JP6798633B1 - ポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルム/基材積層体 - Google Patents

ポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルム/基材積層体 Download PDF

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【課題】反りの小さいポリイミドフィルム/基材積層体を製造することが可能で、且つ安定性に優れたポリイミド前駆体組成物および、ポリイミドフィルム/基材積層体およびフレキシブル電子デバイスの製造方法の提供。【解決手段】式(I)で表されるポリイミド前駆体、前記ポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルに対して、0.01モル超から1モル未満の範囲の量で含有され、且つ2−フェニルイミダゾールおよびベンゾイミダゾールから選ばれる少なくとも1つのイミダゾール化合物、および溶媒を含有することを特徴とするポリイミド前駆体組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、例えばフレキシブルデバイスの基板等の電子デバイス用途に好適に使用されるポリイミド前駆体組成物および反りが低減されたポリイミドフィルム/基材積層体に関する。加えて、前記組成物を使用するフレキシブル電子デバイスの製造方法に関する。
ポリイミドフィルムは、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、電気特性、寸法安定性などに優れていることから、電気・電子デバイス分野、半導体分野などの分野で広く使用されてきた。一方、近年、高度情報化社会の到来に伴い、光通信分野の光ファイバーや光導波路等、表示装置分野の液晶配向膜やカラーフィルター用保護膜等の光学材料の開発が進んでいる。特に表示装置分野で、ガラス基板の代替として軽量でフレキシブル性に優れたプラスチック基板の検討や、曲げたり丸めたりすることが可能なディスプレイの開発が盛んに行われている。
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのディスプレイでは、各ピクセルを駆動するためのTFT等の半導体素子が形成される。このため、基板には耐熱性や寸法安定性が要求される。ポリイミドフィルムは、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、電気特性、寸法安定性などに優れていることから、ディスプレイ用途の基板として有望である。
ポリイミドは、一般に黄褐色に着色しているため、バックライトを備えた液晶ディスプレイなどの透過型デバイスでの使用には制限があったが、近年になって、機械的特性、熱的特性に加えて透明性に優れたポリイミドフィルムが開発されており、ディスプレイ用途の基板としてさらに期待が高まっている(特許文献1〜3参照)。
一般に、フレキシブルなフィルムは平面性を維持するのが難しいため、フレキシブルなフィルム上にTFT等の半導体素子、微細配線等を均一に精度良く形成することは困難である。例えば、特許文献4には、「特定の前駆体樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜して固体状のポリイミド樹脂膜を形成する工程、前記樹脂膜上に回路を形成する工程、前記回路が表面に形成された固体状の樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程の各工程を含む、表示デバイス又は受光デバイスであるフレキシブルデバイスの製造方法」が記載されている。
また、特許文献5には、フレキシブルデバイスを製造する方法として、ガラス基板上にポリイミドフィルムを形成して得られたポリイミドフィルム/ガラス基材積層体上に、デバイスに必要な素子および回路を形成した後、ガラス基板側からレーザを照射して、ガラス基板を剥離することを含む方法が開示されている。
特許文献6には、テトラカルボン酸成分およびジアミン成分の一方が脂環構造を有する化合物でもう一方が芳香族環を有する化合物に由来する繰り返し単位を含むポリイミド前駆体組成物とイミダゾール化合物を含有するポリイミド前駆体組成物、およびこのポリイミド前駆体組成物を使用してポリイミドフィルム/ガラス基材積層体を製造することが開示されている。特許文献6の発明で得られるポリイミドフィルムは、厚み方向位相差(リタデーション)が小さく、機械的特性にも優れ、さらに透明性にも優れている。
国際公開第2012/011590号公報 国際公開第2013/179727号公報 国際公開第2014/038715号公報 特開2010−202729号公報 国際公開第2018/221607号公報 国際公開第2015/080158号公報
特許文献4、5の方法を実際の製造に適用する場合、ポリイミドフィルム/ガラス基材積層体に反りが生じて、素子を精度よく形成するのが困難になったり、ハンドリング性が低下したりする場合がある。特に大型ガラス基板を使用する場合、具体例として例えば大型のフレキシブル電子デバイス(例えば、大型表示装置)や一つの基板から複数のフレキシブル電子デバイス(例えば、表示装置)を製造するいわゆる多面取り工法に適用する場合において、反りが無視できない程度まで拡大することがある。
特許文献6の発明によれば、前述のとおり特性に優れたポリイミドフィルムが得られるが、ポリイミドフィルム/ガラス基材積層体の反りの問題、ポリイミド前駆体組成物の安定性の問題、およびそれらを解決する組成の開示はない。
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたものであり、主要な目的は、反りの小さいポリイミドフィルム/基材積層体を製造することが可能で、且つ安定性に優れたポリイミド前駆体組成物を提供することである。さらに本発明の一態様の目的は、前記ポリイミド前駆体組成物を使用して得られるポリイミドフィルム、およびポリイミドフィルム/基材積層体を提供することであり、さらに本発明の異なる一態様の目的は、前記ポリイミド前駆体組成物を使用するフレキシブル電子デバイスの製造方法、およびフレキシブル電子デバイスを提供することである。
本出願の主要な開示事項をまとめると、以下のとおりである。
1. 下記一般式(I)で表されるポリイミド前駆体、
前記ポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルに対して、0.01モル超から1モル未満の範囲の量で含有され、且つ2−フェニルイミダゾールおよびベンゾイミダゾールから選ばれる少なくとも1つのイミダゾール化合物、および
溶媒
を含有することを特徴とするポリイミド前駆体組成物。
Figure 0006798633
(一般式I中、Xは4価の脂肪族基または芳香族基であり、Yは2価の脂肪族基または芳香族基であり、RおよびRは互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜9のアルキルシリル基であり、但し、Xの70モル%以上が、式(1−1):
Figure 0006798633
で表される構造であり、Yの70モル%以上が、式(D−1)および/または(D−2):
Figure 0006798633
で表される構造である。)
2. このポリイミド前駆体組成物から得られるポリイミドフィルムが、厚さ10μmのフィルムでの波長400nmの光透過率が75%以上であることを特徴とする上記項1に記載のポリイミド前駆体組成物。
3. このポリイミド前駆体組成物から得られるポリイミドフィルムが、厚さ10μmのフィルムの破断伸度が10%以上であることを特徴とする上記項1または2に記載のポリイミド前駆体組成物。
4. Xの90モル%以上が、前記式(1−1)で表される構造であることを特徴とする上記項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。
5. 前記ポリイミド前駆体組成物をシリコンウェハ上に塗布してイミド化し、10μm厚のポリイミドフィルム/シリコンウェハ積層体を製造し、このポリイミドフィルム/シリコンウェハ積層体を用いて80℃以上、ガラス転移温度および分解温度の低い方の温度未満の範囲の複数の温度において求めたポリイミドフィルムとシリコンウェハ間の残留応力を直線近似したとき、23℃における残留応力が27MPa未満となるポリイミドフィルムを与える上記項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。
残留応力を測定する前記複数の温度として、例えば150℃、140℃、130℃、120℃および110℃とすることができる。
6. 上記項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物から得られるポリイミドフィルム。
7. 上記項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物から得られるポリイミドフィルムと、
基材と
を有することを特徴とするポリイミドフィルム/基材積層体。
8. 前記基材が、ガラス基板である上記項7に記載の積層体。
9. (a)上記項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物を、基材上に塗布する工程、および
(b)前記基材上で前記ポリイミド前駆体を加熱処理し、前記基材上にポリイミドフィルムを積層する工程
を有するポリイミドフィルム/基材積層体の製造方法。
10. 前記基材が、ガラス基板である上記項9に記載の製造方法。
11. (a)上記項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物を、基材上に塗布する工程、
(b)前記基材上で前記ポリイミド前駆体を加熱処理し、前記基材上にポリイミドフィルムが積層されたポリイミドフィルム/基材積層体を製造する工程、
(c)前記積層体のポリイミドフィルム上に、導電体層および半導体層から選ばれる少なくとも1つの層を形成する工程、および
(d)前記基材と前記ポリイミドフィルムとを剥離する工程
を有するフレキシブル電子デバイスの製造方法。
