以下、クローザ機構の制御部としてのECUを構成に含む車両用ドアロック装置の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1〜図3に示すように、車両用のドアロック装置1は、図示しない車両ドアの開閉動作に伴い相対移動するストライカ10に係合するラッチ機構20と、その係合したストライカ10を相対移動不能に拘束すべくラッチ機構20をハーフラッチ状態からフルラッチ状態へと移行させる機械的構成としてのクローザ機構30と、クローザ機構30を制御する電気的構成としてのクローザシステム9とを備えている。
尚、本実施形態のドアロック装置1は、図示しない車両のバックドアに設けられている。そして、車両の後方開口部に設けられたストライカ10を相対移動不能に拘束することにより、そのバックドアを全閉状態に保持することが可能になっている。
詳述すると、本実施形態のドアロック装置1は、ストライカ入出部41を有したベースプレート42を備えている。そして、ラッチ機構20は、そのストライカ入出部41に進入したストライカ10に係合するラッチ43と、このストライカ10に係合するポール44と、を備えている。
具体的には、ベースプレート42は、略平板状に形成された基部42aを有している。尚、本実施形態のベースプレート42は、板材を塑性加工(プレス加工)することにより形成されている。そして、ストライカ入出部41は、その基部42aの一端をスリット状に切り欠くかたちで設けられている。
また、このベースプレート42の基部42a上には、そのストライカ入出部41を溝幅方向(図1及び図3中、左右方向)に挟む態様で、二本の支持軸45,46が立設されている。本実施形態では、これらの各支持軸45,46は、その基端側がベースプレート42の基部42aを貫通するかたちで回動可能に設けられている。そして、ラッチ43及びポール44は、それぞれ、これらの各支持軸45,46に固定されることにより、当該各支持軸45,46と一体に回動するように構成されている。
さらに詳述すると、図4〜図10に示すように、略平板状に形成されたラッチ43には、その外周面に開口するストライカ係合溝47が形成されている。また、ラッチ43は、図示しないラッチ付勢バネ(コイルバネ)によって、各図中、反時計回り方向に回動付勢されている。更に、このラッチ43は、ベースプレート42に設けられたストッパ部(図示略)に当接することにより、上記ストライカ入出部41にストライカ係合溝47の開口端が臨む位置において、そのラッチ付勢バネの付勢力に基づく回動が規制されるようになっている。そして、本実施形態のラッチ機構20は、これにより、そのストライカ入出部41に進入したストライカ10がラッチ43のストライカ係合溝47に係合するように構成されている。
一方、ポール44は、図示しないポール付勢バネ(捩りコイルバネ)によって、各図中、時計回り方向に回動付勢されている。また、ポール44には、そのポール付勢バネの付勢力に基づく回動によって、ラッチ43の外周面に近接する方向に移動する係合部44aが設けられている。更に、ポール44は、ストライカ係合溝47にストライカ10が係合した状態で、その係合部44aがラッチ43の外周面に係合するように構成されている。そして、本実施形態のラッチ機構20は、これにより、そのラッチ43のストライカ係合溝47にストライカ10が係合する状態を保持することが可能になっている。
即ち、図5及び図6に示すように、ストライカ入出部41に進入したストライカ10は、ストライカ係合溝47に係合することにより、そのラッチ43を押圧しつつ、ストライカ入出部41内を奥側(各図中、下側から上側)に向かって相対移動する。そして、これにより、そのラッチ付勢バネの付勢力に抗して、各図中、時計回り方向にラッチ43が回動する。
また、このとき、ポール44の係合部44aは、ポール付勢バネの付勢力に基づきラッチ43の外周面に押し当てられた状態で、見かけ上、その当接するラッチ43の外周面上を摺動する。そして、本実施形態のラッチ機構20は、これにより、その外周面に形成されたラッチ43側の係合部43aにポール44側の係合部44aが係合することで、ラッチ43の回動が規制されるようになっている。
具体的には、本実施形態では、このラッチ43側の係合部43aは、ストライカ係合溝47の開口端、詳しくは、そのストライカ10が係合することにより押圧される側(各図中、上側)の側壁面に設定されている。そして、本実施形態のラッチ機構20は、これにより、そのラッチ付勢バネによる付勢方向、つまりはストライカ係合溝47からストライカ10が排出される方向の回動を規制することで、そのラッチ43にストライカ10が係合する状態を保持する構成になっている(ハーフラッチ状態・半係合状態に相当する)。
