以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺等は必ずしも一致していない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
また、本明細書及び図面において、X軸、Y軸及びZ軸は、三次元直交座標系の三軸を表しており、本実施の形態では、Z軸方向を鉛直方向とし、Z軸に垂直な方向(XY平面に平行な方向)を水平方向としている。X軸及びY軸は、互いに直交し、かつ、いずれもZ軸に直交する軸である。なお、Z軸方向のプラス方向を鉛直下方としている。また、本明細書において、「厚み方向」とは、光学デバイスの厚み方向を意味し、第1基板11及び第2基板12の主面に垂直な方向(本実施の形態では、Y軸方向)のことであり、「平面視」とは、第1基板11又は第2基板12の主面に対して垂直な方向から見たときのことをいう。
(実施の形態)
まず、実施の形態に係る光学デバイス1の構成について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、実施の形態に係る光学デバイス1の断面図である。図2は、同光学デバイス1の拡大断面図であり、図1の破線で囲まれる領域IIの拡大図を示している。図3は、同光学デバイス1の拡大平面図であり、図1の破線で囲まれる領域IIの平面図を示している。
光学デバイス1は、光学デバイス1に入射する光を制御する光制御装置である。具体的には、光学デバイス1は、光学デバイス1に入射する光の進行方向を変更して(つまり配光して)出射させることができる配光制御デバイスである。
図1及び図2に示すように、光学デバイス1は、一対の基板をなす第1基板11及び第2基板12と、一対の電極をなす第1電極21及び第2電極22と、凹凸層30と、液晶層40とを備える。
光学デバイス1は、第1基板11と第2基板12との間に、厚み方向に沿って、第1電極21、凹凸層30、液晶層40及び第2電極22がこの順で配置された構成となっている。
また、光学デバイス1において、第1基板11、第1電極21及び凹凸層30は、第1積層基板10を構成しており、第2基板12及び第2電極22は、第2積層基板20を構成している。液晶層40は、ギャップを介して配置された第1積層基板10と第2積層基板20との間に充填されている。
このように構成される光学デバイス1は、第1電極21及び第2電極22によって液晶層40が駆動されるアクティブ型の光制御デバイスであり、光学作用が異なる第1の状態と第2の状態とに切り替えられる。光学デバイス1の光学作用の詳細については、後述する。
以下、光学デバイス1の各構成部材について、図1及び図2を参照して詳細に説明する。
[第1基板、第2基板]
図1及び図2に示すように、第1基板11は、第1積層基板10の基材(第1基材)であり、第2基板12は、第2積層基板20の基材(第2基材)である。
第1基板11及び第2基板12は、透光性を有する透光性基板である。第1基板11及び第2基板12としては、例えば、樹脂材料からなる樹脂基板又はガラス材料からなるガラス基板を用いることができる。
樹脂基板の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、アクリル又はエポキシ等が挙げられる。ガラス基板の材料としては、ソーダガラス、無アルカリガラス又は高屈折率ガラス等が挙げられる。樹脂基板は、破壊時の飛散が少ないという利点がある。一方、ガラス基板は、光透過率が高く、かつ、水分の透過性が低いという利点がある。
第1基板11と第2基板12とは、同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよいが、同じ材料で構成されている方がよい。また、第1基板11及び第2基板12は、リジッド基板に限るものではなく、フレキシブル基板又はフィルム基板であってもよい。本実施の形態では、第1基板11及び第2基板12として、いずれもPETからなる透明樹脂基板(PET基板)を用いている。
第1基板11及び第2基板12は、互いに対向するように配置されている。したがって、第1基板11は、第2基板12に対向して配置された対向基板であり、第2基板12は、第1基板11に対向して配置された対向基板である。
第1基板11と第2基板12とは、例えば互いの端部外周に額縁状に形成された接着剤等のシール樹脂によって接着することができるが、これに限らない。例えば、シール樹脂を用いずに、レーザによって第1基板11と第2基板12とを溶着して接着してもよい。
第1基板11及び第2基板12の厚さは、例えば5μm〜3mmであるが、これに限るものではない。本実施の形態において、第1基板11及び第2基板12の厚さは、いずれも50μmである。
また、第1基板11及び第2基板12の平面視の形状は、例えば正方形や長方形の矩形状であるが、これに限るものではなく、円形又は四角形以外の多角形であってもよく、任意の形状が採用され得る。
[第1電極、第2電極]
図1及び図2に示すように、第1電極21及び第2電極22は、電気的に対になっており、液晶層40に電界を与えることができるように構成されている。また、第1電極21と第2電極22とは、電気的だけではなく配置的にも対になっており、互いに対向するように配置されている。
本実施の形態において、第1電極21及び第2電極22は、少なくとも凹凸層30及び液晶層40を挟むように、第1基板11と第2基板12との間に配置されている。第1電極21は、第1基板11と凹凸層30との間に配置されている。
第1電極21は、第1基板11の第2基板12側に形成されている。具体的には、第1電極21は、第1基板11の第2基板12側の主面に形成されている。また、第2電極22は、第2基板12の第1基板11側に形成されている。具体的には、第2電極22は、第2基板12の第1基板11側の主面に形成されている。
第1電極21及び第2電極22の厚さは、例えば5nm〜2μmであるが、これに限るものではない。本実施の形態において、第1電極21及び第2電極22の厚さは、いずれも100nmである。
