JP6797008B2 - 超電導磁石装置およびそれを備えた磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、超電導磁石装置とそれを利用した磁気共鳴撮像装置に関係する。
核磁気共鳴を利用した診断撮像では、磁場強度と診断箇所が対応しているので、マグネットシステムが発生する磁場強度に要求される精度は磁場強度の百万分の1程度の変動が問題となる。
このようなMRI装置における磁場は大別して3種類がある。それらは第一に時間的に定常で空間的にもほぼ一定で、通常0.1から数テスラ以上の強さであって、撮像を行う空間(通常直径で30−40cmの球もしくは楕円体の空間)内で数ppm程度の変動範囲となる磁場(静磁場)、第二に1秒程度以下の時定数で変化して、空間的に傾斜した磁場(傾斜磁場)、第三に核磁気共鳴に対応した周波数(数MHz以上)の高周波の電磁波による磁場(高周波磁場)である。
静磁場は特に人体の断層撮影を行う領域では極めて高精度な均一性が磁場分布に要求される。高精度とは、たとえば40cm直径の撮像空間FOV(Field of View)で、±1.5ppmのように百万分の1のオーダの残差磁場の精度である。このようにきわめて高精度な均一性が要求される静磁場の磁場分布は、静磁場磁石を製作・励磁の後に磁場を精度よく調整する必要がある.なお、以降では、特に断らない限り、均一性が撮像に利用可能な精度を満たす磁場を均一磁場と呼び、この均一磁場が形成された空間を均一磁場空間と呼ぶ。またこの均一磁場空間は、撮像が実施可能な磁場が形成された空間であるため撮像空間と考えてもよい。
一般に製作誤差による誤差磁場は、均一磁場に要求される許容誤差磁場に比べて1000倍以上大きい。したがって製作後の据え付け時に要求される磁場調整(シミングと呼ぶ)は数100ppmオーダの誤差磁場を、数ppmオーダの誤差磁場へ低減する作業となりきわめて高精度な磁場調整装置およびその手法が使われている。このような磁場調整装置および方法は、たとえば、特許文献1に開示されている。
また全身撮像用のMRI装置は、直径が2m程度の静磁場磁石を有し、均一磁場空間は、直径40cm程度の球状の空間であることが一般的である。このようなMRI装置に対し、近年の要求として、静磁場磁石のサイズを小さくし、MRI装置の設置条件を緩和することが挙げられる。なお従来技術では、静磁場磁石のサイズが小さくなれば、先に述べた均一磁場空間も縮小する。しかし、従前の40cm球の空間ですら、人の体の大きさに比べると小さい空間であるため、この均一磁場空間を拡張することについても要望がある。例えば、脊柱の診断撮像は、静磁場磁石の軸方向に広く均一性を有する磁場分布が求められ、肩部分の診断撮像は水平方向に広い均一磁場空間が必要とされる。
上述するような静磁場磁石は、例えば非特許文献1にかかれているように、主に正方向の電流を持ち、強磁場を発生する主コイル(MC)と、主コイル外側に配置され、主コイルが形成する磁場を弱めるシールドコイル(SC)とを主な構成として有する。それぞれの構成については、MCは、通常5から7個のコイルブロック(CB)から構成されることが多く、SCは2個程度のCBを持つことが多い。
また静磁場磁石の大きさはMCおよびSCの配置に依存し、MCのCB配置が静磁場磁石の軸長の大きさ(長さ)を決め、SCの大きさ(直径)が静磁場磁石全体の径の大きさに強く寄与する。なお、均一磁場空間の大きさは、静磁場磁石の軸長、すなわちMCの配置に強く影響され、非特許文献2に開示されるように、SCの配置は磁場の均一性に与える影響は小さいことから、均一磁場空間の大きさを検討する上ではMCの配置や大きさが重要となる。
上述する均一磁場空間の大きさとMCの全体軸長、断面形状との関係を図1に示す。図1は、各MCの配置関係・断面形状と、それぞれのMCによって構成される磁場分布を示し、左右で軸長が異なる二つの例を示している。また図1では、縦軸は静磁場磁石の中心軸方向における位置を表し、横軸は静磁場磁石の半径方向における位置を表し、グラフ中の等高線は磁場強度が等しい地点を結び示したものである。なお、図1において静磁場磁石の軸長は、縦軸方向において最も離れた二つのCBの端面から端面のまでの長さLeとしている。
まず一般的な静磁場磁石として図1の左側に示す例を説明する。この静磁場磁石は、均一磁場の強さが1.5Tであって、Le=1500mm、CBの内径が500mmの静磁場磁石である。一方、図1の右側に示す例は、均一磁場の強さが1.5Tであって、Le=1280mmの短軸の静磁場磁石である。図1の右に示す静磁場磁石は、図1の右側に示す静磁場磁石と比較してMCの軸長が短いことが理解できる。また、Leを短くすると、全てのMC−CBにおいて中心軸方向が短い断面形状となる傾向が示され、そのうち、静磁場磁石の中心軸方向において端部に位置するMC−CBの断面は略正方形となっており、MCの軸長が異なるとMCの断面形状に影響を及ぼす。
また、MCの軸長の違いは均一磁場空間の大きさにも影響を及ぼす。図1では縦軸方向の中心付近に二つの半円(内側の半円は直径400mm、外側の半円は500mm)を表示して、この均一磁場空間の大きさの相違を分かりやすくしている。具体的に説明すると、図2の左に示す静磁場磁石は、3.0ppm(PP: Peak−to−peak)均一度を満たす領域、すなわち均一磁場空間の大きさが直径42cm程度(42cmDSV領域, DSV: Diameter Spherical Volume)である。しかし、Le=1280mmに短軸化した図2の右側に示す静磁場磁石は、その均一磁場空間が中心軸方向における差渡しが30cm程度に限られている。すなわち図2の右側に示す静磁場磁石は、中心軸方向において最も外側に配置されるCBを起点とする磁場が、内側の半円の内部にまで入り込んだ状態で、他のCBを起点とする磁場と強度が一致するため、磁場が均一となる空間が小さくなっている。