12. 前記基材が、ガラス板である上記項11に記載の製造方法。
13. (1)基準基材上にポリイミドフィルムが形成されたポリイミドフィルム/基準基材積層体を用意する工程、
(2)80℃以上の複数の測定温度において、前記ポリイミドフィルム/基準基材積層体の曲率半径を測定する工程、
(3)測定された曲率半径に基づいて、ポリイミドフィルム/基準基材積層体中のポリイミドフィルムと基準基材との間の測定温度における残留応力を算出する工程、および
(4)複数の測定温度における残留応力に基づいて、所定温度における残留応力を求める工程
を有するポリイミドフィルム/基材積層体の残留応力の評価方法。
14. 前記基準基材が、シリコン基板である上記項13に記載の残留応力の評価方法。
15. 前記ポリイミドフィルム/基準基材積層体の所定温度における残留応力に基づいて、ポリイミドフィルム/目的基材積層体の所定温度における反りを推定する工程
をさらに有する上記項13または14に記載の残留応力の評価方法。
16. 前記目的基材がガラス基板である上記項15に記載の残留応力の評価方法。
本発明によれば、反りの小さいポリイミドフィルム/基材積層体を製造することが可能で、且つ安定性に優れたポリイミド前駆体組成物を提供することができる。本発明のポリイミド前駆体組成物の実施形態によれば、(i)反りの小さいポリイミドフィルム/ガラス基材積層体を製造することが可能であるという効果に加え、(ii)得られるポリイミドフィルムが透明性に優れる、(iii)得られるポリイミドフィルムが破断伸度などの機械的特性に優れる、および(iv)保存安定性に優れる、という効果の1つ以上を奏し、好ましい実施形態においては(i)の効果に加えて、(ii)〜(iv)の効果の全てを奏する。
さらに本発明の一態様によれば、前記ポリイミド前駆体組成物を使用して得られるポリイミドフィルム、およびポリイミドフィルム/基材積層体を提供することができる。さらに本発明の異なる一態様によれば、前記ポリイミド前駆体組成物を使用するフレキシブル電子デバイスの製造方法、およびフレキシブル電子デバイスを提供することができる。
ポリイミドフィルム/基材積層体の反りを模式的に示す図である。 ポリイミドフィルム/基準基材積層体の残留応力を求める方法を説明するための図である。
本出願において、「フレキシブル(電子)デバイス」とは、デバイス自身がフレキシブルであることを意味し、通常、基板上で半導体層(素子としてトランジスタ、ダイオード等)が形成されてデバイスが完成する。「フレキシブル(電子)デバイス」は、従来のFPC(フレキシブルプリント配線板)上にICチップ等の「硬い」半導体素子が搭載された例えばCOF(Chip On Film)等のデバイスと区別される。但し、本願の「フレキシブル(電子)デバイス」を動作または制御するために、ICチップ等の「硬い」半導体素子をフレキシブル基板上に搭載したり、電気的に接続したりして、融合して使用することは何ら問題がない。好適に使用されるフレキシブル(電子)デバイスとしては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、および電子ペーパー等の表示デバイス、太陽電池、およびCMOS等の受光デバイスを挙げることができる。
以下に、本発明のポリイミド前駆体組成物について説明し、その後、フレキシブル電子デバイスの製造方法について説明する。
<<ポリイミド前駆体組成物>>
ポリイミドフィルムを形成するためのポリイミド前駆体組成物は、ポリイミド前駆体、イミダゾール化合物および溶媒を含有する。ポリイミド前駆体およびイミダゾール化合物はどちらも溶媒に溶解している。
ポリイミド前駆体は、下記一般式(I):
Figure 0006798633
(一般式I中、Xは4価の脂肪族基または芳香族基であり、Yは2価の脂肪族基または芳香族基であり、RおよびRは互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜9のアルキルシリル基である。)
で表される繰り返し単位を有する。特に好ましくは、RおよびRが水素原子であるポリアミック酸である。XおよびYが脂肪族基である場合、脂肪族基は好ましくは脂環構造を有する基である。
ポリイミド前駆体中の全繰り返し単位中、Xは、好ましくは70モル%以上が、以下の式(1−1)で示される構造、即ちノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2”−ノルボルナン−5,5”,6,6”−テトラカルボン酸二無水物(以下、必要によりCpODAと略す。)に由来する構造である。
Figure 0006798633
ポリイミド前駆体中の全繰り返し単位中、Yは、好ましくは70モル%以上が、以下の式(D−1)および/または(D−2)で示される構造、即ち、4,4’−ジアミノベンズアニリド(必要によりDABANと略す)に由来する構造である。
Figure 0006798633
このようなポリイミド前駆体を含有する組成物を使用することで、反りの小さいポリイミドフィルム/ガラス基材積層体を製造できる効果に加えて、適切なイミダゾール化合物を使用することで、透明性、破断伸度などの機械的特性に優れるポリイミドフィルムを製造することが可能である。
ポリイミド前駆体について、一般式(I)中のXおよびYを与えるモノマー(テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、その他成分)により説明し、続いて製造方法を説明する。
本明細書において、テトラカルボン酸成分は、ポリイミドを製造する原料として使用されるテトラカルボン酸、テトラカルボン酸二無水物、その他テトラカルボン酸シリルエステル、テトラカルボン酸エステル、テトラカルボン酸クロライド等のテトラカルボン酸誘導体を含む。特に限定されるわけではないが、製造上、テトラカルボン酸二無水物を使用することが簡便であり、以下の説明ではテトラカルボン酸成分としてテトラカルボン酸二無水物を用いた例を説明する。また、ジアミン成分は、ポリイミドを製造する原料として使用される、アミノ基(−NH)を2個有するジアミン化合物である。
また、本明細書において、ポリイミドフィルムは、(キャリア)基材上に形成されて積層体の中に存在するもの、および基材を剥離した後のフィルムの両方を意味する。また、ポリイミドフィルムを構成している材料、即ちポリイミド前駆体組成物を加熱処理して(イミド化して)得られた材料を、「ポリイミド材料」という場合がある。
<Xおよびテトラカルボン酸成分>
前述のとおり、ポリイミド前駆体中の全繰り返し単位中、Xは、好ましくは70モル%以上が式(1−1)で示される構造であり、より好ましくは80モル%以上、さらにより好ましくは90モル%以上、最も好ましくは95モル%以上(100モル%も非常に好ましい)が式(1−1)で示される構造である。Xとして式(1−1)の構造を与えるテトラカルボン酸二無水物はCpODAである。
CpODAは立体異性体の混合物であっても、または特定の1種の立体異性体であってもよい。特に限定されないが、好ましい立体異性体としては、trans−endo−endo−ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2”−ノルボルナン−5,5”,6,6”−テトラカルボン酸二無水物(CpODA−tee)およびcis−endo−endo−ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2”−ノルボルナン−5,5”,6,6”−テトラカルボン酸二無水物(CpODA−cee)が挙げられる。
Figure 0006798633
好ましい1実施形態において、CpODA中、少なくとも50モル%以上、さらにより好ましくは63モル%以上がCpODA−teeである。好ましい異なる1実施形態において、CpODA中、少なくとも30モル%以上、さらにより好ましくは、37モル%以上がCpODA−ceeである。好ましいさらに異なる1実施形態において、CpODA中、CpODA−teeとCpODA−ceeの合計が、少なくとも80モル%以上、さらにより好ましくは83モル%以上である。
本発明において、Xとして、式(1−1)で示される構造以外の4価の脂肪族基または芳香族基(「その他のX」と略称する)を、本発明の効果を損なわない範囲の量で含有することができる。即ち、テトラカルボン酸成分は、CpODAに加えてその他のテトラカルボン酸誘導体を、本発明の効果を損なわない範囲の量で含有することができる。その他のテトラカルボン酸誘導体の量は、テトラカルボン酸成分100モル%に対して、30モル%未満、より好ましくは20モル%未満、さらにより好ましくは10モル%未満(0モル%も好ましい)である。
「その他のX」が芳香族環を有する4価の基である場合、炭素数が6〜40の芳香族環を有する4価の基が好ましい。
芳香族環を有する4価の基としては、例えば、下記のものが挙げられる。
Figure 0006798633
(式中、Zは直接結合、または、下記の2価の基:
Figure 0006798633
のいずれかである。ただし、式中のZは、2価の有機基、Z3、はでそれぞれ独立にアミド結合、エステル結合、カルボニル結合であり、Zは芳香環を含む有機基である。)
としては、具体的には、炭素数2〜24の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基が挙げられる。
としては、具体的には、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基が挙げられる。
芳香族環を有する4価の基としては、得られるポリイミドフィルムの高耐熱性と高透明性を両立できるので、下記のものが特に好ましい。
Figure 0006798633
(式中、Zは直接結合、または、へキサフルオロイソプロピリデン結合である。)
ここで、得られるポリイミドフィルムの高耐熱性、高透明性、低線熱膨張係数を両立できるので、Zは直接結合であることがより好ましい。
加えて好ましい基として、上記式(9)において、Zが下式(3A):
Figure 0006798633
で表されるフルオレニル含有基である化合物が挙げられる。Z11およびZ12はそれぞれ独立に、好ましくは同一で、単結合または2価の有機基である。Z11およびZ12としては、芳香環を含む有機基が好ましく、例えば式(3A1):
