以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
最初に、第1の実施形態について説明する。
(構成)
図1は第1の実施形態に係る火力発電システムの構成を示す概略図である。
火力発電システム100は、石炭を原料として発電する発電システム101、排ガス処理システム102、水処理システム103、排ガス中水蒸気分離システム104を有する。
発電システム101は、石炭を微粉状にする破砕機1、微粉炭を燃焼させて高圧及び低圧蒸気を生成する微粉炭燃焼ボイラー2、微粉炭燃焼ボイラー2で加熱発生した低圧蒸気と高圧蒸気の圧力エネルギーを回転エネルギーに変換する低圧蒸気タービン11、高圧蒸気タービン12、低圧蒸気タービン11と高圧蒸気タービン12と回転軸で接続され、それぞれのタービンによる回転エネルギーを電力に変換する発電機13、圧力が下がった蒸気を復水する空冷式復水器14、復水された水をボイラー水として微粉炭燃焼ボイラー2に供給するボイラー水供給ポンプ15、後述する排ガス処理システム102の熱交換器(排ガス熱回収部)5にて回収した排ガスの熱でボイラー水を加熱する熱交換器16、微粉炭燃焼ボイラー2にて加熱されたボイラー水から低圧蒸気を気液分離(気液分離器は図示せず)した熱水を昇圧して、再度、微粉炭燃焼ボイラー2で加熱して高圧蒸気を発生させるための昇圧ポンプ17で構成されている。
排ガス処理システム102は、発電システム101の、微粉炭燃焼ボイラー2にて微粉炭を燃焼させた排ガスに含まれるNOx等の有害物資を除去する脱硝装置3、排ガスが有する熱にて微粉炭を燃焼させるための空気を予熱する空気予熱器4、微粉炭燃焼ボイラー2に供給するボイラー水を加熱すると共に微粉炭燃焼排ガス温度を下げる熱交換器(排ガス熱回収部)5、排ガス中の煤塵を除去する電気集塵装置6、排ガスに含まれるSOx等の有害物質を除去する脱硫装置7、後述する水蒸気分離装置9にて水蒸気を分離した排ガスを加圧する昇圧ファン8、排ガスを大気に放出する煙突10で構成されている。また、熱交換媒体を熱交換器(排ガス熱回収部)5と発電システム101の熱交換器16との間を循環させる循環ポンプ18が排ガス処理システム102の構成に含まれる。
水処理システム103は、ボイラー水の一部を抽出するボイラー水ブローポンプ19と、ボイラーブロー水貯留タンク(池、漕)20、ボイラーブロー水を脱塩後(脱塩装置の記載は省略)、脱硫装置7に排ガス中のSOx等を脱硫するための用水を供給する脱硫用水供給ポンプ21、ボイラーブロー水を発電所内のその他の用水として発電所内に供給するための用水供給ポンプ22で構成されている。
排ガス中水蒸気分離システム104は、脱硫装置7と昇圧ファン8の間に設置され、脱硫排ガス中の水蒸気の一部を分離する水蒸気分離装置9、分離された水蒸気を大気中の空気で冷却し凝縮させる空冷式凝縮器23、凝縮水を抽出する凝縮水排出ポンプ24、排出された凝縮水を貯留する凝縮水タンク25、ボイラーブロー水量分を微粉炭燃焼ボイラー2に補給するボイラー補給水供給ポンプ26で構成されている。
また、本実施形態においては、水蒸気分離膜9cにポリイミド製の水蒸気透過中空糸膜を用いており、具体的には図2の模式図に示すように複数本の中空糸膜を束ねた中空糸膜エレメント9fを複数設置することで実現される。それぞれの外側に脱硫排ガスを通風し、それぞれの内側から水蒸気を回収する。即ち、各中空糸膜エレメント9fの内側を水蒸気流路9eとし、外側を排ガス流路9dとする。
図3は、中空糸膜の一般的な使用方法と本実施形態での使用方法との違いを示す模式図である。一般には、図3(a)に示すように、複数本の中空糸膜9gのそれぞれの内側に脱硫排ガスを通風し、それぞれの外側から水蒸気を回収するものとする。これに対し、本実施形態では、図3(b)に示すように複数本の中空糸膜9gのそれぞれの外側に脱硫排ガスを通風し、それぞれの内側から水蒸気を回収する。これにより、大流量の排ガスを中空糸膜エレメント9fに流しても圧力損失を低く抑えることができ、排ガスの加圧動力を小さくできる。
図4は、図2に示した水蒸気分離装置9の構成の変形例として、水蒸気分離装置9を複数のユニットで構成した場合の一例を示す図である。
図4の例では、水蒸気分離装置9は、例えば煙道としても機能する複数の連結された水蒸気分離ユニット9’(以下、「ユニット9’」と称す。)で構成される。より具体的には、水蒸気分離装置9は、複数の水蒸気分離膜モジュールを配置したユニット9’を複数個連結した煙道とし、その一端を排ガス煙道7aにダクト7a’を介して接続し、もう一端を排ガス煙道9aにダクト9a’を介して接続する。各ユニット9’は一般的なトラックにて運搬可能なサイズ(例えば一般的なコンテナのサイズ)とする。例えば、各ユニット9’のサイズを1.6m(W)×4m(L)×1.2m(H)とし、複数のユニット9’(図4の例では7個を示しているが、例えば13個にするなど、適宜数量を変えてもよい。)を抱き合わせた煙道を複数系統(例えば2系統)接続した構成とする。
このようにすることにより、水蒸気分離装置の製造工場から発電所の建設現場までの輸送や組立てをユニット単位で行うことができ、また、水蒸気分離装置に含まれる部品の交換や点検作業などをユニット単位で行うことができるので、作業の効率化、工期の短縮化、コストの低減、メンテナンス性の向上を図ることができる。
図5は、各ユニットに配置される複数のモジュールのうちの1つの構造の一例を示す図である。
各ユニット9’には、複数の水蒸気分離膜モジュール80(以下、「モジュール80」と称す。)が固定して設けられる。