また、本実施形態のドアロック装置1は、このようにラッチ機構20がハーフラッチ状態となった場合には、当該ラッチ機構20をクローズ動作させるべく、そのクローザ機構30が作動するように構成されている。
即ち、図7及び図8に示すように、本実施形態のラッチ機構20は、クローザ機構30に駆動されることにより、そのハーフラッチ状態に対応する回動位置(図6参照、ハーフラッチ位置Ph)からラッチ付勢バネの付勢力に抗してラッチ43がクローズ方向(各図中、時計回り方向)に回動するように構成されている。また、ポール44は、ラッチ43の周面に形成された第2の係合部43bに係合することにより、そのクローズ方向に回動した位置(図8参照、フルラッチ位置Pf)において、ラッチ付勢バネの付勢力に基づくラッチ43の回動を規制するように構成されている。そして、本実施形態のラッチ機構20は、これにより、そのラッチ43のストライカ係合溝47に係合するストライカ10を相対移動不能に拘束するフルラッチ状態(完全係合状態に相当する)に移行する構成になっている。
更に、本実施形態のドアロック装置1は、例えば、図示しない開動作スイッチに対する操作入力等に基づいて、そのラッチ機構20をリリース動作させるべく、クローザ機構30が作動するように構成されている。
即ち、図9及び図10に示すように、本実施形態のラッチ機構20は、クローザ機構30に駆動されることにより、そのポール44がポール付勢バネの付勢力に抗して、各図中、反時計回り方向に回動するように構成されている(リリース位置Pr)。また、ラッチ43は、これによりポール44との係合による回動規制が解除されることで、そのラッチ付勢バネの付勢力に基づいて、反クローズ方向に回動する(図10中、反時計回り方向)。そして、本実施形態のラッチ機構20は、これによりストライカ10の拘束を解除し、当該ストライカ10をストライカ係合溝47から排出することで、図4に示されるようなアンロック状態に復帰するように構成されている。
(クローザ機構)
次に、本実施形態のドアロック装置1に設けられたクローザ機構30について説明する。
図1〜図3に示すように、本実施形態のクローザ機構30は、クローズモータ50を駆動源とするアクチュエータ51と、そのアクチュエータ51の回転を減速する減速機構52と、を備えている。
詳述すると、本実施形態のドアロック装置1は、上記のようにラッチ機構20のロック部材を構成するラッチ43及びポール44の各支持軸45,46とともにベースプレート42の基部42a上に立設された二本の支持軸55,56を備えている。尚、本実施形態では、各支持軸55,56の基端部は、ベースプレート42の基部42aに対して相対回転不能に固定されている。また、これらの各支持軸55,56には、それぞれ減速ギヤ(61,62)が軸支されている。そして、本実施形態の減速機構52は、その支持軸55に軸支された第1減速ギヤ61側に、アクチュエータ51の出力ギヤ(図示略、ピニオン又はウォーム)が噛合されるようになっている。
具体的には、本実施形態では、支持軸55には、その第1減速ギヤ61と一体に回動するピニオンギヤ63が支持されている。尚、本実施形態では、このピニオンギヤ63は、両者の間に介在されるスペーサ64とともに第1減速ギヤ61と一体に形成されている。また、第2減速ギヤ62は、このピニオンギヤ63に噛合する状態で支持軸56に支持されている。そして、本実施形態の減速機構52は、その図示しないアクチュエータ51の出力ギヤと第1減速ギヤ61との間のギヤ比、及びピニオンギヤ63と第2減速ギヤ62とのギヤ比に基づいて、そのアクチュエータ51の回転を減速する構成になっている。
また、本実施形態のクローザ機構30は、減速機構52を介してアクチュエータ51に駆動される第1駆動ギヤ71と、この第1駆動ギヤ71に噛合することにより回動する第2駆動ギヤ72を備えている。本実施形態では、第1駆動ギヤ71は、減速機構52の最終ギヤを構成する第2減速ギヤ62と一体に形成されている。そして、第2駆動ギヤ72は、ラッチ43の支持軸45に軸支されたラッチレバー73と一体に形成されている。
具体的には、本実施形態のラッチレバー73は、略平板状の外形を有して支持軸45に軸支されることによりラッチ43と平行に配置される連結部73aを備えている。また、この連結部73aの周縁部には、周方向に並ぶ複数のギヤ歯74が形成されている。そして、本実施形態のラッチレバー73は、これにより、その連結部73aと第2駆動ギヤ72として機能するセクターギヤ75とが一体に形成された構成になっている。
