以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能若しくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
先ず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す構成図である。
図1に示す画像形成装置1は、カラーレーザープリンタである。このカラーレーザープリンタの本体中央には、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kが設けられている。各作像部4Y,4M,4C,4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
具体的に、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6を有する。その他、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8などを備える。なお、図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに符号を付しており、その他の作像部4Y,4M,4Cにおいては符号を省略している。
各作像部4Y,4M,4C,4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配設されている。露光装置9は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体5の表面へレーザー光を照射するようになっている。
また、各作像部4Y,4M,4C,4Kの上方には、転写装置3が配設されている。転写装置3は、中間転写体としての中間転写ベルト30と、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ31と、二次転写手段としての二次転写ローラ36を備える。その他、転写装置3は、二次転写バックアップローラ32と、クリーニングバックアップローラ33と、テンションローラ34、ベルトクリーニング装置35を備える。
中間転写ベルト30は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33及びテンションローラ34によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ32が回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
4つの一次転写ローラ31は、それぞれ、各感光体5との間で中間転写ベルト30を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ31には、公知の電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ31に印加されるようになっている。
二次転写ローラ36は、二次転写バックアップローラ32との間で中間転写ベルト30を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、上記一次転写ローラ31と同様に、二次転写ローラ36にも公知の電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ36に印加されるようになっている。
ベルトクリーニング装置35は、中間転写ベルト30に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードを有する。このベルトクリーニング装置35から伸びた公知の廃トナー移送ホースは、公知の廃トナー収容器の入り口部に接続されている。
プリンタ本体の上部には、ボトル収容部2が設けられており、ボトル収容部2には、補給用のトナーを収容する4つのトナーボトル2Y,2M,2C,2Kが着脱可能に装着されている。各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kと上記各現像装置7との間には、公知の補給路が設けてあり、この補給路を介して各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kから各現像装置7へトナーが補給されるようになっている。
一方、プリンタ本体の下部には、記録媒体Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から記録媒体Pを搬出する給紙ローラ11等が設けてある。なお、記録媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、手差し給紙機構が設けてあってもよい。
プリンタ本体内には、記録媒体Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36の位置よりも記録媒体搬送方向上流側には、搬送タイミングを計って記録媒体Pを二次転写ニップへ搬送するタイミングローラとしての一対のタイミングローラ12が配設されている。
また、二次転写ローラ36の位置よりも記録媒体搬送方向下流側には、記録媒体Pに転写された未定着トナー画像を定着するための定着装置20が配設されている。さらに、定着装置20よりも搬送路Rの記録媒体搬送方向下流側には、記録媒体を装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が設けられている。また、プリンタ本体の上面部には、装置外に排出された記録媒体をストックするための排紙トレイ14が設けてある。
画像形成装置には、装置全体の制御を司る制御装置90が設けられ、制御装置内に記憶されている制御プログラムに基づいて、各機器の駆動を制御する。
続いて、図1を参照して、本実施形態に係るプリンタの基本的動作について説明する。作像動作が開始されると、各作像部4Y,4M,4C,4Kにおける各感光体5が公知の駆動装置によって図の時計回りに回転駆動され、各感光体5の表面が帯電装置6によって所定の極性に一様に帯電される。
帯電された各感光体5の表面には、露光装置9からレーザー光がそれぞれ照射されて、各感光体5の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体5に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体5上に形成された静電潜像に、各現像装置7によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
また、作像動作が開始されると、二次転写バックアップローラ32が図の反時計回りに回転駆動し、中間転写ベルト30を図の矢印で示す方向に周回走行させる。また、各一次転写ローラ31に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ31と各感光体5との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
