JP6796220B1 - Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、溶断にて切断しても、割れが発生することを防止でき、また、上縁部の溶損の発生とドロスの付着を防止できるFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金を提供する。【解決手段】炭素(C):0.004〜0.025質量%、ケイ素(Si):0.02〜0.60質量%、マンガン(Mn):0.03〜0.35質量%、リン(P):0.040質量%以下、硫黄(S):0.003質量%以下、ニッケル(Ni):30.0〜40.0質量%、クロム(Cr):21.0〜25.0質量%、モリブデン(Mo):6.50〜8.00質量%、窒素(N):0.18〜0.28質量%、銅(Cu):2.50〜5.00質量%、アルミニウム(Al):0.001〜0.100質量%、チタン(Ti):0.001〜0.010質量%、スズ(Sn):0.001〜0.050質量%及び亜鉛(Zn):0.001〜0.030質量%、を含有し、残部が鉄(Fe)および不可避的な不純物からなる溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金。【選択図】図1

Description

本発明は、レーザー、プラズマ、ガス、パウダー等を用いて材料を溶融させながら切断する手法である溶断の特性に優れるFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金であり、特に、溶断後における、割れ及び上縁部の溶損の発生を防止し、ドロスの付着を防止できるFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金に関するものである。
Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金は、優れた耐食性を有することから、例えば、海水環境、化学プラント、船舶に搭載される排煙脱硫装置等、多様な技術分野で利用されている。一方で、上記技術分野において、SUS304やSUS316等のステンレスといった汎用合金を使用すると、汎用合金は耐食性が十分ではないため、例えば、全面腐食やすき間腐食、粒界腐食等の欠陥が汎用合金に発生してしまい、上記技術分野における適用には大きな制約となる場合がある。Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金は、Cr、Mo、Cuといった元素が多量に添加されていることで優れた耐食性を発揮する。
優れた耐食性を有するFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金として、
質量%で、
C:0.001〜0.100%、
Si:0.01〜1.00%、
Mn:0.01〜1.00%、
P:0.050%以下、
S:0.0050%以下、
Ni:17.00〜35.00%、
Cr:18.00〜30.00%、
Mo:4.00〜8.00%、
Cu:0.10〜3.00%、
N:0.100〜0.400%および
Al:0.001〜0.100%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記式(1)を満たすことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
Fe+1.2×Cr+1.5×Mo−2×Ni−5×Cu≦50.000 ・・・(1)
が提案されている(特許文献1)。
特許文献1では、海洋構造物や排煙脱硫装置等のろう付け構造体及び自動車部品である排熱回収器やEGRクーラ等の排気ガス熱交換部品等のろう付け構造部品に使用される場合に、優れた耐食性を有するオーステナイト系ステンレス鋼である。
一方で、合金板は所定の形状、寸法に切断されて使用される。合金板の切断手段として、溶断が用いられることがある。溶断による合金板の切断は、生産効率に優れているという利点がある。しかし、図3に示すように、特許文献1のように、Cr、Al等、酸化が容易な元素が多量に添加されている従来の合金の場合、合金板10を溶断にて切断すると、溶断面11の下縁部13にこれらの成分を含有したドロス(スラグ)1が多量かつ強固に付着することがある。付着したドロス1を除去するためには、機械加工による研削や鋸切断による除去が必要になり、生産性を著しく阻害する要因となる。また、溶断面11の上縁部12に溶損(エグレ)2が発生することがある。また、Cu、Mo等の元素は、合金の耐食性を著しく向上させる元素であるが、溶解後の鋳片最終凝固部に濃化しやすい元素
でもある。特許文献1のように、これらの元素を多く含む合金板10は、板厚tの中心部のCu及びMoの濃化層で、溶断割れが生じやすくなる原因となる。なお、図3は、従来のFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金の溶断面の状態を示す説明図である。
特許文献1では、合金の耐食性を向上させてはいるが、溶断性を改善することについては提案されていない。
特開2018−172709号公報
上記事情に鑑み、本発明は、溶断にて切断しても、割れが発生することを防止でき、また、上縁部の溶損の発生とドロスの付着を防止できるFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金を提供することを目的とする。