また、第1電極21及び第2電極22の平面視の形状は、第1基板11及び第2基板12と同様に、例えば正方形や長方形の矩形状であるが、これに限るものではない。本実施の形態において、第1電極21及び第2電極22は、各基板表面のほぼ全面に形成された平面視形状が全体として略矩形状のべた電極である。
第1電極21及び第2電極22は、透光性を有する電極であり、入射した光を透過する。第1電極21及び第2電極22は、例えば透明導電層からなる透明電極である。透明導電層の材料としては、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の透明金属酸化物、銀ナノワイヤや導電性粒子等の導電体を含有する樹脂からなる導電体含有樹脂、又は、銀薄膜等の金属薄膜等を用いることができる。なお、第1電極21及び第2電極22は、これらの単層構造であってもよし、これらの積層構造(例えば透明金属酸化物と金属薄膜との積層構造)であってもよい。
第1電極21及び第2電極22は、外部電源との電気接続が可能となるように構成されている。例えば、液晶層40を封止するシール樹脂の外部にまで第1電極21及び第2電極22の各々が引き出されて、この引き出された部分を外部電源に接続するための電極端子にしてもよい。
[凹凸層]
図1及び図2に示すように、凹凸層30は、凹凸構造を有する層であり、層全体として凹凸面を有する。具体的には、凹凸層30は、マイクロオーダサイズ又はナノオーダサイズの複数の凸部31が配列された構成である。
凹凸層30は、一対の電極をなす第1電極21及び第2電極22の一方の上に配置されている。本実施の形態において、凹凸層30は、複数の凸部31が液晶層40側に突出するように、第1電極21の上に形成されている。この場合、第1電極21と凹凸層30との間に密着層が形成されていてもよい。なお、凹凸層30の第1電極21側の面(凸部31の第1電極21側の面)は平坦な面となっている。
本実施の形態において、複数の凸部31は、ストライプ状に形成されている。具体的には、複数の凸部31の各々は、断面形状が台形でX軸方向に延在する長尺状の略四角柱形状であり、Z軸方向に沿って等間隔に配列されている。これにより、隣り合う凸部31の間は、ストライプ状の凹部となる。なお、全ての凸部31が同じ形状となっているが、これに限るものではない。
各凸部31は、例えば、高さが100nm以上100μm以下で、アスペクト比(高さ/下底)が1〜10程度であるが、これに限るものではない。一例として、各凸部31は、高さが10μm程度で、下底が5μm程度で、上底が2μm程度である。
また、隣り合う2つの凸部31の間隔(凹部の幅)は、例えば0以上100mm以下である。つまり、隣り合う2つの凸部31は、接触することなく所定の間隔をあけて配置されていてもよいし、接触して配置(間隔ゼロで)されていてもよいが、凸部31の底辺以下であるとよい。一例として、上記サイズの凸部31(高さ10μm、下底5μm、上底2μm)の場合、隣り合う2つの凸部31の間隔は、2μm程度である。
複数の凸部31の各々は、一対の側面を有する。本実施の形態において、各凸部31の断面形状は、第1基板11から第2基板12に向かう方向(Y軸方向)に沿って先細りのテーパ形状である。したがって、各凸部31の一対の側面の各々は、厚み方向に対して所定の傾斜角で傾斜する傾斜面となっており、各凸部31において一対の側面の間隔(凸部31の幅)は、第1基板11から第2基板12に向かって漸次小さくなっている。各凸部31の2つの側面の傾斜角(底角)は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施の形態において、各凸部31の2つの側面の傾斜角は同じである。
各凸部31の一対の上側の側面の上では、第1基板11側から凸部31に入射した光が、液晶層40と凸部31との屈折率差に応じて屈折して透過したり屈折せずにそのまま透過したりする。また、本実施の形態において、凸部31の一対の側面の上側の側面の上では、第1基板11側から凸部31に入射した光の一部は、当該側面への入射角に応じて全反射したり透過したりする。つまり、凸部31の上側の側面は、光の入射角に応じて全反射面となりうる。
凹凸層30(凸部31)の材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂等の透光性を有する樹脂材料を用いることができる。凹凸層30は、例えばレーザー加工又はインプリント等によって形成することができる。本実施の形態において、凹凸層30は、屈折率が1.5のアクリル樹脂を用いて形成した。
なお、凹凸層30は、第1電極21及び第2電極22によって液晶層40に電界を与えることができさえすれば、絶縁性の樹脂材料のみによって構成されていてもよいが、導電性を有していてもよい。この場合、凹凸層30の材料は、PEDOT等の導電性高分子、又は、導電体を含む樹脂(導電体含有樹脂)等を用いることができる。
[液晶層]
図1及び図2に示すように、液晶層40は、第1積層基板10と第2積層基板20の間に配置されている。具体的には、液晶層40は、第1電極21と第2電極22との間に液晶材料が封入された層である。
本実施の形態において、液晶層40を構成する液晶材料は、負の二色性液晶41である。ここで、負の二色性液晶41について、図4を用いて説明する。図4は、実施の形態に係る光学デバイス1に用いられる負の二色性液晶41を模式的に示す図である。なお、図4における、X軸、Y軸及びZ軸は、便宜的に、図2及び図3に示される負の二色性液晶41の状態(つまり電圧が印加されていないときの状態)のときの3軸を示している。
負の二色性液晶41には、色素(二色性色素)が含まれており、光を吸収する性質を有する。具体的には、図4に示すように、負の二色性液晶41は、色素により光を吸収する吸収軸を有している。負の二色性液晶41による光の吸収量は、例えば色素の含有量等によって調整することができる。
また、負の二色性液晶41は、常光屈折率(no)及び異常光屈折率(ne)の複屈折性を有する液晶分子によって構成されている。このような液晶材料としては、例えば、液晶分子が棒状分子からなるネマティック液晶等を用いることができる。
