以下、図面を参照し、本発明の車両制御システム、車両制御方法、および車両制御プログラムの実施形態について説明する。
図1は、実施形態の車両制御システム100が搭載される車両(以下、自車両Mと称する)の構成要素を示す図である。車両制御システム100が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の自動車であり、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関を動力源とした自動車や、電動機を動力源とした電気自動車、内燃機関および電動機を兼ね備えたハイブリッド自動車等を含む。電気自動車は、例えば、二次電池、水素燃料電池、金属燃料電池、アルコール燃料電池等の電池により放電される電力を使用して駆動される。
図1に示すように、自車両Mには、ファインダ20−1から20−7、レーダ30−1から30−6、およびカメラ40等のセンサと、ナビゲーション装置50と、車両制御システム100とが搭載される。
ファインダ20−1から20−7は、例えば、照射光に対する散乱光を測定し、対象までの距離を測定するLIDAR(Light Detection and Ranging、或いはLaser Imaging Detection and Ranging)である。例えば、ファインダ20−1は、フロントグリル等に取り付けられ、ファインダ20−2および20−3は、車体の側面やドアミラー、前照灯内部、側方灯付近等に取り付けられる。ファインダ20−4は、トランクリッド等に取り付けられ、ファインダ20−5および20−6は、車体の側面や尾灯内部等に取り付けられる。上述したファインダ20−1から20−6は、例えば、水平方向に関して150度程度の検出領域を有している。また、ファインダ20−7は、ルーフ等に取り付けられる。ファインダ20−7は、例えば、水平方向に関して360度の検出領域を有している。
レーダ30−1および30−4は、例えば、奥行き方向の検出領域が他のレーダよりも広い長距離ミリ波レーダである。また、レーダ30−2、30−3、30−5、30−6は、レーダ30−1および30−4よりも奥行き方向の検出領域が狭い中距離ミリ波レーダである。
以下、ファインダ20−1から20−7を特段区別しない場合は、単に「ファインダ20」と記載し、レーダ30−1から30−6を特段区別しない場合は、単に「レーダ30」と記載する。レーダ30は、例えば、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体を検出する。
カメラ40は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ40は、フロントウィンドウシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ40は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの前方を撮像する。カメラ40は、複数のカメラを含むステレオカメラであってもよい。
なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
図2は、実施形態に係る車両制御システム100を中心とした機能構成図である。自車両Mには、ファインダ20、レーダ30、およびカメラ40などを含む検知デバイスDDと、ナビゲーション装置50と、通信装置55と、車両センサ60と、HMI(Human Machine Interface)70と、エアバッグ装置95と、車両制御システム100と、走行駆動力出力装置200と、ステアリング装置210と、ブレーキ装置220とが搭載される。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、特許請求の範囲における車両制御システムは、「車両制御システム100」のみを指しているのではなく、車両制御システム100以外の構成(検知デバイスDDやHMI70など)を含んでもよい。
ナビゲーション装置50は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機や地図情報(ナビ地図)、ユーザインターフェースとして機能するタッチパネル式表示装置、スピーカ、マイク等を有する。ナビゲーション装置50は、GNSS受信機によって自車両Mの位置を特定し、その位置からユーザによって指定された目的地までの経路を導出する。ナビゲーション装置50により導出された経路は、車両制御システム100の目標車線決定部110に提供される。自車両Mの位置は、車両センサ60の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。また、ナビゲーション装置50は、車両制御システム100が手動運転モードを実行している際に、目的地に至る経路について音声やナビ表示によって案内を行う。なお、自車両Mの位置を特定するための構成は、ナビゲーション装置50とは独立して設けられてもよい。また、ナビゲーション装置50は、例えば、ユーザの保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。この場合、端末装置と車両制御システム100との間で、無線または有線による通信によって情報の送受信が行われる。
通信装置55は、例えば、セルラー網やWi−Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用した無線通信を行う。通信装置55は、例えば、VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System)などの道路の交通状況を監視するシステムの情報提供用サーバと無線通信を行い、自車両Mが走行している道路や走行予定の道路の交通状況を示す情報(以下、交通情報と称する)を取得する。交通情報には、前方の渋滞情報、渋滞地点の所要時間、事故・故障車・工事情報、速度規制・車線規制情報、駐車場の位置、駐車場・サービスエリア・パーキングエリアの満車・空車情報などの情報が含まれる。また、通信装置55は、道路の側帯などに設けられた無線ビーコンと通信を行ったり、自車両Mの周囲を走行する他車両と車車間通信を行ったりすることで、上記交通情報を取得してもよい。
車両センサ60は、車速を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
図3は、HMI70の構成図である。HMI70は、例えば、運転操作系の構成と、非運転操作系の構成とを備える。これらの境界は明確なものでは無く、運転操作系の構成が非運転操作系の機能を備える(或いはその逆)ことがあってもよい。
HMI70は、運転操作系の構成として、例えば、アクセルペダル71、アクセル開度センサ72およびアクセルペダル反力出力装置73と、ブレーキペダル74およびブレーキ踏量センサ(或いはマスター圧センサなど)75と、シフトレバー76およびシフト位置センサ77と、ステアリングホイール78、ステアリング操舵角センサ79aおよびステアリングトルクセンサ79bと、ステアリング位置検出部79cと、その他運転操作デバイス81とを含む。