Figure 0006798633
(Z13およびZ14は、互いに独立に単結合、−COO−、−OCO−または−O−であり、ここでZ14がフルオレニル基に結合した場合、Z13が−COO−、−OCO−または−O−でZ14が単結合の構造が好ましく;R91は炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基であり、好ましくはメチルであり、nは0〜4の整数であり、好ましくは1である。)
で表される構造が好ましい。
が芳香族環を有する4価の基である一般式(I)の繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分としては、例えば、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’−オキシジフタル酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド、スルホニルジフタル酸や、これらのテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸シリルエステル、テトラカルボン酸エステル、テトラカルボン酸クロライド等の誘導体が挙げられる。Xがフッ素原子を含有する芳香族環を有する4価の基である一般式(I)の繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分としては、例えば、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンや、これのテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸シリルエステル、テトラカルボン酸エステル、テトラカルボン酸クロライド等の誘導体が挙げられる。さらに、好ましい化合物として、(9H−フルオレン−9,9−ジイル)ビス(2−メチル−4,1−フェニレン)ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボキシレート)が挙げられる。テトラカルボン酸成分は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
「その他のX」が脂環構造を有する4価の基である場合、炭素数が4〜40の脂環構造を有する4価の基が好ましく、少なくとも一つの脂肪族4〜12員環、より好ましくは脂肪族4員環または脂肪族6員環を有することがより好ましい。好ましい脂肪族4員環または脂肪族6員環を有する4価の基としては、下記のものが挙げられる。
Figure 0006798633
(式中、R31〜R38は、それぞれ独立に直接結合、または、2価の有機基である。R41〜R47、およびR71〜R73は、それぞれ独立に式:−CH−、−CH=CH−、−CHCH−、−O−、−S−で表される基よりなる群から選択される1種を示す。R48は芳香環もしくは脂環構造を含む有機基である。)
31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38としては、具体的には、直接結合、または、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、または、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合が挙げられる。
48として芳香環を含む有機基としては、例えば、下記のものが挙げられる。
Figure 0006798633
(式中、Wは直接結合、または、2価の有機基であり、n11〜n13は、それぞれ独立に0〜4の整数を表し、R51、R52、R53は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、水酸基、カルボキシル基、またはトリフルオロメチル基である。)
としては、具体的には、直接結合、下記の式(5)で表される2価の基、下記の式(6)で表される2価の基が挙げられる。
Figure 0006798633
(式(6)中のR61〜R68は、それぞれ独立に直接結合または前記式(5)で表される2価の基のいずれかを表す。)
脂環構造を有する4価の基としては、得られるポリイミドの高耐熱性、高透明性、低線熱膨張係数を両立できるので、下記のものが特に好ましい。
Figure 0006798633
が脂環構造を有する4価の基である式(I)の繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、イソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2,3,3’,4’−テトラカルボン酸、[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−(プロパン−2,2−ジイル)ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−オキシビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−チオビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−スルホニルビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−(ジメチルシランジイル)ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−(テトラフルオロプロパン−2,2−ジイル)ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、オクタヒドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、6−(カルボキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5−トリカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2,3,7,8−テトラカルボン酸、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカン−3,4,7,8−テトラカルボン酸、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカ−7−エン−3,4,9,10−テトラカルボン酸、9−オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4,7,8−テトラカルボン酸、(4arH,8acH)−デカヒドロ−1t,4t:5c,8c−ジメタノナフタレン−2c,3c,6c,7c−テトラカルボン酸、(4arH,8acH)−デカヒドロ−1t,4t:5c,8c−ジメタノナフタレン−2t,3t,6c,7c−テトラカルボン酸、デカヒドロ−1,4−エタノ−5,8−メタノナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、テトラデカヒドロ−1,4:5,8:9,10−トリメタノアントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸や、これらのテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸シリルエステル、テトラカルボン酸エステル、テトラカルボン酸クロライド等の誘導体が挙げられる。テトラカルボン酸成分は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
<Yおよびジアミン成分>
前述のとおり、ポリイミド前駆体中の全繰り返し単位中、Yは、好ましくは70モル%以上が式(D−1)および/または(D−2)で示される構造であり、より好ましくは80モル%以上、さらにより好ましくは90モル%以上(100モル%も好ましい)が、式(D−1)および/または(D−2)で示される構造である。Yとして式(D−1)、式(D−2)の構造を与えるジアミン化合物は、4,4’−ジアミノベンズアニリド(略称:DABAN)である。
本発明において、Yとして、式(D−1)および(D−2)で示される構造以外の2価の脂肪族基または芳香族基(「その他のY」と略称する)を、本発明の効果を損なわない範囲の量で含有することができる。即ち、ジアミン成分は、DABANに加えてその他のジアミン化合物を、本発明の効果を損なわない範囲の量で含有することができる。その他のジアミン化合物の量は、ジアミン成分100モル%に対して、30モル%未満、より好ましくは20モル%未満、さらにより好ましくは10モル%未満(0モル%も好ましい)である。
「その他のY」が芳香族環を有する2価の基である場合、炭素数が6〜40、更に好ましくは炭素数が6〜20の芳香族環を有する2価の基が好ましい。
芳香族環を有する2価の基としては、例えば、下記のものが挙げられる。
Figure 0006798633
(式中、Wは直接結合、または、2価の有機基であり、n11〜n13は、それぞれ独立に0〜4の整数を表し、R51、R52、R53は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、水酸基、カルボキシル基、またはトリフルオロメチル基である。)
としては、具体的には、直接結合、下記の式(5)で表される2価の基、下記の式(6)で表される2価の基が挙げられる。
Figure 0006798633
Figure 0006798633
(式(6)中のR61〜R68は、それぞれ独立に直接結合または前記式(5)で表される2価の基のいずれかを表す。)
ここで、得られるポリイミドの高耐熱性、高透明性、低線熱膨張係数を両立できるので、Wは、直接結合、または 式:−NHCO−、−CONH−、−COO−、−OCO−で表される基よりなる群から選択される1種であることが特に好ましい。また、Wが、R61〜R68が直接結合、または 式:−NHCO−、−CONH−、−COO−、−OCO−で表される基よりなる群から選択される1種である前記式(6)で表される2価の基のいずれかであることも特に好ましい。但し、−NHCO−または−CONH−が選択されるときは、式(D−1)または式(D−2)と異なるように、「その他のY」が選択される。