本実施の形態において、負の二色性液晶41は、誘電率が長軸方向には大きく長軸に垂直な方向(短軸方向)には小さい棒状の液晶分子を有するポジ型の液晶材料である。
したがって、図4に示すように、負の二色性液晶41では、色素による光の吸収軸が色素の棒状分子の長手方向と平行である。また、負の二色性液晶41の色素の吸収軸は、液晶分子の長手方向と直交している。
液晶層40の屈折率は、凹凸層30の屈折率に近い値の屈折率と、凹凸層30の屈折率との屈折率差が大きい屈折率との間で変化するとよい。したがって、本実施の形態では凹凸層30の屈折率が1.5であることから、液晶層40の液晶材料としては、常光屈折率が1.5で、異常光屈折率が1.7である負の二色性液晶41を用いている。
また、液晶層40の厚さ(つまり、第1積層基板10と第2積層基板20とのギャップ)は、例えば1μm〜100μmであるが、これに限るものではない。本実施の形態において、液晶層40の厚さは、7μmである。
このように構成される液晶層40は、電界が与えられることによって主に可視光領域から近赤外での屈折率が調整可能な屈折率調整層として機能する。具体的には、液晶層40は、電界応答性を有する負の二色性液晶41によって構成されているので、液晶層40に電界が与えられることで負の二色性液晶41の液晶分子の配向状態が変化して液晶層40の屈折率が変化する。
液晶層40には、第1電極21及び第2電極22に電圧が印加されることによって電界が与えられる。したがって、第1電極21及び第2電極22に印加する電圧を制御することによって液晶層40に与えられる電界が変化し、これにより、負の二色性液晶41の液晶分子の配向状態が変化して液晶層40の屈折率が変化する。つまり、液晶層40は、第1電極21及び第2電極22に電圧が印加されることで屈折率が変化する。この場合、液晶層40には、交流電力によって電界が与えられてもよいし、直流電力によって電界が与えられてもよい。交流電力の場合、電圧波形は、正弦波でもよいし、矩形波でもよい。
また、本実施の形態における液晶層40は、負の二色性液晶41によって構成されているので、液晶層40を透過する光は、偏光の種類(S波、P波)と負の二色性液晶41の色素の吸収軸との関係で吸収されたり吸収されなかったりする。
図2及び図3に示すように、第1電極21及び第2電極22に電圧が印加されていない状態では、第1積層基板10と第2積層基板20との間に封入された負の二色性液晶41は、負の二色性液晶41の棒状分子の長手方向と凸部31の長手方向(本実施の形態では、X軸方向)とが平行となるように配列される。この結果、負の二色性液晶41の色素の吸収軸は、凸部31の長手方向と直交する方向(本実施の形態では、Z軸方向)に配列されることになる。
[光学デバイスの製造方法]
次に、光学デバイス1の製造方法について、図1及び図2を参照しながら説明する。
まず、第1基板11として例えばPET基板を用いて、PET基板の上にITO膜からなる第1電極21を形成し、ITO膜の上に、アクリル樹脂(屈折率1.5)によって構成された複数の凸部31からなる凹凸層30をインプリント法により形成することによって第1積層基板10を作製する(第1積層基板作製工程)。
次に、第2基板12として例えばPET基板を用いて、PET基板の上に第2電極22としてITO膜を形成することで、第2積層基板20を作製する(第2積層基板作製工程)。
次に、第1積層基板10と第2積層基板20との間に液晶層40を充填する(液晶層充填工程)。例えば、液晶層充填工程では、第1電極21(凹凸層30)と第2電極22とが対向するように第1積層基板10と第2積層基板20とを配置して、第1積層基板10と第2積層基板20との間に液晶層40を充填する。
具体的には、液晶層40の液晶材料としては、常光屈折率が1.5で、異常光屈折率が1.7であるポジ型のネマティック液晶からなる負の二色性液晶41を用いて、第1積層基板10と第2積層基板20との間にこの液晶材料を注入し、第1積層基板10と第2積層基板20との外周を接合することで第1積層基板10と第2積層基板20との間に液晶層40を封止する。
このようにして、図1に示される構造の光学デバイス1を製造することができる。
[光学デバイスの光学作用]
次に、実施の形態に係る光学デバイス1の光学作用について、図5A及び図5Bを用いて説明する。図5Aは、実施の形態に係る光学デバイス1の第1光学作用を説明するための図であり、図5Bは、同光学デバイス1の第2光学作用を説明するための図である。
光学デバイス1は、光を透過させることができる。本実施の形態では、第1基板11を光入射側の基板としているので、光学デバイス1は、第1基板11から入射した光を透過して第2基板12から出射させることができる。
光学デバイス1に入射した光は、光学デバイス1を透過する際に光学デバイス1から光学作用を受ける。特に、光学デバイス1は、液晶層40の屈折率の変化によって光学作用が変化する。このため、光学デバイス1に入射した光は、液晶層40の屈折率に応じて異なる光学作用を受けることになる。
本実施の形態では、上述のとおり、凹凸層30の屈折率が1.5(アクリル樹脂)であり、また、液晶層40の液晶材料は、常光屈折率が1.5で異常光屈折率が1.7のポジ型のネマティック液晶からなる負の二色性液晶41によって構成されている。
このように構成された光学デバイス1は、図5Aに示すように、第1電極21及び第2電極22に電圧が印加されていないとき(電圧無印加時)には、第1の状態である第1光学モードとなり、入射した光に対して第1光学作用を与える。
第1光学モードでは、図5Aに示すように、光学デバイス1に対して深い角度で斜め方向から入射する光L1(例えば太陽光等の入射角20度以上で入射する光)のうちS波については、異常光屈折率(1.7)を感じるため、凹凸層30の凸部31と液晶層40との間に屈折率差が生じる。このため、S波は、凸部31の上側の側面と液晶層40との界面で全反射して進行方向が変化し、跳ね返る方向に進行方向が曲げられて光学デバイス1の外部に出射する。つまり、光L1のS波は、光学デバイス1によって配光する。
