<第1実施形態>
まず、図1を参照して、第1実施形態の車両1の構成について説明する。図1は、車両1のブロック図である。第1実施形態の車両1は、ECU100と、ウォータポンプ110と、内燃機関120と、通路130と、ラジエータ140と、弁145と、ファン150と、速度センサ160と、温度センサ165と、補機170と、不図示の有段変速機とを備える。
ECU(エレクトロニックコントロールユニット)100は、制御装置、及び、コンピュータの例であり、ウォータポンプ110の制御に加えて、車両1の制御や各種の処理を行う。ECU100は、例えば、CPU、及び、ROM、RAM等の記憶装置を備える。記憶装置は、後述の図2や図5の処理等を実現するプログラムを記憶する。ROMが格納するプログラムをCPUが実行することで、図2や図5の処理が実現される。
ウォータポンプ110は、ECU100の制御に基づいて、所定の流量で冷却水を通路130に流す電動のポンプである。なお、冷却水は、流体の冷媒の例である。内燃機関120は、内燃機関120が備えるシリンダに燃料を供給し、燃料を燃焼させて駆動力を得て内燃機関120が備えるクランクシャフトを回転させる装置である。内燃機関120は、車両1の駆動力源となる。内燃機関120の出力トルクによって、車両1を駆動させたり、後述の補機170を動作させたりできる。ウォータポンプ110、及び、ウォータポンプ110を制御するECU100は、内燃機関120を冷却する冷却装置の例である。
通路130は、冷却水が流れる経路である。通路130は、第1通路131と、第2通路132と、第3通路133とを備える。第1通路131は、内燃機関120に設けられる。第1通路131は、例えばウォータジャケットである。第2通路132は、第1通路131とラジエータ140とをつなぐ。冷却水は、第1通路131、第2通路132、及び、ラジエータ140を流れることで、循環する。第3通路133は、冷却水がラジエータ140に流れないようにするためのバイパス通路である。冷却水は、第1循環路、又は、第2循環路で循環する。第1循環路は、第1通路131、第2通路132、及び、ラジエータ140から構成される循環路である。第2循環路は、第1通路131、第2通路132、及び、第3通路133から構成される循環路である。
ラジエータ140は、冷却水の熱を放散する。ラジエータ140は、第2通路132とつながれている。弁145は、例えばサーモスタットであり、冷却水の温度に基づいて、第3通路133に流す冷却水の量を制御する。弁145は、例えば、冷却水の温度が90[℃]以下のときは、全ての冷却水が第3通路133を流れるようにし、全ての冷却水が第2循環路を循環するように制御する。これにより、冷却水が過度に冷却されることを防止する。
ファン150は、ECU100の制御に基づいて、ラジエータ140に送風する。速度センサ160は、車両1の速度を検出する。温度センサ165は、通路130を流れる冷却水の温度を検出する。温度センサ165は、例えば、内燃機関120のシリンダヘッドの出口付近に配置される。
補機170は、内燃機関120の出力トルクに基づいて動作する所定の機器であり、補機170には、例えば、ヘッドライトやエアコンが含まれる。補機170には、内燃機関120につながれたオルタネータの出力に基づいて動作する機器が含まれていてもよい。補機170は、内燃機関120の出力トルクのうち、車両1の駆動に使われるトルク以外のトルクに基づいて動作することになる。ECU100は、補機170に含まれるものとしてもよい。
次に、図2を参照して、ウォータポンプ制御処理について説明する。図2は、ウォータポンプ制御処理のフローチャートである。ECU100は、図2のウォータポンプ制御処理を繰り返し実行する。
ステップS100において、ECU100は、現在車両1が渋滞路を走行中の可能性が高いとみなす低速状態であるか否かを判定する。ECU100は、速度センサ160から取得する速度に基づいて、現在時刻から遡って所定の基準時間内の車両1の速度が所定の速度閾値である第1渋滞速度閾値以下であるとき、車両1が低速状態であると判定する。基準時間は、低速状態であるか否かの判定に使われる所定の長さの時間であり、例えば、3分や5分である。第1渋滞速度閾値は、例えば、10[km/h]や20[km/h]である。
ECU100は、現在時刻から遡って基準時間内の車両1の最高速度と、現在時刻から遡って基準時間内の車両1の平均速度とに基づいて、車両1が低速状態であるか否かを判定してもよい。より具体的には、ECU100は、車両1の最高速度が所定の速度閾値である第2渋滞速度閾値以下であり、車両1の平均速度が所定の速度閾値である第3渋滞速度閾値以下であるとき、車両1が低速状態であると判定してもよい。車両1の最高速度は、現在時刻から遡って基準時間内の車両1の最高速度とする。車両1の平均速度は、現在時刻から遡って基準時間内の車両1の平均速度とする。また、ECU100は、車両1に搭載された車載通信機が受信する渋滞情報を取得し、この渋滞情報に基づいて、車両1が低速状態であるか否かを判定してもよい。車載通信機は、カーナビゲーションを実現する装置である。ECU100は、例えば、渋滞情報に基づいて車両1が渋滞路を走行していると判定できるとき、車両1が低速状態であると判定する。
ECU100は、車両1が低速状態のとき処理をステップS101に進め、車両1が低速状態ではないとき処理をステップS108に進める。ステップS100の処理は、本発明の判定手段による処理例である。
ステップS101において、ECU100は、内燃機関120から内燃機関120の吸気温度を取得する。そして、ECU100は、取得した内燃機関120の吸気温度が所定の温度閾値である第1プレイグニッション温度閾値以上のとき、処理をステップS102に進め、第1プレイグニッション温度閾値未満のとき処理をステップS108に進める。第1プレイグニッション温度閾値は、例えば、ECU100の記憶装置に記憶されている。
