<第一実施形態>
図1乃至図3は、本発明の一実施形態に係る記録装置100の動作説明図であり、特に、重ね連送の動作説明図である。図1乃至図3は記録装置100の断面構造を模式的に示している。本実施形態では、シリアル方式のインクジェット記録装置に本発明を適用した場合について説明するが、本発明は他の形式の記録装置にも適用可能である。
なお、「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も含まれ、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、本実施形態では「記録媒体」としてシート状の紙を想定するが、布、プラスチック・フィルム等であってもよい。シート状の記録媒体をここでは記録シートと呼ぶ。
記録装置100の動作説明の前に、その構成について主に図1の状態ST1を参照して説明する。記録装置100は、複数枚の記録シート1を積載可能な給送トレイ11(積載部)と、記録シート1に記録を行う記録ユニットと、給送トレイ11の記録シート1を搬送可能な搬送装置と、を備える。
記録ユニットは、記録ヘッド7と、キャリッジ10とを含む。記録ヘッド7は記録シート1に対して記録を行う。本実施形態では記録ヘッド7は、インクを吐出して記録シート1に記録を行うインクジェット記録ヘッドである。記録ヘッド7に対向する位置には、記録シート1の裏面を支持するプラテン8が配置されている。キャリッジ10は記録ヘッド7を搭載して搬送方向と交差する方向へ移動する。
搬送装置は、給送機構、搬送機構、排出機構に大別される。給送機構は、給送トレイ11に積載された記録シート1を搬送機構に給送し、搬送機構は給送された記録シート1を排出機構に搬送する。排出機構は記録シート1を記録装置100の外部に搬送する。記録中の記録シート1の搬送は、主として、搬送機構が行う。このように記録シート1は、給送機構、搬送機構、排出機構により順次搬送される。給送機構側を搬送方向上流側と呼び、排出機構側を搬送方向下流側と呼ぶ。
給送機構は、ピックアップローラ2と、給送ローラ3と、給送従動ローラ4とを含む。ピックアップローラ2は給送トレイ11に積載された最上位の記録シート1に当接してこの記録シートをピックアップする。給送ローラ3と給送従動ローラ4とは記録シートを給送するローラ対である。給送ローラ3はピックアップローラ2によってピックアップされた記録シート1を搬送方向の下流側へ給送するため給送ローラである。給送従動ローラ4は不図示の弾性部材(例えばばね)によって給送ローラ3へ付勢されて圧接し、給送ローラ3とともに記録シート1を挟持して給送する。
図4(a)及び(b)はピックアップローラ2の構成を説明する図である。ピックアップローラ2には、駆動軸19が設けられている。駆動軸19は、後述する給送モータの駆動力をピックアップローラ2に伝達する。記録シート1をピックアップするときに、駆動軸19及びピックアップローラ2は図中矢印A方向に回転する。駆動軸19には突起19aが設けられている。ピックアップローラ2には突起19aが嵌まり込む凹部2cが形成されている。
図4(a)に示すように、突起19aがピックアップローラ2の凹部2cの第1の面2aに当接している場合は、駆動軸19の駆動がピックアップローラ2に伝達され、駆動軸19を駆動するとピックアップローラ2も回転される。一方、図4(b)に示すように、突起19aがピックアップローラ2の凹部2cの第2の面2bに当接している場合は、駆動軸19の駆動がピックアップローラ2に伝達されず、駆動軸19を駆動してもピックアップローラ2は回転されない。突起19aが第1の面2a及び第2の面2bのいずれにも当接せず、第1の面2aと第2の面2bの間にある場合も、駆動軸19を駆動してもピックアップローラ2は回転されない。後述するが、このような機構により、複数の記録シート1を連続的に給送する際に、記録シート1間に一定の間隔を確保することが可能となる。
図1に戻り、搬送機構は、搬送ローラ5と、ピンチローラ6とを含む。これらは記録シート1を挟持搬送するローラ対である。搬送ローラ5は給送ローラ3及び給送従動ローラ4によって給送された記録シート1を記録ヘッド7と対向する位置へ搬送する。ピンチローラ6は不図示の弾性部材(例えばばね)によって搬送ローラ5へ付勢されて圧接し、搬送ローラ5とともに記録シート1を挟持して搬送する。記録の際には、例えば、搬送ローラ5及びピンチローラ6による記録シート1の所定量の搬送と、キャリッジ10の移動及び記録ヘッド7によるインクの吐出と、を交互に繰り返すことで、記録シート1に画像が記録される。
給送ローラ3及び給送従動ローラ4で形成されるニップ部(給送ニップ部と呼ぶ)から、搬送ローラ5及びピンチローラ6で形成されるニップ部(搬送ニップ部と呼ぶ)までの搬送区間には記録シート1の搬送を案内する搬送ガイド15が設けられている。
排出機構は、排出ローラ9と、拍車12及び13とを含む。排出ローラ9は記録ヘッド7によって記録が行われた記録シート1を装置外に排出する。拍車12及び13は記録ヘッド7によって記録が行われた記録シート1の記録面と接触して回転する。下流側にある拍車13は不図示の弾性部材(例えばばね)によって排出ローラ9へ付勢されて圧接している。上流側にある拍車12は、記録ヘッド7よりも下流側に配置されている一方、これに対向する位置に排出ローラ9が配されていない。拍車12は記録シート1の浮き上がりを防止するためのものであり押え拍車とも呼ぶ。
記録装置100は、シート検知センサ16を備える。シート検知センサ16は記録シート1の先端及び後端を検知するためのセンサであり、例えば、光学式センサである。シート検知センサ16は搬送方向において給送ローラ3の下流側に設けられている。シート押えレバー17は、先行する記録シート1(先行記録媒体或いは先行シートとも呼ぶ)の後端部を押えて後続の記録シート1(後続記録媒体或いは後続シートとも呼ぶ)の先端部を重ねるためのレバーである。なお、記録シート1の先端部、後端部は、それぞれ、搬送方向で下流側端部、上流側端部を意味する。シート押えレバー17は回転軸17bの回りに図中反時計回り方向に不図示の弾性部材(例えばバネ)で付勢されている。
