JP6811690B2 - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、鋼板およびその製造方法に関する。とりわけ、例えば、自動車用部品等に用いることができる鋼板およびその製造方法に関する。
自動車用部品に供される鋼板には、軽量化による燃費改善を実現するために薄肉化が求められており、薄肉化と部品強度の確保とを両立するために、高強度化が要求されている。また、自動車用部品に供される鋼板には、衝突安全性を考慮して、衝突時における高いエネルギー吸収能が要求されており、高強度化に加えて、高延性化が求められている。
高強度および高延性を実現するために、引張強度(TS)の向上による高強度化に加えて、TS×EL(伸び)の向上による高延性化が必要である。そのため、鋼板の強度を高めつつ、鋼板組織中に多量の残留オーステナイトを導入し、残留オーステナイトが加工誘起マルテンサイト変態することによる変態誘起塑性(TRIP)効果を活用することが有効であることが知られている。すなわち、衝突時におけるエネルギー吸収を増大させるため、衝突変形時に加工誘起マルテンサイト変態する残留オーステナイトを増加させることが有効である。また、部品成形時に残留オーステナイトの加工誘起マルテンサイト変態を抑制することにより、成形時における加工硬化を抑制でき、高強度を有する鋼板であっても、低強度鋼板と同等の低いプレス荷重および高い寸法精度を実現できる。
例えば、特許文献1には、マルテンサイトの鋼板組織全体に対する面積率が15%以上90%以下、残留オーステナイト量が10%以上50%以下、当該マルテンサイトのうち50%以上が焼戻しマルテンサイト、当該焼戻しマルテンサイトの鋼板組織全体に対する面積率が10%以上、およびポリゴナルフェライトの鋼板組織全体に対する面積率が10%以下(0%を含む)である鋼板が開示されている。当該鋼板は、TSが1470MPa以上、TS×ELが29000MPa%以上であるとしている。
特許文献2には、面積率で、30%以上80%以下のフェライトと、0%以上17%以下のマルテンサイトと、体積率で、8%以上の残留オーステナイトを有し、さらに、残留オーステナイトの平均結晶粒径が2μm以下を満たす鋼板が開示されている。当該鋼板は、780MPa以上のTS、および22000MPa・%以上のTS×ELを有するとしている。
特開2011−184756号公報 特開2012−237054号公報
しかし、上述の技術を始めとした広範な検討がなされているにも関わらず、実際の自動車用部品の製造において、鋼板を部品形状に成形する際に大きな加工硬化が生じるため、プレス荷重が増大し、あるいは、寸法精度が悪化する等の問題が起きている。そのため、高強度および高延性を達成し、且つ加工硬化を抑制することが難しいのが現状である。
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、強度および延性に優れ、且つ加工硬化が抑制された鋼板を提供することであり、別の1つの目的はその製造方法を提供することである。
本発明の態様1は、
C :0.05〜0.25質量%、
Si:0質量%超、3.0質量%以下、
Mn:5.0〜10.0質量%、
P :0質量%超、0.100質量%以下、
S :0質量%超、0.010質量%以下、
Al:0.001〜3.0質量%、および
N :0質量%超、0.0100質量%以下
を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
フェライトの面積率が40%以上、80%未満であり、
マルテンサイトの面積率が25%未満であり、
残留オーステナイトの面積率が20%以上であり、
フェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計の面積率が10%未満であり、
残留オーステナイトの平均結晶粒径が1.0μm以下であり、
残留オーステナイトの連結率が5.0以上である、鋼板である。
本発明の態様2は、Cr:0.01〜0.20質量%、Mo:0.01〜0.20質量%、Cu:0.01〜0.20質量%、Ni:0.01〜0.20質量%、およびB:0.0001〜0.02質量%からなる群から選択される1種以上をさらに含有する態様1に記載の鋼板である。
本発明の態様3は、Ca:0.0005〜0.01質量%、Mg:0.0005〜0.01質量%、およびREM:0.0001〜0.01質量%からなる群から選択される1種以上をさらに含有する態様1または2に記載の鋼板である。
本発明の態様4は、
態様1〜3のいずれかに記載の化学成分組成を有する鋼スラブを熱間圧延し、その後室温まで冷却して熱延板を得る熱延工程と、
前記熱延板を、(Ac1+30℃)〜(Ac1+100℃)の軟質化焼鈍温度で、1.0〜72時間保持する軟質化焼鈍工程と、
前記軟質化焼鈍後の熱延板を、25〜65%の冷延率で冷間圧延して冷延板を得る冷延工程と、
前記冷延板を、3.0℃/秒以上の平均昇温速度で、[(Ac1+Ac3)/2−50℃]〜[(Ac1+Ac3)/2+10℃]の均熱温度まで昇温し、前記均熱温度で10〜1800秒保持する均熱工程とを含む、鋼板の製造方法である。
