JP6800305B2 - 鉄構造物の応力監視装置 - Google Patents
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Description
このような背景に関連する技術としては、下記特許文献1〜特許文献4に示すような様々なものが知られている。
また、特許文献2(特開平07−128182号公報)には、自動的に橋梁の安全性の予知が可能になる橋梁特性検査機器が開示されている。具体的には、橋梁に外部より振動を加えて、この振動を振動検出部で検出し、その振動波形を有線で伝送して中継局に一時蓄積してから無線で計測部に伝送し、この計測部の判定部で、振動波形から橋梁の安全性を判定する。
さらに、特許文献4(特開2004−101398号公報)には、橋梁の長期的監視を実質的に可能にすることが開示されている。具体的には、橋梁の複数の部位に位置対応して配置される複数のセンサを含むセンサ群から構成されている。上記センサの各々は、上記各部位の物理量を計測する計測器部分と、データ管理器部分とから形成されている。該データ管理器部分は、物理量を記録する記録器部分と、データを無線で送信する発信器部分とから構成されている。データは、物理量と上記各部位との対応を含んでいる。データが無人的に入手され得るので、従来実質的に不可能であった橋梁の監視が実質的に可能になるとしている。
次なる第2の課題として、橋梁等の鉄構造物に設置される監視装置は、取り替えやメンテナンスを頻繁に行うことができないので、長期間に亘って設置されたままの状態で使用されなければならない。そこで、この監視装置は、長期耐久性を有すると共に使用する電源電池は、この長期間の使用に耐える必要が生じるが、それには、電池の寿命を長寿命にすることだけでは限界が有り、使用上の特別な工夫が必要となる。
さらなる第4の課題として、監視データの把握手段にも一工夫が必要となる。すなわち、監視データを単に記録して解析するだけではなく、監視装置に該監視データを表示させて、定期点検の際に、監視対象である橋梁等の鉄構造物の状態を該表示を現場で目視して把握できることが望ましい。なお、定期的に点検する作業者は、必ずしも監視装置が設置されている場所に接近できるとは限らず、また、接近する手間を省きたい場合も有り得るので、上記表示の視認による状態把握は、ある程度遠くからでも視認が可能であることが好ましい。さらに、上記表示の表示方法には、金属疲労に伴う亀裂等の重大な異常発生の場合も含めて、一目で上記鉄構造物の状態の経時変化を把握できるようにする工夫も必要となる。
本発明の目的は、上述したそれぞれの課題を解決し得る鉄構造物の応力監視装置を提供することにある。
前記カプセル型ひずみゲージで検出した検出信号を増幅、A/D変換を施して得られた応力の検出値と基準値との比較判定処理を司る処理部と、
前記処理部からの出力データを記録する記録部と、
前記処理部または前記記録部からの出力を受けて判定結果を表示する表示部と、
前記カプセル型ひずみゲージ、前記処理部、前記記録部の各部に電源を供給する電池電源部と、
前記処理部、前記記録部、前記表示部、前記電池電源部を収容する筐体部と、を有し、
前記処理部は、
所定の監視時間帯において所定回数に亘り応力測定を繰り返し実行して、データを前記記録部に記録し、
前記所定の監視時間帯において記録されたデータのうち、最大振幅値と最小振幅値との差である最大測定振幅値を複数段の基準値と比較して、前記複数段の基準値のうち、いずれかの基準値を越えた最大測定振幅値を前記記録部に記録し、
当該最大測定振幅値が、過去に記録された最大測定振幅値を上回ったときは、当該過去に記録された最大測定振幅値を更新して前記記録部に記録すると共に、
前記表示部に対し、本点灯を予告する点滅動作を複数の時点で実行させた後、当該最大測定振幅値が該当する段階のアラーム信号をもって複数の警告パラメータのいずれかを所定時間駆動表示させて本点灯を実行させるよう制御することで、
鉄構造物に負荷される応力を長期に亘って監視するように構成したことを特徴としている。
また、請求項4に記載の本発明の鉄構造物の応力監視装置は、前記表示部は、4個のLED素子が縦列状に配設されてなり、前記最大測定振幅値のレベルによって点灯位置および点灯個数を変更するものであって、