アクセルペダル71は、車両乗員による加速指示(或いは戻し操作による減速指示)を受け付けるための操作子である。アクセル開度センサ72は、アクセルペダル71の踏み込み量を検出し、踏み込み量を示すアクセル開度信号を車両制御システム100に出力する。なお、車両制御システム100に出力するのに代えて、走行駆動力出力装置200、ステアリング装置210、またはブレーキ装置220に直接出力することがあってもよい。以下に説明する他の運転操作系の構成についても同様である。アクセルペダル反力出力装置73は、例えば車両制御システム100からの指示に応じて、アクセルペダル71に対して操作方向と反対向きの力(操作反力)を出力する。
ブレーキペダル74は、車両乗員による減速指示を受け付けるための操作子である。ブレーキ踏量センサ75は、ブレーキペダル74の踏み込み量(或いは踏み込み力)を検出し、検出結果を示すブレーキ信号を車両制御システム100に出力する。
シフトレバー76は、車両乗員によるシフト段の変更指示を受け付けるための操作子である。シフト位置センサ77は、車両乗員により指示されたシフト段を検出し、検出結果を示すシフト位置信号を車両制御システム100に出力する。
ステアリングホイール78は、車両乗員による旋回指示を受け付けるための操作子である。例えば、ステアリングホイール78は、チルトステアリング機構と、テレスコピックステアリング機構とを有し、前後または上下に位置を調整可能なように設置される。また、ステアリングホイール78は、ガーニッシュ(ダッシュボード)内部に出し入れ可能なように配置されてよい。
ステアリング操舵角センサ79aは、ステアリングホイール78の操作角を検出し、検出結果を示すステアリング操舵角信号を車両制御システム100に出力する。ステアリングトルクセンサ79bは、ステアリングホイール78に加えられたトルクを検出し、検出結果を示すステアリングトルク信号を車両制御システム100に出力する。
ステアリング位置検出部79cは、例えば、チルトステアリング機構と、テレスコピックステアリング機構とのそれぞれの駆動量を検出して、ステアリングホイール78の位置を検出する。ステアリング位置検出部79cは、検出したステアリングホイール78の位置に関する情報を車両制御システム100に出力する。
その他運転操作デバイス81は、例えば、ジョイスティック、ボタン、ダイヤルスイッチ、GUI(Graphical User Interface)スイッチなどである。その他運転操作デバイス81は、加速指示、減速指示、旋回指示などを受け付け、車両制御システム100に出力する。
HMI70は、非運転操作系の構成として、例えば、表示装置82、スピーカ83、接触操作検出装置84およびコンテンツ再生装置85と、各種操作スイッチ86と、シート88およびシート駆動装置89と、ウィンドウガラス90およびウィンドウ駆動装置91と、車室内カメラ92とを含む。
表示装置82は、例えば、インストルメントパネルの各部、助手席や後部座席に対向する任意の箇所などに取り付けられる、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)表示装置などである。また、表示装置82は、フロントウィンドウシールドやその他のウィンドウに画像を投影するHUD(Head Up Display)であってもよい。スピーカ83は、音声を出力する。接触操作検出装置84は、表示装置82がタッチパネルである場合に、表示装置82の表示画面における接触位置(タッチ位置)を検出して、車両制御システム100に出力する。なお、表示装置82がタッチパネルでない場合、接触操作検出装置84は省略されてよい。
コンテンツ再生装置85は、例えば、DVD(Digital Versatile Disc)再生装置、CD(Compact Disc)再生装置、テレビジョン受信機、各種案内画像の生成装置などを含む。表示装置82、スピーカ83、接触操作検出装置84およびコンテンツ再生装置85は、一部または全部がナビゲーション装置50と共通する構成であってもよい。
各種操作スイッチ86は、車室内の任意の箇所に配置される。各種操作スイッチ86には、自動運転切替スイッチ86aと、シート駆動スイッチ86bとが含まれる。自動運転切替スイッチ86aは、自動運転の開始(或いは将来の開始)および停止を指示するスイッチである。シート駆動スイッチ86bは、シート駆動装置89の駆動の開始および停止を指示するスイッチである。これらスイッチは、GUI(Graphical User Interface)スイッチ、機械式スイッチのいずれであってもよい。また、各種操作スイッチ86は、ウィンドウ駆動装置91を駆動するためのスイッチを含んでもよい。
シート88は、車両乗員が着座するシートである。シート駆動装置89は、シート駆動スイッチ86bの操作に応じて、シート88のリクライニング角、前後上下方向位置、ヨー角などを自在に駆動する。また、シート駆動装置89は、駆動したシート88のリクライニング角、前後上下方向位置、ヨー角などを検出するシート位置検出部89aを備える。シート駆動装置89は、シート位置検出部89aの検出結果を示す情報を車両制御システム100に出力する。
ウィンドウガラス90は、例えば各ドアに設けられる。ウィンドウ駆動装置91は、ウィンドウガラス90を開閉駆動する。
車室内カメラ92は、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。車室内カメラ92は、バックミラーやステアリングボス部、インストルメントパネルなど、運転操作を行う車両乗員の少なくとも頭部を撮像可能な位置に取り付けられる。カメラ40は、例えば、周期的に繰り返し車両乗員を撮像する。
エアバッグ装置95は、例えば、自車両Mが物体(他車両など)との衝突等の影響で衝撃を受ける場合に、エアバッグを作動させて乗員への衝撃を吸収または緩和して、乗員を保護する安全装置の一例である。例えば、エアバッグ装置95は、車両センサ60から出力される検出信号を参照して、例えば衝突等の影響で、自車両Mの進行方向を正とした加速度、または自車両Mの進行方向と反対方向を負とした加速度(減速度)などが閾値を超えた場合に、エアバッグを作動させる。また、エアバッグ装置95は、車両側面からの衝突等の影響で自車両Mの角加速度が閾値を超えた場合にエアバッグを作動させてもよい。
図4は、エアバッグ装置95の配置例を示す図である。図示のように、エアバッグ装置95は、例えば、ステアリングエアバッグABST、助手席エアバッグABPS、サイドエアバッグABSD、カーテンシールドエアバッグABCT、シートベルトエアバッグABSBを備える。
