1.徐放性粒子
図1に示すように、本発明の一実施形態の徐放性粒子1は、疎水性の抗生物活性化合物、および、疎水性の重合性ビニルモノマーを含有するコア原料成分をミニエマルション重合してなるコア2と、シェル原料成分を界面重合してなり、コア2を被覆するシェル3とを備える。
以下、抗生物活性化合物、重合性ビニルモノマーおよびシェル原料成分について順次説明する。
1.1 抗生物活性化合物
抗生物活性化合物としては、例えば、殺虫、抗菌、防蟻、忌避などの抗生物活性を有し、好ましくは、重合性ビニルモノマーに溶解するが、重合性ビニルモノマーの重合体(後述)と相溶しない化合物が挙げられる。
抗生物活性化合物としては、具体的には、エトフェンプロックス(2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル−3−フェノキシベンジル−エーテル)などの殺虫剤、防蟻剤、例えば、ノニリックアシドバニリルアミド(N−バニリルノナンアミド、VNA)などの忌避剤が挙げられる。
これら抗生物活性化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
抗生物活性化合物として、好ましくは、エトフェンプロックス、VNAが挙げられ、より好ましくは、エトフェンプロックスが挙げられる。
抗生物活性化合物は、実質的に疎水性であって、具体的には、例えば、水に対する室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)における溶解度が極めて小さく、より具体的には、例えば、室温の溶解度が、1.5質量部/水100質量部(15g/L)以下、好ましくは、0.5質量部/水100質量部(5g/L)以下、さらに好ましくは、0.1質量部/水100質量部(1g/L)以下である。
抗生物活性化合物の水に対する溶解度が、上記した上限以下であれば、重合性ビニルモノマーを含むコア原料成分をミニエマルション重合する際に、抗生物活性化合物がコア2外(つまり、水相)へ漏出することを抑制し、重合後に、水相に溶解していた抗生物活性化合物が析出することを抑え、抗生物活性化合物を含有するコア2を形成することができる。
抗生物活性化合物の分子量は、例えば、180以上、好ましくは、200以上であり、また、例えば、600以下、好ましくは、500以下である。
1.2 重合性ビニルモノマー
重合性ビニルモノマーは、例えば、重合性の炭素−炭素二重結合(具体的には、ビニル基など)を少なくとも1つ分子内に有する。
重合性ビニルモノマーとしては、例えば、重合性の炭素−炭素二重結合を分子内に1つ含有する第1重合性ビニルモノマー、例えば、重合性の炭素−炭素二重結合を分子内に2つ以上含有する第2重合性ビニルモノマーなどが挙げられる。
第1重合性ビニルモノマーは、重合性ビニルモノマーに主成分として含有される主モノマーである。第1重合性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、芳香族系ビニルモノマー、ビニルエステル系モノマー、マレイン酸エステル系モノマー、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、窒素含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、メタクリル酸エステルおよび/アクリル酸エステルであって、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル(MMA/MA)、(メタ)アクリル酸エチル(EMA/EA)、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル(i−BMA/i−BA)、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル(ラウリル)、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル(ステアリル)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどのアルキル部分が直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜20のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。好ましくは、炭素数1〜4のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。より好ましくは、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸イソブチル(i−BMA)が挙げられる。
芳香族系ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。好ましくは、スチレンが挙げられる。
ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸エステル系モノマーとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
ハロゲン化ビニルとしては、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニルなどが挙げられる。
ハロゲン化ビニリデンとしては、例えば、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
窒素含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、ビニルピリジンなどが挙げられる。
第1重合性ビニルモノマーとして、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、芳香族系ビニルモノマー、より好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが挙げられる。
第1重合性ビニルモノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの単独使用が挙げられる。
第1重合性ビニルモノマーの配合割合は、重合性ビニルモノマーに対して、例えば、60質量部以上、好ましくは、80質量%以上、より好ましくは、90質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下、好ましくは、99質量%以下、より好ましくは、95質量%以下、さらに好ましくは、95質量%未満である。
第2重合性ビニルモノマーは、第1重合性ビニルモノマーと任意的に併用される副モノマーであって、第1重合性ビニルモノマーと共重合可能な架橋性モノマーである。架橋性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(EGDA/EGDMA)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのモノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート、例えば、アリル(メタ)メタクリレート、トリアリル(イソ)シアヌレートなどのアリル系モノマー、例えば、ジビニルベンゼンなどのジビニル系モノマーなどが挙げられる。