本発明の1つの実施形態では、強度および延性に優れ、且つ加工硬化が抑制された鋼板を提供することが可能であり、別の1つの実施形態では、その製造方法を提供することが可能である。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、残留オーステナイトの加工誘起マルテンサイト変態挙動について、C方向(圧延方向と垂直な方向)とL方向(圧延方向)との間で大きな異方性を有するように鋼板の組織を制御することにより、高強度および高延性を達成し、且つ加工硬化を抑制することができることを知見した。このような鋼板を用いることにより、鋼板の強度が高くても、部品成形の際には主に残留オーステナイトが加工誘起変態しにくい方向に加工を施すことで加工硬化を抑制して成形性を確保し、且つ衝突の際には加工誘起変態が進行しやすい方向に変形させるようにすることで部品の吸収エネルギーを向上させることができる。このような鋼板は、上述のようにC方向とL方向との間で加工誘起マルテンサイト変態挙動が異なるため、C方向とL方向との間でTSが異なる、すなわちTSの異方性がある。
本発明者らは、上記知見に基づき、さらに検討を行った結果、鋼板に所望のTS、TS×ELおよびTSの異方性を兼備させるには、硬質なマルテンサイトの導入量を制限しつつ、延性に富むフェライトを母相とし、且つ残留オーステナイトの面積率を高め、その結晶粒径および連結率を制御することが有効であることを見出した。
以下、本発明の実施形態に係る鋼板およびその製造方法の詳細を示す。
1.鋼組織
本発明の実施形態に係る鋼板は、フェライトの面積率が40%以上、80%未満であり、マルテンサイトの面積率が25%未満であり、残留オーステナイトの面積率が20%以上であり、フェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計の面積率が10%未満であり、残留オーステナイトの平均結晶粒径が1.0μm以下であり、残留オーステナイトの連結率が5.0以上である。
以下、各構成について詳述する。なお、「面積率」とは、全組織に対する面積率を意味する。
(1)フェライトの面積率:40%以上、80%未満
フェライトを主相とすることで、残留オーステナイトの変態誘起塑性と併せて、所望のTSおよびTS×ELを得ることができる。フェライトの面積率が40%未満では、母相の延性が不足するためTS×ELが低下する。一方、フェライトの面積率が80%以上ではTSが確保できない。従って、フェライトの面積率は、40%以上、80%未満とする。フェライトの面積率は、好ましくは45%以上であり、好ましくは75%以下である。
(2)マルテンサイトの面積率:25%未満
マルテンサイトが面積率で25%以上鋼組織中に含まれると、伸びが低下するため、TS×ELが低下する。従って、マルテンサイトの面積率は25%未満とする。マルテンサイトの面積率は、好ましくは22%以下、より好ましくは20%以下である。マルテンサイトの面積率の下限は特に限定されず、良好な伸びおよびTS×ELを得る観点から、0%であってよい。
なお、本発明の実施形態における「マルテンサイト」は、「焼入れままマルテンサイト」および「焼戻しマルテンサイト」の両方を意味するものとする。
(3)残留オーステナイトの面積率:20%以上
母相であるフェライトの他に、第2相として残留オーステナイトを導入する。残留オーステナイトは加工誘起マルテンサイト変態することでTS×ELを高める効果を有する。良好な機械的特性を得るため、残留オーステナイトの面積率は20%以上とする。残留オーステナイトの面積率は、好ましくは25%、さらに好ましくは30%である。残留オーステナイトの面積率の上限は、フェライトの面積率およびマルテンサイトの面積率が上記範囲である限り、特に限定されない。
(4)フェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計の面積率:10%未満
フェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織としては、パーライト、ベイナイトおよびセメンタイト等が挙げられる。フェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計の面積率が10%以上になると、TS×ELが低下する。従って、フェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計の面積率は10%未満とする。当該面積率は、好ましくは5%以下である。当該面積率の下限は特に限定されず、良好なTS×ELを得る観点から、0%であってよい。
以下、フェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織を「その他の組織」と呼ぶことがある。
(5)残留オーステナイトの平均結晶粒径:1.0μm以下