その後、各感光体5の回転に伴い、感光体5上の各色のトナー画像が一次転写ニップに達したときに、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、各感光体5上のトナー画像が中間転写ベルト30上に順次重ね合わせて転写される。かくして、中間転写ベルト30の表面にフルカラーのトナー画像が担持される。
また、中間転写ベルト30に転写しきれなかった各感光体5上のトナーは、クリーニング装置8によって除去される。そして、各感光体5の表面が公知の除電装置によって除電され、表面電位が初期化される。
プリンタの下部では、給紙ローラ11が回転駆動を開始し、給紙トレイ10から記録媒体Pが搬送路Rに送り出される。搬送路Rに送り出された記録媒体Pは、タイミングローラ12によって搬送が一旦停止される。
その後、所定のタイミングでタイミングローラ12の回転駆動を開始し、中間転写ベルト30上のトナー画像が二次転写ニップに達するタイミングに合わせて、記録媒体Pを二次転写ニップへ搬送する。このとき、二次転写ローラ36には、中間転写ベルト30上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。
そして、この転写電界によって、中間転写ベルト30上のトナー画像が記録媒体P上に一括して転写される。また、このとき、記録媒体Pに転写しきれなかった中間転写ベルト30上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置35によって除去され、除去されたトナーは公知の廃トナー収容器へと搬送され回収される。
その後、記録媒体Pは定着装置20へと搬送され、定着装置20によって記録媒体P上のトナー画像が当該記録媒体Pに定着される。そして、記録媒体Pは、排紙ローラ13によって装置外へ排出され、排紙トレイ14上にストックされる。
以上の説明は、記録媒体上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作である。このフルカラー画像以外に、例えば4つの作像部4Y,4M,4C,4Kの何れか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
以下、図2,3に基づき、定着装置20の構成について説明する。図2は、本発明に係る定着装置の一実施形態を示す構成図である。図3は、本発明に係る定着装置の一実施形態を示す構成図である。
図2に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21と、定着ベルト21の外周面に当接する対向部材としての加圧ローラ22と、定着ベルト21を加熱する加熱源としてのハロゲンヒータ23と、定着ベルト21の内周側から加圧ローラ22に当接して定着ニップ部Nを形成するニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持する支持部材としてのステー25と、ハロゲンヒータ23からの熱を定着ベルト21へ反射する反射部材26と、定着ベルト21の温度を検知する第一温度検知手段としての温度センサ28と、媒体検知手段としての媒体検知センサ29等を備える。これに加え、本実施の形態の定着装置20では、定着ベルト21の非通紙領域において加熱源からの熱を遮蔽する遮蔽部材27を設けた構成となっている。
上記定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。詳しくは、定着ベルト21は、内周側の基材と、外周側の離型層によって構成されている。内周側の基材は、ニッケル若しくはSUS等の金属材料又はポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成されている。外周側の離型層は、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
また、弾性層が無い場合は、熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着トナーを押しつぶして定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。これを防止するには、厚さ100μm以上の弾性層を設けることが望ましい。厚さ100μm以上の弾性層を設けることで、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができるので、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。
本実施の形態では、定着ベルト21の低熱容量化を図るために、定着ベルト21を薄くかつ小径化している。具体的には、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さを、20〜50μm、100〜300μm、10〜50μmの範囲に設定し、全体としての厚さを1mm以下に設定している。
また、定着ベルト21の直径は、20〜40mmに設定している。さらに低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよい。また、定着ベルト21の直径は、30mm以下とするのが望ましい。
上記加圧ローラ22は、芯金22aと、芯金22aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等から成る弾性層22bと、弾性層22bの表面に設けられたPFA又はPTFE等から成る離型層22cによって構成されている。加圧ローラ22は、後述する切換手段60によって定着ベルト21側へ加圧され、定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接している。
この加圧ローラ22と定着ベルト21とが圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、所定の幅の定着ニップ部Nが形成されている。なお、定着ベルト21と加圧ローラ22は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わず単に接触させるだけの構成とすることも可能である。
また、加圧ローラ22は、プリンタ本体に設けられた公知の定着モータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力が定着ニップ部Nで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転するようになっている。
本実施の形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータ等の加熱源を配設してもよい。また、弾性層22bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。
