I.定義
本明細書における目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」とは、下記に定義するように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークのことである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、同じアミノ酸配列を含むことができる、又は該アクセプターヒトフレームワークはアミノ酸配列の変更を含むことができる。いくつかの実施形態では、アミノ酸の変更の数は10個以下である、9個以下である、8個以下である、7個以下である、6個以下である、5個以下である、4個以下である、3個以下である、又は2個以下である。いくつかの実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列に対して配列が同一である。
「親和性」は、分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合性相互作用の総和の強度を意味する。別途指示がない限り、本明細書で使用する場合、「結合親和性」は、結合対(例えば抗体及び抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を意味する。分子XのパートナーYに対する該分子Xの親和性を一般的に、解離定数(Kd)で表すことができる。本明細書に記載の方法等の当該技術分野で既知の一般的な方法によって、親和性を測定することができる。結合親和性の測定の具体的な説明であって例示的な実施形態を下記に記載する。
「親和性成熟」抗体は、1個又は複数個の超可変領域(HVR)における1個又は複数個の改変がない親抗体と比較して、そのような改変を有する抗体を意味しており、そのような改変により、抗原に対する抗体の親和性が改善される。
用語「デスレセプター5(DR5)及び線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合する二重特異性抗体」は、DR5及びFAPを発現する細胞を標的とする診断薬及び/又は治療薬として抗体が有用であるのに十分な親和性でDR5及びFAPに結合することができる二重特異性抗体を意味する。具体的には、「デスレセプター5(DR5)及び線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合する二重特異性抗体」は、腫瘍細胞上のDR5及び前記腫瘍を囲む間質中のFAPを標的とする二重特異性抗体を意味する。一実施形態では、デスレセプター5(DR5)及び線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合する二重特異性抗体の無関係の非FAPタンパク質又は非DR5タンパク質への結合の程度は、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくアッセイ(例えばBiacore)又はフローサイトメトリー(FACS)で測定した場合に抗体のDR5又はFAPへの結合の約10%未満である。ある実施形態では、デスレセプター5(DR5)及び線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合する二重特異性抗体は、≦1μMの、≦100nMの、≦10nMの、≦1nMの、≦0.1nMの、≦0.01nMの又は≦0.001nM(例えば10−8M以下、例えば10−8Mから10−13M、例えば10−9Mから10−13M)の解離定数(Kd)を有する。ある実施形態では、デスレセプター5(DR5)及び線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合する二重特異性抗体は、様々な種由来のDR5又はFAPで保存されているDR5又はFAPのエピトープに結合する。好ましくは、前記二重特異性抗体は、ヒトの及びカニクイザルのDR5と、ヒトの、カニクイザルの及びマウスのFAPとに結合する。
用語「デスレセプター5(DR5)に特異的に結合する抗体」は、DR5を発現する細胞を標的とする診断薬及び/又は治療薬として抗体が有用であるのに十分な親和性でDR5に結合することができる抗体を意味する。一実施形態では、デスレセプター5(DR5)に特異的に結合する抗体の無関係の非DR5タンパク質への結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又はフローサイトメトリー(FACS)で測定した場合に抗体のDR5への結合の約10%未満である。ある実施形態では、デスレセプター5(DR5)に特異的に結合Dする抗体は、≦1μMの、≦100nMの、≦10nMの、≦1nMの、≦0.1nMの、≦0.01nMの又は≦0.001nM(例えば10−8M以下、例えば10−8Mから10−13M、例えば10−9Mから10−13M)の解離定数(Kd)を有する。ある実施形態では、デスレセプター5(DR5)に特異的に結合する抗体は、様々な種由来のDR5で保存されているDR5のエピトープに結合する。好ましくは、前記抗体は、ヒトの及びカニクイザルのDR5に結合する。用語「デスレセプター5(DR5)に特異的に結合する抗体」は、DR5及び別の抗原に結合することができる二重特異性抗体も包含する。
用語「抗体」は本明細書において最も広い意味で使用され、様々な抗体構造を包含しており、該抗体構造として、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び所望の抗原結合活性を示す限りにおいて抗体断片が挙げられるがこれらに限定されない。
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を意味する。抗体断片の例として、Fv、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2;二重特異性抗体、クロス−Fab断片;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられるがこれらに限定されない。scFv抗体は、例えばHouston,J.S.、Methods in Enzymol.203(1991)46−96)に記載されている。さらに、抗体断片は、VHドメインの特性を有する単鎖ポリペプチド、即ちVLドメインと共に集合して機能性抗原結合部位となり、それにより完全長抗体の抗原結合特性をもたらすことができる単鎖ポリペプチド、又はVLドメインの特性を有する単鎖ポリペプチド、即ちVHドメインと共に集合して機能性抗原結合部位となり、それにより完全長抗体の抗原結合特性をもたらすことができる単鎖ポリペプチドを含む。
本明細書で使用する場合、「Fab断片」は、軽鎖のVLドメイン及び定常ドメイン(CL)を含む軽鎖断片と、重鎖のVHドメイン及び第1の定常ドメイン(CH1)とを含む抗体断片を意味する。一実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている少なくとも1個のFab断片を含む。可変領域又は定常領域のどちらかの交換により、前記Fab断片は「クロス−Fab断片」又は「xFab断片」又は「クロスオーバーFab断片」とも称される。クロスオーバーFab分子の下記の2種の異なる鎖組成物が可能であり、本発明の二重特異性抗体に含まれる。一方では、Fabの重鎖の可変領域と軽鎖のFab軽鎖の可変領域とが交換されている、即ち、クロスオーバーFab分子は、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖定常領域(CH1)から構成されているペプチド鎖と、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖定常領域(CL)から構成されているペプチド鎖とを含む。このクロスオーバーFab分子はクロスFab(VLVH)とも称される。他方では、Fabの重鎖の定常領域と軽鎖の定常領域とが交換されている場合、クロスオーバーFab分子は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖定常領域(CL)から構成されるペプチド鎖と、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖定常領域(CH1)から構成されるペプチド鎖とを含む。このクロスオーバーFab分子はクロスFab(CLCH1)とも称される。クロスオーバーFab断片を含む二重特異性抗体フォーマットは、例えば、国際公開第2009/080252号、国際公開第2009/080253号、国際公開第2009/080251号、国際公開第2009/080254号、国際公開第2010/136172号、国際公開第2010/145792号及び国際公開第2013/026831号で説明されている。
「単鎖Fab断片」又は「scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)及びリンカーからなるポリペプチドであり、前記抗体ドメイン及び前記リンカーは、N末端からC末端の方向で下記の順の内の1つを有し:a)VH−CH1−リンカー−VL−CL、b)VL−CL−リンカー−VH−CH1、c)VH−CL−リンカー−VL−CH1又はd)VL−CH1−リンカー−VH−CL、ここで、前記リンカーは少なくとも30個のアミノ酸のポリペプチドであり、好ましくは32から50個のアミノ酸のポリペプチドである。前記単鎖Fab断片a)VH−CH1−リンカー−VL−CL、b)VL−CL−リンカー−VH−CH1、c)VH−CL−リンカー−VL−CH1及びd)VL−CH1−リンカー−VH−CLは、CLドメインとCH1ドメインとの間の天然のジスルフィド結合により安定化されている。さらに、これら単鎖Fab分子は、システイン残基の挿入(例えば、カバット番号付けによる、可変重鎖における44位及び可変軽鎖における100位)による鎖間ジスルフィド結合の生成によって更に安定化される場合がある。用語「N末端」はN末端の最後のアミノ酸を表す。用語「C末端」はC末端の最後のアミノ酸を表す。
「融合」又は「接続」が意味するのは、成分(例えばFab分子及びFcドメインサブユニット)が、ペプチド結合により直接的に又は1個若しくは複数個のペプチドリンカーを介して結合することである。
用語「リンカー」は本明細書で使用する場合、ペプチドリンカーを意味しており、好ましくは、少なくとも5個のアミノ酸の長さ、好ましくは5から100個の長さ、より好ましくは10から50個のアミノ酸のアミノ酸配列を有するペプチドである。一実施形態では、前記ペプチドリンカーは(GxS)n又は(GxS)nGmであり、ここでG=グリシンであり、S=セリンであり、(x=3、n=3、4、5若しくは6及びm=0、1、2若しくは3)又は(x=4、n=2、3、4若しくは5及びm=0、1、2若しくは3)であり、好ましくはx=4であり、n=2又は3であり、より好ましくはx=4であり、n=2である。一実施形態では、前記ペプチドリンカーは(G4S)2である。
用語「免疫グロブリン分子」は、天然に存在する抗体の構造を有するタンパク質を意味する。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、ジスルフィド結合している2本の軽鎖と2本の重鎖とから構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端へ、各重鎖は、可変重ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)と、続いて重鎖定常領域とも呼ばれる3個の定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)とを有する。同様に、N末端からC末端へ、各軽鎖は、可変軽ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)と、続いて軽鎖定常領域とも呼ばれる定常軽(CL)ドメインとを有する。免疫グロブリンの重鎖を、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)又はμ(IgM)と呼ばれる5つのタイプ内の1つに割り当てることができ、これらの内のいくつかをサブタイプに、例えばγ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、α1(IgA1)及びα2(IgA2)に更に分割することができる。免疫グロブリンの軽鎖を、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプの内の一方に割り当てることができる。免疫グロブリンは、免疫グロブリンのヒンジ領域を介して結合している2個のFab分子及びFcドメインから本質的に成る。
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいて参照抗体のその抗原への結合を50%以上ブロックする抗体を意味しており、逆に言うと、競合アッセイにおいて抗体のその抗原への結合を参照抗体が50%以上ブロックする。例示的な競合アッセイを本明細書に記載する。
用語「抗原結合ドメイン」は、抗原の一部又は全てに特異的に結合し該一部又は全てに対して相補的である領域を含む抗原結合分子の部分を意味する。抗原が大きい場合、抗原結合分子は抗原の特定の部分にのみ結合することができ、この部分はエピトープと呼ばれている。抗原結合ドメインは、例えば1個又は複数個の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)によってもたらされ得る。好ましくは、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)と抗体重鎖可変領域(VH)とを含む。
用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の供給源又は種に由来し、重鎖及び/又は軽鎖の残りが、通常は組換えDNA技法により調製される異なる供給源又は種に由来する抗体を意味する。ウサギ可変領域とヒト定常領域とを含むキメラ抗体が好ましい。本発明に包含される「キメラ抗体」のその他の好ましい形態は、本発明に係る特性を生じさせるために、特にC1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合に関して本発明に係る特性を生じさせるために、定常領域が元の抗体の定常領域から修飾されている又は変更されている形態である。そのようなキメラ抗体は「クラススイッチ抗体」とも呼ばれる。キメラ抗体は、免疫グロブリンの可変領域をコードするDNAセグメントと、免疫グロブリンの定常領域をコードするDNAセグメントとを含む免疫グロブリン遺伝子の発現産物である。キメラ抗体を産生する方法は、当該技術分野で公知である従来の組換えDNA技法及び遺伝子トランスフェクション技法を含む。例えばMorrison、S.L.等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81(1984)6851−6855;米国特許第5202238号及び米国特許第5204244号を参照されたい。
用語「細胞傷害性薬剤」は本明細書で使用する場合、細胞の機能を阻害する若しくは阻止する及び/又は細胞の死滅若しくは破壊を引き起こす物質を意味する。細胞傷害性薬剤として、放射性同位体(例えばAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体);化学療法剤又は化学療法薬(例えばメトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又はその他の挿入剤);増殖阻害剤;酵素及びこの断片、例えば核酸分解酵素;抗生物質;小分子毒素等の毒素又は細菌起源、真菌起源、植物起源若しくは動物起源の酵素活性毒素(この断片及び/又は変異体を含む);並びに下記に開示される様々な抗腫瘍剤又は抗がん剤が挙げられるがこれらに限定されない。
「エフェクター機能」は、抗体アイソタイプにより変化する、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を意味する。抗体のエフェクター機能の例として、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性の抗原取り込み;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方制御並びにB細胞活性化が挙げられる。
本明細書で使用する場合、用語「操作(engineer)、操作された(engineered)、操作する(engineering)」は、天然に存在する又は組み替えのポリペプチド又はこの断片の、ペプチド骨格の任意の操作又は翻訳後修飾を含むと見なす。操作として、アミノ酸配列の、グリコシル化パターンの又は個々のアミノ酸の側鎖基の修飾が挙げられ、これらの手法の組み合わせも更に挙げられる。
用語「アミノ酸変異」は本明細書で使用する場合、アミノ酸の置換、欠失、挿入及び修飾を包含することを意味する。置換、欠失、挿入及び修飾の任意の組み合わせにより最終的なコンストラクトに到達することができるが、但し、最終的なコンストラクトは、所望の特徴、例えばFc受容体への結合性の低下又は別のペプチドとの結合の増加を有する。アミノ酸配列の欠失及び挿入として、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端の欠失並びにアミノ酸の挿入が挙げられる。特定のアミノ酸変異はアミノ酸置換である。例えばFc領域の結合特性を変更する目的のために、非保存的アミノ酸置換、即ち1個のアミノ酸を異なる構造及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸に置き換えることが特に好ましい。アミノ酸置換として、20種の標準的なアミノ酸の天然に存在しないアミノ酸又は天然に存在するアミノ酸誘導体(例えば4−ヒドロキシプロリン、3−メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5−ヒドロキシリシン)による置き換えが挙げられる。アミノ酸変異を、当該技術分野で公知の遺伝学的方法又は化学的方法を使用して生じさせることができる。遺伝学的方法として、部位特異的突然変異誘発、PCR、遺伝子合成等を挙げることができる。遺伝子操作以外の方法によりアミノ酸の側鎖基を改変する方法、例えば化学的修飾も有用であることができることが意図される。本明細書では、同じアミノ酸変異を示すために様々な名称を使用することができる。例えば、Fcドメインの329位でのプロリンからグリシンへの置換を329G、G329、G329、P329G又はPro329Glyと示すことができる。
薬剤、例えば薬学的製剤の「有効量」は、所望の治療結果又は予防結果を達成するのに必要な投与量及び期間での有効な量を意味する。
本明細書では、用語「Fcドメイン」又は「Fc領域」を、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリンの重鎖のC末端領域を定義するために使用する。この用語は、天然配列Fc領域と変異体Fc領域とを含む。IgGの重鎖のFc領域の境界は若干異なる可能性があるが、ヒトIgGの重鎖のFc領域は通常、Cys226から又はPro230から重鎖のカルボキシル末端まで伸びていると定義される。しかしながら、Fc領域のC末端のリシン(Lys447)が存在していてもよいし存在していなくてもよい。本明細書では別途明記しない限り、Fc領域又は定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health、Bethesda、MD、1991に記載されているように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従っている。Fcドメインの「サブユニット」は本明細書で使用する場合、ダイマーFcドメインを形成する2個のポリペプチドの内の一方、即ち、安定した自己結合が可能な、免疫グロブリンの重鎖のC末端定常領域を含むポリペプチドを意味する。例えば、IgG Fcドメインのサブユニットは、IgG CH2及びIgG CH3定常ドメインを含む。
「Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの結合を促進する修飾」とは、ホモダイマーを形成するために、Fcドメインサブユニットを含むポリペプチドの同一のポリペプチドとの結合を減少させる又は阻止するペプチド骨格の操作又はFcドメインサブユニットの翻訳後修飾のことである。本明細書で使用する場合、結合を促進する修飾として、結合が所望される2種のFcドメインサブユニット(即ち、Fcドメインの第1のサブユニット及び第2のサブユニット)それぞれに対して行われる別々の修飾が特に挙げられ、これらの修飾は、2種のFcドメインサブユニットの結合を促進するように互いに相補的である。例えば、結合を促進する修飾により、その結合を立体的に又は静電気的にそれぞれ有利にするようにFcドメインサブユニットの内の一方又は両方の構造又は電荷が変更され得る。そのため、(ヘテロ)二量体化は、第1のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドと第2のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドとの間で生じており、これらのポリペプチドは、各サブユニットに融合した更なる成分(例えば抗原結合部分)が同じではないという意味で同一ではない可能性がある。いくつかの実施形態では、結合を促進する修飾はFcドメイン中にアミノ酸変異を含み、具体的にはアミノ酸置換を含む。特定の実施形態では、結合を促進する修飾は、Fcドメインの2種のサブユニットそれぞれにおいて別々のアミノ酸変異、具体的にはアミノ酸置換を含む。
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を意味する。可変ドメインのFRは一般的に、下記の4種のFRドメインからなる:FR1、FR2、FR3及びFR4。したがって、HVR配列及びFR配列は一般的に、VH(又はVL)中に下記の配列で現われる:FR1−H1(L1)−FR2−H2(L2)−FR3−H3(L3)−FR4。
本明細書では、用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「全抗体」を、天然型抗体の構造と実質的に同じ構造を有する抗体又は本明細書で定義するFc領域を含む重鎖を有する抗体を意味するために互換的に使用する。
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」は互換的に使用され、外因性核酸が導入されている細胞を意味しており、そのような細胞の子孫も含む。宿主細胞として「形質転換体」及び「形質転換細胞」が挙げられ、これらには、最初の形質転換細胞と、継代の数に関係なく該形質転換細胞に由来する子孫とが含まれる。子孫は、親細胞と核酸含有量が完全に同一ではない可能性があるが突然変異を含むことができる。これには、最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされた又は選択されたのと同じ機能又は生物活性を有する変異子孫が含まれる。
「ヒト抗体」とは、ヒト若しくはヒト細胞により産生された抗体、又はヒト抗体のレパートリー若しくはその他のヒト抗体をコードする配列を利用する非ヒト起源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体のことである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。本発明に係るキメラ抗体及びヒト化抗体に関して述べてもいるように、用語「ヒト抗体」は本明細書で使用する場合、例えば「クラススイッチング(class switching)」、即ちFc部分の変更又は突然変異(例えばIgG1からIgG4へ及び/又はIgG1/IgG4突然変異)によって、本発明に係る特性、特にC1q結合及び/又はFcR結合に関する本発明に係る特性を生じさせるために定常領域において修飾されているそのような抗体も含む。
用語「組換えヒト抗体」は本明細書で使用する場合、組換え手段により調製されている、発現されている、作成されている又は単離されている全てのヒト抗体、例えばNS0細胞若しくはCHO細胞等の宿主細胞から又はヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックである動物(例えばマウス)から単離された抗体、又は宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体を含むことを意図する。そのような組換えヒト抗体は、再配置された形で可変領域及び定常領域を有する。本発明に係る組換えヒト抗体はインビボでの体細胞超変異に曝されている。そのため、組換え抗体のVH領域及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系のVH配列及びVL配列に由来する及び関連するがインビボでヒト抗体生殖細胞系レパートリー内に天然に存在しない可能性がある配列である。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンのVLフレームワーク配列又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークのことである。一般的に、ヒト免疫グロブリンのVL配列及びVH配列は可変ドメイン配列のサブグループから選択される。一般的に、配列のサブグループは、
Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition、NIH Publication 91−3242、Bethesda MD(1991)、vols.1−3でのサブグループである。一実施形態では、VLの場合、サブグループはKabat等(上記参照)でのサブグループカッパIである。一実施形態では、VHの場合、サブグループはKabat等(上記参照)でのサブグループIIIである。
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基とヒトFR由来のアミノ酸残基とを含むキメラ抗体を意味する。ある実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1個の、典型的には2個の可変ドメインの実質的に全てを含むことができ、HVR(例えばCDR)の全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のHVRに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のFRに対応する。ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を任意選択的に含むことができる。抗体の「ヒト化型」、例えば非ヒト抗体は、ヒト化されている抗体を意味する。本発明に包含される「ヒト化抗体」のその他の形態は、本発明に係る特性、特にC1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合に関する本発明に係る特性を生じさせるために、定常領域が更に修飾されている又は元の抗体の定常領域から変更されている形態である。
用語「超可変領域」又は「HVR」は本明細書で使用する場合、配列が超可変である及び/又は構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの各領域を意味する。一般的に、天然型4鎖抗体は6個のHVR、即ちVH中に3個(H1、H2、H3)及びVL中に3個(L1、L2、L3)を含む。HVRは一般的に、超可変ループ及び/又は「相補性決定領域」(CDR)由来のアミノ酸残基を含み、CDRは最高の配列可変性である、及び/又は抗原認識に関与している。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26−32(L1)、50−52(L2)、91−96(L3)、26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3)で生じる。(Chothia及びLesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。例示的なCDR(CDR−L1、CDR−L2、CDR−L3、CDR−H1、CDR−H2及びCDR−H3)は、L1のアミノ酸残基24−34、L2のアミノ酸残基50−56、L3のアミノ酸残基89−97、H1のアミノ酸残基31−35B、H2のアミノ酸残基50−65及びH3のアミノ酸残基95−102で生じる。(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))。超可変領域(HVR)は相補性決定領域(CDR)とも称されており、本明細書ではこれらの用語を、抗原結合領域を形成する可変領域の部分に関して互換的に使用する。この特定の領域は、Kabat等、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(1983)及びChothia等、J.Mol.Biol.196:901−917(1987)により説明されており、定義には、互いを比較した場合にアミノ酸残基の重複又はサブセットが含まれる。それにもかかわらず、抗体又はこの変異体のCDRを意味する何れかの定義の適用は、本明細書において定義される及び使用される用語の範囲内であることを意図している。上記の各引用文献によって定義されているCDRを包含する適切なアミノ酸残基を比較として下記の表Aに記載する。特定のCDRを包含する正確な残基番号は、CDRの配列及びサイズに応じて変わるであろう。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列を付与する特定のCDRを含む残基を常套的に決定することができる。
Kabat等は、あらゆる抗体に適用可能である可変領域配列の番号付けシステムも定義した。当業者は、配列自体以外のあらゆる実験データに頼ることなく、あらゆる可変領域配列に、「カバット番号付け」であるこのシステムを一義的に割り当てることができる。本明細書で使用する場合、「カバット番号付け」は、Kabat等、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequence of Proteins of Immunological Interest」(1983)に記載されている番号付けシステムを意味する。別途明記しない限り、抗体可変領域中の特定のアミノ酸残基の位置の番号付けへの言及はカバット番号付けシステムに従っている。
VH中のCDR1を除いて、CDRは一般的に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRは、抗原に接触する残基である「特異性決定残基」又は「SDR」も含む。SDRは、短縮−CDR又はa−CDRと呼ばれるCDRの領域内に含まれる。例示的なa−CDR(a−CDR−L1、a−CDR−L2、a−CDR−L3、a−CDR−H1、a−CDR−H2及びa−CDR−H3)は、L1のアミノ酸残基31−34、L2のアミノ酸残基50−55、L3のアミノ酸残基89−96、H1のアミノ酸残基31−35B、H2のアミノ酸残基50−58及びH3のアミノ酸残基95−102で生じる。(Almagro及びFransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)を参照されたい)。別途指示がない限り、可変ドメイン中のHVR残基及びその他の残基(例えばFR残基)は本明細書において、Kabat等(上記参照)に従って番号付けされている。
「イムノコンジュゲート」とは1個又は複数個の異種分子にコンジュゲートした抗体のことであり、イムノコンジュゲートとして細胞傷害性薬剤が挙げられるがこれに限定されない。
「個体」又は「対象」とは哺乳動物のことである。哺乳動物として、家畜(例えば雌ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えばヒト及び非ヒト霊長類、例えばサル)ウサギ並びにげっ歯類(例えばマウス及びラット)が挙げられるがこれらに限定されない。ある実施形態では、個体又は対象はヒトである。
「単離された」抗体とは、その天然の環境の成分から分離されている抗体のことである。いくかの実施形態では、抗体は、例えば電気泳動(例えばSDS−PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えばイオン交換HPLC又は逆相HPLC)により測定した場合に95%超の又は99%超の純度に精製されている。抗体純度の評価の方法に関する概説として、例えばFlatman等、J.Chromatogr.B848:79−87(2007)を参照されたい。
「単離された」核酸は、その天然の環境の成分から分離されている核酸分子を意味する。単離された核酸として、通常は核酸分子を含む細胞に含まれている核酸分子が挙げられるが、この核酸分子は、染色体外に又は該核酸分子の天然の染色体上の位置とは異なる染色体の位置に存在する。
「DR5及びFAP抗体に特異的に結合する二重特異性抗体をコードする単離された核酸」は、抗体の重鎖及び軽鎖(又はこれらの断片)をコードする1種又は複数種の核酸分子を意味しており、この核酸分子として、単一のベクター又は別々のベクター中のそのような核酸分子(1種又は複数種)、及び宿主細胞中の1つ又は複数の位置で存在するそのような核酸分子(1種又は複数種)が挙げられる。
用語「モノクローナル抗体」は本明細書で使用する場合、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味しており、即ち、例えば天然に存在する変異を含む又はモノクローナル抗体調製物の産生の間に生じる可能な変異体抗体を除き、集団を構成する個々の抗体は同一であり、及び/又は同じエピトープに結合し、そのような変異体は一般的に少量で存在している。様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。そのため、修飾語句「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体の特徴を示しており、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用しようとするモノクローナル抗体を様々な技法によって作成することができ、この技法として、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージ提示法及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法が挙げられるがこれらに限定されず、そのような方法及びモノクローナル抗体を作成するためのその他の例示的な方法を本明細書に記載する。