各モジュール80は、水蒸気のみを透過する水蒸気分離膜(図2の水蒸気分離膜9cに相当)を備え、当該水蒸気分離膜を用いて排ガス中に含まれる水蒸気以外の成分と水蒸気とを分離させる。
各モジュール80における水蒸気分離膜はむき出しの状態になっており、煙道を流れてくる排ガスが当該水蒸気分離膜に直接接触するように構成されている。
各モジュール80の水蒸気分離膜は複数本の中空糸膜を束ねた中空糸膜エレメント(図2に示した中空糸膜エレメント9fに相当)で構成され、その両端を金属製板81Aと金属製板81Bにより支持され、さらに金属製板81A上にフランジ82が固定されている。また、金属製板81Aとフランジ82とで、1つの金属製箱が構成されている。
各モジュール80のサイズは、例えば300mm×300mm×1000mmとする。この場合の重量は、約20kgとなる。
図6A、図6Bは、それぞれ、1つのユニット9’のトラックに積載する例、1つのユニット9’の組み立て方法の例を示す図である。
各ユニット9’には、上述したサイズのモジュール80が40本設置される。各ユニット9’は全重量が3.9t程度となり、図6Aに示すようなトラック(例えば、最大積載量が10m(L)×2m(W)×3m(H)、4tのトラック)で運搬することが可能となる。
各ユニット9’は、図6Bに示すように組み立てられる。すなわち、40本のモジュール80を例えば10cm間隔で相互に離間させて固定配置した下板83Bを用意する一方で、各モジュール80に対応する金属製板81A及びフランジ82(金属製箱)と吸気管84とが配置された上板83Aを用意し、さらに2枚の側板83Cを用意する。次に、下板83Bに配置された40本のモジュール80の上部に上板83Aを取り付けると共に、その側面を成す2枚の側板83Cをそれぞれ取り付ける。
各ユニットの高さは各モジュールの高さに合うように形成されており、例えばサイズが1600mm×4000mm×1200mmのユニット9’が形成される。
各ユニット9’は、隣接するユニット9’と連結する方向の両側に開口部を有することにより、煙道を構成すると共に、煙道を流れてくる排ガスが各モジュール80の水蒸気分離膜に直接接触するように構成される。
また、各モジュール80は、煙道を流れてくる排ガスの方向に対して垂直に配置されており、モジュール80の端部に固定されるフランジを引き出したり押し込んだりすることにより、モジュール80を煙道から外部に抜き出したり外部から煙道に戻したりすることができる。このようにすることにより、各モジュール80の膜などの部品交換や点検作業などのメンテナンス性の向上を図ることができる。
なお、上述した図4乃至図6の説明では、複数のモジュール80が、煙道として機能する各ユニット9’の中に設置される場合の例を示したが、これに限定されるもものではない。例えば各ユニット9’を本来の煙道に代え、その煙道の中に各モジュール80を設置するようにしてもよい。このことは、以降に説明する技術についても言えることである。
図7は、各モジュール80から水蒸気分離膜を透過した水蒸気を回収する吸気管84の配管方法に関する説明図である。
吸気管84は、煙道(もしくはユニット)の外側に設けられ、また、吸気管84の長さ方向が鉛直方向を向くように配置され、下方に設置された主蒸気回収管9bと接続されている。なお、上方に主蒸気回収管9bを設置して、吸気管84と接続しても構わないが、その場合、吸気管84の下方にドレン回収管(図示せず)を設けて空冷凝縮器23の凝縮水配管23d、23eに接続する。
排ガス煙道中では、排気温度が50℃のため、分離した水蒸気は結露しない。各モジュールの吸気管84を煙道の外に配置することで、吸気管84にて大気により冷却されて分離した水蒸気の一部が凝縮、結露する。その結果、分離した水蒸気を復水する装置を小型化できる。また、吸気管84の長さ方向が鉛直方向を向くように配置することで吸気管84中にドレンが溜り吸気管84の材料を腐食するのを防止できる。
図8に吸気管84と主蒸気回収管9bとの接続方法を示す。
各種の接続方法として、(a)モジュール列毎に吸気管84を主蒸気回収管9bに接続する方法、(b)モジュール毎に吸気管84を主蒸気回収管9bに接続する方法、(c)複数の主蒸気回収管9b(図8の例では、主蒸気回収管9bを上下に2本設置)を設置し、モジュール列毎に接続する主蒸気回収管9bを交互に変える方法、の3つが挙げられる。
圧力計Pの設置に関しては、図8の(a)や(c)に示されるように、主蒸気回収管9bから最も遠い位置の吸気管84端部と主蒸気回収管9bに最も近い位置の吸気管84端部とに圧力計Pを設ける場合と、主蒸気回収管9bから最も遠い位置の吸気管84端部と主蒸気回収管9bとに圧力計Pを設ける場合とがある。
モジュール80の数が多くなると、各モジュールの吸気を吸気管84に接続した場合、吸気管84内で水蒸気圧差が生じる。水蒸気分離膜の水蒸気分離性能は、排ガス側と吸気側の水蒸気分圧差(フッ素系有機膜の場合は、相対湿度差)に影響されるため、水蒸気圧差が生じると煙道位置(モジュール位置)によって排ガスの除湿率にばらつきが生じ、除湿が不十分になる場合がある。
例えば、図8の(a)の場合、主蒸気回収管9bから最も離れた煙道の上方を流れる排ガスの除湿率が不十分になる場合がある。その対策として蒸気圧差を小さくするために吸気管84の径を太くしてもよいが、その場合、モジュール交換時や設置工事(工場あるいは現地)時の作業効率の低下を招くかもしれない。一方、主蒸気回収管9bは、径が太いため、配管内での水蒸気圧差が生じにくい。そのため、図8の(b)のようにモジュール毎に吸気管84を配管することで細い吸気管84でも十分な水蒸気分離性能を得られながら、モジュール交換や設置工事時の配管作業を容易にし、設置コスト、メンテナンスコストを削減できる。