ステアリングエアバッグABSTは、例えば、ステアリングホイール78内部に設置され、ステアリングホイール78上部を押し破りステアリングホイール78と運転席との間で膨らむことで展開する。助手席エアバッグABPSは、例えば、助手席のシート88の前方に位置するガーニッシュ内部に設置され、ガーニッシュ上部を押し破りガーニッシュと助手席との間で膨らむことで展開する。サイドエアバッグABSDは、例えば、運転席や助手席、後部座席のそれぞれのシート88における両側面(車両幅方向側の面)に対となって設置され、設置面の垂直方向(車両幅方向)に膨らむことで展開する。カーテンシールドエアバッグABCTは、例えば、フロントウィンドウ、サイドウィンドウ、リアウィンドウ付近に設置され、窓枠下部あるいは窓枠上部から各々のウィンドウを覆うように展開する。シートベルトエアバッグABSBは、例えば、シートベルト内部に設置され、ベルトの一部または全部を膨らませることで展開する。なお、エアバッグ装置95には、さらに、各シート88の座面下に設置され、シート88の一部を膨らませることで展開するシートクッションエアバッグ、運転席や助手席のシート88の座面(背もたれ)の背面に設置され、シート88の背面を押し破り、これらシート88と後部座席との間で展開する後席エアバッグ、後部座席の中央で展開し、後部座席に座す車両乗員同士の衝突を防ぐ後席センターエアバッグなどが含まれてもよい。上述した各種エアバッグには、例えば、火薬に点火することでバッグ内部にガスを充填するインフレータが備えられる。インフレータは、後述するエアバッグ作動制御部180の制御を受けて作動し、エアバッグを展開させる。
車両制御システム100の説明に先立って、走行駆動力出力装置200、ステアリング装置210、およびブレーキ装置220について説明する。
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、自車両Mが内燃機関を動力源とした自動車である場合、エンジン、変速機、およびエンジンを制御するエンジンECU(Electronic Control Unit)を備え、自車両Mが電動機を動力源とした電気自動車である場合、走行用モータおよび走行用モータを制御するモータECUを備え、自車両Mがハイブリッド自動車である場合、エンジン、変速機、およびエンジンECUと走行用モータおよびモータECUとを備える。走行駆動力出力装置200がエンジンのみを含む場合、エンジンECUは、後述する走行制御部160から入力される情報に従って、エンジンのスロットル開度やシフト段等を調整する。走行駆動力出力装置200が走行用モータのみを含む場合、モータECUは、走行制御部160から入力される情報に従って、走行用モータに与えるPWM信号のデューティ比を調整する。走行駆動力出力装置200がエンジンおよび走行用モータを含む場合、エンジンECUおよびモータECUは、走行制御部160から入力される情報に従って、互いに協調して走行駆動力を制御する。
ステアリング装置210は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、車両制御システム100から入力される情報、或いは入力されるステアリング操舵角またはステアリングトルクの情報に従って電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
ブレーキ装置220は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、制動制御部とを備える電動サーボブレーキ装置である。電動サーボブレーキ装置の制動制御部は、走行制御部160から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。電動サーボブレーキ装置は、ブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置220は、上記説明した電動サーボブレーキ装置に限らず、電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。電子制御式油圧ブレーキ装置は、走行制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する。また、ブレーキ装置220は、走行駆動力出力装置200に含まれ得る走行用モータによる回生ブレーキを含んでもよい。
[車両制御システム]
以下、車両制御システム100について説明する。車両制御システム100は、例えば、一以上のプロセッサまたは同等の機能を有するハードウェアにより実現される。車両制御システム100は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、記憶装置、および通信インターフェースが内部バスによって接続されたECU(Electronic Control Unit)、或いはMPU(Micro-Processing Unit)などが組み合わされた構成であってよい。
図2に戻り、車両制御システム100は、例えば、目標車線決定部110と、自動運転制御部120と、走行制御部160と、HMI制御部170と、エアバッグ作動制御部180と、記憶部190とを備える。自動運転制御部120は、例えば、自動運転モード制御部130と、自車位置認識部140と、外界認識部142と、行動計画生成部144と、軌道生成部146と、切替制御部150と、異常検知部152とを備える。上述したHMI70のうち表示装置82とスピーカ83とは、「出力部」の一例であり、HMI制御部170は、「出力制御部」の一例である。
目標車線決定部110、自動運転制御部120の各部、走行制御部160、HMI制御部、およびエアバッグ作動制御部180のうち一部または全部は、プロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらのうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
記憶部190には、例えば、高精度地図情報191、目標車線情報192、行動計画情報193、異常判定情報194、モード別操作可否情報195、エアバッグ作動基準情報196などの情報が格納される。記憶部190は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等で実現される。プロセッサが実行するプログラムは、予め記憶部190に格納されていてもよいし、車載インターネット設備等を介して外部装置からダウンロードされてもよい。また、プログラムは、そのプログラムを格納した可搬型記憶媒体が図示しないドライブ装置に装着されることで記憶部190にインストールされてもよい。また、車両制御システム100は、複数のコンピュータ装置によって分散化されたものであってもよい。
目標車線決定部110は、例えば、MPUにより実現される。目標車線決定部110は、ナビゲーション装置50から提供された経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、高精度地図情報191を参照してブロックごとに目標車線を決定する。目標車線決定部110は、例えば、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。目標車線決定部110は、例えば、経路において分岐箇所や合流箇所などが存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な走行経路を走行できるように、目標車線を決定する。目標車線決定部110により決定された目標車線は、目標車線情報192として記憶部190に記憶される。