「ネイキッド抗体」は、異種部分(例えば細胞傷害性部分)又は放射性標識にコンジュゲートされていない抗体を意味する。ネイキッド抗体は薬学的製剤中に存在することができる。
「天然型抗体」は、様々な構造を有する、天然に存在する免疫グロブリン分子を意味する。例えば、天然型IgG抗体は、ジスルフィド結合している2本の同一の軽鎖及び2本の同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端へ、各重鎖は、可変重ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)と、続いて3個の定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)とを有する。同様に、N末端からC末端へ、各軽鎖は、可変軽ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)と、続いて定常軽(CL)ドメインとを有する。抗体の軽鎖を、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプの内の一方に割り当てることができる。
用語「添付文書」を、指示、用法、投与量、投与、併用療法、禁忌に関する情報及び/又はそのような治療用製品の使用に関する警告を含む、治療用製品の市販のパッケージに慣習的に含まれる使用説明書を意味するために使用する。
「実質的に交差反応がない」とは、分子(例えば抗体)が、特に標的抗原と比較した場合に、該分子の実際の標的抗原とは異なる抗原(例えば、標的抗原に密接に関連する抗原)を認識しない又は該抗原に特異的に結合しないことを意味する。例えば、抗体は、実際の標的抗原とは異なる抗原に約10%未満から約5%未満で結合することができる、又は実際の標的抗原とは異なる抗原の約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.2%未満又は約0.1%未満からなる、好ましくは約2%未満、約1%未満又は約0.5%未満からなる、最も好ましくは約0.2%未満又は約0.1%未満からなる量で、実際の標的抗原とは異なる前記抗原に結合することができる。
参照ポリペプチド配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」を、配列を位置合わせし、必要に応じてギャップを導入して最大パーセントの配列同一性を達成した後、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合と定義し、あらゆる保存的置換を配列同一性の一部であると考慮しない。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のための位置合わせを、当該技術分野の技術内である様々な手段で実現することができ、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等の公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して実現することができる。当業者は、比較する配列の完全長にわたり最大の位置合わせを実現するのに必要なあらゆるアルゴリズム等の、配列の位置合わせに適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のために、%アミノ酸配列同一性の値を、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を使用して生成する。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムはGenentech,Inc.により書かれており、ソースコードがユーザー文書と共に米国著作権局、ワシントンD.C.、20559に提出されており、米国著作権登録第TXU510087号で登録されている。ALIGN−2プログラムは、Genentech,Inc.、カリフォルニア州、サウスサンフランシスコから公的に入手可能である、又はソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN−2プログラムを、デジタルUNIX V4.0D等のUNIXオペレーティングシステム上で使用するためにコンパイルしなければならない。全ての配列比較パラメータはALIGN−2プログラムにより設定され、変化しない。
アミノ酸配列比較のためにALIGN−2を利用する状況では、所与のアミノ酸配列Aの所与のアミノ酸配列Bに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bに対していくつかの%アミノ酸配列同一性を有する又は含む所与のアミノ酸配列Aと表現することができる)を下記のように算出する。
100×分数X/Y
式中、Xは、配列位置合わせプログラムALIGN−2によるA及びBの位置合わせの場合に、該プログラムにより同一性の一致として記録されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中におけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合には、Bに対するAの%アミノ酸配列同一性がAに対するBの%のアミノ酸配列同一性と等しくないことが認識されるだろう。別途明確に述べない限り、本明細書で使用する全ての%アミノ酸配列同一性の値は、ALIGN−2コンピュータプログラムを使用して直前の段落で記載したように得られる。
用語「薬学的製剤」は、含まれる有効成分の生物活性が有効となるような形態であり、この製剤が投与される対象に対して許容しがたいほどの毒性である追加の成分を含まない調製物を意味する。
「薬学的に許容される担体」は、薬学的製剤中における有効成分以外の、対象に対して無毒の成分を意味する。薬学的に許容される担体として、バッファー、賦形剤、安定剤又は防腐剤が挙げられるがこれらに限定されない。
別途指示がない限り、用語「デスレセプター5(DR5)」は本明細書で使用する場合、霊長類(例えばヒト)並びにげっ歯類(例えばマウス及びラット)等の哺乳動物を含むあらゆる脊椎動物起源のあらゆる天然型DR5を意味する。この用語は、「完全長で」未処理のDR5を包含し、細胞中でのプロセシングから生じるあらゆる形態のDR5を更に包含する。この用語は、DR5の天然に存在する変異体、例えばスプライス変異体又は対立遺伝子変異体も包含する。例示的なヒトDR5のアミノ酸配列は国際公開第2011/039126号に開示される。
別途指示がない限り、用語「線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)」は本明細書で使用する場合、霊長類(例えばヒト)並びにげっ歯類(例えばマウス及びラット)等の哺乳動物を含むあらゆる脊椎動物起源のあらゆる天然型FAPを意味する。この用語は、「完全長で」未処理のFAPを包含し、細胞中でのプロセシングから生じるあらゆる形態のFAPを更に包含する。この用語は、FAPの天然に存在する変異体、例えばスプライス変異体又は対立遺伝子変異体も包含する。好ましくは、本発明の抗FAP抗体はFAPの細胞外ドメインに結合する。ヒトFAPの配列を含む、例示的なFAPポリペプチド配列のアミノ酸配列は、国際公開第2012/020006号に開示されている。
本明細書で使用する場合、「治療(treatment)」(及びこの文法上の変形、例えば「治療する(treat)」又は「治療する(treating)」)は、治療する個体の自然経過を変更しようと試みる臨床的介入を意味しており、予防のために又は臨床病理学の経過中のどちらかで実施することができる。治療の望ましい効果として、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患のあらゆる直接的な又は間接的な病理学的帰結の縮小、転移を予防すること、疾患の進行速度を遅らせること、病態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の抗体を使用して、疾患の発症を遅延させる、又は疾患の進行を遅らせる。
がんという用語は本明細書で使用する場合、増殖性疾患、例えばがんを指し、例えば、結腸直腸がん、肉腫、頭頸部がん、扁平上皮癌、乳がん、膵臓がん、胃がん、非小細胞肺癌、小細胞肺がん及び中皮腫であり、上記のがんの何れかの難治性型、又は上記のがんの1種又は複数の組合せを含む。一実施形態では、がんは、結腸直腸がんであり、任意選択的に化学療法剤は、イリノテカンである。「肉腫」は本明細書で使用する場合、結合組織で増殖するがんのタイプを指す。肉腫としては、消化管間質腫瘍(一般的にGISTとして公知の、胃及び腸に見出される軟組織肉腫のタイプ)、軟組織肉腫(例えば平滑筋肉腫、線維芽細胞肉腫、脂肪肉腫、カポジ肉腫(KS)、血管肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)、滑膜肉腫、横紋筋肉腫)及び骨肉腫(例えば軟骨肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、脊索腫)が挙げられる。
がんが肉腫である実施形態では、肉腫は、任意選択的に、軟骨肉腫、平滑筋肉腫、消化管間質腫瘍、線維肉腫、骨肉腫、脂肪肉腫又は悪性線維性組織球腫である。
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを意味する。天然型抗体の重鎖及び軽鎖(それぞれVH及びVL)の可変ドメインは、各ドメインが4個の保存されたフレームワーク領域(FR)と3個の超可変領域(HVR)とを含む類似の構造を一般的に有する。(例えばKindt等, Kuby Immunology, 6th ed., W. H. Freeman and Co., 91頁 (2007)を参照されたい)。単一のVHドメイン又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であることができる。さらに、相補的なVLドメイン又はVHドメインそれぞれのライブラリをスクリーニングするために、抗原に結合する抗体由来のVHドメイン又はVLドメインを使用して、特定の抗原に結合する抗体を単離することができる。例えばPortolano等、J.Immunol.150:880−887(1993);Clarkson等、Nature 352:624−628(1991)を参照されたい。
用語「抗体の抗原結合部位」は本明細書で使用する場合、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を意味する。抗体の抗原結合部分は、「相補性決定領域」、即ち「CDR」に由来するアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」領域、即ち「FR」領域は、本明細書で定義する超可変領域残基以外の可変ドメイン領域である。したがって、抗体の軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインは、N末端からC末端へドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。特に、重鎖のCDR3は、抗原結合に最も寄与する及び抗体の特性を定義する領域である。CDR領域及びFR領域は、Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th ed.、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)の標準定義に従って決定される、及び/又は「超可変ループ」由来の残基である。
抗体特異性は、抗原の特定のエピトープに対する抗体の選択的認識を意味する。例えば、天然型抗体は単一特異的である。本発明に係る「二重特異性抗体」とは、2種の異なる抗原結合特異性を有する抗体のことである。本発明の抗体は2種の異なる抗原、即ち第1の抗原としてのDR5及び第2の抗原としてのFAPに対して特異的である。
用語「単一特異性」抗体は本明細書で使用する場合、同じ抗原の同じエピトープにそれぞれ結合する1個又は複数個の結合部位を有する抗体を表す。
用語「二重特異性」抗体は本明細書で使用する場合、同じ抗原の異なるエピトープ又は異なる抗原にそれぞれ結合する少なくとも2個の結合部位を有する抗体を表す。
本明細書で提供する抗体は多重特異性抗体であり、例えば二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2種の異なる部位に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体である。本明細書では、FAP及びDR5に対する結合特異性を有する二重特異性抗体が提供される。ある実施形態では、二重特異性抗体はDR5の2種の異なるエピトープに結合することができる。二重特異性抗体を使用して、DR5を発現する細胞に細胞傷害性薬剤を局所化することもできる。二重特異性抗体を、完全長抗体又は抗体断片として調製することができる。
多重特異性抗体を製作するための技法として、異なる特異性を有する2種の免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の組換え共発現(Milstein及びCuello, Nature 305:537 (1983))、国際公開第93/08829号及びTraunecker等, EMBO J. 10:3655 (1991)を参照されたい)並びに「ノブ・イン・ホール(knob−in−hole)」操作(例えば米国特許第5731168号を参照されたい)が挙げられるがこれらに限定されない。抗体Fc−ヘテロダイマー分子を製作するために静電ステアリング効果を操作することにより(国際公開第2009/089004号)、2個以上の抗体又は断片を架橋することにより(例えば米国特許第4676980号及びBrennan等, Science, 229:81 (1985)を参照されたい)、二重特異性抗体を産生するためにロイシンジッパーを使用することにより(例えばKostelny等, J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)を参照されたい)、二重特異性抗体断片を製作するために「ダイアボディ」技法を使用することにより(例えばHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)を参照されたい)、及び単鎖Fv(scFv)ダイマーを使用することにより(例えばGruber等, J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照されたい)、及び例えばTutt等、J.Immunol.147:60(1991)に記載されているように三重特異性抗体を調製することにより、多重特異性抗体を製作することもできる。
「オクトパス抗体」等の、3個以上の機能性抗原結合部位を有する操作抗体も本明細書に含まれる(例えばUS2006/0025576A1を参照されたい)。
抗体又は断片は本明細書において、FAP又はDR5に結合し、別の異なる抗原にも更に結合する少なくとも1個の抗原結合部位を含む「二重作用Fab」又は「DAF」も含む(例えばUS2008/0069820を参照されたい)。
用語「価」は本出願内で使用する場合、抗体分子中における特定の数の結合部位の存在を表す。したがって、用語「二価」、「四価」及び「六価」はそれぞれ、抗体分子中における2個の結合部位の存在、4個の結合部位の存在及び6個の結合部位の存在を表す。本発明に係る二重特異性抗体は少なくとも「二価」であり、「三価」又は「多価」(例えば「四価」若しくは「六価」)であることができる。
本発明の抗体は2個又はそれ以上の結合部位を有しており、二重特異性である。即ち、2個を超える結合部位が存在する(即ち抗体が三価又は多価である)場合、この抗体は二重特異性であることができる。本発明の二重特異性抗体として、多価の単鎖抗体、二特異性抗体及び三特異性抗体が挙げられ、1個又は複数個のペプチドリンカーを介して更なる抗原結合部位(例えば単鎖Fv、VHドメイン及び/若しくはVLドメイン、Fab又は(Fab)2)が結合している完全長抗体の定常ドメイン構造を有する抗体が更に挙げられる。抗体は、単一種由来の完全長であることができる、又は抗体をキメラ化若しくはヒト化することができる。
用語「ベクター」は本明細書で使用する場合、該ベクターが結合している別の核酸を伝播することができる核酸分子を意味する。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクターを含み、ベクターが導入されている宿主細胞のゲノムに取り込まれたベクターを更に含む。ある種のベクターは、該ベクターが作動可能に結合している核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターを本明細書では「発現ベクター」と称する。
用語「アミノ酸」は本出願内で使用する場合、アラニン(三文字表記:ala、一文字表記:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、トレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)及びバリン(val、V)を含む、天然に存在するカルボキシαアミノ酸の群を表す。
本明細書で使用する場合、語句「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養物」を互換的に使用し、そのような指定は全て子孫も含む。そのため、単語「トランスフェクタント」及び「トランスフェクトされた細胞」は、最初の対象細胞とトランスファーの数に関係なくそれに由来する培養物とを含む。意図的な又は不慮の突然変異に起因して、全ての子孫のDNAの内容が厳密に同一でなくてもよいことも理解されるだろう。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされたのと同じ機能又は生物活性を有する変異体子孫が含まれる。
「親和性」は、分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合性相互作用の総和の強度を意味する。別途指示がない限り、本明細書で使用する場合、「結合親和性」は、結合対(例えば抗体及び抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を意味する。分子XのパートナーYに対する該分子Xの親和性を一般的に、解離定数(Kd)で表すことができる。本明細書に記載の方法等の当該技術分野で既知の一般的な方法によって、親和性を測定することができる。結合親和性の測定の具体的な説明であって例示的な実施形態を下記に記載する。
本明細書で使用する場合、用語「結合する」又は「特異的に結合する」は、インビトロアッセイにおける、好ましくは表面プラズモン共鳴アッセイ(SPR、BIAcore,GE−Healthcare Uppsala、スウェーデン)における、抗原のエピトープに対する抗体の結合を意味する。結合の親和性は、用語ka(抗体/抗原複合体からの抗体の結合に関する速度定数)、kD(解離定数)及びKD(kD/ka)により定義される。結合する又は特異的に結合するは、10−8mol/l以下の、好ましくは10−9Mから10−13mol/lの結合親和性(KD)を意味する。
デスレセプターへの抗体の結合を、BIAcoreアッセイ(GE−Healthcare Uppsala、スウェーデン)により調べることができる。この結合の親和性は、用語ka(抗体/抗原複合体からの抗体の結合の速度定数)、kD(解離定数)及びKD(kD/ka)により定義される。
用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合することができるあらゆるポリペプチド決定基を含む。ある実施形態では、エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル又はスルホニル等の分子の化学的に活性な表面のグループ分けを含み、ある実施形態では、特定の三次元構造特性及び/又は特定の電荷特性を有することができる。エピトープは、抗体により結合される抗原の領域である。
本明細書で使用する場合、特に接頭辞「グリコ」を有する用語「操作(engineer)、操作された(engineered)、操作する(engineering)」並びに「グリコシル化操作」は、天然に存在する又は組み替えのポリペプチド又はこの断片のグリコシル化パターンのあらゆる操作を含むと見なす。グリコシル化操作として、細胞で発現される糖タンパク質のグリコシル化の変更を達成するためのオリゴ糖合成経路の遺伝的操作等の、細胞のグリコシル化装置の代謝的操作が挙げられる。さらに、グリコシル化操作には、グリコシル化での突然変異及び細胞環境の作用が含まれる。一実施形態では、グリコシル化操作は、グリコシルトランスフェラーゼ活性の変更である。特定の実施形態では、この操作により、グルコサミニルトランスフェラーゼ活性及び/又はフコシルトランスフェラーゼ活性が変更される。
II.組成物及び方法
一態様では、本発明は、例えばがんの治療用の、TRAILデスレセプター5(DR5)に特異的な第1の抗原結合部位及び線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的な第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体と、更なる化学療法剤との治療的組合せの使用に基づく。
A.FAP及びDR5に特異的な二重特異性抗体の併用療法
概して、本発明は、デスレセプター5(DR5)を標的とする抗原結合部位を、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を標的とする第2の抗原結合部位と組み合わせた二重特異性抗体、及び更なる化学療法剤を組み合わせたそれらの使用に関する。本発明に従って採用される二重特異性抗体は、デスレセプターを架橋された状態にし、標的化された腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することができる。従来のデスレセプターを標的とする抗体を超える利点は、FAPが発現される部位にのみアポトーシスを誘導する特異性に加えて、DR5の過剰なクラスター化を誘導することによるこれらの二重特異性抗体のより高い力価である。
したがって、一態様では、本発明は、がんの治療方法において併用療法として使用するための、デスレセプター5(DR5)に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位と線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位とを含む、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体であって、イリノテカン、ドキソルビシン、オキサリプラチン、5−FU、MDM2阻害剤、Bcl−2阻害剤、アブラキサン、パクリタキセル、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、シクロパミン、PARP阻害剤、イホスファミド又は抗VEGF抗体から選択される化学療法剤と組み合わせて使用される、二重特異性抗体を提供する。
好ましくは、化学療法剤は、イリノテカン、ドキソルビシン、オキサリプラチン、イホスファミド又は抗VEGF抗体から選択される。一実施形態では、化学療法剤は、イリノテカン、ドキソルビシン又はオキサリプラチンから選択される。一実施形態では、二重特異性抗体は、イリノテカンと組み合わせて使用される。一実施形態では、二重特異性抗体は、パクリタキセル及びゲムシタビンと組み合わせて使用される。一実施形態では、二重特異性抗体は、イホスファミドと組み合わせて使用される。
イリノテカン(Camptosar(登録商標))は、がんの治療に使用される薬物である。イリノテカンは、トポイソメラーゼ1の阻害によりDNAの巻き戻しを防ぐ。イリノテカンは、天然アルカロイドであるカンプトテシンの半合成のアナログであり、(S)−4,11−ジエチル−3,4,12,14−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−3,14−ジオキソ1H−ピラノ[3’,4’:6,7]−インドリジノ[1,2−b]キノリン−9−イル−[1,4’ビピペリジン]−1’−カルボキシレートと命名される。イリノテカンは、以下の構造を有する。
ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標))は、多様ながんの治療で使用する化学療法剤である。ドキソルビシンは、DNAに介入してDNA合成の阻害を引き起こし、トポイソメラーゼ2に干渉し、DNA複製を予防し、フリーラジカル産生を増加させ、その細胞傷害性に寄与する。ドキソルビシンは、天然ダウノマイシンに密接に関連するアントラサイクリン系抗生物質であり、(7S,9S)−7−[(2R,4S,5S,6S)−4−アミノ−5−ヒドロキシ−6−メチルオキサン−2−イル]オキシ−6,9,11−トリヒドロキシ−9−(2−ヒドロキシアセチル)−4−メトキシ−8,10−ジヒドロ−7H−テトラセン−5,12−ジオンと命名される。ドキソルビシンは、以下の構造を有する。
オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)は、がん、特定には結腸直腸がんの治療に使用される白金系化学療法薬である。生理溶液中で、オキサリプラチンは、活性な誘導体への非酵素的な変換を受け、DNAの架橋を引き起こし、DNAの合成及び転写を阻害する。オキサリプラチンは、[(1R,2R)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン](エタンジオエート−O,O’)白金(II)と命名され、以下の構造を有する。
5−FU(5−フルオロウラシル)は、がんの治療で広く使用される。5−FUは、ウラシルのアナログであり、細胞に輸送されて活性代謝産物に変換される。これらの代謝産物はRNA合成を妨害し、チミジル酸シンターゼ酵素を阻害して、DNAの複製及び修理に必要なチミジンの合成をブロックする。5−FUは、5−フルオロ−1H,3H−ピリミジン−2,4−ジオンと命名され、以下の構造を有する。
MDM2阻害剤は、p53−MDM2の結合をブロックし、p53経路の活性化をもたらして、細胞周期の停止及び/又はアポトーシスを引き起こす。一実施形態では、MDM2阻害剤は、RG7388である。
MDM2阻害剤RG7388は、がんの治療における臨床調査を受けた小分子のピロリジン化合物である(Dingら、J. Med. Chem. 56(14): 5979〜5983、2013)。MDM2阻害剤RG7388は、4−((2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロフェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−4−シアノ−5−ネオペンチルピロリジン−2−カルボキサミド)−3−メトキシ安息香酸と命名され、以下の構造を有する。
別の実施形態では、MDM2阻害剤は、MK−8242である。他のMDM2阻害剤は、当該技術分野において公知であり、例えばSwatu Palit Deb及びSumitra Deb:Mutant p53 and MDM2 in Cancer、Subcellular Biochemistry 85、Springer(ISBN978−94−017−9211−0)で説明されている。
Bcl−2(B細胞リンパ腫2)阻害剤は、Bcl−2ファミリータンパク質を標的とし、がん細胞のアポトーシス促進性のシグナルに対する感受性を回復させることが意図されている。一実施形態では、Bcl−2阻害剤は、ABT199である。
Bcl−2阻害剤ABT199は、GDC−0199としても公知であり、がんの治療における臨床調査を受けた選択的阻害剤である(Souersら、(2013) Nat. Med. 19(2):202〜208)。これは、アポトーシスの調節において重要なBcl−2タンパク質上に存在するBH3の構造的要素の結合を模擬するように設計された。ABT199は、(4−(4−{[2−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチルシクロヘキサ−1−エン−1−イル]メチル}ピペラジン−1−イル)−N−({3−ニトロ−4−[(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)アミノ]フェニル}スルホニル)−2−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イルオキシ)ベンズアミド)と命名され、以下の構造を有する。
タキサン(パクリタキセル及びアブラキサン)は、タイヘイヨウイチイの木であるタクスス・ブレウィフォリア(Taxus brevifolia)の小枝、針状葉及び樹皮に由来する薬物である。これらは、様々な腫瘍タイプにおいて実証済みの抗腫瘍活性を有する。タキサンは、それらの構造を過剰に安定化することにより微小管成長を妨害し、細胞分裂中にその細胞骨格を使用する細胞の能力を破壊して、異常な細胞機能及び最終的な細胞死を引き起こすことにより機能する。パクリタキセルは、ヒマシ油の毒性誘導体であるクレモフォールと呼ばれる溶媒中に溶解した細胞に送達される。アルブミンに結合したパクリタキセル(商標名アブラキサン、nab−パクリタキセルとも呼ばれる)は、パクリタキセルがアルブミンナノ粒子に結合している代替の製剤であり、これは、代替のより毒性が低い送達薬剤である。パクリタキセルは、(2R,3S)−N−ベンゾイル−3−フェニルイソセリンとの5β,20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサヒドロキシタキサ−11−エン−9−オン4,10−ジアセテート2−安息香酸13−エステルと命名され、以下の構造を有する。
ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標))は、がんの治療で使用される治療的プロテアソーム阻害剤である。ボルテゾミブは、PS−341としても公知であり、がん細胞の生存に不可欠な様々なタンパク質の分解に関与する酵素複合体である26Sプロテアソームのトレオニン残基を特異的及び可逆的に阻害する。これらのタンパク質の分解を阻害することにより、細胞はアポトーシスに対して感受性になる。ボルテゾミブは、[(1R)−3−メチル−1−[(2S)−3−フェニル−2−(ピラジン−2−イルホルムアミド)プロパンアミド]ブチル]ボロン酸と命名され、以下の構造を有する。
ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))は、DNA合成を経た細胞を死滅させる化学療法剤である。ゲムシタビンは、ヌクレオシドキナーゼによってヌクレオシド二リン酸及び三リン酸に代謝されるヌクレオシドのアナログである。ゲムシタビン二リン酸は、DNA合成に必要な酵素であるリボヌクレオチドレダクターゼを阻害し、ゲムシタビン三リン酸は、DNAへの取り込みに関してデオキシシチジンと競合する。ゲムシタビンは、4−アミノ−1−(2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)ピリミジン−2(1H)−オンと命名され、以下の構造を有する。
シクロパミンは、有望ながん治療として調査中の天然アルカロイドである。ヘッジホッグ経路の不適切な活性化は、腫瘍の形成及び増殖と関連がある。シクロパミンは、平滑化受容体に直接結合してヘッジホッグシグナル伝達経路を崩壊させることにより、がん細胞を死滅させることができる。シクロパミンは、(3β,23R)−17,23−エポキシベラトラマン−3−オールと命名され、以下の構造を有する。
PARP阻害剤は、酵素ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の薬理学的阻害剤のグループである。
一実施形態では、PARP阻害剤は、PJ34である。
PARP阻害剤PJ34は、PARP1非依存性のp21依存性の有糸分裂停止を引き起こす。Madisonら、DNA Repair(Amst).2011年10月10日;10(10):1003〜13.doi:10.1016/j.dnarep.2011年7月6日.Epub 2011年8月12日を参照されたい。PJ34は、PARP−1の活性をブロックし、傷害を受けたDNAを含有する細胞の一本鎖(single−stand)切断の修復を防ぎ、細胞死を引き起こす。PJ34は、N−(5,6−ジヒドロ−6−オキソ−2−フェナントリジニル)−2−アセトアミド塩酸塩と命名され、以下の構造を有する。
一実施形態では、PARP阻害剤は、オラパリブである。オラパリブは、DNA修復に関与する酵素であるポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の阻害剤である。これは、多くの卵巣がん、乳がん及び前立腺がんなどの、遺伝性のBRCA1又はBRCA2突然変異を有するヒトにおけるがんに作用する。オラパリブは、4−[(3−[(4−シクロプロピルカルボニル)ピペラジン−4−イル]カルボニル)−4−フルオロフェニル]メチル(2H)フタラジン−1−オンと命名され、以下の構造を有する。
イホスファミドは、がんの治療で使用されるナイトロジェンマスタードアルキル化剤であり、N−3−ビス(2−クロロエチル)−1,3,2−オキサザホスフィナン−2−アミド−2−酸化物という分類名を有し、例えば商標名Ifexとしても公知であり、以下の構造を有する。
イホスファミドは、睾丸がん、肉腫及び一部のタイプのリンパ腫などの様々ながんを治療するのに使用される化学療法薬である。
