JP6813038B2 - 金属板の調質圧延方法 - Google Patents
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Description
そして、これらの欠陥の発生に対する対策としては、例えば特許文献1には、ミル出側張力を鋼板の降伏応力付近まで上げることにより鋼板幅方向の応力を低減する方法が開示されている。あるいは、ミル荷重を低減することにより幅方向の応力を低減する方法もある。
また、ミル荷重を低減する方法の場合、ミル荷重を下げすぎると必要な鋼板粗度を確保できないという問題が生じる。
ここで、反りとは鋼板が表方向、または裏方向に湾曲する形状不良のことであり、一般に図8に示すように圧延時の長手方向に反るものを長手方向反り・L反り、巾方向に反るものを巾方向反り・C反りと呼ぶ。圧延時上面方向に反るものを上反り、下面方向に反るものを下反りとし、上反りを+、下反りを−の反り量で表記する。
この点、特許文献3には、出側に補助ロールを複数設置し、パスライン高さを変更することで反りを制御する方法が開示されている。
しかし、この方法では、設備が大掛かりなものとなるという問題が生じる。
前記ワークロールに沿わせた金属板の下面又は上面に流体を噴射して、前記金属板を前記ワークロール側に押し付ける面圧を加えた状態で圧延することを特徴とするものである。
S=h/R×E×Δε/100
但し、 S:所定の面圧[MPa]
h:板厚[m]
R:ワークロール半径[m]
E:金属のヤング率[MPa]
Δε:圧延後金属板最大伸び率差[%]
2×r2=h×E/(Y-T)-h
但し、 h:板厚[m]
E:金属のヤング率[MPa]
Y:金属の降伏応力[MPa]
T:圧延張力[MPa]
本実施の形態に係る金属板の調質圧延方法(以下、単に「調質圧延方法」という)は、図1に示すように、調質圧延機のワークロール1の出側に設けた補助ロール3を、パスラインから押し上げて金属板5をワークロール1に沿わせて圧延を行う金属板の調質圧延方法であって、ワークロール1に沿わせた金属板5の下面に流体7を噴射して、金属板5をワークロール1側に押し付ける面圧を加えた状態で圧延することを特徴とするものである。
以下、本発明の構成要素を詳細に説明する。
金属板5は、缶や自動車などに用いられる冷延鋼板(ステンレス鋼板、ハイテン、電磁鋼板を含む)であり、例えば冷延を行ったままの鋼板、または、冷延後焼鈍を施した鋼板、または、冷延、焼鈍後、再度冷延を行ったものなどを含む。
調質圧延とは、2Hiや4Hi、6Hiの圧延機を用いて、0.1〜1.5%ほどの圧下を施すものである。ワークロール1の半径は125〜325mmが想定される。金属板5の寸法としては板幅200〜1400mm、板厚0.05〜0.5mmが想定される。
なお、コルゲーションの発生を防止するために必要な流出角度は、鋼板の厚さ・板幅・変形抵抗、またワークロール径によって変化するため、必要に応じて補助ロール3を上下させ流出角度を変化させる機能を有することが望ましい。
もっとも、ワークロール1と補助ロール3が近すぎると、直交ずれによる通板不安定リスクが高まり、他方、遠すぎると設備が大型化するため、ワークロール1と補助ロール3の中心間の距離で350〜1800mmが望ましい。
本発明は、ワークロール1に沿わせた金属板5の下面に流体7を噴射して、金属板5をワークロール1側に押し付ける面圧を加えた状態で圧延することを特徴としている。
流体7は、図1に示すように、金属板5がワークロール1に巻き付いている部分に噴射する。この流体噴射をするための装置としては、図1に示すように、流体7を噴射するノズル9や、ノズル9に流体7を供給する供給管11、供給管11に流体7を供給するポンプ、タンク等からなる流体供給装置13が挙げられる。