ステップS102において、ECU100は、温度センサ165から冷却水の温度を取得する。そして、ECU100は、取得した冷却水の温度が所定の温度閾値である第2プレイグニッション温度閾値以上か否かを判定する。ECU100は、第2プレイグニッション温度閾値以上のとき処理をステップS103に進め、第2プレイグニッション温度閾値未満のとき処理をステップS108に進める。第2プレイグニッション温度閾値は、例えば、ECU100の記憶装置に記憶されている。
車両1が低速状態であり、内燃機関120の吸気温度が第1プレイグニッション温度閾値以上であり、冷却水の温度が第2プレイグニッション温度閾値以上のとき、プレイグニッション発生条件が成立したものとする。プレイグニッション発生条件は、内燃機関120でプレイグニッションが発生する可能性が高いとみなす条件である。ECU100は、プレイグニッション発生条件が成立したとき処理をステップS103に進め、成立していないとき処理をステップS108に進める。
ステップS103において、ECU100は、内燃機関120から回転数を取得する。次に、ECU100は、出力限界トルクマップと、取得した内燃機関120の回転数と、内燃機関120の吸気温度と、冷却水の温度とに基づいて、出力限界トルクTr_egを決定する。出力限界トルクTr_egは、プレイグニッションが発生しないという条件下での内燃機関120の出力トルクの限界値である。
ここで、図3を参照して、出力限界トルクマップについて説明する。図3は、出力限界トルクマップの例を示す図である。出力限界トルクマップは、内燃機関120の回転数ごとに定められ、内燃機関120の吸気温度、及び、冷却水の温度と、出力限界トルクTr_egとの関係を規定するマップである。ECU100は、出力限界トルクマップによって、内燃機関120の回転数、内燃機関120の吸気温度、及び、冷却水の温度から出力限界トルクTr_egを特定可能である。出力限界トルクマップは、内燃機関120を用いた実験等で予め定められており、例えば、ECU100の記憶装置に記憶されている。図3に示す出力限界トルクマップでは、ECU100は、内燃機関120の回転数が1000[rpm]であり、内燃機関120の吸気温度が50[℃]であり、冷却水の温度が95[℃]のとき、出力限界トルクTr_egを80[Nm]に決定する。
ステップS104において、ECU100は、補機170の動作状況と、補機負荷トルクマップとに基づいて、補機負荷トルクTr_auxを決定する。補機負荷トルクTr_auxは、内燃機関120の出力トルクのうち、補機170の動作に使われているトルクである。
補機負荷トルクマップは、補機170の動作状況と、補機負荷トルクTr_auxとの関係を規定するマップである。ECU100は、補機負荷トルクマップによって、補機170の動作状況から補機負荷トルクTr_auxを特定可能である。補機170の動作状況とは、例えば、補機170であるヘッドライトが点灯中であるか否かという情報や、補機170であるエアコンが稼働中であるか否かという情報である。補機負荷トルクマップは、補機170及び内燃機関120を用いた実験等で予め定められており、例えば、ECU100の記憶装置に記憶されている。
ステップS105において、ECU100は、例えば、スロットル開度に基づいて内燃機関120の機関負荷を決定する。また、ECU100は、速度センサ160から車両1の速度を取得する。次に、ECU100は、決定した内燃機関120の機関負荷と、取得した車両1の速度とに基づいて、余剰トルク閾値αを決定する。この決定処理は、閾値決定手段による処理例である。
余剰トルク閾値αは、ステップS106で使われる値であり、余剰トルクの閾値である。余剰トルクは、「Tr_eg−Tr_aux」で定義される値である。余剰トルクが大きいと、車両1は内燃機関120から発進や加速に必要なトルクを得られて、車両1が低速状態であっても車両1の発進性能を確保できる。余剰トルクが余剰トルク閾値αより低い場合、ECU100は、後述の図5の増量処理で冷却水を冷却し、余剰トルクが余剰トルク閾値αを超えるように制御する。
第1実施形態では、ECU100は、まず、次に説明する閾値決定マップを用いて、決定した内燃機関120の機関負荷と取得した車両1の速度とから、閾値補正値を決定する。次に、ECU100は、決定した閾値補正値と基準閾値とに基づいて、余剰トルク閾値αを決定する。基準閾値は、余剰トルク閾値αの基準となる予め定められた所定の値であり、例えば、ECU100の記憶装置に記憶されている。閾値補正値は、基準閾値からの補正値である。ECU100は、例えば、余剰トルク閾値αを、決定した閾値補正値と基準閾値とを加算した値に決定する。
次に、図4を参照して、閾値決定マップについて説明する。図4は、閾値決定マップの例を示す図である。閾値決定マップは、例えば、速度、及び、機関負荷を軸とするグラフで表され、機関負荷、及び、車両1の速度と、閾値補正値との関係を規定するマップである。ECU100は、閾値決定マップによって、内燃機関120の機関負荷、及び、車両1の速度から閾値補正値を特定可能である。図4の原点では、車両1の速度は0[km/h]である。
閾値決定マップは、第1補正閾値を表す第1線200と、第2補正閾値を表す第2線201とを含む。第1補正閾値、及び、第2補正閾値は、車両1の速度が大きくなるにしたがって大きくなるように定められている。第1補正閾値は、車両1の速度に関わらず、第2補正閾値以上である。
