガスとほぼ同じ10kPaである。一方、水蒸気流路9e側は、空冷式凝縮器21にて30℃で冷却し水蒸気を凝縮させているため、その時の水蒸気圧は、約4kPaである。この水蒸気圧差を利用して水蒸気が水蒸気分離膜9cを介して排ガス流路9dを流れる排ガスから水蒸気流路9e側に移動する。即ち加圧、減圧等の動力を使うことなく排ガス中の水蒸気を分離回収することができる。
また、本実施形態では、既に図3(b)で説明したように、複数本の中空糸膜9gのそれぞれの外側に脱硫排ガスを通風し、それぞれの内側から水蒸気を回収する。これにより発電規模300MWの場合、約100万Nm3/hの排ガス流量になるが、そのような大流量の排ガスを中空糸膜エレメント9fに流しても圧力損失を低く抑えることができ、排ガスの加圧動力を小さくできる。
また、発電規模300MWの石炭火力で排ガスに含まれる水蒸気量は、脱硫排ガスで1,924m3/日しかない。排ガスの水蒸気を回収した場合では、1,200m3/日の水蒸気しか水として回収できない。一方、同規模の石炭火力発電所にボイラー水の復水のために、ボイラー蒸気を海水で冷却した場合、105万m3/日の海水量(図14)、冷却水を復水器に循環させて、その加熱された冷却水を強制通風冷却する方式、即ちクーリングタワー方式でも、冷却水の蒸発分で2.5万m3/日以上(図15)の水を発電所がから供給する必要がある。そのため、排ガスを直接冷却して排ガス中水蒸気のほぼ全量を回収したとしても1,800m3/日しか回収できないため、海水冷却方式、クーリングタワー方式で必要な水量が得られないが、ボイラー水の復水のための水を外部から供給する必要のない空冷式復水器を採用し、本実施形態の排ガス中水蒸気回収システム104と組み合わせることで、発電所外から水供給が不要で、大量の水確保が難しい内陸部等に、設置場所に関係なく火力発電所を建設可能になる。
なお、空冷式復水器にしても、発電規模300MWの石炭火力発電所の場合、ボイラーブロー水分の補給水量として650m3/日の純水の供給するため、純水を製造するために925m3/日の水を発電所から供給する必要があるが、排ガス中水蒸気回収システム104を設置することでその分の水を発電所内で確保できる。
また、排ガスを直接冷却して排ガス中水蒸気のほぼ全量を回収した場合、排ガス中に残留するNOx、SOx、煤塵等の有害物質が回収水の溶解するためそのための脱塩、除濁等の水処理が必要になるが、本実施形態においては、水蒸気分離膜9cにて、水蒸気のみを排ガスから分離して凝縮させているためNOx、SOx、煤塵等の有害物質が凝縮水にほとんど溶解すること無く、脱塩、除濁等の水処理を無くし、或いは、最上限に抑えることができこれら水処理装置の導入コストを抑制できる。
なお、本実施形態においては、ポリイミド製の水蒸気透過中空糸膜を使っているが、フッ素系高分子膜、三酢酸セルロース膜、ポリウレタン膜、ポリスルフォンシリコン膜、ゼオライトでコーティングしたセラミック膜で作製した中空糸膜、平膜、円筒型フィルターを水蒸気分離装置9に利用することでも本実施形態の作用、効果を実現することができる。また、空冷式凝縮器21ではなく、海水等の冷却水の確保が可能な場合は、水冷、その他の冷熱源がある場合は、それらの冷却方法によって水蒸気分離装置9で分離した水蒸気を冷却凝縮しても構わない。また、復水器が海水冷却方式やクーリングタワー方式であっても、排ガス中水蒸気回収システム104を設けて、クーリングタワー補給水、その他、発電所内用水として発電排ガス中の水蒸気を回収するようにしても構わない。
[第1の実施形態の変形例]
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。ただし、第1の実施形態と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(構成)
図4は第1の実施形態に係る火力発電システムの構成の変形例を示す概略図である。
第1の実施形態の変形例(火力発電システム105)では、第1の実施形態(火力発電システム100)に対して、排ガス処理システム102の熱交換器(GGH)5が第1の熱交換器(高温系)5dと第2の熱交換器(低温系)5eで構成されており、また、排ガス中水蒸気回収システム104の空冷式凝縮器21を無くし、発電システム101の空冷式復水器14が空冷式凝縮器21を兼ねる様に構成されている。
(作用)
次に、第1の実施形態の本変形例に係る火力発電システムの作用について説明する。以下の点が、第1の実施形態と異なる。
排ガス処理システム103では、空気予熱器4にて温度が140℃に下がったボイラー排ガスが熱交換器5に設置された第1の熱交換器(高温系)に排ガス煙道4aから導入され、排ガス煙道9aを介して導入される水蒸気分離装置9にて水蒸気の一部が分離された脱硫排ガス(温度55℃)と熱交換される。その結果、ボイラー排ガスの温度が95℃程度まで下がり、一方、脱硫排ガスは100℃程度に加熱される。95℃程度までに温度が下がったボイラー排ガスは、第2の熱交換器(低温系)に排ガス煙道5fから導入され、排ガス煙道7aから導入される脱硫装置7から排出された脱硫排ガス(50℃)と熱交換される。その結果、脱硫排ガスは55℃程度に加熱され、ボイラー排ガスは90℃程度に冷却される。
加熱された脱硫排ガスは、排ガス煙道5b、8aを介して、昇圧ファン8にて水蒸気分離装置9内の排ガス流路9dに送られる。一方、90℃に冷却されたボイラー排ガスは、排ガス煙道9aより電気集塵装置6に送られる。水蒸気分離装置9では、脱硫排ガスに含まれる水蒸気の多くを分離した後、排ガス煙道9aより第1の熱交換器(高温系)に送られる。水蒸気分離装置9にて分離した水蒸気は、水蒸気配管9bを使って、発電システム101内の空冷式復水器14の凝縮管14aと14bに送られる。
空冷式復水器14に送られた水蒸気の凝縮、その他の作用は、第1の実施形態の空冷式凝縮器21と空冷式復水器14の作用と同じである。
(効果)
次に本変形例の効果について説明する。以下の点が、第1の実施形態と異なる。
本変形例にすることで、水蒸気分離装置9に導入される脱硫排ガス温度を100℃程度から55℃に下げることができる。脱硫排ガス温度を55℃に加熱するのみであっても、脱硫装置7から排出される脱硫排ガス(温度50℃、相対湿度99%)に対して、相対湿度が67%に下がるため、約100万Nm3/hの排ガス流量による排ガス煙道8a、水蒸気分離装置9の排ガス流路9dの圧力損失分、即ち昇圧ファン8で昇圧しても排ガス中の水蒸気が加圧によって凝縮することなく排ガス流路9dを流すことができる。即ち、排ガス流路9dに劣悪水質の凝縮水が溜まらず、装置の劣化を抑制でき、また、水蒸気分離膜9c表面で液滴になり水蒸気透過性能が低下することを抑制できる。
更に本変形例では、脱硫排ガス温度を100℃から55℃に下げる分、水蒸気分離装置9、昇圧ファン8の耐熱温度を下げられる。特に、水蒸気分離膜9cの耐熱温度を下げることで、水蒸気分離装置9の製造コスト、水蒸気分離膜の交換コストを低減できる。
また、発電規模300MWの石炭火力の場合、発電システム101では、ボイラー水12,600m3/日が循環し微粉炭燃焼ボイラー2で加熱水蒸気となり、発電用の蒸気タービン11、12を経た後に空冷式復水器14にて冷却、復水される。一方、水蒸気分離装置9で分離される水蒸気量は、第1の実施形態と同様に約1,200m3/日の水量に相当する水蒸気を凝縮させる。そのため空冷式復水器14より第1の実施形態の空冷式凝縮器21の1/10サイズ規模で済み、水蒸気分離装置9で分離した水蒸気を直接空冷式復水器14に導入することで、空冷式凝縮器、純水貯水タンク等を省略でき発電システム全体の簡易化、コストダウンが可能である。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。ただし、第1の実施形態と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(構成)
図5は第2の実施形態に係る火力発電システムの構成を示す概略図である。
火力発電システム106は、天然ガスを原料として発電する発電システム107、発電排ガス中の水蒸気を分離回収する排ガス中水蒸気回収システム108を有する。
発電システム107は、大気中の空気を取り込み圧縮する空気圧縮機25、圧縮された空気と燃料の天然ガスを導入し燃焼させて、それら燃焼ガスの膨張エネルギーを回転エネルギーに変換するガスタービン26、その燃焼ガスの熱を使って高圧及び低圧蒸気を生成する排熱回収ボイラー27、排熱回収ボイラー27で加熱発生した低圧蒸気と高圧蒸気の圧力エネルギーを回転エネルギーに変換する低圧蒸気タービン31と高圧蒸気タービン32、また、低圧蒸気タービン31と高圧蒸気タービン32、及び、空気圧縮機25とガスタービン26が一本の回転軸で接続され、それぞれのタービンによる回転エネルギーを、空気圧縮動力とするほか、更に電力に変換する発電機33、圧力が下がった蒸気を復水する空冷式復水器35、復水された水をボイラー水として排熱回収ボイラー27に供給するボイラー水供給ポンプ36、排熱回収ボイラー27にて加熱されたボイラー水から低圧蒸気を気液分離(気液分離器は図示せず)した熱水を昇圧して、再度、排熱回収ボイラー27で加熱して高圧蒸気を発生させるための昇圧ポンプ34、ボイラー水の一部をブローするためのボイラー水ブローポンプ37、排熱回収ボイラー27から排出され、排ガス中水蒸気回収システム108の水蒸気分離装置29にて水蒸気の一部を分離された燃焼ガスを大気中に放出する煙突30で構成されている。