次に、図5を参照して、記録装置100の制御ユニット、及び、記録装置100に記録データを送信可能な情報処理装置214を備える記録システムの構成例について説明する。
記録装置100は、MPU201を備える。MPU201は、記録装置100の各構成の動作を制御可能であり、また、データの処理なども行うプロセッサである。MPU201は、後述するように、先行シートの後端部と後続シートの先端部とが重なるように記録シート1の搬送制御を実行可能である。ROM202は、MPU201によって処理されるプログラムやデータを格納するROMである。RAM203は、MPU201によって実行される処理データ及び情報処理装置214から受信した記録データを一時的に記憶するRAMである。なお、ROM202、RAM203に代えて他の記憶デバイスを用いることも可能である。
記録ヘッドドライバ207は、記録ヘッド7を駆動する。キャリッジモータドライバ208は、キャリッジ10を移動させる駆動機構の駆動源であるキャリッジモータ204を駆動する。搬送モータ205は、搬送ローラ5及び排出ローラ9の駆動機構の駆動源である。搬送モータ205は搬送モータドライバ209によって駆動される。
給送モータ206は、ピックアップローラ2及び給送ローラ3の駆動機構の駆動源である。給送モータ206は給送モータドライバ210によって駆動される。
MPU201は、記録ヘッドドライバ207及びキャリッジモータドライバ208を介して記録ヘッド7による記録動作(インクの吐出と記録ヘッド7の移動)を制御する。また、MPU201は、搬送モータドライバ209及び給送モータドライバ210を介して記録シート1の搬送制御を実行する。
情報処理装置214は、例えば、パソコン、携帯端末(例えばスマートフォンやタブレット端末等)であり、記録装置100のホストコンピュータとして機能する。情報処理装置214は、CPU214aと、記憶デバイス214bと、I/F部(インタフェース部)214cとを備える。CPU214aは、記憶デバイス214bに格納されたプログラムを実行する。記憶デバイス214bは、RAM、ROM、ハードディスク等であり、CPU214aが実行するプログラムや、各種のデータを格納する。記憶デバイス214bには、記録装置100を制御するためのプリンタドライバ2141が格納されている。プリンタドライバ2141の実行によって、情報処理装置214は、記録データを生成可能である。情報処理装置214と記録装置100とは、I/F部214c、I/F部213を介して、データの送信及び受信が可能である。
<重ね連送の例>
図1〜図3を参照して重ね連送に関わる搬送制御や、斜行矯正制御について時系列に説明する。情報処理装置214からI/F部213を介して記録データが送信されると、MPU201で処理された後、RAM203に展開される。MPU201が展開されたデータに基づいて記録を開始する。
図1の状態ST1を参照して説明する。最初に、給送モータドライバ210によって給送モータ206が駆動される。これにより、ピックアップローラ2が回転する。この段階では給送モータ206を相対的に低速回転で駆動し、ここでは例示的に7.6inch/secでピックアップローラ2を回転する。
ピックアップローラ2が回転すると、給送トレイ11に積載された最上位の記録シート(先行シート1−A)がピックアップされる。ピックアップローラ2によってピックアップされた先行シート1−Aは、ピックアップローラ2と同方向に回転している給送ローラ3によって搬送される。給送ローラ3も給送モータ206によって駆動される。本実施形態は、ピックアップローラ2及び給送ローラ3を備える構成で説明する。しかしながら、積載部に積載された記録シートを給送する給送ローラのみ備える構成であってもよい。
給送ローラ3の下流側に設けられたシート検知センサ16によって先行シート1−Aの先端が検知されると、給送モータ206を相対的に高速回転で駆動させる。ここでは例示的に、ピックアップローラ2及び給送ローラ3を20inch/secで回転する。
図1の状態ST2を参照して説明する。給送ローラ3を回転し続けることによって先行シート1−Aの先端は、バネの付勢力に抗してシート押えレバー17を回転軸17bの回りに時計回り方向に回転させる。さらに給送ローラ3を回転し続けると、先行シート1−Aの先端は搬送ローラ5とピンチローラ6で形成される搬送ニップ部に突き当たる。このとき搬送ローラ5は停止中である。先行シート1−Aの先端が搬送ニップ部に突き当たった後も給送ローラ3を所定量回転させることによって、先行シート1−Aの先端が搬送ニップ部に突き当たった状態で整列し斜行が矯正される。
図1の状態ST3を参照して説明する。先行シート1−Aの斜行矯正動作が終了すると、搬送モータ205が駆動されることによって搬送ローラ5が回転を開始する。搬送ローラ5は、例えば、15inch/secでシートを搬送する。先行シート1−Aは記録ヘッド7と対向する位置まで頭出しされる。この位置は、記録ヘッド7による記録の開始位置であり、頭出し位置と呼ぶ場合がある。この頭出し後に、記録データに基づいて記録ヘッド7からインクを吐出することによって記録動作が行われる。
なお、頭出し動作は、記録シート1の先端が搬送ニップ部に突き当てられることにより搬送ローラ5の位置に一旦位置決めされ、その後搬送ローラ5の位置を基準として搬送ローラ5の回転量を制御することにより行われる。