更に、このラッチレバー73は、その連結部73aの周縁部から支持軸45の延伸方向に沿ってラッチ43側に延びるレバー部73bを備えている。そして、本実施形態のラッチ43には、このレバー部73bに対する係合部43dが設けられている。
即ち、ラッチレバー73は、第2駆動ギヤ72に歯合する第1駆動ギヤ71を介してアクチュエータ51の駆動力が伝達されることにより回動する。そして、本実施形態のクローザ機構30は、そのラッチレバー73がラッチ43を回動させることにより、ラッチ機構20をクローズ動作させる構成になっている。
さらに詳述すると、図11〜図16に示すように、本実施形態の第1駆動ギヤ71には、そのギヤ歯76が形成された周方向範囲において第2駆動ギヤ72に噛合するセクターギヤ77が用いられている。そして、この第1駆動ギヤ71の初期位置P0は、その第2駆動ギヤ72と歯合しない回動位置に設定されている。
即ち、本実施形態のクローザ機構30は、待機状態となる通常時には、これら第1駆動ギヤ71と第2駆動ギヤ72との間でアクチュエータ51のトルク伝達経路が切断された状態となるように構成されている。そして、これにより、ラッチ43の自由回動を許容することで、ラッチ機構20の円滑な動作を担保する。詳しくは、そのアンラッチ状態からハーフラッチ状態への移行、及びフルラッチ状態からアンラッチ状態への移行が円滑に行われるようになっている。
また、図11〜図13に示すように、本実施形態のクローザ機構30は、ラッチ43に対するストライカ10の係合によりラッチ機構20がハーフラッチ状態に移行した後のクローズ作動時には、その減速機構52の最終ギヤを構成する第2減速ギヤ62が、各図中、反時計回り方向(第1方向)に回動するように構成されている。即ち、この第2減速ギヤ62と一体に第1駆動ギヤ71が回動して第2駆動ギヤに噛合しない状態から当該第2駆動ギヤ72に噛合する状態に移行することにより、そのクローズ作動時におけるアクチュエータ51のトルク伝達経路が確立される。そして、本実施形態のクローザ機構30は、これにより第2駆動ギヤ72に伝達される駆動力に基づいて、その第2駆動ギヤ72と一体に形成されたラッチレバー73がクローズ方向(各図中、時計回り方向)に回動する構成になっている。
ここで、図12及び図14に示すように、本実施形態の第1駆動ギヤ71及び第2駆動ギヤ72は、それぞれ、その互いの噛み合いが開始される部分におけるギヤ歯間隔α1,β1が、その他の部分のギヤ歯間隔α0,β0よりも広く設定されている。具体的には、第1駆動ギヤ71を構成するセクターギヤ77は、その噛み合い開始端を構成する第1ギヤ歯76aと第2ギヤ歯76bとの間が、第2ギヤ歯76bと第3ギヤ歯76cとの間、及びそれ以降の各ギヤ歯76c〜76eの間よりも大きく開いたギヤ形状を有している。同様に、第2駆動ギヤ72を構成するセクターギヤ75もまた、その噛み合い開始端を構成する第1ギヤ歯74aと第2ギヤ歯74bとの間が、第2ギヤ歯74bと第3ギヤ歯74cとの間、及びそれ以降の各ギヤ歯74c〜74eの間よりも大きく開いたギヤ形状を有している。そして、本実施形態のクローザ機構30は、これにより、その第1駆動ギヤ71と第2駆動ギヤ72との噛み合いが開始される際、それぞれのギヤ歯74,76が干渉しないように構成されている。
また、本実施形態のラッチレバー73は、そのラッチ43の支持軸45に対して相対回動可能に設けられている。そして、本実施形態のクローザ機構30は、図12に示されるような第2駆動ギヤ72に対する第1駆動ギヤ71の噛み合いが開始される回動位置(噛み合い開始位置P1)においては、そのラッチレバー73のレバー部73bがラッチ43の係合部43dに対して係合しないように構成されている。
具体的には、本実施形態のラッチレバー73は、その支持軸45の延伸方向に延びるレバー部73bが、ラッチ43の径方向外側に配置されるように構成されている。また、ラッチ43の係合部43dは、そのラッチ43の周縁部分から径方向外側に突出する態様で設けられている。そして、本実施形態のクローザ機構30は、図12に示すように、第1駆動ギヤ71が噛み合い開始位置P1にある場合には、そのラッチレバー73側の係合部を構成するレバー部73bとラッチ43側の係合部43dとの間に周方向の隙間Xが形成される構成になっている。
即ち、本実施形態のクローザ機構30は、第1駆動ギヤ71と第2駆動ギヤ72とが噛み合う際、この隙間Xの存在によって、その第2駆動ギヤ72と一体に形成されたラッチレバー73のレバー部73bがラッチ43の係合部43dに係合することなく空走するようになっている。