また、図8の(c)のように主蒸気回収管9bを複数設けて、モジュール列毎に吸気管84を接続する主蒸気回収管9bを交互に切り替えることで排ガス中の水蒸気分離性能を均一化でき、除湿率が不十分箇所での煙道中での結露を抑制できる。
中空糸膜が破損した場合、破損検知および破損位置を速やかに特定し交換する必要があるが、図8の(a)のように主蒸気回収管9bに最も近い位置の吸気管84端部と主蒸気回収管9bから最も遠い位置の吸気管84端部とに圧力計Pを設けるのみでその蒸気圧差から破損したモジュールを特定できる。
また、主蒸気回収管9bは径が太く蒸気圧差が生じにくいため、主蒸気回収管9bに圧力計Pを取り付け、主蒸気回収管9bから最も離れた吸気管84に圧力計Pを取り付けることで、膜破損時に破損したモジュールを特定できると共に、(a)の設置方法に対して圧力計Pの数をほぼ半減させることができ、圧力計Pの設置コスト、メンテナンスコストを低減できる。
なお、水蒸気分離膜が設置され煙道の入口側に設置された1列ないし複数列のモジュールに対してのみ、水蒸気分離膜を洗浄する散水装置を設けてもよい。また、代わりに、水蒸気分離膜が設置され煙道の入口側に設置されるモジュールを、ミスト捕獲用として使用されるダミーモジュールにしてもよい。あるいはその代わりに、汚れや熱に対する耐性がより強い水蒸気分離膜を使用したモジュールを設けるようにしてもよい。
また、煙道の入口側に設置される水蒸気分離膜が、出口側の列になるように膜モジュールを定期的に入れ替えるようにしてもよい。
石炭火力発電所の排ガス煙道に水蒸気分離膜を設置する場合は、脱硫装置の後段に設置するため排ガスにミスト、粉塵が多く含まれる。多数の水蒸気分離膜を配置することでそれらの膜表面に粉塵、ミストを補足される。即ち、排ガスからミスト、粉塵を除去でき、大気中に放出される排ガスによる環境汚染を抑制できる。一方、水蒸気分離膜に排ガス中のミスト、粉塵が捕捉される場合、水蒸気分離性能が低下する。また、ミスト捕捉時に排ガス中のSOxと水蒸気が結露、硫酸となって膜モジュールを腐食する場合もある。そのため、膜洗浄用の散水管を設けるのが好ましいが、ミスト、粉塵が捕捉される煙道の上流側のユニットに設置する。或いは、ダミーのモジュールを上流側のユニットに設置する。なお、上流側のモジュールのみ水蒸気透過性能より耐蝕性を考慮した材料、例えば、フッ素系有機材料でできた中空糸膜モジュールを使用するのが好ましい。また、同様に上流側の膜モジュールが劣化しやすいため、定期メンテナンス時に上流側と下流側の膜モジュールを入れ替える場合もある。
(作用)
次に、第1の実施形態に係る火力発電システムの作用について説明する。
発電システム101では、燃料である石炭を石炭供給ライン1aより破砕機1に供給し微粉砕された後に微粉炭供給管1bにて微粉炭燃焼ボイラー2内部に設置されたバーナー2bに供給される。一方、空気吸入ダクト4bから大気中の空気を空気予熱器4に供給し、ボイラー排ガスと熱交換することで予熱された空気を空気供給ダクト4cを介してバーナー2bに供給する。バーナー2bでは、微粉炭を燃焼させて高温の燃焼ガスを生成する。生成した燃焼ガスの熱を使って微粉炭燃焼ボイラー2内部に設置された伝熱管2cにて伝熱管内部を流れるボイラー水供給配管15bから供給されたボイラー水を加熱して熱水と低圧蒸気を生成する。生成した低圧蒸気と熱水を図示しない気液分離器にて気液分離する。
分離された低圧蒸気は、低圧蒸気管11aにて低圧蒸気タービン11に送られる。一方、熱水は、熱水配管11bにて昇圧ポンプ16へ送られ加圧後、熱水管17aより再度、微粉炭ボイラー2の内部に設置された伝熱管2dに供給し、伝熱管の内部を流れる間に高温の燃焼ガスと熱交換し高圧蒸気を生成する。生成した高圧蒸気は、高圧蒸気管12aより微粉炭燃焼ボイラー2から排出されて高圧蒸気タービン12に送られる。
高圧蒸気タービン12では、高圧蒸気が膨張しながらタービンを回転させる。その間、高圧蒸気は、圧力、温度、密度が低下し、微粉炭燃焼ボイラー2から排出される低圧蒸気と同等の蒸気になり低圧蒸気管12bより低圧蒸気タービン11に送られる。
一方、低圧蒸気タービン11では、微粉炭燃焼ボイラー2および高圧蒸気タービン12から排出された低圧蒸気が膨張しながらタービンを回転させる。その間、低圧蒸気は、更に、圧力、温度、密度が低下した蒸気が排蒸気管11cより空冷式復水器14に送られる。
低圧蒸気タービン11と高圧蒸気タービン12、発電機13は、回転軸で接続され、それぞれのタービンによる回転エネルギーを発電機13で電力に変換する。なお、低圧蒸気タービン11と高圧蒸気タービン12を一軸で接続しないで、それぞれの回転軸に発電機を接続し回転エネルギーを電力に変換しても構わない。
空冷式復水器14は、凝縮管14a、14b、空冷ファン14cで構成されており、低圧蒸気タービン11から排出された蒸気は、排蒸気管11cより空冷式復水器14の凝縮管14a、14bに送られ、空冷ファン14cにて凝縮管14a、14bの外部に大気中の空気を強制的に通風し、凝縮管14a、14bの内部で蒸気が冷却(熱交換)されて凝縮する。その間、排蒸気管11cの内部、凝縮管14a、14bの内部の圧力は、ほぼ真空(外部の大気温度時の水蒸気圧程度の圧力)になり、低圧蒸気タービン11からの排蒸気が吸引される。ただし、図示していないが、凝縮管14a、14bに真空ポンプを接続し、僅かながら、ボイラー配管内部に入ってくるボイラー供給水中の溶存空気、配管途中のリーク空気等を真空ポンプで吸引排出することもある。
