本実施形態に係る冷凍機油は、潤滑油基油と、ジフェニルハイドロジェンホスファイトとを含有する。
潤滑油基油としては、炭化水素油、含酸素油などを用いることができる。炭化水素油としては、鉱油系炭化水素油、合成系炭化水素油が例示される。含酸素油としては、エステル、エーテル、カーボネート、ケトン、シリコーン、ポリシロキサンが例示される。
鉱油系炭化水素油は、パラフィン系、ナフテン系などの原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤精製、水素化精製、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化脱ろう、白土処理、硫酸洗浄などの方法で精製することによって得ることができる。これらの精製方法は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
合成系炭化水素油としては、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリα−オレフィン(PAO)、ポリブテン、エチレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられる。
アルキルベンゼンとしては、下記アルキルベンゼン(A)及び/又はアルキルベンゼン(B)を用いることができる。
アルキルベンゼン(A):炭素数1〜19のアルキル基を1〜4個有し、かつそのアルキル基の合計炭素数が9〜19であるアルキルベンゼン(好ましくは、炭素数1〜15のアルキル基を1〜4個有し、かつアルキル基の合計炭素数が9〜15であるアルキルベンゼン)
アルキルベンゼン(B):炭素数1〜40のアルキル基を1〜4個有し、かつそのアルキル基の合計炭素数が20〜40であるアルキルベンゼン(好ましくは、炭素数1〜30のアルキル基を1〜4個有し、かつアルキル基の合計炭素数が20〜30であるアルキルベンゼン)
アルキルベンゼン(A)が有する炭素数1〜19のアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(すべての異性体を含む、以下同様)、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基が挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖状であっても、分枝状であってもよく、安定性、粘度特性等の点から分枝状であることが好ましい。特に入手可能性の点から、プロピレン、ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基がより好ましい。
アルキルベンゼン(A)中のアルキル基の個数は、1〜4個であり、安定性、入手可能性の点から、好ましくは1個又は2個(すなわちモノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、又はこれらの混合物)である。
アルキルベンゼン(A)は、単一構造のアルキルベンゼンのみを含有していてもよく、炭素数1〜19のアルキル基を1〜4個有し、かつアルキル基の合計炭素数が9〜19であるという条件を満たすアルキルベンゼンであれば、異なる構造を有するアルキルベンゼンの混合物を含有していてもよい。
アルキルベンゼン(B)が有する炭素数1〜40のアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(すべての異性体を含む、以下同様)、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、テトラトリアコンチル基、ペンタトリアコンチル基、ヘキサトリアコンチル基、ヘプタトリアコンチル基、オクタトリアコンチル基、ノナトリアコンチル基、テトラコンチル基が挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖状であっても、分枝状であってもよく、安定性、粘度特性等の点から分枝状であることが好ましい。特に入手可能性の点から、プロピレン、ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基がより好ましい。
アルキルベンゼン(B)中のアルキル基の個数は、1〜4個であり、安定性、入手可能性の点から、好ましくは1個又は2個(すなわちモノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、又はこれらの混合物)である。
アルキルベンゼン(B)は、単一構造のアルキルベンゼンのみを含有していてもよく、炭素数1〜40のアルキル基を1〜4個有し、かつアルキル基の合計炭素数が20〜40であるという条件を満たすアルキルベンゼンであれば、異なる構造を有するアルキルベンゼンの混合物を含有していてもよい。
ポリα−オレフィン(PAO)は、例えば末端の一方にのみ二重結合を有する炭素数6〜18の直鎖オレフィンの数分子を重合させ、次に水素添加して得られる化合物である。ポリα−オレフィンは、例えば炭素数10のα−デセン又は炭素数12のα−ドデセンの3量体あるいは4量体を中心とする分子量分布を有するイソパラフィンであってよい。
エステルとしては、芳香族エステル、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、コンプレックスエステル、炭酸エステル及びこれらの混合物などが例示される。エステルとしては、ポリオールエステル又はコンプレックスエステルが好ましい。
ポリオールエステルは、多価アルコールと脂肪酸とのエステルである。脂肪酸としては、飽和脂肪酸が好ましく用いられる。脂肪酸の炭素数は、4〜20であることが好ましく、4〜18であることがより好ましく、4〜9であることが更に好ましく、5〜9であることが特に好ましい。ポリオールエステルは、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残っている部分エステルであってもよく、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであってもよく、また部分エステルと完全エステルとの混合物であってもよい。ポリオールエステルの水酸基価は、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以下、更に好ましくは3mgKOH/g以下である。
ポリオールエステルを構成する脂肪酸のうち、炭素数4〜20の脂肪酸の割合が20〜100モル%であることが好ましく、50〜100モル%であることがより好ましく、70〜100モル%であることが更に好ましく、90〜100モル%であることが特に好ましい。