前記最大測定振幅値のレベルが段階的に高くなるについて、以下のように10段階で点灯位置および点灯個数を設定してなることを特徴としている。
1段階(点灯が必要な最低レベル)で、1段目(最下段)を点灯。
2段階:2段目を点灯。
3段階:3段目を点灯。
4段階:4段目(最上段)を点灯。
5段階:1段目と2段目とを点灯。
6段階:1段目と3段目とを点灯。
7段階:1段目と4段目とを点灯。
8段階:2段目と3段目とを点灯。
9段階:2段目と4段目とを点灯。
10段階(最高レベル):3段目と4段目とを点灯。
また、請求項6に記載の本発明の鉄構造物の応力監視装置は、レーザ発光素子と、
所定時間に所定回数のパルス光を発光するように前記レーザ発光素子を駆動制御する照射制御回路と、
前記レーザ発光素子と前記照射制御回路を駆動する電源電池からなる照射器を、前記応力監視装置とは別途に備え、
前記表示部は、前記照射器の前記レーザ発光素子からのパルス光を受光部で受け且つ当該パルス光のパルス数を計数し、当該パルス光が所定時間内に所定回数に達したことを認知したときに限り、前記表示部を駆動制御する電源制御部を備えたことを特徴としている。
また、所定の監視時間帯において記録されたデータのうち、最大振幅値と最小振幅値との差である最大測定振幅値を複数段の基準値と比較して、前記複数段の基準値のうち、いずれかの基準値を越えた最大測定振幅値を前記記録部に記録し、
当該最大測定振幅値が、過去に記録された最大測定振幅値を上回ったときは、当該過去に記録された最大測定振幅値を更新して前記記録部に記録する
ことにより、鉄構造物の状態の経時変化を予知することが可能となり、例えば、上記鉄構造物の微細な亀裂を発見したり、疲労限度または耐久限度を見極めることも可能となる。
また、表示部に対し、本点灯を予告する点滅動作を複数の時点で実行させた後、当該最大測定振幅値が該当する段階のアラーム信号をもって複数の警告パラメータのいずれかを所定時間駆動表示させて本点灯を実行させるよう制御することにより、
第1に、複数の警告パラメータを駆動する際に、より大きな電力を消耗する本点灯時間を極力短くし、電力消費の比較的に少ない点滅動作を一定時間先行させることで、結果的に消費電力を抑制し、長期に亘る使用が可能となり、さらに、第2には、本点灯に先立って点滅動作を複数の時点で実行させることにより、本点灯をする表示部を事前に注視させることができ、点検作業員が遠くからでも段取り良く、確実且つ容易に本点灯表示を視認することができる。
図1は、本発明の第2の実施の形態に係る応力監視用カプセル型ひずみゲージおよび本発明の第1の実施の形態に係る鉄構造物の応力監視装置を含むシステムの全体構成を示すブロック図である。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る鉄構造物の応力監視装置の構成要素を収納する筐体の外観構成を示すものであり、図2(a)は、表示部を備えた側の外観構成を示す正面図、図2(b)は、コネクタ類の接続口を備えた側の外観構成を示す底面図、図2(c)は、右側の外観構成を示す右側面図である。
ここで、CPU22は、A/D変換部221、メモリ部222(記録部)、比較部223(処理部)およびUSB224(記録部)を備える。また、電源部24は、電源制御部241およびリチウム電池242を備える。データ回収ユニット30およびPC(専用ソフト)40は、USBメモリの入出力機能を制御するUSB制御部31、ミニサイズのUSBメモリであるUSBmini32、通常サイズのUSBメモリであるUSB−A33および電源部35を備える。但し、このデータ回収ユニット30およびPC(専用ソフト)40については、本発明に付属する外部の構成要素であり、本発明の構成要件に必須のものではないが、付加することが望ましい。
CPU22は、上記増幅されたひずみ量を示す信号(アナログ量)のレベルを所定の周期で監視し、これをA/D変換部221でディジタル量に変換した結果(応力データ)をメモリ部222に履歴として記憶させる(すなわち応力データを収録する)と共に、予め指定された複数段の基準値に基づいて上記応力データに示されている上記信号レベルを比較部223によって段階的に比較し、その結果をLED表示部23によって表示する。