凝縮管14a、14bで生成した凝縮水を凝縮水配管14d、14eを介してボイラー水供給ポンプ15で吸引し、昇圧後、ボイラー水供給配管15a、15bを介して微粉炭燃焼ボイラー2にボイラー水を供給する。途中、熱交換器16にて、熱交換器(排ガス熱回収部)5に接続された熱媒管(高温)16aにて送られてくる100℃以上の熱媒(本実施形態の場合:加圧熱水)が伝熱管16dに供給されボイラー水と熱交換することで、ボイラー水の温度が約25℃加熱される。一方、温度が50℃程度に下がった熱媒は、循環ポンプ18にて熱媒管(低温)16b、16cを介して熱交換器(排ガス熱回収部)5に送られる。
また、高圧蒸気、低圧蒸気を生成後、温度の下がった燃焼ガスは、排ガスとして排ガス煙道2aにて微粉炭燃焼ボイラー2から排出されて排ガス処理システム102の脱硝装置3に送られる。
排ガス処理システム102では、微粉炭燃焼ボイラー2の出口に設置された排ガス煙道2aより、燃焼排ガスが脱硝装置3に送られ、ボイラー排ガス温度のまま排ガスに含まれるNOx等の窒素系有害成分を触媒と接触させて無害化する。窒素系有害物を無害化された排ガスは、排ガス煙道3aにて脱硝装置3から排出され、空気予熱器4に送られる。空気予熱器4では、排ガスが、ボイラー燃焼用の空気と熱交換されることで温度が140℃程度に下がり、排ガス煙道4aにて熱交換器(排ガス熱回収部)5に送られる。熱交換器(排ガス熱回収部)5では、発電システム101の熱交換器16から50℃程度の熱媒が循環ポンプ16にて供給され空気予熱器4から送られてきたボイラー排ガスと熱交換される。その間、140℃程度のボイラー排ガス温度が90℃程度に下がり排ガス煙道5aにて電気集塵装置6に送られる。一方、50℃だった熱媒は、100℃程度に加熱されて、熱媒管16aにて発電システム101の熱交換器16に供給される。
電気集塵装置6では、排ガスに含まれる煤塵、粒子状物質を静電的に分離除去した上で、排ガス煙道6aより脱硫装置7に送る。脱硫装置7では、脱硫用水配管19bから脱硫用水を供給して装置内に散水させて排ガスと接触させる。その間、電気集塵装置6で除去しきれなかった排ガス中の煤塵、粒状物質、SOx等の硫化物系の有害物質等が除去される。また、排ガス温度が90℃程度から50℃程度に下がり、相対湿度がほぼ100%(露点温度50℃)の飽和水蒸気を含む脱硫排ガスが脱硫装置7から排出され排ガス煙道7aを通って水蒸気分離装置9に送られる。一方、ボイラー排ガスに含まれる煤塵、粒状物質、SOx等の硫化物系の有害物質等を吸収した脱硫廃水は、脱硫廃水排出管7bより図示していない排水処理設備に送られる。脱硫排ガスは水蒸気分離装置9にて一部の水蒸気が分離され、露点温度が空冷凝縮器23における空冷温度、即ち、露点温度が外気温程度まで下げられ、昇圧ファン(BUF)8にて吸昇圧された後、排ガス煙道8aにて煙突10に送られてそのまま大気中に放出される。
水処理システム103では、発電システム101内を循環するボイラー水の塩分濃度上昇による装置、蒸気管、配管等の閉塞、劣化、破損を抑制するため、ボイラー水の一部をブローし、空冷式復水器14から排出される凝縮水の一部を凝縮水配管14d又は14eからボイラー水ブローポンプ17を使って発電システム101の外に排出される。なお、図示しないが、ボイラー水ブローポンプ17を無くし、ボイラー水供給ポンプ15で加圧された凝縮水(ボイラー水)の一部をボイラー水供給配管15aからブローしても構わない。発電システム101からブローされたボイラー水の一部、即ち、ボイラーブロー水は、ボイラーブロー水貯留タンク(池、漕)20に送られ、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってからその一部が脱硫用水として脱硫用水配管21a、21bを介して脱流水供給ポンプ21にて排ガス処理システム102内の脱硫装置7に供給される。また、残ったボイラーブロー水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってから用水供給ポンプ22にてその他の発電所用水として利用する。
排ガス中水蒸気分離システム104では、脱硫排ガス中の水蒸気の一部を水蒸気分離装置9にて分離する。水蒸気分離装置9は、水蒸気分離膜9cと排ガス流路9d、水蒸気分離膜9cにて排ガス流路9dを隔てられ、水蒸気分離膜9cにて排ガスから分離した水蒸気が流れる水蒸気流路9eで構成されている。本実施形態においては、水蒸気分離膜9cにポリイミド製の水蒸気透過中空糸膜を用いている。
また、本実施形態においては、水蒸気分離膜9cにポリイミド製の水蒸気透過中空糸膜を用いており、具体的には図2の模式図に示すように複数本の中空糸膜を束ねた中空糸膜エレメント9fを複数設置することで実現される。それぞれの外側に脱硫排ガスを通風し、それぞれの内側から水蒸気を回収する。即ち、各中空糸膜エレメント9fの内側を水蒸気流路9eとし、外側を排ガス流路9dとする。
図3は、中空糸膜の一般的な使用方法と本実施形態での使用方法との違いを示す模式図である。一般には、図3(a)に示すように、複数本の中空糸膜9gのそれぞれの内側に脱硫排ガスを通風し、それぞれの外側から水蒸気を回収するものとする。これに対し、本実施形態では、図3(b)に示すように複数本の中空糸膜9gのそれぞれの外側に脱硫排ガスを通風し、それぞれの内側から水蒸気を回収する。これにより、大流量の排ガスを中空糸膜エレメント9fに流しても圧力損失を低く抑えることができ、排ガスの加圧動力を小さくできる。
