JP6812032B2 - 羅漢果抽出物 - Google Patents

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Description

本発明は、羅漢果抽出物に関する。より詳細には、本発明は、水不溶性成分の量が抑制された羅漢果抽出物に関する。
羅漢果(学名:Siraitia Grosvenorii(Swingle)C.Jeffrey ex A.M.Lu & Zhi Y.Zhang(Momordica grosvenorii Swingle))は、中国南部の広西チワン族自治区が原産のウリ科の多年生薬用植物である。羅漢果は、昼夜の温度差が大きく、高湿度、多霧、肥沃な土壌、腐食に富み、十分な水が得られると同時に排水に優れ、通気性が高く、病害虫の発生が低いことが特長の限られた地域のみで生育する(非特許文献1)。
羅漢果に熱を加えて乾燥させた果実は、甘みと黒糖の様な香りを楽しむ嗜好品として利用されている。乾燥果実を煎じた液は、咳止め、熱冷まし、炎症の緩和などの効能があることも知られており、さらに、妊娠期間中や産後の体力が衰えた時にも利用でき、滋養強壮に優れている(非特許文献2)。近年では創傷の治癒を促進する作用があることも解明されている(特許文献1)。
羅漢果の果実からは、きわめて強い甘味と深いコクのある独特の風味を呈する羅漢果抽出物を得ることができる。この羅漢果抽出物の甘味の主成分は果糖とモグロシド類と呼ばれるトリテルペン配糖体群である(非特許文献3)。モグロシド類は、非糖質系でありながら甘味を有し、その甘味は主にモグロシドVという化合物に由来する。羅漢果抽出物には、モグロシド類の他に、糖類、糖質、タンパク質、アミノ酸、有機酸、食物繊維、ミネラル類などの成分が含まれており、色調は黄色〜茶褐色であり、液性は不透明で濁っている。モグロシドVは、ショ糖よりも300倍以上甘く、高甘味度甘味料の中でも優れた甘味質を示すことが知られている(非特許文献4)。
特開2009−057336号公報
羅漢果栽培与化学研究(2010) 図解 漢方医薬大辞典4巻(1982) 薬学雑誌−103(11)−1151−1154(1983) 日本食品科学工学雑誌、53−10(2006)
羅漢果抽出物は、このように非常に有用性が高い一方、物性、味質、価格について、すべてを備える満足な物を得ることが非常に困難である。特に、精製工程を繰り返すことで、例えば羅漢果抽出物中の主甘味成分であるモグロシドVの量を高めることは可能であるが、その一方で、複数の精製の段階で、タンパク質やミネラルなどの有用成分が失われたり、味のバランスが崩れたりする可能性もある。
本発明は、物性にも味質にも優れた羅漢果抽出物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、羅漢果抽出物中に生じ得る水不溶性成分の量を抑制することで、主甘味成分であるモグロシドVと有用成分を保持しながらも、これまで高度に精製処理を行った羅漢果抽出物にしかなかった清澄な液性等の優れた性質を有する羅漢果抽出物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記に掲げる羅漢果抽出物を提供する。
項1.
羅漢果(Siraitia grosvenorii)抽出物であって、
(1)モグロシドVを0.01質量%〜70質量%;及び
(2)水不溶性成分を5質量%以下を含有し、
さらに、不溶ポリフェノール含有量/総ポリフェノール含有量が、1/2以下である、羅漢果抽出物。
項2.
10質量%水溶液における波長660nmの吸光度が、0.3以下である、項1記載の羅漢果抽出物。
項3.
総ポリフェノール含有量が、0.1質量%〜20質量%である、項1又は2のいずれか1項に記載の羅漢果抽出物。
項4.
不溶ポリフェノール含有量が、5質量%以下である、項1〜3のいずれか1項に記載の羅漢果抽出物。
項5.
総タンパク質含有量が、5質量%〜90質量%である、項1〜4のいずれか1項に記載の羅漢果抽出物。
項6.
不溶タンパク質含有量が、3質量%以下である、項1〜5のいずれか1項に記載の羅漢果抽出物。
項7
項1〜6のいずれか1項記載の羅漢果抽出物を含有する飲食品組成物。
項8.
項1〜6のいずれか1項記載の羅漢果抽出物を含有する医薬組成物。
項9.
項1〜6のいずれか1項記載の羅漢果抽出物を含有する化粧料組成物又は口腔ケア製剤。
項10.
羅漢果の抽出物であって、
羅漢果を溶媒処理することで、粗抽出物を得る工程;
該抽出物を溶媒処理開始から120分以内に40℃以下に冷却する工程;及び
40℃以下で固液分離する工程
を含む方法により得られる、羅漢果抽出物。
項11.
(1)羅漢果を溶媒処理することで、粗抽出物を得る工程;
(2)該粗抽出物を、溶媒処理開始から120分以内に40℃以下に調整する工程;及び
(3)40℃以下の温度で遠心分離する工程
を含む、羅漢果抽出物の製造方法。
本発明により、水不溶性成分の量が抑制された羅漢果抽出物を提供することができる。
図1は、実施例及び比較例の羅漢果抽出物それぞれの乾燥質量の1質量%を含む水溶液の状態を示す図である。 図2は、実施例及び比較例の羅漢果抽出物の製造時間を模式的に示して比較した図である。
本明細書において、含有量の単位「質量%」は、「g/100g」と同義である。
本発明の羅漢果抽出物は、
羅漢果(Siraitia grosvenorii)抽出物であって、
(1)モグロシドVを0.01質量%〜70質量%;及び
(2)水不溶性成分を5質量%以下含有し、
さらに、不溶ポリフェノール含有量/総ポリフェノール含有量が、1/2以下である。
[羅漢果抽出物]
羅漢果(Monk Fruit)は、ウリ科植物であり、学名は、Siraitia grosvenoriiである。トリテルペン配糖体という甘味成分を含むことが特徴である。羅漢果が商品作物として幅広く認知されるようになると、急速に需要が増加していき、それに伴い、効率性の観点から栽培の場所は、山地から平地へと大きく変化している。羅漢果は基本的に年に1度収穫できる作物である。4月に苗を植えて10月から収穫ができる。アジア、北米などの栽培地において様々な品種が存在するが、本発明においては、いずれの栽培地のいずれの品種も利用することができる。
「羅漢果抽出物(Monk Fruit Extract)」とは、羅漢果の抽出物の総称であり、液体、半固体、固体などの形態がある。好ましくは、粉末状などの固体である。溶媒以外の成分が100%羅漢果由来であるものを指す。抽出する際の溶媒としては水、メタノール、エタノール、二酸化炭素などが例示され、特に制限されない。また、「羅漢果抽出物」の狭義の意味の位置づけとして、「ラカンカ抽出物(Luohanguo Extract)」という、日本国の食品添加物公定書に記載の規格を満たした羅漢果抽出物がある。本発明の羅漢果抽出物は、このような規定を満たした羅漢果抽出物を含むが、これには限定されない。
((A)モグロシドV)
本発明の羅漢果抽出物に含まれるモグロシド類としては、モグロシドV、モグロシドIV、11−オキソーモグロシドV、シアメノシドIがあり、その他に蛋白質が含まれる。
モグロシドVは、下記化学式で示される化合物であり、羅漢果抽出物に含まれる成分の中でも特に優れた甘味質を示す物質である。
このような性質により、高甘味度甘味料の成分として使用されることもある。
本発明の羅漢果抽出物において、抽出物全量に対する(A)成分の含有量は、羅漢果からの抽出方法によって、決まり得るが、精製の方法により適宜設定され得る。(A)成分の含有量は、組成物全量に対して、0.01質量%〜70質量%であり、好ましくは、0.5質量%〜66質量%であり、さらに好ましくは、0.1質量%〜60質量%である。