排ガス中水蒸気回収システム108は、排熱回収ボイラー27と煙突30の間に設置され、燃焼排ガスに含まれる水蒸気の一部を分離する水蒸気分離装置29と、分離された水蒸気を大気中の空気で冷却し凝縮させる空冷式凝縮器38、凝縮水を抽出する凝縮水排出ポンプ40、排出された凝縮水を貯留する水蒸気回収水タンク39、ボイラーブロー水量分を排熱回収ボイラー27に補給するボイラー補給水供給ポンプ41、余った純水を発電所内の用水として送水する用水供給ポンプ42で構成されている。
(作用)
次に、第2の実施形態に係る火力発電システムの作用について説明する。
発電システム107では、支燃剤として大気中の空気を空気供給ダクト25aより取込み、空気圧縮機25にて圧縮する。圧縮された空気は、燃料供給管26aから供給される燃料である天然ガスと共に混合され燃焼させる。その燃焼排ガスをガスタービン26に導入し、燃焼ガスの膨張エネルギーを回転エネルギーに変換し、排ガスとして排熱回収ボイラー27に排出する。
排熱回収ボイラー27では、燃焼排ガスの熱を使って排熱回収ボイラー27の内部に設置された伝熱管27bにて伝熱管内部を流れるボイラー水供給配管36aから供給されたボイラー水を加熱して熱水と低圧蒸気を生成する。生成した低圧蒸気と熱水を図示しない気液分離器にて気液分離する。分離された低圧蒸気は、低圧蒸気管31aにて低圧蒸気タービン31に送られる。一方、熱水は、熱水配管34aにて昇圧ポンプ34へ送られ加圧後、熱水配管34bより再度、排熱回収ボイラー27の内部に設置された伝熱管27cに供給し、伝熱管の内部を流れる間に高温の燃焼ガスと熱交換し高圧蒸気を生成する。なお、排熱回収ボイラー27の内部には脱硝装置28が設置されており、燃焼排ガスが脱硝装置28を追加する際、排ガス温度のまま排ガスに含まれるNOx等の窒素系有害成分を触媒と接触させて無害化する。生成した高圧蒸気は、高圧蒸気管32aより排熱回収ボイラー27から排出されて高圧蒸気タービン32に送られる。
高圧蒸気タービン32では、高圧蒸気が膨張しながらタービンを回転させる。その間、高圧蒸気は、圧力、温度、密度が低下し、排熱回収ボイラー27から排出される低圧蒸気と同等の蒸気になり低圧蒸気管32bより低圧蒸気タービン31に送られる。
一方、低圧蒸気タービン31では、排熱回収ボイラー27および高圧蒸気タービン32から排出された低圧蒸気が膨張しながらタービンを回転させる。その間、低圧蒸気は、更に、圧力、温度、密度が低下した蒸気が排蒸気管31bより空冷式復水器35に送られる。
低圧蒸気タービン31と高圧蒸気タービン32と、空気圧縮機25、ガスタービン26、発電機33は一本の回転軸で接続され、それぞれのタービンによる回転エネルギーを、空気圧縮機25での空気圧縮動力とし、さらに発電機33にて電力に変換する。なお、低圧蒸気タービン31と高圧蒸気タービン32の組合せと、ガスタービンと空気圧縮機を一軸で接続しないで、それぞれの回転軸に発電機を接続することで、回転エネルギーを電力、ガスタービンでは、電力のほか空気圧縮動力に変換しても構わない。
空冷式復水器35は、凝縮管35a、35b、空冷ファン35cで構成されており、低圧蒸気タービン31から排出された蒸気は、排蒸気管31bより空冷式復水器35に送られ、空冷ファン35cにて凝縮管35a、35bの外部に大気中の空気を強制的に通風し、凝縮管35a、35bの内部で蒸気が冷却(熱交換)されて凝縮する。その間、排蒸気管31bの内部、凝縮管35a、35bの内部の圧力は、ほぼ真空(外部の大気温度時の水蒸気圧程度の圧力)になり、低圧蒸気タービン31からの排蒸気が吸引される。ただし、図示していないが、凝縮管35a、35bに真空ポンプを接続し、僅かながら、ボイラー配管内部に入ってくるボイラー供給水中の溶存空気、配管途中のリーク空気等を真空ポンプで吸引排出することもある。
凝縮管35a、35bで生成した凝縮水を凝縮水配管35d、35eを介してボイラー水供給ポンプ36で吸引し、昇圧後、ボイラー水供給配管36aから排熱回収ボイラー27にボイラー水を供給する。なお、ボイラー水の一部を凝縮水配管35d、35eからボイラー水ブローポンプ37にて発電システム107の外に排出される。
また、図示しないが、ボイラー水ブローポンプ37を無くし、ボイラー水供給ポンプ36で加圧された凝縮水(ボイラー水)の一部をボイラー水供給配管15aからブローしても構わない。発電システム107からブローされたボイラー水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってから発電所用水として利用することもある。
また、高圧蒸気、低圧蒸気を生成後、温度の下がった燃焼排ガスは、排ガスとして発電排ガス煙道27aにて排熱回収ボイラー27から排出されて、排ガス中水蒸気回収装置29にて、排ガス中の水蒸気の一部を分離した後、排ガス煙道29aから煙突30に送られて大気中に放出される。
排ガス中水蒸気回収システム108では、燃焼排ガス中の水蒸気の一部を水蒸気分離装置29にて分離する。水蒸気分離装置29は、水蒸気分離膜29c、排ガス流路29d(図示せず)、水蒸気分離膜29cにて排ガス流路29dを隔てられ、水蒸気分離膜29cにて排ガスから分離した水蒸気が流れる水蒸気流路29e(図示せず)で構成されている。
また、本実施形態では、第1の実施形態の場合と同様に、水蒸気分離膜29cにポリイミド製の水蒸気透過中空糸膜を用いており、具体的には前述したように複数本の中空糸膜を束ねた中空糸膜エレメント9fを複数設置することで実現される。それぞれの外側に脱硫排ガスを通風し、それぞれの内側から水蒸気を回収する。即ち、各中空糸の内側を水蒸気流路29eとし、外側を排ガス流路29dとする。
排熱回収ボイラーから排出される燃焼排ガスの温度は、80〜100℃のまま水蒸気分離装置29に送られる。本実施形態では図示しないが燃焼排ガスを50〜60℃に冷却してから水蒸気分離装置29に送っても構わない。
水蒸気分離装置29では、水蒸気が水蒸気分離膜29cを透過して排ガス流路29dから水蒸気流路29eに移動することで排ガスに含まれる水蒸気の多くを分離する。水蒸気の多くを分離した排ガスは、排ガス煙道29aにて煙突10に送られてそのまま大気中に放出される。一方、水蒸気流路29eに移動した水蒸気は、水蒸気配管29bを通って空冷式凝縮器38に移動する。
空冷式凝縮器38は、凝縮管38a、38b、空冷ファン38cで構成されており、水蒸気流路29eに移動した水蒸気は、水蒸気配管29bより空冷式凝縮器38内の凝縮管38a、38bに送られ、空冷ファン38cにて凝縮管38a、38bの外部に大気中の空気を強制的に通風することで、凝縮管38a、38bの内部で水蒸気が冷却されて凝縮する。その間、水蒸気流路29e、水蒸気配管29bの内部、凝縮管28a、28bの内部の圧力が、ほぼ真空(外部の大気温度時の水蒸気圧程度の圧力)になり、水蒸気分離装置29からの水蒸気が空冷式凝縮器38に吸引されると共に、水蒸気分離装置29でも水蒸気流路29eと排ガス流路29dとの間に圧力差が生じて、その圧力差を駆動力として燃焼排ガスに含まれる水蒸気が水蒸気分離膜29cを介して、排ガス流路29dから水蒸気流路29eへ移動する。
ただし、図示していないが、凝縮管38a、38bに真空ポンプを接続し、僅かながら、水蒸気分離膜29cを排ガス中の気体成分が水蒸気分離膜29cを透過し、凝縮管38a、38b、水蒸気配管29b内部に入ってくる気体、配管途中のリーク空気等を真空ポンプで吸引排出することもある。
凝縮管38a、38bで生成した凝縮水を凝縮水配管38d、38eを介して凝縮水排出ポンプ40で吸引し水蒸気回収水タンク39に貯留される。貯留された凝縮水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってからその一部がボイラー補給水としてボイラー水補給配管41a、41bを介してボイラー補給水供給ポンプ41で加圧し後、発電システム107のボイラー水供給配管36aの途中から排熱回収ボイラー27に供給する。なお、発電システム107内のボイラー水量が一定になる様にボイラー補給水量とボイラーブロー水量を調整する。余った排ガス中水蒸気から分離回収した水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってから用水供給ポンプ42にてその他の発電所用水として利用する。