脱硫排ガスは、脱硫装置7から昇圧ファン(BUF)8の吸引力にて水蒸気分離装置9に送られる。水蒸気分離装置9では、水蒸気が水蒸気分離膜9cを透過して排ガス流路9dから水蒸気流路9eに移動することで排ガスに含まれる水蒸気の多くを分離する。水蒸気の多くを分離され、露点温度が空冷凝縮器23における空冷温度、即ち、露点温度が外気温程度までに下がった脱硫排ガスは、排ガス煙道9aから排出され昇圧ファン(BUF)8にて排ガス煙道8aを介して煙突10に送られ、そのまま大気中に放出される。一方、水蒸気流路9eに移動した水蒸気は、主蒸気回収管9bを通って空冷式凝縮器23に移動する。
空冷式凝縮器23は、凝縮管23a、23b、空冷ファン23cで構成されており、水蒸気流路9eに移動した水蒸気は、主蒸気回収管9bより空冷式凝縮器23内の凝縮管23a、23bに送られ、空冷ファン23cにて凝縮管23a、23bの外部に大気中の空気を強制的に通風することで、凝縮管23a、23bの内部で水蒸気が冷却されて凝縮する。その間、水蒸気流路9e、主蒸気回収管9bの内部、凝縮管23a、23bの内部の圧力が、ほぼ真空(外部の大気温度時の水蒸気圧程度の圧力)になり、水蒸気分離装置9からの水蒸気が空冷式凝縮器23に吸引されると共に、水蒸気分離装置9でも水蒸気流路9eと排ガス流路9dとの間に圧力差が生じて、その圧力差を駆動力として脱硫排ガスに含まれる水蒸気が水蒸気分離膜9cを介して、排ガス流路9dから水蒸気流路9eへ移動する。
ただし、図示していないが、凝縮管23a、23bに真空ポンプを接続し、僅かながら、排ガス中の気体成分が水蒸気分離膜9cを透過し、凝縮管23a、23b、主蒸気回収管9b内部に入ってくる気体、配管途中のリーク空気等を真空ポンプで吸引排出することもある。
凝縮管23a、23bで生成した凝縮水を凝縮水配管23d、23eを介して凝縮水排出ポンプ24で吸引し凝縮水タンク23に貯留される。貯留された凝縮水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってからその一部がボイラー補給水としてボイラー水補給配管26a、26bを介してボイラー補給水供給ポンプ26で加圧された後、発電システム101のボイラー水供給配管15aの途中から微粉炭燃焼ボイラー2に供給される。なお、発電システム101内のボイラー水量が一定になる様にボイラー補給水量とボイラーブロー水量を調整する。余った排ガス中水蒸気から分離回収した水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってから図示していない用水供給ポンプにてその他の発電所用水として利用する。
(効果)
第1の実施形態による効果について説明する。
本実施形態では、水蒸気分離装置9に、例えば、水蒸気のみを透過する内径0.3〜0.5mmのポリイミド製の中空糸膜1千〜30万本を束ねた円柱形状の中空糸膜エレメント9fを100〜10,000本、排ガス煙道途中に設置する。本実施形態の場合は、脱硫装置より下流側の排ガス煙道に設置している。これにより本実施形態の発電規模300MWの場合、脱硫排ガスは、温度50℃、相対湿度99%、露点温度約50℃、約100万Nm3/hの排ガス流量、即ち発電排ガスで最も多く1,824m3/日の水蒸気が脱硫排ガスに含まれているが、水蒸気分離膜9cを透過した水蒸気を外気温30℃の空気の強制通風による空冷で水蒸気を凝縮させた場合、凝縮管23a、23bにて約1,200m3/日の水蒸気を回収することができる。結果、約1,200m3/日の水蒸気を脱硫排ガスから分離することができる。
また、排ガス温度は、50℃が維持されたまま、露点温度は、凝縮温度相当、即ち、露点温度が外気温に相当する約30℃まで下がる。即ち、水蒸気分離装置下流側の排ガス煙道9a、8a、吸引加圧ファン(BUF)8で、同ファン下流側の圧力損失分0.2〜1kPa加圧されても、排ガス温度が50℃のため排ガス中に残っている水蒸気が結露することは無く、SOxや塩素ガスが結露水に溶解し硫酸や塩酸等になり煙道や吸引加圧ファン(BUF)8、煙突10を腐食させることを防止できる。
また、外気温相当まで露点温度が低下しているため、排ガス煙道9a、8a、吸引加圧ファン(BUF)8、煙突10、及び、その中を流れる排ガスの温度が外気温度、即ち、露点温度以下になることはない。また、煙突から排出される排ガスも外気温度の大気中に放出され、大気中に排ガスが拡散し排ガス中の水蒸気が希釈され、更に露点温度が低下するため、排ガス温度が露点温度以下になることが無く、排ガス中の水蒸気が凝縮して白煙が発生することを抑制できる。
また、本実施形態の場合、水蒸気分離装置9の下流側に吸引加圧ファン(BUF)8が設置されており、排ガスを吸引している。そのため水蒸気分離装置9による圧力損失0.1〜1kPaの分、脱硫装置7と水蒸気分離装置9の間の煙道7aの圧力が上がる、即ち、脱硫排ガスが圧縮されることはなく、水蒸気分離装置9にて排ガス中の水蒸気が分離されて露点温度が下がるまで脱硫排ガス温度が50℃に維持されるため、脱硫排ガスの結露によるSOxや塩素ガスが結露水に溶解し硫酸や塩酸等になり煙道7aと水蒸気分離装置9’を腐食させることを防止できる。また、水蒸気分離膜9c’表面で液滴になり水蒸気透過性能が低下することを抑制できる。
また、この時、排ガス流路9dを流れる時の水蒸気分圧は、脱硫排ガスとほぼ同じ12kPaである。一方、水蒸気流路9e側は、空冷式凝縮器23にて30℃で冷却し水蒸気を凝縮させているため、その時の水蒸気圧は、約4kPaである。この水蒸気圧差を利用して水蒸気が水蒸気分離膜9cを介して排ガス流路9dを流れる排ガスから水蒸気流路9e側に移動する。即ち加圧、減圧等の動力を使うことなく排ガス中の水蒸気を分離回収することができる。