加えて好ましい基として、上記式(4)において、Wが下式(3B):
Figure 0006798633
で表されるフルオレニル含有基である化合物が挙げられる。Z11およびZ12はそれぞれ独立に、好ましくは同一で、単結合または2価の有機基である。Z11およびZ12としては、芳香環を含む有機基が好ましく、例えば式(3B1):
Figure 0006798633
(Z13およびZ14は、互いに独立に単結合、−COO−、−OCO−または−O−であり、ここでZ14がフルオレニル基に結合した場合、Z13が−COO−、−OCO−または−O−でZ14が単結合の構造が好ましく;R91は炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基であり、好ましくはフェニルであり、nは0〜4の整数であり、好ましくは1である。)
で表される構造が好ましい。
別の好ましい基として、上記式(4)において、Wがフェニレン基である化合物、即ちターフェニルジアミン化合物が挙げられ、特にすべてパラ結合である化合物が好ましい。
別の好ましい基として、上記式(4)において、Wが式(6)の最初のフェニル環1個の構造において、R61およびR62が2,2−プロピリデン基である化合物が挙げられる。
さらに別の好ましい基として、上記式(4)において、Wが次の式(3B2):
Figure 0006798633
で表される化合物が挙げられる。
が芳香族環を有する2価の基である一般式(I)の繰り返し単位を与えるジアミン成分としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’−ジアミノ−ビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、m−トリジン、3,4’−ジアミノベンズアニリド、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−p−フェニレンビス(p−アミノベンズアミド)、4−アミノフェノキシ−4−ジアミノベンゾエート、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸ビス(4−アミノフェニル)エステル、p−フェニレンビス(p−アミノベンゾエート)、ビス(4−アミノフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジカルボキシレート、[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイルビス(4−アミノベンゾエート)、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、3,3’−オキシジアニリン、p−メチレンビス(フェニレンジアミン)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス((アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)ジフェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)ジフェニル)スルホン、オクタフルオロベンジジン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−メチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−エチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジンが挙げられる。Yがフッ素原子を含有する芳香族環を有する2価の基である一般式(I)の繰り返し単位を与えるジアミン成分としては、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。加えて好ましいジアミン化合物として、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(((9H−フルオレン−9,9−ジイル)ビス([1,1’−ビフェニル]−5,2−ジイル))ビス(オキシ))ジアミン、[1,1’:4’,1”−ターフェニル]−4,4”−ジアミン、4,4’−([1,1’−ビナフタレン]−2,2’−ジイルビス(オキシ))ジアミンが挙げられる。ジアミン成分は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
「その他のY」が脂環構造を有する2価の基である場合、炭素数が4〜40の脂環構造を有する2価の基が好ましく、少なくとも一つの脂肪族4〜12員環、より好ましくは脂肪族6員環を有することが更に好ましい。
脂環構造を有する2価の基としては、例えば、下記のものが挙げられる。
Figure 0006798633
(式中、V、Vは、それぞれ独立に直接結合、または、2価の有機基であり、n21〜n26は、それぞれ独立に0〜4の整数を表し、R81〜R86は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、水酸基、カルボキシル基、またはトリフルオロメチル基であり、R91、R92、R93は、それぞれ独立に 式:−CH−、−CH=CH−、−CHCH−、−O−、−S−で表される基よりなる群から選択される1種である。)
、Vとしては、具体的には、直接結合および前記の式(5)で表される2価の基が挙げられる。
脂環構造を有する2価の基としては、得られるポリイミドの高耐熱性、低線熱膨張係数を両立できるので、下記のものが特に好ましい。
Figure 0006798633
脂環構造を有する2価の基としては、中でも、下記のものが好ましい。
Figure 0006798633
が脂環構造を有する2価の基である一般式(I)の繰り返し単位を与えるジアミン成分としては、例えば、1,4−ジアミノシクロへキサン、1,4−ジアミノ−2−メチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−エチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−n−プロピルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−イソプロピルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−n−ブチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−イソブチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−sec−ブチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−tert−ブチルシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロへキサン、1,3−ジアミノシクロブタン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノビシクロヘプタン、ジアミノメチルビシクロヘプタン、ジアミノオキシビシクロヘプタン、ジアミノメチルオキシビシクロヘプタン、イソホロンジアミン、ジアミノトリシクロデカン、ジアミノメチルトリシクロデカン、ビス(アミノシクロへキシル)メタン、ビス(アミノシクロヘキシル)イソプロピリデン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンが挙げられる。ジアミン成分は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
前記一般式(I)で表される繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分およびジアミン成分として、脂環式以外の脂肪族テトラカルボン酸類(特に二無水物)および/または脂肪族ジアミン類のいずれも使用することができるが、その含有量は、テトラカルボン酸成分およびジアミン成分の合計100モル%に対して、好ましくは30モル%未満、より好ましくは20モル%未満、さらに好ましくは10モル%未満(0%を含む)であることが好ましい。
「その他のY」として、式(4)で表される構造、具体的化合物としては、p−フェニレンジアミン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、m−トリジン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル等のジアミン化合物を含有させることにより、得られるポリイミドフィルムの透明性を改善できる場合がある。また、「その他のY」として、式(3B)で表される構造、具体的化合物としては、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等のジアミン化合物を含有させることにより、Tgの向上や膜厚方向の位相差(リターデーション)を低下させることができる場合がある。
ポリイミド前駆体は、上記テトラカルボン酸成分とジアミン成分から製造することができる。本発明に用いられるポリイミド前駆体(前記式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種を含むポリイミド前駆体)は、R及びRが取る化学構造によって、
1)ポリアミド酸(R及びRが水素)、
2)ポリアミド酸エステル(R及びRの少なくとも一部がアルキル基)、
3)4)ポリアミド酸シリルエステル(R及びRの少なくとも一部がアルキルシリル基)、
に分類することができる。そして、ポリイミド前駆体は、この分類ごとに、以下の製造方法により容易に製造することができる。ただし、本発明で使用されるポリイミド前駆体の製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではない。
1)ポリアミック酸