第2重合性ビニルモノマーとして、好ましくは、モノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、より好ましくは、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)が挙げられる。
第2重合性ビニルモノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、モノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの単独使用が挙げられる。
第2重合性ビニルモノマーの配合割合は、重合性ビニルモノマーに対して、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、20質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下である。第2重合性ビニルモノマーの割合は、第1重合性ビニルモノマー100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上、より好ましくは、5質量部以上であり、例えば、40質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
重合性ビニルモノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、第1重合性ビニルモノマーと第2重合性ビニルモノマーとの組合せが挙げられる。より好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとモノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートとの組合せが挙げられ、さらに好ましくは、MMAとEGDMAとの組合せ、i−BMAとEGDMAとの組合せが挙げられ、とりわけ好ましくは、MMAとEGDMAとの組合せが挙げられる。
そして、上記した重合性ビニルモノマーは、実質的に疎水性であって、例えば、水に対する室温(25℃)における溶解度が極めて小さく、具体的には、室温(25℃)における溶解度が、5質量部/水100質量部(50g/L)以下、好ましくは、3質量部/水100質量部(30g/L)以下、さらに好ましくは、2質量部/水100質量部(20g/L)以下である。なお、重合性ビニルモノマーは、異なる種類が併用される場合には、重合性ビニルモノマー全体(つまり、異なる種類の重合性ビニルモノマーの混合物)として実質的に疎水性である。
1.3 抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーの組合せ
抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーの組合せは、特に制限されないが、好ましくは、抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーが相溶し(抗生物活性化合物が、重合性ビニルモノマーに溶解し)、抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーの重合体が相溶しない(非相溶である、あるいは、分離する)組合せが挙げられる。
具体的には、エトフェンプロックスと、第1重合性ビニルモノマーおよび第2重合性ビニルモノマーとの組合せ、VNAと、第1重合性ビニルモノマーおよび第2重合性ビニルモノマーとの組合せが挙げられる。
さらに具体的には、エトフェンプロックスと、MMAおよびEGDMAとの組合せ、エトフェンプロックスと、i−BMAおよびEGDMAとの組合せ、VNAと、MMAおよびEGDMAとの組合せ、VNAと、i−BMAおよびEGDMAとの組合せが挙げられる。
より好ましくは、エトフェンプロックスと、MMAおよびEGDMAとの組合せ、エトフェンプロックスと、i−BMAおよびEGDMAとの組合せが挙げられる。このような組合せであれば、エトフェンプロックスおよび重合性ビニルモノマーの重合体がより一層確実に非相溶となる。
1.4 シェル原料成分
シェル原料成分は、第1シェル原料成分と、第1シェル原料成分と重付加または重縮合(縮合重合)などにより反応可能な第2シェル原料成分とを含有する。
第1シェル原料成分は、例えば、実質的に疎水性であって、具体的には、水に対する室温における溶解度が極めて小さく、より具体的には、例えば、室温の溶解度が、質量基準で、1質量部/水100質量部(10g/L)以下、好ましくは、0.5質量部/水100質量部(5g/L)以下、さらに好ましくは、0.1質量部/水100質量部(1g/L)以下である。
第1シェル原料成分は、第2シェル原料成分と重合(反応)することによりシェル3を形成する油溶性化合物であって、例えば、ポリイソシアネート、例えば、テレフタル酸ジクロライドなどのポリカルボン酸クロライド、例えば、ベンゼンジスルホニルクロライドなどのポリスルホン酸クロライドなどが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ポリメリックMDIなどの芳香族ポリイソシアネート(芳香族ジイソシアネート)、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ポリイソシアネート(脂肪族ジイソシアネート)、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート(脂環族ジイソシアネート)、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネート(芳香脂肪族ジイソシアネート)などが挙げられる。上記したポリイソシアネートの多量体も挙げられ、具体的には、二量体、三量体(イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート、環状トリマー)、五量体、七量体などが挙げられる。また、ポリイソシアネートの多量体としては、市販品を用いることができ、例えば、ポリイソシアネートの三量体としては、IPDIの環状トリマー、HDIの環状トリマーなどが挙げられる。
さらに、上記したポリイソシアネートの変性体も挙げられ、例えば、トリメチロールプロパンの変性ポリイソシアネートなどのポリオール変性ポリイソシアネート、ビウレット変性ポリイソシアネート、アロファネート変性ポリイソシアネートなどが挙げられる。
第1シェル原料成分として、好ましくは、ポリイソシアネート、より好ましくは、ポリイソシアネートの多量体、ポリイソシアネートの変性体、さらに好ましくは、ポリイソシアネート三量体が挙げられる。