また、閾値決定マップは、第1プラス補正領域210、第1無補正領域211、及び、第1マイナス補正領域212を含む。第1プラス補正領域210は、第1線200より機関負荷が高い側である。第1無補正領域211は、第1線200より機関負荷が低い側であって、第2線201より機関負荷が高い側である。第1マイナス補正領域212は、第2線201より機関負荷が低い側である。
ECU100は、内燃機関120の機関負荷が、車両1の速度に対応する第1補正閾値より高いとき、閾値補正値を、余剰トルク閾値αが基準閾値より大きくなるような値(例えば、所定の正の値)に決定する。すなわち、ECU100は、車両1の速度と内燃機関120の機関負荷とで表される点が第1プラス補正領域210に含まれるとき、閾値補正値を、余剰トルク閾値αが基準閾値より大きくなるような値に決定する。
ECU100は、内燃機関120の機関負荷が、車両1の速度に対応する第1補正閾値より低く、車両1の速度に対応する第2補正閾値より高いとき、閾値補正値を、余剰トルク閾値αが基準閾値となるような値(例えば、「0」)に決定する。すなわち、ECU100は、車両1の速度と内燃機関120の機関負荷とで表される点が第1無補正領域211に含まれるとき、閾値補正値を、余剰トルク閾値αが基準閾値となるような値に決定する。
ECU100は、内燃機関120の機関負荷が、車両1の速度に対応する第2補正閾値より低いとき、閾値補正値を、余剰トルク閾値αが基準閾値より小さくなるような値(例えば、所定の負の値)に決定する。すなわち、ECU100は、車両1の速度と内燃機関120の機関負荷とで表される点が第1マイナス補正領域212に含まれるとき、閾値補正値を、余剰トルク閾値αが基準閾値より小さくなるような値に決定する。
第1線200は第1プラス補正領域210又は第1無補正領域211のいずれかに含まれ、第2線201は第1無補正領域211又は第1マイナス補正領域212のいずれかに含まれるものとする。
なお、ステップS105において、ECU100は、速度センサ160から取得した車両1の速度の代わり、この速度を、車両1の乗車人数に基づいて補正した値を用いて、余剰トルク閾値αを決定してもよい。また、ECU100は、速度センサ160から取得した車両1の速度の代わり、車両1の加速度を用いて、余剰トルク閾値αを決定してもよい。また、ECU100は、車両1が走行している場所の勾配を用いて余剰トルク閾値αを決定してもよい。
ステップS106において、ECU100は、余剰トルクが余剰トルク閾値α以下か否か、すなわち、次の式(1)が成立するか否かを判定する。ECU100は、余剰トルクが余剰トルク閾値α以下のとき(式(1)が成立するとき)処理をステップS107に進め、余剰トルクが余剰トルク閾値αより大きいとき(式(1)が成立しないとき)処理をステップS108に進める。
Tr_eg−Tr_aux≦α ・・・ (1)
ステップS107において、ECU100は、後に図5を参照して説明する増量処理を行う。
ステップS108において、ECU100は、ウォータポンプ110の通常の制御を行う。すなわち、ECU100は、内燃機関120の回転数に基づいて、ウォータポンプ110の基本流量を決定し、基本流量で冷却水を流すようにウォータポンプ110を制御する。基本流量は、例えば内燃機関120の回転数の一次関数になっており、内燃機関120の回転数が大きくなるにつれて基本流量が多くなる。ステップS107、及び、ステップS108の処理は、本発明の制御手段による処理例である。
次に、図5を参照して、増量処理について説明する。図5は、増量処理のフローチャートである。ステップS200において、ECU100は、内燃機関120の機関負荷を決定する。また、ECU100は、速度センサ160から車両1の速度を取得する。次に、ECU100は、決定した内燃機関120の機関負荷と、取得した車両1の速度とに基づいて、流量増大継続時間を決定する。流量増大継続時間は、ウォータポンプ増量制御の継続時間である。ウォータポンプ増量制御は、基本流量より多い流量で冷却水を流すようにウォータポンプ110を制御することである。ステップS200の処理は、本発明の時間決定手段による処理例である。
第1実施形態では、ECU100は、まず、次に説明する継続時間決定マップを用いて継続時間補正値を決定する。次に、ECU100は、決定した継続時間補正値と基準継続時間とに基づいて、流量増大継続時間を決定する。基準継続時間は、流量増大継続時間の基準となる予め定められた所定の値であり、例えば、ECU100の記憶装置に記憶されている。継続時間補正値は、基準継続時間からの補正値である。ECU100は、例えば、流量増大継続時間を、決定した継続時間補正値と基準継続時間とを加算した値に決定する。
次に、図6を参照して、継続時間決定マップについて説明する。図6は、継続時間決定マップの例を示す図である。継続時間決定マップは、例えば、機関負荷、及び、車両1の速度を軸とするグラフで表され、内燃機関120の機関負荷、及び、車両1の速度と、継続時間補正値との関係を規定するマップである。ECU100は、継続時間決定マップによって、内燃機関120の機関負荷、及び、車両1の速度から継続時間補正値を特定可能である。継続時間決定マップには、第2プラス補正領域310と、第2無補正領域311と、第2マイナス補正領域312とが含まれる。
第2無補正領域311は、内燃機関120の機関負荷が所定の負荷閾値である補正負荷閾値以下であり、かつ、車両1の速度が所定の速度閾値である補正速度閾値以下の領域である。ECU100は、取得した車両1の速度と内燃機関120の機関負荷とで表される点が第2無補正領域311に含まれるとき、継続時間補正値を、流量増大継続時間が基準継続時間となるような値(例えば、「0」)に決定する。
