JP4045094B2 - 車両の走行状態監視方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、曲線区間において、軌道側から軌道や車両の状態を常時監視し、軌道や車両の定期的なメンテナンスや修理の参考に供する車両の走行状態監視方法及びこの方法を実施するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば急制動により車輪の外周部が削れてフラット部が発生すると、軌道の上下振動が大きな衝撃的な振動を伴うようになり、乗り心地を悪化させたり、軌道状態を悪化させたりする。そこで、車輪フラットを検知した場合には車輪を削正することとしている。
【0003】
また、近年、曲線区間における走行の安全性を向上するため、内軌側のレール頭頂面に摩擦係数を下げるための潤滑剤を塗布しているが、内軌側のレール頭頂面に塗布した潤滑剤の効果が切れてくると、車輪とレール間の摩擦係数が大きくなってくる結果、横圧や騒音が増加するようになる。特に急曲線区間において横圧が大きくなると、脱線の危険性が高くなったり、車輪のフランジ部の摩耗が大きくなる原因になる。
【0004】
ところで、前記した潤滑剤の塗布は、現在はただ車両が一定本数通過する度(走行密度)に行なっているだけであるが、車輪とレール間の摩擦係数は車両の走行密度のみならず、天候や気温などに依存するところが大きい。従って、現在の車両の走行密度だけに基づいた潤滑剤の塗布では、摩擦係数を当初の目的とする適正な一定の値に管理することは至難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、軌道側で車両の状態を測定するには、測定準備のためにレールにセンサーや計測器を設置する必要があり、その都度、夜間終車後に作業を行なう必要がある。また、車両が通過する測定時においては非常な危険を伴うものであった。
【0006】
加えて、前記した測定は、ある瞬間における車両の特定部位の状態を測定するものであり、継続した測定を行なっているのではないことから、車両の安全に関わる諸元の状態変化を追跡するまでには至っていない。従って、異常な状態になっても気付かなかった。
【0007】
また、前記した測定では、測定されたデータはただ記録されるのみで、そのデータを基にした状態の推定や異常原因の調査は、特定の知識をもった人間が一度記録計に取り込んだデータを持ち帰って解析を行ない、過去の経験と勘を基に判断していたので、適正な判断を行なうためには長年の経験と技術が必要であった。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、曲線区間において軌道側から軌道と車両の状態を常時監視して車両の走行状態を監視する方法及び装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明に係る車両の走行状態監視装置は、軌道の曲線区間の地上側に設置した、少なくとも輪重・横圧測定センサーと、車両特定認識信号及び/又は走行車両監視テレビと、これら計測器を用いて計測したデータを自動的に遠隔地に一括して転送する転送手段と、この転送手段によって転送されてきたデータを解析する解析器を備えると共に、前記解析器による解析結果に基づき、潤滑状態が悪化していると判断した場合には、車両に潤滑剤の塗布指令を出す指示器を設けたこととしている。
【0010】
そして、このような構成の本発明に係る車両の走行状態監視装置を用い、軌道の曲線区間の地上側に設置した少なくとも輪重・横圧測定センサーによって車両の通過時に自動的に計測した車両走行時の輪重・横圧データと、当該車両を特定するための車両特定認識信号及び/又は走行車両監視テレビ信号を一括して遠隔地に転送し、遠隔地においてこの転送されてきたデータを解析することで、常に軌道や車両の状態を監視するに際し、転送されてきた前記データから車輪とレール間の潤滑状態を解析し、潤滑状態が悪化していると判断した場合には、車両に潤滑剤の塗布指令を出すことで、車輪とレール間の潤滑状態を常に最適に維持することできるようになる。これが本発明に係る車両の走行状態監視方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
曲線区間における軌道や車両の状態を常時監視するためには、車両の通過時毎に軌道側でデータを無人で測定し、かつ、この測定したデータを遠隔の解析場所まで自動的に転送する必要がある。そして、転送されてきた測定データに基づいて、経時的変化を自動的に解析し、今後の状態を推定したり、また、異常データを検出し、その異常の発生原因を推定するには、前記転送されたデータを人間が解析するのではなく、コンピュータがデータを自動的に解析し、前記した推定を行なうような処理が必要になる。
【0012】
加えて、異常データを検出した場合には、その異常車両を特定するために車両特定認識信号や走行車両監視テレビ信号を測定データと併せて一括で転送する必要があり、測定、解析されたデータから、今後の状態を予測し、最適な補修計画の策定指示を行うためには、データの蓄積と経年変化の分析が必要になってくる。
【0013】