残留オーステナイトの平均結晶粒径を1.0μm以下とし、個々の粒を微細分散させておくことで、加工誘起マルテンサイトを起点としたクラック発生を抑制し、TS×ELの低下を防止することができる。残留オーステナイトの平均結晶粒径が1.0μm超になると、残留オーステナイトが粗大なマルテンサイトへと変態するため、早期破断を起こし、あるいは、クラックが発生する。残留オーステナイトの平均結晶粒径は、好ましくは0.94μm以下、さらに好ましくは0.8μm以下である。
本明細書において、鋼の断面をEBSP解析装置により測定し、EBSPの解析データから、結晶方位差(斜角)が15°を超える境界、すなわち、大角粒界を結晶粒界として残留オーステナイト粒を定義する。
(6)残留オーステナイトの連結率:5.0以上
個々の残留オーステナイト粒同士が連結することによって、L方向への変形時加工硬化挙動とC方向への変形時の加工硬化挙動との間に顕著な差異が発現する。詳細なメカニズムは不明であるが、L方向への変形時には、残留オーステナイトの加工誘起マルテンサイト変態が抑制される一方で、C方向への変形時には、残留オーステナイトの加工誘起マルテンサイト変態は抑制されず、TRIP効果によって加工硬化が促進されることにより、TSの異方性を高めることができるため、当該差異が発現すると考えられる。
「残留オーステナイトが連結している」とは、2つ以上の残留オーステナイト粒が大角粒界を境界として接していることを意味する。残留オーステナイト粒が連続して連結した一群の残留オーステナイト粒を「残留オーステナイトの連結物」と呼ぶことがある。
「残留オーステナイトの連結率」は、残留オーステナイト粒の全個数を、連結していない残留オーステナイト粒および残留オーステナイトの連結物の合計の個数で除した値を意味する。
残留オーステナイトの連結率が5.0未満では所望の異方性が得られない。従って、残留オーステナイトの連結率は5.0以上であり、好ましくは6.0以上、より好ましくは7.0以上である。
以下、各鋼組織の面積率、並びに残留オーステナイトの平均結晶粒径および連結率の評価方法の一例を説明する。
[鋼組織の面積率の測定]
鋼板の圧延方向に垂直な板厚断面を研磨し、ピクラール液で腐食して組織を顕出させた後、板厚/4の領域を対象に、FE−SEM(Field−Emission Scanning Electron Microscope、電界放出型走査電子顕微鏡)にて、倍率10000倍で、10μm×12μmの領域を無作為に10視野撮影し、SEM像を得る。得られたSEM像について組織の分別を行い、画像解析ソフト、例えば、MEDIA CYBERNETICS社製画像解析ソフト「ImagePro Plus ver. 7.0」を用いて、各組織の面積率を視野ごとに算出し、10視野の平均値を各組織の面積率とする。
フェライトおよびマルテンサイトの面積率については、以下のように測定してよい。すなわち、鋼の焼鈍組織ままでは、フェライトと焼き入れままマルテンサイトとの区別が困難であるため、組織分率に変化がなく焼き入れままマルテンサイト中にセメンタイト析出のみが生じる温度域(例えば、300℃で30分保持)で焼戻しを行う。焼戻し後の鋼を用いて、上記と同様の方法で組織観察を行い、フェライトおよびマルテンサイト(炭化物が析出している領域)の合計の面積率に対するフェライトの面積率の比率を視野ごとに算出し、当該比率の10視野の平均値Aを求め、下記(1)式および下記(2)式を用いて、フェライトの面積率およびマルテンサイトの面積率をそれぞれ求める。

フェライトの面積率(%)
=[100−(残留オーステナイトの面積率+フェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計の面積率)]×A (1)

マルテンサイトの面積率(%)
=[100−(残留オーステナイトの面積率+フェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計の面積率)]×(1−A) (2)
[残留オーステナイトの平均結晶粒径の測定]
鋼板の圧延方向に垂直な板厚断面を研磨し、板厚/4の領域を対象に、FE−SEMに付属のEBSD(Electron BackScatter Diffraction、電子後方散乱回折)解析装置にて、無作為に選択した20μm×20μmの領域5視野について、ステップ間隔0.05μmで測定する。解析ソフト、例えば、TSLソリューションズ社製解析ソフト「OIM Analysis 7」を用いて、残留オーステナイトの領域に限定して平均結晶粒径を視野ごとに算出し、5視野の平均値を残留オーステナイトの平均結晶粒径とする。上記測定の際、結晶方位差(斜角)が15°を超える境界、すなわち、大角粒界を結晶粒界として、残留オーステナイト粒を定義する。
[残留オーステナイトの連結率の測定]
EBSDによる測定では、結晶方位差(斜角)が15°を超える境界、すなわち、大角粒界を結晶粒界として、残留オーステナイト粒が定義されるため、残留オーステナイトの連結物を構成する個々の残留オーステナイトは個別に1個ずつカウントされる。そのため、EBSDにより、残留オーステナイト粒の全個数を測定することができる。