ここで、A/D変換部221は、ひずみゲージ10から送出された上記ひずみ量を示す信号のレベルを上記ディジタル量(上記ひずみ量のディジタル表現の信号)に変換するものである。なお、CPU22は、後述するように、上記監視の上記周期や監視時間帯等の制御をも行うものである。このCPU22の制御により、電源部24のリチウム電池242は、限られた寿命の下に長期間(例えば8年間)の使用に耐えることができるようになる。
CPU22内の比較部223としての処理部は、前記所定の監視時間帯において集録された応力データのうち、最大振幅値と最小振幅値との差である最大測定振幅値を前記複数の基準値と比較して、前記複数の基準値のうち、いずれかの基準値を越えた最大測定振幅値を前記記録部に記録すると共に、当該最大測定振幅値が該当する段階のアラーム信号をもって、複数の警報パターンのいずれかを駆動表示させる。
従って、表示部23は、過去に集録された応力データの最大測定振幅値は、それ以降それを上回る結果が出るまではピーク値が維持され、当該最大測定振幅値が該当する段階のアラーム信号をもって同じ表示を続行することになる。
さらに、USB224は、USBメモリのインタフェースにより、比較部223の出力データをUSB規格の信号に変換して収録する機能を有する。なお、これとは逆に、外部から入力されたUSB規格の信号をCPU224の内部コードに変換する機能も有する。
電源部24は、ひずみAMP21、CPU22、LED表示部23、発振器25およびひずみゲージ10に対するブリッジ電源(図示せず)等が使用する電力を供給するものであり、リチウム電池242(市販品で良い)は、電源部24の電池電源部である。電源部24の電源制御部241は、安定化回路を備え、リチウム電池242の電力を受けて、負荷に応じた電力を安定的に供給する機能を有することができる。
一方、データ回収ユニット30およびPC(専用ソフト)40については、本発明に付属する外部の構成要素である。これらデータ回収ユニット30やPC40により、本発明に係る応力監視装置20から、上記履歴として記憶されたひずみ量のディジタル表現の信号を外部に取り出すことができる。また、上記信号レベルの上記複数の基準値を作成し、この基準値をレベル判定の指示としてCPU22に入力することができる。
なお、上述の応力データの集録は、所定の周期(例えば1回/1日)で、鉄道車両が少なくとも1列車編成通過する時間を見込んだ所定の監視時間帯(例えば12:00〜12:20の20分間)において実行し、この所定の監視時間帯では、所定回数(例えば最大7回)に亘り応力測定を繰り返して実行するものとする。上記所定の監視時間帯は、例えば、監視対象が鉄道の場合、一日のうち少なくとも1列車編成の列車が通過する限られた時間帯に割り当てられ且つ複数日(例えば、1週間当たり)に一回の周期で割り当てられた時間帯であるものとすることができる。
図3は、所定の監視時間帯において集録された応力データが示す最大振幅値と最小振幅値との差から得られる測定振幅値D、即ち最大測定振幅値を示すグラフである。
CPU22は、上記所定の監視時間帯(本実施の形態では、午後12時から12時20分の間)において集録された上記応力データのうち、最大振幅値と最小振幅値との差である最大測定振幅値(図3)Dを上記複数の基準値と比較し、該複数の基準値のうち、いずれかの基準値を越えた最大測定振幅値を上記メモリ部222およびUSB224に記録する。さらに、CPU22は、当該最大測定振幅値が上記所定の段階のうちから、該当する段階を選んで、該段階に対応するアラーム信号を決定する。さらに、CPU22は、上記アラーム信号をLED表示部23に表示させるが、その表示方法としては、複数の警報パターンのいずれか1つを選んで駆動表示させるものとする。
LED表示部23の表示部は、LED素子(LEDランプ)で構成されたn個の表示素子が縦列状に配設されており、当該n個の表示素子のうち、点灯位置と消灯位置および点灯個数と消灯個数との組み合わせで示される複数の警報パターンが設定されている。当該警報パターンによれば、該表示部から少し離れた場所からでも、前述の測定振幅値のレベルの大きさを一目で視認することができる効果が有る。