本実施形態の記録装置100は、記録ヘッド7がキャリッジ10に搭載されているシリアルタイプの記録装置であり、搬送動作と記録動作とを繰り返すことにより記録シート1に対する記録が行われる。搬送動作は搬送ローラ5によって記録シートを所定量ずつ間欠搬送する動作である。記録動作は搬送ローラ5が停止しているときに記録ヘッド7を搭載したキャリッジ10を移動させながら記録ヘッド7からインクを吐出する動作である。インクの吐出を行いつつ、キャリッジ10を移動することを走査と呼ぶ場合がある。
先行シート1−Aが頭出しされると、給送モータ206を再び低速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は7.6inch/secで回転する。搬送ローラ5によって記録シート1を所定量ずつ間欠搬送しているときに、給送モータ206によって給送ローラ3も間欠駆動される。すなわち搬送ローラ5が回転しているときは給送ローラ3も回転し、搬送ローラ5が停止しているときは給送ローラ3も停止している。搬送ローラ5の回転速度に対して、給送ローラ3の回転速度は遅い。そのため、搬送ローラ5と給送ローラ3の間で記録シート1は張った状態になる。また、給送ローラ3は搬送ローラ5によって搬送される記録シート1によって連れ回りさせられる。
給送モータ206を間欠的に駆動することにより、駆動軸19も回転する。しかし、前述のように、ピックアップローラ2の回転速度は搬送ローラ5の回転速度よりも遅い。そのため、ピックアップローラ2は搬送ローラ5で搬送される記録シート1によって連れ回りさせられる。このため、ピックアップローラ2は駆動軸19に対して先回りした状態になっている。具体的には、駆動軸19の突起19aは第1の面2aから離間し第2の面2bに当接した状態になっている。したがって、先行シート1−Aの後端がピックアップローラ2を通過しても2枚目の記録シート(後続シート1−B)はすぐにピックアップされない。先行シート1−Aが給送ニップ部を抜け、駆動軸19が所定時間駆動されると、突起19aが第1の面2aと当接するようになる。これにより、駆動軸19の回転がピックアップローラ2に伝達されて、ピックアップローラ2が回転を開始する。こうして、後続シート1−Bがピックアップされるまでにタイムラグを生じさせている。
図2の状態ST4を参照して説明する。ピックアップローラ2が回転を開始し、後続シート1−Bをピックアップした状態を示す。シート検知センサ16は、記録シート1の端部をより正確に検知するためには、センサの応答性等の要因により、連続する記録シート1間に所定以上の間隔が必要になる。既に説明したとおり、本実施形態では、駆動軸19とピックアップローラ2との構成によって、後続シート1−Bがピックアップされるまでにタイムラグを生じさせ、この間隔を確保している。
すなわち、シート検知センサ16によって先行シート1−Aの後端を検知した後、後続シート1−Bの先端を検知するまでに所定の時間間隔をもたせるために、先行シート1−Aの後端部と後続シート1−Bの先端部との間を所定距離だけ離す。そのために、ピックアップローラ2の凹部2cは例えば約70度に設定される。
図2の状態ST5を参照して説明する。ピックアップローラ2によってピックアップされた後続シート1−Bは、給送ローラ3によって搬送される。このときに、先行シート1−Aは、記録データに基づいて記録ヘッド7によって記録動作が行われている。シート検知センサ16によって後続シート1−Bの先端が検知されると、給送モータ206を再び高速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は20inch/secで回転する。
図2の状態ST6を参照して説明する。先行シート1−Aの後端部は、図2の状態ST5に示すようにシート押えレバー17によって下方に押し下げられている。記録動作によって先行シート1−Aが下流側に移動する速度に対して、後続シート1−Bを高速に移動させる。これにより先行シート1−Aの後端部の上に後続シート1−Bの先端部が重なった状態を形成することができる(図2の状態ST6)。先行シート1−Aは記録データに基づいて記録動作が行われているため、先行シート1−Aは搬送ローラ5によって間欠搬送される。一方、後続シート1−Bはシート検知センサ16によって先端が検知された後、給送ローラ3を20inch/secで連続的に回転させることによって先行シート1−Aに追いつくことができる。
図3の状態ST7を参照して説明する。先行シート1−Aの後端部の上に後続シート1−Bの先端部が重なった重なり状態を形成した後、後続シート1−Bはその先端が搬送ニップ部の上流側の所定位置(判定位置)で停止するまで給送ローラ3によって搬送されて待機する。
後続シート1−Bの先端の位置は、後続シート1−Bの先端がシート検知センサ16によって検知されてからの給送ローラ3の回転量から算出され、この算出結果に基づいて制御される。このとき、先行シート1−Aは、記録データに基づいて記録ヘッド7によって記録動作が行われている。
図3の状態ST8を参照して説明する。先行シート1−Aの記録動作を行うために搬送ローラ5の停止中に、給送ローラ3を駆動する。これによって後続シート1−Bの先端を搬送ニップ部に突き当てて後続シート1−Bの斜行矯正動作を行う。後続シート1−Bの斜行矯正動作を行う段階は、本実施形態の場合、先行シート1−Aの最終走査の段階である。より具体的には、先行シート1−Aの最終行の記録動作の段階である。
図3の状態ST9を参照して説明する。先行シート1−Aの記録動作が終了すると、搬送ローラ5を所定量回転させる。これにより、先行シート1−Aの上に後続シート1−Bが重なった状態を維持しつつ、後続シート1−Bの頭出しを行うことができる。後続シート1−Bには、記録データに基づいて記録動作が開始される。
