(全体構成)
以下、本発明の実施形態に係る排水弁駆動装置について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明を適用した排水弁駆動装置1の斜視図であり、図2は本発明を適用した排水弁駆動装置1の分解斜視図である。排水弁駆動装置1は、図示しない排水弁を駆動するための排水弁駆動部材であるワイヤ10と、ワイヤ10の一端が固定されるプーリ11と、プーリ11を回転させてワイヤ10の巻き取りおよび繰り出しを行うギアードモータ2を備える。ギアードモータ2は、プーリ11を回転可能に保持するケース20と、ケース20に収容されるギアユニット30およびモータ40を備える。
図2に示すように、ケース20において、プーリ11が取り付けられる面には円形の開口12が形成される。開口12には、ギアユニット30の出力軸13に形成されたセレーション部13aが配置される。プーリ11は、セレーション部13aを介して出力軸13と一体に回転する状態に組み付けられ、固定ねじ14によって出力軸13にねじ止めされる。ケース20には、プーリ11を囲む環状リブ15と、環状リブ15を囲む略矩形の外周リブ16が形成される。環状リブ15は、放射状のリブによって外周リブ16と繋がっている。排水弁駆動装置1は、ケース20に固定されるブラケット3(図4参照)を介して洗濯機などの装置本体に固定される。ブラケット3は、環状リブ15および外周リブ16の上端面に当接してプーリ11を覆うように取り付けられる。
環状リブ15の内周面には所定の角度範囲にわたって凹部17が形成され、凹部17にはプーリ11の外周面に形成された凸部18が配置される。プーリ11が回転する角度範囲は、凹部17および凸部18によって規制される。また、環状リブ15には周方向の一部を切り欠いた開口部19が形成される。この開口部19から外周側へワイヤ10が引き出される。
排水弁駆動装置1は、ワイヤ10がプーリ11に所定量巻き取られた状態で、駆動源であるモータ40への通電を継続して、プーリ11を巻き取り位置で保持する。これにより、ワイヤ10に連結された排水弁の弁体が排水口から離れた位置で保持される。また、排水弁駆動装置1は、モータ40への通電を停止してプーリ11の保持状態を解除する。これにより、外力によりワイヤ10を引き出すことが可能になる。例えば、排水弁の弁体に連結されたばね力等の付勢力によってワイヤ10が引き出されると、弁体によって排水口が閉鎖される。
本明細書では、プーリ11の回転軸線方向を第3方向Zとし、第3方向Zと直交する2方向を第1方向X、第2方向Yとする。第1方向Xは、ワイヤ10が引き出される方向である。また、第1方向Xの一方側を+X方向、他方側を−X方向とし、第2方向Yの一方側を+Y方向、他方側を−Y方向とし、第3方向Zの一方側を+Z方向、他方側を−Z方向とする。排水弁駆動装置は、例えば、+Z方向が上方、−Z方向が下方を向く姿勢で配置されるが、他の姿勢で配置することもできる。例えば、−Z方向が上方、+Z方向が下方を向く姿勢で配置することもできる。また、本明細書において、CW方向、CCW方向は+Z方向側から見た場合のCW方向、CCW方向である。
(ケース)
ケース20は、第3方向Zに2分割される。ケース20は、−Z方向側に位置する第1ケース21と、+Z方向側に位置する第2ケース22を備える。ギアユニット30およびモータ40は、第1ケース21と第2ケース22の間に配置される。ケース20の側面には、モータ40に給電するための端子が配置される端子収容部23が形成されている。
図3はプーリ11および第2ケース22を取り外した排水弁駆動装置1の平面図である。また、図4はギアユニット30の歯車の軸を繋ぐ断面を示した輪列展開図であり、図3のA−A線で切断した断面図である。図3、図4において、ギアユニット30の歯車の軸(回転中心軸線)を符号B、C、D、E、F、G、H、J、Oで示す。これらの軸は第3方向Zを向いている。ギアユニット30は、モータ40の回転を出力軸13に伝達する伝達輪列50と、モータ40から伝達輪列50への回転トルクの伝達を継断する第1クラッチ機構60と、伝達輪列50が回転トルクを伝達する状態と伝達しない状態とを切り換える第2クラッチ機構80と、モータ40の回転方向を規制する逆転防止機構90を備える。
第1クラッチ機構60は、伝達輪列50の歯車の回転を規制する回転規制機構70を備える。回転規制機構70は、ワイヤ10に外部負荷が加わった場合に伝達輪列50の回転を規制してワイヤ10を保持する。また、第2クラッチ機構80は、伝達輪列50の歯車と噛み合う輪列(後述するロックギア84および増速ギア85)と、この輪列の回転を規制する回転規制装置80Aを備える。
(モータ)
図4に示すように、モータ40は第1ケース21の底部に配置され、モータ40の+Z方向側にギアユニット30が配置される。モータ40はAC同期モータである。モータ40は、カップ状のモータケース41と、モータケース41の+Z方向側の端部に取り付けられる支持プレート42と、モータケース41の内側に配置されるボビン43と、ボビン43に巻回されるステータコイル44と、ボビン43の内周側に配置されるロータ45を備える。ロータ45の回転中心軸線はO軸である。支持プレート42には、ロータ45が配置される貫通穴が形成されている。また、支持プレート42には、伝達輪列50を構成する歯車を回転可能に支持する固定軸の−Z方向の端部が圧入される。固定軸の+Z方向の端部は、第2ケース22に圧入等によって固定される。
ロータ45は、略円筒状のマグネット451と、マグネット451の内周側に配置される軸部452を備える。ロータ45は、フェライト磁石等からなるマグネット451を軸部452の−Z方向の端部にインサート成形して形成される。マグネット451と軸部452との間には環状凹部が設けられ、ここに後述する誘導リング46が配置される。また、軸部452は誘導リング46の+Z方向側に突出しており、その外周面にはロータギア47が形成されている。ロータギア47は、後述するように、ロータ45の回転を第2クラッチ機構80に伝達する歯車である。ロータ45の中央には、ロータ45を回転可能に支持する固定軸453が配置される。固定軸453は第3方向Zに延在する。固定軸453の一端はモータケース41に圧入等によって固定され、固定軸453の他端は第2ケース22に圧入等によって固定される。
モータケース41および支持プレート42は磁性板からなる。支持プレート42には、ロータ45が配置される貫通穴の縁から−Z方向に屈曲して延びる極歯が形成されている。また、モータケース41には、モータケース41の底部を切り起こして+Z方向に屈曲させた極歯が形成されている。支持プレート42に設けられた極歯とモータケース41から切り起こされた極歯は周方向に交互に配列され、マグネット451の外周面と径方向に対向する。すなわち、モータケース41および支持プレート42はステータコアを兼ねている。
図5はモータ40、伝達輪列50、第1クラッチ機構60、および回転規制機構70の説明図であり、図5(a)は+Z方向側から見た分解斜視図であり、図5(b)はクラッチ切換レバー64を−Z方向側から見た斜視図である。モータケース41の外周面は周方向の一部が切り欠かれており、ここにボビン43に形成された端子台48が配置される。端子台48には、ステータコイル44への給電用の配線等が接続される端子49が取り付けられる。端子49に接続される配線は、ケース20に形成された端子収容部23(図2、図3参照)から外部に取り出される。
(伝達輪列)