上記ハロゲンヒータ23は、定着ベルト21の内周側で、かつ、定着ニップ部Nの記録媒体搬送方向の上流側に配設されている。詳しくは、図2において、定着ニップ部Nの記録媒体搬送方向の中央Qと、加圧ローラ22の回転中心Oを通る仮想直線をLとすると、ハロゲンヒータ23はこの仮想直線Lよりも記録媒体搬送方向の上流側(図2の下側)に配設されている。
ハロゲンヒータ23は、プリンタ本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、上記温度センサ28による定着ベルト21の表面温度の検知結果に基づいて行われる。このようなハロゲンヒータ23の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定できるようになっている。
なお、定着ベルト21の温度を検知する温度センサの代わりに、加圧ローラ22の温度を検知する温度センサを設け、その温度センサで検知した温度により、定着ベルト21の温度を予測するようにしてもよい。
本実施の形態では、ハロゲンヒータ23は2本設けられているが、プリンタで使用する記録媒体のサイズ等に応じて、ハロゲンヒータ23の本数を1本又は3本以上としてもよい。また、定着ベルト21を加熱する加熱源として、ハロゲンヒータ以外に、IH、抵抗発熱体、又はカーボンヒータ等を用いることも可能である。
上記ニップ形成部材24は、ベースパッド241と、ベースパッド241の定着ベルト21と対向する面に設けられた低摩擦性の摺動シート240とを有する。ベースパッド241は、定着ベルト21の軸方向又は加圧ローラ22の軸方向に渡って長手状に配設されている。
ベースパッド241が加圧ローラ22の加圧力を受けることで、定着ニップ部Nの形状が決まる。本実施形態では、定着ニップ部Nの形状が平坦状であるが、凹形状やその他の形状としてもよい。
摺動シート240は、定着ベルト21が回転する際の摺動摩擦を低減するために設けられている。なお、ベースパッド241自体が低摩擦性の部材で形成されている場合は、摺動シート240を有しない構成としてもよい。
ベースパッド241は、耐熱温度200℃以上の耐熱性材料で構成されている。かかる構成により、トナー定着温度域で熱によるニップ形成部材24の変形を防止し、安定した定着ニップ部Nの状態を確保して、出力画質の安定化を図っている。
また、ベースパッド241は、強度確保のために相応の剛性が求められる。以上の条件を満たすベースパッド241の材料としては、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの樹脂を用いることが可能である。この他、金属やセラミックでベースパッド241を形成することもできる。
また、ベースパッド241は、ステー25によって固定支持されている。これにより、加圧ローラ22による圧力でニップ形成部材24に撓みが生じるのを防止し、加圧ローラ22の軸方向に渡って均一なニップ幅が得られるようにしている。ステー25は、ニップ形成部材24の撓み防止機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが望ましい。
上記反射部材26は、ハロゲンヒータ23と対向するようにステー25に固定支持されている。この反射部材26によって、ハロゲンヒータ23からの輻射熱を定着ベルト21へ反射することで、熱がステー25等に伝達されるのを抑制し、定着ベルト21を効率良く加熱すると共に省エネルギー化を図っている。反射部材26の材料としては、アルミニウムやステンレス等が用いられる。特に、アルミニウム製の基材に輻射率の低い(反射率の高い)銀を蒸着したものを用いた場合、定着ベルト21の加熱効率を向上させることが可能である。
上記遮蔽部材27は、厚さ0.1mm〜1.0mmの金属板を、定着ベルト21の内周面に沿った円弧状の断面形状に形成して構成されている。また、遮蔽部材27は、定着ベルト21とハロゲンヒータ23の間を周方向に移動可能となっている。
これにより、本実施形態では、図3に示すように、定着ベルト21の周方向領域に、ハロゲンヒータ23に直接加熱される加熱領域αと、ハロゲンヒータ23によって直接加熱されない非加熱領域βとが形成される。加熱領域αはハロゲンヒータ23の正面に対向している。非加熱領域βは、ハロゲンヒータ23との間に、側板等に固定された他部材(反射部材26、ステー25、ニップ形成部材24等)が介在するため、ハロゲンヒータ23によって直接加熱されない。
定着ベルト21をハロゲンヒータ23から熱遮蔽する必要がある場合は、図2に示すように、遮蔽部材27を被加熱領域α側の一箇所若しくは複数個所に設定された遮蔽位置に配設する。一方、熱遮蔽の必要がない場合は、図3に示すように、遮蔽部材27を非加熱領域β側に移動させ、遮蔽部材27の全体を反射部材26やステー25の裏側へ退避させることが可能となっている。
このように遮蔽部材27を回転させることで、定着ベルト21の被加熱領域αの面積を変更して、ハロゲンヒータ23から定着ベルト21に照射される輻射熱の熱量を調整するようになっている。遮蔽部材27は耐熱性を要するため、その素材には、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属材料、又はセラミックを用いることが好ましい。
媒体検知センサ29は、定着ニップ部Nよりも、記録媒体としての記録媒体の搬送方向下流側に配置される。この媒体検知センサ29は、記録媒体の有無を検知するものであり、例えばフォトインタラプタ等で構成することができる。
図4は、図3に係る定着装置を示す斜視図である。図4に示すように、定着ベルト21の両端部の内周には、それぞれベルト保持部材としてのフランジ部材40が挿入されており、定着ベルト21はこのフランジ部材40によって回転可能に保持されている。また、各フランジ部材40、ハロゲンヒータ23及びステー25は、定着装置20の一対の側板に固定支持されている。
図5は、図3に係る定着装置の遮蔽部材の支持構造を説明する説明図である。図5に示すように、遮蔽部材27は、フランジ部材40に取り付けられた円弧状のスライド部材41を介して支持されている。
具体的には、遮蔽部材27の端部に設けられた突起27aが、スライド部材41に設けられた孔部41aに挿入されることで、遮蔽部材27がスライド部材41に取り付けられている。また、スライド部材41には凸部41bを設けてある。その凸部41bがフランジ部材40に設けられた円弧状の溝部40aに挿入されることで、スライド部材41は溝部40aに沿ってスライド移動可能となっている。
これにより、遮蔽部材27は、スライド部材41と一体的に、フランジ部材40の周方向に回転移動可能となっている。また、本実施形態では、フランジ部材40及びスライド部材41は、樹脂で構成されている。
なお、図5では、片方の端部の支持構造のみ示しているが、他方の端部も同様に、スライド部材41を介して回転移動可能に保持されている。
図6は、図3に係る定着装置の遮蔽部材の駆動手段を説明する説明図である。図6に示すように、本実施形態では、遮蔽部材27の駆動機構として、駆動源であるモータ42と、複数のギヤ43,44,45からなるギヤ列を有する動力伝達機構46とを備える。