ポリイミド前駆体は、溶媒中でテトラカルボン酸成分としてのテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを略等モル、好ましくはテトラカルボン酸成分に対するジアミン成分のモル比[ジアミン成分のモル数/テトラカルボン酸成分のモル数]が好ましくは0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.05の割合で、例えば120℃以下の比較的低温度でイミド化を抑制しながら反応することによって、ポリイミド前駆体溶液として好適に得ることができる。
限定するものではないが、より具体的には、有機溶剤または水にジアミンを溶解し、この溶液に攪拌しながら、テトラカルボン酸二無水物を徐々に添加し、0〜120℃、好ましくは5〜80℃の範囲で1〜72時間攪拌することで、ポリイミド前駆体が得られる。80℃以上で反応させる場合、分子量が重合時の温度履歴に依存して変動し、また熱によりイミド化が進行することから、ポリイミド前駆体を安定して製造できなくなる可能性がある。上記製造方法でのジアミンとテトラカルボン酸二無水物の添加順序は、ポリイミド前駆体の分子量が上がりやすいため、好ましい。また、上記製造方法のジアミンとテトラカルボン酸二無水物の添加順序を逆にすることも可能であり、析出物が低減することから、好ましい。溶媒として水を使用する場合は、1,2−ジメチルイミダゾール等のイミダゾール類、あるいはトリエチルアミン等の塩基を、生成するポリアミック酸(ポリイミド前駆体)のカルボキシル基に対して、好ましくは0.8倍当量以上の量で、添加することが好ましい。
2)ポリアミック酸エステル
テトラカルボン酸二無水物を任意のアルコールと反応させ、ジエステルジカルボン酸を得た後、塩素化試薬(チオニルクロライド、オキサリルクロライドなど)と反応させ、ジエステルジカルボン酸クロライドを得る。このジエステルジカルボン酸クロライドとジアミンを−20〜120℃、好ましくは−5〜80℃の範囲で1〜72時間攪拌することで、ポリイミド前駆体が得られる。80℃以上で反応させる場合、分子量が重合時の温度履歴に依存して変動し、また熱によりイミド化が進行することから、ポリイミド前駆体を安定して製造できなくなる可能性がある。また、ジエステルジカルボン酸とジアミンを、リン系縮合剤や、カルボジイミド縮合剤などを用いて脱水縮合することでも、簡便にポリイミド前駆体が得られる。
この方法で得られるポリイミド前駆体は、安定なため、水やアルコールなどの溶剤を加えて再沈殿などの精製を行うこともできる。
3)ポリアミック酸シリルエステル(間接法)
あらかじめ、ジアミンとシリル化剤を反応させ、シリル化されたジアミンを得る。必要に応じて、蒸留等により、シリル化されたジアミンの精製を行う。そして、脱水された溶剤中にシリル化されたジアミンを溶解させておき、攪拌しながら、テトラカルボン酸二無水物を徐々に添加し、0〜120℃、好ましくは5〜80℃の範囲で1〜72時間攪拌することで、ポリイミド前駆体が得られる。80℃以上で反応させる場合、分子量が重合時の温度履歴に依存して変動し、また熱によりイミド化が進行することから、ポリイミド前駆体を安定して製造できなくなる可能性がある。
4)ポリアミック酸シリルエステル(直接法)
1)の方法で得られたポリアミック酸溶液とシリル化剤を混合し、0〜120℃、好ましくは5〜80℃の範囲で1〜72時間攪拌することで、ポリイミド前駆体が得られる。80℃以上で反応させる場合、分子量が重合時の温度履歴に依存して変動し、また熱によりイミド化が進行することから、ポリイミド前駆体を安定して製造できなくなる可能性がある。
3)の方法、及び4)の方法で用いるシリル化剤として、塩素を含有しないシリル化剤を用いることは、シリル化されたポリアミック酸、もしくは、得られたポリイミドを精製する必要がないため、好適である。塩素原子を含まないシリル化剤としては、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。フッ素原子を含まず低コストであることから、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが特に好ましい。
また、3)の方法のジアミンのシリル化反応には、反応を促進するために、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミンなどのアミン系触媒を用いることができる。この触媒はポリイミド前駆体の重合触媒として、そのまま使用することができる。
ポリイミド前駆体を調製する際に使用する溶媒は、水や、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒が好ましく、原料モノマー成分と生成するポリイミド前駆体が溶解すれば、どんな種類の溶媒であっても問題はなく使用できるので、特にその構造には限定されない。溶媒として、水や、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが好ましく採用される。さらに、その他の一般的な有機溶剤、即ちフェノール、o−クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒なども使用できる。なお、溶媒は、複数種を組み合わせて使用することもできる。
ポリイミド前駆体の製造では、特に限定されないが、ポリイミド前駆体の固形分濃度(ポリイミド換算質量濃度)が例えば5〜45質量%となるような濃度でモノマーおよび溶媒を仕込んで反応を行う。
ポリイミド前駆体の対数粘度は、特に限定されないが、30℃での濃度0.5g/dLのN,N−ジメチルアセトアミド溶液における対数粘度が0.2dL/g以上、より好ましくは0.3dL/g以上、特に好ましくは0.4dL/g以上であることが好ましい。対数粘度が0.2dL/g以上では、ポリイミド前駆体の分子量が高く、得られるポリイミドの機械強度や耐熱性に優れる。
<イミダゾール化合物>
ポリイミド前駆体組成物は、2−フェニルイミダゾールおよびベンゾイミダゾールから選ばれる少なくとも1つのイミダゾール化合物を含有する。
ポリイミド前駆体組成物中のイミダゾール化合物の含有量は、添加効果とポリイミド前駆体組成物の安定性のバランスを考慮して適宜選ぶことができる。イミダゾール化合物の量は、好ましくは、ポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルに対して、0.01モル超から1モル未満である。イミダゾール化合物の含有量が少なすぎると、例えば破断伸度などの機械的特性が低減する場合があり、一方、イミダゾール化合物の含有量が多すぎると、ポリイミド前駆体組成物の保存安定性が悪くなる場合がある。
イミダゾール化合物の含有量は、いずれも繰り返し単位1モルに対して、より好ましくは0.02モル以上、さらにより好ましくは0.025モル以上、さらにより好ましくは0.05モル以上であり、またより好ましくは0.8モル以下、さらにより好ましくは0.6モル以下、さらにより好ましくは0.4モル以下である。
尚、特許文献6(国際公開第2015/080158号公報)には、イミダゾール化合物を含有するポリイミド前駆体組成物が記載されているが、2−フェニルイミダゾールおよび/またはベンゾイミダゾールを含有するポリイミド前駆体組成物が保存安定性に優れる点についての開示はない。また、同文献の実施例には、1,2−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾールおよび2−メチルイミダゾールに比べ、2−フェニルイミダゾールまたはベンゾイミダゾールを含有する組成物から製造されたポリイミドフィルムの400nm光透過率が低下することが示されている。一方、本発明の好ましいポリイミド前駆体(Xの70モル%以上がCpODA由来、Yの70モル%以上がDABAN由来)に2−フェニルイミダゾールおよび/またはベンゾイミダゾールを組み合わせた組成物から製造されたポリイミドフィルムは透明性が向上し、特許文献6の開示とは反対に、2−メチルイミダゾールと同等以上の400nm光透過率が得られた。また、2−フェニルイミダゾールおよびベンゾイミダゾールは、他のイミダゾールに比べて、線膨張係数の低下に効果があることも確認された。
<ポリイミド前駆体組成物の配合>
本発明で使用されるポリイミド前駆体組成物は、少なくとも1種のポリイミド前駆体と、少なくとも1種の上記のイミダゾール化合物と、溶媒を含む。
溶媒としては、ポリイミド前駆体を調製する際に使用する溶媒として説明した前述のものを使用することができる。通常は、ポリイミド前駆体を調製する際に使用した溶媒をそのままで、即ちポリイミド前駆体溶液のままで使用することができるが、必要により希釈または濃縮して使用してもよい。イミダゾール化合物は、ポリイミド前駆体組成物中に溶解して存在している。ポリイミド前駆体の濃度は、特に限定されないが、ポリイミド換算質量濃度(固形分濃度)で通常5〜45質量%である。ここで、ポリイミド換算質量とは、繰り返し単位の全てが完全にイミド化されたとしたときの質量である。
本発明のポリイミド前駆体の粘度(回転粘度)は、特に限定されないが、E型回転粘度計を用い、温度25℃、せん断速度20sec−1で測定した回転粘度が、0.01〜1000Pa・secが好ましく、0.1〜100Pa・secがより好ましい。また、必要に応じて、チキソ性を付与することもできる。上記範囲の粘度では、コーティングや製膜を行う際、ハンドリングしやすく、また、はじきが抑制され、レベリング性に優れるため、良好な被膜が得られる。
本発明のポリイミド前駆体組成物は、必要に応じて、化学イミド化剤(無水酢酸などの酸無水物や、ピリジン、イソキノリンなどのアミン化合物)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、フィラー(シリカ等の無機粒子など)、染料、顔料、シランカップリング剤などのカップリング剤、プライマー、難燃材、消泡剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤(流動補助剤)などを含有することができる。
ポリイミド前駆体組成物の調製は、前述のとおりの方法で得られたポリイミド前駆体溶液に、イミダゾール化合物またはイミダゾール化合物の溶液を加えて混合することで調製することができる。イミダゾール化合物の存在下でテトラカルボン酸成分とジアミン成分を反応させてもよい。
<<ポリイミドフィルム/基材積層体、およびフレキシブル電子デバイスの製造>>
