JP6806208B2 - 消化管障害を改善する組成物 - Google Patents
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Description
(1)セリン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよび脂溶性抗酸化剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを有効成分として含有する、消化管障害を改善するための経口組成物(以下、「本発明の組成物」とも称する)。
(2)セリンを有効成分として含有する、(1)記載の組成物。
(3)消化管障害が、消化管バリア機能低下、消化管の炎症及び胃腸の不調から選ばれる少なくとも一つである、(1)又は(2)記載の組成物。
(4)消化管障害が、運動誘発性である、(1)〜(3)のいずれか一つに記載の組成物。
(5)ヒトの1回摂取単位量あたり、セリンの含有量が10mg〜10gである、(2)〜(4)のいずれか一つに記載の組成物。
(6)更に、ヒスチジン、アルギニンおよび脂溶性抗酸化剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有する、(2)〜(5)のいずれか一つに記載の組成物。
(7)セリンの含有量が、組成物中の全アミノ酸に対して50重量%以上である、(2)〜(6)のいずれか一つに記載の組成物。
(8)ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよび脂溶性抗酸化剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを有効成分として含有し、
消化管障害が、運動誘発性の消化管バリア機能低下である、(1)記載の組成物。
(9)セリン、ヒスチジン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群より選ばれる少なくとも一つを有効成分として含有し、
消化管障害が、運動誘発性の消化管バリア機能低下である、(1)記載の組成物。
(10)バリン、ロイシンおよびイソロイシンを有効成分として含有する、(8)又は(9)記載の組成物。
(11)セリンおよびヒスチジンを有効成分として含有する、(9)記載の組成物。
(12)ヒスチジン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンを有効成分として含有する、(8)又は(9)記載の組成物。
(13)イソロイシン、ロイシンおよびバリンの重量比が、1:1.5〜2.5:0.8〜1.7である、(10)又は(12)記載の組成物。
(14)更に、アルギニンおよび/またはセリンを含有する、(8)〜(13)のいずれか一つに記載の組成物。
(15)セリン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンを有効成分として含有する、(9)記載の組成物。
(16)ヒスチジン、セリン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンを有効成分として含有する、(9)記載の組成物。
(17)ヒトの1回摂取単位量あたり、有効成分の含有量が0.1〜100gである、(8)〜(16)のいずれか一つに記載の組成物。
(18)運動開始前に少なくとも1回摂取される、(8)〜(17)のいずれか一つに記載の組成物。
(19)運動中または運動終了直後に摂取される、(8)〜(17)のいずれか一つに記載の組成物。
(20)運動開始前に少なくとも1回、運動中または運動終了直後にさらに少なくとも1回摂取される、(8)〜(17)のいずれか一つに記載の組成物。
(21)(1)〜(20)のいずれか一つに記載の組成物を含有する食品または医薬品。
(22)(1)〜(20)のいずれか一つに記載の組成物、および当該組成物を消化管障害の改善に使用することができる、または使用すべきであることを記載した記載物を含む、商業的パッケージ。
(23)セリン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよび脂溶性抗酸化剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを有効成分として含有する組成物を、それを必要とする対象に少なくとも1回経口投与することを含む、消化管障害の改善方法。
(24)前記組成物が、セリンを有効成分として含有する、(23)記載の方法。
(25)消化管障害が、消化管バリア機能低下、消化管の炎症及び胃腸の不調から選ばれる少なくとも一つである、(23)又は(24)記載の方法。
(26)消化管障害が、運動誘発性である、(23)〜(25)のいずれか一つに記載の方法。