なお、本発明の羅漢果抽出物において、抽出物全量に対するモグロシド類の含有量は、羅漢果からの抽出方法によって、決まり得るが、精製の方法により適宜設定され得る。モグロシド類の含有量は、組成物全量に対して、0.01質量%〜88質量%であり、好ましくは、0.5質量%〜83質量%であり、さらに好ましくは、0.1〜75質量%である。
(モグロシドV測定法)
本発明の羅漢果抽出物中に含まれるモグロシドVの量は、以下に示す条件で高速液体クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
((B)水不溶性成分)
本発明の羅漢果抽出物に含まれる水不溶性成分は、以下のようにして求めることができる値である。羅漢果抽出物を、あらかじめ、105℃で乾燥させて恒量にし、乾燥重量を求めておき、乾燥重量として1g分を秤量する(量り取り質量値T)。これを、15mLの遠沈管(BioLite 15mL Conical Centrifuge Tubes;サーモフィッシャーサイエンス社製)(空質量値b)に入れて、蒸留水(水温20〜25℃)9gを追加する。ボルテックスミキサーで、粉体が水溶液全体に均一化するまで懸濁し、静置後、4,000rpmで5分間遠心分離(卓上遠心分離機H−36α;株式会社コクサン製)を行い、強制的に不溶物を沈降させる。その後、上清のみを取り除き、新たに蒸留水9gを追加してピペッティングによって懸濁する。同様に遠心分離を行い、上清を取り除き、このときに得られた沈殿物のみを不溶物として−20℃で12〜24時間凍結(冷凍庫SCR−SK231;サンヨー株式会社製)後に凍結乾燥(凍結真空乾燥機VD−800R;株式会社タイテック製)後に秤量(凍結乾燥後の遠沈管ごとの質量値c)する。本試験における質量測定については、上皿天秤(ML104T/00;メトラー・トレド社製)を使用して、小数点以下4ケタまで記録する。各記録した質量値を式1に示した計算式を用いて不溶物の割合を求める。同様の操作を3回行い、平均値を求めることで、不溶性成分の割合とする。
不溶性成分の割合(%)=(c−b)/T×100(式1)
本発明の羅漢果抽出物において、組成物全量に対する(B)水不溶性成分の総含有量は、物性及び味質改善効果の観点から、5質量%以下であり、好ましくは、3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、さらにより好ましくは、0.5質量%以下、特に好ましくは、ゼロあるいは検知できない量である。但し、下限値が、0.01質量%程度であってもよい。
本発明の羅漢果抽出物において、モグロシドVに対する水不溶性成分の含有量の比率は特に限定されない。通常、ある組成物中のモグロシドVの含有量は、羅漢果抽出物の精製度に応じて上昇していき、モグロシドVの含有量が低い組成物は、精製度合が低いことを意味し、水不溶性成分が多く含まれる傾向にある。従って、これまでの羅漢果抽出物を含む組成物では、モグロシドVの量が増加するにつれて、水不溶性成分が低くなる傾向が見られる。しかしながら、本発明においては、水不溶性成分が組成物全体の0.0.1質量%〜20質量%程度の場合にも、水不溶性成分の量は、一定程度以下に抑制されている。
(不溶ポリフェノール含有量/総ポリフェノール含有量)
本発明の羅漢果抽出物における不溶ポリフェノール含有量/総ポリフェノール含有量の割合は、羅漢果抽出物全体に含まれるポリフェノール量と、同量の羅漢果抽出物中の不溶性成分中に含まれるポリフェノール量の比を求めることで算出する。それぞれのポリフェノール量は、以下のようにして求めることができる値である。すなわち、FOLIN−DENIS REAGENTを調製する。蒸留水188.0mLにタングステン酸ナトリウム2水和物27.73gとリンモリブデン酸5gと85%リン酸12.5mLを加える。この混合溶液をドラフトチャンバー内でリービッヒ冷却管を用いて還流操作を2時間行う。還流操作後に放冷し、液温が室温付近になった後に1000mL用メスフラスコに移して、標線まで蒸留水でフィルアップする。この溶液(FOLIN−DENIS REAGENT)を遮光容器に小分け充填し、使用まで冷暗所で保管する。別に羅漢果抽出物を0.1g秤量し、1mLの水で溶解させる。2mLマイクロチューブにFOLIM−DENIS REAGENT 0.5mLと希釈した羅漢果抽出物0.5mL加えて、3分後に10w/v%炭酸ナトリウム水溶液を加える。この混合液を60分後に遠心分離する(14,000G、5分間、室温)。遠心後のサンプルの上清に対して760nmの吸光度を測定する。ブランク溶液には、蒸留水を用い、吸光度はランベルト・ベールの法則に従う0.100〜1.000の範囲となるように各羅漢果抽出物を調整して測定する。同様にタンニン酸を標準物質として検量線(R2≧0.999)を作成し、0.1mg/mLのタンニン酸水溶液を調製し、適宜希釈する。このようにして、検量線から得られるサンプル中のポリフェノール濃度を用いて、総ポリフェノール含有量及び不溶ポリフェノール含有量を求める。同様の操作を3回行い、平均値を求めた上で、平均値同士の含有量比を、不溶ポリフェノール含有量/総ポリフェノール含有量とする。なお、総ポリフェノール含有量は、羅漢果抽出物を試料として、ポリフェノール量を測定し、不溶ポリフェノール含有量は、水不溶性成分中のポリフェノールを測定して得られる値である。
本発明の羅漢果抽出物において、総ポリフェノール含有量は、好ましくは、0.1質量%〜20質量%、より好ましくは、0.3質量%〜15質量%、さらにより好ましくは、0.5質量%〜10質量%、最も好ましくは、0.7質量%〜8質量%である。
本発明の羅漢果抽出物において、不溶ポリフェノール含有量は、好ましくは、0.001質量%〜5質量%、より好ましくは、0.002質量%〜2質量%、さらにより好ましくは、0.00.3質量%〜15質量%、最も好ましくは、0.004質量%〜1.2質量%である。
本発明の羅漢果抽出物において、不溶ポリフェノール含有量/総ポリフェノール含有量は、1/2以下、すなわち、0.5以下である。不溶ポリフェノール含有量/総ポリフェノール含有量は、好ましくは0.3以下、より好ましくは、0.2以下、さらに好ましくは0.1以下、さらにより好ましくは0.05以下である。
(不溶性タンパク質含有量/総タンパク質含有量)
本発明の羅漢果抽出物における不溶タンパク質含有量/総タンパク質含有量の割合は、以下のようにして求めることができる値である。すなわち、各羅漢果抽出物を0.1g秤量し、15mLの遠沈管に入れて、0.9%塩化ナトリウム水溶液を0.9g追加し、ボルテックスミキサーで、粉体が水溶液全体に均一化するまで懸濁する。この溶解液を0.1g秤量し、0.9%塩化ナトリウム水溶液を9.9g追加する(総タンパク質含有量)。
各羅漢果抽出物を0.1g秤量し、15mLの遠沈管に入れて、0.9%塩化ナトリウム水溶液を0.9g追加し、ボルテックスミキサーで、粉体が水溶液全体に均一化するまで懸濁する。静置後、4,000rpmで5分間遠心分離を行い、強制的に不溶解物を沈降させる。その後、上清のみを慎重を取り除いて、沈殿物に0.9%塩化ナトリウム水溶液1.0gに懸濁溶解させる(不溶性タンパク質)。
これらをBCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher Science社)を用いて行った。Solusion AとSolusion Bとを50:1の割合で混合して、Working reagentを調整する。50マイクロリットルのサンプルと1ミリリットルのWorking reagentを混合する。37℃で30分間加温し、その後室温に戻るまで静置させ、562nmの波長における吸光度を測定した。同時に牛血清アルブミンを標準物質として検量線(R2≧0.999)を作成する。なおサンプルの濃度は、検量線の範囲に収まるように適宜調整する。