以上のことから、中心軸方向の軸長が短い静磁場磁石では、例えば、均一磁場空間が中心軸方向において30cm程度となるため、脊柱など体軸方向に長い部位を撮像するには、均一磁場空間の大きさが十分でないことが発生しうると理解される。
これを解決するために、特許文献2の技術が提案されている。特許文献2は、静磁場磁石が均一磁場を作っている時に、他の磁場発生源を使うことで、均一磁場空間をトーラス状に変形させる機能を追加した超電導磁石装置を開示している。具体的には、静磁場磁石と比較して弱い磁場を発生できるシムコイルによって、通常の均一磁場空間に対してシムコイルの磁場を追加し、均一磁場空間をトーラス状の領域に変形させる提案である。この従来案ではトーラス状領域では磁場の均一度が良くなり、半径の大きな領域のトーラス空間の均一度を向上させるとか、また軸方向位置を中心から遠い領域に置くと、軸方向にはずれた位置での均一度を向上させることが出来る。
特許第4902787号公報 特開2008−264543号公報
M.Abe,K.Shibata,"Consideration on Current and Coil Block Placements with Good Homogeneity for MRI Magnets using Truncated SVD",IEEE Trans. Magn., Vol. 49, no. 6, PP. 2873−2880, June. 2013. M.Abe,K.Shibata,"Coil Block Designs with good Homogeneity for MRI Magnets Based on SVD Eigenmode Strengths’,IEEE Trans Magn,VOl.51,no. 10,Paper no. 7002713,Oct.2015.
しかし、特許文献2に開示された発明は、均一磁場空間をトーラス状に変形させる結果として本来最も重要であるMRI装置の中心位置付近の均一度の維持が難しく、MRI装置の中心位置付近の空間は撮像に適した状態ではなくなってしまう可能性がある。結果、脊柱などを効率的に撮影しようとしても、MRI装置の中心位置近傍の均一度が十分でないため、適切な撮影が実施しにくいことが考えられた。
そこで本発明は、必要に応じて均一磁場空間を変形させつつもMRI装置の中心位置近傍における均一度を維持した磁場を発生しうる超電導磁石装置、およびこれを備えた磁気共鳴イメージング装置を提供することを課題とする。
本発明は上記課題を解決するにあたって様々な実施形態を有するが、その一例の超電導磁石装置は「所定の軸上に配置された複数の超電導コイルと、前記超電導コイルと同軸上に巻き回された導線から構成されるシムコイルと、を備え、前記複数の超電導コイルはいずれも同方向に通電され、前記複数の超電導コイルの軸方向の中心を含む領域に、予め定められた均一性を有する静磁場を形成し、前記シムコイルは、前記軸に沿って、前記超電導コイルと同方向に通電される順方向部と、前記超電導コイルと反対方向に通電される逆方向部と、を交互に有し、前記軸方向における前記順方向部と前記逆方向部との切り替えが、少なくとも4回以上現れ、かつ前記軸方向における前記静磁場の両端よりも外側に少なくとも一つは配置されるように構成された」ことを特徴とする。
本発明は、必要に応じて均一磁場空間を変形させつつもMRI装置の中心位置近傍における均一度を維持した磁場を発生しうる超電導磁石装置、およびこれを備えた磁気共鳴イメージング装置を提供できる。
従来の1.5T静磁場磁石におけるCBの配置を示す図であって、左図がLe=1500mm、右図がLe=1280mmの場合を示す。 本実施例のMRI装置100の構造の概略を示す図。 第一の実施形態のMRI装置における磁場空間の状態を示す図。 第一の実施形態における超電導磁石装置が作る均一磁場空間の磁場強度分布を示す図。 第一の実施形態におけるシムコイルと対応する電流分布を計算する計算モデル図 シムコイルの配置を計算するために用いる固有モードを示した図 7番目固有モードを使用して設計されたシムコイルを適用したMRI装置が形成する磁場空間の状態を示す図 9番目固有モードを使用して設計されたシムコイルを適用したMRI装置が形成する磁場空間の状態を示す図 5番目固有モードを使用して設計されたシムコイルの通電方向を対称にした場合に作られる磁場空間の磁場強度について等高線を示す図 シムコイルを構成する導線の配置間隔の例を示す図 シムコイルを正負電流のコイルブロックで表した例を示す図 均一磁場空間を軸方向に拡張する場合と、半径方向に拡張する場合の固有モードを示す。
本発明は、医療診断用に用いる核磁気共鳴断層写真装置(MRI)などのように、超電導コイルや鉄などの磁性体等を配置して磁場を発生する磁石装置において、所望の磁場強度の分布に磁場を調整する方法と装置に関する。特にMRI装置等のように核磁気共鳴現象を応用する装置は、被計測領域において、極めて高精度に均一化される磁場を必要とする。この実現のためには、磁石本体に加えて、鉄片、磁石やコイル群(シムコイル)などの磁気モーメントを配置することで、磁場を微調整し、磁場強度を均一化するシミングと言われる作業も設置時に行われる。より広い均一磁場空間(例えば、磁場変動の振幅が3ppm以内とする)に調整した場合もあるが、この空間の広さは、磁石設計に依存して限られた空間の大きさである。