後続シート1−Bが頭出しされると、給送モータ206を再び低速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は7.6inch/secで回転する。後続シート1−Bの後にも記録データがある場合は、図2の状態ST4に戻り3枚目のピックアップ動作が行われる。後続シート1−Bが記録動作のために間欠搬送されると、先行シート1−Aも間欠搬送され、やがて先行シート1−Aは排出ローラ9によって記録装置外に排出される。こうして、重ね連送を行いながら、複数の記録シート1について連続的に記録動作を行うことができる。
<突き当て速度の制御>
記録シート1の斜行矯正を行う際、記録シート1の先端が搬送ニップ部に突き当たる音が発生する場合がある。この突き当て音を低減する方法としては、記録シート1の突き当て速度、つまり、斜行矯正時の記録シート1の搬送速度(給送速度)を遅くすることを挙げることができる。
しかし、記録シート1の給送速度は、記録動作のスループットに影響する。特に重ね連送を実行する場合には、先行シート1−Aが搬送ニップ部を通過する前に後続シート1−Bの斜行矯正を行うことになる。この場合、先行シート1−Aの後端部は搬送ニップ部よりも上流側に位置しており、後続シート1−Bの先端部と重なった状態にある。先行シート1−Aの記録動作が終了して排出可能な状態にあったとしても、後続シート1−Bの斜行矯正が終了していなければ搬送ローラ5を停止させておく必要があり、先行シート1−Aを搬送できない。
そこで、本実施形態では、後続シート1−Bの斜行矯正動作の実行時の、先行シート1−Aに対する記録動作に応じて適応的に、後続シート1−Bの斜行矯正における突き当て速度を変更する。本実施形態の場合、後続シート1−Bの斜行矯正動作を実行する時の、先行シート1−Aに対する記録動作に応じて、予め設定された複数種類の速度の中から一の速度を突き当て速度として選択する。後続シート1−Bの斜行矯正動作の為に給送ローラ3の駆動を開始してから、先行シート1−Aに対するインク吐出動作が終了するまでに要する時間(以下、残記録時間とも呼ぶ)が相対的に長い場合、相対的に遅い速度が突き当て速度として選択される。これにより、スループットを維持しつつ、斜行矯正時の動作音を低減することができる。
図6は、後続シート1−Bの搬送速度を示す速度テーブルの例を示している。速度テーブルは、例えば、ROM202またはRAM203に記憶されている。同図の速度テーブルは、No.1〜No.7の7種類の搬送速度が設定されている。本実施形態の場合、搬送速度の中から斜行矯正時の突き当て速度を選択する。各搬送速度には、その搬送速度で斜行矯正動作を行った場合に、斜行矯正動作に要する時間が対応づけられている。本実施形態の場合、後続シート1−Bの斜行矯正動作は、上記のとおり、給送されてきた後続シート1−Bを判定位置に一時停止した後に実行される。斜行矯正動作において、後続シート1−Bの搬送は、加速段階→等速段階→減速段階の順で実行される。搬送速度(突き当て速度)は、等速段階での後続シート1−Bの搬送速度である。斜行矯正動作に要する時間とは、加速段階から減速段階までのトータルの時間である。
No.1〜No.7の7種類の搬送速度のうち、No.7の搬送速度が最も速い速度であり、対応する斜行矯正動作時間が最も短い。番号(No.)が小さくなるにつれて搬送速度が遅くなっている。No.1の搬送速度が最も遅い速度であり、対応する斜行矯正動作時間が最も長い。本実施形態では、No.5の搬送速度を突き当て速度の初期値として、先行シート1−Aに対する残記録時間に応じて他の番号の搬送速度を突き当て速度として選択する。
図7(a)および図7(b)は、斜行矯正動作時のタイミングチャートを例示しており、後続シート1−Bの突き当て速度をNo.5の搬送速度とした場合を仮想した仮想例を示している。図中、時間T1は後続シート1−Bの斜行矯正動作に要する時間を示しており、給送ローラ3の駆動が開始してから終了するまでの時間である。No.5の突き当て速度の場合(給送ローラ3の駆動速度が15inch/secの場合)は0.085秒であり、これを閾値T0と呼ぶ。時間T2は、後続シート1−Bの斜行矯正動作時の先行シート1−Aの残記録時間を示している。すなわち、後続シート1−Bの斜行矯正動作の為に給送ローラ3の駆動を開始してから、先行シート1−Aに対するインクの吐出動作が終了するまでの時間を示している。時間T2は記録データから演算できる。
図7(a)において、先行シート1−Aの最終行へのインク吐出動作を行う為に搬送ローラ5が停止する。同図の例では、時間T1が時間T2よりも長い場合を示している。搬送ローラ5は、時間T1と時間T2のうち、長い時間の間、停止する。図7(a)の例では、斜行矯正動作の終了が、後続シート1−Bの頭出し動作開始の律速になり、時間T1が搬送ローラ5の停止必要時間になる。図6の例では、No.5の速度よりも速い、例えばNo.7の速度である20inch/secで斜行矯正動作を実施すればスループットを速くすることが可能である。しかし、斜行矯正時の動作音を大きくしてしまう為、本実施形態では、No.7の速度は突き当て速度としては設定しない。したがって、実際の記録においても、No.5の搬送速度が突き当て速度として選択されることになる。
図7(b)の例は、時間T1が時間T2よりも短い場合を示している。先行シート1−Aのインク吐出動作の終了が、後続シート1−Bの頭出し動作開始の律速になり、時間T2が搬送ローラ5の停止必要時間になる。図7(b)の例では、No.5の速度よりも遅い速度を選択しても、先行シート1−Aのスループットに影響を与えない。したがって、実際の記録においては、No.5よりも遅い突き当て速度を選択可能である。例えば、時間T2が0.140秒である場合、図6(a)に示した給送ローラ3の駆動テーブル中、No.3の速度を選択して8inch/secの突き当て速度にて後続シート1−Bの斜行矯正動作を実行実行可能である。No.3の斜行矯正動作時間は0.135秒で、0.140秒以内で、最も近い斜行矯正動作時間である。