検量線から得られたサンプル中のタンパク質濃度を用いて不溶物中の質量を求めて羅漢果抽出物中の含有量を算出する。同様の操作を3回行い、平均値を求める。
本発明の羅漢果抽出物において、総タンパク質含有量は、好ましくは、5質量%〜90質量%、より好ましくは、5質量%〜80質量%、さらにより好ましくは、5質量%〜70質量%、最も好ましくは、5質量%〜60質量%である。
本発明の羅漢果抽出物において、不溶性タンパク質含有量は、好ましくは、0.01質量%〜3質量%、より好ましくは、0.01質量%〜1質量%、さらにより好ましくは、0.01質量%〜0.5質量%、最も好ましくは、0.01質量%〜0.1質量%である。本発明の羅漢果抽出物において、不溶性タンパク質は実質的に存在しないことも好ましい。
不溶性タンパク質含有量/総タンパク質含有量の比率は、限定されないが、好ましくは、0.002以下、より好ましくは、0.001以下である。
(水溶液の吸光度)
本発明の羅漢果抽出物は、水溶液に調整した場合にも濁りが抑制された、清澄な液となる。本発明の羅漢果抽出物の清澄度は、以下のようにして求めることができる値である。すなわち、各羅漢果抽出物を、あらかじめ、105℃で乾燥させて恒量にし、乾燥重量を求めておき、乾燥重量として1g分を秤量する。これを、15mLの遠沈管に入れて、蒸留水(水温20〜25℃)9gを追加する。ボルテックスミキサーで、粉体が水溶液全体に均一化するまで混合し、この混合操作は1分で完了させる。サンプル調整後は、直ちに測定を行う。測定は、液をディスポセル(光路長10mm、光路幅10mm)に3mL充填し、紫外可視分光光度計(UV2450;島津製作所製)を用いて660nmにおける吸光度を測定する。ブランク溶液には、蒸留水を用いる。吸光度はランベルト・ベールの法則に従う0.100〜1.000の範囲となるように各羅漢果抽出物を調整して測定する。得られる吸光度の値は、式2に示した計算式を用いてサンプルの量り取り量を考慮し、羅漢果抽出物10質量%における吸光度の値に補正する。同様の操作を3回行い、平均値を求める。
サンプルの吸光度 Aab
ブランクの吸光度 Bab
量り取り量(g) M
吸光度=(Aab−Bab)×(1/M) (式2)
本発明の羅漢果抽出物において、このようにして求めることができる、10質量%水溶液の波長660nmの吸光度は、好ましくは、0.3以下であり、より好ましくは、0.25以下であり、さらにより好ましくは、0.21以下、最も好ましくは0.2以下である。
本発明の羅漢果抽出物はまた、10質量%水溶液に調整した場合に、目視で清澄な溶液であることが好ましい。清澄な溶液とは、水溶液中において羅漢果抽出物に由来する浮遊物、沈殿物、付着物などの不溶物が目視で確認できない状態である。目視において水溶液の色調の濃淡によって清澄性は影響されないことが好ましい。
(羅漢果抽出物の形態)
本発明の羅漢果抽出物の形態は、液状、半固体、固体のいずれであってもよい。固体である場合には、粉末又は顆粒の形態であり得る。
[羅漢果抽出物の製造方法]
本発明の羅漢果抽出物の製造方法は特に制限されず、羅漢果の溶媒によって抽出した液を長時間に亘り、高温環境に暴露しない方法であれば良い。高温環境への暴露によって、羅漢果抽出物中に水不溶性成分が経時的に形成される。従って、本発明の羅漢果抽出物の製造方法は、まず、抽出処理の段階で、必要以上に加熱をせずに、抽出後に効率的に抽出液の液温を低下させ、不溶物の形成を防ぐことを特徴とする。
本発明の好ましい実施態様では、羅漢果の果実を収穫後に乾燥することなく、羅漢果の抽出工程を行う。乾燥処理を施されていない羅漢果の果実を原料とすることにより、良好な甘味質を有する羅漢果抽出物を得ることができる。本発明に用いられる羅漢果の果実の水分含量は、代表的には約30%、好ましくは約50%以上、より好ましくは約70%以上である。1つの好ましい実施態様では、羅漢果の果実の水分含量は、約70%〜80%である。完熟した羅漢果の果実を原料とすることが好ましい。当業者は、羅漢果が完熟していることを、果実の色合い、果実の形状などから経験的に判断し得る。
羅漢果の果実を洗浄し、粉砕した後、水単独、又はエタノール、メタノールなどの低級アルコールを含む溶媒で抽出処理を行う。エタノールやメタノールなどの低級アルコールを用いる場合には、その濃度は、0.01質量%〜10質量%程度であり得る。すなわち、水と低級アルコールとの混合溶媒であり得る。抽出の効率向上のために、溶媒の温度を上げて羅漢果抽出物を抽出する方法が好ましく使用される。例えば、熱水を用いた抽出などが代表的に例示されるが、これに限定はされない。羅漢果果実は、抽出液(エキス)と果皮や種子などからなる羅漢果残渣に分けられる。
このようにして得られた抽出液について、濾過、カラム吸収、カラム分離、回収、濃縮、乾燥などの工程を行なうことにより、羅漢果抽出物が製造され得る。溶媒による抽出が、熱水あるいは温度を高めた低級アルコール含有水抽出処理である場合、処理温度と時間を過度に熱しない範囲に調整し、抽出処理後、素早く温度を下げることで水不溶性成分の形成が抑制される。
ここで、熱水処理又は溶媒処理の温度は、限定はされない。例えば、75〜100℃の温度の水又は水以外の溶媒で、10〜70分程度、羅漢果の果実と溶媒の質量比は、1:3〜1:10の割合であることが好ましい。
「抽出後の温度を素早く下げる」とは、抽出開始から、好ましくは120分以内、より好ましくは80分以内、さらに好ましくは70分以内、最も好ましくは65分以内に、40℃以下に保持することをいう。
抽出後の液温を素早く下げる手段は、特に限定はされないが、例えば、羅漢果の熱水抽出液を、送液配管を利用した液温コントロールシステムに供することができる。これにより、処理後の液を速やかに40℃以下に低下させることも可能である。すなわち、羅漢果を熱水で抽出して得られた液を、ストックタンクへと供給する間の送液配管を用いて液温を40℃以下に保持し得る。
このような条件であれば、果実の洗浄、溶媒抽出、ろ過及び/又は遠心分離、任意に、濃縮、カラム精製、スプレードライ、加熱殺菌などの工程を連続で行っても良い。より品質を高めるために、上記の工程に追加して、向流抽出、膜ろ過、液相分配、二層分離、脱色精製、遠心分離、再結晶、活性炭処理、超臨界抽出、超臨界精製などの製造工程を組み合わせることができるが、羅漢果の甘味成分であるモグロシドVの含有量は最大でも70質量%程度に調整する。
本発明では、果実の洗浄、溶媒抽出、ろ過及び/又は遠心分離、任意に、濃縮、カラム精製、スプレードライ、加熱殺菌などの工程を経た羅漢果抽出物であり得る。
場合によって、上記処理に加えて、向流抽出、膜ろ過、液相分配、二層分離、脱色精製、遠心分離、再結晶、活性炭処理、超臨界抽出、超臨界精製などの製造工程を組み合わせることも可能である。
[甘味料組成物]
本発明の羅漢果抽出物は、甘味料組成物に調製し得る。甘味料組成物は、本発明の羅漢果抽出物からなるか、又は本発明の羅漢果抽出物に加えて、任意に補助甘味成分やその他の成分を含有するものである。ここで、その他の成分には、限定はされないが、賦形剤や希釈剤も含まれる。
ここで補助甘味成分とは、甘味を有する或いは甘味料の甘味強度及び甘味質を調整する成分を意味し、例えば単糖、二糖、オリゴ糖、及び糖アルコールなどの糖質系甘味料;非糖質系甘味料;及び食物繊維を挙げることができる。