(効果)
第2の実施形態による効果について説明する。
天然ガスを燃料とした天然ガスコンバインドサイクル火力発電において、空冷式復水器にした場合、発電所外からの195m3/日の水の供給が必要である。また、燃焼ガスには、2,150m3/日の水蒸気が含まれている(排熱回収ボイラーから排出される排ガスの排ガス流量140万m3/h、排ガス温度96℃、相対湿度9%)。本実施形態により、排ガスに含まれる2,150m3/日の水蒸気の内、1,000t/日以上の水蒸気を回収することができ、当該プラントの外部からの供給水が不要な発電排ガス中水蒸気回収システムを有する火力発電プラントを提供することができる。
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。ただし、第1の実施形態と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(構成)
図6は第3の実施形態に係る火力発電システムの構成を示す概略図である。
火力発電システム110は、石炭を原料として発電する発電システム111、排ガス処理システム112、水処理システム113、排ガス中水蒸気分離システム114を有する。
発電システム111は、石炭を微粉状にする破砕機1、微粉炭を燃焼させて高圧及び低圧蒸気を生成する微粉炭燃焼ボイラー2、微粉炭燃焼ボイラー2で加熱発生した低圧蒸気と高圧蒸気の圧力エネルギーを回転エネルギーに変換する低圧蒸気タービン11、高圧蒸気タービン12、低圧蒸気タービン11と高圧蒸気タービン12と回転軸で接続され、それぞれのタービンによる回転エネルギーを電力に変換する発電機13、圧力が下がった蒸気を復水する空冷式復水器14、復水された水をボイラー水として微粉炭燃焼ボイラー2に供給するボイラー水供給ポンプ15、後述する排ガス処理システム112の熱交換器(排ガス熱回収部)5’にて回収した排ガスの熱でボイラー水を加熱する熱交換器52、微粉炭燃焼ボイラー2にて加熱されたボイラー水から低圧蒸気を気液分離(気液分離器は図示せず)した熱水を昇圧して、再度、微粉炭燃焼ボイラー2で加熱して高圧蒸気を発生させるための昇圧ポンプ16で構成されている。
排ガス処理システム112は、発電システム111の、微粉炭燃焼ボイラー2にて微粉炭を燃焼させた排ガスに含まれるNOx等の有害物資を除去する脱硝装置3、排ガスが有する熱にて微粉炭を燃焼させるための空気を予熱する空気予熱器4、微粉炭燃焼ボイラー2に供給するボイラー水を加熱すると共に微粉炭燃焼排ガス温度を下げる熱交換器(排ガス熱回収部)5’、排ガス中の煤塵を除去する電気集塵装置6、排ガスに含まれるSOx等の有害物質を除去する脱硫装置7、後述する水蒸気分離装置9’にて水蒸気を分離した排ガスを加圧する昇圧ファン51、排ガスを大気に放出する煙突10で構成されている。また、熱交換媒体を熱交換器(排ガス熱回収部)5’と発電システム111の熱交換器52との間を循環させる循環ポンプ53が排ガス処理システム112の構成に含まれる。
水処理システム113は、ボイラー水の一部を抽出するボイラー水ブローポンプ17と、ボイラーブロー水貯留タンク(池、漕)18、ボイラーブロー水を脱塩後(脱塩装置の記載は省略)、脱硫装置7に排ガス中のSOx等を脱硫するための用水を供給する脱硫用水供給ポンプ19、ボイラーブロー水を発電所内のその他の用水として発電所内に供給するための用水供給ポンプ20で構成されている。
排ガス中水蒸気分離システム114は、脱硫装置7と昇圧ファン51の間に設置され、脱硫排ガス中の水蒸気の一部を分離する水蒸気分離装置9’、分離された水蒸気を大気中の空気で冷却し凝縮させる空冷式凝縮器21、凝縮水を抽出する凝縮水排出ポンプ22、排出された凝縮水を貯留する凝縮水タンク23、ボイラーブロー水量分を微粉炭燃焼ボイラー2に補給するボイラー補給水供給ポンプ24で構成されている。
(作用)
次に、第3の実施形態に係る火力発電システムの作用について説明する。
発電システム111では、燃料である石炭を石炭供給ライン1aより破砕機1に供給し微粉砕された後に微粉炭供給管1bにて微粉炭燃焼ボイラー2内部に設置されたバーナー2bに供給される。一方、空気吸入ダクト4bから大気中の空気を空気予熱器4に供給し、ボイラー排ガスと熱交換することで予熱された空気を空気供給ダクト4cを介してバーナー2bに供給する。バーナー2bでは、微粉炭を燃焼させて高温の燃焼ガスを生成する。生成した燃焼ガスの熱を使って微粉炭燃焼ボイラー2内部に設置された伝熱管2cにて伝熱管内部を流れるボイラー水供給配管15bから供給されたボイラー水を加熱して熱水と低圧蒸気を生成する。生成した低圧蒸気と熱水を図示しない気液分離器にて気液分離する。
分離された低圧蒸気は、低圧蒸気管11aにて低圧蒸気タービン11に送られる。一方、熱水は、熱水配管11bにて昇圧ポンプ16へ送られ加圧後、熱水管16aより再度、微粉炭ボイラー2の内部に設置された伝熱管2dに供給し、伝熱管の内部を流れる間に高温の燃焼ガスと熱交換し高圧蒸気を生成する。生成した高圧蒸気は、高圧蒸気管12aより微粉炭燃焼ボイラー2から排出されて高圧蒸気タービン12に送られる。
高圧蒸気タービン12では、高圧蒸気が膨張しながらタービンを回転させる。その間、高圧蒸気は、圧力、温度、密度が低下し、微粉炭燃焼ボイラー2から排出される低圧蒸気と同等の蒸気になり低圧蒸気管12bより低圧蒸気タービン11に送られる。
一方、低圧蒸気タービン11では、微粉炭燃焼ボイラー2および高圧蒸気タービン12から排出された低圧蒸気が膨張しながらタービンを回転させる。その間、低圧蒸気は、更に、圧力、温度、密度が低下した蒸気が排蒸気管11cより空冷式復水器14に送られる。
低圧蒸気タービン11と高圧蒸気タービン12、発電機13は、回転軸で接続され、それぞれのタービンによる回転エネルギーを発電機13で電力に変換する。なお、低圧蒸気タービン11と高圧蒸気タービン12を一軸で接続しないで、それぞれの回転軸に発電機を接続し回転エネルギーを電力に変換しても構わない。
空冷式復水器14は、凝縮管14a、14b、空冷ファン14cで構成されており、低圧蒸気タービン11から排出された蒸気は、排蒸気管11cより空冷式復水器14の凝縮管14a、14bに送られ、空冷ファン14cにて凝縮管14a、14bの外部に大気中の空気を強制的に通風し、凝縮管14a、14bの内部で蒸気が冷却(熱交換)されて凝縮する。その間、排蒸気管11cの内部、凝縮管14a、14bの内部の圧力は、ほぼ真空(外部の大気温度時の水蒸気圧程度の圧力)になり、低圧蒸気タービン11からの排蒸気が吸引される。ただし、図示していないが、凝縮管14a、14bに真空ポンプを接続し、僅かながら、ボイラー配管内部に入ってくるボイラー供給水中の溶存空気、配管途中のリーク空気等を真空ポンプで吸引排出することもある。
凝縮管14a、14bで生成した凝縮水を凝縮水配管14d、14eを介してボイラー水供給ポンプ15で吸引し、昇圧後、ボイラー水供給配管15a、15bを介して微粉炭燃焼ボイラー2にボイラー水を供給する。途中、熱交換器52にて、熱交換器(排ガス熱回収部)5’に接続された熱媒管(高温)52aにて送られてくる100℃以上の熱媒(本実施形態の場合:加圧熱水)が伝熱管52dに供給されボイラー水と熱交換することで、ボイラー水の温度が約25℃加熱される。一方、温度が50℃程度に下がった熱媒は、循環ポンプ53にて熱媒管(低温)52b、52cを介して熱交換器(排ガス熱回収部)5’に送られる。
また、高圧蒸気、低圧蒸気を生成後、温度の下がった燃焼ガスは、排ガスとして排ガス煙道2aにて微粉炭燃焼ボイラー2から排出されて排ガス処理システム112の脱硝装置3に送られる。
排ガス処理システム112では、微粉炭燃焼ボイラー2の出口に設置された排ガス煙道2aより、燃焼排ガスが脱硝装置3に送られ、ボイラー排ガス温度のまま排ガスに含まれるNOx等の窒素系有害成分を触媒と接触させて無害化する。窒素系有害物を無害化された排ガスは、排ガス煙道3aにて脱硝装置3から排出され、空気予熱器4に送られる。空気予熱器4では、排ガスが、ボイラー燃焼用の空気と熱交換されることで温度が140℃程度に下がり、排ガス煙道4aにて熱交換器(排ガス熱回収部)5’に送られる。熱交換器(排ガス熱回収部)5’では、発電システム111の熱交換器52から50℃程度の熱媒が循環ポンプ53にて供給され空気予熱器4から送られてきたボイラー排ガスと熱交換される。その間、140℃程度のボイラー排ガス温度が90℃程度に下がり排ガス煙道5a’にて電気集塵装置6に送られる。一方、50℃だった熱媒は、100℃程度に加熱されて、熱媒管52aにて発電システム111の熱交換器52に供給される。