特に、このLED表示部23が、4個のLED素子が4段に亘り縦列状に配設されている場合、この4個のLED素子のうち1個のみが点灯する設定にする場合、図4でレベル1〜4として示すように、点灯位置が最下段から4段目へと上がるにつれて、振幅レベルが段階的に高くなるように設定すればよい。この表示方法によれば、警報パターンが視認し易くなり、かつ振幅レベルの把握が的確に行える効果が有る。
さらに、同じく、4個のLED素子のうち2個が点灯する設定にする場合、図4でレベル8〜9として示すように、下から2段目の1個目が点灯している時に2個目が下から3段目〜4段目へと点灯位置が上がるにつれて、さらにレベルが段階的に高くなるように設定すればよい。さらに2個が点灯する場合であって、下から3段目と4段目が点灯するときに、図4でレベル10として示すように、最もレベルが大きくなるように設定すればよい。
上述したところを、より具体的に以下に説明する。
図4において、前記LED表示部23は、4個のLED素子が縦列状に配設されてなり、最大測定振幅値のレベルによって点灯位置および点灯個数を変更するものであって、
最大測定振幅値のレベルが段階的に高くなるについて、以下のように10段階で点灯位置および点灯個数を設定してなるものである。
1段階(点灯が必要な最低レベル)で、1段目(最下段)を点灯。
2段階:2段目を点灯。
3段階:3段目を点灯。
4段階:4段目(最上段)を点灯。
5段階:1段目と2段目とを点灯。
6段階:1段目と3段目とを点灯。
7段階:1段目と4段目とを点灯。
8段階:2段目と3段目とを点灯。
9段階:2段目と4段目とを点灯。
10段階(最高レベル):3段目と4段目とを点灯。
さらに、図4に示すように、ひずみゲージの断線、ノイズ混入、接着不良等を表示する手段として、LED表示部23を流用することもできる。
筐体201は、前述の応力監視装置20の構成要素(具体的には、ひずみAMP21、CPU22、LED表示部23(表示部)、電源部24(電池電源部)および発振器25)を外部から隔絶するように収容するものである。
特に、筐体201の正面側の一部を透明または半透明の部材で構成すれば、LED表示部23の表示部の表示パターンを正面側より視認し得るように構成することができる。
筐体201の背面側には、取付フランジ201a、201bを設けてある。この取付フランジ201a、201bは、例えば、鉄橋の梁の一部に取付板を介して挟み込むようにして取り付ける役割を果たす。201cは、取付ボルトの挿通孔である。
なお、応力監視装置20の別途の機能として、CPU22は、LED表示部23による本表示を行う前に、この本表示を予告する事前表示を行うことができる。
CPU22は、LED表示部23に対し、表示パターンを所定時間に渡って本点灯させる前に、該本点灯を予告する点滅動作を所定の複数時点で実行させるように制御する。
例えば、本点灯5分前に5回予告灯点滅を行い、2分前に2回予告灯点滅を行い、1分前に、1回予告灯点滅を行い、3秒前に1秒毎にカウントダウンで点滅させるように、予告表示する。
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る鉄構造物の応力監視装置の動作を示すフローチャートである。以下、図1〜5を参照しながら、図6に示すフローチャートを使用して、本実施の形態に係る鉄構造物の応力監視装置の動作を説明する。
まず、ステップS1では、CPU22は、セルフテスト(サブルーチン)にて、応力監視装置(および応力監視用カプセル型ひずみゲージ)の機能を自己診断する。この部分は発明の構成要件には直接関係しないノウハウ事項につき、ここでは説明を省略する。
ステップS2では、CPU22は、ステップ1における自己診断をパスしたか否かを検証し、上記自己診断をパスした場合はステップS3のサブルーチンの計測制御に進み、上記自己診断をパスしていない場合はステップS6に移る。
ステップS3では、CPU22は、計測制御(サブルーチン、後述)にて、開始トリガ判定後のひずみ量の計測を所定回数(ここでは最大7回)だけ実施する。