また、噴射される流体7による圧力は金属板5の幅方向全体に付与することが望ましい。このため、ノズル9については、金属板5の幅方向に複数のノズル9を設けて、噴射される流体7が金属板5の幅方向で一部重なるように噴射するのが望ましい。
また、長手方向に関しては、ロールバイト出側から50mmの範囲を含めて圧力を付与することが望ましく、さらに金属板5がワークロール1に巻きついている部分全体に付与することがさらに望ましい。
金属板がワークロールに押し付けられる面圧P[MPa]は、噴射された流体により金属板に付与される面圧PS[MPa]と張力により金属板に付与される面圧PT[MPa]とを加算した値となるので、下式(1)によって与えられる。
P=PS+PT ・・・(1)
PTは、圧延出側張力[MPa]をT、板厚[m]をh、ワークロール半径[m]をRとすると、下式(2)で与えられる。
PT=T×h/R ・・・(2)
(1)式、(2)式から、金属板がワークロールに押し付けられる面圧Pは下式(3)で与えられる。
P=Ps+(T×h/R) ・・・(3)
金属板厚をh[m]、巻付角をθ[rad]、板幅をw[m]、ワークロール半径をR[m]、金属板がワークロールから離れようとするを圧力S[MPa](=所定の面圧)、金属板の伸び率差により伸びが大きい部分にかかる圧縮応力U[MPa]として、図2に示すように、金属板5におけるワークロール1に巻き付いている部分(以下、「巻付部」という)の力のつり合いは下式(4)となる。
ここで、圧延後金属板最大伸び率差をΔε[%]、金属板のヤング率をE[MPa]とすれば、U=E×Δε/100となる。
なお、圧延後金属板最大伸び率差Δεは、図3に示すように、圧延後金属板を長手方向に裁断した場合の、裁断後長手方向長さが最も短いものの長さをl、最も長いものと短いものの差をΔlとしたとき、下式(5)で与えられる。
Δε=Δl/l×100 ・・・・(5)
したがって、所定の面圧Sは、下式(6)で与えられる。
S=h/R×E×Δε/100 ・・・・(6)
但し、
h:板厚[m]
R:ワークロール半径[m]
E:金属板のヤング率[MPa]
Δε:圧延後金属板最大伸び率差[%]
従来技術と本発明により、コルゲーション防止可能な条件を発明者が調査した結果を表1に示す。
例えば、圧延後に幅中央の伸び率が大きい場合、幅中央に長手方向圧縮応力がかかりやすく、コルゲーションが発生しやすくなる。この場合、流体7の噴射圧力を高くしたり、張力を高くしたりすることも考えられる。
しかしながら、設備の制約や通板安定上の観点から高張力をかけることが難しい場合や、流体7による高圧噴射が困難な場合がある。
そこで、本実施の形態は、このような場合にもコルゲーションを防止することができる方法を提供するものであり、具体的には、実施の形態1を前提としつつ、補助ロール3として、幅方向中央部のロール径が幅方向両端部よりも大径となるクラウン形状の補助ロール15(図4参照)を使用することを特徴とするものである。
このようなクラウン形状の補助ロール15を用いることで、金属板5における長手方向圧縮応力が小さくなり、コルゲーションを防止することができる。
このような補助ロール15を用いることで、金属板5における長手方向圧縮応力が小さくなる理由を、図5に基づいて説明する。
ΔLtotal≒ΔR2×θ2 ・・・・(7)
また、金属板端部の板長Ltotalは、下式(8)で表わすことができる。
Ltotal≒R1×θ1+R2×θ2+(LR 2−(R1+R2)2)0.5 ・・・・(8)
なお、θ1≒θ1 ’、θ2≒θ2 ’、L≒L’としている。
よって、金属板5の幅中央部には板長差により、下式(9)の引張方向歪みが付与される。
ΔLtotal/Ltotal=ΔR2×θ2/(R1×θ1+R2×θ2+(LR 2−(R1+R2)2)0.5) ・・・・(9)