炭素数4〜20の脂肪酸としては、具体的には、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸が挙げられる。これらの脂肪酸は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。さらに具体的には、α位及び/又はβ位に分岐を有する脂肪酸が好ましく、2−メチルプロパン酸、2−メチルブタン酸、2−メチルペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−メチルヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−エチルヘキサデカン酸などがより好ましく、中でも2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸が更に好ましい。
脂肪酸は、炭素数4〜20の脂肪酸以外の脂肪酸を含んでいてもよい。炭素数4〜20の脂肪酸以外の脂肪酸としては、例えば炭素数21〜24の脂肪酸であってよい。具体的には、ヘンイコ酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸等が挙げられる。これらの脂肪酸は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
ポリオールエステルを構成する多価アルコールとしては、2〜6個の水酸基を有する多価アルコールが好ましく用いられる。多価アルコールの炭素数としては、4〜12が好ましく、5〜10がより好ましい。具体的には、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのヒンダードアルコールが好ましい。冷媒との相溶性及び加水分解安定性に特に優れることから、ペンタエリスリトール、又はペンタエリスリトールとジペンタエリスリトール)との混合エステルがより好ましい。
コンプレックスエステルは、例えば以下の(a)又は(b)の方法で合成されるエステルである。
(a)多価アルコールと多塩基酸とのモル比を調整して、多塩基酸のカルボキシル基の一部がエステル化されずに残存するエステル中間体を合成し、次いでその残存するカルボキシル基を一価アルコールでエステル化する方法
(b)多価アルコールと多塩基酸とのモル比を調整して、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化されずに残存するエステル中間体を合成し、次いでその残存する水酸基を一価脂肪酸でエステル化する方法
上記(b)の方法により得られるコンプレックスエステルは、冷凍機油としての使用時に加水分解すると比較的強い酸が生成するため、上記(a)の方法により得られるコンプレックスエステルに比べて安定性が若干劣る傾向にある。本実施形態におけるコンプレックスエステルとしては、安定性のより高い、上記(a)の方法により得られるコンプレックスエステルが好ましい。
コンプレックスエステルは、好ましくは、2〜4個のヒドロキシル基を有する多価アルコールから選ばれる少なくとも1種と、炭素数6〜12の多塩基酸から選ばれる少なくとも1種と、炭素数4〜18の一価アルコール及び炭素数2〜12の一価脂肪酸から選ばれる少なくとも1種とから合成されるエステルである。
2〜4個のヒドロキシル基を有する多価アルコールとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。2〜4個のヒドロキシル基を有する多価アルコールとしては、コンプレックスエステルを基油として用いたときに好適な粘度を確保し、良好な低温特性を得られる観点から、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンが好ましく、幅広く粘度調整のできる観点から、ネオペンチルグリコールがより好ましい。
潤滑性に優れる観点から、コンプレックスエステルを構成する多価アルコールが、2〜4個のヒドロキシル基を有する多価アルコールに加えて、ネオペンチルグリコール以外の炭素数2〜10の二価アルコールを更に含有することが好ましい。ネオペンチルグリコール以外の炭素数2〜10の二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。これらの中では、潤滑油基油の特性に優れる観点から、ブタンジオールが好ましい。ブタンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールなどが挙げられる。これらの中では、良好な特性が得られる観点から、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールがより好ましい。ネオペンチルグリコール以外の炭素数2〜10の二価アルコールの量は、2〜4個のヒドロキシル基を有する多価アルコール1モルに対して、1.2モル以下であることが好ましく、0.8モル以下であることがより好ましく、0.4モル以下であることが更に好ましい。
炭素数6〜12の多塩基酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、トリメリット酸などが挙げられる。これらの中でも、合成されたエステルの特性のバランスに優れ、入手が容易である観点から、アジピン酸、セバシン酸が好ましく、アジピン酸がより好ましい。炭素数6〜12の多塩基酸の量は、2〜4個のヒドロキシル基を有する多価アルコール1モルに対して、0.4モル〜4モルであることが好ましく、0.5モル〜3モルであることがより好ましく、0.6モル〜2.5モルであることが更に好ましい。
炭素数4〜18の一価アルコールとしては、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコールが挙げられる。これらの一価アルコールは、直鎖状であっても分岐状であってもよい。炭素数4〜18の一価アルコールは、特性のバランスの点から、好ましくは炭素数6〜10の一価アルコールであり、より好ましくは炭素数8〜10の一価アルコールである。これらの中でも、合成されたコンプレックスエステルの低温特性が良好になる観点から、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチルヘキサノールが更に好ましい。
炭素数2〜12の一価脂肪酸としては、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸などが挙げられる。これらの一価脂肪酸は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。炭素数2〜12の一価脂肪酸は、好ましくは炭素数8〜10の一価脂肪酸であり、これらの中でも低温特性の観点から、より好ましくは2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸である。
エーテルとしては、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、パーフルオロエーテル及びこれらの混合物などが例示される。エーテルとしては、ポリビニルエーテル又はポリアルキレングリコールが好ましく、ポリビニルエーテルがより好ましい。
ポリビニルエーテルは、下記式(1)で表される構造単位を有する。
[式(1)中、R
1、R
2及びR
3は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭化水素基を表し、R