はじめに本発明者の考案の要点について説明する。
本発明者は、均一磁場空間のすぐ外側(中心から離れていく領域)では、均一磁場との誤差が小さい領域があることに着目した。本発明者は、この領域についてわずかな磁場の補正を施すことによって、静磁場磁石によって作られた均一磁場と略等しい磁場を作り、その領域を均一磁場空間に組み込むことができることを発見した。以降では、上述した誤差が小さい領域(弱残差磁場領域)の誤差磁場を局所的に補正して、撮像に必要な均一磁場空間を確保する方法、およびその方法を実現するにあたって必要な磁場分調整シムコイルとそれに通電する電流について説明する。なお、本実施例によれば、そのような電流は傾斜磁場コイルなどが配置される狭い空間に配置できる程度の導線(すなわち小電流)で実現できる。
また、以降では特に断らない限り、MRI装置100とは、後述する磁場分布調整シムコイルを適用したMRI装置とする。なお、本実施形態のMRI装置100は、磁場強度の変動が±1.5ppmの領域を磁場均一空間として形成し、トンネル型の筐体を有し、横方向に開口した水平型のMRI装置であるものとする。
本発明の第一の実施形態のMRI装置について、図2から図13を参照しながら説明する。以下、まず各図の簡単な概要を示す。
図2は、本実施例のMRI装置100の構造の概略を示す図である。図3は第一の実施形態のMRI装置における磁場空間の状態を示す図である。図4は第一の実施形態における超電導磁石装置が作る均一磁場空間の磁場強度分布を示す図であり、図5は第一の実施形態におけるシムコイルと対応する電流分布を計算する計算モデル図である。図6はシムコイルの配置を計算するために用いる固有モードを示した図であり、図7は7番目固有モードを使用して設計されたシムコイルを適用したMRI装置が形成する磁場空間の状態を示す図である。図8は9番目固有モードを使用して設計されたシムコイルを適用したMRI装置が形成する磁場空間の状態を示す図であり、図9は5番目固有モードを使用して設計されたシムコイルの通電方向を対称にした場合に作られる磁場空間の磁場強度について等高線を示す図である。図10は、シムコイルを構成する導線の配置間隔の例であり、図11はシムコイルを正負電流のコイルブロックで表した例である。図12は均一磁場空間を軸方向に拡張する場合と、半径方向に拡張する場合の固有モードを示している。
図2を用いてMRI装置100について説明する。図2はMRI装置100の主な構成を図示している。MRI装置100は図2に示すように、静磁場磁石4、傾斜磁場コイル格納部8、高周波照射コイル(図示せず)、被検体を乗せる寝台9、寝台を均一磁場空間2に対して挿入するように駆動する駆動機構(図示せず)などを有する。このうち均一磁場空間2は静磁場磁石4によって形成される。また均一磁場(静磁場)6は静磁場磁石4の一部であるメインコイル4aによって形成される。メインコイル4aは超電導コイルであって、所定の軸(Z軸)上に複数個が設置され、一方向に電流が通電されている、この複数のメインコイル4aが生じる磁場によって均一磁場2が形成される。なお、静磁場磁石4が小型である場合、特にZ軸方向の軸長が短くなると、Z軸方向において均一磁場空間2が短くなることは先に述べたとおりである。
本実施例に特徴的なシムコイル5は、主コイルに比べて撮像領域と対応する均一磁場空間2に近い位置に配置することが望ましい。このシムコイル5についての詳細は後述するものとし、ここでは配置について説明する。また本実施例における超電導磁石装置10は、静磁場磁石4とシムコイル5とを含む構成を指すものとする。また、均一磁場空間2は、静磁場磁石4と、図示しない従来シムコイル(後述する低次シムコイル)とによって、予め定められた均一性を満たす磁場(均一磁場6)が生成された空間を言う。なお、以降では特に断らない限り、従来シムコイルは静磁場磁石4の一部であるとみなして説明する。
シムコイル5を望ましい位置に配置するためには、傾斜磁場コイル格納部8の中に配置することが有効である。なお傾斜磁場コイル格納部8は3組の傾斜磁場コイル(それぞれ、主に傾斜磁場コイルをつくる主コイルと磁石側に磁場をシールドするシールドコイルを持つ)が納められる。傾斜磁場コイル格納部8には、従来から利用されていたシムコイル、静磁場をシミングする鉄片とそれを配置するシムトレイなどが配置されてもよい。なお従来シムコイルは、均一磁場空間2にわずかな誤差磁場が発生したときに補正する機能を有し、均一磁場空間2の拡張に用いられるものではない。従来シムコイルは低次(後述)のシムコイルが用いられる。本実施例においては、後述する特徴的なシムコイル5(高次の固有モードを反映したシムコイル)を用い、これが傾斜磁場コイル格納部8の中に配置されている。このような配置の実施例によれば、従来のMRI装置内の機器配置であってもシムコイル5を配置できる。
次に図3を用いてMRI装置100が形成可能な磁場空間について説明する。なお、図3に示す例は、特徴的なシムコイル5によって、均一磁場空間2がZ軸方向に拡張されている。拡張される前の均一磁場空間2は図4に示される。