本発明のポリイミドフィルム/基材積層体は、(a)ポリイミド前駆体組成物を、基材上に塗布する工程、(b)前記基材上で前記ポリイミド前駆体を加熱処理し、前記基材上にポリイミドフィルムが積層された積層体(ポリイミドフィルム/基材積層体)を製造する工程により製造することができる。本発明のフレキシブル電子デバイスの製造方法は、前記工程(a)および工程(b)で製造されたポリイミドフィルム/基材積層体を使用し、さらなる工程、即ち(c)前記積層体のポリイミドフィルム上に、導電体層および半導体層から選ばれる少なくとも1つの層を形成する工程、および(d)前記基材と前記ポリイミドフィルムとを剥離する工程を有する。
本発明の方法に使用できるポリイミド前駆体組成物は、ポリイミド前駆体、イミダゾール化合物および溶媒を含有する。イミダゾール化合物は前述のイミダゾール化合物の項中で述べたものを用いることができる。ポリイミド前駆体はポリイミド前駆体組成物の項中で述べたものを用いることができる。ポリイミド前駆体組成物の項中で好ましいものとして説明したポリイミド前駆体は、本発明の方法においても好ましいが、特に限定されない。
まず、工程(a)において、ポリイミド前駆体組成物を基材上に流延し、加熱処理によりイミド化および脱溶媒することによってポリイミドフィルムを形成し、基材とポリイミドフィルムとの積層体(ポリイミドフィルム/基材積層体)を得る。
基材としては、耐熱性の材料が使用され、例えばセラミック材料(ガラス、アルミナ等)、金属材料(鉄、ステンレス、銅、アルミニウム等)、半導体材料(シリコン、化合物半導体等)等の板状またはシート状基材、または耐熱プラスチック材料(ポリイミド等)等のフィルムまたはシート状基材が使用される。一般に、平面且つ平滑な板状が好ましく、一般に、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、サファイアガラス等のガラス基板;シリコン、GaAs、InP、GaN等の半導体(化合物半導体を含む)基板;鉄、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属基板が使用される。
本発明において特にガラス基板が好ましい。ガラス基板は、平面、平滑且つ大面積のものが開発されており容易に入手できる。反りの問題は特に基板が大面積になるほど顕在化し、ガラス基板は剛性の点でも比較的反りが起こりやすいため、本発明を適用することでガラス基板を使用する場合の課題を解決できる。ガラス基板等の板状基材の厚さは限定されないが、取り扱い易さの観点から、例えば20μm〜4mm、好ましくは100μm〜2mmである。また板状基材の大きさは、特に限定されないが、1辺(長方形のときは長辺)が、例えば100mm程度〜4000mm程度、好ましくは200mm程度〜3000mm程度、より好ましくは300mm程度〜2500mm程度である。
これらのガラス基板等の基材は、表面に無機薄膜(例えば、酸化ケイ素膜)や樹脂薄膜が形成されたものであってもよい。
ポリイミド前駆体組成物の基材上への流延方法は特に限定されないが、例えばスリットコート法、ダイコート法、ブレードコート法、スプレーコート法、インクジェットコート法、ノズルコート法、スピンコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、電着法などの従来公知の方法が挙げられる。
工程(b)において、基材上でポリイミド前駆体組成物を加熱処理し、ポリイミドフィルムに転換し、ポリイミドフィルム/基材積層体を得る。加熱処理条件は、特に限定されないが、例えば50℃〜150℃の温度範囲で乾燥した後、最高加熱温度として例えば150℃〜600℃であり、好ましくは200℃〜550℃、より好ましくは250℃〜500℃で処理することが好ましい。ポリイミド溶液を用いた場合の加熱処理条件は、特に限定されないが、最高加熱温度として例えば100℃〜600℃であり、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上であり、また好ましくは500℃以下、より好ましくは450℃以下である。
ポリイミドフィルムの厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。厚さが1μm未満である場合、ポリイミドフィルムが十分な機械的強度を保持できず、例えばフレキシブル電子デバイス基板として使用するとき、応力に耐えきれず破壊されることがある。また、ポリイミドフィルムの厚さは、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。ポリイミドフィルムの厚さが厚くなると、フレキシブルデバイスの薄型化が困難となってしまうことがある。フレキシブルデバイスとして十分な耐性を保持しながら、より薄膜化するには、ポリイミドフィルムの厚さは、好ましくは2〜50μmである。
一実施形態において、ポリイミドフィルムは、10μm厚のフィルムで測定したとき、400nm光透過率は好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、最も好ましくは80%以上である。
本発明においてポリイミドフィルム/基材積層体は反りが小さいことが特徴である。測定の詳細は後述する<<反りの評価、残留応力の測定>>の項で説明するが、一実施形態において、ポリイミドフィルムの特性を、ポリイミドフィルム/シリコン基板(ウェハ)積層体におけるポリイミドフィルムとシリコン基板間の残留応力で評価した場合、残留応力は好ましくは27MPa未満、より好ましくは25MPa未満である。但し、ポリイミドフィルムは、乾燥状態で23℃に置かれているものとする。
これを基材として、第6世代のコーニング社製Eagle−XG(登録商標)(ガラス基板、縦サイズ:1500mm、横サイズ:1850mm、対角サイズ:2382mm、厚さ:0.5mm、弾性率:73.6GPa)に換算すると、10μm厚ポリイミドフィルム/ガラス基板積層体の反りの大きさは、対角サイズで好ましくは64mm未満、より好ましくは58mm未満である。ここで反りの大きさとは、図1に示すように積層体を平面上に置いたとき、平面からの周辺部まで距離である。
さらに本発明の一実施形態において、ポリイミドフィルムは、厚さ10μmのフィルムの破断伸度が好ましくは10%以上である。
また、本発明の異なる好ましい一実施形態においては、ポリイミドフィルムの破断強度は好ましくは150MPa以上、より好ましくは170MPa以上、さらにより好ましくは180MPa以上、さらにより好ましくは200MPa以上、さらにより好ましくは210MPa以上である。破断強度は、例えば5〜100μm程度の膜厚のフィルムから得られる値を用いることができる。
ポリイミドフィルムおよび積層体についての以上の好ましい特性は、同時に満たされることが特に好ましい。
ポリイミドフィルム/基材積層体中のポリイミドフィルムは、表面に樹脂膜や無機膜などの第2の層を有していてもよい。即ち、基材上にポリイミドフィルムを形成した後、第2の層を積層して、フレキシブル電子デバイス基板を形成してもよい。少なくとも無機膜を有することが好ましく、特に水蒸気や酸素(空気)等のバリア層として機能するものが好ましい。水蒸気バリア層としては、例えば、窒化ケイ素(SiN)、酸化ケイ素(SiO)、酸窒化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)等の金属酸化物、金属窒化物および金属酸窒化物からなる群より選択される無機物を含む無機膜が挙げられる。一般に、これらの薄膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティングなどの物理的蒸着法と、プラズマCVD法、触媒化学気相成長法(Cat−CVD法)などの化学蒸着法(化学気相成長法)などが知られている。この第2の層は、複数層とすることもできる。
第2の層が複数層である場合には樹脂膜と無機膜を複合することも可能であり、例えば、ポリイミドフィルム/基材積層体中のポリイミドフィルム上にバリア層/ポリイミド層/バリア層の3層構造を形成する例などが挙げられる。
工程(c)では、工程(b)で得られたポリイミド/基材積層体を使用して、ポリイミドフィルム(ポリイミドフィルム表面に無機膜などの第2の層を積層したものを含む)上に、導電体層および半導体層から選ばれる少なくとも1つの層を形成する。これらの層は、ポリイミドフィルム(第2の層を積層したものを含む)上に直接形成してもよいし、デバイスに必要な他の層を積層した上に、つまり間接的に形成してもよい。
導電体層および/または半導体層は、目的とする電子デバイスが必要とする素子および回路に合わせて適切な導電体層および(無機、有機)半導体層が選択される。本発明の工程(c)において、導電体層および半導体層の少なくとも1つを形成する場合、無機膜を形成したポリイミドフィルム上に導電体層および半導体層の少なくとも1つを形成することも好ましい。
導電体層および半導体層は、ポリイミドフィルム上の全面に形成されたもの、ポリイミドフィルム上の一部分に形成されたものの両方を包含する。本発明は、工程(c)の後にただちに工程(d)に移行しても良いし、工程(c)において導電体層および半導体層から選ばれる少なくとも1つの層を形成した後、さらにデバイス構造を形成してから、工程(d)に移行してもよい。
フレキシブルデバイスとしてTFT液晶ディスプレイデバイスを製造する場合には、例えば必要により無機膜を全面に形成したポリイミドフィルムの上に、例えば金属配線、アモルファスシリコンやポリシリコンによるTFT、透明画素電極を形成する。TFTは、例えば、ゲート金属層、アモルファスシリコン膜などの半導体層、ゲート絶縁層、画素電極に接続する配線等を含む。この上に、さらに液晶ディスプレイに必要な構造を、公知の方法によって形成することも出来る。また、ポリイミドフィルムの上に、透明電極とカラーフィルターを形成してもよい。
有機ELディスプレイを製造する場合には、例えば必要により無機膜を全面に形成したポリイミドフィルムの上に、例えば透明電極、発光層、正孔輸送層、電子輸送層等に加えて必要によりTFTを形成することができる。
本発明において好ましいポリイミドフィルムは耐熱性、靱性等各種特性に優れるので、デバイスに必要な回路、素子、およびその他の構造を形成する手法は特に制限されない。