このとき、負の二色性液晶41の色素の吸収軸がZ軸方向と平行であるので、光L1のS波は、負の二色性液晶41によって吸収されない。つまり、第1光学モードにおいて、光L1のS波は、負の二色性液晶41によって減光されることなく配光して光学デバイス1を透過する。
一方、光L1のP波については、常光屈折率(1.5)を感じるため、凸部31と液晶層40との間には屈折率差が生じない。このため、光L1のP波は、凸部31と液晶層40との界面で屈折したり全反射したりすることなく、光学デバイス1内をそのまま直進して光学デバイス1の外部に出射する。つまり、光L1のP波は、光学デバイス1によって配光されることなく直進透過する。
このとき、負の二色性液晶41の色素の吸収軸がZ軸方向と平行であるので、光L1のP波は、光L1のS波とは異なり、負の二色性液晶41によって吸収されることになる。この場合、光L1のP波は、例えば負の二色性液晶41によって50%〜90%程度吸収される。つまり、第1光学モードにおいて、光L1のP波は、負の二色性液晶41によって大きく減光されて光学デバイス1を直進透過する。
このように、光学デバイス1が第1光学モード(第1の状態)の場合、光学デバイス1に対して深い角度で斜め方向から入射する光L1については、S波は減光されることなく配光されて光学デバイス1を透過し、P波は配光されることなく且つ減光されて光学デバイス1を直進透過する。
また、図5Aに示すように、第1光学モードのときに、光学デバイス1に対して垂直に又は浅い角度で光L2(例えば景色光等)が入射した場合、光L2のうちS波については、光L1のS波と同様に、異常光屈折率(1.7)を感じるため、凸部31と液晶層40との間に屈折率差が生じる。このため、光L2のS波は、凸部31と液晶層40との界面で屈折することになるが、光L2は入射角が浅いので、凸部31では全反射することなく、光学デバイス1の外部に出射する。つまり、光L2のS波は、光学デバイス1によって配光されることなく直進透過する。
このとき、負の二色性液晶41の色素の吸収軸がZ軸方向と平行であるので、光L2のS波は、光L1のS波と同様に、負の二色性液晶41によって吸収されない。つまり、光L2のS波は、負の二色性液晶41によって減光されない。
一方、光L2のP波については、常光屈折率(1.5)を感じるため、凸部31と液晶層40との間には屈折率差が生じない。このため、光L2のP波は、光L1のP波と同様に、凸部31と液晶層40との界面で屈折したり全反射したりすることなく、光学デバイス1内をそのまま直進して光学デバイス1の外部に出射する。つまり、光L2のP波は、光L2のS波と同様に、光学デバイス1によって配光されることなく直進透過する。
このとき、負の二色性液晶41の色素の吸収軸がZ軸方向と平行であるので、光L2のP波は、光L1のP波と同様に、負の二色性液晶41によって吸収されることになる。このとき、光L2のP波は、負の二色性液晶41によって50%〜90%程度吸収される。つまり、光L2のP波は、光L1のP波とは進行方向が異なるが、光L1のP波と同様に、負の二色性液晶41によって減光されて光学デバイス1を直進透過する。
このように、光学デバイス1が第1光学モード(第1の状態)の場合、光学デバイス1に対して浅い角度で入射する光L2については、S波は減光も配光もされることなく光学デバイス1を透過し、P波は配光されないが減光されて光学デバイス1を直進透過する。
次に、光学デバイス1が第2光学モード(第2の状態)である場合について、図5Bを用いて説明する。図5Bに示すように、光学デバイス1は、第1電極21及び第2電極22に電圧が印加されているとき(電圧印加時)には、第2の状態である第2光学モードとなり、入射した光に対して第2光学作用を与える。
第2光学モードでは、第1電極21及び第2電極22によって液晶層40に電界が与えられるので、図5Bに示すように、液晶層40の負の二色性液晶41は、液晶分子が第1基板11(第2基板12)の主面に対して立ち上がるように回転する。このとき、負の二色性液晶41は、液晶分子の回転によって、液晶分子の長手方向がY軸と平行となるように、かつ、色素の吸収軸がX軸と平行となるように配列される。
第2光学モードでは、図5Bに示すように、光学デバイス1に対して深い角度で斜め方向から入射する光L1(例えば太陽光等の入射角30度以上で入射する光)のうちS波については、常光屈折率(1.5)を感じるため、凹凸層30の凸部31と液晶層40との間には屈折率差が生じない。このため、光L1のS波は、凸部31と液晶層40との界面で屈折したり全反射したりすることなく、光学デバイス1内をそのまま直進して光学デバイス1の外部に出射する。つまり、光L1のS波は、光学デバイス1によって配光されることなく直進透過する。
このとき、負の二色性液晶41の色素の吸収軸がX軸方向と平行であるので、光L1のS波は、負の二色性液晶41によって吸収されることになる。この場合、光L1のS波は、例えば負の二色性液晶41によって50%〜90%程度吸収される。つまり、第2光学モード(第2の状態)において、光L1のS波は、負の二色性液晶41によって減光されて光学デバイス1を直進透過する。
一方、光L1のP波については、光L1のS波と同様に、常光屈折率(1.5)を感じるため、凸部31と液晶層40との間には屈折率差が生じない。このため、光L1のP波も、光S1のS波と同様に、凸部31と液晶層40との界面で屈折したり全反射したりすることなく、光学デバイス1内をそのまま直進して光学デバイス1の外部に出射する。つまり、光L1のP波も、光L1のP波と同様に、光学デバイス1によって配光されることなく直進透過する。
このとき、負の二色性液晶41の色素の吸収軸がX軸方向と平行であるので、光L1のP波は、光L1のS波と異なり、負の二色性液晶41によって吸収されない。つまり、第2光学モード(第2の状態)において、光L1のP波は、負の二色性液晶41によって減光されることなく光学デバイス1を直進透過する。