以上のように、クラウン形状の補助ロール15を用いることで、金属板5の幅中央部に引張方向歪みを付与することができ、これによって金属板5の中央部の長手方向圧縮応力を小さくでき、この圧縮応力に起因するコルゲーションを防止することができる。
S=h/R1×E×(Δε/100−ΔR2×θ2/(R1×θ1+R2×θ2+(LR 2−(R1+R2)2)0.5))・・(10)
但し、
S:所定の面圧[MPa]
h:板厚[m]
E:金属板のヤング率[MPa]
Δε:圧延後金属最大伸び率差[%]
R1:ワークロール半径[m]
R2:補助ロール半径[m]
ΔR2:補助ロール半径変化量[m]
θ1:ワークロールへの巻付角[rad]
θ2:補助ロールへの巻付角[rad]
LR:ワークロールと補助ロールの中心間の距離[m]
ΔLtotal:幅中央部と幅端部での板長差[m]
Ltotal:板端部の板長[m]
このような場合には、補助ロール15として、幅方向両端部のロール径が幅方向中央部よりも大径となるいわゆる逆クラウン形状のロールを使用するようにすればよい。
補助ロール15として、逆クラウン形状のロールを使用することで、金属板5の幅両端部の長手方向圧縮応力を小さくでき、この圧縮応力に起因するコルゲーションを防止することができる。
なお、この場合の所定の面圧S[MPa]は式(11)で与えられる。
S=h/R1×E×(Δε/100−ΔR2×θ2/(R1×θ1+R2×θ2+(LR 2−(R1+R2)2)0.5))・・(11)
但し、
S:所定の面圧[MPa]
h:板厚[m]
E:金属板のヤング率[MPa]
Δε:圧延後金属最大伸び率差[%]
R1:ワークロール半径[m]
R2:補助ロール半径[m]
ΔR2:補助ロール半径変化量[m]
θ1:ワークロールへの巻付角[rad]
θ2:補助ロールへの巻付角[rad]
LR:ワークロールと補助ロールの中心間の距離[m]
ΔLtotal:幅中央部と幅端部での板長差[m]
Ltotal:板端部の板長[m]
2×r2=h×E/(Y-T)-h
但し、 h:板厚[m]
E:金属のヤング率[MPa]
Y:金属の降伏応力[MPa]
T:圧延張力[MPa]
実施例1の実験は、主として流体を噴射することの効果を確認するためのものであり、図1に示したワークロールを用い、表2に記載した条件を用い、出側張力・噴射条件を変えて、調質圧延を行った。補助ロールは、幅中央部と幅端部での半径の差が0.0mmのものを用いた。
表2に示した条件で、張力60MPa、噴射なしで圧延後の鋼板長手1m分を幅方向20mmで裁断し、式(5)の圧延後鋼板最大伸び率差Δεを求めたところ、鋼板幅中央の伸び率が大きく、Δε=0.04%であった。
○ ・・・ 目視でコルゲーションは認められない
× ・・・ 目視でコルゲーションが認められる
さらに、圧延後の鋼板サンプルを水平な定盤上に圧延時の上面を上にして静置し、走査式レーザ距離計により幅方向の表面凹凸プロフィルを測定し、最大値と最小値の差をスジ深さとしたとき、スジ深さ0.05mm以下のものを◎とした。
L反りの判定式
○:|圧延後鋼板のL反り量|≦30
×:|圧延後鋼板のL反り量|>30
C反りの判定式
○:|圧延後鋼板のC反り量|≦12
×:|圧延後鋼板のC反り量|>12
表4において、PS[MPa]は噴射された流体により金属板に付与される面圧、PT[MPa]は張力により鋼板に付与される面圧、P[MPa]は金属板とワークロール間に働く面圧=PS+PTを示している。表6、8、10においても同様である。
試験No.8では流体噴射を実施しており、コルゲーションが消失している。
クラウン形状の補助ロールを用いた試験No.9では表面状態がさらに改善しており、クラウン形状の補助ロールの使用が、板厚が薄く板幅が広い影響で幅中央の伸び率差が大きくなりやすい材料のコルゲーション防止に効果的であることを示している。
実験条件を表7に、実験結果を表8に示す。補助ロールは、表7に示す通り、幅中央部と幅端部での半径の差が0.0もしくは0.1mmのものを用いた。