突き当て速度の選択方法としては、例えば、閾値T0と先行シート1−Aの残記録時間T2とを比較する。残記録時間T2が閾値T0以下であれば、No.5の速度を選択する。残記録時間の方が長ければ、別の速度を選択する。その際、対応する斜行矯正動作時間が残記録時間に最も近い速度を選択することができる。更に、対応する斜行矯正動作時間が残記録時間に最も近く、かつ、残記録時間以内の速度を選択することで先行シート1−Aのスループットに影響を与えずに、斜行矯正時の静粛性を向上できる。
<処理例>
次に、上述した重ね連送を実行するためのMPU201の処理例について説明する。図8は、MPU201が実行する重ね連送処理のフローチャートである。
S1で、I/F部213を介して情報処理装置214から記録開始指示が送信されると記録を開始する。S2で先行シート1−Aの給送動作を開始する。具体的には、給送モータ206を低速駆動する。ピックアップローラ2は7.6inch/secで回転する。ピックアップローラ2によって先行シート1−Aをピックアップし、給送ローラ3によって先行シート1−Aを記録ヘッド7に向けて給送する。
S3で、シート検知センサ16によって先行シート1−Aの先端が検知される。シート検知センサ16によって先行シート1−Aの先端が検知されると、S4で給送モータ206を高速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は20inch/secで回転する。シート検知センサ16によって先行シート1−Aの先端が検知された後の給送ローラ3の回転量を制御することによって、S5で先行シート1−Aの先端を搬送ニップ部に突き当てて先行シート1−Aの斜行矯正動作を行う。この時、1枚目のシートでは、後述する判定位置で一旦シートの搬送を停止する必要がない為、斜行矯正における突き当て速度を20inch/secのまま実施してもよい。しかし、搬送ニップ部に突き当てる速度を初期値である15inch/secより速くすると、斜行矯正時の搬送ニップ部への突き当て音が大きくなる。このため、本実施形態では、搬送ニップ部に突き当てる時は、20inch/secから15inch/secになるように速度を落としている。
S6で記録データに基づいて先行シート1−Aを頭出しする。すなわち、搬送ローラ5の回転量を制御することによって、記録データに基づいた搬送ローラ5の位置を基準とした記録開始位置まで先行シート1−Aを搬送する。S7で給送モータ206を低速駆動に切り替える。S8で先行シート1−Aに対して記録ヘッド7からインクを吐出することによって記録動作を開始する。
具体的には、搬送ローラ5によって先行シート1−Aを間欠搬送する搬送動作と、キャリッジ10を移動させて記録ヘッド7からインクを吐出する記録動作とを繰り返すことによって、先行シート1−Aに対する記録動作を行う。搬送ローラ5によって先行シート1−Aを間欠搬送する動作と同期して、給送モータ206を間欠的に低速駆動する。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は7.6inch/secで間欠的に回転する。
S9で次頁の記録データがあるか判断する。次頁の記録データが無い場合はS30に進む。S30で先行シート1−Aに対する記録動作が完了したら、S31で先行シート1−Aを排出し記録動作を終了する。
次頁の記録データがある場合は、S10で後続シート1−Bの給送動作を開始する。具体的には、ピックアップローラ2によって後続シート1−Bをピックアップし、給送ローラ3によって後続シート1−Bを記録ヘッド7に向けて給送する。ピックアップローラ2は7.6inch/secで回転する。前述のように、駆動軸19の突起19aに対して、ピックアップローラ2の凹部2cが大きく設けられているため、後続シート1−Bは先行シート1−Aの後端と所定の間隔をもった状態で給送される。
S11で、シート検知センサ16によって後続シート1−Bの先端が検知される。シート検知センサ16によって後続シート1−Bの先端が検知されると、S12で給送モータ206を高速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は20inch/secで回転する。シート検知センサ16によって後続シート1−Bの先端が検知された後の給送ローラ3の回転量を制御することによって、S13で後続シート1−Bの先端が搬送ニップ部の所定量手前の所定位置(判定位置)となるように後続シート1−Bを搬送する。先行シート1−Aは記録データに基づいて間欠搬送される。後続シート1−Bは給送モータ206を連続的に高速駆動することによって、先行シート1−Aの後端部の上に後続シート1−Bの先端部が重なる重ね状態が形成される。
S14で所定条件を満たしているか判断する。所定条件とは、重ね連送を実行するか否かを判定する条件である。詳細は後述する。
所定条件を満たしている場合(重ね連送を実行する場合)はS15へ進み、先行シート1−Aの残記録時間T2が閾値T0以下か否かを判定する。残記録時間T2が閾値T0以下である場合はS16へ進み、そうでない場合はS17へ進む。S16では後続シート1−Bの突き当て速度を初期値(図6(a)のNo.5の速度)に設定する。S17では、後続シート1−Bの突き当て速度を残記録時間T2に応じて図6(a)のNo.1〜5の中から選択する。例えば、時間T2が0.140秒である場合は、図6(a)に示した速度のうち、対応する斜行矯正動作時間が0.140秒以内で最も近い0.135秒のNo.3の速度が設定される。
S18では、先行シート1−Aの最終行へのインク吐出動作の為に、搬送ローラ5が停止したか否かの判断をする。停止した場合はS19へ進み、搬送ローラ5が停止していないと判断された場合は、搬送ローラ5が停止するまで待機する。