本発明の二重特異性DR5−FAP抗体との治療的組合せで採用され得る化学療法剤の更なるクラスは、抗VEGF抗体である。抗VEGF抗体の例としては、抗VEGF抗体又は血管新生を促進する成長因子受容体に標的化されたペプチド−抗体融合体、例えばベバシズマブ(Avastin(登録商標))、Lucentis(登録商標)(ラニビズマブ)、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、ラムシルマブ(Cyramza(登録商標))、イクルクマブ、HuMV833、2C3、アフリベルセプト(Zaltrap(登録商標))及びIMC−1C11が挙げられる。好ましい抗VEGF抗体は、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))である。抗VEGF抗体の更なる例は、国際公開第2010/040508号及び国際公開第2011/117329号に記載されるような抗VEGF Ang2二重特異性抗体である。
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の二重特異性抗体と、イリノテカン、ドキソルビシン、オキサリプラチン、5−FU、MDM2阻害剤、Bcl−2阻害剤、アブラキサン、パクリタキセル、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、シクロパミン、PARP阻害剤、イホスファミド又は抗VEGF抗体から選択される化学療法剤とを含む薬学的組成物を提供する。
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の二重特異性抗体と、イリノテカン、ドキソルビシン、オキサリプラチン、5−FU、MDM2阻害剤RG7388、Bcl−2阻害剤ABT199、アブラキサン、パクリタキセル、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、シクロパミン、PARP阻害剤PJ34、イホスファミド又は抗VEGF抗体から選択される化学療法剤とを含む薬学的組成物を提供する。更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の二重特異性抗体及びアブラキサン及びゲムシタビンを含む薬学的組成物を提供する。
更なる態様では、本発明は、
(i)本明細書に記載の二重特異性抗体を含む組成物を含む第1の容器と、
(ii)イリノテカン、ドキソルビシン、オキサリプラチン、5−FU、MDM2阻害剤、Bcl−2阻害剤、アブラキサン、パクリタキセル、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、シクロパミン、PARP阻害剤、イホスファミド又は抗VEGF抗体から選択される化学療法剤を含む組成物を含む第2の容器と
を含むキットを提供する。
更なる態様では、本発明は、
(i)本明細書に記載の二重特異性抗体を含む組成物を含む第1の容器と、
(ii)イリノテカン、ドキソルビシン、オキサリプラチン、5−FU、MDM2阻害剤RG7388、Bcl−2阻害剤ABT199、アブラキサン、パクリタキセル、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、シクロパミン、PARP阻害剤PJ34、イホスファミド又は抗VEGF抗体から選択される化学療法剤を含む組成物を含む第2の容器と
を含むキットを提供する。
更なる態様では、本発明は、
(i)本明細書に記載の二重特異性抗体を含む組成物を含む第1の容器と、
(ii)イリノテカン、ドキソルビシン、オキサリプラチン、5−FU、MDM2阻害剤RG7388、Bcl−2阻害剤ABT199、アブラキサン、パクリタキセル、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、シクロパミン、PARP阻害剤PJ34、イホスファミド又は抗VEGF抗体から選択される化学療法剤を含む組成物を含む第2の容器と
を含むキットを提供する。
更なる態様では、本発明は、
(i)本明細書に記載の二重特異性抗体を含む組成物を含む第1の容器と、
(ii)パクリタキセル又はアブラキサンを含む第2の容器と、
(iii)ゲムシタビンを含む第3の容器と
を含むキットを提供する。
更なる態様では、本発明は、がんの治療用の医薬の製造におけるデスレセプター5(DR5)及び線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合する二重特異性抗体と化学療法剤との組合せの使用であって、二重特異性抗体が、イリノテカン、ドキソルビシン、オキサリプラチン、5−FU、MDM2阻害剤、Bcl−2阻害剤ABT199、アブラキサン、パクリタキセル、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、シクロパミン、PARP阻害剤、イホスファミド又は抗VEGF抗体から選択される化学療法剤と組み合わせて使用される、使用を提供する。
更なる態様では、本発明は、がんの治療用の医薬の製造におけるデスレセプター5(DR5)及び線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合する二重特異性抗体と化学療法剤との組合せの使用であって、二重特異性抗体が、イリノテカン、ドキソルビシン、オキサリプラチン、5−FU、MDM2阻害剤RG7388、Bcl−2阻害剤ABT199、アブラキサン、パクリタキセル、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、シクロパミン、PARP阻害剤PJ34、イホスファミド又は抗VEGF抗体から選択される化学療法剤と組み合わせて使用される、使用を提供する。
更なる態様では、本発明は、がんの治療用の医薬の製造におけるデスレセプター5(DR5)及び線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合する二重特異性抗体と化学療法剤との組合せの使用であって、二重特異性抗体が、イリノテカンと組み合わせて使用される、使用を提供する。1つのそのような態様では、治療しようとするがんは、結腸直腸がんである。
更なる態様では、本発明は、がんの治療用の医薬の製造におけるデスレセプター5(DR5)及び線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合する二重特異性抗体と化学療法剤との組合せの使用であって、二重特異性抗体が、抗VEGF抗体、好ましくはベバシズマブと組み合わせて使用される、使用を提供する。1つのそのような態様では、治療しようとするがんは、結腸直腸がんである。
更なる態様では、本発明は、がんの治療用の医薬の製造におけるデスレセプター5(DR5)及び線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合する二重特異性抗体と化学療法剤との組合せの使用であって、二重特異性抗体が、ドキソルビシンと組み合わせて使用される、使用を提供する。1つのそのような態様では、治療しようとするがんは、肉腫である。
更なる態様では、本発明は、がんの治療用の医薬の製造におけるデスレセプター5(DR5)及び線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合する二重特異性抗体と化学療法剤との組合せの使用であって、二重特異性抗体が、イホスファミドと組み合わせて使用される、使用を提供する。1つのそのような態様では、治療しようとするがんは、肉腫である。
更なる態様では、本発明は、がんの治療用の医薬の製造におけるデスレセプター5(DR5)及び線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合する二重特異性抗体と化学療法剤との組合せの使用であって、二重特異性抗体が、アブラキサン及びゲムシタビンと組み合わせて使用される、使用を提供する。1つのそのような態様では、治療しようとするがんは、膵臓がんである。
更なる態様では、本発明は、治療的組合せを、組合せ製剤として、又は交互に哺乳動物に投与することを含む、がんの治療のための方法であって、治療的組合せが、治療的有効量の、デスレセプター5(DR5)に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位と線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位とを含む、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体と、治療的有効量の、イリノテカン、ドキソルビシン、オキサリプラチン、5−FU、MDM2阻害剤、Bcl−2阻害剤、アブラキサン、パクリタキセル、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、シクロパミン、PARP阻害剤、イホスファミド又は抗VEGF抗体から選択される化学療法剤とを含む、方法を提供する。
更なる態様では、本発明は、治療的組合せを、組合せ製剤として、又は交互に哺乳動物に投与することを含む、がんの治療のための方法であって、治療的組合せが、治療的有効量の、デスレセプター5(DR5)に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位と線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位とを含む、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体と、治療的有効量の、イリノテカン、ドキソルビシン、オキサリプラチン、5−FU、MDM2阻害剤RG7388、Bcl−2阻害剤ABT199、アブラキサン、パクリタキセル、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、シクロパミン、PARP阻害剤PJ34、イホスファミド又は抗VEGF抗体から選択される化学療法剤とを含む、方法を提供する。
いくつかの実施形態では、がんは、結腸直腸がん、肉腫、頭頸部がん、扁平上皮癌、乳がん、膵臓がん、胃がん、非小細胞肺癌、小細胞肺がん、線維形成性黒色腫及び中皮腫である。一実施形態では、がんは、結腸直腸がんである。他の実施形態では、肉腫は、軟骨肉腫、平滑筋肉腫、消化管間質腫瘍、線維肉腫、骨肉腫、脂肪肉腫又は悪性線維性組織球腫である。
更なる態様では、本発明は、治療的組合せを、組合せ製剤として、又は交互に哺乳動物に投与することを含む、がんの治療のための方法であって、治療的組合せが、治療的有効量の、デスレセプター5(DR5)に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位と線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位とを含む、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体と、治療的有効量のイリノテカンとを含む、方法を提供する。1つのそのような態様では、治療しようとするがんは、結腸直腸がんである。
更なる態様では、本発明は、治療的組合せを、組合せ製剤として、又は交互に哺乳動物に投与することを含む、がんの治療のための方法であって、治療的組合せが、治療的有効量の、デスレセプター5(DR5)に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位と線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位とを含む、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体と、治療的有効量の抗VEGF抗体、例えばベバシズマブとを含む、方法を提供する。1つのそのような態様では、治療しようとするがんは、結腸直腸がんである。
更なる態様では、本発明は、治療的組合せを、組合せ製剤として、又は交互に哺乳動物に投与することを含む、がんの治療のための方法であって、治療的組合せが、治療的有効量の、デスレセプター5(DR5)に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位と線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位とを含む、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体と、治療的有効量のアブラキサンと、治療的有効量のゲムシタビンとを含む、方法を提供する。1つのそのような態様では、治療しようとするがんは、膵臓がんである。
更なる態様では、本発明は、治療的組合せを、組合せ製剤として、又は交互に哺乳動物に投与することを含む、がんの治療のための方法であって、治療的組合せが、治療的有効量の、デスレセプター5(DR5)に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位と線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位とを含む、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体と、治療的有効量のドキソルビシンとを含む、方法を提供する。1つのそのような態様では、治療しようとするがんは、肉腫である。
更なる態様では、本発明は、治療的組合せを、組合せ製剤として、又は交互に哺乳動物に投与することを含む、がんの治療のための方法であって、治療的組合せが、治療的有効量の、デスレセプター5(DR5)に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位と線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位とを含む、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体と、治療的有効量のイホスファミドとを含む、方法を提供する。1つのそのような態様では、治療しようとするがんは、肉腫である。
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体及び化学療法剤は、任意選択的に組合せ製剤として、一緒に投与される。代替として、二重特異性抗体及び化学療法剤は、化学療法剤が二重特異性抗体の前に投与されるか、又は化学療法剤が二重特異性抗体の後に投与されるかの何れかで交互に投与されてもよい。組合せは、臨床実践に従って投与されてもよく、例えば、約1週間から3週間のインターバルで投与される。
B.DR5及びFAPに結合する例示的な二重特異性抗体
一態様では、本発明は、DR5及びFAPに結合する、単離された二重特異性抗体を提供する。FAP結合部分は国際公開第2012/020006号に記載されており、その全体が出典明示により援用される。DR5−FAP二重特異性抗体で使用しようとする特定の対象のFAP結合部分を、下記の実施形態で概説する。
ある実施形態では、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体はデスレセプターを特異的に架橋し、標的細胞のアポトーシスが誘導される。これらの二重特異性のデスレセプターアゴニスト抗体の、従来のデスレセプターを標的とする抗体に対する利点は、FAPが発現される部位のみでのアポトーシスの誘導の特異性である。上記で概説したように、本発明の発明者らは、新規で有利なDR5−FAP二重特異性抗体に組み込まれ得る既知のDR5バインダーと比較して優れた特性を有するDR5結合部分を開発した。
一態様では、本発明は、
(a)配列番号1の重鎖CDR1;
(b)配列番号2の重鎖CDR2;
(c)配列番号3の重鎖CDR3;
(d)配列番号4の軽鎖CDR1;
(e)配列番号5の軽鎖CDR2;
(f)配列番号6の軽鎖CDR3
を含む、DR5に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位と、
(a)配列番号9の重鎖CDR1;
(b)配列番号10の重鎖CDR2;
(c)配列番号11の重鎖CDR3;
(d)配列番号12の軽鎖CDR1;
(e)配列番号13の軽鎖CDR2;
(f)配列番号14の軽鎖CDR3
を含む、FAPに特異的な少なくとも1個の抗原結合部位と
を含む、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体を含む治療的組合せを提供する。
一実施形態では、二重特異性抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び配列番号8のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、DR5に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位と、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、FAPに特異的な少なくとも1個の抗原結合部位とを含む。
好ましい一実施形態では、配列番号18、配列番号19及び配列番号20を含む二重特異性抗体が提供される。別の実施形態では、配列番号17、配列番号19及び配列番号20を含む二重特異性抗体が提供される。
別の態様では、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、配列番号7のアミノ酸配列に対して90%以上の、91%以上の、92%以上の、93%以上の、94%以上の、95%以上の、96%以上の、97%以上の、98%以上の、99%以上の又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む、DR5に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位と、配列番号15の可変重鎖及び配列番号16の可変軽鎖を含む、FAPに特異的な少なくとも1個の抗原結合部位とを含む。
ある実施形態では、90%以上の、91%以上の、92%以上の、93%以上の、94%以上の、95%以上の、96%以上の、97%以上の、98%以上の又は99%以上の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、FAP及びDR5に結合する能力を保持する配列を含む。ある実施形態では、配列番号7において合計で1から10個のアミノ酸が置換されている、挿入されている、及び/又は欠失されている。ある実施形態では、HVR外の領域(即ちFR)で置換、挿入又は欠失が起こる。任意選択的に、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は配列番号7でのVH配列を含み、該VH配列はこの配列の翻訳後修飾を含む。
別の態様では、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、配列番号8のアミノ酸配列に対して90%以上の、91%以上の、92%以上の、93%以上の、94%以上の、95%以上の、96%以上の、97%以上の、98%以上の、99%以上の又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)配列を含む、DR5に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位と、配列番号15の可変重鎖及び配列番号16の可変軽鎖を含む、FAPに特異的な少なくとも1個の抗原結合部位とを含む。
ある実施形態では、90%以上の、91%以上の、92%以上の、93%以上の、94%以上の、95%以上の、96%以上の、97%以上の、98%以上の又は99%以上の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、DR5及びFAPに結合する能力を保持する配列を含む。ある実施形態では、配列番号8において合計で1から10個のアミノ酸が置換されている、挿入されている、及び/又は欠失されている。ある実施形態では、HVR外の領域(即ちFR)で置換、挿入又は欠失が起こる。任意選択的に、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は配列番号8でのVL配列を含み、該VL配列はこの配列の翻訳後修飾を含む。
別の態様では、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体であって、配列番号8の可変軽鎖及び配列番号7の可変重鎖を含む、DR5に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位と、配列番号15のアミノ酸配列に対して90%以上の、91%以上の、92%以上の、93%以上の、94%以上の、95%以上の、96%以上の、97%以上の、98%以上の、99%以上の又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む、FAPに特異的な少なくとも1個の抗原結合部位とを含む二重特異性抗体が提供される。ある実施形態では、90%以上の、91%以上の、92%以上の、93%以上の、94%以上の、95%以上の、96%以上の、97%以上の、98%以上の又は99%以上の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、FAP及びDR5に結合する能力を保持する配列を含む。ある実施形態では、配列番号15において合計で1から10個のアミノ酸が置換されている、挿入されている、及び/又は欠失されている。ある実施形態では、HVR外の領域(即ちFR)で置換、挿入又は欠失が起こる。任意選択的に、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は配列番号15でのVH配列を含み、該VH配列はこの配列の翻訳後修飾を含む。
別の態様では、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体であって、配列番号8の可変軽鎖及び配列番号7の可変重鎖を含む、DR5に特異的な少なくとも1個の抗原結合部位と、配列番号16のアミノ酸配列に対して90%以上の、91%以上の、92%以上の、93%以上の、94%以上の、95%以上の、96%以上の、97%以上の、98%以上の、99%以上の又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、FAPに特異的な少なくとも1個の抗原結合部位とを含む二重特異性抗体が提供される。ある実施形態では、90%以上の、91%以上の、92%以上の、93%以上の、94%以上の、95%以上の、96%以上の、97%以上の、98%以上の又は99%以上の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、DR5及びFAPに結合する能力を保持する配列を含む。ある実施形態では、配列番号16において合計で1から10個のアミノ酸が置換されている、挿入されている、及び/又は欠失されている。ある実施形態では、HVR外の領域(即ちFR)で置換、挿入又は欠失が起こる。任意選択的に、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は配列番号16でのVL配列を含み、該VL配列はこの配列の翻訳後修飾を含む。
別の態様では、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体であって、上記実施形態の内の何れかでのVHと、上記実施形態の内の何れかでのVLとを含む二重特異性抗体が提供される。一実施形態では、この抗体は、配列番号7及び配列番号8並びに配列番号15及び配列番号16それぞれでのVH配列及びVL配列を含み、該VH配列及びVL配列はこれらの配列の翻訳後修飾を含む。
本発明の更なる態様では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、モノクローナル抗体であり、該モノクローナル抗体としてキメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体が挙げられる。一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する前記二重特異性抗体は、ヒト抗体である。
C.DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体の例示的なフォーマット
一実施形態では、DA5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、抗体断片、例えばFv断片、Fab断片、Fab’断片、scFv断片、xFab断片、scFab断片、ダイアボディ断片又はF(ab’)2断片を含む。別の実施形態では、この抗体は、完全長抗体、例えばインタクトなIgG1抗体又は本明細書で定義するその他の抗体クラス若しくはアイソタイプを含む。
本発明に係る二重特異性抗体は少なくとも二価であり、三価又は多価であることができ、例えば四価又は六価であることができる。
本発明の二重特異性抗体は、Fcドメインと、DR5に特異的な抗原結合部位を含む少なくとも1個のFab断片と、FAPに特異的な抗原結合部位を含む少なくとも1個のFab断片とを含み、少なくとも1個のFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている。
別の実施形態では、二重特異性抗体は、Fcドメインと、DR5に特異的な抗原結合部位を含む少なくとも1個のFab断片と、FAPに特異的な抗原結合部位を含む少なくとも1個のFab断片とを含み、Fab断片の少なくとも1個が重鎖(VHCH1)を介してFcドメインの第1の又は第2のサブユニットに接続している。
実施形態の内の何れかでは、Fab断片を、直接的に又はペプチドリンカーを介してFcドメインに又は互いに融合させることができ、該ペプチドリンカーは1個又は複数個のアミノ酸を含み、典型的には約2−20個のアミノ酸を含む。ペプチドリンカーは当該技術分野で既知であり、本明細書に記載されている。好適な非免疫原性ペプチドリンカーとして、例えば(G4S)nペプチドリンカー、(SG4)nペプチドリンカー、(G4S)nペプチドリンカー又はG4(SG4)nペプチドリンカーが挙げられる。「n」は一般的には1と10との間の数であり、典型的には2と4との間の数である。第1の抗原結合部分のFab軽鎖と第2の抗原結合部分のFab軽鎖とを互いに融合させるのに特に好適なペプチドリンカーは(G4S)2である。第1の抗原結合部分のFab重鎖と第2の抗原結合部分のFab重鎖とを接続させるのに好適な例示的ペプチドリンカーは、EPKSC(D)−(G4S)2である。さらに、リンカーは免疫グロブリンのヒンジ領域(の一部)を含むことができる。特に、抗原結合部分がFcドメインサブユニットのN末端に融合する場合、抗原結合部分を、更なるペプチドリンカーの有無に関わらず免疫グロブリンのヒンジ領域又はこの一部を介して融合させることができる。
好ましい前記二重特異性抗体は、2個の結合部位それぞれがFAP及びDR5それぞれを標的とする四価である(2+2フォーマット)。別の実施形態では、前記二重特異性抗体は、3個の結合部位がDR5用であり1個の結合部位がFAP用である四価である(3+1フォーマット)。例えば、FAPを標的とする1個のFab断片とDR5を標的とする1個のFab断片とを、2個のDR5結合部位を有するIgG分子の重鎖のC末端に融合させることにより、3+1フォーマットを実現することができる。このことを、下記でより詳細に概説する。
別の好ましい実施形態では、前記二重特異性抗体は、2個の結合部位それぞれがDR5を標的とし、1個の結合部位がFAPを標的とする三価(2+1フォーマット)である。例えば、FAPを標的とするFab断片を、2個のDR5結合部位を有するIgG分子の重鎖のC末端に融合させることにより、2+1フォーマットを実現することができ、第1の抗体のFc部分は、下記に概説するノブ・イントゥ・ホール戦略に従って修飾されている。
別の好ましい実施形態では、前記二重特異性抗体は二価(1+1フォーマット)であり、即ち、DR5及びFAPそれぞれに対して一価である。本発明の二価抗体は、DR5を標的とする1個の結合部位と、FAPを標的とする1個の結合部位とを有する。例えば、Schaefer等、Proc Natl Acad Sci USA 2011;108:11187−92に記載されており、下記で概説するクロスmab技法により、1+1フォーマットを実現することができる。
本明細書では、上記実施形態の内の何れかに係る配列の内の何れかを含む、DR5及びFAPに結合する様々な二重特異性抗体のフォーマットが提供される。
1.2+2フォーマットの二重特異性DR5−FAP抗体
好ましい一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片と
を含み、
少なくとも1個のFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている。
上記二重特異性抗体はFAP及びDR5の両方に対して二価であり、2個の結合部位それぞれがFAP用及びFR5用であることから、このフォーマットは「2+2」フォーマットとも称される。2+2フォーマットを有する二重特異性抗体の例示的な構造を図1に示す。可変領域又は定常領域のどちらかの交換に起因して、上記Fab断片は、「クロス−Fab断片」又は「xFab断片」又は「クロスオーバーFab断片」とも称される。
好ましい一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片であって、FAPに特異的な抗原結合部位を含む両方のFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている、Fab断片と
を含む。
別の実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片であって、DR5に特異的な抗原結合部位を含む両方のFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片であって、FAPに特異的な抗原結合部位を含む両方のFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されている、Fab断片と
を含む。
別の実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片であって、DR5に特異的な抗原結合部位を含む両方のFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されている、Fab断片と
を含む。
Fabの重鎖及び軽鎖の可変領域の交換に起因して、FAPに特異的なクロスオーバーFab断片はそれぞれ、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖定常領域(CH1)から構成されるペプチド鎖と、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖定常領域(CL)から構成されるペプチド鎖とを含む。これらのクロスオーバーFab断片はクロスFab(VLVH)とも称され、VLCH1鎖及びVHCL鎖をそれぞれ含む。
好ましい一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片であって、FAPに特異的な抗原結合部位を含む両方のFab断片の重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されている、Fab断片と
を含む。
別の実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片であって、DR5に特異的な抗原結合部位を含む両方のFab断片の重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されている、Fab断片と
を含む。
Fabの重鎖及び軽鎖の定常領域の交換に起因して、FAPに特異的なクロスオーバーFab断片はそれぞれ、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖定常領域(CL)から構成されるペプチド鎖と、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖定常領域(CH1)から構成されるペプチド鎖とを含む。これらのクロスオーバーFab断片はクロスFab(CLCH1)とも称され、VHCL鎖及びVLCH1鎖を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する前記二重特異性抗体は、2個のFab断片がN末端に融合しており2個のFab断片がC末端に融合しているFcドメインを含み、少なくとも1個のFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている。一実施形態では、2個のFab断片は、免疫グロブリンのヒンジ領域を介してFcドメインのN末端に融合している。一実施形態では、免疫グロブリンのヒンジ領域はヒトIgG1のヒンジ領域である。一実施形態では、DR5に特異的な抗原結合部位を含む2個のFab断片及びFcドメインは、免疫グロブリン分子の一部である。特定の実施形態では、免疫グロブリン分子はIgGクラスの免疫グロブリンである。更により特定の実施形態では、免疫グロブリンはIgG1サブクラスの免疫グロブリンである。別の実施形態では、免疫グロブリンはIgG4サブクラスの免疫グロブリンである。更に特定の実施形態では、免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンである。その他の実施形態では、免疫グロブリンは、キメラ免疫グロブリン又はヒト化免疫グロブリンである。
一実施形態では、FAPに特異的な抗原結合部位を含む2個のFab断片は、ペプチドリンカーを介してFcドメインに接続している。一実施形態では、FAPに特異的な抗原結合部位を含む2個のFab断片は、ペプチドリンカーを介してFcドメインの第1の又は第2のサブユニットのC末端に接続している。そのような一実施形態では、FAPに特異的な抗原結合部位を含む前記Fab断片は、ペプチドリンカーを介してFcドメインの第2のサブユニット(CH3鎖)のC末端に接続している。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する前記二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位(即ち、DR5に特異的な2個のFab断片)を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている、Fab断片と
を含む。