糖質系甘味料のうち、単糖としては、果糖、ブドウ糖、キシロース、ソルボース、ガラクトース、及び異性化糖などが挙げられる。二糖としては、麦芽糖、乳糖、トレハロース、ショ糖、異性化乳糖、及びパラチノースなどが挙げられる。オリゴ糖としては、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ダイズオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラクトスクロース、ガラクトオリゴ糖、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、シュクロオリゴ糖、テアンオリゴ糖、及び海藻オリゴ糖などが挙げられる。糖アルコールとしては、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、及びパラチニットなどが挙げられる。また、非糖質系甘味料のうち、合成甘味料としては、アスパルテーム、アドバンテーム、アセスルファムK、スクラロース、及びネオテームなどが挙げられる。さらに非糖質系甘味料のうち、天然甘味料としては、甘草抽出物、ステビア抽出物、及びソーマチン抽出物などが挙げられる。
食物繊維としては、ペクチン、グア豆酵素分解物、グルコマンナン、βグルカン、ポリデキストロース、イヌリン、アガロース、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、フコイダン、ポルフィラン、ラミナラン、及び難消化性デキストリン等の水溶性食物繊維;及びセルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、及びキトサン等の不溶性食物繊維を挙げることができる。好ましくは水溶性食物繊維である。
本発明の甘味料組成物が、羅漢果抽出物に加えて補助甘味成分を含有するものである場合、甘味料組成物100質量%に含まれる羅漢果抽出物の割合としては、0.01質量%〜100質量%、好ましくは0.1質量%〜99.9質量%、より好ましくは0.1質量%〜90質量%、さらに好ましくは0.1質量%〜50質量%、特に好ましい範囲は0.1質量%〜30質量%を挙げることができ、補助甘味成分の割合としては0.01質量%〜99.99質量%、好ましくは0.1質量%〜99.9質量%、より好ましくは1質量%〜99質量%、さらに好ましくは5質量%〜99質量%、特に好ましくは5質量%〜90質量%を挙げることができる。
本発明の甘味料組成物は、前述するように、本発明の羅漢果抽出物からなるか、又は羅漢果抽出物に加えて補助甘味成分を含有するものであり、安全性が高く、甘味質の低下(雑味)がなく、砂糖に近い良質な甘味質を有する。このため、さらに、飲食品組成物、医薬組成物(医薬品、医薬部外品)、又は化粧料組成物の甘味料として好適に使用することができる。
本発明の甘味料組成物は、それが本発明の羅漢果抽出物からなるものである場合、その甘味度は砂糖(スクロース)の200〜400倍である。かかる甘味度は、羅漢果抽出物に補助甘味成分を配合することで適宜調整することができる。
本発明の方法によって調製した羅漢果抽出物、本発明の羅漢果抽出物、及び本発明の甘味料組成物によれば、低エネルギー(低カロリー)又はゼロエネルギー(ゼロカロリー)の甘味料組成物をより安全な形で提供することができる。この低エネルギー又はゼロエネルギーの甘味料組成物は、肥満症や糖尿病患者のようにエネルギー摂取が制限されている人、又はダイエットを必要若しくは希望する人の甘味料組成物として有用である。
[飲食品組成物]
本発明の羅漢果抽出物は、飲食品組成物に含有させることができる。
本発明の羅漢果抽出物は、一般的なショ糖に代わる甘味料として、加熱料理、洋菓子類、和菓子類、飲料類(清涼飲料水、アルコール飲料を含む)、乳製品、調味料などの飲食品組成物への用途に適している。ここで、飲食品組成物には、一般的な飲食品の他に、健康食品、特別用途食品(特定保健用食品)なども含む。本発明の羅漢果抽出物は、安定であり、濁り、褐変、着色を生じず、特に飲食品組成物に含有させる場合に有用である。これらは、例えば、ビタミンC剤、ビタミンE剤、ビタミンEC剤、ビタミン含有保健剤、カルシウム剤などのサプリメントであってもよい。
本発明の飲食品組成物は、当該分野で通常使用される飲食品原料をさらに含み得る。飲食品原料の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、リンゴファイバー、大豆ファイバー、肉エキス、黒酢エキス、ゼラチン、コーンスターチ、蜂蜜、動植物油脂、多糖類、穀物、野菜、果菜、果物、肉、卵、乳製品、海藻など及びそれらの加工品が挙げられる。本発明の組成物は、これらの食品原料を単独種又は複数種含み得る。
本発明の飲食品組成物は、上記の食品原料に加えて、潤沢剤、乳化剤、懸濁化剤、酸化防止剤、防腐剤、甘味剤及び香味剤などの成分の1種以上をさらに含み得る。また、水溶性ビタミン類及び油溶性ビタミン類などを含む他の成分をさらに含んでいてもよい。羅漢果抽出物の物性や味質を妨げることのない適切な成分を容易に選択し得る。
本発明の飲食品組成物は、当該分野で周知の方法によって製造される。例えば、作用を有する純粋な羅漢果配糖体を添加する工程を包含する方法によって製造してもよいし、作用を有する羅漢果配糖体を含有する組成物を添加する工程を包含する方法によって製造してもよい。
本発明の羅漢果抽出物を含有する飲食品組成物においては、組成物に含まれるモグロシドVの乾燥質量は、代表的には、0.001質量%〜70質量%、好ましくは、0.002質量%〜65質量%、より好ましくは、0.003質量%〜60質量%、さらに好ましくは、0.004質量%〜50質量%、さらにより好ましくは、0.005質量%〜40質量%である。最も好ましくは0.004質量%〜30質量%である。
本発明の飲食品組成物は、当業者に公知の方法を用いて製造され得る。当業者は、飲食品組成物の形態及び種類に応じて適切な製造方法を選択し得る。ここで、羅漢果抽出物は、任意の方法で飲食品組成物に配合され得る。
[医薬組成物]
本発明の羅漢果抽出物は、医薬組成物に含有させることができる。羅漢果抽出物自体を医薬組成物の有効成分として調製することができる他、羅漢果抽出物を甘味料として、別の有効成分と共に用いることもできる。医薬組成物は、薬学的に許容される原材料をさらに含み得る。例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、珪酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、トラガカント、ゼラチン、シロップ、ヒドロキシ安息香酸メチル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、水、鉱油などが挙げられる。本発明の医薬組成物は、これらの原材料を単独種又は複数種含み得る。
本発明の医薬組成物は、潤沢剤、乳化剤、懸濁化剤、酸化防止剤、防腐剤、羅漢果抽出物以外の甘味剤及び香味剤など、ならびに水溶性ビタミン類及び油溶性ビタミン類などを含む他の成分の1種以上を含み得る。
本発明の医薬組成物の形態は、特に限定されない。本発明の医薬組成物の形態の例としては、錠剤、丸剤、粉剤、シロップ剤、乳濁剤、液剤、懸濁剤、ゼラチンカプセル剤などの経口組成物の形態;スプレー剤などの形態を挙げることができる。スプレー剤などの形態の医薬組成物は、鼻内などの経路によっても投与し得る。経口組成物としては、様々な疾患治療又は予防用の経口組成物の他、ビタミンC剤、ビタミンE剤、ビタミンEC剤、ビタミン含有保健剤、カルシウム剤などの医薬組成物でもあり得る。