S19では、S16またはS17で設定した突き当て速度で給送ローラ3を駆動し、先行シート1−Aと後続シート1−Bの重ね状態を維持したまま、後続シート1−Bの斜行矯正動作を行う。S20では、後続シート1−Bの頭出し動作開始の律速が、先行シート1−Aの最終行へのインク吐出動作の終了であるか否かを判断する。S16またはS17で設定した突き当て速度に対応する斜行矯正動作時間T1が残記録動作時間T2以下である場合、つまり、後続シート1−Bの頭出し動作開始の律速が先行シート1−Aの最終行へのインク吐出動作の終了であると判断した場合はS21へ進む。そうでない場合はS22へ進む。
S21では、先行シート1−Aの最終行へのインク吐出動作が終了したか否かを判断する。そして、S21で先行シート1−Aの最終行へのインク吐出動作が終了したと判断されるまで待機し、先行シート1−Aの最終行へのインク吐出動作が終了したと判断されると、ステップS23に進む。
S22では、後続シート1−Bの斜行矯正動作が終了したか否かを判断する。そして、S22で後続シート1−Bの斜行矯正動作が終了したと判断されるまで待機し、後続シート1−Bの斜行矯正動作が終了したと判断されるとS23に進む。
S23では、搬送ローラ5を駆動し、先行シート1−Aと後続シート1−Bの重ね状態を維持したまま、後続シート1−Bの頭出しをする。
S14で所定条件を満たしていない場合は、重ね状態を解消して後続シート1−Bを頭出しする。具体的には、S32で先行シート1−Aの最終行へのインク吐出動作が終了するとS33で搬送ローラ5を駆動して先行シート1−Aの排出動作を行う。この間、給送モータ206は駆動されないため、後続シート1−Bはその先端が搬送ニップ部の所定量手前の判定位置のまま停止している。先行シート1−Aは排出されるため、重ね状態は解消する。
そして、S34で突き当て速度を初期値に設定して給送ローラ3を駆動し、後続シート1−Bの先端を搬送ニップ部に突き当てて、後続シート1−Bの斜行矯正動作を行う。その後、S22に進む。
S24では、給送モータ206を低速駆動に切り替える。そして、S25で後続シート1−Bに対して記録ヘッド7からインクを吐出することによって記録動作を開始する。具体的には、搬送ローラ5によって後続シート1−Bを間欠搬送する搬送動作と、記録ヘッド7を搭載したキャリッジ10を移動させながら、搬送ローラ5が停止している時に、記録ヘッド7からインクを吐出する記録動作(インク吐出動作)とを繰り返す。これにより、後続シート1−Bに対する記録を行う。この時、搬送ローラ5によって後続シート1−Bを間欠搬送する動作と同期して、給送モータ206を間欠的に低速駆動する。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は7.6inch/secで間欠的に回転する。
S26では、次ページの記録データがあるか否かを判断する。次ページの記録データが有る場合はステップS10に戻る。次ページの記録データが無い場合は、S27で後続シート1−Bへのインク吐出動作が完了するとS28で後続シート1−Bの排出動作を行い、S29で記録動作を終了する。
次に、図8のS12、S13で説明した、先行シート1−Aの後端部の上に後続シート1−Bの先端部を重ねる重ね状態を形成する動作について説明する。図9〜図10は、本実施形態における先行シート1−Aに後続シート1−Bを重ねる動作を説明する図である。そして、給送ローラ3と給送ピンチローラ4で形成される給送ニップ部と、搬送ローラ5とピンチローラ6で形成される搬送ニップ部の間の拡大図である。
搬送ローラ5、給送ローラ3により記録シート1が搬送される過程を、3つの状態として順に説明する。後続シート1−Bが先行シート1−Aを追いかける動作を行う第1の状態を図9の状態ST11、状態ST12を参照して説明する。後続シート1−Bを先行シート1−Aに重ねる動作を行う第2の状態を図10の状態ST13、状態ST14を参照して説明する。重ね状態を維持して後続シート1−Bの斜行矯正動作を行うか判定する第3の状態を図10の状態ST15を参照して説明する。
図9の状態ST11では、給送ローラ3を制御して後続シート1−Bを搬送し、シート検知センサ16で後続シート1−Bの先端を検知する。シート検知センサ16から後続シート1−Bを先行シート1−Aの上に重ねることが可能となる位置P1までを第1の区間A1と定義する。第1の区間A1において、後続シート1−Bの先端が先行シート1−Aの後端を追いかける動作を行う。位置P1は、機構の構成により決定されるものである。
第1の状態では、第1の区間A1において、追いかける動作を停止する場合が存在する。図9の状態ST12のように、後続シート1−Bの先端が、位置P1より手前で先行シート1−Aの後端を追い越してしまう場合は、後続シート1−Bを先行シート1−Aに重ねる動作を行わない。
図9の状態ST13において、位置P1から、シート押えレバー17が設けられた位置P2までを第2の区間A2と定義する。第2の区間A2において、後続シート1−Bを先行シート1−Aに重ねる動作を行う。
第2の状態では、第2の区間A2において、後続シートを先行シートに重ねる動作を停止する場合が存在する。図10の状態ST14のように、第2の区間A2内で後続シート1−Bの先端が先行シート1−Aの後端に追いつくことができない場合は、後続シート1−Bに先行シート1−Aを重ねる動作ができない。
図10の状態ST15において、前述のP2からP3までを第3の区間A3と定義する。P3は図7のS13で後続シート1−Bが停止したときの先端の位置である。後続シート1−Bを先行シート1−Aに重ねた状態で、後続シート1−Bの先端がP3に到達するまで搬送する。第3の区間A3において、重ね状態を維持したまま後続シート1−Bを搬送ニップ部に突き当てて頭出しをするか否かを判断する。すなわち、重ね連送を実行して斜行矯正動作を行い、頭出しをするか、重ね連送は実行せずに状態を解除して斜行矯正動作を行い、頭出しをするかの判定を行う。
図11は、図8のS14で説明した所定条件を満たしているかの判断に関する処理例を示すフローチャートである。