第1シェル原料成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
第2シェル原料成分は、活性水素基含有化合物であって、そのような活性水素基含有化合物としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基などの活性水素基を2つ以上有する化合物であり、具体的には、例えば、ポリアミン、ポリオール、水などが挙げられる。
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン(EDA)、プロピレンジアミン(PDA)、ヘキサメチレンジアミン(HDA)、ジアミノトルエン(DAT)、フェニレンジアミン、ピペラジンなどのジアミン、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)などのポリエチレンポリアミンなどが挙げられる。好ましくは、EDA、DETAが挙げられる。
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオール、例えば、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどが挙げられる。
第2シェル原料成分として、好ましくは、ポリアミンが挙げられる。
第2シェル原料成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
1.5 抗生物活性化合物と第1シェル原料成分と第2シェル原料成分との組合せ
抗生物活性化合物と第1シェル原料成分と第2シェル原料成分との組合せは、特に制限されないが、好ましくは、コア2から放出される抗生物活性化合物と、第1シェル原料成分および第2シェル原料成分の反応により形成されるシェル3とが相溶しない(馴染まない)組合せが挙げられる。
具体的には、エトフェンプロックスと、ポリイソシアネートと、ポリアミンとの組合せ、VNAと、ポリイソシアネートと、ポリアミンとの組合せが挙げられ、好ましくは、エトフェンプロックスと、ポリイソシアネートと、ポリアミンとの組合せが挙げられる。
上記の組合せが、エトフェンプロックスと、ポリイソシアネートと、ポリアミンとの組合せであれば、エトフェンプロックスと、ポリイソシアネートおよびポリアミンの反応により生成されるポリウレアからなるシェル3とが、確実に相溶しない(馴染まない)。そのため、抗生物活性化合物と重合性ビニルモノマーと第1シェル原料成分との総量に対する第1シェル原料成分の割合が少なくても、すなわち、シェル3の厚み(後述)を薄くても、徐放性に優れる。
2. 徐放性粒子の製造方法
徐放性粒子1の製造方法は、疎水性の抗生物活性化合物、および、疎水性の重合性ビニルモノマーを含有するコア原料成分をミニエマルション重合することにより、コア2を形成するコア調製工程と、シェル原料成分を界面重合することにより、コア2を被覆するシェル3を形成するシェル調製工程とを備える。また、コア調製工程では、好ましくは、コア原料成分からミニエマルションを作製するために、別途、乳化剤水溶液を調製する。
2.1.疎水性溶液および乳化剤水溶液の調製
まず、疎水性溶液および乳化剤水溶液の調製について順次説明する。
2.1.1. 疎水性溶液(油相成分)の調製
疎水性溶液を調製するには、例えば、抗生物活性化合物と重合性ビニルモノマーと第1シェル原料成分とを配合する。具体的には、抗生物活性化合物と重合性ビニルモノマーと第1シェル原料成分とを混合することによって、抗生物活性化合物と第1シェル原料成分とを重合性ビニルモノマーに溶解する。これによって、抗生物活性化合物と重合性ビニルモノマーと第1シェル原料成分とを含有する疎水性溶液を調製する。疎水性溶液は、抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーを含有するコア原料成分を含有する。
なお、抗生物活性化合物が、実質的に疎水性であるので、抗生物活性化合物はミニエマルション重合におけるハイドロホーブの役割を有する。そのため、疎水性溶液は、例えば、ハイドロホーブ(ヘキサデカン、セチルアルコールなどのコスタビライザー)を配合することなく、調製される。
また、疎水性溶液は、例えば、抗生物活性化合物の溶剤(ヘキサン、トルエン、酢酸エチルなどの疎水性の有機溶剤)を配合することなく、調製される。
抗生物活性化合物の配合割合は、抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーの総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上、また、例えば、80質量%以下、好ましくは、より好ましくは、70質量%以下、さらに好ましくは、50質量%以下、とりわけ好ましくは、40質量%以下、さらには、37質量%以下、さらには、35質量%以下、さらには、33質量%以下、さらには、32質量%以下である。
重合性ビニルモノマーの配合割合は、抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーの総量に対して、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、50質量%以上、さらに好ましくは、60質量%以上、とりわけ好ましくは、63質量%以上、さらには、65質量%以上、さらには、67質量%以上、さらには、68質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、80質量%以下、さらに好ましくは、70質量%以下である。
第1シェル原料成分の割合は、抗生物活性化合物と重合性ビニルモノマーと第1シェル原料成分との総量に対して、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、5.0質量%以下、さらに好ましくは、5.0質量%未満、とりわけ好ましくは、4.5質量%以下、さらには、4.0質量%以下、さらには、3.5質量%以下、さらには、3.0質量%以下、さらには、2.5質量%以下、さらには、2.0質量%以下、さらには、さらには、1.5質量%以下である。
第1シェル原料成分の割合が上記下限以上であれば、徐放性を向上させることができる。
第1シェル原料成分の割合が上記上限以下であれば、シェル3の厚みを薄くできる。また、徐放性に優れる。具体的には、抗生物活性化合物がシェル3によって過度に封じ込められず、実用上必要な抗生物活性化合物の溶出量(徐放量)を確保できる。また、乳濁液の保存安定性に優れる。
好ましくは、コア原料成分の調製において、抗生物活性化合物と重合性ビニルモノマーと第1シェル原料成分とに、さらに、油溶性重合開始剤を配合する。