発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた。まず、予備的な試験として電気炉にて30質量%Ni−25質量%Cr−8質量%Mo−4質量%Cu−0.25質量%N残部Feとした合金を用意し、熱処理炉にて温度1150℃、均熱時間8時間の条件で熱処理した後、熱間圧延にて20mmの厚みまで圧延し、合金板を得た。その後、ショットブラストにて表面の酸化スケールの除去を行った後、100mm×300mmに切り出し、プラズマ切断(溶断)の供試材とした。
溶断にはECONOGRAPH−4000プラズマ切断機(小池酸素株式会社製)を用い、プラズマガスとしてはアルゴンを用いた。切断条件は電流300A、切断速度500mm/min、1000mm/min、1500mm/min、ガス流量20L/minとした。供試材の溶断性の評価項目として、溶断後の割れの有無、上縁部の溶損(エグレ)の程度を、デジタルマイクロスコープにて観察、測定を実施した。また、供試材のドロスの付着については、ドロス付着がデジタルマイクロスコープにて確認できない供試材を○、機械加工であるエアハンマーによる研削でドロスの除去ができた供試材を△、機械加工であるエアハンマーではドロスの除去が難しく、鋸切断にて除去が必要な供試材を×と判定した。なお、上記「上縁部」とは、プラズマが照射された側の縁部を意味する。
供試材の板厚によって、適切な切断速度は相違するところ、予備的な試験の結果、切断速度が遅い500mm/minでは溶断は可能であったが、切断速度が遅いために抜熱しにくく、溶断後に上縁部の溶損(エグレ)が生じる傾向を示した。一方で、切断速度1500mm/minでは、一部で未貫通部分が生じて溶断することができなかった。一方で、図1に示すように、切断速度1000mm/minでは、板厚tの合金板10の溶断面11について、溶断面11の上縁部12に溶損(エグレ)が発生することを防止でき、また、溶断面11の下縁部13にドロスの付着を防止できた良好な切断面が得られたため、試験条件として切断速度1000mm/minを採用した。また、各合金中の微量元素であるSi、Al、Ti、Sn、Znの成分に着目すると、ある一定量の範囲で良好な溶断性が得られることを見出した。なお、図1は、本発明のFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金の溶断面の状態を示す説明図である。
さらに、合金の耐食性を向上するために添加されているCuの濃度も、ある一定の成分範囲にコントロールすることで、優れた溶断性を付与できることを見出した。一方で、Cuの添加量が所定量よりも多くなると、溶断割れが発生することを見出した。Cuの添加
による溶断割れの原因は、Cuが鋳片の最終凝固部に濃化することによると考え、熱間圧延前の熱処理条件を種々変化させることで、最終凝固部におけるCuの濃化を低下させると、溶断割れの発生が抑制されることを見出した。
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1]炭素(C):0.004〜0.025質量%、
ケイ素(Si):0.02〜0.60質量%、
マンガン(Mn):0.03〜0.35質量%、
リン(P):0.040質量%以下、
硫黄(S):0.003質量%以下、
ニッケル(Ni):30.0〜40.0質量%、
クロム(Cr):21.0〜25.0質量%、
モリブデン(Mo):6.50〜8.00質量%、
窒素(N):0.18〜0.28質量%、
銅(Cu):2.50〜5.00質量%、
アルミニウム(Al):0.001〜0.100質量%、
チタン(Ti):0.001〜0.010質量%、
スズ(Sn):0.001〜0.050質量%及び
亜鉛(Zn):0.001〜0.030質量%、
を含有し、
残部が鉄(Fe)および不可避的な不純物からなる溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金。
[2]下記式(1)(式(1)中、各元素の表記は、該元素の含有量(質量%)を意味する。)の関係を満たす[1]に記載の溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金。
−10≦80Al+700Ti+300Sn+400Zn−30Si≦35・・・(1)
[3]下記式(2)(式(2)中、各元素の表記は、該元素の含有量(質量%)を意味する。)の関係を満たす[1]または[2]に記載の溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金。
Cu≦−0.1×(80Al+700Ti+300Sn+400Zn−30Si)+8・・・(2)
[4]前記Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金の板厚t(単位:mm)のうち、板厚tの中心部に相当するt×(1/2)とt×(1/3)との間の部位における質量基準のCu濃度dが、下記式(3)(式(3)中、[Cu濃度%]は、前記Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金全体の質量基準のCu濃度%を意味する。)の関係を満たす[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金。
0.80×[Cu濃度%]≦Cu濃度d≦1.20×[Cu濃度%] ・・・(3)
本発明のFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金によれば、溶断にて切断しても、割れが発生することを防止でき、また、上縁部の溶損の発生とドロスの付着を防止できる。