高精度地図情報191は、ナビゲーション装置50が有するナビ地図よりも高精度な地図情報である。高精度地図情報191は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、高精度地図情報191には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。道路情報には、高速道路、有料道路、国道、都道府県道といった道路の種別を表す情報や、道路の車線数、各車線の幅員、道路の勾配、道路の位置(経度、緯度、高さを含む3次元座標)、車線のカーブの曲率、車線の合流および分岐ポイントの位置、道路に設けられた標識等の情報が含まれる。交通規制情報には、工事や交通事故、渋滞等によって車線が封鎖されているといった情報が含まれる。
自動運転モード制御部130は、自動運転制御部120が実施する自動運転のモードを決定する。本実施形態における自動運転のモードには、以下のモードが含まれる。なお、以下はあくまで一例であり、自動運転のモード数は任意に決定されてよい。
[モードA]
モードAは、最も自動運転の度合が高いモードである。モードAが実施されている場合、複雑な合流制御など、全ての車両制御が自動的に行われるため、車両乗員は自車両Mの周辺や状態を監視する必要が無い(周辺監視義務が生じない)。
ここで、モードAで選択される走行態様の一例としては、渋滞時に前走車両に追従する低速追従走行(TJP;Traffic Jam Pilot)がある。低速追従走行では、混雑した高速道路上で前走車両に追従することで安全な自動運転を実現することができる。低速追従走行は、例えば自車両Mの走行速度が所定速度以上(例えば、40km/h以上)になった場合に解除される。また、低速追従走行の終了するタイミングでモードAから他の走行態様に切り替わる場合もあるが、モードAにおいて選択可能な他の走行態様に切り替わってもよい。
[モードB]
モードBは、モードAの次に自動運転の度合が高いモードである。モードBが実施されている場合、原則として全ての車両制御が自動的に行われるが、場面に応じて自車両Mの運転操作が車両乗員に委ねられる。このため、車両乗員は自車両Mの周辺や状態を監視している必要がある(モードAと比べて周辺監視義務が増加する)。
[モードC]
モードCは、モードBの次に自動運転の度合が高いモードである。モードCが実施されている場合、車両乗員は、場面に応じた確認操作をHMI70に対して行う必要がある。モードCでは、例えば、車線変更のタイミングが車両乗員に通知され、車両乗員がHMI70に対して車線変更を指示する操作を行った場合に、自動的な車線変更が行われる。このため、車両乗員は自車両Mの周辺や状態を監視している必要がある。
自動運転モード制御部130は、HMI70に対する車両乗員の操作、行動計画生成部144により決定されたイベント、軌道生成部146により決定された走行態様などに基づいて、自動運転のモードを上記いずれかのモードに決定する。自動運転のモードは、HMI制御部170に通知される。また、自動運転のモードには、自車両Mの検知デバイスDDの性能等に応じた限界が設定されてもよい。例えば、検知デバイスDDの性能が低い場合には、モードAは実施されないものとしてよい。
何れの自動運転のモードにおいても、HMI70における運転操作系の構成に対する操作によって、手動運転モードに切り替えること(オーバーライド)は可能である。オーバーライドは、例えば自車両Mの車両乗員によるHMI70の運転操作系に対する操作力が閾値を超える状態が所定時間以上継続した場合、所定の操作変化量(例えばアクセルペダル71のアクセル開度、ブレーキペダル74のブレーキ踏量、ステアリングホイール78のステアリング操舵角)以上の場合、または運転操作系に対する操作を所定回数以上行った場合などに開始される。
自動運転制御部120の自車位置認識部140は、記憶部190に格納された高精度地図情報191と、ファインダ20、レーダ30、カメラ40、ナビゲーション装置50、または車両センサ60から入力される情報とに基づいて、自車両Mが走行している車線(走行車線)、および、走行車線に対する自車両Mの相対位置を認識する。
自車位置認識部140は、例えば、高精度地図情報191から認識される道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ40によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。
図5は、自車位置認識部140により走行車線L1に対する自車両Mの相対位置が認識される様子を示す図である。自車位置認識部140は、例えば、自車両Mの基準点(例えば重心)の走行車線中央CLからの乖離OS、および自車両Mの進行方向の走行車線中央CLを連ねた線に対してなす角度θを、走行車線L1に対する自車両Mの相対位置として認識する。なお、これに代えて、自車位置認識部140は、自車線L1のいずれかの側端部に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。自車位置認識部140により認識される自車両Mの相対位置は、目標車線決定部110に提供される。
外界認識部142は、ファインダ20、レーダ30、カメラ40等から入力される情報に基づいて、周辺車両の位置、速度、および加速度等の状態を認識する。周辺車両とは、例えば、自車両Mの周辺を走行する車両であって、自車両Mと同じ方向に走行する車両である。周辺車両の位置は、他車両の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、他車両の輪郭で表現された領域で表されてもよい。周辺車両の「状態」とは、上記各種機器の情報に基づいて把握される、周辺車両の加速度、車線変更をしているか否か(あるいは車線変更をしようとしているか否か)を含んでもよい。また、外界認識部142は、周辺車両に加えて、ガードレールや電柱、駐車車両、歩行者、野生動物(例えば鹿や熊など)、その他の物体の位置を認識してもよい。
行動計画生成部144は、自動運転のスタート地点、および/または自動運転の目的地を設定する。自動運転のスタート地点は、自車両Mの現在位置であってもよいし、自動運転を指示する操作がなされた地点でもよい。行動計画生成部144は、そのスタート地点と自動運転の目的地との間の区間において、行動計画を生成する。なお、これに限らず、行動計画生成部144は、任意の区間について行動計画を生成してもよい。
行動計画は、例えば、順次実行される複数のイベントで構成される。イベントには、例えば、自車両Mを減速させる減速イベントや、自車両Mを加速させる加速イベント、走行車線を逸脱しないように自車両Mを走行させるレーンキープイベント、走行車線を変更させる車線変更イベント、自車両Mに前走車両を追い越させる追い越しイベント、分岐ポイントにおいて所望の車線に変更させたり、現在の走行車線を逸脱しないように自車両Mを走行させたりする分岐イベント、本線に合流するための合流車線において自車両Mを加減速させ、走行車線を変更させる合流イベント、自動運転の開始地点で手動運転モードから自動運転モードに移行させたり、自動運転の終了予定地点で自動運転モードから手動運転モードに移行させたりするハンドオーバイベント等が含まれる。行動計画生成部144は、目標車線決定部110により決定された目標車線が切り替わる箇所において、車線変更イベント、分岐イベント、または合流イベントを設定する。行動計画生成部144によって生成された行動計画を示す情報は、行動計画情報193として記憶部190に格納される。