ギヤ列のうち、一端側のギヤ43はモータ42に連結され、他端側のギヤ45はスライド部材41の周方向に設けられたギヤ部41cに連結されている。モータ42が駆動すると、その駆動力がギヤ列を介してスライド部材41に伝達される。そして、遮蔽部材27が正方向(非加熱領域βから被加熱領域αに向う回転方向)及び逆方向(被加熱領域αから非加熱領域βに向う回転方向)に回転移動するようになっている。モータ42は、例えばステッピングモータで構成することができる。この場合の遮蔽部材27の位置制御は、駆動パルス数を変更することで行うことができる。なお、モータ42としては、ステッピングモータに代えてDCモータ等を使用することもできる。
遮蔽部材27は、定着ベルト21の温度を検知する温度センサ28等を用いて定着ベルト21の長手方向中央部と端部の温度を検知し、温度や温度差により遮蔽する範囲を制御する構成になっているが、ここでは動作詳細の説明は省略する。
次に、定着ニップ部Nを加圧状態と脱圧状態とを切り換える切換手段について説明する。図7は、切換手段の概略構成を示す側面図であり、(a)が脱圧状態、(b)が加圧状態を示す。この切換手段(ニップ圧切換手段)60は、加圧ローラ22を定着ベルト21に押圧することで、定着ニップ部Nを加圧状態にし、加圧ローラ22を定着ベルト21から離反させることで定着ニップ部Nを脱圧状態にする機構である。
切換手段60は、定着ニップ部Nが加圧状態であるか脱圧状態であるかを検出する機能も有する。切換手段60は、レバー部材61、カム62、弾性部材63、被検知部材としてのフィラー64、及び検出手段としての検知センサ65を主要な構成要素としている。
レバー部材61は、その一端に設けた支軸O1を中心として回転可能に支持されており、レバー部材61の他端にカム62のカム面が当接している。加圧ローラ22の軸端部には芯金22aが突出しており、この芯金22aがレバー部材61の中間部と当接している。
カム62は、偏心位置に設けた支軸O2を中心として回転可能に支持され、公知のモータ(加圧・脱圧モータ)等の駆動源により回転駆動される。レバー部材61は、引張ばね等からなる弾性部材63の弾性力でカム62のカム面に押し付けられている。
加圧ローラ22は、定着ベルト21に対して接近及び離反可能となるように、図中の水平方向にスライド移動可能に支持されている。図7(a)に示すように、カム62の小径カム面がレバー部材61に当接した状態では、レバー部材61は、弾性部材63の弾性力により加圧ローラ22の芯金22aから離れる方向に付勢される。
そのため、加圧ローラ22が定着ベルト21から離反する方向に移動し、定着ニップ部が脱圧状態となる。その一方で、図7(b)に示すように、カム62の大径カム面がレバー部材61に当接した状態では、カム62から受ける押圧力でレバー部材61が加圧ローラ22の芯金22aを定着ベルト21に対する接近側に押し込む。これによって定着ニップ部Nが加圧状態となる。
次に、正常時の作像終了後の定着装置各部の動作順序を、図8のタイミングチャートに基づいて説明する。図8は、正常時の作像終了後の定着装置各部の動作順序を示すタイミングチャートである。
画像形成装置の制御装置90は、最終記録媒体の後端が定着ニップ部Nから脱出するタイミングで定着装置20に停止信号を送信する。停止信号の受信後は、先ずハロゲンヒータ23がOFFとなり、次いでヒータリレーがOFFとなる。遮蔽部材27が備えられた構成である場合には、次に遮蔽部材27が初期位置(HP)に戻る。
ここまで定着ベルト21は、回転を継続しているが、遮蔽部材27が初期位置に戻ってから所定時間t1だけ経過した後で、定着モータを停止させる。定着モータの停止後、図7に示す切換手段60で定着ニップ部Nを脱圧させる。
遮蔽部材27が初期位置に戻ってから時間t1だけ定着ベルト21の回転を継続させているのは、定着ベルト21が余熱で局所的に加熱されて定着ベルト21に温度偏差が生じるのを防止するためである。この時間t1は、定着ベルト21が均熱化される時間を見込んで設定される。例えば、温度センサ28で検知した温度情報からt1の終期を定めることができ、あるいは予め定めた一定時間が経過した時点をt1の終期とすることもできる。
定着ニップ部Nが加圧状態のままでジャム処理を行うと、定着ニップ部Nに挟まれた記録媒体が引き抜かれることにより、定着ベルト21や加圧ローラ22に傷がつき、あるいは記録媒体が千切れてユーザーによるジャム処理が困難となる虞がある。一方、定着ベルト21の回転停止前から定着ニップ部を脱圧状態にすると、定着ベルト21がスリップして定着ベルト21が部分的に昇温し、定着ベルト21が変形する虞がある。そこで、定着ベルト21が停止してから定着ニップ部Nを脱圧状態に切り換えている。
以上は、作像動作が正常に終了した場合の動作順序であるが、作像中(画像信号が入力されてから定着後の記録媒体が排紙トレイに排出されるまでの間)は、搬送路R(図1参照)でのジャムの発生、あるいは画像形成装置内の各部の異常により、画像形成装置が緊急停止する場合がある。緊急停止時に、定着ベルト21の回転を即時停止すると、定着ベルト21が余熱で加熱され、温度斑が発生して定着ベルト21が変形するおそれがある(図9の領域Q参照)。
異常発生時の定着装置各部の動作には、定着ベルト21が正転する場合と逆転する場合の二通りが考えられる。
定着装置20は、通常の画像形成時は正転しており、逆転を前提とした構成にはなっていないため、緊急停止時にも正転させた方が定着装置20へのダメージは少ない。
また、ジャム発生時に搬送経路に残紙(残記録媒体)があった場合にも、記録媒体先端が定着ニップ部Nを通過して定着ベルト21から分離した状態にある場合には、定着ベルト21をさらに正転(記録媒体を搬送方向下流側に送り出す方向の回転)させても、記録媒体が定着ベルト21に巻き付くことはない。
また、ジャム発生時に搬送経路にある残紙が、定着ニップ部Nを通過以前であっても、定着装置20の定着ニップ部N出口側に備えられた分離部材により、記録媒体は定着ベルト21から分離されるため、定着ベルト21をさらに正転させても、記録媒体が定着ベルト21に巻き付くことはない。そのため、通常の緊急停止時の動作の手順では、ヒータOFF後の定着ベルト21の動作として、より安定的な正転を選択してすることが望ましい。
次に、異常発生時に、定着ベルト21が正転する場合の定着装置各部の動作(異常時正転動作)の順序を、図10のタイミングチャートに基づいて説明する。図10は、異常発生時に、定着ベルトが正転する場合の定着装置各部の動作順序を示すタイミングチャートである。
画像形成装置から異常検出信号が送信されると、ハロゲンヒータ23がOFFとなり、次いでヒータリレーがOFFとなる。ヒータリレーのOFF後に作像線速をスルーダウンして低速線速に切り換え、低速状態で定着ベルト21を所定時間Taだけ正転させる。時間Taの経過後に定着ベルト21を停止し、その後、切換手段60を有する場合には、定着ニップ部Nを脱圧状態に切り換える。これらの動作が完了した後、画像形成装置に設けられた報知手段(操作パネルへの表示、異常表示ランプの点灯、アラーム音の発生等)で、外部に異常発生を報知する。異常発生の報知後は定着装置20の使用を禁止する。