4は二価の炭化水素基又は二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表し、R
5は炭化水素基を表し、mは0以上の整数を表す。mが2以上である場合には、複数のR
4は互いに同一でも異なっていてもよい。]
R1、R2及びR3で表される炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、また、好ましくは8以下、より好ましくは7以下、更に好ましくは6以下である。R1、R2及びR3の少なくとも1つが水素原子であることが好ましく、R1、R2及びR3の全てが水素原子であることがより好ましい。
R4で表される二価の炭化水素基及びエーテル結合酸素含有炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。R4で示される二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基は、例えばエーテル結合を形成する酸素を側鎖に有する炭化水素基であってもよい。
R5は、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。この炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アリール基、アリールアルキル基などが挙げられる。これらの中でも、アルキル基が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましい。
mは、好ましくは0以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは2以上であり、また、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下である。ポリビニルエーテルを構成する全構造単位におけるmの平均値は、0〜10であることが好ましい。
ポリビニルエーテルは、式(1)で表される構造単位から選ばれる1種で構成される単独重合体であってもよく、式(1)で表される構造単位から選ばれる2種以上で構成される共重合体であってもよく、式(1)で表される構造単位と他の構造単位とで構成される共重合体であってもよい。ポリビニルエーテルが共重合体であることにより、冷凍機油の冷媒との相溶性を満足しつつ、潤滑性、絶縁性、吸湿性等を一層向上させることができる。この際、原料となるモノマーの種類、開始剤の種類、共重合体における構造単位の比率等を適宜選択することにより、上記の冷凍機油の諸特性を所望のものとすることが可能となる。共重合体は、ブロック共重合体又はランダム共重合体のいずれであってもよい。
ポリビニルエーテルが共重合体である場合、当該共重合体は、上記式(1)で表され且つR5が炭素数1〜3のアルキル基である構造単位(1−1)と、上記式(1)で表され且つR5が炭素数3〜20、好ましくは3〜10、更に好ましくは3〜8のアルキル基である構造単位(1−2)と、を有することが好ましい。構造単位(1−1)におけるR5としてはエチル基が特に好ましく、構造単位(1−2)におけるR5としてはイソブチル基が特に好ましい。ポリビニルエーテルが上記の構造単位(1−1)及び(1−2)を有する共重合体である場合、構造単位(1−1)と構造単位(1−2)とのモル比は、5:95〜95:5であることが好ましく、20:80〜90:10であることがより好ましく、70:30〜90:10であることが更に好ましい。当該モル比が上記範囲内であると、冷媒との相溶性をより向上させることができ、吸湿性を低くすることができる傾向にある。
ポリビニルエーテルは、上記式(1)で表される構造単位のみで構成されるものであってもよいが、下記式(2)で表される構造単位を更に有する共重合体であってもよい。この場合、共重合体はブロック共重合体又はランダム共重合体のいずれであってもよい。
[式(2)中、R
6〜R
9は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
ポリビニルエーテルは、式(1)で表される構造単位に対応するビニルエーテル系モノマーの重合、又は、式(1)で表される構造単位に対応するビニルエーテル系モノマーと式(2)で表される構造単位に対応するオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとの共重合により製造することができる。式(1)で表される構造単位に対応するビニルエーテル系モノマーとしては、下記式(3)で表されるモノマーが好適である。
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びmは、それぞれ式(1)中のR
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びmと同一の定義内容を示す。]
ポリビニルエーテルは、以下の末端構造(A)又は(B)を有することが好ましい。
(A)一方の末端が、式(4)又は(5)で表され、かつ他方の末端が式(6)又は(7)で表される構造。
[式(4)中、R
11、R
21及びR
31は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R
41は炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R
51は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは式(1)中のmと同一の定義内容を示す。mが2以上の場合には、複数のR
41は互いに同一でも異なっていてもよい。]
[式(5)中、R
61、R
71、R
81及びR
91は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
[式(6)中、R
12,R
22及びR
32は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R
42は炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R
52は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは式(1)中のmと同一の定義内容を示す。mが2以上の場合には、複数のR
41は同一でも異なっていてもよい。]
[式(7)中、R
62、R
72、R
82及びR
92は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
(B)一方の末端が上記式(4)又は(5)で表され、かつ他方の末端が下記式(8)で表される構造。
[式(8)中、R
13、R
23及びR
33は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。]
このようなポリビニルエーテルの中でも、以下に挙げる(a),(b),(c),(d)及び(e)のポリビニルエーテルが基油として特に好適である。