油溶性重合開始剤としては、例えば、ジラウロイルパーオキシド(10時間半減温度T1/2:61.6℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(10時間半減温度T1/2:65.3℃)、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(10時間半減温度T1/2:69.9℃)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(10時間半減温度T1/2:40.5℃)、ベンゾイルパーオキシド(10時間半減温度T1/2:73.6℃)などの油溶性有機過酸化物、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(10時間半減温度T1/2:60℃)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10時間半減温度T1/2:51℃)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(10時間半減温度T1/2:67℃)などの油溶性アゾ化合物などが挙げられる。油溶性重合開始剤として、好ましくは、油溶性有機過酸化物が挙げられる。
油溶性重合開始剤を用いれば、ミニエマルション重合をインサイチュ(in situ)重合とすることができる。一方、水溶性重合開始剤を用いれば、水相に溶解している微量の重合性ビニルモノマーが水相中で重合して重合体粒子が発生し、ミニエマルション重合が不安定になる場合がある。
油溶性重合開始剤の10時間半減期温度T1/2は、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上、また、例えば、90℃以下、好ましくは、80℃以下である。
なお、油溶性重合開始剤の10時間半減期温度T1/2は、任意の温度数点における濃度半減時間をプロットして得られたグラフの10時間値の温度とされる。
油溶性重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
油溶性重合開始剤の配合割合は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
2.1.2. 乳化剤水溶液の調製
乳化剤水溶液を調製するには、水と乳化剤とを配合する。
具体的には、水と乳化剤とを配合して、それらを均一に攪拌することにより、乳化剤水溶液を得る。
乳化剤は、水相中に、ミニエマルションを形成するために、水に配合される。乳化剤としては、例えば、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤などが挙げられる。
アニオン系乳化剤としては、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム)、ノニルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、例えば、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテル、例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどのポリオキシアルキレンブロックコポリマー、例えば、ポリオキシエチレンアリールエーテルなどのポリオキシアルキレンアリールエーテルなどが挙げられる。
乳化剤として、好ましくは、アニオン系乳化剤が挙げられる。
乳化剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
乳化剤の配合割合は、乳化剤水溶液100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、8質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
乳化剤水溶液は、分散剤を含有することもできる。
分散剤は、ミニエマルションの保護コロイドを形成するために、乳化剤水溶液に含有される。分散剤は、好ましくは、乳化剤と併用され、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール(PVA、部分鹸化ポリビニルアルコールを含む。)、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物の塩、ポリカルボン酸型オリゴマー、ヒドロキシセルロースなどのセルロース系分散剤などが挙げられ、好ましくは、PVA、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物の塩が挙げられる。
PVAのけん化度は、例えば、70%以上、好ましくは、80%以上であり、また、例えば、99%以下、好ましくは、90%以下である。
分散剤の配合割合は、例えば、疎水性溶液に対して、例えば、0.001質量%以上、好ましくは、0.01質量%以上、より好ましくは、0.1質量%以上であり、また、例えば、5質量%以下である。
分散剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
2.2. ミニエマルション重合および界面重合
次に、コア調製工程におけるミニエマルション重合、および、シェル調製工程における界面重合について順次説明する。
2.2.1 ミニエマルション重合
コア調製工程において、コア原料成分をミニエマルション重合するには、まず、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化する。
具体的には、疎水性溶液を乳化剤水溶液に配合し、それらに高い剪断力を与えることにより、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化させて、ミニエマルションを調製する。
疎水性溶液の配合割合は、乳化剤水溶液100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、25質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、90質量部以下である。
なお、疎水性溶液のミニエマルションは、乳化剤が、ミニエマルション粒子(コア原料成分の乳化液滴)に吸着しており、水媒体中に、平均粒子径1μm未満のコア原料成分のミニエマルション粒子が形成されている。
ミニエマルション粒子の平均粒子径は、メジアン径として算出され、例えば、1μm未満、好ましくは、750nm以下、より好ましくは、700nm以下、さらに好ましくは、600nm以下、とりわけ好ましくは、550nm以下、さらには、540nm以下であり、また、例えば、50nm以上に調節される。
その後、乳化されたミニエマルション中の重合性ビニルモノマーを、油溶性重合開始剤の存在下、ミニエマルション重合して、重合性ビニルモノマーの重合体、および、抗生物活性化合物からなるコア2を形成する。
このミニエマルション重合は、原料となる重合性ビニルモノマーがすべてミニエマルション粒子(疎水性液相)のみにあることから、インサイチュ(in situ)重合である。すなわち、ミニエマルション重合は、ミニエマルションを攪拌しながら加熱することにより、重合性ビニルモノマーがそのまま、ミニエマルション粒子中で重合を開始し、重合体を生成する。