また、前述したように従来の石炭火力発電システムでは、図14の通り熱交換器(再加熱部)207にて、脱硫排ガスに含まれる水蒸気を煙道や煙突中で結露させないために排ガス温度を50℃から100℃に昇温している。その間、電気集塵装置205、脱硫装置206で排ガス中に含まれる煤塵を除去するため、熱交換器(排ガス熱回収部)204にて140℃のボイラー排ガスを90℃に下げる。なお、熱交換器(再加熱部)207と熱交換器(排ガス熱回収部)204との間では熱媒(加圧熱水等)を循環ポンプ210で循環することで熱交換を行っている。これに対し、本実施形態の場合、水蒸気分離装置9にて脱硫排ガスに含まれる水蒸気を分離し露点温度が下がっているため、脱硫排ガスに含まれる水蒸気を煙道や煙突中で結露することがない。そのため、従来のように熱交換器(再加熱部)により脱硫排ガスを再加熱する必要が無く、熱交換器(排ガス熱回収部)で回収される排ガスが持つ熱を他の用途の熱源として利用できる。また、熱交換器(再加熱部)も不要となる。即ち、本実施形態の場合、熱交換器(排ガス熱回収部)5で回収されるボイラー排ガスの熱量が、発電規模300MWの石炭火力発電の場合、140℃のボイラー排ガスを90℃まで冷却し、熱交換する熱量16MW相当の熱源としてボイラー供給水を加熱することが可能であり、外気温30℃時、空冷復水器14で復水されたボイラー供給水の温度がおよそ30℃となり、そのボイラー供給水は熱交換器16にて、およそ55℃まで加熱される。その分、発電システム111の発電効率が向上し、発電量が増加する。
また、排ガスを直接冷却して排ガス中の水蒸気を回収した場合、排ガス中に残留するNOx、SOx、煤塵等の有害物質が回収水に溶解するためそのための脱塩、除濁等の水処理が必要になるが、本実施形態においては、水蒸気分離膜9cにて、水蒸気のみを排ガスから分離して凝縮させているためNOx、SOx、煤塵等の有害物質が凝縮水にほとんど溶解すること無く、脱塩、除濁等の水処理を無くし、或いは、最上限に抑えることができこれら水処理装置の導入コストを抑制できる。
なお、本実施形態においては、ポリイミド製の水蒸気透過中空糸膜を使っているが、フッ素系高分子膜、三酢酸セルロース膜、ポリウレタン膜、ポリスルフォンシリコン膜、ゼオライトでコーティングしたセラミック膜で作製した中空糸膜、平膜、円筒型フィルターを水蒸気分離装置9に利用することでも本実施形態の作用、効果を実現することができる。
また、空冷式凝縮器21ではなく、海水等の冷却水の確保が可能な場合は、水冷、その他の冷熱源がある場合は、それらの冷却方法によって水蒸気分離装置9で分離した水蒸気を冷却凝縮しても構わない。また、復水器が海水冷却方式やクーリングタワー方式であっても、排ガス中水蒸気分離システム104を設けて、クーリングタワー補給水、その他、発電所内用水として発電排ガス中の水蒸気を回収するようにしても構わない。海水冷却の場合は、海水温度、クーリングタワーの場合、大気で水蒸気蒸発して冷却させる凝縮温度が、本実施形態の露点温度となり、これらの温度が、外気温より高くなることが無く、空冷式復水器と同じ効果を得ることができる。
また、本実施形態では、熱交換器(排ガス熱回収部)5で回収したボイラー排ガスの熱を、ボイラー水の加熱(予熱)に利用することで、火力発電システム100の発電量を増加(発電効率を向上)させる場合を示したが、回収した熱を地域熱電併給の熱源、海水淡水化(蒸発法)熱源、その他、発電所内外で利用する熱源として活用しても構わない。また、そのようにボイラー水の加熱以外の熱源として活用する場合は、本実施形態のように熱交換器(排ガス熱回収部)5で回収したボイラー排ガスの熱は、ボイラー水の加熱(予熱)に利用し、一方、途中高圧蒸気管12aや低圧蒸気管11a、あるいは、熱水配管11b等の蒸気や熱水の一部を抽気し、これら抽気した蒸気や熱水を発電所外で必要な熱源として活用するようにしてもよい。その場合、発電所としての発電量を落とさずに、高温高圧の熱源を利用することが可能になる。
また、本実施形態によれば、図4乃至図8を通じて説明したように、各モジュールにおける水蒸気分離膜はむき出しの状態になっており、煙道を流れてくる排ガスが当該水蒸気分離膜に直接接触するように構成されているので、より効果的に水蒸気を回収することが可能となる。また、各モジュール80は、煙道を流れてくる排ガスの方向に対して垂直に配置されており、モジュール80の端部に固定されるフランジを引き出したり押し込んだりすることにより、モジュール80を煙道から抜き出したり戻したりすることができるので、各モジュール80の膜などの部品交換や点検作業などのメンテナンス性の向上を図ることができる。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。ただし、第1の実施形態と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(構成)
図9は第2の実施形態に係る火力発電システムの構成を示す概略図である。
火力発電システム106は、天然ガスを原料として発電する発電システム107、発電排ガス中の水蒸気を分離回収する排ガス中水蒸気回収システム108を有する。