電気集塵装置6では、排ガスに含まれる煤塵、粒子状物質を静電的に分離除去した上で、排ガス煙道6aより脱硫装置7に送る。脱硫装置7では、脱硫用水配管19bから脱硫用水を供給して装置内に散水させて排ガスと接触させる。その間、電気集塵装置6で除去しきれなかった排ガス中の煤塵、粒状物質、SOx等の硫化物系の有害物質等が除去される。また、排ガス温度が90℃程度から50℃程度に下がり、相対湿度がほぼ100%(露点温度50℃)の飽和水蒸気を含む脱硫排ガスが脱硫装置7から排出され排ガス煙道7aを通って水蒸気分離装置9’に送られる。一方、ボイラー排ガスに含まれる煤塵、粒状物質、SOx等の硫化物系の有害物質等を吸収した脱硫廃水は、脱硫廃水排出管7bより図示していない排水処理設備に送られる。脱硫排ガスは水蒸気分離装置9’にて一部の水蒸気が分離され、露点温度が空冷凝縮器21における空冷温度、即ち、露点温度が外気温程度まで下げられ、昇圧ファン(BUF)51にて吸昇圧された後、排ガス煙道51aにて煙突10に送られてそのまま大気中に放出される。
水処理システム113では、発電システム111内を循環するボイラー水の塩分濃度上昇による装置、蒸気管、配管等の閉塞、劣化、破損を抑制するため、ボイラー水の一部をブローし、空冷式復水器14から排出される凝縮水の一部を凝縮水配管14d又は14eからボイラー水ブローポンプ17を使って発電システム111の外に排出される。なお、図示しないが、ボイラー水ブローポンプ17を無くし、ボイラー水供給ポンプ15で加圧された凝縮水(ボイラー水)の一部をボイラー水供給配管15aからブローしても構わない。発電システム111からブローされたボイラー水の一部、即ち、ボイラーブロー水は、ボイラーブロー水貯留タンク(池、漕)18に送られ、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってからその一部が脱硫用水として脱硫用水配管19a、19bを介して脱流水供給ポンプ19にて排ガス処理システム112内の脱硫装置7に供給される。また、残ったボイラーブロー水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってから用水供給ポンプ20にてその他の発電所用水として利用する。
排ガス中水蒸気分離システム114では、脱硫排ガス中の水蒸気の一部を水蒸気分離装置9’にて分離する。水蒸気分離装置9’は、水蒸気分離膜9c’と排ガス流路9d’、水蒸気分離膜9c’にて排ガス流路9d’を隔てられ、水蒸気分離膜9c’にて排ガスから分離した水蒸気が流れる水蒸気流路9e’で構成されている。本実施形態においては、水蒸気分離膜9c’にポリイミド製の水蒸気透過中空糸膜を用いている。
脱硫排ガスは、脱硫装置7から昇圧ファン(BUF)51の吸引力にて水蒸気分離装置9’に送られる。水蒸気分離装置9’では、水蒸気が水蒸気分離膜9c’を透過して排ガス流路9d’から水蒸気流路9e’に移動することで排ガスに含まれる水蒸気の多くを分離する。水蒸気の多くを分離され、露点温度が空冷凝縮器21における空冷温度、即ち、露点温度が外気温程度までに下がった脱硫排ガスは、排ガス煙道9a’から排出され昇圧ファン(BUF)51にて排ガス煙道51aを介して煙突10に送られ、そのまま大気中に放出される。一方、水蒸気流路9e’に移動した水蒸気は、水蒸気配管9b’を通って空冷式凝縮器21に移動する。
空冷式凝縮器21は、凝縮管21a、21b、空冷ファン21cで構成されており、水蒸気流路9e’に移動した水蒸気は、水蒸気配管9b’より空冷式凝縮器21内の凝縮管21a、21bに送られ、空冷ファン21cにて凝縮管21a、21bの外部に大気中の空気を強制的に通風することで、凝縮管21a、21bの内部で水蒸気が冷却されて凝縮する。その間、水蒸気流路9e’、水蒸気配管9b’の内部、凝縮管21a、21bの内部の圧力が、ほぼ真空(外部の大気温度時の水蒸気圧程度の圧力)になり、水蒸気分離装置9’からの水蒸気が空冷式凝縮器21に吸引されると共に、水蒸気分離装置9’でも水蒸気流路9e’と排ガス流路9d’との間に圧力差が生じて、その圧力差を駆動力として脱硫排ガスに含まれる水蒸気が水蒸気分離膜9c’を介して、排ガス流路9d’から水蒸気流路9e’へ移動する。
ただし、図示していないが、凝縮管21a、21bに真空ポンプを接続し、僅かながら、排ガス中の気体成分が水蒸気分離膜9c’を透過し、凝縮管21a、21b、水蒸気配管9b’内部に入ってくる気体、配管途中のリーク空気等を真空ポンプで吸引排出することもある。
凝縮管21a、21bで生成した凝縮水を凝縮水配管21d、21eを介して凝縮水排出ポンプ22で吸引し凝縮水タンク23に貯留される。貯留された凝縮水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってからその一部がボイラー補給水としてボイラー水補給配管24a、24bを介してボイラー補給水供給ポンプ24で加圧された後、発電システム111のボイラー水供給配管15aの途中から微粉炭燃焼ボイラー2に供給される。なお、発電システム111内のボイラー水量が一定になる様にボイラー補給水量とボイラーブロー水量を調整する。余った排ガス中水蒸気から分離回収した水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってから図示していない用水供給ポンプにてその他の発電所用水として利用する。
(効果)
第3の実施形態による効果について説明する。
本実施形態では、水蒸気分離装置9’に、例えば、水蒸気のみを透過する内径0.3〜0.5mmのポリイミド製の中空糸膜1千〜30万本を束ねた円柱形状の中空糸膜エレメント8fを100〜10,000本、排ガス煙道途中に設置する。本実施形態の場合は、脱硫装置より下流側の排ガス煙道に設置している。これにより本実施形態の発電規模300MWの場合、脱硫排ガスは、温度50℃、相対湿度99%、露点温度約50℃、約100万Nm3/hの排ガス流量、即ち発電排ガスで最も多く1,824m3/日の水蒸気が脱硫排ガスに含まれているが、水蒸気分離膜9c’を透過した水蒸気を外気温30℃の空気の強制通風による空冷で水蒸気を凝縮させた場合、凝縮管21a、21bにて約1,200m3/日の水蒸気を回収することができる。結果、約1,200m3/日の水蒸気を脱硫排ガスから分離することができる。
また、排ガス温度は、50℃が維持されたまま、露点温度は、凝縮温度相当、即ち、露点温度が外気温に相当する約30℃まで下がる。即ち、水蒸気分離装置下流側の排ガス煙道9a’、51a、吸引加圧ファン(BUF)51で、同ファン下流側の圧力損失分0.2〜1kPa加圧されても、排ガス温度が50℃のため排ガス中に残っている水蒸気が結露することは無く、SOxや塩素ガスが結露水に溶解し硫酸や塩酸等になり煙道や吸引加圧ファン(BUF)51、煙突10を腐食させることを防止できる。
また、外気温相当まで露点温度が低下しているため、排ガス煙道9a’、51a、吸引加圧ファン(BUF)51、煙突10、及び、その中を流れる排ガスの温度が外気温度、即ち、露点温度以下になることはない。また、煙突から排出される排ガスも外気温度の大気中に放出され、大気中に排ガスが拡散し排ガス中の水蒸気が希釈され、更に露点温度が低下するため、排ガス温度が露点温度以下になることが無く、排ガス中の水蒸気が凝縮して白煙が発生することを抑制できる。
また、本実施形態の場合、水蒸気分離装置9’の下流側に吸引加圧ファン(BUF)51が設置されており、排ガスを吸引している。そのため水蒸気分離装置9’による圧力損失0.1〜1kPaの分、脱硫装置7と水蒸気分離装置9’の間の煙道7aの圧力が上がる、即ち、脱硫排ガスが圧縮されることはなく、水蒸気分離装置9’にて排ガス中の水蒸気が分離されて露点温度が下がるまで脱硫排ガス温度が50℃に維持されるため、脱硫排ガスの結露によるSOxや塩素ガスが結露水に溶解し硫酸や塩酸等になり煙道7aと水蒸気分離装置9’を腐食させることを防止できる。また、水蒸気分離膜9c’表面で液滴になり水蒸気透過性能が低下することを抑制できる。
また、この時、排ガス流路9d’を流れる時の水蒸気分圧は、脱硫排ガスとほぼ同じ12kPaである。一方、水蒸気流路9e’側は、空冷式凝縮器21にて30℃で冷却し水蒸気を凝縮させているため、その時の水蒸気圧は、約4kPaである。この水蒸気圧差を利用して水蒸気が水蒸気分離膜9c’を介して排ガス流路9dを流れる排ガスから水蒸気流路9e’側に移動する。即ち加圧、減圧等の動力を使うことなく排ガス中の水蒸気を分離回収することができる。