ミニエマルションの撹拌における攪拌羽根の周速は、例えば、10m/分以上、好ましくは、20m/分以上であり、また、400m/分以下、好ましくは200m/分以下である。
具体的には、加熱温度は、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、また、例えば、100℃以下である。
なお、加熱温度を、上記した重合性ビニルモノマーの重合が開始する温度Tiより高い温度に設定する。重合性ビニルモノマーの重合が開始する温度(Ti)は、例えば、下記式(1)を満足する。
T1/2−10≦Ti≦T1/2+20 (1)
T1/2=油溶性重合開始剤の10時間半減期温度
また、加熱時間が、例えば、2時間以上、好ましくは、3時間以上であり、また、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。さらに、所定温度に加熱後、その温度を所定時間維持し、その後、加熱および温度維持を繰り返すことにより、段階的に加熱することもできる。
また、抗生物活性化合物と重合性ビニルモノマーとの組合せが、上記した抗生物活性化合物と重合体とが相溶しない組合せである場合には、まず、抗生物活性化合物と重合性ビニルモノマーとが相溶し、ミニエマルション重合が進行するにつれて、抗生物活性化合物が重合性ビニルモノマーの重合体に、相溶しない状態となり、相分離する。
ミニエマルション重合によって、重合性ビニルモノマーの重合体および抗生物活性化合物を含有するコア2を含有する乳濁液が得られる。なお、コア2には、第1シェル原料成分が反応せずに存在している。
コア2は、略球状に形成されている。
コア2の平均粒子径は、メジアン径として算出され、例えば、1μm未満、好ましくは、750nm以下、より好ましくは、700nm以下、さらに好ましくは、600nm以下、とりわけ好ましくは、550nm以下、さらには、540nm以下であり、また、例えば、50nm以上、好ましくは、100nm以上である。
2.2.2 界面重合
界面重合を、例えば、ミニエマルション重合の開始より後に開始する。
具体的には、界面重合は、実施中のミニエマルション重合反応液に、第2シェル原料成分を添加することで実施する。詳しくは、例えば、ミニエマルション重合の転化率が、例えば、90%以上、好ましくは、95%以上となったときに、または、例えば、ミニエマルション重合の開始から、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上経過した後に、第2シェル原料成分を、ミニエマルション重合が進行中の乳濁液に配合すると、同時に界面重合が開始する。
また、第2シェル原料成分には、消泡剤などの添加剤を添加した水溶液を配合することもできる。
第2シェル原料成分を、第2シェル原料成分のアミノ基(1級アミノ基および2級アミノ基)に対する、第1シェル原料成分のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/アミノ基)が、例えば、0.4以上、好ましくは、0.6以上、より好ましくは、0.7以上であり、また、例えば、1.6以下、好ましくは、1.4以下、より好ましくは、1.2以下となる割合で、乳濁液に配合する。
界面重合においては、必要により、第2シェル原料成分が配合された乳濁液を加熱する。
加熱温度としては、例えば、上記したミニエマルション重合の開始温度(Ti)と同温、あるいは、上記したミニエマルション重合の開始温度(Ti)よりも高い温度である。
好ましくは、重合反応を促進させる観点、および、ミニエマルション重合を熟成させる観点から、例えば、ミニエマルション重合の開始温度(Ti)よりも高い温度に設定する。
重合時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、また、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
界面重合では、第1シェル原料成分と、水相中の第2シェル原料成分とが、コア2の表面で反応する。
また、界面重合の終了は、第2シェル原料成分がポリアミンである場合には、乳濁液のpHが、ポリアミンの添加前の値の近傍まで低下することにより、確認することもできる。
これにより、コア2を被覆するシェル3を形成することができる。
具体的には、シェル3は、コア2の表面を被覆する膜状に形成されている。
また、シェル3の平均厚みは、最大厚みで、例えば、1nm以上、好ましくは、3nm以上、より好ましくは、10nm以上であり、また、例えば、18nm以下、好ましくは、15nm以下である。
シェル3の厚みの、コア2の直径(平均粒子径)に対する比率(シェル3の厚み/コア2の直径)は、例えば、0.018以下、好ましくは、0.013以下、より好ましくは、0.01以下であり、また、例えば、0.00015以上、好ましくは、0.0003以上、より好ましくは、0.001、さらに好ましくは、0.005である。
シェル3の厚みの、コア2の直径(平均粒子径)に対する比率(シェル3の厚み/コア2の直径)が上記下限以上であれば、徐放性を向上させることができる。
シェル3の厚みの、コア2の直径(平均粒子径)に対する比率(シェル3の厚み/コア2の直径)が上記上限以下であれば、徐放性に優れる。具体的には、抗生物活性化合物がシェル3によって過度に封じ込められず、実用上必要な抗生物活性化合物の溶出量(徐放量)を確保できる。また、乳濁液の保存安定性に優れる。
その後、反応後の乳濁液を、例えば、放冷、水冷などによって冷却する。
これによって、コア2とシェル3とを備える徐放性粒子1を含む乳濁液を得ることができる。
徐放性粒子1は、球状粒子として形成されており、具体的には、コア2と、コア2を被覆するシェル3とを備える。
詳しくは、図1に示すように、シェル3は、一定の均一な厚みを有し、コア2の表面を均一に被覆する。
コア2では、抗生物活性化合物と重合性ビニルモノマーの重合体とが相溶しておらず、重合性ビニルモノマーの重合体からなるマトリックスに、抗生物活性化合物からなるドメインが微細に分散していると考えられる。
なお、コア2におけるドメインの分散状態は、ドメインが極めて微細であるため、TEMなどによっても観察されず、TEMでは、ドメインとマトリックスとが、見かけ上、均一に存在するように観察される。
徐放性粒子1の平均粒子径は、メジアン径として算出され、例えば、1μm未満、好ましくは、750nm以下、より好ましくは、700nm以下、さらに好ましくは、600nm以下、とりわけ好ましくは、550nm以下、さらには、540nm以下であり、また、例えば、100nm以上である。
シェル3の厚みの、徐放性粒子1の平均粒子径に対する百分率(シェル3の厚み/徐放性粒子1の平均粒子径×100)は、例えば、1.75%以下、好ましくは、1.3%以下、より好ましくは、1.0%以下であり、また、例えば、0.015%以上、好ましくは、0.03%以上、より好ましくは、0.1%、さらに好ましくは、0.5%である。