本発明のFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金の溶断面の状態を示す説明図である。 Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金の成分組成の式(1)の値及び式(2)の値とCuの含有量に対する溶断性の関係を表すグラフである。 従来のFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金の溶断面の状態を示す説明図である。
次に、本発明の溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金について詳細を説明する。本発明の溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金は、炭素(C):0.004〜0.025質量%、ケイ素(Si):0.02〜0.60質量%、マンガン(Mn):0.03〜0.35質量%、リン(P):0.040質量%以下、硫黄(S):0.003質量%以下、ニッケル(Ni):30.0〜40.0質量%、クロム(Cr):21.0〜25.0質量%、モリブデン(Mo):6.50〜8.00質量%、窒素(N):0.18〜0.28質量%、銅(Cu):2.50〜5.00質量%、アルミニウム(Al):0.001〜0.100質量%、チタン(Ti):0.001〜0.010質量%、スズ(Sn):0.001〜0.050質量%及び亜鉛(Zn):0.001〜0.030質量%、を含有し、残部が鉄(Fe)および不可避的な不純物からなる。
炭素(C):0.004〜0.025質量%
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のCは、合金の強度に影響する元素であり、Cの含有量が少ないと構造材としての十分な強度が得られない。このため、Cの含有量の下限は0.004質量%とする。一方で、Cの含有量が多いとCrなどの炭化物を形成し、耐食性が低下する。従って、Cの含有量の上限は0.025質量%とする。含有量の好ましい下限は0.005質量%、特に好ましい含有量の下限は0.006質量%である。また、含有量の好ましい上限は0.023質量%、特に好ましい含有量の上限は0.021質量%である。
ケイ素(Si):0.02〜0.60質量%
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のSiは、脱酸剤として添加される。また、Siは、溶鋼の流動性を高める、すなわち、溶鋼の粘度を低下させる効果があり、溶断性を著しく改善する元素である。このため、Siの含有量の下限は0.02質量%とする。一方で、Siの含有量が多いとσ相の析出を助長するため、耐食性が劣化する。従って、Siの含有量の上限は0.60質量%とする。含有量の好ましい下限は0.05質量%、特に好ましい含有量の下限は0.10質量%である。また、含有量の好ましい上限は0.50質量%、特に好ましい含有量の上限は0.25質量%である。
マンガン(Mn):0.03〜0.35質量%
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のMnは、脱酸作用を有する元素として添加する。また、Mnは、溶鋼の流動性を高める効果がある。このため、Mnの含有量の下限は0.03質量%とする。一方で、Mnの含有量が多いと耐食性が劣化する。従って、Mnの含有量の上限は0.35質量%とする。含有量の好ましい上限は0.30質量%、特に好ましい含有量の上限は0.25質量%である。
リン(P):0.040質量%以下
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のPは、含有量が多いと粒界に偏析して、熱間加工性と耐食性を劣化させる元素である。このため、その上限は厳しく限定する必要がある。本発明では、Pは0.040質量%以下に制限する。含有量の好ましい上限は0.030質量%、特に好ましい含有量の上限は0.020質量%である。Pの含有量の下限は0%に近いほど好ましいが、例えば、0.001質量%が挙げられる。
硫黄(S):0.003質量%以下
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のSは、含有量が多いと粒界に偏析して、熱間加工性を劣化させる元素である。このため、その上限は厳しく限定する必要がある。本発明では、Sは0.003質量%以下に制限する。含有量の好ましい上限は0.002質量%、特に好ましい含有量の上限は0.001質量%以下である。Sの含有量の下限は0%に近いほど好ましいが、例えば、0.0001%が挙げられる。
ニッケル(Ni):30.0〜40.0質量%
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のNiは、σ相などの金属間化合物の析出を抑制し、耐全面腐食性などの耐食性を向上させる元素である。このため、Niの含有量の下限は30.0質量%とする。一方で、Niの含有量が多いと熱間変形抵抗が増大して熱間加工性が低下し、また、コストが増大する。従って、Niの含有量の上限は40.0質量%とする。含有量の好ましい下限は32.0質量%、特に好ましい含有量の下限は34.0質量%である。また、含有量の好ましい上限は39.5質量%、特に好ましい含有量の上限は39.0質量%である。
クロム(Cr):21.0〜25.0質量%