(a)一方の末端が式(4)又は(5)で表され、かつ他方の末端が式(6)又は(7)で表される構造を有し、式(1)におけるR1、R2及びR3がいずれも水素原子、mが0〜4の整数、R4が炭素数2〜4の二価の炭化水素基、R5が炭素数1〜20の炭化水素基であるポリビニルエーテル。
(b)式(1)で表される構造単位のみを有するものであって、一方の末端が式(4)で表され、かつ他方の末端が式(6)で表される構造を有し、式(1)におけるR1、R2及びR3がいずれも水素原子、mが0〜4の整数、R4が炭素数2〜4の二価の炭化水素基、R5が炭素数1〜20の炭化水素基であるポリビニルエーテル。
(c)一方の末端が式(4)又は(5)で表され、かつ他方の末端が式(8)で表される構造を有し、式(1)におけるR1、R2及びR3がいずれも水素原子、mが0〜4の整数、R4が炭素数2〜4の二価の炭化水素基、R5が炭素数1〜20の炭化水素基であるポリビニルエーテル。
(d)式(1)で表される構造単位のみを有するものであって、一方の末端が式(5)で表され、かつ他方の末端が式(8)で表される構造を有し、式(1)におけるR1、R2及びR3がいずれも水素原子、mが0〜4の整数、R4が炭素数2〜4の二価の炭化水素基、R5が炭素数1〜20の炭化水素基であるポリビニルエーテル。
(e)上記(a),(b),(c)及び(d)のいずれかであって、式(1)におけるR5が炭素数1〜3の炭化水素基である構造単位と該R5が炭素数3〜20の炭化水素基である構造単位とを有するポリビニルエーテル。
ポリビニルエーテルの不飽和度は、0.04meq/g以下であることが好ましく、0.03meq/g以下であることがより好ましく、0.02meq/g以下であることが更に好ましい。ポリビニルエーテルの過酸化物価は、10.0meq/kg以下であることが好ましく、5.0meq/kg以下であることがより好ましく、1.0meq/kgであることが更に好ましい。ポリビニルエーテルのカルボニル価は、100重量ppm以下であることが好ましく、50重量ppm以下であることがより好ましく、20重量ppm以下であることが更に好ましい。ポリビニルエーテルの水酸基価は、10mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、3mgKOH/g以下であることが更に好ましい。
本発明における不飽和度、過酸化物価及びカルボニル価は、それぞれ日本油化学会制定の基準油脂分析試験法により測定した値をいう。すなわち、本発明における不飽和度は、試料にウィス液(ICl−酢酸溶液)を反応させ、暗所に放置し、その後、過剰のIClをヨウ素に還元し、ヨウ素分をチオ硫酸ナトリウムで滴定してヨウ素価を算出し、このヨウ素価をビニル当量に換算した値(meq/g)をいう。本発明における過酸化物価は、試料にヨウ化カリウムを加え、生じた遊離のヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定し、この遊離のヨウ素を試料1kgに対するミリ当量数に換算した値(meq/kg)をいう。本発明におけるカルボニル価は、試料に2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを作用させ、発色性あるキノイドイオンを生ぜしめ、この試料の480nmにおける吸光度を測定し、予めシンナムアルデヒドを標準物質として求めた検量線を基に、カルボニル量に換算した値(重量ppm)をいう。本発明における水酸基価は、JIS K0070:1992に準拠して測定された水酸基価を意味する。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどが例示される。ポリアルキレングリコールは、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン等を構造単位として有する。これらの構造単位を有するポリアルキレングリコールは、それぞれモノマーであるエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドを原料として、開環重合により得ることができる。
ポリアルキレングリコールとしては、例えば下記式(9)で表される化合物が挙げられる。
Rα−[(ORβ)f−ORγ]g (9)
[式(9)中、Rαは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアシル基又は2〜8個の水酸基を有する化合物の残基を表し、Rβは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rγは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアシル基を表し、fは1〜80の整数を表し、gは1〜8の整数を表す。]
Rα、Rγで表されるアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。当該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜6である。アルキル基の炭素数が10を超えると、冷媒との相溶性が低下する傾向にある。
Rα、Rγで表されるアシル基のアルキル基部分は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アシル基の炭素数は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜6である。当該アシル基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。
Rα、Rγで表される基が、ともにアルキル基である場合、あるいはともにアシル基である場合、Rα、Rγで表される基は同一でも異なっていてもよい。gが2以上の場合、同一分子中の複数のRα、Rγで表される基は同一でも異なっていてもよい。
Rαで表される基が2〜8個の水酸基を有する化合物の残基である場合、この化合物は鎖状であっても環状であってもよい。
Rα、Rγのうちの少なくとも1つは、相溶性に優れる観点から、好ましくはアルキル基、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、更に好ましくはメチル基である。熱・化学安定性に優れる観点からは、RαとRγとの両方が、好ましくはアルキル基、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、更に好ましくはメチル基である。製造容易性及びコストの観点からは、Rα及びRγのいずれか一方がアルキル基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)であり、他方が水素原子であることが好ましく、一方がメチル基であり、他方が水素原子であることがより好ましい。潤滑性及びスラッジ溶解性に優れる観点からは、Rα及びRγの双方が水素原子であることが好ましい。