このように、光学デバイス1が第2光学モード(第2の状態)の場合、光学デバイス1に対して深い角度で斜め方向から入射する光L1については、S波もP波も配光されずに光学デバイス1を直進透過するが、S波は減光されて直進透過し、P波は減光されることなく直進透過する。
また、図5Bに示すように、第2光学モードのときに、光学デバイス1に対して垂直に又は浅い角度で光L2(例えば景色光等)が入射した場合、光L2のうちS波については、光L1のS波と同様に、常光屈折率(1.5)を感じるため、凸部31と液晶層40との間には屈折率差が生じない。このため、光L2のS波は、凸部31と液晶層40との界面で屈折したり全反射したりすることなく、光学デバイス1内をそのまま直進して光学デバイス1の外部に出射する。つまり、光L2のS波は、光学デバイス1によって配光されることなく直進透過する。
このとき、負の二色性液晶41の色素の吸収軸がX軸方向と平行であるので、光L2のS波は、L1のS波と同様に、負の二色性液晶41によって吸収される。この場合、光L2のS波は、例えば負の二色性液晶41によって50%〜90%程度吸収される。つまり、第2光学モード(第2の状態)において、光L2のS波は、光L1のS波とは進行方向が異なるが、負の二色性液晶41によって減光されて直進透過する。
一方、光L2のP波についても、光L2のS波と同様に、常光屈折率(1.5)を感じるため、凸部31と液晶層40との間には屈折率差が生じない。このため、光L2のP波は、光L1のP波と同様に、凸部31と液晶層40との界面で屈折したり全反射したりすることなく、光学デバイス1内をそのまま直進して光学デバイス1の外部に出射する。つまり、光L2のP波は、光L1のP波と同様に、光学デバイス1によって配光されることなく直進透過する。
このとき、負の二色性液晶41の色素の吸収軸がX軸方向と平行であるので、光L2のP波は、光L1のP波と同様に、負の二色性液晶41によって吸収されない。つまり、第2光学モード(第2の状態)において、光L2のP波は、負の二色性液晶41によって減光されることなく光学デバイス1を直進透過する。
このように、光学デバイス1が第2光学モード(第2の状態)の場合、光学デバイス1に対して浅い角度で入射する光L2については、S波もP波も配光されずに光学デバイス1を直進透過するが、S波は減光されて直進透過し、P波は減光されることなく透過する。
このように構成される光学デバイス1は、凸部31と液晶層40との屈折率マッチングを電界によって制御することで光学作用(状態)を変化させることができるアクティブ型の配光制御デバイスである。つまり、第1電極21及び第2電極22に印加する電圧を制御することによって、光学デバイス1を、第1の状態である第1光学モード(図5A)と第2の状態である第2光学モード(図5B)とに切り替えることができる。
具体的には、光学デバイス1は、第1電極21及び第2電極22に印加する電圧を制御することにより、入射した光を配光させることができ、直進光を5%〜20%に減光することができる配光状態(配光モード)である第1の状態と、入射した光を配光させずに、直進光が35%〜70%程度透過する透明状態(透明モード)である第2の状態とに切り替えることができる。なお、本実施の形態では、第1の状態(配光状態)が電圧無印加状態となっており、この第1の状態のときに、斜め入射する光(太陽光等)のS波が配光される。
また、第1電極21及び第2電極22に印加する電圧の値を変化させることによって、負の二色性液晶41の液晶分子の配向状態を変化させることができる。つまり、第1の状態(第1光学モード)と第2の状態(第2光学モード)の2つの状態だけではなく、3つ以上の状態に切り替えることができる。例えば、第1電極21及び第2電極22によって第1光学モードのときと第2光学モードのときとの中間の電圧値を印加することで、負の二色性液晶41の液晶分子の配向状態を、第1光学モードのとき(図5A)と第2光学モードのとき(図5B)との中間の状態にすることができる。なお、光学デバイス1の状態は、2つ及び3つに限るものではなく、4つ以上の複数の状態が存在していてもよいし、第1の状態と第2の状態の間の状態が漸次変化する状態であって明確に判別できる状態でなくてもよい。
このように、第1電極21及び第2電極22に印加する電圧の値を変化させることで、入射した光が負の二色性液晶41から受ける屈折率を変化させることができるので、入射した光を跳ね返る方向に曲げて配光させるときの配光角度(仰角)を変化させることができる。つまり、配光率(採光率)を変化させることができる。
また、負の二色性液晶41の液晶分子の配向状態が変化すると、入射した光が負の二色性液晶41の色素から受ける光の吸収率も変化する。つまり、光学デバイス1を透過する光の減光率が変化する。これにより、第1電極21及び第2電極22に印加する電圧の値を変化させることで、光学デバイス1を透過する光の減光率を制御することもできる。
[光学デバイスの使用例と作用効果]
次に、実施の形態に係る光学デバイス1の使用例と作用効果について、図5A及び図5Bを参照しながら、図6A及び図6Bを用いて説明する。図6A及び図6Bは、実施の形態に係る光学デバイス1を窓に設置した場合の使用例を示す図である。図6Aは、同光学デバイス1が第1光学モード(第1の状態)にあるときの外光の採光例を模式的に示しており、図6Bは、同光学デバイス1が第2光学モード(第2の状態)にあるときの外光の採光例を模式的に示している。
図6A及び図6Bに示すように、光学デバイス1は、建物100の窓110に設置することで、配光機能付き窓として実現することができる。光学デバイス1は、例えば、粘着層を介して窓110に貼り合わされる。この場合、光学デバイス1は、第1基板11及び第2基板12の主面が鉛直方向(Z軸方向)と平行となるような姿勢(つまり立設する姿勢)で窓110に設置される。
また、図6A及び図6Bでは光学デバイス1の詳細な構造が図示されていないが、光学デバイス1は、第1基板11が屋外側で第2基板12が室内側となるように配置されている。つまり、図6A及び図6Bにおいて、光学デバイス1は、第1基板11が光入射側で、第2基板12が光出射側となるように配置されている。