具体的には、この隙間Xは、図13に示すように、第1駆動ギヤ71と第2駆動ギヤ72との間が、それぞれ複数のギヤ歯74,76で噛み合う状態となる回動位置(噛み合い確立位置P2)において消失する。つまりは、その空走するラッチレバー73のレバー部73bがラッチ43の係合部43dに当接するように設定されている。更に、このラッチ43の係合部43dに当接したラッチレバー73のレバー部73bは、そのラッチ43の係合部43dを周方向に押圧する。そして、本実施形態のクローザ機構30は、これにより、その第1駆動ギヤ71と第2駆動ギヤ72との間の安定的な噛み合いが確立された状態で、アクチュエータ51の駆動力によりラッチ43をクローズ方向に回動させることが可能となっている。
また、図15及び図16に示すように、本実施形態のクローザ機構30は、ラッチ機構20がフルラッチ状態となった場合、つまり当該ラッチ機構20のクローズ動作が完了した場合には、その第2減速ギヤ62及び第1駆動ギヤ71の回動方向が反転(同図中、時計回り方向に回動)するように構成されている。そして、これにより、その第1駆動ギヤ71の回動位置をラッチ機構20のクローズ動作が完了したクローズ完了位置P3(図15参照)から第2駆動ギヤ72に歯合しない初期位置P0(図16参照)に復帰させることで、そのクローズ作動を終了する構成になっている。
即ち、フルラッチ状態においては、そのポール44との係合関係に基づいてラッチ付勢バネの付勢力に基づくラッチ43の回動が規制されている(図8参照)。また、ラッチレバー73のレバー部73bは、そのラッチレバー73がクローズ方向に回動する場合にのみ、ラッチ43の係合部43dを押圧する構成になっている。そして、本実施形態のドアロック装置1は、これにより、その第1駆動ギヤ71の反転回動に伴いラッチレバー73が反クローズ方向(同図中、反時計回り方向)に回動した後においても、そのラッチ機構20がフルラッチ状態で保持されるようになっている。
また、本実施形態のラッチレバー73は、図2、図3、及び図14に示すように、レバー付勢バネ78(捩りコイルバネ)の付勢力に基づいて、反クローズ方向に回動付勢されている。具体的には、本実施形態のクローザ機構30は、そのベースプレート42の基部42a上にハウジング79を保持する構成となっている。そして、レバー付勢バネ78を含む各付勢バネ(ラッチ用及びポール用)は、それぞれ、このハウジング79に保持されている。
更に、本実施形態では、このハウジング79には、そのレバー付勢バネ78に付勢されたラッチレバー73に当接することにより当該ラッチレバー73の回動を規制するストッパ部80が設けられている。そして、本実施形態のクローザ機構30は、これにより、その第1駆動ギヤ71と第2駆動ギヤ72とが歯合しない状態となった場合に、当該第2駆動ギヤ72の噛み合い開始端(第1ギヤ歯74a)を所定の噛み合い開始位置P1´に保持する構成になっている。
また、図1、図2、及び図17〜図19に示すように、本実施形態のクローザ機構30は、第1駆動ギヤ71と一体に回動する押圧ピン81と、この押圧ピン81に押圧されることにより回動するオープンレバー82と、を備えている。
本実施形態の押圧ピン81は、支持軸56の延伸方向に沿って延びる軸形状を有して第2減速ギヤ62に固定されている。また、オープンレバー82は、第2減速ギヤ62の支持軸56に軸支されている。更に、本実施形態では、これらの押圧ピン81及びオープンレバー82は、支持軸56の延伸方向において第1駆動ギヤ71を構成するセクターギヤ77の反対側、即ち図1及び図2中、第2減速ギヤ62よりも上側に配置されている。そして、本実施形態のクローザ機構30は、上記クローズ作動時に第1駆動ギヤ71と第2駆動ギヤ72と噛合する第1方向とは逆向きの第2方向(図17〜図19中、時計回り方向)に第2減速ギヤ62が回動することによって、その押圧部材としての押圧ピン81がオープンレバー82を押圧するように構成されている。
具体的には、オープンレバー82は、支持軸56に基端側が軸支された略L字平板形状を有している。尚、本実施形態のオープンレバー82は、板材を塑性加工(プレス加工)することにより形成されている。また、このオープンレバー82の先端部分には、折曲加工により押圧部82aが形成されている。そして、押圧ピン81との当接部82bは、その押圧ピン81の軸形状(円柱形状)に合わせて湾曲した円弧形状を有している。
また、本実施形態では、ポール44の支持軸46には、そのポール44と一体に回動するリフトレバー84が設けられている。本実施形態のリフトレバー84は、その先端側が支持軸46の軸線方向に沿って延びるように当該支持軸46に固定される断面略L字状のレバー本体84aと、このレバー本体84aの側方に延びる当接部84bと、を備えている。尚、このリフトレバー84もまた、板材を塑性加工(プレス加工)することにより形成されている。そして、本実施形態のクローザ機構30は、そのオープンレバー82の押圧部82aがリフトレバー84の当接部84bを押圧してポール44を回動させることにより、そのラッチ機構20をリリース動作させる構成になっている。