ステップS5では、CPU22は、計測データの登録を行う。具体的には、計測した応力データ(ひずみ量のデータ)をメモリ部222およびUSB224に記憶させる。
ステップS6では、CPU22が、エラー情報の登録を行う。具体的には、計測時のエラー状況に応じたエラー情報をメモリ部222およびUSB224に記憶させる。その後、ステップS7に移る。
図7は、計測制御(サブルーチン)における動作を示すフローチャートである。以下、図1〜6を参照しながら、図7に示すフローチャートを使用して、計測制御(サブルーチン)における動作を説明する。
まず、ステップS21では、CPU22は、所定のサンプリング周波数(例えば、200〔Hz〕)にて、ひずみゲージ10から、ひずみゲージAMP21、A/D変換部221を順に介してひずみ量のデータ(応力データ)の取得を開始する。
次に、ステップS22では、CPU22は、A/D変換部221を介して取得したひずみ量の値が所定の開始トリガレベル(設定値)を超えたか否かを検証する。該ひずみ量の値が所定の開始トリガレベル(例えば、図3における列車通過判定レベル:L)を超えた場合は、ステップS23に進む。また、該ひずみ量の値が所定の開始トリガレベルLを超えていない場合はステップS25に進む。
ステップS24では、CPU22は、7回繰り返す計測が完了したか否かを検証し、上記7回の計測が完了している場合は直ちにメインルーチンに復帰する。さもなくば、上記7回の計測が完了していない場合はステップS21に戻り、ステップS22、ステップS23を続行する。
ステップS25では、CPU22は、ステップS21のデータ収録を開始してから20分が経過したか否かを検証し、上記20分が経過している場合は直ちにメインルーチンに復帰する。上記20分が経過していない場合はステップS21に戻る。
同図8に示す鉄構造物の応力監視用カプセル型ひずみゲージは、図1に示すひずみゲージ10(溶接型ひずみゲージ)である。
同図に示す鉄構造物の応力監視用カプセル型ひずみゲージは、先端部が封じられたシースチューブ103内に充填された絶縁物からなる粉体により上記シースチューブ103内に保持されたひずみ感応抵抗体部(図示せず)を有するセンサ部101を備える。また、薄肉で細長い矩形状を呈し長手方向の中心に沿って前記シースチューブ103に固着されたフランジ部100と、薄肉でフランジ部100より大きな矩形状を有し、当該フランジ部と重なり合う中央線に沿った部分を、溶接により固着されたゲージ取付板102(ゲージ溶接板)と、を備えて構成されている。
ゲージ取付板102は、応力を測定すべき鉄構造物の被測定個所に接着により固着し得るように構成しているが、このような固着方法によれば、鉄構造物の被測定個所を傷つけることを回避することができる。
まず、ゲージ取付板102を、当該被測定個所に位置付け、接着剤により固着する。その後、全体を樹脂で被覆する。より具体的には、ゲージ取付板102とフランジ部100とセンサ部101の表面およびゲージ取付板102周辺近傍の当該被測定個所を含めてビスフェノールA型液状エポキシ樹脂20〜30%とポリメルカプタン70〜80%とからなるコンパウンド(商品名:デナズディックスチール)を混合したものを3〜5分以内に盛り付け、被覆するように塗布する。その後、所定時間の経過により硬化させる。このように施工することにより、ひずみゲージ10(すなわち本発明の第3の実施の形態に係る鉄構造物の応力監視用カプセル型ひずみゲージ)を当該被測定個所に強固に取り付けることができる。
上記のようにして、塗布された被覆材は、シェア硬度がD75〜85、比重2.2、圧縮強度が80〜100N/mm2、使用上限温度が150℃に及ぶなど、優れた固着手段であるといえる。
第2の実施の形態に係る鉄構造物の応力監視用カプセル型ひずみゲージによれば、応力監視装置20の筐体201には、防水機能を付与しているので風雪や高湿度環境に耐え、必要な耐用年数(例えば、8年以上)を確保することができる。また、ひずみゲージを橋梁等の鉄構造物に取り付ける施工方法として、被監視対象である橋梁等の鉄構造物に対してはボルト穴を開けることや溶接を施工することは回避し、接着材による接着を行うので、該構造物に何等の損傷も与えることがない。よって、この種の建造物に適用される厳しい施工規則上の制限をクリアすることができる。