本発明の羅漢果抽出物を含有する医薬組成物においては、組成物に含まれるモグロシドVの乾燥質量は、代表的には、0.001質量%〜10質量%、好ましくは、0.002質量%〜5質量%、より好ましくは、0.003質量%〜3質量%、さらに好ましくは、0.004質量%〜1質量%、さらにより好ましくは、0.005質量%〜0.5質量%である。最も好ましくは0.006質量%〜0.3質量%である。
本発明の医薬組成物は、当業者に公知の方法を用いて製造され得る。当業者は、医薬組成物の形態及び種類に応じて適切な製造方法を選択し得る。ここで、羅漢果抽出物は任意の方法で医薬組成物に配合され得る。
[化粧料組成物]
本発明の羅漢果抽出物は、化粧料組成物に含有させることができる。羅漢果抽出物自体を化粧料組成物の中の有効成分として調製することができる他、羅漢果抽出物を甘味料として、別の有効成分と共に用いることもできる。化粧料組成物は、薬用化粧品であり得る。化粧料組成物は、さらに他の原材料を含み得る。その他の原材料は、限定はされないが、界面活性剤、水、鉱油などが挙げられる。本発明の化粧料組成物は、これらの原材料を単独種又は複数種含み得る。
化粧料組成物の例としては、限定はされないが、口紅、歯磨き粉などが代表的に例示される。
本発明の化粧料組成物は、乳化剤、懸濁化剤、酸化防止剤、防腐剤、羅漢果抽出物以外の甘味剤及び香料など、ならびに水溶性ビタミン類及び油溶性ビタミン類などを含む他の成分の1種以上を含み得る。
本発明の化粧料組成物の形態は、特に限定されない。本発明の化粧料組成物の形態の例としては、スプレー剤などの形態を挙げることができる。限定はされないが、薬用化粧品や薬用歯磨き類が例示される。
本発明の羅漢果抽出物を含有する化粧料組成物においては、組成物に含まれるモグロシドVの乾燥質量は、代表的には、0.001質量%〜10質量%、好ましくは、0.002質量%〜5質量%、より好ましくは、0.003質量%〜3質量%、さらに好ましくは、0.004質量%〜1質量%、さらにより好ましくは、0.005質量%〜0.5質量%である。最も好ましくは0.006質量%〜0.3質量%である。
本発明の化粧品用組成物は、当業者に公知の方法を用いて製造され得る。当業者は、化粧品用組成物の形態及び種類に応じて適切な製造方法を選択し得る。ここで、羅漢果抽出物は任意の方法で化粧料組成物に配合され得る。
[口腔ケア製剤]
本発明の羅漢果抽出物は、口腔ケア製剤に含有させることができる。羅漢果抽出物自体を化粧料組成物の中の有効成分として調製することができる他、羅漢果抽出物を甘味料として、別の有効成分と共に用いることもできる。口腔ケア製剤は、さらに他の原材料を含み得る。例としては、界面活性剤、水、鉱油などが挙げられる。本発明の口腔ケア製剤は、これらの原材料を単独種又は複数種含み得る。
本発明の口腔ケア製剤は、さらに、乳化剤、懸濁化剤、酸化防止剤、防腐剤、羅漢果抽出物以外の甘味剤及び香料など、ならびに水溶性ビタミン類及び油溶性ビタミン類などを含む他の成分の1種以上を含み得る。
本発明の口腔ケア製剤の形態は、特に限定されない。本発明の口腔ケア製剤の形態の例としては、スプレー剤などの形態;口中清涼剤(例えば、のど清涼剤、健胃清涼剤);薬用歯磨き類が挙げられる。本明細書中では、口腔ケア製剤は、医薬部外品として使用される組成物、又は新指定医薬部外品として使用される組成物の両方を含む。
本発明の羅漢果抽出物を含有する口腔ケア製剤においては、製剤に含まれるモグロシドVの乾燥質量は、代表的には、0.001質量%〜10質量%、好ましくは、0.002質量%〜5質量%、より好ましくは、0.003質量%〜3質量%、さらに好ましくは、0.004質量%〜1質量%、さらにより好ましくは、0.005質量%〜0.5質量%である。最も好ましくは0.006質量%〜0.3質量%である。
本発明の口腔ケア製剤は、当業者に公知の方法を用いて製造され得る。当業者は、口腔ケア製剤の形態及び種類に応じて適切な製造方法を選択し得る。ここで、羅漢果抽出物は任意の方法で口腔ケア製剤に配合され得る。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(比較例1〜8、参考例1、2)
羅漢果果実(68.5kg)に対して温水(60℃、700L)を溶媒として加え、95℃60分加熱を維持することで得られる羅漢果熱水抽出物から、粗大物(1mm超過)をろ過したろ液を、そのままスプレードライした(比較例1〜2)。この時のろ液の温度は、88℃であった。また、ろ液を合成吸着樹脂が充填されたカラムに流し入れて、水を通液後、エチルアルコールの濃度を低い濃度から高い濃度へとグラジエントさせていき、カラム通液中のモグロシドVが存在する画分を回収して、濃縮装置によってエチルアルコールを回収した濃縮液をスプレードライした(比較例3〜7)。さらに、エチルアルコールを回収した濃縮液をイオン交換樹脂が充填されたカラムに流し入れて、水を通液後、カラム通液中のモグロシドVが存在する画分を回収して、濃縮装置によって水を回収した濃縮液をスプレードライした(比較例8)。さらに加えて、オクタデシルシリルで表面修飾されたシリカゲルが充填されたカラムに流し入れ、水とエチルアルコールを通液後、カラム通液中のモグロシドVが存在する画分を回収して、濃縮装置によって水とエチルアルコールを回収した濃縮液をスプレードライした(参考例1)。
上記で得られた羅漢果抽出物のスプレードライ品を10質量%となるように75v/v%アセトニトリルに溶解させて分取カラム(Nucleosil−5C18)を用いてモグロシドVのみが得られる画分を回収し、凍結乾燥したもの(参考例2)を得た。
(実施例1〜4)
不溶物を低減させて清澄性を高めることを目的とした羅漢果抽出物を製造するために、一般的なステンレス蒸気ジャケット抽出装置(最大容量1,000L)に対して100L容ステンレスメッシュカゴに入れた羅漢果果実(53.8kg)と温水(60℃、550L)を加えて、加熱と撹拌を開始した。液温が95℃以上に達してから60分間抽出を行った。ここで、抽出中の液温をモニタリングし、95±5℃を60分間保持した。熱水抽出後に加温を停止し、ステンレスメッシュカゴを引き上げて、羅漢果と抽出液(液温96℃)を分離した。撹拌を停止し、ストックタンクへと送液する際に、ワイ型ストレーナ(目開き1mm)を通過させた。このときの液温は、88℃であった。その後、銅製放熱フィンでコーティングされたステンレス製の送液配管を通して、ストックタンクに集められた粗抽出液(液温39℃、糖度約3%、液性混濁)を得た。送液配管を通して液温39℃に達した時間は、95℃にして抽出を開始した時点より 65分以内であった。連続式遠心分離機で熱変性凝集タンパク質やゲル化植物性ペクチン、食物繊維などを分離した。遠心分離後の粗抽出液(液温33℃、糖度約3%、液性清澄)を濃縮してスプレードライにより、水を取り除くことで清澄性を高めた羅漢果抽出物を1,573g得た(実施例1)。
上記と同様の方法で得た遠心分離後の粗抽出液を合成吸着樹脂HP20(三菱化学)が充填された防爆仕様ステンレス製円筒型容器に全量通液させ、連続的に食品製造用エチルアルコールによって羅漢果粗抽出液中の甘味成分を精製する一般的に知られた工程を追加した。この溶液を濃縮してエチルアルコールを取り除き、スプレードドライにより、水を取り除くことで清澄性を高めた羅漢果抽出物(合成吸着樹脂精製済)を538g得た(実施例2)。
また、上記と同様の方法で得た遠心分離後の粗抽出液を合成吸着樹脂を用いて精製した羅漢果抽出物に対して、アニオン交換樹脂を用いて精製する一般的に知られた工程を追加した。この溶液を濃縮した後にスプレードライにより、水を取り除くことで清澄性を高めた羅漢果抽出物(アニオン交換樹脂精製済)を264g得た(実施例3)。