第2プラス補正領域310は、第2無補正領域311より機関負荷が高い側の領域、及び、第3線300より機関負荷が高い側の領域である。第3線300は、内燃機関120の機関負荷が補正負荷閾値であり車両1の速度が補正速度閾値である点を起点として、車両1の速度が速くなるにつれて機関負荷が高くなる線である。ECU100は、取得した車両1の速度と内燃機関120の機関負荷とで表される点が第2プラス補正領域310に含まれるとき、継続時間補正値を、流量増大継続時間が基準継続時間より大きくなるような値(例えば、所定の正の値)にする。
第2マイナス補正領域312は、車両1の速度が補正速度閾値より大きく、かつ、第3線300より機関負荷が低い側の領域である。ECU100は、取得した車両1の速度と機関負荷とで表される点が第2マイナス補正領域312に含まれるとき、継続時間補正値を、流量増大継続時間が基準継続時間より小さくなるような値(例えば、所定の負の値)に決定する。
すなわち、取得した車両1の速度が補正速度閾値以下という前提の下では、ECU100は、内燃機関120の機関負荷が、補正負荷閾値より高いとき、補正負荷閾値以下のときと比べて、流量増大継続時間が長くなるように継続時間補正値を決定する。また、取得した内燃機関120の機関負荷が補正負荷閾値以下という前提の下では、ECU100は、車両1の速度が、補正速度閾値より大きいとき、補正速度閾値以下のときと比べて、流量増大継続時間が短くなるように継続時間補正値を決定する。また、取得した車両1の速度が補正速度閾値より大きいという前提の下では、ECU100は次のように決定する。すなわち、ECU100は、内燃機関120の機関負荷が、車両1の速度に対応する第3線300上の機関負荷より高いとき、低いときと比べて、流量増大継続時間が長くなるように継続時間補正値を決定する。
内燃機関120の機関負荷が高く車両1の速度が小さい場合、エアコン等の補機170の負荷が高い状況、又は、上り坂を走行中である等の車両1の加速を阻害する要因が大きい状況と判断できる。したがって、ECU100は、内燃機関120の機関負荷が高く車両1の速度が小さい場合、流量増大継続時間を長くして、出力限界トルクを大きくする。一方、機関負荷が低く車両1の速度が大きい場合、補機170の負荷が低い状況、又は、下り坂を走行中である等の加速を阻害する要因が小さい状況と判断できる。したがって、ECU100は、機関負荷が低く車両1の速度が大きい場合、出力限界トルクを大きくする必要がないので、流量増大継続時間を短くできる。
なお、ECU100は、車両1の速度の代わりに、アクセル開度を用いて、流量増大継続時間を決定してもよい。このとき、継続時間決定マップの軸は、車両1の速度の代わりに、アクセル開度となる。ただし、車両1の運転手がアクセルを踏んだ状態でも、勾配等の車両1の走行路の状態によってウォータポンプ増量制御を行う時間を変えて冷却水を適切に冷却することが望ましいため、アクセル開度よりも車両1の速度を用いる方が好ましい。
ステップS201において、ECU100は、基本流量より多い流量の冷却水を流すようにウォータポンプ110を制御する処理を開始する。すなわち、ECU100は、ウォータポンプ増量制御を開始する。基本流量より多い流量の例として、ウォータポンプ110が流すことができる最大の流量が挙げられる。
ステップS202において、ECU100は、温度センサ165から冷却水の温度を取得する。そして、ECU100は、取得した冷却水の温度が所定の温度閾値である増量温度閾値以下か否かを判定する。ECU100は、取得した冷却水の温度が増量温度閾値以下のとき図5の処理を終了して処理を図2のステップS108に進め、増量温度閾値より高いとき処理をステップS203に進める。
ステップS203において、ECU100は、速度センサ160から車両1の速度を取得する。そして、ECU100は、取得した車両1の速度が所定の速度閾値である増量速度閾値以上か否かを判定する。ECU100は、取得した車両1の速度が増量速度閾値以上のとき図5の処理を終了して処理を図2のステップS108に進め、増量速度閾値未満のとき処理をステップS204に進める。
ステップS204において、ECU100は、ウォータポンプ増量制御を開始してから、ステップS200で決定された流量増大継続時間が経過したか否かを判定する。ECU100は、流量増大継続時間が経過したとき図5の処理を終了して処理を図2のステップS108に進め、経過していないとき処理をステップS202に戻す。
次に、図7を参照して、第1実施形態の車両1の動作例について説明する。図7は、車両1の動作例を示すタイムチャートである。図7のタイムチャートには、速度グラフ400、回転数グラフ401、温度グラフ402、トルクグラフ403、及び、流量グラフ404が含まれる。
速度グラフ400では、線410が車両1の速度の時間変化を表す。速度グラフ400のV1は、図2のステップS100で説明した第1渋滞速度閾値である。速度グラフ400に示される基準時間は、図2のステップS100で説明した低速状態であるか否かの判定に使われる所定の長さの時間である。回転数グラフ401では、線411が内燃機関120の回転数の時間変化を表す。回転数グラフ401のR1は、内燃機関120がアイドリング時の回転数である。温度グラフ402では、線412が冷却水の温度の時間変化を表し、線413が内燃機関120の吸気温度の時間変化を表す。温度グラフ402のTE1は、図2のステップS101で説明した第1プレイグニッション温度閾値である。温度グラフ402のTE2は、図2のステップS102で説明した第2プレイグニッション温度閾値である。トルクグラフ403では、線414が出力限界トルクTr_egの時間変化を表し、線415が補機負荷トルクTr_auxの時間変化を表す。流量グラフ404では、線416がウォータポンプ110の流量の時間変化を表す。流量グラフ404の流量F1は、内燃機関120がアイドリング時のウォータポンプ110の基本流量である。流量グラフ404の流量F2は、図5を参照して説明したウォータポンプ増量制御が行われているときの流量であり、例えば、ウォータポンプ110が流すことができる最大の流量である。