図6は、ある区間について生成された行動計画の一例を示す図である。図示するように、行動計画生成部144は、目標車線情報192が示す目標車線上を自車両Mが走行するために必要な行動計画を生成する。なお、行動計画生成部144は、自車両Mの状況変化に応じて、目標車線情報192に拘わらず、動的に行動計画を変更してもよい。例えば、行動計画生成部144は、車両走行中に外界認識部142によって認識された周辺車両の速度が閾値を超えたり、自車線に隣接する車線を走行する周辺車両の移動方向が自車線方向に向いたりした場合に、自車両Mが走行予定の運転区間に設定されたイベントを変更する。例えば、レーンキープイベントの後に車線変更イベントが実行されるようにイベントが設定されている場合において、外界認識部142の認識結果によって当該レーンキープイベント中に車線変更先の車線後方から車両が閾値以上の速度で進行してきたことが判明した場合、行動計画生成部144は、レーンキープイベントの次のイベントを、車線変更イベントから減速イベントやレーンキープイベント等に変更してよい。この結果、車両制御システム100は、外界の状態に変化が生じた場合においても、安全に自車両Mを自動走行させることができる。
図7は、軌道生成部146の構成の一例を示す図である。軌道生成部146は、例えば、走行態様決定部146Aと、軌道候補生成部146Bと、評価・選択部146Cとを備える。
走行態様決定部146Aは、レーンキープイベントを実施する際に、定速走行、追従走行、低速追従走行、減速走行、カーブ走行、障害物回避走行などのうちいずれかの走行態様を決定する。例えば、走行態様決定部146Aは、自車両Mの前方に他車両が存在しない場合に、走行態様を定速走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、前走車両に対して追従走行するような場合に、走行態様を追従走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、渋滞場面などにおいて、走行態様を低速追従走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、外界認識部142により前走車両の減速が認識された場合や、停車や駐車などのイベントを実施する場合に、走行態様を減速走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、外界認識部142により自車両Mがカーブ路に差し掛かったことが認識された場合に、走行態様をカーブ走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、外界認識部142により自車両Mの前方に障害物が認識された場合に、走行態様を障害物回避走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、車線変更イベント、追い越しイベント、分岐イベント、合流イベント、ハンドオーバイベントなどを実施する場合に、それぞれのイベントに応じた走行態様を決定する。
また、走行態様決定部146Aは、例えば、外界認識部142により認識された周辺車両(例えば前方車両)の速度が一定速度以下であり、且つ周辺車両までの車間距離が一定値以下であれば、上述したモードAにおいて、例えば、走行態様を低速追従走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、例えば、周辺車両(例えば前方車両)の速度が一定速度以上であり、且つ周辺車両までの車間距離が一定値以上であれば、上述したモードBにおいて、例えば、走行態様を定速走行に決定する。
軌道候補生成部146Bは、走行態様決定部146Aにより決定された走行態様に基づいて、軌道の候補を生成する。図8は、軌道候補生成部146Bにより生成される軌道の候補の一例を示す図である。図示の例は、自車両Mが車線L1から車線L2に車線変更する場合に生成される軌道の候補を示している。
軌道候補生成部146Bは、図8に示すような軌道を、例えば、将来の所定時間ごとに、自車両Mの基準位置(例えば重心や後輪軸中心)が到達すべき目標位置(軌道点K)の集まりとして決定する。図9は、軌道候補生成部146Bにより生成される軌道の候補を軌道点Kで表現した図である。軌道点Kの間隔が広いほど、自車両Mの速度は速くなり、軌道点Kの間隔が狭いほど、自車両Mの速度は遅くなる。従って、軌道候補生成部146Bは、加速したい場合には軌道点Kの間隔を徐々に広くし、減速したい場合は軌道点の間隔を徐々に狭くする。
このように、軌道点Kは速度成分を含むものであるため、軌道候補生成部146Bは、軌道点Kのそれぞれに対して目標速度を与える必要がある。目標速度は、走行態様決定部146Aにより決定された走行態様に応じて決定される。
ここで、車線変更(分岐を含む)を行う場合の目標速度の決定手法について説明する。軌道候補生成部146Bは、まず、車線変更ターゲット位置(或いは合流ターゲット位置)を設定する。車線変更ターゲット位置は、周辺車両との相対位置として設定されるものであり、「どの周辺車両の間に車線変更するか」を決定するものである。軌道候補生成部146Bは、車線変更ターゲット位置を基準として3台の周辺車両に着目し、車線変更を行う場合の目標速度を決定する。図10は、車線変更ターゲット位置TAを示す図である。図中、L1は自車線を表し、L2は隣接車線を表している。ここで、自車両Mと同じ車線で、自車両Mの直前を走行する周辺車両を前走車両mA、車線変更ターゲット位置TAの直前を走行する周辺車両を前方基準車両mB、車線変更ターゲット位置TAの直後を走行する周辺車両を後方基準車両mCと定義する。自車両Mは、車線変更ターゲット位置TAの側方まで移動するために加減速を行う必要があるが、この際に前走車両mAに追いついてしまうことを回避しなければならない。このため、軌道候補生成部146Bは、3台の周辺車両の将来の状態を予測し、各周辺車両と干渉しないように目標速度を決定する。
図11は、3台の周辺車両の速度を一定と仮定した場合の速度生成モデルを示す図である。図中、mA、mBおよびmCから延出する直線は、それぞれの周辺車両が定速走行したと仮定した場合の進行方向における変位を示している。自車両Mは、車線変更が完了するポイントCPにおいて、前方基準車両mBと後方基準車両mCとの間にあり、且つ、それ以前において前走車両mAよりも後ろにいなければならない。このような制約の下、軌道候補生成部146Bは、車線変更が完了するまでの目標速度の時系列パターンを、複数導出する。そして、目標速度の時系列パターンをスプライン曲線等のモデルに適用することで、図9に示すような軌道の候補を複数導出する。なお、3台の周辺車両の運動パターンは、図11に示すような定速度に限らず、定加速度、定ジャーク(躍度)を前提として予測されてもよい。