次に工程(d)おいて、基材とポリイミドフィルムとを剥離する。剥離方法は、外力を加えることによって物理的に剥離するメカニカル剥離法でもよいし、基材面からレーザ光を照射して剥離する所謂レーザ剥離法でもよい。
基材を剥離した後のポリイミドフィルムを基板とする(半)製品に、さらにデバイスに必要な構造または部品を形成または組み込んでデバイスを完成する。
<<反りの評価、残留応力の測定>>
図1に、基材2上にポリイミドフィルム1を形成したポリイミドフィルム/基材積層体の反りを模式的に示す。ポリイミドフィルム/基材積層体の反りは、基材物質の弾性率によって異なる。また同種の基材であっても、厚さ、大きさによって「反りの値」が異なる。
さらに本発明者の検討によれば、ポリイミドは吸湿により伸張するため、ポリイミドフィルムの乾燥状態により、ポリイミドフィルム/基材積層体の反りの程度が異なる。特に、環境大気、環境温度で評価を行うと、ポリイミドフィルムが吸湿して積層体の反りが小さくなる傾向にあるのに対して、フレキシブル電子デバイスの製造においては、真空または減圧下、または不活性雰囲気下で製膜が実施され、また搬送、保管も乾燥雰囲気で実施されるため、積層体の反りが大きくなる。つまり、環境大気、環境温度での測定では電子デバイス製造の際に問題になる反りを正確に評価できない。従って、ポリイミドフィルムが乾燥した状態で反り(または残留応力)を測定することが好ましい。そこで、測定装置全体を乾燥雰囲気に置くことも考えられるが、装置が大がかりになり、またポリイミドフィルムが平衡状態になるのに時間を要するため、実際的ではない。
このような問題を解決するためなされた本発明の1態様は、
(1)基準基材上にポリイミドフィルムが形成されたポリイミドフィルム/基準基材積層体を用意する工程、
(2)80℃以上の複数の測定温度において、前記ポリイミドフィルム/基準基材積層体の曲率半径(反り)を測定する工程、
(3)測定された曲率半径(反り)に基づいて、ポリイミドフィルム/基準基材積層体中のポリイミドフィルムと基準基材との間の測定温度における残留応力を算出する工程、および
(4)複数の測定温度における残留応力に基づいて、所定温度における残留応力を求める工程
を有するポリイミドフィルム/基材積層体の残留応力の評価方法に関する。
工程(1)においては、「基準基材」を使用する理由は、前述のとおり基材によってポリイミドフィルム/基材積層体の反りが異なるので、「ポリイミドフィルムの特性」として評価するには、測定に適した基準となる基材(以下、基準基材)を使用することが好ましいからである。本発明の主要な目的は、ポリイミドフィルム/ガラス基板積層体の反りを評価することであるので、ガラス基板を使用して以下の測定、評価を行うことも可能であるが、本出願の実施例においては、基準基材として所定の厚さのシリコン基板(ウェハ)を使用した。これはシリコン基板の表面の反射率が大きく、光学的な方法によって反りを簡便に測定できるからである。特に、シリコン基板に限定されるものではなく、測定装置や方法を考慮して選択することができる。
ポリイミドフィルム/基準基材積層体を、前述のポリイミドフィルム/基材積層体の製造方法に従って、(a)ポリイミド前駆体組成物を、基準基材上に塗布し、(b)基準基材上でポリイミド前駆体を加熱処理して、基準基材上にポリイミドフィルムを積層して製造し、これを測定試料とすることができる。
次に、工程(2)では、ポリイミドフィルムが乾燥状態にある比較的高い温度で、反りを測定する。「乾燥状態にある比較的高い温度」とは、例えば80℃以上であり、100℃以上が特に好ましい。温度の上限はポリイミドのTgまで、Tgが観察されないときは分解温度が上限である。これは、Tgまでは弾性率の変化が小さいが、Tgを超えると弾性率が大きく変化するため、次の工程(4)で例えば室温まで外挿する測定点として適切でないからである。通常は、250℃以下、好ましくは200℃以下である。一般には、100℃〜200℃、例えば100℃〜150℃の範囲が好ましい。
従って、本態様の方法では、このような温度範囲で異なる複数の温度において、好ましくは異なる温度3点以上において、より好ましくは異なる温度4点以上において、反りを測定すればよい。また、測定方法や測定装置にも依存するが、測定精度を上げるために、同一温度において複数回数、例えば3回以上、例えば10回程度以上の回数を測定して平均値を求めることも好ましい。
尚、測定方法の環境として、測定装置を乾燥空気中および不活性ガス中のような乾燥環境下において測定してもよいが、測定装置が置かれる環境として例えば通常の環境大気および環境温度(例えば15℃〜30℃、相対湿度30〜60%)であっても、測定試料およびその周囲が上述のような高温になるので、測定試料は極めて低湿な環境に置かれることになる。
「反り」は、種々の方法で測定することが可能であり、また種々の指標で表すことができる。光(例えばレーザー光)の反射角度などから光学的に求める方法が簡便で好ましい。「反り」は1例として曲率半径で表現することができる。
次に工程(3)では、工程(2)で得られた反りの測定値に基づいて、数式1に従って残留応力Sを算出する。
Figure 0006798633
ここで、
E/(1−ν):基板(基準基材:シリコンウェハ)の2軸弾性係数(Pa)、
(100)シリコンでは1.805E11Pa、
h:基板の厚さ(m)
t:ポリイミドフィルムの厚さ(m)
R:測定試料の曲率半径(m)
1/R=1/R−1/R
:フィルム製膜前の基板(シリコンウェハ)単独の曲率半径
:フィルム製膜後の曲率半径
S:残留応力の平均値(Pa)
次に工程(4)では、工程(3)で算出した複数の測定温度における残留応力に基づいて、所定温度における残留応力を求める。所定温度は、特に定まった温度ではなく、目的に合わせて選択できる目的温度(temperature-of-interest)であり、積層体を使用する温度であって反りが問題となる温度としてもよいし、基準として室温、例えば23℃を採用してもよい。
図2の例では、100℃以上の異なる測定温度5点から求めた残留応力を、温度を横軸に、残留応力を縦軸にとったグラフ上にプロットしている。所定温度はこの例では23℃とする。測定点から所定温度の残留応力を求める方法は特に限定されないが、通常、図2に示すように直線近似(最小二乗法による)を行って、23℃に外挿して23℃における残留応力を求めることができる。
このように、ポリイミドフィルムの特性を、ポリイミドフィルムとシリコン基板(基準基材として)の間の23℃における残留応力により評価することができる。
さらに、実際にデバイス製造に使用される目的基材(例えばガラス基板)を使用したポリイミドフィルム/目的基材積層体の反りを推定するには、次のように行う。まず、次の数式2を用いて、ポリイミドフィルム/目的基材積層体に生じる反りの曲率半径Rを求める。
Figure 0006798633
ここで、
E:目的基材の引張弾性率(Pa)
h:目的基材の厚さ(m)
t:ポリイミドフィルムの厚さ(m)
S:基準基材について求めた23℃(所定温度)における残留応力(Pa)
R:曲率半径(m)
数式2から算出された曲率半径を、数式3に代入して、図1に示す反り(W)の大きさを算出し推定することができる。
Figure 0006798633
ここで、
L:目的基材の長さ(m)、例えば対角距離など、
W:反りの大きさ
以上のような本実施態様のポリイミドフィルム/基材積層体の残留応力の評価方法によれば、ポリイミドフィルムの吸湿による影響を排除することができるので次の有利な効果が得られる。まず、積層体中のポリイミドフィルムが吸湿状態にあると比較的反りが小さく、実際の工程で生じる反りと異なることが多かったが、本実施態様により適切な評価が可能になった。また、測定環境の影響を受けずに安定に評価できるようになった。さらに、吸湿状態と乾燥状態の反りの差がポリイミドの組成によって異なるため(組成により吸湿性が異なるため)、吸湿状態では相対的な評価も無意味であったが、本実施態様により、組成の正確な比較ができるようになった。
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の各例において評価は次の方法で行った。
<ポリイミド前駆体溶液(ワニス)の評価>
[保存安定性]
23℃でワニスを保存し、30日後に流動性のある均一な状態であれば○、
30日後に白濁、もしくはゲル化していれば×とする。
<ポリイミドフィルムの評価>
[400nm光透過率]
紫外可視分光光度計/V−650DS(日本分光製)を用いて、膜厚約10μmのポリイミド膜の400nmにおける光透過率を測定した。
[弾性率、破断伸度、破断強度]
膜厚約10μmのポリイミドフィルムをIEC450規格のダンベル形状に打ち抜いて試験片とし、ORIENTEC社製TENSILONを用いて、チャック間長30mm、引張速度2mm/分で、初期の弾性率、破断伸度、破断強度を測定した。
[線熱膨張係数(CTE)]
膜厚約10μmのポリイミドフィルムを幅4mmの短冊状に切り取って試験片とし、TMA/SS6100 (エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用い、チャック間長15mm、荷重2g、昇温速度20℃/分で500℃まで昇温した。得られたTMA曲線から、150℃から250℃までの線熱膨張係数を求めた。
[5%重量減少温度]
膜厚約10μmのポリイミドフィルムを試験片とし、TAインスツルメント社製 熱量計測定装置(Q5000IR)を用い、窒素気流中、昇温速度10℃/分で25℃から600℃まで昇温した。得られた重量曲線から、5%重量減少温度を求めた。
<ポリイミドフィルム/基材積層体の評価>
ポリイミドフィルム/シリコンウェハ積層体の反りは、KLA Tencor社製、FLX−2320を使用して測定した。23℃、50%RHの環境下で、あらかじめ、シリコンウェハ単体の曲率半径を測定する。その後、そのシリコンウェハ上にポリイミドフィルムを形成する。その積層体の曲率半径を測定し、残留応力を算出した。なお、ポリイミドフィルム/基準基材積層体の曲率半径測定を加熱した状態で行う場合、シリコンウェハ単体の曲率半径測定も同温度で行った。
<原材料>
以下の各例で使用した原材料の略称、純度等は、次のとおりである。
[ジアミン成分]
DABAN: 4,4’−ジアミノベンズアニリド
PPD: p−フェニレンジアミン