図7のトルクグラフ403に示すように、時刻T0から時刻T1までは、「Tr_eg−Tr_aux」で表される余剰トルクは、余剰トルク閾値αより大きい。よって、時刻T0から時刻T1までの間、ECU100は、図2のステップS107を実行することはなく、ステップS108を実行する。したがって、流量グラフ404から分かるように、時刻T0から時刻T1までは、ウォータポンプ110は、内燃機関120の回転数に基づいた基本流量で冷却水を流す。
時刻T1において、速度グラフ400に示すように、時刻T1から遡って基準時間内の車両1の速度が第1渋滞速度閾値V1以下であるため、車両1は低速状態である。また、時刻T1において、温度グラフ402に示すように、内燃機関120の吸気温度は第1プレイグニッション温度閾値TE1以上である。また、時刻T1において、冷却水の温度は第2プレイグニッション温度閾値TE2以上である。このため、時刻T1において、プレイグニッション条件が成立する。また、時刻T1において、トルクグラフ403に示すように、余剰トルクが余剰トルク閾値α以下になっている。よって、ECU100は、時刻T1において、図2のステップS106から図5のステップS200、ステップS201に処理を進めて、ウォータポンプ増量制御を開始する。なお、流量グラフ404の破線417は、ウォータポンプ増量制御を行わなかったとした場合の、ウォータポンプ110の流量、又は、電動のウォータポンプ110の代わりに機械式のポンプを使ったときの流量である。
ECU100が時刻T1にウォータポンプ増量制御を開始すると、時刻T1以降で、ラジエータで冷却される冷却水の量が増えて、温度グラフ402に示すように、冷却水の温度が下がる。したがって、トルクグラフ403に示すように、出力限界トルクTr_egが大きくなる。また、時刻T2で車両1の速度が上昇しはじめると、温度グラフ402に示すように、走行風によって内燃機関120の吸気温度が下がる。
時刻T1から流量増大継続時間が経過して時刻T3になると、ECU100は、図5の処理を終了して、図2のステップS108に処理を進めて、ウォータポンプ110の流量を基本流量にする。時刻T4から時刻T5までの間に、車両1の速度が下がり、内燃機関120の回転数が下がると、流量グラフ404に示すように、内燃機関120の回転数の減少に伴って、ウォータポンプ110の流量が減る。
次に、第1実施形態の効果について説明する。第1に、プレイグニッション発生条件が成立する状態であり、かつ、内燃機関120の余剰トルクが余剰トルク閾値α以下のとき、ECU100は、ウォータポンプ増量制御を行う。したがって、ウォータポンプ増量制御で、ラジエータ140での放熱により冷却水が冷却されて、内燃機関120の燃焼室の吸熱が促進されて、プレイグニッションの発生を抑制できる。
また、ECU100は、プレイグニッション発生条件が成立する状態のとき、流量増大継続時間が経過するまで、継続してウォータポンプ増量制御を行う。したがって、ウォータポンプ110の消費電力が過大になることが抑制され、ウォータポンプ110の消費電力の最適化が実現される。同時に、内燃機関120が過度に冷却されることが防止されて、燃費の悪化が抑制される。
また、ウォータポンプ増量制御により冷却水が冷却されて、出力限界トルクが大きくなる。よって、余剰トルクが大きくなって発進や加速のためのトルクが確保されて、車両1の発進性能が確保される。
また、プレイグニッション発生条件が成立すれば、内燃機関120の機関負荷が上昇する前に、ウォータポンプ増量制御が実行されて出力限界トルクが大きくなる。よって、内燃機関120の機関負荷が上昇する前であっても、車両1の発進性能が確保される。
第2に、ECU100は、内燃機関120の機関負荷と車両1の速度とに基づいて余剰トルク閾値αを決定する。したがって、車両1の発進性能を確保するための余剰トルク閾値αを好適に決定できる。
第3に、ECU100は、内燃機関120の機関負荷が、車両1の速度が大きくなるにしたがって大きくなるように定められている第1補正閾値より高いとき、第1補正閾値より低いときと比べて、余剰トルク閾値αを大きい値に決定する。よって、図4から分かるように、内燃機関120の機関負荷が同じであれば、車両1が低速のとき余剰トルク閾値αが大きくなる。また、図4から分かるように、車両1の速度が同じであれば、内燃機関120の機関負荷が高いとき余剰トルク閾値αが大きくなる。したがって、車両1が低速のときや内燃機関120の機関負荷が高いときに、ウォータポンプ増量制御によって出力限界トルクが大きくなり、車両1の発進性能が確保される。
第4に、プレイグニッション発生条件が成立する状態とは、車両1が低速状態であり、かつ、内燃機関120の吸気温度が第1プレイグニッション温度閾値以上、かつ、冷却水の温度が第2プレイグニッション温度閾値以上である状態である。したがって、ECU100は、プレイグニッション発生条件が成立するか否かを簡易に判定できる。
第5に、ECU100は、内燃機関120の機関負荷と車両1の速度とに基づいて、流量増大継続時間を決定する。したがって、プレイグニッションを防止するための流量増大継続時間を好適に決定でき、流量増大継続時間が必要以上に長くなることが回避される。
第6に、ECU100は、車両1の速度が補正速度閾値以下という前提の下では、内燃機関120の機関負荷が補正負荷閾値より高いとき、補正負荷閾値以下のときと比べて、長くなるように流量増大継続時間を決定する。内燃機関120の機関負荷が低いときは、内燃機関120の機関負荷が高いときと比べて内燃機関120の発熱が抑えられており、流量増大継続時間を短くできる。したがって、流量増大継続時間を必要以上に長くすることが回避され、ウォータポンプ110を稼働させるための消費電力を低減できる。