評価・選択部146Cは、軌道候補生成部146Bにより生成された軌道の候補に対して、例えば、計画性と安全性の二つの観点で評価を行い、走行制御部160に出力する軌道を選択する。計画性の観点からは、例えば、既に生成されたプラン(例えば行動計画)に対する追従性が高く、軌道の全長が短い場合に軌道が高く評価される。例えば、右方向に車線変更することが望まれる場合に、一旦左方向に車線変更して戻るといった軌道は、低い評価となる。安全性の観点からは、例えば、それぞれの軌道点において、自車両Mと物体(周辺車両等)との距離が遠く、加減速度や操舵角の変化量などが小さいほど高く評価される。
切替制御部150は、自動運転切替スイッチ86aから入力される信号、後述する異常検知部152により出力される情報、その他に基づいて自動運転モードと手動運転モードとを相互に切り替える。例えば、切替制御部150は、異常検知部152により検知された異常状態が特定の異常状態である場合には自動運転モードから手動運転モードに切り替え、それ以外の場合では自動運転モードを継続する。
また、切替制御部150は、HMI70における運転操作系の構成に対する加速、減速または操舵を指示する操作に基づいて、自動運転モードから手動運転モードに切り替える。例えば、切替制御部150は、HMI70における運転操作系の構成から入力された信号の示す操作量が閾値を超えた状態が、基準時間以上継続した場合に、自動運転モードから手動運転モードに切り替える(オーバーライド)。また、切替制御部150は、オーバーライドによる手動運転モードへの切り替えの後、所定時間の間、HMI70における運転操作系の構成に対する操作が検出されなかった場合に、自動運転モードに復帰させてもよい。また、切替制御部150は、例えば自動運転の終了予定地点で自動運転モードから手動運転モードに移行するハンドオーバ制御を行う場合に、車両乗員に対して事前にハンドオーバリクエストを通知するため、その旨の情報を、HMI制御部170に出力する。
異常検知部152は、車両制御システム100における異常状態を検知する。異常状態とは、例えば、ファインダ20、レーダ30、カメラ40等の機器自体に異常が生じた状態と、これらの機器と車両制御システム100との間の通信に異常が生じた状態と、行動計画生成部144や軌道生成部146といった各機能部(要素)間の通信に異常が生じた状態とを含む。これら異常状態は、自車両Mの外部からの衝撃により生じ得る。
例えば、異常検知部152は、異種の機器同士の検出結果を比較して機器の異常を検知したり、同一の機器による検出結果の履歴に基づいて機器の異常を検知したりする。より具体的には、異常検知部152は、ファインダ20およびレーダ30により検出された物体の位置と、カメラ40により検出された物体の位置とが顕著に異なる場合、カメラ40に異常が生じたことを検知する。また、異常検知部152は、例えば、機能部間を接続する内部バスを介して伝送される信号(情報)を監視し、通信に異常が生じたことを検知する。
異常検知部152は、上記種々の異常状態を検出した場合、異常判定情報194を参照して、この異常状態が特定の異常状態であるか否かを判定する。特定の異常状態とは、自動運転モード下において、行動計画(または軌道)に基づく車両制御の結果に影響を及ぼす状態である。
図12は、異常判定情報194の一例を示す図である。図示のように、異常判定情報194には、各イベントに遷移して制御対象を制御する場合に必要となる機器および情報が含まれる。例えば、レーンキープイベントに遷移するには、レーダ30−1およびファインダ20−1の一方または双方と、カメラ40とが必要となる。従って、異常検知部152は、レーダ30−1およびファインダ20−1の双方か、あるいはファインダ20−1とのうちいずれか一方に異常がある場合、係る異常状態が行動計画に基づく車両制御の結果に影響を及ぼすと判定する。すなわち、異常検知部152は、係る異常状態を特定の異常状態であると判定する。
また、異常検知部152は、故障等によって異常のある機器の検出範囲を他の機器の検出範囲によってカバーすることができる場合、制御結果に影響を及ぼす特定の異常状態とは判定せず、当初予定された行動計画を変更せずに継続する。例えば、異常検知部152は、レーダ30−1またはファインダ20−1の一方のみに異常がある場合は、他の機器の検出範囲によって異常がある機器(レーダ30−1またはファインダ20−1)の検出範囲をカバーすることができると判定し、当該機器の異常は行動計画に基づく車両制御の結果に影響を及ぼさないと判定する。すなわち、異常検知部152は、係る異常状態を特定の異常状態でないと判定する。
なお、異常検知部152は、特定の異常状態を判別する際に異常判定情報194を使用するのに限らず、異常判定情報194と同等の情報が埋め込まれたプログラムを実行することで特定の異常状態を判別してもよい。また、異常検知部152は、異常判定情報194と同等の情報を含むマップデータを使用してもよい。
異常検知部152は、検知した異常状態が特定の異常状態であると判定した場合に、判定結果を示す情報を切替制御部150に出力する。
走行制御部160は、軌道生成部146によって生成された軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ステアリング装置210、およびブレーキ装置220を制御する。
HMI制御部170は、自動運転制御部120により自動運転のモードの情報が通知されると、モード別操作可否情報195を参照して、自動運転のモードの種別に応じてHMI70を制御する。
図13は、モード別操作可否情報195の一例を示す図である。図13に示すモード別操作可否情報195は、運転モードの項目として「手動運転モード」、「自動運転モード」とを有する。また、「自動運転モード」として、上述した「モードA」、「モードB」、および「モードC」等を有する。また、モード別操作可否情報195は、非運転操作系の項目として、ナビゲーション装置50に対する操作である「ナビゲーション操作」、コンテンツ再生装置85に対する操作である「コンテンツ再生操作」、表示装置82に対する操作である「インストルメントパネル操作」等を有する。図13に示すモード別操作可否情報195の例では、上述した運転モードごとに非運転操作系に対する車両乗員の操作の可否が設定されているが、対象のインターフェース装置は、これに限定されるものではない。
HMI制御部170は、自動運転制御部120から取得したモードの情報に基づいてモード別操作可否情報195を参照することで、使用が許可される装置(ナビゲーション装置50およびHMI70の一部または全部)と、使用が許可されない装置とを判定する。また、HMI制御部170は、判定した結果に基づいて、非運転操作系のHMI70、またはナビゲーション装置50に対する車両乗員からの操作の受け付けの可否を制御する。