図3に戻り説明を続ける。MRI装置等に用いられる静磁場磁石4は、強磁場を発生させる主コイル(MC)4aと、磁石外部で磁場を弱めるシールドコイル(SC)から構成される。なお、図3に示すようにブロック状に表されたコイルのことをコイルブロック(CB)と呼び、主コイルブロックはMC−CB、シールドコイルブロックはSC−CBと表記する。通常、MC−CB数は5から7個、SC−SB数は2個程度である。図3に示す静磁場磁石4は、図1(b)の短軸型の磁石と同じく6個のMC−CBおよび2個のSC―CBを有する。均一磁場空間では±1.5ppm以内の強弱の磁場変動を持ち、中心(Z=0、R=0)から離れると、この磁場変動が大きな振幅となり均一性を失っていく。この静磁場磁石4による均一磁場空間2の大きさについて、より詳細に説明する。
図3はMRI装置100の均一磁場空間2およびその周辺の磁場分布を表している。なお、磁場の強度分布と空間的な位置関係を分かりやすくするため、中心に対して直径40cm(半径20cm)および50cm(半径25cm)の球面を実線で示している。図3において縦に走っている線は磁力線である。打点領域は目標磁場1.5Tより磁場の強い領域であり、打点されていない領域は磁場が1.5Tより小さい領域である。また各MC−CBによる磁場の強度分布は、それぞれの方向から進展している凸状の実線で示した等高線で示している。これらの等高線のうち最も中心に向かって張り出している等高線の各頂点を結ぶ曲線が磁場均一空間2の外縁面2aとなる。
また図4より、図1(b)の体系における均一磁場空間2は、外縁面2aがZ軸方向において30cm程度であり、Z軸に直交する方向(R方向)において40cm以上に達し、楕円体様の形状となる。また、図中には、1.5T±1.5ppmの磁場均一空間の外縁面2aに対して、±0.2ガウス、±1.0ガウスの磁場等高線を示している。この±0.2ガウス、±1.0ガウスの磁場等高線は、おおむね直径40cm球、直径50cm球の実線と一致している。このことから、磁場均一空間2の外縁面2aからZ=±40cm位置までの領域は、目標磁場の1.5Tに対してわずか0.2ガウスのみ磁場強度が弱いだけであるため、この領域に微小な磁場(例えば0.2ガウス)の補正を施すことで、この領域を均一磁場空間に組み込むことが可能と考えられた。
以降では均一磁場空間2の外縁面2aの外側であって、磁場を補正することで均一磁場空間2に組み込むことができる領域を弱残差磁場領域と呼び、この弱残差磁場領域の誤差磁場を補正に関する考え、手順等を説明する。
弱残差磁場領域の誤差磁場を局所的に補正して、撮像に必要な均一磁場空間2を確保するような磁場分布調整シムコイル(以下、単にシムコイルと呼ぶ)は、次のような計算によって実現できる。
一般にMRI磁石の均一磁場は、コイルが作る磁場Bcb(シミングに利用した鉄片による磁場も含む)とシムコイルがつくる磁場Bsmから構成される。Bsmを作るシムコイルの電流分布を計算することがここでの議論の対象である。
一般に均一磁場空間2の磁場は、Z軸方向の磁場成分以外はきわめて弱いので、図2に示した均一磁場6の方向に沿ったZ軸方向成分のみを考えてよい。つまり、Bcb,Bsm共にZ軸方向成分のみについて検討したとしても磁場の均一性を解決できる。このような考えに基づく磁場設計は、例えば図1(a)の静磁場磁石4であれば、直径40cm球面を想定し、この球面上でBtgに近い値をとるように、MC−CBの配置や形状を検討するということになる。具体的な計算方法については、例えば特異値分解を応用し、R方向、Z方向の2次元(2D)の変数を有する状態でBtgを固有モードに展開し、得られた固有モードの強度が強いものからMC−CBの配置や断面形状へ反映させることで効率的な起磁力配置を実現できる。図1(a)に示す設計例であれば、6番目までの固有モード強度を、1.5T一様磁場を生成するように決め、7番目の固有モード強度を均一磁場空間とコイル経験磁界のトレードオフで決めている。このようなMC−CBの位置や形状を決める計算方法を応用することで、目的のシムコイルを実現できる。
具体的な計算体系は、数十点の磁場評価点(MFEP: Magnetic Field Evaluation Point)を配置し、磁場評価面上に配置する。その位置で作る磁場Bは、
Bi = Bcbi + Bsmi (1)
の加算で求められる。これらの磁場は位置iに依存している。
この式(1)から、求めるシムコイルは、Bcbと組み合わせされることによってBiと位置iにおけるBtgとが一致するような磁場Bsmを発生するものと定めることができる。なお位置iはMFEPに含まれる上に設定される地点であり、MFEPはBtgを実現したい領域の表面もしくはそれを内包する閉空間の表面に存在する地点と考えてよい。したがって、図2に示す静磁場磁石の体系であれば、Z軸方向と一致するような長軸を持つ縦長の楕円体の表面にMFEPを設定する。
以上のような前提に基づき、MFEPでBtg一様となるようにBsmを発生するシムコイルの配置・電流の大きさ等を計算した結果が、図1において矢印記号を用いて表現している線輪電流1である。なお、図1に示す例では、制約条件としてシムコイル5を構成する導線12が、R=40cm地点においてZ軸方向にわたって複数位置に配置されるものとしている。また、線輪電流1を表す矢印記号については、長さが電流の大きさを示し、向きは通電の方向としている。