また、応力監視装置20のCPU22は、ひずみゲージ10から採取する監視データが、実際に車両が通過した時間帯を確実に含めたデータとなるように制御するので、実際の負荷状態での応力監視を的確に行うことができる。
さらに、応力監視装置20のCPU22は、LED表示部23の表示方法として、被監視対象である橋梁等の鉄構造物に発生している応力のレベルが遠くからでも肉眼により、または、双眼鏡を覗くことにより、一目で視認して把握できるような工夫をしているので、金属疲労等に起因した亀裂等の重大な異常発生の場合も含めて、上記鉄構造物の状態を確実に把握することができる。
次に、図10〜図17を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る鉄構造物の応力監視装置を含むシステムの全体構成を示すブロック図であり、図11は、図10の鉄構造物の応力監視装置に付属する照射器の構成を示すブロック図である。
図12は、図10の鉄構造物の応力監視装置に内蔵され、照射器から所定の照射パルスを受けたとき、LED表示器を点灯駆動する機能を付加した表示部の構成を示すブロック図である。
図14は、図10に示す鉄構造物の応力監視装置における照射器と、表示部との間の動作を示すフローチャートである。
図15は、照射器のパルス光の照射により表示部を表示させる方式を採用してなる本発明の第3の実施の形態に係る鉄構造物の応力監視装置の構成を示す斜視図である。
図16は、図10の第3の実施の形態に係る鉄構造物の応力監視装置の外観構成を示す正面図である。
図17は、図10の鉄構造物の応力監視装置に付属する照射器の外観構成を示すもので(a)は、正面図、(b)は、右側面図である。
図10において、ひずみアンプ(ひずみ増幅器)21、CPU(処理部)22、電源部(電池電源部)24および発振器25は、図1の第1の実施の形態に係る鉄構造物の応力監視装置のひずみアンプ21、CPU22、電源部24および発振器25とそれぞれ共通であるので、上述したところを援用し、その説明を省略する。
CPU22は、上記増幅されたひずみ量を示す信号(アナログ量)のレベルを所定の周期で監視し、これをA/D変換部221でディジタル量に変換した結果(応力データ)をメモリ部222に履歴として記憶させる(すなわち応力データを収録する)と共に、予め指定された複数段の基準値に基づいて上記応力データに示されている上記信号レベルを比較部223によって段階的に比較し、その結果をLED表示部33に表示する。
このLED表示部33は、図1のLED表示部23とは、その駆動方法が異なっている。
即ち、LED表示器331は、付属の照射器41から、所定時間に所定回数のパルス光(レーザ光)を受光したときに限り、発光表示するように構成されている。従って、この方式を、ここでは、「レーザ光スイッチ方式」と称することとし、図1に示す第1の実施の形態の方式を、定時点灯方式と称することとする。
このような表示方法については、第1の実施の形態と共通するところである。
図10および図11を参照して、照射器41について説明すると、電源として例えば、アルカリ電池を用いる。このアルカリ電池411から出力される電源電圧は、電源制御部412によって適宜電圧(この例では、5V)に昇圧して安定化される。
この電源制御部412からの通電を受けて、所定時間(この例の場合、0.5秒間)に所定回数(この例の場合、4回)のオン/オフを繰り返すようにレーザ発光素子414を駆動制御する。
上記照射器41から射出されるレーザ光は、応力監視装置20本体側の表示部33の受光部341が受光し、一定の条件のもとに、LED発光器331を発光させることになる。
即ち、射出器41からのレーザ光を受信する受光部341は、光検出ICにてパルス信号に変換し、受光回数をカウントして、所定回数(この例の場合、4回)のパルスを受信することにより、電源制御部343に起動信号を出力する。
電源制御部343は、受光部341からの起動信号にて、リチウム電池342の電源電圧を安定化し、スイッチ344をオンとして、LED表示器331を、上述した要領にて、点灯駆動する。