一方、FE−SEMによる測定では、残留オーステナイトの連結物を構成する個々の残留オーステナイト粒は個別にカウントできず、残留オーステナイトの連結物が1個としてカウントできる。そのため、FE−SEMにより、連結していない残留オーステナイト粒および残留オーステナイトの連結物の合計の個数を測定することができる。
EBSD測定およびFE−SEM測定の上記特性を利用し、以下のように残留オーステナイトの連結率を測定することができる。
EBSDによる残留オーステナイトの平均結晶粒径の測定の際に観察した上記5視野について、残留オーステナイト粒の全個数を視野ごとに算出し、当該全個数の5視野の平均値Bを求める。当該個数の測定には、解析ソフト、例えば、TSLソリューションズ社製解析ソフト「OIM Analysis 7」を用いてよい。上記測定の際、板厚/4の位置において残留オーステナイト粒が大角粒界を境界として接していない場合、それ以外の位置で当該残留オーステナイト粒同士が接していても、当該残留オーステナイト粒は連結していないものとして扱ってよい。
また、FE−SEMによる残留オーステナイトの面積率の測定の際に得られた上記10視野のSEM像について、画像解析ソフト、例えば、MEDIA CYBERNETICS社製画像解析ソフト「ImagePro Plus ver. 7.0」を用いて、連結していない残留オーステナイト粒および残留オーステナイトの連結物の合計の個数を視野ごとに算出し、当該個数の10視野の平均値Cを求める。
下記(3)式を用いて、残留オーステナイトの連結率を求める。

残留オーステナイトの連結率=B/C (3)
2.化学成分組成
本発明の実施形態に係る鋼板は、C:0.05〜0.25質量%、Si:0質量%超、3.0質量%以下、Mn:5.0〜10.0質量%、P:0質量%超、0.100質量%以下、S:0質量%超、0.010質量%以下、Al:0.001〜3.0質量%、およびN:0質量%超、0.0100質量%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる。
以下、各元素について詳述する。
(1)C:0.05〜0.25質量%
CはMnとともにオーステナイト安定化元素として残留オーステナイト分率の増加および残留オーステナイトの加工に対する安定性向上に寄与する。このような作用を有効に発揮させるためには、C含有量は0.05質量%以上である必要があり、好ましくは0.10質量%以上である。ただし、C含有量が0.25質量%超では最終焼鈍で硬質なマルテンサイトが過度に生成してしまうほか、溶接性を悪化させるという問題も生じる。そのため、C含有量は0.25質量%以下であり、好ましくは0.20質量%以下である。
(2)Si:0質量%超、3.0質量%以下
Siはフェライトの固溶強化元素として有用であり、ELの低下を最小限としつつ高TS化に寄与する。しかし、過度に添加すると局部延性が低下し、TS×ELを低下させる。そのため、Si含有量0質量%超、3.0質量%以下とする。Si含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
(3)Mn:5.0〜10.0質量%
Mnはオーステナイト安定化元素として残留オーステナイト分率の増加および残留オーステナイトの加工に対する安定性向上に寄与する。このような作用を有効に発揮させるためには、Mn含有量は5.0質量%以上とする必要があり、好ましくは6.0質量%以上である。ただし、Mn含有量が10.0質量%超では残留オーステナイトが粗大化してTS×ELが低下してしまう。そのため、Mn含有量は10.0質量%以下であり、好ましくは9.0質量%以下である。
(4)P:0質量%超、0.100質量%以下
Pは不純物元素として不可避的に存在し、0.100質量%を超えて含まれるとELが劣化する。そのため、P含有量は0.100質量%以下とする。P含有量は、好ましくは0.03質量%以下である。P含有量は少なければ少ない程好ましく、0質量%であることが最も好ましいが、製造工程上の制約などにより0質量%超、例えば、0.001質量%程度残存してしまう場合もある。
(5)S:0質量%超、0.010質量%以下
Sは不純物元素として不可避的に存在し、MnS等の硫化物系介在物を形成し、割れの起点となってELを低下させる元素である。このため、S含有量は0.010質量%以下とする。S含有量は、好ましくは0.005質量%以下である。S含有量は少なければ少ない程好ましく、0質量%であることが最も好ましいが、製造工程上の制約などにより0質量%超、例えば、0.001質量%程度残存してしまう場合もある。
(6)Al:0.001〜3.0質量%、
Alは脱酸材として用いられるものであるが、その含有量が0.001質量%未満では鋼の清浄作用が十分に得られず、一方、Al含有量が3.0質量%を超えると鋼を脆化させ、鋳造時の鋼片割れを引き起こす。そのため、Al含有量は0.001〜3.0質量%とする。Al含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上であり、好ましくは2.8質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下である。
(7)N:0質量%超、0.0100質量%以下