第一の斜行矯正動作を行うか、第二の斜行矯正動作を行うかの判定動作について説明する。第一の斜行矯正動作は、重ね連送を実行すると判定した場合の斜行矯正動作であり、先行シート1−Aと後続シート1−Bの重ね状態を維持したまま後続シート1−Bの先端を搬送ニップ部に突き当てて斜行矯正を行う。第二の斜行矯正動作は、重ね連送を実行しないと判定した場合の斜行矯正動作であり、先行シート1−Aと後続シート1−Bの重ね状態を解除してから後続シート1−Bの先端を搬送ニップ部に突き当てて斜行矯正を行う。
S101で開始する。S102において、後続シート1−Bの先端が判定位置(図10の状態ST5のP3)まで到達しているかを判定する。判定位置は例えば搬送ニップ部の手前8mmに位置を想定している。
ここで到達していない場合(S102:NO)、所定量の搬送で後続シート1−Bの先端が搬送ニップ部に突き当たるか不明である。このため、重ね連送を実行しないと判定し、後続シートのみの斜行矯正動作に決定し(S103)、判定動作は終了する(S104)。この場合、先行シート1−Aの後端が搬送ニップ部からシート搬送方向下流側に離れた位置(例えば5mmの位置)になるまで先行シート1−Aのみを搬送して停止させる。続いて、後続シート1−Bのみを搬送ニップ部に突き当てて斜行矯正動作を行う。その後、後続シート1−Bの頭出しの搬送と、それと同量の先行シート1−Aの搬送とを同時に行う。
一方、後続シート1−Bの先端が判定位置P3まで到達している場合(S102:YES)、先行シート1−Aの後端が搬送ニップ部を通過したかの判定を行う(S105)。ここで通過したと判定された場合(S105:YES)、先行シートと後続シートは重なっていない。このため、後続シート1−Bのみの斜行矯正動作に決定する(S106)。すなわち、後続シート1−Bのみを搬送ニップ部に突き当てて斜行矯正動作を行い、その後、後続シート1−Bのみの状態で頭出しを行う。
一方、先行シート1−Aの後端が搬送ニップ部を通過していないと判定された場合(S105:NO)、先行シート1−Aの後端部と後続シート1−Bの先端部の重なり量が閾値より小さいかの判定を行う(S107)。閾値は例えば9mmとすることができる。
先行シート1−Aの後端の位置は、先行シート1−Aの間欠搬送動作にともなって更新していく。また、後続シート1−Bの先端の位置は、前述の判定位置にある。すなわち、重なり量は、先行シート1−Aに対する間欠搬送動作にともなって減少していく。よって本実施形態では、S107の判定は、先行シート1−Aに対する最終行の記録時の重なり量が閾値よりも小さいか否かを判定する。
重なり量が閾値より小さいと判定された場合(S107:YES)、重ね連送を実行しないと判定し、重ね状態を解除して後続シート1−Bのみの斜行矯正動作に決定する(S108)。すなわち、先行シート1−Aに対する記録動作が終了した後に、後続シート1−Bを先行シート1−Aとともに搬送しない。具体的には、搬送モータ205によって搬送ローラ5を駆動して先行シート1−Aを搬送ニップ部を通過する位置まで搬送して停止する。給送ローラ3は駆動しない。したがって、重ね状態は解除される。さらに、後続シート1−Bのみを搬送ニップ部に突き当てて斜行矯正動作を行う。その後、後続シート1−Bの頭出しの搬送と、それと同量の先行シート1−Aの搬送とを同時に行う。
重なり量が上記の閾値以上と判定された場合(S107:NO)、後続シート1−Bに対して記録ヘッド7が記録を開始するときの後続シート1−Bの位置に基づいて重ね連送を実行するか否かを判定する。ここでは、例示的に押え拍車12に対する後続シート1−Bの位置を基準とする。すなわち、後続シート1−Bを頭出ししたとき(後続シート1−Bに対して記録ヘッド7が記録を開始するとき)に後続シート1−Bが押え拍車12まで到達するかの判定を行う(S109)。なお、後続シート1−Bの位置の算出方法については図12、図13を参照して後述する。
後続シート1−Bが押え拍車12まで到達しないと判定された場合(S109:NO)、重ね連送は実行しないと判定し、重ね状態を解除して後続シートのみの斜行矯正動作に決定する(S110)。後続シート1−Bが押え拍車12まで到達していない場合に、後続シート1−Bの浮き上がりが生じ得ることを考慮して、重ね連送を実行しないことにしたものである。この結果、先行シート1−Aに対する記録動作が終了した後に、後続シート1−Bを先行シート1−Aとともに搬送しない。具体的には、搬送モータ205によって搬送ローラ5を駆動して先行シート1−Aの後端が搬送ニップ部からシート搬送方向下流側の位置(例示的に5mmの位置)になるまで搬送する。しかしながら、給送ローラ3は駆動しない。したがって、重ね状態は解除される。さらに、後続シート1−Bのみを搬送ニップ部に突き当てて斜行矯正動作を行う。その後、後続シート1−Bの頭出しの搬送と、それと同量の先行シート1−Aの搬送とを同時に行う。
後続シート1−Bが押え拍車12まで到達すると判定された場合(S109:YES)、先行シート1−Aの最終行と当該最終行の前行との間に隙間があるかの判定を行う(S111)。隙間がないと判定された場合(S111:NO)、重ね状態を解除して後続シート1−Bのみの斜行矯正動作に決定する(S112)。後続シート1−Bの斜行矯正動作が先行シート1−Aの記録動作に影響する可能性が無いわけではない。隙間がない場合は、その影響が目立つ可能性があるため、重ね状態を解除して後続シート1−Bのみの斜行矯正動作を行うようにしたものである。
隙間があると判定された場合(S111:YES)、重ね状態を維持したまま後続シート1−Bの斜行矯正動作を行い(S113)、その後頭出しをする。すなわち、先行シート1−Aの最終行の画像形成動作を開始した後に、後続シート1−Bを先行シート1−Aと重なった状態のまま搬送ニップ部に突き当てる。最終行の画像形成動作が終了すると、搬送モータ205と同時に給送モータ206を駆動することによって搬送ローラ5及び給送ローラ3を回転させ、後続シート1−Bを先行シート1−Aと重なった状態のまま頭出しをする。このようにして、先行シート1−Aと後続シート1−Bの重ね状態を維持するか解除するかの判定動作を行う。