このヒータOFF後の定着ベルト21の正転中は、定着ベルト21の被加熱領域α(図2参照)のうち、遮蔽部材27で遮蔽されていない領域がハロゲンヒータ23の余熱で加熱されることとなる。この際、定着ベルト21の正転に伴って、記録媒体Pが定着ニップ部Nを通過し、定着ベルト21の熱が記録媒体に奪われるため、定着ベルト21に大きな温度偏差が生じることはない。したがって、定着ベルト21での温度斑の発生、さらには定着ベルト21の変形といった事態に至ることを防止することができる。
定着ベルト21を正転する時間Taは、定着ベルト21の全周が定着ニップ部Nを通過して定着ベルト21の熱を記録媒体に移動させ、さらに記録媒体通過後は、熱を加圧ローラ22に移動させるのに十分な時間に設定する必要がある。目安としては、定着ベルト21が一回転する程度の時間が好ましい。定着ベルト21の正転中の回転線速を低速に切り換える目的は、定着ベルト21の熱を記録媒体Pに効率良く移動させることで、定着ベルト21に生じる温度偏差を極力小さくするためである。
次に、異常発生時に、定着ベルト21の逆転を選択することが望ましい場合について説明する。
近年、画像形成装置においては、使用される記録媒体(転写紙)が多様化している。例えば量販店で掲示されているような長尺用紙に対して作像されるようなケースが増加している。長尺用紙は、用途に応じて紙厚や所望の長さ、紙種や紙の表面性が多様であり、ユーザーの設定ミス等も含めて、搬送ジャムが発生する可能性が普通紙より高くなっている。
長尺用紙で搬送ジャムが発生した場合には、図1の回転体としての給紙ローラ11、回転体としてのタイミングローラ12、回転体としての二次転写ローラ36と回転体としての二次転写バックアップローラ32、及び定着ニップ部Nが、記録媒体を同時に挟持している場合がある。このような場合には、定着ニップ部Nの上流で記録媒体が複数の強い力で挟持されることにより、定着ベルト21を正転させようとしても、定着ベルト21を駆動する負荷が大きすぎて、定着ベルト21が回転できない状態になることがある。そのため、定着ベルト21は、余熱で加熱され、温度斑が発生する問題がある。また、長尺用紙に限らず、搬送ジャム発生時の紙種や紙厚等により、定着ベルト21の駆動の負荷(定着駆動負荷)が大きくなり、定着ベルト21が回転できない状態になることがある。
具体的には、例えばタイミングローラ12は駆動トルクが大きく、記録媒体を狭持する力が強い。そのため、異常発生時に定着ニップ部Nとタイミングローラ12が同時に記録媒体を狭持した場合は、定着ベルト21による記録媒体の搬送力の方がタイミングローラ12による記録媒体の搬送力よりも小さくなり、定着ベルト21を正転させようとしても狙い通りに回転させられない。そのため、定着ベルト21の回転方向を、正転方向とは逆の逆転方向に決定する必要がある。
一方、異常発生時にタイミングローラ12が記録媒体を狭持しておらず、定着ニップ部Nと、二次転写ローラ36及び二次転写バックアップローラ32間の搬送ニップのみが記録媒体を狭持した場合は、定着ベルト21による記録媒体の搬送力の方が上記搬送ニップによる記録媒体の搬送力よりも大きくなる。そのため、定着ベルト21を狙い通りに正転方向に回転させることが可能であり、この場合、定着ベルト21の回転方向を、正転方向に決定する必要がある。
そこで本発明では、異常発生時に、定着ニップ部及び1つ又は複数の回転体が同時に1枚の記録媒体を挟持している場合、記録媒体を挟持している1つ又は複数の回転体に応じて、定着部材の所定方向を正転方向に又は正転方向とは逆の逆転方向に決定する。より具体的には、本発明では、定着ニップ部N以外の搬送ニップが記録媒体を狭持している場合には、定着ベルト21の回転負荷、記録媒体検知手段による記録媒体の有無(位置)及び/又は速度検知手段による回転開始時の回転検知に基づいて、定着ベルト21を正転方向に回転させるか逆転方向に回転させるかの判断を行う。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態は、このような原因による温度斑の発生を防止するために、定着ベルト21の定着駆動負荷(回転負荷)を測定する回転負荷検知手段を備え、異常発生時に、正転する定着ベルト21の定着駆動負荷を測定し、定着駆動負荷が所定値以上の場合には、定着ベルト21を正転ではなく逆転する。これにより、定着ニップ部Nより上流側で記録媒体が狭持されるなどしていても、定着ベルト21が逆転することにより、記録媒体を弛ませることとなるため、小さな定着駆動力で定着ベルト21を回転させることができ、温度斑の発生を防止することが可能となる。
次に、異常発生時に、定着ベルト21が正転又は逆転を選択する制御を、図11のフローチャートに基づいて説明する。図11は、異常発生時に、定着ベルトが正転又は逆転を選択する制御を説明するフローチャートである。
画像形成装置の制御装置90が搬送ジャムを検出すると、制御装置90は、ハロゲンヒータ23をOFFとし(ステップS10)、次いでヒータリレーをOFFとする(ステップS11)。制御装置90は、ヒータリレーのOFF後に、作像線速をスルーダウンして低速線速に切り換える(ステップS12)。次いで、制御装置90は、低速線速の間(定着ベルト21を所定時間Taだけ正転させる間)に、定着ベルト21の定着駆動負荷を測定する回転負荷検知手段に定着駆動負荷を測定させる(ステップS13)。ここで、回転負荷検知手段は、定着ベルト21の駆動トルクを測定する装置である。なお、回転負荷検知手段は、この態様に限定されず、定着モータの電流値を測定して駆動トルクを算出する装置であってもよい。次いで、制御装置90は、定着駆動負荷が所定の値(例えば、X[Nm])以上であるか否かを判断する(ステップS14)。
ステップS14において、制御装置90が、定着駆動負荷が所定の値以上であると判断すると(ステップS14でYES)、制御装置90は、定着ユニットの負荷が大きくて定着ベルト21が回転できない可能性があると判断する。そして、制御装置90は、定着モータにブレーキをかけて(ステップS20)、定着ベルト21の駆動を停止する(ステップS21)。次いで、制御装置90は、定着ベルト21の駆動停止後に、定着ベルト21を逆転させて、所定の時間(Td)だけ回転を継続する(ステップS22)。次いで、制御装置90は、定着モータの停止させた後に、切換手段60により定着ニップ部Nを加圧状態から脱圧状態に切り換えて、定着ベルト21の異常時逆転動作を終了し(ステップS23)、制御を終了する。
ステップS14において、制御装置90が、定着駆動負荷が所定の値以上でないと判断すると(ステップS14でNO)、制御装置90は、定着ベルト21が正転可能な状態であると判断する。そして、制御装置90は、図10で示すように、定着ベルト21の異常時正転動作を実行する(ステップS15)。次いで、制御装置90は、定着モータの停止させた後に、切換手段60により定着ニップ部Nを加圧状態から脱圧状態に切り換えて、定着ベルト21の異常時正転動作を終了し(ステップS16)、制御を終了する。
次に、異常発生時に、定着ベルト21が逆転する場合の定着装置各部の動作(異常時逆転動作)の順序を、図12のタイミングチャートに基づいて説明する。図12は、異常発生時に、定着ベルトが逆転する場合の定着装置各部の動作順序を示すタイミングチャートである。