例えば、車両制御システム100が実行する運転モードが手動運転モードの場合、車両乗員は、HMI70の運転操作系(例えば、アクセルペダル71、ブレーキペダル74、シフトレバー76、およびステアリングホイール78等)を操作する。また、車両制御システム100が実行する運転モードが自動運転モードのモードB、モードC等である場合、車両乗員には、自車両Mの周辺監視義務が生じる。このような場合、車両乗員の運転以外の行動(例えばHMI70の操作等)により注意が散漫になること(ドライバーディストラクション)を防止するため、HMI制御部170は、HMI70の非運転操作系の一部または全部に対する操作を受け付けないように制御を行う。この際、HMI制御部170は、車両乗員に自車両Mの周辺監視を行わせるために、外界認識部142により認識された自車両Mの周辺車両の存在やその周辺車両の状態を、表示装置82に画像などで表示させると共に、自車両Mの走行時の場面に応じた確認操作をHMI70に受け付けさせてよい。
また、HMI制御部170は、運転モードがモードAである場合、ドライバーディストラクションの規制を緩和し、操作を受け付けていなかった非運転操作系に対する車両乗員の操作を受け付ける制御を行う。例えば、HMI制御部170は、表示装置82に映像を表示させたり、スピーカ83に音声を出力させたり、コンテンツ再生装置85にDVDなどからコンテンツを再生させたりする。なお、コンテンツ再生装置85が再生するコンテンツには、DVDなどに格納されたコンテンツの他、例えば、テレビ番組等の娯楽、エンターテイメントに関する各種コンテンツが含まれてよい。また、上述した図13に示す「コンテンツ再生操作」は、このような娯楽、エンターテイメントに関するコンテンツ操作を意味するものであってよい。
また、モードAからモードBまたはモードCに遷移される場合、すなわち車両乗員の周辺監視義務が増加する自動運転のモードの変更が行われる場合、HMI制御部170は、ナビゲーション装置50または非運転操作系のHMI70に所定の情報を出力させる。所定の情報とは、周辺監視義務が増加すること示す情報や、ナビゲーション装置50または非運転操作系のHMI70に対する操作許容度が低くなる(操作が制限される)ことを示す情報である。なお、所定の情報は、これらに限定されるものではなく、例えばハンドオーバ制御への準備を促すような情報であってもよい。
上述したように、HMI制御部170は、例えば運転モードが上述したモードAからモードBまたはモードCへ遷移する所定時間前や自車両Mが所定速度に至る前に車両乗員に対して警告等を報知することで、自車両Mの周辺監視義務が車両乗員に課されることを、適切なタイミングで車両乗員に通知することができる。この結果、自動運転の切り替わりへの準備期間を車両乗員に与えることができる。
また、HMI制御部170は、後述するエアバッグ作動制御部180により周辺車両などの物体と自車両Mとが衝突するタイミングが予測された場合に、このタイミング以前に表示装置82やスピーカ83等のHMI70を用いて、車両乗員に危険が差し迫っていること(以下、衝突危険予測情報と称する)を報知してよい。これによって、車両乗員に衝突の危険性があることを認識させ、不意の衝突を防ぐことができる。
図14は、エアバッグ作動制御部180の構成の一例を示す図である。エアバッグ作動制御部180は、例えば、衝突予測部180Aと、エアバッグ選択部180Bと、エアバッグ作動部180Cとを備える。
衝突予測部180Aは、外界認識部142により認識された周辺車両などの物体(以下、認識物体と称する)と、自車両Mとの相対的な位置関係に基づいて、認識物体の中から、時間経過または走行距離に応じて自車両Mに相対的に接近する接近物体を抽出する。例えば、自車両Mに比して認識物体の方が低速で走行していたり、認識物体が停止していたりする場合、この認識物体は、自車両Mに相対的に近づくため、接近物体として抽出される。また、この関係が逆の場合も、認識物体は自車両Mに相対的に近づくため、接近物体として抽出される。例えば、交差点などで自車両Mの進行方向と交差する方向を進行方向とする周辺車両などもあるタイミングでは自車両Mに近づくため接近物体として抽出され得る場合がある。
衝突予測部180Aは、認識物体の中から抽出した接近物体の移動方向と、自車両Mの移動方向とに基づいて、自車両Mが接近物体と衝突すると仮定した場合の衝突するタイミング(以下、衝突予測タイミングと称する)を予測する。例えば、衝突予測部180Aは、自車両Mに接近する際の接近物体の速度(または加速度等)および移動方向を一定と想定して、自車両Mの将来の到達地点(軌道点)のいずれかと接近物体とが干渉する場合、接近物体と干渉する到達地点に自車両Mが到達する時刻を、衝突予測タイミングとして導出する。なお、到達地点を示す軌道点を中心とした一定距離の範囲内に接近物体が包含されるようなニアミスする状況においても、軌道点と接近物体とが干渉するものとして扱ってよい。
そして、衝突予測部180Aは、予測した衝突予測タイミングにおいて接近物体が自車両Mに衝突すると仮定した場合の衝突方向を予測する。
エアバッグ選択部180Bは、エアバッグ作動基準情報196を参照して、衝突予測部180Aにより予測された衝突方向に基づいて作動させるエアバッグを選択する。
図15は、エアバッグ作動基準情報196の一例を示す図である。図15に示すエアバッグ作動基準情報196は、自車両Mの方位方向をAD1からAD8の8分割に等分した方向ごとに、作動させるエアバッグの種類を示している。なお、方位方向は、8分割より少なく、あるいは多く等分されてもよいし、不等分に分割されもよい。
例えば、エアバッグ選択部180Bは、衝突予測部180Aにより予測された衝突方向が、区分されたAD1からAD8のいずれかの方向に該当するのかを判定する。例えば、衝突方向がAD7の方向に該当する場合、衝突を受ける側から車両乗員を保護するエアバッグを作動対象のエアバッグとして選択する。このエアバッグには、例えば、助手席側(左ハンドルでは運転席側)のシート88に設置されたサイドエアバッグABSD、助手席側のサイドウィンドウ付近に設置されたカーテンシールドエアバッグABCTなどが含まれる。また、衝突方向がAD1またはAD8の方向に該当する場合、フロントウィンドウ付近に設置されたカーテンシールドエアバッグABCTなどを作動対象のエアバッグとして選択する。これによって、例えば、車両乗員を保護しつつ、オートバイなどの周辺車両や鹿などの野生動物が衝突時にフロントウィンドウやサイドウィンドウなどの各種ウィンドウを突き破って車室内に侵入してくるのを抑制することができる。
また、エアバッグ選択部180Bは、衝突によって自車両Mが受けた衝撃力に起因して、慣性力によって車室内で投げ出される車両乗員を保護するエアバッグを、作動対象のエアバッグとして選択してもよい。例えば、衝突方向がAD7の方向に該当する場合、エアバッグ選択部180Bは、AD7の方向と自車両Mの移動方向とに基づいて、これらの方向の合成ベクトルを車両乗員が投げ出される方向として扱い、この合成ベクトルが示す方向側に設置されたエアバッグを作動対象のエアバッグとして選択する。このエアバッグには、例えば、ステアリングエアバッグABST、助手席エアバッグABPS、フロントウィンドウ付近に設置されたカーテンシールドエアバッグABCT、各シート88のシートベルトエアバッグABSB、運転席側のサイドウィンドウ付近に設置されたカーテンシールドエアバッグABCTなどが含まれる。