また、前述したように従来の石炭火力発電システムでは、図18の通り熱交換器(再加熱部)207にて、脱硫排ガスに含まれる水蒸気を煙道や煙突中で結露させないために排ガス温度を50℃から100℃に昇温している。その間、電気集塵装置205、脱硫装置206で排ガス中に含まれる煤塵を除去するため、熱交換器(排ガス熱回収部)204にて140℃のボイラー排ガスを90℃に下げる。なお、熱交換器(再加熱部)207と熱交換器(排ガス熱回収部)204との間では熱媒(加圧熱水等)を循環ポンプ210で循環することで熱交換を行っている。これに対し、本実施形態の場合、水蒸気分離装置9’にて脱硫排ガスに含まれる水蒸気を分離し露点温度が下がっているため、脱硫排ガスに含まれる水蒸気を煙道や煙突中で結露することがない。そのため、従来のように熱交換器(再加熱部)により脱硫排ガスを再加熱する必要が無く、熱交換器(排ガス熱回収部)で回収される排ガスが持つ熱を他の用途の熱源として利用できる。また、熱交換器(再加熱部)も不要となる。即ち、本実施形態の場合、熱交換器(排ガス熱回収部)5’で回収されるボイラー排ガスの熱量が、発電規模300MWの石炭火力発電の場合、140℃のボイラー排ガスを90℃まで冷却し、熱交換する熱量16MW相当の熱源としてボイラー供給水を加熱することが可能であり、外気温30℃時、空冷復水器14で復水されたボイラー供給水の温度がおよそ30℃となり、そのボイラー供給水は熱交換器52にて、およそ55℃まで加熱される。その分、発電システム111の発電効率が向上し、発電量が増加する。
また、排ガスを直接冷却して排ガス中の水蒸気を回収した場合、排ガス中に残留するNOx、SOx、煤塵等の有害物質が回収水に溶解するためそのための脱塩、除濁等の水処理が必要になるが、本実施形態においては、水蒸気分離膜9c’にて、水蒸気のみを排ガスから分離して凝縮させているためNOx、SOx、煤塵等の有害物質が凝縮水にほとんど溶解すること無く、脱塩、除濁等の水処理を無くし、或いは、最上限に抑えることができこれら水処理装置の導入コストを抑制できる。
なお、本実施形態においては、ポリイミド製の水蒸気透過中空糸膜を使っているが、フッ素系高分子膜、三酢酸セルロース膜、ポリウレタン膜、ポリスルフォンシリコン膜、ゼオライトでコーティングしたセラミック膜で作製した中空糸膜、平膜、円筒型フィルターを水蒸気分離装置9’に利用することでも本実施形態の作用、効果を実現することができる。
また、空冷式凝縮器21ではなく、海水等の冷却水の確保が可能な場合は、水冷、その他の冷熱源がある場合は、それらの冷却方法によって水蒸気分離装置9’で分離した水蒸気を冷却凝縮しても構わない。また、復水器が海水冷却方式やクーリングタワー方式であっても、排ガス中水蒸気分離システム114を設けて、クーリングタワー補給水、その他、発電所内用水として発電排ガス中の水蒸気を回収するようにしても構わない。海水冷却の場合は、海水温度、クーリングタワーの場合、大気で水蒸気蒸発して冷却させる凝縮温度が、本実施形態の露点温度となり、これらの温度が、外気温より高くなることが無く、空冷式復水器と同じ効果を得ることができる。
また、本実施形態では、熱交換器(排ガス熱回収部)5’で回収したボイラー排ガスの熱を、ボイラー水の加熱(予熱)に利用することで、火力発電システム110の発電量を増加(発電効率を向上)させる場合を示したが、回収した熱を地域熱電併給の熱源、海水淡水化(蒸発法)熱源、その他、発電所内外で利用する熱源として活用しても構わない。また、そのようにボイラー水の加熱以外の熱源として活用する場合は、本実施形態のように熱交換器(排ガス熱回収部)5’で回収したボイラー排ガスの熱は、ボイラー水の加熱(予熱)に利用し、一方、途中高圧蒸気管12aや低圧蒸気管11a、あるいは、熱水配管11b等の蒸気や熱水の一部を抽気し、これら抽気した蒸気や熱水を発電所外で必要な熱源として活用するようにしてもよい。その場合、発電所としての発電量を落とさずに、高温高圧の熱源を利用することが可能になる。
[第3の実施形態の変形例]
次に、第3の実施形態の変形例について説明する。ただし、第3の実施形態と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(構成)
図7は第3の実施形態に係る火力発電システムの構成の変形例を示す概略図である。
第3の実施形態の変形例(火力発電システム115)では、第3の実施形態(火力発電システム110)に対して、排ガス処理システム112の熱交換器(排ガス熱回収部)5’にてボイラー排ガスと熱交換することで、同ガスの温度を下げるための熱媒を、発電システム111で循環するボイラー水の一部、又は、全量とする。そのため、熱媒管(低温)53a、53b、熱媒管(高温)53c、循環ポンプ53が、熱交換器(排ガス熱回収部)5’と、空冷復水器14と接続され、空冷復水器14にて復水されたボイラー水が、熱交換器(排ガス熱回収部)5’内でボイラー排ガスと熱交換されて過熱される。また、排ガス中水蒸気分離システム114の空冷式凝縮器21を無くし、発電システム111の空冷式復水器14が空冷式凝縮器21を兼ねる様に構成されている。
(作用)
次に、第3の実施形態の本変形例に係る火力発電システムの作用について説明する。以下の点が、第3の実施形態と異なる。
発電システム111の空冷復水器14にて復水されたボイラー水は、外気温が30℃の時は、およそ30℃のボイラー水が得られる。そのボイラー水の一部、又は、全量を循環ポンプ53にて排ガス処理ステム112の熱交換器(排ガス熱回収部)5’との間を循環させてボイラー排ガスの熱でボイラー水を55℃に加熱してからボイラー水供給ポンプ15にて微粉炭ボイラー2に供給する。
また、排ガス中水蒸気分離システム116の水蒸気分離装置9’で、排ガス処理システム112の脱硫装置7にて脱硫された脱硫排ガス中の水蒸気の一部が分離される。水蒸気分離装置9’にて分離した水蒸気は、水蒸気配管9b’を使って、発電システム111内の空冷式復水器14の凝縮管14aと14bに送られる。
空冷式復水器14に送られた水蒸気の凝縮、その他の作用は、第3の実施形態の空冷式凝縮器21と空冷式復水器14の作用と同じである。
(効果)
次に本変形例の効果について説明する。以下の点が、第3の実施形態と異なる。
本変形例の熱交換器(排ガス熱回収部)5’にてボイラー排ガスと熱交換する熱媒をボイラー水そのものとすることで、第3の実施形態のように専用の熱媒として例えばボイラー水量(発電規模300MWの石炭火力発電の場合、12,600t/日)の1/3〜1倍の量の加圧熱水が不要になり、その分、熱媒や配管等の腐食を防止するための薬品管理、熱媒交換等の維持コストが不要になる。また、熱媒を循環させるためポンプ動力分の消費電力を削減できる。
また、発電規模300MWの石炭火力発電の場合、発電システム111では、ボイラー水12,600t/日が循環し微粉炭燃焼ボイラー2で加熱水蒸気となり、発電用の蒸気タービン11、12を経た後に空冷式復水器14にて冷却、復水される。一方、水蒸気分離装置9’で分離される水蒸気量は、第3の実施形態と同様に約1,200t/日の水量に相当する水蒸気を凝縮させる。そのため空冷式復水器14の凝縮能力を10%程度増加させるのみで空冷式凝縮器21、凝縮水タンク(純水貯水タンク)23等を省略でき発電システム全体の簡易化、コストダウンが可能である。
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態について説明する。ただし、第2の実施形態と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(構成)
図8は第4の実施形態に係る火力発電システムの構成を示す概略図である。
火力発電システム117は、天然ガスを原料として発電する発電システム118、発電排ガス中の水蒸気を分離回収する排ガス中水蒸気分離システム119を有する。
発電システム118は、大気中の空気を取り込み圧縮する空気圧縮機25、圧縮された空気と燃料の天然ガスを導入し燃焼させる燃焼器54、燃焼ガスの膨張エネルギーを回転エネルギーに変換するガスタービン26、その燃焼ガスの熱を使って高圧及び低圧蒸気を生成する排熱回収ボイラー27、排熱回収ボイラー27で加熱発生した低圧蒸気と高圧蒸気の圧力エネルギーを回転エネルギーに変換する低圧蒸気タービン31と高圧蒸気タービン32、また、低圧蒸気タービン31と高圧蒸気タービン32、及び、空気圧縮機25とガスタービン26が一本の回転軸で接続され、それぞれのタービンによる回転エネルギーを、空気圧縮動力とするほか、更に電力に変換する発電機33、圧力が下がった蒸気を復水する空冷式復水器35、復水された水をボイラー水として排熱回収ボイラー27に供給するボイラー水供給ポンプ36、排熱回収ボイラー27にて加熱されたボイラー水から低圧蒸気を気液分離(気液分離器は図示せず)した熱水を昇圧して、再度、排熱回収ボイラー27で加熱して高圧蒸気を発生させるための昇圧ポンプ34、ボイラー水の一部をブローするためのボイラー水ブローポンプ37、後述する水蒸気分離装置29’にて水蒸気の一部を分離され排熱回収ボイラー27から排出される燃焼ガスを大気中に放出する煙突30で構成されている。