詳述すると、図17〜図19に示すように、本実施形態の押圧ピン81は、第1駆動ギヤ71を構成するセクターギヤ77の第1ギヤ歯74aとの間に支持軸56を挟む位置、即ち周方向に略180°離間する位置において第2減速ギヤ62に固定されている。そして、この押圧ピン81の初期位置P0´は、第2減速ギヤ62の支持軸56に軸支されたオープンレバー82に当接しない回動位置に設定されている。
即ち、本実施形態のクローザ機構30は、待機状態となる通常時(図11参照)には、これら押圧ピン81とオープンレバー82との間でアクチュエータ51のトルク伝達経路が切断された状態となるように構成されている。そして、これにより、ポール44の自由回動を許容することで、ラッチ機構20の円滑な動作を担保する構成になっている。
また、本実施形態のクローザ機構30は、例えば、開動作スイッチ(図示略)に対する操作入力等、開動作要求に基づくリリース作動時には、その減速機構52の最終ギヤを構成する第2減速ギヤ62が第2方向(各図中、反時計回り方向)に回動するように構成されている。そして、図18に示すように、本実施形態の押圧ピン81は、これにより、第1駆動ギヤ71とともに第2減速ギヤ62と一体回動することで、オープンレバー82の当接部82bに当接するようになっている(当接位置P4)。
即ち、本実施形態では、このように押圧ピン81がオープンレバー82に当接して当該オープンレバー82を押圧する状態に移行することで、そのリリース作動時におけるアクチュエータ51のトルク伝達経路が確立される。そして、図19に示すように、本実施形態のクローザ機構30は、これにより押圧ピン81と一体に回動するオープンレバー82がリフトレバー84を押圧することで、その支持軸56を介して当該リフトレバー84に連結されたポール44をラッチ43から離間する方向(リリース方向、同図中、反時計回り方向)に回動させる構成になっている。
また、本実施形態のクローザ機構30は、そのラッチ43とポール44との係合が解除されることによりラッチ機構20がアンラッチ状態となった場合、つまり当該ラッチ機構20のリリース動作が完了した場合には、その第2減速ギヤ62及び押圧ピン81の回動方向が反転(同図中、反時計回り方向に回動)するように構成されている。そして、これにより、上述のクローズ作動時と同様、その押圧ピン81の回動位置をラッチ機構20のリリース動作が完了したリリース完了位置P5から初期位置P0´に復帰させることで、そのリリース作動を終了する構成になっている。
尚、図2及び図3に示すように、本実施形態のオープンレバー82は、支持軸56に嵌挿された捩りコイルバネ85の付勢力により回動付勢されている。また、このオープンレバー82は、図示しないストッパに当接することによって、その捩りコイルバネ85の付勢力に基づく回動が規制されるようになっている。そして、本実施形態のクローザ機構30は、これにより、そのオープンレバー82に対する押圧ピン81の当接位置P4(図18参照)が一定となるように構成されている。
さらに詳述すると、図1に示すように、本実施形態のクローザシステム9は、アクチュエータ51のクローズモータ50に駆動電力を供給するECU90を備えている。
本実施形態のECU90は、ラッチ43の回動位置がハーフラッチ状態に対応するハーフラッチ位置Phにあること(図6参照)を検出するハーフラッチSW91、及びフルラッチ状態に対応するフルラッチ位置Pfにあること(図8参照)、すなわち、車両ドアの開閉状態を検出するカーテシSW92にそれぞれ接続されている。
また、ECU90は、ラッチレバー73の回動位置がラッチ43の回動に影響を与えない元位置Pmにあることを(図11参照)を検出する元位置SW93に接続されている。なお、ラッチレバー73の元位置は、ラッチ43の係合部43dの回動軌跡上にラッチレバー73が、特にレバー部73bが位置しない位置と規定される。
また、ECU90には、例えば、開動作スイッチ(図示略)が操作された場合等、そのラッチ機構20によるストライカ10の拘束を解除すべき旨を示すリリース信号が入力されるようになっている。
そして、本実施形態のECU90は、これら各スイッチの出力信号に基づいて、その駆動電力を供給するクローズモータ50の回転、つまりは、アクチュエータ51の作動を制御するように構成されている。