また図2に示す静磁場磁石の体系は図1(b)と同様であるため、静磁場磁石4による均一磁場空間2は図4に示すように、Z軸方向の大きさは30cm程度に過ぎない。しかし、図3に示すような線輪電流1の分布を与えることによって、換言するとそのような電流分布を実現するシムコイル5を用いることによって、図1(b)に示すような短軸の静磁場磁石4であっても中心軸に沿って±20cmの範囲で±1.5ppmの均一磁場空間2を発生できることがわかる。なお図中に記載するように、線輪電流1の電流値のスケールは10A程度であって、同一符号の領域を合算しても、MC−CBに流れる電流(おおよそ1000kA程度)よりも5桁以上小さいものとなり、通電に必要な導線は小型でよいことも理解される。この電流値については以降で詳細に説明する。
また、図4に示されるように、本実施例におけるシムコイル5は、Z軸に沿って、超電導コイル4と同方向に通電される順方向部5aと、超電導コイル4と反対方向に通電される逆方向部5bと、を交互に有する。またZ軸方向における順方向部5aと逆方向部5bとの切り替えが、少なくとも4回以上現れ、かつZ軸方向における静磁場の両端位置よりも外側に少なくとも一つは配置されるように構成されている。望ましくは、均一磁場空間2の中心(Z=0、R=0)に対してZ軸方向において対称の分布であるとよい。また、順方向部5aは均一磁場6と同方向の磁場を生じ、逆方向部6bは均一磁場6と反対方向の磁場を生じ、それぞれの磁場が均一磁場6に重なることによって、均一磁場空間2の形状が変化する。これについても詳細は後述する。
図5を用いて線輪電流1の配置、大きさを求める計算体系について説明する。
図5は線輪電流1の配置例を示す。線輪電流1はZ軸に対してR=40cm、Z軸方向の長さが80cmの円筒状の領域に存在するものとしている。またこの円筒状の領域の内部には均一磁場空間2が存在し、MFEPは均一磁場空間の外縁付近に配置される。また電流分布3は、81本の線輪電流1を配置した体系を想定している。これらの条件の下、線輪電流1の各電流値Ijから撮像領域表面(ここでは球面)上の磁場評価点の磁場Biへの応答行列A、つまり
B = AI (2)
の行列Aの特異値分解(SVD)を解くことにより、Bsmの固有モードを得ることができる。
図6は図5の計算体系において取得される固有モードを表している。本図においては、固有モードの特異値の大きなものから1,2,3と番号を付け、9番目までの固有モードを示した。これらの固有モードを重ね合わせて、目的のシムコイルを設計する。
なお、従来のMRI装置でもシムコイルは付加されている。傾斜磁場コイル格納部の構造体中に納められていることが多い。これらのシムコイルと本実施例で求めるべきシムコイルとの違いは次のように説明できる。
従来のシムコイルは、撮像領域に入る人体などが、わずかに均一磁場を乱すためそれを補正するためのものであり、一様磁場、X,Y,Zの軸方向に線形な分布、X,XY,Zなどの2乗成分、さらにZα等の3乗成分までの補正として機能する。一方、これから議論する本実施例におけるシムコイル5は、静磁場磁石4による均一磁場空間2の外での磁場を補正するものであって、より高次成分の補正する機能を果たすものである。この意味で、図6の3次までのシムコイルを低次シムコイル、これ以上の次数に対応するシムコイルを高次シムコイルとすると、本実施例のシムコイル5はこの高次シムコイルに相当する。特異値分解の固有モードで5番目であるため、5次のシムコイルと呼ぶことにする。低次シムコイルに相当する磁場成分を調整するシムコイルは通常のMRI装置で既設置である
図6に戻り、より詳細に見ると、3番目固有モードの磁場分布はCOS(2θ)を反転させたような磁場分布であり、5番目はCOS(4θ)を反転させたような磁場分布を持つ。なお、これらの磁場分布は特異値分解に基づく分布であり、その理解を容易にするために三角関数の例を提示したが、正確に三角関数と一致するということ意味するものではない。山谷数が一致するという意味で、「ような」と言う表現とした。以降の議論では高次の固有モードに関しシムコイルの成立性を取り扱う。なおこれらの磁場分布は、特異値分解SVDによる固有モードで議論しているので、球面調和関数に基礎を置く1乗、2乗、3乗のシムコイルとは、それぞれCOS(θ)、COS(2θ)、COS(3θ)磁場の成分を持つ磁場分布で有り、図6の5番目固有モードは、高次であると言える。そのため、磁場及び電流分布のピーク数も多くなっている。
各固有モードについて説明する。図6おいては、縦軸がZ方向位置と対応し、横軸はR方向位置と対応している。また各固有モードの図において、中心(Z=0、R=0)から放射方向の矢印で示しされたものはそれぞれの固有モードにおける磁場の分布である。なお、各固有モードによる実際の磁場は全て軸方向を向いているが、理解を容易にするため放射状にしており、矢印の方向は、外側がBzと同方向(正)、内側が逆方向(負)で有ることを示している。
また各固有モードにおいてR=0.4mの位置にZ軸方向に沿って配置された矢印は線輪電流1の電流分布(電流分布パターン)を示し、矢印の向きは電流の向きと、矢印の長さは電流の大きさを示す。例えば固有モード番号が1番の場合は、電流の向きはMC−CB4aと同方向(正方向)であって、電流はZ=0mの周辺が大きく、軸方向端部(±0.6m付近)に向かうほど小さくなる分布を示している。
また各固有モードの図中の数値は、上側の整数は固有モード番号で、奇数である。偶数番号は軸方向に非対称であるため省略している。固有モード番号は、電流分布および磁場のピーク数(正負の両方数を数える)と一致する。