排ガス中水蒸気分離システム119は、排熱回収ボイラー27中のガスタービン排ガスの流れに対して最下流にあたる低圧節炭器の前段、或いは、低圧節炭器の途中に設置され、ガスタービン排ガスに含まれる水蒸気の一部を分離する水蒸気分離装置29’、分離された水蒸気を大気中の空気で冷却し凝縮させる空冷式凝縮器38、凝縮水を抽出する凝縮水排出ポンプ40、排出された凝縮水を貯留する凝縮水タンク39、ボイラーブロー水量分を排熱回収ボイラー27に補給するボイラー補給水供給ポンプ41、余った凝縮水を発電所内の用水として送水する用水供給ポンプ42で構成されている。
(作用)
次に、第4の実施形態に係る火力発電システムの作用について説明する。
発電システム118では、支燃剤として大気中の空気を空気供給ダクト25aより取込み、空気圧縮機25にて圧縮する。空気圧縮機25にて圧縮された空気は、圧縮空気供給管25bを通り、燃料供給管54aから供給される燃料である天然ガスと共に燃焼器54にて混合され燃焼させる。その燃焼排ガスをガスタービン26に導入し、燃焼ガスの膨張エネルギーを回転エネルギーに変換し、排ガスとして排熱回収ボイラー27に排出する。
排熱回収ボイラー27では、燃焼排ガスの熱を使って排熱回収ボイラー27の内部に設置された伝熱管27d、27bにて伝熱管内部を流れるボイラー水供給配管36aから供給されたボイラー水を加熱して熱水と低圧蒸気を生成する。なお、詳細な記載を簡略化しているが、伝熱管27d、27bにおいては、発電排ガスの流れ方向に対して最も下流側の伝熱管27dを低圧節炭器とし、伝熱管27bを低圧蒸発器、低圧過熱器とし、蒸発器で生成した低圧蒸気と熱水を図示しない気液分離器にて気液分離する。分離された低圧蒸気は、低圧蒸気管31aにて低圧蒸気タービン31に送られる。一方、熱水は、熱水配管34aにて昇圧ポンプ34へ送られ加圧後、熱水配管34bより再度、排熱回収ボイラー27の内部に設置された伝熱管27cに供給し、伝熱管の内部を流れる間に高温の燃焼ガスと熱交換し高圧蒸気を生成する。また、高圧蒸気を発生させる伝熱管27cについても、簡略化して記載しているが、高圧節炭器、高圧蒸発器、高圧過熱器で構成されており、発電排ガスの流れ方向に対して低圧系のそれらより上流側に配置されている。なお、排熱回収ボイラー27の内部には脱硝装置28が設置されており、燃焼排ガスが脱硝装置28を通過する際、排ガス温度のまま排ガスに含まれるNOx等の窒素系有害成分を触媒と接触させて無害化する。生成した高圧蒸気は、高圧蒸気管32aより排熱回収ボイラー27から排出されて高圧蒸気タービン32に送られる。
高圧蒸気タービン32では、高圧蒸気が膨張しながらタービンを回転させる。その間、高圧蒸気は、圧力、温度、密度が低下し、排熱回収ボイラー27から排出される低圧蒸気と同等の蒸気になり低圧蒸気管32bより低圧蒸気タービン31に送られる。
一方、低圧蒸気タービン31では、排熱回収ボイラー27および高圧蒸気タービン32から排出された低圧蒸気が膨張しながらタービンを回転させる。その間、低圧蒸気は、更に、圧力、温度、密度が低下した蒸気が排蒸気管31bより空冷式復水器35に送られる。
低圧蒸気タービン31と高圧蒸気タービン32と、空気圧縮機25、ガスタービン54、発電機33は一本の回転軸で接続され、それぞれのタービンによる回転エネルギーを、空気圧縮機25での空気圧縮動力とし、さらに発電機33にて電力に変換する。なお、低圧蒸気タービン31と高圧蒸気タービン32の組合せと、ガスタービンと空気圧縮機を一軸で接続しないで、それぞれの回転軸に発電機を接続することで、回転エネルギーを電力、ガスタービンでは、電力のほか空気圧縮動力に変換しても構わない。
また、本実施形態では、低圧系と高圧系のみとしているが、中圧系の節炭器、蒸発器、過熱器および、それらと接続する配管、昇圧ポンプ、気液分離器を追加し、低圧タービン31に代わりに中圧タービンに中圧過熱蒸気を導入し、中圧タービン途中に低圧過熱蒸気を導入するようしても構わない。
空冷式復水器35は、凝縮管35a、35b、空冷ファン35cで構成されており、低圧蒸気タービン31から排出された蒸気は、排蒸気管31bより空冷式復水器35に送られ、空冷ファン35cにて凝縮管35a、35bの外部に大気中の空気を強制的に通風し、凝縮管35a、35bの内部で蒸気が冷却(熱交換)されて凝縮する。その間、排蒸気管31bの内部、凝縮管35a、35bの内部の圧力は、ほぼ真空(外部の大気温度時の水蒸気圧程度の圧力)になり、低圧蒸気タービン31からの排蒸気が吸引される。ただし、図示していないが、凝縮管35a、35bに真空ポンプを接続し、僅かながら、ボイラー配管内部に入ってくるボイラー供給水中の溶存空気、配管途中のリーク空気等を真空ポンプで吸引排出することもある。
凝縮管35a、35bで生成した凝縮水を凝縮水配管35d、35eを介してボイラー水供給ポンプ36で吸引し、昇圧後、ボイラー水供給配管36aから排熱回収ボイラー27にボイラー水を供給する。なお、ボイラー水の一部を凝縮水配管35d、35eからボイラー水ブローポンプ37にて発電システム118の外に排出される。
また、図示しないが、ボイラー水ブローポンプ37を無くし、ボイラー水供給ポンプ36で加圧された凝縮水(ボイラー水)の一部をボイラー水供給配管36aからブローしても構わない。発電システム118からブローされたボイラー水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってから発電所用水として利用することもある。
なお、ボイラー水のブロー方法については、循環ボイラーの場合、排熱回収ボイラー27の本実施形態では図示していない気液分離器(低圧、中圧、高圧)の液側からブローするのが一般的である。本実施形態の場合、復水器の液側からブローする形で説明しているが、特にボイラー水をブローする位置、方法については、本実施形態に記載したものとは限らない。
また、本実施形態の場合、一般的な天然ガスコンバインドサイクル火力発電であり、ガスタービン26から排出される発電排ガスには水蒸気が9%(蒸気圧8kPa、露点温度41℃)程度含まれている。伝熱管27d(低圧節炭器)の手前に設置した排ガス中水蒸気分離システム119の水蒸気分離装置29’にて排ガスに含まれる水蒸気が、空冷復水器に空冷温度、すなわち外気温と同等の露点温度に相当する水蒸気量(本実施形態の場合、外気温=露点温度30℃:蒸気圧4.2kPa)になるまで排ガスから分離される。以上、排熱回収ボイラー27にて、高圧蒸気、低圧蒸気を生成後、温度の下がった燃焼排ガスは、水蒸気分離装置29’にて排ガスに含まれる水蒸気を分離した上で、伝熱管27d(低圧節炭器)にてボイラー水を加熱して、一方、排ガス温度を本実施形態の場合、50℃まで下げてから、排熱回収ボイラー27から排出されて排ガス煙道27aにて煙突30に送られて大気中に放出される。また、水蒸気分離装置29’は、低圧節炭器の途中に設置するのが好ましい。通常、低圧節炭器の上流側、即ち、低圧蒸発器の下流側の排ガス温度は、150〜200℃なのに対して、低圧節炭器の途中に設置することで、水蒸気分離する排ガス温度が、100℃以下、設計排ガス露点温度(本実施形態の場合、外気温30℃)以上になる。
排ガス中水蒸気分離システム119では、燃焼排ガス中の水蒸気の一部を水蒸気分離装置29’にて分離する。水蒸気分離装置29’は、図9(a)に示すように排ガス流路29c’内に水蒸気分離膜29b’が配置されており、水蒸気分離膜29b’にて排ガスから分離した水蒸気が流れる水蒸気流路29a’で構成されている。
また、本実施形態では、第3の実施形態の場合と同様に、水蒸気分離膜29b’にポリイミド製の水蒸気透過中空糸膜を用いており、具体的には前述したように複数本の中空糸膜を束ねた中空糸膜エレメントを複数設置することで実現され、図9(b)に示すようにそれぞれの外側に排ガスを通風し、内側の水蒸気流路29d’から水蒸気を回収する。
排熱回収ボイラーから排出される燃焼排ガスの温度は、80〜100℃のまま水蒸気分離装置29’を通過する。
水蒸気分離装置29’では、水蒸気が水蒸気分離膜29b’を透過して排ガス流路29c’から水蒸気流路29d’に移動することで排ガスに含まれる水蒸気の多くを分離する。水蒸気の多くを分離した排ガスは、伝熱管27d(低圧節炭器)にてボイラー水を加熱して、一方、排ガス温度を本実施形態の場合、50℃まで下げてから、排熱回収ボイラー27から排出されて排ガス煙道27aにて煙突30に送られて大気中に放出される。一方、水蒸気流路29d’に移動した水蒸気は、水蒸気流路29a’を通って空冷式凝縮器38に移動する。
空冷式凝縮器38は、凝縮管38a、38b、空冷ファン38cで構成されており、水蒸気分離装置29’にて水蒸気流路29d’に移動した水蒸気は、水蒸気流路29a’より空冷式凝縮器38内の凝縮管38a、38bに送られ、空冷ファン38cにて凝縮管38a、38bの外部に大気中の空気を強制的に通風することで、凝縮管38a、38bの内部で水蒸気が冷却されて凝縮する。その間、水蒸気流路29d’、水蒸気流路29a’の内部、凝縮管38a、38bの内部の圧力が、ほぼ真空(外部の大気温度時の水蒸気圧程度の圧力)になり、水蒸気分離装置29’からの水蒸気が空冷式凝縮器38に吸引されると共に、水蒸気分離装置29’でも水蒸気流路29d’と水蒸気流路29a’との間に圧力差が生じて、その圧力差を駆動力として燃焼排ガスに含まれる水蒸気が水蒸気分離膜29b’を介して、排ガス流路29c’から水蒸気流路29d’へ移動する。