より詳述すると、図20に示すように、ECU90は、バッテリ電力+Bが投入される入出力回路、入出力電源供給回路、ウェイクアップ入力回路、入力回路、出力回路、及びマイコン96を備える。出力回路は、クローズモータ50への電源供給経路を切り替えるためのリレー97を有する。マイコン96がリレー97の接点状態を切り替えることにより、クローズモータ50の駆動方向が切り替わる。
なお、ECU90は、クローズモータ50の制御を実行する通常モードと、クローズモータ50の制御を実行しない省電力モードとの2つのプログラムを有する。通常モードのECU90は、所定のトリガに基づき、次に説明する処理手順に基づく処理を実行する。
なお、通常モードと省電力モードとを比較した場合、省電力モードの方がクローズモータ50の制御を実行しない分、ECU90が消費する電力が少ない。
次に、図示しない車両ドアが閉じ操作され、ラッチ43がハーフラッチ位置Phに位置することを検出した場合のECU90(通常モード)の処理手順について説明する。なお、元位置SW異常フラグ及び連続リセット検知フラグは、ともにOFFであるものとする。ここで、元位置SW異常フラグ及び連続リセット検知フラグは、ECU90に設定される図示しない記憶部に記憶されるものである。
なお、本例において、ハーフラッチSW91がONとされている状態は、ラッチ43がハーフラッチ位置Phに位置しないことを、ハーフラッチSW91がOFFとされている状態は、ラッチ43がハーフラッチ位置Phに位置することを示す。また、元位置SW93がONとされている状態は、ラッチレバー73が元位置Pmに位置しないことを、元位置SW93がOFFとされている状態は、ラッチレバー73が元位置Pmに位置することを示す。さらに、カーテシSW92がONとされている状態は、図示しない車両ドアが開いている(全閉状態にない)ことを、カーテシSW92がOFFとされている状態は、図示しない車両ドアが閉まっている(全閉状態にある)ことを示す。
図21に示すように、元位置SW異常フラグ及び連続リセット検知フラグがともにOFFの状態でハーフラッチSW91がONからOFFに切り替えられたことをトリガに当該処理をスタートすると、ECU90は、クローザディレイタイムをカウントした後(ステップS1)、元位置SW93がOFFであるか否かを判断する(ステップS2)。
ステップS2でYES、すなわち元位置SW93がOFFである場合、ECU90は、クローズモータ50を正転駆動させる(ステップS3)。その後、ECU90は、ハーフラッチSW91がOFFからONに切り替わったか否か、これが成立しない場合には正転オーバータイムを経過したか否かを判断する(ステップS4)
ステップS4でYES、すなわち、ハーフラッチSW91がOFFからONに切り替わった場合、又は正転オーバータイムを経過した場合、ECU90は、クローズモータ50を停止させ(ステップS5)、リレー保護タイムをカウントする(ステップS6)。
なお、クローズモータ50の正転駆動により、ラッチレバー73が時計方向に回転する。これに伴い、ラッチ43は、ラッチレバー73に連れ動きし、時計方向に回転することにより、ストライカ10を引き込む(クローズ動作)。これにより、車両ドアは、半ドア状態から全閉状態に移行される。また、ハーフラッチSW91がOFFからONに切り替わるとき、必然的に元位置SW93がOFFからONに切り替わる。
次に、ECU90は、クローズモータ50を逆転駆動させ(ステップS7)、その後、元位置SW93がONからOFFに切り替わったか否かを判断する(ステップS8)。
ステップS8でYES、すなわち、元位置SW93がONからOFFに切り替わった場合、ECU90は、元位置SW異常検知カウンタCsをリセット(Cs=0)した後、(ステップS9)、クローズモータ50を停止させ(ステップS10)、一連の処理を終了する。
なお、ステップS4でNO、すなわち、ハーフラッチSW91がOFFからONに切り替わらず、且つ正転オーバータイムを経過していない場合、ECU90は、その処理をステップS2に移行する。
また、ステップS2でNO、すなわち、元位置SW93がONである場合、ECU90は、クローズモータ50を逆転駆動させ(ステップS11)、その後、元位置SW93がONからOFFに切り替わったか否か、これが成立しない場合には逆転オーバータイムを経過したか否かを判断する(ステップS12)。
ステップS12でYES、すなわち、元位置SW93がONからOFFに切り替わった場合、又は逆転オーバータイムを経過した場合、ECU90は、クローズモータ50を停止させ(ステップS13)、リレー保護タイムをカウントした後(ステップS14)、その処理をステップS3に移行する。
なお、ステップS12でNO、すなわち、元位置SW93がONからOFFに切り替わらず、且つ逆転オーバータイムを経過していない場合、ECU90は、その処理をステップS11に移行する。