伝達輪列50は、プーリ11を回転させる出力軸13にモータ40の駆動力を伝達する。伝達輪列50は、ロータピニオン51、遊星歯車機構52、減速ギア53、出力ギア54を備える。ロータピニオン51の回転中心軸線はO軸であり、遊星歯車機構52の回転中心軸線はD軸であり、減速ギア53の回転中心軸線はC軸であり、出力ギア54の回転中心軸線はB軸である。伝達輪列50は、モータ40の駆動力をこの順で伝達する。出力
軸13は、出力ギア54の回転中心に配置され、出力ギア54と一体に回転する。従って、排水弁駆動部材であるワイヤ10は、出力ギア54の回転に基づいて駆動される。
ロータピニオン51は樹脂により形成され、ロータ45の固定軸453によって回転可能かつ軸線方向(すなわち、第3方向Z)に移動可能に支持される。ロータピニオン51とロータ45との間には第1クラッチ機構60が設けられている。第1クラッチ機構60の継断状態を切り換えることにより、ロータピニオン51がロータ45と一体に回転する状態(クラッチ接続状態)と、ロータピニオン51がロータ45と一体に回転しない状態(クラッチ切断状態)に切り換えられる。
図4に示すように、遊星歯車機構52は、太陽歯車521が形成された第1回転体522と、内歯歯車523が形成された第2回転体524と、太陽歯車521および内歯歯車523と噛み合う複数の遊星歯車525と、複数の遊星歯車525を回転可能に保持する第3回転体526を備える。第1回転体522は、ロータピニオン51と噛み合う大径歯車部527を備える。すなわち、大径歯車部527は、ロータピニオン51の回転が入力される入力歯車となっている。また、第2回転体524の外周面には、第2クラッチ機構80の増速ギア85と噛み合う大径歯車部528が形成されている。後述するように、第2クラッチ機構80は、増速ギア85の回転が規制されたロック状態と増速ギア85が空回りする空転状態とに切り換えられる。排水弁駆動装置1の起動時には、第2クラッチ機構80がロック状態となり第2回転体524の回転が増速ギア85によって規制される。
第2回転体524の回転が規制されると、太陽歯車521の回転に基づき、遊星キャリアである第3回転体526が回転する。第3回転体526の−Z方向の端部には、減速ギア53の大径歯車部531と噛み合う小径歯車部529が形成されている。つまり、遊星歯車機構52は、第2クラッチ機構80の増速ギア85を介して第2回転体524の回転が規制されるとき、減速ギア53に回転トルクを伝達するように構成されている。一方、第2クラッチ機構80の増速ギア85が空回りする状態に切り換えられると、遊星歯車525が公転しようとしても、内歯歯車523が形成された第2回転体524が空回りするため、遊星キャリアである第3回転体526が回転することはない。従って、減速ギア53に回転トルクが伝達されない状態となる。
減速ギア53は、第3回転体526の小径歯車部529と噛み合う大径歯車部531、および、出力ギア54と噛み合う小径歯車部532を備えており、固定軸533によって回転可能に支持される。減速ギア53は、遊星歯車機構52から出力された回転を減速して出力ギア54に伝達する。
(第1クラッチ機構)
図5(a)に示すように、第1クラッチ機構60は、ロータピニオン51の−Z方向の端面に形成された第1クラッチ爪61と、ロータ45の軸部452に形成された第2クラッチ爪62と、軸部452から離間する方向(本形態では、+Z方向)にロータピニオン51を付勢する付勢部材であるコイルばね63(図7、図8参照)と、ロータピニオン51を軸部452側(−Z方向)に押し下げて第1クラッチ機構60の継断を切り換えるクラッチ切換部材である扇型のクラッチ切換レバー64を備える。クラッチ切換レバー64は、減速ギア53の+Z方向側に配置され、固定軸533によって回転可能に支持される。
図5(b)に示すように、クラッチ切換レバー64には、−Z方向に突出するカムピン65および傾斜カム67が形成されている。カムピン65はクラッチ切換レバー64の出力ギア54側の縁に形成され、出力ギア54の+Z方向の端面に形成されたカム溝66に挿入される。傾斜カム67はロータピニオン51を−Z方向に移動させるカム部であり、
周方向に延在する傾斜面を備える。
図6、図7は第1クラッチ機構および回転規制機構の動作説明図である。図6は+Z方向側から見た平面図であり、図7は側面図である。図6に示すように、クラッチ切換レバー64は、遊星歯車機構52側に回転したクラッチ切断位置64A(図6(c)参照)と、出力ギア54側に回転したクラッチ接続位置64B(図6(a)参照)の間で回転する。図6(c)に示すように、クラッチ切換レバー64がクラッチ切断位置64Aに位置するとき、図7(b)に示すように、第1クラッチ機構60は第1クラッチ爪61と第2クラッチ爪62とが離間したクラッチ切断状態となっている。
クラッチ切換レバー64がクラッチ切断位置64Aから出力ギア54側(CCW方向)に回転すると、傾斜カム67の傾斜面により、ロータピニオン51が軸部452側(−Z方向側)に押し下げられる。図6(a)に示すように、クラッチ切換レバー64がクラッチ接続位置64Bに移動すると、図7(a)に示すように、ロータピニオン51は、第1クラッチ爪61と第2クラッチ爪62とが係合する連結位置51Bに移動する。その結果、第1クラッチ機構60は、ロータピニオン51が軸部452と一体回転するクラッチ接続状態に切り換わる。
クラッチ切換レバー64がクラッチ接続位置64Bから遊星歯車機構52側(CW方向)に回転すると、傾斜カム67がロータピニオン51と重なる位置から退避するので、コイルばね63の付勢力によってロータピニオン51が+Z方向に移動する。これにより、図7(b)に示すように、ロータピニオン51は、第1クラッチ爪61と第2クラッチ爪62との係合が解除される離間位置51Cに移動する。その結果、第1クラッチ機構60はクラッチ切断状態に切り換わる。
クラッチ切換レバー64は、出力ギア54の回転に連動して回転する。すなわち、クラッチ切換レバー64は、カムピン65およびカム溝66を介して、出力ギア54のCW方向の回転に連動して出力ギア54側に回転する。これにより、クラッチ接続動作が行われる。また、出力ギア54がCCW方向に回転する際には、出力ギア54から+Z方向に突出する突起55がクラッチ切換レバー64を押圧して遊星歯車機構52側に回転させる。これにより、クラッチ切断動作が開始される。
ここで、クラッチ切断動作においては、クラッチ切換レバー64は、図6(a)に示すクラッチ接続位置64Bから図6(b)に示す途中位置64Cに移動するまでの区間は、突起55からの押圧力によって回転するが、図6(b)に示す途中位置64Cから図6(c)に示すクラッチ切断位置64Aに移動するまでの区間は、ロータピニオン51がコイルばね63によって押し上げられる力で傾斜カム67の斜面が押圧されることによって、クラッチ切換レバー64が回転する。
排水弁駆動装置1は、ワイヤ10を巻き取る際の回転方向(すなわち、CCW方向)に出力ギア54を回転させて排水を開始させるが、出力ギア54の突起55の位置は、出力ギア54が所定の回転位置に到達するとクラッチ切換レバー64を押圧して遊星歯車機構52側(CW方向)に回転させるように設定されている。このため、プーリ11が凹部17によって規定される回転範囲の一端の近傍まで回転すると、上述したクラッチ切断動作が行われる。これにより、モータ40の駆動力がロータピニオン51に伝達されない状態となり、伝達輪列50の動作が停止する。従って、プーリ11の過度な回転を防止でき、ワイヤ10の過度な巻き取りを防止できる。
(回転規制機構)
図5(a)に示すように、遊星歯車機構52の第1回転体522には、入力ギアである
大径歯車部527の+Z方向の端面から+Z方向に突出する突出部71が形成されている。突出部71は、径方向に突出する複数の回転規制部72を備える。複数の回転規制部72は等角度間隔で配置されている。各回転規制部72には、周方向の一方側(CW方向)を向く回転規制面73が形成されている。