Rβは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、このようなアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。また、ORβで表される繰り返し単位のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。(ORβ)fで表されるオキシアルキレン基は、1種のオキシアルキレン基で構成されていてもよく、2種以上のオキシアルキレン基で構成されていてもよい。
式(9)で表されるポリアルキレングリコールの中でも、冷媒との相溶性及び粘度−温度特性に優れる観点からは、オキシエチレン基(EO)とオキシプロピレン基(PO)とを含む共重合体が好ましい。この場合、焼付荷重、粘度−温度特性に優れる観点から、オキシエチレン基とオキシプロピレン基との総和に占めるオキシエチレン基の割合(EO/(PO+EO))が0.1〜0.8であることが好ましく、0.3〜0.6であることがより好ましい。吸湿性や熱・酸化安定性に優れる観点からは、EO/(PO+EO)は、0〜0.5であることが好ましく、0〜0.2であることがより好ましく、0(すなわちプロピレンオキサイド単独重合体)であることが最も好ましい。
fは、オキシアルキレン基ORβの繰り返し数(重合度)を表し、1〜80の整数である。gは1〜8の整数である。例えばRαがアルキル基またはアシル基である場合、gは1である。Rαが2〜8個の水酸基を有する化合物の残基である場合、gは当該化合物が有する水酸基の数となる。
式(9)で表されるポリアルキレングリコールにおいて、fとgとの積(f×g)の平均値は、冷凍機油としての要求性能をバランスよく満たす観点から、6〜80であることが好ましい。
式(9)で表されるポリアルキレングリコールの数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは600以上であり、また、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、更に好ましくは1500以下である。f及びgは、当該ポリアルキレングリコールの数平均分子量が上記の条件を満たすような数であることが好ましい。ポリアルキレングリコールの数平均分子量が小さすぎる場合には、冷媒共存下での潤滑性が不十分となる場合がある。数平均分子量が大きすぎる場合には、低温条件下で冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が狭くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害が起こりやすくなる。
ポリアルキレングリコールの水酸基価は、好ましくは100mgKOH/g以下、より好ましくは50mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下、最も好ましくは10mgKOH/g以下である。
ポリアルキレングリコールは、公知の方法を用いて合成することができる(「アルキレンオキシド重合体」、柴田満太他、海文堂、平成2年11月20日発行)。例えば、アルコール(RαOH;Rαは式(9)中のRαと同一の定義内容を表す)に所定のアルキレンオキサイドの1種以上を付加重合させ、さらに末端水酸基をエーテル化もしくはエステル化することによって、式(9)で表されるポリアルキレングリコールが得られる。上記の製造工程において2種以上のアルキレンオキサイドを使用する場合、得られるポリアルキレングリコールは、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよいが、酸化安定性及び潤滑性により優れる傾向にある点からは、ブロック共重合体であることが好ましく、より低温流動性に優れる傾向にある点からはランダム共重合体であることが好ましい。
ポリアルキレングリコールの不飽和度は、0.04meq/g以下であることが好ましく、0.03meq/g以下であることがより好ましく、0.02meq/g以下であることが最も好ましい。過酸化物価は、10.0meq/kg以下であることが好ましく、5.0meq/kg以下であることがより好ましく、1.0meq/kgであることが最も好ましい。カルボニル価は、100重量ppm以下であることが好ましく、50重量ppm以下であることがより好ましく、20重量ppm以下であることが最も好ましい。
潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは3mm2/s以上、より好ましくは4mm2/s以上、更に好ましくは5mm2/s以上であってよい。潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは1000mm2/s以下、より好ましくは500mm2/s以下、更に好ましくは400mm2/s以下であってよい。潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは1mm2/s以上、より好ましくは2mm2/s以上であってよい。潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは100mm2/s以下、より好ましくは50mm2/s以下であってよい。本発明における動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定された動粘度を意味する。
潤滑油基油の含有量は、冷凍機油全量基準で、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよい。
ジフェニルハイドロジェンホスファイトは、例えば、下記式(b−1)で表される化合物及びその互変異性体である下記式(b−2)で表される化合物の少なくとも1種であってよい。
本実施形態におけるジフェニルハイドロジェンホスファイト(その互変異性体を含む、以下同じ)の含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.005〜1質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%、更に好ましくは0.01〜0.3質量%、より更に好ましくは0.05〜0.3質量%、特に好ましくは0.1〜0.25質量%である。
本実施形態におけるジフェニルハイドロジェンホスファイトについて、本実施形態の冷凍機油に含有させる限りにおいて、その純度に特に制限はなく、純品を用いることが望ましいが、製造工程あるいは精製コスト等の理由により必ずしも純品を使用しなくともよい。本実施形態の冷凍機油に配合するジフェニルハイドロジェンホスファイトの純度は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上である。ジフェニルハイドロジェンホスファイトは、ジフェニルハイドロジェンホスファイトを主成分として含む添加剤として使用してもよい。