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のCrは、耐孔食性、耐すき間腐食性、耐全面腐食性などの耐食性全般を向上させる元素である。このため、Crの含有量の下限は21.0質量%とする。一方で、Crの含有量が多いとσ相などの金属間化合物が析出しやすくなるため、耐食性が低下する。従って、Crの含有量の上限は25.0質量%とする。含有量の好ましい下限は22.0質量%、特に好ましい含有量の下限は23.0質量%である。
モリブデン(Mo):6.50〜8.00質量%
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のMoは、耐孔食性、耐全面腐食性を向上させる元素である。このため、Moの含有量の下限は6.50質量%とする。一方で、Moの含有量が多いとσ相などの金属間化合物が析出しやすくなるため、耐食性が低下する。従って、Moの含有量の上限は8.00質量%とする。含有量の好ましい下限は6.80質量%、特に好ましい含有量の下限は7.00質量%である。
窒素(N):0.18〜0.28質量%
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のNは、耐孔食性を向上させる元素である。このため、Nの含有量の下限は0.18質量%とする。一方で、Nの含有量が多いと熱間加工性が低下する。従って、Nの含有量の上限は0.28質量%とする。含有量の好ましい下限は0.19質量%、特に好ましい含有量の下限は0.20質量%である。また、含有量の好ましい上限は0.27質量%、特に好ましい含有量の上限は0.26質量%である。
銅(Cu):2.50〜5.00質量%
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のCuは、耐酸性を著しく向上させ、また、合金の融点を下げることで溶断性を向上させる元素である。このため、Cuの含有量の下限は2.50質量%とする。一方で、Cuの含有量が多くなると熱間加工性が低下する。従って、Cuの含有量の上限は5.00質量%とする。含有量の好ましい下限は2.80質量%、より好ましい含有量の下限は3.05質量%、特に好ましい含有量の下限は3.15質量%である。また、含有量の好ましい上限は4.80質量%、特に好ましい含有量の上限は4.60質量%である。
アルミニウム(Al):0.001〜0.100質量%
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のAlは、脱酸剤として添加される元素である。Alの含有量が少ないと溶断の際に、溶湯中の酸素濃度が高くなることで粘性も高くなり、材料表面にエグレが発生しやすくなる。このため、Alの含有量の下限は0.001質量%とする。一方で、Alの含有量が多いと溶断後のドロス量が多くなり機械研削や鋸切断が必要となるため生産性が低下する。従って、Alの含有量の上限は0.100質量%とする。含有量の好ましい上限は0.070質量%、特に好ましい含有量の上限は0.040質量%である。
チタン(Ti):0.001〜0.010質量%
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のTiは、Alと同様に、脱酸剤として添加される元素である。Tiの含有量が少ないと、溶断の際、溶湯中の酸素濃度が高くなることで粘性も高くなり、材料表面にエグレが発生しやすくなる。このため、Tiの含有量の下限は0.001質量%とする。一方で、Tiの含有量が多いとTi−Nなどの析出物が生成されやすくなり、圧延後の表面キズの原因となる。従って、Tiの含有量の上限は0.010質量%とする。含有量の好ましい上限は0.009質量%、特に好ましい含有量の上限は0.008質量%である。
スズ(Sn):0.001〜0.050質量%
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のSnは、耐食性を向上させる元素であり、合金の融点を下げることで溶断性を向上させる元素である。このため、Snの含有量の下限は0.001質量%とする。一方で、Snの含有量が多いと熱間加工性が低下し、また、溶断後のドロス量が多くなって機械研削や鋸切断が必要となり、生産性が低下する。従って、Snの含有量の上限は0.050質量%とする。含有量の好ましい下限は0.005質量%、特に好ましい含有量の下限は0.010質量%である。また、含有量の好ましい上限は0.047質量%、特に好ましい含有量の上限は0.044質量%である。
亜鉛(Zn):0.001〜0.030質量%
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のZnは、合金の融点を下げることで溶断性を向上させる元素である。このため、Znの含有量の下限は0.001質量%とする。一方で、Znの含有量が多いと熱間加工性が低下し、また、溶断後のドロス量が多くなって機械研削や鋸切断が必要となり、生産性が低下する。従って、Znの含有量の上限は0.030質量%とする。含有量の好ましい下限は0.005質量%、特に好ましい含有量の下限は0.010質量%である。また、含有量の好ましい上限は0.027質量%、特に好ましい含有量の上限は0.024質量%である。
また、本発明の溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金では、必要に応じて、ホウ素(B)、バナジウム(V)及び/またはニオブ(Nb)を添加してもよい。