(27)前記組成物が、セリンを、ヒトの1回摂取単位量あたり、10mg〜10g含有する、(24)〜(26)のいずれか一つに記載の方法。
(28)前記組成物が、更に、ヒスチジン、アルギニンおよび脂溶性抗酸化剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有する、(24)〜(27)のいずれか一つに記載の方法。
(29)前記組成物中のセリンの含有量が、組成物中の全アミノ酸に対して50重量%以上である、(24)〜(28)のいずれか一つに記載の方法。
(30)前記組成物が、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよび脂溶性抗酸化剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを有効成分として含有し、
消化管障害が、運動誘発性の消化管バリア機能低下である、(23)記載の方法。
(31)前記組成物が、セリン、ヒスチジン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群より選ばれる少なくとも一つを有効成分として含有し、
消化管障害が、運動誘発性の消化管バリア機能低下である、(23)記載の方法。
(32)前記組成物が、バリン、ロイシンおよびイソロイシンを有効成分として含有する、(30)又は(31)記載の方法。
(33)前記組成物が、セリンおよびヒスチジンを有効成分として含有する、(31)記載の方法。
(34)前記組成物が、ヒスチジン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンを有効成分として含有する、(30)又は(31)記載の方法。
(35)イソロイシン、ロイシンおよびバリンの重量比が、1:1.5〜2.5:0.8〜1.7である、(32)又は(34)記載の方法。
(36)前記組成物が、更に、アルギニンおよび/またはセリンを含有する、(30)〜(35)のいずれか一つに記載の方法。
(37)前記組成物が、セリン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンを有効成分として含有する、(31)記載の方法。
(38)前記組成物が、ヒスチジン、セリン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンを有効成分として含有する、(31)記載の方法。
(39)前記組成物が、有効成分を、ヒトの1回摂取単位量あたり、0.1〜100g含有する、(30)〜(38)のいずれか一つに記載の方法。
(40)前記組成物を、運動開始前に少なくとも1回摂取する、(30)〜(39)のいずれか一つに記載の方法。
(41)前記組成物を、運動中または運動終了直後に摂取する、(30)〜(39)のいずれか一つに記載の方法。
(42)前記組成物を、運動開始前に少なくとも1回、運動中または運動終了直後にさらに少なくとも1回摂取する、(30)〜(39)のいずれか一つに記載の方法。
本発明の組成物は、一態様として、運動選手のトレーニング中のコンディションを維持するために好適に用いられる。とりわけ、本発明の組成物は、運動誘発性の消化管バリア機能の低下を改善するために効果的に用いられる。
また、本発明の組成物は、安全性が高く副作用がほとんどないため、極めて有利である。
「運動誘発性の消化管バリア機能低下」は、運動による体温上昇や血流低下が主要因だと考えられている。一方、ストレス性の腸疾患や炎症性腸疾患は炎症に起因するものであり、これらと運動誘発性の消化管バリア機能の低下とは、メカニズムや状態において異なると考えられる。
また本発明において、消化管の炎症又は胃腸の不調の「予防」とは、消化管の炎症又は胃腸の不調が発症することを防止又は遅延させることを意味し、「治療」とは、消化管の炎症又は胃腸の不調の症状を軽減すること、或いは症状の進行(悪化)を防止又は遅延させることを意味する。
また、前記アミノ酸は、遊離体のみならず、塩の形態でも使用することができる。塩の形態としては、酸付加塩や塩基との塩等を挙げることもでき、薬理上許容される塩を選択することが好ましい。
セリンの塩としては、例えば、無機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩等が挙げられる。無機塩基との塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウム塩等が挙げられる。無機酸との塩としては、例えば、ハロゲン化水素酸(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等)、硫酸、硝酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等との塩が挙げられる。