本実施形態におけるジフェニルハイドロジェンホスファイトの酸価は、純品では約240mgKOH/gであり、製造工程あるいは精製コストあるいは希釈等の理由により必ずしも純品として使用しなくともよいが、好ましくは100mgKOH/g以上、より好ましくは150mgKOH/g以上、さらに好ましくは170mgKOH/g以上である。酸価が240mgKOH/gに近いほど単位添加量あたりの耐摩耗性向上効果を高くすることができる。なお、ここでいう酸価は、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」に準拠して測定される酸価を意味する。
冷凍機油は、好ましくはエポキシ化合物(「エポキシ系酸捕捉剤」とも呼ばれる)を更に含有する。冷凍機油がジフェニルハイドロジェンホスファイトとエポキシ化合物とを含有する場合、例えばリン酸トリエステル又は亜リン酸トリエステルとエポキシ化合物を含有する場合に比べて、耐荷重性の向上が可能となる。
エポキシ化合物としては、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、オキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステル、エポキシ化植物油などが挙げられる。これらのエポキシ化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば下記式(C−1)で表されるアリールグリシジルエーテル型エポキシ化合物又はアルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物を用いることができる。
[式(C−1)中、R
aはアリール基又は炭素数5〜18のアルキル基を示す。]
式(C−1)で表されるグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、n−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルが好ましい。
Raで表されるアルキル基の炭素数が5以上であると、エポキシ化合物の安定性が確保され、水分、脂肪酸、酸化劣化物と反応する前に分解したり、エポキシ化合物同士が重合する自己重合を起こしたりするのを抑制でき、目的の機能が得られやすくなる。一方、Raで表されるアルキル基の炭素数が18以下であると、冷媒との溶解性が良好に保たれ、冷凍装置内で析出して冷却不良などの不具合を生じにくくすることができる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物として、式(C−1)で表されるエポキシ化合物以外に、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロルプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどを用いることもできる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば下記式(C−2)で表されるものを用いることができる。
[式(C−2)中、R
bはアリール基、炭素数5〜18のアルキル基、又はアルケニル基を示す。]
式(C−2)で表されるグリシジルエステル型エポキシ化合物としては、グリシジルベンゾエート、グリシジルネオデカノエート、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが好ましい。
Rbで表されるアルキル基の炭素数が5以上であると、エポキシ化合物の安定性が確保され、水分、脂肪酸、酸化劣化物と反応する前に分解したり、エポキシ化合物同士が重合する自己重合を起こしたりするのを抑制でき、目的の機能が得られやすくなる。一方、Rbで表されるアルキル基又はアルケニル基の炭素数が18以下であると、冷媒との溶解性が良好に保たれ、冷凍機内で析出して冷却不良などの不具合を生じにくくすることができる。
脂環式エポキシ化合物とは、下記一般式(C−3)で表される、エポキシ基を構成する炭素原子が直接脂環式環を構成している部分構造を有する化合物である。
脂環式エポキシ化合物としては、例えば、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルボルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサンが好ましい。
アリルオキシラン化合物としては、1,2−エポキシスチレン、アルキル−1,2−エポキシスチレンなどが例示できる。
アルキルオキシラン化合物としては、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサンなどが例示できる。
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と、炭素数1〜8のアルコール又はフェノールもしくはアルキルフェノールとのエステルなどが例示できる。エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、エポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
エポキシ化植物油としては、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
エポキシ化合物は、好ましくはグリシジルエステル型エポキシ化合物及びグリシジルエーテル型エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種であり、冷凍機内の部材に使用されている樹脂材料(例えばナイロン)との適合性に優れる観点からは、好ましくはグリシジルエステル型エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種である。
エポキシ化合物の含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.1〜4質量%、より好ましくは0.2〜2質量%、更に好ましくは0.4〜1.5質量%、特に好ましくは0.4〜1.2質量%である。
冷凍機油がエポキシ化合物としてグリシジルエステル型エポキシ化合物を含有する場合、グリシジルエステル型エポキシ化合物の含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.1〜2質量%、更に好ましくは0.2〜1.5質量%、より更に好ましくは0.4〜1.2質量%、特に好ましくは0.5〜0.9質量%である。
冷凍機油がエポキシ化合物としてグリシジルエーテル型エポキシ化合物を含有する場合、グリシジルエーテル型エポキシ化合物の含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.1〜2質量%、更に好ましくは0.2〜1.5質量%、より更に好ましくは0.4〜1.2質量%、特に好ましくは0.5〜0.9質量%である。
冷凍機油がエポキシ化合物を含有する場合、ジフェニルハイドロジェンホスファイトの含有量に対するエポキシ化合物の含有量の質量比(エポキシ化合物の含有量/ジフェニルハイドロジェンホスファイトの含有量)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下である。