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のBは、熱間加工性を改善するために添加される元素である。このため、Bの含有量の好ましい下限は0.0001質量%である。一方で、Bの含有量が多いと、かえって熱間加工性が低下する。従って、Bの含有量の好ましい上限は0.0030質量%、より好ましい上限は0.0025質量%、特に好ましい上限は0.0020質量%である。
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のVは、靱性を改善させる元素である。このため、Vの含有量の好ましい下限は0.01質量%である。一方で、Vの含有量が多いと加工性が低下する。従って、Vの含有量の好ましい上限は0.10質量%、より好ましい上限は0.09質量%、特に好ましい上限は0.08質量%である。
溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のNbは、耐孔食性を改善させる元素である。このため、Nbの含有量の好ましい下限は0.001質量%である。一方で、Nbの含有量が多いとNbの炭化物を生成し、熱間圧延後の表面キズの原因となる。従って、Nbの含有量の好ましい上限は0.030質量%、より好ましい上限は0.028質量%、特に好ましい上限は0.025質量%である。
本発明の溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金では、上記成分以外の残部は、鉄(Fe)および不可避的な不純物である。本発明の溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金では、主成分としてFeが含有されている。
本発明の溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金は、上記成分組成を満たす合金であれば、成分組成は特に限定されないが、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。
−10≦80Al+700Ti+300Sn+400Zn−30Si≦35・・・(1)なお、式(1)中、各元素の表記は、該元素の含有量(質量%)を意味する。本発明の溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金では、式(1)の関係を満たすことにより、さらに優れた溶断性を発揮でき、ひいては、優れた溶断面が得られる。
式(1)は、後述する本願実施例の結果から得られる。すなわち、図2のFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金の成分組成の式(1)の値とCuの含有量(2.50〜5.00質量%の範囲)に対する溶断性の関係を表すグラフから、式(1)の関係を満たすことにより、さらに優れた溶断性を発揮できることが分かる。また、溶断面の上縁部の溶損(エグレ)、ドロスの状況を定量的に評価した結果から、上記した各元素の影響を係数として示すことが可能となったことで、図2における「80Al+700Ti+300Sn+400Zn−30Si」を評価指標とすることができることを見出した。
80Al+700Ti+300Sn+400Zn−30Siの値が35以下であることにより、溶断後のドロス量を確実に低減でき、機械研削や鋸切断を省略でき、結果、生産性の低下を防止できる。80Al+700Ti+300Sn+400Zn−30Siの値の上限は、溶断後のドロス量をより確実に低減できる点から、30がより好ましく、25が特に好ましい。一方で、80Al+700Ti+300Sn+400Zn−30Siの値が−10以上であることにより、溶湯の粘性が高くなることが確実に防止されるので、材料表面にエグレが発生することを確実に防止できる。エグレが発生することを確実に防止できることから、機械研削や鋸切断を省略でき、結果、生産性の低下を防止できる。80Al+700Ti+300Sn+400Zn−30Siの値の下限は、エグレが発生することをより確実に防止する点から、−5がより好ましく、0が特に好ましい。
本発明の溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金は、上記成分組成を満たす合金であれば、成分組成は特に限定されないが、下記式(2)の関係を満たすことが好ましい。
Cu≦−0.1×(80Al+700Ti+300Sn+400Zn−30Si)+8・・・(2)
なお、式(2)中、各元素の表記は、該元素の含有量(質量%)を意味する。本発明の溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金では、式(2)の関係を満たすことにより、さらに優れた溶断性を発揮でき、優れた溶断面が得られる。
式(2)は、後述する本願実施例の結果から得られる。すなわち、図2の式(2)にて示す直線部から、式(2)の関係を満たすことにより、さらに優れた溶断性を発揮できることが分かる。
本発明の溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金は、上記成分組成を満たす合金であれば、成分組成は特に限定されないが、Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金の板厚t(例えば、平均板厚、単位:mm)のうち、板厚tの中心部に相当するt×(1/2)とt×(1/3)との間の部位における質量基準のCu濃度dが、下記式(3)の関係を満たすことが好ましい。
0.80×[Cu濃度%]≦Cu濃度d≦1.20×[Cu濃度%] ・・・(3)