ヒスチジンの塩としては、例えば、無機塩基との塩、無機酸との塩および有機酸との塩等が挙げられる。無機塩基との塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウム塩等が挙げられる。無機酸との塩としては、例えば、ハロゲン化水素酸(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等)、硫酸、硝酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸等との塩が挙げられる。
イソロイシン、ロイシンおよびバリンの分岐鎖アミノ酸にそれぞれ付加して薬理上許容される塩を形成する酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、リン酸等の無機酸;酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、モノメチル硫酸等の有機酸が挙げられる。
イソロイシン、ロイシンおよびバリンの分岐鎖アミノ酸の薬理上許容される塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム等の金属の水酸化物又は炭酸化物、あるいはアンモニア等の無機塩基;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、エタノールアミン、モノアルキルエタノールアミン、ジアルキルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基が挙げられる。
アルギニンの塩としては、無機塩基との塩、無機酸との塩および有機酸との塩等が挙げられる。無機塩基との塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウム塩等が挙げられる。無機酸との塩としては、例えば、ハロゲン化水素酸(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等)、硫酸、硝酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸等との塩が挙げられる。
セリンおよびヒスチジン;セリンおよびアルギニン;またはヒスチジンおよびアルギニンの2種のアミノ酸;
ヒスチジンおよびクロロゲン酸化合物(好ましくは、クロロゲン酸);
バリン、ロイシンおよびイソロイシンの3種のアミノ酸;
セリン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;またはヒスチジン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンの4種のアミノ酸;
ヒスチジン、セリン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンの5種のアミノ酸が挙げられる。
前記有効成分の含有量とは、例えば、セリン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン及び脂溶性抗酸化剤からなる群から選ばれる1つのみを、組成物中に有効成分として含有する場合は、1回摂取単位量あたりの当該1つの成分の含有量をいう。セリン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン及び脂溶性抗酸化剤からなる群から選ばれる2つ以上の組み合わせを、組成物中に有効成分として含有する場合には、1回摂取単位量あたりの前記組み合わせの合計量をいう。ここで、「1回摂取単位量」とは、1回に摂取または投与される量である。
また、このような本発明の組成物を添加した食品を、保健機能食品またはダイエタリーサプリメントとして提供することも可能である。この保健機能食品には、特定保健用食品および栄養機能食品なども含まれる。特定保健用食品は、例えば、消化管障害の改善など、特定の保健の目的が期待できることを表示できる食品である。また、栄養機能食品は、1日あたりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が、国が定めた上限下限値の規格基準に適合している場合その栄養成分の機能の表示ができる食品である。ダイエタリーサプリメントには、いわゆる栄養補助食品または健康補助食品などが含まれる。本発明において、特定保健用食品には、消化管障害などの用途に用いるものであるという表示を付した食品、さらには、かかる用途に用いるものである旨を記載した書類(いわゆる効能書き)などをパッケージとして包含する食品なども含まれるものとする。
また本発明の組成物は、それを必要とする対象に少なくとも1回経口投与することにより、消化管バリア機能低下、消化管(好ましくは、小腸(十二指腸、空腸、回腸))の炎症、及び、胃腸の不調を改善し得る。とりわけ、本発明の組成物は、運動誘発性の消化管バリア機能低下、運動誘発性の消化管の炎症、及び、運動誘発性の胃腸の不調を効果的に改善し得る。