冷凍機油は、酸化防止剤を更に含有していてもよい。酸化防止剤は、例えば、ジ−tert.ブチル−p−クレゾール等のフェノール系酸化防止剤であってよい。酸化防止剤の含有量は、冷凍機油全量基準で、例えば、0.01質量%以上であってよく、5質量%以下であってよい。
冷凍機油は、ジフェニルハイドロジェンホスファイト以外のリン系摩耗防止剤を更に含有していてもよい。かかるリン系摩耗防止剤は、例えば、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリクレジルフォスフェート(TCP)等のリン酸エステル、トリフェニルホスフォロチオネート(TPPT)等のチオリン酸エステルなどであってよい。ジフェニルハイドロジェンホスファイト以外のリン系摩耗防止剤酸化防止剤の含有量は、冷凍機油全量基準で、例えば、0.01質量%以上であってよく、5質量%以下であってよい。
冷凍機油は、上述した成分に加えて、その他の添加剤を更に含有していてもよい。その他の添加剤としては、例えば、エポキシ化合物以外の酸捕捉剤、極圧剤、油性剤、消泡剤、金属不活性化剤、リン系摩耗防止剤以外の摩耗防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤などが挙げられる。これらの添加剤の含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってよい。
冷凍機油の40℃における動粘度は、好ましくは3mm2/s以上、より好ましくは4mm2/s以上、更に好ましくは5mm2/s以上であってよい。冷凍機油の40℃における動粘度は、好ましくは500mm2/s以下、より好ましくは400mm2/s以下、更に好ましくは300mm2/s以下であってよい。冷凍機油の100℃における動粘度は、好ましくは1mm2/s以上、より好ましくは2mm2/s以上であってよい。冷凍機油の100℃における動粘度は、好ましくは100mm2/s以下、より好ましくは50mm2/s以下であってよい。本発明における動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定された動粘度を意味する。
冷凍機油の流動点は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−20℃以下であってよい。本発明における流動点は、JIS K2269:1987に準拠して測定される流動点を意味する。
冷凍機油の体積抵抗率は、好ましくは1.0×109Ω・m以上、より好ましくは1.0×1010Ω・m以上、更に好ましくは1.0×1011Ω・m以上であってよい。本発明における体積抵抗率は、JIS C2101:1999に準拠して測定した25℃での体積抵抗率を意味する。
冷凍機油の水分含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下であってよい。
冷凍機油の酸価は、好ましくは1.0mgKOH/g以下、より好ましくは0.1mgKOH/g以下であってよい。本発明における酸価は、JIS K2501:2003に準拠して測定された酸価を意味する。
冷凍機油の灰分は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下であってよい。本発明における灰分は、JIS K2272:1998に準拠して測定された灰分を意味する。
本実施形態に係る冷凍機油は、通常、冷凍機において、冷媒と混合された冷凍機用作動流体組成物として存在している。すなわち、本実施形態に係る冷凍機油は冷媒と共に用いられ、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、本実施形態に係る冷凍機油と冷媒とを含有する。
かかる冷媒としては、飽和フッ化炭化水素冷媒、不飽和フッ化炭化水素冷媒、炭化水素冷媒、パーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ビス(トリフルオロメチル)サルファイド冷媒、3フッ化ヨウ化メタン冷媒、及び、アンモニア、二酸化炭素等の自然系冷媒が例示される。
飽和フッ化炭化水素冷媒としては、好ましくは炭素数1〜3、より好ましくは1〜2の飽和フッ化炭化水素が挙げられる。具体的には、ジフルオロメタン(R32)、トリフルオロメタン(R23)、ペンタフルオロエタン(R125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(R134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(R143a)、1,1−ジフルオロエタン(R152a)、フルオロエタン(R161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(R227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(R236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(R236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(R245fa)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(R365mfc)、又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
飽和フッ化炭化水素冷媒としては、上記の中から用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばR32単独;R23単独;R134a単独;R125単独;R134a/R32=60〜80質量%/40〜20質量%の混合物;R32/R125=40〜70質量%/60〜30質量%の混合物;R125/R143a=40〜60質量%/60〜40質量%の混合物;R134a/R32/R125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;R134a/R32/R125=40〜70質量%/15〜35質量%/5〜40質量%の混合物;R125/R134a/R143a=35〜55質量%/1〜15質量%/40〜60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。さらに具体的には、R134a/R32=70/30質量%の混合物;R32/R125=60/40質量%の混合物;R32/R125=50/50質量%の混合物(R410A);R32/R125=45/55質量%の混合物(R410B);R125/R143a=50/50質量%の混合物(R507C);R32/R125/R134a=30/10/60質量%の混合物;R32/R125/R134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);R32/R125/R134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);R125/R134a/R143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)などを用いることができる。