シェル3の厚みの、徐放性粒子1の平均粒子径に対する百分率(シェル3の厚み/徐放性粒子1の平均粒子径×100)が上記下限以上であれば、徐放性を向上させることができる。
シェル3の厚みの、徐放性粒子1の平均粒子径に対する百分率(シェル3の厚み/徐放性粒子1の平均粒子径×100)が上記上限以下であれば、徐放性に優れる。具体的には、抗生物活性化合物がシェル3によって過度に封じ込められず、実用上必要な抗生物活性化合物の溶出量(徐放量)を確保できる。また、乳濁液の保存安定性に優れる。
このようにして得られた徐放性粒子1は、そのままの状態(乳濁液)、つまり、乳濁剤として用いてもよく、また、スプレードライ、または、凍結・融解や、塩析などにより凝集させた後、遠心分離・洗浄・乾燥などによって固液分離を行い、例えば、粉剤または粒剤などの公知の剤型に製剤化して用いてもよい。
このような乳濁剤、粉剤または粒剤を種々の工業製品に添加することができる。具体的には、乳濁剤または粉剤または粒剤を、例えば、外装材(とくに、住宅用外装材)、内装材(壁紙などを含む)、天井材、床材などの建材、例えば、塗料、例えば、接着剤、例えば、インキ、例えば、シーリング剤、コーキング剤などの充填剤、例えば、紙製品、例えば、樹脂エマルション、例えば、木質材料、例えば、木質製品、例えば、プラスチック製品、例えば、フィルム、例えば、パルプなどの繊維材料、例えば、不織布などの繊維製品、例えば、フィルターなどに適用(あるいは配合)することができる。
3.作用効果
上記した製造方法により製造された徐放性粒子1は、疎水性の抗生物活性化合物、および、疎水性の重合性ビニルモノマーを含有するコア原料成分をミニエマルション重合してなるコア2を備える。そのため、徐放性に優れる。
また、上記した製造方法により製造された徐放性粒子1は、シェル原料成分を界面重合してなり、コア2を被覆するシェル3を備える。そのため、徐放性により一層優れる。
この徐放性粒子1において、抗生物活性化合物が、エトフェンプロックスであれば、抗生物活性化合物が、重合性ビニルモノマーに溶解し、重合性ビニルモノマーの重合体に、相溶しない。具体的には、ミニエマルション重合が進行中に、重合性ビニルモノマーの重合体と、抗生物活性化合物とが相分離し、重合性ビニルモノマーの重合体からなるマトリックスに、抗生物活性化合物からなるドメインが微細に分散する。
一方、特許文献1では、疎水性の抗生物活性化合物を疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製し、ミニエマルション重合して得られる徐放性粒子が提案されている。
そして、特許文献1において、抗生物活性化合物が、重合性ビニルモノマーの重合体と非相溶な抗生物活性化合物(例えば、エトフェンプロックス、VNA)であれば、抗生物活性化合物が、重合性ビニルモノマーの重合体に、相溶しない。そのため、抗生物活性化合物が、コア2から水相に不均一に漏出する。そして、漏出した抗生物活性化合物が、結晶として析出するとともに、粒子の凝集なども惹起される。そして、これらに起因して、粒子が沈降し、水分散安定性(貯蔵安定性)が低下する場合がある。
しかし、一実施形態の製造方法により製造された徐放性粒子1は、さらに、シェル原料成分を界面重合してなり、コア2を被覆するシェル3を備えている。そのため、エトフェンプロックスのような抗生物活性化合物が、重合性ビニルモノマーの重合体に、相溶しない場合であっても、上記の不具合を抑制し、水分散安定性(貯蔵安定性)に優れると考えられる。
また、一実施形態の製造方法により製造された徐放性粒子1によれば、抗生物活性化合物が、実質的に疎水性であるので、抗生物活性化合物はミニエマルション重合におけるハイドロホーブの役割を有する。つまり、抗生物活性化合物の他に、別のハイドロホーブを配合することなく、重合性ビニルモノマーをミニエマルション重合することができる。
また、一実施形態の製造方法により製造された徐放性粒子1によれば、シェル原料成分は、第1シェル原料成分と、第1シェル原料成分と反応可能な第2シェル原料成分とを含有し、第1シェル原料成分の割合は、抗生物活性化合物と重合性ビニルモノマーと第1シェル原料成分との総量に対して、上記下限以上であれば、徐放性を向上させることができる。
一方、第1シェル原料成分の割合が上記上限以下であれば、シェル3の厚みを薄くできる。また、徐放性に優れる。具体的には、抗生物活性化合物がシェル3によって過度に封じ込められず、実用上必要な抗生物活性化合物の溶出量(徐放量)を確保できる。また、乳濁液の保存安定性に優れる。
詳しくは、図2に示すように、例えば、懸濁重合により形成されたコア2(平均粒子径1μm以上)のように、平均粒子径が大きいと、コア2の表面に、シェル3を、均一に形成することができず、徐放性粒子1は、シェル3がコア2を被覆しない欠陥部分4を有する場合がある。
一方、図1に示すように、ミニエマルション重合により形成されたコア2の平均粒子径(例えば、平均粒子径1μm未満)のように、平均粒子径が小さいと、徐放性粒子1は、欠陥部分4を有さず、シェル3をコア2に均一に形成することができる。そのため、薄いシェル3であっても、徐放性が向上する。
つまり、一実施形態のコア2を備える徐放性粒子1は、徐放性に優れるため、コア2に内包された抗生物活性化合物の抗生物活性を、長時間、保ち続けることができ、乳濁液の保存安定性に優れる。
なお、徐放性は、後述する実施例の徐放性試験において、評価することができる。
具体的には、抗生物活性化合物がエトフェンプロックスである場合に、4回目までの総徐放量が、例えば、4mg以上、好ましくは、10mg以上、より好ましくは、12mg以上であり、また、例えば、100mg以下、好ましくは、50mg以下、さらに好ましくは、25mg未満である。
なお、4回目までの総徐放量は後の実施例で詳述される。
また、後述する実施例の徐放性試験では、徐放回数が増えるに従って、徐放量が減少するが、その減少量が少ないほど、徐放の持続性に優れる。具体的には、抗生物活性化合物がシェル3によって過度に封じ込められず、実用上必要な抗生物活性化合物の溶出量(徐放量)を持続的に確保できる。
この徐放性粒子1の製造方法において、界面重合を、ミニエマルション重合の開始より後に開始すれば、コア2をシェル3で確実に被覆することができ、徐放性に優れた徐放性粒子1を確実に製造できる。
なお、シェル3の厚みが、特許文献1の懸濁重合と同等程度の厚みを有すると、ミニエマルション粒子からなるコア2に対してシェル3の厚みが過度に厚くなるため、徐放性が極めて低くなる(徐放性をほとんど有しない)。
4. 変形例
上記した方法では、界面重合を、ミニエマルション重合の開始より後に開始したが、界面重合を、例えば、ミニエマルション重合と同時、または、ミニエマルション重合の開始より前に開始することもできる。
界面重合をミニエマルション重合と同時に開始するには、例えば、ミニエマルションを加熱し、上記したミニエマルション重合が開始する温度(Ti)に到達した時に、ミニエマルションに、第2シェル原料成分を配合する。