図5(b)に示すように、クラッチ切換レバー64の遊星歯車機構52側の縁には、−Z方向に突出する回転規制突起74が形成されている。回転規制突起74は、回転規制面73に当接可能な位置および回転規制面73から退避した位置に移動可能である。上述したように、ワイヤ10の巻き取り動作が行われ、クラッチ切換レバー64が遊星歯車機構52側(CW方向)に回転してロータピニオン51をクラッチ切断方向(+Z方向)に移動させるとき、クラッチ切換レバー64に形成された回転規制突起74は、周方向に隣り合う回転規制部72の間に入り込む。これにより、回転規制突起74と回転規制面73が周方向に対向する状態が形成され、回転規制突起74によって第1回転体522の回転が規制される(図6(c)参照)。
図6(c)に示すように、回転規制突起74は、クラッチ切換レバー64の回転により、固定軸533を中心とする円弧上の移動軌跡B1に沿って移動する。回転規制面73は、回転規制突起74の移動軌跡B1と同一半径の円弧形状である。第1回転体522の回転規制が解除されるときは、回転規制突起74が回転規制面73に当接した状態で、クラッチ切換レバー64が出力ギア54側(CCW方向)に回転する。このとき、回転規制面73は移動軌跡B1と略一致しているため、回転規制突起74から回転規制面73に対して、回転規制面73を押圧する方向の力が加わることはない。従って、第1回転体522の回転規制が解除されるときに回転規制突起74が第1回転体522を押圧して強制回転させることはない。
回転規制機構70は、クラッチ接続動作が行われるとき、まず、第1クラッチ爪61と第2クラッチ爪62の少なくとも一部が係合され、しかる後に回転規制突起74による第1回転体522の回転規制が解除されるように構成されている。すなわち、クラッチ切換レバー64がクラッチ切断位置64A(図6(c)参照)から出力ギア54側(CCW方向)に回転する途中の所定の回転位置まで移動したとき、傾斜カム67によって押し下げられる途中の第1クラッチ爪61の先端が第2クラッチ爪62の先端よりも−Z方向側の位置まで移動して、第1クラッチ爪61と第2クラッチ爪62の先端同士が係合した状態が形成される。そして、この状態からさらにクラッチ切換レバー64がCCW方向に回転すると、回転規制突起74が回転規制部72の間から完全に退避し、回転規制突起74が回転規制面73と対向しない位置まで移動する。このような順序でクラッチ接続動作を行うと、クラッチ接続動作の途中で、第1クラッチ爪61と第2クラッチ爪62が係合する前にロータピニオン51の回転位置がずれてしまい、その結果、第1クラッチ爪61と第2クラッチ爪62の先端同士が衝突してクラッチ接続動作が妨げられることを回避できる。
回転規制機構70は、複数の回転規制部72のうちのいずれか1つに形成された回転規制面73が回転規制突起74と当接する回転位置で、第1回転体522の回転を規制する。ここで、回転規制突起74によって第1回転体522の回転が規制される回転位置をロック位置522A(図6(c)参照)とすると、本形態では回転規制突起74と当接する回転規制部72が複数(4箇所)設けられているため、ロック位置522Aは複数(4箇所)存在する。
遊星歯車機構52は、上述したように排水弁駆動装置1の起動時に第2回転体524の回転が増速ギア85によって規制されるため、回転規制機構70によって第1回転体522の回転が規制されると、減速ギア53と噛み合う第3回転体526の回転も規制され、
ロック状態となる。従って、ワイヤ10に外力が加わり、出力軸13側から伝達輪列50に回転トルクが加えられても回転トルクが伝達されない状態となり、ワイヤ10を所定量巻き取った位置でプーリ11を保持する負荷保持状態が形成される。具体的には、ワイヤ10が所定量巻き取られた状態で、ワイヤ10を引き出す外力が加えられると、第1回転体522には、CW方向の回転トルクが加わる。このとき、回転規制突起74は、回転規制面73と当接して第1回転体522のCW方向の回転を規制する。
回転規制機構70は、外力によりワイヤ10を引き出し可能な負荷開放状態に切り換わってワイヤ10が引き出されるとき、出力ギア54の回転に伴ってクラッチ切換レバー64が出力ギア54側(CCW方向)に回転すると、回転規制突起74が回転規制部72の間から退避する。これにより、回転規制機構70による第1回転体522の回転規制が解除される。また、このとき、クラッチ切換レバー64の回転により、第1クラッチ機構60のクラッチ接続動作が行われる。つまり、第1回転体522の回転規制を解除する動作およびクラッチ接続動作が行われる前には、第1回転体522はロック位置522Aに位置決めされた状態になっている。
(位置決め機構)
第1クラッチ機構60は、クラッチ接続動作の際に第1クラッチ爪61と第2クラッチ爪62の爪先端同士が干渉することを避けるために、第1クラッチ爪61と第2クラッチ爪62が周方向に交互に配置される位置関係となるように、ロータピニオン51の回転方向の位置決めを行って組み付けられている。以下、第1クラッチ爪61と第2クラッチ爪62が周方向に交互に配置されるロータピニオン51の回転位置を正規位置51A(図7参照)とする。本形態では、第1クラッチ爪61の数が4であるため、正規位置51Aは4箇所存在する。
第2クラッチ爪62はロータ45の軸部452に形成されている。ロータ45は、モータ40が無励磁状態であるときは磁気的に安定する位置に配置される。本形態では、ロータ45を磁気的に安定する位置に配置することにより第2クラッチ爪62の位置決めを行う。従って、第2クラッチ爪62の位置決めをメカ的な位置決め手段で行う必要がない。ロータ45が磁気的に安定する位置に位置決めされると、第2クラッチ爪62はマグネット451の着磁パターンに応じた位置に位置決めされる。ロータピニオン51の正規位置51Aは、ロータ45が磁気的に安定する位置に位置決めされたときに、第2クラッチ爪62と第1クラッチ爪61とが周方向に交互に配置される位置である。このような位置を正規位置51Aとすれば、ロータピニオン51を組み付ける際に、第1クラッチ爪61によって第2クラッチ爪62が移動させられてロータ45が磁気的に安定する位置から移動させられることを避けることができる。従って、磁気的に安定した位置からずれた状態で第1クラッチ機構60の組み付けが行われることを避けることができる。
第1クラッチ機構60は位置決め機構60Aを備える。位置決め機構60Aは、ロータピニオン51の組み込み時に、ロータピニオン51を正規位置51Aに位置決めする。本形態では正規位置51Aは4箇所存在するが、位置決め機構60Aは、そのうちの2箇所のどちらかにロータピニオン51を位置決めする。位置決め機構60Aは、ロータピニオン51と噛み合う大径歯車部527が形成された第1回転体522を介して、間接的にロータピニオン51の回転規制を行う。そのため、位置決め機構60Aは、ロータピニオン51に形成された位置決め凹部68と、位置決め突起69が形成された第1回転体522と、第1回転体522の回転位置を規制する回転規制機構70を備える。
図8、図9は位置決め機構60Aの動作説明図である。図8は位置決め機構60Aの斜視図であり、図9は位置決め機構60A+Z方向から見た平面図である。図8(a)、図9(a)はロータピニオン51の位置決めを行って組み込んた状態を示す。また、図8(
b)、図9(b)はロータピニオン51を逃げ部692と噛み合う位置まで回転させた状態を示す。図8に示すように、ロータピニオン51は、第1回転体522の大径歯車部527と噛み合う歯車部510と、歯車部510の+Z方向の端面から+Z方向に突出する突出部511と、突出部511の中心から+Z方向に突出する軸部512を備える。軸部512は、上述した第1クラッチ機構60によるクラッチ接続動作の際に、クラッチ切換レバー64の傾斜カム67によって押圧される部位である。