不飽和フッ化炭化水素(HFO)冷媒は、好ましくはフルオロプロペン、より好ましくはフッ素数が3〜5のフルオロプロペンである。不飽和フッ化炭化水素冷媒としては、具体的には、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ye)、及び3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)のいずれか1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。冷媒物性の観点からは、HFO−1225ye、HFO−1234ze及びHFO−1234yfから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
炭化水素冷媒は、好ましくは炭素数1〜5の炭化水素、より好ましくは炭素数2〜4の炭化水素である。炭化水素としては、具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン(R290)、シクロプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン、2−メチルブタン、ノルマルペンタン又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられ、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2−メチルブタン又はこれらの混合物が好ましい。
冷凍機用作動流体組成物における冷凍機油の含有量は、冷媒100質量部に対して、好ましくは1〜500質量部、より好ましくは2〜400質量部であってよい。
本実施形態に係る冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、開放型又は密閉型のカーエアコン、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷凍機、遠心式の圧縮機を有する冷凍機等に好適に用いられる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
以下に示す基油及び添加剤を用いて、表1〜3に示す組成(冷凍機油全量基準での質量%)を有する冷凍機油を調製した。
(基油)
A1:ペンタエリスリトールと、2−メチルプロパン酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合脂肪酸(混合比40/60)とのポリオールエステル(40℃動粘度:68mm
2/s、100℃動粘度:8.1mm
2/s)
A2:ペンタエリスリトール/ジペンタエリスリトールの混合アルコール(混合比75/25)と、2−エチルヘキサン酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合脂肪酸(混合比50/50)とのポリオールエステル(40℃動粘度:90mm
2/s、100℃動粘度:10mm
2/s)
(ジフェニルハイドロジェンホスファイト)
B1:ジフェニルハイドロジェンホスファイト(下記式(b−1)で表される化合物又はその互変異性体である下記式(b−2)で表される化合物を含む。酸価:200mgKOH/g)
(エポキシ化合物)
C1:2−エチルヘキシルグリシジルエーテル
C2:グリシジルネオデカノエート
(その他の添加剤)
D1:トリフェニルホスファイト
D2:トリオクチルホスファイト
D3:トリフェニルホスフェート
E1:フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤及び金属不活性化剤を含む添加剤
実施例1〜2及び比較例1〜6の各冷凍機油について、以下に示す手順で耐摩耗性を評価した。結果を表1に示す。
(耐摩耗性)
FALEX Pin/Vee−Block試験を実施した。回転数:290rpm、温度:27±2℃、油量:120mLの条件下で、R32冷媒を10L/hで油中に吹き込みながら、250lbの荷重の下で慣らし運転を5分間行い、次いで、荷重を300lbに上げて、本運転を60分間行った。このときの摩耗量を測定した。結果を表1に示す。
また、冷凍機油中の単位リン量あたりの耐摩耗性向上効果Xを下記式に従って算出した。なお、冷凍機油中のリン量は、JPI−5S−38−2003に準拠して測定した。結果を表1に示す。
X=(W0−W1)/W0/P
ただし、W0は比較例6における摩耗量(7.2mg)、W1は各実施例又は比較例における摩耗量(mg)、Pは各実施例又は比較例における冷凍機油中のリン量(質量%)をそれぞれ表す。
実施例3〜7及び比較例7〜9の各冷凍機油について、以下に示す手順で耐荷重性を評価した。結果を表2に示す。
(耐荷重性)
FALEX Pin/Vee−Block試験を実施した。室温(約25℃)にて、回転数:290rpm、温度:27±2℃、油量:120mLの条件下で、HFO−1234yf冷媒を10L/hで吹き込みながら、150lbの荷重の下で慣らし運転を5分間行い、次いで、荷重を加えていき、焼付きが発生した時点での荷重を焼付き荷重とした。なお、試験片として、ASTM標準片を用いた。
実施例3,5,7〜9の各冷凍機油について、以下に示す手順で冷媒共存下の安定性を評価した。結果を表3に示す。
(安定性)
水分含有量を1000ppmに調整した冷凍機油30g、HFO−1234yf冷媒30g及びAl、Cu、Feの各触媒(φ1.6mm×50mm)を200mlのオートクレーブに封入し、175℃の恒温槽にて336時間貯蔵し、オートクレーブ試験後の冷凍機油の色相、酸価及び夾雑物量を測定した。
実施例3,9,10の各冷凍機油について、以下に示す手順で材料適合性を評価した。結果を表4に示す。
(材料適合性)
水分含有量を30ppm未満に調整した冷凍機油60g、HFO−1234yf冷媒60g、及び10mm×75mmのナイロン樹脂をダンベル状に切りだしたものを200mlのオートクレーブに封入し、120℃の恒温槽で168時間貯蔵した。オートクレーブ試験後に取り出したナイロン樹脂及びオートクレーブ試験に供していない同形状のナイロン樹脂について、JIS K6251に準拠する引張試験にて引張強さ及び引張伸びを測定し、下記式で定義される引張強さ変化率及び引張伸び変化率を算出した。
引張強さ変化率(%)=[(オートクレーブ試験後のナイロン樹脂の引張強さ)/(オートクレーブ試験に供していないナイロン樹脂の引張強さ)−1]×100
引張伸び変化率(%)=[(オートクレーブ試験後のナイロン樹脂の伸び)/(オートクレーブ試験に供していないナイロン樹脂の伸び)−1]×100
C1成分を増量することで引張強さはやや小さくなる傾向にあり、C1成分をC2成分に置換することで引張強さ及び引張伸びは大きくなる傾向にある。すなわち、引張強さ及び引張伸びは、C2成分を使用することにより好ましい傾向を示す。