まず、光学デバイス1が第1光学モード(第1の状態)である場合について、図5A及び図6Aを用いて説明する。
光学デバイス1が第1光学モードである場合、図5Aで説明したように、太陽光等のように光学デバイス1に対して深い角度で斜め方向から入射する光L1については、S波は減光されることなく配光されて光学デバイス1を透過し、P波は配光されることなく減光されて光学デバイス1を直進透過する。
これにより、図6Aに示すように、光学デバイス1が第1光学モードのときの太陽光(光L1)のS波については、液晶層40の負の二色性液晶41によって減光されることなく配光されて、室内の天井に照射される。
一方、太陽光(光L1)のP波については、深い角度のまま、そのまま斜め下方に向かって直進透過するが、液晶層40の負の二色性液晶41によって吸収されて減光される。
したがって、第1光学モードのときには、天井面に配光させる太陽光の光量を減らさずに高い照度を保ったまま、室内の窓際の直射光を減光させることができる。これにより、室内の窓際にいる人への直射光を遮光することができるので、直射光による暑さの影響を緩和できる。例えば、暑さを1/5〜1/20程度に抑えることができる。また、室内の窓際の直射光を減光させることで、室内の窓際にいる人が眩しさを感じたりすることも抑制できる。
また、上記図5Aで説明したように、光学デバイス1が第1光学モードのときに光学デバイス1に対して浅い角度で入射する光L2については、S波は減光も配光もされることなく光学デバイス1を透過し、P波は配光されないが減光されて光学デバイス1を直進透過する。
これにより、図6Aに示すように、第1光学モードのときの景色光(L2)のS波については、減光も配光もされることなく透過する。
一方、浅い角度で入射する景色光(L2)のP波については、そのまま直進透過するが、液晶層40の負の二色性液晶41によって吸収されて減光される。
したがって、第1光学モードの場合、景色光は、P波の吸収分で光量が大きく低減してかなり暗くはなるが、室内のユーザは室外の景色を見ることができる。つまり、光学デバイス1は窓本来の外の景色が見えるという機能を確保できる。
次に、光学デバイス1が第2光学モード(第2の状態)である場合について、図5B及び図6Bを用いて説明する。
光学デバイス1が第2光学モードである場合、図5Bで説明したように、太陽光等のように光学デバイス1に対して深い角度で斜め方向から入射する光L1については、S波もP波も配光されずに光学デバイス1を直進透過するが、S波は減光されて直進透過し、P波は減光されることなく斜め下方に直進透過する。
これにより、図6Bに示すように、光学デバイス1が第2光学モードのときの太陽光(光L1)のS波については、深い角度のまま、そのまま斜め下方に向かって直進透過するが、液晶層40の負の二色性液晶41によって吸収されて減光される。
一方、太陽光(光L1)のP波については、液晶層40の負の二色性液晶41によって減光されることなく、そのまま斜め下方に向かって直進透過する。
したがって、第2光学モードの場合、太陽光は、どの角度から入射した光のS波もP波も直進透過するので、どの角度から見ても透明状態になる。また、これまでは上下左右に少し傾いた方向から見ると、S波とP波における凹凸層30と液晶層40の屈折率差が微妙に異なるため、S波とP波の進行方向が僅かにずれ、その結果として、外の景色が2重に見える現象(2重像)が発生したが、本実施の形態における光学デバイス1では、S波が減光されるので、実質的にはP波のみが見えることになり、S波とP波の両方が見えることによる2重像がなくなる。したがって、外の景色がより明るくクリアに見えるようになる。
また、上記図5Bで説明したように、光学デバイス1が第2光学モードのときに光学デバイス1に対して浅い角度で入射する景色光(光L2)については、S波もP波も配光されずに光学デバイス1を直進透過するが、S波は減光されながら直進透過し、P波は減光されることなく透過する。
これにより、図6Bに示すように、第2光学モードのときの景色光(L2)のS波については、そのまま直進透過するが、液晶層40の負の二色性液晶41によって吸収されて減光される。
一方、景色光(L2)のP波については、液晶層40の負の二色性液晶41によって吸収されることなく、そのまま直進透過する。
したがって、第2光学モードの場合、景色光は、S波の吸収分で光量が低減するが、P波のほとんどが見えるため、室内のユーザは室外の景色を明るくクリアに見ることができる。つまり、光学デバイス1は窓本来の外が見えるという機能を確保できる。
なお、図6Bにおいて、太陽が沈み夜になった場合、昼間の場合と同様に、月光(L1)も景色光(L2)もS波又はP波が液晶層40で吸収されて減光されるが、光の吸収量は半分程度であるので、夜間であっても、室内のユーザは、月光(L1)も景色光(L2)も見ることができる。
このように、光学デバイス1は、第1電極21及び第2電極22に印加する電圧を制御することで、電圧無印加状態の第1光学モード(第1の状態)と電圧印加状態の第2光学モード(第2の状態)とに切り替えることができる。
このとき、第1電極21及び第2電極22に印加する電圧の値を制御して液晶層40の屈折率を調整することによって、太陽光のS波については光学デバイス1から出射する光の配光角(仰角)を調整できる。これにより、季節や時間によって太陽高度が異なる場合でも太陽高度に応じて光学デバイス1から出射する光の配光角を調整することで、室内の広い範囲にムラなく太陽光を室内に取り入れることができる。この場合、液晶層40の屈折率は、第1電極21及び第2電極22に印加する電圧を制御することで段階的に変化させてもよいし直線的に変化させてもよい。つまり、配光角を段階的に変化させてもよいし直線的に変化させてもよい。
[まとめ]
以上、本実施の形態における光学デバイス1では、第1電極21と第2電極22との間に封入された液晶層40の液晶材料として負の二色性液晶41を用いている。