Nは不純物元素として不可避的に存在し、歪時効により伸びを低下させるうえ、Alと結合し粗大な窒化物として析出するため、破断の起点となりTS×Elを低下させる。したがって、Nの含有量はできるだけ低い方が望ましく、N含有量は0.0100質量%以下とした。N含有量は、好ましくは0.006質量%以下である。N含有量は少なければ少ない程好ましく、0質量%であることが最も好ましいが、製造工程上の制約などにより0質量%超、例えば、0.001質量%程度残存してしまう場合もある。
(8)残部
基本成分は上記のとおりであり、残部は鉄および不可避的不純物(例えば、Sb等)である。不可避的不純物は、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素である。
なお、例えば、P、SおよびNのように、通常、含有量が少ないほど好ましく、従って不可避的不純物であるが、その組成範囲について上記のように別途規定している元素がある。このため、本明細書において、残部を構成する「不可避的不純物」という場合は、別途その組成範囲が規定されている元素を除いた概念である。
さらに、本発明の実施形態に係る鋼板は、必要に応じて以下の任意元素を含有していてもよく、含有される成分に応じて鋼板の特性が更に改善される。
(9)Cr:0.01〜0.20質量%、Mo:0.01〜0.20質量%、Cu:0.01〜0.20質量%、Ni:0.01〜0.20質量%、およびB:0.0001〜0.02質量%からなる群から選択される1種以上
Cr、Mo、Cu、NiおよびBは、鋼の強化元素として有用な元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、Cr、Mo、CuおよびNiの含有量はそれぞれ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、B含有量は、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0002質量%以上である。ただし、これらの元素は過剰に含有させても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるので、Cr、Mo、CuおよびNiの含有量はそれぞれ、好ましくは0.20質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下であり、B含有量は好ましくは0.02質量%以下、より好ましくは0.006質量%以下である。
(10)Ca:0.0005〜0.01質量%、Mg:0.0005〜0.01質量%、およびREM:0.0001〜0.01質量%からなる群から選択される1種以上
Ca、MgおよびREMは、鋼中硫化物の形態を制御し、加工性向上に有効な元素である。ここで、本発明の実施形態に用いられるREM(希土類元素)としては、Sc、Yおよびランタノイド等が挙げられる。上記作用を有効に発揮させるためには、CaおよびMgの含有量はそれぞれ、好ましくは0.0005質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上であり、REM含有量は、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0002質量%以上である。ただし、これらの元素は過剰に含有させても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるので、CaおよびMgの含有量はそれぞれ、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.003質量%以下であり、REM含有量は、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.006質量%以下である。
4.製造方法
本発明の実施形態に係る鋼板の製造方法は、(1)上述の化学成分組成を有する鋼スラブを熱間圧延し、その後室温まで冷却して熱延板を得る熱延工程と、(2)前記熱延板を、(Ac1+30℃)〜(Ac1+100℃)の軟質化焼鈍温度で、1.0〜72時間保持する軟質化焼鈍工程と、(3)前記軟質化焼鈍後の熱延板を、25〜65%の冷延率で冷間圧延して冷延板を得る冷延工程と、(4)前記冷延板を、3.0℃/秒以上の平均昇温速度で、[(Ac1+Ac3)/2−50℃]〜[(Ac1+Ac3)/2+10℃]の均熱温度まで昇温し、前記均熱温度で10〜1800秒保持する均熱工程とを含む。
以下、各工程について詳述する。
(1)熱延工程
上述の化学成分組成を有する鋼スラブを熱間圧延し、その後室温まで冷却して熱延板を得る。熱間圧延条件は特に限定されない。例えば、鋳造した鋼スラブを直接加熱炉に装入し、あるいは、鋳造した鋼スラブを一旦室温まで冷却した後に加熱炉に装入して均熱し、熱間圧延の後、巻取りして冷却し、熱延コイル(熱延板)としてよい。
(2)軟質化焼鈍工程