即ち、LED表示器331は、電源制御部343から電源を供給されると、過去に、CPU22から送信された最大測定振幅値に相当するLEDパターンを一定時間表示させた後、休止状態となるので、電池の通電時間は、極めて短縮され、延いては、長寿命化(例えば、8年)が図られることになる。
受光部341は、図15、図16等に示すように、応力監視装置20の正面のやや右寄りに設けられており、図17に示す照射器41の照射口411aを受光部341に向けた状態で照射器41の電源スイッチ412aをONとすることで、レーザ発光素子414から、レーザ光を照射し、これを表示部33の受光部341が受光することで表示の起動が開始する。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る鉄構造物の応力監視装置の表示動作を図14のフローチャートを参照して説明する。
先ず、ステップ31では、照射器41の電源スイッチ412aをONとする。
すると電源制御部412が、アルカリ電池411の電源電圧を5Vに昇圧して安定化させ照射制御回路413に電源を供給する。照射制御回路413が、0.5秒間に4回のON/OFFを繰り返すようにレーザ発光素子414を制御するステップS32では、照射口411aから対象となる応力監視装置20の受光部341の中央へレーザ光を照射する。
この状態は、図13(a)に示すように約0.5秒間タイマーが動作中に、レーザ光を検出したカウンタが4回カウントした場合のように、正常動作が行われた場合である。
ステップS36では、集録された応力データの最大測定振幅値を集録すると共に、当該最新の最大測定振幅値が該当する段階のアラーム信号をもって複数の警告パラメータのいずれかを駆動表示するので、監視人は、応力監視装置20の近くに行き、直接肉眼でLED表示器331を視認し、あるいは、応力監視装置に近づけない環境にあるときは、双眼鏡(単眼鏡でもよい)により確認することができる。ステップ37では、リチウム電池342の節約のために、電源制御部343は、最大応力値に相当するLED表示パターンを一定時間表示後、休止状態とする。
この第3の実施の形態に係る鉄構造物の応力監視装置において、4回のカウントをしないと表示動作を行わないようにした理由は、次の通りである。
その理由は、部外者が、本装置をイタズラして情報の漏減や電源を消耗することを防ぐために、照射条件を0.5秒間に4回のパルス光を受光したときのみ、本装置の表示部33が起動して、LED表示器331を点灯させ過去の最大値を記録表示しているのである。
回数については、必ずしも4回でなくてもよいが、実験を繰り返し、試行錯誤の結果、4回を最適値とした。
この回数が多いと誤動作ばかりとなり、少なすぎると、外乱光でも反応し易くなるという、問題もある。
また、操作者が照射器41を持って照射するとき手ブレによって、受光部341の中心からズレて照射の失敗を来たすことも考慮に入れて設定する必要もある。
上記基準値の設定の尺度として、金属疲労に起因する亀裂あるいは疲労限度との関連性を持たせるようにしてもよい。
金属材料が繰り返し荷重を受けると、静的な破壊荷重よりもはるかに小さい荷重でも破壊する、という現象があり、これを一般に金属疲労と称されている。
鉄鋼系材料であれは、106から107回ほど繰り返したところで、S−N曲線がほぼ横ばいになり、それ以下の応力では何度回数を繰り返しても破断しないと考えられる応力振幅の限界点が存在する場合がある。この時の応力振幅を疲労限度(fatigue limit)または耐久限度(endurance limit)と呼び、長期間変動荷重に晒されるものを設計する際の目安になる。
このような多くの影響因子を考慮して、実験を繰り返し、上記基準値を定め、鉄構造物の応力監視装置を用いて実測することにより、微細な亀裂を発見したり、疲労限度または耐久限度を見極めたりするのに有効である。
20 応力監視装置
30 データ回収ユニット
21 ひずみAMP
22 CPU
23 LED表示部
24、35 電源部
25 発振器
33 表示部
331 LED表示部
34 表示駆動部
341 受光部
342 リチウム電池
343 電源制御部
344 スイッチ
41 照射部
411 アルカリ電池
411a 照射口
412 電源制御部
412a スイッチ
413 照射制御回路
414 レーザ発光素子