これにより、第1電極21及び第2電極22に印加する電圧を制御することで、入射光のS波又はP波の一方が配光されて透過するとともに入射光のS波又はP波の他方が減光されて透過する第1の状態と、入射光のS波又はP波の一方が減光されて透過するとともにS波又はP波の他方が減光されずに透過する第2の状態とを切り替えることができる。
本実施の形態では、第1電極21及び第2電極22に電圧を印加していないときの状態を第1状態として、第1電極21及び第2電極22に電圧を印加しているときの状態を第2状態としている。そして、第1の状態のときに、太陽光等の入射光のS波が配光されて透過するとともに入射光のP波が減光され、第2の状態のときに、太陽光等の入射光のS波が減光されて透過するとともに入射光のP波が減光されることなく透過している。
これにより、太陽光等の入射光を配光しつつ直射光を減光でき、かつ、景色が見える透明状態とも切替可能な光学デバイス1を実現できる。
(変形例)
次に、変形例に係る光学デバイス1Aについて、図7及び図8を用いて説明する。図7は、変形例1に係る光学デバイス1Aの拡大断面図である。図8は、同光学デバイス1Aの拡大平面図である。
上記実施の形態における光学デバイス1では、第1電極21が分割されておらず1つのべた電極であったが、本変形例における光学デバイス1Aでは、第1電極21Aが、特定の一方向に複数に分割されている。つまり、本変形例における第1電極21Aは、特定の一方向に並ぶ複数の分割電極21A1によって構成されている。
具体的には、本変形例では、特定の一方向をZ軸方向としている。したがって、図7及び図8に示すように、第1電極21Aは、Z軸方向に分割されている。この場合、複数の分割電極21A1は、X軸方向に(つまり特定の一方向に直交する方向)に延在するようにストライプ状に形成されている。
本変形例において、液晶層40の液晶材料は、上記実施の形態と同様に、負の二色性液晶41である。また、本変形例でも、第1電極21及び第2電極22に電圧が印加されていないときの状態(第1の状態)において、負の二色性液晶41の色素の吸収軸は、特定の一方向であるZ軸方向と平行な方向に配列されている。
なお、本変形例における光学デバイス1Aでは、上記実施の形態における光学デバイス1とは異なり、凹凸層30(凸部31)が形成されていない。具体的には、第1電極21Aと第2電極22との間には液晶層40しか存在しない。
光学デバイス1Aを窓等に設置する場合、例えば、第1電極21Aの特定の一方向である分割方向(本実施の形態ではZ軸方向)が鉛直方向となるよう光学デバイス1Aを配置する。つまり、分割電極21A1の長手方向が水平方向となるように光学デバイス1Aを配置する。
このように構成される光学デバイス1Aは、上記実施の形態と同様に、第1電極21A及び第2電極22に印加する電圧を制御することによって、光学作用が異なる第1の状態と第2の状態とに切り替えることができる。
ただし、上記実施の形態における光学デバイス1では、凹凸層30と液晶層40との屈折率差を変化させることによって光学作用が異なる2つの状態を切り替えていたが、本変形例における光学デバイス1Aでは、液晶層40内の電界分布を変えることによって光学作用が異なる2つの状態を切り替えている。つまり、本変形例における光学デバイス1Aは、電界型の配光制御デバイスである。
具体的には、本変形例における光学デバイス1Aでは、第1電極21AがZ軸方向に沿って複数の分割電極21A1に分割されているため、Z軸方向に沿って、分割電極21A1が存在する箇所と分割電極21A1が存在しない箇所とが交互に繰り返されている。
これにより、第1電極21A及び第2電極22に電圧を印加すると、隣り合う2つの分割電極21A1を一対の電極とし、この一対の電極ごとに第1電極21Aから第2電極22に向かって凸となる弓なり状の電界分布が形成される。液晶層40の負の二色性液晶41の液晶分子は、この電界分布にしたがって動くことになり、液晶層40内には電界分布にしたがった屈折率分布が形成されて、実効的な屈折率差が生じる。
この結果、光学デバイス1Aに入射した光の一部を、跳ね返る方向に進行方向を変化させることが可能となる。つまり、光学デバイス1Aに入射した光の一部を配光させることができる。また、光学デバイス1Aに入射した光の他の一部は、配光されずに、かつ、負の二色性液晶41によって吸収されて光学デバイス1Aを透過する。つまり、光学デバイス1Aに入射した光の一部を減光させることができる。
一方、第1電極21A及び第2電極22に電圧を印加しない場合、液晶層40内に電界分布が形成されず、液晶層40の負の二色性液晶41は図7及び図8に示す配列のままとなる。したがって、液晶層40内には、実効的な屈折率差が生じない。
これにより、光学デバイス1Aに入射した光を配光させることなく透過させることができる。このとき、光学デバイス1Aに入射した光の一部は、負の二色性液晶41によって吸収されて光学デバイス1Aを透過する。つまり、光学デバイス1Aに入射した光は減光する。
このように、本変形例における光学デバイス1Aは、上記実施の形態における光学デバイス1と同様に、第1電極21及び第2電極22に印加する電圧を制御することによって、入射した光を配光させることができ、直進光を5%〜20%に減光することができる配光状態(配光モード)である第1の状態と、入射した光を配光させずに、直進光が35%〜70%程度透過する透明状態(透明モード)である第2の状態とに切り替えることができる。なお、本変形例では、上記実施の形態と異なり、配光状態である第1の状態が電圧印加状態であり、半透明状態である第2の状態は電圧無印加状態である。
以上、本変形例における光学デバイス1Aでも、上記実施の形態における光学デバイス1Aと同様に、第1電極21と第2電極22との間に封入された液晶層40の液晶材料として負の二色性液晶41を用いている。
これにより、第1電極21及び第2電極22に印加する電圧を制御することで、入射光のS波又はP波の一方が配光されて透過するとともに入射光のS波又はP波の他方が減光されて透過する第1の状態と、入射光のS波又はP波の一方が減光されて透過するとともにS波又はP波の他方が減光されずに透過する第2の状態とを切り替えることができる。