別の実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位(Fab断片)を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されている、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されている、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されており、2個のFab断片が前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、前記2個のFab断片は前記IgG分子の定常重鎖のC末端に融合している。一実施形態では、前記2個のFab断片は、前記IgG分子のFcドメインの第1の又は第2のサブユニットに対して可変重鎖(VH)のN末端に融合している。
一実施形態では、前記2個のFab断片は、前記IgG分子のFcドメインの第2のサブユニット(CH3)のC末端に融合している。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されており、2個のFab断片が前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、前記2個のFab断片は前記IgG分子の定常重鎖のC末端に融合している。一実施形態では、前記2個のFab断片は、前記IgG分子のFcドメインの第1の又は第2のサブユニットに対して定常重鎖(CH1)のC末端に融合している。一実施形態では、前記2個のFab断片は、前記IgG分子のFcドメインの第2のサブユニット(CH3)のC末端に融合している。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されており、2個のFab断片が前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、前記2個のFab断片は前記IgG分子の定常重鎖のC末端に融合している。一実施形態では、前記2個のFab断片は、前記IgG分子のFcドメインの第1の又は第2のサブユニットに対して定常重鎖(CH1)のC末端に融合している。一実施形態では、前記2個のFab断片は、前記IgG分子のFcドメインの第2のサブユニット(CH3)のC末端に融合している。
更に好ましい実施形態では、FAPに特異的な2個のFab断片は、ペプチドリンカーにより、好ましくは約10−30個のアミノ酸の長さを有するペプチドリンカーにより、IgG分子に融合している。好ましくは、前記ペプチドリンカーは(G4S)2リンカー又は(G4S)4リンカーである。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されており、2個のFab断片がペプチドリンカーにより前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、前記2個のFab断片は、ペプチドリンカーにより前記IgG分子の定常重鎖のC末端に融合している。一実施形態では、前記2個のFab断片は、ペプチドリンカーにより前記IgG分子のFcドメインの第1の又は第2のサブユニットに対して定常重鎖(CH1)のC末端に融合している。
一実施形態では、前記2個のFab断片は、ペプチドリンカーにより前記IgG分子のFcドメインの第2のサブユニット(CH3)のC末端に融合している。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されており、2個のFab断片がペプチドリンカーにより前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、前記2個のFab断片は、ペプチドリンカーにより前記IgG分子の定常重鎖のC末端に融合している。
一実施形態では、前記2個のFab断片は、ペプチドリンカーにより前記IgG分子のFcドメインの第1の又は第2のサブユニットに対して可変重鎖(VH)のN末端に融合している。
一実施形態では、前記2個のFab断片は、ペプチドリンカーにより前記IgG分子のFcドメインの第2のサブユニット(CH3)のC末端に融合している。
一実施形態では、二重特異性抗体は、Fcドメインと、DR5に特異的な抗原結合部位を含む2個のFab断片と、FAPに特異的な抗原結合部位を含む2個のFab断片とを含み、Fab断片の少なくとも1個が重鎖(VHCH1)を介してFcドメインの第1の又は第2のサブユニットに融合している。
一実施形態では、二重特異性抗体は、
a)Fcドメインと、
b)DR5に特異的な抗原結合部位を含む2個のFab断片であって、Fcドメインの第1の又は第2のサブユニットに定常重鎖(CH1)のC末端で接続しているFab断片と、
c)FAPに特異的な抗原結合部位を含む2個のFab断片であって、Fcドメインの第1の又は第2のサブユニットに可変重鎖(VH)のN末端で接続している2個のFab断片と
を含む。
一実施形態では、二重特異性抗体は、
a)Fcドメインと、
b)DR5に特異的な抗原結合部位を含む2個のFab断片であって、Fcドメインの第1のサブユニットのN末端に定常重鎖(CH1)のC末端で接続しているFab断片と、
c)FAPに特異的な抗原結合部位を含む2個のFab断片であって、Fcドメインの第2のサブユニット(CH3)に可変軽鎖(VL)のN末端で接続している2個のFab断片と
を含む。
一実施形態では、DR5に特異的な抗原結合部位を含む前記2個のFab断片は、免疫グロブリンのヒンジ領域を介してFcドメインにそれぞれ融合している。具体的な実施形態では、免疫グロブリンのヒンジ領域はヒトIgG1のヒンジ領域である。一実施形態では、DR5に特異的な抗原結合部位を含む2個のFab断片及びFcドメインは、免疫グロブリン分子の一部である。特定の実施形態では、免疫グロブリン分子はIgGクラスの免疫グロブリンである。更により特定の実施形態では、免疫グロブリンはIgG1サブクラスの免疫グロブリンである。別の実施形態では、免疫グロブリンはIgG4サブクラスの免疫グロブリンである。更に特定の実施形態では、免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンである。その他の実施形態では、免疫グロブリンは、キメラ免疫グロブリン又はヒト化免疫グロブリンである。
一実施形態では、FAPに特異的な抗原結合部位を含む2個のFab断片は、ペプチドリンカーを介してFcドメインに接続している。
2+2フォーマットを有する例示的抗体
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、
配列番号1の重鎖CDR1、
配列番号2の重鎖CDR2、
配列番号3の重鎖CDR3、
配列番号4の軽鎖CDR1、
配列番号5の軽鎖CDR2、
配列番号6の軽鎖CDR3
を含む免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、
配列番号9の重鎖CDR1、
配列番号10の重鎖CDR2、
配列番号11の重鎖CDR3、
配列番号12の軽鎖CDR1、
配列番号13の軽鎖CDR2、
配列番号14の軽鎖CDR3
を含むFab断片と
を含み、
Fabの重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されており、2個のFab断片がペプチドリンカーにより前記IgG分子の定常重鎖に融合している。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、
配列番号1の重鎖CDR1、
配列番号2の重鎖CDR2、
配列番号3の重鎖CDR3、
配列番号4の軽鎖CDR1、
配列番号5の軽鎖CDR2、
配列番号6の軽鎖CDR3
を含む免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、
配列番号9の重鎖CDR1、
配列番号10の重鎖CDR2、
配列番号11の重鎖CDR3、
配列番号12の軽鎖CDR1、
配列番号13の軽鎖CDR2、
配列番号14の軽鎖CDR3
を含むFab断片と
を含み、
Fabの重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されており、2個のFab断片がペプチドリンカーにより前記IgG分子の定常重鎖に融合している。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、配列番号7の可変重鎖及び配列番号8の可変軽鎖を含む免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、Fabの重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されており、2個のFab断片がペプチドリンカーにより前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、配列番号7の可変重鎖及び配列番号8の可変軽鎖を含む免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、Fabの重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されており、2個のFab断片がペプチドリンカーにより前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
別の実施形態では、本発明の前記二重特異性抗体は、下記で概説するように、IgG分子のFc部分に修飾を含む。
一実施形態では、2本の配列番号18のVH(DR5)−Fc部分−VH(FAP)−CL鎖と、2本の配列番号19のVL(DR5)−カッパ軽鎖と、2本の配列番号20のVLCH1(FAP)鎖とを含む、上記に記載の2+2フォーマットを有する二重特異性抗体が提供される。
一実施形態では、2本の配列番号17のVH(DR5)−Fc部分−VH(FAP)−CL鎖と、2本の配列番号19のVL(DR5)−カッパ軽鎖と、2本の配列番号20のVLCH1(FAP)鎖とを含む、上記に記載の2+2フォーマット有する二重特異性抗体が提供される。
2.2+1フォーマットの二重特異性DR5−FAP抗体
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位を含む2個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片と
を含み、
少なくとも1個のFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている。
上記二重特異性抗体は三価であり、1個の結合部位がFAP用であり2個の結合部位がDR5用であることから、このフォーマットは「2+1」フォーマットとも称される。したがって、このセクションで提供される二重特異性抗体は、DR5に対して二価でありFAPに対して一価である。可変領域又は定常領域のどちらかの交換に起因して、上記Fab断片は、「クロス−Fab断片」又は「xFab断片」又は「クロスオーバーFab断片」とも称される。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片であって、FAPに特異的な抗原結合部位を含むFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片であって、FAPに特異的な抗原結合部位を含むFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されている、Fab断片と
を含む。
Fabの重鎖及び軽鎖の可変領域の交換に起因して、FAPに特異的なクロスオーバーFab断片は、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖定常領域(CH1)から構成されるペプチド鎖と、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖定常領域(CL)から構成されるペプチド鎖とを含む。このクロスオーバーFab断片はクロスFab(VLVH)とも称され、VLCH1鎖及びVHCL鎖を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む2個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片であって、FAPに特異的な抗原結合部位を含む両方のFab断片の重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されている、Fab断片と
を含む。
Fabの重鎖及び軽鎖の定常領域の交換に起因して、FAPに特異的なクロスオーバーFab断片は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖定常領域(CL)から構成されるペプチド鎖と、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖定常領域(CH1)から構成されるペプチド鎖とを含む。このクロスオーバーFab断片はクロスFab(CLCH1)とも称され、VHCL鎖及びVLCH1鎖を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する前記二重特異性抗体は、2個のFab断片がN末端に融合しているFcドメインを含む。
一実施形態では、2個のFab断片は、免疫グロブリンのヒンジ領域を介してFcドメインのN末端に融合している。一実施形態では、免疫グロブリンのヒンジ領域はヒトIgG1のヒンジ領域である。特定の実施形態では、免疫グロブリン分子はIgGクラスの免疫グロブリンである。更により特定の実施形態では、免疫グロブリンはIgG1サブクラスの免疫グロブリンである。別の実施形態では、免疫グロブリンはIgG4サブクラスの免疫グロブリンである。更に特定の実施形態では、免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンである。その他の実施形態では、免疫グロブリンは、キメラ免疫グロブリン又はヒト化免疫グロブリンである。
FAPバインダーがC末端に融合している2+1フォーマットの二重特異性DR5−FAP抗体
一実施形態では、DR5に特異的な抗原結合部位を含む2個のFab断片及びFcドメインは、免疫グロブリン分子の一部である。一実施形態では、FAPに特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片は、ペプチドリンカーを介してFcドメインの第1の又は第2のサブユニットのC末端に融合している。そのような一実施形態では、FAPに特異的な抗原結合部位を含む前記Fab断片は、ペプチドリンカーを介してFcドメインの第2のサブユニット(CH3鎖)のC末端に融合している。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位(Fab断片)を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な1個のFab断片であって、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な1個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されている、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な1個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されている、Fab断片と
を含む。
好ましい一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な1個のFab断片であって、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されており、Fab断片が前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、b)のFAPに特異的な前記Fab断片は、前記IgG分子のFcドメインの第1の又は第2のサブユニットのC末端に融合している。一実施形態では、b)の前記Fab断片は、前記IgG分子のFcドメインの第2のサブユニット(CH3)のC末端に融合している。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な1個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されており、Fab断片が前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、b)のFAPに特異的な前記Fab断片は、前記IgG分子のFcドメインの第1の又は第2のサブユニットのC末端に融合している。一実施形態では、b)の前記Fab断片は、前記IgG分子のFcドメインの第2のサブユニット(CH3)のC末端に融合している。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な1個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されており、Fab断片が前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、b)のFAPに特異的な前記Fab断片は、前記IgG分子のFcドメインの第1の又は第2のサブユニットのC末端に融合している。一実施形態では、b)の前記Fab断片は、前記IgG分子のFcドメインの第2のサブユニット(CH3)のC末端に融合している。
FAPバインダーがN末端に融合している2+1フォーマットの二重特異性DR5−FAP抗体
別の実施形態では、DR5に特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片、FAPに特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片及びFcドメインは、免疫グロブリン分子の一部である。一実施形態では、DR5に特異的な抗原結合部位を含む別のFab断片は、ペプチドリンカーを介して、IgG分子のDR5に特異的な抗原結合部位を含むFab断片のN末端に融合している。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な1個の結合部位(Fab断片)及びFAPに特異的な1個の結合部位(Fab断片)を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、FAPに特異的なFab断片がクロスFab断片である(即ち、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている)、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)DR5に特異的な1個のFab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な1個の結合部位及びFAPに特異的な1個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、FAPに特異的なFab断片がクロスFab(VLVH)断片である(即ち、重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されている)、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)DR5に特異的な1個のFab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な1個の結合部位及びFAPに特異的な1個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、FAPに特異的なFab断片がクロスFab(CLCH1)断片である(即ち、重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されている)、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)DR5に特異的な1個のFab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な1個の結合部位及びFAPに特異的な1個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、FAPに特異的なFab断片がクロスFab断片である(即ち、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている)、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)DR5に特異的な1個のFab断片であって、IgG分子の可変重鎖又は可変軽鎖のN末端に融合しているFab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な1個の結合部位(Fab断片)及びFAPに特異的な1個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、FAPに特異的なFab断片がクロスFab(VLVH)断片である(即ち、重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されている)、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)DR5に特異的な1個のFab断片であって、IgG分子の可変重鎖又は可変軽鎖のN末端に融合しているFab断片と
を含む。
一実施形態では、b)のDR5に特異的なFab断片は、a)のDR5に特異的なFab断片の可変重鎖又は可変軽鎖のN末端に融合している。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、a)DR5に特異的な1個の結合部位及びFAPに特異的な1個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、FAPに特異的なFab断片がクロスFab(CLCH1)断片である(即ち、重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されている)、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)DR5に特異的な1個のFab断片であって、IgG分子の可変重鎖又は可変軽鎖のN末端に融合しているFab断片と
を含む。
一実施形態では、b)のDR5に特異的なFab断片は、a)のDR5に特異的なFab断片の可変重鎖又は可変軽鎖のN末端に融合している。
更に好ましい実施形態では、DR5に特異的なFab断片は、ペプチドリンカーにより、好ましくは約10−30個のアミノ酸の長さを有するペプチドリンカーにより、IgG分子に融合している。好ましくは、前記ペプチドリンカーは(G4S)2リンカー又は(G4S)4リンカーである。
別の実施形態では、前記本発明の二重特異性抗体は、下記で概説するように、IgG分子のFc部分に修飾を含む。
3.3+1フォーマットの二重特異性DR5−FAP抗体
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む3個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片と
を含み、
少なくとも1個のFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている。
上記二重特異性抗体は四価であり、1個の結合部位がFAP用であり3個の結合部位がDR5用であることから、このフォーマットは「3+1」フォーマットとも称される。したがって、このセクションに記載の二重特異性抗体は、DR5に対して三価でありFAPに対して一価である。可変領域又は定常領域のどちらかの交換に起因して、上記Fab断片は、「クロス−Fab断片」又は「xFab断片」又は「クロスオーバーFab断片」とも称される。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む3個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片であって、FAPに特異的な抗原結合部位を含むFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む3個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片であって、FAPに特異的な抗原結合部位を含むFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されている、Fab断片と
を含む。
Fabの重鎖及び軽鎖の可変領域の交換に起因して、FAPに特異的なクロスオーバーFab断片は、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖定常領域(CH1)から構成されるペプチド鎖と、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖定常領域(CL)から構成されるペプチド鎖とを含む。このクロスオーバーFab断片はクロスFab(VLVH)とも称され、VLCH1鎖及びVHCL鎖を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位をそれぞれ含む3個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片であって、FAPに特異的な抗原結合部位を含むFab断片の重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されている、Fab断片と
を含む。
Fabの重鎖及び軽鎖の定常領域の交換に起因して、FAPに特異的なクロスオーバーFab断片は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖定常領域(CL)から構成されるペプチド鎖と、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖定常領域(CH1)から構成されるペプチド鎖とをそれぞれ含む。このクロスオーバーFab断片はクロスFab(CLCH1)とも称され、VHCL鎖及びVLCH1鎖を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する前記二重特異性抗体は、2個のFab断片がN末端に融合しており2個のFab断片がC末端に融合しているFcドメインを含み、FAPに特異的な1個のFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている。
一実施形態では、2個のFab断片は、免疫グロブリンのヒンジ領域を介してFcドメインのN末端に融合している。一実施形態では、免疫グロブリンのヒンジ領域はヒトIgG1のヒンジ領域である。一実施形態では、DR5に特異的な抗原結合部位を含む2個のFab断片及びFcドメインは、免疫グロブリン分子の一部である。特定の実施形態では、免疫グロブリン分子はIgGクラスの免疫グロブリンである。更により特定の実施形態では、免疫グロブリンはIgG1サブクラスの免疫グロブリンである。別の実施形態では、免疫グロブリンはIgG4サブクラスの免疫グロブリンである。更に特定の実施形態では、免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンである。その他の実施形態では、免疫グロブリンは、キメラ免疫グロブリン又はヒト化免疫グロブリンである。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位(Fab断片)を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な1個のFab断片であって、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている、Fab断片と、
c)DR5に特異的な1個のFab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位(Fab断片)を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な1個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されている、Fab断片と、
c)DR5に特異的な1個のFab断片と
を含む。
任意選択的に、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位(Fab断片)を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な1個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されている、Fab断片と、
c)DR5に特異的な1個のFab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位(Fab断片)を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な1個のFab断片であって、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている、Fab断片と、
c)DR5に特異的な1個のFab断片と
を含み、
b)及びc)のFab断片が前記IgG分子のFcドメインの第1の又は第2のサブユニットのC末端に融合している。
一実施形態では、前記b)及びc)の2個のFab断片は、前記IgG分子のFcドメインの第2のサブユニット(CH3)のC末端に融合している。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位(Fab断片)を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な1個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されている、Fab断片と、
c)DR5に特異的な1個のFab断片と
を含み、
b)及びc)のFab断片が前記IgG分子のFcドメインの第1の又は第2のサブユニットのC末端に融合している。
一実施形態では、前記b)及びc)の2個のFab断片は、前記IgG分子のFcドメインの第2のサブユニット(CH3)のC末端に融合している。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位(Fab断片)を有する免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な1個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されている、Fab断片と、
c)DR5に特異的な1個のFab断片と
を含み、
b)及びc)のFab断片が前記IgG分子のFcドメインの第1の又は第2のサブユニットに融合している。
一実施形態では、前記b)及びc)の2個のFab断片は、前記IgG分子のFcドメインの第2のサブユニット(CH3)のC末端に融合している。
更に好ましい実施形態では、このセクションに記載の実施形態の内の何れかのb)及びc)の2個のFab断片は、ペプチドリンカーにより、好ましくは約10−30個のアミノ酸の長さを有するペプチドリンカーにより、IgG分子に融合している。好ましくは、前記ペプチドリンカーは(G4S)2リンカー又は(G4S)4リンカーである。
別の実施形態では、本発明の前記二重特異性抗体は、下記で概説するように、IgG分子のFc部分に修飾を含む。
4.1+1フォーマットの二重特異性DR5−FAP抗体
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片と
を含み、
少なくとも1個のFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている。
上記二重特異性抗体は二価であり、1個の結合部位がFAP用であり1個の結合部位がDR5用であることから、このフォーマットは「1+1」フォーマットとも称される。したがって、このセクションに記載の二重特異性抗体は、DR5に対して一価でありFAPに対して一価である。可変領域又は定常領域のどちらかの交換に起因して、上記Fab断片は、「クロス−Fab断片」又は「xFab断片」又は「クロスオーバーFab断片」とも称される。1+1フォーマットでのIgG分子は、クロスmabフォーマットとも称される(Schaefer等, Proc Natl Acad Sci USA 2011; 108:11187-92を参照されたい)。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片であって、DR5に特異的な抗原結合部位を含むFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている、Fab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片であって、FAPに特異的な抗原結合部位を含むFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片であって、FAPに特異的な抗原結合部位を含むFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されている、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
Fcドメインと、
DR5に特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片と、