得られた熱延板を、(Ac1+30℃)〜(Ac1+100℃)の軟質化焼鈍温度で、1.0〜72時間保持する。冷間圧延前に上記条件で熱延板に軟質化焼鈍を施すことにより、鋼組織を、焼戻しマルテンサイトと、当該焼戻しマルテンサイトのラス間に沿って存在する微細なオーステナイトとの2相組織とすることができる。軟質化焼鈍を施さない場合、所望の最終焼鈍組織が得られないばかりか、熱延板の強度が高過ぎるため実質的に冷間圧延が不可能となる。
軟質化焼鈍温度がAc1+30℃未満である場合、あるいは、保持時間が1.0時間未満である場合、焼戻しマルテンサイトのラス間に沿って存在する微細なオーステナイトが十分に得られないため、最終組織で連結率の高い残留オーステナイトが得られず、TSの異方性が低下する。一方、軟質化焼鈍温度がAc1+100℃超である場合、あるいは、保持時間が72時間超である場合、オーステナイトが粗大化するため、最終組織で微細な残留オーステナイト粒が得られず、TS×ELが低下する。
軟質化焼鈍の手段は特に問わないが、長時間均熱が必要なため、バッチ炉を用いておこなうことが好ましい。また、軟質化焼鈍の前に酸洗を行ってもよい。
(3)冷延工程
軟質化焼鈍後の熱延板を、25〜65%の冷延率で冷間圧延して冷延板を得る。冷間圧延により、軟質化焼鈍で生成した、焼戻しマルテンサイトのラス間の残留オーステナイトの一部を加工誘起マルテンサイトに変態させる。冷延率が25%未満の場合、加工誘起マルテンサイトの生成が不足するため、最終組織で残留オーステナイトの連結率が低下し、TSの異方性が低下する。一方、冷延率が65%を超える場合、加工誘起マルテンサイトを起点とした割れが発生するので、冷間圧延が不可能となる。
(4)均熱工程
得られた冷延板を、3.0℃/秒以上の平均昇温速度で、[(Ac1+Ac3)/2−50℃]〜[(Ac1+Ac3)/2+10℃]の均熱温度まで昇温し、前記均熱温度で10〜1800秒保持する。
残留オーステナイトを微細化するため、上記均熱温度まで3.0℃/秒以上で昇温する。平均昇温速度が3.0℃/秒未満では残留オーステナイトが粗大化し、TS×ELが低下する。当該平均昇温速度の上限は特に限定されない。
フェライト−オーステナイト2相域の所定温度範囲内、すなわち、[(Ac1+Ac3)/2−50℃]〜[(Ac1+Ac3)/2+10℃]の均熱温度で、10〜1800秒保持する。当該温度範囲内で均熱を行うことで、フェライトの面積率および残留オーステナイトの面積率を制御する。均熱温度が[(Ac1+Ac3)/2−50℃]未満である場合、あるいは、保持時間が10秒未満である場合、生成するオーステナイト量が不足するため、最終組織で残留オーステナイトの面積率が低下し、TS、TS×ELおよびTSの異方性が低下する。一方、均熱温度が[(Ac1+Ac3)/2+10℃]超である場合、あるいは、保持時間が1800秒超である場合、生成するオーステナイトが過剰となると同時に粗大化するため、最終組織でマルテンサイトの面積率が過大となり、フェライトおよび/または残留オーステナイトの面積率が低下すると共に、残留オーステナイトが粗大化し、TS×ELおよびTSの異方性が低下する。なお、均熱中、上記均熱温度の範囲内であれば温度が変動してもよい。
均熱工程後の冷却条件は特に限定されない。ガスジェットまたは水冷で室温まで急冷してよく、空冷による徐冷をおこなってもよい。また、冷却の途中、所定温度で保持してもよい。
均熱工程後、所定温度まで冷却し、メッキ浴に浸漬してメッキ鋼板としてよく、あるいは、均熱工程後、過冷却を行い、次いで再加熱し、メッキ浴に浸漬してメッキ鋼板としてもよい。メッキ鋼板とした後、合金化工程での加熱を経てメッキ合金化を行ってもよい。また、通常の工程範囲の圧下率でスキンパス圧延を加えてもよい。
以上のように本発明の実施形態に係る鋼板の製造方法を説明したが、本発明の実施形態に係る鋼板の所望の特性を理解した当業者が試行錯誤を行い、本発明の実施形態に係る所望の特性を有する鋼板を製造する方法であって、上記の製造方法以外の方法を見出す可能性がある。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
本発明の適用性を確証するため、以下のようにしてラボ試験を実施した。まず、下記表1に示す鋼を溶製した。なお、Ac1およびAc3は後述の冷延板を用いて昇温速度3.0℃/sの条件で昇温試験を行い、オーステナイト生成に伴う収縮を測定することで実験的に求めた。溶製した鋼を熱間鍛造で板厚50mmの鋼スラブに加工し、1200℃にて30分均熱後、12mmに粗圧延し、再び1200℃にて30分均熱後、熱間圧延にて板厚2.3mmに仕上げ、水冷にて500℃まで冷却後、500℃に加熱された大気炉に装入し30分保持後、炉冷し巻取によるコイル冷却を模擬した。その後、表2に示す条件で、軟質化焼鈍を大気炉にて行い、空冷後、酸洗にてスケールを除去し、冷間圧延して板厚1.4mmの冷延板を作製した。ただし、製造No.5については、2.3mmに仕上げた熱延板の表裏面を等量減厚して1.75mmとし、冷間圧延で1.4mmの冷延板を作製した(冷延率20%)。均熱工程の模擬は雰囲気制御熱処理シミュレータにて行い、均熱工程における均熱後、200℃までガスジェット(表2では「GJ」と略記。)で冷却した、その後空冷した。