また各固有モードの図中には固有モード番号の下方に数値が記されている。この数値は特異値であり、T/Aの次元を持ち、単位電流あたりに発生できる磁場強度を表す。つまり、固有モード番号が5番であれば、おおむねT/Aが10のマイナス6乗程度のオーダとなり、100A(ノルムであり各矢印の線電流は2乗平均)で1ガウス程度の磁場が発生できることを示している。
なお、ここで考慮すべき電流の大きさは、図5で示す81個の線輪電流1に通電される電流のノルムである。したがって1本の線輪電流あたりに通電される電流値は、100Aであればその二乗平均値から求められ、100/9=10(A/本)であり、シムコイルとして十分作成できる電流の大きさと言える。以降では固有モード番号を7番まで利用するケースと、9番までを利用するケースについて例を示す。
図7は7番目固有モードを使ってシムコイル5を設計した場合の線輪電流1の電流分布と、磁場強度の分布とを示している。また図7は、得られた電流分布の働きによって、図4に示す均一磁場空間2をZ軸方向に拡大するように変形させている。固有モード番号が7番の場合、図6に示ようにT/Aが10のマイナス7乗程度のオーダとなるため、1ガウス程度の磁場を発生させるためには1000A以上の電流が必要となり、二乗平均を取ると、図7に示すように100A以上の電流が1本の線輪電流1あたり必要となる。また図7には、参考として電流値の基準値11として、100Aを示す矢印を基準の矢印長さとして併記している。
また、このことから固有モード番号(特異値の大きなものから順番をつけている)が大きくなり、特異値が小さくなると必要な電流も大きくなると理解される。この意味において更に次数の大きな9番目固有モードに相当するシムコイルは、更に大きな電流が必要であり、より製作が難しくなる。具体的には図8により説明する。
図8は9番目固有モードを使いシムコイル5を設計する場合の線輪電流1の電流分布と磁場強度分布とを示している。また図8は、図7と同様に得られた電流分布の働きによって、図4に示す均一磁場空間2をZ軸方向に向かって拡大するように変形させている。この例において、シムコイル5は1000A以上の電流を持つ線輪電流1の集合になっており、超伝導化するかもしくは常伝導コイルで製作するとしても大規模な冷却を検討することになり、均一磁場空間2を変形させることは現実的に困難となる。
ところで、均一磁場空間2の変形はZ軸方向に長くするだけでなく、R方向に広く変形させることもある。この場合を図9に示す。図9(a)は均一磁場空間2をZ軸方向へ拡大した場合を示し、図9(b)は、均一磁場空間2をR方向に拡大した場合を示す。それぞれ図において、均一磁場空間2をZ軸方向に拡張する場合は、順方向部5aがZ軸方向の両端に現れるようにシムコイル5の電流分布が制御され、R方向に拡張する場合は、逆方向部5bがZ軸方向の両端に現れるようにシムコイル5の電流分布が制御される。なお、いずれも5番目(5次)までの固有モードを使ってシムコイル5を設計している。
また図9(a)(b)は、均一磁場空間2を変形させるために必要な線輪電流1の電流分布も図上に示した。二つの図を比較すると、Z軸方向に均一磁場空間2を拡大する場合に対してR方向に均一磁場空間2を拡大する場合、電流分布が反対向となることが示された。これは、シムコイル5の設計に利用した固有モードのなかで、比較的大きな磁場を発生させることができ、かつ必要な電流が二つの変形間で反転するものが存在することを示している。これについて図12の表1および表2を確認する。図12は、均一磁場空間2を拡張する場合に必要なBsmの固有モードを列挙しており、表1がZ軸方向に均一磁場空間を拡張する場合、表2がR方向に拡張する場合を示している。なお表1および表2ともに9番目までの固有モードを挙げている。
図12の表1および表2によれば、5番目の固有モードが比較的強度が強く、かつ、両ケースにおける磁場の向きに関する変更の度合いが大きい。つまり、均一磁場空間2のZ軸方向およびR方向の変形は、主に5番目の固有モードの磁場分布に起因すると考えられる。なおこのことは1,3、7、9番目の固有モードの寄与が相対的に小さいことからも妥当と言える。すなわち、1,3番目の固有モードは磁場強度および電流がきわめて弱いため、変形に寄与するところが小さい。7番目固有モードは電流の方向は変化せず、ただ強度が弱まっているのみであるため両ケースにおいて作る磁場の向きは同じであって変形の主要因とはならない。9番目の固有モードも、電流は大きいものの発生する磁場は極めて弱く半径方向に均一磁場空間2を拡大する上ではほぼ機能していない。
以上からいえることは、5番目の固有モードを利用したシムコイルを設計し、正負で電流方向を変えることで、均一磁場空間2の拡張方向を変更することが可能である。また、弱残差磁場領域とシムコイル5との位置関係で、シムコイル5に通電すべき電流は向き(正負)だけでなく、その大きさも異なる。そのため、電流値の調整も必要であるが、一度あらかじめ決めておけば、撮像毎に均一磁場空間2の拡大のために電流値を調整することは不要である。したがって撮像時に必要な均一磁場空間2の形状にしたがって、シムコイル5における電流の正負切り替え制御を実施すればよい。また、均一磁場空間2の形状について、Z軸方向の拡張モード、R方向の拡張モード、拡張しないデフォルトモードなどを設定しておき、それぞれに対応するよう電流の正負反転、電流のオンオフ制御をできるように構成してもよい。また必要ならば電流値を調整してもよい。