100 フランジ部
101 センサ部
102 ゲージ取付板
103 シースチューブ
104 鉄構造物
201 筐体
221 A/D変換器
222 メモリ部
223 比較部
224 USB(メモリ)
Claims (6)
- 鉄構造物の被測定個所に接着され該被測定個所に生ずる応力を電気信号に変換して検出するカプセル型ひずみゲージと、
前記カプセル型ひずみゲージで検出した検出信号を増幅、A/D変換を施して得られた応力の検出値と基準値との比較判定処理を司る処理部と、
前記処理部からの出力データを記録する記録部と、
前記処理部または前記記録部からの出力を受けて判定結果を表示する表示部と、
前記カプセル型ひずみゲージ、前記処理部、前記記録部の各部に電源を供給する電池電源部と、
前記処理部、前記記録部、前記表示部、前記電池電源部を収容する筐体部と、を有し、
前記処理部は、
所定の監視時間帯において所定回数に亘り応力測定を繰り返し実行して、データを前記記録部に記録し、
前記所定の監視時間帯において記録されたデータのうち、最大振幅値と最小振幅値との差である最大測定振幅値を複数段の基準値と比較して、前記複数段の基準値のうち、いずれかの基準値を越えた最大測定振幅値を前記記録部に記録すると共に、
当該最大測定振幅値が、過去に記録された最大測定振幅値を上回ったときは、当該過去に記録された最大測定振幅値を更新して前記記録部に記録すると共に、
前記表示部に対し、本点灯を予告する点滅動作を複数の時点で実行させた後、当該最大測定振幅値が該当する段階のアラーム信号をもって複数の警告パラメータのいずれかを所定時間駆動表示させて本点灯を実行させるよう制御することで、
鉄構造物に負荷される応力を長期に亘って監視するように構成したことを特徴とする鉄構造物の応力監視装置。 - 前記所定の監視時間帯は、一日のうち少なくとも1列車編成の列車が通過する限られた時間帯に割り当てられ且つ複数日に一回の周期で割り当てられた時間帯であることを特徴とする請求項1に記載の鉄構造物の応力監視装置。
- 前記表示部は、n個の表示素子が縦列状に配設され、前記n個の表示素子のうち点灯位置および点灯個数との組み合わせで複数の警報パターンを設定しておき、当該警報パターンによって前記最大測定振幅値のレベルの大きさを視認し得るように構成したことを特徴とする請求項1に記載の鉄構造物の応力監視装置。
- 前記表示部は、4個のLED素子が縦列状に配設されてなり、前記最大測定振幅値のレベルによって点灯位置および点灯個数を変更するものであって、
前記最大測定振幅値のレベルが段階的に高くなるについて、以下のように10段階で点灯位置および点灯個数を設定してなることを特徴とする請求項1または3に記載の鉄構造物の応力監視装置。
1段階(点灯が必要な最低レベル)で、1段目(最下段)を点灯。
2段階:2段目を点灯。
3段階:3段目を点灯。
4段階:4段目(最上段)を点灯。
5段階:1段目と2段目とを点灯。
6段階:1段目と3段目とを点灯。
7段階:1段目と4段目とを点灯。
8段階:2段目と3段目とを点灯。
9段階:2段目と4段目とを点灯。
10段階(最高レベル):3段目と4段目とを点灯。 - 前記筐体部は、前記処理部、前記記録部、前記表示部、前記電池電源部を外部から隔絶するように収容し、正面側の一部を透明または半透明の部材で構成し、前記表示部の表示パターンを正面側より視認し得るように構成したことを特徴とする請求項1に記載の鉄構造物の応力監視装置。
- レーザ発光素子と、
所定時間に所定回数のパルス光を発光するように前記レーザ発光素子を駆動制御する照射制御回路と、
前記レーザ発光素子と前記照射制御回路を駆動する電源電池からなる照射器を、前記応力監視装置とは別途に備え、
前記表示部は、前記照射器の前記レーザ発光素子からのパルス光を受光部で受け且つ当該パルス光のパルス数を計数し、当該パルス光が所定時間内に所定回数に達したことを認知したときに限り、前記表示部を駆動制御する電源制御部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の鉄構造物の応力監視装置。
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