なお、式(3)中、[Cu濃度%]は、前記Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金全体の質量基準のCu濃度%、すなわち、Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金の質量基準のCu平均濃度%を意味する。板厚tの中心部に相当するCu濃度が、式(3)の関係を満たすことにより、溶断後の割れをより確実に防止できる。
Cuは、Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金が凝固する際に偏析し易い元素であり、Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金の板厚tの中心部にCu濃化層が形成されることがある。Cu濃化層は相対的に融点が低いことから、溶断の際に、Cu濃化層にて割れが発生することがある。
Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金の熱間圧延前に、加熱温度1150℃〜1250℃、均熱時間8〜12時間の熱処理をすることで、板厚tの中心部のCu濃化を式(3)の関係を満たす範囲に低減させて、溶断後の割れをより確実に防止できる。すなわち、上記熱処理を行うことで、Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金中のCuが拡散されて、板厚tの中心部のCu濃化を防止できる。熱間圧延前の加熱が1150℃未満ではCuの拡散が不十分となる。一方で、熱間圧延前の加熱が1250℃超では、Cuの濃化した部位で溶融してしまう場合がある。また、均熱時間が8時間未満ではCuの拡散が不十分となる。一方で、均熱時間が12時間超では、Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金表面に厚い酸化スケールが生じてしまい、圧延後の表面キズの原因となる場合がある。板厚tの中心部のCu濃度の下限は0.85×[Cu濃度%]がより好ましく、0.90×[Cu濃度%]が特に好ましい。一方で、板厚tの中心部のCu濃度の上限は1.15×[Cu濃度%]がより好ましく、1.10×[Cu濃度%]が特に好ましい。なお、板厚tの中心はt×(1/2)であり、板厚tの中心部は板厚tの中心に対して対称であるので、板厚tの中心部とは、板厚tの中心(すなわち、t×(1/2))と上面方向のt×(1/3)との間、板厚tの中心(すなわち、t×(1/2))と下面方向のt×(1/3)との間の両方を指す。上記から、板厚tの中心部とは、上面方向のt×(1/3)から下面方向のt×(1/3)までの間の厚さの部位を意味する。
本発明のFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金によれば、溶断にて切断しても、割れが発生することを防止でき、また、図1に示すように、上縁部の溶損の発生とドロスの付着を防止できる。従って、Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金板の切断手段として溶断が用いられても、優れた溶断面が得られるので、合金板の加工性、生産効率に優れている。また、本発明のFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金は、板厚に左右されずに優れた溶断性を有している。
このため、本発明のFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金は、優れた耐食性を有し、合金板の加工性、生産効率にも優れていることから、例えば、海水環境、化学プラント、船舶に搭載される排煙脱硫装置等の材料に適用することができる。
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜15、比較例1〜9
Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金の溶断に用いる装置の出力特性に依存して、切断可能なFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金の厚みが変化する。ここでは、上記切断条件、すなわち、電流:300A、切断速度:1000mm/min、ガス流量:20L/minとし、板厚は20mmとして評価した。
次に、原料を60トン電気炉にて30Ni−25Cr−8Mo−4Cu−0.2N残部FeをベースとしてSi、Al、Ti、Sn、Znの合金元素濃度を種々変化させた合金をアルゴン酸素脱炭法(AOD法)または真空酸素脱炭法(VOD法)にて精錬を行い、連続鋳造または普通造槐にて合金塊を作製した。なお、Znは非常に酸化し易い元素のため精錬後期に添加した。次に、作製した合金塊を熱処理炉で、下記表1、3に示す加熱温度と加熱時間の加熱条件で熱処理し、熱間圧延または熱間鍛造にて20mmの厚みの合金
板を得た。その後、合金板より200mmm×300mmの板に切り出し、表面スケールをショットブラストにて除去した後、溶断試験の供試材(試験サンプル)とした。溶断は、小池酸素製ECONOGRAPH−4000プラズマ切断機を用い、プラズマガスとしてはアルゴンを用いた。切断条件は、電流:300A、切断速度:1000mm/min、ガス流量:20L/minとした。なお、表1、3中の各成分の含有量は、質量%を意味する。
評価
(1)溶断後の割れ防止性
溶断後の試験サンプルについて、デジタルマイクロスコープVHX−2000(KEYENCE製)にて20倍にて観察を実施し、以下のように評価した。
○:溶断後の割れがデジタルマイクロスコープで認められない。