なお、表1〜3において、下線を付した数値は、本発明の範囲から外れていることを示している。
Figure 0006811690
Figure 0006811690
上述のようにして得られた各鋼板について、下記(1)〜(3)の要領で、鋼組織の面積率、残留オーステナイトの平均結晶粒径、および残留オーステナイトの連結率を測定した。
[鋼組織の面積率の測定]
鋼板の圧延方向に垂直な板厚断面を研磨し、ピクラール液で腐食して組織を顕出させた後、板厚/4の領域を対象に、日本電子社製ショットキー電界放出形走査電子顕微鏡にて、倍率10000倍で、10μm×12μmの領域を無作為に10視野撮影し、SEM像を得た。得られたSEM像について、特に腐食されて黒いコントラストで観察される領域を残留オーステナイトと判定し、また、フェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の分別を行い、MEDIA CYBERNETICS社製画像解析ソフト「ImagePro Plus ver. 7.0」を用いて、各組織の面積率を視野ごとに算出し、10視野の平均値を各組織の面積率とした。
フェライトおよびマルテンサイトの面積率については、以下のように測定した。
鋼板を300℃で30分保持して焼戻しを行い、焼き戻し後の鋼を用いて、上記と同様の方法で組織観察を行い、フェライトおよびマルテンサイト(炭化物が析出している領域)の合計の面積率に対するフェライトの面積率の比率を視野ごとに算出し、当該比率の10視野の平均値Aを求め、下記(1)式および下記(2)式を用いて、フェライトの面積率およびマルテンサイトの面積率をそれぞれ求めた。

フェライトの面積率(%)
=[100−(残留オーステナイトの面積率+フェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計の面積率)]×A (1)

マルテンサイトの面積率(%)
=[100−(残留オーステナイトの面積率+フェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計の面積率)]×(1−A) (2)
[残留オーステナイトの平均結晶粒径の測定]
鋼板の圧延方向に垂直な板厚断面を研磨し、板厚/4の領域を対象に、FE−SEMに付属のEBSD(Electron BackScatter Diffraction、電子後方散乱回折)解析装置にて、無作為に選択した20μm×20μmの領域5視野について、ステップ間隔0.05μmで測定した。TSLソリューションズ社製解析ソフト「OIM Analysis 7」を用いて、残留オーステナイトの領域に限定して平均結晶粒径を視野ごとに算出し、5視野の平均値を残留オーステナイトの平均結晶粒径とする。上記測定の際、結晶方位差(斜角)が15°を超える境界、すなわち、大角粒界を結晶粒界として、残留オーステナイト粒を定義した。
[残留オーステナイトの連結率の測定]
EBSDによる残留オーステナイトの平均結晶粒径の測定の際に観察した上記5視野について、残留オーステナイト粒の全個数を視野ごとに算出し、当該全個数の5視野の平均値Bを求めた。当該個数の測定には、TSLソリューションズ社製解析ソフト「OIM Analysis 7」を用いた。上記測定の際、板厚/4の位置において残留オーステナイト粒が大角粒界を境界として接していない場合、それ以外の位置で当該残留オーステナイト粒同士が接していても、当該残留オーステナイト粒は連結していないものとして扱った。
また、FE−SEMによる残留オーステナイトの面積率の測定の際に得られた上記10視野のSEM像について、画像解析ソフト、例えば、MEDIA CYBERNETICS社製画像解析ソフト「ImagePro Plus ver. 7.0」を用いて、連結していない残留オーステナイト粒および残留オーステナイトの連結物の合計の個数を視野ごとに算出し、当該個数の10視野の平均値Cを求めた。
下記(3)式を用いて、残留オーステナイトの連結率を求めた。

残留オーステナイトの連結率=B/C (3)
[TSおよびELの測定]
上述のようにして得られた各鋼板について、引張試験により機械的特性を測定した。引張試験は、圧延方向と垂直な方向(C方向)および圧延方向に平行な方向(L方向)からJIS5号試験片をそれぞれ採取して実施し、C方向についてはTS(TS)およびEL(EL)を、L方向についてはTS(TS)をそれぞれ測定した。そして、TS×ELおよびΔTS=TS−TSを算出した。
各測定結果を表3に示す。鋼板の機械的特性について、TS:1180MPa以上、TS×EL:27000MPa%以上、およびΔTS:100MPa以上の全てを満たすものを合格として「○」で示し、それ以外のものを不合格として「×」で示した。
なお、表3中、「α」はフェライト、「M」はマルテンサイト、「γ」は残留オーステナイトを示す。
Figure 0006811690
表3に示すように、発明鋼(評価が○のもの)である鋼No.1、12、14、17、18および20〜25は、いずれも、本発明の実施形態で規定する全ての要件を満たす実施例であり、TS、TS×ELおよびΔTSは全て合格基準を満たしており、引張強度の異方性を有する高強度鋼延性鋼板が得られることを確認できた。