次に、図12、図13を参照して後続シート1−Bの位置の算出例について説明する。ここでは、図12に示すように、後続シート1−Bに対して記録ヘッド7が記録を開始するときの、搬送ニップ部から後続シート1−Bの先端までの長さQを算出する場合を例示する。長さQは、後続シート1−Bの先端の位置を規定する。搬送ニップ部から押え拍車12までの距離は設計上既知であることから、この距離と長さQとを比較することで、後続シート1−Bが押え拍車12に到達しているか否かを判定することができる。
図13は長さQを算出するための処理例を示すフローチャートである。S201で開始する。S202で、後続シート1−Bのシートサイズに対応した記録可能領域の情報を読み込む。記録可能領域の情報は例えばROM202に格納しておくことができる。記録可能領域の情報から、最先端で記録可能な位置、すなわち上端マージンが特定される。長さQをこの上端マージンで仮設定する(S203)。
次に、後続シート1−Bに記録する最初の記録データを読み込む(S204)。ここで言う最初の記録データとは、インクの吐出を要する最初の記録データを意味する。つまり、空欄は含まない。これにより、最初の記録データがシート先端からどの位置になるかが特定される。換言すると、非記録領域が特定される。そこで、後続シート1−Bの先端から最初の記録データまでの距離が、先に仮設定した長さQより大きいか否かの判定を行う(S205)。大きい場合はS206へ進み、大きくない場合はS207へ進む。S206では、長さQを、後続シート1−Bの先端から最初の記録データまでの距離に更新する。
次に最初のキャリッジ移動命令を作成する(S207)。キャリッジ移動命令の作成により、最初の記録データの記録に使用するノズルが決定する。そこで、S208では、決定したノズルの位置と後続シート1−Bの記録開始位置とが合致するように、必要に応じて長さQを更新し、長さQを確定させる(S208)。長さQの確定値は例えばRAM203に保存して、処理を終了する(S209)。
なお、ここで示した後続シートの頭出し後の先端位置を算出する工程は、図8に示す重ね連送動作のフローチャートのS9で、次ページの記録データがあることが判明した直後に開始することができる。
以上をまとめると、本実施形態によれば、突き当て速度を初期値とした後続シート1−Bの斜行矯正動作の終了が、先行シート1−Aの最終行へのインク吐出動作の終了より早くなる場合は、次のようになる。すなわち、先行シート1−Aの最終行へのインク吐出動作の終了より早く終了する範囲内で、最も遅く後続シート1−Bの斜行矯正動作が終了する突き当て速度に変更可能である。この為、スループットを低下させることなく、後続シート1−Bの斜行矯正動作時の、後続シート1−Bの先端部が搬送ニップ部に突き当たる時の音や、給送ローラ3の駆動音を低減することが可能となる。
なお、本実施形態では、重ね連送の際、後続シート1−Bが先行シート1−Aに対して記録ヘッド7側に位置するようにこれらを重ねる場合を想定したが逆であってもよい。つまり、先行シート1−Aが後続シート1−Bに対して記録ヘッド7側に位置するようにこれらを重ねてもよい。
また、本実施形態では、閾値T0と残記録時間T2とを比較した結果から、後続シートの斜行矯正時の突き当て速度を決定したが他の方法も採用可能である。例えば、後続シート1−Bの斜行矯正動作の予定終了時間と、斜行矯正動作時の、先行シート1−Aに対するインク吐出動作終了予定時間を比較した結果から、後続シートの斜行矯正時の突き当て速度を決定しても同様の効果を得ることができる。
<第二実施形態>
第一実施形態では、突き当て速度として複数種類の速度を予め登録し、選択可能としたが、残記録時間T2に基づいて、突き当て速度をその都度演算して設定してもよい。
図14は、斜行矯正動作を実施する時の給送ローラ3の駆動時間と駆動速度の関係を示している。上記のとおり、斜行矯正動作において、後続シート1−Bの搬送は、加速段階→等速段階→減速段階の順で実行される。図14において、aは加速時間、bは減速時間、T3は斜行矯正動作時間を示している。時間T3は残記録時間T2以下に設定される。給送ローラ3の加速度、減速度は予め定めた固定値とし、これらの加速度、減速度から加速時間a、減速時間bを演算することができる。
Lを斜行矯正動作に必要な後続シート1−Bの搬送距離とおくと、T3時間以内に斜行矯正動作を終了させる為に必要な給送ローラ3の駆動速度(突き当て速度)Vは、
V≧(2×L/((2×T3)−(a+b)))÷25.4・・・(式1)
と演算することができる。
一例として、a=0.04秒、b=0.015秒、L=22mmに設定する。例えば、T3が0.085秒であった場合は、式1に前記それぞれの値を代入すると、V≧15.06(inch/sec)となる。
駆動速度の調整量は、使用するモータやドライバ等に依存する。給送ローラ3の駆動速度が、例えば、0.1inch/sec刻みの値で設定可能な場合、V≧15.06(inch/sec)の条件を満たす突き当て速度は、15.1inch/secに設定することができる。この場合、斜行矯正動作の駆動時間は、約0.08486秒である。
給送ローラ3の駆動速度に上限を設けた場合、突き当て速度はこの上限値に設定される場合がある。例えば、上限を20inch/secとした場合、例えばT3が0.05秒であった場合、V≧38.50(inch/sec)になる。しかし、この場合も、後続シート1−Bの斜行矯正動作時の給送ローラ3の駆動速度は20inch/secになる。
(他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。