圧延後鋼板最大伸び率差Δεを求めたところ、幅中央の伸び率が大きく、Δε=0.04%であった。
試験No.11では流体噴射を実施しており、コルゲーションが消失している。
クラウン形状の補助ロールを用いた試験No.12では表面状態がさらに改善しており、板幅方向のロール径分布を持たせた補助ロールの使用が、低降伏応力材のコルゲーション防止に効果的であることを示している。
実験条件を表9に、実験結果を表10に示す。補助ロールは、表7に示す通り、幅中央部と幅端部での半径の差が0.0mmのものを用いた。
圧延後鋼板最大伸び率差Δεを求めたところ、幅中央の伸び率が大きく、Δε=0.04%であった。
試験No.13では張力が200MPaより大きく、L反りC反り両方ともNGとなっている。試験No.14では張力が200MPaより大きく、C反りがNGとなっている。
他方、張力を200MPa以下とした試験No.15ではL反りC反り共に許容範囲内であった。
補助ロール半径R2を所定のロール半径r2以下でかつr2/8以上とした試験No.16ではL反りC反り共に許容範囲内であった。
他方、試験No.17では補助ロール半径R2を所定のロール半径r2の1/8以下となっており、L反りがNGとなっている。試験No.16、17の結果から、補助ロール半径R2をr2/8以上、r2以下とすることが有効であることが分かる。
3 補助ロール
5 金属板
7 流体
9 ノズル
11 供給管
13 流体供給装置
15 補助ロール(実施の形態2)
Claims (5)
- 上側のワークロールと下側のワークロールからなるワークロールを有する調質圧延機における前記ワークロールの出側に設けた補助ロールを、パスラインから押し上げるか又は押し下げて金属板を前記ワークロールに沿わせて圧延を行う金属板の調質圧延方法であって、
前記補助ロールをパスラインから押し上げた場合には前記金属板の下面に前記金属板を前記上側のワークロールに押し付けるように流体を噴射し、前記補助ロールをパスラインから押し下げた場合には前記金属板の上面に前記金属板を前記下側のワークロールに押し付けるように流体を噴射して、前記金属板を前記ワークロール側に押し付ける面圧を加えた状態で圧延することを特徴とする金属板の調質圧延方法。 - 前記金属板と前記ワークロール間に働く面圧を下記式で規定される所定の面圧S以上とすることを特徴とする請求項1に記載の金属板の調質圧延方法。
S=h/R×E×Δε/100
但し、 S:所定の面圧[MPa]
h:板厚[m]
R:ワークロール半径[m]
E:金属のヤング率[MPa]
Δε:圧延後金属板最大伸び率差[%] - 前記補助ロールとして、幅方向中央部のロール径が幅方向両端部よりも大径となるクラウン形状、又は幅方向両端部のロール径が幅方向中央部よりも大径となる逆クラウン形状のロールを使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の金属板の調質圧延方法。
- 前記金属板の出側張力の上限値を200MPaとして設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の金属板の調質圧延方法。
- 前記補助ロール半径をR2とし、下記式で規定される所定のロール半径をr2としたときに、前記補助ロール半径R2がr2/8≦R2≦r2を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属板の調質圧延方法。
2×r2=h×E/(Y-T)-h
但し、 h:板厚[m]
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Y:金属の降伏応力[MPa]
T:圧延張力[MPa]
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