また、上記と同様の方法で得た遠心分離後の粗抽出液をアニオン交換樹脂を用いて精製した羅漢果抽出物に対して、濃縮後、再び、アニオン交換樹脂を用いて精製する上記と同等の工程を繰り返した。この工程で得られた溶液を濃縮後にスプレードライにより、水を取り除くことで清澄性を高めた羅漢果抽出物(アニオン交換樹脂複精製済)を200g得た(実施例4)。
上記の方法で10種類の羅漢果抽出物を調製し、精製度の違い(モグロシドV含有量)によって精製度「低」(モグロシドV含有量0.01質量%以上〜20質量%未満)、精製度「中」(モグロシドV含有量20質量%以上〜60質量%未満)、精製度「高」(モグロシドV含有量60質量%以上〜100質量%未満)と分類分けを行った(比較例1〜8、参考例1〜2、実施例1〜4)。
(試験例1:モグロシドVの測定)
モグロシドVについては、以下に示す条件で高速液体クロマトグラフィーを用いて測定を行った。
(試験例2:不溶性成分の検出)
羅漢果抽出物に含まれる不溶物についての比較を行った。各羅漢果抽出物をあらかじめ、105℃で乾燥させて恒量にし、乾燥重量を求めておき、乾燥重量として1g分を秤量(量り取り重量値T)した。これを、15mLの遠沈管(BioLite 15mL Conical Centrifuge Tubes;サーモフィッシャーサイエンス社製)(空重量値b)に入れて、蒸留水(水温20〜25℃)9gを追加する。ボルテックスミキサーで、粉体が水溶液全体に均一化するまで懸濁し、静置後、4,000rpmで5分間遠心分離(卓上遠心分離機H−36α;株式会社コクサン製)を行い、強制的に不溶物を沈降させる。その後、上清のみを取り除き、新たに蒸留水9gを追加してピペッティングによって懸濁する。同様に遠心分離を行い、上清を取り除き、このときに得られた沈殿物のみを不溶物として−20℃で12〜24時間凍結(冷凍庫SCR−SK231;サンヨー株式会社製)した。凍結後に凍結乾燥(凍結真空乾燥機VD−800R;株式会社タイテック製)し、秤量(凍結乾燥後の遠沈管ごとの重量値c)した。本試験における質量測定については、上皿天秤(ML104T/00;メトラー・トレド社製)を使用して、小数点以下4ケタまで記録する。各記録した質量値を式1に示した計算式を用いて不溶物の割合を求める。同様の操作を3回行い、平均値を求めることで、不溶性成分の値を得た(表3)。
不溶物割合(%)=(c−b)/T×100 (式1)
(試験例3:水溶液の清澄性の評価)
羅漢果抽出物によって生じる水溶液の濁りについての比較を行った。各羅漢果抽出物を、あらかじめ、105℃で乾燥させて恒量にし、乾燥重量を求めておき、乾燥重量として1g分を秤量した。これを、15mLの遠沈管に入れて、蒸留水(水温20〜25℃)9gを追加した。ボルテックスミキサーで、粉体が水溶液全体に均一化するまで混合した。この混合操作は1分以内に完了させた。サンプル調整後は、沈殿や析出を起こさないように直ちに測定を行った。測定は、液をディスポセル(光路長10mm、光路幅10mm)に3mL充填し、紫外可視分光光度計(UV2450;島津製作所製)を用いて660nmにおける吸光度を測定した。ブランク溶液には、蒸留水を用いた。吸光度はランベルト・ベールの法則に従う0.100〜1.000の範囲となるように各羅漢果抽出物を調整して測定した。得られた吸光度の値は、式2に示した計算式を用いてサンプルの量り取り量を考慮し、羅漢果抽出物10質量%における吸光度の値に補正した。同様の操作を3回行い、平均値を求めた(表3)。
サンプルの吸光度 Aab
ブランクの吸光度 Bab
量り取り量(g) M
吸光度=(Aab−Bab)×(1/M) (式2)
精製度の異なる羅漢果抽出物に含まれる水に溶解しない不溶物について検証した結果、比較例の羅漢果抽出物に広く含まれていることが分かった。特に精製度の低いものほど不溶物が多く、精製度の高いものほど不溶物が少なく含まれる傾向にあった。羅漢果抽出物中に最大で12%以上の不溶物が含まれていた。660nmにおける吸光度を測定した結果、不溶物の量が多い比較例の羅漢果抽出物ほど濁っている傾向が強く、実施例の羅漢果抽出物は、吸光度が低かった。
また、実施例1〜4では清澄化処理によって得られた羅漢果抽出物の吸光度測定の結果、モグロシドVを同程度含有する比較例と比べて低い吸光度を有しており、非常に濁りが少なかった。
すなわち、羅漢果抽出物の精製度の目安となるモグロシドVの含有量が70質量%未満の羅漢果抽出物において質量に対して不溶物の占める割合が2質量%未満である際に、濁り(吸光度660nm:0.3未満)が少なく清澄性が高いと判断された。
羅漢果抽出物の水溶液について目視観察すると、比較例の水溶液において、特に調整直後は、細かな粒子が浮遊物として目視確認できた。さらに、比較例の水溶液は時間経過とともに容器の壁面や底部に付着物、沈殿物として目視確認できた。これら不溶物は、羅漢果抽出物の精製度が低いものほど多く確認でき、清澄な溶液ではなかった。
一方で、実施例の水溶液においては調整後から、水溶液中に浮遊物、付着物、沈殿物が目視では認められず、清澄な溶液であった。
このように、吸光度測定においても実施例と比較例の組成物とで差異があるが、目視において比較例と実施例では大きな差が認められた。
(試験例4:目視評価)
羅漢果抽出物の目視に由来する印象に関する詳細な評価を行った。被験者11名に対して、比較例1の水溶液と、実施例1の10質量%の水溶液に関して目視官能評価を絶対評価で行った。評価内容は、浮遊物、微生物、動機づけ、清澄具合に関する4項目について「YES」と「NO」で回答できる質問をした。アンケート結果では、「YES」と回答した人数を集計した(表4)。
結果、比較例1では、全ての被験者が浮遊物はあると回答した。一般生菌数の増殖が認められないとされる基準未満であるにも関わらず、過半数の被験者が水溶液の外観のみで微生物の増殖を推察した。さらに摂食に関しても抵抗があると回答した被験者が過半数いた。一方で実施例1は、甘味料として使用する上で浮遊物がなく、澄んでいる印象が得られるため、摂食に関して抵抗がないと判断された。
(試験例5:水不溶性成分を含まない羅漢果抽出物の官能評価)
水不溶性成分が羅漢果抽出物の物性及び味質などの官能評価項目に与える影響について検討するために、前述の方法で羅漢果抽出物中の不溶物のみを調製し、実施例2の羅漢果抽出物に対して、不溶性成分を加え、その量を調整した羅漢果抽出物を得た(実施例5〜7)。
効果の検証を行うために、羅漢果抽出物に水不溶性成分が含まれていることについての背景を知らない被験者13名(A〜M)に対して、スクリュー管No.5(マルエム社製)で調整した二種類(基準品:比較例1、対象品:比較例1〜3及び実施例2、5〜7)の10質量%水溶液の一対サンプルとスコア表を提示して「この二つの羅漢果抽出液中の浮遊物を比べて何か違いがありますか。」と問いかけをし、目視による評価を実施した。質問に対する回答に関して3段階のスコア表(「0:同等である」「+1:良くなっている」「−1:悪くなっている」)で評価を行った(表5)。この目視評価の集計の際には、基準品に対する対象品の評価として算出して13名の数値を合計した数値を判別スコアとした。各被験者に対して、3時間以上のインターバルを設けて実施した。
羅漢果抽出物中の不溶物について過半数の被験者が、「羅漢果抽出物中の水不溶性成分が5質量%未満であるとき」に目視評価で明らかな改善があると評価した。
(試験例6:羅漢果抽出物のタンパク質、ポリフェノール定量)
羅漢果抽出物の水不溶性成分について検証するためにタンパク質定量を行った。タンパク質含有量についての比較を行った。各羅漢果抽出物を0.1g秤量し、15mLの遠沈管に入れて、0.9%塩化ナトリウム水溶液を0.9g追加し、ボルテックスミキサーで、粉体が水溶液全体に均一化するまで懸濁した。この溶解液を0.1g秤量し、0.9%塩化ナトリウム水溶液を9.9g追加した(総タンパク質含有量)。