また、ステップS8でNO、すなわち、元位置SW93がONからOFFに切り替わらない場合、ECU90は、逆転オーバータイムを経過したか否かを判断する(ステップS15)
ステップS15でYES、すなわち、逆転オーバータイムを経過している場合、ECU90は、元位置SW異常検知カウンタCsをインクリメント(Cs←Cs+1)し(ステップS16)、その後、元位置SW異常検知カウンタCsが設定値以上であるか否かを判断する(ステップS17)。なお、本例では、異常を判断するための設定値が20に設定されているものとするが、この設定値は適宜変更可能である。
ステップS17でYES、すなわち、元位置SW異常検知カウンタCsが設定値以上である場合、ECU90は、元位置SW異常フラグをOFFからONに切り替えて(ステップS18)、その処理をステップS9に移行する。
なお、ステップS15でNO、すなわち、逆転オーバータイムを経過していない場合、ECU90は、その処理をステップS7に移行する。
また、ステップS17でNO、すなわち、元位置SW異常検知カウンタCsが設定値未満である場合、ECU90は、その処理をステップS10に移行する。
次に、電源がリセットされた場合のECU90の処理手順について説明する。なお、電源リセットとは、車両のスタートスイッチの操作等により、バッテリからクローザシステム9に投入される電力のオンオフが切り替わることを指す。
図22に示すように、電源リセットをトリガに当該処理をスタートすると、ECU90は、元位置SW93がOFFであるか否かを判断する(ステップS21)。
ステップS21でYES、すなわち、元位置SW93がOFFである場合、ECU90は、連続リセット検知カウンタCrをリセット(Cr=0)し(ステップS22)、一連の処理を終了する。
なお、ステップS21でNO、すなわち、元位置SW93がONである場合、ECU90は、連続リセット検知カウンタCrをインクリメント(Cr←Cr+1)し(ステップS23)、その後、連続リセット検知カウンタCrが設定値以上であるか否かを判断する(ステップS24)。なお、本例では、異常を判断するための設定値が20に設定されているものとするが、この設定値は適宜変更可能である。
ステップS24でYES、すなわち、連続リセット検知カウンタCrが設定値以上である場合、ECU90は、連続リセットフラグをOFFからONに切り替えて(ステップS25)、その処理をステップS22に移行する。
また、ステップS24でNO、すなわち、連続リセット検知カウンタCrが設定値未満である場合、ECU90は、クローズモータ50を逆転駆動させ(ステップS26)、その後、元位置SW93がONからOFFに切り替わったか否か、これが成立しない場合には逆転オーバータイムを経過したか否かを判断する(ステップS27)。
ステップS27でYES、すなわち、元位置SW93がONからOFFに切り替わった場合、又は逆転オーバータイムを経過した場合、ECU90は、クローズモータ50を停止させ(ステップS28)、一連の処理を終了する。
なお、ステップS27でNO、すなわち、元位置SW93がONからOFFに切り替わらず、且つ逆転オーバータイムを経過していない場合、ECU90は、その処理をステップS26に移行する。
図21及び図22に示す処理の終了後、ECU90は、元位置SW異常フラグ及び連続リセット検知フラグの少なくとも一方のフラグがONであるか否かを判断する。元位置SW異常フラグ及び連続リセット検知フラグの少なくとも一方のフラグがONである場合、ECU90は通常モードから省電力モードに移行する。
省電力モードに移行したECU90は、クローズモータ50の制御によるラッチ43のハーフラッチ位置Phからフルラッチ位置Pfへの引き込みを実行しないことを種々の報知部(例えば、スピーカやディスプレイ等)を通じて報知することが望ましい。
なお、ディーラーや整備工場等において、ECU90への外部接続によるプログラムの書き換えを行わない限り、省電力モードから通常モードへの移行は不能とされている。
次に、ECU90を採用したことによるドアロック装置の効果について説明する。
クローザ機構30に、元位置SW異常フラグ及び連続リセット検知フラグのいずれか一方がONである場合、通常モードから消費電力の少なくクローズモータ50の制御を実行しない省電力モードに移行するECU90を採用した。