本発明に係る車両の走行状態監視方法は、上記した考え方に基づいてなされたものであり、軌道の曲線区間の地上側に設置した少なくとも輪重・横圧測定センサーによって車両の通過時に自動的に計測した車両走行時の輪重・横圧データと、当該車両を特定するための車両特定認識信号及び/又は走行車両監視テレビ信号を一括して遠隔地に転送し、遠隔地においてこの転送されてきたデータを解析することで、常に軌道や車両の状態を監視するに際し、転送されてきた前記データから車輪とレール間の潤滑状態を解析し、潤滑状態が悪化していると判断した場合には、車両に潤滑剤の塗布指令を出すものである。これにより、車輪とレール間の潤滑状態を常に最適に維持することができるようになる。これが本発明に係る車両の走行状態監視方法である。
【0020】
そして、この本発明に係る車両の走行状態監視方法は、軌道の曲線区間の地上側に設置した、少なくとも輪重・横圧測定センサーと、車両特定認識信号及び/又は走行車両監視テレビと、これら計測器を用いて計測したデータを自動的に遠隔地に一括して転送する転送手段と、この転送手段によって転送されてきたデータを解析する解析器を備えると共に、前記解析器による解析結果に基づき、潤滑状態が悪化していると判断した場合には、車両に潤滑剤の塗布指令を出す指示器を設けた本発明に係る車両の走行状態監視装置を用いて実現が可能である。
【0021】
【実施例】
以下、本発明に係る車両の走行状態監視装置を図1に示す1実施例に基づいて説明し、この本発明に係る車両の走行状態監視装置を用いた本発明に係る車両の走行状態監視方法を図2及び図3を用いて説明する。
図1は本発明に係る車両の走行状態監視装置の1実施例の概略構成を示した図、図2は図1に示した構成の本発明に係る車両の走行状態監視装置を用いた本発明に係る車両の走行状態監視方法の解析処理の流れを説明する図、図3は測定した外軌側と内軌側の輪重及び横圧、軌道振動、騒音を説明した図である。
【0022】
図1において、1aは本線の曲線区間であり、例えば外軌側と内軌側のそれぞれのレールの側面には歪ゲージ2が貼付され、車両3がこの曲線区間1aを通過したときに、それぞれのレールに作用する輪重Pと横圧Qを測定できるようになっている。
【0023】
また、この曲線区間1aには振動計(図示省略)と騒音計4とアタック角測定センサー(図示省略)及びビデオカメラ又は車両特定認識装置5も設置され、車両3がこの曲線区間1aを通過したときの軌道振動(振動加速度)と騒音及びアタック角を測定するとともに、車両特定認識装置からの信号や通過した車両3の前面に記載された車両番号を撮影してこの曲線区間1aを通過した車両3を特定できるようになっている。
【0024】
6aは前記曲線区間1aに設置された記録計であり、この曲線区間1aを車両3が通過したときの輪重などをトリガとして自動的に記録を開始し、歪ゲージ2、振動計、騒音計4、アタック角測定センサーで測定した輪重P、横圧Q、軌道振動(振動加速度)、騒音、アタック角の各データを取り込み、車両3が測定地点を通過し終わると、記録を停止する。
【0025】
そして、この記録計6aは前記取り込んだデータを例えばA/D変換してデジタルデータとして記録する一方、このデジタルデータをデータ転送用のコンピュータ7aに送信する。
【0026】
このコンピュータ7aには、車両特定認識信号やビデオカメラ5で撮影した車両番号も取り込まれるようになっており、1編成の車両3が通過すると、このコンピュータ7に取り込まれたデータは直ちに例えば光ケーブルなどのネットワーク10で繋がった解析場所8にあるデータ受信用のコンピュータ9に自動的に転送され、データベース11に蓄積される。
【0027】
1bは車両基地などの直線でかつ水平の区間であり、この直線水平区間1bのレールの側面にも前記したのと同様に歪ゲージ2が貼付され、車両3がこの直線水平区間1bを通過するときに、2本のレールに作用する各輪重Pを測定できるようになっている。
【0028】
そして、これらの輪重Pの測定データは直線水平区間1bに設置された記録計6bに取り込まれ、例えば車両番号と一緒にA/D変換されてデジタルデータとして記録する一方、このデジタルデータをデータ転送用のコンピュータ7bを介してネットワーク10で繋がった解析場所8にあるデータ受信用のコンピュータ9に自動的に転送され、データベース11に蓄積される。
【0029】
以下、解析場所8にあるデータ受信用のコンピュータ9の解析処理の流れを図2を用いて説明する。
データ受信用のコンピュータ9では、上記したようにデータ転送用のコンピュータ7a,7bから転送されてきたデータを解析することで、計測位置における曲線区間1aの軌道や車両3の状態を監視する。
【0030】
例えば、2軸台車を例にとると、台車には各2輪ずつ4個の車輪が配置されているので、1両の車両が計測位置における曲線区間1aを通過した時には、当該計測地点では、図3に示したように、4つずつの輪重(図3(a)(b))、横圧(図3(c)(d))、振動(図3(e))、騒音(図3(f))、アタック角(図示省略)等が計測されることになる。
【0031】
そして、これらの計測されたデータをコンピュータ9で解析することで、車両特定認識信号やビデオカメラ5の撮影画像によって特定された当該車両3或いはその計測地点の軌道状態を監視するのである