発電システム107は、大気中の空気を取り込み圧縮する空気圧縮機43、圧縮された空気と燃料の天然ガスを導入し燃焼させて、それら燃焼ガスの膨張エネルギーを回転エネルギーに変換するガスタービン44、その燃焼ガスの熱を使って高圧及び低圧蒸気を生成する排熱回収ボイラー27、排熱回収ボイラー27で加熱発生した低圧蒸気と高圧蒸気の圧力エネルギーを回転エネルギーに変換する低圧蒸気タービン31と高圧蒸気タービン32、また、低圧蒸気タービン31と高圧蒸気タービン32、及び、空気圧縮機43とガスタービン44が一本の回転軸で接続され、それぞれのタービンによる回転エネルギーを、空気圧縮動力とするほか、更に電力に変換する発電機33、圧力が下がった蒸気を復水する空冷式復水器35、復水された水をボイラー水として排熱回収ボイラー27に供給するボイラー水供給ポンプ36、排熱回収ボイラー27にて加熱されたボイラー水から低圧蒸気を気液分離(気液分離器は図示せず)した熱水を昇圧して、再度、排熱回収ボイラー27で加熱して高圧蒸気を発生させるための昇圧ポンプ34、ボイラー水の一部をブローするためのボイラー水ブローポンプ37、排熱回収ボイラー27から排出され、排ガス中水蒸気回収システム108の水蒸気分離装置29にて水蒸気の一部を分離された燃焼ガスを大気中に放出する煙突30で構成されている。
排ガス中水蒸気回収システム108は、排熱回収ボイラー27と煙突30の間に設置され、燃焼排ガスに含まれる水蒸気の一部を分離する水蒸気分離装置29と、分離された水蒸気を大気中の空気で冷却し凝縮させる空冷式凝縮器38、凝縮水を抽出する凝縮水排出ポンプ40、排出された凝縮水を貯留する水蒸気回収水タンク39、ボイラーブロー水量分を排熱回収ボイラー27に補給するボイラー補給水供給ポンプ41、余った純水を発電所内の用水として送水する用水供給ポンプ42で構成されている。
また、本実施形態の水蒸気分離装置29には、前述した第1の実施形態の場合と同様、図4乃至図8を通じて説明した技術を適用することができる。
(作用)
次に、第2の実施形態に係る火力発電システムの作用について説明する。
発電システム107では、支燃剤として大気中の空気を空気供給ダクト25aより取込み、空気圧縮機43にて圧縮する。圧縮された空気は、燃料供給管44aから供給される燃料である天然ガスと共に混合され燃焼させる。その燃焼排ガスをガスタービン44に導入し、燃焼ガスの膨張エネルギーを回転エネルギーに変換し、排ガスとして排熱回収ボイラー27に排出する。
排熱回収ボイラー27では、燃焼排ガスの熱を使って排熱回収ボイラー27の内部に設置された伝熱管27bにて伝熱管内部を流れるボイラー水供給配管36aから供給されたボイラー水を加熱して熱水と低圧蒸気を生成する。生成した低圧蒸気と熱水を図示しない気液分離器にて気液分離する。分離された低圧蒸気は、低圧蒸気管31aにて低圧蒸気タービン31に送られる。一方、熱水は、熱水配管34aにて昇圧ポンプ34へ送られ加圧後、熱水配管34bより再度、排熱回収ボイラー27の内部に設置された伝熱管27cに供給し、伝熱管の内部を流れる間に高温の燃焼ガスと熱交換し高圧蒸気を生成する。なお、排熱回収ボイラー27の内部には脱硝装置28が設置されており、燃焼排ガスが脱硝装置28を追加する際、排ガス温度のまま排ガスに含まれるNOx等の窒素系有害成分を触媒と接触させて無害化する。生成した高圧蒸気は、高圧蒸気管32aより排熱回収ボイラー27から排出されて高圧蒸気タービン32に送られる。
高圧蒸気タービン32では、高圧蒸気が膨張しながらタービンを回転させる。その間、高圧蒸気は、圧力、温度、密度が低下し、排熱回収ボイラー27から排出される低圧蒸気と同等の蒸気になり低圧蒸気管32bより低圧蒸気タービン31に送られる。
一方、低圧蒸気タービン31では、排熱回収ボイラー27および高圧蒸気タービン32から排出された低圧蒸気が膨張しながらタービンを回転させる。その間、低圧蒸気は、更に、圧力、温度、密度が低下した蒸気が排蒸気管31bより空冷式復水器35に送られる。
低圧蒸気タービン31と高圧蒸気タービン32と、空気圧縮機43、ガスタービン44、発電機33は一本の回転軸で接続され、それぞれのタービンによる回転エネルギーを、空気圧縮機43での空気圧縮動力とし、さらに発電機33にて電力に変換する。なお、低圧蒸気タービン31と高圧蒸気タービン32の組合せと、ガスタービンと空気圧縮機を一軸で接続しないで、それぞれの回転軸に発電機を接続することで、回転エネルギーを電力、ガスタービンでは、電力のほか空気圧縮動力に変換しても構わない。
空冷式復水器35は、凝縮管35a、35b、空冷ファン35cで構成されており、低圧蒸気タービン31から排出された蒸気は、排蒸気管31bより空冷式復水器35に送られ、空冷ファン35cにて凝縮管35a、35bの外部に大気中の空気を強制的に通風し、凝縮管35a、35bの内部で蒸気が冷却(熱交換)されて凝縮する。その間、排蒸気管31bの内部、凝縮管35a、35bの内部の圧力は、ほぼ真空(外部の大気温度時の水蒸気圧程度の圧力)になり、低圧蒸気タービン31からの排蒸気が吸引される。ただし、図示していないが、凝縮管35a、35bに真空ポンプを接続し、僅かながら、ボイラー配管内部に入ってくるボイラー供給水中の溶存空気、配管途中のリーク空気等を真空ポンプで吸引排出することもある。
凝縮管35a、35bで生成した凝縮水を凝縮水配管35d、35eを介してボイラー水供給ポンプ36で吸引し、昇圧後、ボイラー水供給配管36aから排熱回収ボイラー27にボイラー水を供給する。なお、ボイラー水の一部を凝縮水配管35d、35eからボイラー水ブローポンプ37にて発電システム107の外に排出される。