ただし、図示していないが、凝縮管38a、38bに真空ポンプを接続し、僅かながら、水蒸気分離膜29b’を排ガス中の気体成分が水蒸気分離膜29b’を透過し、凝縮管38a、38b、水蒸気流路29a’内部に入ってくる気体、配管途中のリーク空気等を真空ポンプで吸引排出することもある。
凝縮管38a、38bで生成した凝縮水を凝縮水配管38d、38eを介して凝縮水排出ポンプ40で吸引し凝縮水タンク39に貯留される。貯留された凝縮水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってからその一部がボイラー補給水としてボイラー水補給配管41a、41bを介してボイラー補給水供給ポンプ41で加圧し後、発電システム118のボイラー水供給配管36aの途中から排熱回収ボイラー27に供給する。なお、発電システム118内のボイラー水量が一定になる様にボイラー補給水量とボイラーブロー水量を調整する。余った排ガス中から水蒸気を分離回収した水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってから用水供給ポンプ42にてその他の発電所用水として利用する。
(効果)
第4の実施形態による効果について説明する。
天然ガスを燃料とした発電規模300MWの天然ガスコンバインドサイクル火力発電において、空冷式復水器にした場合、発電所外からの195t/日の水の供給が必要である。また、燃焼ガスには、2,150t/日の水蒸気が含まれている(排熱回収ボイラーから排出される排ガスの排ガス流量140万m3/h)。本実施形態により、排ガスに含まれる2,150t/日の水蒸気の内、1,000t/日以上の水蒸気を回収することができ、当該プラントの外部からの供給水が不要な発電排ガス中水蒸気分離システムを有する火力発電プラントを提供することができる。
また、本実施形態では、水蒸気分離装置29’にて、排ガス中の水蒸気を分離し、露点温度が42℃だった排ガスの露点温度を30℃近くまで下げていることから、温度が低いままボイラー水(本実施形態の場合、空冷復水器35における空冷温度(外気温)30℃のボイラー水)を排熱回収ボイラーに供給しても低圧節炭器で排ガスに含まれる水蒸気が結露し、排ガス中に含まれるSOxや塩素ガスが結露水に溶解し硫酸や塩酸等になり低圧節炭器を腐食させることを防止できる。また、煙突から排出された排ガスが白煙を発生させること無く、排ガス温度を50℃まで下げることができる。また、従来の天然ガスコンバインドサイクル火力発電では、排ガス温度が80〜100℃で排熱回収ボイラーから排出される。本実施形態の場合、排ガス温度を50℃に下げることができるため、その分、低圧節炭器にて排ガスが持つ熱でボイラー水を加熱することが可能で、発電規模300MWの天然ガスコンバインドサイクル火力発電の場合、発電量が5.5MW増加させることができる。
また、空冷式凝縮器38ではなく、海水等の冷却水の確保が可能な場合は、水冷、その他の冷熱源がある場合は、それらの冷却方法によって水蒸気分離装置29’で分離した水蒸気を冷却凝縮しても構わない。また、復水器が海水冷却方式やクーリングタワー方式であっても、排ガス中水蒸気分離システム119を設けて、クーリングタワー補給水、その他、発電所内用水として発電排ガス中の水蒸気を回収するようにしても構わない。海水冷却の場合は、海水温度、クーリングタワーの場合、大気で水蒸気蒸発して冷却させる凝縮温度が、本実施形態の露点温度となり、これらの温度が、外気温より高くなることが無く、空冷式復水器と同じ効果を得ることができる。
また、水蒸気分離装置29’を低圧節炭器の途中に設置することで、水蒸気分離する排ガス温度が100℃以下、設計排ガス露点温度(本実施形態の場合、外気温30℃)以上になる。水蒸気分離装置29’における水蒸気分離膜の水蒸気透過速度は、排ガス側の水蒸気圧と水蒸気流路側の水蒸気圧によって決まる。排熱回収ボイラー27内部下流側(低圧側)の水蒸気圧は、ほぼ、一定のため、排ガス中の水蒸気が結露しない程度でできる限り、温度が低い方が、水蒸気分離装置29’の耐熱温度、特に水蒸気分離膜の耐熱温度が下がり、水蒸気分離速度が高い。結果、水蒸気分離膜に安価なポリイミド、フッ素系材料が使え、必要な膜面積も小さくできるため、装置製造コストを低く抑えることができる。
[第4の実施形態の変形例1]
次に、第4の実施形態の変形例1について説明する。ただし、第4の実施形態と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(構成)
図10は第4の実施形態に係る火力発電システムの構成の変形例1を示す概略図である。
図10に示す火力発電システム120は、発電システム117、排ガス中水蒸気回収システム121を有する。
第4の実施形態の変形例1(火力発電システム120)では、第4の実施形態(火力発電システム117)に対して、排ガス中水蒸気分離システム119の空冷式凝縮器38を無くし、発電システム117の空冷式復水器35が空冷式凝縮器38を兼ねる様に構成されている。
(作用)
次に、第4の実施形態の本変形例1に係る火力発電システムの作用について説明する。以下の点が、第4の実施形態と異なる。
排熱回収ボイラー27における排ガスの流れの最下流にある伝熱管27d(低圧節炭器)の上流側(又は、低圧節炭器の途中)に設置された、排ガス中水蒸気分離システム121の水蒸気分離装置29’にて、排ガスの温度を下げることなくガスタービン排ガスに含まれる水蒸気の一部を分離後、伝熱管27d(低圧節炭器)にて排ガスの温度を下げる。その結果、本実施形態の場合、外気温30℃とし、排ガスの露点温度を約42℃から30℃近くにまで下げられる。水蒸気分離装置29’にて分離した水蒸気は、水蒸気流路29a’を使って、発電システム118内の空冷式復水器35の凝縮管35aと35bに送られる。
空冷式復水器35に送られた水蒸気の凝縮、その他の作用は、第4の実施形態の空冷式凝縮器38と空冷式復水器35の作用と同じである。
(効果)
次に本変形例1の効果について説明する。以下の点が、第4の実施形態と異なる。
発電規模300MWのコンバインドサイクル発電の場合、発電システム118では、ボイラー水7,876t/日が循環し排熱回収ボイラー27で加熱水蒸気となり、発電用の蒸気低圧蒸気タービン31、高圧蒸気タービン32を経た後に空冷式復水器35にて冷却、復水される。一方、水蒸気分離装置29’で分離される水蒸気量は、第4の実施形態と同様に約1,000t/日の水量に相当する水蒸気を凝縮させる。そのため空冷式復水器35の凝縮能力を13%程度増加させるのみで空冷式凝縮器38、凝縮水タンク(純水貯水タンク)39等を省略でき発電システム全体の簡易化、コストダウンが可能である。
[第4の実施形態の変形例2]
次に、第4の実施形態の変形例2について説明する。ただし、第4の実施形態と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(構成)
図11は第4の実施形態に係る火力発電システムの構成の変形例2を示す概略図である。
図11に示す火力発電システム122は、発電システム123、排ガス中水蒸気回収システム124を有する。
第4の実施形態の変形例2(火力発電システム122)では、第4の実施形態の変形例1(火力発電システム120)に対して、発電システム118の空冷復水器35の代わりに海水冷却復水器55と海水を取水、循環させるための冷却水循環ポンプ56が構成されている。
(作用)
次に、第4の実施形態の本変形例2に係る火力発電システムの作用について説明する。以下の点が、第4の実施形態の変形例1と異なる。
低圧蒸気タービン31にて、排熱回収ボイラー27および高圧蒸気タービン32から排出された低圧蒸気が膨張しながらタービンを回転させる。その間、低圧蒸気は、更に、圧力、温度、密度が低下した蒸気が排蒸気管31bより海水冷却復水器55に送られる。また、排熱回収ボイラー27内において、排ガスの流れに対して最下流側にある伝熱管27d(低圧節炭器)の上流側(又は、その途中)に設置した排ガス中水蒸気分離システム121の水蒸気分離装置29’にて排ガス温度を下げることなく発電排ガスに含まれる水蒸気の一部を分離後、伝熱管27d(低圧節炭器)にて排ガスの温度を下げる。その結果、本実施形態の場合、海水温度が20℃とすると、20℃近くまで露点温度を下げられる。水蒸気分離装置29’にて分離した水蒸気は、水蒸気流路29a’を使って、発電システム123内の海水冷却復水器55に送られる。