本発明の組成物は、セリンを有効成分として含有する場合、消化管障害(好ましくは、運動誘発性の消化管障害)を改善するために特に好適に用いられる。本発明の組成物は、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよび脂溶性抗酸化剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを有効成分として含有する場合、消化管バリア機能低下(好ましくは、運動誘発性の消化管バリア機能低下)を改善するために特に好適に用いられる。
また、本発明は、本発明の組成物を、それを必要とする対象に少なくとも1回経口投与することを含む、運動誘発性の消化管障害の改善方法も提供する。
これらの方法は、医療行為を除くものであってよい。ここで「医療行為」とは、医師又は歯科医師によって、あるいは、医師又は歯科医師の指導監督の下で行われる、ヒトを治療、手術又は診断する行為をいう。
通常はあまり消化管から吸収されない高分子物質は、消化管のバリア機能が低下していると腸管を透過し血液中に入っていくことが知られている(図1)。そこで、下記のような試験にて、アミノ酸の運動誘発性の消化管バリア機能低下を改善する効果を検討した。
7週齢の雄性CD2F1マウス(日本チャールス・リバー株式会社)に各種アミノ酸またはその塩の水溶液を1g/kg体重の用量で投与し、その30分後に回転車内で4時間走行させた(速度10.5m/min)。走行終了後にFITC−デキストラン(平均分子量4000;FD4、シグマ アルドリッチ ジャパン)を500mg/kg体重の用量で経口投与し、1時間経過後に採血を行った(図2)。Cani et al., Gut 2009, 58(8):1091−1103に記載の方法に従って、消化管から血液中へ漏出したFD4濃度を、血液中の蛍光強度を測定して算出することにより、FD4の消化管透過性の評価を行った(図3)。具体的には、マウスよりイソフルラン麻酔下にて血液を採取した。血液を遠心分離し、血漿を得た。その後、血漿をリン酸緩衝液にて2倍希釈し励起波長485nm検出波長535nmの条件で蛍光強度を測定した(測定機器 SPECTRA MAX GEMINI EM モレキュラーデバイス ジャパン)。
図4に結果を示す。水を投与して4時間の運動をさせた群(Water)では、非運動群(Sed)の動物と比較して、血液中のFD4濃度は上昇していた。この結果から、4時間の走行によって消化管バリア機能が低下し、高分子量の物質が血液中に多く流入したことが確認された。炭水化物であるマルトデキストリンを1g/kg体重の用量で投与した群(CHO)では、血液中のFD4濃度は低下しなかったことから炭水化物の摂取では消化管のバリア機能は改善されないことが判明した。一方、L−ヒスチジン塩酸塩投与群(HisHCL)ではFD4濃度が低下していたことから、ヒスチジンは運動誘発性の消化管バリア機能低下を抑制することがわかった。その効果は、L−グルタミン投与群(Gln)やL−アルギニン塩酸塩投与群(ArgHCL)よりも高かった。
実施例1と同様にして、各種アミノ酸の運動誘発性の消化管バリア機能低下に対する効果を調べた。
0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC−Na)を溶媒として分散させた分岐鎖アミノ酸(L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン=2:1:1)を1g/kg体重で投与して運動させた群(BCAA、Ex)では、溶媒のみを投与して運動させた群(CMC−Na、Ex)と比較して、有意に血液中のFD4濃度を低下させた(図5)。この結果から、BCAAが運動誘発性の消化管バリア機能の改善効果を有することが認められた。
走行中に足の爪が剥がれる怪我を防止するため、マウスの爪を短く切ったこと以外は実施例1と同様にして、α−リポ酸及びクロロゲン酸の運動誘発性の消化管バリア機能低下に対する効果を調べた。
0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC−Na)を溶媒として分散させたα−リポ酸を80mg/kg体重で投与して運動させた群(α−lipoic acid)、及び0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC−Na)を溶媒として分散させたクロロゲン酸を50mg/kg体重で投与して運動させた群(chlorogenic acid)では、溶媒のみを投与して運動させた群(CMC−Na)と比較して、血中FD4濃度の上昇が抑えられた(図6)。この結果から、α−リポ酸及びクロロゲン酸は、それぞれ運動誘発性の消化管バリア機能低下の緩和効果を有することが認められた。