位置決め凹部68は、突出部511の外周面に形成されており、外周側に向けて開口する。位置決め凹部68は複数設けられ、第1クラッチ爪61と対応する角度位置に形成されている。本形態では、第1クラッチ爪61は等角度間隔で4箇所に設けられている。また、位置決め凹部68は180度離れた2箇所に設けられている。
位置決め突起69は、第1回転体522の+Z方向の端部に設けられ、第1回転体522の全周にわたって等角度間隔で配置されている。第1回転体522の+Z方向の端部には、第1回転体522の外周面に形成された大径歯車部527の歯溝2箇所分の角度範囲にわたって周方向に延在する縁部691が形成されている。縁部691は、第1回転体522の外周縁に等角度間隔で複数配置されている。位置決め突起69は、縁部691の周方向の中央から外周側に突出する。従って、位置決め突起69の先端は、大径歯車部527の歯先よりも外周側に突出し、且つ、大径歯車部527の歯先と同一の角度位置にある。また、位置決め突起69の周方向の両側に位置する2箇所の歯溝は、縁部691と軸線方向(第3方向Z)に重なり合っている。
ロータピニオン51と第1回転体522は、位置決め凹部68と位置決め突起69が係合する位置関係となるように組み付けられる。そして、位置決め凹部68と位置決め突起69が係合する位置関係では、ロータピニオン51は、第1クラッチ機構60をクラッチ接続状態にすることが可能な正規位置51Aに位置する。位置決め凹部68と位置決め突起69が係合する位置関係とは、位置決め突起69がロータピニオン51の回転中心の方向を向き、位置決め凹部68が第1回転体522の回転中心の方向を向く位置関係である。ロータピニオン51は、このような回転位置を2箇所備える。そして、この2箇所の回転位置は、4箇所の正規位置51Aのうちの2箇所と一致する。
また、ロータピニオン51と大径歯車部527は噛み合って回転する。そこで、位置決め凹部68の角度間隔に対応するロータピニオン51の歯数と、位置決め突起69の角度間隔に対応する大径歯車部527の歯数が等しくなるように、位置決め突起69の数、ロータピニオン51の歯数、大径歯車部527の歯数が定められている。本形態では、ロータピニオン51の歯数N1が12、位置決め凹部68が2箇所、大径歯車部527の歯数N2が48である。従って、位置決め突起69は8か所設けられている。
回転規制機構70は、第1回転体522の回転位置がロック位置522A(図6(c)、図8(a)参照)であるとき、第1回転体522の回転を規制する。位置決め機構60Aは、第1回転体522が回転規制機構70によってロック位置522Aに位置決めされた状態で、位置決め突起69が位置決め凹部68と係合可能な方向、すなわち、ロータピニオン51の回転中心の方向を向くように構成されている。このような配置を実現するため、位置決め突起69の数は、回転規制部72の数の整数倍となる必要がある。本形態では、位置決め凹部68の数が8で回転規制部72の数が4であるため、ロック位置522Aでは必ず、位置決め突起69のうちの1つがロータピニオン51の回転中心の方を向いて突出する。
以上の構成により、位置決め機構60Aは、位置決め凹部68と位置決め突起69とを係合させて第1回転体522およびロータピニオン51の回転位置を定めて組み付けるこ
とができ、その結果、第1回転体522がロック位置522Aに位置決めされるとき、ロータピニオン51が正規位置51Aに位置決めされることになる。本形態では、ロック位置522Aは4箇所存在し、4箇所のロック位置522Aは、それぞれ、ロータピニオン51の正規位置51Aと対応する。従って、クラッチ接続動作の際には、回転規制機構70によって第1回転体522がロック位置522Aに位置決めされ、その結果、ロータピニオン51は正規位置51Aに位置決めされる。よって、第1クラッチ爪61と第2クラッチ爪62の爪先端同士が干渉しない状態で、クラッチ接続動作が行われる。
なお、ロック位置522Aにおいて必ず、ロータピニオン51が正規位置51Aに位置決めされるように構成するためには、ロータピニオン51の歯数N1と大径歯車部527の歯数N2は上記と同一である必要はない。例えば、N2=N1×nの関係式(n:回転規制部72の数)を満たしていれば、上記と異なる構成であってもよい。この関係式を満たしていれば、第1回転体522が1回転する間に、第1回転体522に設けられた回転規制部72の角度位置と、ロータピニオン51に設けられた第1クラッチ爪61の角度位置との位置関係がずれることがない。従って、第1回転体522の回転規制を行うことにより、ロータピニオン51を正規位置51Aに位置決めでき、第1クラッチ爪61と第2クラッチ爪62との干渉を回避できる。
本形態では、位置決め機構60Aは、ロータピニオン51に位置決め凹部68が2箇所形成されており、4箇所の正規位置51Aのうちの2箇所で位置決め突起69と位置決め凹部68とが係合するが、位置決め凹部68の数は1箇所あるいは4箇所であってもよい。すなわち、位置決め凹部68は、4箇所の正規位置51Aのうちの少なくとも1つにロータピニオン51を位置決めできる位置および数であればよい。また、回転規制機構70によるロック位置522Aは、4箇所の正規位置51Aのうちの少なくとも1つに対応する位置および数であればよい。
例えば、回転規制部72を2箇所とし、ロック位置522Aを2箇所とすることができる。上記のように、本形態の位置決め機構60Aは、4箇所の正規位置51Aのうちの2箇所で位置決め突起69と位置決め凹部68とが係合する。従って、ロック位置522Aを2箇所とする場合には、第1回転体522がロック位置522Aに位置決めされるとき、位置決め突起69と位置決め凹部68とが係合し、ロータピニオン51が正規位置51Aに位置決めされるように構成することができる。
(逃げ部)
第1回転体522の外周面において、周方向に隣り合う縁部691の間には逃げ部692が設けられている。逃げ部692は、大径歯車部527の歯溝が第1回転体522の+Z方向の端面まで延びた領域である。本形態では、各逃げ部692には歯溝が4箇所形成されている。ここで、逃げ部692の機能について説明する。位置決め機構60Aは、位置決め突起69の周方向の両側に縁部691が設けられているので、図8(a)、図9(a)に示す位置決め状態では、ロータピニオン51の歯部と縁部691とが第3方向Zに重なり合っている。従って、この状態で、コイルばね63の付勢力によってロータピニオン51が+Z方向に移動すると、ロータピニオン51の歯部が縁部691に引っ掛かり、第1回転体522が+Z方向に移動してしまう。その結果、遊星歯車機構52の歯車の噛み合いが外れるおそれがある。
そこで、ロータピニオン51の組み付け作業を行うときには、図8(a)、図9(a)に示す位置決め状態を形成したのち、ロータピニオン51を所定量回転させる。これにより、図9(b)に示すように、逃げ部692をロータピニオン51に向けた状態を形成することができる。逃げ部692においては、大径歯車部527の歯溝が第1回転体522の+Z方向の端面まで延びている。従って、コイルばね63の付勢力によってロータピニ
オン51が+Z方向に移動しても、ロータピニオン51の歯部が第1回転体522を軸線方向に押圧して移動させることはなく、図8(b)に示すように、ロータピニオン51だけが+Z方向に移動する。従って、ロータピニオン51の組み付け後に、ロータピニオン51を介して第1回転体522が+Z方向に移動させられて遊星歯車機構52の歯車の噛み合いが外れることを防止できる。