これに対して、比較鋼(評価が×のもの)である鋼No.2〜11、13、15、16、19は、本発明の実施形態で規定する要件を満たしていない比較例であり、TS、TS×ELおよびΔTSの少なくとも1つが劣っている。
鋼No.2は、軟質化焼鈍温度が低過ぎ、残留オーステナイトの連結率が不足し、ΔTSが劣っていた。
鋼No.3は、軟質化焼鈍温度が高過ぎ、残留オーステナイトが粗大化し、TS×ELが劣っていた。
鋼No.4は、軟質化焼鈍の保持時間が短過ぎ、残留オーステナイトの連結率が不足し、ΔTSが劣っていた。
鋼No.5は、冷延率が低過ぎ、残留オーステナイトの連結率が不足し、ΔTSが劣っていた。
鋼No.6は、冷延後の均熱温度への平均昇温速度が低過ぎ、残留オーステナイトが粗大化し、TS×ELが劣っていた。
鋼No.7は、均熱温度が低過ぎ、フェライトが過剰になる一方で、残留オーステナイトが不足し、TS、TS×ELおよびΔTSが劣っていた。
鋼No.8は、均熱温度が高過ぎ、残留オーステナイトが不足する一方で、マルテンサイトが過剰になると共に、残留オーステナイトが粗大化し、TS×ELおよびΔTSが劣っていた。
鋼No.9は、均熱での保持時間が短過ぎ、フェライトが過剰になる一方で、残留オーステナイトが不足し、TS、TS×ELおよびΔTSが劣っていた。
鋼No.10は、均熱での保持時間長過ぎ、残留オーステナイトが不足する一方で、マルテンサイトが過剰になると共に、残留オーステナイトが粗大化し、TS×ELおよびΔTSが劣っていた。
鋼No.11(鋼種B)は、C含有量が低過ぎ、フェライトが過剰になる一方で、残留オーステナイトが不足し、TS、TS×ELおよびΔTSが劣っていた。
鋼No.13(鋼種D)は、C含有量が高過ぎ、フェライトが不足する一方で、マルテンサイトが過剰になり、TS×ELが劣っていた。
鋼No.15(鋼種F)は、Si含有量が高過ぎ、TS×ELが劣っていた。
鋼No.16(鋼種G)は、Mn含有量が低過ぎ、残留オーステナイトが不足し、TS、TS×ELおよびΔTSが劣っていた。
鋼No.19(鋼種J)は、Mn含有量が高過ぎ、残留オーステナイトが粗大化し、TS×ELが劣っていた。
以上の結果、本発明の適用性が確認できた。

Claims (4)

  1. C :0.05〜0.25質量%、
    Si:0質量%超、3.0質量%以下、
    Mn:5.0〜10.0質量%、
    P :0質量%超、0.100質量%以下、
    S :0質量%超、0.010質量%以下、
    Al:0.001〜3.0質量%、および
    N :0質量%超、0.0100質量%以下
    を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
    フェライトの面積率が40%以上、80%未満であり、
    マルテンサイトの面積率が25%未満であり、
    残留オーステナイトの面積率が20%以上であり、
    フェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計の面積率が10%未満であり、
    残留オーステナイトの平均結晶粒径が1.0μm以下であり、
    残留オーステナイトの連結率が5.0以上であ
    圧延方向と垂直な方向の引張強度が1180MPa以上であり、
    圧延方向と垂直な方向の引張強度と、圧延方向と垂直な方向の伸びとの積が27000MPa%以上であり、
    圧延方向と垂直な方向の引張強度と、圧延方向に平行な方向の引張強度との差が100MPa以上である、鋼板。
  2. Cr:0.01〜0.20質量%、
    Mo:0.01〜0.20質量%、
    Cu:0.01〜0.20質量%、
    Ni:0.01〜0.20質量%、および
    B :0.0001〜0.02質量%からなる群から選択される1種以上をさらに含有する請求項1に記載の鋼板。
  3. Ca :0.0005〜0.01質量%、
    Mg :0.0005〜0.01質量%、および
    REM:0.0001〜0.01質量%からなる群から選択される1種以上をさらに含有する請求項1または2に記載の鋼板。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学成分組成を有する鋼スラブを熱間圧延し、その後室温まで冷却して熱延板を得る熱延工程と、
    前記熱延板を、(Ac1+30℃)〜(Ac1+100℃)の軟質化焼鈍温度で、1.0〜72時間保持する軟質化焼鈍工程と、
    前記軟質化焼鈍後の熱延板を、25〜65%の冷延率で冷間圧延して冷延板を得る冷延工程と、
    前記冷延板を、3.0℃/秒以上の平均昇温速度で、[(Ac1+Ac3)/2−50℃]〜[(Ac1+Ac3)/2+10℃]の均熱温度まで昇温し、前記均熱温度で10〜1800秒保持する均熱工程とを含む、鋼板の製造方法。
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