実施例3と同様にして、L−ヒスチジンと他のアミノ酸との併用効果について調べた。
L−セリン(用量:0.25g/kg体重)及びL−ヒスチジン塩酸塩(用量:0.25g/kg体重)の水溶液を投与して運動させた群(0.25g/kg His+0.25g/kg Ser)、並びに、L−アルギニン塩酸塩(用量:0.25g/kg体重)及びL−ヒスチジン塩酸塩(用量:0.25g/kg体重)の水溶液を投与して運動させた群(0.25g/kg Arg+0.25g/kg His)では、L−ヒスチジン塩酸塩(用量:0.5g/kg体重)水溶液を投与して運動させた群(0.5g/kg His)と比較して、血中FD4濃度の上昇が抑えられた(図7)。この結果から、運動誘発性の消化管バリア機能低下の緩和効果は、ヒスチジンを単独で投与する場合よりも、セリン又はアルギニンを併用する場合の方が高まることが明らかとなった。
実施例1と同様にして、L−セリンとグリシンの運動誘発性の消化管バリア機能低下に対する効果を調べた。その結果、L−セリンを1g/kg体重で投与して運動させた群では水を投与して運動させた群と比較して有意に血中FD4濃度が低下した。一方で、グリシンを1g/kg体重で投与して運動させた群では血中FD4濃度の低下は見られなかった(図8)。この結果から、セリンは運動誘発性の消化管バリア機能低下の緩和効果を有することが認められた。
7週齢の雄性CD2F1マウス(日本チャールス・リバー株式会社)に、水又はL−セリン水溶液(用量:1g/kg体重)を投与し、その30分後に回転車内で4時間走行させた(速度:10.5m/min)。走行終了後にFITC−デキストラン(平均分子量:4000;FD4、シグマ アルドリッチ ジャパン)を500mg/kg体重の用量で経口投与し、1時間経過後に採血を行った(図2)。なお、水投与後に走行させなかった群(Sed)は走行群と同じく絶食及び絶水を行った。Cani et al., Gut 2009, 58(8):1091−1103に記載の方法に従って、消化管から血液中へ漏出したFD4濃度を、血液中の蛍光強度を測定して算出することにより、FD4の消化管透過性の評価を行った(図3)。具体的な測定方法は、実施例1と同様である。また、血漿中のエンドトキシン濃度をトキシノメーター(登録商標)ET−6000(和光純薬工業株式会社)を用いて測定した。
図9に、FD4の消化管透過性の評価結果を示す。水を投与して4時間の運動をさせた群(Water)では、非運動群(Sedentary)と比較して、血液中のFD4濃度は上昇していた。この結果から、4時間の運動によって消化管バリア機能が低下し、高分子量の物質であるFD4が血液中に多く流入したことが確認された。一方、L−セリン水溶液を投与して4時間の運動をさせた群(Ser 1.0g/kg)では、血液中のFD4濃度が低下していたことから、L−セリンは運動誘発性の消化管バリア機能低下を抑制することがわかった。
また、図10に、血漿中のエンドトキシン濃度の測定結果を示す。図10に示すように、毒素の一つであるエンドトキシンの血中濃度は、水を投与して4時間の運動をさせた群(Water)では上昇していたが、L−セリン水溶液を投与して4時間の運動をさせた群(Ser 1.0g/kg)では上昇がみられなかった。
以上の結果から、セリンは消化管バリア機能の低下を改善することが明らかとなった。
実施例6と同様に、7週齢の雄性CD2F1マウス(日本チャールス・リバー株式会社)に、水又はL−セリン水溶液(用量:1g/kg体重)を投与し、その30分後に回転車内で4時間走行させた(速度10.5m/min)。走行終了後に血漿を採取し、血液中のインターロイキン6(IL−6)濃度、血清アミロイドA(SAA2)濃度を、それぞれMouse IL−6 ELISA Ready−SET−Go!(eBioscience社)、MOUSE SERUM AMYLOID A ELISA TEST KIT(Life Diagnostics社)を用いて測定した。IL−6、SAA2は、それぞれ炎症の指標である。また、走行終了後のマウスから小腸を採取し、小腸(空腸、回腸)におけるIL−6遺伝子発現量をリアルタイムPCR法にて測定した(ハウスキーピングとしてGAPDH遺伝子を用いた)。
図11及び12に、血液中のIL−6濃度及びSAA2濃度の測定結果を示す。水を投与して4時間の運動をさせた群(Water)では、非運動群(「Sedentary」又は「Sed」)の動物と比較して、血液中のIL−6濃度及びSAA2濃度は上昇していた(図11及び12)。この結果から、4時間の運動によって炎症が惹起されていることが判明した。L−セリン水溶液を投与して4時間の運動させた群(「Ser 1.0g/kg」又は「Ser」)では、血液中のIL−6濃度及びSAA2濃度が低下していた。