また、各羅漢果抽出物を0.1g秤量し、15mLの遠沈管に入れて、0.9%塩化ナトリウム水溶液を0.9g追加し、ボルテックスミキサーで、粉体が水溶液全体に均一化するまで懸濁した。静置後、4,000rpmで5分間遠心分離を行い、強制的に不溶解物を沈降させた。その後、上清のみを慎重を取り除いた。沈殿物に0.9%塩化ナトリウム水溶液1.0gに懸濁溶解させた(不溶性タンパク質含有量)。
これらをBCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher Science社)を用いて行った。Solusion AとSolusion Bとを50:1の割合で混合して、Working reagentを調整した。50マイクロリットルのサンプルと1ミリリットルのWorking reagentを混合した。37℃で30分間加温し、その後室温に戻るまで静置させた。562nmの波長における吸光度を測定した。同時に牛血清アルブミンを標準物質として検量線(R≧0.999)を作成した。なおサンプルの濃度は、検量線の範囲に収まるように適宜調整した。検量線から得られたサンプル中のタンパク質濃度を用いて不溶物中の質量を求めて羅漢果抽出物中の含有量を算出した。同様の操作を3回行い、平均値を求めた(表6)。
次にポリフェノール量を定量した。
FOLIN−DENIS REAGENTを調製した。蒸留水188.0mLにタングステン酸ナトリウム2水和物27.73gとリンモリブデン酸5gと85%リン酸12.5mLを加えた。この混合溶液をドラフトチャンバー内でリービッヒ冷却管を用いて還流操作を2時間行った。還流操作後に放冷し、液温が室温付近になった後に1000mL用メスフラスコに移して、標線まで蒸留水でフィルアップした。この溶液(FOLIN−DENIS REAGENT)を遮光容器に小分け充填し、使用まで冷暗所で保管した。
また、各羅漢果抽出物(Total)と、試験例2の手法で得た各羅漢果抽出物の不溶性成分(Ppt)を0.1g秤量し、1mLの水で溶解又は懸濁させた。2mLマイクロチューブにFOLIM−DENIS REAGENT 0.5mLと溶解又は懸濁させたサンプル0.5mL加えて、3分後に10w/v%炭酸ナトリウム水溶液を加えた。そこからさらに60分後に遠心分離した(14,000G、5分間、室温)。遠心後のサンプルの上清に対して760nmの吸光度を測定した。ブランク溶液には、蒸留水を用いた。吸光度はランベルト・ベールの法則に従う0.100〜1.000の範囲となるように溶液を調整して測定した。同様にタンニン酸を標準物質として検量線(R≧0.999)を作成した。0.1mg/mLのタンニン酸水溶液を調製し、適宜希釈した。検量線から得られたサンプル中のポリフェノール濃度を用いてTotal及びPpt中のポリフェノール量を求め、羅漢果抽出物中の含有量を算出した。同様の操作を3回行い、平均値を求めた(表6)。
得られた羅漢果抽出物中の総ポリフェノール(Total)含有量と不溶性成分中の不溶ポリフェノール(Ppt)含有量の値を用いて、式3に示した計算式を用いてサンプル中のポリフェノール存在比を求めた。
ポリフェノール存在比=(Ppt/Total) …(式3)
羅漢果抽出物中のタンパク質とポリフェノールを定量した結果、比較例1、3、8、参考例1より、不溶物を形成する主成分はポリフェノールであることが明らかとなった。羅漢果抽出物中にタンパク質は多く存在しているがその多くは不溶物中には存在しておらず、水溶液中に存在していた。実施例1及び2より、羅漢果抽出物中にポリフェノールは存在するが、水溶液中に存在していることが分かった。
表7の結果から、実施例1〜3で調製した本発明の羅漢果抽出物組成物は、比較例1〜3の従来技術で調製された羅漢果抽出物組成物よりも不溶性成分の含有量がモグロシドVの含量と比較して極めて低減することが分かった。
(試験例7:官能評価)
実施例1〜3及び比較例1〜3で調整した羅漢果抽出物について、熟練被験者10名(A〜J)による官能評価を行った。各羅漢果抽出物の水溶液の甘味強度をショ糖(10w/v%:対照液)水溶液と同等になるように調製した。官能評価は甘味質を表す5項目(苦味、渋味、くせ、後引き、舌触り)について評価し、官能評価基準に従って点数を下記のようにつけた。
ショ糖溶液と比べて、
0:きわめて優れている
1:優れている
2:やや優れている
3:同様である
4:やや劣っている
5:劣っている
6:きわめて劣っている
味覚の定義については、日本工業規格:JIS Z 8144:2004 官能評価分析―用語に従い、これらを区別・評価できるものを熟練被験者とし、より詳細には苦味とは「コーヒーや魚の内臓を食べたときに舌で感じる味のこと」で、渋味とは「舌の粘膜の収縮によって生じる味のこと」で、くせとは「苦味、渋味以外で不快さを感じるような味のこと」である。さらに、後引きとは「(甘みを感じる)菓子や果物を食べたときに舌が感じる味の時間の長さのこと」で、舌触りとは「舌の上に残存する物質感の質と量のこと」である。これらの項目は、弱いほど又は感じにくいほど優れている。対照液であるショ糖水溶液の評価ポイントは3ポイントであり、良質な甘味質であることを示す(表8)。
ここで、実施例1、2、3は、すべての項目が2〜3点に近く、ショ糖に近い良い味であり、甘味を感じつつも、後引きはなく、舌触りも滑らかで、かつ、苦味、渋味は抑えられていた。比較例1、2、3は、4〜5点に近く、ショ糖より劣る味であった。
結果、実施例1〜3により、「羅漢果抽出物中の水不溶性成分が5質量%未満であるとき」、羅漢果抽出物の苦みと渋み、くせ、後引きが低減され、ショ糖に近い甘味質を示した。さらに口にしたときの舌に付着する不快感が軽減され、舌触りはショ糖よりもすっきりとした感覚を示した。いずれの場合も明らかな改善があると評価され、好まれた。羅漢果抽出物に含まれる甘味成分以外の水不溶性成分が味質を低下させると考えられた。
(試験例8:固結性試験)
羅漢果抽出物組成物中のモグロシドV含有量と水不溶性成分の含有量が粉体の経時的な(吸湿性)固結に与える影響について調べるために、上記で調製した実施例1〜3の羅漢果抽出物と比較例1〜3の羅漢果抽出物について固結性試験により調べた。
固結性試験は、各包材に充填した粉体を各条件下で一定期間保管することで、粉体の固結特性を評価することができる。各羅漢果抽出物の包材には、食品に使用可能な材質で構成させるユニパック(登録商標)(材質:ポリエチレン、厚さ0.04mm、(株)生産日本社製)を用いた。
評価に関しては、固結具合を段階によって点数化(固結点数0:固結が認められない、固結点数1:極めて柔らかい固結の発生・固結しているが指でつまむことができずに崩れる、固結点数2:柔らかい固結の発生・指で容易につまむことができて押すと簡単に崩れる、固結点数3:固い固結の発生・指で容易につまむことができて押し崩すために力を要する、固結点数4:極めて固い固結の発生・固結を崩すためには両手を使う必要がある、固結点数5:手では崩すことのできない固結の発生)して評価した(表9)。同様の操作を3回行い、平均値を求めた。最長35日間行った。一度評価に用いた包材は固結特性が変化するため廃棄した。
結果、実施例1〜3により、固結の発生が抑制され、保存安定性が改善した。羅漢果抽出物に含まれる水不溶性成分が保存安定性を低下させると考えられた。
(試験例9:羅漢果抽出物の透過性)
スクリュー管No.3(マルエム社製)に羅漢果抽出物を1質量%となるように水溶液を調製して透過性を確認した(図1:左から水、比較例3、実施例2、水)。