なお、本形態では、周方向に隣り合う位置決め突起69の間に1箇所ずつ逃げ部692が設けられているので、全部で8か所の逃げ部692が設けられている。しがしながら、逃げ部692は、少なくとも1箇所設けられていればよい。少なくとも1箇所の逃げ部692があれば、逃げ部692をロータピニオン51に向けるまで第1回転体522を回転させることができ、ロータピニオン51の歯部が縁部691と軸線方向に重ならない状態を形成できる。従って、ロータピニオン51は、逃げ部692を通じて軸線方向(第3方向Z)へ移動することができ、ロータピニオン51の歯部が第1回転体522を押圧して移動させることを回避できる。
(第2クラッチ機構)
図10、図11はロータ45および第2クラッチ機構80の斜視図であり、図10は+Z方向側から見た斜視図であり、図11は−Z方向側から見た斜視図である。図3、図10、11に示すように、第2クラッチ機構80は、遊星歯車機構81と、扇ギア82およびロックレバー83と、ロックギア84と、増速ギア85と、ねじりコイルばね86を備える。第2クラッチ機構80は、モータ40の回転に基づいてロックレバー83を駆動して、ロックギア84および増速ギア85の回転を規制する状態と規制しない状態を切り換える。これにより、増速ギア85と噛み合う遊星歯車機構52から減速ギア53へ回転トルクが伝達される状態と伝達されない状態を切り換える。従って、伝達輪列50が駆動力を伝達する状態と伝達しない状態とを切り換えることができる。
第2クラッチ機構80は、ロックギア84および増速ギア85の回転を規制する回転規制装置80Aを備える。回転規制装置80Aは、誘導リング46、遊星歯車機構81、扇ギア82、ロックレバー83およびねじりコイルばね86によって構成される。回転規制装置80Aにおいて、ロックレバー83は、回転体であるロックギア84の回転を規制する回転規制部材であり、扇ギア82はロックレバー83を回転させる回転規制部材駆動ギアである。図3、図4に示すように、遊星歯車機構81の回転中心軸線はJ軸であり、扇ギア82の回転中心軸線はH軸であり、ロックレバー83の回転中心軸線はG軸であり、ロックギア84の回転中心軸線はF軸であり、増速ギア85の回転中心軸線はE軸である。
図4に示すように、遊星歯車機構81は、太陽歯車811が形成された第1回転体812と、内歯歯車813が形成された第2回転体814と、太陽歯車811および内歯歯車813と噛み合う複数の遊星歯車815と、複数の遊星歯車815を回転可能に保持する第3回転体816を備える。第1回転体812は、ロータ45の軸部452に形成されたロータギア47と噛み合う大径歯車部817を備える。また、第2回転体814の外周面には、軸部452の外周側に配置された誘導リング46に形成された誘導リングギア464と噛み合う大径歯車部818が形成されている。そして、第3回転体816の−Z方向の端部には、扇ギア82の扇歯部823と噛み合う小径歯車部819が設けられている。
誘導リング46は、上述したように、マグネット451と軸部452との間に配置されている。誘導リング46は、アルミニウムや銅等の非磁性金属からなる円筒状の金属部461と、金属部461の内周側に設けられた樹脂部462を備える。誘導リング46は、金属部461を樹脂にインサート成形することにより製造されている。誘導リング46の内周面には軸受部465、466が形成され、軸受部465、466によって軸部452
に回転可能に支持される。
誘導リング46は、外周側に突出する鍔部463と、鍔部463の+Z方向側に設けられた誘導リングギア464を備える。鍔部463は金属部461と樹脂部462(図12参照)とが重なって構成され、誘導リングギア464は樹脂部462のみから構成される。後述するように、誘導リングギア464は、軸部452に形成されたロータギア47と同一径である。モータ40が駆動しロータ45が回転すると、マグネット451と金属部461との間に渦電流が発生し、渦電流により磁束が生じてマグネット451に対する金属部461の相対回転を妨げるブレーキ力が発生する。誘導リング46とロータ45は、このブレーキ力(渦電流によるブレーキ力)によって共回りするように結合される。
図10、図11に示すように、ロータ45が正転方向(CW方向)に回転すると、ロータギア47と噛み合う第1回転体812にロータ45の回転が入力される。第1回転体812の回転方向は、CCW方向である。このとき、誘導リング46に渦電流によるブレーキ力が作用する状態では誘導リング46と噛み合う第2回転体814は回転せず、遊星キャリアである第3回転体816が第1回転体812と同一回転方向(CCW方向)に回転する。その結果、扇ギア82はCW方向に回転する。扇ギア82は、付勢部材であるねじりコイルばね86によってCCW方向に付勢されている。従って、扇ギア82は、ねじりコイルばね86の付勢力に逆らって回転する。
扇ギア82は、固定軸821によって回転可能に支持され、ロックレバー83は固定軸831によって回転可能に支持される。ロックレバー83は、扇ギア82のCW方向の回転に連動して扇ギア82と逆方向(CCW方向)に回転するように組み付けられている。具体的には、後述するように、ロックレバー83に形成された係合ピン835が、扇ギア82に形成された係合凹部828に係合されている。
ロックギア84は、外周面に複数の突起部841が等角度間隔で形成された大径部842と、大径部842よりも小径の小径歯車部843を備える。扇ギア82がCW方向に回転すると、ロックレバー83がCCW方向に回転してロックギア84の大径部842の外周面に接触する。その結果、ロックレバー83と突起部841とが係合してロックギア84の回転が規制される。回転規制時には、ロックレバー83に形成された後述する第1腕部833の先端と突起部841とがロックギア84の外周面の接線方向に当接する。
第2クラッチ機構80は、ロックレバー83がロックギア84の回転を規制することにより、増速ギア85の回転を規制する。増速ギア85は、大径歯車部851および小径歯車部852を備えており、大径歯車部851は、ロックギア84の小径歯車部843と噛み合う。一方、増速ギア85の小径歯車部852は、第2回転体524に形成された大径歯車部528と噛み合う。上述したように、増速ギア85を介して第2回転体524の回転を規制したとき、伝達輪列50は、遊星歯車機構52から減速ギア53へ回転トルクが伝達される状態となる。つまり、ロックギア84をロック状態にすることで、ロックギア84を含む輪列(ロックギア84、増速ギア85)と噛み合う歯車(大径歯車部851)を備える伝達輪列50は駆動力を伝達する状態に切り換わる。
また、第2クラッチ機構80は、ロックレバー83がロックギア84の突起部841と係合すると、ロックレバー83および扇ギア82の回転が規制され、扇ギア82と噛み合っている第3回転体816の回転が規制される。遊星歯車機構81は、遊星キャリアである第3回転体816の回転が規制されると、内歯歯車813が形成された第2回転体814が回転するようになる。このとき、第2回転体814の回転方向は、ロータ45の回転が入力される第1回転体812の回転方向(CCW方向)と逆方向(CW方向)となる。その結果、第2回転体814と噛み合う誘導リング46はロータ45の回転方向と逆方向
(CCW方向)に回転するので、ロータ45と誘導リング46の相対回転速度は増大する。