また、本実施例で説明したシムコイル5は5番目(5次)の固有モードを利用して設計している。低次の固有モードに対応する低次シムコイルはすでに傾斜磁場コイル格納部8の内部に設置されている。これらの低次の固有モードは、静磁場磁石4が形成する本来の均一磁場空間2の均一性に寄与している。そこで更に本実施例のシムコイル5が設けられ、低次シムコイルと協調して用いることによって、中心(Z=0、R=0)における磁場の均一性を保ちつつ均一磁場空間2の形状をZ軸方向あるいはR方向へ拡張することが可能である。この点は図9(a)(b)に示すとおりである。
ところで、ここまでは各固有モードの特徴から均一磁場空間2の拡張に対する適否を議論したが、5番目(5次)の固有モードの意味を異なる見方で説明する。
まず図4を確認する。この図によれば、静磁場磁石4による磁場は、R=0m、Z=0.15〜0.2m(及びZ=−0.15〜−0.20)の領域で均一磁場に対してわずかに弱く、撮像に適した均一性を保てなくなっている。一方、R=0m、Z=−0.13m〜+0.13mではわずかに中心磁場1.5Tよりわずかに強くなっている。この意味で、軸方向の磁場分布を補正するには、Z=0.15〜0.2m(及びZ=−0.15〜−0.20)の領域で磁場をわずかに強め、その間であるR=0m、Z=−0.13m〜+0.13mで磁場をわずかに弱めるような磁場調整を行うシムコイルが必要である。このような磁場分布は、図6の5番目の固有モードが持っている磁場分布である。
ただし、図6の5番目の固有モードでは、Z=0mで磁場を強める電流分布となっているが、これは、Z=0m、R=0.20−0.25m領域の磁場を補正し、半径方向の均一磁場を広げる役を持たせることが出来る。これが、電流方向を逆にした場合である。この意味でも電流方向が軸方向に変化し、正負で5カ所に電流ピークを持つ高次シムコイルの役割を理解できる。
表1、2からわかるように7番目(7次)の固有モードの電流方向は変わらない。つまり、7番目(7次)シムコイルの電流方向変更は不要であり、電流値のみの調整で良い。また、無くても均一磁場空間の補正が出来ることが、これまでの議論から解る。
このように、正負で5カ所の電流ピークを持ち、円筒状に配置した高次のシムコイル5を用いると、均一磁場空間を変形させることが出来る。
より具体的には、図10に示すように、本実施例の超電導磁石装置は、Z軸上同軸に配置された複数の超電導コイル4と、超電導コイル4と同軸上に巻き回された導線12から構成されるシムコイル5とを主な構成として有し、超電導の主コイル4aはいずれも同方向に通電され、予め定められた均一性を有する静磁場を形成する。そしてシムコイル5は、Z軸に沿って、超電導コイル4と同方向に通電される順方向部5aと、超電導主コイル4aと反対方向に通電される逆方向部5bと、を交互に有する。またZ軸方向における順方向部5aと逆方向部5bとの切り替えが、少なくとも4回以上現れ、かつZ軸方向における均一磁場空間の両端位置よりも外側に少なくとも一つは配置されるように構成され,主コイルの両端より短い範囲で配置されている。このようなシムコイルの設計は特異値分解に依らなくても可能であろうが、しかし、特異値分解によるシムコイルとすることで、機能に対して小電流によるシムコイルが設計でき、拡張したい領域に対して最適な電流配置を提供できる。
また、本実施例のシムコイル5における順方向部5aおよび逆方向部5bは、このような有限個の固有モード、すなわち有限個の異なる電流分布パターンの組み合わせとして得られる電流分布と対応し、それぞれの電流分布パターンは、Z軸を中心軸とする仮想的な円筒面上に分布する線輪電流1の群と、線輪電流1の群によって形成される磁場分布Bsmとの応答行列との関係から求めることが可能である。
このような超電導磁石装置を利用すれば、短軸型の静磁場磁石4を採用するような小型のMRI用磁石でも、静磁場磁石4の本来の静磁場の大きさを拡張し、より軸長の長い静磁場磁石と同様に、撮像部位に合わせた形状の均一磁場空間2を確保することができる。
なお以上の議論の中では高次シムコイルに流れるべき電流について、各線輪電流の電流値が矢印の大きさに沿って異なるものとして磁場計算をしているが、実際にはそのような配線・コイル化は難しい。そこで採り得る対応として、電流値は一定として、導線の配置間隔を調整し、かつ電流方向を制御するとよい。以下、配置間隔の考え方については図10および図11の二つがあるため、それぞれ説明する。
図10を用いて導線の配置間隔を調整する考え方について説明する。図10は、5番目の固有モードを使った場合に求められる線輪電流1の電流分布と、導線の配置間隔との関係を模式的に示している。図中では、太い矢印が電流方向7を示し、細い実線が導線12を示している。また、この図に示す線輪電流1の電流分布は、図9(a)に示す軸方向に均一磁場空間を拡大する場合に対応している。