界面重合をミニエマルション重合の開始より前に開始するには、例えば、常温のミニエマルションに、第2シェル原料成分を配合し、常温またはミニエマルション重合が開始しない温度に昇温して、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上放置する。これにより、界面重合を実施する。
その後、第2シェル原料成分が配合されたミニエマルションをミニエマルション重合が開始する温度(Ti)以上にまで昇温する。
あるいは、常温のミニエマルションに、第2シェル原料成分を配合し、ミニエマルション重合が開始する温度(Ti)以上にまで昇温してミニエマルション重合を実施する。この場合においても、界面重合は、ミニエマルション重合が開始するよりも前に開始している。
界面重合を、好ましくは、ミニエマルション重合の開始と同時またはそれより後に開始する。
界面重合を、ミニエマルション重合の開始と同時またはそれより後に開始すれば、コア2をシェル3で確実に被覆することができ、徐放性に優れる。
以下に実施例、参考比較例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例、参考比較例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の説明において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
なお、以下の実施例、参考比較例および比較例に用いる有効成分などの使用成分の商品名または略称を下記に示す。
エトフェンプロックス:2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル−3−フェノキシベンジル−エーテル、分子量377、融点37.4℃、25℃の水への溶解度:2.25×10−5g/L、殺虫剤、防蟻剤、丸善薬品社製
VNA:ノニリックアシッドバニリルアミド(N−バニリルノナンアミド)、忌避剤、分子量293、融点54℃、25℃の水への溶解度:ほとんど溶解しない、東京化成工業社製
MMA:メタクリル酸メチル、商品名「ライトエステルM」、25℃の水への溶解度:16g/L、共栄社化学製
i−BMA:メタクリル酸イソブチル、25℃の水への溶解度:0.6g/L、日本触媒社製
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート、商品名「ライトエステルEG」、25℃の水への溶解度:0.58g/L、共栄社化学社製
T 1890:商品名「VESTANAT T 1890/100」、イソホロンジイソシアネートの環状三量体、第1シェル原料成分、エボニック・インダストリーズ社製
パーロイルL:商品名、ジラウロイルパーオキシド、油溶性重合開始剤、日油社製
PVA−217:商品名「クラレポバール217」、部分鹸化ポリビニルアルコール、クラレ社製
ペレックスSS−L:商品名、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液、アニオン系乳化剤、花王社製
デモールNL:商品名、β−ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩の41質量%水溶液、アニオン系分散剤、花王社製
プロノン208:商品名、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ノニオン系乳化剤、日油社製
ノプコ8034L:消泡剤、サンノプコ社製
DETA:ジエチレントリアミン、第2シェル原料成分、和光一級試薬、和光純薬工業社製
実施例1 (ミニエマルション重合の開始より後に、界面重合を開始)
200mLのビーカー(1)に、エトフェンプロックス 30g、MMA 64.8g、EGDMA 4.2g、T 1890 1g、および、パーロイルL 0.5gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液(油相)を調製した。別途、500mLのビーカー(2)に、脱イオン交換水153.5g、PVA−217の10%水溶液 40g、ペレックスSS−L 5.6gおよびデモールNL 0.24gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な乳化剤水溶液(水相)を調製した。次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型(プライミクス社製)により回転数12000rpmで5分間攪拌することにより、疎水性溶液を分散させて、ミニエマルションを調製した。その後、ミニエマルションを、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、ミニエマルション重合を実施した。
ミニエマルション重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±1℃で3時間実施した。その後、DETAの10%水溶液 1.2g、ノプコ8034Lの5%水溶液 0.24gを乳濁液に添加し、連続して70±1℃で2時間界面重合を実施した。その後、反応後の乳濁液を30℃以下に冷却することにより、エトフェンプロックスおよび重合体からなるコアと、ポリウレアからなるシェルとを備える徐放性粒子の乳濁液を得た。
実施例2、4、参考比較例6、参考比較例7、実施例8〜11(ミニエマルション重合の開始より後に、界面重合を開始)
各成分の配合処方および条件を表1および2に従って変更した以外は実施例1と同様に処理して、徐放性粒子の乳濁液を得た。
実施例3(ミニエマルション重合の開始より前に、界面重合を開始)
200mLのビーカー(1)に、エトフェンプロックス 30g、MMA 61.9g、EGDMA 4.1g、T 1890 4gおよび、パーロイルL 0.5gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。別途、500mLのビーカー(2)に、脱イオン交換水 152.62g、PVA−217の10%水溶液 40g、ペレックスSS−L 5.6gおよびデモールNL 0.24gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な乳化剤水溶液(水相)を得た。次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型(プライミクス社製)により回転数12000rpmで5分間攪拌することにより、疎水性溶液を分散させて、ミニエマルションを調製した。その後、ミニエマルションを、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌した。次いで、室温で、ジエチレントリアミンの10%水溶液4.8g、ノプコ8034Lの5%水溶液0.24gをミニエマルションに添加し、昇温を開始した。昇温開始から15分後に、ミニエマルション重合の開始温度である60℃に到達した。この時のpHは、昇温前の11.2から9.3まで減少しており、ミニエマルション重合の開始前に界面重合が開始していることを確認した。