FAPに特異的な抗原結合部位を含む1個のFab断片であって、FAPに特異的な抗原結合部位を含むFab断片の重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されている、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する前記二重特異性抗体は、2個のFab断片がN末端に融合しているFcドメインを含み、少なくとも1個のFab断片の重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている。一実施形態では、2個のFab断片は、免疫グロブリンのヒンジ領域を介してFcドメインのN末端に融合している。一実施形態では、免疫グロブリンのヒンジ領域はヒトIgG1のヒンジ領域である。一実施形態では、DR5に特異的な抗原結合部位を含むFab断片、FAPに特異的な抗原結合部位を含むFab断片及びFcドメインは、免疫グロブリン分子の一部である。特定の実施形態では、免疫グロブリン分子はIgGクラスの免疫グロブリンである。更により特定の実施形態では、免疫グロブリンはIgG1サブクラスの免疫グロブリンである。別の実施形態では、免疫グロブリンはIgG4サブクラスの免疫グロブリンである。更に特定の実施形態では、免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンである。その他の実施形態では、免疫グロブリンは、キメラ免疫グロブリン又はヒト化免疫グロブリンである。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、DR5に特異的な1個の結合部位とFAPに特異的な1個の結合部位とを有する免疫グロブリンG(IgG)分子を含み、IgG分子の1本のアーム(Fab断片)の重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、DR5に特異的な1個の結合部位とFAPに特異的な1個の結合部位とを有する免疫グロブリンG(IgG)分子を含み、IgG分子の1本のアーム(Fab断片)の重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されている。この抗体フォーマットはクロスMab(VHVL)とも称される。
一実施形態では、FAPに特異的な結合部位を含むIgG分子の1本のアーム(Fab断片)の重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されている。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、DR5に特異的な1個の結合部位とFAPに特異的な1個の結合部位とを有する免疫グロブリンG(IgG)分子を含み、IgG分子の1本のアーム(Fab断片)の重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されている。この抗体フォーマットはクロスMab(CH1CL)とも称される。
一実施形態では、FAPに特異的な結合部位を含むIgG分子の1本のアーム(Fab断片)の重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されている。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、DR5に特異的な1個の結合部位とFAPに特異的な1個の結合部位とを有する免疫グロブリンG(IgG)分子を含み、IgG分子の1本のアーム(Fab断片)の完全なVH−CH1ドメイン及びVL−CLドメインが交換されている。このことは、Fab断片の少なくとも1個が軽鎖(VLCL)を介してFcドメインのN末端に融合していることを意味する。一実施形態では、その他のFab断片が、重鎖(VHCH1)を介してFcドメインのN末端に融合している。
この抗体フォーマットはクロスMabFabとも称される。一実施形態では、両方のFab断片が、免疫グロブリンのヒンジ領域を介してFcドメインのN末端に融合している。
D.Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能を低下させるFcドメイン修飾
好ましい一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、Fc部分が修飾されている免疫グロブリンG(IgG)分子を含む。修飾されたFc部分は、野生型のFc部分と比較してFcγ受容体に対する結合親和性が低下している。
本発明の二重特異性抗体のFcドメインは、免疫グロブリン分子の重鎖ドメインを含む1対のポリペプチド鎖からなる。例えば、免疫グロブリンG(IgG)分子のFcドメインはダイマーであり、該ダイマーの各サブユニットは、CH2及びCH3のIgG重鎖定常ドメインを含む。Fcドメインの2個のサブユニットは、互いに安定して結合することができる。
一実施形態では、本発明の二重特異性抗体のFcドメインはIgGのFcドメインである。特定の実施形態では、FcドメインはIgG1のFcドメインである。別の実施形態では、FcドメインはIgG4のFcドメインである。より具体的な実施形態では、Fcドメインは、S228位(カバット番号付け)でのアミノ酸置換を含む、特にアミノ酸置換S228Pを含むIgG4のFcドメインである。より具体的な実施形態では、Fcドメインは、アミノ酸置換L235E及びS228P及びP329Gを含むIgG4のFcドメインである。このアミノ酸置換により、IgG4抗体のインビボFabアーム交換が減少する(Stubenrauch等, Drug Metabolism and Disposition 38, 84-91 (2010)を参照されたい)。更に特定の実施形態では、Fcドメインはヒトである。Fcドメインは、標的組織における良好な蓄積及び好ましい組織−血液分配比率に寄与する長い血清半減期等の好ましい薬物動態学的特性を本発明の二重特異性抗体に付与する。しかしながら、同時期に、好ましい抗原保有細胞よりもむしろFc受容体を発現する細胞への本発明の二重特異性抗体の所望されない標的化が引き起こされ得る。したがって、特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗体のFcドメインは、天然型IgG1のFcドメインと比較して、Fc受容体に対する結合親和性の低下及び/又はエフェクター機能の低下を示す。そのような一実施形態では、Fcドメイン(若しくは前記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗体)は、天然型IgG1のFcドメイン(若しくは天然型IgG1のFcドメインを含む本発明の二重特異性抗体)と比較して、Fc受容体に対する50%未満の、好ましくは20%未満の、より好ましくは10%未満の、最も好ましくは5%未満の結合親和性を示す、及び/又は天然型IgG1のFcドメイン(若しくは天然型IgG1のFcドメインを含む本発明の二重特異性抗体)と比較して、50%未満の、好ましくは20%未満の、より好ましくは10%未満の、最も好ましくは5%未満のエフェクター機能を示す。一実施形態では、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗体)は、Fc受容体に実質的に結合しない、及び/又はエフェクター機能を実質的に誘導しない。特定の実施形態では、Fc受容体はFcγ受容体である。一実施形態では、Fc受容体はヒトFc受容体である。一実施形態では、Fc受容体は活性化Fc受容体である。具体的な実施形態では、Fc受容体は活性化ヒトFcγ受容体であり、より具体的にはヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIaであり、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。一実施形態では、Fc受容体は阻害性Fc受容体である。具体的な実施形態では、Fc受容体は阻害性ヒトFcγ受容体であり、より具体的にはヒトFcgRIIBである。一実施形態では、エフェクター機能は、CDC、ADCC、ADCP及びサイトカイン分泌の内の1種又は複数種である。特定の実施形態では、エフェクター機能はADCCである。一実施形態では、Fcドメインは、天然型IgG1のFcドメインと比較した場合、新生児のFc受容体(FcRn)に対して実質的に同様の結合親和性を示す。FcRnへの実質的に同様の結合は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗体)が天然型IgG1のFcドメイン(又は天然型IgG1のFcドメインを含む本発明の二重特異性抗体)のFcRnに対する結合親和性の約70%超を、具体的には約80%超を、より具体的には約90%超を示す場合に実現される。
ある実施形態では、Fcドメインは、非操作型Fcドメインと比較した場合に、Fc受容体に対する結合親和性が低下している及び/又はエフェクター機能が低下しているように操作されている。特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗体のFcドメインは、FcドメインのFc受容体への結合親和性及び/又はエフェクター機能を低下させる1個又は複数個のアミノ酸突然変異を含む。典型的には、同一の1個又は複数個のアミノ酸突然変異が、Fcドメインの2個のサブユニットそれぞれに存在する。一実施形態では、アミノ酸突然変異は、FcドメインのFc受容体に対する結合親和性を低下させる。一実施形態では、アミノ酸突然変異は、FcドメインのFc受容体に対する結合親和性を2倍以上、5倍以上又は10倍以上低下させる。FcドメインのFc受容体に対する結合親和性を低下させる複数個のアミノ酸突然変異が存在する実施形態では、これらのアミノ酸突然変異の組み合わせにより、FcドメインのFc受容体に対する結合親和性を10倍以上、20倍以上又は更に50倍以上低下させることができる。一実施形態では、操作型Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗体は、非操作型Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗体を比較した場合に、Fc受容体に対する結合親和性の20%未満を示し、具体的には10%未満を示し、より具体的には5%未満を示す。特定の実施形態では、Fc受容体はFcγ受容体である。いくつかの実施形態では、Fc受容体はヒトFc受容体である。一実施形態では、Fc受容体は阻害性Fc受容体である。具体的な実施形態では、Fc受容体は阻害性ヒトFcγ受容体であり、より具体的にはヒトFcgRIIBである。いくつかの実施形態では、Fc受容体は活性化Fc受容体である。具体的な実施形態では、Fc受容体は活性化ヒトFcγ受容体であり、より具外的にはヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIaであり、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。好ましくは、これらの受容体それぞれに対する結合が低下している。いくつかの実施形態では、補体成分に対する結合親和性、特にC1qに対する結合親和性も減少している。一実施形態では、新生児のFc受容体(FcRn)に対する結合親和性は低下していない。FcRnの実質的に同様の結合、即ちFcドメインの前記受容体に対する結合親和性の保存は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗体)が、非操作型のFcドメイン(又は前記非操作型のFcドメインを含む本発明の二重特異性抗体)のFcRnに対する結合親和性の約70%超を示す場合に実現される。Fcドメイン又は前記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗体は、そのような親和性の約80%超を示すことができ、更に約90%超を示すことができる。ある実施形態では、本発明の二重特異性抗体のFcドメインは、非操作型Fcドメインと比較した場合にエフェクター機能が低下しているように操作されている。エフェクター機能の低下として、下記の内の1種又は複数種を挙げることができるがこれらに限定されない:補体依存性細胞傷害(CDC)の低下、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の低下、抗体依存性細胞食作用(ADCP)の低下、サイトカイン分泌の低下、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性の抗原取り込みの低下、NK細胞への結合の低下、マクロファージへの結合の低下、単球への結合の低下、多形核細胞への結合の低下、直接的シグナル伝達を誘導するアポトーシスの低下、樹状細胞成熟の低下、又はT細胞プライミングの低下。一実施形態では、エフェクター機能の低下は、CDCの低下、ADCCの低下、ADCPの低下及びサイトカイン分泌の低下の内の1種又は複数種である。特定の実施形態では、エフェクター機能の低下はADCCの低下である。一実施形態では、ADCCの低下は、非操作型Fcドメイン(又は非操作型Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗体)により誘導されるADCCの20%未満である。
一実施形態では、FcドメインのFc受容体に対する結合親和性及び/又はエフェクター機能を低下させるアミノ酸突然変異はアミノ酸置換である。一実施形態では、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331及びP329の位置でのアミノ酸置換を含む。より具体的な実施形態では、Fcドメインは、L234、L235及びP239の位置でのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、アミノ酸置換L234A及びL235Aを含む。そのような一実施形態では、FcドメインはIgG1のFcドメインであり、特にヒトIgG1のFcドメインである。一実施形態では、Fcドメインは、P329位でのアミノ酸置換を含む。より具体的な実施形態では、アミノ酸置換はP329A又はP329Gであり、特にP329Gである。一実施形態では、FcドメインはP329位でのアミノ酸置換と、E233、L234、L235、N239及びP331から選択される位置での更なるアミノ酸置換とを含む。より具体な実施形態では、更なるアミノ酸置換は、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D又はP331Sである。特定の実施形態では、Fcドメインは、P329位、L234位及びL235位でのアミノ酸置換を含む。更に特定の実施形態では、Fcドメインは、アミノ酸突然変異L234A、L235A及びP329G(「P329G LALA」)を含む。そのような一実施形態では、FcドメインはIgG1のFcドメインであり、特にヒトIgG1のFcドメインである。
出典明示により全体が本明細書に援用される国際公開第2012/130831号に記載されているように、アミノ酸置換の「P329G LALA」の組み合わせにより、ヒトIgG1のFcドメインのFcγ受容体結合がほとんど完全に消失する。国際公開第2012/130831号には、そのような変異型Fcドメインを調製する方法、及び該変異型Fcドメインの特性、例えばFc受容体結合又はエフェクター機能を測定する方法も記載されている。
IgG4抗体は、IgG1抗体と比較してFc受容体に対する結合親和性の低下及びエフェクター機能の低下を示す。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性抗体のFcドメインはIgG4のFcドメインであり、特にヒトIgG4のFcドメインである。一実施形態では、IgG4のFcドメインは、S228位でのアミノ酸置換を含み、具体的にはアミノ酸置換S228Pを含む。Fc受容体に対する結合親和性及び/又はエフェクター機能を更に低下させるために、一実施形態では、IgG4のFcドメインはL235位でのアミノ酸置換を含み、具体的にはアミノ酸置換L235Eを含む。別の実施形態では、IgG4のFcドメインはP329位でのアミノ酸置換を含み、具体的にはアミノ酸置換P329Gを含む。特定の実施形態では、IgG4のFcドメインは、S228位、L235位及びP329位でのアミノ酸置換を含み、具体的にはアミノ酸置換S228P、L235E及びP329Gを含む。そのようなIgG4のFcドメイン変異及びこれらのFcγ受容体結合特性は、出典明示により全体が本明細書に援用される国際公開第2012/130831号に記載されている。
特定の実施形態では、天然型IgG1のFcドメインと比較してFc受容体に対する結合親和性の低下及び/又はエフェクター機能の低下を示すFcドメインは、アミノ酸置換L234A、L235A及び任意選択的にP329Gを含むヒトIgG1のFcドメイン、又はアミノ酸置換S228P、L235E及び任意選択的にP329Gを含むヒトIgG4のFcドメインである。
ある実施形態では、FcドメインのN−グリコシル化が除かれている。そのような一実施形態では、Fcドメインは、N297位でのアミノ酸突然変異を含み、特に、アスパラギンをアラニンに置き換えるアミノ酸置換(N297A)又はアスパラギンをアスパラギン酸に置き換えるアミノ酸置換(N297D)を含む。
上記及び国際公開第2012/130831号に記載のFcドメインに加えて、Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能が低下しているFcドメインとして、Fcドメイン残基238、265、269、270、297、327及び329の内の1個又は複数個の置換を有するFcドメインも挙げられる(米国特許第6737056号)。そのようなFc変異体として、残基265及び297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc変異体等の、アミノ酸265位、269位、270位、297位及び327位の内の2個又はそれ以上での置換を有するFc変異体が挙げられる(米国特許第7332581号)。
当該技術分野で公知の遺伝学的方法又は化学的方法を使用するアミノ酸の欠失、置換、挿入又は修飾により、変異型Fcドメインを調製することができる。遺伝学的方法として、DNA配列のコーディング、PCR、遺伝子合成等の部位特異的突然変異誘発を挙げることができる。正しいヌクレオチド変化を例えば配列決定により検証することができる。
例えばELISAにより、又は標準的な器具、例えばBIAcore機器(GE Healthcare)を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)により、Fc受容体への結合を容易に測定することができ、そのようなFc受容体を組換え発現により得ることができる。そのような好適な結合アッセイが本明細書に記載されている。あるいは、Fcドメインの結合親和性又はFc受容体に対するFcドメインを含む細胞活性化二重特異性抗原結合分子の結合親和性を、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株、例えばFcγIIIa受容体を発現するヒトNK細胞を使用して評価することができる。
当該技術分野で既知の方法により、Fcドメインのエフェクター機能又はFcドメインを含む本発明の二重特異性抗体のエフェクター機能を測定することができる。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの例が、米国特許第5500362号;Hellstrom等、Proc Natl Acad Sci USA 83,7059−7063(1986)及びHellstrom等、Proc Natl Acad Sci USA 82,1499−1502(1985);米国特許第5821337号;Bruggemann等、J Exp Med 166,1351−1361(1987)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を用いることができる(例えば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性細胞傷害アッセイ(CellTechnology,Inc.、カリフォルニア州、マウンテンビュー)及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害アッセイ(Promega、ウィスコンシン州、マディソン)を参照されたい)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞として、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは又は加えて、例えば、Clynes等、Proc Natl Acad Sci USA 95,652−656(1998)に開示されている動物モデル等の動物モデルにおいて、目的の分子のADCC活性をインビボで評価することができる。
いくつかの実施形態では、Fcドメインの補体成分への結合、具体的にはC1qへの結合が低下している。したがって、エフェクター機能が低下するようにFcドメインが操作されているいくつかの実施形態では、前記エフェクター機能の低下としてCDCの低下が挙げられる。本発明の二重特異性抗体がC1qに結合することができ、そのためCDC活性を有するかどうかを確認するために、C1q結合アッセイを実行することができる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施することができる(例えば、Gazzano-Santoro等, J Immunol Methods 202, 163 (1996); Cragg等, Blood 101, 1045-1052 (2003)並びにCragg及びGlennie, Blood 103, 2738-2743 (2004)を参照されたい)。
下記のセクションには、Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能を低下させるFcドメイン修飾を含む本発明の二重特異性抗体の好ましい実施形態が記載されている。
好ましい一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、Fcドメインが、天然型IgG1のFcドメインと比較してFc受容体に対する結合親和性の低下及び/又はエフェクター機能の低下を示す、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている、Fab断片と
を含む。
好ましい一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、Fcドメインが、Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低下させる1個又は複数個のアミノ酸置換を含む、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている、Fab断片と
を含む。
好ましい一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、前記1個又は複数個のアミノ酸置換が、L234位、L235位及びP329位の内の1個又は複数個である、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている、Fab断片と
を含む。
好ましい一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、Fcドメインの各サブユニットが、活性型Fc受容体若しくは阻害性Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低下させる3個のアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換がL234A、L235A及びP329Gである、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されている、Fab断片と
を含む。
好ましい一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、Fcドメインの各サブユニットが、活性型Fc受容体若しくは阻害性Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低下させる3個のアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換がL234A、L235A及びP329Gである、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されている、Fab断片と
を含む。
好ましい一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、Fcドメインの各サブユニットが、活性型Fc受容体若しくは阻害性Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低下させる3個のアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換がL234A、L235A及びP329Gである、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されている、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、Fcドメインの各サブユニットが、活性型Fc受容体若しくは阻害性Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低下させる3個のアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換がL234A、L235A及びP329Gである、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されており、2個のFab断片が、ペプチドリンカーにより前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、Fcドメインの各サブユニットが、活性型Fc受容体若しくは阻害性Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低下させる3個のアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換がL234A、L235A及びP329Gである、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、Fabの重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されており、2個のFab断片が、ペプチドリンカーにより前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、
配列番号1の重鎖CDR1、
配列番号2の重鎖CDR2、
配列番号3の重鎖CDR3、
配列番号4の軽鎖CDR1、
配列番号5の軽鎖CDR2、
配列番号6の軽鎖CDR3
を含み、Fcドメインの各サブユニットが、活性型Fc受容体及び阻害性Fc受容体への結合並びに/又はエフェクター機能を低下させる3個のアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換がL234A、L235A及びP329Gである、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、
配列番号9の重鎖CDR1、
配列番号10の重鎖CDR2、
配列番号11の重鎖CDR3、
配列番号12の軽鎖CDR1、
配列番号13の軽鎖CDR2、
配列番号14の軽鎖CDR3
を含み、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されており、2個のFab断片が、ペプチドリンカーにより前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、
配列番号1の重鎖CDR1、
配列番号2の重鎖CDR2、
配列番号3の重鎖CDR3、
配列番号4の軽鎖CDR1、
配列番号5の軽鎖CDR2、
配列番号6の軽鎖CDR3
を含み、Fcドメインの各サブユニットが、活性型Fc受容体若しくは阻害性Fc受容体への結合並びに/又はエフェクター機能を低下させる3個のアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換がL234A、L235A及びP329Gである、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、
配列番号9の重鎖CDR1、
配列番号10の重鎖CDR2、
配列番号11の重鎖CDR3、
配列番号12の軽鎖CDR1、
配列番号13の軽鎖CDR2、
配列番号14の軽鎖CDR3
を含み、Fabの重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されており、2個のFab断片が、ペプチドリンカーにより前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、
配列番号1からなる重鎖CDR1、
配列番号2の重鎖CDR2、
配列番号3の重鎖CDR3、
配列番号4の軽鎖CDR1、
配列番号5の軽鎖CDR2、
配列番号6の軽鎖CDR3
を含み、Fcドメインの各サブユニットが、活性型Fc受容体若しくは阻害性Fc受容体への結合並びに/又はエフェクター機能を低下させる3個のアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換がL234A、L235A及びP329Gである、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、
配列番号9の重鎖CDR1、
配列番号10の重鎖CDR2、
配列番号11の重鎖CDR3、
配列番号12の軽鎖CDR1、
配列番号13の軽鎖CDR2、
配列番号14の軽鎖CDR3
を含み、Fabの重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されており、2個のFab断片が、ペプチドリンカーにより前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、
配列番号7の可変重鎖及び配列番号8の可変軽鎖を含み、
Fcドメインの各サブユニットが、活性型Fc受容体若しくは阻害性Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低下させる3個のアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換がL234A、L235A及びP329Gである、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のどちらかが交換されており、2個のFab断片が、ペプチドリンカーにより前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、
配列番号7の可変重鎖及び配列番号8の可変軽鎖を含み、
Fcドメインの各サブユニットが、活性型Fc受容体若しくは阻害性Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低下させる3個のアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換がL234A、L235A及びP329Gである、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、
Fabの重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されており、2個のFab断片が、ペプチドリンカーにより前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、
a)DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子であって、
配列番号7の可変重鎖及び配列番号8の可変軽鎖を含み、
Fcドメインの各サブユニットが、活性型Fc受容体若しくは阻害性Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低下させる3個のアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換がL234A、L235A及びP329Gである、免疫グロブリンG(IgG)分子と、
b)FAPに特異的な2個のFab断片であって、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、Fabの重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されており、2個のFab断片が、ペプチドリンカーにより前記IgG分子の定常重鎖に融合している、Fab断片と
を含む。
E.ヘテロ二量体化を促進するFcドメイン修飾
本発明の二重特異性DR5−FAP抗体は、Fcドメインの2個のサブユニットの内の一方又は他方に融合している異なる抗原結合部分を含み、そのため、Fcドメインの2個のサブユニットは典型的には、2個の同一でないペプチド鎖に含まれる。これらのポリペプチドの組換え共発現及びその後の二量体化により、2種のポリペプチドのいくつかの可能な組み合わせが生じる。組換えによる産生における本発明の二重特異性抗体の収率及び純度を改善するために、本発明の二重特異性抗体のFcドメインに所望のポリペプチドの結合を促進する修飾を導入することが有利となるだろう。
したがって、特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗体のFcドメインは、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの結合を促進する修飾を含む。ヒトIgGのFcドメインの2個のサブユニット間の最も広範囲のタンパク質−タンパク質相互作用の部位は、FcドメインのCH3ドメイン中である。そのため、一実施形態では、前記修飾はFcドメインのCH3ドメイン中である。
具体的な実施形態では、前記修飾はいわゆる「ノブ・イントゥ・ホール」修飾であり、Fcドメインの2個のサブユニットの内の一方で「ノブ」修飾を含み、Fcドメインの2個のサブユニットの内のもう一方で「ホール」修飾を含む。
ノブ・イントゥ・ホール技法は、例えば米国特許第5731168号;米国特許第7695936号;Ridgway等、Prot Eng 9、617−621(1996)及びCarter、J Immunol Meth 248、7−15(2001)に記載されている。