製品である以上、経年劣化等により、元位置SW93に、位置検出精度が落ちるなどの不具合が発生するおそれがある。不具合が発生している元位置SW93の検出結果に基づいてクローズモータ50を駆動させて、その駆動力をラッチ43へ伝達してもストライカ10とラッチ43とをハーフラッチ状態からフルラッチ状態へ移行させられない状況が発生するおそれがある。正常にストライカ10とラッチ43とをハーフラッチ状態からフルラッチ状態へ移行させられない場合、その分の電力消費、すなわちクローズモータ50に投入され消費される電力やECU90が制御を実行するために消費される電力が無駄になる。ひいては、車両に採用されているドアロック装置1以外の電気的構成に必要な電力が不足するおそれがある。
その点、本構成によれば、ECU90の通常モードに対して、省電力モードの追加という簡易な追加だけで、元位置SW93に不具合が発生していると判断される場合、通常モードから省電力モードへ移行する。これにより、ECU90が不要な制御を実行しない分、消費電力が抑制される。また、クローズモータ50を駆動させることもないので、当該クローズモータ50においても電力消費が抑制される。
さらに、本例のECU90は、元位置SW異常検知カウンタCsが設定値(ここでは20)以上に到達しなければ、元位置SW異常フラグをOFFからONに切り替えない。また、ECU90は、連続リセット検知カウンタCrが設定値(ここでは20)以上に到達しなければ、連続リセットフラグをOFFからONに切り替えない。すなわち、不具合の発生している状況が複数回に設定される設定回数だけ連続しなければ、ECU90は、通常モードから省電力モードに移行しない。
このように構成することにより、より正確に元位置SW93において不具合が発生していることを判断することができる。言い換えれば、例えば、クランキングや瞬断の発生など一時的な不具合のとき、ECU90は、省電力モードに移行しない。ECU90における不必要な省電力モードへの移行が抑制されているため、車両の使い勝手が悪化しない。
また、ECU90は、ストライカ10とラッチ43とがハーフラッチ状態になったことをトリガとして、省電力モードへの移行の有無を判断する。このように、ドアロック装置1が動作するタイミングで行うことにより、別途不具合の有無を判断する場合と比較して電力の消費が抑制される。
さらに、ECU90は、クローザシステム9へ投入される電源のオンオフが切り替えられたことをトリガとして、省電力モードへ移行への有無を判断する。
クローザシステム9へ投入される電源のオンオフが切り替えられるタイミングは、車両ドアが閉じている、すなわちストライカ10とラッチ43とが完全係合するフルラッチ状態にあるタイミングである。このタイミングは、ドアロック装置1の各構成の状態が一定であるため、元位置SW93における不具合の有無をより正確に判断しやすい。
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態は、車両のバックドアに設けられたドアロック装置1に具体化したが、その他のドアに用いられるドアロック装置に適用してもよい。
・上記実施形態では、第1駆動ギヤ71は、減速機構52を介してアクチュエータ51に駆動されることとしたが、アクチュエータ51から第1駆動ギヤ71までのトルク伝達経路は任意に変更してもよい。
・上記実施形態では、第2駆動ギヤ72は、第1駆動ギヤ71に噛合することにより伝達されるアクチュエータ51の駆動力に基づきラッチ43を回動させることとしたが、この第2駆動ギヤ72がポール44を回動させる構成であってもよい。
・上記実施形態では、押圧部材として軸状をなす押圧ピン81を用いることとしたが、その押圧部材の形状は、任意に変更してもよい。そして、レバー部材としてのオープンレバー82、及びポール44の支持軸46に設けられたリフトレバー84の形状についてもまた、任意に変更してもよい。
・上記実施形態におけるドアロック装置1の各構成は、ラッチ43の回動態様が担保されていれば、適宜形状等が変更されてもよい。
・上記実施形態において、ECU90は、電源リセットに伴う処理、すなわち図22における処理を実施しなくてもよい。
・上記実施形態において、元位置SW異常フラグをOFFからONに切り替えるための元位置SW異常検知カウンタCsの設定値は、複数回に設定されていれば適宜変更してもよい。
・上記実施形態において、連続リセットフラグをOFFからONに切り替えるための連続リセット検知カウンタCrの設定値は、複数回に設定されていれば適宜変更してもよい。
・上記実施形態において、本例において不具合を判定するための検出部は、元位置SW93であったが、ハーフラッチSW91やカーテシSW92などに変更してもよい。また、複数SWを同時に判断してもよい。
・上記実施形態において、ECU90は、図21に示す処理のうち、クローザディレイタイム及びリレー保護タイムのカウントを適宜省略してもよい。
・上記実施形態において、図20に示すECU90の電気的構成は一例であり、適宜変更してもよい。