続いて、ミニエマルションを60±1℃で3時間維持し、続いて、70±1℃で2時間維持した。その後、反応後の乳濁液を30℃以下に冷却することにより、エトフェンプロックスおよび重合性ビニルモノマーの重合体からなるコアと、ポリウレアからなるシェルとを備える徐放性粒子の乳濁液を得た。
参考比較例5(ミニエマルション重合の開始より前に、界面重合を開始)
各成分の配合処方および条件を表1に従って変更した以外は実施例3と同様に処理して、徐放性粒子の乳濁液を得た。
比較例1(ミニエマルション重合のみ)
各成分の配合処方および条件を表2に従って変更し、界面重合を実施しなかった以外は実施例1と同様に処理して、徐放性粒子の乳濁液を得た。
比較例2(懸濁重合の開始より後に、界面重合を開始)
ミニエマルション重合に代えて、懸濁重合を実施し、各成分の配合処方および条件を表2に従って変更した以外は実施例1と同様に処理して、徐放性粒子の懸濁液を得た。
(評価)
<平均粒子径>
粒径アナライザー(FPAR−1000、大塚電子株式会社)を用いる動的光散乱法、あるいは、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(LA−950、堀場製作所)により、体積基準のメジアン径として、徐放性粒子の平均粒子径を測定した。
<凝集の有無>
各実施例、各参考比較例および各比較例において得られた徐放性粒子について、凝集の有無を目視により観察した。その結果を、表1および2に示す。なお、判定基準は以下の通りである。
○:徐放性粒子の分散が確認された。
△:ソフトケーキが発生した。
×:徐放性粒子の凝集が確認された。
<水分散安定性(貯蔵安定性)>
(室温1ヶ月)
各実施例、各参考比較例および各比較例の乳濁液、または、懸濁液のそれぞれを、室温で1ヶ月静置した。その後、徐放性粒子の沈降の有無を目視にて確認した。下記の基準で評価し、これによって、徐放性粒子の水分散安定性を評価した。
(サイクル試験)
各実施例、各参考比較例および各比較例の乳濁液、または、懸濁液のそれぞれを、−5℃で12時間静置し、その後、5℃で12時間静置した。これを1サイクルとして、このサイクルを3回繰り返した。その後、徐放性粒子の沈降の有無を目視にて確認した。沈降は、下記の基準で評価し、これによって、徐放性粒子の水分散安定性を評価した。
○:徐放性粒子の沈降が確認されなかった。
△:ソフトケーキが発生した。
×:徐放性粒子の沈降が確認された。
その結果を表1および2に示す。
<徐放性試験>
実施例1、3、4、
参考比較例6および比較例1、2のそれぞれの乳濁液(エトフェンプロックス濃度10質量%)を、準備し、別途、コントロールとして、エトフェンプロックスを溶解させたアセトニトリル10質量%溶液(コントロール溶液)を用意した。
次いで、円形濾紙(東洋濾紙No.5C、JIS P 3801で5種Cに相当)を2枚重ねて襞折りした。
次いで、その濾紙に、実施例1、3、4、参考比較例6および比較例1、2のそれぞれの乳濁液、または、コントロール溶液0.5mLをゆっくり添加し、その後、風乾した。
その後、濾紙をガラス瓶に入れ、イオン交換水/メタノール(=50/50(容量比))混合液180mLを加えて、室温で24時間、静置浸漬した。続いて、イオン交換水/メタノール混合液を採取し、新しいイオン交換水/メタノール混合液180mLを加えて、室温で24時間、静置浸漬した。その後、上記したイオン交換水/メタノール混合液の交換操作を2回繰り返した。
上記により、採取した各回のイオン交換水/メタノール混合液を島津製作所製HPLCを用いて、エトフェンプロックスの徐放量を測定した。なお、各回数における徐放量は、積算値(つまり、総徐放量)として算出した。それらの結果を図3に示す。
また、実施例1および実施例4について、各回数における徐放量を図4に示す。
また、4回目までの総徐放量を、下記の基準で評価し、これによって、徐放性を評価した。
×:4回目までの総徐放量が、25mg以上であり、過度に徐放する。
○:4回目までの総徐放量が、10mg以上25mg未満であり、徐放性が高い。
△:4回目までの総徐放量が、4mg以上、10mg未満であり、徐放性が低い
×:4回目までの総徐放量が、4mg未満であり、徐放性をほとんど有しない。
その結果を表1および2に示す。
(考察)
表1および2と図3とに示すように、実施例4および比較例2では、第1シェル原料成分の割合は、抗生物活性化合物と重合性ビニルモノマーと第1シェル原料成分との総量に対して、4質量%であった。そして、実施例4で得られた4回目までの総徐放量は、12.50mgであり、一方、比較例2で得られた4回目までの総徐放量は、26.00mgであり、比較例2よりも、実施例4の方が徐放性に優れることがわかった。
つまり、図2に示すように、懸濁重合により形成されたコア2を有する比較例2では、コア2の平均粒子径が大きいため、コア2の表面に、シェル3を、薄く均一に形成することができず、徐放性粒子1は、シェル3がコア2を被覆しない欠陥部分4を有すると考えられる。そのため、比較例2では、シェル3の厚みが薄ければ、徐放性が低下する。
一方、図1に示すように、ミニエマルション重合により形成されたコア2を有する実施例4では、コア2の平均粒子径が小さいため、コア2の表面に、シェル3を、薄く均一に形成することができ、徐放性粒子1は、欠陥部分4を有さないと考えられる。そのため、実施例4では、シェル3の厚みが薄くても、徐放性に優れる。
また、実施例4では、第1シェル原料成分の割合は、抗生物活性化合物と重合性ビニルモノマーと第1シェル原料成分との総量に対して、4質量%であり、参考比較例6では、10質量%であった。
そして、実施例4で得られた4回目までの総徐放量は、12.50mgであり、一方、参考比較例6で得られた4回目までの総徐放量は、4.10mgであり、参考比較例6よりも実施例4の方が、徐放性に優れることがわかった。
また、実施例4は、ミニエマルション重合の開始より後に、界面重合を開始し、実施例3はミニエマルション重合の開始より前に、界面重合を開始した。
そして、実施例4で得られた4回目までの総徐放量は、12.50mgであり、一方、実施例3で得られた4回目までの総徐放量は、13.20mgであり、実施例3よりも実施例4の方が、徐放性に優れることがわかった。
界面重合を、ミニエマルション重合の開始より後に開始すれば、コアをシェルで確実に被覆することができるためであると考えられる。
また、実施例1では、第1シェル原料成分の割合は、抗生物活性化合物と重合性ビニルモノマーと第1シェル原料成分との総量に対して、1質量%であり、実施例4では、4質量%であった。
図4に示すように、実施例4は、徐放回数が増えるに従って、徐放量が大きく減少するのに対して、実施例1は、実施例4よりも徐放量がゆるやかに減少した。
つまり、実施例4よりも実施例1の方が、実用上必要な抗生物活性化合物の溶出量(徐放量)を持続的に確保できることがわかった。