一般的に、この方法は、第1のポリペプチドの接触面で突起(「ノブ」)を導入し、第2のポリペプチドの接触面に、対応する空洞(「ホール」)を導入し、その結果、ヘテロダイマー形成を促進してホモダイマー形成を妨げるように突起が空洞中に位置することができることを含む。第1のポリペプチドの接触面からの小さいアミノ酸側鎖をより大きい側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)で置き換えることにより、突起を構築することができる。大きなアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えばアラニン又はトレオニン)で置き換えることにより、突起と同一の又は同様のサイズの代償的空洞を第2のポリペプチドの接触面に生じさせる。
したがって、特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗体のFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインでは、アミノ酸残基が、より大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基に置き換えられており、これにより、第1のサブユニットのCH3ドメイン内に、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞中に位置することができる突起が作られており、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインでは、アミノ酸残基が、より小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基に置き換えられており、これにより、第2のサブユニットのCH3ドメイン内に、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の突起が位置することができる空洞が作られている。
突起及び空洞を、ポリペプチドをコードする核酸を例えば部位特異的突然変異誘発によって変更することにより又はペプチド合成により作ることができる。
具体的な実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインでは、366位のトレオニン残基がトリプトファン残基に置き換えられており(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインでは、407位のチロシン残基がバリン残基に置き換えられている(Y407V)。一実施形態では、Fcドメインの第2のサブユニットでは更に、366位のトレオニン残基がセリン残基に置き換えられており(T366S)、368位でのロイシン残基がアラニン残基に置き換えられている(L368A)。
更なる実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて更に、354位のセリン残基がシステイン残基に置き換えられており(S354C)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて更に、349位のチロシン残基がシステイン残基に置き換えられている(Y349C)。これらの2個のシステイン残基の導入により、Fcドメインの2個のサブユニット間にジスルフィド架橋が形成され、ダイマーが更に安定化される(Carter, J Immunol Methods 248, 7-15 (2001))。
代替実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニット及び第2のサブユニットの結合を促進する修飾は、例えば国際公開第2009/089004号に記載の、静電ステアリング効果を媒介する修飾を含む。一般的に、この方法は、2個のFcドメインのサブユニットの接触面の1個又は複数個のアミノ酸残基を荷電アミノ酸残基に置き換え、その結果、ホモダイマー形成が静電気的に好ましくないがヘテロ二量体化が静電気的に好ましくなることを含む。
一実施形態では、上記実施形態の内の何れかに係る、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体は、DR5に特異的な2個の結合部位を有する免疫グロブリンG(IgG)分子を含み、第1の重鎖のFc部分が第1の二量体化モジュールを含み、第2の重鎖のFc部分が第2の二量体化モジュールを含み、このことにより、IgG分子の2本の重鎖のヘテロ二量体化が可能となる。
更に好ましい実施形態では、ノブ・イントゥ・ホール戦略に従って、第1の二量体化モジュールがノブを含み、第2の二量体化モジュールがホールを含む(Carter P.; Ridgway J.B.B.; Presta L.G.: Immunotechnology, Volume 2, Number 1, February 1996 , pp. 73-73(1)を参照されたい)。
F.核酸配列、ベクター及び産生方法
DR5及びFAPに結合することができる二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドが、その産生のために使用され得る。本発明の二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドを、完全な二重特異性抗原結合分子若しくはDR5に結合する完全な抗体をコードする単一のポリヌクレオチドとして、又は共発現される多数の(例えば2個又はそれ以上の)ポリヌクレオチドとして発現させることができる。共発現されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、例えばジスルフィド結合又はその他の手段により結合して、機能的な二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体を形成することができる。例えば、Fab断片の重鎖部分、Fcドメインサブユニット及び任意選択的な別のFab断片(の一部)を含む二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体の一部とは別のポリヌクレオチドにより、Fab断片の軽鎖部分をコードすることができる。共発現される場合、重鎖ポリペプチドは軽鎖ポリペプチドと結合してFab断片を形成することができる。別の例では、2個のFcドメインサブユニットの内の一方及び任意選択的な1個又は複数個のFab断片(の一部)を含む、本明細書に記載の二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体の一部を、2個のFcドメインサブユニットの内の他方及び任意選択的なFab断片(の一部)を含む、本明細書に記載の二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体の一部とは別のポリヌクレオチドによりコードすることができる可能性がある。共発現される場合、Fcドメインサブユニットは結合してFcドメインを形成することができる。
ある実施形態では、このポリヌクレオチド又は核酸はDNAである。その他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドはRNAであり、例えばメッセンジャーRNA(mRAN)の形態のRNAである。本発明のRNAは一本鎖であることができる、又は二本鎖であることができる。
G.抗体変異体
ある実施形態では、上記に記載したものに加えて、本明細書に記載の二重特異性抗体及びDR5に結合する抗体のアミノ酸変異体が意図される。例えば、二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体の結合親和性及び/又はその他の生物学的特性を改善することが望まれる場合がある。二重特異性抗体若しくはDR5に結合する抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することにより、又はペプチド合成により、二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体のアミノ酸配列変異体を調製することができる。そのような修飾として、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又は該残基への挿入、及び/又は該残基の置換が挙げられる。最終コンストラクトに到達するように欠失、挿入及び置換のあらゆる組み合わせを行うことができるが、但し、最終コンストラクトは所望の特性、例えば抗原結合を保持する。
1.置換変異体、挿入変異体及び欠失変異体
ある実施形態では、1個又は複数個のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換突然変異誘発の対象の部位として、HVR及びFRが挙げられる。保存的置換を、「保存的置換」という表題で表Bに示す。より実質的な変更を、「例示的な置換」という表題で表B記載し、アミノ酸側鎖のクラスを参照して下記で更に説明する。アミノ酸置換を目的の抗体に導入することができ、産物を、所望の活性、例えば抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下、又はADCC若しくはCDCの改善に関してスクリーニングすることができる。
下記の共通の側鎖の特性に従ってアミノ酸を分類することができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらのクラスの内の1つのメンバーを別のクラスに交換することを伴うことができる。
置換変異体の一種として、親抗体(例えばヒト化抗体又はヒト抗体)の1個又は複数個の超可変領域の残基を置換することが挙げられる。一般的には、更なる研究のために選択される、生じた変異体(1種若しくは複数種)は、親抗体と比較して、いくつかの生物学的特性の改変(例えば改善)(例えば親和性の増加、免疫原性の低下)を有することができる、及び/又は親抗体のいくつかの生物学的特性を実質的に保持することができる。例示的な置換変異体は親和性成熟抗体であり、該親和性成熟抗体を、例えば、ファージ提示に基づく親和性成熟技法を使用して、例えば本明細書に記載した親和性成熟技法を使用して簡便には生成することができる。簡潔に言うと、1個又は複数個のHVR残基を突然変異させて変異体抗体をファージ上に提示させ、特定の生物活性(例えば結合親和性)に関してスクリーニングする。
HVR中で改変(例えば置換)を行って、例えば抗体の親和性を改善することができる。そのような改変を、HVRの「ホットスポット」、即ち体細胞成熟過程中に高頻度で突然変異を受けるコドンによりコードされる残基(例えばChowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008)を参照されたい)及び/又はSDR(a−CDR)で行うことができ、生じた変異体のVH若しくはVLを結合親和性に関して試験する。二次ライブラリから構築して再選択することによる親和性成熟が、例えばHoogenboom等、in Methods in Molecular Biology 178:1−37(O’Brien等編、Human Press, Totowa, NJ, (2001))に記載されている。親和性成熟に関するいくつかの実施形態では、成熟のために選択した可変遺伝子に、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング又はオリゴヌクレオチド指定突然変異)の内の何れかにより多様性を導入する。次いで、二次ライブラリを作成する。次いで、この二次ライブラリをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体変異体を同定する。多様性を導入するための別の方法として、いくつかのHVR残基(例えば同時に4−6個の残基)が無作為化されているHVR特異的手法を伴う。例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発又はモデル化を使用して、抗原結合に関与するHVR残基を具体的に同定することができる。特にCDR−H3及びCDR−L3が標的となることが多い。
ある実施形態では、置換、挿入又は欠失は、そのような改変が抗体の抗原に結合する能力を実質的に低下させない限り、1個又は複数子のHVR内で起こることができる。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば本明細書に記載の保存的置換)をHVR中で行うことができる。そのような改変は、HVRの「ホットスポット」又はSDRの外側であることができる。上記に記載の変異体のVH配列及びVL配列に関するある実施形態では、各HVRは未改変である、又は1個以下の、2個以下の若しくは3個以下のアミノ酸置換を含むことができる。
突然変異誘発のために標的化することができる抗体の残基又は領域の同定に有用な方法は、Cunningham及びWells(1989)Science、244:1081−1085により説明される「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、標的残基の残基又は群(例えば、arg、asp、his、lys及びglu等の荷電残基)を同定し、中性の又は負に荷電したアミノ酸(例えばアラニン又はポリアラニン)に置き換えて、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを確認する。最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置で更なる置換を導入することができる。あるいは又は加えて、抗体と抗原との間の接触点を同定するための抗原−抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基及び隣接残基を、置換の候補として標的化することができる、又は除去することができる。変異体をスクリーニングして、変異体が所望の特定を含むかどうかを確認することができる。
アミノ酸配列の挿入として、1個の残基から100個以上の残基を含有するポリペプチドの長さの範囲であるアミノ末端融合及び/又はカルボキシル末端融合が挙げられ、単一の又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入も更に挙げられる。末端挿入の例として、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子のその他の挿入変異体として、(例えばADEPTの場合は)酵素に対する抗体のN末端若しくはC末端への融合、又は抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの融合が挙げられる。
2.グリコシル化変異体
ある実施形態では、本明細書に記載の二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体を改変して、抗体がグリコシル化される程度を増加させる又は減少させる。アミノ酸配列を改変し、それにより1個又は複数個のグリコシル化部位を作る又は除去することにより、抗体へのグリコシル化部位の追加又はグリコシル化部位の欠失を簡便に実現することができる。
二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体がFc領域を含む場合、該Fc領域に結合した炭化水素を改変することができる。哺乳動物細胞により産生される天然型抗体は典型的には、N結合によりFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般的に結合する、分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えばWright等、TIBTECH 15:26−32(1997)を参照されたい。オリゴ糖として、様々な炭化水素、例えばマンノース、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸を挙げることができ、二分岐オリゴ糖構造の「ステム」中のGlNAcに結合したフコースも更に挙げることができる。いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体におけるオリゴ糖の改変を行って、いくつかの特性が改善されている抗体変異体を作成することができる。
一実施形態では、Fc領域に(直接的に又は間接的に)結合したフコースを欠く炭化水素構造を有す二重特異性抗体変異体又はDR5に結合する抗体の変異体が提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%から80%、1%から65%、5%から65%又は20%から40%であることができる。フコースの量は、例えば国際公開第2008/077546号に記載されているように、MALDI−TOF質量分析によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体構造、ハイブリッド構造及び高マンノース構造)の合計に対して、Asn297での糖鎖中でのフコースの平均量を算出することにより決定される。Asn297は、Fc領域中においておよそ297(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を意味するが、Asn297はまた、抗体の小さな配列変異に起因して、297位の約±3個のアミノ酸の上流又は下流、即ち294位と300位との間に位置することもできる。そのようなフコシル化変異体ではADCC機能が改善されている可能性がある。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.);米国特許出願公開第2004/0093621号(協和発酵工業株式会社)を参照されたい。「脱フコシル化」抗体変異体又は「フコース欠損」抗体変異体に関する刊行物の例として、US2003/0157108;国際公開第2000/61739号;国際公開第2001/29246号;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;国際公開第2003/085119号;国際公開第2003/084570号;国際公開第2005/035586号;国際公開第2005/035778号;国際公開第2005/053742号;国際公開第2002/031140号;Okazaki等、J.Mol.Biol.336:1239−1249(2004);Yamane−Ohnuki等、Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例として、タンパク質フコシル化を欠損しているLee13 CHO細胞(Ripka等, Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第2003/0157108A1号、Presta,L;及び国際公開第2004/056312A1号、Adams等、特に実施例11)、並びにノックアウト細胞株、例えばアルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki等, Biotech. Bioeng. 87:614 (2004); Kanda, Y.等, Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006)及び国際公開第2003/085107号を参照されたい)が挙げられる。
例えば二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体のFc領域に結合している二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二分されている、二分されたオリゴ糖を有する二重特異性抗体変異体又はDR5に結合する抗体の変異体が更に提供される。そのような二重特異性抗体変異体又はDR5に結合する抗体の変異体では、フコシル化が低減されている及び/又はADCC機能が改善されている可能性がある。そのような抗体変異体の例は、例えば国際公開第2003/011878号(Jean−Mairet等);米国特許第6602684号(Umana等)及びUS2005/0123546(Umana等)に記載されている。Fc領域に結合しているオリゴ糖中に少なくとも1個のガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。そのような抗体変異体ではCDC機能が改善されている可能性がある。そのような抗体変異体は、例えば国際公開第1997/30087号(Patel等);国際公開第1998/58964号(Raju,S.)及び国際公開第1999/22764号(Raju,S.)に記載されている。
3.システインにより操作された抗体変異体
ある実施形態では、システインにより操作された二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体、例えば二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体の1個又は複数個の残基がシステイン残基で置換されている「thioMAb」を作成することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、残基の置換は、二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体の接近可能な部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することにより、抗体の接近可能な部位に反応性チオール基が位置し、この反応性チオール基を使用して抗体をその他の部分、例えば薬物部分又はリンカー薬物部分とコンジュゲートさせ、イムノコンジュゲートを作成することができる。ある実施形態では、下記の残基の内の何れか1個又は複数個をシステインで置換することができる:軽鎖のV205(カバット番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システインにより操作された抗体を、例えば米国特許第7521541号に記載されているように生成することができる。
H.組換え方法及び組換え組成物
例えば固体状のペプチド合成(例えばメリフィールド固体相合成)又は組換え産生により、本発明の二重特異性抗体及びDR5に結合する抗体を得ることができる。組換え産生の場合、例えば上述したような、二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体(又は断片)をコードする1種又は複数種のポリヌクレオチドを単離し、更なるクローニング及び/又は宿主細胞中での発現のために1種又は複数種のベクターに挿入する。そのようなポリヌクレオチドを、従来の手順を使用して容易に単離して配列決定することができる。一実施形態では、本発明のポリヌクレオチド内の1種又は複数種を含むベクター、好ましくは発現ベクターが提供される。当業者に公知である方法を使用して、二重特異性抗体(断片)又はDR5に結合する抗体(断片)のコード配列を適切な転写/翻訳制御シグナルと共に含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法として、インビトロ組換えDNA技法、合成技法及びインビボ組換え/遺伝子組換えが挙げられる。例えば、Maniatis等、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory、N.Y.(1989)及びAusubel等、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、Greene Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y(1989)に記載されている技法を参照されたい。発現ベクターは、プラスミドの一部、ウイルスの一部であることができる、又は核酸断片であることができる。発現ベクターは、二重特異性抗体(断片)又はDR5に結合する抗体(断片)をコードするポリヌクレオチド(即ちコード領域)がプロモーター及び/又はその他の転写若しくは翻訳の制御要素と作動可能に共にクローニングされる発現カセットを含む。本明細書で使用する場合、「コード領域」とは、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の部分のことである。「終止コドン」(TAG、TGA又はTAA)はアミノ酸に翻訳されないが、存在する場合にはコード領域の一部であると見なすことができる。しかしながら、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン、5’非翻訳領域及び3’非翻訳領域等の隣接領域は何れもコード領域の一部ではない。単一のポリヌクレオチドコンストラクト中に、例えば単一のベクター上に、又は別々のポリヌクレオチドコンストラクト中に、例えば別々の(異なる)ベクター上に、2個又はそれ以上のコード領域が存在することができる。さらに、あらゆるベクターは単一のコード領域を含むことができ、又は2個若しくはそれ以上のコード領域を含むことができ、例えば、本発明のベクターは1種又は複数種のポリペプチドをコードすることができ、該ポリペプチドは、翻訳後に又は翻訳と同時に、タンパク質切断により最終タンパク質に分離される。さらに、本発明のベクター、ポリヌクレオチド又は核酸は、本発明の二重特異性抗体(断片)又はDR5に結合する抗体(断片)、これらの変異体又は誘導体をコードするポリヌクレオチドに融合している又は融合していない異種コード領域をコードすることができる。異種コード領域として、特殊化した要素又はモチーフ、例えば分泌シグナルペプチド又は異種機能ドメインが挙げられるがこれらに限定されない。作動可能な結合とは、遺伝子産物、例えばポリペプチドの発現が調節配列(1種又は複数種)の影響下に又は制御下に置かれるように、遺伝子産物のコード領域が1種又は複数種の調節配列に結合している場合のことである。プロモーター機能の誘導により、所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写が生じ、2個のDNA断片(例えば、ポリペプチドコード領域及びこのポリペプチドコード領域に結合したプロモーター)間の結合の性質が発現調節配列の遺伝子産物の発現を指示する能力に干渉しない又はDNA鋳型の転写される能力に干渉しない場合、2個のDNA断片が「作動的に結合している」。したがって、プロモーターが、ポリペプチドをコードする核酸の転写を生じさせることができた場合、プロモーター領域は、この核酸と作動可能に結合しているだろう。プロモーターは、所定の細胞においてのみDNAの実質的な転写を指示する細胞特異的プロモーターであることができる。
プロモーター以外のその他の転写制御要素、例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサー及び転写終止シグナルをポリヌクレオチドに作動可能に結合させて細胞特異的転写を指示させることができる。適切なプロモーター及びその他の転写制御領域を本明細書で開示する。様々な転写制御領域が当業者に知られている。これらの転写制御領域として、脊椎動物細胞で機能する転写制御領域が挙げられるがこれに限定されず、この転写制御領域として、サイトメガロウイルス由来のプロモーター断片及びエンハンサー断片(例えば、前初期プロモーター及びイントロンA)、シミアンウイルス40由来のプロモーター断片及びエンハンサー断片(例えば初期プロモーター)、並びにレトロウイルス(例えばラウス肉腫ウイルス等)由来のプロモーター断片及びエンハンサー断片が挙げられるがこれらに限定されない。その他の転写制御領域として、脊椎動物遺伝子に由来する転写制御領域、例えばアクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギa−グロビンが挙げられ、真核細胞における遺伝子発現を制御可能なその他の配列も更に挙げられる。更なる適切な転写制御領域として、組織特異的なプロモーター及びエンハンサーが挙げられ、誘導性プロモーター(例えば、テトラサイクリンを誘導可能なプロモーター)も更に挙げられる。同様に、様々な翻訳制御要素が当業者に知られている。この翻訳制御要素として、リボソーム結合部位、翻訳開始コドン及び翻訳終止コドン、並びにウイルスシステムに由来する要素(特に内部リボソーム浸入部位、即ちIRES、CITE配列とも称される)が挙げられるがこれらに限定されない。発現カセットは、複製起点及び/又は染色体の組み込み要素、例えばレトロウイルス長鎖末端反復配列(LTR)若しくはアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復配列(ITR)等のその他の特徴を含むこともできる。
本発明のポリヌクレオチド及び核酸コード領域を、分泌ペプチド又はシグナルペプチドをコードする更なるコード領域と結合させることができ、これらのペプチドは、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの分泌を指示する。例えば、二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体の分泌が望まし場合、シグナル配列をコードするDNAを、本発明の二重特異性抗体若しくは本発明のDR5に結合する抗体又はこれらの断片をコードする核酸の上流に配置することができる。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞により分泌されるタンパク質は、伸長しているタンパク質鎖の粗面小胞体を横切る輸送が開始されると成熟タンパク質から切断されるシグナルペプチド配列又は分泌リーダー配列を有する。当業者は、脊椎動物細胞により分泌されるポリペプチドが一般的に、このポリペプチドのN末端に融合しているシグナルペプチドを有し、翻訳されたポリペプチドから該シグナルペプチドが切断されて、分泌された又は「成熟した」形態のポリペプチドが産生されることを認識している。ある実施形態では、天然型シグナルペプチド、例えば免疫グロブリンの重鎖シグナルペプチド若しくは軽鎖シグナルペプチドが使用される、又は作動可能に結合しているポリペプチドの分泌を指示する能力を保持するこの配列の機能的誘導体が使用される。あるいは、異種哺乳動物シグナルペプチド又はこの機能的誘導体を使用することができる。例えば、野生型リーダー配列を、ヒトの組織プラスミノゲン活性化因子(TPA)又はマウスのβ−グルクロニダーゼのリーダー配列で置換することができる。
その後の精製を容易にするために使用される可能性がある短いタンパク質配列(例えばヒスチジンタグ)又は二重特異性抗体若しくはDR5に結合する抗体の標識化に役立つ短いタンパク質配列をコードするDNAを、二重特異性抗体(断片)又はDR5に結合する抗体(断片)をコードするポリヌクレオチド内に又は該ポリヌクレオチドの端部に含ませることができる。
更なる実施形態では、本発明の1種又は複数種のポリヌクレオチドを含む宿主細胞が提供される。ある実施形態では、本発明の1種又は複数種のベクターを含む宿主細胞が提供される。ポリヌクレオチド及びベクターは、ポリヌクレオチド及びベクターそれぞれに関して本明細書に記載した特徴の内の何れかを単独で又は組み合わせて包含することができる。そのような一実施形態では、宿主細胞は、本発明の二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体(の一部)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む(例えば、該ベクターにより形質転換されている又はトランスフェクトされている)。本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」は、本発明の二重特異性抗体若しくはDR5に結合する抗体又はこれらの断片を生成するように操作され得るあらゆる種類の細胞系を意味する。二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体を複製するのに適した宿主細胞及びこれらの抗体の発現を支持するのに適した宿主細胞は、当該技術分野で公知である。そのような細胞を、特定の発現ベクターにより適切にトランスフェクトする又は形質導入することができ、大規模な発酵槽に播種するために大量のベクター含有細胞を増殖させて、臨床応用に十分な量の二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体を得ることができる。適切な宿主細胞として、大腸菌(E.coli)等の原核微生物、又はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、昆虫細胞等の様々な真核細胞が挙げられる。例えば、特にグリコシル化が必要でない場合には、細菌中でポリペプチドを産生することができる。発現後、ポリペプチドを細菌細胞ペーストから単離して可溶画分を更に精製することができる。原核生物に加えて、糸状菌又は酵母等の真核微生物は、ポリペプチドをコードするベクターに適したクローニング宿主又は発現宿主であり、この真核微生物として、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、それにより部分的な又は完全なヒトグリコシル化パターンを有するポリペプチドが産生される真菌株及び酵母株が挙げられる。Gerngross、Nat Biotech 22、1409−1414(2004)及びLi等、Nat Biotech 24、210−215(2006)を参照されたい。(グリコシル化)ポリペプチドの発現に適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例として、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。特にヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクション用に、昆虫細胞と共に使用することができる多数のバキュロウイルス株が同定されている。植物細胞培養物を宿主として利用することもできる。例えば、米国特許第5959177号、米国特許第6040498号、米国特許第6420548号、米国特許第7125978号及び米国特許第第6417429号(トランスジェニック植物中で抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技法を説明している)を参照されたい。脊椎動物細胞を宿主として使用することもできる。例えば、懸濁液中で増殖するように適合されている哺乳動物細胞も有用であることができる。有用な哺乳動物宿主細胞株のその他の例は、SV40により形質転換されているサル腎臓CV1株(COS−7);ヒト胎児腎臓株(例えばGraham等, J Gen Virol 36, 59 (1977)に記載されている293細胞又は293T細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えばMather, Biol Reprod 23, 243-251 (1980)に記載されているTM4細胞)、サル腎細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎細胞(MDCK)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562)、TRI細胞(例えば、Mather等, Annals N.Y. Acad Sci 383, 44-68 (1982)に記載されている)、MRC5細胞及びFS4細胞である。その他の有用な哺乳動物宿主細胞株として、dhfr− CHO細胞(Urlaub等, Proc Natl Acad Sci USA 77, 4216 (1980))等のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;並びにミエローマ細胞、例えばYO、NS0、P3X63及びSp2/0が挙げられる。タンパク質産生に適したいくつかの哺乳動物宿主細胞の概説に関して、例えばYazaki及びWu、Methods in Molecular Biology、vol.248(B.K.C.Lo編、Humana Press、Totowa、NJ)、pp.255−268(2003)を参照されたい。宿主細胞として、培養細胞、例えばほんの一部として哺乳動物培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、細菌細胞及び植物細胞が挙げられるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養された植物組織若しくは動物組織に含まれる細胞も挙げられる。一実施形態では、宿主細胞は真核細胞であり、好ましくは哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞又はリンパ系細胞(例えばY0細胞、NS0細胞、Sp20細胞)である。