図13に空腸におけるIL−6遺伝子発現量の測定結果を、図14に回腸におけるIL−6遺伝子発現量の測定結果を示す。水を投与して4時間の運動をさせた群(Water)では、非運動群(Sedentary)の動物と比較して、空腸及び回腸のいずれにおいてもIL−6遺伝子発現量が増加していた。この結果から、4時間の運動によって、小腸において炎症が惹起されていることが判明した。L−セリン水溶液を投与して4時間の運動させた群(Ser 1.0g/kg)では、空腸及び回腸のいずれにおいてもIL−6遺伝子発現量が低下していた。
以上の結果から、セリンは消化管の炎症を抑制する効果を有することが明らかとなった。
7週齢の雄性CD2F1マウス(日本チャールス・リバー株式会社)に、水、L−セリン水溶液(用量:0.5g/kg体重)、L−セリン(用量:0.25g/kg体重)及びL−ヒスチジン塩酸塩(用量:0.25g/kg体重)の水溶液、あるいは、L−セリン(用量:0.25g/kg体重)及びL−アルギニン塩酸塩(用量:0.25g/kg体重)の水溶液を投与し、その30分後に回転車内で4時間走行させた(速度10.5m/min)。
走行終了後にFD4を500mg/kg体重の用量で経口投与し、1時間経過後に採血を行った。Cani et al., Gut 2009, 58(8):1091−1103に記載の方法に従って、消化管から血液中へ漏出したFD4濃度を、血液中の蛍光強度を測定して算出することにより、FD4の消化管透過性の評価を行った。具体的な測定方法は、実施例1と同様である。
また走行終了後に血漿を採取し、血液中のIL−6濃度を、Mouse IL−6 ELISA Ready−SET−Go!(eBioscience社)を用いて測定した。
図15に、FD4の消化管透過性の評価結果を、図16に、血液中のIL−6濃度の測定結果を示す。これらの結果から、消化管バリア機能の低下を改善する効果及び消化管の炎症を抑制する効果は、セリンを単独で投与する場合よりも、ヒスチジン又はアルギニンを併用する場合の方が高まることが明らかとなった。
実施例8と同様にして、L−ヒスチジンと脂溶性抗酸化剤(クロロゲン酸)との併用効果について調べた。
L−ヒスチジン塩酸塩(用量:0.5g/kg体重)及びクロロゲン酸(用量:50mg/kg体重)の水溶液を投与して運動させた群(Ex−His+chlorogenic acid)は、L−ヒスチジン塩酸塩(用量:0.5g/kg体重)水溶液を投与して運動させた群(Ex−His 0.5g/kg)及びクロロゲン酸(用量:50mg/kg体重)の水溶液を投与して運動させた群(Ex−chlorogenic acid)と比較して、血中FD4濃度の上昇が抑えられた(図17)。この結果から、運動誘発性の消化管バリア機能低下の緩和効果は、ヒスチジン及び脂溶性抗酸化剤をそれぞれ単独で投与する場合よりも、これらを併用する場合の方が高まることが明らかとなった。
本発明の組成物は、一態様として、運動選手のトレーニング中のコンディションを維持するために好適に用いられる。特に、暑い環境下での高強度・長時間の運動において消化管バリア機能が低下することが示唆されており、日々の練習や試合時に運動選手の健康を守る組成物として利用することができる。
Claims (9)
- ヒスチジンまたはその塩を有効成分として含有する、運動誘発性の消化管バリア機能低下を改善するための経口組成物。
- 更に、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびそれらの塩、並びに脂溶性抗酸化剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有する、請求項1記載の組成物。
- ヒスチジンまたはその塩、バリンまたはその塩、ロイシンまたはその塩、並びにイソロイシンまたはその塩を有効成分として含有する、請求項2記載の組成物。
- 更に、アルギニンまたはその塩を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
- ヒトの1回摂取単位量あたり、有効成分の含有量が0.1〜100gである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
- 運動開始前に少なくとも1回摂取される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
- 運動中または運動終了直後に摂取される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
- 運動開始前に少なくとも1回、運動中または運動終了直後にさらに少なくとも1回摂取される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物を含有する、運動誘発性の消化管バリア機能の低下を改善するための食品。
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