これにより、太陽光等の入射光を配光しつつ直射光を減光でき、かつ、景色が見える透明状態とも切替可能な光学デバイス1を実現できる。
なお、本変形例では、上記実施の形態における第1電極21を複数に分割したが、これに限らない。例えば、第2電極22を複数に分割してもよいし、第1電極21及び第2電極22の両方を複数に分割してもよい。つまり、第1電極21及び第2電極22の少なくとも一方が、特定の一方向において複数に分割されていればよい。ただし、配光状態である第1の状態において、負の二色性液晶41の色素の吸収軸がその特定の一方向と平行な方向に配列されているとよい。
(その他変形例等)
以上、本発明に係る光学デバイスについて、実施の形態及び変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態及び変形例に限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態では、第1の状態のときに、太陽光等の入射光のS波を配光させるとともに入射光のP波を減光させ、第2の状態のときに、太陽光等の入射光のS波を減光させるとともに入射光のP波を減光させないようにしたが、これに限らない。具体的には、第1の状態のときに、入射光のP波を配光させるとともに入射光のS波を減光させ、第2の状態のときに、入射光のP波を減光させるとともに入射光のS波を減光させないようにしてもよい。つまり、第1の状態のときに、入射光のS波又はP波の一方を配光させるとともにS波又はP波の他方を減光させ、第2の状態のときに、入射光のS波又はP波の一方を減光させてS波又はP波の他方を減光させることができればよい。
また、上記実施の形態において、凹凸層30を構成する凸部31は、断面形状が略台形の長尺状の略四角柱であったが、これに限らない。例えば、凸部31は、断面形状が略三角形の長尺状の略三角柱等であってもよい。さらに断面形状の側面部は、曲線又は鋸状であってもよい。さらには、凸部31は、ストライプ状ではなく、波線状やドット状に配列されていてもよい。
また、上記実施の形態において、凹凸層30の複数の凸部31は、互いに分離して形成されていたが、これに限らない。例えば、複数の凸部31は、根元で互いに連結されていてもよい。つまり、凹凸層30は、複数の凸部31が連結されて表面が凹凸面となった1つの層であってもよい。
また、上記実施の形態において、複数の凸部31の各々は、同じ形状としたが、これに限るものではなく、例えば、面内において異なる形状であってもよい。例えば、光学デバイス1におけるZ軸方向の上半分と下半分とで複数の凸部31の側面(傾斜面)の傾斜角を異ならせてもよい。
また、上記実施の形態において、複数の凸部31の高さは、一定としたが、これに限るものではない。例えば、複数の凸部31の高さがランダムに異なっていてもよい。あるいは、凸部31の間隔がランダムに異なっていてもよいし、高さと間隔の両方がランダムであってもよい。このようにすることで、光学デバイスを透過する光が虹色に見えてしまうことを抑制できる。つまり、複数の凸部31の高さをランダムに異ならせることで、凸部31と液晶層40との界面での微小な回折光や散乱光が波長で平均化されて出射光の色付きが抑制される。
また、上記実施の形態において、凹凸層30の凸部31の頂部は、第2電極22と接触しているが、これに限らない。例えば、凹凸層30の凸部31の頂部が第2電極22と離間していて、凸部31の頂部と第2電極22との間に液晶材料が存在していてもよい。
また、上記実施の形態において、凹凸層30は、第1基板11及び第2基板12の両方に形成されていてもよい。この場合、第1電極21の上に第1凹凸構造を有する第1凹凸層を形成し、第2電極22の上に第2凹凸構造を有する第2凹凸層を形成すればよい。
また、上記実施の形態において、凸部31の長手方向がX軸方向となるように光学デバイス1を窓に配置したが、これに限らない。同様に、上記変形例において、分割電極21A1の長手方向がX軸方向となるように光学デバイス1Aを窓に配置したが、これに限ららない。例えば、凸部31又は分割電極21A1の長手方向がZ軸方向またはZ軸方向に回転させた配置となるように光学デバイス1又は1Aを窓に配置してもよい。
また、上記実施の形態及び変形例では、光学デバイス1及び1Aの第1基板11を光入射側とし、第1基板11から光を入射させて第2基板12から光を出射させたが、これに限らない。つまり、光学デバイス1及び1Aの第2基板12を光入射側とし、第2基板12から光を入射させて第1基板11から光を出射させてもよい。
また、上記実施の形態及び変形例において、光学デバイス1及び1Aを窓110に貼り付けたが、光学デバイス1及び1Aを建物100の窓そのものとして用いてもよい。また、光学デバイス1及び1Aは、建物100の窓110に設置する場合に限るものではなく、例えば車の窓等に設置してもよい。
また、上記実施の形態及び変形例において、液晶層40の液晶材料は、正の誘電異方性を有するポジ型液晶に限るものではなく、負の誘電異方性を有するネガ型液晶であってもよい。
また、上記実施の形態及び変形例において、光学デバイス1及び1Aに入射する光として太陽光を例示したが、これに限るものではない。例えば、光学デバイス1及び1Aに入射する光は、照明器具等の発光装置が発する光であってもよい。
なお、その他、上記実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、又は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で上記の各実施の形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
なお、その他、上記実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、又は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で上記の各実施の形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。