これらの系において外来遺伝子を発現させるための標準的な技法は、当該技術分野で公知である。抗体等の抗原結合ドメインの重鎖又は軽鎖のどちらかを含むポリペプチドを発現する細胞を、その他の抗体鎖も発現するように操作し、その結果、発現産物が重鎖及び軽鎖の両方を有する抗体であることができる。
一実施形態では、本発明に係る二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体を産生する方法が提供され、この方法は、本明細書に記載の二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体の発現に適した条件下で、二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養すること、及び宿主細胞(又は宿主細胞の培地)から二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体を回収することを含む。
二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体の成分は、互いに遺伝子学的に融合する。二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体を、その成分が互いに直接的に又はリンカー配列を介して間接的に融合するように設計することができる。リンカーの組成及び長さを、当該技術分野で公知の方法に従って決定することができ、有効性に関して試験することができる。二重特異性抗体の様々な成分間のリンカー配列の例は、本明細書に記載の配列中に見出される。必要に応じて融合の個々の成分を分離すべく切断部位、例えばエンドペプチダーゼ認識配列を組み込むために、更なる配列を含めることもできる。
ある実施形態では、二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体の一部を形成するFab断片は、抗原決定基に結合することができる抗体可変領域を少なくとも含む。可変領域は、天然に又は非天然に存在する抗体又はこの断片の一部を形成し、これらに由来することができる。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を産生する方法は当該技術分野で公知である(例えばHarlow及びLane, "Antibodies, a laboratory manual", Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照されたい)。非天然に存在する抗体を、固体相−ペプチド合成を使用して構築することができる、組換えにより産生することができる(例えば米国特許第4186567号に記載されている)、又は例えば可変重鎖及び可変軽鎖を含むコンビナトリアルライブラリのスクリーニングにより得ることができる(例えばMcCaffertyの米国特許第5969108号を参照されたい)。
あらゆる動物種の抗体、抗体断片、抗原結合ドメイン又は可変領域を、本発明の二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体で使用することができる。本発明において有用である非限定的な抗体、抗体断片、抗原結合ドメイン又は可変領域は、マウス起源、霊長類起源又はヒト起源であることができる。二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体がヒトでの使用を目的とする場合、抗体の定常領域がヒトに由来するキメラ形態の抗体を使用することができる。ヒト化形態又は完全ヒト形態の抗体を、当該技術分野で公知の方法に従って調製することもできる(例えばWinterの米国特許第5565332号を参照されたい)。ヒト化を様々な方法により実現することができ、この方法として、(a)重要なフレームワーク残基(例えば良好な抗原結合親和性若しくは抗体機能を保持するのに重要であるフレームワーク残基)の有無に関わらず、非ヒト(例えばドナー抗体)CDRをヒト(例えばレシピエント抗体)フレームワーク及び定常領域にグラフトすること、(b)非ヒト特異性決定領域(SDR若しくはa−CDR;抗体−抗原相互作用に重要な残基)のみをヒトフレームワーク及び定常領域にグラフトすること、又は(c)全非ヒト可変ドメインを移植するが表面残基の置き換えによりヒト様断片でそれらを「覆う」ことが挙げられるがこれらに限定されない。ヒト化抗体及びこれらの作製方法は、例えばAlmagro及びFransson、Front Biosci 13,1619−1633(2008)に概説されており、例えば、Riechmann等、Nature 332、323−329(1988);Queen等、Proc Natl Acad Sci USA 86、10029−10033(1989);米国特許第5821337号、米国特許第7527791号、米国特許第6982321号及び米国特許第7087409号;Jones等、Nature 321、522−525(1986);Morrison等、Proc Natl Acad Sci 81、6851−6855(1984);Morrison及びOi、Adv Immunol 44、65−92(1988);Verhoeyen等、Science 239、1534−1536(1988);Padlan、Molec Immun 31(3)、169−217(1994);Kashmiri等、Methods 36、25−34(2005)(SDR(a−CDR)のグラフィティングを説明している);Padlan、Mol Immunol 28、489−498(1991)(「リサーフェイシング」を説明している);Dall’Acqua等、Methods 36、43−60(2005)(「FRシャフリング」を説明している);並びにOsbourn等、Methods 36、61−68(2005)及びKlimka等、Br J Cancer 83、252−260(2000)(FRシャフリングへの「誘導選択」アプローチを説明している)に更に記載されている。ヒト抗体及びヒト可変領域を、当該技術分野で既知の様々な技法を使用して産生することができる。ヒト抗体は一般的に、van Dijk及びvan de Winkel、Curr Opin Pharmacol 5、368−74(2001)並びにLonberg、Curr Opin Immunol 20、450−459(2008)に記載されている。ヒト可変領域は、ハイブリドーマ法により生成されるヒトモノクローナル抗体の一部を形成し、これに由来することができる(例えばMonoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987)を参照されたい)。ヒト抗体及びヒト可変領域を、抗原チャレンジに応答して、インタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されているトランスジェニック動物に免疫源を投与することにより調製することもできる(例えばLonberg, Nat Biotech 23, 1117-1125 (2005)を参照されたい)。ヒト抗体及びヒト可変領域を、ヒト由来ファージ提示ライブラリから選択されたFvクローン可変領域配列を単離することによって生成することもできる(例えばHoogenboom等. in Methods in Molecular Biology 178, 1-37 (O'Brien等編, Human Press, Totowa, NJ, 2001);及びMcCafferty等, Nature 348, 552-554; Clackson 等, Nature 352, 624-628 (1991)を参照されたい)。ファージは典型的には、抗体断片を単鎖Fv(scFv)断片又はFab断片のどちらかとして提示する。
ある実施形態では、本発明において有用なFab断片を、例えば、内容全体が出典明示により援用される米国特許出願公開第2004/0132066号に開示されている方法に従って結合親和性を高めるように操作する。本発明の二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体の特定の抗原決定基に結合する能力を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)又は当業者によく知られているその他の技法、例えば表面プラズモン共鳴技法(BIACORE T100システムで解析される)(Liljeblad等, Glyco J 17, 323-329 (2000))及び従来の結合アッセイ(Heeley, Endocr Res 28, 217-229 (2002))の何れかにより測定することができる。競合アッセイを使用して、特定の抗原への結合に関して参照抗体と競合する抗体、抗体断片、抗原結合ドメイン又は可変ドメインを同定することができる。ある実施形態では、そのような競合する抗体は、参照抗体により結合されるのと同じエピトープ(例えば直鎖エピトープ又は立体配座エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングする詳細で例示的な方法が、Morris(1996)「Epitope Mapping Protocols」、in Methods in Molecular Biology vol.66(Humana Press、Totowa、NJ)に記載されている。例示的な競合アッセイでは、固定化されている抗原を、抗原に結合する第1の標識された抗体と、抗原への結合に関して第1の抗体と競合する能力を試験する第2の未標識の抗体とを含む溶液中でインキュベートする。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在することができる。コントロールとして、固定化されている抗原を、第1の標識された抗体を含むが第2の未標識の抗体を含まない溶液中でインキュベートする。
第1の抗体の抗原への結合を許容する条件下でのインキュベーション後、過剰な未結合の抗体を除去し、固定化されている抗原と結合した標識の量を測定する。固定化されている抗原と結合した標識の量が、コントロール試料と比べて試験試料中で実質的に減少している場合、このことは、抗原への結合に関して第2の抗体が第1の抗体と競合していることを示す。Harlow及びLane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY)を参照されたい。
本明細書に記載されているように調製された二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体を、当該技術分野で既知の技法、例えば高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー等により精製することができる。特定のタンパク質を精製するために使用する実際の条件は、正味の荷電、疎水性、親水性等の因子にある程度依存しており、当業者には明らかであるだろう。アフィニティークロマトグラフィー精製の場合には、二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体が結合する抗体、リガンド、受容体又は抗原を使用することができる。例えば、本発明の二重特異性抗体のアフィニティークロマトグラフィー精製の場合には、プロテインA又はプロテインGを有するマトリックスを使用することができる。逐次的なプロテインA又はプロテインGのアフィニティークロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーを使用して、本質的には実施例に記載されるように二重特異性抗体を単離することができる。二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体の純度を、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー等の様々な公知の分析法の内の何れかにより測定することができる。
I.アッセイ
本明細書に記載のDR5及びFAPに結合する二重特異性抗体並びにDR5に結合する抗体を、当該技術分野で既知の様々なアッセイにより、それらの物理的な/化学的な特性及び/又は生物学的活性に関して同定することができる、スクリーニングすることができる、又はこれらの特徴を明らかにすることができる。
1.親和性アッセイ
本明細書に記載の二重特異性抗体及びDR5に結合する抗体のDR5及び/FAPに対する親和性を、標準的な器具類、例えばBIAcore装置(GE Healthcare)を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)により実施例に記載の方法に従って測定することができ、受容体又は標的タンパク質等を、組換え発現により得ることができる。あるいは、本明細書に記載の二重特異性抗体及びDR5に結合する抗体のDR5及び/又はFAPへの結合を、例えばフローサイトメトリー(FACS)により、特定の受容体又は標的抗原を発現する細胞株を使用して評価することができる。
25℃でBIACORE(登録商標)T100機械(GE Healthcare)を使用する表面プラズモン共鳴によりKDを測定することができる。Fc部分とFc受容体との間の相互作用を分析するために、Hisタグを付けた組換えFc受容体を、CM5チップ上に固定化されている抗Penta His抗体(Qiagen)により捕捉し、二重特異性コンストラクトを被分析物として使用する。簡潔に言うと、カルボキシルメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、GE Healthcare)を、提供者の指示書に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)により活性化する。抗Penta−His抗体を10mMの酢酸ナトリウム、pH5.0で40μg/mlに希釈した後、結合タンパク質が約6500反応単位(RU)になるように5μl/分の流速で注入する。リガンドの注入後、1Mのエタノールアミンを注入して未反応の群を阻害する。続いて、Fc受容体を4nM又は10nMで60秒にわたり捕捉する。動力学的測定のために、二重特異性コンストラクトの4倍段階希釈液(500nMから4000nMの範囲)を、120秒にわたり30μl/分の流速、25℃でHBS−EP(GE Healthcare、10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%の界面活性剤P20、pH7.4)中で注入する。
標的抗原に対する親和性を測定するために、抗Penta−His抗体に関して記載したように、二重特異性コンストラクトを、活性化CM5−センサーチップ表面上に固定化されている抗ヒトFab特異性抗体(GE Healthcare)により捕捉する。結合タンパク質の最終的な量は約12000RUである。二重特異性コンストラクトを300nMで90秒にわたり捕捉する。標的抗原は、30μl/分の流速、250から1000nMの範囲の濃度で180秒にわたりフローセルを通過する。解離を180秒にわたりモニタリングする。
バルクの屈折率の差を、参照フローセルで得た応答を引くことにより補正する。定常状態の応答を使用して、ラングミュア結合等温線の非線形曲線フィッティングにより解離定数KDを導き出した。結合センサーグラムと解離センサーグラムとを同時にフィットさせるにより単純な1対1のラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)T100Evaluation Softwareバージョン1.1.1)を使用して、結合速度(kon)及び解離速度(koff)を算出する。平衡解離定数(KD)をkoff/kon比として算出する。例えば、Chen等、J Mol Biol 293、865−881(1999)を参照されたい。
2.結合アッセイ及びその他のアッセイ
一態様では、本発明の二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体を、例えばELISA、ウェスタンブロット等の既知の方法により抗原結合活性に関して試験する。
別の態様では、競合アッセイを使用して、FAP又はDR5それぞれへの結合に関して特定の抗FAP抗体又は特定の抗DR5抗体と競合する抗体を同定することができる。ある実施形態では、そのような競合する抗体は、特定の抗FAP抗体又は特定の抗DR5抗体により結合されるのと同じエピトープ(例えば直鎖エピトープ又は立体配座エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングする詳細で例示的な方法が、Morris(1996)「Epitope Mapping Protocols」、in Methods in Molecular Biology vol.66(Humana Press、Totowa、NJ)に記載されている。更なる方法が実施例セクションに記載されている。
3.活性アッセイ
一態様では、生物活性を有する、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体又はDRに結合する抗体を同定するためのアッセイが提供される。生物活性として、例えばDNA断片化、アポトーシスの誘導及び標的細胞の溶解を挙げることができる。そのような生物活性をインビボで及び/又はインビトロで有する抗体も提供される。
ある実施形態では、本発明の二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体をそのような生物活性に関して試験する。(例えばLDH放出の測定による)細胞溶解を検出するためのアッセイ又は(例えばTUNELアッセイを使用する)アポトーシスを検出するためのアッセイは、当該技術分野で公知である。ADCC又はCDCを測定するためのアッセイが国際公開第2004/065540号(実施例1を参照されたい)にも記載されており、国際公開第2004/065540号の内容全体が出典明示により本明細書に援用される。
J.薬学的製剤
本明細書に記載のDR5及びFAPに結合する二重特異性抗体又はDR5に結合する抗体の薬学的製剤を、所望の程度の純度を有するそのような二重特異性抗体又は抗体と、1種又は複数種の任意選択的な薬学的に許容される担体(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A.編(1980))とを混合することにより、凍結乾燥製剤又は水性溶液の形態で調製する。薬学的に許容される担体は一般的に、採用する投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、該担体として下記のものが挙げられるがこれらに限定されない:バッファー、例えばリン酸塩、クエン酸塩及びその他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニン等の抗酸化剤;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコール若しくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルパラベン若しくはプロピルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10個の残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリジン;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース若しくはデキストリン等のその他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトール;塩を形成する対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えばZn−タンパク質複合体);並びに/又は非イオン性界面活性剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体として、可溶型の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)等の間質性薬物分散剤、例えばrHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)等のヒト可溶型PH−20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質が更に挙げられる。rHuPH20等のいくつかの例示的なsHASEGP及び使用方法が、米国特許公開第2005/0260186号及び米国特許公開第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、1種又は複数種の追加のグリコサミノグリカナーゼ、例えばコンドロイチナーゼと混合される。
例示的な凍結乾燥抗体製剤が米国特許第6267958号に記載されている。水性抗体製剤として、米国特許第6171586号及び国際公開第2006/044908号に記載されたものが挙げられ、後者の製剤としてヒスチジン−酢酸塩バッファーが挙げられる。
本明細書における製剤は、治療される特定の症状に必要な複数種の有効成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない補完的な活性を有する有効成分を含むこともできる。そのような有効成分は、意図する目的に有効である量での組み合わせで適切に存在する。
有効成分を、例えばコアセルベーション技法により又は界面重合により調製されているマイクロカプセル中に、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセル若しくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中に、又はマクロエマルション中に封入することができる。そのような技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition、Osol、A.編(1980)に開示されている。
徐放性調製物を調製することができる。徐放性調製物の適切な例として、抗体を含む固体の疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、この半透性マトリックスは、造形品の形態、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。
インビボ投与のために使用する製剤は一般的に無菌である。無菌状態を、例えば滅菌濾過膜に通す濾過により容易に実現することができる。
K.治療方法及び治療用組成物
本明細書で提供されるDR5及びFAPに結合する二重特異性抗体の1種又は複数及び更なる化学療法剤を含む治療的組合せは、治療方法で使用され得る。
一態様では、医薬として使用するためのDR5及びFAPに結合する二重特異性抗体が、更なる化学療法剤と組み合わせて使用するために提供される。ある実施形態では、更なる化学療法剤と組み合わせて使用するためのDR5及びFAPに結合する二重特異性抗体が、治療方法で使用するために提供される。ある実施形態では、本発明は、有効量の、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体を個体に投与することを含む、がんを有する個体を治療する方法において使用するためのDR5及びFAPに結合する二重特異性抗体を提供する。そのような一実施形態では、この方法は、例えば下記に記載する、有効量の少なくとも1種の追加の治療剤を個体に投与することを更に含む。上記実施形態の内の何れかに係る「個体」は、好ましくはヒトである。好ましい一実施形態では、前記がんは膵がん、肉腫又は結腸直腸癌である。他の実施形態では、がんは、結腸直腸がん、肉腫、頭頸部がん、扁平上皮癌、乳がん、膵臓がん、胃がん、非小細胞肺癌、小細胞肺がん又は中皮腫である。がんが乳がんである実施形態では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がんであってもよい。
更なる態様では、本発明は、医薬の製造又は調製における、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体及び更なる化学療法剤を含む治療的組合せの使用を提供する。一実施形態では、医薬はがんの治療用である。更なる実施形態では、医薬は、有効量の医薬を、がんを有する個体に投与することを含む、がんを治療する方法における使用のためである。そのような一実施形態では、この方法は、例えば下記に記載する、有効量の少なくとも1種の追加の治療剤を個体に投与することを更に含む。上記実施形態の内の何れかに係る「個体」はヒトであることができる。
更なる態様では、本発明は、がんを治療する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、更なる化学療法剤と組み合わせて使用するための、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体を含む治療的組合せの有効量を、がんを有する個体に投与することを含む。そのような一実施形態では、この方法は、下記に記載する、有効量の少なくとも1種の追加の治療剤を個体に投与することを更に含む。上記実施形態の内の何れかに係る「個体」はヒトであることができる。好ましい一実施形態では、前記がんは膵がん、肉腫又は結腸直腸癌である。好ましい一実施形態では、前記がんは、膵臓がん、肉腫又は結腸直腸癌である。他の実施形態では、がんは、結腸直腸がん、肉腫、頭頸部がん、扁平上皮癌、乳がん、膵臓がん、胃がん、非小細胞肺癌、小細胞肺がん又は中皮腫である。
更なる態様では、本発明は、例えば、上記の治療方法、及び更なる化学療法剤の何れかで使用するための、本明細書で提供されるDR5及びFAPに結合する二重特異性抗体の何れかを含む薬学的製剤を提供する。一実施形態では、薬学的製剤は、本明細書に記載のDR5及びFAPに結合する二重特異性抗体の内の何れかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の実施形態では、薬学的製剤は、本明細書に記載のDR5及びFAPに結合する二重特異性抗体の内の何れかと、例えば下記に記載する、少なくとも1種の追加の治療剤とを含む。
二重特異性抗体を、非経口投与、肺内投与及び鼻腔内投与、並びに局所的治療が望ましい場合には病巣内投与等のあらゆる適切な手段により投与することができる。非経口注入として、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与又は皮下投与が挙げられる。投与が短期間であるか又は慢性的であるかにある程度依存して、あらゆる適切な経路により、例えば静脈内注射又は皮下注射等の注射により投薬することができる。様々な時点での単回投与又は複数回投与、ボーラス投与及びパルス点滴が挙げられるがこれらに限定されない様々な投薬スケジュールが本明細書において考慮される。
二重特異性抗体は、医学行動規範と一致した様式で製剤化され、投薬され、及び投与され得る。この状況で考慮される因子として、治療する個々の障害、治療する個々の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与の方法、投与のスケジューリング及び医療施術者に既知のその他の因子が挙げられる。二重特異性抗体は、そうする必要はないが選択的に、問題となっている障害を予防する又は治療するために現在使用される1種又は複数種の薬剤と共に製剤化される。そのようなその他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害又は治療のタイプ、及び上記で論じたその他の因子に依存する。その他の薬剤は一般的に、本明細書に記載したのと同じ投与量及び投与経路で、又は本明細書に記載の投与量の約1から99%で、又は任意の投与量で、又は適切であると実験的に/診療的に確認されている任意の経路により使用される。
疾患の予防又は治療の場合、二重特異性抗体の適切な投与量は、治療しようとする疾患のタイプ、抗体のタイプ、二重特異性抗体を予防目的で投与するか又は治療目的で投与するかに関わらず疾患の重症度及び経過、過去の治療、患者の病歴及び二重特異性抗体に対する応答、並びに主治医の裁量に依存するだろう。二重特異性抗体は、単回又は一連の治療にわたって患者に適切に投与される。疾患のタイプ及び重症度に応じて、約1μg/kgから15mg/kg(例えば0.1mg/kg−10mg/kg)の二重特異性抗体又はDR5に結合する新規の抗体は、例えば1回若しくは複数回の投与によるか又は連続的注入によるかに関わらず、患者への投与のための最初の候補の投与量であることができる。1つの典型的な1日の投与量は、上述した因子に応じて約1μg/kgから100mg/kg又はそれ以上の範囲の可能性がある。数日又はより長い期間にわたる反復投与の場合、状態に応じて、治療は一般的に、疾患症状の所望の抑制が起こるまで継続されるだろう。二重特異性の1つの例示的な投与量は、約0.05mg/kgから約10mg/kgの範囲であるだろう。そのため、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kgの内の1種又は複数種の投与量を患者に投与することができる。そのような用量を、断続的に、例えば毎週又は3週毎に(例えば、二重特異性抗体を患者に約2回から約20回投与するように、又は例えば二重特異性抗体を約6回投与するように)投与することができる。最初により高い負荷の用量で、続いて1回又は複数回のより低い用量を投与することができる。しかしながら、その他の投与レジメンも有用であることができる。この治療の経過は、従来の技法及びアッセイで容易にモニタリングされる。
DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体の代わりに又はこれらの抗体に加えて、本発明のイムノコンジュゲートを使用して上記製剤又は治療法の内の何れかを実行することができることが理解される。
L.製造品
本発明の別の態様では、上記した障害の治療、予防及び/又は診断に有用な物質を含む製造品が提供される。製造品は、容器と、該容器上の又は該容器に関連するラベル又は添付文書とを含む。適切な容器として、例えばボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグ等が挙げられる。ガラス又はプラスチック等の様々な材料で容器を形成することができる。容器は、単独で、又は疾患を治療する、予防する及び/若しくは診断するのに効果的な別の組成物と混合されている組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、皮下注射針により穿刺可能なストッパを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであることができる)。組成物中の少なくとも1種の活性薬剤は、二重特異性抗体であり、追加の活性薬剤は、本明細書に記載されるような更なる化学療法剤である。ラベル又は添付文書は、組成物が、選択された疾患を治療するために使用されることを示す。更に、製造品は、(a)組成物が入っている第1の容器であって、該組成物が、二重特異性抗体を含む、第1の容器と、(b)組成物が入っている第2の容器であって、該組成物が、更なる細胞傷害性の又は治療用の薬剤を含む、第2の容器とを含むことができる。本発明の本実施形態における製造品は、組成物を使用して特定の疾患を治療することができることを示す添付文書を更に含むことができる。あるいは又は加えて、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸塩緩衝生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液を含む第2の(又は第3の)容器を更に含むことができる。その他のバッファー、希釈液、フィルタ、針及びシリンジ等の商業上又は使用者の観点から望ましいその他の物質を更に挙げることができる。
上記製品の内の何れかは、DR5及びFAPに結合する二重特異性抗体の代わりに又はこれらの抗体に加えて本発明のイムノコンジュゲートを含むことができることが理解される。
III.