実施例1〜3により、羅漢果抽出物の水溶液の濁りの発生が抑制され、清澄性が改善した。羅漢果抽出物に含まれる甘味成分以外の水不溶性成分が清澄性を低下させると考えられた。
(組成物)
表10の配合量に基づいて、果糖ぶどう糖液糖、羅漢果抽出物、飲料水を混合して−100質量部として容器に充填して高濃度溶液を調製した。また、比較のために本発明品の代わりに従来品の羅漢果抽出物を配合した高濃度溶液を調製した。以下、表中の数値は、質量%を示す。
試作した高濃度溶液を10名の被験者に目視評価による溶液の清濁具合と試飲による味質について評価してもらった。
官能評価の結果、比較飲食品組成物1では、溶液中に不溶物が確認され、過半数の被験者が濁っていると判断し、甘味が弱く渋みがあると回答した。一方、実施例の羅漢果抽出物を用いた飲食品組成物1では、甘味があり、渋みが弱いことがわかった。
表11の配合量に基づいて、95v/v%アルコール、果糖ぶどう糖液糖、エリスリトール、羅漢果抽出物、飲料水を混合して100質量部として容器に充填してアルコール溶液を調製した。また、比較のために本発明品の代わりに従来品の羅漢果抽出物を配合したアルコール溶液を調製した。
試作したアルコール溶液を10名の被験者に目視評価による溶液の清濁具合と試飲による味質について評価してもらった。
官能評価の結果、比較飲食品組成物2では、溶液中に不溶物が確認され、過半数の被験者が濁っていると判断し、甘味が弱く渋みがあると回答した。一方、実施例の羅漢果抽出物を用いた飲食品組成物2では、甘味があり、渋みが弱いことがわかった。
表12の配合量に基づいて、果糖ぶどう糖液糖、エリスリトール、レモン果汁、羅漢果抽出物、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、香料、安息香酸ナトリウム、飲料水を混合して100質量部として容器に充填して酸性溶液を調製した。また、比較のために実施例の代わりに比較例の羅漢果抽出物を配合した酸性溶液を調製した。
試作した酸性溶液を10名の被験者に目視評価による溶液の清濁具合と試飲による味質について評価してもらった。
官能評価の結果、比較飲食品組成物3では、溶液中に不溶物が確認され、過半数の被験者が濁っていると判断し、甘味が弱く渋みがあると回答した。一方、実施例の羅漢果抽出物を用いた飲食品組成物3では、甘味があり、渋みが弱いことがわかった。
また、クリアで味質の良い清澄性の高い羅漢果抽出物を得るために、製造時間について検証を行った、前述の製造方法おいて各工程に要する時間を測定した。製造時間に関しては、時期による変動を抑えるために1年間の測定記録を標準化したデータを用いた。(表13、図2)
比較例での製造時間を100とすると、実施例では74で完了した。比較例(従来技術)では、清澄化に必要なカラム精製の工程が本発明では不要となるため、製造時間だけで約26%の短縮が可能である。さらにカラム精製では使用後に洗浄・再生化処理が必要であるが、表13の製造時間には含まれていないため、実施例では、さらに工数の短縮が可能である。
(試験例10:抽出時間別パラメータ)
不溶物が低減された清澄性の高い羅漢果抽出物を得る際に、加温・冷却時の温度負荷の時間的影響による物性の違いについて確認した。一般的なステンレス蒸気ジャケット抽出装置(最大容量1,000L)に対して100L容ステンレスメッシュカゴに入れた羅漢果果実(53.8kg)と温水(60℃、550L)を加えて、加熱と撹拌を開始した。液温が95℃以上に達してから60分間抽出を行った。ここで、抽出中の液温をモニタリングし、95±5℃を60分間保持した。熱水抽出後に加温を停止し、ステンレスメッシュカゴを引き上げて、羅漢果と抽出液(液温96℃)を分離した。撹拌を停止し、ストックタンクへと送液する際に、ワイ型ストレーナ(目開き1mm)を通過させた。(このときの液温は、88℃であった)。その後、銅製放熱フィンでコーティングされたステンレス製の送液配管を通して、ストックタンクに集められた粗抽出液(液温39℃、糖度約3%、液性混濁)を得た。送液配管を通して液温39℃に達した時間は、95℃にして抽出を開始した時点からの時間を変更して解析した。羅漢果を分離した抽出液をワイ型ストレーナに通し、ストックタンクへ送液するまでに送液速度と放熱フィン数を調節することにより、ストックタンクに集めた粗抽出液が40度以下になるまでの熱負荷量を変化させた。熱負荷量は各条件で実施し、その後は連続式遠心分離機で熱変性凝集タンパク質やゲル化植物性ペクチン、食物繊維などを分離した。遠心分離後の粗抽出液(液温33℃、糖度約3%、液性清澄)を濃縮してスプレードライにより、水を取り除くことで清澄性を高めた羅漢果抽出物を得た。結果を表14に記載する。なお、実施例17以降は、粗抽出液を合成吸着剤とアニオン交換樹脂を用いて精製した。
なお、ここで、吸光度(660nm)の値が、比較的低い比較例11及び12の組成物においても、目視では明らかに濁りが生じており、実施例の組成物のような清澄な状態ではなかった。
[組成物例]
下記の表15〜20に示す処方に基づいて、本発明の羅漢果抽出物を含有する組成物を調製した。表中の数値は、質量%を意味する。

Claims (11)

  1. 羅漢果(Siraitia grosvenorii)抽出物であって、
    (1)モグロシドVを0.01質量%〜70質量%;及び
    (2)水不溶性成分を5質量%以下含有し、
    さらに、不溶ポリフェノール含有量/総ポリフェノール含有量が、1/2以下である、
    羅漢果抽出物。
  2. 10質量%水溶液における波長660nmの吸光度が、0.3以下である、請求項1記載の羅漢果抽出物。
  3. 総ポリフェノール含有量が、0.1質量%〜20質量%である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の羅漢果抽出物。
  4. 不溶ポリフェノール含有量が、5質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の羅漢果抽出物。
  5. 総タンパク質含有量が、5質量%〜90質量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の羅漢果抽出物。
  6. 不溶タンパク質含有量が、3質量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の羅漢果抽出物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載の羅漢果抽出物を含有する飲食品組成物。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項記載の羅漢果抽出物を含有する医薬組成物。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項記載の羅漢果抽出物を含有する化粧料組成物又は口腔ケア製剤。
  10. (1)羅漢果を溶媒処理することで、粗抽出物を得る工程;
    (2)該粗抽出物を、溶媒処理開始から120分以内に40℃以下に調整する工程;及び
    (3)40℃以下の温度で固液分離する工程
    を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の羅漢果抽出物製造する方法。
  11. 前記溶媒が、水、低級アルコール、又は水と低級アルコールの混合溶媒である、請求項10に記載の方法。
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