第2クラッチ機構80は、誘導リング46の金属部461とマグネット451との間に生じる渦電流によるブレーキ力により、外力などによって増速ギア85側からロックギア84に回転力が加わった場合に、その回転力によってロックギア84とロックレバー83との係合が外れないように保持する。誘導リング46の金属部461とマグネット451との間に生じる渦電流によるブレーキ力は、金属部461とマグネット451の相対回転速度に応じた大きさになるため、遊星歯車機構81の第2回転体814が第1回転体812と逆方向に回転することによって渦電流が増幅されブレーキ力が増幅されると、ロックギア84を保持する保持力が増大する。従って、ロックレバー83の回転を規制するロック状態を確実に保持できる。
第2クラッチ機構80は、ロックギア84をロックレバー83でロックしている状態でモータ40への通電が停止されると、ロックギア84のロック状態が解除されて空転可能な状態に切り換わる。すなわち、ロータ45の回転が停止すると、遊星歯車機構81は、ロータギア47と噛み合う第1回転体812の回転が停止し、誘導リングギア464と噛み合う第2回転体814が空転可能となる。その結果、第3回転体816は、扇ギア82をねじりコイルばね86の付勢力に逆らって保持できなくなり、扇ギア82がねじりコイルばね86による付勢方向に回転する。扇ギア82の回転により、ロックレバー83がロックギア84から離れるため、ロックギア84のロック状態が解除される。これにより、第2クラッチ機構80は、ロックギア84および増速ギア85が空回りする状態に切り換わる。
第2クラッチ機構80の増速ギア85が空回りする状態に切り換わると、伝達輪列50においては、遊星歯車機構52の第2回転体524が空回りする状態に切り換わる。この状態で、ワイヤ10に加わった外部負荷が出力ギア54側から伝達輪列50に伝達されると、減速ギア53と噛み合う第3回転体526の回転に伴って第2回転体524が空回りする。従って、ワイヤ10の負荷保持状態が解除され、ワイヤ10を外部負荷によって繰り出すことができる。
(ロータおよび誘導リングの構造)
図12はロータ45および誘導リング46の断面斜視図であり、図13はロータ45および誘導リング46の分解斜視図である。ここで、図12、図13を参照してロータ45および誘導リング46の詳細な構成を説明する。上述したように、ロータ45は、フェライト磁石等からなるマグネット451を軸部452の−Z方向の端部にインサート成形して形成される。軸部452は、ロータギア47が形成された第1軸部452Aと、マグネット451がインサート成形される第2軸部452Bに分割されている。第1軸部452Aは軸線方向(第3方向Z)の一方側(+Z方向)に位置し、第2軸部452Bは他方側(−Z方向)に位置する。
第1軸部452Aは、固定軸453が挿入される軸孔が形成された第1中心軸部454と、第1中心軸部454の外周側を囲む筒状部455を備える。筒状部455および第1中心軸部454は、ロータギア47の下端面から−Z方向側に伸びている。第1中心軸部454の下端は軸部452の軸線方向の略中央に位置する。また、筒状部455の下端は第1中心軸部454の下端よりも−Z方向側に位置する。筒状部455の下端には、筒状部455の中心軸線を基準として反対側の2箇所に突起455aが形成されている。筒状部455と第1中心軸部454の間には隙間が設けられている。筒状部455と第1中心軸部454の間に隙間を設けることで肉厚が薄くなるため、第1軸部452Aを樹脂で成形する際にヒケの発生を抑えることができる。
第2軸部452Bは、略円板状のインサート部456と、インサート部456の中央から+Z方向へ突出する第2中心軸部457を備える。第2中心軸部457には、固定軸453が挿入される軸孔が形成されている。インサート部456はマグネット固定部である。本形態では、インサート成形によってマグネット451が第2軸部452Bに固定される。なお、他の固定方法によってマグネット451を固定してもよい。本形態では、マグネット451の下端には内周側に突出する環状凸部451aが形成され、環状凸部451aがインサート部456の外周縁にインサートされている。図12に示すように、インサート部456の外周縁を構成する樹脂は、マグネット451の環状凸部451aを軸線方向の両側から挟み込んでいる。また、インサート部456の+Z方向側の面には、第2中心軸部457を中心として反対側の2箇所に凹部456aが形成されている。
ロータ45の軸部452は、ロータ45の回転中心に位置する軸体である固定軸453に取り付けられ、固定軸453によって回転可能に支持される。固定軸453は第1中心軸部454および第2中心軸部457に挿通され、第1中心軸部454および第2中心軸部457は軸受部として機能する。誘導リング46をロータ45に組み付ける際には、図13に示すように第1軸部452Aと第2軸部452Bを分離した状態で、第2軸部452Bに固定されたマグネット451の内周側へ誘導リング46を落とし込む。しかる後に、第1軸部452Aの筒状部455を誘導リング46の内周側へ落とし込む。これにより、誘導リングギア464の+Z方向側に、誘導リングギア464と同一径のロータギア47が配置される。第1軸部452Aを誘導リング46の内周側へ落とし込むとき、第2軸部452Bの凹部456aに第1軸部452Aの突起455aを挿入する。これにより、第2軸部452Bに対する第1軸部452Aの回り止めがなされるので、第1軸部452Aと第2軸部452Bが一体に回転するように組み立てられる。
第1軸部452Aの軸線方向(第3方向Z)の位置決めは、図12に示すように、第1中心軸部454の先端面454aと、第2中心軸部457の先端面457aとが当接することによってなされる。第1中心軸部454、第2中心軸部457の先端面454a、457aは、軸部452の軸線方向の略中央で当接する。第1軸部452Aの回り止めと軸線方向の位置決めが異なる部位(第1中心軸部454と筒状部455)でなされるため、第1軸部452Aと第2軸部452Bを精度良く組み立てることができる。
(ねじりコイルばねの保持構造)
上述したように、ロックレバー83と扇ギア82は、ロックレバー83に形成された係合ピン835が、扇ギア82に形成された係合凹部828に係合されており、連動して回転するように組み付けられている。また、扇ギア82は、ねじりコイルばね86によってCCW方向に付勢される。本形態の扇ギア82は、ねじりコイルばね86を脱落しないように保持することのできるコイルばね保持部824を備える。
図11に示すように、ロックレバー83は、固定軸831に取り付けられる軸部832(第2軸部)と、軸部832から外周側に突出する第1腕部833および第2腕部834を備える。第1腕部833および第2腕部834は異なる角度位置に形成されている。第1腕部833はロックギア84側に伸びており、第1腕部833の先端がロックギア84の突起部841と係合してロックギア84の回転を規制する。第2腕部834は扇ギア82側に伸びており、第2腕部834の先端に係合ピン835が形成されている。
図14は扇ギア82およびねじりコイルばね86の説明図であり、図14(a)は、扇ギア82からねじりコイルばね86を取り外した状態を示す斜視図であり、図14(b)は扇ギア82を+Z方向から見た平面図である。扇ギア82は、固定軸821に取り付けられる軸部822(第1軸部)と、軸部822の−Z方向の端部に形成された扇歯部82
3を備える。軸部822は、第3方向Zに直線状に延在する中心部825と、中心部825の−Z方向側の部位の外周側を囲む円筒部826を備える。円筒部826の+Z方向の端部は中心部825と繋がっている。また、円筒部826の+Z方向の端部には外周側に突出する突出部827が形成されている。突出部827には、外周側に開口する係合凹部828が形成されている。