第7に、ECU100は、内燃機関120の機関負荷が補正負荷閾値以下という前提の下では、車両1の速度が補正速度閾値より大きいとき、補正速度閾値以下のときと比べて、短くなるように流量増大継続時間を決定する。車両1の速度が大きいときは、走行風による内燃機関120の冷却でプレイグニッションを防止できるため、流量増大継続時間を短くできる。したがって、流量増大継続時間を必要以上に長くすることが回避され、ウォータポンプ110の消費電力の最適化が実現される。
第8に、ECU100は、流量増大継続時間の経過後、基本流量で冷却水を流すようにウォータポンプ110を制御する。したがって、ウォータポンプ110の消費電力が過大になることが抑制され、ウォータポンプ110の消費電力の最適化が実現される。
第9に、ECU100は、流量増大継続時間が経過したとき、又は、冷却水の温度が増量温度閾値以下になったとき、又は、車両1の速度が増量速度閾値以上になったとき、基本流量で冷却水を流すようにウォータポンプ110を制御する。冷却水の温度が増量温度閾値以下のときや、車両1の速度が増量速度閾値以上のときは、基本流量にしても冷却水による冷却や走行風による冷却でプレイグニッションの発生を防止できる。したがって、ウォータポンプ110の消費電力が過大になることが抑制され、ウォータポンプ110の消費電力の最適化が実現される。
第10に、ECU100は、出力限界トルクTr_egと、補機負荷トルクTr_auxとに基づいて、余剰トルクを決定する。したがって、ECU100は簡易に余剰トルクを決定できる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の車両1について説明する。第1実施形態と同様の点については同符号を付して説明を省略する。まず、図8を参照して、第2実施形態のウォータポンプ制御処理について説明する。図8は、ウォータポンプ制御処理のフローチャートである。ステップS300からステップS302までは、図2のステップS100からステップS102までと同様である。ただし、ステップS300において、ECU100は、車両1が低速状態のとき処理をステップS301に進め、車両1が低速状態ではないとき処理をステップS313に進める。また、ステップS301において、ECU100は、内燃機関120の吸気温度が第1プレイグニッション温度閾値以上のとき、処理をステップS302に進め、第1プレイグニッション温度閾値未満のとき処理をステップS313に進める。また、ステップS302において、ECU100は、冷却水の温度が第2プレイグニッション温度閾値以上のとき処理をステップS303に進め、第2プレイグニッション温度閾値未満のとき処理をステップS313に進める。
ステップS303において、ECU100は、後に説明する第1条件が成立する否かを判定する。ECU100は、第1条件が成立するとき処理をステップS304に進め、成立しないとき処理をステップS305に進める。
ステップS304において、ECU100は、係数γとして、第1係数γ1を選択する。係数γは、プレイグニッションの発生可能性を表す係数であり、余剰トルク閾値αの決定に使われる係数である。第2実施形態では、第1係数γ1は第2係数γ2よりプレイグニッションの発生可能性が高いことを表し、第2係数γ2は第3係数γ3よりプレイグニッションの発生可能性が高いことを表す。係数γは、プレイグニッション係数の例である。
ステップS305において、ECU100は、後に説明する第2条件が成立するか否かを判定する。ECU100は、第2条件が成立するとき処理をステップS306に進め、成立しないとき処理をステップS307に進める。
ステップS306において、ECU100は、係数γとして、第2係数γ2を選択する。ステップS307において、ECU100は、係数γとして、第3係数γ3を選択する。
ここで、図9を参照して、ステップS303の第1条件、及び、ステップS305の第2条件について説明する。図9は、条件グラフの例を示す図である。第1条件は、内燃機関120の回転数が所定の回転数閾値R10以下であり、かつ、内燃機関120の吸気温度が所定の第3温度閾値T12以上第4温度閾値T13未満の第1範囲に含まれる場合に、成立する条件である。すなわち、第1条件は、内燃機関120の吸気温度、及び、内燃機関120の回転数が、図9に示す第1条件領域に含まれる場合に成立する。
第2条件は、内燃機関120の回転数が回転数閾値R10以下であり、かつ、内燃機関120の吸気温度が所定の第2温度閾値T11以上第3温度閾値T12未満の第2範囲に含まれる場合に、成立する条件である。すなわち、第2条件は、内燃機関120の吸気温度、及び、内燃機関120の回転数が、図9に示す第2条件領域に含まれる場合に成立する。
第2温度閾値T11、第3温度閾値T12、及び、第4温度閾値T13の順で温度が高くなる。したがって、第2範囲は第1範囲より温度が低い範囲である。図8のステップS301の第1プレイグニッション温度閾値は、図9では、第1温度閾値T10で表されている。第1プレイグニッション温度閾値である第1温度閾値T10は、第2温度閾値T11より低い。
第1条件、及び、第2条件は、プレイグニッション発生可能性を表す。第1条件が成立するときは、第2条件が成立するときと比べて、内燃機関120の吸気温度が高い。したがって、第1条件が成立するときは、第2条件が成立するときと比べて、プレイグニッション発生可能性が高いといえる。ステップS303からステップS307までの処理は、本発明の係数決定手段による処理例である。なお、ステップS303、及び、ステップS304において、ECU100は、内燃機関120の吸気温度の代わりに冷却水の温度を用いてもよい。この場合、図9の縦軸は、内燃機関120の吸気温度の代わりに冷却水の温度となる。