画像形成装置から異常検出信号が送信されると、ハロゲンヒータ23がOFFとなり、次いで、ヒータリレーがOFFとなる。ヒータリレーのOFF後に、作像線速をスルーダウンして低速線速に切り換える。低速線速の間(定着ベルト21を所定時間Taだけ正転させる間)に、定着駆動負荷を測定し、所定の値(例えば、X[Nm])以上となった時点で、直ちに定着モータを所定時間Tbだけブレーキ制御し、定着ベルト21を停止させる。
所定時間Tcだけ定着モータを強制停止させた後、定着モータを逆転方向に切り換えて駆動し、所定時間Td経過後に、定着モータを停止する。その後、切換手段60を有する場合には、定着ニップ部Nを脱圧状態に切り換える。これらの動作が完了した後、画像形成装置に設けられた報知手段で、外部に異常発生を報知する。異常発生の報知後は定着装置20の使用を禁止する。
逆転時間Tdは、定着ベルト21が一回転する程度の時間に設定するのが好ましい。また、異常発生時に逆転方向に駆動する定着ベルト21の回転線速は、正常時に正転方向に駆動する定着ベルト21の回転線速より低速に切り換えることが好ましい。これにより、定着ベルト21の熱を記録媒体Pに効率良く移動させることで、定着ベルト21に生じる温度偏差を極力小さくする。
定着モータの逆転中は、定着ベルト21の被加熱領域αのうち、遮蔽部材27で遮蔽されていない領域が、ハロゲンヒータ23の余熱で加熱されることとなるが、正転の際と同様に、この場合も定着ベルト21の逆転に伴って記録媒体Pが定着ニップ部Nを逆方向(記録媒体搬送方向上流側)に通過する。そのため、定着ベルト21の熱が記録媒体に奪われる。その結果、定着ベルト21に大きな温度偏差が生じることはなく、温度斑の発生、さらには定着ベルト21の変形を防止することができる。
このような正転又は逆転の制御を採用することにより、画像形成装置の異常発生時には、短時間で定着装置20及び画像形成装置を停止させることができ、画像形成装置の各部が受けるダメージを軽減することができる。また、定着ベルト21での温度斑の発生や定着ベルト21の変形も防止することが可能となる。
なお、図12に示す動作手順では、定着モータの逆転前にブレーキ制御及び強制停止を行っているが、これは、正転から逆転に切り換える際の定着モータの破損を防止するためである。ブレーキ制御や強制停止を必要とせず、いきなり正転から逆転へ切り換えることが可能な定着モータを使用する場合には、ブレーキ制御及び強制停止を行う必要はない。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る正転又は逆転の判断について説明する。図13は、第2実施形態に係る正転又は逆転を判断する構成を示す構成図である。
第2実施形態では、搬送経路に備えられた記録媒体検知手段により、定着ベルト21の正転又は逆転の判断をする。
画像形成装置は、手差しトレイ100と、手差しトレイ用の給紙ローラ111と、記録媒体検知手段と、を備える。記録媒体の有無を検知する記録媒体検知手段は、トレイ給紙後残紙センサ101、手差トレイ給紙後残紙センサ102、タイミングローラ前残紙センサ103、タイミングローラ後残紙センサ104及び定着装置前残紙センサ105のうちの1つ又は複数で構成される。
トレイ給紙後残紙センサ101、手差トレイ給紙後残紙センサ102、タイミングローラ前残紙センサ103、タイミングローラ後残紙センサ104、及び定着装置前残紙センサ105は、定着ニップ部Nの記録媒体搬送方向上流側に配置され、各回転体における記録媒体の有無を検知する。
前述したような長尺用紙で搬送ジャムが発生した場合で、手差しトレイ給紙後残紙センサ102と、タイミングローラ前残紙センサ103と、タイミングローラ後残紙センサ104と、定着装置前残紙センサ105とのすべてが「残紙あり」と判断した場合、定着ベルト21の定着駆動負荷が増大することとなる。この場合に、制御装置90は、定着ベルト21を逆転方向に駆動させる。なお、記録媒体検知手段による記録媒体の有無の判断は、ユーザーによる記録媒体サイズの設定と組み合わせて判断しても良い。
次に、異常発生時に、定着ベルト21が正転又は逆転を選択する制御を、図14のフローチャートに基づいて説明する。図14は、第2実施形態における、定着ベルトが正転又は逆転を選択する制御を説明するフローチャートである。
第2実施形態では、図11で示したステップS10〜ステップS13と同様のステップを経た後に、制御装置90が、手差しトレイ給紙後残紙センサ102と、タイミングローラ前残紙センサ103と、タイミングローラ後残紙センサ104と、定着装置前残紙センサ105とのすべてが「残紙あり」か否かを判断する(ステップS114)。
ステップS114において、制御装置90が、手差しトレイ給紙後残紙センサ102と、タイミングローラ前残紙センサ103と、タイミングローラ後残紙センサ104と、定着装置前残紙センサ105とのすべてが「残紙あり」と判断すると(ステップS114でYES)、制御装置90は、定着ユニットの負荷が大きくて定着ベルト21が回転できない可能性があると判断する。そして、図11のステップS20〜ステップS23と同様のステップを経て、制御を終了する。
ステップS114において、制御装置90が、手差しトレイ給紙後残紙センサ102と、タイミングローラ前残紙センサ103と、タイミングローラ後残紙センサ104と、定着装置前残紙センサ105とのすべてが「残紙ありではない」と判断すると(ステップS114でNO)、制御装置90は、定着ベルト21が正転可能な状態であると判断する。そして、図11のステップS15〜ステップS16と同様のステップを経て、制御を終了する。
このような正転又は逆転の制御を採用することにより、画像形成装置の異常発生時には、短時間で定着装置20及び画像形成装置を停止させることができ、画像形成装置の各部が受けるダメージを軽減することができる。また、定着ベルト21での温度斑の発生や定着ベルト21の変形も防止することが可能となる。
なお、どの位置にセンサを備え、どのセンサの組み合わせで判断をするかは、機種固有の部分を含んでおり、各機種の大きさや搬送レイアウトにより任意に設定可能である。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る正転又は逆転の判断について説明する。図15は、第3実施形態に係る正転又は逆転を判断する構成を説明する説明図である。
第3実施形態では、定着ベルト21の回転速度を検知可能な速度検知手段により、定着ベルト21の正転又は逆転の判断をする。
定着ベルト21の長手方向端部に、定着ベルト21の表面とは反射率の異なるマーキング106を備える。定着ベルト21の回転に伴う反射率の変化を定着ベルト21に近接して設けた速度検知手段としての反射型センサ107で検知する。反射型センサ107で検知されたマーキング106の周期が所定の周期より長い場合、すなわち速度検知手段が検知した定着ベルト21の回転速度が所定速度以下である場合、定着ベルト21が狙いの回転速度で回転をしてなく、定着ベルト21の定着駆動負荷が増大することとなる。この場合、制御装置90は、定着ベルト21を逆転方向に駆動させる。