また、冷却水循環ポンプ56にて海水を汲み上げられ、取水管56a、冷却水配管55cを介して海水冷却復水器55内の冷却管55bに送られ、冷却管55bにて低圧蒸気タービン31からきた水蒸気と熱交換されて、水蒸気は凝縮、復水され温度が上がった海水は放流管55dより海に放流される。一方、凝縮水はボイラー水給水ポンプ36にて凝縮水配管55a、ボイラー水供給管36aを介して排熱回収ボイラー27に送られる。海水冷却復水器55内の圧力は、ほぼ真空(海水温度時の水蒸気圧程度の圧力)になり、低圧蒸気タービン31からの排蒸気及び水蒸気分離装置29’から排ガス中水蒸気が吸引される。ただし、図示していないが、海水冷却復水器55に真空ポンプを接続し、僅かながら、ボイラー配管内部に入ってくるボイラー供給水中の溶存空気、配管途中のリーク空気等を真空ポンプで吸引排出することもある。
海水冷却復水器55内で生成した凝縮水は、凝縮水配管55aを介してボイラー水供給ポンプ36で吸引し、昇圧後、ボイラー水供給配管36aから排熱回収ボイラー27にボイラー水を供給する。なお、ボイラー水の一部を海水冷却復水器55からボイラー水ブローポンプ37にて発電システム121の外に排出される。
(効果)
次に本変形例2の効果について説明する。以下の点が、第4の実施形態や同変形例1と異なる。
発電規模300MWのコンバインドサイクル発電の場合、発電システム117では、ボイラー水7,876t/日が循環し排熱回収ボイラー27で加熱水蒸気となり、発電用の蒸気低圧蒸気タービン31、高圧蒸気タービン32を経た後に空冷式復水器35にて冷却、復水される。一方、水蒸気分離装置29’で分離される水蒸気量は、第4の実施形態と同様に約1,000t/日の水量に相当する水蒸気を凝縮させる。そのため海水冷却復水器55の凝縮能力を、従来のコンバインドサイクル発電の13%程度増加させるのみで、排ガス中水蒸気分離システム125に排ガスから分離した水蒸気を凝縮させるための凝縮器、純水貯水タンク等を省略でき発電システム全体の簡易化、コストダウンが可能である。その他、第4の実施形態及び同変形例1と同じ効果が得られる。
[第4の実施形態の変形例3]
次に、第4の実施形態の変形例3について説明する。ただし、第4の実施形態と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(構成)
図12は第4の実施形態に係る火力発電システムの構成の変形例3を示す概略図である。
図12に示す火力発電システム125は、発電システム126、排ガス中水蒸気回収システム119を有する。
第4の実施形態の変形例3(火力発電システム125)では、第4の実施形態(火力発電システム117)に対して、排ガス中水蒸気分離システム119にて排ガスに含まれる水蒸気を分離回収し凝縮させた、即ち、空冷凝縮器38から排出された凝縮水の一部を、ガスタービン発電機において、空気供給ダクト25a途中に噴霧しその気化熱で導入される空気の温度を冷却する噴霧空気冷却装置58と、凝縮水を噴霧空気冷却装置58に送る空気冷却水供給ポンプ57が追加された構成となっている。
(作用)
次に、第4の実施形態の本変形例3に係る火力発電システムの作用について説明する。以下の点が、第4の実施形態と異なる。
発電システム126では、排ガス中水蒸気分離システム119にて排ガスに含まれる水蒸気を分離回収し凝縮させた、即ち、空冷凝縮器38から排出された凝縮水の一部を、空気供給ダクト25aの途中に設置された噴霧空気冷却装置58にて大気から取り込まれた空気中に噴霧されて、その気化熱でガスタービンへの供給空気の温度を下げる。その結果、空気密度が大きくなり、空気圧縮機25に取り込まれる空気量が増加し発電システム126の発電量を第4の実施形態の発電システム118より増加する。本実施形態では、発電規模300MWの天然ガスコンバインドサイクル発電とした場合、気温30℃(湿度75%)で150万Nm3/hの空気が大気中から取り込まれ、10t/hの凝縮水を噴霧することで吸入空気温度を10℃程度低下させる。その結果、吸入空気密度が5%程度増加する。20℃程度に冷却された空気が圧縮機25に導入され、空気圧縮機25にて圧縮された空気が圧縮空気供給管25bから供給され、燃料供給管54aから供給される燃料と燃焼器54にて混合されて燃焼される。その燃焼ガスでガスタービン26を回転させて、その回転エネルギーを発電機33で電気エネルギーに変換する。
燃焼後の高温排ガスは、ガスタービン26から排出され排熱回収ボイラー27に送られる。その他の作用は、第4の実施形態の発電システム118の作用と同じである。
(効果)
次に、本変形例3の効果について説明する。以下の点が、第4の実施形態と異なる。
発電システム126では、排ガス中水蒸気分離システム119にて排ガスに含まれる水蒸気を分離回収し凝縮させた、即ち、空冷凝縮器38から排出された凝縮水の一部を、空気供給ダクト25aに設置された噴霧空気冷却装置58にて、噴霧することにより、その気化熱で大気から取り込まれる空気の温度を下げ、空気密度を増加させることができる。その結果、空気圧縮機25に取り込まれる空気量を増加させ発電システム126の発電量を第4の実施形態の発電システム118より増加させることができ、かつ、取込み空気に水を噴霧させることで排ガス中に含まれる水蒸気量が増加しても、伝熱管27d(低圧節炭器)、排ガス煙道27a、煙突30にて排ガス中の水蒸気を結露させること無く、即ち、排ガス中に含まれるSOxや塩素ガスが結露水に溶解し硫酸や塩酸等になり伝熱管27d(低圧節炭器)、排ガス煙道27a、煙突30を腐食させることを防止できる。また、煙突から排出される排ガスの白煙化を抑制できる。また、排ガス温度を下げることができ、その分、第4の実施形態と同様に発電量が増加する。即ち、本実施形態の場合、伝熱管27d(低圧節炭器)、排ガス煙道27a、煙突30にて排ガス中の水蒸気を結露させること無く、また、白煙が発生すること無く、外気温30℃を20℃近くまで供給空気を冷却され空気密度および発電量を第4の実施形態より5%程度増加させることができる。
[第4の実施形態の変形例4]
次に、第4の実施形態の変形例4について説明する。ただし、第4の実施形態と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(構成)
図13は第4の実施形態に係る火力発電システムの構成の変形例4を示す概略図である。
図13に示す火力発電システム126は、発電システム127、排ガス中水蒸気回収システム128を有する。
第4の実施形態の変形例4(火力発電システム126)では、第4の実施形態の変形例2(火力発電システム122)に対して、排熱回収ボイラー27と煙突30の煙道途中に排ガス中の水蒸気を分離回収する排ガス中水蒸気分離システム128を有する様に構成されている。排ガス中水蒸気分離システム128は、排熱回収ボイラー27から排出される排ガスから水蒸気の一部を分離する水蒸気分離装置29”、排ガスとボイラー水供給配管38c’にてボイラー供給水と熱交換する熱交換器59及び熱交換器60、水蒸気分離装置29”にて分離した水蒸気を冷却凝縮させる凝縮器38’を有する。
(作用)
次に、第4の実施形態の本変形例4に係る火力発電システムの作用について説明する。
水蒸気分離装置29”にて分離された水蒸気は、凝縮器38’へ送られる。また、水蒸気分離装置29”にて水蒸気が分離された排ガスは、熱交換器59を経由して排ガス煙道59aへ送られ、煙突30からそのまま大気中に放出される。凝縮器38’では、海水冷却復水器55から排出されたボイラー供給水と熱交換することで、水蒸気分離装置29”にて分離した水蒸気を冷却凝縮させる。更に、熱交換器60にてボイラー供給水を加熱する。熱交換器59と60との間には熱媒純化ライン59c、59dが接続されており、ポンプ61にて熱媒(本実施形態の場合は、熱水)を循環させることで、排ガス中の熱を伝熱管59bおよび伝熱管60bを介してボイラー供給水に移動させて加熱する。その他の構成、作用は、第4の実施形態の変形例2、変形例3と同じである。
(効果)
次に本変形例4の効果について説明する。
従来のコンバインドサイクル発電システム、特に既設の発電プラントに対して、排熱回収ボイラー27と煙突30の煙道途中に排ガス中の水蒸気を分離回収する排ガス中水蒸気分離システム128を追加することが可能であり、また、熱交換器59と熱交換器60は、従来の石炭火力発電の排ガス熱交換器(再加熱)207と熱交換器(熱回収)204をそのまま或いは一部を改良するのみで、即ち石炭火力発電の排ガス熱交換技術を利用するのみで第2実施形態と同様の効果が得られ、特に発電排ガス熱を有効利用し発電効率を向上させることができる。また、既存の熱交換技術、製品を使えるため、低コストでそれらの効果を実現できる。
以上詳述したように、少なくとも1つの実施形態によれば、排ガス中の水蒸気を不純物が含まれない純水の状態で回収し、しかも、排ガス中の水蒸気回収量のみで当該プラントに必要な水を確保することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。