円筒部826には、周方向の一部を切り欠いた切欠き826aが形成されている。切欠き826aは、円筒部826の−Z方向の縁に繋がる幅の狭い開口溝と、開口溝の+Z方向側において周方向の一方側に階段状に幅が拡げられた幅広部分を備える。切欠き826aの周方向の幅を階段状に拡げたことにより、円筒部826の−Z方向側の縁に沿って周方向に円弧状に延在する腕部829が形成されている。コイルばね保持部824は、中心部825の−Z方向側の端部および腕部829によって構成されている。
ねじりコイルばね86は、線材をコイル状に巻いたコイル部861と、コイル部861から外周側に突出する2本のばね足862、863を備える。図11に示すように、コイル部861は扇ギア82の中心部825の−Z方向の端部に装着される。このとき、コイル部861の+Z方向側の端部から突出するばね足862は、切欠き826aに挿入される。切欠き826aは、円筒部826の−Z方向の縁から少なくとも腕部829の+Z方向側(すなわち、腕部829に対するばね足862の係合位置)まで拡がっている。ねじりコイルばね86は、もう一方のばね足863が円筒部826の−Z方向の端面826b(図14(a)参照)に当接することによって第3方向Zの位置が規制される。この状態でコイル部861を周方向に回転させると、ばね足862が腕部829に係合した状態が形成される。
ねじりコイルばね86の第3方向Zの位置は、ばね足863が当接する円筒部826の−Z方向の端面826bと、ばね足862が係合する腕部829の+Z方向の端面826c(図14(a)参照)によって規制される。従って、これらの端面826b、826cは、ねじりコイルばね86の第3方向Zの位置を規制する位置規制部として機能する。また、コイル部861の内周側に挿入される中心部825の−Z方向側の端部は円筒部826の−Z方向側の端面826bよりも−Z方向側に突出した位置にある。従って、中心部825の−Z方向の端部が支持プレート42に当接するように扇ギア82を組み付けたとき、支持プレート42と円筒部826の端面826bとの隙間にばね足863を配置する隙間が形成される。
図11に示すように、ねじりコイルばね86の一方のばね足862は、円筒部826に形成された切欠き826aの幅広部分の内縁826d(図14(a)参照)に当接する。これにより、扇ギア82にねじりコイルばね86の付勢力が作用する。もう一方のばね足863は、ロックレバー83の回転中心に配置された固定軸831に当接する。ロックレバー83の軸部832には、ばね足863が配置される側を切り欠いた切欠き836が形成されている。ばね足863は、切欠き836から外部に露出する固定軸831の外周面に当接する。本形態では、ばね足863が当接する固定軸831は金属軸である。なお、固定軸831は金属製でなくてもよい。
図15はモータ40および第2クラッチ機構80の分解斜視図である。第2クラッチ機構80を組み立てる際には、図15に示すように、誘導リング46が組み付けられたロータ45を支持プレート42の中央に組み付け、増速ギア85を組み付ける。なお、増速ギア85を組み付ける順序は、扇ギア82およびロックレバー83を組み付ける前でなくても良く、ロックギア84を組み付ける前であればよい。
続いて、ねじりコイルばね86および扇ギア82を固定軸821に組み付ける。このと
き、図15に示すように、ねじりコイルばね86を扇ギア82のコイルばね保持部824に組み付けておき、この状態で固定軸821に組み付ける。これにより、ねじりコイルばね86は扇ギア82から脱落せずに組み付けられる。このとき、ねじりコイルばね86の−Z方向側のばね足863を、固定軸831に対して扇歯部823と反対側から当接させる。続いて、ロックレバー83を固定軸831に組み付ける。このとき、ロックレバー83の係合ピン835を扇ギア82の係合凹部828に係合させる。しかる後に、遊星歯車機構81を組み付け、最後にロックギア84を組み付ける。
なお、本形態では、ロックギア84の回転を規制する回転規制部材として扇ギア82と別体のロックレバー83を用いており、扇ギア82のCW方向の回転に基づいてロックレバー83をCCW方向に回転させるが、ロックレバー83と扇ギア82が一体に回転するように構成してもよい。例えば、扇ギア82にロックギア84に当接して突起部841と係合可能な腕部を設けることもできる。但し、この場合には、ばね足863を当接させる部位を別途設ける必要がある。あるいは、扇ギア82とロックレバー83との間に他の回転伝達部材が介在していてもよい。また、回転規制部材として、回転以外の動作によってロックギア84と係合するものを用いてもよい。例えば、扇ギア82の回転に基づいて軸線方向に移動してロックギア84の回転を規制する部材を設けることもできる。
また、本形態では、太陽歯車811が形成された第1回転体812の大径歯車部817とロータギア47が噛み合っており、内歯歯車813が形成された第2回転体814の大径歯車部818が誘導リングギア464と噛み合っているが、第1回転体812の大径歯車部817が誘導リングギア464と噛み合い、第2回転体814の大径歯車部818がロータギア47と噛み合うように構成してもよい。このような構成であっても、ロックギア84のロック状態が形成されたときに誘導リング46とロータ45の相対回転速度が増大するので、ロックギア84を保持する保持力を増大させることができる。
(逆転防止機構90)
図16(a)は逆転防止機構90の斜視図であり、図16(b)は逆転防止機構90の平面図である。逆転防止機構90は、ロータ45の軸部452に形成された逆転防止突起91と、遊星歯車機構81の上部に取り付けられた逆転防止レバー92を備える。逆転防止レバー92は、遊星歯車機構81の第1回転体812の+Z方向の端面に当接する円板部93と、円板部93の外周縁の周方向の一部から−Z方向に屈曲した屈曲部94と、屈曲部94の−Z方向の端部から外周側へ延びる腕部95を備える。
上述したように、ロータ45の軸部452には、ロータピニオン51の第1クラッチ爪61と噛み合う第2クラッチ爪62が形成され、逆転防止突起91は第2クラッチ爪62の外周側に配置されている。逆転防止突起91は、軸部452の+Z方向の端面から突出する凸部であり、周方向に等角度間隔で配置されている。逆転防止突起91は円弧状であり、周方向を向く端面96を備える。第2クラッチ爪62は逆転防止突起91よりも内周側に配置されている。また、第2クラッチ爪62のうちの一部は、逆転防止突起91が設けられていない角度位置に配置されている。
逆転防止レバー92と遊星歯車機構81は、同一の固定軸97によって回転可能に支持される。逆転防止レバー92は、グリスの粘性および逆転防止レバー92の上部に配置された板ばね98によって遊星歯車機構81の第1回転体812と共回りする。従って、ロータ45の回転開始時には、ロータギア47と噛み合う第1回転体812と共に逆転防止レバー92が回転する。ロータ45の回転方向が予め定められた正転方向(CW方向)である場合、逆転防止レバー92はその逆方向(CCW方向)に回転するので、腕部95は逆転防止突起91と干渉しない。一方、ロータ45の回転方向が逆転方向(CCW方向)である場合、逆転防止レバー92はCW方向に回転するので、腕部95の先端は周方向に
隣り合う逆転防止突起91の間へ入り込む。その結果、逆転防止突起91の周方向の端面96と逆転防止レバー92の腕部95の先端とが衝突する。この衝突したときの衝撃によって、逆転したロータ45の回転方向は正転方向(CW方向)に修正される。
周方向に隣り合う逆転防止突起91の間の角度位置には第2クラッチ爪62が配置されているので、逆転防止レバー92の腕部95は第2クラッチ爪62と衝突し、逆転防止突起91よりも内周側へ入り込むことはない。従って、逆転時に逆転防止突起91の周方向の端面96と腕部95の先端とを確実に衝突させることができる。逆転防止突起91の端面96と腕部95の先端とが衝突するとき、腕部95は径方向の衝撃力を受けるが、腕部95は、遊星歯車機構81によって内周側から支持されている。従って、衝撃力によって逆転防止レバー92が変形するおそれは少ない。