【0032】
具体的には、例えば、車両3ごとにデータベース11に蓄積したデータと、今回計測されたデータを比較し、これらのデータをもとに当該測定地点の軌道や車両3の経時変化を解析し、今後の状態を推定するのである。なお、この推定は今後の当該車両や当該計測地点における軌道の補修計画に反映させることは言うまでもない。
【0033】
また、図2に示したように、車両3ごとにデータベース11に蓄積したデータと、今回計測されたデータを比較し解析することで、当該測定地点の軌道や当該車両3の異常データを検出し、この検出した異常データから異常の発生原因を推定するのである。
【0034】
例えば今回計測されたデータのうちの輪重Pや横圧Qが前後に配置された台車で異なっていたり、これら計測した輪重Pと横圧Qから計算した脱線係数(Q/P)が異常に大きくなっていたり、図3(e)に示したように、振動が異常に突出している箇所があったり、図3(f)に示したように、騒音が異常に大きくなる箇所がある場合には、計測時の当該車両3の速度を考慮に入れて、車両特定認識信号やビデオカメラ5の撮影画像によって特定された当該車両3或いはその計測地点の軌道状態に異常が発生したと判断し、異常の発生原因を推定するのである
【0035】
より具体的には、例えば輪重Pや横圧Qが、前後に配置された台車で異なっていると判断した場合には、台車の臨時検査を行なう旨の指示を出す。また、車両3の速度と脱線係数Q/Pから脱線の虞があると判断した場合には、警報を発して脱線注意の指令を出す。また、振動が異常に突出している箇所があり、車輪にフラット部が発生していると判断した場合には、警報を発して車輪を削正する旨の指令を出すのである。
【0036】
また、今回計測されたデータのうちの、例えば内軌側の横圧Qから求めた摩擦係数や騒音及び車両3の速度から当該測定位置におけるレールと車輪間の潤滑状態を解析し、潤滑状態が悪化していると判断した場合には、警報を発して車両3に潤滑剤の塗布指令を出すのである。これが請求項に係る本発明装置を使用した請求項に係る本発明方法である。
【0037】
上記した実施例では、データを解析する解析器や、蓄積したデータから軌道や車両3の経時変化を解析し、今後の状態を推定する解析・推定装置や、データを蓄積されたデータと比較し解析することで、軌道や車両の異常データを検出し、この検出した異常データからこの異常発生の原因を推定する比較解析・推定装置や、潤滑剤の塗布指令を出す指示器を全てコンピュータ9で行なうものを示したが、これらを別個の装置で行なうようにしても良いことは言うまでもない。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、車両通過時の軌道側の測定データを常に取り込んで、自動的に解析場所に転送し、走行状態を監視するので、以下効果を奏する。
【0040】
輪とレール間の潤滑状態を常時観察し、適正な潤滑が行なえるので、摩擦係数の増加を未然に防止でき、最適な状態を維持することで、車両の安全を維持管理できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両の走行状態監視装置の1実施例の概略構成を示した図である。
【図2】図1に示した構成の本発明に係る車両の走行状態監視装置を用いた本発明に係る車両の走行状態監視方法の解析処理の流れを説明する図である。
【図3】測定した外軌側と内軌側の輪重及び横圧、軌道振動、騒音を説明した図である。
【符号の説明】
1a 曲線区間
1b 直線平区間
2 歪ゲージ
3 車両
4 騒音計
5 ビデオカメラ又は車両特定認識装置
6a 記録計
6b 記録計
7a コンピュータ
7b コンピュータ
9 コンピュータ
10 ネットワーク
11 データベース

Claims (2)

  1. 軌道の曲線区間の地上側に設置した少なくとも輪重・横圧測定センサーによって車両の通過時に自動的に計測した車両走行時の輪重・横圧データと、当該車両を特定するための車両特定認識信号及び/又は走行車両監視テレビ信号を一括して遠隔地に転送し、遠隔地においてこの転送されてきたデータを解析することで、常に軌道や車両の状態を監視するに際し、
    転送されてきた前記データから車輪とレール間の潤滑状態を解析し、潤滑状態が悪化していると判断した場合には、車両に潤滑剤の塗布指令を出すことを特徴とする車両の走行状態監視方法
  2. 軌道の曲線区間の地上側に設置した、少なくとも輪重・横圧測定センサーと、
    車両特定認識信号及び/又は走行車両監視テレビと、
    これら計測器を用いて計測したデータを自動的に遠隔地に一括して転送する転送手段と、
    この転送手段によって転送されてきたデータを解析する解析器を備えると共に、
    前記解析器による解析結果に基づき、潤滑状態が悪化していると判断した場合には、車両に潤滑剤の塗布指令を出す指示器を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両の走行状態監視方法を実施する装置
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