×:溶断後の割れがデジタルマイクロスコープで認められる。
(2)溶断後の上縁部の溶損防止性
溶断後の試験サンプルについて、デジタルマイクロスコープVHX−2000(KEYENCE製)にて20倍にて観察を実施し、溶断後の試験サンプルの下縁部をゼロ点として、上縁部のエグレが生じた部位の距離を測定し、以下のように評価した。
○:距離が1mm未満。
△:距離が1mm以上4mm未満。
×:距離が4mm以上。
なお、4mm以上の距離を×としたのは、エグレは機械研磨で研削または鋸切断により除去する必要があり、生産性を低下させるためである。
(3)ドロス付着防止性
溶断後の試験サンプルについて、デジタルマイクロスコープVHX−2000(KEYENCE製)にて20倍にて観察を実施し、以下のように評価した。
○:ドロス付着がデジタルマイクロスコープで認められない。
△:ドロスの付着がデジタルマイクロスコープで若干認められるが、エアハンマーによる研削でドロスを除去できたもの。
×:ドロスの付着がデジタルマイクロスコープで多く認められ、エアハンマーによる研削ではドロスの除去が難しく、鋸切断にて除去が必要なもの。
(4)試験サンプル断面の質量基準のCu濃度分布(Cu偏析)
上記した溶断試験に供した試験サンプル端部から分析用試験片を切り出した後、圧延方向に沿った合金断面を鏡面研磨し、電子プローブマイクロアナライザー JXA−8200(JEOL製)によるライン分析を板厚方向に実施し、板厚の中心部に相当する(1/2)tから(1/3)tにかけての質量基準のCu濃度、板厚方向全体における質量基準のCuの平均濃度を測定し、以下のように評価した。
○:Cu偏析がCuの平均濃度の0.90以上1.10以下。
△:Cu偏析がCuの平均濃度の0.80以上0.90未満または1.10超1.20以下。
×:Cu偏析がCuの平均濃度の0.80未満または1.20超。
実施例の試験サンプルの各元素の含有量及び評価結果を下記表1、実施例の試験サンプルの製造工程を下記表2、比較例の試験サンプルの各元素の含有量及び評価結果を下記表3、比較例の試験サンプルの製造工程を下記表4に、それぞれ、示す。なお、溶断後の割れ防止性、溶断後の上縁部の溶損防止性、ドロス付着防止性、Cu偏析の4項目がいずれも○評価の場合には総合評価◎、上記4項目に○評価と△評価がある場合には総合評価○、4項目のうち、1つでも×評価がある場合には総合評価×とし、総合評価○以上を合格
、総合評価×を不合格と判定した。また、下記表1、3中、各元素の含有量について、下線を付した数値は、本発明の範囲外の数値であることを意味し、式1の値について、下線を付した数値は、式1の関係を満たさない数値を意味し、式2の値について、下線を付した数値は、式2の関係を満たさない数値を意味する。
上記表1に示すように、炭素(C):0.004〜0.025質量%、ケイ素(Si):0.02〜0.60質量%、マンガン(Mn):0.03〜0.35質量%、リン(P):0.040質量%以下、硫黄(S):0.003質量%以下、ニッケル(Ni):30.0〜40.0質量%、クロム(Cr):21.0〜25.0質量%、モリブデン(Mo):6.50〜8.00質量%、窒素(N):0.18〜0.28質量%、銅(Cu):2.50〜5.00質量%、アルミニウム(Al):0.001〜0.100質量%、チタン(Ti):0.001〜0.010質量%、スズ(Sn):0.001〜0.050質量%及び亜鉛(Zn):0.001〜0.030質量%、を含有し、残部が鉄(Fe)および不可避的な不純物からなる本発明の成分組成を有する実施例1〜15のFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金は、溶断後の割れ防止性、溶断後の上縁部の溶損防止性、ドロス付着防止性、Cu偏析の4項目がいずれも△評価以上であり、総合評価は○以上と、優れた溶断性を有していた。
特に、式1と式2の関係も満たし、Cu偏析が○評価である実施例11〜15では、溶断後の割れ防止性、溶断後の上縁部の溶損防止性、ドロス付着防止性、Cu偏析の4項目がいずれも○評価であり、特に優れた溶断性を有していた。また、実施例1、5では、式(1)の上限を超えているが、本発明の成分組成を有することから、ドロス付着防止性は△評価と、ドロスの付着を防止できた。実施例2では、Cu含有量が本発明の成分組成の上限に近いため、Cu偏析が△評価であったものの、溶断後の割れ防止性に優れ、溶断後の上縁部の溶損を防止することができた。実施例3、6では、Cu、Sn、Znの含有量が本発明の成分組成の下限に近いため、溶断後の上縁部の溶損防止性は得られたものの△評価であった。また、実施例4では、式(2)の関係を満たしておらず、Cu偏析が△評価であったものの、溶断後の割れ防止性に優れていた。
実施例7では、Cu含有量が本発明の成分組成の上限に近いため、Cu偏析が△評価であったものの、溶断後の割れ防止性に優れ、溶断後の上縁部の溶損防止性にも優れていた。実施例8、10では、それぞれ、Cu含有量が2.61質量%、3.00質量%と本発明の成分組成の下限近くであり、式(1)の下限未満であるが、本発明の成分組成を有することから、△評価である溶断後の上縁部の溶損防止性が得られた。実施例9では、式(1)及び式(2)の関係を満たしていないものの、本発明の成分組成を有することから、溶断後の上縁部の溶損防止性もドロス付着防止性も得られた。
一方で、比較例1では、Si、Cuの含有量が本発明の成分組成の上限を超えるため、溶断後の上縁部の溶損防止性が得られなかった。また、比較例1では、Cuの含有量が本発明の成分組成の上限を超えるため、Cu偏析が生じて溶断後の割れ防止性が得られなかった。また、比較例1では、熱間圧延前の加熱処理における均熱時間が7時間と短いため