(起動時の動作)
排水弁駆動装置1の起動時の動作について説明する。起動時には、ワイヤ10が排水弁を閉じる位置まで引き出されているものとする。この状態でモータ40への通電を開始すると、ロータ45が回転を開始する。この際、上述した逆転防止機構90により、ロータ45の逆転方向への回転が規制されるので、ロータ45は正転方向へ回転する。
次に、ロータ45の正転方向の回転により、第2クラッチ機構80の回転規制装置80Aがロックギア84をロックする状態に切り換わる。まず、遊星歯車機構81の出力回転によって扇ギア82がねじりコイルばね86の付勢力に逆らって回転し、ロックレバー83がロックギア84と当接して突起部841と係合し、ロックギア84をロックする。これにより、伝達輪列50は回転トルクを伝達する状態に切り換わる。すなわち、伝達輪列50においては、遊星歯車機構52の第2回転体524の回転が第2クラッチ機構80の増速ギア85によって規制され、ロータピニオン51の回転が遊星歯車機構52から減速ギア53へ伝達される状態に切り換わる。従って、ロータ45の正転方向の回転により、ワイヤ10の巻き取り動作が行われる。
第2クラッチ機構80は、ロックレバー83がロックギア84に当接してロックギア84がロックされると、遊星歯車機構81によって誘導リング46をロータ45の回転方向と逆方向に回転させる。これにより、ロータ45と誘導リング46の相対回転速度を増大させ、誘導リング46とマグネット451との間に発生する渦電流によるブレーキ力を増幅して、ロックギア84を保持する保持力を増大させる。
(ワイヤ巻き終わり時の動作)
排水弁駆動装置1は、ワイヤ10の巻き終わり時になると、第1クラッチ機構60のクラッチ切換レバー64が回転してクラッチ切断動作が行われ、伝達輪列50にロータ45の回転が入力されなくなる。従って、ワイヤ10は所定の巻き取り量以上に巻き取られない。また、クラッチ切換レバー64の回転により、回転規制機構70の回転規制突起74が遊星歯車機構52の第1回転体522の回転を規制するので、遊星歯車機構52がロック状態となり、伝達輪列50は回転トルクを伝達できなくなる。従って、ワイヤ10を引き出す外力が加えられてもワイヤ10が移動しない負荷保持状態となる。これにより、排水弁が開状態で保持される。
(負荷開放時の動作)
排水弁駆動装置1は、負荷保持状態でモータ40への通電を切ると、ワイヤ10を外力で引き出し可能な負荷開放状態に移行する。モータ40への通電を切ると、ロータ45の回転が停止する。第2クラッチ機構80は、ロータ45の回転停止によって扇ギア82がねじりコイルばね86の付勢方向に戻るため、ロックレバー83とロックギア84との係合が解除され、回転規制装置80Aによるロックギア84の回転規制が解除される。これ
により、伝達輪列50は回転トルクを伝達しない状態に切り換わる。すなわち、伝達輪列50の遊星歯車機構52において第2回転体524の回転規制が解除されるので、遊星歯車機構52のロックが解除される。これにより、伝達輪列50が空転可能な負荷開放状態となる。この状態で、ワイヤ10を引き出す方向の外力が加わると、伝達輪列50が空転してワイヤ10が引き出される。ロックギア84にはブレーキゴム87が組み込まれている。ブレーキゴム87は、外力によりワイヤ10が引き出されるときに遠心力により拡がってロックギア84との間に摩擦力を発生させる。これにより、ワイヤ10が引き出される際の引き出し速度が低下する。よって、ワイヤ10が急激に引き出されることによる破損のおそれを少なくすることができる。
ワイヤ10が最大引き出し位置に到達する手前の所定位置まで引き出されると、出力ギア54のCW方向に回転に基づいてクラッチ接続動作が始まる。すなわち、出力ギア54に形成されたカム溝66とクラッチ切換レバー64に設けられたカムピン65により、クラッチ切換レバー64が出力ギア54側に回転してクラッチ接続動作が行われる。これにより、伝達輪列50にロータ45の回転が入力される状態に戻る。また、このクラッチ切換レバー64の回転により、回転規制機構70による遊星歯車機構52の第1回転体522のロックが解除される。従って、伝達輪列50は回転トルクを伝達可能な状態に戻る。
(本発明の主な作用効果)
以上のように、本形態の排水弁駆動装置1は、モータ40の回転をワイヤ10に伝達する伝達輪列50が回転トルクを伝達する状態と伝達しない状態とを切り換える第2クラッチ機構80を備える。具体的には、第2クラッチ機構80は、伝達輪列50の第2回転体524と噛み合う輪列(増速ギア85およびロックギア84)と、この輪列の回転を規制する回転規制装置80Aを備えており、回転規制装置80Aは、ロータ45の回転に基づいてロックレバー83を回転させてロックギア84の回転を規制する。
回転規制装置80Aは、ロータ45に組み込まれた誘導リング46を備えており、遊星歯車機構81の動作によって誘導リング46にロータ45の回転方向と逆方向の回転を入力して、ロータ45に設けられたマグネット451と誘導リング46との相対回転速度を増大させる。これにより、誘導リング46とマグネット451の間に生じる渦電流によるブレーキ力が増幅されるので、第2クラッチ機構80をクラッチ接続状態に保持する保持力を高めることができる。具体的には、ロックレバー83を保持する保持力(ブレーキトルク)を高めることができる。従って、安定したロック状態を形成でき、伝達輪列50による回転力の伝達を安定して行わせることができるので、排水弁駆動装置1の動作を安定させることができる。
本形態では、ロータ45の軸部452は、ロータギア47が形成された第1軸部452Aと、マグネット451がインサート成形された第2軸部452Bの2部材に分離可能である。第1軸部452Aは軸線方向(第3方向Z)の一方側(+Z方向)に位置し、第2軸部452Bは他方側(−Z方向)に位置する。このように、軸部452を分割して組み立てることができるため、ロータギア47を誘導リング46の内周側に通す必要がなく、ロータギア47の外径を誘導リング46の内径よりも小さくする必要がない。従って、誘導リングギア464の歯底円をロータギア47の外径よりも小さくすることができる。よって、誘導リングを小型化できる。その結果、誘導リングギア464と噛み合う歯車(本形態では、第2回転体814の大径歯車部818)との歯数比(減速比)を確保するために、大径歯車部818を大型化させる必要がないので、誘導リングギア464とロータギア47の設計の自由度を向上させることができる。また、減速比を確保するために、大型歯車の配置スペースを確保する必要がない。なお、本形態では、誘導リングギア464はロータギア47と同一径であるが、誘導リングギア464はロータギア47と同一径でなくてもよい。
本形態では、第1軸部452Aの第1中心軸部454と第2軸部452Bの第2中心軸部457とが軸部452の軸線方向(第3方向Z)の略中央で当接する。このように、第1軸部452Aと第2軸部452Bが軸線方向(第3方向Z)に当接して軸線方向の位置決めが行われることで、第2軸部452Bの軸振れを抑制でき、第2軸部452Bに固定されるマグネットの軸振れを抑制できる。また、第1軸部452Aは、筒状部455の−Z方向の端部から突出する回り止め部である突起455aを2箇所に備え、この突起455aは、第2軸部452B設けられた2箇所の凹部456aに挿入される。本形態では、このように、軸線方向の位置決めが行われる部位(先端面454a、457a)と異なる部位(突起455aおよび凹部456a)で回り止めを行う。従って、第1軸部452Aと第2軸部452Bを精度良く組み立てることができる。