エアバッグ作動部180Cは、手動運転モード下において、車両センサ60から出力される検出信号を参照して、例えば自車両Mの加速度や角加速度などが閾値を超えた場合に、エアバッグ装置95が備える複数のエアバッグのうち、少なくともエアバッグ選択部180Bにより選択されたエアバッグを作動させる。すなわち、エアバッグ作動部180Cは、規定以上の衝撃力で接近物体が衝突してきたときにエアバッグを作動させる。
一方、エアバッグ作動部180Cは、自動運転モード下において、所定のタイミングで、エアバッグ装置95が備える複数のエアバッグのうち、少なくともエアバッグ選択部180Bにより選択されたエアバッグを作動させる。所定のタイミングとは、例えば、衝突予測部180Aにより予測された衝突予測タイミング以前のタイミングである。これによって、実際に衝突するタイミング以前のタイミングでエアバッグ選択部180Bにより選択されたエアバッグを作動させることができる可能性が高くなる。なお、手動運転モード下においても、エアバッグ作動部180Cは、衝突予測タイミングに基づいてエアバッグ選択部180Bにより選択されたエアバッグを作動させてもよい。
図16は、運転モードごとの衝突危険予測情報の報知タイミングおよびエアバッグの作動タイミングの一例を示す図である。図中T1は、衝突予測部180Aにより衝突予測タイミングの予測が完了された時刻であり、T2は、自動運転モード時のエアバッグの作動時刻であり、T3は、手動運転モード時のエアバッグの作動時刻であり、T4は、衝突予測タイミングを示す時刻である。なお、予測された衝突予測タイミングと実際の衝突予測タイミング(加速度等が閾値を超えるタイミング)とは同時刻であってもよいし、誤差を含んでいてもよい。
例えば、自動運転モード下において、HMI制御部170は、時刻T1以降に、HMI70を用いて衝突危険予測情報を報知し、エアバッグ作動部180Cは、衝突危険予測情報が報知された時刻と同時刻、または衝突危険予測情報が報知された時刻から時刻T4までの期間内のある時刻T2にエアバッグを作動させる。例えば、フロントウィンドウを覆うカーテンシールドエアバッグABCTが作動対象のエアバッグとして選択されている場合、衝突予測タイミングよりも前にエアバッグが展開されるため車両乗員の前方の視界が遮蔽されるが、自動運転によって自車両Mの走行を継続することができる。
また、手動運転モード下において、HMI制御部170は、自動運転モード時と同様に、時刻T1以降に、HMI70を用いて衝突危険予測情報を報知し、エアバッグ作動部180Cは、時刻T4より若干早いタイミングである時刻T3にエアバッグを作動させる。これによって、衝突予測タイミングの導出時に計算誤差などから実際の衝突時刻よりも遅れた時刻を時刻T4と導出した場合でも、実際の衝突時刻よりも早いタイミングでエアバッグを作動させることができる。
図17は、車両制御システム100により行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、衝突予測部180Aは、外界認識部142により認識された認識物体の中から、接近物体を抽出できるまで待機し(ステップS100)、接近物体を抽出すると、接近物体の移動方向と、自車両Mの移動方向とに基づいて、衝突予測タイミングを予測すると共に、予測した衝突予測タイミングにおいて接近物体が自車両Mに衝突する衝突方向を予測する(ステップS102)。
次に、エアバッグ選択部180Bは、エアバッグ作動基準情報196を参照して、衝突予測部180Aにより予測された衝突方向に基づいて作動させるエアバッグを選択する(ステップS104)。次に、HMI制御部170は、衝突予測タイミング以前に、HMI70を用いて衝突危険予測情報を報知する(ステップS106)。
次に、エアバッグ作動部180Cは、実行中の運転モードが自動運転モードであるか否かを判定する(ステップS108)。実行中の運転モードが自動運転モードでない場合、エアバッグ作動部180Cは、自車両Mが物体(他車両など)と衝突するまで待機し(ステップS110)、自車両Mが物体と衝突した場合、少なくともエアバッグ選択部180Bにより選択されたエアバッグを作動させる(ステップS112)。例えば、エアバッグ作動部180Cは、自車両Mの加速度が閾値を超えた場合に衝突によって衝撃を受けたと判定する。なお、エアバッグ作動部180Cは、S112の処理として、手動運転モード中においても、例えば衝突予測タイミングの数ms早い時刻に、エアバッグを作動させてもよい。
一方、実行中の運転モードが自動運転モードである場合、エアバッグ作動部180Cは、衝突予測タイミング以前のタイミングで少なくともエアバッグ選択部180Bにより選択されたエアバッグを作動させる(ステップS114)。なお、S114の処理において、必ずしも直ちにエアバッグを作動させる必要はなく、衝突予測タイミングを示す時刻が到来する前のいずれかのタイミングで作動させればよい。これによって衝突時には既にエアバッグが展開していることから、より確実に乗員を保護することができる。
次に、切替制御部150は、エアバッグを展開して自車両Mが物体と衝突した場合、異常検知部152により出力される情報を参照して、自動運転モードを継続可能であるか否かを判定する(ステップS116)。例えば、異常状態が検知されない、または異常状態が特定の異常状態でないという情報が異常検知部152により出力された場合、切替制御部150は、自動運転モードを継続可能であると判定し、自動運転モードを継続する(ステップS118)。この際、軌道生成部146は、二次衝突を回避するための軌道を生成する。
図18は、二次衝突を回避するための軌道の一例を示す図である。例えば、軌道生成部146は、図示のように、所定距離走行後に自車両Mを路肩に寄せて停車させるような軌道を生成する。これによって、車両制御システム100は、二次衝突などの被害を防ぐことができる。
一方、異常状態が特定の異常状態であるという情報が異常検知部152により出力された場合、切替制御部150は、自動運転モードを継続可能でないと判定し、自動運転モードを手動運転モードに切り替える(ステップS120)。これによって本フローチャートの処理が終了する。
以上説明した実施形態によれば、自車両Mの周囲の物体と自車両Mとの相対的な位置関係を認識し、位置関係を認識した物体に基づいて自車両Mの速度制御と操舵制御とのうち少なくとも一方を自動的に行う自動運転モードと、速度制御および操舵制御の双方を車両乗員の操作に基づき行う手動運転モードとのいずれかを実行し、運転モードの実行時に利用される、自車両Mとの相対的な位置関係を認識する際に得られた認識結果に基づいて、位置関係を認識した物体のうち、自車両Mに相対的に接近する接近物体を抽出すると共に、接近物体が自車両Mに衝突すると仮定した場合の衝突方向を予測し、予測した衝突方向に基づいて、車室内に設けられた複数のエアバッグの中から、作動対象のエアバッグを選択することにより、自動運転に用いられる高性能な検知デバイスDDを使用して、エアバッグを効果的に作動させることができる。
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。