この考え方では、導線12の間隔を図3などで示してきた電流値に反比例させることで、電流値の大小を実現する。具体的には、図10の上部に示す線輪電流1の電流値が大きいところは導線12の間隔を狭めて密集した配置とし、電流値が小さいところは導線12の配置間隔を広げ疎な配置とする。この配置は、おおむね順方向部5aと逆方向部5bに含まれる箇所を密とし、切り替えの箇所を疎となるように巻線することで実現され、図中では点線矢印を使って、線輪電流1の分布に関するピークと導線12の巻き線密度との対応を示している。これまで議論のしたように5番目の固有モードを利用しているため、正負併せて5個の電流ピーク位置が存在し、その分布が反映されたシムコイル5は電流ピーク位置で巻き線密度も濃い。また各ピーク部分に100A程度の電流が必要なので、ピークに対応する位置に配置された各導線12に通電すべき電流は20A程度である。巻き線数を増やせば、それに応じて電流値は按分されるため、各導線12に通電すべき電流値は下がる。したがって使用する電源を考慮して巻き線数は決めればよい。また図10の上部に示した線輪電流1の電流分布にしたがって制御すればよい。また図10に示すシムコイル5について、通電する電流の方向を逆にすると、図9(b)に示すようにR方向に均一磁場空間2を拡張できる。
図11は先に述べた導線12の配置間隔に関するもう一つの考え方を図示している。このもう一つの考え方とは、シムコイル5をCB群として捉えて構成する場合である。図11の上部は図10と同様に線輪電流1の電流値分布を示し、下側に対応するシムコイルCBを示している。この方法では、線輪電流で均一磁場空間の拡張に必要であった固有モード強度と同じ固有モード強度をCB群で実現するような計算を実行する。この計算方法で、図11のCB群が、図3と同じような磁場分布を実現できる。なおCB群への置き換えにより、図11の例であれば5番目の固有モード番号以下の固有モードは同じ強さが実現でき、CB群に置き換えた設計(例えば非特許文献1及び2の方法)とすることで、製作は容易になる。
以上の議論のように、本発明を適用すれば、正負の電流方向の5個のピークを持つ、円筒状に配置されたシムコイルを用いることで、MRI用磁石の軸方向もしくは半径方向の均一磁場空間2を撮像対象にあわせて拡張することが可能である。
1 線輪電流
2 均一磁場空間
2a 外縁部
3 電流分布
4 静磁場磁石(超電導磁石装置)
4a 主コイルブロック(超電導コイル)
5 シムコイル
5a 順方向部
5b 逆方向部
6 均一磁場(静磁場)
7 電流方向
8 傾斜磁場コイル格納部
9 ベッド
11 電流値の基準値
12 導線
Z 中心軸
R 半径方向

Claims (6)

  1. 所定の軸上に配置された複数の超電導コイルと、
    前記超電導コイルと同軸上に巻き回された導線から構成されるシムコイルと、を備え、
    前記複数の超電導コイルはいずれも同方向に通電され、該複数の超電導コイルの軸方向の中心を含む領域に、予め定められた均一性を有する静磁場を形成し、
    前記シムコイルは、
    前記軸に沿って、前記超電導コイルと同方向に通電される順方向部と、前記超電導コイルと反対方向に通電される逆方向部と、を交互に有し、
    前記軸方向における前記順方向部と前記逆方向部が5個配置され、かつ前記軸方向における前記静磁場の両端よりも外側に少なくとも一つは前記順方向部又は前記逆方向部が配置されるように構成され
    前記順方向部および前記逆方向部は、前記軸を中心軸とする仮想的な円筒面上に分布する線輪電流群と前記線輪電流群によって形成される磁場分布との応答行列を特異値分解によって得られる、電流ピークが正負合計して5個のピーク数である5次の固有モードに対応した電流分布パターンを含み、前記5次の固有モードに対応した電流分布パターンによる磁場分布が前記静磁場の軸方向において5個のピークを持つことが反映された
    ことを特徴とする超電導磁石装置。
  2. 請求項1に記載の超電導磁石装置であって、
    前記シムコイルは、前記軸方向における両端に前記順方向部が配置されるように構成された
    ことを特徴とする超電導磁石装置。
  3. 請求項2に記載の超電導磁石装置であって、
    前記複数の超電導コイルは、前記軸方向の中心からの該軸方向の幅が±0.15mとなるように前記静磁場を発生し、
    前記シムコイルは、前記軸方向の中心から該軸方向に±(0.15mから0.2m)の位置で前記静磁場と同方向の磁場を発生する
    ことを特徴とする超電導磁石装置。
  4. 請求項1から請求項のいずれか1項に記載の超電導磁石装置であって、
    前記シムコイルを構成する導線の巻線間隔が、前記順方向部と前記逆方向部に含まれる箇所において前記順方向部と前記逆方向部との間に存在する導線の巻線間隔よりも密となるよう構成された
    ことを特徴とする超電導磁石装置。
  5. 請求項1から請求項のいずれか1項に記載の超電導磁石装置であって、
    前記静磁場は、前記軸方向における幅に対して、前記軸に直交する方向における幅が大きい
    ことを特徴とする超電導磁石装置。
  6. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の超電導磁石装置と、
    前記静磁場に対して傾斜磁場を重畳する傾斜磁場コイルと、
    前記静磁場が形成された空間に高周波磁場を印加する高周波コイルと、
    前記静磁場が形成された空間に被検体を挿入するカウチと、
    を備えた磁気共鳴イメージング装置であって、
    前記シムコイルおよび前記傾斜磁場コイルが格納される傾斜磁場コイル格納部を更に有し、
    前記傾斜磁場コイル格納部が前記複数の超電導コイルのいずれよりも内径側に配置される
    ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
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