BAPB: 4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル
TPE−Q: 1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン
BAFL: 9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン
[テトラカルボン酸成分]
CpODA: ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2”−ノルボルナン−5,5”,6,6”−テトラカルボン酸二無水物
DNDAxx:(4arH,8acH)−デカヒドロ−1t,4t:5c,8c−ジメタノナフタレン−2t,3t,6c,7c−テトラカルボン酸二無水物
PMDA−H: シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
CBDA:シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
[イミダゾール化合物]
2−Pz: 2−フェニルイミダゾール
Bz:ベンゾイミダゾール
2−Mz:2−メチルイミダゾール
[溶媒]
NMP: N−メチル−2−ピロリドン
表1−1に実施例、比較例で使用したテトラカルボン酸成分とジアミン成分、表1−2に実施例、比較例で使用したイミダゾール化合物の構造式を記す。
Figure 0006798633
Figure 0006798633
<実施例1>
[ポリイミド前駆体組成物の調製]
窒素ガスで置換した反応容器中にDABAN 2.27g(0.010モル)を入れ、N−メチル−2−ピロリドンを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が16質量%となる量の32.11gを加え、50℃で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 3.84g(0.010モル)を徐々に加えた。70℃で4時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。
イミダゾール化合物として2−フェニルイミダゾールを、4倍質量のN−メチル−2−ピロリドンに溶解して2−フェニルイミダゾールの固形分濃度が20質量%の均一な溶液を得た。ポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルに対してイミダゾール化合物の量が0.025モルとなるように、イミダゾール化合物の溶液と、上で合成したポリイミド前駆体溶液を混合し、室温で3時間攪拌し、均一で粘稠なポリイミド前駆体組成物を得た。
[ポリイミドフィルム/基材積層体の製造]
ポリイミドフィルム評価用のポリイミドフィルム/基材積層体を製造するため、ガラス基板として、6インチのコーニング社製のEagle−XG(登録商標)(500μm厚)を使用した。ガラス基板上にポリイミド前駆体組成物をスピンコーターにより塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)で、そのままガラス基板上で室温から415℃まで加熱して熱的にイミド化を行い、ポリイミドフィルム/基材積層体を得た。積層体をお湯につけてガラス基板からポリイミドフィルムを剥離し、乾燥後、ポリイミドフィルムの特性を評価した。ポリイミドフィルムの膜厚は約10μmである。
[ポリイミドフィルム/基準基材積層体の製造]
ポリイミドフィルム評価用の基準基材として、6インチシリコンウェハ(625μm厚、(100)基板)を使用した。シリコンウェハ上にポリイミド前駆体組成物をスピンコーターにより塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)で、そのままシリコンウェハ上で室温から415℃まで加熱して熱的にイミド化を行い、ポリイミドフィルム/基準基材積層体を得た。積層体中のポリイミドフィルムの膜厚は約10μmである。
得られたポリイミドフィルム/基準基材積層体について、150℃、140℃、130℃、120℃および110℃の温度において、反りの曲率半径を測定した。各温度において20回測定し平均値を求めた。得られた曲率半径から、各温度における残留応力を計算し、最小二乗法による直線近似から、23℃の残留応力を求めた。また、加熱することなく、23℃、50%RH環境下で測定した反りの曲率半径から残留応力を求めた。この結果を表2〜表4に示す。また第6世代のガラス基板(目的基材)(Eagle−XG(登録商標)、縦サイズ:1500mm、横サイズ:1850mm、対角サイズ:2382mm、厚さ:0.5mm、弾性率:73.6GPa)を使用してポリイミドフィルム/基材積層体を製造した場合に生じる反りの値を計算し、表2〜表4に合わせて示す。
<実施例2〜15、比較例1〜14>
実施例1において、テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、およびイミダゾール化合物、製膜時の最大温度を、表2〜表5に示す化合物に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルム/基準基材積層体を製造し、実施例1と同様に積層体の反りを測定し、23℃における残留応力を求めた。結果を表2〜表5に示す。また、表2〜表4では、同様に第6世代のガラス基板(Eagle−XG(登録商標) 500μm厚、弾性率:73.6GPa)を使用したポリイミドフィルム/基材積層体について推定される反りの値を合わせて示す。
<参考例1〜3>
ガラス基板上ではなく、シリコンウェハ上で作成したポリイミドフィルムの特性を評価した結果を表4に示す。
Figure 0006798633
Figure 0006798633
Figure 0006798633
Figure 0006798633
本発明は、フレキシブル電子デバイス、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、および電子ペーパー等の表示デバイス、太陽電池およびCMOS等の受光デバイスの製造に好適に適用することができる。

Claims (12)

  1. 下記一般式(I)で表されるポリイミド前駆体、
    前記ポリイミド前駆体の繰り返し単位1モルに対して、0.01モル超から1モル未満の範囲の量で含有され、且つ2−フェニルイミダゾールおよびベンゾイミダゾールから選ばれる少なくとも1つのイミダゾール化合物、および
    溶媒
    を含有することを特徴とするポリイミド前駆体組成物。
    Figure 0006798633
    (一般式I中、Xは4価の脂肪族基または芳香族基であり、Yは2価の脂肪族基または芳香族基であり、RおよびRは互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜9のアルキルシリル基であり、但し、Xの70モル%以上が、式(1−1):
    Figure 0006798633
    で表される構造であり、Yの70モル%以上が、式(D−1)および/または(D−2):
    Figure 0006798633
    で表される構造である。)
  2. このポリイミド前駆体組成物から得られるポリイミドフィルムが、厚さ10μmのフィルムでの波長400nmの光透過率が75%以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド前駆体組成物。
  3. このポリイミド前駆体組成物から得られるポリイミドフィルムが、厚さ10μmのフィルムの破断伸度が10%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド前駆体組成物。
  4. の90モル%以上が、前記式(1−1)で表される構造であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。
  5. 前記ポリイミド前駆体組成物をシリコンウェハ上に塗布してイミド化し、ポリイミドフィルム厚さが10μmのポリイミドフィルム/シリコンウェハ積層体を製造し、このポリイミドフィルム/シリコンウェハ積層体を用いて80℃以上、ガラス転移温度および分解温度の低い方の温度未満の範囲の異なる温度3点以上において、同一温度において3回以上の測定値の平均から求めたポリイミドフィルムとシリコンウェハ間の残留応力を直線近似したとき、23℃における残留応力が27MPa未満となるポリイミドフィルムを与える請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物から得られるポリイミドフィルム。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物から得られるポリイミドフィルムと、
    基材と
    を有することを特徴とするポリイミドフィルム/基材積層体。
  8. 前記基材が、ガラス基板である請求項7に記載の積層体。
  9. (a)請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物を、基材上に塗布する工程、および
    (b)前記基材上で前記ポリイミド前駆体を加熱処理し、前記基材上にポリイミドフィルムを積層する工程
    を有するポリイミドフィルム/基材積層体の製造方法。
  10. 前記基材が、ガラス基板である請求項9に記載の製造方法。
  11. (a)請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物を、基材上に塗布する工程、
    (b)前記基材上で前記ポリイミド前駆体を加熱処理し、前記基材上にポリイミドフィルムが積層されたポリイミドフィルム/基材積層体を製造する工程、
    (c)前記積層体のポリイミドフィルム上に、導電体層および半導体層から選ばれる少なくとも1つの層を形成する工程、および
    (d)前記基材と前記ポリイミドフィルムとを剥離する工程
    を有するフレキシブル電子デバイスの製造方法。
  12. 前記基材が、ガラス板である請求項11に記載の製造方法。
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