次に、異常発生時に、定着ベルト21が正転又は逆転を選択する制御を、図16のフローチャートに基づいて説明する。図16は、第3実施形態における、定着ベルトが正転又は逆転を選択する制御を説明するフローチャートである。
第3実施形態では、図11で示したステップS10〜ステップS13と同様のステップを経た後に、制御装置90は、反射型センサ107による検知情報が反射率の所定の変化速度(例えば、V[ms])以下であるか否かを判断する(ステップS214)。
ステップS214において、制御装置90が、反射型センサ107による検知情報が反射率の所定の変化速度以下と判断すると(ステップS214でYES)、制御装置90は、定着ユニットの負荷が大きくて定着ベルト21が回転できない可能性があると判断する。そして、図11のステップS20〜ステップS23と同様のステップを経て、制御を終了する。
ステップS114において、制御装置90が、反射型センサ107による検知情報が反射率の所定の変化速度以下でないと判断すると(ステップS214でNO)、制御装置90は、定着ベルト21が正転可能な状態であると判断する。そして、図11のステップS15〜ステップS16と同様のステップを経て、制御を終了する。
このような正転又は逆転の制御を採用することにより、画像形成装置の異常発生時には、短時間で定着装置20及び画像形成装置を停止させることができ、画像形成装置の各部が受けるダメージを軽減することができる。また、定着ベルト21での温度斑の発生や定着ベルト21の変形も防止することが可能となる。
[別の実施形態に係る定着装置]
上述の実施形態に係る正転又は逆転の判断は、端部ヒータを有する定着装置に適用可能である。図17は、定着装置の別の実施形態を示す概略的な断面構成図である。
定着装置120は、薄肉で可撓性を有する筒状の定着部材である無端状の定着ベルト121と、この定着ベルト121の外周側から当接する加圧部材である加圧ローラ122とを有している。定着ベルト121は、その内部(ループ内)に配された複数の定着熱源としてのハロゲンヒータ123A,123B(以下、第1ハロゲンヒータ123A、第2ハロゲンヒータ123Bともいう)の輻射熱によって加熱される。なお、ハロゲンヒータは、主たる熱源である定着熱源としての、輻射型熱源を代表するものである。
さらに、定着ベルト121の内部には、定着ベルト121を介して加圧ローラ122とで定着ニップ部Nを形成するニップ形成部材124と、ニップ形成部材124を支持するステー部材125(支持部材)とが配されている。
定着ベルト121の幅方向に渡って配されたニップ形成部材124が、ステー部材125によって固定支持されることで、加圧ローラ122からの圧力によってニップ形成部材124に撓みが生じることを防止し、加圧ローラ122の軸方向(長手方向)に渡って均一なニップ幅が得られるようになっている。なお、ニップ形成部材124は、機械的強度が高く耐熱温度200℃以上の耐熱性部材、特に耐熱性樹脂、例えばポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、それらをガラス繊維で強化したもので構成されている。これにより、トナー定着温度域で、熱によるニップ形成部材124の変形を防止し、安定した定着ニップ部の状態を確保し、出力画質の安定化を図っている。
また、ステー部材125やハロゲンヒータ123A,123Bは、その長手方向両端を、定着装置120の側板あるいは別途設けられたホルダに固定保持されている。
ニップ形成部材124の長手方向両端部には、主たる熱源(定着熱源)とは別の端部熱源としての端部ヒータ126a,126bが一体に取り付けられている。端部ヒータとしては、一般的に、セラミックセータのような抵抗発熱体である接触伝熱型熱源が用いられる。
定着ベルト121の長手方向における熱移動を容易にする均熱部材とも称される熱移動補助部材127が、ニップ形成部材124と端部ヒータ126それぞれの定着ベルト121の内周面に対向する各面を覆うように配されている。これにより、小サイズ紙通紙時や端部ヒータ126点灯時に定着ベルト121の端部領域に熱が留まることを防止して、積極的に定着ベルト121の幅方向、即ち、熱移動補助部材127の長手方向に、熱を移動させて、長手方向の温度不均一を解消させる。そのため、熱移動補助部材127は短時間で熱移動が可能となる熱伝導率の高い材料、例えば銅(398W/mk)やアルミニウム(236W/mk)などで形成されている。
図17の描写では、熱移動補助部材127の定着ベルト121の内周面に対向する面が定着ベルト121に直接接触する面であり、ニップ形成面となっており、平坦状に形成されているが、凹形状やその他の形状であってもよい。凹形状のニップ形成面であると、記録媒体先端の排出方向が加圧ローラ寄りになり、分離性が向上してジャムの発生が抑制される。
周知のように、定着ベルト121の外周側の適切な位置、例えば定着ニップ部のベルト回転方向上流側には、ベルト温度を検知する温度センサ129が設けられており、定着装置120の記録媒体搬送方向下流側には、定着ベルト121から記録媒体Pを分離する分離部材141が配されている。さらに、加圧ローラ122を定着ベルト121へ加圧する解除可能な加圧手段も設けられている。
低熱容量化を図るため、フィルムのように薄肉で小径化した無端状の定着ベルト121は、前記した図2の定着ベルト21と同様の構成であるため、ここでの説明は省略する。
断面T字状のステー部材125は、定着ニップ部N側と反対側が起立した起立部125aを有しており、主たる熱源としてのハロゲンヒータ123A,123Bが起立部125aによって隔てられるように配置されている。
ハロゲンヒータ123A,123Bは、一方が小サイズ紙に対応した長手方向中央部に発熱部を有するものであり、他方が大サイズ紙に対応して長手方向両端部に発熱部を有するものである。ハロゲンヒータ123A,123Bは、プリンタ本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、定着ベルト121の外周に設けられた温度センサ129によるベルト表面の温度検知結果に基づいて行われる。このようなヒータの出力制御によって、定着ベルト121の温度(定着温度)を所望の温度に設定できるようになっている。
また、ステー部材125とハロゲンヒータ123A,123Bの間には反射部材128A,128Bが配されている。これにより、ハロゲンヒータ123A,123Bの定着ベルト121に対する加熱効率を上げると共に、ハロゲンヒータ123A,123Bからの輻射熱によりステー部材125が加熱されることによる無駄なエネルギー消費を抑制できる。反射部材128A,128Bを備える代わりに、ステー部材125表面に断熱若しくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることができる。
加圧ローラ122は、前記した図2の加圧ロ−ラ22と同様の構成であり、また回転駆動の伝達方法等の構成も図2記載の定着装置20と同様であるため、ここでの説明は省略する。