ステップS308、及び、ステップS309は、それぞれ、図2のステップS103、及び、ステップS104と同様である。
ステップS310において、ECU100は、内燃機関120の機関負荷を決定する。また、ECU100は、速度センサ160から車両1の速度を取得する。次に、ECU100は、決定した機関負荷、及び、取得した車両1の速度と、係数γとに基づいて、余剰トルク閾値αを決定する。
第2実施形態のステップS310は、図2に示す第1実施形態のステップS105と、次の点で異なる。すなわち、第1実施形態では、第1補正閾値を表す第1線200が変動することない。一方、第2実施形態では、係数γに基づいて、第1線200が変動する。この点について、図10を参照して説明する。図10は、第2実施形態の閾値決定マップの例を示す図である。図10は、第1実施形態の図4と同様であるが、図4とは異なり、係数γに基づいた第1線200の変動が示されている。
図10では、係数γが第1係数γ1のときの第1線200が、γ1用第1線200Aで示されている。また、係数γが第2係数γ2のときの第1線200が、γ2用第1線200Bで示されている。また、係数γが第3係数γ3のときの第1線200が、γ3用第1線200Cで示されている。γ1用第1線200Aは、γ2用第1線200Bより機関負荷の低い側に定められる。また、γ2用第1線200Bは、γ3用第1線200Cより機関負荷の低い側に定められる。γ3用第1線200Cは、図4に示す第1線200と等しい。
このように、第2実施形態では、第1線200で表される第1補正閾値は、係数γが表すプレイグニッションの発生可能性が高くなるにしたがって、小さくなるように定められている。ECU100は、その他の点については、図2のステップS105と同様に、余剰トルク閾値αを決定する。なお、図10の例では、車両1の速度が0[km/h]の場合、第1補正閾値に変化はない。
ステップS311において、ECU100は、余剰トルクが余剰トルク閾値α以下か否か、すなわち、上記の式(1)が成立するか否かを判定する。ECU100は、余剰トルクが余剰トルク閾値α以下のとき(式(1)が成立するとき)処理をステップS312に進め、余剰トルクが余剰トルク閾値αより大きいとき(式(1)が成立しないとき)処理をステップS313に進める。ステップS312、及び、ステップS313は、それぞれ、図2のステップS107、及び、ステップS108と同様である。
次に、第2実施形態の効果について説明する。第1に、ECU100は、少なくとも内燃機関120の吸気温度に基づいて、内燃機関120のプレイグニッションの発生可能性を表す係数γを決定する。また、第1補正閾値は、係数γが表すプレイグニッションの発生可能性が高くなるにしたがって、小さくなるように定められている。よって、プレイグニッションの発生可能性に応じて余剰トルク閾値αを好適に決定できる。
第2に、ECU100は、プレイグニッションの発生可能性についての第1条件が成立するとき、第2条件が成立するときと比べて、内燃機関120のプレイグニッションの発生可能性が高いことを表す係数γを選択する。したがって、ECU100は、所定の精度で簡易にプレイグニッションの発生可能性を決定できる。
第3に、第1実施形態と同様に、プレイグニッションの発生を抑制できる。また、ウォータポンプ110の消費電力の最適化が実現されて、燃費の悪化が抑制される。また、車両1の発進性能が確保される。
<第2実施形態の第1変形例>
次に、第2実施形態の第1変形例の車両1について説明する。第2実施形態と同様の点については同符号を付して説明を省略する。まず、図11を参照して、第2実施形態の第1変形例のウォータポンプ制御処理について説明する。図11は、ウォータポンプ制御処理のフローチャートである。
ステップS400は、図2のステップS100と同様である。ただし、ステップS400において、ECU100は、車両1が低速状態のとき処理をステップS401に進め、車両1が低速状態ではないとき処理をステップS410に進める。
ステップS401において、ECU100は、内燃機関120から内燃機関120の吸気温度を取得する。また、ECU100は、温度センサ165から冷却水の温度を取得する。そして、ECU100は、取得した内燃機関120の吸気温度が第1プレイグニッション温度閾値以上、かつ、取得した冷却水の温度が第2プレイグニッション温度閾値以上か否かを判定する。ここで、第3条件を、取得した内燃機関120の吸気温度が第1プレイグニッション温度閾値以上の場合に成立する条件とする。また、第4条件を、取得した冷却水の温度が第2プレイグニッション温度閾値以上の場合に成立する条件とする。このとき、ステップS401において、ECU100は、第3条件、及び、第4条件が共に成立するか否かを判定する、といえる。ECU100は、第3条件及び第4条件が成立するとき処理をステップS403に進め、第3条件及び第4条件の少なくとも一方が成立しないとき処理をステップS402に進める。
ステップS402において、ECU100は、取得した内燃機関120の吸気温度が第1プレイグニッション温度閾値以上、又は、取得した冷却水の温度が第2プレイグニッション温度閾値以上か否かを判定する。すなわち、ECU100は、第3条件、又は、第4条件が成立するか否かを判定する。ECU100は、第3条件、又は、第4条件が成立するとき処理をステップS404に進め、第3条件、及び、第4条件が成立しないとき処理をステップS410に進める。