実施例以下は、本発明の方法及び組成物の例である。上に示した一般的な説明を考慮に入れ、多様な他の実施形態が実施され得ることが理解される。
前述の発明は、理解の明確性の目的で一部の詳細において実例及び例として記載されているが、これらの説明及び例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書中に引用されている全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりその全体が明白に組み込まれている。
実施例1: DR5−FAPデスレセプターアゴニスト二重特異性抗体
(腫瘍細胞によって発現される抗原を介した架橋結合とは別に)DR5としてのデスレセプターの架橋結合によるアポトーシスの誘導の1つの手法は、腫瘍を取り囲んでいる間質を標的とすることである。この場合には、標的化された抗原は、腫瘍細胞によって直接提示されるのではなく、第2の、異なる細胞型による。この種の抗原の一例は、FAP(線維芽細胞活性化タンパク質)であろう。このタンパク質は活性化された線維芽細胞上で発現されるが、これらの細胞は腫瘍間質内で見出される。
新規のDR5バインダーをファージディスプレイによって同定した。ファージディスプレイにより得られたDR5バインダーを、アポトーシス誘導、特異性、種の交差反応性、及びエピトープ特異性に関してスクリーニングした。DR5バインダー5E11を選択し、四価の二重特異性分子に変換した。これらの二重特異性抗体は、それぞれDR5及びFAPに対する2個の結合部分を含有する。FAP結合部分は、国際公開第2012//020006号で説明されている。二重特異性抗体を2+2フォーマットで提供する(G4S)4コネクターを使用して、28H1クロスFabドメイン(VHCL)を抗DR5重鎖のC末端に融合した。
DR5−FAP二重特異性分子は、一過的にトランスフェクトされたHEK293 EBNA細胞において産生され、プロテインA及びサイズ排除クロマトグラフィーを介して精製された。得られた産物収量は、合理的な範囲内にあった(約20mg/L)。最終精製ステップ後のモノマー含有量は、全ての分子について96%を超えた。
表面プラズモン共鳴(Biacore)による標的結合分析により、2+2フォーマットの二重特異性抗体は、組換えDR5及びFAP(ヒト及びマウス)に同時に結合できたことが明らかにされた。
DR5−FAP二重特異性分子がMDA−MB−231標的細胞株のアポトーシスを誘導することができるかを評価するために、続いて添加される二重特異性抗体を介しての標的細胞上でのDR5の架橋結合のために96ウェルプレートを組換えヒトFAPでコーティングした。標的細胞(MDA−MB 231)の添加及び24時間のインキュベーションの後に、標準的なDNA断片化ELISAアッセイによってアポトーシス誘導を決定した。DR5−FAP二重特異性分子は、プレート上にコーティングされたFAPの存在下においてアポトーシス誘導活性を提示したが、これは、この活性が組換えFAPを介した架橋に依存することを表している。
実施例2: DR5−FAP二重特異性抗体は、異なる標的細胞上でアポトーシスを誘導することができる
FAP 28H1 CrossFab部分に融合した、新たに単離されたDR5バインダーを含んでいる2+2フォーマットのDR5−FAP二重特異性抗体を、GM05389ヒトFAP+線維芽細胞との共培養アッセイにおける2種の異なる細胞株(MDA−MB−231及びG401)上でのアポトーシスの誘導についての実験において試験した。これらの二重特異性抗体を、0.0007−7nMの濃度範囲にわたって試験した。DNA断片化アッセイの結果は、試験した二重特異性抗体は、両方の細胞系上で良好なアポトーシス誘導活性を示したことを示す。MDA−MB−231細胞で得られた結果により、二重特異性2+2フォーマットのこれらの抗体は、高濃度で活性における低下を示さず、最大濃度まで一定に保たれた又はさらにより増強された。GM05389線維芽細胞との共培養でG401細胞を用いた実験において、0.07nMの濃度ですでに最高のアポトーシス誘導が達成され、その後一定に保たれた。この設定では、全ての分子が、アポトーシス誘導レベルに関して同様に機能した。
実施例3: ヒト腫瘍内でのFAP分布
二重特異性DR5−FAP抗体の可能性のある臨床的使用についての理解を得るために、ヒト腫瘍内でのFAPの分布をIHCによって評価した。
Vitatexからのラット抗ヒトセプラーゼ抗体(IgG2a、クローンD8)(MABS1001)を使用して、多様な腫瘍徴候からの2,5μmのFFPET切片をVentana Benchmark XT上で免疫染色した。切片に標準的なCC1処理を行い、次いで、抗体を、Dako抗体希釈液(S3022)中に5μg/mLの濃度で37℃で60’間インキュベートし、Ultraview DAB検出系(Ventana #760−4456)を使用して陽性の染色を検出した。Abcamからの適合したアイソタイプ抗体(ab18450)を陰性コントロールとして使用した。
二重特異性DR5−FAP抗体(表2)について潜在的に興味深い臨床徴候を示している、SCLCを含むヒト腫瘍の異なる徴候において、FAP+間質浸潤が存在した。
FAP−DR5に関する別の興味深い臨床的な指標は、肉腫のサブタイプ全体の症例のおよそ50%において間質ではなく悪性細胞それ自体でFAPが発現される肉腫である(表3)。
実施例4: インビトロにおける組合せの研究
FAP−DR5と様々な抗がん薬との組合せの可能性を評価するために、DR5抗体(ドロジツマブ、US2007/0031414で説明される)+抗Fc抗体を介した架橋を、インビトロにおけるFAP+細胞非存在下における架橋の代用として使用した。インビトロにおける細胞培養実験でのFAP架橋とFc架橋との優れた相関が、原理の証明のための細胞株のサブセットにおいて確認された(データ示さず)。CRC及びPDAC細胞株のパネルを評価し、それぞれの腫瘍の指標について有望な臨床的関連を有する組合せパートナーを、組合せの作用を評価するために使用した(CRC:イリノテカン、オキサリプラチン、5−FU、MDM2阻害剤(RG7388)、Bcl−2阻害剤(ABT199);PDAC:アブラキサン、パクリタキセル、ゲムシタビン、ドキソルビシン、MDM2i(RG7388)、Bcl2i(ABT199)、ボルテゾミブ、シクロパミン、PARP阻害剤(PJ34))。表4及び表5並びに図2〜4に結果を記載する。
化合物のIC50値の決定
細胞を透明な平底を有する黒色の96−ウェルマイクロプレートに播種し(数は細胞株に応じて様々である)、37℃及び5%CO2で一晩インキュベートした。細胞の接着/密集度をチェックした後、培地を除去し、対応する化合物を含有する新鮮な培地100μlを各ウェルに添加した。化合物(n=3)1つ当たり8つの濃度の連続希釈系列(1:4)を使用した。コントロールとして、対応するDMSO濃度及び培地単独を使用した。
37℃及び5%CO2で3日間インキュベートした後、ウェル1つ当たり100μlのCellTiter−Glo試薬(Promega)をプレートに添加した。室温で30分かき混ぜた後、発光を測定した。IC50値を、XL−Fitソフトウェアで計算した。1つの化合物を用いた実験のそれぞれを少なくとも2回繰り返した。
DR5抗体の組み合わせ:
細胞を透明な平底を有する黒色の96−ウェルマイクロプレートに播種し(数は細胞株に応じて様々である)、37℃及び5%CO2で一晩インキュベートした。細胞の接着/密集度をチェックした後、培地を除去し、対応する化合物又は組合せを含有する新鮮な培地100μlを各ウェルに添加した。
ドロジツマブ/抗ヒト−Fcの9つの濃度の一連の連続的な1:3希釈を、96−ウェルのPP−V−底部のマイクロプレート(n=6)で行った。ドロジツマブ/抗ヒトFcを希釈する前、これを、ドロジツマブ/抗ヒトFcについては0〜28nMの範囲の等モル濃度及び化学療法剤については800nMで混合した。次いで、25μl/ウェルのドロジツマブ/抗ヒト−Fc系列を細胞に移した。次いで最終濃度を、化合物については1×IC50濃度、及びドロジツマブ/抗ヒト−Fcの最大濃度については7nM又は200nMの何れかにした。
37℃及び5%CO2で3日間インキュベートした後、ウェル1つ当たり100μlのCellTiter−Glo試薬(Promega)をプレートに与えた。室温で30分かき混ぜた後、発光を測定した。
ドロジツマブ/抗ヒト−Fc及びドロジツマブ/抗ヒト−Fc+化合物の各濃度を同じプレートで3連にして、各実験を少なくとも2回繰り返した。
実施例5: 化学療法剤と組み合わせたFAP−DR5のインビボでの抗腫瘍有効性
二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)のインビボでの抗腫瘍有効性は、ヌードマウスに移植した様々な腫瘍源(例えば、CRC、膵臓がん、線維形成性黒色腫及び肉腫)の細胞及び断片に基づく患者由来(PDX)モデルで検出することができた。二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)と、固有のアポトーシス経路を活性化する化学療法剤との組合せの有効性に関する実施例データを、CRC異種移植モデルDLD−1及びHCT116(細胞株に基づく、共注入モデル)並びにCo5896(断片に基づく)について示す。
試験用薬剤
二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)は、Roche、Penzberg、Germanyからストック溶液として提供された。抗体バッファーには、ヒスチジンが含まれていた。抗体溶液は、注入前にストックからバッファー中に適切に希釈された。従来技術のDR5特異的抗体ドロジツマブのFc突然変異体は、Roche、Penzberg、Germanyからストック溶液として提供された。この抗体は、活性化若しくは阻害性Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を消失させるFcドメインに3個のアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換は、L234A、L235A及びP329Gである。このドロジツマブのFc突然変異体はまた、「ドロジツマブLALA」とも称される。
細胞株及び培養条件
DLD−1及びHCT116ヒトCRC細胞は、元はATCCから得られた。LOX−IMVIヒト線維形成性黒色腫細胞は、元はNCIで確立され、ATCCから購入した。これらの腫瘍細胞株を、10%のウシ胎仔血清、2.0mMのL−グルタミン、10mMのHEPESで補った、1.0mMのピルビン酸ナトリウムを含むDMEM高グルコース培地中、5%のCO2の水飽和雰囲気中で37℃で通常通りに培養した。3日毎に分割して、トリプシン/EDTA 1×で培養継代を行った。さらに、マウス線維芽細胞NIH3T3をATCCから購入し、1.0mMのピルビン酸ナトリウム、10%のFCS及び2.0mMのL−グルタミンを含むDMEM高グルコース中で培養した。
患者由来の異種移植モデル(PDX)
CRC腫瘍異種移植片Co5896、肉腫腫瘍異種移植片Sarc4605、並びに膵管腺癌(PDAC)腫瘍異種移植片PA1178及びPA3137は、元は患者から得られ、安定な増殖パターンの確立まで約3から5回継代した。その後のインビボでの研究のために、Co5896、Sarc4605、PA1178及びPA3137腫瘍断片を、ヌードマウスにおいて連続継代中の異種移植片から得た。腫瘍を、ドナーマウスから除去した後に、断片(直径4−5mm)に切断し、皮下移植までPBS中に入れておいた。イソフルオラン麻酔下のマウスに、側腹部に片側の皮下腫瘍移植を行った。
動物
ヌードマウスを、ブリーダー(例えば、Charles River、Sulzfeld、Germany)から購入し、約束されたガイドライン(GV−Solas;Felasa;TierschG)に従って、特定の病原体のない条件下で、12時間照明/12時間暗所の1日のサイクルで飼養した。実験用の試験手順は、地方行政機関によって確認され承認された。到着後、新しい環境に慣らすため及び観察のために、動物を、動物施設の検疫部門で1週間維持した。連続的な健康状態のモニタリングを定期的に行った。食餌(Provimi Kliba 3337)及び(酸性化されたpH2.5−3の)水は、自由に与えられた。
モニタリング
臨床症状及び有害作用の検出について、動物を毎日管理した。モニタリングのために、実験の全体にわたって動物の体重を記録した。
動物の処置
細胞又は断片の移植後、中央値腫瘍サイズが約100−200mm3であったときに、動物を無作為化した後に動物の処置を開始した。抗体を、モデルによって、静脈内に1.0mg/kg、10mg/kg又は30mg/kgで単剤として、週に1回又は2回で数週間投与した。これに相当するビヒクルを同一の日に投与した。
抗体有効性
DLD−1及びHCT116 CRC共注入細胞株に基づく異種移植モデル
DLD−1 CRC異種移植を有しているマウスを、二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)で試験9日目から20日目までに10及び1.0mg/kgの投与量で4回処置した。結果として、二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)での処置により、用量に関連した有意な抗腫瘍有効性が示され、皮下DLD−1異種移植に対して強力な抗腫瘍有効性が示された。腫瘍増殖阻害(TGI)を、それぞれ89%(10mg/kg)及び79%(1.0mg/kg)で算出した。対照的に、DR5 Fc変異抗体ドロジツマブ、LALA(10mg/kg、週1回)での処置後には、抗腫瘍有効性は認められなかった(図5)。さらに組合せにおいて、DLD−1腫瘍を有するマウスを、二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)(10mg/kg、静脈内に週1回、5回)及びイリノテカン(15mg/kg、腹腔内に5日間、3回)で処置した。併用治療は、それぞれの単一の薬剤と比較して優れた有効性を示し、72%の腫瘍縮小が達成された(図6)。イリノテカン処置の5日前、その後、又はそれと同時の、二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)でのDLD−1腫瘍を有するマウスの処置を試験した。同時の組合せの処置は、2種の薬剤の逐次的な処置と比較して優れた有効性を示した(図7)。更なる前臨床研究において、DLD−1腫瘍を有するマウスは、国際公開第2011/117329号で説明されるように、二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)(10mg/kg)と抗VEGF抗体B20(10mg/kg)又はAng2/VEGF抗体(10mg/kg)との併用治療を受けた。両方の抗体を、週1回、8、15及び22日目に与えた。単一の薬剤としてのDR5−FAP抗体での処置は有意な腫瘍増殖阻害を引き起こしたが(TGI87%)、抗Ang/VEGF Mabとの組合せは相加的な効果があり、腫瘍増殖阻害を94%に増加させた。Ang2/VEGF抗体単独での処置は、75%で腫瘍増殖を阻害した(図15)。
第2の細胞株に基づくCRCモデル(HCT116)において、二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)(10mg/kg、静脈内に、週1回、3回)とイリノテカン(15mg/kg、腹腔内に、5日、2回)及びオキサリプラチン(5mg/kg)との組合せを評価した。移植の7日後に処置を開始したところ、二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)での単剤療法が46%TGIをもたらした。イリノテカンとの組合せは優れた有効性を示し、腫瘍縮小をもたらした(図8)。さらに二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)とオキサリプラチンとの併用療法は、有効性を67%TGIに改善した(図9)。
LOX−IMVI線維形成性黒色腫細胞株に基づく異種移植モデル
LOX−IMVI異種移植片を有するマウスを、研究の13から20日目に、二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)で、2時間で10mg/kgの投与量で処置した。腫瘍を有するマウスの別のグループは、DR5を標的化するFc変異抗体ドロジツマブLALAによる10mg/kgでの処置(13及び20日目)を受けた。結果として、二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)での処置は、皮下注射のLOX−IMVI異種移植片に対して有意な強い抗腫瘍有効性(腫瘍の停止状態)を示した。腫瘍増殖阻害(TGI)は、二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)の場合、100%超(10mg/kg)と計算され、それに対してドロジツマブLALAでの処置はそれより低い有効性であった(TGI65%)(図10)。加えて、LOX−IMVIを有するマウスを、アントラサイクリン系のドキソルビシン(アドリアマイシン、5mg/kg、q7d)と組み合わせた二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)(10mg/kg)で処置した。単一の薬剤としてのDR5−FAP抗体での処置(10mg/kg、8及び15日目)は腫瘍の停止状態(TGI97%)を引き起こしたが、ドキソルビシンとの組合せは、単に相加的な効果があるだけでなく、異なる腫瘍縮小をもたらした(93%)。ドキソルビシン単独での処置は、77%で腫瘍増殖を阻害した(図16)。
Co5896 CRC断片に基づく患者由来異種移植モデル(PDX)
Co5896 CRC異種移植片を有するマウスを、研究の18から34日目に、二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)で、単一の薬剤として6時間で30mg/kgの用量で処置した(図11を参照)。結果として、二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)での処置は有意な抗腫瘍有効性を示し、皮下注射のCo5896患者由来異種移植片に対して強い抗腫瘍有効性を示した。腫瘍増殖阻害(TGI)は、76%と計算された。加えて、組合せの研究において、二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)(30mg/kg)を、研究の15日目から単一の薬剤として週1回(4回)及びイリノテカンと組み合わせて(15mg/kg、15〜19日目)与えた。優れた有効性が二重特異性DR5−FAP抗体とイリノテカンとの組合せで観察され、結果として全ての動物において完全な腫瘍縮小がもたらされた(10/10が腫瘍なし)(図12)。
Co5896患者由来異種移植片の間質におけるFAPの存在をIHCによって確認した(図13)。
Sarc4605肉腫断片に基づく患者由来異種移植モデル(PDX)
Sarc4605肉腫異種移植片を有するマウスを、研究の10から31日目まで、二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)で、単一の薬剤として4回の10mg/kgの用量で処置した(図14)。結果として、二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)での処置は有意な抗腫瘍有効性を示し、皮下注射のSarc4605患者由来異種移植片に対して強い抗腫瘍有効性(腫瘍の停止状態)を示した。腫瘍増殖阻害(TGI)は、100%超と計算された。加えて、Sarc4605腫瘍を有するマウスを、アントラサイクリン系のドキソルビシン(アドリアマイシン、5mg/kg、q7d)と組み合わせた二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)(10mg/kg)で処置した。単一の薬剤としてのDR5−FAP抗体(10mg/kg、20、27、34及び41日目)での処置は腫瘍の停止状態を引き起こしたが(TGI99%)、ドキソルビシンとの組合せは、単に相加的な効果があるだけでなく、異なる腫瘍縮小をもたらした(83%)。ドキソルビシン単独での処置は、77%で腫瘍増殖を阻害した(図17)。
さらにSarc4605腫瘍を有するマウスを、アルキル化薬のイホスファミド(100mg/kg、q7d×2)と組み合わせた二重特異性抗体DR5−FAP(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)(10mg/kg)で処置した。DR5−FAP抗体(10mg/kg、q7d×8)単独での処置は強い腫瘍縮小を引き起こした(96%であり、80%が腫瘍なし)それに対してイホスファミドとの組合せはそれよりわずかに有効であった(86%が腫瘍なし)。加えて、腫瘍縮小の反応速度が、組合せにおいてより速かった(図19)。
PA1178及びPA3137PDAC断片に基づく異種移植モデル(PDX)
PA1178異種移植片を有するマウスを、研究の32から81日目まで、二重特異性DR5−FAP抗体(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)で、単一の薬剤として7回の10mg/kgの用量で、及びゲムシタビン及びnab−パクリタキセルと組み合わせて処置した(図18を参照)。二重特異性抗体を、単一の薬剤として10mg/kgを腹腔内に週1回投与した。同じ日に対応するビヒクルを投与した。ゲムシタビンを数週間にわたり40mg/kgで週2回腹腔内投与し、nab−パクリタキセルを、6mg/kgで連続4日の2サイクルで静脈内に投与した。
結果として、DR5−FAP二重特異性抗体(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)での処置は、単一の薬剤として有意な抗腫瘍有効性を示し、皮下注射のPA1178患者由来異種移植片に対して強い抗腫瘍有効性を示した。腫瘍増殖阻害(TGI)は、コントロールと比較して96%と計算された。さらにDR5−FAP二重特異性抗体(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)をゲムシタビン及びnab−パクリタキセル(アブラキサン)と組み合わせて与えた。3種の組合せは有効であり、全ての処置された動物において完全な腫瘍の寛解をもたらし、これはゲムシタビン/nab−パクリタキセルの2種の組合せが投与されたグループでは達成されなかった。
第2の断片に基づくPDAC PDXモデル(PA3137)において、二重特異性DR5−FAP抗体(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)(10mg/kg、腹腔内に、週1回×8)の有効性を、単一の薬剤として、並びにゲムシタビン(腹腔内に週1回、40mg/kg)及びnab−パクリタキセル(6mg/kg、4日連続、静脈内に)と組み合わせて評価した。移植の31日後から66日目まで、動物の処置を開始した。単剤療法で二重特異性DR5−FAP抗体(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)を用いた有効性は、40%TGIをもたらした。二重特異性DR5−FAP抗体(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)とゲムシタビン及びnab−パクリタキセル(アブラキサン)との組合せは、優れた有効性を示し、ほとんど完全な腫瘍の寛解を示した(データ示さず)。
実施例6: 前臨床薬力学的バイオマーカー及び組合せ戦略
前臨床トランスレーショナル研究を行い、目的通りの作用機序を実証し、最大活性を確認し、有望な耐性メカニズムを解明するための薬力学的(PD)分析を導いた。
材料及び方法
線維芽細胞を共注入した結腸直腸がん(CRC)細胞株に基づく異種移植モデル(DLD−1)で反応速度研究を設計した。二重特異性DR5−FAP抗体(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)(10mg/kg)の単一の薬剤処置の6、16、72及び168時間後に腫瘍を外植し、アポトーシスマーカー、例えば切断型カスパーゼ3(cc3)、切断型PARP並びに活性化カスパーゼ8及び9の免疫組織化学的(IHC)及びELISAに基づくタンパク質分析のために回収した。切断型カスパーゼ3のレベルを、Luminex(登録商標)プラットフォームのためのアポトーシスヒト3−Plexパネル(Life technologies)で決定し、MILLIPLEX(登録商標)MAP7−Plexを使用して、リン酸化Akt(Ser473)、JNK(Thr183/Tyr185)、Bad(Ser112)、Bcl−2(Ser70)、p53(Ser46)、活性カスパーゼ−8(Asp384)及び活性カスパーゼ−9(Asp315)の変化を決定した。
IHC分析のために、腫瘍を3.8%緩衝化ホルムアルデヒド溶液中で最大48時間固定し、パラプラストに包埋した。常套的なIHC染色プロトコールの後、Ventana Discovery XTスライド染色装置を使用して切断型カスパーゼ−3に対するウサギポリクローナル抗体(Asp175;Cell Signalling)を適用した。
ドキソルビシン(5mg/kg)と組み合わせた二重特異性DR5−FAP抗体(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)(10mg/kg)処置の分析のために、FAP陽性線維形成性黒色腫細胞株由来モデル(LOX−IMVI)を使用した。処置の3、6、16、72及び168時間後に腫瘍を外植した。
結果
本発明者らは、間質でFAPを発現する異種移植片腫瘍における、又は直接的に腫瘍細胞におけるIHC及びELISAによって、二重特異性DR5−FAP抗体での処置での有意な時間依存性のアポトーシス誘導を観察した。IHCによって、処置後の初期に、ビヒクルコントロールと比較してcc3などのアポトーシスマーカーの高い一過性のレベルが観察された。ELISAによる同等の組織溶解物の分析によっても、DLD−1 CRC異種移植モデルにおいて、単剤療法でのcc3、切断型PARP並びに活性化カスパーゼ8及び9の急速な誘導が明らかになり、これは、LOX−IMVI線維形成性黒色腫モデルにおいてドキソルビシンと共に与えられた場合により優れていた。ELISAによる同等の組織溶解物の分析によって、DLD−1 CRC異種移植モデルにおける単剤療法でのcc3、切断型PARP並びに活性化カスパーゼ8及び9の急速な誘導が明らかになり、これは、イリノテカン又はオキサリプラチンと共に与えられた場合により優れていた。
図20は、単一の薬剤である二重特異性DR5−FAP抗体(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)での処置後のLuminexデータ(ELISA)を示す。二重特異性DR5−FAP抗体は、DLD−1/3T3異種移植片に対して、時間に伴う強い腫瘍細胞のアポトーシスを誘導した。抗体処置の直後に(6時間)強い作用が観察された。
図21は、単一の薬剤である二重特異性DR5−FAP抗体(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)又はドキソルビシン(10mg/kg)との組合せでの処置後のLuminexデータ(ELISA)を示す。二重特異性DR5−FAP抗体は、時間に伴う様式で腫瘍細胞のアポトーシスを強く誘導する。腫瘍細胞のアポトーシス誘導は、LOX−IMVI線維形成性黒色腫モデルにおけるドキソルビシンを共に用いた二重特異性DR5−FAP抗体の併用治療の場合に優れている。
図22は、単一の薬剤である二重特異性DR5−FAP抗体(10mg/kg;DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)又はイリノテカン(15mg/kg)若しくはオキサリプラチン(5mg/kg)との組合せでの処置後のLuminexデータ(ELISA)を示す。二重特異性DR5−FAP抗体は、DLD−1 CRC異種移植モデルにおいて時間に伴う様式で腫瘍細胞のアポトーシスを強く誘導する。腫瘍細胞のアポトーシス誘導は、イリノテカン又はオキサリプラチンを共に用いた二重特異性DR5−FAP抗体の併用治療の場合に優れている。
本発明者らは、二重特異性DR5−FAP抗体(DR5バインダー:VH配列番号7、VL配列番号8、FAPバインダー:VH配列番号15、VL配列番号16)は、腫瘍間質上又は腫瘍細胞でFAPが発現されたかどうかに関係なく、注入の直後にインビボで腫瘍細胞のアポトーシスを強く誘導することを確認し、最適な薬力学的なマーカー並びにサンプリング及び分析のためのタイムポイントを発見した。
配列
本発明の現在好ましい実施形態を記載及び示しているが、本発明が、これに限定されるのではなく、これ以外の場合にも添付の特許請求の範囲の範囲内で多様に実施され(embodied/practiced)得ることは明確に理解されるべきである。