、Cu偏析が解消されずに溶断後の割れの原因となった。比較例2では、Siの含有量が検出下限であり、溶断の際の溶湯の流れが悪く、溶断後の上縁部の溶損防止性が得られなかった。また、比較例2では、Al、Snの含有量が本発明の成分組成の上限を超えるため、ドロスが多量に付着してドロス付着防止性が得られなかった。比較例3では、Tiの含有量が本発明の成分組成の上限を超えるため、Ti−Nを生成したため、表面キズが発生した。また、比較例3では、Snの含有量が本発明の成分組成の上限を超えるため、ドロスが多量に付着してドロス付着防止性が得られなかった。
比較例4では、Sn、Znの含有量が本発明の成分組成の上限を超えるため、ドロスが多量に付着してドロス付着防止性が得られなかった。比較例5では、Znの含有量が本発明の成分組成の上限を超えるため、ドロスが多量に付着してドロス付着防止性が得られなかった。比較例6では、Tiの含有量が本発明の成分組成の下限未満のため、溶断の際の溶湯の流れが悪く、溶断後の上縁部の溶損防止性が得られなかった。また、比較例6では、Cuの含有量が本発明の成分組成の上限を超えるため、Cu偏析が生じて溶断後の割れ防止性が得られなかった。また、比較例6では、熱間圧延前の加熱処理における均熱時間が7時間と短いため、Cu偏析が解消されずに溶断後の割れの原因となった。
比較例7では、Cuの含有量が本発明の成分組成の上限を超えるため、熱間圧延時に割れが生じた。また、比較例7では、Cuの含有量が本発明の成分組成の上限を超えるため、Cu偏析が生じて溶断後の割れ防止性が得られなかった。また、比較例7では、熱間圧延前の加熱処理における均熱時間が7時間と短いため、Cu偏析が解消されずに溶断後の割れの原因となった。比較例8では、Si、Cuの含有量が本発明の成分組成の下限未満のため、溶断の際の溶湯の流れが悪く、さらに、合金の融点が高くなって高温にならないと溶融しないため、強いエグレが発生し、溶断後の上縁部の溶損防止性が得られなかった。比較例9では、Al、Tiの含有量が本発明の成分組成の下限未満のため、溶断の際の溶湯の流れが悪く、さらに、Cu、Sn、Znの含有量が本発明の成分組成の下限未満のため、合金の融点が高くなり溶断未貫通部が発生した。
本発明のFe−Ni−Cr−Mo−Cu合金は、優れた耐食性を有しつつ、溶断にて切断しても、割れが発生することを防止でき、また、上縁部の溶損の発生とドロスの付着を防止できることから、加工性にも優れており、例えば、海水環境、化学プラント、船舶に搭載される排煙脱硫装置等、優れた耐食性を要求される技術分野で広範に利用可能である。

Claims (4)

  1. 炭素(C):0.004〜0.025質量%、
    ケイ素(Si):0.02〜0.60質量%、
    マンガン(Mn):0.03〜0.35質量%、
    リン(P):0.040質量%以下、
    硫黄(S):0.003質量%以下、
    ニッケル(Ni):30.0〜40.0質量%、
    クロム(Cr):21.0〜25.0質量%、
    モリブデン(Mo):6.50〜8.00質量%、
    窒素(N):0.18〜0.28質量%、
    銅(Cu):2.50〜5.00質量%、
    アルミニウム(Al):0.001〜0.100質量%、
    チタン(Ti):0.001〜0.010質量%、
    スズ(Sn):0.001〜0.050質量%
    亜鉛(Zn):0.001〜0.030質量%、
    ホウ素(B):0〜0.0030質量%、
    バナジウム(V):0〜0.10質量%及び
    ニオブ(Nb):0〜0.030質量%
    を含有し、
    残部が鉄(Fe)および不可避的な不純物からなる溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金。
  2. 下記式(1)(式(1)中、各元素の表記は、該元素の含有量(質量%)を意味する。)の関係を満たす請求項1に記載の溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金。
    −10≦80Al+700Ti+300Sn+400Zn−30Si≦35・・・(1)
  3. 下記式(2)(式(2)中、各元素の表記は、該元素の含有量(質量%)を意味する。)の関係を満たす請求項1または2に記載の溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金。
    Cu≦−0.1×(80Al+700Ti+300Sn+400Zn−30Si)+8・・・(2)
  4. 前記Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金の板厚t(単位:mm)のうち、板厚tの中心部に相当するt×(1/2)とt×(1/3)との間の部位における質量基準のCu濃度dが、下記式(3)(式(3)中、[Cu濃度%]は、前記Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金全体の質量基準のCu濃度%を意味する。)の関係を満たす請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溶断用Fe−Ni−Cr−Mo−Cu合金。
    0.80×[Cu濃度%]≦Cu濃度d≦1.20×[Cu濃度%] ・・・(3)
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