第3条件、及び、第4条件は、プレイグニッション発生可能性を表す。第3条件、及び、第4条件が成立するときは、第3条件、及び、第4条件の一方が成立しないときと比べて、吸気温度、及び、冷却水の温度の条件が厳しくなっている。したがって、第3条件、及び、第4条件が成立するときは、第3条件、及び、第4条件の一方が成立しないときと比べて、プレイグニッション発生可能性が高いといえる。
第2実施形態の第1変形例においては、車両1が低速状態で、かつ、第3条件及び第4条件の少なくとも一方が成立するとき、プレイグニッション発生条件が成立したものとする。ECU100は、プレイグニッション発生条件が成立したとき処理をステップS403又はステップS404に進め、成立していないとき処理をステップS410に進める。
ステップS403において、ECU100は、係数γとして、第1係数γ1を選択する。ステップS404において、ECU100は、係数γとして、第2係数γ2を選択する。上記の通り、第1係数γ1は第2係数γ2よりプレイグニッションの発生可能性が高いことを表す。ステップS405からステップS410までは、図8に示すステップS308からステップS313までと同様である。
次に、第2実施形態の第1変形例の効果について説明する。第1に、ECU100は、第3条件、及び、第4条件が成立するとき、第3条件、及び、第4条件の一方が成立しないときと比べて、内燃機関120のプレイグニッションの発生可能性が高いことを表す係数γを選択する。したがって、ECU100は、所定の精度で簡易にプレイグニッションの発生可能性を決定できる。
第2に、第1実施形態、及び、第2実施形態と同様に、プレイグニッションの発生を抑制できる。また、ウォータポンプ110の消費電力の最適化が実現されて、燃費の悪化が抑制される。また、車両1の発進性能が確保される。
<第2実施形態の第2変形例>
次に、第2実施形態の第2変形例の車両1について説明する。第2実施形態と同様の点については同符号を付して説明を省略する。第2実施形態の第2変形例の車両1が、第2実施形態の車両1と異なるのは、図8のステップS303からステップS307までの係数γを決定する処理である。以降では、第2実施形態の第2変形例での係数γを決定する処理について説明する。
まず、図12を参照して、第2実施形態の第2変形例の条件グラフについて説明する。図12は、第2実施形態の第2変形例の条件グラフの例を示す図である。ECU100は、内燃機関120の回転数、内燃機関120の吸気温度、及び、図12の条件グラフに基づいて、係数γを決定する。なお、第2実施形態の第2変形例の説明において、条件グラフとは、図12の条件グラフを表すものとする。
条件グラフは、第1吸気温度閾値を表す第1線500と、第2吸気温度閾値を表す第2線501とを含む。第1吸気温度閾値、及び、第2吸気温度閾値は、内燃機関120の回転数が大きくなるにしたがって大きくなるように定められている。第1吸気温度閾値は、内燃機関120の回転数に関わらず、第2吸気温度閾値より大きい。
内燃機関120の回転数が、例えば、アイドリング時の回転数のとき、第1吸気温度閾値は第3温度閾値T12であり、第2吸気温度閾値は第2温度閾値T11である。また、内燃機関120の回転数が、回転数閾値R10のとき、第1吸気温度閾値は第4温度閾値T13あり、第2吸気温度閾値は、第2温度閾値T11より大きく第4温度閾値T13より小さい値(例えば第3温度閾値T12)である。
条件グラフにおいて、内燃機関120の吸気温度が、第4温度閾値T13未満であり、かつ、第1線500で表される第1吸気温度閾値以上の領域が、第1条件領域である。また、条件グラフにおいて、内燃機関120の吸気温度が第1吸気温度閾値未満であり、かつ、第2線501で表される第2吸気温度閾値以上であり、かつ、内燃機関120の回転数が回転数閾値R10以下の領域が、第2条件領域である。条件グラフにおいて、内燃機関120の吸気温度が、第2温度閾値T11以上であり、かつ、第2吸気温度閾値未満であり、かつ、内燃機関120の回転数が回転数閾値R10以下の領域が、第3条件領域である。
ECU100は、内燃機関120の回転数、及び、内燃機関120の吸気温度が、第1条件領域に含まれる場合、係数γとして、第1係数γ1を選択する。ECU100は、内燃機関120の回転数、及び、内燃機関120の吸気温度が、第2条件領域に含まれる場合、係数γとして、第2係数γ2を選択する。ECU100は、内燃機関120の回転数、及び、内燃機関120の吸気温度が、第3条件領域に含まれる場合、係数γとして、第3係数γ3を選択する。
したがって、ECU100は、内燃機関120の吸気温度が、内燃機関120の回転数が大きくなるにしたがって大きくなるように定められている第1吸気温度閾値より高いとき、第1吸気温度閾値より低いときと比べて、内燃機関120のプレイグニッションの発生可能性が高いことを表す第1係数γ1を選択する。また、ECU100は、内燃機関120の吸気温度が、内燃機関120の回転数が大きくなるにしたがって大きくなるように定められている第2吸気温度閾値より高いとき、第2吸気温度閾値より低いときと比べて、内燃機関120のプレイグニッションの発生可能性が高いことを表す第2係数γ2を選択する。
内燃機関120の吸気温度が高い状態であっても、内燃機関120の回転数が大きければ、新たな吸気が促進されている。したがって、第2実施形態の第2変形例に示すように係数γを選択することで、内燃機関120の吸気温度が高く、かつ、内燃機関120の回転数が大きいときは、内燃機関120の吸気温度が高く、かつ、内燃機関120の回転数が小さいときと比べて、図10に示す第1プラス補正領域210を小さくしてもよい。
<その他の実施形態>
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。なお、上記の実施形態を任意に組み合わせて実施してもよい。