図18は、ニップ形成ユニットの基本構成を示す斜視図である。図18に示すように、ニップ形成ユニットは、ニップ形成部材124、ステー部材125、熱移動補助部材127、端部ヒータ126a,126bによって構成される。ニップ形成ユニットでは、ニップ形成部材124の、定着ニップ部N側と反対側の面が、ステー部材125の定着ニップ部N側の平面と一体化される。この際、それぞれの面にボスとピンのような凹凸形状を形成させて、これらを形状拘束的に嵌め合わせるようにしてもよい。
熱移動補助部材127は、略直方体状のニップ形成部材124の、定着ベルト121の内周面に対向する面を覆うように嵌め合わされて一体化される。熱移動補助部材127とニップ形成部材124の一体構成は、爪などを設けて噛み合わせればよいが、接着などを用いてもよい。
ニップ形成部材124の長手方向の両端部には、段差部としての凹部124a,124bが形成され、これらの箇所には端部ヒータ126a,126bが収容され、固定されている。これら端部ヒータ126a,126bとハロゲンヒータ123A,123Bの位置関係については、後述する。
熱移動補助部材127の定着ベルト121の内周面に対向する面はベルト摺接面127aとして構成されるが、機械的強度上、実質的にニップ形成面となるのはニップ形成部材124の加圧ローラ122に対向する面124cである。
このように、本実施形態では、端部ヒータ126a,126bを、定着ニップ部を形成するために必要なニップ形成部材124に一体に設ける構成としたので、端部ヒータ126a,126bを定着ベルト121の内側に省スペースで配置できる。
また、端部ヒータ126a,126bの定着ベルト121の内面に対向する面と、ニップ形成部材124の定着ベルト121に対向する面とは同一高さ(同一平面上)に位置するので、加圧ローラ122による十分な加圧力が熱移動補助部材127を介して与えられる。
これにより、定着ベルト121は、端部ヒータ126a,126bと間接的に密着した状態であるので、安定したベルト走行ができる。また、定着ベルト121と端部ヒータ126a,126bは、十分な接触圧で接しており、良好な加熱が維持される。これらの構成より、定着装置120の信頼性が向上する。
さらに、端部ヒータ126a,126bによる定着ベルト121の加熱部位は、ニップ領域内にある。そのため、定着ニップ部Nとは異なる部位で加熱することで、未転写トナーの再溶融し、品質が低下する問題が生じない。
図19は、ニップ形成ユニット及びハロゲンヒータの構成を示す斜視図である。図19に示すように、ステー部材125は、断面が略L型の、第1部材125Aと第2部材125Bとからなり、断面が略T型に構成されている。そのため、剛性が高く、ニップ形成部材124が加圧ローラ122からの応力によって撓むことを防止できる。また、ステー部材125(第1部材125A及び第2部材125B)は、ニップ形成部材124の長手方向に直線的に延在し、ニップ形成部材124に固定されている。したがって、定着ニップ部Nの長手方向全域に亘り、良好なニップ形成面を保つことができる。
起立部125aの短手方向両側には、それぞれ第1ハロゲンヒータ123A、第2ハロゲンヒータ123Bが配置されている。すなわち、第1、第2ハロゲンヒータ123A,123Bは、起立部125aにより相互に遮られている。そのため、ヒータ点灯時に互いのガラス管を加熱しないので、加熱効率が下がらない。また、第1、第2ハロゲンヒータ123A,123Bは、ステー部材125に囲まれていない(各ハロゲンヒータ123の中心はステー部材125が囲む空間の外側にある)ため、照射角α、β(図17参照)が鈍角となり、加熱効率を向上できる。
なお、ステー部材125の断面形状は、略T型に限定されない。第1、第2ハロゲンヒータ123A,123Bを、起立部125aを挟み相互に仕切るような配置であればよく、第1部材125A及び第2部材125Bをハロゲンヒータの長手方向に曲線的に延在してもよい。また、第1部材125A及び第2部材125Bをニップ形成部材124のニップ形成面に対し、斜め方向に起立させてもよい。
続いて、A3ノビなどの特殊サイズの記録材に対応できる熱源の配置構成について説明する。図20は、ハロゲンヒータ及び端部ヒータの発熱部の配置を示す模式図である。図20に示すように、長手方向における中央部の配光分布が密である第1ハロゲンヒータ123Aと、長手方向における両端部の配光分布が密である第2ハロゲンヒータ123Bが、配置されている。すなわち、第1ハロゲンヒータ123Aは、定着ベルト121の中央範囲を加熱し、第2ハロゲンヒータ123Bは、定着ベルト121の側部範囲を加熱する。
第1ハロゲンヒータ123Aの発熱部140Aは、例えばA4タテサイズなどの小サイズの記録材に対応し、第2ハロゲンヒータ123Bの発熱部140Bは、第1ハロゲンヒータ123AでカバーできないA3タテサイズなどの使用可能な最大定形サイズの記録材の側部範囲をカバーする。すなわち、両ハロゲンヒータの発熱部140A,140Bからなる発熱部140は、最大定形サイズの紙幅に対応し、最大定形サイズより大きいノビサイズの紙幅をカバーしていない。
一方、端部ヒータ126a,126bは、第2ハロゲンヒータ123Bの長手方向両端部に対応する位置にあり、最大定形サイズより大きいノビサイズ紙幅の両端部を加熱する発熱部142a,142bを有する。また、端部ヒータ126a,126bの発熱部142a,142bの一部は、ハロゲンヒータ123Bの発熱部140Bと重なる。これにより、定着装置120は、最大定形サイズより大きいノビサイズ紙幅の両端にも対応できる。
ところで、端部ヒータ126a,126bは、熱伝導率の高い銅やアルミニウムで構成された熱移動補助部材127を介して、定着ベルト121の内周面に対向する各面を覆うように配されている。そのため、異常発生時に、直ちに端部ヒータ126a,126bをOFFしても、オーバーシュート等で所定時間は高温が維持される可能性がある。その結果、定着ベルト121が停止した状態であると、定着ベルト121の温度斑や変形が発生する可能性がある。
このような省エネ性の高い定着装置120を用いた場合であっても、本発明の正転又は逆転の制御を採用することにより、画像形成装置の異常発生時には、短時間で定着装置120及び画像形成装置を停止させることができ、画像形成装置の各部が受けるダメージを軽減することができる。また、定着ベルト121での温度斑の発生や定着ベルト121の変形も防止することが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。なお、異常発生時に、定着ニップ部及び1つ又は複数の回転体が、同時に1枚の記録媒体を挟持していると判断する態様は、上述の実施形態の態様に限定されず、定着ニップ部及び1つ又は複数の回転体が、同時に1枚の記録媒体を挟持していると判断できるものであればよい。また、本発明に係る定着装置を搭載する画像形成装置も、図1に示すようなプリンタに限らず、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等とすることが可能である。