また、図示しないが、ボイラー水ブローポンプ37を無くし、ボイラー水供給ポンプ36で加圧された凝縮水(ボイラー水)の一部をボイラー水供給配管15aからブローしても構わない。発電システム107からブローされたボイラー水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってから発電所用水として利用することもある。
また、高圧蒸気、低圧蒸気を生成後、温度の下がった燃焼排ガスは、排ガスとして発電排ガス煙道27aにて排熱回収ボイラー27から排出されて、排ガス中水蒸気回収装置29にて、排ガス中の水蒸気の一部を分離した後、排ガス煙道29aから煙突30に送られて大気中に放出される。
排ガス中水蒸気回収システム108では、燃焼排ガス中の水蒸気の一部を水蒸気分離装置29にて分離する。水蒸気分離装置29は、水蒸気分離膜29c、排ガス流路29d(図示せず)、水蒸気分離膜29cにて排ガス流路29dを隔てられ、水蒸気分離膜29cにて排ガスから分離した水蒸気が流れる水蒸気流路29e(図示せず)で構成されている。
また、本実施形態では、第1の実施形態の場合と同様に、水蒸気分離膜29cにポリイミド製の水蒸気透過中空糸膜を用いており、具体的には前述したように複数本の中空糸膜を束ねた中空糸膜エレメントを複数設置することで実現される。それぞれの外側に脱硫排ガスを通風し、それぞれの内側から水蒸気を回収する。即ち、各中空糸の内側を水蒸気流路29eとし、外側を排ガス流路29dとする。
排熱回収ボイラーから排出される燃焼排ガスの温度は、80〜100℃のまま水蒸気分離装置29に送られる。本実施形態では図示しないが燃焼排ガスを50〜60℃に冷却してから水蒸気分離装置29に送っても構わない。
水蒸気分離装置29では、水蒸気が水蒸気分離膜29cを透過して排ガス流路29dから水蒸気流路29eに移動することで排ガスに含まれる水蒸気の多くを分離する。水蒸気の多くを分離した排ガスは、排ガス煙道29aにて煙突10に送られてそのまま大気中に放出される。一方、水蒸気流路29eに移動した水蒸気は、水蒸気配管29bを通って空冷式凝縮器38に移動する。
空冷式凝縮器38は、凝縮管38a、38b、空冷ファン38cで構成されており、水蒸気流路29eに移動した水蒸気は、水蒸気配管29bより空冷式凝縮器38内の凝縮管38a、38bに送られ、空冷ファン38cにて凝縮管38a、38bの外部に大気中の空気を強制的に通風することで、凝縮管38a、38bの内部で水蒸気が冷却されて凝縮する。その間、水蒸気流路29e、水蒸気配管29bの内部、凝縮管28a、28bの内部の圧力が、ほぼ真空(外部の大気温度時の水蒸気圧程度の圧力)になり、水蒸気分離装置29からの水蒸気が空冷式凝縮器38に吸引されると共に、水蒸気分離装置29でも水蒸気流路29eと排ガス流路29dとの間に圧力差が生じて、その圧力差を駆動力として燃焼排ガスに含まれる水蒸気が水蒸気分離膜29cを介して、排ガス流路29dから水蒸気流路29eへ移動する。
ただし、図示していないが、凝縮管38a、38bに真空ポンプを接続し、僅かながら、水蒸気分離膜29cを排ガス中の気体成分が水蒸気分離膜29cを透過し、凝縮管38a、38b、水蒸気配管29b内部に入ってくる気体、配管途中のリーク空気等を真空ポンプで吸引排出することもある。
凝縮管38a、38bで生成した凝縮水を凝縮水配管38d、38eを介して凝縮水排出ポンプ40で吸引し水蒸気回収水タンク39に貯留される。貯留された凝縮水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってからその一部がボイラー補給水としてボイラー水補給配管41a、41bを介してボイラー補給水供給ポンプ41で加圧し後、発電システム107のボイラー水供給配管36aの途中から排熱回収ボイラー27に供給する。なお、発電システム107内のボイラー水量が一定になる様にボイラー補給水量とボイラーブロー水量を調整する。余った排ガス中水蒸気から分離回収した水は、必要に応じて脱塩、除濁等を行ってから用水供給ポンプ42にてその他の発電所用水として利用する。
(効果)
第2の実施形態による効果について説明する。
天然ガスを燃料とした天然ガスコンバインドサイクル火力発電において、空冷式復水器にした場合、発電所外からの195m3/日の水の供給が必要である。また、燃焼ガスには、2,150m3/日の水蒸気が含まれている(排熱回収ボイラーから排出される排ガスの排ガス流量140万m3/h、排ガス温度96℃、相対湿度9%)。本実施形態により、排ガスに含まれる2,150m3/日の水蒸気の内、1,000t/日以上の水蒸気を回収することができ、当該プラントの外部からの供給水が不要な発電排ガス中水蒸気回収システムを有する火力発電プラントを提供することができる。
また、本実施形態によれば、前述した第1の実施形態の場合と同様、図4乃至図8を通じて説明したように、各モジュールにおける水蒸気分離膜はむき出しの状態になっており、煙道を流れてくる排ガスが当該水蒸気分離膜に直接接触するように構成されているので、より効果的に水蒸気を回収することが可能となる。また、各モジュール80は、煙道を流れてくる排ガスの方向に対して垂直に配置されており、モジュール80の端部に固定されるフランジを引き出したり押し込んだりすることにより、モジュール80を煙道から抜き出したり戻したりすることができるので、各モジュール80の膜などの部品交換や点検作業などのメンテナンス性の向上を図ることができる。
以上詳述したように、各実施形態によれば、火力発電所の煙道への水蒸気分離膜の適切な設置を行うことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。